資料4 第6回学術の基本問題に関する特別委員会概要(ポイント)

科学技術・学術審議会 学術分科会
学術の基本問題に関する特別委員会
(第7期第7回)
平成26年7月17日

 

○2014年は、科学技術基本法が制定されて20年目など、様々な節目の年であり大事。こうした状況で、科学側の自律的改革を進めていく必要があり、NATUREやSCIENCEは、「科学システムの再考を(Rethinking the science system)」・「政治の圧力がかかる前に科学の側が研究資金の効果的使用について、自律的に改革する必要(Tough choices)」等主張している。あるいは、EUの「Horizon2020」、Inter Academy Councilの「Responsible Conduct in the Global Research Enterprise」等の会議報告書において、ソーシャルサイエンスや科学と政治・行政の行動規範等に言及されており、また、GRC(グローバルリサーチカウンシル)、国連事務総長のサイエンスアドバイザリーボード等々の世界規模の会議が開かれようとしているが、日本はこのような動きに対して非常に感度が低い。

○Inter Academy Councilの「Responsible Conduct in the Global Research Enterprise」では、現在、途上国がどんどん研究費や研究者を増やし、サイエンス自体がコマーシャル化される中、世界標準的な科学のやり方(レビューシステム、学会の在り方、ジャーナルの在り方、大学の在り方)等の枠組みをまとめている。こうしたものを大学等々で教育の素材にすべき。これからは、国連やユネスコ、OECD、アカデミーの動きに加えて、インターナショナルなフォーラムも様々に動いていく。こういったものが動くにあたって、ネットワーク化が大事なものになっていくのではないか。

○昨年11月のワールドサイエンスフォーラムで出された強いメッセージに、イノベーションには当然社会がスコープに入るので、現実のニーズ、問題解決に社会科学がどう自然科学とコンビネーションしながら解決をしていくかというものがあり、インターナショナルソーシャルサイエンスカウンシルの存在感が非常に強くなっている。

○世界の動きは非常に緊迫感があり、科学者が自らスピード感を持って新しい時代をいかに作っていくかが密に語られる中、日本の声がほとんど聞かれず、かなり危機感と違和感を持っている。GRCは2015年5月に、第4回会議を東京で開催する。第3回会議では、世界の学術振興機関の長の声として、基礎研究の振興、若手研究人材の育成、国際共同研究ネットワーク、の3点についてあげられていた。第4回は南アフリカの当局と共催し、科学的ブレークスルーにおけるファンディングの在り方、教育・研究のキャパシティビルディング(人材育成)がテーマとなっている。

○top10%補正論文数の日本のシェアが落ち込んでいる一方で、中国の躍進が非常に大きい。研究費に関しては、世界は増加しているのに対し我が国は減少している。これはtop10%補正論文数のシェア低下にも繋がっていることから、こうした研究費の利用状況等を的確に把握していく必要がある。

○アメリカでは、大学予算が上げ止まり、余りに急激にサプライのリソースが縮小する中、人材育成は急には変化できないところ、様々なメッセージが出ており、政府全体として危機感を共有している。全体のトレンドでは、今までのように急激な増大はないが、上手にアジャストしながら、バイオ系人材をケミストリー系の人材に徐々に転換していく等、行われるものと思われる。また、大学だけではなく、ファンディング機関一体となって動いていくと思う。

○今出てきた課題以外にも、日本が独自で持っている課題があるのではないかと感じる。日本では大学院教育が十分なされていないこともあり、このような視点も提言に盛り込んでいく必要があるのではないか。

○今度の中間報告で特に良かった点は、学術政策、大学政策、科学技術政策の3つが協力して一体となって取り組んでいくと明示したことである。また日本で、学術システム研究センターや研究開発戦略センター等のシンクタンク機能を持つところができてきたが、上手く連携がとれておらず、連携のためのネットワークを構築することが必要である。

○日本はかなり緊迫感を持って世界へ参画、コミュニケーションをとっていかなければならない。GRCの東京大会では教育研究のキャパシティビルディングを議題として取り上げるが、発展途上国の関心は高く、大学院や若手研究者の教育システムを日本に聞きたいという状況がある。日本としてはそれを助けながら、世界のネットワークに関与してリードしていくことが必要である。

○様々な短期的なファンディング制度がばらばらと出され、特に学術研究、基礎研究をやっている研究者は困惑している。これは日本の研究開発、特に政府が関わる研究開発全体のパフォーマンスにネガティブな影響を及ぼしている。

○現場にいて感じるのは、政策等の意思決定の際に現場の声が届かないということ。データを活用して分析するのも大事だが、現場の声を吸い上げるシステムを作ることも必要ではないか。

○日本学術会議は世界のアカデミーとは形態が大分異なっているが、原因として事務局に予算がなく、自分たちで調べられないという構造的欠陥があるので、もう少し我々から提言できればと思う。

○人文学・社会科学も学術研究の一翼であるが、この議論の中で一翼となるような形で議論が出てきていないことは非常に大きな問題。「World Social Science Report」では環境問題を扱っており、これは世代間の資源配分問題で、哲学的な問題も入っているが、昔から哲学者は将来にかけてのデザインには踏み込んでこなかった。しかし今まさにソーシャルサイエンスでは、サイエンスポリシーに対する社会学的研究により将来評価のフレームを作るなどしている。日本はこうしたフロンティアに出ていっておらず反省点が多いが、これも将来の道のりを考える上では非常に重要であり、こうしたフレームワークに関して、人文社会科学についての目配りを入れて頂きたい。

○基礎研究に関して、適切な評価が行われていないとか、定量的な指標が無いと言われるが、基礎研究だけに定量的な指標が無いわけではなく、その他の短期的プロジェクトにも指標は無いのではないか。短期的プロジェクトも、政府出資の研究資金の投入効果等の評価をしっかりやっていない。

○ドイツの科学技術の質は非常に高く、EUが抱える財政危機にもかかわらず、メルケル首相以下、科学政策に携わる人達が上手くリードしている。一方で、例えばアメリカの状況はかなり異なっており、「欧米はこうだ」という一元的な議論はあまりよろしくないのではないか。

○ドイツに加え、フランスやイギリスもモデルとして学ぶべき点があるのではないか。

○分野によってモデルとすべき国は異なる。また、制度の国際比較は重要だが、現在及び将来の国民福祉の改善に貢献するという国力の源の視点からよく検討するべき。

○科学技術及び教育等に投入する基盤的予算は、研究教育で一体化しており分けづらいため、大学においてどこまでが真の研究費用になっているか見ていくと、トータルはもっと大きな減少になっていると思う。また、基盤的経費をもっと増額せよということも言いたいが、そればかりでなく、研究予算については本質的な間違いを日本も犯しつつあるのではないか。例えばDARPAの表裏を理解した上で日本版DARPAなどと言っているのか。中間報告で触れられているが、さらに強調が必要だと思う。その際、NSFや中国の状況や改善の取組などをエビデンスとして入れられるとよい。

○ドイツ、フランス、イギリスの例が挙がったが、これらの国では、適切でない科学政策は自然に排除されるようなシステムが上手く機能しているのではないか。この点日本は島国であるため、科学政策が国際レベルの批判の目にさらされなく、現場の人間は科学政策に振り回されている。そこで、研究者がもっとオープンな議論をして、政策に反映させるシステムが必要である。

○科研費の申請資格のある人のうち、75%の人は一度も取得したことがないとのデータがある。応募して取れなかったか、それとも応募もしていないのかは分からないが、これはデュアルサポートシステムを考える上で重要である。

○人文学はもともとお金がかかるものではないが、インターナショナルなカンファレンス開催等手間がかかる。リサーチアドミニストレーターなど、システム上の様々な提案に対して目配りがほしい。日本の品格や知性を世界に訴える交流等のシステムがあるとよい。

○日本語といういろんな意味で孤立した文化の中では人文学もそれなりにやってきているが、国際的な発信という点では極めて問題が多い。システム、資金の両面における発信のシステムを検討する必要がある。

○イノベーションの定義について、報告の中では「学術研究による知の創出を基盤とし、経済的、社会的・公共的価値の創造に結びつける革新」としてきたが、CSTIの名称変更なども含め、現状の社会では一般的にイノベーションは出口という意味でとらえており、報告書をまとめる際は気をつけた方が良い。単なる出口ではないイノベーションを訴えることが必要。

(以上)

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