学術の基本問題に関する特別委員会(第7期)(第5回) 議事録

1.日時

平成26年5月7日(水曜日)14時00分~16:00分

2.場所

文部科学省東館3階講堂

3.議題

  1. 学術の推進方策に関する総合的な審議について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾主査、小安主査代理、安西委員、甲斐委員、高橋委員、柘植委員、羽入委員、濵口委員、平野委員、荒川委員、伊藤委員、金田委員、鈴村委員、瀧澤委員、武市委員

文部科学省

小松研究振興局長、山脇研究振興局審議官、板倉振興企画課長、合田学術研究助成課長、木村学術機関課長、中野学術企画室長

5.議事録

平成26年5月7日


【西尾主査】  
  それでは、時間になりましたので、ただいまより第5回科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会を開催いたします。委員の皆さん方には御多忙のところ御参会いただきまして、誠にありがとうございました。
 数名の委員の方々におかれましては少し遅れて到着であるということでございますが、時間も過ぎておりますので審議を進めたいと思っております。
 それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  
  初めに、今回の委員会でございますが、当初4月22日を予定しておりましたところ、直前に延期ということで、御迷惑をお掛けしまして申し訳ありませんでした。また、学術分科会につきましても5月26日に変更ということになっております。お手数をお掛けしましたことをおわび申し上げます。
 また、事務局でございますが、本日も国会審議等の影響で途中遅れて参る者がございます。大変申し訳ございません。また、5月よりクールビズということで、ノーネクタイで参加させていただきますことも御了承いただきますようお願いいたします。
 配付資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に配付資料一覧を記載しております。資料1-1が「学術研究の推進方策に関する総合的な審議について」の審議経過報告(案)でございます。同じく1-2は、前回からの見え消し版でございます。それから、先生方のお手元に、机上配付ということで、伊藤委員より頂いた御意見を配付させていただいております。資料2は、この審議経過報告(案)に盛り込まれております記述のバックデータを集めた資料集でございます。資料3は、前回第4回の特別委員会の概要(ポイント)でございます。
 また、参考資料と致しまして、少し分厚くホチキスどめをしているものがございます。総合科学技術会議や産業競争力会議等で様々な議論がなされておりますけれども、その中でも基礎研究等に触れられているものがありますので、参考として配付させていただいております。
 また、机上に、紙ファイルと致しまして、いつものように特別委員会のグレーのファイルで第1回から第4回の資料をつづっておりますので、適宜御参照いただければと思います。
 資料につきまして欠落等ございましたら、事務局までお申し付けくださいますようお願いいたします。

【西尾主査】  
  何かございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、学術研究の推進方策に関する総合的な審議に移りたいと思います。前回4月14日の第4回委員会におきまして審議計画報告の素案を御議論いただきました。出席の委員からは積極的、また具体的な御意見をたくさん頂きまして、どうもありがとうございました。頂きました御意見の内容が多岐にわたっていたこともありまして、先ほど説明がありましたように、4月22日に予定しておりました委員会を一旦延期ということにさせていただいた次第です。
 御意見を踏まえ、審議経過報告の案を作成いたしました。前回の委員会の終了後にもたくさんの御意見を頂きましたこともあり、前回よりも内容がかなり充実しておりますし、またそれに伴い構成を変えたところもございます。本日はその改訂案を御審議いただきたいと思います。
 一方で、5月26日の学術分科会に審議経過報告をするということを考えておりまして、その前に開催する委員会としましては本日が一応最後ということで予定しております。したがいまして、内容について今日審議を頂き、おおよそのところで御了解いただきましたら、本委員会のこれまでの審議の取りまとめとさせていただき、分科会に持っていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 まず事務局より、資料の内容についての説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  
  失礼いたします。お手元の資料1-1をごらんいただきたいと思います。前回のこの委員会での御審議、またその後個別に頂きました御意見等も含めまして、報告の案ということで、今、主査からありましたように前回からかなり変更したものになりますが、御用意させていただいております。なお、先週末に先生方にお送りさせていただいたものから内容的な変更はございませんが、体裁等を若干変更してページがずれていることがございますので、御留意いただきたいと思います。
 まず、1番から簡単に御説明させていただきます。失われる日本の強みの部分は、前回のものから少し記述を補充しているところがございます。まず冒頭に、「今日」ということで、世界の成熟国の社会構造は、知識集約型の経済活動がもたらす付加価値が各国の成長の大きな要素となり、各国の学術政策においてこれらの指標が強く意識されているという、世界の状況についての記述を加えております。
 その中で、次の丸は、我が国においては、とりわけ学術研究により生み出される知や人材が強みとなってきて、これまでも成果を上げて国際社会において存在感を伸ばしてきたと、従来の記述でございます。
 またその次は、現在様々な課題を解決しなければならない我が国の状況を鑑みると、学術研究の重要性が一層増しているということ。
 その次は、少し記述を厚くしております。科学技術関係予算は国の財政状況が厳しい中でも増加している。しかしながら、我が国の大学の財政規模は、国際的に見れば必ずしも十分ではなく、事業規模が縮小している国立大学も少なくない、ということで、データ等も入れております。背景には基盤的経費の逓減があり、研究環境の悪化は学術研究の推進はもとより人材育成にも大きな影響を及ぼしているということでございます。前回、人材育成ということについて少し記述が薄いということもございましたので、いろいろなところに人材育成のところを少し補強させていただいております。
 2ページに参りまして、中ほどになりますが最初の丸は、基盤的経費の減少に加えて、26年度には科研費も減額に転じ、この傾向が続けば、学術研究の衰退と人材育成のメカニズムの崩壊がもたらされ、我が国が築き上げてきた「高度知的国家」としての存在感を維持できなくなることが強く危惧されるということで、危機的状況を打破するために、学術研究による知の創出力と人材育成力を回復・強化することが喫緊の課題ということで結んでおります。
 2ポツ目の持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究のところはほぼ前回の流れでございますが、一つ目の丸で、社会からのイノベーションの期待が高まっているということ、それから、3ページ目に行きまして、イノベーションの本来的意味は、第4期科学技術基本計画によると、学術研究による知の創出、知的・文化的価値の創造と、それらを発展させて経済的、社会的・公共的価値の創造に結び付ける革新という定義をされているということ。
 そして一方で、今日のイノベーションを巡る議論については短期的な議論になりがちということで、様々な危惧があるということ、そして、その丸の最後ですけれども、イノベーションの本来的意味に立ち返ることが必要であるということを記載しております。
 次は、イノベーションにおける学術研究の役割ということで、学術研究で質の高い知を常に生み育て重層的に蓄積しておくこと、また、成果を常に社会に向かって開いておくこと、さらには、様々な立場でイノベーションを担う人材を育成するという意味で、学術研究がイノベーションの源泉そのものであるとしております。
 そして、次の丸で、学術研究もそういったイノベーションの視点を持って社会とのインターアクトを重ね、後述する社会の負託に応えていくことが求められると、2ポツを結んでおります。
 4ページに参りまして、3ポツの社会における学術研究の様々な役割でございます。こちらも前回をベースに少し追加している部分がございます。まず学術研究の特性と致しまして、前回もありました、科学技術・学術審議会総会の定義で戦略研究、要請研究と区別されるものであるということを紹介し、多様性というのが特性であるということを書いております。
 次の丸では、自主性・自律性を前提として質の高い多様な成果を生み出すという学術研究のボトムアップ的な特性。「また」のところは今回追記しておりますけれども、予見に基づく計画のとおりに研究が進展するようなものではなく、予期せぬ結果が生まれたり、思いも付かないブレークスルーが生まれることがあるということ。そして、学術研究による価値の創造には一定程度の時間を要することが多いということ。最後に、以上のような特性も踏まえ、自律的に研究の過程や成果の評価・検証を重ねることで学術研究は発展してきたというような特性を記述しております。
 そして翻って、学術研究の役割につきましては、前回までもありました(1)から(4)でございますが、記述を少し追記している部分があります。特にローマ数字(3)、人材養成のところでございます。前回までは、括弧の中の前段、教育研究を通じて、豊かな教養とそれを基盤とする高度な専門的知識を有し、自ら課題を発見したり未知のものへ挑戦したりする「学術マインド」を備え、広く社会で活躍する人材を養成・輩出という、どちらかといいますと学術研究の場で育つ人材というところのみを書いておりました。それ以上に、「また」のところが今回追記した部分でございますが、自然・人間・社会のあらゆる側面に対する理性的・体系的な認識により、人々に様々な事物に対する公正かつ正当な判断力をもたらし、社会全体の教養の形成・向上や初等中等教育の充実にも寄与しているという、学術研究の人材養成という広い意味のところを追記しております。
 その次に、「国力の源」としての学術研究でございます。こちらは、このキーワードとしてはずっと出ておりますけれども、改めてこういった形で共通認識なのかという御確認を頂きたいと思います。アジア最大の成熟国であり、なおかつ天然資源の少ない我が国では、学術研究から生み出される創造的知見と人材をもって、人類社会の持続的発展や現在及び将来の人類の福祉に寄与するとともに、国際社会において尊敬を勝ち得、存在感を発揮することが、国としての力になる。このように、学術研究は「国力の源」と言えるとしております。それで、学術研究の振興は国の重要な責務であり、また、学術界も社会からの負託に応えていく責任があるというのは従来どおりでございます。
 その次の丸以降は、前回、国力の源として近年では挑戦性とか総合性あるいは国際性が求められているというキーワードだけを書いておりまして別のところに説明があったのですが、それが分かりにくいのでここにまとめた方が良かろうということで、新しい記述になっております。
 学術研究がこのような「国力の源」としての役割を果たすために基本となることは、何よりも新たな知の開拓に挑戦することであると。すなわち、挑戦性。研究者は常に自らの研究課題の意義を自覚し、明確に説明しなければならない。
 それから、次の段落ですけれども、グローバル化や情報化等が加速する中、新たな知の開拓のためには、学術研究の多様性を重視し、伝統的に体系化された学問分野の専門知識を前提としつつも、細分化された知を俯瞰(ふかん)し総合的な観点から捉えること、すなわち、総合性が必要である。
 また、異分野の研究者や国内外の様々な関係者との連携・協働によって、新たな学問領域を生み出すことも求められる。すなわち、融合性であると。融合性につきましては、注意書きをしておりますけれども、その際、融合性というのはそれ自体を目的化するのではなくて、自然と生み出されるものなんだということを書いております。
 「また」としまして四つ目の国際性ですけれども、人文学・社会科学から自然科学まで分野を問わず、世界の学術コミュニティーにおける議論や検証を通じて研究を相対化することによって、世界に通用する卓越性を獲得したり新しい研究枠組みを提唱したりして、世界に貢献する必要があるとしております。
 「このように」ということで最後ですけれども、現代の学術研究には、いわば「挑戦性、総合性、融合性、国際性」が特に強く要請されているということ、そして、とりわけ、次代を担う若手研究者をそのような観点から育成することが重要ということを書いております。
 また、次の丸は、今日、社会的課題解決のための学術研究の役割が期待されている中で、今申し上げた挑戦性、総合性、融合性、国際性というのは、そういった課題解決のためにも不可欠であるということを書いております。
 4ポツに参りまして、我が国の学術研究の現状と直面する課題でございます。こちらにつきましては前回と構成を少し変えております。まず第1に、現状としてこれまで成果を上げてきたことに言及するべきだろうという御意見がございまして、我が国の強みを形成してきた学術研究ということで、これまで様々な成果を上げて我が国の強みも形成してきた、そのこと自体改めて評価されるべきであるとして、7ページに様々な成果の例を挙げております。
 次に、学術研究に対する厳しい見方としまして、一方で、近年の論文指標の国際的・相対的低下などを受けて、投資効果が上がっていないのではないかという厳しい見方があったり、「また」以下にありますような、様々な厳しい指摘があるということ。
 次の丸で、ただし、これらの指摘の中には、必ずしも正しい現状認識に基づいたものとは言えないものがあるということで、研究費部会の例も挙げておりますけれども、8ページに行きまして、そういった点については社会に対してしっかりと説明、発信していくことが求められる一方で、これらの指摘等の背景にある学術界の発信不足や研究不正等については学術界が猛省し、全体として対応策を講じなければならないとしております。
 次に、学術研究を巡る課題として書かせていただいております。そういった誤解もあるのですが、このような指摘等が提起している問題として、学術研究自体にとっても社会からの期待という観点からも極めて重要かつ本質的な学術研究の現代的要請に関わる部分で、我が国の学術研究は脆弱(ぜいじゃく)な面があるのではないかという問題を提起しており、その根底には、国と学術界双方の資源配分における戦略の不足があると考えられるのではないかということで、以下、詳述となっております。
 まず次の丸は、我が国の大学は「デュアルサポートシステム」で支えられてきたということ。その次の丸で、そのデュアルサポートシステムの現状について、大学関係者からは、システムにゆがみが生じているというような批判がなされている一方で、大学の外からは、基盤的経費の配分が固定化したり、有効な資源配分がなされていないのではないかという批判があるということ。
 それらの二つの批判については、大学において、全学的視点に立って資源配分を行うマネジメントシステムをより良く機能させるべきという問題意識では共通しており、「その根底には」として、(1)(2)(3)、政府、大学、学術界のいわば戦略不足ということを挙げております。
 すなわち、(1)と致しまして、政府として、予算・制度両面にわたって、学術政策、大学政策、科学技術政策間の連携が乏しく、例えば、基盤的経費、科研費、科研費以外の競争的資金について、学術研究の総合性や融合性を高めたり、国内外の優秀な若手研究者を育成・支援したりするために、それぞれの改善・充実や役割分担・連携の明確化を図るといった取組が十分になされてこなかった。
 また、(2)として大学側の課題ですけれども、明確で周到な戦略やビジョンに基づき、自らの教育研究上の強みの明確化と学内外の資源の柔軟な再配分や共有を図り、分野、組織などの違いや国境を越えた学問的卓越性の追求や、若手研究者の育成を戦略的に行う機能が十分に働いてこなかったということ。
 そして、(3)と致しまして、(1)・(2)と相まって、また、その帰結として、研究者や研究者コミュニティーの意識が短期的視野で内向きになっている側面もあり、分野や国境を越えた新たな知への挑戦を行ったり、学術界が責任を持って次代を担う研究者を育成したりするための戦略的な対策が講じられてこなかったという3点の課題を挙げております。
 そして、最後に、学術研究の現場の疲弊等についてですけれども、その結果として学術研究の現場でこういった現象が惹起(じゃっき)されていると。すなわち、一つ目は、従来から挙げております負の循環、そして、二つ目は競争的資金の獲得の自己目的化とか研究時間の減少の話、そして、3番目は若手研究者がプロジェクト経費によって雇用されることが多いことから、経費を獲得しやすい分野に集中してしまっているということ。それから、四つ目に、大規模な競争的資金の中には、学問的な卓越性の観点が必ずしも十分でなく、研究者の意識に悪影響を与えていると指摘されているものもあるということ。それから、最後ですけれども、国際性についての現象も入れた方がいいのではないかということで、柔軟な人事給与制度や研究支援体制の面で国際化への対応が遅れ、優秀な外国人の招聘(しょうへい)や国際共同研究等が進んでいないということを挙げております。
 これを踏まえまして、5ポツ、ここは記述が今回新規でかなり入っておりますので、御確認いただきたいと思います。今のような課題等を踏まえ、課題を克服し、学術研究が社会における役割を十分に発揮するためにということで整理をしております。
 まず導入のところですけれども、このような状況の中でも多くの研究者が卓越した教育研究活動に取り組んでいる。こういった研究者やそれに続き次代を担う若者をエンカレッジし、学術研究が3.で述べたような社会における本来的役割を十分発揮できるようにするために、(1)として基本的な考え方を挙げて、それに基づき、(2)のような取組を推進するとしております。
 (1)の基本的な考え方でございますが、まず学術研究の多様性を重視しつつ、挑戦性、総合性、融合性、国際性といった現代的な要請に着目し、多様性を進化させることで、卓越知の創出を加速し、学術研究の本来的な役割を最大限果たせるようにする。そのため、研究者の自由な発想を保障し、創造性を最大限発揮できる環境を整備するという前提に立ちつつ、これまでの慣習にとらわれず、資源配分の思い切った見直しを行う。
 次の丸は、若手研究者については柔軟な発想で多様な知の可能性に挑戦したり、国際的な研究者ネットワークに参加したりする一方で、中堅・シニアについては学術界の先駆者として、率先して既存の伝統的な学問分野の枠を越えた領域の開拓を先導したり、若手研究者をエンカレッジするなど、各研究者の学問的・社会的ステージに応じた役割を意識し、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して施策を展開する。
 3番目に、学術研究の役割として、広く社会で活躍する人材を育成し、教養を形成するということを重視するということ。
 4番目に、学術研究が広く社会一般に支えられていることに留意し、社会とのインターアクトを強化するということを記載しております。
 こういった基本的考え方の下に、具体的な取組の方向性というのが(2)でございます。こちらは、前回の資料では別紙としていろいろな箇条書をしていた部分、あるいは別途頂いた御意見等をまとめたものでございます。
 まず第1に、デュアルサポートシステムの再構築でございます。以下のような観点から、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して再構築に取り組むということです。
 2番目の丸は、運営費交付金等の基盤的経費でございます。大学等において、明確なビジョンや戦略を立て、自らの役割を明確にした上で、当該戦略等を踏まえ基盤的経費を配分することにより、その意義を最大化すべきである。例えばとして、人事給与システムの改革とか、強い分野についての大学院の課程の形成、それから、11ページのポツですけれども、大学事務局改革あるいは大学のガバナンス確立と教育研究組織の最適化、それから、機関内外での共同利用・共同研究の一層の促進、あるいはキャンパスや施設についての知的交流の促進のための取組などのために、学内外の資源の再配分や共有を行うことが求められる。このような大学の取組を前提として、国は基盤的経費の確保・充実に努める必要があるとしております。
 次の丸は科研費についての記述でございます。「これまでも基金化の導入など学術の発展の観点から様々な改革を行ってきたところであるが」ということで、更なる充実を図るための改革のことを書いております。まず1ポツですけれども、よりシンプルでオープンな仕組みによる多様な学術研究の推進等を促進するため、分野横断型・創発型の丁寧な審査の導入や応募分野の大括(くく)り化等。それから、学術動向調査などの学術政策や科学技術政策へ反映、あるいはイノベーションにつなげる科研費の研究成果を最大限把握・活用するためのデータベースの構築等。また、国際共同研究や海外ネットワークの形成の促進。四つ目に、卓越した若手、女性、外国人、海外の日本人など多様な研究者による質の高い学術研究支援の加速などの改革に、研究者としてのステージや学問分野の特性などにも配慮しつつ取り組むことが必要であるとしております。「なお」としまして、「学術研究助成基金」については、研究費の成果を最大化する観点から充実を図るとしております。
 次の白丸が、科研費以外の競争的資金でございます。それぞれ目的や役割は異なるが、上記(1)で示した基本的な考え方を一つの横串として位置付けて改善を図ることが、結果としてはそれぞれの競争的資金の目的の最大化につながるという観点から、総合科学技術会議において政府全体の立場でその改革について議論する必要があるとしております。
 次の見出しが、若手研究者の育成・活躍促進の関係でございます。こちらは前回の別紙のところを文章化しておりますので簡単に御説明しますけれども、若手研究者が単なる労働力ではなく、自ら主体的に課題を設定して挑戦的な研究に取り組むという観点から、学術界全体が若手研究者を育てる意識を共有し、研究機関における自立した研究に必要な環境の整備やシニア研究者等による若手研究者のエンカレッジなど、自立を促しつつも適切にサポートする体制を構築する。
 次の丸は、若手研究者の国際性を高めるということで、若手研究者が将来的に国際的な学術コミュニティーにおいてリーダーシップを発揮するために、国際的な研究者ネットワークの形成や国際シンポジウム等の中心メンバーとしての参画を積極的に促進する。そのために、海外特別研究員制度などにおいて、そうした観点からの審査を充実するなどとしております。
 13ページです。安定的なポストの確保ということにつきまして、大学等研究機関の人事・組織の在り方を見直すとともに、客観的で透明性の高い審査による能力・業績評価に基づき、優秀な若手研究者を積極的に登用するなど、適切な処遇を講じることが必要としております。
 13ページの2つ目の丸ですが、意欲と能力のある博士課程の学生や若手研究者の経済的支援の充実、また、そういった人材が広く社会で活躍できるよう、例えば、これらの人材に対して異分野や異業種との交流を通じた教育を行うことなどにより、キャリア開発を促すことも必要であるとしております。
 その次の見出し、多様な人材の活躍促進につきましては前回記述がなかったところでございますが、女性研究者、外国人研究者についても多様性という観点からは必要なことであり、記述が必要であろうという御意見がございました。
 まず一つ目の丸は、女性研究者の活躍促進ということで、特別研究員(RPD)の支援の拡大など、女性研究者の研究と出産・育児・介護等との両立、あるいは研究活動を主導する女性リーダー(PO等)の活躍推進を図るための支援の強化やシステム改革などを進めていく必要がある。
 次の丸は外国人の話です。外国人研究者の戦略的な受入れや国際的な研究ネットワークを構築することにより、大学等研究機関における国際化や多様性を確保するとともに、国際的な頭脳循環のハブを形成することが重要としております。
 その次の見出しは、共同利用・共同研究の充実等でございます。こちらも、前回別紙でお示ししておりました研究環境基盤部会での議論を中心に整理しているところでございます。
 一つ目、二つ目の丸は、共同利用・共同研究が非常に有効なシステムであるということを書いておりまして、様々な役割が期待されるということでございます。
 14ページに参りまして、大型プロジェクトについても、マスタープラン、ロードマップという透明性の高い一連のプロセスがシステムとして構築されている。
 二つ目の丸で、こういった国全体の学術研究の発展に向けた共同利用・共同研究体制の一層の強化ということで、各組織が連携して相互の強み・特色を更に発展させるネットワーク型研究拠点の形成の促進、国際共同研究の推進に向けた抜本的な体制整備、自由で自律的な研究環境の下での若手研究者の育成、さらには、全国の研究者コミュニティーの合意に基づく各分野の学術の大型プロジェクトを推進していくことが必要等としております。
 次に、学術研究を支える学術情報基盤の充実等でございます。学術のボーダーレス化、グローバル化が進む中で、全ての学術研究の推進において、学術情報の流通・共有のための基盤整備が不可欠になっているということで、これまでもSINETが中核となり、学術の振興に大きな貢献をしてきたということでございます。最後の段落で、関係する大学等の合意の下、全国の学術情報基盤を担う組織が一体となって、我が国の学術研究推進における動脈としての学術情報ネットワークの強化を国内・国際回線ともに図る必要がある。その際、最新の情報学研究の成果を基に、情報資源を仮想空間で共有することにより研究プロセスの圧倒的な効率化とイノベーションをもたらすクラウド基盤の構築、深刻化しているセキュリティ機能の強化、学術情報の活用基盤の高度化を併せて実現することが望まれるとしております。
 また、次の丸はジャーナルの関係です。日本の優れた研究成果の発信・普及において、重要な役割を担っている学術雑誌についてということで、15ページに参りまして、日本発のリーディングジャーナルを育成するために、海外への情報発信力を強化する学協会の取組を支援するなど学術情報の流通促進を図る科研費等の取組強化が必要である等としております。
 最後に、学術界のコミットメントと致しまして、以上のような改革を推進するに当たっては、学術研究が研究者の自律的な知的活動である以上、学術界の覚悟に基づくコミットメントが不可欠である。
 次の丸ですけれども、これまでも学術界は様々なコミットメントを果たしてきたということで、今後はより一層責任を持って、分野の利害を越え、上記のような制度設計や審査、評価に参画するとともに、伝統的に体系化された学問分野を踏まえつつ、異なる分野や組織と柔軟に連携して新しい学問分野を創出するという未来志向のコミュニティー文化を確立するなど、更に積極的なコミットメントを行い社会からの負託に応える必要があるとしております。
 例えばと致しまして、マスタープランにつきましては、仕組みを構築したということで国民の理解を得る観点からも特筆すべき取組であるということで、今後はさらに、学術界が各分野から提案された計画に対して学問的卓越性を軸として審議を行い、未来社会における学術研究の姿を明確に捉えるものとなることが期待されるとしております。
 「更に」というところは、学術界は学術研究の社会における本来的役割を十分に認識し、自律的な評価と見直し、研究倫理を醸成するための研究倫理教育の徹底等により、学術研究の質を保証することが必要である。また、社会の中の学術研究として社会との対話を重視し、学術研究の意義や役割、成果等について実態に即して分かりやすく説明する必要がある。社会・国民とのインターアクトを強化すべく、民間のノウハウにも学びながら、例えば、ソーシャルメディアを一層活用することや、研究機関の枠を越えた横断的な情報発信などの取組を推進するとともに、これらを積極的に評価、奨励していく仕組みが必要であるとしております。
 最後に、何より重要なことは、学術界が過去の実績のみに頼らず、研究者の意欲や発展可能性など未来志向の観点に基づいて評価を行う制度を確立し、優秀な研究者を伸ばす一方で、多様な学術研究の役割のいずれをも担うに至っていない研究者を見逃さないという峻烈(しゅんれつ)さを示し続けることである。そのため、卓越した研究活動の推進、研究組織の統率、体系的な教育活動の推進等、各研究者のステージ等に応じて期待される役割への貢献度に応じ、メリハリのある処遇を行うことが重要であるとしております。
 説明が長くなりましたが、以上でございます。
 なお、参考資料と致しまして、資料2にバックデータ等を載せておりますので、適宜御参照いただければと思います。

【西尾主査】  
  どうも説明ありがとうございました。前回までの委員会、また前回の委員会以後も皆様方から貴重な、また具体的ないろいろな意見を頂きまして、それを集約する形で今回の審議経過報告(案)を作成した次第でございます。
 先ほど申しましたけれども、今日の委員会のタイミングを御勘案いただきまして、積極的で、またできましたら可能な限り具体的な形での御意見を頂きますと非常に有り難く存じます。何か御意見等ございましたら、挙手のほどをお願いいたします。
 伊藤先生、どうぞ。伊藤先生に関しましては、机上配付の資料がございますので、それを御参照いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【伊藤委員】  
  すみません、ありがとうございます。発言させていただきます。意見が少し常識を外れているかもしれませんので、もしそうでしたらどうぞ情状酌量してお考えください。
 まず一つは、8ページ、9ページ辺りのところでございます。まずポスドク問題が明示化されていないというので、今、ポスドク1万人計画が2万人程度にまで増えて、それに対応いたしまして、同世代の常勤の大学職員は減少しております。これは文科省の資料でパーセンテージは出ております。ですから、掛ければ絶対値は出るはずです。比は出ると思います。これは事実なので、事実を書いてほしいということです。
 その中で、ポスドクが相当の研究を手伝っているにもかかわらず、キャリアパスが確立できていない。今、もうアメリカ的になってきて、ポスドクは研究者なんですね。そこをちゃんと考えるような制度にしていかなくてはいけないのではないか。労働契約法が変わったからといって、それは抜本的な話にはなっていない。これは解決策は書いておりません。事実だけです。9ページのところです。
 もう二つ、今度は15ページのところでコミットメントの前のところでございます。一番最初の会合のときに西尾主査が、評価の仕方を変えた方がいい、何か考えた方がいいとおっしゃったことに対応すると思うんですけれども、例えばトムソン・ロイターとかタイムズとかいろいろありますけれども、要は、それをちゃんと吟味して、上海みたいに日本の評価基準みたいなものを作るということまで考えに入れた、そういうような評価をすべきだと。それには時間が掛かるでしょうけれども。
 どういうことかと申しますと、附帯資料に付いておりますけれども、RU11でトムソン・ロイターのでリージョナルファクターを変えたらどのように順位が変わるかが書いてあります。次のページで矢印が上に行ったり下がったり、リージョナルポイントを変えると順位が変わるという例で、いろいろな評価の仕方によって順位は変わるものだと。要は、順位をもし上げるんだったら、自分のサイエンスで自分で評価しないといけないだろうというのが第2点でございます。それが15ページのところで、長期的には日本から新しいグローバルな発信をするというようなことができれば、例えばトムソン・ロイターから買ってきて、上海があるように、文科省でもいいですし、何かそんなことまで考えてもいいんじゃないかということです。
 もう一つ、その次は、これもまた常識的じゃないんでございますけれども、学術行政側にも行政の組織の強化をしてほしいというお願いでございます。真ん中の方でちょうど、「その根底には、国と学術界双方の資源配分における戦略の不足があると考えられる」というのが途中のところで書いてありました。それに対応するものとして、例えばURAとかそういうものを大学内の事務局に配置せよというような話がありましたけれども、これは文科省の中でも同じようなことが言えるのではないか。だから、そういう組織を作ってくれというお話でございます。そういうところとスタッフが日本国中をぐるぐる回れれば、それは非常に良くなるのではないかと。これもちょっと言い過ぎの表現かもしれません。
 最後はエシックスの問題です。不正の問題というので、ここは皆さんももっといい言葉があると思いますので、一応書いておいたというところでございます。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  
  どうもありがとうございました。
 まず4つ目の研究倫理のことに関しましては、日本学術会議でも非常に重く受け止めておりますので、記述の中で学術会議でもこういう動きがあるということは是非参照しておくべきかと思っています。
 1番目のポスドクに関することは、濵口先生が以前の委員会においてもいろいろおっしゃられたことです。ポスドク1万人計画は、平成8年頃に計画されたので時期的には大分以前なのですけれども、現時点においても深刻な問題です。これを審議経過報告に何らかの形で強く記述するということが必要かと思いますが、濵口先生、また後で御意見いただければと思います。
 2番目の御意見で、評価においてトムソン・ロイター等のビジネスとして行われている評価指標が重要視されているということに対して我々学術界がどう対応していくのか、客観的な観点からどう物申していくのかということは重要なことだと思います。インパクトファクターとかサイテーションインデックスだけが評価の基準ではないということについても学術審議会の総会等において、科学技術・学術政策研究所からの報告がありました折に、委員の方々からもいろいろ意見が出ておりました。そこで、本件に関しましてもどういう形になるか分かりませんが、何らかの形で言及することができたらと考えています。
 あとは、学術行政基盤の充実となりますと、これについて、小松局長、どう考えたらよろしいでしょうか。

【小松研究振興局長】  
  発言を求められておりましたですね。(笑)これは二つの問題があるかなと思って今伺っておったんですけれども、一つは、博士号を持った人、そういった訓練を受けた人をどう行政組織において活躍していただくかというのは、学術行政基盤だけではなくて日本全体の問題であろうかと思います。民間企業においてもそういったことは非常に強く言えると思います。それから、国際機関でしばしば日本がリーダーシップを発揮し切れないということの原因に、そういった分野でのいわば博士号を持った人の確保、あるいはその中の優秀な人の確保の道が非常に遅れているということも言われております。そういう意味では、全体として社会的に博士号を取得した、いわば学問的知的探求の訓練を受けた人をどのように活用するかという意味で本質を突いた問題だろうと思っています。
 それから、二つと言いましたのは、もう一つは学術研究そのものが、それぞれの分野が専門性が非常に高いものに対してどういうふうに一般とつなぐかという問題がございます。これについても工夫が必要なんだろうと思います。最近で申し上げますと、例えば学術振興会に科研費を大きく移管したというのも、前は文部科学省で事務官において行うということに致しておりましたけれども、そういう観点から1,000億オーダーのお金を移し、更に学振の中に専門家集団、研究者の集団から成るセンターなりチェックの仕組みを作っていくというふうに、そういうことが導入されているわけであります。
 したがって、その二つの意味で、つまり、この中には一般論として書いてあります、社会における博士号取得者のキャリアパスの問題の反映としての話と、それから、学術行政における専門性に、それぞれ一般行政と専門行政との間をつなぐ、より良いルートをどう見付けるかということは一つの課題かなと思って聞いておりました。そういったことは非常に工夫していく余地のある重要なことではないかと考えます。

【西尾主査】  
  ありがとうございました。それでは、濵口先生、先ほどのポスドクのことで、伊藤先生が御指摘になっておられることに関する記述をする場所のことも含めてお願いいたします。

【濵口委員】  
  ここら辺でいいと思います。それで、問題は、私どもが調査したときに、1万7,000ぐらいいるうちの10%ぐらいがたしか40歳以上になっている。相当深刻化していますね。出口が見えない方が随分増えている。その要素の一つとして、バイオ系が4割ぐらいいるんですけれども、企業の研究者を調べるとほとんどが工学系で、ここに一つ大きなミスマッチがある。ただ、そのミスマッチをミスマッチとしてネガティブに評価してしまうと力は出てこないんですが、バイオ系で育った人を異分野に就職させるような丁寧なサポートがあれば、融合型研究とかこういう言葉が実際に社会の現場で生きてくるシステムができるはずなんです。そういうポテンシャルがあるんですが、それを積極的に展開するサポートがないということが非常に大きな問題ではないかと思います。

【西尾主査】  
  どうもありがとうございました。
 そうしましたら、安西先生、どうぞ。

【安西委員】  
  今、伊藤委員がランキングのことを言われました。小松局長からも日本学術振興会にリファーしていただいて、また、濵口委員がポスドクのことをおっしゃられましたので、それに関連して申し上げたいと思います。
 一つ目は、ランキングについてです。外の言わばコマーシャルベースの機関が評価をするのではなくて、やはり我々自身が学術の評価をしていかなければいけないと思います。日本学術振興会は、人文学・社会科学から自然科学に至る全ての分野にわたって科研費等のサポートをしております。学術システム研究センターでは、我が国の優れた研究者約百数十名を中心に、全て非常勤ですが、ピアレビューの審査体制を確立させております。
 審査委員は科研費だけで数千人リストアップされておりますけれども、審査委員それぞれについてバイアスの掛かっていない審査をやっていただいているかどうかチェックも行っております。特に、大学の研究者等と振興会がタイアップして、しっかりとした体制で安定的に、また、公平、公正に進めていくことが学術界の責任だと思っております。ピアレビューをしっかりやることが大事だということは是非とも申し上げたいと思います。
 二つ目は国際関係のことです。国際共同研究等についてこの報告案にも多く取り上げられておりますけれども、世界各国に学術振興を担う機関があります。その各国の代表機関の連携の会合が行われており、Global Research Council(GRC)という世界をカバーした組織がございます。来年、2015年の5月末に開かれる第4回会合を日本学術振興会と南アフリカのナショナルリサーチファウンデーションの共催でもって東京で開催することが決まっております。また、科学技術振興機構にも御協力いただくことになっております。
 このGRC、Global Research Councilでの議題は、まだ決まっていないのですけれども、特にサイエンティフィックブレークスルーの問題や人材育成の問題を東京会合で取り上げていきたい、検討していきたいと考えております。今年は5月末に中国とカナダの共催で行われることになっております。いずれにいたしましましてもGRCのアニュアルミーティングを東京に誘致しているところでございます。
 それを一つのきっかけとして、国際共同研究、国際研究の支援のネットワーク、それから、そういう中でも、私は、日本の若手研究者の育成、融合分野の育成ですね。世界は相当ダイナミックに学術の世界も動いているわけです。なかなか日本の中にいるとそういうことが息吹として感じられないので、特に若い研究者の育成や、融合分野の育成にGRCを一つのきっかけにさせていただきたいと思います。また、大学における学術活動の国際化についても進める時期だと考えております。世界的な頭脳循環の仕組みの形成についても、GRCのような組織的な活動が役に立っていくのではないかと思います。
 GRCにつきましては、アメリカのNSF、それから、ドイツのDFG、それから、イギリスのUKRC、それから、日本のJSPS等が主導している形になっております。国力の源と申し上げたのは、そういう中で一種の外交的なこともかなりやっておりますので、そういった背景を持ってのことでございました。そういう中で私は、日本の学術がオープンに国際的な場でもって評価されていくということも大事なのではないかと思っております。以上のことを是非取り上げていただければと思います。今までの先生方のお話とも関連するのではないかと思います。
 それから、もう一つだけ、基金化のことです。学術研究助成基金と言われますけれども、いわゆる科研費の基金化の問題につきましては、研究者から大変評判がいいといいましょうか、使い勝手が良いというふうに言われております。ただ、種目をやっぱり拡大しないといけないと考えております。新学術領域あるいは基盤S・A等々、特推もそうですけれども、基金化はなされておりません。そういったことも是非お考えいただければと考えております。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  
  どうも貴重な情報、更に世界の動向も含めた御意見ありがとうございました。
 ほかに御意見はございますでしょうか。
 鈴村先生、よろしくお願いいたします。

【鈴村委員】  
  今回提案された案は、これまでの議論を踏まえて整理されてきていると思います。更に改善して最終案にするための具体的なコメントを、数点申し上げたいと思います。
 第1点は、報告書のスタイルに関わります。第1節で「危機に立つ我が国の学術研究」と書かれていますが、ここで列挙されている危機状況は、学術世界の外部で起こってきた問題を危機として認識して、それにどう対処するかということに限られています。どんな場合でもそうですが、組織の危機には、外在的な要因によるものと、内在的な要因によるものがあって、そのいずれに対しても適切に対応しない限り、組織は全体として危機状況から脱出することはできないわけです。
 学術世界に関しても、危機状況の内在的要因をつかみ出して誠実な対処措置を考案すること、その意味で学術コミュニティーが危機の克服にコミットする姿勢を、この文書内で書いておくべきだと思います。これが私の第1点です。
 第2点目は少し細かくなって修文に類するところもありますが、この文書を平易にして一般の理解が得られるようにするためには、それなりに重要だと思います。まず、6頁の第2パラグラフの1行目の最後に「学校種などの違い」という表現が登場します。私には学校種という表現そのものがよくわかりません。8頁目の下から5行目にも「分野、組織などの違いや国境を越えて」と、多少関わり合いを持ちそうな表現がありますが、そこには学校種という表現は登場しません。念のためにチェックして、表現を整理していただきたいと思います。次に、7頁の下から5行目には、「東日本大震災を契機に科学者に対する国民の信頼の獲得が課題になっている」と書かれています。今更科学者に対する国民の信頼の獲得が課題だとしたら、むしろ大変なことです。これまで科学者は国民の信頼を得ていなかったことになってしまうからです。事実は、学術に対して国民の信頼と負託があったからこそ、この国で学術の支援のために大きな財政負担が容認されてきたと考えるべきです。現在の危機状況は、東日本大震災を契機にして、また学術研究の成果の公表を巡って、学術に対する国民の信頼に、大きな揺らぎが生じていることにあると思います。ここは「信頼の獲得」ではなく「信頼の回復」と書くべきです。たった一語の修正ですが、文書の位置付けの観点からは重要な点です。次に、10頁の下から2行目には、「我が国が世界の先頭を走っている分野」という表現が登場します。お怒りになる方もおられるかもしれませんが、「先頭を走っている」という表現には傲慢な響きが伴います。この文書では「先頭を競っている」程度にモデストな表現を用いる方が、無用な誤解を避けられるのではないかと思います。さらに、12頁の最初で「科研費以外の競争的資金については」と書かれている箇所の4行目に、「政府全体の立場でその改革について議論する必要がある」と書かれています。この文脈において「総合科学技術会議において」と限定すべき理由は何かというのが、私には疑問です。総合科学技術会議では、人文社会科学は自分たちの検討対象ではないとはっきり宣言されているだけに、この書き方は不必要な誤解を招くと思います。人文学・社会科学と自然科学の補完的な意義を強調してきた学術審議会の文書である以上、この箇所は単に「政府全体の立場で」と言い切って無用な混乱の根を断っておくべきだと思います。最後に15頁です。この頁の一番上に、日本発のリーディング・ジャーナルを育成するという主旨のことが書かれています。この悲願を念頭において従来から多くの試みがなされてきたことは私も承知していますが、その実現が困難である理由は、使命感をもって取り組まれる方の努力はあっても、日本発のトップ・レベルの研究がなかなか投稿されてこないという点にありそうです。日本の学会のトップ・レベルの研究は国際的に確立されたジャーナルに投稿され、日本発のジャーナルは若手研究者の登竜門的な位置付けに留(とど)まる傾向を拭い難(にく)いようです。この傾向が事実であるのなら、国際水準のリーディング・ジャーナルを国内に育成するという目標の実現は、単に財政支援の拡大ではとても手が届かず、まさに日本の国内学会の取り組み姿勢が全体として問われることになると私には思われます。
 もうひとつ重要な点を指摘する手掛かりとして、迂遠(うえん)なようですが私の専門分野の国際誌を立ち上げた経験に触れさせていただきます。三十数年前のことですが、私は国際学会を設立したことがありまして、その後大きな学会に育ってくれました。学会創設の会議では、出席者は学会の設立には全員一致で同意したのですが、同時に学会の機関誌を作るという提案には意見が割れました。私は反対でした。その反対の理由は、新たな分野を確立する際に、我々は自分たちのサンクチュアリ(聖域)を作って、そこを自分たちの籠もれる基地にするような防御的な活動をするべきではないと考えたことに尽きています。私には経済学の世界のトップ・ジャーナルにおける競争の場で、自分たちの研究領域の存在意義を確立してこそ、学会が存在することの意義が国際的に認知されると思われたからです。
いろいろな経緯で学会の専門雑誌はでき、それなりに重要な雑誌に育ちました。しかし、この分野の最善の研究成果はやはりトップ・ジャーナルに発表されて、学会の機関誌には世界のトップ5誌で確立された研究のフロンティアを一歩後から追いかけるーー堅固ではあるがトップ・ランナーとは言い難いーー研究に、発表の場を提供する位置に落ち着いたように思われます。これはこれで大事な機能であり、私はこの学会のプレジデントや雑誌のエディターを務めたことを誇りに思っていますが、日本発のトップ・ジャーナルという表現に私がリザベーションを置かざるを得ない理由になっています。
 最後の1点は、文言としては小さいけれど、持つ意味は大きいかもしれません。3つ目のマルの3行目に、「コミュニティー文化を確立する」と書いてあることに、私は引っかかりを覚えます。文化を「確立」することが、学術政策によって果たしてできることなのか、あるいは、意図すべきものなのか、私は気掛かりです。学術分野における文化とは、学術活動の中からスポンテイニアスに誕生する意識と行動の規範が、学術コミュニティーに共有されて事後的に文化と呼ばれるものであり、本質はそれに尽きるのではないかと思います。以上です。

【西尾主査】  
  本当に貴重な示唆に富む御意見を頂きまして、どうもありがとうございました。今頂きました御意見を真摯に考えまして、この審議の報告に反映していきたいと思います。
 羽入先生、どうぞ。

【羽入委員】  
  鈴村先生の御意見に聞き入っていたんですけれども。1つ、もし私の誤解でなければ提案したいことがあります。この学術研究という言葉が指す範囲がどういうものかということが、ある程度共有されてきたのではないかという気がいたします。その際に、政策研究や、それから開発研究と違うという差異化がなされているように思われます。それで正しいのかどうかということが、まず確認が必要かと思いますけれども。この今日の資料の中の3ページに、イノベーションにおける学術研究の役割ということで、学術研究はイノベーションの源泉そのものであるという言い方がなされています。そうしますと、やはりこれをずっと貫いて表現していくと分かりやすいのではないかというふうに考えまして、3点この観点からの修正といいますか、表現の追加を提案したいと思います。
 1つ目は9ページです。9ページの5.の最初のマルのところですけれども、その4行目。「このような研究者やそれに続き次代を担う若者をエンカレッジし」、その次、「学術研究がイノベーションの源泉として、3.で述べたような社会における本来的役割を発揮するようになる」とすると、その前に言っていることとのつながりがよいように私には思います。
 それからもう一つは、12ページです。12ページのところでも、戦略研究や要請研究とのことが書いてありますけれども、最初のマルの一番最後の段落、「一方で」で始まっているところです。「相互の連携を図ることが重要であるが、学術研究等の効果的な連携を行うためには」となっていて、これが相互の連携というか、関係がここには示されていないのですが、例えばこういう表現にすると分かりやすくなるのではないかというふうに思いました。「連携を図ることが重要であるが、戦略研究や要請研究は学術研究を基盤として初めて可能であるので、両者の効果的な連携を行うことが必要であり、そのためには」というふうにしていくと、相互の関係が明示されるのではないかという気がいたします。
 それともう1点、これも少し関係することですが、14ページです。14ページの学術研究を支える学術情報基盤のことです。そこの最初のマルですが、これは私の誤解でなければということで提案したいと思いますが、「学術基盤の不断の維持が重要であることについても忘れてはならない」というところです。その2行目に、「全ての学術研究の推進において」とありますが、これは今のような区分けの仕方をすると、学術研究に限らず、戦略研究や要請研究の基盤でもあったのではないかというふうに思いますので、ここにその2つの研究をつけ加えてもよいのではないかというふうな感じがいたしました。
 全体の流れの中で、学術研究を常に明確にしていくということを考えた場合の提案です。

【西尾主査】  
  羽入先生、本当にどうもありがとうございました。今頂きました御意見も本当に貴重な御意見でございまして、是非反映をさせていただきたいと思います。
 柘植先生。

【柘植委員】  
  2点、ちょっと異質なことで意見を申し上げたいと思います。1つは11ページの国際共同研究や海外ネットワークの形成の促進ということで、先ほど安西委員がおっしゃったことと関連しますが、少し細かい話ですが、いわゆる国際共同研究や海外ネットワークの形成の促進というだけでは、なかなか研究者個人から見ると、そこまで努力するインセンティブが働いていない。大型国際共同研究については、この14ページのところで触れていて、14ページの上から2つ目のマルですね。国際共同研究は高エネ研など組織的には非常に活発化されていますが、個人としては、この11ページのところの海外ネットワークの形、これがなかなか進んでいなくて、「促進」という記述だけで終わっては、なかなか掛け声だけで進まない恐れをかねがね思っています。
 ここで是非、促進に向けた制度改革とか、なぜ促進が進まないのかという本音まで踏み込みたいんで、表現としては「形成の促進に向けた制度改革等」ぐらいにまで踏み込んでしてほしいです。つまり、安西委員がおっしゃったように、来年のグローバル・リサーチ・カウンシルでサイエンティフィックブレークスルーと、あと人材育成とありましたけれども、多分そこまで踏み込んでいただかないと、なかなか現場がそこまで踏み込めないと思います。非常に細かいですけれども、そこが1点提案です。
 もう一つ、大きな話なんですけれども、先ほど鈴村委員もおっしゃったように、前回に比べると、全体として完成域に達してきたのは、特に私は10ページぐらいから、具体的に学術研究や社会における役割を十分に発揮するためにというところに踏み込んで、前回から随分議論が出た、学術という論理に加えて、大学の持っている教育の使命、すなわち大学政策と、それから科学技術政策、10ページの一番上3行目、と連携して政策を展開するということのコミットメントというか方向、まさに基本的な考え方を打ち出してもらったというのは、これはある意味では画期的だと思います。研究振興及び、科学技術・学術審議会じゃないと、こういう視点は持てないと私、自負してもではないかと思います。
 この後、ずっと具体的な取組の方法に展開をしていっておりますが、ストレートに言いますと、ちょっと産業的に見ると、総花的で、誰が責任を持って進めていくのかというのが見にくいまとめ方になっているぞという批判を、後で浴びることを覚悟せねばならないと思います。しかし、今そのミッションまではなかなか書き込めないなと思います。
 したがって1つの提案は、我々としては越権行為かもしれないですけれども、提言の最後に、「科学技術・学術審議会及び関連部会は、以上の学術及び科学技術の社会における役割を十分に発揮し続けるために、学術政策、大学政策及び科学技術政策を継続的に連携させることを努める」と、こういう包括的なコミットメントをしていただくと、それぞれの部会はやっぱり1つの宿題をコミットしたんだということで、継続的に努力せざるを得ないと思うので、何かそういうようなことで、後で誰が何するのかということに対しては包括的にコミットメントしたらどうかなと思っております。以上です。

【西尾主査】  
  柘植先生からの1つ目の御意見に関しましては、是非反映させていただきたいと思います。2つ目に関しましては、16ページからなる今回の審議経過報告の案の最後のところで、マルの項目を新たに設けて、今、柘植先生からおっしゃっていただいたことを記述するということでございますけれども、何か特段御異議があるとか、問題があるとかいうことはございますでしょうか。

 どうぞ。

【小松研究推進局長】  
  貴重な御意見、そういうふうな格好。今御指摘いただいた10ページ目は、もともと議論からしても微妙なところがあるんですけれども、10ページ目の注にありますように、科学技術・学術、更にもうちょっと広げて人材育成の観点から、ずっと連続して考えるべきだというような御議論も含めて書いておりますので、その中でも、科学技術・学術審議会がどういうふうに振る舞うべきかということを言及されるというのは、十分位置付け、我々の整理でも可能かと思いますけれども、位置については、ちょっとまた御相談させていただきたいと思います。
 というのは、今まで御議論いただいていることのまとめからしますと、一番最後、一応学術界のコミットメントというところへきているのは必ずしも偶然ではないので、ここに書くのが、そうだとすると、コミットメントと分けて「おわりに」みたいな話になるか、あるいは今の10ページ目のところに、教育も含めて全体のパースペクティブが書いてありますので、その中に位置付けるというのも1つの方法かと思いますので、今の御趣旨を踏まえながら、ちょっと事務方としても整理をして、位置などについては整理をさせていただけると有り難いかなと考えております。

【西尾主査】  
  柘植先生、位置に関しましては、私も今、小松局長おっしゃられたことと同じことを感じていた次第です。位置に関しては、今頂きました意見のようなことでよろしゅうございますか。

【柘植委員】  
  はい、結構です。

【小安主査代理】  
  今のお話ともちょっと関係しますが、先ほど鈴村先生が学術界の覚悟ということをおっしゃいました。これまでの議論の中でも、一番最初の1.の最後で、この基本問題の委員会では実際に学術界の覚悟を示しつつ、学術政策その他に関して提案、提言するというような位置付けだったと思いますので、今、お話にでた10ページの部分というのを最初に持ってくるのがもう一つの手ではないかなと思いました。この最初の1.の最後の部分にそれを入れ込んでいくのも1つの考え方と思います。
 それからもう一つ、ちょっと細かいことになりますが、私、片仮名が幾つか気になっておりまして、エンカレッジという言葉と、インターアクトという言葉と、あとダイバーシティという言葉が非常に気になっております。エンカレッジというのは9ページと12ページに、インターアクトというのは3ページ、10ページ、15ページ、それから今度新しく付け加わった文の中に、多様性とそれまで使っているものがダイバーシティとなっているのは、ちょっとこれは気になります。
 ただ、じゃあどういう言葉に置きかえるといいかとさっきから考えているのですが、なかなかいい言葉がありません。エンカレッジという言葉は後押しをするという意味なのか、鼓舞するという意味なのか、助力をするという意味なのか、なかなかちょっとうまくつかめないところがあります。それから、インターアクトというのも、社会との相互連携、連携していくということなのが、それとも相互理解をしていくのか。ちょっとここら辺はもう少しきちんとした言葉にしないと、理解されないのではないかなとちょっと気になりましたので、ちょっとお考えいただきたいと思います。

【西尾主査】  
  今御指摘いただきました言葉の使い方に関しましては、我々の審議経過の報告が、できるだけ一般の方にも読んでいただきたいということがございますので、再度検討していきたいと思います。どうもありがとうございました。
 では、安西先生、高橋先生。

【安西委員】  
  先ほどの柘植委員の発言についてフォローさせていただきます。
国際共同研究等の制度改革について、私は、とにかく日本の国内に閉じる傾向にある研究の世界を、とにかく国際的な場に変えていかなければ、将来成り立たないのではないか。学術研究において、そういうことが言えるのではないかと考えております。国際共同研究については、やはり科研費にそういう場をきちっと制度として作ることが大事なのではないかと思っております。
 海外ネットワークにつきましても、海外在住の日本人研究者、あるいは海外に常駐している日本人研究者のグループ等は、日本の機関を通じればできるのですが、なかなか本質的には本当には実績にできにくいんですね。そういうところをやはり制度をしっかり作って、日本人の研究者が世界のどこにいてもそのネットワークに参加して研究ができるような、そういう仕組みを制度として作っていく必要があると思います。そのことを是非うたっていただければ有り難いなと思っております。それが重要なことだと考えております。
もう一点、学術研究とは何かということであります。先ほど申し上げましたGlobal Research Council(GRC)の東京会合には、50か国以上の特に発展途上国の学術振興機関のヘッド等々が集まると思いますけれども、やはり発展途上国では、特に、開発研究、要請研究等への関心が高く、いわゆるボトムアップのイノベーションの本当の基礎になる学術研究というのは、どうしてもさっき申しました日・米・英・独等々がリードせざるを得ない、そういう状況にありますし、世界的に見ると、そういう国がリードしていくことが、本当に世界の学術研究の推進には、またそれを基にしたイノベーションの推進には非常に大事だというふうに思います。是非そのことを委員の皆様の念頭に置いていただいて、この文書も是非迫力を持って、学術研究の推進は大事だということをうたっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【西尾主査】  
  安西先生、どうもありがとうございました。日本の立ち位置というか、置かれているポジションを再度認識するという観点から非常に貴重な意見だと考えます。この報告の中で、少しでもそういうことを強化した記述を考えたいと思います。ありがとうございました。
 高橋先生、どうぞ。

【高橋委員】  
  前回私は欠席しましたが、その間にこれだけすばらしくまとめてくださって感激しております。ありがとうございます。前回もし議論されているとしたら、重複するかもしれませんが、2点のことについて申し上げたいと思います。
 1つは、9ページの問題点です。マル印のところの、「その結果、学術研究の現場において以下のような現象が惹起(じゃっき)されている」という列挙があります。ちょっとタイムリーな話題になりますが、不正の問題があります。最近は、不正といえば研究倫理につながるという風潮がありますが、私は不正をなくすには研究倫理を教育すればいいというのは間違いだと思います。肝心なことは、なぜ不正が起こるのか、その温床は何か、その温床をもたらした原因は何かということの本質を考えなければいけないというようなニュアンスを、もう少し入れてもいいのかなと思います。
 それは例えば、激烈とも言える成果主義。それから、論文の内容はともかく、数のみで評価するような上辺だけの成果主義。「真」の成果だったらいいと思いますが、「上辺だけ」の成果主義、、、そういうものがある限り、大学の現場で幾ら教育しても不正はなくならない、というのが私の持論です。つまり、不正がおこる本質的背景を無視して、名ばかりの研究倫理教育を何百時間やっても無駄だという意見です。中野さん、頑張って書いてください。
 2点目は、12ページですね。先ほども羽入先生の方からちょっと御意見ありました。マル印の「科研費以外の競争的資金」のところですが、実は私、このマル印の文章の意味がよく分かりませんでした。確認ですが、この「「科研費以外の競争的資金」には、いろいろな国家プロジェクト、それからトップダウン研究などが入っている、この認識は正しいですか。はい。
 少々過激な意見を出しますけれども、そういう国家プロジェクトの多くは、いわゆる「無駄遣いだ」と私は思っております。生命科学の現場では、大学の基盤経費、つまり運営交付金を増やしていただくだけで、おのずと萌芽(ほうが)的かつすばらしい研究がたくさん生まれることはだれでも皆知っています。それにもかかわらず、運営交付金は「ばらまきだ」いわれてしまう。この会議で何度も申し上げて来ましたが、このいわれなき「ばらまき論」に対し、私達は強く抗議する必要があります。そして、運営交付金が「ばらまきだ」と言われることに対し、反撃に出てみたいとおもいます。つまり大きな国家プロジェクトの中には、「本当の」ばらまきがたくさんあります。私は文科省のみならず、他の省庁にもいろいろ関わってまいりまして、そこでは「とんでもないばらまき予算」をたくさんみてきました。そのほとんどがトップダウンの大型研究費でした。いわずもがなら、そういう研究から出てくる成果は非常に質の低い者です。これらのばらまき予算の反省なくして、運営交付金をばらまきだと言われことに対し、私たち現場の研究者は承服しかねるわけです。
 余り過激な文言はここに置いてはいけないのですが、本当のばらまき予算を炙(あぶ)り出すようなシステム構築を意味するような文言を是非お願いしたいです。中野さん、頑張ってください。以上です。

【西尾主査】  
  どうもありがとうございました。中野室長、よろしいですか。高橋先生が今まで一貫しておっしゃられてきたことでして、戦略研究、要請研究等においても研究経費に関わるフォローアップをして評価をし、本当にそれがどのように役立っているのかということを明確にしてほしいということだと思います。
 では、濵口先生、荒川先生、金田先生の順にお願いします。

【濵口委員】  
  1点だけ。4ページ目ですけれども、今の御発言ともちょっと通じるところがあるんですけれども、社会における学術研究の様々な役割、学術研究の特性とあって、2つ目のマルのところで、学術研究は云々(うんぬん)と書いてあって、また客観的事実として書いたとか書いてあるんですけれども、何かトーンが弱いんですね。学術研究が本当に必要であるというのを、もう一歩踏み込んでほしい。そこがもやっとしている理由が、「知の限界に挑む営み」ぐらいしかないんですね。未踏の分野の開拓であるとか、新たな課題の設定、こういうものは研究者の多様性と個人の発想がないとできないとはっきり書いていただかないと、戦略的研究だけになってしまうだろうと。ちょっとここを少し、中野さん、お願いします。

【西尾主査】  
  貴重な意見、どうもありがとうございました。荒川先生、どうぞ。

【荒川委員】  
  少し細かいことではありますが、日本学術会議の立場として確認をさせていただきたいと思い、発言させていただきます。それは15ページに関連するものでありますが、大型研究のマスタープランについて、学術界のコミットメントで言及されています。2つ目のマルで、「学術の大型研究計画に関するマスタープラン」云々(うんぬん)ということが書いてございます。その後に4つ目で、「例えば」から始まっています。まずこの「例えば」の意味がちょっとよく分かりませんでした。以下マスタープランについて書かれているわけですが、第1文目はこれでよく分るのですが、第2文目において、「今後はさらに、学術界が各分野から提案された計画に対して学問的卓越性を軸として審議を行い、未来社会における学術研究の姿を明確に捉えるものとなることが期待される」と書かれていると、今回のこの間のマスタープランというのは、学問的卓越性を軸としていない、今後は更に改善を期待する、と捉えることができるかと思います。もしそういう意図でお書きになったのでなければ、少し文章をモディファイした方がいいかなと、そんなような気がしました。

【西尾主査】  
  荒川先生が一番御苦労なさいましたマスタープランのことでございますが、現在の記述は、今おっしゃられましたような誤解を招いてしまうと思います。現在までのマスタープランに関する事業に非常に大きな意義があると同時に、それが更に発展していくことが期待されるということで記述を直させていただきます。どうもありがとうございました。

【金田委員】  
  先ほどから御指摘があるように、完成に近い段階にいっておりますし、いろいろな御意見、基本的に納得して承っているんですが、ちょっと1つ気になるところがございます。10ページの真ん中あたりから、具体的な取組の方向性という形で、デュアルサポートシステムの再構築という項目があるんですが、私の読み間違いでなければ、これは拝見していると、デュアルサポートというのは、みんな大学が努力したら大丈夫だと、そこしか問題がないというふうにも読めちゃうんですけれども、ちょっと私の読み間違いかもしれないんですが。
 例えば、最初のマルは、「学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して再構築に取り組むことが必要である」という当たり前のことが書いてあるんですが、何か熱意が感じられなくて。その後ろにいっぱい、大学において自らの役割を明確にした上で、基盤的経費を配分するとか、分野の話とか、そういうことがずっと並んでいて、個別的なんですが何かデュアルサポートシステムの再構築というのは、大学内の再配分だけで済むというふうに全体として読めちゃうような感じがしてしまいまして、非常に気になっております。もちろんそれも必要なんでしょうけれども、そのほかにやはりデュアルサポートシステムをきちっと機能させるための方策が、先ほど高橋先生がおっしゃっていた運営費交付金の話にも直結するんですが、それがばらまきという批判に結びつくということを恐れていらっしゃるんだろうとは思いますけれども、そのあたりの書き方をもう少し工夫して強調していただけないだろうかというのが、このところを読んだときの印象なんです。

【西尾主査】  
  金田先生、更にできましたら、どのような記述に改訂したら良いかに関する御提案はございせんか。一応、現在の案では、最後のところで、「このような」という記述ではじまる文章はあるのですが。
 どうぞ。

【平野委員】  
  私も先に文書を送っていただきながら、どう修正していったらいいのか迷い、回答が遅れてしまいました。ここで皆さん一様にといったら失礼かもしれませんが、危機感を覚えてみえる、環境の難しさを理解しながらの上ですが、例えば既に人件費が主となっている運営費交付金をどう確保できるか。ほとんどが人件費等に回っているとしたら、その人件費に対して、一方では採用や配置を再検討すればいいんじゃないかと安易に言われかねない。対応が必要です。あと一番最後のところに書いてくださっておるので、それで理解ができるならば、そういう意味であろうかと理解をしたいんですが。
 もう1点、ちょっと異なるところからの発言を許していただければと思います。私、今までの委員の方々の御意見を理解し、納得していた上で、15ページの一番下から2行目のところがどうもいい言葉がなくて、うまく文章でお返しができなかった点であります。小さなところといえば小さいんですが。分かりにくい記述と思います。「多様な学術研究の役割のいずれをも担うに至っていない研究者」と、こういうふうになるところであります。 例えば、私、ずっと御一緒させていただいておった赤﨑先生がよく言われました。「荒野を一人行くが如(ごと)くであったと」。まさにそういう方に対しても光を当てられるようなシステムが欲しいなと考えます。未来思考の方が必要でして、これは若手だけではなくて、かなりできた先生方においても同じ立場だろうと思うので、ここの言葉が何か、荒野を一人行くが如(ごと)きチャレンジをする研究者に光を当てる、といっても余りいい言葉じゃないので、これは鈴村先生の御意見をいただければ有り難いんですが。

【小安主査代理】  
  これは逆の意味で、御退場いただきたいという意味で使っていたと思います。

【平野委員】  
  そういう意味だと、全く先ほどの意見と違うので。

【小安主査代理】  
  というのは、若手に対してどのようにしてという部分が、ちょっと今探してみます。

【平野委員】  
  その御退場というのが言いにくいので、こういう言葉になっている、とすると、もうひとひねり必要かと思います。

【小安主査代理】  
  私は、この前に中野さんに送ったときには、若手研究者の育成の中、13ページの一番上のマルのところに、「例えば、シニア研究者を年俸制雇用へと切替え」云々(うんぬん)と書いてあるんですけれども、このところで、実は前回鈴村先生が、シニア研究者の役割にこれこれがあるとおっしゃいまいした。そのどちらの役割も果たせないシニア研究者には御退場願うというような表現でお送りしたのですけれども、それがここにあらわれているのではないかと思って、読んでいました。

【平野委員】  
  私も、今までの議論は分かっているつもりです。この文章からの読み取り能力がなかったのかもしれませんけれども、誤解を生じる……。

【小安主査代理】  
  鈴村先生にお願いした方がいいかもしれない。

【西尾主査】  
  先生、お願いします。

【鈴村委員】  
  まず、この文章になってきた理由は、おっしゃるような趣旨だったと思うんですね。ただ、平野先生が今おっしゃったような、やっぱりたとえどんな烈風に吹かれてもやってきた人が発見するということも、科学のすごく夢があるところであって、それをあえて退けるという意図はここにはないと思うんですね。だから、多分そこにちょっと一文をつけ加えて、そういうことへの配慮は必要だと。「ただし」というようなことで。

【平野委員】  
  一方ではという意味で。

【鈴村委員】  
  ええ。そんな形でおさめたらどうだろうかという感じですが、具体的な文章はちょっとない知恵をひねった上で、御相談してみます。

【西尾主査】  
  はい、どうぞ、濵口先生。

【濵口委員】  
  先ほどの基盤経費の問題に戻って、どこだったですか。具体性がもう少し欲しいというところで、11ページですね。単に基盤経費を確保だとか、増やせというと、当然大学は保守的であるとか、自己保身に走っているとか、こういう議論になります。一方で、やっぱり一定の流動的な資金、投入できる資金が必要。それで今、唯一の方法は間接経費しかないと思うんですね。ただこの間接経費の使い方が非常にまだ制約があるということと、ネーミングが非常に悪い。間接経費というのは、間接に使うという。オーバーヘッドの方がまだいいと思うんですけれども、そこの名前も含めて。それから、使用目途も含めて、もう少し柔軟にしていただけるような、ここに提案するような文章があるといいなと個人的には思っておりますが。

【西尾主査】  
  そうしましたら、金田先生の御意見と、それから平野先生のコメントに対してのある種の方向性をつけておかなければなりませんので、まず平野先生からの御指摘の点に関しては、要は一生懸命やっているのだけれども、陽(ひ)が当たっていない人というのがおられて、ここの記述はそういう人を排除するということを意味しているのではないということを明確にしていきます。一方で、何の問題意識もなく、自己改革の必要性も感じずに、のほほんと過ごしておられる方に対しては、我々は厳しく見ていかなければなりませんという論調で記述することが大変に思います。

【平野委員】  
  ええ、それは今までの御意見で納得します。

【西尾主査】  
  そうですね。それがダイレクトに表現できるよう、鈴村先生もおっしゃっていただいたように、もう一文つけ加えるというような工夫をしていきたいと思っております。
 金田先生のおっしゃられたところに関して、記述の仕方について何か御提案はありますか。

【金田委員】  
  これは私の私見ですので、不適当であれば採用していただかなくて結構なんですけれども、11ページの真ん中あたりに、要するにまとめの形で、「学内外の資源の再配分や共有を行うことが求められる。なお、国立大学については、既に進展している『国立大学改革プラン』」云々(うんぬん)という形で書いてありますが、大学改革プランとほかのこととが2つ一緒になっているので、このうちの特に最後の大学の取組を前提として、「国が基盤的経費の確保・充実に努める必要がある」というのを、デュアルサポートの一番最初のところに持ち込んで、ちょっとそのままの文章ではまずいと思いますけれども、以下のような大学の取組を前提として、それを確保する必要があるなどというような形の文脈に変えていただいた方が、少しは強調できるのではないかなという気がいたしました。

【西尾主査】  
  金田先生がおっしゃったような変更をしていくということでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。文脈的には、基盤的経費の確保・充実ということが、大きく前へ出ることになりますけれども、皆様、そういうことでよろしいですね。どうぞ。

【濵口委員】  
  問題は、主語がはっきりしていないんですね。誰がやるのか、どの組織がやるのか。これ、自縄自縛になっているんですけれども。

【西尾主査】  
 「国は」という。

【濵口委員】  
 「国は」。

【西尾主査】  
  あともう一つ、濵口先生おっしゃっていただきました、間接経費等の問題について、どこかで記述するということがございます。
 ほかに御意見ございますか。瀧澤委員。

【瀧澤委員】  
  ありがとうございます。今日配られている参考資料なども拝見しまして、今更という感じもするんですけれどもひとつ申し上げます。3ページ目のところで、持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究という表現がございます。その中に「特にオープンイノベーションの時代にあって、社会の変化に伴う様々な需要に応じそれらの知を多様な価値につなげていくためには、学術研究の成果は常に社会に向かって開かれている」とか、あるいは「イノベーションを担う人材を育成することが極めて大事である」ということがうたわれております。ですから、それを受けた形で後半の方、例えば国力の源としての学術研究のところに、もう少しそういう視点を加えてもいいかと思うんです。
 学術研究というのは、戦略的研究や課題解決型の研究と違って、最初に目標があって、それに向かってというのではなくて、自由な発想に基づいて、それでも予想外なイノベーションを促すことがあるわけで、一方的に国民に負担をお願いするだけではなくて、税金を生み出す源泉にもなっているわけです。ですから、そういった意味で、学術界としても、イノベーションと学術研究をもう少しシームレスに捉える表現を入れてはどうかと思います。
 具体的には、例えば国力の源としての学術研究の項目で、6ページ目の前ページから続いているマル印の中の最初の段落の最後の方です。「社会の変化に柔軟に対応しながら、新しい卓越知や産業貢献につながるようなイノベーションを生み出すように不断の挑戦をしていく」というような形です。
 それから、若手の人材研究のところでも同じことが多分言えるんだと思うんですけれども、例えば10ページ目。「また、学術研究の役割として、研究者養成だけでなく、広く社会で活躍する人材を育成し教養を形成することを重視する」の箇所ですね。広く社会で活躍するという中に、当然イノベーションマインドを持った人材という意味が含まれるんだと思いますが、そのことを明示する形でもいいのではないかなと思いました。ほかにも後半のところにそういった視点を加えた方がいいところがあるかもしれませんけれども、今気づきましたのはその点です。

【西尾主査】  
  どうも貴重な御意見ありがとうございました。羽入先生が先ほどおっしゃられた意見とも関連していると思います。可能な限り、御意見を反映したいと思います。どうもありがとうございました。
 はい、どうぞ。

【高橋委員】  
  13ページのところの、若手の研究環境をいかに守るか、そして若手のポストをいかに創出しそれを安定的に守るか、という議論の一環です。大学の教授とか准教授陣の中で、今日の議論にあったような、いわゆる前向きな活動を全くしていない方……、要するに、何もしていない『苔(こけ)むした』人たちに御退場願うという、かなりデリケートなことも、もう少し積極的に考えてもいいかなと思います。これは本当に難しい問題ですが、東京大学や京都大学を含め、大きな大学のほとんどが、この問題で苦しんでいるはずです。
 こういう議論のとき、「苔(こけ)むした」という定義に注意しないといけません。つまり、教育もできない、研究もできない、コミュニティーもだめ、要するにどうみても「駄目」という人たちのことを意味します。それは先ほど平野先生がおっしゃった、孤軍奮闘、何としてもこの仕事をやり遂げるのだ、といって頑張っている人とは根本的に違うカテゴリーに属するものです。「苔(こけ)むした人」は、他の人達にも迷惑をかけるなど、困りものであることは、現場がよく知っています。苔(こけ)むした人の身分をいたずらにずっと安定化させておきながら、「若者のポストがないので何とかしてくれ」ということは、少々矛盾します。もちろん、これは自分たちに向かって爆弾を投げるような発言です。しかし、そういう「身を切る」ようなことを全く考えずに、企業が悪いとか、国が悪いとだけ言い続けるのも、都合がよすぎる話かもしれません。
 この手の問題は、安西先生がやっておられる中教審とも関わるのでしょうけど、まずは私個人の、かつ現場の人間として発言させていただきました。

【西尾主査】  
  今、高橋先生がおっしゃっていただいたことは、大学の中で、特に一生懸命頑張っておられる研究者の方々が問題にしておられることだと思います。ですから、ある種の大学における自己改革という観点からも、1つの重要な視点だと私は思っております。どうも貴重な御意見ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。武市先生。

【武市委員】  
  ちょっと細かいことになるかもしれません。今、今日拝見していまして、「卓越知」という、私自身にとっては新たな熟語があらわれています。3ページの下から3行目は「卓越した知」とありますのでそれが「卓越知」という単語になってきたのだと思います。それから後には「卓越知」が6ページにもあらわれますし、当然のごとくにあらわれています。それが「卓越した知」だと理解することは難しくはないですけれども、これは一般的な用語であるかどうかちょっと私にはわかりません。
 それともう1か所は、これはちょっと微妙なものですから、私もどう発言していいか分かりません。学術会議においてという荒川委員からの御発言もありましたが、マスタープランはいいのですが、14ページで突然に学術の大型プロジェクトというのが出てまいります。14ページ、上から3行目、あるいはそれから数行下に、全国の研究者コミュニティーの合意に基づく各分野の学術の大型プロジェクトを推進していくことが必要であると書かれています。「大型」という形容詞がどうして必要なのか。つまり、一定の規模以上のものを学術会議で「大型プロジェクト」と定義をして、提案を求めたということですので、それ自体を学術研究の中でどう位置付けるのかというのは議論していないわけです。マスタープランとしてそれぞれの分野においてどうするかという議論はコミュニティーで成熟させたとしてよいかと思います。15ページに書かれている学術会議の件については、先ほど荒川委員が御指摘されたことだと思います。
 高橋委員からの御指摘のことについては、私も以前から現在の研究不正と言われている事柄が、学術研究にどう影響しているか、あるいは、研究組織の在り方の問題の方に意識を移さなければいけないと感じています。現在の不正の問題が、単に人材育成という議論だけで済むことではなくて、経費を獲得するため、あるいは職を獲得するためという側面から、もう少し触れた方が、今現在の社会との関係から見てよいのではないかという気がいたします。以上です。

【西尾主査】  
  どうも貴重な意見ありがとうございました。卓越知のこと、また、大型プロジェクトについては、大型ということをあえて言う必要があるのかということ、さらに、不正に関する要因ということに関しての御意見でした。これについても、再度いろいろ検討していきたいと思っております。
 そろそろ閉会の時間になっているのですけれども、何か御意見とかコメントとかございませんか。

【甲斐委員】  
  では1点だけ。先ほど鈴村先生の御発言があって、その後うやむやになってしまいまった15ページの最初の、日本発のリーディングジャーナルを育成するためにというところですが、鈴村先生がおっしゃったように、私もこれが必要なのかよく分からないです。この文章の最後は、「科研費等の取組強化が必要である」で終わりますので、あたかも日本発のリーディングジャーナルの育成をこの本委員会が推進すべきだと言っているようになってしまうと思いまして、私もここは削った方がいいかなと思います。
 むしろそれよりも、今、オープンアクセス化に対応するのが、日本は少し遅れていると思うんですね。各国のNSFなどのグラントホルダーである機関は、高いジャーナルに論文が通ると、そのグラントを獲得しての研究であるというふうにいうと、オープンアクセス料金が無料になります。でも日本は、JSPSにそれほどのお金がないので、無料にはなりません。そうすると、直ちにオープンアクセスできるようにしてほしい場合には自身の研究費からかなりの高額を払わなければいけないということになります。むしろそちらを支援して、強い国際誌にどんどん載せられるような仕組みを考えることの方が必要かなと思うんです。
 このように、国際発進力を増すためにはいろいろ検討すべきことがあるので、ここでは日本発のリーディングジャーナルの育成を明記するような文章だけは削って、そういう支援が必要であるぐらいに、中野さんがうまく修文していただければと思います。

 

【西尾主査】  
  リーディングジャーナルのことに関しましては、今、甲斐先生おっしゃっていただきましたようなことで、あえてこの報告では記述しないということにしたいと思います。それでよろしゅうございますか。
 それでは、議論が尽きないところですが、閉会にしたいと思いますが、小松局長、何かコメント等ございますか。

【小松研究振興局長】  
  皆様方の御意見を極力取り入れてまとめられるように、中野室長には頑張ってもらって。

【西尾主査】  
  どうもありがとうございました。予定の時間でございますので、本日はこのあたりとさせていただきます。
 追加の御意見がありましたら、事務局を通じてメール等で御連絡いただければと思いますが、次の段階の委員会等のこともございますので、来週の月曜日、12日までにお願いをいたしたいと思います。本日欠席の委員にも御意見を伺いまして、適宜修正を行いたいと思いますが、個々の意見の取扱いについては、僣越ですけれども、最終的には主査である私に一任させていただくということでよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

 

【西尾主査】  
  ありがとうございます。それでは、私の方で最終的にまとめたものを、本委員会の審議経過報告として、5月26日の学術分科会に報告し、審議いただくことにしたいと思います。更に6月3日には総会も予定されておりますので、学術分科会としての審議経過を報告することとなりますことを御承知いただきたいと思います。
 委員の皆様方におかれましては、年度末から年度初めにかけての本当にお忙しい中にもかかわらず、この重要な問題に関しまして、本当に精力的に審議にご参加いただきましたことに対しまして、本当に心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 本日は、このあたりで終わりにさせていただきたいと思いますが、今後のスケジュール等について、事務局より説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  
  どうもありがとうございました。今、主査からございましたように、追加の御意見等につきまして、目処(めど)として12日月曜日までに御連絡をいただければと存じます。お電話、ファクスでも結構ですけれども、今日の資料をまたメールでも書き込み可能な形で送付させていただきますので、可能な限り具体的な御意見をいただけると有り難いと思います。主査に御相談させていただきたいと思います。
 次回でございますが、次回の日程につきましては改めて御案内させていただきたいと存じます。当初この委員会が始まります前に、直近では6月9日ということでスケジュールを押さえさせていただいておりましたけれども、今、主査から御紹介がありましたように、26日が分科会、3日が総会ということで、そこまでに確定ということですので、6月9日につきましては西尾先生にも御相談させていただいて、開催はしないということとさせていただきたいと思います。また改めてメール等で御連絡させていただきますが、日程の解除を、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
 また、既に御案内が先ほど来ありましたように、26日が基本問題特別委員会の先生方全員が属しておられる学術分科会の開催でございます。16時からでございます。この委員会としての審議経過報告を西尾主査からしていただく予定ですので、是非ご参加のほどよろしくお願いいたします。
 また、本日の資料につきましては、机上に残していただけましたら、郵送させていただきたいと思います。以上でございます。

【西尾主査】  
  どうもありがとうございました。6月9日につきましては、一応諸般のスケジュール等を考えまして、この委員会の開催を見送りとさせていただきますが、来月以降も引き続き審議に関しましては、どうかよろしくお願いいたします。本日の会議はこれで終了いたします。皆さん、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

 

 ―― 了 ――

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