参考資料4 日本再興戦略-JAPAN is BACK-(平成25年6月14日(金曜日)閣議決定)(抄)

第1.総論

5.「成長への道筋」に沿った必要な主要施策例
(1)民間の力を最大限引き出す
〈4〉健康長寿産業を創り、育てる
【1】我が国の優れた医療分野の革新的技術の実用化を強力に後押しするため、一元的な研究管理、研究から臨床への橋渡し、国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施される仕組みの構築等を行う司令塔機能(日本版NIH)を創設する。【次期通常国会に新独法設立法案提出】
(2)全員参加・世界で勝てる人材を育てる
〈3〉大学の潜在力を最大限に引き出す(国立大学改革等)
<成果目標>今後10 年間で世界大学ランキングトップ100 に10 校以上を入れる
【1】先駆的な取組を予算の重点配分等で後押しする国立大学改革に直ちに着手する。今後3年間を改革加速期間とする。【夏に国立大学改革プランを策定】
1)年俸制の本格導入、企業等外部からの資金を活用した混合給与などの人事給与システムの改革
2)大学や学部の枠を越えた教員ポスト・予算等の資源再配分及び組織再編並びに大学内の資源配分の可視化
3)上記の先駆的な取組の成果を踏まえ、運営費交付金全体を戦略的・重点的に配分する仕組みを導入する。 【2016年度から導入】


第2 3つのアクションプラン

一.日本産業再興プラン

2.雇用制度改革・人材力の強化

〈3〉多様な働き方の実現
 個人が、それぞれのライフスタイルや希望に応じて、社会での活躍の場を見出せるよう、柔軟で多様な働き方が可能となる制度見直し等を進める。

○研究者等への労働契約法をめぐる課題に関する検討
・労働契約法の若手研究者のキャリア形成に対する影響を懸念する指摘もあることから、研究現場の実態を踏まえ、研究者等のキャリアパス、大学における人事労務管理の在り方など労働契約法をめぐる課題について関係省が連携して直ちに検討を開始し、1年を目途に可能な限り早急に結論を得て、必要な措置を講ずる。

〈6〉大学改革
 大学改革全般に関する「教育再生実行会議」の提言を踏まえつつ、国立大学について、産業競争力強化の観点から、グローバル化による世界トップレベルの教育の実現、産学連携、イノベーション人材育成、若手・外国人研究者の活用拡大等を目指す。このため、大学評価システムの構築、大学や学部の枠を越えた教員ポスト・予算等の資源再配分及び組織再編、大学内の資源配分の可視化、外国人研究者の大量採用、年俸制の本格導入、企業等の外部からの資金を活用した混合給与などの人事給与システムの改革、運営費交付金の戦略的・重点的配分の拡充に直ちに着手する。今後3年間で大胆で先駆的な改革を後押しして改革を加速し、第3期中期目標期間(2016 年度から)開始までに改革を完成させる具体的・包括的な改革プランを早急に取りまとめる。
 また、必要な制度の見直しを行い、世界と競う「スーパーグローバル大学(仮称)」を創設する。今後10年間で世界大学ランキングトップ100 に我が国の大学が10 校以上入ることを目指す。

○人材・教育システムのグローバル化による世界トップレベル大学群の形成
・人材・教育システムのグローバル化、英語による授業拡大など、積極的に改革を進める大学への支援の重点化に直ちに着手する。

○イノベーション機能の抜本強化と理工系人材の育成
・産業界との対話を進め、今年度内に、教育の充実と質保証や理工系人材の確保を内容とする理工系人材育成戦略を策定し、「産学官円卓会議(仮称)」を新たに設置して同戦略を推進する。
・今後 10 年間で20 以上の大学発新産業創出を目指し、国立大学のイノベーション機能を強化するため、国立大学による大学発ベンチャー支援ファンド等への出資を可能とする。このため、所要の法案を速やかに国会に提出する。

○人事給与システム改革による優秀な若手及び外国人研究者の活躍の場の拡大
・今後3年間で、国立大学における1,500人程度の若手及び外国人研究者の常勤ポストの提示を目指し、年俸制の本格導入や企業等の外部からの資金を活用した混合給与の導入に直ちに着手する。

○大学改革を支える基盤強化
・国立大学法人評価委員会等の体制を強化し、大学改革の進捗状況をきめ細かくフォローする。
・教授会の役割を明確化するとともに、部局長の職務や理事会・役員会の機能の見直し、監事の業務監査機能強化等について、学校教育法等の法令改正の検討や学内規定の見直しも含め、抜本的なガバナンス改革を行うこととし、所要の法案を次期通常国会に提出する。
・教員ポスト・予算等の大学内の資源配分の可視化、運営費交付金の戦略的・重点的配分の拡大に直ちに取り組む。さらに、2016年度から新たな評価指標を確立し、運営費交付金の在り方を抜本的に見直す。

3.科学技術イノベーションの推進

 近年、研究開発の成果が円滑に実用化につながらず、これまで優位を誇ってきた日本のものづくり産業が新興国との競争で苦戦するなど、「技術で勝ってビジネスで負け」、さらに一部では「技術でも負ける」状況になっている。伸び悩む我が国の研究開発投資を推進することにより、「科学技術創造立国」として復活させることが必要である。今後、早急に政府の体制を立て直し、戦略分野を中心に研究開発を推進するとともに、その成果を実用化し、さらには市場獲得につなげるため、知的財産戦略や標準化戦略を推進する。これらにより、イノベーション(技術力)ランキング(世界経済フォーラムのランキング(※)では、日本は現状第5位)を今後5年以内に世界第1位にするとの目標を掲げつつ、「技術でもビジネスでも勝ち続ける国」を目指す。
 このため、「総合科学技術会議」の司令塔機能を強化し、省庁縦割りを廃し、戦略分野に政策資源を集中投入する。政府の研究開発成果を最大化するため、大学や研究開発法人において科学技術イノベーションに適した環境を創出するとともに、出口志向の研究開発と制度改革を合わせて大胆に推進し、実用化・事業化できる体制を整備する。また、民間の積極的な研究開発投資の促進に加え、自前主義からオープンイノベーションへの展開を加速し、実用化・事業化へとつながる科学技術イノベーションの好循環を生み出す。
 政府一体となり科学技術イノベーション総合戦略(本年6月7日閣議決定)を強力に推進することは、成長戦略の実現にとって鍵となる。このため、関連施策との一体性を確保しつつ、以下の施策を重点的に推進する。

〈1〉「総合科学技術会議」の司令塔機能強化
 省庁縦割りを廃し、成長戦略に基づく資源配分の実現のために必要な「総合科学技術会議」の司令塔機能の強化に向けて、組織の充実、予算要求(内閣府計上)、法律改正等を含む工程表を本年8月末までに策定し、来年度から実行に移す。

○政府全体の科学技術関係予算の戦略的策定
・政府全体の科学技術関係予算について、「総合科学技術会議」が予算戦略を主導する新たなメカニズムを来年度概算要求段階から導入する。

○「総合科学技術会議」事務局機能の抜本的強化
・関係府省、産業界、大学等の協力を得ながら、専門的知見を有する優秀な人材の長期登用などにより事務局体制を強化する。
・企画・立案に必要な国内外の関連情報を収集し、調査分析する機能を強化するため、関係府省や政府系シンクタンクとの連携を図る。
・イノベーション創出加速のため、「総合科学技術会議」の運営に当たって、産業界の活力を積極的に活用する。

○アウトカムを重視したPDCA の積極的推進
・国家的課題の解決推進のため、アウトカムを重視した研究開発のPDCAを推進するとともに、イノベーションの創出・環境整備等に係る状況(進捗、障害の有無等)を分析・評価し、必要な場合に関係府省に改善措置を求める。
〈2〉戦略的イノベーション創造プログラムの推進
「戦略市場創造プラン」を実現する上で、科学技術イノベーションが果たす役割は極めて大きい。国家的に重要な課題を解決するため、コア技術を特定し、基礎研究から出口(実用化・事業化)までを見据えたロードマップに基づく取組により、戦略市場を創造する。このロードマップに基づく府省横断型の取組に対して複数年にわたり重点的に資源を配分する「戦略的イノベーション創造プログラム(仮称)」を創設する。本年8月末までに「総合科学技術会議」において具体策を固め、国全体の研究開発予算について、効率化・効果の最大化を図る観点から見直しを行った上で、所要の予算を内閣府に計上する。

○戦略的イノベーション創造プログラムの創設
・各省に対する総合調整機能を効果的・効率的に発揮させるため、内閣府に「戦略的イノベーション創造プログラム(仮称)」を創設し、産業界、学界及び各府省と連携し、基礎研究から出口までを見据えた研究開発等を推進する。

○プログラムの推進体制
・ロードマップの策定、各府省の関連施策の調整、プログラムディレクターの任命等、実効性あるPDCAを行う体制を整備する。

〈3〉革新的研究開発支援プログラムの創設
 現在のFIRST(最先端研究開発支援プログラム)の成果をしっかりと実用化する。さらに、研究開発全体の基盤の底上げにつなげていくため、成長戦略の一環として、米国DARPA(国防高等研究計画局)の仕組みを参考に、長期的視点からインパクトの大きな革新的研究テーマを選定し、権限を有するプログラムマネージャーの責任の下で、独創研究を大胆に推進するプログラム(革新的研究開発支援プログラム(仮称))を創設する。現行FIRST の予算執行面での特長を活かしつつ、本年8月末までに検討を進め結論を得た上で、概算要求等に反映する。
 テーマ選定に際しては、将来の経済社会・産業の在り方に大きな変革をもたらすものとし、選定過程における産業界の有識者の関与を高める。

〈4〉研究開発法人の機能強化
 成長戦略の実現に資する研究開発を集中的かつ効果的に推進するため、研究開発法人に対する業務運営の効率化目標の在り方を見直し、研究開発内容や評価を踏まえたメリハリある予算を実現するなど研究開発法人の機能強化を図る。

○世界最高水準の新たな研究開発法人制度の創設
・研究開発法人については、関係府省が一体となって、独立行政法人全体の制度・組織の見直しを踏まえつつ、研究開発の特性(長期性、不確実性、予見不可能性及び専門性)を踏まえた世界最高水準の法人運営を可能とする新たな制度を創設する(次期通常国会に法案提出を目指す)。

○具体的な改善事項への対応
・法的措置が必要なものと運用によって十分に改善が可能なものを早急にしゅん別し、給与、調達、自己収入の扱い、中期目標期間を越えた繰越等の改善が必要な事項に関し、現行制度においても、運用上改善が可能なものについては速やかに対応を図る。特に、外部資金を積極的に活用するインセンティブを与えるため、自己収入(寄附金収入分等)を確保した分運営費交付金が削減される仕組みは直ちに見直す。

〈5〉研究支援人材のための資金確保
 研究者が研究に没頭し、成果を出せるよう、研究大学強化促進事業等の施策を推進し、リサーチアドミニストレータ等の研究支援人材を着実に配置する。
 また、大学等における研究支援人材の確保に向けた自主的な取組を促すとともに、競争性を有する研究資金の制度において、間接経費30%の確保に努める。さらに、長期的・安定的に研究支援人材を確保するため、人材の類型化や専門的な職種としての確立、全国的なネットワーク化等を産学官の連携の下で取り組む。
 これらの方策について、本年8月末までに検討を進め結論を得た上で、概算要求等に反映させる。

〈6〉官・民の研究開発投資の強化
 民間研究開発投資を今後3年以内に対GDP比で世界第1位に復活することを目指し、研究開発投資にさらにインセンティブを与えるため、産学官のオープンイノベーションの推進、研究開発法人・大学が所有する研究開発設備等の有効活用の促進、研究開発型ベンチャーへの技術開発・実用化支援、知財戦略・国際標準化の推進、イノベーションを促進するための規制改革などの取組を実施するとともに、研究開発税制の活用促進など企業の研究開発投資環境を整備する。
 これらの取組により、官民合わせた研究開発投資を対GDP比の4%以上にするとの目標に加え、政府研究開発投資を対GDP比の1%にすることを目指すこととする。その場合、第4期科学技術基本計画(2011 年8月19 日閣議決定)期間中の政府研究開発投資の総額の規模を約25 兆円とすることが必要である(同期間中に政府研究開発投資の対GDP 比率1%、GDP の名目成長率平均2.8%を前提に試算)。これらを踏まえ、我が国の財政状況が一層悪化し危機的な状況となる中、財政健全化との整合性の下、基本計画に掲げる施策の推進に必要な経費の確保を図ることとする。

 

二.戦略市場創造プラン
テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸

〈2〉医療関連産業の活性化により、必要な世界最先端の医療等が受けられる社会
2)解決の方向性と戦略分野(市場・産業)及び当面の主要施策
(略)優れた医療技術の核となる医薬品・医療機器・再生医療製品等について、日本の強みとなる、ものづくり技術も活かしながら、その実用化を推進し、世界で拡大するマーケットを獲得できる世界最先端の革新的製品を創出する。このため、国家の課題としての、疾病克服のための研究を俯瞰する司令塔機能を創設する。

・革新的な医療技術の実用化を加速するため、医療分野の研究開発の司令塔機能(「日本版NIH」)を創設する。具体的には、
‐司令塔の本部として、内閣に、内閣総理大臣・担当大臣・関係閣僚からなる推進本部を設置する。
政治の強力なリーダーシップにより、1)医療分野の研究開発に関する総合戦略を策定し、重点化すべき研究分野とその目標を決定するとともに、2)同戦略の実施のために必要な、各省に計上されている医療分野の研究開発関連予算を一元化(調整費など)することにより、司令塔機能の発揮に必要な予算を確保し、戦略的・重点的な予算配分を行う。
‐一元的な研究管理の実務を担う独立行政法人を創設する。
総合戦略に基づき、個別の研究テーマの選定、研究の進捗管理、事後評価など、国として戦略的に行うべき実用化のための研究を基礎段階から一気通貫で管理することとし、そのため、プログラムディレクター、プログラムオフィサー等を活用しつつ、実務レベルの中核機能を果たす独立行政法人を設置する。
‐研究を臨床につなげるため、国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施される仕組みを構築する。
臨床研究中核病院及び早期・探索的臨床試験拠点において、企業の要求水準を満たすような国際水準の質の高い臨床研究・治験が確実に実施されるよう、所要の措置を講じる。臨床研究・治験の実施状況(対象疾患、実施内容、進捗状況等)を適切に把握するため、知的財産の保護等に十分に留意しつつ、こうした状況を網羅的に俯瞰できるデータベースを構築する。民間資金も積極的に活用し、臨床研究・治験機能を高める。
等の措置を講じる。

・これらに基づき、本年8月末までに推進本部を設置するほか、詳細な制度設計に取り組み、その結果を概算要求等に反映させるとともに、所要の法案を次期通常国会に提出し、早期に新独法を設立することを目指す。

 

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