学術情報委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成26年3月7日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

西尾主査、羽入主査代理、上島委員、岡部委員、加藤委員、倉田委員、後藤委員、斎藤委員、竹内委員、辻委員、土方委員、美馬委員、山口委員、吉田委員

文部科学省

(科学官)美濃科学官
(学術調査官)市瀬学術調査官、宇陀学術調査官
(事務局)小松研究振興局長、山脇大臣官房審議官、板倉振興企画課長、下間参事官(情報担当)、長澤学術基盤整備室長、その他関係官

オブザーバー

安達国立情報学研究所副所長

4.議事録

【西尾主査】  おはようございます。時間になりましたので、ただいまより第9回学術情報委員会を開催いたします。
 皆様方には御多忙の中、御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。心よりお礼申し上げます。
 本日は、次期SINET及びアカデミッククラウドの展開に関する審議まとめに向けまして、調査研究をお願いしております九州大学岡田先生から結果概要の御報告を頂き、その後、事務局より、審議のまとめのたたき台の御説明の後、審議を深めたいと思いますので、よろしくお願いします。事務局で作られた審議のまとめのたたき台をベースに議論を積み重ね、可及的速やかに審議まとめを世に問うていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 まず、事務局より人事異動についての紹介をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、人事異動について御紹介させていただきます。
 まず、少し遅れて参りますけれども、研究振興局長でございますが、1月17日付けで、吉田大輔が高等教育局長に異動いたしまして、後任に小松親次郎が着任してございます。
 それから、振興企画課長でございますけれども、同じく1月17日付けで、生川浩史が会計課長に異動いたしまして、後任に板倉康洋が着任しております。

【板倉振興企画課長】  振興企画課長の板倉でございます。よろしくお願いいたします。

【西尾主査】  どうかよろしくお願いいたします。
 次に、配付資料の確認及び傍聴者の報告をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  本日の傍聴者は15名となっております。
 それから、配付資料でございますけれども、お手元の議事次第のとおりでございます。資料1から4までございます。それから、机上配付資料としまして、審議のまとめ等の参考資料をお配りしております。漏れ等ございましたら、事務局までお願いいたします。

【西尾主査】  もし何かありましたら、途中でも結構ですので、お知らせいただければと思います。
 それでは、まず初めに九州大学の岡田先生より、アカデミッククラウドに関する調査研究の成果報告について御紹介頂いた上で、質疑応答、意見交換を行いたいと思います。
 資料1を見ていただきますと分かりますが、120ページに及ぶ報告資料を作成いただいておりますが、時間がタイトなこともございまして、岡田先生には20分程度で御説明頂ければと思います。どうかよろしくお願いいたします。

【岡田教授】  ありがとうございます。九州大学の岡田です。
 それでは、20分という時間でございますけれども、本事業の成果報告、暫定版について御報告させていただきます。
 まず簡単に事業内容を説明させていただいて、その後、調査結果も含めまして、検討内容について、それぞれの分野について御説明させていただきます。
 前回御説明させていただきましたけれども、アカデミッククラウド環境構築におきまして、研究、教育、管理、運営等に関わるデータの量・分布を調査する必要がありますので、本事業で主に大規模な全国の高等教育機関を対象としたアンケート調査を実施しました。それらのデータをベースとして、アカデミッククラウドの標準仕様の策定を行うというのが本事業でございます。
 ここに書いてございますように、ICT推進協議会と密な連携をとって、本事業を推進してまいりました。
 アカデミッククラウド構築環境を検討する上でサービスモデル、物理サーバの配置、配備モデルを検討しないといけないんですけれども、それよりも、まず、どういったサービスがあるのかというのが重要になります。
 そこで、大学の活動について分類したものが右側にございますけれども、これの中の太線で書いてある部分を我々の対象分野としまして、合計10の分野で検討をしてまいりました。
 10分野の連携関係ですけれども、1から5につきましては、大学のアカデミッククラウド、クラウドコンピューティングで支援される分野になります。ここでは計算機資源と利用に関する基本情報の調査を行いました。
 6、7、9につきましては、それらを実現するための関連技術ということになります。ここでは、扱うサービスのデータの質、情報の格付を行って、それらをベースとして、下にありますように、適切な標準や基準を策定するというのが標準仕様の策定になります。
 また、アンケート調査で調べました計算機リソース等を考慮して、ネットワーク及びアーキテクチャーの検討を行うということが標準仕様になります。
 アンケート調査を1,230の対象機関で、昨年の10月に実施しました。アンケートテーマの数としましては、部局・部署向けに10、個人研究者向けに一つで、合計11のテーマでアンケート調査を行っております。
 教育支援に関わるものとしまして、主にコース管理システム、eポートフォリオ、電子メールシステム等について、こういう教育環境モデルに従ってアンケート調査の項目を規定し、アンケート調査を実施しました。
 現在、下の方に書いてあるものが一般の教育で使われているシステムになりますけれども、これからはBYODとかeポートフォリオ、最近話題になっているMOOCs等を考慮して検討する必要があると考えられます。
 細かくは御説明しませんけれども、593の大学から回答頂き、LMS、CMSの利用状況。
 これはEDUCAUSEの調査結果ですけれども、関連情報として挙げてあります。
 eポートフォリオの利用状況、EDUCAUSEの調査結果、運用形態、ASPで利用する、外部のサービスを利用するときの促進要因等について調査を行ってあります。
 それをまとめたものが、この1枚になりますけれども、今後5年でCMS/LMSは2倍程度の利用拡大、eポートフォリオも二、三倍程度の利用拡大が見込まれる。特に、これからMOOCsなどの電子教材の開発が促進されるということで、ビデオ教材の活用の伸びに依存しますけれども、今後5年で全体で数百TBの教育ビッグデータが見込まれるという主な結果になってございます。
 次に電子メールの利用状況、ASP、外部に委託する場合の要因。あと、学生用の端末システムの導入状況。それをクラウド化するための要因。またBYODの状況。BYODといいますのは、PC必携化のように、学生さんが個人で持っているパソコンを大学に持ち込んで授業に使うというものです。それと、認証についてのアンケート。
 これらをまとめたものが、これになります。学生メールASP化について、端末システムについてと、それぞれ挙げてありますけれども、クラウド化は、プライベートで運用する、現在のところ、そういった方向になるだろうという結果になってございます。
 今後の教育学習支援の在り方ですけれども、学生がどのように学習をしているかという履歴をとって、それを教員が見て指導に生かすということで、こういった四つのレイヤーでシステムを構築する可能性があるということで、最近話題になっていますMOOCsは右側に書いてあるレイヤーになりますけれども、当然、On Campus、学内の固有のサービスもありますので、それ自身をクラウド化するということも考えられます。
 ですので、それらを統合して、分散型と全国拠点型が連携したクラウドの構成になると考えられます。
 以上をまとめますと、こういう標準仕様になります。今、御説明したようなものをまとめたものになってございます。
 一応、ロードマップとして、こういった形が考えられるということで挙げてございます。
 次に、研究分野ですけれども、研究では、計算機のリソースを提供するという例えばIaaSのサービス、同様にプラットフォームを提供する、あるいはソフトウェアサービスを提供するPaaS, SaaS、こういった形態を、それぞれ考える必要ございます。そのときに考慮しなければならないアプリケーションであるとか、データであるとかを挙げたものが、この1ページになります。
 研究支援のアンケートでサービス部署向けに行ったものの概要が、こういったことになっています。コア数であるとか、データ総量は、それぞれこれぐらいの規模になってございます。
 そのほか、アカデミッククラウドに対する要望であるとか、資源利用の変動率。閑散期、とそうではない時期がありますので、そういった変動率を調べております。
 あるいは、バックアップの現状について。
 情報サービス部署の担当者から、こういったコメントを頂いてございます。
 研究分野につきましては、部署向けと研究者個人向けのアンケートを実施しております。それで、個人向けのアンケート結果の概要がこれになってございます。データの量として7.5PBということで、今後のデータ増加量の見込みは、そのような3.1PB/Yearと見込まれております。
 そのほか、データの利用者と質、アカデミッククラウドに対するニーズ等をまとめてございます。
 主な課題として、こういった課題がございます。パソコンの制約が研究の限界となっている、クラウドの利便性やスケーラビリティに気付いていない研究者も多い。大量のデータ・ファイルの取扱いやバックアップ、ネットワークアクセス、継続的なデータ保全に困難を来している等の問題がございます。
 研究支援に係るアカデミッククラウドの現状です。海外調査も幾つか行っておりますけれども、研究支援のための大規模なアカデミッククラウドシステムの導入が最近急速に進んでいるということで、今後、国際連携も含めて、アカデミッククラウドの連携が進んでいくものと予想されます。
 一方、真ん中に書いてありますけれども、国内では一部の大学でサービスが提供されているものの、その資源量は絶対的に不足しており、連携の試みも始まったばかりである。この辺から解決しなければいけないと。特に連携の部分は解決しないといけない課題ということになります。その際に、オープンソースなどの利用が積極的にされておりますが、そういった実証実験をする必要があると考えられます。
 インフラと運用・サービスについて、それぞれまとめてございますけれども、全体としての要求仕様のまとめが、ここにございます。5年後を目途に必要とされる資源量として、エクサバイト級のストレージ、100万コア規模のビッグデータ処理インフラ、100Gbps超のネットワークが必要であるというふうに、定量的なデータとしては、こういった形で挙げさせていただいております。
 一応10年間、今後、アカデミッククラウドを構築する方法として、研究支援分野としては、こういった方法があるだろうということで挙げさせていただいております。
 資料がたくさんございますので、個々については後でご覧いただきたいと思いますけれども、要点だけ御説明させていただいております。
 次に、支援分野の事務支援とコンテンツと大学経営をまとめて、ここで御説明させていただきます。主にアンケート調査の結果の概要だけを述べさせていただきます。
 アンケート調査の項目としましては、ここに挙げているものが、ほぼ全体になります。それぞれサービスで使用しているリソース、アプリケーションの開発に関して、どういった種類のアプリケーションを使っているか。BCP対策とバックアップ対策。これはDR対策ですけれども。あと、パブリッククラウドの利用状況等についてと、アカデミッククラウドを利用するときの状況等について調査をしております。
 大学経営分野も、対象としているシステムは評価情報システム等となっておりまして、事務支援で対象としています、上の方に書いてございますけれども、システムと同様のもので、アンケートの調査項目も、ほぼ同様のものになってございます。結果も、実は同様の結果になってございます。
 事務支援につきましては、主に集約化で様々なコストの削減が図られると考えることができます。
 事務支援分野から見たアカデミッククラウドのあるべき姿ですけれども、A、B、Cということで、機関相互や企業との間で情報を共有できる情報流通基盤となるべきものであろうと。システムを集約・統合するための基盤となり、ビッグデータ活用のためのデータ収集と。これは研究のビッグデータではなくて、我々のアクティビティー、学生も教職員も含めたアクティビティーデータという意味でのビッグデータになります。それぞれ細かくは、ここに書いてあるものになります。
 ロードマップとして、こういう形を挙げさせていただいております。
 以上、事務支援分野をまとめますと、ここに書いてございますように、パブリッククラウドの活用はセキュリティの課題。データとしましては非常に重要なデータを扱っておりますので、そこの部分がネックとなって、余り進んでいないのが現状である。あと、アプリケーションは多岐にわたっており、共有化するのが難しいと。それらを解決する必要があります。そのためにSLAやBCPやDRはきちっと守られている、契約されている必要があるという結果になってございます。
 コンテンツ分野は、コンテンツサービスとICTサービス、二つのテーマでアンケート調査を実施しています。図書館システム、学術リポジトリ等がコンテンツサービスで、調査項目は、ほぼ一緒のものになってございます。
 異なる部分は、コンテンツサービスではオープンなデータが多いということと、ICTサービスは個人情報も含みますけれども、計算機のリソース自身を提供するということで、そのあたりの定量的なデータが大きくなっているという結果になってございます。
 コンテンツ分野から見たアカデミッククラウドのあるべき姿ということで、こういう形で挙げさせていただいております。
 ロードマップも事務支援分野とほぼ同じのものになってございますけれども、NII等、JAIRO Cloud等既存のサービスがございますので、そういったものとの連携も特に考慮する必要があるということで挙げさせていただいています。
 以上まとめますと、こういった形で、ほぼ事務分野のまとめと一緒なんですけれども、意見の中にメリットが不明ということで、やはりクラウドコンピューティングにするためのメリットがどのようなものかが分かっていないということで、メリットがどういったものであるかを理解してもらう努力が必要であると考えられます。
 次に、サービスごとの情報格付とガイドラインということで、クラウドサービスを各データに対して利用するときの評価軸として、独立性であるとか、アクセス制御であるとか、通信路の安全性、それぞれについて格付をする必要があるだろうということでまとめさせていただいております。
 時間が余りありませんので、省略いたしますが、アンケート調査、セキュリティ分野などの調査の結果が、ここに挙げたものになってございます。
 要約はここになりますけれども、6割強の機関は情報システム運用に関する諸規則をそれぞれ定めています。ほとんどは「高等教育機関の情報セキュリティ対策のためのサンプル規程集」と軌を一とする諸規則を参考にしているということで、こういった既存のガイドラインに従ってクラウドサービスでのガイドラインを決める必要があるだろうということで検討を行ってまいりました。
 NIIが出されております「高等教育機関の情報セキュリティ対策のためのサンプル規程集」、Bの2104というのがございます。それの中に情報の格付として、機密性、完全性、可用性ということで、それぞれ3段階、2段階、2段階で格付が行われています。それの内容が右側にございます。
 細かくは省略させていただきますけれども、その格付に対して我々がクラウドコンピューティングで扱うデータの重要度を4段階で定義させていただいております。それの内容は右側に書いてあるものになります。
 その重要度に対して、クラウドコンピューティングの信頼度を定義して、それぞれの重要度で扱うサービスに対して対応した信頼度のクラウドコンピューティング、クラウドシステムを提供する必要があるという関係になります。
 特に独立性についてSaaS、IaaS、PaaSについてまとめたものが、これになります。これは一例になります。
 それ以外にアクセス制御。この後まとめてあります認証連携分野での格付になります。通信路の安全性は、ネットワーク分野における格付ということになります。
 参考にしました資料としましては、こういったものがございます。
 認証連携のアンケート結果が、このようになってございます。統合認証が行われているか、シングルサインオンが行われているか、冗長化、認証システムの情報の冗長化とシステムの冗長化が行われているかについてアンケート調査を行っております。
 本事業で認証連携に係る標準仕様を、このような過程で導出するというものをまとめたのが、これになります。
 参考にしている基本概念が、認証保証レベルに関する基本概念ということで、NISTの800-63ですけれども、これを参考にして、それの中の1、2の項目について、認証強度レベルを規定してあります。
 アイデンティティーのライフサイクル管理については三つのレベルで、認証トークン、これはデータの方になりますけれども、四つのレベルで認証強度を規定してあります。それをICT、教育、事務やコンテンツ、大学経営で扱っているサービスに対して、それぞれ対応関係をまとめてございます。
 実際に大学が行っているサービスをクラウドコンピューティング、アカデミッククラウドに移行するときには、こういったガイドラインに従って行うというものをまとめたものになってございます。
 次にデータプライバシーについてですけれども、考えないといけない項目が、事業者が行う措置の対外的明確化と責任体制の確保、従業者の啓発というのがございます。
 アンケート調査の結果の概要はこのようになっておりますけれども、それをまとめたものがここにございます。
 データプライバシー保護の基本となる「個人情報保護方針」の整備は定着してきている、けれども、クラウドサービスを視野に入れて見直しを図っていく必要があるだろうと、こういった課題、まとめを挙げさせていただいております。
 次に、ネットワークに係る調査検討ということで、アカデミッククラウドシステムの利用と現在の大学ネットワークの状況を利用者視点と提供者視点で調査を行っております。
 582機関から回答を頂いて、ネットワークトポロジー、拠点間の接続方法、ネットワークの規模、特にVLANのバックボーンネットの帯域、バックボーンネットワークの帯域の規模とエッジルータ、これは対外スイッチのルータですけれども、接続帯域と自機関外との接続方式、帯域、あと無線ネットワークについて、それぞれ調査を行って、またeduroamの対応、VPN接続サービス、外部クラウド接続方式と現状の状況について調査を行っております。それらをまとめて課題と問題点を挙げたものが、ここにございます。
 全体をまとめたものが、ここにございます。学内のネットワーク基盤の整備が進んでいるものの、学外との接続に関しては帯域が不十分であるということが言えます。今後、教育分野でもありましたけれど、BYODとスマートフォン普及、LMS普及など、今後のICT環境変化と利用者の接続環境変化への対応をしていく必要があるということで、ネットワーク分野から見たアカデミッククラウドシステムのあるべき姿は、ここに書いてある三つ。全国的に均一した超高速ネットワークによる地域差の解消、柔軟な機能・役割・負荷分散、ネットワーク全体の利用効率の向上等を考える必要があるということです。
 要求要件として、こういうものを挙げさせていただいております。
 ネットワークから見たロードマップとしても、こういう形で、100Gbps以上のバックボーンが必要であるということで、定量的なデータとして挙げさせていただいています。
 最後、システムアーキテクチャーに係る分野ですけれども、まず我々の事業に参画していただいている先生方の間で、いろいろ議論をしまして、アカデミッククラウドをきちっと定義しましょうと、重要なのは、どこが実施主体になるかだろうということで、アカデミッククラウドですので、アカデミア、学術機関の連携が運営主体となるということで、そうすることで、一般のクラウドコンピューティングで言われているメリット、ここに四つ挙げてありますけれども、そういったメリットを、我々のイニシアチブで進めることができるというのが重要だと考えております。
 そうすることで、その下に書いてございます多様な教育研究活動の進化・発展を効率的に支える学術情報基盤となり得るだろうということで、対象とする研究支援、教育支援、事務支援の具体的な例として、超大規模仮想マシンの提供であるとか、即応的な研究環境構築、大学間連携サービス、多様なコモディティサービスの効率化等が考えられるということで、データセンターの配置につきまして、最後のまとめにありますので、ここでは端折らせていただきます。幾つか課題がございますけれども、こういった課題を満足する形で要求仕様を決めていくというアプローチをとらせていただいています。
 最後に、システムアーキテクチャーから見たロードマップとして、基本的な考え方は、できるところから、小さな規模からどんどん進めていって、実証を積み重ねていって大きくしていくという考え方です。
 以上まとめたものが、これになります。サービスモデルとか、データセンターの配置であるとか、配備モデル。プライベートなのか、パブリックなのか、コミュニティなのかという大きな三つがございますけれども、サービスモデルにつきましては、サービスの質に依存しますので、それに合わせて、セキュリティ、プライバシー、認証連携分野で行う格付に従って、どういったサービスモデルを利用すればいいかというものを規定すると。
 データセンターの配置につきましては、全国中核拠点、地域別拠点連携、個別連携型が当初からございましたけれども、それも、どういったサービス、どういったユーザーに対してサービスを行うかによって異なると考えられます。ですので、大きく左側に挙げてありますが、全国規模のサービス、地域依存のサービス、コミュニティのサービス等について、右側にありますような形に、データセンター配置はなるだろうと我々は考えております。
 すみません。少し時間がオーバーしたかもしれませんが、以上で終わらせていただきます。

【西尾主査】  岡田先生、本当にどうもありがとうございました。
 ここまでのアンケートの調査とその集計は大変だったと思いますが、岡田先生の御報告からもありましたように、このアンケートに対しましては、特に国立大学に関しては、ほぼ100%に近い回答が得られていることも素晴らしいと思います。回答結果により、現場サイドの如実な現状に関しての非常に正確な把握ができたと思いますし、それと同時に、今後のシステム等に対する見込みであるとか、必要な性能に関しても、各機関から具体的な数値を伴ってデータが収集できたことに関しては、今後この委員会での審議まとめをしていく上での重要なベースになるものと確信しております。
 特に、ネットワーク性能として、今の最大で40Gbpsというところから一桁上の、100Gbpsオーダーのものは必要であるという声が研究、教育両面からも出ていますし、さらに、ストレージの量として、エクサバイトという具体的な数字も出ておりますので、このようなアンケート結果をベースにして、より具体的な議論を今後していく上で、非常に大事なアンケート調査をしていただきまして、どうもありがとうございました。
 ちょうど小松研究振興局長が来られましたので、一言お願いいたします。

【小松研究振興局長】  遅れて申し訳ございません。この1月に担当の研究振興局長を拝命いたしました小松でございます。
 今日も御議論が進んでおりますけれども、学術の発展にとって情報は基盤中の基盤で、そこを預かっていただいている委員会でございますので、私どももいろいろ御指導を受けながら政策の発展に尽くしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。どうかよろしくお願いいたします。
 それでは、皆様から、今のアンケート調査に関する報告につきまして、お気付きの点とか、もう少しここを掘り下げて説明してほしいとか、そういう点がございましたら、御発言を頂きたくお願いします。羽入先生、是非お願いします。

【羽入主査代理】  非常に詳細な御報告を頂き、後ほど内容を理解するように努めたいと思いますけれども、私の理解が間違っていないかどうかを確認したくて御質問いたします。
 今スライド表を出していただいていますが、その次の二、三行目ぐらいに投資というのがありますが、大胆な投資により整備し、というところまで、この委員会で持っていくようにする必要があるのではないかと思っていいんですよね。
 そのために、ロードマップがそれぞれのところで書かれていますけれども、具体的に、もちろん連携が必要ですが、今の状況から判断して、どこを活用するのが一番効果的かということを、岡田先生のお考えで何か具体的にありましたら教えていただきたいと思います。
 それで、この投資について考える際に、個々の大学ではできないことは明らかですし、もし幾つかの大学が個々にアカデミッククラウド化し、そして幾つかの大学がそこに参入して、利用するような形と、全国規模での大胆な投資を行うことと、どちらがコスト的に優位なのかを今後考えていくことも重要ではないかと思うのですが、まずは具体的な御提案をなさるとしたら、現実の機関をどう利用するのが有効か、教えていただければと思います。

【岡田教授】  前回御説明させていただいた資料の中に、北海道大学でアカデミッククラウドという名前でサービスを行っておりますし、NIIはJAIRO Cloud等をはじめ、クラウドサービスの提供を行っています。九州大学ですと、学内ですけれども、キャンパスクラウドということでクラウドサービスを行っています。そういった、既にクラウドコンピューティングのシステムを持っているものを生かしながら、それらを連携する形にしていくということが必要だろうと考えています。
 全国規模でデータセンターの配置ができるかということですけれども、現実的に考えると難しいと私は思っています。それは、我々の議論の中でもそうなんですけれども、データセンターを配置するときに、それなりの運用面でのコストが必要になりますので、そういうデータセンターを全国規模で。全国規模というのは、今説明しているのは、全ての大学という意味ですけれども、難しいだろうという判断をしております。
 全国規模で入れるとするならば、規模的には現在の共同教育や共同利用のサービスを行っております基盤センターがある大きな大学がターゲットになると。例えば、そういったデータセンターを配置するときには、必要な人的な要員もそれなりにおりますので、対応ができるだろうと考えられます。
 それぞれどういった分野に対して行うかということで考え方は異なるかと思いますけれども、研究ですと、例えば北海道大学。すみません、具体的な名前を挙げさせていただいていますけれども、北海道大学が既に幾つかの、広島大学と九州大学と連携をして、その研究分野で連携サービスをするという試みも行われていますので、そういった、既にトライアルが行われているものを拡張する形になるかと考えております。
 教育分野につきましては、先ほど図がございましたけれども、例えば、MOOCsみたいな、個別の大学ではなくて、全国規模でコンテンツを提供するような場合には、NIIが中心になって、そういったコンテンツの管理をするといったことが考えられるかと思います。
 いずれにしましても、我々、最後のシステムアーキテクチャーのところで御説明させていただきましたけれども、商用のパブリッククラウドも含めまして、どこがコントロールするのか。アカデミア、協議会を作ってもいいかと思うんですけれども、例えばNIIが既にサービスを行っているものもございますので、そういう代表的なところがイニシアチブをとって、SLA、BCP、DRに対応するようなガイドラインを決めて。当然、全国の大学の意見を集約して決める必要がございますけど、どこがそういうことを実施するかという候補としては、NIIであるとか、ICT推進協議会と密に連携をとって本事業を実施させていただいていますけれども、そういったところと連携をしながら、そういう協議会に当たるものを運用する。そこを決めないと、どういった形でデータセンターを配置する、どういう形で運用するということは決まりませんので、そういった、どこがやるかが、まず大事になるかと思っております。
 アメリカですと、Internet2で既にそういうブローカーみたいなサービスが行われていて、各大学で、大学とは限りませんけれども、どういったリソースをどう割り振るかというものを統合して管理するようなシステムが。管理するといいますか、そういう役割、機能を果たしているサービスも表れております。

【羽入主査代理】  どこかが、やはり集約する機能を持つ必要があるのではないかという意図が、ここに記されているのかなと思って。例えば、それがNIIの役割として一番現実的なのではないかということは言えるのではという質問でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 ですから今、岡田先生がおっしゃいましたように、例えば教育系のいろいろなコンテンツに関してはNIIが中心となり、また研究に関しては、全国の共同利用・共同研究拠点も含めた形でのクラウドのアーキテクチャーを考えていくことが重要に思います。
 ほかにございますか。どうぞ、土方委員。

【土方委員】  いろいろとアンケート、お疲れ様でございました。
 先生がアンケートをされる前に想定をしていたことと、まとめてみて、一番想定外だったことというのは、どんなことだったんですか。

【岡田教授】  やはり、特に事務支援分野でございますけれども、アプリケーションのソフトウェアの共通化とかデータの共通化をすることで、クラウドコンピューティングにしたときに、コスト的な部分の削減ができるということが考えられていたんですけれども、実際にはそうではなくて、やはりアプリケーションも多岐多様にわたっていて、共通化するのは難しいと。特にデータも個人情報が含まれているものが多いですので、そこは予測できましたけれども、クラウドコンピューティングに持っていくのは非常に難しいという、そこは最後になるだろうという予測というか、結果に。実際に担当者のアンケートの意見を見ましても、セキュリティ、個人情報を含んでいるということで、そこは難しいのが実際のところです。
 特に、事務支援では、システムが非常に多い、多岐にわたっていて、それぞれ個別にばらばらになっているんですね。それをクラウドコンピューティングシステムにすることで効率化が図られるかと思いますが、実際には、そこをクラウドコンピューティング化するのは非常に難しいと考えております。
 そういう意味では、当初から研究が一番合っているだろうと考えておりましたけれども、やはりデータの質であるとか、データを自分で管理したいという意見もありますので、そういった面で、教育についても、途中にございましたけれども、クラウドコンピューティングのメリットをもう少しですね。我々は関係者といいますか、研究分野がそういった分野ですので、よく分かっていますけれども、そうでない事務の方であるとか、それ以外の研究分野の先生方に、クラウドコンピューティングとはこういったもので、こういったメリットがあって、クラウドコンピューティングを実現することで、こういった、例えば最後のここのスライドにございますけれども、従来扱うことができなかったデータが扱えるようになる、大学間の連携をスムーズに進めることができるといったメリットがあるということを、もっと認知をしていただく必要があるかというのが大きな知見として得られたものであります。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 教育に関しては、特に各大学のいろいろな個性がありますし、お互いに教育の内容を切磋琢磨して、各大学が改善していくということは大切ですが、共通の基盤的な部分に関しては、お互いが連携することによって、効率化を図るということは可能かと思います。
 美濃先生、そこら辺はどうでしょうか。

【美濃科学官】  おっしゃるように基盤というか、プラットフォームの部分は世界的に見ても3種類ぐらいになってきていますので、自分たちの大学で持つ必要があるのか、ないのかというあたりは、きちんと考えないといけないと思います。
 それと、やはり学生のデータに関する扱いについては、各大学が一番困っているところではないかと思いますので、そのあたりを強力に進めて、どういうルールなのかというのを自分たちで作らなくてはいけないという話で、それをしっかり作って、そこのところに基づいて共有する、見せていく、比較するという、そのルールづくりがないと、なかなか各大学、やりにくいと思います。
 ですから、基盤を整えると同時に、もう少しデータ利用に関して、きっちりとルールを作っていくことが必要かなという気はしているんですが、そうしないと進まないと考えています。

【西尾主査】  もう一つ、美濃先生に質問があるのですけれども、岡田先生がおっしゃった、今回のアンケート結果で驚いたのが、事務系の方で全国的に仕様をできるだけ統一して、クラウド化をすることによって、各大学が個別にやっている事務関係のいろいろなシステムを、もう少し共通化することが可能となり効率が図られるのではないかと一般的に考えてしまうのですけど、そのようなことに対する強い意向がないことです。美濃先生は教育研究のみならず事務系も含めた組織の機構長をなさっておられます。その辺は、現状維持的な観点から、先ほどのようなアンケート結果が出てきているのか、あるいは、本質的に現場としては難しいことなのか。その辺はどのようにお考えでしょうか。

【美濃科学官】  そのあたりは、自治体のクラウドのところでもかなり問題になったのですが、やはり手順の標準化というのが一番難しいんですね。クラウドサービスというのは、言ってみれば、事務の手順を大学で共通化すれば非常に効率的になる。ところが、個々の大学というか、うちの中でも事務のやり方が全然違うんですね。どうでもいいことだといえば、どうでもいいのですが。我々から見たら、そんなに違いはないと言うんですけど、それが歴史的理由か、何か慣用的な理由で、もう完全に違っているんですね。ここの標準化をしないと大変で、今、大学内でできるだけ標準化してくれという話を進めてもらっているんですけど、結局これができないんですね。ほとんど人間の要素の方が大きいんじゃないかと思いますけれども、やはり、そこのところができて初めてシステム的には効率化できる。
 だから、これができないと、システムを作っても、全部自分たちでアダプテーションしていくという話になりますので、効率が悪いことになるのですが、やっぱり、ここのところを皆さんに意識してもらって、マインドを変えないといけないのではという気がします。
 ですから、事務のプロセスに関して電子化すれば効率化できるということではなくて、それは我々、情報分野の人間だと、そう思いがちなのですが、それより前に、事務における決定プロセスとか、事務処理のプロセスに関してのある種の標準的な、あるいは統一的なものができていかないと、それに対する電子システムを作っても、それに対応する本当に大変な、各々に対応するような事務システムになってしまい、なかなか進まないということなんでしょうかね。

【西尾主査】  どうぞ、倉田委員。

【倉田委員】  私も細かいところは全然理解できていのと、あと、研究が一番いけるのではないかというお話だったんですけれども,この前にもありましたように、既に大規模な形で、観測とかそういうような、いわゆるビッグサイエンスみたいなものでの活用は、もうなさっていることは分かっているわけです。私のイメージとしては、そういうところで、もっとクラウド的なものもあり得ると思うんですけれども、それよりももうちょっと基盤的に、研究レベルであったとしても、小規模などの大学でもできる部分ということで、幾つか出てきているのではないでしょうか。御説明にはなかったんですが、科研費等での研究での利用は、ある意味では非常に小規模なものも含めて、全国の大学がかなり関わっていらっしゃるものだと思うので、その辺のところでクラウド的なものはできるのかなというのは、今お聞きしていて、思いました。
 ただ、イメージがうまくつかめないところがございまして、例えば、そういう科研費の研究や何かで、こういうアカデミッククラウドをうまく使うとする場合には、例えばで結構なんですけれども、どんな感じに。データセンターと各大学と、それから基盤としてどこまでをどうなるのかと、その辺がうまくイメージがつかめないものですから。例えば科研費の研究においてクラウドを使うとしたら、どういう感じになるのかというのを、御説明頂けないでしょうか。

【岡田教授】  我々、情報系の研究をやっている研究室では特にそうなんですけれども、科研費が採択されて、科研費の研究をやるときに、情報系では計算機を買うわけですね。そうしたときに研究室に計算機がたくさん並ぶわけですね。研究期間が終わっても一応それを使い続けたりするんですけれども、進歩が早いですので、経年劣化で実用できなくなります。最先端の研究をやる。どの研究でも、そういう最先端の研究をしていますので、そういった最先端の研究をやるときには、できるだけ性能のいい計算機が必要ということで、そのリサイクルが。リサイクルといいますか、また新しい研究をするときには新しい計算機を買うということをしないといけないんですけれども、クラウドコンピューティングを利用することで効率化できます。ここに書いてございますけれども、共同研究等の加速と。
 研究室単位でもそうですけれども、幾つかの研究。大きな科研費ですと、幾つかの研究グループで研究組織を作りますので、そういったときに、個々の研究室でばらばらに計算機を買って、ネットワークの設定等をして使うのではなくて、クラウドコンピューティングのサービスを行っているところが、認証連携も必要でございますけれども、クラウドコンピューティングの中で、IaaSであるとか、PaaSであるとか、場合によってはSaaSレベルでクラウドコンピューティングのリソースを共通して使うと。
 そうすることで、研究室で個々に持っていた計算機のリソースが、電気代、あと管理の面もそうですけれども、コストも。これらはコストの点になりますけれども、それ以外としましては、そこに書いています即応的。クラウドコンピューティングによって個々に計算機を研究室で買って連携をすることをしなくても、クラウドコンピューティングのセンターにアクセスするネットワークさえあれば、そういった研究コミュニティを作って、コミュニティでクラウドを運用することができる。それが柔軟に、即応的に可能になるというメリットがあるかと思います。

【倉田委員】  いや、もちろん、それはさすがに分かるのですけれども、その場合のクラウドサービスを提供するのは、では、誰なんだというのが分からないのです。
 つまり、それを外で、どこかの今ある民間で出されているものを使ってしまえばいいという話ではないはずだと思うのですが。そうすると、それは、そういうアカデミア向けのものを、もちろんNIIさんが提供してくださるとか、それであればいいんですけれども、今、現にはないわけで。さらに、幾ら小規模な科研費といっても、いろいろと要望やニーズはあるわけで、それに即時対応できるようなものを、アカデミアが主体となって、どうやって作れるのかというところがイメージできないということなのですけれども。

【岡田教授】  我々の検討の中でも、最後に簡単に御説明しましたけれども、商用のパブリックのクラウドを使えるのであれば使うと。そこで企業レベルで運用体制ができていますので。そのときに大事なのは、我々が研究で扱っているデータの質、そういう外部の機関にデータを置いていいのかというのが一つ問題になります。
 あと、認証連携。そういったシステムに対して、コミュニティ、研究グループで作ったデータを研究グループの構成員が自由にアクセスして使えるのかどうか。あるいはSLAであるとかBCP、DR対策はちゃんとできているのか。そういうルールを作る。
 ここの事業の中でも、セキュリティとプライバシー、認証のところで、そういったガイドラインを作ると。それ自身が仕様ということになっていますけれども、そういったガイドラインにのっとっていれば、商用のものでも十分に使えると考えています。
 そのときに大事なのは、最後に申しましたけれども、どこが運用主体になるか、どこがコントロール、そういったルールづくりをするかというのが重要になってきます。そのときには我々が、企業に任せるのではなく、個別の大学に任せるのでもなくて、統一したルールを決めることによって、各大学の研究者が、そういったアカデミッククラウド、クラウドコンピューティングのリソースを使えるようになるだろうと我々は考えております。

【西尾主査】  安達先生、何かサポートしていただけることはありますか。

【安達国立情報学研究所副所長】  サポートになるかどうか分かりませんが、研究者の中にはコンピュータの上で自分でプログラムを書いて結果を出すという研究者もおりますが、多くの研究者たちは、例えばMATLABなどの使いやすいソフトウェアを簡単に使いこなし、研究目的そのものに合致したツールを必要なときに必要なだけ使って、効率的に研究を進めるというスタイルになっていると思います。例えば統計パッケージの利用なども同じだと思います。
 例えば商用のアマゾンのクラウドがあったとして、そこでそのようなものを使うことができるか、という話になります。そのような場合、アカデミックで提供されるクラウド、例えば北海道大学のセンターのクラウドでそのようなことが簡単にできるということになっていると大変便利です。ライセンスも安く用意されて、必要なときにすぐに使えるという環境が整っていれば、そのような利用形態でどんどん広がっていくのではないかと思っています。
 要は、商用でも大学が提供するクラウドでも、そのような環境の良し悪しで使い勝手が全く変わってくると思います。その際に、パッケージのソフトウェアは無料ではないので、大学が共同してディスカウントして確保するというやり方があります。そのような環境を大学が集まって整えることにより、研究者や学生が、ライセンスの有無を意識しないで使えるような形に持っていけるのではないかと期待されます。その方が、個別にやるよりもコストが安くなり、全体の効率化が進むと思います。
 そのときに、どういう環境を整えればいいかということは、やはり一大学ではなくて大学が連携して相談しながら進めていくことが重要ではないかと思います。

【西尾主査】  倉田先生、うなずいていらっしゃったので、安達先生の御説明にはある程度御納得されているかと思いますが。要は、アカデミッククラウドを岡田先生に御説明頂いたような形態で構築することによって、日本の国土全体で大学機関を中心として学術研究を推進する上で、いろいろな便宜を図ることができ易くなり、より具体的には、科学研究費補助金等による研究を進める上でも、多くの研究者が使用している研究用ソフトウェアを各大学が個別対応するのではなく、クラウドサーバのところで共通的な環境を整えていくことができるような、プラットフォームを構築することが可能になると捉えることができるのではないかと思います。
 もう少し議論したいところなのですが、今回のアンケート調査結果は今後の審議のまとめのベースとなるデータでございまして、一応、来月のある時点までに、できますならば、この委員会として審議のまとめを行って、先ほど羽入先生もおっしゃっていただきましたように、今、我々にとりまして、やはりSINETに関する今後の性能向上をどういう形で行っていくかというのは非常に大きな問題でして、そのためには経費的なことも非常に重要になってきます。
 要は、平成27年度の概算要求ということが我々にとりまして大きな目標になりますので、それに向けて、教育、研究、全てを含めた意味で、また日本の特定の機関というのではなくて、大学、大学共同利用機関も全て含めた教育、研究機関全体にとって利するものであるようなインパクトのある審議のまとめをここの委員会で今後作っていくことが非常に大事だと思っています。
 その審議のまとめの大体のイメージのたたき台を事務局と相談しまして作成しましたので、これから20分間程で説明させていただきます。今日からは、岡田先生から頂きましたさまざまな貴重なデータをエビデンスとして持ちながら、その審議のまとめをどのようにインパクトのあるものとして作成していくのかというフェーズに入らせていただきたいと思います。
 それでは、時間が結構押しておりますので、事務局で、簡潔に資料2の説明をお願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、説明させていただきます。資料2のイメージですけれども、これは既に出来上がったものということではなくて、これからの先生方の御意見をまとめるに当たっての参考資料というイメージで、これまでの御説明とか資料、そういったものを踏まえて、頂いた御意見等も押さえて書いてあるものということで理解していただければと思っております。
 基本的には、クラウドが今後一般化するということで、企業等は基幹的なシステムになっているわけですけれども、こういったものを大学が使っていくための国としての考え方を示唆して、それを導入していただくということと、そのためには、やはりベースとなる基盤として当然ネットワークということで、これまでの回線というイメージではなくて、大学全体の高機能化に役に立つ意味でのネットワーク整備が不可欠だという形でのまとめ方にしていきたいとい考えているところでございます。
 まず、この社会的な背景ということで、国としましては、昨年の6月に世界最先端IT国家創造宣言がございまして、この中で成長戦略の鍵がIT戦略だということで、これはイノベーションを誘発するんだと。ですけれども、こういった基盤は、やはり以前は最高水準だったんだけれども、多くの国の後塵を拝しているんだと。
 その際に、ヒト、モノ、カネと並んで「情報資源」も新たな経営資源と捉えられておりまして、そういった観点からしますと、安全で信頼できるサーバー空間の構築とか、国境を越えたサービスとか、ネットワークの活用が一層深化していって、こういったものに国際的な連携を図りながら取り組まないといけないということが明確にうたわれておるところでございます。
 それから、大学の教育改革とか科学技術・学術振興における必要性ということで、様々な閣議決定がされておりまして、教育振興基本計画とか日本再興戦略、こういったものではICTを活用して、遠隔教育とかオンライン教育をきっちりとやっていくということがうたわれておりますし、科学技術基本計画におきましては、2ページ目でございますけれども、情報資源のネットワーク化などにより、知識インフラを整備していくということがうたわれております。
 それから、そういうことを踏まえて、クラウドに関する局長の私的諮問委員会ということで検討会の設置を24年7月にしておりますけれども、この中でも、やはりビッグデータの重要性ということが国内外で注目される中で、アカデミアではそういったデータを共有する場がなく、利活用されていなくて、こういった膨大なデータを連携して処理するデータ科学等の共通基盤の開発、アカデミッククラウド関係の構築が必要であるというまとめが出ているところでございます。
 以上を踏まえますと、やはり今後は大学におけるIT環境の充実が不可欠だということで、こういった中で、普及が見込まれるクラウド環境、それを支える重要な共通基盤という意味で、次期SINETの整備の在り方を検討するというイメージで、まとめているところでございます。
 その次に、アカデミッククラウド環境はどういうものかということで、現状と課題について述べる形にしてございます。
 まず、大学によって異なるいうこともございますので、そういった理解を進める形の構成を考えております。
 クラウドにつきましては、やはり、こういったICTの対応ということで、情報通信環境の整備がニーズとともに負担が大きいのですが、こういったものを解決するための選択肢はクラウドサービスだと位置付けております。
 これは外に保存して効率化するというイメージなのですが、そのメリットといたしましては、「クラウドとは」の3行目のところにありますけれども、情報の分散管理の一元化とか、システムの維持に必要な設備投資の抑制とか、情報基盤の質的・量的高度化に対する負担の軽減ということで、これは人的なものも含みますけれども、こういったものも楽になるとか、それから環境変化が求められたときの迅速性とか、そういった対応は相当大きなメリットがあると。ただ、その一方で、不安要素としましては、セキュリティの確保とか、サービスの継続性という観点で不安があるということが一般的に言われているところでございます。
 今の、これは導入状況でございますけれども、実態調査していますが、全大学の55%は何らかのクラウドサービスを導入しておりますが、そのうち59%は機関単独だということと、内容は運営管理業務主体で、教育・研究に関する活用は4%にとどまっているという状況がございます。
 3ページでございますが、では、具体的な活用事例についてということは今後、これまで頂いた事例を踏まえて例示をしていき、こういった具体的な例がないと分からないという御意見もございましたので、これは追記をしていきたいと思っております。
 その点で、ではアカデミッククラウドとクラウド、どう違うかということでございます。これは先ほど岡田先生にも説明頂きましたけれども、管理運営という形だけではなくて、資源を共有して教育・研究の高度化を進めていくことを、クラウドを高度化していくことも含めてアカデミッククラウドということでございます。
 その導入する効果をきっちりと説明していかないといけないという御意見を頂いておりますので、これは、また先ほど御説明頂いた調査研究の結果を踏まえて追記をしていくことを考えております。教育支援、研究支援、管理運営支援、そういうイメージで簡単に整理をしておりますけれども、こういった教育支援におきましては、教育スタイルの変化でオンライン教育とか、それから先ほどもありましたeポートフォリオとか個別、学習管理システムとか、それからコンテンツの共有とか、そういったものを質的に画期的にできるようなシステムが考えられるというのが、この教育支援のメリットであると。
 研究支援におきましては、大量なデータ流通を伴う最先端研究の推進におきまして、計算資源を自前で持たなくても仮想空間で最適化することとか、プラットフォームとかソフトウェアを共有して、これも自前で持たなくても高度化できるというのがあると。それから、データベースを相互にバックアップしていくとか、また研究コンテンツを共有していくことによりまして、それぞれの研究の高度化とか効率化に進められるという形のメリットがあるだろうと。
 管理運営支援に関しましては、そういった教育研究を支えるような管理運営サービス。大学では既にメーリングシステムとか学務系のシステムもアウトソースしているところもございますけれども、そういった経費管理等も含めて仮想空間での運用ができる。それから、コンピュータ資源という関連では、シンクライアントとかBYODという、学生が持っているデバイスを使う形の環境の効率的な運用とか、そういうことによりまして機能強化や経費抑制が同時に実現できるメリットがあるだろうと思ってございます。
 そのときの留意すべき事項では、当然ネットワークということが各関係者の方々の御意見にもあったところでございますけれども、やはり大量のデータ流通をさせる高速ネットワークが不可欠だということで、そのバックボーンとしてはSINETの整備が最重要だということでございます。
 また、そのネットワーク環境といたしましては、基本的に機関間ではSINET、学内では自前のネットワークを活用しているのですが、学内とSINETを接続するアクセス回線の高速化も課題になっているということを記してございます。
 それから、無線LANにつきましては、73%の大学が機関全体で運営している状況がございますが、こういったモバイル対応もニーズに影響しているということで、これは事実だけを書いてございます。
 セキュリティにつきましては、既に御意見を頂いていますけれども、やはり最も重要な課題でございまして、一度整備して終わりということではなくて、運営過程において常に強化していかないといけない。予算が厳しくても、きちんとやっていかないと、今後のサーバー社会では生き残れないという御意見も頂いておりますし、先ほどの調査研究でもございましたが、30%のインシデント発生体験は、残り70%は気付いていないだけで、攻撃は常に受けて発生していることもきちんと考えなければいけないということで、こういったネットワークの全体的なセキュリティが大事だということを、ここに書いているところでございます。
 それから、併せて認証ということで、様々なサービスを利用するに当たっては、やはり、その認証機能の統一化とか、認証連携が不可欠だということで、NIIが学認というシステムを導入していますけれども、こういったものを普及させて、一つのシングルサインオンで利用環境を実現することなどがないと進んでいかないだろうということでございます。
 それから、人材育成に関しては当然必要だということで、そもそも、こういったクラウドの効果がきちんと理解されていない。それから、制度的な面とか法的な面とかも含めまして、こういったものを理解して、こういった教育・研究・管理業務と情報基盤整備との関係をしっかりと理解して、こういった仮想空間とかネットワークを利用できる環境整備を支えていく人材は、まず基本的に必要だということでございます。
 その際に、こういったプライバシーとか、それからサービスを提供する上での、どういった保証をしていくかというSLAを標準化するとか、災害時の事業継続計画と言われているBCP対策と、そういったものをきちんとできる人を養成しないといけないというのが、こういった調査研究で含まれているところでございますし、やはりネットワーク技術を導入することに対して管理者と利用者に対する適切な教育を適切に行っていく必要があると、ここで述べているところでございます。
 そういったものを踏まえて、では次期SINETの整備についてどうしていくかということでございますが、ネットワークの全般的な整備の方向性としまして、今後は、やはり大学においては通信とクラウドが一体となって高度化されるような、学生、研究者にサイバー空間を提供することが一般化していくだろうということでございます。
 その際には、パブリッククラウドや、プライベートクラウドとか、それらを連携させたインタークラウドと、そういった様々な、これは学内だけのオンプレミスという形もございますけれども、いろいろな形式が想定されるんですが、いずれも、こういったものを構成するに当たりましては高速、安全、高機能なネットワーク環境への接続ニーズが当然拡大していくだろうということでございまして、海外とか機関を越えた連携が不可欠になっていくということを全体として書いてございます。
 その上で、NIIの果たしてきた役割について、追記をしてございます。NIIは情報学の大学共同利用機関として、研究開発から人材育成、基盤整備まで、様々にマルチに対応してきているところでございますので、ここが、5ページでございますけれども、SINETに関してユーザーの大学等の意見を取りまとめて一元的に対応することで高速、低価格、安全安心なネットワーク環境を提唱しているということで、最新の研究成果を反映させて、ネットワーク環境の高度化を継続的に実現していくことができる。こういった対応は、やはり他機関とか商用ネットワークではできないので、そういった情報技術の連携という観点からしますと、NIIの役割は今後もまた増大していくだろうということを付記させていただいております。
 SINET4の現状をここで触れておりますが、現在700機関以上が参加しておりまして、200万以上のユーザーがあるわけでございます。回線の太さは若干、海外に比べても見劣りするような内容になってございます。基幹的な東京-大阪で40Gbps×2本、それらが10Gbps若しくは2.4Gbpsですけれども、こういった中にあっても、冗長性を確保して、唯一東日本大震災に耐えたネットワークになっておるということでございます。
 一応、当初のSINET4の5か年計画では最大120Gbpsという環境を目指しておったわけですけれども、これも実現されていない現状もございますし、やはり、そういったことに対して、大学等の意見を吸い上げて、極めて効率的なネットワーク環境を実現して、支障のない運営ができていっているというような現状を書いてございます。
 また国際関係におきましても、これは商用ネットワークではつなげることができず、海外の類似の研究ネットワークとの接続が必要になるという観点からしますと、SINETは不可欠なわけでございますけれども、やはり、海外では100Gbpsがベースになってきておりますが、SINETは10Gbpsが3本という現状で、これも十分な状態ではないということ。
 それから、先ほどのクラウド需要に関しますと、更にSINETにおける運用として、大学に限るのではなくて、商用ベンダーとも接続して、様々なサービスに対応されるような、こういった機能の拡充も行っているということを書いております。
 そういった上で、SINET5の整備に当たりましては、今後の大規模な研究ということで、シミュレーション科学とか、ビッグデータとか、教育資源の共有という、オンライン教育の普及によります、そういった授業等の流通化するプラットフォームとかいうことを考えますと、やはり、こういったものが今後、最近のオープンアクセスとかオープンデータの流れに乗って加速しますと、こういったものをネットワークとして利用するためには相当の強化が必要だと。その際には、セキュリティとか、サービスの標準化・共通化も不可欠になっているということを書いてございます。
 必要な回線の確保ということで、まず国内回線では、SINET5において、やはり、ただ単に太くする必要があるという形ではなく、新たな方式として、通信会社が今使用していないケーブルを活用するダークファイバーというものを利用して、ケーブル単位の借用に変えることで、安価で太い回線の確保を実現すると。それを確保しながら増強していくイメージを持っているということを、ここで書いております。
 それから、ノードという機関の取りまとめをしないことによりまして、こういった直接大学、学内からSINETにつなぐことで効率化できるということとかを書いております。
 ただ、沖縄の間は専用線が残ることも付記しておりますが、こういった工夫を加えまして国内回線の増強を図るということ。
 それから、国際回線におきましては、やはり諸外国と同様な、国際的に100Gbps程度の環境整備が対等に必要だということが書いてございます。
 また、欧州間につきましても、独自回線にしてほしいという要望があることも追記してございます。
 この際の数値目標につきましては、今後エビデンス等も整理しまして、どの辺にするかということは、また御相談をしていきたいと思っております。
 その支える最新のネットワーク技術の導入という観点では、SINET5におきましては、これは前回の安達先生からの御説明等もございましたけれども、やはりクラウド環境でネットワーク整備していく観点からいいますと、セキュリティ強化はクラウド化をしていくということで、様々な中小の大学もネットワーク環境がクラウド環境を維持できるということでございます。
 それから、認証の仕組みもしっかりと整備、標準化を行い、共通仕様として、シームレスに対応できるようにすると。
 それから、仮想のネットワーク、仮想LANというイメージのネットワーク自体を共有するような観点で、最新のネットワーク技術、SDNとかNFVという形の高効率で高セキュアな環境を整備するような仮想ネットワークも、このSINET5では導入していくという新たな観点も、ここで述べているところでございます。
 もう一つは、コンテンツの情報資源の共通という形が進んできておりますけれども、こういったもののコンテンツ流通の重要性ということは、リポジトリの構築等がだんだん進んできておりますが、これはクラウドサービスの中で共有化して、常に一つのリポジトリ的な役割で流通させていくと。それを資源として各大学で共有していくという形になりますと、教育資源、研究資源、様々なコンテンツが今後リポジトリを通じて、こういったSINETで共有されていくだろうと。
 そのためには、そういった基盤整備を、これまでどおりNIIが提供しているようなポータルとかを強化してやっていくことをネットワーク上で展開していくことが考えられるだろうということを書いております。
 最後、クラウドの対応が多機能にわたっておりますけれども、こういったサービス提供する上での役割として、クラウドサービスの利用を加速するという観点から、ネットワーク上でメニュー化してポータルとして整備する。それを各大学がカスタマイズして、様々なニーズをシングルサインオンで利用できるような環境として、このSINET5にクラウドゲートウェイを機能させるというのが前回の御説明でございましたので、こういった欧米で既に進みつつありますような環境も新たに導入していくということを、まとめとして書いてございます。そういったものを踏まえて、では整備するロードマップにつきましても、今後この中に含めて対応すると。
 最後の考え方の理念のまとめでございますけれども、やはり日本は高度な科学技術に依存しているわけでございますし、ボーダーレス社会とかグローバル化が進むということになっておりますが、こういった中で、国際競争力を保って、すぐれた教育研究の遂行に各大学が支障なく取り組めるためには、そういったネットワーク環境が必要であるということを書いてございまして、やはり各大学が独自で行うというのではなくて、例えばNIIが一元的に行うことで、これまでもコスト削減的な強化が整備になっていると。
 これは、やはり各大学がやるべきことをNIIがやっているということで、大学全体としてカバーしないといけないことをしっかりと認識していただかないといけないということを、きっちりうたっていきたいと思っております。
 そういった上で、国として、アカデミアにおいても世界最高水準のIT環境を実現する。そのためのネットワーク整備を着実に実施する必要があるというようなことを書いてございます。
 各大学は、そういったネットワークを使って、それぞれの機能強化とか、ミッションを踏まえた社会貢献とかを果たしていただきたいというまとめ方にしてはいかがかというイメージで作成しているところでございます。
 御説明は以上でございます。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。今まで安達先生の御説明や、今日の岡田先生からの具体的なアンケートの結果等を踏まえて、こういう形の審議のまとめを考えているということでございますが、時間もどんどん迫っておりますので、これをいかに強化していくかという観点で御意見頂ければと思います。美馬先生、どうぞ。

【美馬委員】  このたたき台について、私、もう少し教育的な視点から、今日岡田先生から御報告のあったクラウド時代の教育学習支援の在り方というものを足す必要があるのではないかと思いました。
 今回のこれだけの膨大な調査の中から、今日岡田先生にせっかくいらしていただいて、データとしてではなくて、感触で結構ですので、是非お伺いしたいと思います。例えば今、このたたき台をまとめていく中で、こういうMOOCとかe-learningの環境が整っていくと、1970年代にコンピュータが大学教育に利用され始めた際に欧米で特に出てきたんですけど、教材開発支援センター的なものが各大学の中にできていったんですね。つまり、大学の実情に合わせて、教育内容とか教育方法を理解した上で教員と相談しながら、そこで使う教材を開発していくということで、システム系の知識と教育学的な知識を兼ね備えた専門職の人の必要性が出てきたということがあります。
 そういう中では、今日御報告のあった、教えと学びを観測可能にして蓄積、再利用できる技術基盤ということが御提案されたわけですけれども、結局それが整備された後、それをどう利用していくかということも多分、そういう支援センターができれば出てくるのかなと思います。
 それで、もう少し加えさせていただくと、こういった教育の効率化を考えていくと、そもそも大学と専門学校の違いは、専門学校というのは特定の領域で最新の知識を効率よく学ぶことを中心に進めるわけですけれども、大学というのは特定領域の既存知識の獲得だけではなくて、その知識の拡大とか共有を含めた、積極的にそういう力を付けていく、特に卒業研究なんかでは、通して問題発見や解決をやっていくわけです。そのために研究者が教育にあたるということを構造として持っているわけですね。
 しかし、こういうMOOCとかe-learningの仕組みが教育の場に、どんどん入っていくとすると、教員が研究者であることが必要なくなったり、効率化の下に、一部の人たちが教材を作っていく、オンライン教材を作っていくことになっていくような気もするので、教える側は、もしかしたら、もう研究者でなくても良いようになっていくのかなという感じもしまして。
 実際にいろいろな大学では、今回調査をなさったときに、こういったところについて、どんな方向とか、感触とかありますか。

【岡田教授】  教育につきましては、教育のシステムを支援している部署についてアンケートを行って。あと部局ですね。大学によって部局で教育の方針というのは違っていますので、部局に対してアンケート調査を行っています。教員個人に対してアンケート調査を行っていませんので、先生がおっしゃるような教材を作る専門の教員と研究をする教員に分かれるみたいな、そういったところの意見は頂いておりませんけれども、私自身、教材開発センターというところにおります。教材開発センターにおりますけれども、システム情報科学府というところで授業をやっていますし、学生さんの研究指導もしていますので、研究室の運営もしています。そういった立場から、お話しさせていただきます。
 MOOCとか、日本でいうとJMOOCという動きもありますけれども、そういう共通に使える教材は、効率化という意味で、そういったものを使って教育をするというのは一つあるかと思います。
 ただ、大学の独自性であるとか、教員の独自性、研究者の独自性。我々研究者が実際に授業をやる意味というのは、我々が扱っている研究分野についての最新の情報を学生さんに教えるのが非常に重要だと思っておりますので、特に大学院の授業では最新の情報を学生さんにできるだけ提供してやるということで、MOOCとかJMOOCで、そういった共通のコンテンツが使えるようになっても、それ自身で従来の大学の研究者が行っている授業がなくなるものではないと考えております。
 それは一つ研究者の独自性。同じように大学の独自性で、大学で強みのある研究分野というのはありますので、そういったものは、そこの大学に行って、その先生の授業を受けないと受けられないということで、やはり共通で利用できる部分と各大学の独自性というところがありますので、すぱっと教育をする、教材を作る先生、研究だけをやる先生という形で分かれるとは思っておりません。
 九州大学で考えていますのは、そういった共通に使えるもの。最近、フリップトクラスルームとかブレンディッドラーニングという言葉が言われていますけれども、そういった公に、オープンに使えるコンテンツを、あらかじめ予習として家で見てきて、それをきちんと見てこないと授業についてこられない。ディスカッションベースにするとか、演習ベースで授業をするとか。それ自身はアクティブラーナーという言葉が言われていますけれども、学生さんが自ら自学自習する。半強制的に、そういうシステムになるものなんですけれども、そういうフリップトクラスルームの予習のためのコンテンツとして利用して、授業の中では先生独自に、そういった共通のコンテンツでは提供されていない成果、研究の最新のデータ等を提供して独自性を出すと。それによって学生さんの自学自習の態度も養成されると考えておりますので、繰り返しになりますけど、すぱっと変わるとは思っておりません。

【西尾主査】  美馬先生がおっしゃいますMOOCとかe-learningの環境、あるいはMOOCによる大学教育の役割、さらには、大学という教育の場の空間の持つ意味、それがどう変わっていくかとか、いろいろと議論はあるのですけれども、私が思っていますこの審議のまとめに対する意向としては、これはとにかく教育、研究におけるクラウド環境を構築するということと、SINETの機能を100Gbpsのオーダーに向上させることです。特に後者に関しては、とにかく今のままでは世界と対等の立場を維持できなくなってしまう。中国、アメリカ、ヨーロッパが100Gbpsのオーダーに行っているのに、日本が40Gbpsのオーダーでは、国家戦略として世界最先端の科学技術立国を目指すというときに問題である。本当ならば、それらの国を超えてテラのオーダーに行くべきところを、まずは100Gbpsのオーダーまでを実現するためのサポート資料として、今回の審議のまとめを出したく考えております。
 その審議のまとめの方向性と美馬先生がおっしゃっているところが少しずれてしまうのですが。

【美馬委員】  すみません。西尾主査のおっしゃることには全然異論はないんです。ただ、ここに、更に予算要求の中に追加していくものとして、そういうことを支援していくセンターが必要ではないかという。

【西尾主査】  分かりました。ありがとうございます。
 どうぞ、山口先生。

【山口委員】  すみません。現状と課題の分野、部分での、少し具体的な意見をよろしいですか。
 岡田先生の膨大なデータを整理して、ここにいろいろと情報が入っていくと思うんですけれども、特に課題の部分で、3ページ目からまとめられている留意すべき事項の中で、ネットワーク、セキュリティ、認証、人材育成と並んでいるんですけれども、岡田先生の発表に基づいた先ほどの議論では、一つ重要な部分が抜けていると思います。それは意識改革といいますか、先ほどの事務システムの分野でも、やはり、こういうこともできるように、それが理解されていなくて、なかなか活用されていない。
 それと、私、先ほどちょっと質問したかった分野なんですけれども、岡田先生の56ページのアンケート調査のコンテンツ分野・コンテンツサービスのところで、597システムある中で、プライベートクラウドを利用しているのが71システム、パブリッククラウドについては59システム、10%と、かなり低いと。岡田先生の御説明では、やはりメリットがきちんと理解されていない部分があるであろうということでしたので。
 実際、このまとめのところを見てみますと、最後の部分で、7ページです。コンテンツの利用環境で、「情報資源は貴重な資産であり」というところで、かなりのアーギュメントとして、機関リポジトリの重要性ですとか、いろいろなシステムの活用の事例が出てきますので、ここにつなげていくためにも、この問題提起というか、分析のところで、アカデミッククラウドを活用した教育環境整備の問題点として、まだまだメリットがきちんと理解されていなくて、それを促進していくような、やはり一機関でやるのではなく、もう少し大きな枠組みの中で促進活動していく必要があるというところを明記しておいた方がよろしいのかなと思います。

【西尾主査】  貴重な御意見、どうもありがとうございました。これは事務局で対応していただければと思います。よろしくお願いします。
 加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】  岡田先生の御発表、ありがとうございました。かなり要求条件までまとめられて、非常に素晴らしい内容だと思っております。
 この中で、私、各部まで読み込んでいませんけれども。セキュリティ、認証連携、それからコンテンツ、その辺の分野ですけれども、これらについては、アカデミッククラウドが出来上がってから何かしましょうというよりも、今、喫緊の課題として、最初から、そういうクラウドを導入するということで進めていくべき内容ではないかなと思っているんですね。あらかじめ共通的なものにしておかなければならない部分だとか、それからセキュリティの話によれば、この間、安達先生がおっしゃったけれども、ネットワークの中にセキュリティ機能を入れ込むというお話もありましたですね。
 そういう喫緊の課題については、むしろ、もう少し踏み込んで、全体のアカデミッククラウドを導入するに当たって、まずこの部分は、実証実験も含めて、SINETを経由して進めていくことが、実は必要なのではないかなという感じをしております。
 クラウド導入をいたしまして、いや、5年後だったらできますよと。あるいは5年後導入してから、こういうふうに統合化しましょうといっても、その段階で、実は、いろいろ改造だとか、移行だとか、かなりのツケを払わなきゃいけないということがございますので、もう喫緊の課題については、逆に言ったら、SINETとJAIRO Cloudも含めて、その中で、ある程度先行して、アカデミッククラウドの共通機能については実現していくようなことで進めていったらいかがかなと感じました。

【西尾主査】  緊急にどんどん進めていくべきだと思います。これもよろしいですかね。羽入先生、いかがですか。

【羽入主査代理】  恐らく個々の部分については、これから、まだ議論の機会があるかと思ので、ストーリーについて御提案をしたいと思います。
 ほぼこれでよろしいと思うんですけれども、先ほど主査がおっしゃったような理論構造として、まず日本で知識基盤社会が重要だということは誰でも承認できると思うんですが、そのためには学術情報基盤がなくてはならないということがあり、その学術情報基盤が劣化したら日本の学術は低下するということを言う必要があると思いますが、そのために今必要なのはアカデミッククラウドである、そのアカデミッククラウドを強化するに当たって、ここではSINETのことを話しますと、そういう手順で物語が進んでいくのかなと思います。そして、先ほど西尾先生がおっしゃったように、現状の教育研究の能力が今、低下しているということが言われていて、それをどうやって復活させるかを考えたときに、この学術情報基盤が必要なんだ、ということを書き込む必要があるような気がいたします。
 それと同時に、客観的なエビデンスとして、情報基盤が、研究を飛躍的に向上させている国に比べて、いかに貧困かということも、ここに書いていいのではないかという気がいたします。
 ですので、目指す方向と同時に、現状がいかに貧弱になりつつあるかということを併せて書くことが重要のような気がいたしまして、発言しました。

【西尾主査】  貴重なコメント、どうもありがとうございました。
 以前に斎藤先生がおっしゃったことで印象に残っていますことは、海外線の通信バンド幅が狭く、既に宇宙関係の観測データで一杯であるだろうから、バイオ系ではデータをディスクに格納して宅配便で送っていますとおっしゃったことです。このようなことでは、国際的な視野での我が国の研究力をなかなか強化できない状況だと思います。そのようなことも含めて、やはり国力あるいは研究力の強化が、本委員会で問題にしている環境構築にかかっているのだということを明確に書くべきだと思います。
 倉田先生、どうぞ。

【倉田委員】  今、羽入先生がおっしゃったことが、やはり私もすごく気になっていて、現状を余り批判するのはまずいということで、オブラートに包んだような感じがちょっとありまして。例えばSINETで、SINET4、120Gbpsが目標だったのであるなら、それができなかった、できていないというところは、やっぱり、もっと強調すべきではないかと。それは、まずいのかもしれないのですけれども。
 その他のところもそうなんですけれども、今こういうこともやっています、こういうことも目指しています的な書き方ではなくて、つまり、それが全部ないんですよね。ないというところを、私たちはそこを書かないと、ちょっと次が必要だということの緊急性とか必要性が結局、逆に言うと弱くなってしまうと思います。現状は、何となく、こういうこともあります、こういうこともやっているところはあります的なことを書いてしまうと、じゃあ、いいじゃないか的になってしまうので、やっぱり、その辺はちょっとシビアに書いてしまってもいいのではないかと思いました。
 それから、データについてですが、研究のところで、最先端の研究を支援するというところは、かなり掲げてあるのではないかと思うのですけれども、ちょっと抜けているのは、やはり今、世界的にデータのオープンデータ化とか、データの保管そのものに関しての義務化であるとかが話題になっているという点です。データを全部オープンにしろということではなくて、データそのものを国として、ちゃんと考えて、実践していかなきゃいけないということが課題になっているわけです。
 でも、例えば日本の科研費において、データの計画を出せとか、そういうことは一切、今、何もないわけですから、そういう点に関して、やっぱり政策として、データの管理は研究者及び研究グループ、アカデミアの責任であるということは書くべきではないのかなと思いました。

【西尾主査】  特に最後の点も非常に重要なコメントで、岡田先生が、こういうシステムを構築することによって、日本全体としてのいろいろな規約、あるいは規則を整備していくことの大きなイナーシャになるということをおっしゃいました。今、倉田先生おっしゃったように、機能向上、システム性能向上の過程において、一方では制度的なことも整備していきますということを記しておく必要があるのではないかと思います。
 では、後藤委員、竹内委員の順番で御発言をお願いします。できるだけ多くの委員に御意見をお伺いしたいので、手短にお願いいたします。

【後藤委員】  今の倉田先生のお話、私も同感でございます。
 もう一つ言えるのは、最先端ICTの世界におきまして、いわゆる制度だとか法律というのは、必ず後付けになってしまわざるを得ない。それが利用側にとってブレーキになりかねないというところがあると思います。
 特に、ヨーロッパとか外国に比べて日本の後付けぐあいが遅いというのが一つブレーキになっているのではないかと、産業界でも議論されています。
 そういう意味で、新しい制度も発信していくんだとお話を受けて、先ほどの資料では、NIIに、例えば啓蒙活動の、役割を持っていらっしゃるとありましたが、もう一歩進めて、今後の世の中で世界的に動き出す新たな国際標準であるとか、法律の考え方とか、そういうものをうまく解釈したり、さらに、そこに提言することもありますが、日本のアカデミアの代表として、そういう制度面や法律面までもフォローするような、そういう役割が日本のどこかにあってほしいし、NIIならその役割を持てるのではないかと思っています。
 ですから、サーバとかデータセンターを集約すると同時に、制度面や法律面を検討したり啓蒙する、そういう役割に関しても、一緒に継続的に持っていることが大事なんじゃないかと思います。そういうものについても、是非踏み込んでいただければと思いました。

【西尾主査】  貴重な御意見ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。
 竹内委員、どうぞ。

【竹内委員】  倉田委員がおっしゃったことのフォローみたいな形になりますが、データの問題というのは、やっぱり非常に大きいと思います。欧米のファンディングエージェンシーは、データ管理がきちんとなされる環境にあることをアプリケーションを受け付ける条件にしていると思います。ところが日本ではそれが欠けているということになると、国が今日推進している国際的共同研究を行う上で非常に大きな障害になってしまう可能性がありますので、データ管理の必要性については是非強く書いていただきたいと思います。
 それから、データ共有の必要性ということが割とさらっと書かれてはいるんですけれども、共有化を実現していく環境を作るのはそんなに簡単なことではないだろうと思います。ですから、それを具体的にどうやっていくかということについて、具体的な事例をもし入れられれば入れるべきだと思いますし、認証、セキュリティ、人材育成といった、「今後留意すべき事項」の中にも、是非データを意識した内容を入れていただきたいと思います

【西尾主査】  竹内先生、いつもながら貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 斎藤先生、どうぞ。

【斎藤委員】  末端ユーザーとして、クラウドは重要だと思うんですが、使い方がうまくならないと、幾らパイプが太くなっても、なかなか使えないんですね。電子メールは、みんな使っていますが、その添付ファイルにファイルサイズの制限が結構厳しいんですね。
 ですから、例えば非常勤講師として講義で行くので、自分が使うパワーポイントを送ろうと思っても送れない。大きくて制限がある。そういう問題がありますので、私、自分でお金払って、ドロップボックスのファイルサイズを上げているんですが、ああいう感じのものを、何かもっとSINETの中で。
 要するに、それこそ研究室の秘書の人も勝手に使えるような、FTPとか、そういう高級のじゃなくて、そういうのを是非考えていただければ、そういう意味でのクラウドが進むと思います。
 以上です。

【西尾主査】  先ほど来の、いろいろな意味の研究機能強化をする上での環境整備ということで、大切な御意見ありがとうございました。
 あと辻委員。それから吉田委員には是非、企業のサイドからお願いします。どうぞ。

【辻委員】  今まで前向きな意味で、いかにSINET5をしっかりしていかなければいけないかとか、クラウド環境を整えていかなければいけないかという話で、ほとんど皆さん、そこは合意の話だと思っておりまして、より、その話を通しやすくというか、御納得いただきやすく持っていくためにはという観点で意見を申し上げますと、最後の7ページにも書いていただいているんですが、各大学でばらばらにやるのではなくて、それをNIIを中心として一元的に対応することで、いかにそれを一番効率的な形で実現するかというところの、そこのエビデンスというんですかね。そこの強化が実は必要なんじゃないかなと非常に強く感じております。
 なので、もし各大学で積み上げたらこうなってしまうんだけれども、いやいや、そうじゃなくて、全体でやったら、これだけの効果が、これだけの成功をもって実現できるんだよ、これだけ努力もしているんだよというあたりを、うまくアピールできると良いのではないかと思いました。

【西尾主査】  これは安達先生、いろいろなことができますよね。

【安達国立情報学研究所副所長】  ネットワークなどでは、そのような試算をいろいろとやっておりまして、今後、先ほど御意見で出たドロップボックスですとか、具体的な個別のいろいろなサービスの提供で、全体的な効率化をアピールしていきたいと思います。

【西尾主査】  辻委員、どうもありがとうございました。おっしゃるとおりであり、御指摘のことを明確に記すことが大切だと思います。
 吉田委員、どうですか。

【吉田委員】  2点ほどコメントさせていただきます。一つは、まず、先ほどクラウドをお使いになる側のマインドの問題といいますか、標準的なサービスを使っていくことがなかなかうまく浸透しないというお話がありましたけれども、やはり標準的なものを使うことによって効率化していくんだという方向性は、こういうところで是非しっかり宣言していただいた方がいいと思います。
 我々の経験からも、日本のITのお客様というのは、どちらかというと個別にシステムを構築されるという方に行かれることが多く、型決めされたものをお使いになるのは、実際なかなか難しいところがあります。これはいろいろな調査結果を見ましても、例えば、先ほどのSaaSの利用率は、日本は他地域と比較して比較的低いんですね。要するに、決まったパッケージソフトウェアを使うのに抵抗感をお持ちになる傾向があるということです。
 だから、この点に関しては、やっぱり、標準的なものを使って、若干使う側で合わせる努力が必要であるにしても、とにかく全体の最適化を追求していくんだという点を宣言された方がいいかなと思います。
 それから、もう一つ、手短に言わせていただきますけど、この委員会で議論されている方々は、もちろんクラウド化ということに恐らく何も異論はないと思うのですが、ちょっと一歩引いて、この報告書を外の方が見たときに、何かクラウドありきで議論しているように見えると非常に誤解されると思います。やはり、先ほど諸先生方から御意見を頂いているように、クラウド化することが必然の方向といいますか、いかにそれが必要かということが、少し客観的に見ても、なるほどと思えるような導入の方法を、なかなか難しいんですけれども、工夫された方がいいと思います。

【西尾主査】  吉田委員にお伺いしますが、クラウド化するということは、やはり、様々な観点から強力に進めるべきことですよね。

【吉田委員】  はい、もちろんです。
 ただ、それが、みんながクラウドと言っているからここでもクラウドと言ったんだろうと誤解されると非常につまらないと思いました。

【西尾主査】  現場にいらっしゃるお立場の吉田委員から、そういうことを強く言っていただけますと有り難く思います。
 美馬委員、どうぞ。

【美馬委員】  これを、この審議で提案していくときの一つの方向としては、大学の教育とか研究の独自性とか必要性を強調していくということは重要だと思うんですね。
 つまり、今までMOOCの話とかも、これまでの議論の中で出てきましたけれども、世界的な流れからいうと、多様な人が高等教育にプレーヤーとして参入してきていると。そういう時代において、こういったイノベーションが、こういう教育制度とか、機関ですね。大学の研究機関、教育機関としての価値が問われているのだと思います。大学は必要ないということも出てきていますので。
 ですから、その中での教育や研究環境、それはハード的な環境、ソフト的な環境、それから、こういった新しい環境の中での専門人材が必要だという、そういったことを強調していくのがいいかなと思いました。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。人材の育成というところでも、そのような観点は大事かと思います。

【岡部委員】  すみません。大所高所からの御議論は先生方、既にたくさんなさっているので、私はもう少しSINET5の実務的なところについて、お話しさせていただきたいと思います。
 5ページにSINET4の現状と書かれていまして、先ほど倉田先生から御指摘があったように、現状、何ができていて何ができていないのか、きちんと整理できていないんじゃないかというところは、ここは私も少し同意見ですけど、もう一つ、SINET4で達成したこととして、全都道府県にノード整備が完了したということ。これは長年の課題がようやく、地域格差の点で解消したということで、これはSINET4の成果でありますし、これがSINET5において後退することがないようにと、これは非常に、特に地域、地方の方々にとって大事なことじゃないかと思います。
 単に地域、地方の大学の方々が中央と同じサービスを受けられるというだけではなくて、クラウド時代ですので、例えば北海道にあるデータセンターがSINETの北海道ノードにつながって日本中から使えるとか、そういう産業の意味でも地域格差を解消するという意味で、非常に我が国の施策として効果が大きいと思いますので、そのあたりはきちんとここに書き込まれるといいかなと思いました。
 次に、6ページに行きまして、国内回線のところで、最初の行にありますように、学内は高速だけど学外接続はニーズとコストを考え低速、これが現状でありまして、アクセス回線を高速化すればクラウドサービスが受けられると。だけど、なかなか今はないからクラウドサービスはうまくいかないよという、卵とニワトリみたいなところが、どこの大学でもあると思います。
 やはり国の施策として、SINETを各県まで整備するから、各大学はきちんと高速回線を自己負担しなさいと。SINET5から我々、旧ノード校と言われるところも含めて、機関負担でアクセス回線を整備するということが基本になると思いますけど、それに対して、きちんと後押しをするような文言が書かれているといいなと思いました。
 特に私のところも今、次のステップに向けて、回線どう整備しようかと。10Gbpsなのか、100Gbpsなのかとか、まさにそういうお金の議論をしているところですので、こういうところで、きちんと後押ししていただけると、学内のコンセンサスを得やすくなると思います。
 もう一つ、国際回線に関しても、ここに欧州間について、是非シベリア経由の回線整備が望まれるということで、これは今、日欧の研究、例えば高エネルギー物理なんかを含めですけど、非常に盛んであるにもかかわらず、全ての通信が米国経由になっている。これは政治的なことは別にしても、やはり非常に不便でして、幾ら日米間を速くしても、米欧のところが混んでいるとスピードが出ないと。我々のコントロール下にないところでスピードが制限されてしまうというのが問題で、是非、日欧間の回線については、このSINET5の一つの目玉として実現していただきたいと思います。
 以上です。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。
 おっしゃるように、この審議まとめにより、各大学における自助努力的な面を更に推進しやすくする点も大事であると思います。また、日欧間の通信回線の現状については、岡部先生がおっしゃったとおりであり、日本が第4の科学のパラダイムと言われるe-Scienceを国際的に推進する上で、現在の環境は十分でないというエビデンスベースのお話しをいただき、どうもありがとうございました。
 あと上島委員。最後、美濃科学官、御意見を。

【上島委員】  本当に難しいと思いますけれども、ICTの場合、どうしても、これでうまくいくことを示すようにと、特に最近、求められるようになっていると思います。技術的にはクラウドを中心とした素晴らしい技術だと思いますけれども、ICTの世界は、やっぱり「走る技術と追う制度」とでもいいますか、必ず制度が後になるわけですね。各大学というのは、メリットを享受する方の大学から言いましたら、制度で動いているわけで、予算も全部制度に基づいて出すわけですから、その辺のところは、制度に組み込まれていく、織り込まれていく必要があるというか、実際に、そのシステムの良さを示して、それで、それに委員会が納得して進めていくわけですから、そういう形で制度に組み込めるような形の、また制度の設計をしやすいエビデンスを入れていただければ、進めやすいかと思います。
 特に、やはり研究分野ならばクラウドが柔らかく連携したりすることは、よく理解できるのですけれども、その他の分野についても、同じように、何かメリットといいますか、竹内先生が事例ベースということもおっしゃいましたが、そういった事例を組み込んでいただければ一番進めやすいと思っております。

【西尾主査】  どうもありがとうございました。この審議のまとめが、学内におけるいろいろなコンセンサスを得ていく上で、有効に資するものとして作成すべきであるというのが、上島委員の御意見であるかと思っております。
 美濃科学官、最後にどうぞ、何かございましたら。

【美濃科学官】  ほとんど言ってもらったので言うことはないんですが。ICT、ちょっとストーリー全体としては、やはりユーザー視点を重要視して書かないといけないなというのは、いろいろな方が言っておられますが、そういうふうにしないといけない。
 それで、ICTに関する理解が、私、大学内でやっていますと、かなり他分野の先生、低いと言うと失礼になりますが、分かっておられない方がかなりおられます。したがって、そういう方に向けたメッセージにならないと、技術者が専門用語で使って書いていていいのかという。まだ、これを見ていますと、もう少しそういうところが、もっと説明しないといけないのかなというようなところを一つ感じます。
 それからもう一つは、ICTというと、効率化、効率化というのは一般的に思われている話なんですけど、実は、その効率化した後にイノベーションが起こるという話なんですね。だから、そういう視点がもう少し入って。何かクラウドというと効率化だと見られちゃう。効率化するんだったら同じ予算でいいじゃないというような話になっちゃうわけで、そこのところを、やはり、ちょっと工夫しないと、効率化のためにクラウドします。それじゃあ、みんな少なくていいんですねという話にならないように持っていかないと。
 調査のところにも書いてありました。クラウドして自分のところの横の計算機がなくなるのは困るという話があるんですが、それはちょっと違うかと思うんですけど、そういう意味で、効率化というのをあまり表に、もちろん表に出したらいいんですけど、その上にデータが集まって、それから、すごく改革が起こるんですよ、その基礎なんですよということを、もう少し強調しないといけないかなという気がします。

【西尾主査】  非常に貴重なコメントだと思います。情報系の場合には、どうしてもアルファベットの略語が多くて、分野外の方だと分からないことが多いと思うのですね。私もいろいろな審査会などに出席することがあるのですが、情報系の方がプレゼンテーションなさったときに、アルファベットの略語の洪水になっていて、聞く側、特に他の分野の方々には、なかなか理解していただけなくて、それが非常に残念に思うことが多々あります。
 したがいまして、この審議のまとめに関しましては、分野外の方々に、どうしたら深刻な現況を御理解いただけるのか、また、どうしたらその改良の必要性をお分かりいただけるのか、という視点を大事にしたいと思います。
 それとクラウドに関しても、目的として、単にシステム的な効率化ということが前面に出てしまうのではなくて、研究教育機関が共同連携をして、国際競争力を高めるための一つの大きな動きであることを記していくことができたらと思っています。
 まだいろいろ御意見を伺いたいところなのですけれども、皆様方から一言は御意見言っていただけたと思いますので、このあたりで閉会にいたしたいと思います。岡田先生、今日は重要な御説明どうもありがとうございました。各委員から頂きました御意見等を反映しました審議のまとめ案を再度、事務局で整理いただきまして、また次回、より具体的に審議をしていきたいと思います。
本日は貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 最後に、事務局より連絡事項等があれば、お願いいたします。

【長澤学術基盤整備室長】  それでは、次回はまとめたものは事前にお配りして御意見を頂くようにさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 そのほかですけれども、資料3をごらんいただければと思います。前回、御審議頂いたジャーナル問題の検討会ですが、これは振興局長の私的諮問委員会という形で設置することになりまして、3月26日から開始をする予定でございます。メンバーにつきましては、次のページのとおりでございますが、関連の方々ということで、この委員会からは、竹内委員と、加藤委員に御参加頂く予定になってございます。これは御報告でございます。
 それから、一枚物の資料ございますが、これは御案内です。3月13日に関連するオープンアクセス政策と日本、という日本学術会議のフォーラムがございます。この案内も併せて資料としてお配りをさせていただいております。
 本日の議事録につきましては、各委員の方に、またごらんいただいた上で公開とさせていただきたいと思っております。
 次回は4月18日、金曜日の10時から、場所は3F1という会議室になってございますので、よろしくお願いいたします。
 今後の日程につきましては、資料4のとおりでございますので、併せて日程の確保をお願いできればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。ありがとうございました。

【西尾主査】  本日はどうもありがとうございました。

── 了 ──

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