学術情報委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成26年4月18日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、喜連川委員、倉田委員、後藤委員、斎藤委員、竹内委員、辻委員、土方委員、美馬委員、山口委員、吉田委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、小山学術調査官
(事務局)小松研究振興局長、山脇大臣官房審議官、板倉振興企画課長、下間参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、松本学術基盤整備室参事官補佐

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

4.議事録

【西尾主査】 おはようございます。時間になりましたので、ただいまより第10回学術情報委員会を開催いたします。
委員の皆様には御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、前回お伝えしましたとおりに、これまでの審議やヒアリング及び各委員から頂きました御意見を基に事務局で整理をしていただきました「審議まとめ(案)」について、より具体的に審議をしていきたいと思います。また、日本学術振興会から科研費の「研究成果公開促進費(学術図書)」について、その改正案の検討状況について、御報告を頂く予定でございます。
 まず、事務局より配付資料の確認及び傍聴者の報告をお願いいたします。

【松本学術基盤整備室参事官補佐】 それでは、恐縮ですが、配付資料の確認に先立ちまして、異動の御挨拶をさせていただければと思います。4月1日付けで参事官(情報担当)付の補佐、学術基盤整備室の室長補佐を拝命しました松本でございます。よろしくお願いいたします。
 それから、一言、この場をおかりしておわびをさせていただきたいのですが、資料の事前送付が直前になってしまいまして、大変申し訳なく思っております。また、一部、パスワードが文字化けをして、送った資料が開けないということも生じていたようです、大変申し訳ございませんでした。おわび申し上げます。
 それでは、議事次第に基づきまして、配付資料の確認をさせていただきます。資料1、アカデミッククラウド・データ科学の進展を踏まえた学術情報基盤整備(審議まとめ)の案でございます。資料2、科学研究費助成事業「研究成果公開促進費」(学術図書)の改正案でございます。資料3、今後の学術情報委員会の日程についてでございます。参考資料としまして、参考1、科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(学術図書)の制度改善案について。前々回の本委員会の資料を参考資料として、お付けしてございます。それから、机上資料としまして、25年8月、本委員会の審議のまとめ。24年7月の学術情報基盤作業部会の報告。24年7月のアカデミッククラウドに関する検討会の提言。ドッチファイルにおきまして、本委員会の第1回の資料から第9回の資料をとじてございます。
 不足等ございましたら、事務局へお申し出いただければと思います。
 なお、本日の傍聴者は21名となってございます。
 以上でございます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。
 それでは、審議事項に入りたいと思います。事務局より資料1の審議まとめ(案)について、説明を頂きまして、取りまとめに向けた審議を行いたいと思います。それでは、長澤室長から資料1に基づき、説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】 それでは、御覧いただいていない先生方が、多いということでございますけれども、資料1につきまして、御説明をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。前回のたたき台という形でお示しをさせていただきましたけれども、それに加えまして、前回、先生方から頂いた御意見等をできるだけ反映をさせて、それから情報を追記してまとめたという形で考えております。
 まず初めに、社会的背景等のところですけれども、これを前提として、やはり高度な知識基盤社会ということが必要だということで、こういったことに大学等が中心になって取り組む必要がまずあるということをうたっております。
 その後は前回と同じですけれども、特にITが手段として非常に重要だということで、イノベーションを誘発したり、情報資源がその課題解決とか経済成長につながるということの世界最先端IT国家創造宣言を引っ張った記述で、こういった重要性、それから具体的な対応として、ここで進めようとしておりますようなビッグデータ・オープンデータというような情報資源の活用による付加価値とか、安全で信頼できるサーバー空間の構築とか、国境を越えたネットワークの活用ということが必要だということを書かせていただいています。
 大学教育とか研究基盤との関係でございますが、大学教育改革ということでは、教育振興基本計画におきまして、ICTを活用した教育形態の変化ですとか、教育内容を配信した知を開放するとかということの質保証につながるような取組が必要だということと、研究基盤の強化といたしまして、科学技術基本計画では、デジタル情報資源のネットワーク化、標準化、コンテンツの統合的な利活用ということで、知識インフラとしてのシステムの構築展開ということが重要だということを改めて書かせていただいてございます。
 2ページでございますけれども、先端科学の展開という形でございますが、特にこういった研究関連では、ビッグデータとか多種多様なデータの利用が推進されますので、高度に処理されたデータ科学を推進するための基盤技術とかアカデミッククラウド環境が重要だということを書いてございます。
 これらとSINETの関係でございますけれども、SINETの役割として、これまでも大学等の横断的な教育研究活動を支える基盤として重要な役割を担っているということでございまして、この知識基盤社会を支えるそういった科学技術・学術の振興という観点で、ICTの活用とかネットワークの強化の重要性は明らかということから考えますと、SINETを利用していく必要がある。さらに、そのSINETにつきまして、こういったクラウド環境でのサイバー空間の利活用を支える上で重要な基盤ということで、次期SINETの整備の在り方を検討していくということで、その背景等についてはまとめさせていただいてございます。
 2番目に、アカデミッククラウド環境の現状と課題ということで、どういったことが望ましいかでございます。
 まず、クラウドについてはどういうことかということで、この通信環境整備がニーズと財政的な負担も大きくなっているんですけれども、やはりそれを解決する選択肢としてはクラウドサービスが今、注目されているということでございまして、このクラウドの定義と意義、意味としまして、そういったシステムを外に出すということで、それで一元化して集約するということでございますけれども、そのメリットとして、情報の分散管理を一元化できるとか、設備投資を抑制できるとか、こういった高度化に対する負担、バージョンアップとかの負担が軽減されるとか、求められている環境の変化に対しても迅速に対応できるとか、そういった多くのメリットがある。その一方で、やはりアウトソーシングということでセキュリティの確保とか、継続性に対する不安も片やあるという一般的な書き方をしてございます。
 実際に大学の導入状況につきましては実態調査のとおりでございますけれども、55%は導入しているんですけれども、機関が単独ということが59%で、管理運営主体ということで、また、教育・研究機能としての活用は進んでいないということを現状として書かせていただいてございます。
 3ページのところは、今回、追記したところでございますけれども、先行的な導入事例といたしまして、静岡大学、北海道大学、長岡技術大学の例を示しまして、いずれもイノベーション的な成果を上げているということで書かせていただいております。静岡大学は、キャンパス間をSINETで基幹システムのクラウド化ということで、様々な資源の効率的な活用とか管理経費の大幅な節減とかそういったものを実績にしている。北海道大学におきましては、計算資源をクラウド上に構築することによって、スパコン並みの計算環境とか、利用者が自由に計算資源を占有できるような効果的な運用。長岡技術科学大学です。失礼いたしました、科学技術大学になっておりますけれども。長岡技術科学大学がサービスセンターとなりまして、全国の高専をつないだプライベートクラウドシステムで連携をするという形の高度化を図っているということを紹介させていただいてございます。
 その通常のクラウドとアカデミッククラウドはどう違うんだということに対する御説明といたしまして、やはり経費的な効率化ではなくて、こういった教育・研究機能を含めた総合的な高度化を図ることを目的としていることを明確にするためにアカデミッククラウドという言葉を使っていることを書かせていただいてございます。
 アカデミッククラウドの導入につきましては、どういうことが必要かということで、この委員会におきましても報告していただいておりますけれども、九州大学の岡田先生の研究成果を踏まえながら審議をした結果、その効果、課題認識、留意点は以下のとおりでございまして、教育支援につきましては、やはり多様な教育スタイルを実現したり、個別のeポートフォリオとか学習管理システムとか、このコンテンツの共有ということで、全国的な教育の質的向上・保証が進んでいくことが想定される。
 ただ、岡田先生とかの調査研究の結果によりますと、やはりeポートフォリオとかLMSという学習管理システムというのは、やはりセキュリティとかの関連で当面機関内に閉じた状況での利用が継続される見込みだという現状と、それからただ学生のIT環境ということで、メーリングシステムとか、端末の運営とかそういったものはプライベート型で進みつつありますし、パソコンを必携化するためのブリング・ユア・オウン・デバイスという形については検討が進んでないというのは、先生の調査結果を反映させて書かせていただいてございます。
 また、こういった対応としてクラウド化を推進するためには、やっぱり低コスト化、学外接続ネットワークの高速化、セキュリティ・プライバシーの強化が必須だということでございます。
 次のページは、更に前回頂いた御意見でございますけれども、こういったことの教育のICT化によりまして、従来型の授業が不要になるかということも意見として出ているところに対しましては、あくまでもこれは補完的な役割で、反転学習とかのスタイルの高度化や効率化が必要で、対面指導による授業を否定するものはなり得ないことを追記させていただいておりまして、こういったものを踏まえながら、やはりクラウド化を推進していくことが必要だということを書かせていただいております。
 研究支援といたしましては、やはりこういった大量のデータ流通を伴うような研究が進展したり、コンテンツを流通させるという観点、遠隔でのバックアップということ、データの相互保全という観点で必要になってくる、ニーズがあることを書いてございます。
 その際の留意点としては、やっぱりこういったものを踏まえますと、仮想空間での最適計算資源とか、データの処理システムを連携するとか、それからシステムにつきましては、プラットフォーム、さらにはソフトウェアを共有していく形の高度化、これは岡田先生のいわゆるPaasとかSaasと言っているようなものでございますけれども、こういった運用が必要だということで。また、運用体制といたしましては、継続性を確保していくことと、全国共同利用にしていくことが必要だと。認証セキュリティの面でも管理面での統一とか仕様のポリシーの策定が必要だということを書いてございます。
 また一方で、こういった全国的に一つのシステムということではなくて、多様性を持ったシステム整備ということで、災害リスクとか単一技術に依存するリスクを軽減するような体制整備も必要だということ。それから、とともにそういったクラウドの連携による高度化も合わせて考えておく必要があって、そのためには民間とか国際的な人的交流の促進も必要だということを書いてございます。
 管理運営支援につきましては、これは効率化という側面が多いわけですけれども、仮想空間での運用とか、こういった情報通信基盤の効率化ということが進んで、機能強化と経費節減の両方が実現するという効果が推進していくだろう。そのときのクラウド化ということでは、業務システムを標準化・共有化したり、開発コストや運用コストが削減されたり、サービスの迅速化、情報システムへの設備投資の合理化とかという成果が得られるんだということを書いてございます。また、セキュリティの懸念とかからパブリッククラウドの活用というのは進んでいませんけれども、やはりクラウド化を推進していくことが重要だということを書いてございます。
 そういった各支援の今後の予測、現状、課題を踏まえて、留意すべき事項ですが、まずネットワークといたしまして、最も重要なインフラとして高速ネットワークを維持する必要がある。その基幹的なバックボーンがSINETであるということで、それとSINETの強化とともに学内とSINETをつなぐアクセス回線の高速化が遅れているのが課題だと。別途、無線LANについては整備が進んでいるという書き方にしてございます。
 次の5ページでございますが、次はセキュリティの問題でございます。これは合わせて極めて重要な課題ということで、やはり常に強化していくという視点が重要で、これを怠っていると、今後のサーバー社会は生き残れない。インシデントが30%というのは、残りの70%は起こっているんだけれども気づいてない。この辺の書き方は前回と同じでございます。
 認証ということでは、これも多様なクラウド環境でのサービスの共有ということでございますので、機関間での統一化、連携が必要なんですけれども、やはりNIIが提供している学認を活用することが現実的だということでございます。
 人材育成という観点も重要だということで、こういった教育・研究・管理業務と情報インフラの関連の関係を理解して、クラウド化に対応できるような人材を養成する必要がある。そのときに個人情報、プライバシーとかサービスをどう提供していくかとか、事業継続計画と言われるBCP対策、そういったものにも課題に十分対応できる人材を育成していく必要があるということで、こういった人材とともに適切な利用者とか管理者に対する教育も必要だということでございます。
 もう一つ、この後は前回なかったもので、頂いた意見を追記したものでございますけれども、意識改革ということで、やはりこういったクラウドのメリットを正しく理解していないためにとか、必要以上にセキュリティ等のリスクを問題視するということで活用が遅れているという状況もございますので、そういったクラウドの理解を深めていくための取組も必要だということを書いてございます。
 また、併せてルールを策定することが重要だということでございまして、こういったデータの管理に対する取組として、標準化とか制度的、法的な側面を含めたルールの策定を併せて考えることは不可欠だということを追記してございます。
 ここまでがクラウドの対応についての審議のまとめでございます。これにつながる次期SINETの整備についてどうするかということでございますが、6ページを御覧いただければと思いますけれども。
 まず、今後の対応としまして、通信とクラウドの一体というのは、もう当たり前になってくるということ。セキュリティも当然進化していくということで、学生さんとか研究者に必要なサービスがサイバー空間を活用して提供されて一般化することが想定されるという予測をまず書かせていただいております。
 その上でクラウドにどう対応していくかということでございますが、やはりその基盤となる高速、安全、高機能なネットワーク環境への接続ニーズが拡大していくだろうということで、海外を含めた機関間の連携、広範化とか高度なセキュリティ対策を継続的に実施する必要があるということで書いてございます。
 その次は、こういったネットワークに対するNIIの果たしてきた役割ですけれども、NIIはなぜやっているかということでございますが、NIIの機能としては、研究開発から基盤整備、啓発活動、人材、マルチに対応している機関であるということで、ここのSINETに対してNIIがニーズを取りまとめて一元的に整備するということで、こういった高速、低価格、安全安心なネットワーク環境が提供できている。
 また、研究成果を反映させることによりまして、継続的に高度化を実現しているという現状がございます。こういった対応につきましては、やはり他の機関とか商用ネットワークでは得られないものでございますので、今後もアカデミッククラウドを展開する観点からは、やはりNIIの役割は大きくなってくるのではないかということを御説明させていただいてございます。
 現状としてのSINETのところでございますが、SINETについては多くのユーザーが参加しているんですけれども、回線の太さとして、基幹部分の東京-大阪が40×2で、それ以外は10又は2.4という非常に細い状態にある。こういった中でも唯一東日本大震災に耐えたということで、その有用性をここで追記をしてございます。
 ただ、SINET4の整備目標というのは、一応最大120Gbpsでしたので、これを実現されていないということの実際の事柄と、また研究分野におきましては、データの流通をネットワークでなくてディスクに頼っているという状況もあるということをそこではっきりと書いてございます。
 こういった観点に対しまして、NIIとしては大学間を調整することによりまして効率的なネットワークを実現して支障が出ないような運用をしていること。海外との関係では、国際共同研究で大量な大型の研究装置、共有のものを使ってデータ流通が活発になってきているわけですけれども、類似の海外のネットワークとの接続という観点からしますと、やはり海外での100Gbpsに対しまして、日米間でも10×3で、やはり少し日本の対応が遅れているというのは明らかだということを書いてございます。
 7ページでございますが、こういった観点とは別に機能強化という側面で、既にクラウドサービスに対する需要としては、商用ベンダーとの接続で、高セキュアなプライベートクラウドとしての活用ができるような環境整備はしっかりとやっているということを書いてございます。
 こういった現状を踏まえまして、SINET5の整備でございますけれども、やはりアカデミッククラウドが普及するという観点からしますと、SINETの更なる高機能化が必要になってくる。また、SINETの関係でシミュレーションとかデータ科学の推進とか、教育研究情報のコンテンツの流通するプラットフォームを構築していく。機関を越えたオンライン教育といったものの展開ということから考えますと、データ流通がオープンアクセスとかオープンデータという世界的な流れに乗って、より一層加速することになることを書いてございます。
 こういう対応につきまして、対応できるような400ギガとか1テラというオーダーに耐えられるような技術開発を進めながら、情報資源を適切に安心して利活用できるような環境を整備することがこういった科学技術とか人材育成、競争力強化で必要だと。そのために基盤となるネットワーク強化とセキュリティ、サービスの標準化を推進する。
 具体的な回線の確保という観点からは、まず国内回線でございますけれども、情報の増加とクラウド環境によりまして、これは機関の内外の境界がなくなってきますので、学外、学内と同程度の高速ネットワークが必要だということでございます。こういった需要増に対応する観点で、専用線を引いておりますと高価で対応できないこともございますので、SINET5では、ダークファイバーの活用に転換を図る。これで安価で太い、国内におきましては太い回線の確保が実現できそうだということを書いてございます。また、接続の方法も、ノード校を通じてやる方法ではなくて、直接アクセス回線をSINETにつなぐという対応によりまして、効率的にSINETを経由して、高速な環境を維持するという方法を考えていることを書いてございます。
 このダークファイバーの活用は非常に効果があるわけですけれども、沖縄以外のところで対応できるので、そういったものが実現できそうだという状況で、そういったことを踏まえまして、次期SINETにおきましては、回線の強化とやはり冗長性を確保する観点から、早急に国際レベルの100Gbps×2本の高速ネットワークを、これはダークファイバーを活用しますと日本国中全体が100ギガ×2本で構築できるということでございますので、全国に構築して、ネットワーク需要として、今後の対応としましては、更なる増強も適宜図っていくという書き方にさせていただいてございます。合わせて、アクセス回線も各大学が確保していただかないといけませんので、そういったことをしてほしいという側面でネットワークの充実に、実現するためには努めていただく必要があるということを書いてございます。
 国際回線につきましては、国際間のネットワークの増強が必要な状況なんですけれども、諸外国の研究ネットワークと同等の100Gbps程度の対等な環境整備が求められているという現状と、日欧間のシベリア経由の回線整備が望まれるということが書いてございます。
 合わせて、最新のネットワーク技術を導入するという側面で、最新のクラウド環境を実現するという観点からしますと、セキュリティ強化自体をクラウド化していくことが必要になってくるということでございまして、侵入検知システムをクラウド化して共有化することにおきまして、各大学が安心してクラウド環境を使えるようになる。また、その学認については、標準化して共通仕様とする。さらにはそういった仮想ネットワークをSINET上でもう実現できるという観点で、最新のネットワーク技術であるSDNとかNFVを用いて、更に高度なネットワーク環境を提供するという対応もSINET5では必要だということでございます。
 さらにはコンテンツの流通環境を整備するという観点でございますが、これは情報資源は貴重な資産だということでございますし、教育研究成果の流通というのは極めて重要だと考えておりますので、こういったものを機関リポジトリの構築で進めているんですけれども、NIIが中心になって機関リポジトリをネットワークで連携するJAIROとか、その機関リポジトリを構築できない機関に対するサービスとして、JAIROクラウドサービスを提供しておりますので、こういったサービスを活用すると、より各大学の負担は減るということとコンテンツの流通の促進が図れるということで、積極的に普及を進めることが必要だということでございます。
 その今後の対応としまして、やはりオープンアクセス・オープンデータということ。それから大学の情報公開ニーズの高まりということを踏まえますと、更に様々な、特に研究論文とかのデータだけではなくて、書籍とか研究データ、様々な教育関係の教材等におきましても、機関リポジトリで構築されて発信されるようになる。それがSINETで流通するという観点になってきますので、一層強化する必要があるだろうと。それから合わせて、それを検索するシステムとしてのCiNiiの高度化とかいうことが重要だということを書かせていただいて、それで、次のページですけれども、こういった知識基盤社会の情報共有という形につながっていくという書き方にさせていただいております。
 最後に、クラウドゲートウェイという機能が構想されているということでございますが、大学等におきまして、多様なクラウドサービスの利用を加速するという観点から、こういったネットワーク上でメニュー化して、ポータルを整備することによって、様々な利活用が進むようなクラウドゲートウェイを実現することが、この欧米の進展している例も踏まえますと適切だということで、効果的に機能するということの期待を書かせていただいております。
 簡単なまとめでございますけれども、やはり我が国が発展して、大学等が競争力を保つという観点からしますと、やはりすぐれた教育研究の遂行に支障なく取り組めるという観点でのネットワーク環境の整備というのは必要である。それに対して、大学が独自に行うのではなくて、NIIが一元的に対応しているということでコスト削減とか機能強化が一体になっていることを改めて認識していただきまして、そういった上で国として、アカデミアにおける最高水準のIT環境を実現する。その観点で次期SINETに向けた整備をしていく。大学におきましては、こういった共有する最新ネットワーク環境のメリットを生かしていただいて、教育研究の高度化につながるようなアカデミッククラウドを効果的に導入。そういったものを踏まえて、それぞれのミッションに対応した機能強化、社会貢献を果たしていただきたいという書きぶりにしていただいております。
 説明が長くなりましたけれども、以上でございます。

【西尾主査】 どうも説明ありがとうございました。
 それでは、今の審議のまとめ案についての議論に入りたいと思いますが、SINETに関する御説明を頂いたような状況を踏まえて、機能強化をすることに関しましては、学術の様々なコミュニティにおいても、その重要性を非常に認識いただいておりまして、特に日本学術会議の役員の先生方から学術情報基盤の在り方あるいはSINETの機能強化ということに関して、提言を早急に出すべきだという御示唆を頂きまして、その提言の準備が今進んでおります。そこで、来週25日の日本学術会議の幹事会において、その提言が承認されれば、日本学術会議から発出されていくという状況になっております。
 それとこの委員会におきます審議に関しましては、次回の開催日である5月28日に、最終的な審議の案まとめをしたいと考えております。その意味からも、今日の委員会が最終案に向けた重要な委員会となりますので、先ほど説明いただいたことに対しまして、積極的な御意見をお願いいたします。
 それでは、何か御質問とか御意見ありましたら挙手を頂ければと思いますが、いかがでございましょうか。
 倉田委員、どうぞ。

【倉田委員】 まとめたものを見る時間が余りなかったので全体的な印象をまず申し上げますと、要するに読んでいてもよく分からないというのが第一印象です。この最初の部分を読まされても、というか、まずタイトルからこれでいいのかよく分からないのですけれども。やはり大きな話に持っていかないといけないという話だったと私は理解していたのですけれども、SINET5の話、後半のところは非常によく書き込まれていると思いますが、そこに持っていく前半のところは、要するにもっと一般のといいますか、少なくとも、できればこれは学長とか総長とか上の方に読んでいただきたいわけで、そのときにこれで本当に分かるのかなという印象です。私には少なくともよく分からない。
 どちらかというと、後半にいろいろお書きになりたいというのがあったせいなのか、後半の方で出てくる事例であるとか、こういう環境であるとか、背景であるとかという話はむしろ前のところでもっと詳しくかみ砕いた形で書いてあり、SINET5の方では、前述したそういう背景や環境を受けた形で、では何が必要かというところに焦点に絞ったような書き方の方が、少しは分かりやすいのではないのかなと思いました。
 具体的に申し上げるなら、例えば最初に「社会的背景等」という表現は非常に漠然としており、その入り方はどうなんだろう。最初のところで「学術研究、教育、科学技術発展のための知識基盤整備」とか、もっと訴えることを最初に強く言っていただきたいと思います。ですから、学術情報ネットワーク・SINETの整備との関係とかというのではなく、知識情報基盤整備にとっての学術情報ネットワーク・SINETだと思うのです。そういう細かいことかもしれませんけれども、やはり訴えるべき言いたいことの主張をまず第一に持ってきていただかないと分からない。
 それでいて、次のアカデミッククラウドの箇所ですが、クラウドについて、この説明で本当によろしいのですか。これを読む限りですと、各システムに蓄積している情報を一箇所に保存することがクラウドだと読めますけれども、本当にそれがクラウドの意義なのでしょうか。技術的にはそうであったとしても、アカデミッククラウドというのはもっと大きなものを目指しているはずではないのでしょうか。この説明では、これは本当にシステム屋さんがちょっとデータの保存を外注しましょうというイメージにしかとれないと思います。情報の共有化によって、クラウドにあるソフトウェアを使って、処理はそっちでやってしまうとか、そういうことによって研究や教育がどう大きく変化していくのかということがこれでは私には少なくとも分からないですね。セキュリティとか何とかが重要だという話はよく分かりますが、それはもっとクラウドについてきちんとした説明が全部終わった後にこそ出てくるべきものだと思います。
 この先進的な導入事例も非常に表面的で、一体どこが先進的でどこがイノベーションなのかは、これではよく分からない。
 その後の教育支援や何とかの具体的なところになると、突然もう訳の分からない用語がオンパレードで、こんな細かいことをここで言わなくてはいけないのかよく分かりませんし、ASP化ですとかBYOD対応とかと言われて、すぐにぱっと分かる一般の教員がどれだけいるのかはよく分からないです。
 研究支援のところでも具体例が全然入っていないので、せっかくいろいろとヒアリングで聞かせていただいたような話が全然出ていないので、ここも一体どういうふうなものをビッグデータと言っているのか。シミュレーション科学であるとか大量のデータであるとかという話が、どうアカデミッククラウドにつながっていくのか、これでは要するに分からないということです。
 それでいて、例えばインタークラウドの展開であるとか、人材交流の促進だとかという話が唐突に出てきます。全体の構成が整理されていない。何ていうのでしょうか、そこで言うのではなくて、例えばそれは全部留意事項というか課題でまとめて言えば十分なことが前にも書いてあって、後ろにも書いてあって、似たようなことが重複しています。
 ですから、もっと全体を整理していただいて、前の方でもっと具体例であるとか具体的な展開を書いていただいた上で、留意事項があって、その留意事項に非常に対応する関係、形でSINETがこういうふうにできるんだと言っていただく方が私としては分かりやすかったなと思っております。
 以上です。

【西尾主査】 倉田委員、構造的な面も含めまして貴重な御意見ありがとうございました。今、倉田委員が様々な観点から具体的にお話しいただきましたことを配慮しながら、最終版に持っていきたく考えております。
 事務サイドとして、倉田先生にコメントいただいたことに関して、どのように対応したらよいのかとかいうことで、倉田委員にお伺いしたいことがありましたらどうぞおっしゃってください。

【長澤学術基盤整備室長】 先生から頂いた御意見も考えながら、もう一度整理はしたいと思いますが、一応具体的な例示を入れながら、教育、研究支援、それから専門的な用語をできるだけ少なくするということもありますけれども、その辺、どの程度、この調査研究いただいた成果というものを適宜反映させながら、その中身がなくならないような形で分かりやすく論点を整理するというところで取り組んで、これから順番につきましても考えたいと思います。一応クラウドについては、ここは一般論を書いただけで、アカデミッククラウドはこうだとは思っておりませんで、順番が前後して後になっていますので、アカデミッククラウドというのは全般的な高度化なんですよということを書いているつもりでしたけれども、十分それが伝わらないということでございますので、その点の書き方とかも含めて、より推こうはしていきたいと思っております。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。倉田委員からの重要なお言葉として、羽生先生がいらっしゃる前で誠に申し訳ありませんが、大学の学長にも分かる審議のまとめという言葉がありました。やはり、そのくらいインパクトがあり、分かりやすい審議まとめを仕上げたく考えております。事務局には、この段階までまとめていただいた御尽力には感謝いたしておりますがもう一段の改定をしていただきたく、どうかよろしくお願いいたします。
 辻委員、どうぞ。

【辻委員】 大変、中身的にはいろいろ盛りだくさんに書いていただいたんではないかと思っております。少しでも分かりやすくするにはどうしたらいいだろうかという観点で見たときに、この全体の文章自体がいろんな種類の括弧で見出しを書かれているわけなんですけれども、文章構造が分かりにくいところがそもそもあるのかなと思いまして。なので、まず構造として分かりやすい形、文章の見出しの付け方、項番の付け方とかも工夫していただけると少しでも理解がしやすいのかなと思ったのが1点です。
 もう1点は、全体の取りまとめの中で大きな柱としては、教育面、研究面という話で今まで話が進められてきたかと思っております。けれども、このまとめ結果を見ますと、例えば1ページ目の終わりから2ページ目にかけて、教育と研究基盤における必要性ということでまとめられていたり、その次には先端科学としての展開ということでちょっと研究面の話がまた繰り返しで出てきたりということで、教育・研究のところが分かれたりくっついたりというところも多々ございまして、なので、おまとめいただく際にも、教育面、研究面という形である程度、柱を見やすいような形に持っていっていただけると論点がはっきりしやすいのかなと思いました。
 以上でございます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。構造的な見直しをしていただけると有り難いということだと思います。
 美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】 構造的な見直しに当たっては、まず3点ほどあります。まず1番目は、前回の審議まとめのときは、用語解説として言葉は別立てにしていたと思うので、例えばアカデミッククラウドの定義とか幾つか分かりにくい言葉は、最後に別立てにしたらいかがでしょうかというのがまず1点目です。
 2点目、構造的な話としては、今回議論してきた研究、教育、管理運営という話があったので、この3本柱を立てて、更にその中に課題が何であるのか、その解決に向けてどうあるべきか、その事例も含めて将来像というのを、課題解決、事例、将来像をそれぞれ研究、教育、管理運営について設けたらどうかと思います。
 というのは、最後の将来像というのがとても大事だと私は思います。例えば今、ユーザーエクスペリエンスデザインというユーザーインターフェース系の研究のところでは、大事なのは、ユーティリティ、ユーザビリティ、デザイアビリティという3つを考えるということになっています。ユーティリティというのは機能で、ユーザビリティは使いやすさ、その後、3つ目がデザイアビリティ。つまり、これを使うと何かができそうと思えるかどうかということですね。ですから、この環境、これがあるとどんなふうにこれから大学がよくなっていくのかということが分かるような、デザイアビリティが、それぞれの研究、教育、管理運営についても入っているのが望ましいのではないかと思います。
 以上です。

【西尾主査】 教育、研究、管理運営という柱と同時に、課題解決、その事例、更に将来像という大きな枠組みを、一貫性を持って記述いただけると有り難いということだと思います。多分、美馬先生がおっしゃいました言葉の意味に関しては、今日はまだ準備できていないものですが、作成することは想定されていたと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 羽入先生、どうぞ。

【羽入主査代理】 倉田先生の印象、美馬先生の御発言も踏まえて、少し提案をしたいと思います。1番の社会的背景は書かざるを得ないと思います。そういう項目にした場合に、現在、日本の学術の評価が非常に下がっているということが多々言われていますが、何ゆえに下がったかというと、学術情報基盤が失われつつあるからだ、というストーリーをまず持ってくるといいと思います。それは別に独断的なといいますか、恣意(しい)的な発言ではなくて、それに対して問題意識があるから、閣議決定がなされ、あるいは政策的に様々な提題がなされているのだということがその次に実際に書かれています。では、現状はどうかというところで、2番で書かれていますことを続けるのでよろしいと思います。内容についてはまた御検討いただくとして。
 それで、最後にSINET5のことが書かれていますが、このSINET5というのは、これ全体を拝見すると、SINET5を守るために見えるんです。そうではなくて、SINETが今までどういうことをしてきて、その点で、これは代替不可能な学術情報基盤なのだということをストーリーとして流す方がいいと思います。ほかのものでは代替できないアカデミッククラウドを活用し、既に蓄積されている学術情報基盤を効果的に強化し、そして、日本の学術を発信するためにもほかにはないシステムなんだということを言っていく。そのほかにはないと表現していくことによって、SINETだけのことを考えているのではないということを言うことがよろしいのではないかという印象を持ちました。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。この審議まとめ(案)を学長が読み始めになったときに……。

【羽入主査代理】 学長?

【西尾主査】 より広く大学関係者を含めて一般の方が読み出したときに、すっと引きつけられていくようなインパクトを持たせなくてはならないでしょうということで、今、羽入先生におっしゃっていただきましたように、最初の部分でもう少し強く訴えることが大事だということだと思います。
 それとSINETが代替できないものであるということは、非常に重要な観点だと私は思っております。これは羽入先生が今までも何回か繰り返しておっしゃっていただいたことなのですけれども、是非そこは押さえておく必要があると思っています。
 喜連川委員、先ほど手を挙げておられましたのでどうぞ。

【喜連川委員】 倉田先生のちょっと厳しめのコメント以降、全体的に多くの女性の委員の方々から連続して厳しい意見が出まして、教育者としてみますと、叱るだけでは駄目と感じておりまして、これだけ書けているというのはすごいところまで、実は、学長は分からなくてもこれだけ書けているというのは、かなりの努力を払われたなというのが本当にしみじみと感じるところです。やや、ややこしいところがあるのですけれども、よく見ますときっちり必要なものは入っているなと感じます。ただ、おっしゃっていただきましたように、導入部分をもう少し工夫するところは確かにあるかなと思います。
 それから、クラウドの定義に関して、倉田先生のおっしゃっているのはそのとおりかなと思いまして。ここはNISTが定義を出していますので、その定義を御覧いただきながら、ここですと、後藤委員なんかも日本の総務省のクラウドのフォーラムに入っておられて、各所で最初クラウドをどう定義するかというのは随分悩んだ時期があるんですけれども、そういうものを利活用していただきますと、大分すっきりした形になるかと思います。
 私が一つ申し上げておきたいかなと思いましたのは、2ページの上から五、六行ぐらいにデータ科学というところが入っておりまして、またタイトルにもデータ科学という言葉が入っているんですけれども、一方で後ろの方にシミュレーション科学という言葉がありまして、文部科学省におけます研究振興局のコンテクストでは、データ科学と計算科学の両方をある意味で推進をなされるお立場になっておられるかと思います。
 そのときに、先日、HPCIの検討会でも申し上げたんですけれども、それがお互いに全くディスジョイントなものであるという印象感は余りよろしくないのではないかなと感じておりまして、「京」に代わるエクサスケールのスパコンを作るのであれば、そういうものを全国から非常に効率よく利用するためには、こういうネットワーク環境がなくてはならないんだという両者のシナジーのようなことをお書きいただくことも国益上重要なのではないかなという感じがしました。HPCIでは、ネットワークはABCDEFGとか言われて、G番目に入っており、向こうでは虐げられていますけれども、だからといってこっちで虐げるつもりはありませんので、仲よくそういうものは記載していく必要があるんではないかなと思っております。
 以上でございます。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。ほかに御意見等ございませんでしょうか。
 土方委員、どうぞ。

【土方委員】 大学の学長先生に読んでいただくという反面、この間、主査がおっしゃったように、来年の予算獲得のために非常に重要になると思いますので、そういう意味では、確実にこれとこれはやります、これはできませんということを明確にした方がいいんではないかなと思っています。例えば意識改革のような項目があって、なかなか教職員が正しく理解してくれないのではなくて、教職員が理解してもらえるように、ここのレポートを書いて、それで日本の大学全体にとってこれから必要になってくるんだということを強調した方がいいんではないかなと思っていますので、私はある意味では、27年度予算獲得に向けた、もっと強気な書き方をされた方がいいんではないかなと思っております。
 以上です。

【西尾主査】 今の御意見は、一方できっちりと意識改革をしていくのだということを強く出すということですね。

【土方委員】 課題としては認識していますけれども、実際問題とすれば、意識改革をするためにこういうレポートを出すということが必要だということでございます。

【西尾主査】 分かりました。財務当局に対して、大学自身が意識改革をする上でもこのインフラが絶対必要であるという書き方を持っていくということですね。
 加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 全体のトーンというか流れなのですけれども、現状があり、背景があって、アカデミッククラウドの環境構築の現状と課題ということで、ここで書くべきところというのは、基本的にアカデミッククラウドを日本全国、大学、使えるようなそういうアカデミッククラウドが実際必要ですよということが記述されていると思います。3番目でSINET等の必要性が出てくるわけですけれども、SINETを含めてNIIがやっているJAIROクラウドというのは、アカデミッククラウドに向けての一つの大きなプロトタイプフェーズというか、フェーズ1といいますか、日本全国全部アカデミッククラウドを整備するには、かなりの長期間、お金が掛かる。ただ、現状のSINETとそれからJAIROクラウドを発展させることによって、実はアカデミッククラウドのフェーズ1ができると。少なくとも接続されている大学の中でそれを活用することによって、実はこういうメリットがあるというような全体のトーンで記述されていると考えております。
 ですけれども、その中で例えばアカデミッククラウドの環境構築のところを見ますと、これは前回のクラウドの調査報告書の中身の要約版という形になっておりますので、それぞれにその留意事項、課題が全部項目ごとに実は入っておりまして、多少分かりにくいところがあるのではないかと。アカデミッククラウドの定義をして導入をするというところで、例えば教育支援の中にも現状があって、こういうことが必要ですよという留意点が一緒に入っているということがありまして、アカデミッククラウドの必要性が明確でなくなってくるようなところが若干あります。
 例えば、研究支援のところを見ても、管理運営支援のところを見ても、何々することが重要であると課題点になっていますけれども、この辺の表現でも、こういう課題を考慮したクラウドの導入が必要であるという形に変えていくことによって、アカデミッククラウドが必要だということが少し前面に出せるのではないかなと。ただ、これらのアカデミッククラウドを日本全国の大学を含めて最初から導入するというのは長期間かかる。5年、10年かかるという、前回、報告がありましたけれども。ただ、喫緊の課題として、やっぱり大学が持っている課題はこういう課題で、それを今、27年度、28年度に実際にその課題を解決するためには、SINET5とJAIROクラウドを含めたNIIの活動が非常に有意義であって、それをフェーズ1として活用するという感じの全体のトーンとしてはできていると思うんですけれども。従いまして、最初に例えば結論を出すとかそういう記述をすることで大部印象が変わってくるのではないかなと思います。書いている内容につきましては、全部網羅されていると思いますので、そういう意味ではよろしいんではないかと思います。

【西尾主査】 内容的な面では網羅されているけれども、今おっしゃったように、その中に戦略的なシナリオをもう一段加えることが非常に重要だということだと思いますので、最終版に向けての改善をしていくことが大切に思います。
 アカデミッククラウドに関しては、先ほど、土方委員もおっしゃったように、大学関係における限られた資源の中で、どのように計算資源、データ資源を全国レベルで共有し、しかも、倉田委員がおっしゃったような教育、研究も含めたいろんな観点から日本全体の研究者、教育コミュニティの意識改革をしていく上でのベースになるのだというようなことを明確に書いていく必要があるのではないかと思っております。
 ほかにいかがでしょうか。竹内委員、後藤委員、美馬委員ということで。

【竹内委員】 ありがとうございます。細かい部分については、大変よく書けている面がたくさんあるんではないかと思っているんですけれども、私のように技術についての知識がない人間から見ると、先ほど倉田先生、羽入先生あるいは美馬先生もおっしゃったような点というのは、どうしても問題点として目についてきてしまいます。
 私にはどうもよく分からないですが、アカデミッククラウドとSINET5はどういう関係で捉えればいいのでしょうか。実はこれがこの文書ではよく見えてこないんですね。アカデミッククラウドの普及に向けて、基盤としてのSINETの更なる高機能化は不可欠であるということが7ページの上から4行目辺りに書かれているんですけれども、それではアカデミッククラウドはSINETがなければ普及しないのか、アカデミッククラウドはもう普及して機能し始めているからこそSINETのようなものが必要なのかといったようなことがなかなか見えてこなくて、そこが少し分かりづらいのではないかという印象を持っております。
 これも先ほどの羽入先生の御意見と全く同じになるんですけれども、やはりここでのコンセンサスはSINET5のようなものが大学にとって不可欠である、これはほかに代替できないものだということだと思うのですが、残念ながら先ほどの御説明を伺った限り、あるいはこれを読ませていただいた限りにおいて、SINETがないと大学としては本当に困るという切実感は見えてこないという印象があります。
 以上でございます。

【西尾主査】 貴重な御質問でございます。安達先生にお伺いしたいのですけれども、アカデミッククラウドとSINET5に関して、審議まとめ(案)を読んだときに、それらが別物として読んでしまう可能性もありますけれども、それを最終的な審議まとめでどのように連携させた記述にするかということに関して、先生の御見解を頂けると有り難いんですけれども。

【安達副所長】 アカデミッククラウドというのは非常に広いスコープを持っており、言ってみれば大学でやっている教育、研究全てに関わるものという意味合いを持っております。それを全て学術情報基盤・SINETがやり、全てのものをカバーできるようになるまでには時間がすごく掛かると思います。
 現時点では、例えばセキュリティのように、多くの大学に共通する機能はSINET整備の中のクラウド機能として実現していけるのではないかという見通しを持っております。もっと自由度の高い、例えば大学の管理運営や教育に関するクラウドサービスは、全ての大学が同じではなくて、連携の形がいろいろあって発展していくものですし、そのようなものについては、大学連携の動きに合わせて、容易に実現しやすいような環境をどのように提供するかというのが現時点での課題だと思います。
 それが最も集約されると、下位レベルの例では、例えば情報のバックアップのためのサービス機能の実現というような話になるわけですが、その上にある例えば教育用コンテンツの持ち方のような話になりますと、単に大学のファシリティではなくて、民間のクラウドサービス等を使いながらやっていくことも考えられます。あるいは民間のサービスを複数の大学が連携してうまく使いながらやっていくというような形態も出てくるだろうと思います。そのようなことをやりやすい、少し下位の基盤をどのように作るかというのが今ここで御提案していることです。
 上位の方になっていきますと、まだ方向性が定まっていないところがありますので、どのようにうまくコーディネートしていくか、が課題です。そのような運営、あるいはコンソーシアムのようなものがこの上にどのように載っていくかということが今後の課題の一つではないかと思っております。現時点ではそこまでの詳しい展望は持っておりません。以上が実際に計画を作っている立場の者から今、申し上げられることです。

【西尾主査】 まず加藤委員のおっしゃった意味で、理想的なアカデミッククラウドを構築するのは5年、10年かかると考えられる。けれども、それは日本の教育、研究、大学運営にとっても大変重要なものであると。そのときにSINET5は、アカデミッククラウドという最終のある意味では理想としているものに向かうときの入り口、あるいはベースとなるものである、というその認識でよいということですか。

【安達副所長】 そうです。

【西尾主査】 竹内委員、それでよろしいですか。

【竹内委員】 はい。

【西尾主査】 ですから、SINET5がまずきっちりと構築できていかないと、審議のまとめ(案)で記述しているアカデミッククラウド基盤はできていかないということでよろしいですか。

【安達副所長】 はい。その中で、現時点からは共通する機能要素として、実現できそうと考えているのは、セキュリティに関するものとJAIROクラウドのように既に実績のあるようなのがあります。そういうものについては、きちっともう当初から提供していくという考えです。それ以外のいろいろな構想中のものについては、今のところオープンであるということです。

【西尾主査】 セキュリティとかJAIROクラウドはSINET5の計画の中で推進することなのですか。それとも、別物として実現していくことなのですか。

【安達副所長】 学術情報基盤としてのクラウド機能の中で、次期ネットワークに合わせてNIIが主体的に提供していくクラウドサービスとして、今、具体的に挙げているということです。

【西尾主査】 分かりました。
 喜連川委員、どうぞ。

【喜連川委員】 ちょっと誤解がないように、言葉の定義を一応しておかないといけないと思うのですけれども。さっき西尾先生がおっしゃったセキュリティのサービスというのは、SINET5というその学術情報基盤の一部の中に入っていると御理解いただけると思います。今までの100ギガの体系の線を、現状ですと40ギガの線を張る。このネットワークというところから国立情報学研究所のサービスが始まったわけですけれども、今、ネットワークの線の価値は、恐らくほとんどの大学の先生はお感じになられてないと思うんですね。ですから、クラウドのサービスやセキュリティのサービスとネットワークの線を含めた丸ごとの情報基盤サービスをSINET5と呼ぶと。そういうふうに御理解いただければ。

【西尾主査】 分かりました。竹内委員、よろしいですか。

【竹内委員】 はい。

【西尾主査】 竹内委員からおっしゃっていただいたSINET5が必須だということをもう少し明確に書いていただくということ、これは羽入委員のおっしゃったことと相通じるものですが、そのことを、是非、強調していただければと思います。
 あと後藤委員、美馬委員ということでお願いします。

【後藤委員】 ただ今の竹内委員からの質問と、安達先生からの御回答に絡むところをお話ししようと思います。やはり私も読んでいて、最初の倉田先生の御指摘もありましたとおり、前半に目標像、つまり国際競争力を向上し、大学教育や研究の競争力をアップしなくてはいけないという大きな課題を述べるべきと思いました。
 その次のアカデミッククラウドに関する記述がやはり分かりづらいと思いました。今ちょうどお話があったように、ここでは競争力強化を可能とするアカデミッククラウドの理想型は何か、理想となるアカデミッククラウドはこういうものだ、と表現すべきと思います。そのアカデミッククラウドの理想型に対し、SINET4ではここまでできている、次のSINET5でここまでできるようになる、という形に表現できると、一番分かりやすく、SINET5が達成する目標がはっきりすると思います。
 その中で今、安達先生がおっしゃったように、セキュリティに関してはここまでできるぞとか、NIIの機能と外部ベンダーの機能をうまく組み合わせるインターフェースもできるぞとか、そういう形が見えると、今度はSINET5の価値、つまり、理想とするアカデミッククラウドにおいて、ここまでできるぞというのが明確になって受け止めやすいと思った次第です。
 また、さっき喜連川先生からありましたように、SINET5は、ネットワークだけではなくて、上位の機能も強化したものだということは資料の後ろの方にしっかり書いてありますので、それについても理想とするアカデミッククラウドのここまでできるんだなということで受け取りやすいと思った次第です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。今の後藤委員のおっしゃったストーリーで大枠を進めるということでよろしいですか。ですから、アカデミッククラウドのことを書く中で、土方委員がおっしゃっていただいた、大学における改革もアカデミッククラウドができていくことによって実現されていくのだということも含めて書いていくということが重要だと思います。後藤委員、どうもありがとうございました、おかげさまでより明確になってきたかと思います。
 美馬委員、どうぞ。

【美馬委員】 昨年8月に出した黄色のこの本(学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ))は、とても分かりやすくて、出た途端から私のところにも問合せ等あったり、大学の見学も増えたり、かなりの方が教育関係者、環境を作っている方たちはお読みになっているのだと思います。これに倣っていえば、この目次を開けると、やはりここにさっき土方委員がおっしゃったような基盤を生かすための教員の意識改革等という項目が立っていますね。ですから、やはりこのようにそういうものははっきりと立てていく。
 今、お話がこれまであったように、アカデミッククラウドということを中心に据えてやっていくんだと思います。そこで一つ御提案としては、この黄色本のところの目次を見ると、コンテンツ、学習空間、人的支援、これが変わるんだということ、はっきりこの中で出ていて、それが分かりやすさを更に強調していると思います。なので、ここが多分さっき言った教育、研究、管理運営だと思います。ただここに代わりに教育、管理運営とかと並べただけでも分かりにくいので、そこにさっき言った将来像のようなタイトルを入れていくのはどうか。
 例えば、「何とか環境を利用した教育の可能性」とかそういう何かを活用した研究環境という形での将来像みたいな柱を目次のところに置いて、さっき言ったような内容で進めていく。結果的に黄色本でまとめたことというのは、今、募集している、競争的予算獲得のAPのことにもなりましたし、是非今回のもそういうふうになったらいいなと思います。
 以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。前回の審議まとめを引用いただきながら具体的にコメントいただきました。ありがとうございました。
 吉田委員から産業界からの貴重な意見、是非お願いいたします。

【吉田委員】 そのようにおっしゃると緊張しますが、余りアカデミッククラウドに閉じた意見ではないかもしれませんけれども発言させていただきます。まず、諸先生方にも今まで御意見を頂いたように、構成を少し考えた方がいいかなという点があります。3ページ目以降は、個々の項目としては書き込まれているので、それを整理していけば分かりやすくなると思うんですけれども、やっぱり頭の1ページ目・2ページ目くだけた言葉で言うと「つかみ」といいますか、読者を引きつける導入の仕方をもう少し考えた方がいいのではないかと思います。
 具体的に、まず一つは、2ページ目のところの「クラウドについて」で初めてクラウドが定義されているんですが、よく読むと、ICTの進展・高度化が著しく財政負担が大きくなっているからクラウドを導入する、という書き方になっており、クラウドで費用を節約しようというように読めます。実際に初期の頃はどちらかというとコスト低減を主目的にクラウドを導入されるお客様も多かったのですが、最近はお客様もかなり変わってこられまして、クラウドでイノベーションを加速したいという方々が増えてきました。クラウドというのはリソースを非常に柔軟、使いたいときに、すぐ使えるという利点が評価理解されてきたわけです。
 もう一つは、昨今では、クラウド上でいろいろなサービスが提供されてきて、これらを組み合わせてつなぐだけで、全部を自分で作らなくても、ビジネスをやるためのシステムはすぐできてしまう状況になっています。これらの利点を活用して、クラウドは、早くビジネスを立ち上げる、早くイノベーションを進めるための道具だという認識が結構進んできており、我々に対するクラウドのリクワイアメントもそういう観点から言われることが多くなっています。こういう状況をふまえて、クラウドはイノベーションのツールである、イノベーションの基盤はクラウドであるという観点で導入を書かれてはどうかと考えます。また、そうしてみますと、前のページの「社会的背景」のところにも、どこまで書いていただくかは御検討いただいた方がいいと思うんですが、そもそも昨今では、特に、アメリカなどを中心として、クラウドを使ってイノベーションをどんどん加速していこうという動きがあります。国際競争力にもついていろいろ言及されていますが、これから日本がそういう中で国際競争力を維持していくためにもクラウドの活用はあらゆる分野でやっていかなくてはいけないことだと思います。
 それからもう一つは、私がこういうことを申し上げるのは非常にせんえつかもしれませんが、アカデミッククラウドに求められる要素として、教育・人材育成的な話があると思います。クラウド上でイノベーションをみんながやっていくようになったときに、それを支えられる人材の育成という話が必要となりますそれにはクラウドを使いこなす人材も必要でしょうし、クラウドを作る・動かす、あるいはクラウドのセキュリティ維持、そういったことに対しても今までと違う人材像が要るんではないかなと考えます。
 まとめるとイノベーションを進めるためにクラウドをいろいろな側面で国家的に使っていかなくてはいけない、更にアカデミズムに期待される話としてプラスアルファでこういう観点があるという前提を述べてクラウドの導入としていただくと、何か「つかみ」としては書きやすくなってくるかなとお思います。
 話が大きくなってしまいましたが、一つの御提案として申し上げさせていただきます。

【西尾主査】 吉田委員、貴重な御意見ありがとうございました。現時点でイノベーションとの関わりが3ページのアカデミッククラウドの定義のところで初めて出てはくるのですけれども、単に科学技術のイノベーションではなくて、ソーシャルな面も含めたイノベーションを起こすためのまさに母体であるということについては、羽入先生も先ほどおっしゃっています。先ほど来の課題である、最初の部分のところで、どのようにしてインパクトを与えるかということで、是非、有効にその言葉を使っていただくとよいのではないかと思います。どうかよろしくお願いします。
 どうぞ。

【羽入主査代理】 今、吉田委員が御発言の前に、少し全体のタイトルについて申し上げようと思っていました。吉田委員が御発言になったので、新たに思い直し、このタイトルを「学術情報基盤整備によるイノベーションの創出」とかそういうタイトルにしてしまったらどうかという気がいたしました。思い付きですので、御検討いただければと思います。その前に思っていたのは、「学術情報基盤整備の将来像」とか「理想像」とかそういうタイトルがいいのかなと思っていましたが、いっそのこと「イノベーションの創出」としてしまって、サブタイトルで「SINET」あるいは「アカデミッククラウド」と書くのはどうかという気がいたしました。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。タイトルにつきましても、もう少し大上段に構えたらいかがでしょうかということですので御検討をお願いします。
 どうぞ、上島委員。

【上島委員】 初め、読ませていただいたときは、私も技術の方ですので引き込まれて、非常によく書いてあるなと思っていました。ですが、皆さんの御意見をお聞きしていたところ、確かにアカデミッククラウドのところが分かりにくい点がございました。特にこれが今、イノベーションを起こすということで、大学アカデミアでのイノベーションということで、教育、研究、管理運営でもイノベーションなのだろうと思いますが。こういったことを起こすということになれば、やっぱり技術の言葉だけではなくて、ここは技術の言葉と教育のスタイルの言葉、例えばeラーニングも技術といえば技術ですが、例えばPaasやSaasといったこういった言葉がいろいろ混ざっているんですね。学長が読んで分かるか分からないかということは、学長は中央教育審議会や高等教育局の、例えば教育の部分ですが、アクティブラーニングや自立性や国際性の寛容といったことを思っているわけで、アカデミッククラウドとこのあたりを結ぶくだりが必要だと思います。
 ここに書かれているのは、技術の例えば、MOOCも技術的な言葉ですが、MOOCやLMSの上にはもうすぐに「公共性の高いミッション」といってしまうので、両者の間がないんですね。技術文章を書くと、どうしても細かい技術の説明をしないといけなくて、しかも技術をボトムアップから書くのでこうなるんだと思いますけれども、これはやはり国として出す方向性の素案だと思いますので、両者の間をきっちり埋めて、トップダウン的な位置付けを書くべきだと思うんですね。イノベーションについても教育、研究、管理運営についても、そういった書き方で書いていったらいいんではないか。非常に難しいことだと思いますけれども。この文章の位置付けはそういうところにあると考えております。

【西尾主査】 どうもありがとうございます。
 今日は、JSPSからの御報告もありますので、40分ぐらいまでしか議論できませんので、小松局長の方で何か現時点でコメント等ありましたらおっしゃっていただきまして、またそれを受けて、審議を継続していくという方法もあると思います。どうかよろしくお願いします。

【小松研究振興局長】 いろいろと具体的なことにもわたり、構造にもわたって、貴重な御意見を出していただいてありがとうございます。まず、それを踏まえて直していきたいと思うんですけれども。まさに事務方として、もう少し、今日の少し残った時間ででも更に御示唆、お知恵を頂ければと思う点がございます。
 一つは、今日、議論になっている、クラウド、アカデミッククラウド、SINETの関係について、ひとつまとめる上でという意味ですが、お伺いしたいと思いますのは、不可欠性。不可欠性ということとは別途代替性がないということです。唯一であるか。唯一性ということですけれども。この二つが必要だということなんですが、これは何について不可欠で、何について唯一かということを頭に入れて、今日の御議論を整理しないとなかなか書きにくいなと思っております。
 倉田先生からは学長が読んでなるほどと思うようにとおっしゃいましたけれども、これは私どもとしていいますと、私どもの事務方なり財政当局がなるほどと思うという観点もないと、来年の予算要求的な側面からすると、ある意味同じ考え方かもしれませんけれども、そういうふうに考えております。その場合に、何について不可欠か唯一かということについては、先ほど、羽入先生から、学長さんという観点からすると、今の大学におけるどの問題に対してSINETをこういうふうに整備する、あるいはアカデミッククラウドをこういうふうに動かしていくと、具体的に何がどう良くなるのか、あるいは悪いものが悪くなくなるのかということをできるだけ分かりやすく示すことが必要だというお話があったんですが。
 今日のお話を聞いていて、別の観点もあるかなと思いましたのは、というか、付け加わっている感じもしたのは、クラウドの導入の手段、導入というか発展とか定着の手段という観点からのSINETの位置付けという御議論がかなりありましたけれども、私はもしかして取り違いをしているかもしれませんが、喜連川先生から先ほどあった後の方の御発言では、クラウドが発展していくための手段としてのSINETではなくて、SINETそのものが持っている学術情報ネットワーク、これがクラウドであろうがなかろうが、過去はクラウドではなかったですけれども、多分唯一性、不可欠性があって発展したものと理解しているんですけれども、その点についてしっかりしていないと、ちょっと何かぐらつくかなという感じがしておりまして。
 今、非常に重要なことがアカデミッククラウドとかそういうことの進展だということなので、その関係を議論していただいて、ここのところは大分、分かったんですけれども、今、クラウドかクラウドでないかを除いて、学術情報ネットワークとしての不可欠性をどう確認しておくかがもう少し今日の時点でどうかということが御議論いただけると有り難いと思います。
 すいません、もう1点だけ。それから、今日の御議論につきましては、今日ここでというわけではないんですけれども、後でまとめる際にもう少し現場的に具体的なことをお伺いしながら肉付けをできる限りしたいと思っておりますのは、今の御議論についての幾つかの部分については、実際進めていこうとすると、いわゆるエビデンスベースで求められてくると思います。例えばこれでは足りないと言っているけれども、現場では現実にどのくらい、どういう点で足りないのかとか。問題意識、意識改革として、そういうことが重要だというのは分かるけれども、現時点で、例えば来年、再来年、その次という年でどのくらいの人がついてこられるのかとかです。そういう極めてシビアな議論になると思います。それを一々全部個別の数字で挙げて言うことはできないわけですけれども、どういうふうに理解しておくか。現状です。
 もちろん、それが足りないので人材育成する必要があって、そのためにはこういう全体的なネットワーク性が不可欠なんだというようなことは言えるんですけれども、しかし、今、追い付かないでしょうということになれば、それは随分そがれることになりますから、その点、具体的にどこまで問題になっていて、その問題意識が発展しているのか。こういった点については、更にまとめていく過程で先生方のお手を煩わすようなことがあるかもしれませんので、そうしないと迫力のあるものをまとめ切れないかなという感じがします。
 長くなって申し訳なかったんですけれども。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。不可欠性ということと代替できない、つまり、唯一性ということがまず大事だということで、これらを踏まえて財政当局などに対してどれだけ強く説得できる材料になるかということだと思います。

【小松研究振興局長】 すいません、それで最初に申し上げましたアカデミッククラウドというものが非常に今課題になっていて、それとSINETとの関係ということを今日、大分御議論していただいた。それはすごく有り難かったんですけれども、それを進めていく過程での不可欠性、唯一性という話もあるんですけれども、それとは別途の……。

【西尾主査】 別ですね。

【小松研究振興局長】 はい。そこの部分をどう考えるかについても少し補足的にでも御議論いただけると有り難いと思います。

【西尾主査】 それはSINETそのものということですね。

【小松研究振興局長】 そのとおりでございます。

【西尾主査】 分かりました。斎藤委員、どうぞ。

【斎藤委員】 今、小松局長から財務省という言葉も出たので、私は実はこういう審議会のこういう文章というのは、やはり最終的には予算獲得のための援護射撃と思っていたので、最初に倉田委員が学長うんぬんとおっしゃったのは、ちょっと「えっ」という感じだったんですね。つまり、よく分からないですけれども、アカデミッククラウドというのは、今までは各大学、研究機関の中でやっていたわけですね。そうすると、どんどん削られている交付金の中から各大学が知恵を絞って出していたわけですが、SINETはそうでなくて、NII、情報研に集中してやるわけですね。
 ですから、各大学でクラウドをやっていたら、大学間をつなぐ必要は極端に言ってないわけで、何か矛盾するんですよね。それで、もちろん大学間の共同研究でビッグデータのやりとりということは当然ありますから、もちろん必要なんですが。ちょっと私はパイプとしてのSINETとコンピュテーションとかデータ確保としてのクラウドの間の関係はまだよく分からないんですよ。ですから、実は本音はこれは情報研が巨大なサーバーをSINETプラスアルファで獲得しますと。それを皆さん、全国で使ってくださいということなのかなと思ったんですが、違うんでしょうか。

【喜連川委員】 局長からの先ほど御質問を頂いた件に関してもかなり関連することかと存じますのでお話します。例えば昔、大型計算機センターにある計算機を我々大学の先生は使っていたわけです。あのときはどうしていたかといいますと、そこには原則ハードウエアだけがあった。したがいまして、必要なユーティリティのソフトとか自分のソフトとかというのは全部その中に入れて初めてそれを使うことができたわけですね。ところがだんだん時代が経ますと、ある程度共有的に使うものが、個別の人が使うんではなくて、大型センターが用意した方がいいですというので、彼らがハードウエアを単に置いておくというサービスレベルからだんだん上に上がっていったわけです。
 例えば、今、斎藤先生がネットワークのことをおっしゃいましたけれども、覚えておられると思いますが、昔、基盤センターにはすごく高速なプリンタがありましたね。あれはどうしてかというと、ネットワークの帯域が細いので、大型計算機センターに行って、その場で高速なプリンタでばっと印刷するしかない、それが一番最適な解だったわけですけれども。ネットワークが速くなることによって、そんなところにプリンタを置く必要がなくて、自分のところまでデータを転送して印刷するという方がはるかに便利になり大きく姿が変わりました。時代とともにサービスがどんどん変わってくるということだと思います。
 こういう変化というのは、特段コンピューターのシステムのみに固有のものではなくて、例えば医療を見ましても、医療を丁寧にしようと思えば、個別の診療所のようなものをたくさん作ればいいわけですけれども、ある程度一定の検査機構を大きな病院に備えることによって、そのマスの力で、例えば東大病院に行けば血液検査をしたら30分後には全部出てきます。個別の病院に行きますと、明日来てくださいというようなことになってしまします。そういうふうに大きな母体を作ることによって、社会コストをぐっと下げて、かつサービスレベルを上げるということが各所でなされているわけです。これは大きな社会の動き感としては極めて妥当な流れとなっています。
 そういう意味で、今、私どもがSINETがネットワークから更にその上に必要となるようなクラウドサービスやセキュリティサービス、要するに誰にとっても必要なサービスをスケールメリットを生かした形で実現し、提供していくということは、極めて妥当と考えております。そして、それをうまくイノベーションにつなげていくのはいかがかという羽入先生のお考えもそういうイノベーションを生むことができるようなファンクションを共通基盤として用意することによって、多くの大学の先生がそういうものをうまく利活用できるもっと高度なレベルに上がっていくという流れとまず御理解いただければ有り難いと思います。
 ただ、一方で、先ほどおっしゃいました対財務省という面で見ますと、先ほどの吉田委員の企業視点というのは、ちょっとなかなか御理解していただけないところも多いと思います。つまり、企業においては、プロフィットを作る、プロフィットを得ることが企業理念になっています。私どもは利益を得るためにサービスをやっているわけではないわけですね。したがいまして、ここで今、国税収がやや減退してきて、とにかく石油にお金を払わなくてはいけなくなってきているという国家予算がなかなか伸び悩んでいる中では、現状のエクスペンスの中で非効率的な部分が山のようにあるわけで、そこに寄与するということは大きな意義を持つと考えます。各大学がITインフラを維持するのは非常に大変な状況です。これはもう今の自治体でも私は同様と思っています。もっと集約することによって、圧倒的に効率化することが可能です。吉田委員のおっしゃる経済的にお金を安くすることに着目するのではなくて、何か攻める方をやった方がいいというのは、それは企業的にはそうなんですね。IT企業からすると安くすると自分のところのレベニューが減ってしまうから、そういうことは矛盾する構造になってくるわけです。
 しかし、国家のシステムを考えるという意味では、コストをいかに削減するかということはものすごく大きな重要課題でありまして、NIIがバルクでシステムを調達して、圧倒的に安いインフラを作ることによって、そこから生まれた余剰は当然新しい研究に投入できるわけですから、これは大学にとっても、財務省的にも極めてうれしいことです。これは別にITのシステムだけではなくて、今の医療費が年間40兆掛かっているのを無駄を省き効率化によって5兆でも減らせれば有り難いというのと全く同じような構造です。

【小松研究振興局長】 すいません、ちょっとよろしいですか。

【西尾主査】 どうぞ。

【小松研究振興局長】 ありがとうございました。今日の御議論では、1ページ目からこの2、3ページ目のいわば全体像を俯瞰(ふかん)するところから入ってくる。そのあたりについて、よく詰めて整理した方がいいという御指導いただいていると思いますので、それをまずきちんとやりたいと思いますが。後から御意見とかもいろいろ頂いていいと思いますけれども、そういう意味では、SINETについては今まで具体的なものを前にして御議論や運用していただいていることもあり、あんまり今日は御議論になってないので、個別の事項については、こういうことが比較的御支持あるのかなと受け止めているんですけれども。
 この5ページ目の一番下以降の「SINETの整備について」については、こういうことをした方がいいというんですが、今のお話でいきますと、例えばコスト減。コスト減というのも単にお金が減るか、お金は仮に増えたとしても、その費用対効果において改善することがあると思いますので、それを含めたコスト減のお話。あるいは単なるコストの話としてではなく、今おっしゃった単体でやることの非効率性。これも経済面だけではないと思いますけれども。それから情報の受発信という最も古典的かつ本質的な問題で、ただし、これについては改善する必要がある。しかも回線の容量を増やそうという話になると具体的に今どのぐらい困っているのかとか、本当にそれだけの予算を付けて使いこなせるのか。ここはエビデンスベースでシビアな議論になるかと思います。
 こういったところを少しお知恵を頂いて、今日は時間がないと思いますけれども書き足させていただいてということも付け加えさせていただきたいと思います。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。今おっしゃっていただきましたように、この唯一性というか、つまり、ほかのシステムでは代えられないのだということに関しては、今までも商用のシステムとSINETの違い等については、安達先生からもお話があったと思いますし、多分議論としては出ていたと思いますので、それらをきっちり書いていただくことが重要だと思います。
 今日、喜連川先生がおっしゃったことに関して、更に具体的に財務当局を説得するにはどのぐらいの経済削減になるのかという数値までが求められる場合もあるかもしれないとかんがえております。厳密でなくても、ある種の大まかな数値でも良いので、具体的なエビデンスを明確に出していくということで。SINETの必要性は強く訴えられると思いますけれどもいかがでしょう。

【喜連川委員】 本当にすばらしい御指摘ありがとうございます。なかなか短い時間ですので申し上げられないところもあるかと思うんですけれども、今、我々がなぜセキュリティに取り組もうとしようとしているかといいますと、セキュリティのブレイクのために比較的小規模な私立大学さんにおいては、計算機システムがダウンして、何日もうまく使えないという状況がある。それをアディショナルにこれだけのコストを加えることによって、そのダウンタウンがこんなちょっとになるんだというのがまさに今、小松局長がおっしゃったようなアディショナルなコストをかけても費用対効果としてはべらぼうなんだということに相当するかと存じます。先ほどのコスト削減うんぬんはちょっと富士通さんのビジネスモデルとこことは違うんだということを申し上げたかっただけです。

【西尾主査】 もう一方で、今、小松局長の下で学術の基本問題に関する特別委員会の議論が進んでおりますけれども、今、喜連川先生おっしゃっていただいたようなことなどは、限られた財源の下でどういう形で学術研究を協力に推進するかというとき、このSINETが重要なインフラになっていくのだということまでも言えるのではないかと思っています。
 もう数分間しか時間がありませんので、今日、御意見を今まで伺っていない方に限らせていただきます。岡部委員、どうぞ。

【岡部委員】 言いたいことは皆さんに大分言われていて、重複のないように。
 まず、小松局長のおっしゃった不可欠性、唯一性、SINETがどうしても必要だというところについては、もともとSINETは最先端の研究を支えるためのインフラとして整備されてきた。かつては、そういう意味では学問分野のうちのある一部の分野を集中的に支えるというスーパーSINETの時代からそういう構造だったと思います。今、ビッグデータとなりまして、自然科学に限らず、社会科学、あらゆるところでこういうインフラが必要になってきている。そういうインフラを国が支援して、民間とは違うネットワークで作るというのは我が国だけでなくて、ほかの国でも行われていることであり、そこは絶対に必要だということを言うべきなんですが。
 それとは別に、我々の日常利用のいわゆるコモディティというところもSINETは同時に支えてきたということがありまして、今回の文章は、より広い利用、アカデミッククラウドとしての広い利用の方を訴えるが余り、最先端の利用という軸足がきちんとあるんだというところが少し薄くなっているところが訴求力という点で気になりました。
 それからもう一つ、この文章の、そもそもこの文章は誰に対して何を言いたいのかというところが後半の方を読んでいて、私自身もはっきりしないなと思ったところがありまして。斎藤委員のおっしゃるように、これは間違いなくSINET5について、予算を付けてくださいと。NIIはこういうものを作りましょう、大学はそれに対してアクセス回線を整備しなさい、政府はそのインプリシットにこれらに対してサポートしてくださいというメッセージがあるのは当然なんですけれども、その一方で、羽入先生のおっしゃるように、このタイトルをどうするかというところもあるんですけれども。やはり、このSINET5ができたときに、各大学はこういうことをしなさいというものをもう一つメッセージとしてきちんと埋め込むべきだと思うんですね。それは書かれてはいるんですが、こうしなさいという書き方で書かれていないので、これを読んでも学長が自分のことだと思っていただけないところがある。そこが気になりました。
 具体的には、だからSINET5ができた後、NIIはその上で例えば学認のような制度設計をするとか、NIIとして上位レイヤーのサービスをするという話はありますし、各大学はそういうものを活用して、今までの大学の在り方を変える意識改革をしていく。あるいはそういうものを使って、民間はSINET5を前提として大学向けのサービスをするということもあると思うんですね。そういうところはやはり後半のところで、なぜSINET5とアカデミッククラウドが両方書いてあるのかと分かりやすくするためにも誰に対するメッセージかを意識しながら、この人はこうしてくださいという書き方が読めるような形にしていただくといいんではないかと思いました。
 以上です。

【西尾主査】 どうもありがとうございました。誰に対してということに関しては、非常に重要なポイントで、今、岡部先生がおっしゃったように、一つはやはりこの時期を踏まえて財務当局であると考えております。ただし、SINET5の構築への大きな流れを作っていく、つまり、大学全体を含めてアカデミア全体で構築していくということを考えると、今日、何回も出て恐縮なのですけれども、大学のトップの方々にも十分に御理解を頂いて、それを後押ししていただくことも必要です。その両面を踏まえながらの一つの大きな出口としては、やはり、概算要求としてどのように持っていくのかということかと考えています。
 美濃先生、よろしいですか。もう最後ですので。

【美濃科学官】 ほとんど言われているのでいいかと思うんですけれども、クラウドの説明がどうも情報系から見たクラウドの説明になっているんですね。だからユーザーというか、使う人から見たクラウドというのはどんなメリットがあって、実際どんないいことがあるのかというスタンス、そういう視点から書かないといけないのではないか。つまり、自分で物を持つことの手間がかかるんだと。サービスだけを利用するのがいかに楽かということを強調してもらうと、このクラウドの必要性が出てくるのではないかと。
 ちょっと考えていたんですけれども、SINETというのはアカデミックネットワークなんですね。それをベースにして、アカデミッククラウドを作るんですね。そのあたりのことを考えていたんですけれども。なぜアカデミッククラウドが要って、アカデミックネットワークが要るんだというあたりが若干分かりにくい。アカデミッククラウドが必要だということが分かれば、そのクラウドに費用なネットワークレイヤーの技術は商用では対応できないところがあると言えるのかどうかという話ですね。
 アカデミックネットワークがアカデミッククラウドを支えているという話でいけると、まずそこのところは問題ないと思うんですけれども。今度はそれではそういうアカデミックだけで閉じたようなネットワークだとかクラウドを持つ意義って何だというそこのところが書けるのかというお話。
 もちろん研究の最先端を考えますとそういう特殊な用途というのはいっぱい出てくるから、そこのところはこれまでそういう論理で通してきて分かりやすいんですよね。今度これを速くしようとして、コモディティだとか教育なんかもそこに乗りますよという論理でいきたいわけですけれども、それらは、アカデミックである必要があるのかどうかという。普通のコモディティを使って、商用を使ったら駄目なのかというそこのところの論理を何か作らないと弱いかなと思います。

【西尾主査】 まさに美濃先生がおっしゃったのは、財務当局の想定質問でした。ですから、そこで小松局長がおっしゃっておられる不可欠性、唯一性ということを明確にきっちり言っていく必要があります。その理論武装をいかにするのかについて、今日はもう時間が来ておりますので、皆様方からも貴重ないろいろ意見等を頂いて、次回までには何とか最終版に向けて整備をしていくことになると思います。
 それでは、まだまだいろんな御意見いただきたいところでございますけれども、次回は委員会の皆さんから頂いた御意見、特に小松局長からおっしゃっていただいたポイントに対してどう答えるかということが一つ重要な宿題でもございますけれども、事務局で整理していただいて反映させた審議まとめ(案)の最終版をもとに、更に審議したいと思います。次回までに皆様方に、個別の場合も含めて、いろいろと御意見を伺ったりすることが多々あるかと思いますが、時期的な重要性も有り、特に日本の科学技術、学術の進展のためのベースとしてのSINETの必要性、機能向上の必要性を強く訴えていくためにも御協力のほどを、是非ともよろしくお願いいたします。
 それでは次に、1月に開催した第8回の委員会において、御審議いただきました科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(学術図書)の制度改革案について、その後の日本学術振興会での検討状況等を御報告いただきたいと思っております。
 本日は、日本学術振興会から佐久間研究事業部長に御出席いただいております。どうもありがとうございます。では、よろしくお願いいたします。

【佐久間研究事業部長】 学術振興会の佐久間でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料2を御覧いただきたいと思います。こちらの委員会から御指摘いただいた制度改善につきまして、こちらの委員会での審議内容を踏まえまして、支援対象に学術図書でございますが、新たに電子媒体を加えることについて検討をいたしました。
 2月から3月にかけまして、本会の学術システム研究センターにおきまして、十回程度、学術図書の支援対象にその電子媒体を加えることについて審議を行いました。
 具体の審議内容を簡単に御紹介いたしますと、センターの議論では、学協会が発行するジャーナルにつきまして、特に自然科学系分野を中心に紙媒体から電子媒体に移行しつつあるという状況がございますが、個人で出版する学術図書につきましては、まだまだ一般的ではない。特に研究成果を学術図書として刊行することが業績となっております人文学、社会科学系の分野におきましては、電子媒体による出版というのはなじみがなかなか薄いということ。反面、メリットといたしまして、出版に掛かる費用が比較的安いこと。内容の改定が容易であること。購入の単価が1冊単位ではなくて章ごとでも購入が可能であるという点。あるいは紙媒体では使えない動画などの電子媒体の特徴も生かせるというプラスの意見が多くございました。
 審議の結果でございますが、平成27年度の科研費の公募要領から支援対象に電子媒体も含めるということで、対象のところを従来はCD-ROM、DVD-ROMも入れますというところを電子媒体で発行するものについても対象とするという形にしてございます。
 支援対象は、電子媒体のみの場合あるいは紙媒体及び電子媒体のいずれの場合も対象とするという形で制度を改善したいと思っております。
 以上でございます。

【西尾主査】 皆様方から何か御意見とか御質問ございますか。よろしいですか。
 どうぞ。

【岡部委員】 本当にさまつなことですけれども。(2)の「2直接出版費のうち以下のa)からg)」と書いてあるんですが、g)を消されるのであればf)かなと思いました。

【佐久間研究事業部長】 それは大変失礼しました。f)でございます。させていただきます。

【西尾主査】 図書関係ということで、倉田委員。あるいは竹内委員、何かございますか。よろしいですか。

【倉田委員】 ちょっとよく分からない。「直接出版費のうち以下のa)からf)」ということは、これは電子媒体での発行に関するものは基本的には含まれない。

【佐久間研究事業部長】 恐らくa)とかb)あたりのところで含まれるという形になろうかと思います。ですから、電子媒体の場合は、個別に見させていただいて支援するという形です。

【西尾主査】 本件につきましては、4月21日、来週の月曜日に開催されます研究費部会において審議予定となっております。そこで了承されました場合には、平成27年度科研費の公募要領に反映されていくことになっております。
 佐久間部長、お越しいただきまして、どうもありがとうございました。
 最後に、事務局より連絡事項等あれば、よろしくお願いいたします。

【松本学術基盤整備室参事官補佐】 本日、本委員会の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開とさせていただきます。
 次回は5月28日水曜日の開催予定でございます。時間は14時から16時。場所はこのフロア隣の3F2特別会議室でございます。
 また、今後の会議日程につきましては、資料3のとおりとなってございますので、日程の確保をよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【西尾主査】 それでは、時間も来ているようでございますので、閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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屋所、窪田
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用される際は全角@マークを半角@マークに変えて御利用ください)

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