資料3 科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(学術図書)の制度改善案について

【改善案】
研究成果公開促進費(学術図書)の支援対象について、現在、紙媒体に限定しているが、電子媒体も対象に加えることにより、学術書の電子化を促進する。 

【背景・理由】
優れた学術研究の推進とともに、生じる多くの卓越した研究成果について、迅速に発信・流通させ、利活用できる環境を構築することが学術水準の更なる高度化や社会発展につなげるために重要である。そのため、科学研究費補助金の中に「研究成果公開促進費」が設けられ、成果普及のための支援が行われている。

学術研究の成果については、主に論文や図書の形で発表されるが、その形態については、ICTの発展に伴い、世界的に電子化が進んでいる。
本委員会でも既に審議したとおり、我が国では、論文が掲載されるジャーナルの電子化は進展しているが、専門性の高い学術書の電子化については、市場規模が小さく、出版社のビジネスモデル構築ができていないため、必要性については認識されているものの、採算性確保の問題から、コンテンツの充実が進んでいない。

学術書の電子化は、情報としての利便性が格段に向上することから、研究成果としての普及が進展するとともに、教育利用として学生からのニーズも高い。外国からは我が国の学術資料の電子化が遅れているという指摘も受けており、緊急性の高い課題となっている。

【今後の展開(案)】
本日の科学技術・学術審議会学術情報委員会での審議の後、独立行政法人日本学術振興会において、具体的な支援スキームを検討し、その結果を踏まえて、学術情報委員会及び研究費部会の審議を経て、同意が得られれば、平成27年度の公募から制度改善を実施する。  

【科学技術・学術審議会学術情報委員会】審議まとめ
「学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(抜粋)」 

b.学修環境充実に関わる学術情報基盤整備の現状と課題

i )コンテンツ

○ 学修のためのコンテンツは、学生のニーズに応じて、電子媒体、印刷媒体にかかわらず迅速に利用できるようにすることが必須である。その際、授業に対する支援、連携強化の観点から、授業関連資料の充実を図ることも重要である。

(コンテンツの状況)
○ 大学図書館では、これまでも、学術図書、学術雑誌、学位論文、報告書等の資料の収集、提供、保存を行ってきた。蔵書冊数は平均40万冊、大規模大学図書館では数百万冊にものぼっている。これらは基本的に印刷資料であるが、OPACの構築や索引抄録データベースの提供を通じて、資料へのアクセス向上にも努めてきた。
一方で、学術雑誌については、国際的なジャーナルを中心に電子形態での流通が一般化している。我が国の大学図書館においても、継続的な価格高騰問題等を抱えつつ、電子ジャーナルの普及を推進しており、提供数は平均で4千5百タイトル、大規模図書館では2万タイトルを超えており、印刷媒体の時代とは比較にならないほどの多数の学術雑誌が利用可能になっている。また、図書に関しても、洋書については電子化が急速に進んでおり、10万タイトル以上の電子書籍を提供している大学図書館もある。
学術資料を効果的に提供する観点から、印刷資料の整備とあわせて、電子資料の充実にも適切に対応する必要がある。

(学術書の電子化)
○ 学術書の電子化において、和書の電子書籍での提供に関しては、著作権の許諾等とともに、出版社、図書館などの関係者全ての納得できるビジネスモデルの構築が必要になることから、現時点では、あまり進展していない。既存書籍の電子化についても遅れているが、文化庁が主体となり、官民連携で国立国会図書館の蔵書を電子書籍化し、配信するモデル実験(eBooksプロジェクト)が実施されるともに、大手出版社が公共図書館に電子書籍を提供する事業を開始する動きも見られる。
医学書など、一般的に厚く高額な学術書の電子的利用に対する学生のニーズは強く、電子的な利用を基本として、必要に応じて、POD(プリントオンデマンド)により、データを出力し、任意に冊子体を作成する新たな出版流通も生まれつつある。
電子的なコンテンツが増えれば、欧米に比べて本を読まないとされる日本の学生に多くの学術書に接する機会を与え、それ自体が教育改革の一環としての効果も期待できることから、関係者が連携して今後一層推進することが望まれる。

平成26年度 科学研究費助成事業-科研費-公募要領抜粋
科学研究費補助金「研究成果公開促進費」(学術図書)

3. 学術図書

(1) 対象
 個人又は研究者グループ等が、学術研究の成果を公開するために刊行しようとする学術図書、又は我が国の優れた学術研究の成果を広く海外に提供するため、日本語で書かれた図書・論文を外国語に翻訳・校閲の上刊行するもの(CD-ROM又はDVD-ROM等を媒体としたものについても対象とします。)

<刊行のみ行うもの>
 研究成果の論文等について、刊行し、市販されるもので、学術的価値が高いもの(特に独創的又は先駆的なもの)、又は学術の国際交流に重要な役割を果たすもの

<翻訳・校閲の上、刊行するもの>
 日本語で書かれた図書・論文を外国語に翻訳・校閲の上、刊行し、市販されるもので、学術的価値が高いもの(特に独創的又は先駆的なもの)、又は学術の国際交流に重要な役割を果たすもの
なお、以下に該当するものは公募の対象となりません。
1. 既に類似の成果が刊行されているもの
2. 既に学術誌等を通じて公表されている論文を単に集成し、刊行するもの
3. 学術研究の成果とは言い難いもの
4. 大学、研究所等の研究機関がその事業として翻訳・校閲・刊行すべきもの
5. 出版社等の企画によって刊行するもの
6. 市販しないもの
7. 十分に市販性があるもの
 
(2) 応募対象経費
 対象となる経費は、学術図書の刊行に必要となる経費のうち次に該当する経費のみとなります。
1. 翻訳・校閲経費(ただし、当該事業の主体となる応募者本人及び研究者グループ等に参加している者への支出は対象となりません。)
2. 直接出版費のうち以下のa)~g)の経費
a)組版代   b)製版代   c)刷版代   d)印刷代   e)用紙代   f)製本代   g)CD-ROM又はDVD-ROM等の作成に係る経費(マスター作成代、ディスク代、製版代)
ただし、応募できる刊行経費の上限額は下記のとおりとします。
※「応募上限額」は、直接出版費(印刷に係る経費)から図書の売上げ収入見込みを差引いた、当該学術図書を刊行するために必要とされる経費として要求できる科研費の上限額です。
応募上限額=直接出版費(税込)-{定価(税込)×0.7×0.5×(発行部数×0.6)}
※0.7= 卸売係数 0.5=原価率 0.6=売上率

(3) 事業期間
1. 「刊行のみ行うもの」 1年間(刊行は平成27年2月28日まで)
2. 「翻訳・校閲の上刊行するもの」 1~2年間
 a) 平成27年2月28日までに、翻訳・校閲から刊行まで完了するものは1年間
 b) 平成27年2月28日までに翻訳・校閲を行い、平成28年2月29日までに刊行するものは2年間(ただし、出版社等への原稿渡しは、平成27年4月1日以降とします。)
3. 翻訳者・校閲者又は出版社等への原稿渡しが、平成26年4月1日より前のものは公募の対象となりません。
4. 翻訳者・校閲者又は出版社等への原稿渡しを6月30日までに行えること(ただし、採択後に、応募の際に予期できなかった事情により原稿渡しが遅れる場合は、日本学術振興会に相談すること。)

(4) その他の留意点
1. 卸売価格は、原価を下回ることはできません。
2. 発行部数のうち市販以外の部数は30部までとします。
3. 科研費による刊行は無印税とし、著者・編者・著作権者は、一切の利益を受けることができません。

お問合せ先

研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室

首東、佐藤
電話番号:03-6734-4080
ファクシミリ番号:03-6734-4077
メールアドレス:jyogaku@mext.go.jp(コピーして利用する際は全角@マークを半角@マークに変えて御利用ください)

(研究振興局参事官(情報担当)付学術基盤整備室)