学術の基本問題に関する特別委員会(第7期)(第4回) 議事録

1.日時

平成26年4月14日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎第2講堂

3.議題

  1. 学術研究の推進方策に関する総合的な審議について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員、臨時委員)
西尾主査、小安主査代理、安西委員、佐藤委員、柘植委員、羽入委員、平野委員、荒川委員、伊藤委員、金田委員、鈴村委員、瀧澤委員、武市委員

文部科学省

小松研究振興局長、山脇研究振興局審議官、板倉振興企画課長、合田学術研究助成課長、木村学術機関課長、中野学術企画室長

5.議事録

【西尾主査】  
  それでは、定刻でございますので、ただいまより第4回科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会を開催いたします。
 年度の初めの御多忙なところ、この委員会にお集まりいただきまして、心よりお礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 また、一部の委員の先生方におかれましては、御事情等で少し遅れてこの委員会に到着ということを伺っております。その点もどうかよろしくお願いいたします。
 それでは、まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  
 初めに、毎回大変恐縮でございますが、事務局側に国会審議の影響等で遅れて参る者がおり、また途中で退室させていただく可能性もございます。何とぞ御容赦いただけますようお願いいたします。
 お手元の議事次第に配付資料一覧を付けております。本日は、資料1の「学術研究の推進方策に関する総合的な審議についての審議経過報告(素案)」というものがメインになります。また資料2は、それに関する参考資料を綴(つづ)っているものでございます。それから、資料3は、前回である第3回の特別委員会の御意見の概要でございます。それから資料4は、前回御指摘がありました、学術分科会の関係部会の審議状況についてまとめたものでございます。学術分科会以外でも科学技術・学術審議会の中で関係の審議を行っているところがございます。後ろの方には、各関係部会の中で出せる資料について簡単なものを付けております。
 それから、参考資料1といたしまして、科学技術・学術政策研究所が先般発表いたしました、科学技術の状況に係る総合的意識調査でございます。時間の関係で御説明はできませんが、エッセンスにつきましては、資料2の方でも使っております。
 また、そのほかに、机上ファイルといたしまして、グレーの紙ファイルで、前回までの会議資料をつづったものがございます。
 また併せまして、先生方のお手元に、4月11日の科学新聞を置かせていただいております。本特別委員会についての記事が掲載されておりますので、御参考にしていただければと思います。
 資料につきまして欠落等ございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。

【西尾主査】  
 資料につきまして、何か問題点ございませんか。
 それでは、学術研究の推進方策に関する総合的な審議に移りたいと思います。
 前回、4月2日の第3回の委員会におきましては、出席の委員から積極的な御意見を頂きました。そのポイントは資料3にまとめておりますが、これらを踏まえまして、学術研究の推進方策に関する総合的な審議について審議経過報告(素案)を作成いたしました。骨子をまとめることとしておりましたが、これまでの議論を踏まえますと、まず審議経過報告として一定のまとめを行ってはどうかと考えております。本日は、本資料をもとに議論したいと考えております。
 まず、資料につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  
 お手元の資料1を御覧いただきたいと思います。
 ただいま西尾主査からお話がございましたように、骨子をまとめるということで、これまでの審議経過を素案としてまとめたものでございます。前回まで議論の進行イメージという資料がございましたが、そちらをベースにして、これまでの御意見も踏まえて書いているものでございます。
 まず1ページ、「はじめに」でございますが、前回、危機に立つ日本というタイトルにしておりましたけれども、その後で、学術の話がなぜ危機なのかというような話もありました。この点を踏まえて、少し記述を整理するとともに、タイトルを「失われる日本の強み―危機に立つ我が国の学術研究―」と変更することで、学術研究が危機に立つことによって日本の強みが失われてしまい、ひいては日本が危機に立つという流れをタイトル上にも明確にしております。
 まず、一つ目のマルでございます。資源に乏しい我が国においては、学術研究により生み出される知や人材が国としての強みとなってきたということで、学術研究の意義を書いた上で、我が国は学術研究に対する限られた公財政投資の中でも成果を上げることによって、国際社会における存在感を伸ばしてきた。
 それから、2ポツ目は、従来もありました、現在の我が国の状況、少子高齢化や様々な課題を踏まえますと、学術研究の重要性が一層増しているということでございます。
 それから3ポツ目の、にもかかわらずということで、国家財政逼迫の中、学術研究の中心である大学等の基盤を支える経費が年々減少していることに加え、今般、科研費が助成額ベースで減額に転じるなど、研究環境の悪化は限界に達しており、学術研究の推進はもとより、人材育成にも大きな影響を及ぼし始めている。前の資料では、このあたりのことを別の項目として長々と書いていたんですけれども、後ろの方にもまた出てきますので、ここでは短く記載しております。
 このままでは、学術研究の衰退により、我が国の将来的な発展や国際社会への貢献が阻害され、これまで築き上げてきた「高度知的国家」としての国際社会における地位や存在感が保てなくなってしまうことが強く危惧されるということで、こういった危機的状況を打破するために、この学術分科会として検討するということでございます。
 2ページにいきまして、持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究でございます。こちらも以前からの資料にあった部分でございますが、少し記述を整理しております。
 まず、現在イノベーションへ期待があることは当然であると述べた上で、本来的意味といたしまして、従来配付資料等でも付けておりました、第4期の基本計画における定義を紹介しております。すなわち、これは学術研究による知の創造が基盤となっていて、それが充実して初めて経済的価値や社会的・公共的価値等を含むイノベーションが可能となるということを、本来的意味として確認しております。
 ただ一方で、イノベーションをめぐる議論への危惧といたしまして、今日の議論においては、三つぐらい挙げておりますような懸念があるとしております。一つには、イノベーションが短期的経済効果をもたらす技術革新といった狭い意味で用いられることが少なくない。それから、「出口指向」という研究の流れの中で、既に見えている「出口」に向けた技術改良といった狭い範囲の意味で出口を捉えがちであるが、そういった出口は有限であるということ。それから、「橋渡し」ということもありますけれども、学術研究の成果を所与のものとして、それが経済的価値等につながりにくいことが課題であるという認識から、いわゆる「橋渡し」への注力が過度に強調される一方で、基盤となる学術研究そのものの力の維持のための視点が十分ではないといった懸念があるということで、社会・経済の持続的発展のために、2ポツにあったような、イノベーションの本来的意味に立ち返ることが必要であるとしております。
 それから、イノベーションにおける学術研究の役割についても、これまで御議論いただいたことを書いておりまして、オープンイノベーションの時代にあって、出口のないところに新たな出口を創出したり、新次元の出口を示唆する入口を拓いたりする学術研究を推進して、多様で質の高い知を常に育て重層的に蓄積しておくことが不可欠である。それを様々な価値につなげていくため、常に学術研究の成果を社会に開いておかねばならない。そして、イノベーションを支えるのも人材であるということから、学術研究はイノベーションの源泉であるとしております。
 それから、繰り返しになりますが、最後のマルは、入口と出口は相互補完・対流関係で、学術研究として社会に対して実際的な価値を提供するだけでなく、出口からのフィードバックでそれ自体がより発展したりすることからも、学術研究には、常に社会と情報を交換し、社会に貢献する視点が求められるとしております。
 それから3ページ、2ポツに参りまして、社会における学術研究の役割でございますが、ここで述べていることも、これまでの御議論等を少し整理したものでございます。学術研究の意義という書き方をしておりましたが、これは意味ということではなくて、こういう役割を持って社会に貢献しているんだということを明確にするために、タイトルを「社会における学術研究の役割」としております。
 学術研究の特性ですが、一つ目のマルは、科学技術・学術審議会の建議での学術研究の定義、それから学術研究には役割で区別すると戦略研究と要請研究がありますが、それらと学術研究とは区別されるということを書いております。
 学術研究の特性、少し記述が長かったものをまとめておりますが、研究者の自主性・自律性を前提とし、研究者が創造性を最大限発揮することにより、独創的で質の高い多様な研究成果を生み出すものである。与えられた課題の解決以上に、新たな課題の発見やそれに挑戦することを核心とするものであるため、価値の創造には構造的にある程度の時間を要するとともに、当初の目的とは違った成果が生まれることも多い。また、広い分野にまたがるものでありまして、研究手法や生み出される成果等は極めて多様であるといった特性として整理しております。
 学術研究の役割としては、従来通りでございますが、カッコ1として、知的・文化的価値の創出それ自体、カッコ2として、現代社会における実際的な経済的・社会的・公共的価値の創出、カッコ3として、人材の養成・輩出、そしてカッコ4として、それらを通じた国際社会貢献やプレゼンスの向上といったことでございます。
 4ページに参りまして、前回「国力の源」ということが少し頻発しすぎているということがありましたので、これらをまとめる形で、「国力の源」としての学術研究とさせていただいております。ですが、ここでは「国力の源」という用語は使わせていただいております。資源の少ない我が国にとっては、知をもって人類社会の持続的発展や、現在及び将来の人類の福祉に寄与するとともに、国際社会において尊敬を得、存在感を発揮することが極めて重要である。そのためには、学術研究により生み出される知と人材が不可欠であり、今日においては特に、国際性・総合性・挑戦性が求められる。そういった意味で、学術研究は「国力の源」と言えようとしております。そういった「国力の源」である学術研究ですので、その振興は国の重要な責務であり、また学術界はこういった役割を十分に果たし、社会からの負託の応えていく責任があるとしております。
 3ポツが、学術研究の現状と課題でございます。大学等の研究現場の現状につきまして、これまでの議論を少し箇条書きに整理したものでございます。大学の研究現場が危機的状況にあるということで、基盤的経費の減少や人件費の抑制、それから、組織の硬直化、一律的・固定的な処遇などによって、安定的な若手ポストが減少する一方、時限付きの競争的資金などの不安定なポストの増加等により研究職の魅力が低下し、優秀な学生が研究職を目指さなくなるなどの負の循環に陥る傾向。それから、基盤的経費の減少が競争的資金の獲得を自己目的化させると同時に、時限付研究プロジェクトにおける短期的経済効果の強調が、研究者を短期的な成果が出やすい研究へと指向させ、内在的動機に基づく多様な研究にじっくり取り組むことを困難にしている。また、若手研究者がそういったプロジェクト経費によって雇用されることから、経費を獲得しやすい分野に集中し、多様な分野における研究者養成にも支障が出ている。また、競争的資金の増加で、申請・審査業務の時間の増大に伴い研究時間の減少を招いている等でございます。
 一方で、学術研究に対する厳しい見方のところ、前回の御指摘を踏まえて、改めて少し記述を整理しております。学術研究については、近年の厳しい財政状況の中でも一定の財政投資がなされてきたが、論文指標の国際的・相対的な低迷などを受け、投資効果について厳しい見方が強まっている。また、これは定性的なものですけれども、基盤的経費がいわゆるバラマキとなっており有効に使われていないのではないか、あるいは、人事や研究費配分等が既得権化しているのではないか等の声や、研究上の国際競争力、影響力の相対的な低下や多様性の低さについての懸念、また、社会との繋がりの不十分さ等についても、繰り返し指摘されている。さらに、前回も少しありましたけれども、東日本大震災を契機に国民の科学に対する信頼が低下したことに加え、近年の研究不正の事案等により、研究や研究者の質に対する信頼が揺らいでいる状況も重く受け止めなければならない等でございます。
 次のマルでは、こういった指摘について、必ずしも学術研究に特化したものではなく、戦略研究や要請研究を含むもの、あるいは、大学等の研究者のみならず、研究開発法人や民間企業等の研究者にも同様に言えるものもあると考えられますと。ただ学術研究としましても、これらの声を真摯に受け止め、改善すべき点は改善し、社会に対して説明すべき点は明確に説明するなど、適切に対応していくことが必要であるとしております。
 それから、次が4ポツ、最後のポツになりますけれども、学術研究が、そういった現状等を踏まえて、2ポツで述べたような役割を十分に果たすためにどうするか。ここにつきましては、御議論がまだ余り突っ込んでいないところもありますけれども、最低限のところをまとめたものでございます。
 まず、社会からの負託に応えるということで、学術研究がそういった役割を十分に果たせるようにするために、国と学術界が一体となって取り組んでいく。その際、厳しい財政状況の下、限られた財源を最大限効果的に活用し、社会からの負託に応えることが重要である。
 次に、未来志向の研究を推進するということで、学術研究がそういった社会的役割を果たすために基本となることは、言うまでもなく、新たな知の開拓に挑戦する未来志向の研究を推進することであるとしております。この「未来志向の研究」という言葉につきましては、本特別委員会で出たというよりは、関係の研究費部会で先般議論があったところでございます。それから、そのため、研究者は常に目標意識を持ち、自らの研究課題の意義を明確に説明していく。また、様々な課題を総合的な観点から捉え、相対化することも必要であるため、研究者は様々な研究環境に身を置き、異なる研究分野や世界中の学術コミュニティー、さらには社会の様々なステークホルダーと積極的に交流することにより、研究の幅を広げていくことが重要である。
 次は、若手の話で、特に国際的な観点も書いておりますが、学術研究が将来にわたり持続的に社会に貢献するためには、次代を担う若手研究者の育成がとりわけ重要である。若手研究者が単なる労働力として与えられた課題をこなすのではなく、自ら主体的に課題を設定して挑戦的な研究に取り組むことが極めて重要であり、そのための環境整備が必要である。また、学術界全体が若手を育てる意識を共有し、自立を支援しつつも、適切にサポートする体制を整備することが重要である。特に、国際社会における我が国の存在感の維持・向上のために、国際的な学術コミュニティーにおいてリーダーシップを発揮することが重要であるため、若手研究者の国際的なネットワークへの自主的な参加を促進することが必要であるとしております。
 一方で、シニア研究者につきましては、若手研究者の育成において、積極的な役割を果たすとともに、学術界のリーダーとして、率先して分野の枠を越えた交流を行い、新たな学問領域の開拓を先導する役割を果たすことが期待されるとしております。
 次に、学術研究の振興に当たっては、研究者の自由な発想を保障し創造性を最大限発揮できる環境を整えることが極めて重要ということで、国は、基盤的経費と競争的資金の適切なバランス等に配慮しつつ、振興施策全体の在り方を検討することが必要である。なお、戦略研究・要請研究に係る振興施策、あるいは、教育・管理運営を含む大学振興施策は、学術研究の振興と密接な関わりを持つものであるため、一体的な検討が必要であるとしております。
 また、資源配分に当たっては、学術研究の社会的な役割の観点からより重要性の高い研究について、適切な競争環境の下で優先順位をつけ重点配分する仕組みを整備することが必要であり、実際に審査や評価に携わる学術界は、分野の利害を越えて責任をもって参画することが重要であるとしております。
 最後、6ページでございますが、学術界は、学術研究の社会的役割を十分に認識し、自律的な評価と見直し等により学術研究の質を保証するとともに、社会の中の学術研究として社会との対話を重視し、学術研究の社会への貢献について実態に即して分かりやすく説明する責務があるとしております。質という話が若干抽象的に記載しておりますので、このあたりは御意見いただければと思います。
 そして、アスタリスク(※)ですけれども、具体的な取組につきまして、この審議経過の中でどこまで出していくかというのも御議論いただければと思います。この案につきましては、これまでのこの特別委員会の審議で出た御意見と関係の部会等の資料を、別紙に資料4としてまとめております。案としましては、これらについては、関係部会等の議論を踏まえつつ、さらに検討を深めていくということにしております。
 7ページ以下がその別紙でございますが、まず基盤的経費の確保に関しては、この特別委員会でも御議論のあったところで、国としてデュアルサポートシステムの再検証を行うということでございます。それから、各大学の方はそうした基盤的経費をどのように使うかということで、研究者や研究組織の評価とその結果に基づく見直しを適切に実施するとともに、各大学等の持つ強み・特色等を活かした学内資源配分等を行うことが必要である。
 それから、科研費改革につきましては、この委員会でも御議論ありましたが、研究費部会の方で御議論いただいているところを簡単にまとめております。
 若手研究者の育成・活躍につきましては、特別委員会でもかなりの御議論がありましたとともに、濵口先生の人材委員会の方でも御議論いただいているところでございます。
 大学等の研究機関の人事・組織の在り方を見直し、若手研究者の安定的な雇用を一層確保することが必要である。それから、客観的で透明性の高い審査による能力・業績評価に基づき、優秀な若手研究者を積極的に登用するなど適切な処遇を講じることが必要である。ちょっと本文と重なっておりますが、単なる労働力ではなく、自ら研究を主導するPIとして研究できるようにするため、シニア研究者がメンターとして適切な指導や環境整備を行うことが必要。また、前回もありました倫理教育の徹底、少額の競争的資金でマネジメントを学ぶプロセスを経て、ビッグプロジェクトを動かせるようになるという視点も踏まえて競争的資金制度を考えることが必要。それから、意欲と能力のある博士課程学生が研究の道を断念することのないよう、経済的支援の充実を図る。また、博士課程修了者など高度な教育を受けた人材が広く社会で活躍できるよう、産業界や海外も含めた多様なキャリアパスの整備が必要ということでございます。
 それから、次のマルの、共同利用・共同研究につきましては、濵口先生が部会長でいらっしゃいます、研究環境基盤部会の方での御議論を短くまとめて書いております。
 8ページには、特別委員会での御議論でも少しずつ出ているということで、分野間連携・異分野融合について書いております。分野間連携・異分野融合の推進には、ディシプリンの確立した伝統的な分野のシニア研究者が率先して取り組むことが必要。専門知識等を十分に持っていることが前提となるということで、若手研究者育成の観点から留意が必要。そういった分野融合を促進するような競争的資金が必要。研究者の生涯教育としての教養教育が必要などでございます。
 それから、適切な評価システムの確立につきましては、研究計画・評価分科会の評価部会で26年4月に、「文科省における研究及び開発に関する評価指針」の改定という建議がなされております。これらを踏まえて、人事配置や研究費配分等が短期的な成果や論文関係の数値等過去の実績のみに頼ることのないよう、研究者の意欲や活力・発展可能性など未来志向の観点を含む評価の手法を確立することが必要。また、学術研究の成果の社会還元や社会との結節点等についての適切な評価の在り方について検討することが必要。それから、当初の目的からは予想し得なかった実験結果や失敗が新しい発見等につながることもあることから、研究の過程も適切に評価することが必要としております。
 それから、研究時間の確保につきましては、この基本問題特別委員会の議論が始まる前にも、学術分科会本体でも御議論いただいておりましたので、そのあたりを書いております。
 次の、学術情報研究基盤の強化につきましては、学術情報委員会の御議論を踏まえて記載をしております。
 最後に、社会とのインターアクトの強化ということで、社会の中の学術研究であることを常に認識し、社会との意見交換の機会を設け、学術研究の意義や成果の発信を積極的かつ戦略的に行うなど、学術研究と社会とのインターアクトの強化が必要だとしております。
 御説明、長くなって恐縮でございますが、これらにつきまして御審議いただきたいと思います。なお、これまでお出ししているものと重複することもありますけれども、資料2に、この素案のバックデータとなるものを参考資料としてまとめておりますので、こちらも必要に応じて御参照いただければと思います。
 説明は以上でございます。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 それでは、討議に入りたいと思いますが、今回を含めて、4月としましてもう一回ございますけれども、審議経過をまとめて行かなければなりません。
 それで、今、御説明いただきましたように、「はじめに」から3については、今まで十分に御議論いただいてきたことと思いますが、5ページの4については、必ずしも議論が十分でなく、現状において、少し抽象的な記述になっているところがございます。ここをしっかりと打ち出していくことが、3までのことを踏まえた帰結として非常に重要でございます。4に書いてあることに関して、「例えば、具体的にはこんなことがある」とか、グッドプラクティスとして、別紙に記してある事項から、ここにより具体的に書いた方が良いこととか、さらには、学術研究が社会における役割を十分に果たすために、まだここに書かれていないというような事項がありましたら、是非御意見を伺いたいと思います。
 要は、3までのところを踏まえて、今回の我々の議論の帰結として審議経過を世に出していくのかという観点では、4がまさに肝になるところだと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
 そういう観点で、何か御意見でございませんでしょうか。羽入先生、どうぞ。

【羽入委員】  
 今、西尾先生がおっしゃったことに話を重点化する必要があると確かに思います。
 一つだけ、3までのことでちょっと申し上げてもよろしいでしょうか。

【西尾主査】  
 はい。

【羽入委員】  
 どなたがお読みになるかということが時々議論になりますが、一番最初の文章、「はじめに」の最初の文章ですが、すごく長いと思うので、どこかで切ってもいいのではないかと思いました。
 それから、もう1点だけ。2のところに、学術研究の特性というので、学術研究とは、と書いていただいていますが、これはもう少し前に、例えば、イノベーションの話を広義と狭義の二つに分けて書いてあるのが1のところですけれども、その前ぐらいに、学術研究をここではどういうふうに扱っているのかということがあってもいいのではないかという、非常に個人的な感想になるかもしれませんけれども、今の時点でないと申し上げられないかと思って申し上げました。
 4については、また別途お願いします。

【西尾主査】  
 そうしましたら、「はじめに」のところでの最初の項目等の文章が少し長すぎるのではないかということについては、再検討をいたします。
 それと、1から3に書いてある内容につきましては、内容的には良いけれども、構造的にもう少し検討を加える必要があるかもしれないということにつきましても了解いたしました。
 どうぞ。

【柘植委員】  
 1つだけ、5ページのところが。
 4月2日、どうしても出られなくて失礼いたしました。
 5ページの今の件で、4ポツの、「学術研究が社会における役割を十分に果たすために」ということで、この中でどういう点を強化すべきか。私は、学術サイドから、この全体の話はかなりの完成域になってきていると思います。一方では、やはり社会から見たときに、この4ポツの、「社会における役割を十分に果たすために」という面で、これが社会から見たときにどれだけ「うん、よく分かった」と言ってくれるかという視点で見ると、まだまだの域であります。
 その中で、いろんな視点があると思いますが、私は一番、社会が「分かった。頼む」と言ってくれるのは、もちろん学術の価値も分かってくれることも期待するのですが、やっぱり学術研究が子供たちを育ててくれると、自分たちの子供、孫かもしれません。それがやはり「頼みます」という動機になってくると思います。
 そういう面で、後ほど4ページまでにさかのぼりますが、5ページのところでも、まず人材育成という言葉は使えます。でも、教育という言葉も、実は5ページの下のところにちょっと出てきますが、それが、一番上の白丸に「国力の源」というところに3行書いていますけれども、「国力の源」と言われても、前のページで、「国力の源」には「知と人材」がと宣言しているので、分かっているでしょうといっても、分かってもらえていないですよね。やっぱりもうちょっと丁寧に、社会からの負託は、「国力の源」というのは、知と同時に、お子さんたちというか、社会を支える次の世代の人材をちゃんと育てているのだというのは、5ページでももう少し丁寧に社会から分かるように記述する方が良い。
 その前提の中でずっときたときに、下から2つ目のところで、さっき「なお、戦略研究云々」で、「教育・管理運営を大学振興施策等と密接な関わりを持つ」という記述がありますが、まさにこれが日本の今の弱点なわけです。科学技術・学術政策と教育政策、二本立てでいかざるを得ないと。ここのところは、これを読んでも分からないわけですよね。社会からを見ても。ですから、これは行政の仕組みとしては、「こういうふうにやっているんですけれども、社会から見たときに、科学技術・学術政策も人材・教育も一緒にやっているのだと。だから、それが学術研究の社会における役割を果たしていますという、そういう視点で人材・教育も一緒にやっていますという文脈で、ここのところでも改めて社会から見ても伝わるようにすることが、5ページの非常に大事なことだなと思います。
 そういう意味で、ちょっと長くなりましたけれども、4ページまでのことも、是非随所に、学術研究のパフォーマンスに関わるものも、全てそれは表と裏で、人材――私は教育という言葉を使いたいのですけれども、「学術の危機は教育の危機」という危惧の言葉を、もうちょっと充実すると、社会からもっと危機感をもって分かってもらえるようになるところが幾つかありますので、これを帰ってまた意見を書きたいと思います。以上申しあげたことの全体の背景は、社会から見たときに、我々の提言がもうちょっと「よく分かった」というふうになるようにしたいと思います。
 以上です。

【西尾主査】  
 すいませんが、1つだけ質問なのですが、「なお」のところはどのようにしたらよろしいのでしたか。もう一度ご説明いただけますとありがたいのですけれども。

【柘植委員】  
 私の理解、この「なお」は大学の教育、大学振興施策と学術施策は密接な関わり合いがあるので一緒にやりますよと行政側は意思表明しているのだと読みます。私にすると、学術研究と大学の教育とが一体となっている実態まで踏み込んだ記述をすべきと思います。あと、もちろん学術の全部ではないのですけれども、一部の学術は、工学系なんかは特にそうですが、科学技術イノベーションとも一体となっていることを社会に説明すべきです。こういうもうちょっと具体的な話に踏み込める部分もあるし、もちろん踏み込めない部分もあると思いますけれども、ここで私が指摘したいのは、原案の「一体的な検討が必要である」という程度のレベルで済ませてしまうのは、今さらそんなことを言っているのかというふうに私も思うし、社会からも見られるのを恐れます。

【西尾主査】  
 それでは、佐藤先生、荒川先生、伊藤先生の順番でご意見をお願いいたします。

【佐藤委員】  
 二つ申し上げたいと思います。第一は、今、柘植先生が言っていただいた若手研究者の育成です。これは単に学術研究者を作るというだけのミッションでは決してないわけで、社会で活躍できる人を学術研究を通じて本当に育成するのだということを強調する必要があると思います。つまり、社会で開発研究などイノベーションで活躍するためにも、基礎的なことを分かっていないままでは後から伸びることがないわけですから、基礎研究、学術研究をちゃんとやっていることが、まさに国力につながっていくような人、人材を養成することになるのだということも書く必要があるのではないかと思います。
 私自身の研究は全くの学術研究で直接、短期には社会に役に立たないことですけれども、その研究の過程で問題発見能力、数理的な解析能力は身に付けていくわけで、私の研究室出身者も社会のいろんなところで活躍しています。学術研究を通じて、本当に社会の中で活躍できるような人材が養成できているんだということも強調することが必要かと思います。
 それから、もう一つ、広報というべきものかも分かりませんけど、やはり研究のおもしろさとか大事さを伝えること、それは同時に国民が求めていることでありますし、それを下目線で伝えるのではなくて、最近言われているように双方向で対話型で伝えることによって、国民のまさに国力になるようなリテラシーは高くなってくるわけです。科学に対する、最近不信と言われていますけれども、それに関しても、国民から信頼を取り戻すこともできるのではないかと思います。

【西尾主査】  
 佐藤先生、今おっしゃいましたことを、例えば、4の5ページのところにさらに強く書くということでしょうか。

【佐藤委員】  
 そうです。我々学術研究者が国民に成果を積極的に伝える意思があるんだと。それが、私たちが税金から研究費をいただいている源泉なんだと考えているのだということを。前回のときには、具体的な取組という名前になっていたところがありましたね。まさに我々が努力して取り組むんだということを国民に決意表明することは、必要だと思っています。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 安西先生、よろしいですか。

【安西委員】  
 いいです。

【西尾主査】  
 それでは荒川先生。

【荒川委員】  
 荒川です。
 これ全体として、大変よく書けていると思って、感心して拝見させていただきましたが。1から3で述べておられるトーンが、全体として、いわゆる学術の在り方で、これが従来言われている知的探求活動をベースにして、それを大事にしていこうという、そういったトーンで書かれていて、戦略的な、あるいは要請的な研究というのは別物であるような形で書かれておられると思います。これに対して見解を今議論する気はありませんが、一方、4では、社会からの負託に応える、研究者は常に目標意識を持ち、自らの研究課題の意義を明確にすると書いてありますが、そういう行為は、我々が知的に探求、好奇心に基づいて探求する学術のトーンと、少しちがうのではないかなというような印象を持ちます。4では、具体的な役割を書かないといけないからということで、こういう形になっているのかと思いますが、少し不連続性を感じるところがあります。
 例を申し上げると、未来志向というのが、本来の我々が描く、今まで議論してきた学術という概念と必ずしも完全に一致しないのではないかという気がしますし、それから、例えば、5ページの一番最後で、資源配分においては、学術の社会的な役割の観点と書いてありますが、この社会的役割が学術の知的探究心との関係はどうなっているのか、ちょっと見えにくいところがあります。この4においては、戦略指向のトーンが入ってきているような印象を持つわけであります。
 そういうことで、今、感想を述べただけではありますけれども、3までのトーンとの整合性の観点から、4において表現されている文章を少し調整する必要があるのではないかという、そういう印象を持ちました。
 以上でございます。

【西尾主査】  
 荒川先生に質問ですけれども、そのときに2つの方法があって、4のところが3までのところと書きぶりが違うので、そこの部分を改めるという方法と、3までのところに、4における記述をある程度言及しておくという方法があると思いますけれども、先生としてはどちらがよろしいでしょうか。

【荒川委員】  
 私個人としては、4のトーンを少し3までに反映させる方が、この答申の意味として価値、あるいは、答申の価値がより出てくるのではないかなという、そういうような印象を持っております。

【西尾主査】  
 分かりました。前回もおっしゃっておられたことだと思います。
 伊藤先生、どうぞ。

【伊藤委員】  
 柘植先生のお話と関係するんでございます。5ページの下から二つ目のマルのところで、「なお」というところの前に、「研究者の自由な発想を保障し」、次は「国は、基盤的何とか」というふうに二つ分かれております。この「国は」というところからが私は大事だと思うのですけれど、基盤、競争的なバランスを配慮しつつ、振興施策全体の在り方を検討することが必要である。これの中味は、この下の2行のみではないと思うんです。
 ここの具体的な充実、要は、研究者も変わります、国も変わりますという、そういうようなところが具体的に見えないと、訴えるものがないと思うんです。この振興施策というのを、具体的に、後ろの方の別紙のところから、例えば、共共拠点の話とか、それから、大型プロジェクト・ロードマップの話とか、そこら辺の現在行われているところ、そういうものをうまく入れ込んで、こういうものを推進していきますというようなことが実際に入った方が力強いのではないかと思います。

【西尾主査】  
 分かりました。伊藤先生、どうもありがとうございました。
 伊藤先生のように、より具体的にどのように記述するかを御示唆頂けると非常にありがたく思います。財政状況が厳しい中で、国際競争力を増すために共同利用・共同研究拠点を形成して、資源を共有していくような方向は、学術界が自ら推進していくこととしては重要なことだと思います。伊藤先生のおっしゃられたようなことを別紙の方から本文の方に引き出すことは試みていきたいと思います。

【伊藤委員】  
 ちょっと足させてください。
 去年度もありましたけれども、いわゆる振興局が引っ張って、マスタープランからロードマップというきれいなものが少しずつ見えてきました。そこはやっぱり強く出して、こういうことをやっていますということを示すべきだと思います。

【西尾主査】  
 分かりました。
 先般、日本学術会議からマスタープラン2014が出ておりまして、荒川先生が、その全体の取りまとめをなさいました。それは学術界がコミュニティー全体として今後どういうことを大型研究計画として推進していくのかということを、全国の研究者の連携の下で議論した結果でございますので、グッドプラクティスとしては非常に大事なことなのではないかと思います。
 それでは、金田先生、鈴村先生の順番でお願いします。

【金田委員】  
 先ほどから、柘植委員の方からの話の中にもあったことで、その後にも少し言及がございましたけれども、私は4番のところでお願いがあります。学術研究ですから、研究推進というのは当然ですけれども、それから研究者養成というのも当然ですが、それとともに研究振興局と高等教育局とかというふうに、初中局もありますが、分担が分かれているという発想ではなくて、教育そのものが研究の推進によって、それを反映して知的社会の充実を図るということと、それを通じて、いわゆる初中局の担当の部分も含めてですが、教育に反映して新しい研究者がまた輩出してくるということの循環に結びつくわけです。この部分においても、教育、あるいは教育者の養成、あるいは社会教育への影響というようなことを、是非積極的にこの4番のところで書くべきではないかなというふうに個人的には思います。1、2、3の方は教育がと時々出ているんですが、4のところは非常にトーンが落ちてしまっていますので、そのあたりはやはり大事なことなのではないかなと思っております。

【西尾主査】  
 それを、より具体的な形で、今こういう形で行っているというような何か実例として記すことが可能なことはありますでしょうか。

【柘植委員】  
 すいません、今の答え良いでしょうか。さっき時間が無かったもので言いませんでしたので。
 まさに金田先生がおっしゃったことは、原案の4項で要約的に言うべきだと思います。金田先生おっしゃったように、それは、実は、原案の1から4ページまでで書かれていることを、まず学術的なインパクト、あるいは学術に対する危惧、これは、裏を返せば、原案では書いていないのですけれども、全て人材育成とか教育面の危惧でもあると言えます。それから、金田先生がおっしゃったように、それはひょっとしたら初等中等教育から市民教育までも影響を及ぼしているということも危惧されます。原案では4ページまでの中で人材とか教育に触れているところは極めて少ないので、触れていないところでも、そういう視点で充実して、論点を固めて、4ページまで固めていくことで、そして、私は、5ページでそれを集約していく形で、西尾先生の答えにできると思います。
 是非とも事務方は、この4ページまでに、今の見方に立って修文していただきたい。参考用に柘植のメモをあとで渡します。原案の「学術」の負の循環について書いてある「国力の源泉」と、あと人材も育たなくなってきているとか、「教育」の負の循環にもつながる危惧、各項にそういう1行を書けば、もったいないな、書いていないなというところが多々ありますので、そういうのを各項ごとに充実しますと、5ページの4ポツの、「社会おける役割を十分に果たすために」で、金田先生がおっしゃったところを全部まとめることはできると思います。是非そういう形で事務方は工夫していただきたい。

【西尾主査】  
 分かりました。具体的なご提案をいただき、どうもありがとうございました。
 鈴村先生、どうぞ。

【鈴村委員】  
 第4節の3カ所について、具体的な修文を提案したいと思います。
 第1に、ひとつ目のマル印にいきなり「社会からの付託に応える」という表現が現れることに抵抗感が在るようですので、三つ目のマル印の「次代を担う若手研究者の育成がとりわけ重要である」という文章の後に「学術研究がこの意味で『国力の源』として役割を十分に果すようにするため」と入れて吸収すれば、文章の主旨が明確になると思います。
 第2に、次のマル印のシニア研究者に関する部分の現状では、シニア研究者は積極的な役割はまったく担っていないような表現になっています。私の提案は、「シニア研究者は」の後に2行目の「学術界のリーダーとして」を挿入して、最後の箇所で「先導する役割を果たすとともに」として、「若手研究者の育成において」と繋げれば、シニア研究者と若手研究者の総合的な恊働の姿が表面に出る筈だと思います。もちろん、これはシニア研究者に期待される役割というべきもので、こうした役割を担わないシニア層に、いたずらに特権的な地位を保証する主旨でないことは当然のことです。
 第3点は最後のマル印の論旨に関わります。ここでは「資源配分に当たっては、学術研究の社会的な役割の観点から」といって、配分の優先順位に関する議論がなされています。この部分は非常に微妙な論点であり、書きぶりに関しては慎重な検討が必要だと思います。私の当面の提案は、「資源配分に当たっては」という最初の行の表現が「学術研究の社会的な役割」に直結しますと、「社会的な役割」が資源配分の優先性を決定する基準であるかのような印象を与えて、混乱を招きかねないので、ここは「社会的」を「本来的」と書き換えるということです。その主旨は、基礎的な学術研究の根幹には、社会的な要請にも先行して、純粋な知的好奇心を徹底的に追及するという重要な一面があって、稀少な資源の配分原則はこれらの両側面に衡平な考慮を払うべきだという点に帰着します。
 もうひとつ、同じパラグラフの3行目に「適切な競争環境の下で優先順位をつけ重点配分する仕組みを整備することが必要であり」と書いた後で、学術界は実際に審査や評価に携わる、という書きぶりになっています。この部分は、読み方次第では「優先順位をつけて重点配分する仕組みの設計と選択」という機能と、「実際に審査や評価に携わる」という機能は別物であり、学術界が関与するのは後者のみだという印象を与えます。しかし私は、前者の機能、つまり「優先順位をつけて重点配分する仕組みの設計と選択」という機能にも学術界が関わるべきだと思われてなりません。この考え方に基づいて、この箇所では「必要であり」の後に「優先順位をつけて重点配分する仕組みの設計と選択と、実際の審査と評価の双方に携わる学術界は」と続けることが、非常に重要ではないかと思います。

【西尾主査】  
 具体的なコメント、どうもありがとうございました。感謝いたします。今御指摘いただきました点は、反映していきたいと思います。
 どうぞ。

【瀧澤委員】  
 先ほどから先生方から御指摘いただいているように、こういう教育の重要性を強調するということ、それから、学術の重要性を強調するということは非常に大事なことだと思いますし、特に学術の重要性については、この文書全般についてよく書かれているのではないかなと思うんですが、私がやはり気になりますのが、私自身、学術研究そのもの、とても重要だと思っているんですが、投資したものがどのように効率的に使われているのかというのは、やっぱり国民の視点として、皆さん気になるところではないかなと思います。そういう意味で、4ページの、学術研究に対する厳しい見方というところの3行目のところ、「基盤的経費がいわゆるバラマキとなっており有効に使われていないのではないか」云々かんぬんというこの文章、繰り返し指摘されているというふうに書いてあるんですが、それに対して学術界はどういうふうに受け取っているのか、それは、まさにそのとおりだというふうに受け取って、それが4番の方への具体的な対策に盛り込まれるのか、それとも、そうではなくて、その指摘そのものがちょっと外れているので、そうではないんですよということを書くべきなのかということも含めて、ここが非常に曖昧模糊としたまま、対応策の方に生かされていないという印象がございます。
 ですので、そういった点について先生方にもう少しご議論いただければと思います。

【西尾主査】  
 本当に貴重な御意見ありがとうございました。
 瀧澤委員から御指摘いただいた件に関して、4の「基盤的経費がバラマキとなっており有効に使われていないのではないか」という記述に対して、学術界が、そうであるのか、そうでないのか、ということについて、何らかの答えをするとすれば、どのような記述をするのか。もし、そうであるならば、4において学術界から自らを省みたときの記述として必要なのではないかと考えます。

【小安主査代理】  
 今、瀧澤委員が言われたことに関連してちょっと意見を言わせていただきます。3番のところの厳しい見方に対して、やはり答える何かをここに書かないといけないと思います。
 それで、2点ありますが、一つはバラマキということともう一つは育成ということに関してです。育成に関して言うならば、ここで問題点として若手のポストが減少すると書いてありますが、これは簡単に言うと、シニアがいつまでもやめないからだということだと思います。これは天につばすることになりますが、やはりここはまじめに受け止めるべきで、きちんとしたターンオーバーをどういうふうに大学ができるかということが、若手のポストの問題の解決にはどうしても必要なことだと思います。例えば、もう教育に特化して自分はリサーチから身を引くというやり方もあるかもしれませんし、いろんなやり方をそれぞれの大学が考えることができるのではないかと思います。
 その上で、7ページの、デュアルサポートのシステムをもう一回考え直したらどうかというふうに話を持っていきたいと思います。基盤的経費は常にバラマキというふうに言われますが、そうではなくて、きちんとした大学の方針、戦略、そして、若手を育てるという形で、必要なところに基盤的経費がきちんと回るようにする仕組みを各大学で考えるということを書き込むことが必要かと思います。
 それから、今、瀧澤委員おっしゃったように、日本で非常に欠けているのは、中央の共通施設みたいなものだと私も常々感じていました。先ほど議論があったように、共同利用機関を利用するというふうに持っていくやり方もあるでしょうし、各大学で無駄を排して、共通な施設を持って、そこに基盤的経費が投資されるいうやり方もあると思います。そうすると、各研究室は基本的にはランニングコストをきちんと確保するという形で研究が継続できますし、効率のいい運営というのは可能になるのではないかと思います。
 そういう幾つかの具体的なアイデアを入れ込んで、ここまで学術の重要性をきちんと主張するのであれば、今度は逆に、学術界が自分たちが何ができるかということを具体的に幾つか挙げていくということが大事で、その中にデュアルサポートを改革して入れるということがいいのではないかと思います。
 長くなってすいません。

【西尾主査】  
 きょうは是非、今言っていただきましたような具体的なことを、エビデンスベースでご意見をいただけますと大変ありがたく思います。例えば、今言っていただきましたように、各大学は学内で保有している研究資源を、できるだけ他の大学にもオープンにして共有するような仕組みを構築して、国全体として学術研究の国際競争力を強化していくことは、学術界における自己改革として重要だと考えます。そのようなことを具体的に一つ一つ積み重ねて記述していくことが大事であると思います。
 それで、デュアルサポートの件は、今、小安先生がおっしゃったような形でまとめられるかどうかというところだと思います。
 何かありますか。

【安西委員】  
 こういう場ですので、ストレートに申し上げたいと思います。事務局が随分努力をされてまとめてこられているのですけれども、今ありましたように、抽象的で、こういうことだったら、今までにも言われてきたことだと思います。必要性、重要性については、具体的に我々はどうするのかということを、もう一回改めてきちんと書かれた方が良いと思います。
 私が申し上げているのは二つで、一つは科研費の問題です。
「科研費改革」と別紙のところにありまして、これは先ほどの御説明だと、研究費部会でも議論しているというお話でありますけれども、私は、この基本問題の特別委員会で、科研費はどうあるべきか、しっかり出していただきたいと思います。なぜならば、科研費はこの学術研究の研究基盤の相当大きな部分を占めておりますので、当然のことだということであります。
 具体的に申し上げますと、科研費は今年度、助成額で削減といいましょうか、減少しています。まだきちっと決まっていませんが、若手の研究者が、例えば、科研費の若手研究等々が採択されると、実質的な研究費は1割減ぐらいになるのではないかと思います。これは私見なので、お許しいただきたいのですけれども、そういうふうに思います。つまり、200万が180万になる、そういう感覚です。これは、採択率を落とさずに全体の額は縮小するということは、大体そういうことになるわけで、一体これが続くとどういうことになるか。基盤経費がなかなかタイトな中で、こういうことが起こっていくとどういうことが起こるのかということを、是非考えていただきたいと思います。審査方法の見直し等々、別紙に書いてありますが、今申し上げたように、科研費が、学術研究を支える研究費としての予算基盤が極めて脆弱になっているということを是非申し上げておきたいと思います。
 それから、科研費につきましては、国際共同研究の推進、あるいは若手云々と書いてありまして、これはもっともなことで、若手PIの養成は日本にとって極めて重要であるにもかかわらず、なかなかそこがうまくいかない。これは小安先生も言われましたけれども、シニアの研究者で、研究をやっているかやっていないか分からないような、そういう人たちがポジションを占めているということがかなり大きいと思います。
 これにつきましては、科研費に限らず、この間も申し上げましたけれども、私は戦略研究、あるいはプロジェクト研究についても、投資効果の評価が本当に行われているのかというと、実際にはほとんど行われていないのではないかと思います。いずれにいたしましても、サイエンスメリットできちんと評価できるように、それは私ども振興会もしっかり、審査の仕組み、あるいは審査の文化を築き上げていかなければいけないと思っております。
 それについても、内部ではいろいろな検討をしているところであります。これからの若手・シニアに関わらず、どのようなサイエンスメリットがあるのかを応募された研究について評価をきちっとしていくことが大事です。それから、科研費につきましては、非常に長期的な見方が必要だということは事実であります。長期的な視点に立って、どのような評価がなされるべきかということも、今、振興会ではいろいろな検討を進めているところでございます。
 それから、もう一つ、大学の問題でございますけれども、これは中教審の大学分科会等で長く大学の問題に関わってまいりました経験から申しましても、大学が身を切って、今申し上げたような人事等も含めて、自分を正して前へ進んでいただかないといけないと思います。大学の基盤的研究が細っていることは事実でありますけれども、資金と改革は車の両輪でございまして、改革だけをやればいいというものではありません。また、資金だけを増やせばいいというものでもありません。両方を進めていくことが大切で、それを具体的な形で書き込むことが必要です。さらに、この基本問題に関わる方々が大学改革に関心を持たれて、自分の研究だけやればいいんだということではなくて、研究組織が革新をしていかなければいけないのだと、それをどうやったら具体的にできるのかということを、身をもって考えて実行していただきたいと思います。
 大学分科会では、大学改革待ったなしということを何度申し上げてきて、最近、徐々に大学もいろいろな形で変わりつつあります。この学術研究が本当に進むように変わっていくためには、学長のみならず、一般の教員の方がそういう意識を持っていただかないといけないと思います。基本問題特別委員会のこのまとめが、大学改革に資するものとなってほしいと思います。
 以上ですが、あと、「社会的役割」という言葉が、短絡的に捉えられる可能性はあるのではないかと思いますので、付け加えさせていただければと思います。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 まず、安西先生から貴重なコメントいただきましたけれど、この4のところに具体的な項目として科学研究費に関する項目を設け、今おっしゃっていただきましたような内容を、具体的な改革への方向も含めて記述するということで進みたいと思います。
 さらに、大学における改革が待ったなしということに関しましては、どういう形で具体的に書けるかということはいろいろ考えなければならないのですけれども、4のところには書く必要があると考えます。

【安西委員】  
 西尾先生、ちょっとだけ、付け加えさせていただきます。
 科研費の助成額と予算額とは違います。現在は基金があって、それを毎年、そぎ取りながら手当てをしているような状況でございます。予算額と助成額は別だということも是非御理解いただきたいと思います。また、基金化の推進ということは、研究者、学術研究を進めるためには必須のことだと思っております。
 ほかにも多々ありますけれども、ここまでにさせていただきます。

【西尾主査】  
 それと、先程、瀧澤委員から言っていただきましたことが、大切なのですが、バラマキでなく本当に有効に使われているのかということに関するフォローアップがなされているのかということについて言及する必要があると思います。今、安西先生の方からおっしゃっていただきましたように、科学研究費のみならず、戦略経費も含めて、自らが実施していくことを4のところで明言しておく必要があると思っています。
 それと、小安先生には、この部分の記述に関して、先ほどおっしゃっていただいたことを具体的な文面にしていただいて、事務局の方にご提出いただけると大変ありがたく、是非お願いいたします。

【小安主査代理】  
 分かりました。

【西尾主査】  
 瀧澤委員、先ほどおっしゃっていただきましたことにつきましては、今までの他の委員の方々からのご意見で、ある程度回答が出ていると思います。ただし、さらにこういうことに関しては明確に回答するべきである、というようなことがありましたらご意見をいただけますとありがたく思います。

【瀧澤委員】  
 先ほど小安先生がおっしゃっていただいたシニアの方の硬直的な状況ですとか、人事に関係するところは聖域になっていて、なかなか今まで改革が進まなかったところだと思います。そこを触れていただくのは大きな前進ではないかなと思います。ほかにも考えてみたいと思います。

【西尾主査】  
 鈴村先生、ご意見をどうぞ。

【鈴村委員】  
 いまのご発言との関連で、私の先の発言を再度繰り返させていただきます。シニアな研究者には果すべき重要な役割があるが、その義務を担う意思と能力を欠く場合には、シニョリティは学術界において特権を保証しないということを、私も重く考えています。

【西尾主査】  
 それと、社会と学術の記述に関しましては、安西先生も懸念をお示しになりましたけれども、そこの書きぶりについては、鈴村先生が先ほど4のところの書き方で、社会的な役割ということの書き方よりも、学術本来の役割というような書き方の方が良いとのコメントをいただきましたところについても、記述を検討していきたいとは考えております。
 平野先生、どうぞ。

【平野委員】  
 簡単に2点、思うところを述べさせていただきたいんですが。
 7ページ目のところに、各項目の第1番目に基盤的経費の確保とあります。私も当然、基盤的経費というのは非常に重要であるということをよく認識した上での発言でありますけれども、以前もエビデンスといいますか、あるデータに基づいて、やはりきちっと説明をした方がいいと申しておりました。それとともに、大学で改革すべきところは、それに応じてやるべきであろう、そう思うんですが、現実的には、運営費交付金のかなりの部分が人件費になっているのではないかと考えます。では、それだけ人件費に行くんだとしたら、教育と研究をきちっと進める上で、どういうような組織がいいのかというのを、やっぱり大学は考えていかなければいけない。常に基盤的経費が増えてくる時代ではないということだけは、残念ではありますけれども、認識して進まなければいけないのではないかと、思っております。この点については、私案のところでお話ししたように、危機的状況であるということとともに、自己改革が必要であるといううちの重要なポイントであります。
 その中に、先ほど来お話がありますように、シニアの方も含めて、どういうふうな位置付けをしていただいたらいいのかということであります。シニアの方は要らないんだという意味では全くなくて、重要な役割を分担して持っていただくような体制がとれないのかということであります。
 それから、加えて、もう1点でありますが、全体でどうしても、私たちは学術の振興のありかたという視点で話をしていますから、学術というのはきちっと書いてもいただいていますので分かるんですが、全ての文部科学省に来る予算が学術研究のというふうに受け取られる面が多いにあります。これは戦略研究を含めてでありまして、戦略研究が悪いとか、そういう意味ではないんですけれども、学術研究のところでどうなのか、それから、教育のところの予算としてはどうなっているのかというのは、これもエビデンスを含めて、弁明ではなくて、人材育成もかなりの部分をということをわかりやすく説明する必要があると考えます。単に若手研究者の育成というだけではなくて、多様な面で活躍できる人材育成をしているのだ――あんまり甘えてはいけませんけれども、していくんだということは、きちっと言い直さなければいけないのではないかと、思っております。
 是非、分かる範囲はエビデンスを出しながら、数字で最近どうなっているか、最近どうなのかということを見ていかなければいけないのではないか、こう思っております。
 以上です。

【西尾主査】   
 どうもありがとうございました。
 平野先生におっしゃっていただきましたが、こういう財政状況の中で、大学がそれに対応していくような組織の改革ということですけれども、何かもう一歩踏み込んだ書き方はできるのでしょうか。

【平野委員】  
 よろしいでしょうか。
 私は、教育の分野を含めてでありますけれども、ある変遷は必要であろうと思いながら、しかし、基礎教育の部分というのは、これは共通的な課題として対応し、研究分野の教育さらに研究組織については、根幹はなくしてはいけませんけれども、変えるべきところは、同一大学内では、限られた予算や設備を効果的に生かすような対応が必要ではないかと考えます。当然、大学によっては難しい環境の中で鋭意努力されていることは理解しています。

【西尾主査】  
 武市先生、お待たせしました。

【武市委員】  
 ちょっとタイミングを逸したような気がいたしますが、安西先生がおっしゃられた、5ページのあたりからは、社会における学術研究という言葉が強く、あるいは、誤解されがちであるという、そういうお話がございましたけれども、一方で、3ページに、2として社会における学術研究の役割を、我々がこうだと定義したことが書かれているわけです。もちろん、かなり抽象的なものですから、1から4を見る範囲においては、学術と社会との関係は余り誤解を招くようなことではなく、学術研究の社会における役割というのが分かるわけですが、5ページで、具体的な話をしようというときに、学術研究が社会における役割を十分果たすためにというところで、先ほどのマル1からマル4に書いてあったようなことと、ここで具体的に何か書こうとすることとの関連がないのではないでしょうか。書きにくいとは思いますけれども、少なくとも、その関連をつけるような表現にしないと、読む人にとってみると、理解がしにくいのではないかという感じがするのが一つです。
 もう一つは、かなり具体的にとおっしゃる中では、恐らく、今我々が抱えている現状と課題、この3のところに個別的なものが書かれた上で、それをこうすれば先ほどの改革につながるという言い方の方が望ましいのではないかという感じがいたします。
 それから、改革という言葉がもちろん出てくるし、1はイノベーションですけれども、大ざっぱに言えば改革でしょう。その改革というものが、ちょっとこれは言いすぎかもしれませんが、改革すればそれが十分に果たせるというかのように、改革することが目的化してしまわないようなことにしないといけないのではないでしょうか。我々は今まで何かを改革したということで、振り返ってみると、失敗したと思えることもあるのでしょうが、そういう評価を一切我々がしてこなかったことが問題であろうと思います。非常に難しいことですけれども、例えば、大学の組織改革をすればよくなると信じるのはちょっとまずいのではないかという気もいたします。このことは全く感想ではありますが。

【西尾主査】  
 ありがとうございました。

【安西委員】  
 よろしいですか。
 私が、「社会的役割」が少し出すぎかなと申し上げましたのは、3ページに書いてあることは結構ですが、短絡的に斜めに読まれた場合に、どうしても、明日の御飯にしてくれるのかというふうに読まれることが多いので、社会における真の役割、そういう書きぶりにしていただければありがたいということだけです。

【西尾主査】  
 どうぞ。

【安西委員】  
 人材育成のことで申し上げます。振興会は、特別研究員事業をこれまで進めてきております。特にポスドクの問題につきまして、ポスドクが日本に今1万5,000から1万7,000人ぐらいというデータがあります。その中で特別研究員はごく一部分ですが、多くは短期的な、いわゆる戦略的なプログラムで雇用されているポスドクです。夢もあり、志もあり、優秀なポスドクがたくさんおります。しかし、その先のキャリアパスがないということと、シニアの大学の研究者が、それほど研究に邁進しなくても生活が保障されているということとの関係をどのようにしていくのかということについて、私は、先ほどサイエンスメリットで評価すべきだと申し上げました。労働法規など、いろいろな問題はありますが、この基本問題特別委員会として、学術研究の推進のために、若手も必要だと言うのであれば、若手研究者の生きる道をきちっとつけるということについて、責任を持って我々が進めるということを宣言すべきなのではないかと思います。

【西尾主査】  
 この辺で、今までのご意見を聞かれて、小松局長の方からコメントなどをお願いいたします。

【小松研究振興局長】  
 さらに御議論を頂きたいと思いますけれども、まず、様々な具体的な提案の段階にきょう進んできているような感じがいたします。ありがとうございます。提言を頂いて施策にしていく繋(つな)ぎは私どもの方でいたすことになると思いますので、是非さらによろしくお願いいたします。
 これまでの御議論はいろいろと反映させていただくことといたしまして、二、三だけ、本日の御議論について申し上げます。一つは、先ほどから出ております、学術のいわば本来的意義と、今話題になりました社会的意義の、二つについて少し分かりやすく繋(つな)ぎをさせていただきたいと思っております。全体構造に関わることでございます。
 3ポツまでと4ポツの部分は、後でよく座長とも御相談をさせていただきますけれども、5ページの4ポツの最初のところに、全体の総括として、先ほど言ったような意味での役割等を改めて出して論ずるというようなことではっきりさせないと、今おっしゃられたような不連続感とか性急感とかが出てくるかと思います。そういう形で構造のつなぎなどを考えてみたいと思います。
 それから二つ目に、全体に関わることで申し上げます。今日、大分示唆に富む御意見を頂いておりますけれども、教育や人材育成との関わりにつきましては、文部科学省全体での動きを見ますと、学校教育に加えて社会教育という話もありますが、初等中等教育の教育課程については相当議論が進んでおります。さらに、義務教育と高等教育の間に挟まれて、比較的問題意識がはっきりしておりませんでした高校教育についても、これを取り上げて議論するということが進んできております。そして、初等中等教育と高等教育をつなぐところは、今まで入試というだけだったわけですけれども、その両方をつなぐという議論が進んでおります。
 大学へ入ってからのことを申し上げますと、学部を中心とする学位課程を、どのように学位課程として編成して実行していくかということについては、数年前からお話が進んでいて、1年数か月前にも本格的なものが中央教育審議会から出されております。
 さらに、大学院につきましては、10年近く前から、大学院の学位課程というものについて体系化を図るという観点から、道半ばではありますが、提言やその施策要綱が出されております。
 こういった点を、実績を踏まえながら、分かりやすく御議論いただく必要があろうかと思いますので、今言った、そういった流れをどう生かすかという観点から、具体的に説明とインデックス化をしておくということが必要かと思います。
 いずれにしても、学校教育の体系で言えば、初等中等教育から学部・大学院、そしてポスドクへとつながることを背景として、それとの循環において学術研究の意義を捉えるということで書き込むことができるかと思っておりますので、こちらを調整させていただきます。
 それから、科研費について具体的な改革を書き込むということも言及がございました。これにつきましては、特に安西先生の御意見をもう少し具体的に展開して方向替えをさせていただきたいと思っております。また、若手の働く機会の保障といったことを、学術界や行政を含めてどうするかということも横断的な話題かと思いますので、その点は入れるようにちょっと整理をさせていただきたいと思います。
 今までのところで言うと、横断的なところは以上のようなことであり、さらに次の御議論を進めていただければよろしいかと考えます。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 羽入先生、どうぞ。

【羽入委員】  
 4について、二つの点を申し上げたいと思っておりました。
 先ほど柘植先生がおっしゃっていたことと重なるんですけれども、若手といったときに、若手研究者というところにスポットが当たりがちですが、やはり次世代ということを考えて、若い人たちを育成することが、この観点として必要かと思っております。
 若手研究者に話を持っていった場合に、安定的な研究の場というのが非常に重要なことは確かなんですけど、若手研究者が安定的な研究の場にいると、若手はいずれ若手でなくなるので、そこをずっと占めてしまうということが、循環をもたらさない可能性も生じさせます。そこで、もう一つの視点としては、人材の流動化も考えざるをえないのではないかと思います。
 このようなことを考えて、今、大学では、大学改革プランで示されていることの要素の一つに、人事給与制度改革ということが非常に強く言われておりまして、どこの大学も国立大学の学長は大変積極的に臨んでおりますが、その人事システムの改革ということが人材の流動化にとっても重要であるということを、どこかに入れてもよいのかなと思います。もちろん、反面、それは若手の人の流動化であり、不安定になってしまってはいけないんですが、学術分野の人材の流動化というようなことが、記されてもいいような気がいたしました。具体的には、多分、三つ目のマルぐらいのところにあり得るかと思っています。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 金田先生。

【金田委員】  
 言いたかったことのタイミングを少し逸したかもしれませんが。
 この議論の全体といたしまして、改革とか、それから、ネガティブな意味では、バラマキという表現もありましたし、そういったことを全体の論調として見たときに、改革については、先ほど武市先生からの御注意もありましたように誤解される可能性がありますが、非常に大事なことだと思います。しかしながらそのように注意したとしても、依然としてそういうふうに読まれてしまうという可能性もあると思うんですね。そうすると、5ページ目の下から二つ目のマルですが、「学術研究の振興に当たっては、研究者の自由な発想を保障し創造性を最大限発揮できる環境を整えることが極めて重要である」と書いてありますけど、この表現が何か浮いてきそうな気がするんですね。これは、大変重要なことは当然なんですけれども、これはなぜ重要なのかということを、ここに指摘をしておかないとまずいのではないかなと思います。
 そうすると、結局のところ、私は余り創造的な意見のない文系ですが、やはり研究者の自由な発想を保障し創造性を最大限発揮できる環境というのは、研究の多様性を保障するということと、その多様性があるということが将来の発展を保障するということだと思いますので、その二つの論点を、文章はまだ熟しませんけれども、是非ともここに入れておいていただかないと、この表現がちょっと浮いちゃって、せっかく重要であると書いてあることが、効果を発揮しないのではないかなということを恐れます。その点を一つ付け加えさせていただきます。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 ほかにご意見はございますか。どうぞ、荒川先生。

【荒川委員】  
 その5ページ目がある種結論といいますか、全体の方向性を示しているところだと思いますが、全体として、最後に何を求めているのかというのが、どうも見えていないような気がいたします。
 結論的に言えば、学術というのは非常に重要であり、今後も学術に関する予算を維持し伸ばすべきであると述べるというのが、この節の目的ではないのかなという気がいたします。もしそうであれば、それに向かって論理を構築し、結果としてそういう帰結になるというような書き方がなされている必要があるわけですが、どちらかと言えば、これは順番に、ややランダムに書かれているような気がいたしまして、そういう結論になかなか到達し得ないのではないかなという、そういう印象を持ちました。

【西尾主査】  
 非常に貴重な御指摘でして、4のところは、以前は、国の施策としてどういう改革を進めるのか、大学側はどういう形で自己改革に臨むのかというような書きぶりであったのを、前回、それを課題ごとに両側からの記述として書きましょうということになりました。まさに荒川先生が、今、おっしゃいましたことからすれば、その課題項目として何を挙げていくのか、ということをより明確にしていかないと全体的にこの審議のまとめで何を訴えていきたいのかということが明らかになっていきません。
 先ほど来のご意見から、科学研究費の問題は学術研究を推進する上での1つの重要な課題ですので、項目に挙げたいと考えます。それから、いわゆる特別研究員のことに関しましても、今後より踏み込んで書いていくことが大切だと考えます。さらに、デュアルサポートの問題は、先ほど小安先生がおっしゃっていただきましたように、自らの改革も含めて、その重要性を訴えていくこともできると思います。以上のような項目をはじめとして、最終的にここで何を強く訴えたいのかということをそろそろ決めていく必要があると考えます。

【伊藤委員】 
 今の荒川先生のお話で、私、聞き損じたのかもしれませんがお許し下さい。予算といったときに、直接的な予算というのと、予算が講じる、例えば人事とか、施策とか、そういうのもあると思うんですね。実際、お金に走るというのが非常に強く出ます。しかし人事に対する施策をうまく織り込めるような、そういう言葉を、私、すぐ出せませんけれど入れられればと思います。例えば、研究者側は研究者側で、例えばテニュアトラックとか、キャリアパスとか、そういうのを努力するというのもあるでしょうし、それから、いわゆる国としてはこういうことというようなことが、それが予算措置によってできるんだというような、そういう道筋があると、人事が見える形で動かせる可能性がある。そういうことができればなと思うんでございますけど。

【西尾主査】  
 鈴村先生、どうぞ。

【鈴村委員】  
 荒川委員のご発言はもっともですが、それと並んで、学術側にも
 優先順位をつけて重点配分する仕組みの設計及び選択と、実際の審査と評価の双方に誠実に携わることに、強いコミットメントを表明する義務があると思います。特別委員会の報告書の結論部分には、この両側面を2本の柱として書くことが、報告書の迫力に関わるのではないかと思います。

【西尾主査】  
 貴重な意見、本当にありがとうございました。
 先ほど安西先生からも、何回か学術側としての自らの覚悟についてコメントいただきました。そのことについては、佐藤先生もこれまで何回も言ってくださったことでして、その覚悟が審議経過の報告に記されていないと片手落ちだと考えます。さらに、また、瀧澤委員のご意見も、まさにそのことをおっしゃっていただいているだと思います。さらに、平野先生がおっしゃられていたことも、大学自らが、現況の中でどのように大学を改革していくのかということに関しての明確な方向付けを書くことの重要性をおっしゃられているのだと思います。
 今までのところ、このことに関する記述が弱いわけでして、それを強化していく必要があります。そのためのシナリオ付けが必要かと思いますが、いかがでしょうか。

【小安主査代理】  
 そういう意味でいくと、最初の方に戻りますが、1ページの一番下のところ、我々がこの委員会で何をするかという部分に責務として「必要な自己改革の具体的方策等を提示する」と書いてあります。4番ポツには、先ほどから出ていますように、教育と学術をきちんと一体化して施策を進めていただきたいというような提案が出てきますので、「はじめに」の一番下には「具体的な学術の振興、施策の在り方に関しても提案し、さらに自己改革の具体的方策等を提示することがここでの責務である」というような書き方をして、最初と最後を合わせるようにした方がいいのではないかと感じました。

【西尾主査】  
 貴重な提案、ありがとうございました。
 きょう、学術研究と社会との在り方ということで何回か意見をいただきましたが、私自身、例えば、EU圏において、学術研究と社会との在り方をどのように捉えているかを調べてみましたが、最近は、社会の中における学術研究、つまり、社会の負託に応えていく学術研究ということが強く打ち出されています。その観点から、学術の分野と社会とのインタラクションをより高める必要があるということを論じるレポートがいろんなところから出されております。そこで、先ほど小松局長がおっしゃっていただきましたが、4の最初のところに、そのような潮流を参照しながらも、その両面を書いていく必要があるのではないかと思っています。

【小松研究振興局長】  
 ちょっとよろしいですか。

【西尾主査】  
 どうぞ。

【小松研究振興局長】  
 ありがとうございます。
 大分御議論が進んでまいりましたので、今までの進みぐあいや展開を一つだけ振り返らせていただきます。最初の現状等に対する認識、ここについては、いろいろ御意見が出て、まとめると同時に、強い危機感をしっかり出すようにということと、それから、できるだけエビデンスベースで書くようにということで、その方向でまとめるということが一つ。
 次に展開の中で、最初の構成案では、学術界の方で現状認識に基づいて、こう持っていきたい、直すということがあり、それを自主的・自律的に行うためには、国はこういう支援をすべきだという構成でやろうかということでございました。しかしそうではなくて、別の案があるのではないかということで、この危機状況に対して、問題点はどこにあるかということを整理して、国がどういうふうに対処していくべきか、学術界としてはそれにどう呼応するか、という順序がよいのではないかという御意見が大勢となりました。さらに、その両側から書こうという御意見もいただき、現在のような形になっているというように理解をいたしております。
 それを踏まえて、さらに次に進める場合、少し羅列的になっているところや、さらに構成を工夫するというところは、そのようにさせていただいたといたしまして、ここに書かれているものをまとめれば、例えば予算、制度、各大学等における試みのエンカレッジであるとか、そういったところに政策として自ら浮かび上がるというような形までは大体見えてくると、御議論とこのペーパーを見て考えております。
 その上で、さらに具体的な政策パッケージまでおまとめいただくのか、あるいは、その手前あたりで項目を構造的に整理していただいたあたりで御提言を頂くのか、さらにその先にお考えを頂いて整理をしていただければ、私どもとしても非常にありがたいと。
 時間が限られている中で大変恐縮なのですが、事務方のことで申し上げますと、そう理解いたしております。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  
 どうもありがとうございました。
 もう少し時間がありますので、どうしてもこのことだけは言っておきたいとか、そういうことがありましたら御遠慮なくどうぞ。

【小安主査代理】  
 今、局長におっしゃっていただいたように、これから新しい施策をお考えいただくときに、これは最初からここでも意見が出ていることですが、是非とも長期的な視点の施策にしていただかないと、また大学が混乱することになると思います。短期的なプログラムをやって、終わったら、じゃ、今度は次のプログラムだと言われて、これでずっと大学は振り回されてきたということを、多くの方がおっしゃっていました。したがって、長期的な視点で何が積み上げていけるかという形で考えていただくことが、学術界全体にとって、そして、大学にとって、教育、人材育成、全てにとって大事なことだと思います。そこを是非よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  
 ほかに何か御意見とかコメントとかございませんでしょうか。安西先生、どうぞ。

【安西委員】  
 付加的なことだとは思うのですけれども、日本と欧米を比べたときに、学術研究の在り方として違うのが、新しい分野、融合分野を作ってリードしていけるかというところが、データ的にもかなり日本は脆弱だと考えられます。因果関係については、はっきりしたエビデンスがあるわけではありませんが、大学の構造、研究の構造が、どうしても伝統的な分野が先に立つ、新しい分野はなかなか永続的な組織になりにくいのではないかと思われます。
 付加的と申し上げたのは、ここの委員会では、大学改革は主体ではありませんけれども、大学人として、融合研究というのは、単に伝統的な分野の人たちの寄せ集まりで、コミュニケーションをとればできるというものではなくて、誰かが伝統的な分野から出てきて、リーダーシップをとって、その分野の組織作りも含めて進めていかなければいけないので、WPI等々もそうでありますけれども、なかなか永続的な組織にはなりにくいという状況があるかと思います。そういうことは大学人の役割だと思っております。

【西尾主査】  
 特に融合分野を開拓しようとしますと、今、安西先生がおっしゃっていただいた問題に直面してしまいますので、今のようなことも、是非4のところで、大学における今後考えていくべきこととして書いていきたいと思っております。
 先ほど瀧澤委員の方から、バラマキ等のことについて、どう考えているのかということがございましたが、私自身、具体的なことで1つだけ思いますのは、科学研究費が基金化され、それから、FIRSTも基金化されて推進されたことです。大学においての研究費を考える上で、無駄なもの購入しないという観点では、今後、さまざまなプロジェクト経費に関して、年度単位ではなくて、複数年度にわたる基金形式にして運用をしていくことは有効ではないかと考えております。
 ほかに何かございませんでしょうか。
 そうしましたら、議論は尽きないところですけれども、ちょうど予定の時間でございまして、本日はこのあたりとさせていただきます。
 追加の意見等ございましたら、事務局へメール等で御連絡いただければと思います。先ほど来、幾つか宿題をお願いさせていただいた委員の方もございますが、次回がすぐ近くの22日開催でして、前回でまとめていく方向が見えてきて、きょうでよりブレークダウンした形で議論ができまして、次回で審議経過の報告として出して行けるところまで進めたいと思っております。
 次回は、きょう頂きましさまざまな建設的な御意見を踏まえた修正案をお示ししまして、さらに議論を深めた上で、それをまとめて、5月7日に予定されております学術分科会に報告し、審議をお願いしたいと考えております。
 本日は、このあたりで終わらせていただきたいと思いますが、今後のスケジュール等について、事務局の方から説明をお願いいたします。

【中野学術企画室長】  
 どうもありがとうございました。
 今、主査からありましたように、次回につきましては、4月22日の火曜日の16時から18時を予定しております。文部科学省3階の3F1特別会議室でございます。改めて御連絡させていただき、出欠の確認票をお送りさせていただきます。
 またその後、学術分科会にということもありましたが、本日は大変踏み込んだ御議論をいただきましてありがとうございます。特別委員会の先生方にも、事務局の方から御意見いただくということでメールをさせていただこうと思いますが、もともと学術分科会で御提案いただいた際から、分科会の特別委員会メンバー以外の先生にも適宜情報を提供して、御意見をということもありましたので、そちらも併せてさせていただきたいと思っております。分科会は、5月7日を今のところ予定しております。本日は、マイクシステムを1人一つ確保できず、大変失礼いたしました。どうもありがとうございました。

【西尾主査】  
 それでは、どうもありがとうございました。本日の会議はこれで終了にいたします。本当に貴重な意見をたくさん頂きまして、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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