研究環境基盤部会 国語に関する学術研究の推進に関する作業部会(第2回) 議事録

1.日時

平成23年10月13日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階講堂

3.議題

  1. 人間文化研究機構国立国語研究所の組織・業務に関する調査・検証について
  2. その他

4.出席者

委員

樺山主査、北川委員、尾崎委員、砂川委員

文部科学省

倉持研究振興局長、澤川学術機関課長、小山研究調整官

オブザーバー

金田人間文化研究機構長

5.議事録

【樺山主査】

それでは,今御報告いただきました点につきまして御議論いただきたいのですが,余りに広範にわたっておりますので,初めに申し上げましたとおり,大まかに二つに分けて,順次御議論いただきたいと思います。

まず第1に,配布資料が2種類ありますが,資料1に関しましては5ページ,資料2につきましては1ページになります。資料・情報の収集・整理・発信等というのがございますが,そこからそれを前の起点といたしまして,後ろは,資料1に関しましては11ページ,資料2につきましては19ページ,つまり(3)国際交流・連携活動までの部分,そこまでを切り離しまして,まず先に御議論いただき,その後につきましては,それ以降,つまり配布資料1の12ページ以降,配布資料2の20ページ以降につきましては,引き続き,後ほど御議論いただくという,一応こんなふうに分けてお話しいただきますが,何分にも両者相互に関連いたしておりますので,場合によっては,お互いに踏み込むこともあり得ると考えさせていただきたいと存じます。

それでは,まず,資料1の5ページ,資料2の1ページから始まります。そして,資料1につきましては11ページ,資料2につきましては19ページ,つまり国際交流・連携活動までの部分,それらにつきまして御質問や御意見等をいただきたいと存じます。御自由に挙手の上で御発言ください。お願いします。

【砂川専門委員】

内容的なことに入る前に,ちょっと名称のことで伺いたいんですけれども,配布資料の9ページの下の方から10ページにかけて,国語研究所の名称を「日本語研究所」とすべきではないかという議論がありました。最終的には,先ほどの分科会の報告にありましたように,一般の国民になじみの深い国語というところで,取りあえずは落ち着いているけれども,これは検討が必要であるという評価,検証の文言がございます。これについて,これまで何らかの議論なり,方針なりが立てられているのかどうかということを伺うのは,ちょっとお門違いでしょうか。検証の中身を伺っているというよりは,これに関する事柄が必要かなということなんですが。

【樺山主査】

この場で伺って適切な御質問かと思います。配布資料1については,9ページの下から10ページにかけての部分で,率直に申し上げまして,通常の日本国民が読みますとよく分からない部分,理解できない部分もありますので,もう少しかみ砕いて,今の御質問に合わせ,お答えいただければと存じますので,よろしくお願いします。

【金田人間文化研究機構長】

金田からお答えいたします。人間文化研究機構で,日本語研究機関をあるべき形で設置するのが望ましいという方向での議論を頂いたときに,名称としては,「国立日本語研究所」がふさわしいという結論でございました。その背景の大きなものは,例えば国語学会が日本語学会に名前を変えたとか,研究の体制そのものが移行しているということ,それから「国語」という言葉が,国際的にも必ずしも規定されている,決定されている,あるいは定義されている十分な用語ではないということ,いろいろなことが背景にございますが,そういう方向として我々としては考えておりました。したがって,それを望ましいと考えているのは現在も一緒でございます。

ただ,法律が最終的に通りましたときに,「当面」という用語が頭にくっ付いておりますけれども,当面,国立国語研究所とするということでございますので,現在のところ,それに従いまして,「国立国語研究所」という名称を使っております。

ただ,先ほど申しましたように,我々の精神としては,「国立日本語研究所」がふさわしいと考えております。

【砂川専門委員】

ありがとうございます。私個人も,精神としては,「国立日本語研究所」がふさわしいと考える者ですが,一般国民が今現在,「国語」という名前になじんでいるからという理由がどうも納得できませんで,こういう研究所というのは,研究所がリードして一般国民の世論を作っていくような勢いがあってもよいのではないかと思います。

ですから,今後ともこの点については前向きに議論していただくことを是非ともお願いいたします。以上です。

【樺山主査】

実はこの委員会の上部機関であります科学技術・学術審議会がございますが,総会及び分科会等々の場におきましても,この議論はしばしば提起されております。現状から見て,「日本語」の方を採用すべきではないかという御意見もかなりございました。

ただし,今,金田機構長から御説明のとおりに,法律上の用語であるということから,また,そこに「当面」という副詞,言葉が付いていることから,この形でもって進行するのはやむを得ないかなという御議論が現段階では多数でございますので,一応この御説明も承ったことにいたしたいと思いますが,今,砂川委員からお話がありましたとおりに,いろいろな御意見もあり,かくすべきだという御議論も今後あり得るということで,この議論を忘れないでほしいという御趣旨かと思いましたけれども,そんなことでよろしいでしょうか。

【砂川専門委員】

はい。ありがとうございます。

【影山国立国語研究所所長】

1 点追加いたします。報告書の3ページを御覧ください。

もう御覧いただいていると思いますけれども,外国人が見た場合,国語って何なのかということが分かりませんので,3ページの5行目辺りに,英語名は「National Institutefor Japanese Language and Linguistics 」,ここではJapanese Language としか書きようがございません。National Language と書いても意味が通じませんので。

ですから,私どもの気持ちとしましては,英語名で,まず,これを普及させたいというつもりでございます。

【尾崎委員】

ただ今の砂川委員の御発言は私も100%賛成です。「国語」という用語が日常生活で定着しているということですけれども,法律上,日本の国語は日本語なんだ,あるいは日本語を国語と称するのだというような法的根拠があるかどうか,私は承知しておりません。

それから,分科会報告の中に,国語を母語とするという部分があったんですけれども,私の理解では,母語というのは,基本的には音として私たちが身に付けていく。

そうすると,津軽で生まれた子供, 摩であれ,土佐であれ,まず日本人が最初に身に付ける母語というのは,それぞれの土地で育まれた,それぞれの土地の言葉,これが母語であって,それを「国語」と呼んでいるのかどうか。私たちが日常,「国語」という言葉が定着しているというときの「国語」の意味内容ということも含めて考えたときに,私は砂川委員の意見に賛成でございます。

【樺山主査】

この問題は常に様々な議論を呼んでおりますが,ほかの委員の方々,この場ですので,御意見等ございましたら遠慮なく御発言ください。いかがでしょうか。

【影山国立国語研究所所長】

もう1点,研究所の方から活動に照らし合わせまして申しますと,2010年1月に,ユネスコで世界の危機言語に関する調査報告がありました。それを受けて,文化庁からの委託事業として,国語研究所としても日本国内の危機言語,危機方言について,調査報告書を提出いたしました。琉球の言語について,昔は琉球語という形で,日本語とは違うんだ,本土の言葉とは違うんだという捉え方でしたけれども,現在,最新の歴史研究によりますと元々は同じものだったということですので,これを国語という形を採りますと,方言を使っている方々ははねのけられてしまうのかという非常にゆゆしい問題にもなってきます。この辺りは,「国語」という言葉に愛着がおありでしょうけれども,もっと大所高所から御検討いただければと,機関課の方にもお願いしたいと思います。

【尾崎委員】

もう1点,各論に入る前に,全体的なことで確認させていただきたいことがあります。それは新国語研の概要というところに書かれていることですけれども,国語研究所は日本語研究の世界的拠点を目指す。それから,国語研全体の研究目標は,世界諸言語から見た日本語の総合的研究であるというふうに書かれております。これは素晴らしいことだし,これまでも2年間,大変なお仕事をやってくださったことについて,私は敬意を表したいと思うのですけれども,もう一方ではこの委員会が「独立行政法人に係る改革を推進するための文部科学省関係法律の整備等に関する法律」の附則15条に基づいて審議している。

その前提として附則14条というのがございまして,この14条の内容から行くと,日本語教育の研究ということも引き継がれるというふうに私は理解しておりますので,そのように考えますと,新国語研の目指すところというのは日本語研究,それに加えて日本語教育研究ということもあると思っているのですが,この辺りのことについて,先ほど所長からもいろいろ補足的と言いましょうか,御報告があったのですけれども,国語研の基本的なスタンスとして,やはり附則第14条のことが気になっておりましたので,御説明を頂けると大変有り難く思います。

【樺山主査】

御質問でございますので,機構もしくは国研からお答えいただけますでしょうか。

【金田人間文化研究機構長】

機構の方から,まず,基本的なところをお話し申し上げたいと思いますけれども,我々は大学共同利用機関法人でございますし,大学共同利用機関として国立大学法人法の下に運営しております。国立大学法人法の趣旨は,研究者の自発的な意思に基づく研究教育を推進するということが基本にございます。

つまり,研究目的,あるいは研究方向などは,それぞれの研究者コミュニティ,具体的には学会などの形で表現されていることが多いわけですが,研究者コミュニティの動向,あるいは意思,そういったものを踏まえながら,我々は研究を進めるべきだというのが基本的なスタンスでございまして,そういう意味で,もちろん若手研究者の育成などに我々も努力はいたしますけれども,教育機関プロパーではございませんので,研究機関として日本語教育研究,日本語教育の研究,日本語教育に資する研究というふうに置き換えてもいいかもしれませんが,それが日本語研究者にとっても重要なことであるという御判断の下であれば,それをお進めになるということだと理解しております。細かい形につきましては,所長の方からお答えするということになると思います。

【影山国立国語研究所所長】

この報告書で,日本語教育研究というのをもし書き落としていましたら申し訳なかったことですけれども,要覧をはじめホームページでは三つのことをうたっております。新国語研では日本語学,言語学,日本語教育研究,これが3本柱であるということをはっきりとうたっておりますし,要覧をお持ちでしょうか,要覧の4ページ目には,社会との連携ということで,危機言語に関する調査,日本語コーパスの拡充,そして,日本語教育と,常に日本語教育を柱として,重要な3本柱の一つとして掲げておりますので,そのように御承知いただければと思います。

【西原副主査】

ただ今の所長の御説明と,新しく大学共同利用機関として出発なさった新しい国立国語研究所の理念及びその業績が見事ぴたりと一致している。基礎研究を主として,それから今,機構長がおっしゃいましたように,研究者個人の発想に基づいて,基盤として世界的な研究をなさるということが見事に反映された御計画,過去の2年になっているということは非常に高く買うものでございますが,今度,この次の回というのは,機構と文化庁が別々に検討するという回が1回あると思うんですね。

その時に戸惑いますのは,参考資料1及び参考資料2の検討の内容,観点が微妙に違うということでございまして,参考資料1にあります,学術研究の推進に関する作業部会における検討の観点につきましては,今,所長の御説明にありましたようなことが見事に達成され,遂行されているというような検証の結果を生み出すと思うんですけれども,一方で,今日,配布された参考資料2にあります,文化審議会国語分科会の国語研究等小委員会における観点というのは,1のところにもありますように,移管後も国語政策,日本語教育政策の企画立案ということが適切に実施されているかという観点に,私どもという言い方はおかしいですけれども,文化審議会国語分科会の方の審議がこの次には行われる。

そうしますと,その観点はただ今の国立国語研究所の新しい人間文化研究機構としての御出発及びその後の発展と,基本的にかみ合わないという,つまり,この次の会合がちぐはぐな結果を生むという懸念をしておりますが,その点についてはいかがでしょうか。

【金田人間文化研究機構長】

御質問いただきました趣旨が,私の理解と食い違っていなければよろしいんですけれども,一つは我々の大学共同利用機関,研究機関としてのミッションでございますが,ここに関する,あるいは我々としては「日本語」ということですが,今の法律上の流れから,「国語」と申し上げておりますが,その研究を世界的なレベルに,そして世界の研究機関として,日本語をきちっと世界の言語の中に位置付けることができるような方向への研究を展開するということが重要だと理解して進めているわけですが,そのために,どういうことが必要なのかというのは,研究の過程で,研究者がいろいろと模索をしながら続けることだと理解をしております。

そうでなければ,研究というのは自立的に展開しませんし,我々のところは決して政策実施機関ではございませんので,政策実施はもちろん政府の大変重要な仕事でございますけれども,それに必要な,例えば研究上のデータを作って,供給するという言葉は良くないかもしれませんね,公開し,それを使っていただけるような形にするという形での貢献は大いにあり得ることだと思います。

現実に文化庁がお考えになりました政策のための基礎研究のプロジェクトも,一部既に国語研究所でお引き受けして,それを実施しているというケースもございます。これは全ての研究分野についてあり得ることだと理解をしておりまして,それぞれの研究ではあり得ることですけれども,我々自身が政策を実施するわけではない。これはやってはいけないことだと逆に思っております。

それからもう一つは,基礎研究はもちろん大事なんですけれども,基礎研究をどのように捉えるかということもありますが,日本の科学技術政策でも,科学技術という,例えば,私はすべての言語を承知しているわけではございませんけれども,英語などには余り一般的に使われない表現でございますが,日本では特に科学技術を,つまり,ある程度の応用の部分も含めたものを研究対象として位置付けているということは,全体として,あると理解をしております。

ただし,それをどこまでどのようにしてやるかというのは研究者の判断でございますので,その判断と,あるいは研究者個人,研究者コミュニティの動向,トレンド,必要性に応じて判断されることだと理解しております。

【影山国立国語研究所所長】

「基礎研究」という言葉を西原先生はおっしゃいました。「基礎研究」という言葉がどこまでカバーするかということが一つ問題かと思われます。恐らく西原先生の思っていらっしゃる幅と私たちが思っている幅は少し私たちの方が広いんじゃないか。いわゆる理論・構造だけじゃなくて,社会調査を含めまして応用言語学,ここには日本語教育も含まれますが,それも含めたものを研究所の基礎,基本的な研究,学術研究と思っております。

実際にそれを日本語教育の現場の先生にどう伝えるか,そこまでは,私たちは取りあえずは立ち入らないというスタンスに立っております。

【西原副主査】

そこのところの何と申しますか,検討課題としての項目の立て方が,参考資料1と参考資料2が違う立脚点になっているということが気になっておりましたので,ただ今のお答えで,人間文化研究機構としてのお立場というのは良く理解いたしましたけれども,今度の作業部会の違ったところでの主たる観点というのが,今言ったようなことになっておりますので,むしろそれをそのまま進めてよいのかというような心配をした発言でございました。でも,お答えを頂きましたので,良く理解いたしました。

【北川委員】

非常に重要な話が進みましたけれども,少なくとも私の所属している作業部会の直接のミッションというのは,大学共同利用機関に移行してから2年間の活動が,大学共同利用機関としてふさわしかったものかということ,あるいは,もう少し遡れば,国語あるいは日本語の我が国の研究を発展させるのに,大学共同利用機関という形態が適当だったかどうかというところを検証するのではないかと考えています。

そういう意味で,少し細かい話になりますけれども,先ほど御報告いただいたところから質問させていただきたいと思うんですが,教員の組織の説明をしていただきましたが,配布資料2の4ページです。ちょっと気が付いたのは,助教が1というのが気になったんですが,人件費がだんだん削減されていく中で,大学共同利用機関の対応としては,二つあって,なるべく若手,助教を中心に採用して,人数を確保して活性化するということ,もう一つは,PD等で対応して,こういう形にするというのもあり得るかと思うんですが,その辺,後者の方を採っていくという…。

【金田人間文化研究機構長】

ちょっとその前に申し上げさせていただきたいと思いますが,国語研究所の人事の方針は先ほど御紹介いたしましたような研究分野,センターの動向,方向性をにらみながら,親会議の外部の意見も聞きまして運営をしているというのが実態でございますが,実は,独立行政法人からの承継の人事のこともございまして,それぞれの研究目的に従った人事構成を考えましたけれども,当初は,まず第一に内部に人材がおられたら,大いに働いていただく必要があるということで,それぞれの人事をまず内部で公募いたしました。内部に人材がいないときには当然,広く外部から採用しております。そういうことが基礎にございますので,人事構成の年齢構成が必ずしも理想的な形にはなっていないということを御理解いただきたいと思います。

さらに,もう一つ付け加えるといたしますと,新たな研究領域に対応する,非常に充実したスタッフをできるだけ整えたいということから,その中心になる人事をまずは進めているということもございまして,今,御指摘いただいたような意味での,どうしても年齢構成におけるある種のひずみが生じているという背景がございます。これは言い訳に近い状態になりますけれども,ちょっと発言させていただきました。

【影山国立国語研究所所長】

一言補足いたします。今回は,独立行政法人の時からの職員を基本的に承継するという国側の方針でございました。それに加えて,不足している分野については外から入れるということでございます。内部の設置準備室の時の人事委員会,そして,発足しました後の運営会議の下に開催された人事委員会で,内部昇進ということをしょっちゅう行っております。

その結果,発足時,5人助教の方がおられたのが,現在では1名になりまして,いずれこの方は准教授に昇進されると思います。そうなったときにこれは法律の条件のために,通常でしたら助教は5年任期が付いておりますが,この方は付いておりません。それは,独法の時からの雇用条件でそうなっております。この方が昇進された後,文字どおりの意味の若手で,新風を吹き込みたいと考えております。

コーパスにつきましては先ほど触れましたように,情報の専門家が特に准教授として,来年1月から着任予定です。

【北川委員】

誤解のないように,まず申し上げておかないといけなかったんですが,私は,この2年間で,大学共同利用機関にあらゆる面でふさわしい形に移行されてきたと思いますので,その前提で質問させていただきました。人事についても,例えばドクターの所有者の割合を見ても非常に上がってきているので,そういう形で,非常にいい方向で来ているかと思います。

関連してもう一つ質問させていただきたいと思います。刊行物については,従来,各部ごとに情報公開されていたのが統一的になったということで,これも非常にいいかと思うんですが,関連して,多少問題になり得るというのは,ここの紀要ですか,言葉は違うかもしれませんが,出すことを余り進めていくと,一流雑誌への投稿というのが多少背反するところがあります。それで,今法人化して,各組織が自分のところに出すという締め付けをしているという声も聞くので,その辺のバランスも必要かと思いますので,よろしくお願いします。

【影山国立国語研究所所長】

一言補足させていただきます。現在出していますが,先ほどの画面,資料の8ページ目でございます。一つは『国語研プロジェクトレビュー』,これは共同研究が20数本ある中で,現在どういう活動をしているかということを,一般の方,非専門家にも分かっていただけるように易しく説明した情報雑誌,これは是非研究所の活動,広報のために必要だと考えています。

もう一つの『国語研究所論集』というのは,英語で言いますと,ワーキングペーパーズみたいな形で,特に若手,PDフェローを数名雇用しています。その人たちが将来,専任として出ていくための一つの業績のステップとして活用してほしい,そういう若手の育成を第一に考えています。

確かに北川先生が御心配のことは我々も十分に承知していまして,実は,所内では発足から海外に論文を出すことと著書を出すことをしょっちゅう所員には伝えておりまして,それを達成した者には所長賞を授与しております。そういう活動を続けております。

【尾崎委員】

先ほど西原委員の方から,二つの作業部会,小委員会が並行してあって,どこを取り上げるか,多少難しい面があるというお話がございました。私は二つの会議に出ているものですから,この二つで,事務局から送られてきているチェック項目を見ていると頭が混乱しそうでしたが,先ほど機構長からのお話で,当然,これは大学共同利用機関という大枠の中でのお仕事ですので,御説明でよく理解ができました。ありがとうございます。

大学共同利用機関として,大学の研究者コミュニティの活動を活性化したり,支えるということが基本的なお役目ということだと理解しておりますけれども,日本語教育については,日本語教育をやる部分と日本語教育に 裨 益する基礎的研究,どちらも大学でやっています。これは文学であれ,歴史であれ,研究と同時に学生に対する教育をやっておりますので,大学コミュニティ,研究者コミュニティというときに,当然,日本語教育の研究者コミュニティが存在しております。

実はブルーの報告書の29ページのところで,先ほど影山所長もお触れになったんですけれども,下のところに書かれている内容について若干分かりにくいところがあって,ここら辺のことをどう踏まえてこれから審議をすればいいか,多少迷っております。29ページの下から6行目辺りでしょうか,「現在も,多くの大学において,日本語教育に関する研究・教育が行われているところであり,大学との役割分担」,ここは大学と新しい研究所との役割分担というふうに理解すればよろしいでしょうか。「役割分担に留意する必要がある」,この留意というのが,私には意味がよく分からなかったのです。

このような背景と,もしかすると,先ほど御紹介いただいたスライドの4を見ますと,研究系は四つですね。日本語教育に関しては,日本語教育研究・情報センターという組織立てになっております。これは大学共同利用機関が大学の研究者コミュニティをサポートするという観点で考えますと,日本語教育研究系というようなものは考えられないのかなというのが私の疑問でございます。

【金田人間文化研究機構長】

ただ今御質問をいただいたうちの,まず29ページ,国語に関する研究教育の推進についての報告でございますが,これは,私どもも100%理解しているかということになると,ちょっと不安な部分がありますが,私どもが作ったペーパーではございませんので,それはお許しいただきたいと思っております。

ただ,今の研究組織はどうするかということに結び付きまして,大学の研究者コミュニティに対するサービスをするというふうに捉えていただいていると思います。そういう面は当然あると思いますが,私はそれ以上に,そのサービスというのは,具体的なサービスではなくて,質の向上に結び付くような,研究レベルが展開するような,向上するような方向であるべきだと考えております。大学共同利用機関としては,そういう形で貢献すべきというのが一つの重要なミッションだと考えております。

日本語研究について言いますと,大学では当然,研究のほかに教育実務が行われております。ですから,教育についても,必要な研究をして情報発信をするというのが大学共同利用機関の一つの仕事だと思っております。ですから,こういったセンターが日本語教育情報センターとして情報発信をする,重要な方法だと理解しております。

したがいまして,我々と大学との大きな違いは,教育実務そのものを我々が担当しているわけではございませんので,それに使っていただけるような,プラスになるような形の必要な情報が蓄積できれば,大変有り難いことでありますし,それを発信するということは必要なことだと思っているわけでございまして,そういう意味でのセンターという位置付けだというふうに大学共同利用機関法人としては理解しております

もちろんこの組織も,国立国語研究所で,運営会議も含めてお考えになったことですけれども,組織改編につきましては,大学共同利用機関法人として,法人の評議会で議論をし,審議をして,組織をお認めしたということでございますので,その点も申し述べさせていただきます。

【影山国立国語研究所所長】

更に補足させていただきます。これは,発足当初の歴史的な経過もございまして,振り返ってみますと,2009年3月末に法律附則が成立しました。それからたった6か月の後,2009年10月に正式に発足いたしました。6か月間の設置準備ということでございましたので,取りあえずそこの段階につきましては,まだ独法が存在していましたので,当時の前所長と日本語教育基盤情報センター長及び所員,専任所員とも相談いたしまして,研究系というのをいきなり作るべきかどうかとかなり話し合いました。

取りあえず,法律関係ではそこまでは求めていないので,基盤情報センターにコンパチブルな形のセンターを作ろうと…。ただし,それは基盤情報を提供するだけじゃなくて,研究というのを銘打ちましたけれども,研究を行う部門だと。

ですから,今のところは過渡期と言いますか,設置準備が不足だったということが実質的にはございますけれども,研究能力と情報発信能力,二つ重ねておりますので,ここのところが制度的には多少不整合がございます。

私としましては,人間がどうして言語を習得するか,それは外国語だけじゃなくて母語も。これは古代ギリシャのプラトンの時代から二千数百年にわたって,どうして人間だけが言語能力を持っているかということが真剣な問題になってございます。これは生物学,認知科学,脳科学,様々な分野と関係することでございますから,私たちは,将来的には研究系に持っていきたいと思っております。

情報発信につきましては画面にございます,研究情報資料センターの方に,文字どおり一元化してしまうというふうに考えております。そのステップとしまして,来年4月に日本語教育関係のリーダーである二人の教授が着任されます。内部承継職員も2名が准教授として承認されました。これで体制が整いましたので,そして,今,尾﨑先生からバックアップを頂きましたので,こういったことで運営会議の方とも相談しまして,将来的に,今言った方向に,できるだけ前向きな方向で進めていきたいと考えております。

【樺山主査】

初めに申し上げましたけれども,討議に1時間余りの時間がございますので,時間を二つに分けて,前半部分を資料1の11ページまで,後半部分を12ページ以降と申し上げましたけれども,実際には相互に問題が絡み合っておりますので,この境目は差し当たりここでは撤廃いたしまして,前半部分,後半部分も併せて御発言いただければよろしいかと思いますので,そんなふうにお考えいただければと思います。

【尾崎委員】

今,所長のお話を伺っていて,本当に移管からここまで,大変な御苦労があったなということをよく理解できます。2008年7月に分科会報告が決まって,一応,この分科会報告は学術審議会の下での報告ですから,当然,これに従って準備をお始めになって,法案もそれに従って準備をされて…,ところが,年が明けて2009年3月に附則が付いたということで,非常に難しい中で,ここまでよくやっていただいたなというのが私の率直な気持ちです。

今,所長もおっしゃってくださったように,日本語教育,あるいは日本語教育を支える研究としての習得というようなことが既に報告にも書かれておりますので,この部分について,系というような組織替えも検討課題になり得るというお話が頂けたので,私としては大変結構なことかと思います。ありがとうございました。

【樺山主査】

今,御発言にもありましたとおり,当会議は,二つ合同でやっておりますが,当会議のミッションは,この2年間の間に新たな形での国語研が,本来,法律によって要請されていた課題を十分に達成したかどうか,あるいは,そこにいかなる問題があったかということについて検証することを私たちのミッションとしておりますので,今のような御発言はその作業に重要なヒントになる御発言だったと思います。そうした趣旨でもって,御発言いただければ幸いでございます。

【北川委員】

大学共同利用機関の一つの役割として,現在は,学問が細分化し過ぎることもあって,コミュニティの形成とともに,コミュニティの組織化というのが重要になっているかと思います。

そういう観点で,青の冊子の28ページ下から5行目,学術研究全体を組織化するということが要請されていると思います。それに関しての記述がちょっとないように見えて,気になっていたんですが,先ほどの所長のお話で,34学会の連合を作られたということですが,これは最近,地球物理だとか経済等でも同じようなことが行われていて,非常に重要な活動だと思われますので,その辺,明記された方がいいのではないかと思います。

【影山国立国語研究所所長】

おっしゃるとおりだと思います。ただ,大学共同利用機関として,特定の学会とコネクションを持つということは避けなければいけないと思いますから,学会も,学会の「会」が世界の「界」というイメージで,実質的には日本で活動している学会は34学会でございます。そういったところから,国語学会からは『国語学』という専門誌,研究機関誌を,過去の分を全て私どもの方に寄贈していただきました。国語学会の会長は,国語研究所から発信する方が,文字どおり大学共同利用機関に役に立つんじゃないかと…。そういった提供がほかの学会からもこれから続いて出てくるということを期待しております。

【樺山主査】

それに関係いたしまして,一言伺いたいのですが,先ほど機構長からも御説明がありましたけれども,新しい現段階での国語研は人間文化研究機構の一環である。したがって,研究機構の中での連携活動についても十分な配慮を払う必要があり,また,そのような方向でもって検討しているというお話がありましたけれども,現段階で,機構として機構内の連携関係について,具体的にはどのような活動があるかということについて,多少具体的な御説明を頂けますでしょうか。

【影山国立国語研究所所長】

ブルーの報告書7ページの一番下,具体的な共同研究活動の内容がここに盛り込まれております。7ページの一番下2行ですけれども,機構が実施している「連携研究:アジアにおける自然と文化の重層的関係の歴史的解明」,これにつきましては,先ほど触れましたインド国籍の専任教授がいます。ですから,アジアの中でも特に南アジア,インド関係については,この方が精力的に協力しています。

それから,「日本関連在外資料の調査研究」につきましては,ハワイに埋もれている,沖縄からハワイに行った移民関係の古い資料を去年,この夏と,発掘してまいりまして,ハワイ大学でも国際シンポジウムを開催いたしました。

そのほか,資源の共有化は,国語研が持っています様々なデータベースの中の重要なものを,今のところ四つでございますけれども,その中には,『国語年鑑』と『日本語教育年鑑』を統合した研究・論文文献データベース,これも機構の方で取りまとめていただいています。

【尾崎委員】

報告書の5ページの情報発信というところで,1点だけお伺いしたいと思います。文献データベースと日本語教育ネットワークという二つの項目についてですけれども,これはどのような体制で更新をなさっているか,どの程度のアクセスがあるのか,そこら辺について,もう少し具体的なお話が伺えたら有り難いと思います。

【影山国立国語研究所所長】

『国語年鑑』と『日本語教育年鑑』を統合しました文献データベースにつきましては,本で出ていたときは年に1回だったわけですけれども,今は3か月あるいは4か月に1回更新しています。ですから,新しい論文が大学紀要等で出るたびに情報を整理し,これを専門に扱う専任職員である研究支援課の者がいますので,その人が対応しています。

下の方の御指摘の「日本語教育ネットワーク」というのは,独法の時に作ったものをそのまま受け継いで公開しています。これについては特に,新しいものは逐次更新していますけれども,もう少しきちんとした形で,大変見にくいということも外部からは承っていますので,見やすい,利用価値のある形で,来年4月に着任のセンター長とも相談の上,改善したいと思っています。

【 砂川専門委員 】

社会貢献とか若手育成とか,そちらの方でも構わないということでしたね。少し小さいお話になってしまうかもしれないのですが,国語研究所が以前刊行しておりました『日本語科学』とか『日本語教育論集』というのが,移管に伴い廃刊になりまして,現在はプロジェクトレビューとか論集という形になっておりますが,大きな違いは,一般の研究者に投稿資格があるかないかというところではないかと思うのです。『日本語科学』や『日本語教育論集』というのは,大学で私どもが育てています大学院生にとっては,大きなチャレンジのできる機関誌でして,ここで力試しをするというようなことができたわけなのですが,今現在,それができなくなっております。

こういう若手研究者の育成とか発表の場を与えるというようなことも国語研究所の一つのミッションではないかなと思うのですが,今後,一般に公開,投稿できるような刊行物が復刊される御予定があるのかどうかを伺わせていただければと思います。

【影山国立国語研究所所長】

今御指摘のありました『日本語科学』というのは独法の時に作りましたもので,これは内部の紀要ではありませんで,全国から自由に投稿して,内部の所員を中心に審査,査読をして掲載するという形でした。これについて引き継ぐかどうか,あるいは私としては,もっと世界的なジャーナルをうちに持ってこようかとも考えましたが,いろいろ承継職員とも話をした結果,共同利用機関として,そういうものを出すのが果たしていいのかどうかということが問題になりました。もう既にジャーナルは世界中にたくさんございます。一つの研究所でやるとすると,それだけでかなり審査や,準備の点で負担がありまして,本来あるべき共同研究ができないということになりかねませんので,その点はやめようという決定になりました。

現在,発行しています『国立国語研究所論集』というのは,内部の広報の一部でございます。一般公募をして募集するという形ではございませんで,専任職員,客員教授,外来研究員,プロジェクトの共同研究者,その人たちが筆を下ろしていただくという形をとっています。飽くまで二つ,プロジェクトレビューと論集は,内部のものを外に知っていただくという形です。

【砂川専門委員】

本当に論集を編集するということは大変な労力の要ることで,これを内部で維持していくことの大変さは重々承知しておりますが,例えば日本語教育ということに限った場合,日本語教育学会誌というものはございますが,国際交流基金が刊行していた『世界の日本語教育』というのも廃刊になり,今,この『日本語教育論集』も廃刊になり,若手研究者が投稿できる場というのが非常に減ってしまっているんですね。若手研究者の教育というようなことも大きな柱の中に入っているようですので,育成部分でのプロジェクトの一環として,このようなことも再度お考えいただけたらと願います。

【影山国立国語研究所所長】

先ほど申しましたように,論集は,基本的には若手研究者,内部のPDフェロー等の育成を目指しております。それに関連しまして,共同研究プロジェクトの諸大学の参加者も執筆資格がございますけれども,今度は,今,砂川委員からありましたような,共同研究者のお弟子さんと言いますか,これを研究協力者という形で,そこまで執筆資格を与えるという方向になるかと思います。具体化しようと思います。

これにつきましては,もう少し,これはこれなりの,内部で論集の委員会がございますので,そちらの方に,御意見があったということはお伝えいたします。

【樺山主査】

御提言として承っていただきたいと思いますし,また,すぐに結論が出ることではないかもしれませんけれども,今後については大きな課題かと思いますので,よろしくお願いします。

【尾崎委員】

共同研究のプロジェクトをいろいろお組みになって,500人もの共同研究者を集めて,糾合してお仕事をなさっていらっしゃって,それだけでも大変すばらしいと思います。

ここで一つ気になっていますのは,何を研究するかという,研究テーマの選択についてです。基本的に大学の教員は,それぞれ自身の研究上の興味・関心等を基にしてテーマを設定するわけです。学術研究というときに,ともすれば真理の探求であるとか,その領域の最先端の研究をするということが多いかと思います。新国語研も当然,それを目指してお仕事なさっているということは非常によく分かるんですけれども,もう一方で,大学の研究者が研究するときに,今の社会なり世界の状況から考えて,こういうテーマはみんなでやらなくてはいけないのではないか,そういった社会が抱える課題を解決するというような意識の下に研究課題を設定するということも,併せて重要なことだと思います。

先ほど所長が御紹介くださった消滅危機方言に関する調査研究・保存というのは,世界的に今,言語の消滅,2週間に一つ消えているというような状況ですので,これは文化庁の委嘱以前に,むしろ所長あるいは新国研の先生方がやらなきゃいけないとお考えになっていたようなテーマが文化庁から来たということかなと私は思っています。

このようなテーマは世界の問題に取り組むという大きな意味があって,これは社会貢献の一つと思うのですけれども,そのようなことを考えているときに,例えば東日本大震災の後で,日本語が十分じゃない人たちにどういう情報が流れたのか,あるいは日本の方と外国から来た方たちは,一体どのようにしてこの困難を乗り越えていったのか,そこではどういう言葉の問題,それから,言葉だけではない様々な問題があったと思います。

このような課題に取り組むのは一体,日本国内のどこがあるのかということを思うときに,もちろん新しい国語研が抱えていらっしゃるお仕事は大変なものだし,それぞれもう決まったことをやっていますので,急に何とかというのは無理な相談かもしれませんけれども,研究課題を設定するときに社会貢献的な側面も含めて大学の研究者に呼び掛ける,あるいはそういうことができるような体制と言うのでしょうか,そういったことについて何か所内で御検討があるようでしたら,お教えいただきたいと思います。

【影山国立国語研究所所長】 

形式的なことで申しますと,どういうテーマで共同研究を設定したか,それは,先ほど申しましたように四つのテーマが,基幹型はじめタイプがございますけれども,基幹型につきましては,発足する前の段階で,運営会議に相当する設置準備委員会という会議で,諸機関から委員が出たものがございます。そこで承認されて行っているということです。

それ以降の小型のもの,それから領域指定のような,研究所として今これが必要だというテーマ,それは内部の教授,そして,それを運営会議に諮って設定しています。全て私たちが大学共同利用機関に入ったときから,第2期中期計画が始まりまして,第2期中期計画の最終目標を設定しますから,その最終目標に到達するような形の個別の共同研究の制度設計になっております。

今お話しいただいたような,大震災ということは予想もしていませんでしたけれども,それについてどうするかということは,中期計画から少し外れた部分ですけれども,全く無視しているわけではございませんで,所内でも,大震災の発生後,すぐ3月に,2回にわたって所員全員で,我々として国立の研究所として何をすべきか。特に,外国人に対して易しい日本語で伝えよう。あるいは,お医者さんが他県から救援に来られるけれども,地元のおじいさん,おばあさんは標準語よりも地元の言葉でしゃべる。そうすると,おなかが痛い,ずきずきとか,しくしくとか,いろいろな擬態語を使う。これが他県のお医者さんには理解できないということが実際問題として出てきまして,これについては,時空間変異研究系の方で,今,方言間のオノマトペ,擬態語でございますね,比較ということで,この11月26日でしたか,大学共同利用機関のシンポジウムというのが秋葉原でございますけれども,そこで各機関がブース展示しますので,東日本大震災関連の事柄,私たちが何をしているかということを展示しようと思っています。

さらに,もう少し幅を広げて言いますと,これを国語研がすべきか,それとももっと大きな集団で行うべきか。先ほど,尾﨑先生も委員でいらっしゃいますけれども,34学会の学会連合の意義として,今回のような災害があったときにどう立ち向かうべきか。ホームページで見てみますと,日本語教育学会,中国語学会,あるいは大阪大学の外国語センター,それぞれで外国人に対して手を差し伸べる活動をしていますが,ばらばらでございます。それを何とか取りまとめる方法はないのか。そういったことを,12月23日でしたか,学会連合の懇談会を企画していますので,その時に是非御出席いただければ,一緒に考えてみたいと思います。

【樺山主査】

新国語研として大変意欲的に問題に取り組んでおいでになるということについては,私どもとしても強い印象を受けております。ありがとうございます。

【金田人間文化研究機構長】

東日本大震災の関連の御質問について,ちょっと一言,機構としての立場をお話しさせていただきたい。論点を拡散するようで申し訳ないんですが,確かに大学共同利用機関としての,先ほど申しましたような研究レベルの向上でありますとか,共同研究の推進という形での研究機会の提供でありますとか,いろんなことは必要なんですけれども,大震災が起こったようなときに,必要な底支えをできるだけしなくてはいけないというのも一つの使命だと理解しております。

私どもといたしましては,被災地の,私どもの機関は文系しかございませんので,文系の学部にすぐ連絡を取りまして,必要なサポート業務をできるような体制を取りました。それから,文化財行政につきましても,文化庁の文化財部が中心になって進めておられる文化財レスキューの計画に機構として参加いたしまして,いろいろなサポートに走っております。

具体的には,個別の各機関で,今の国語研究所も含めて考えていただいているわけですが,それとは別に,機関横断的に四つのプロジェクトを動かしまして,文化財レスキューに対応しております。具体的にはいろいろなものがございます。民具の取扱いをどうするのかとか,あるいは歴史文書,典籍の取扱いをどうするのか,行政文書の取扱いをどうするのかとかありますし,それから文化財については,災害とともにいろいろな形で,レスキューという必要性もあって,移動するということもございますから,そういう情報をどのように把握するのかとか,我々としては四つのプロジェクトを作って動いております。

決して十分であるとは思いませんし,緊急にやらざるを得なかったということもございまして,問題は認識しておりますけれども,そういった形で動かしていきまして,内部的に検証のためのシンポジウムを何回かやりまして,今後どうするかということを今,考える状況にあります。ちょっと付け加えさせていただきます。

【林主査】

時間が大分残り少なくなりましたので,是非この際,お伺いしておきたいと思いましたことを2点,お伺いします。

一つは予算でございます。配布資料2の28ページに,22年度決算額約20億弱という数字が出ておりますが,これは,いわゆる運営費交付金とか,あるいはそれに相当する金額なのでしょうか。それとも科研費等を含めた,外部資金まで含めたものなのでしょうか。

【鈴木国立国語研究所事務局長】

お手元の青い資料の58ページ,59ページを御覧いただきたいと存じます。58ページが新国語研,大学共同利用機関法人の人間文化研究機構の国語研の当初予算と決算額でございます。右側の方が旧国語研,独立行政法人時代の国語研の予算額,決算額でございます。

そこを見ますと,例えば平成20年度,59ページを見ていただきますと,全体予算で,当初の予算が11億1,100万余ということで,決算額が11億100万余ということでございます。左側を見ていただきますと,新国語研の決算額については11億7,000万余で,決算額ができているということでございます。この数字で,特に網掛けしている部分については日本語教育関連の予算を集計したものでございます。これを基に,先ほどのスライドでまとめさせていただいたというふうに御理解いただければと思っております。

【影山国立国語研究所所長】

今申しましたように,この表はすべて運営費交付金でございます。科研費はここに含まれておりません。

【 林主査 】

ちなみに,運営費交付金に対する科研費等を含む外部資金の割合というのはどれぐらいですか。

【 鈴木国立国語研究所事務部長 】

数字的には,新国語研,旧国語研といたしましても,この要覧の52ページに細かい数字が入っております。予算のところで,運営費交付金の予算と並行して,外部資金として科研費がございます。昨年度で申しますと,一番下のところでございます。1億1,000万という数字でございます。

【 林主査 】

分かりました。この資料を全部克明に見てくれば,お聞きしなくても済んだことかもしれません。申し訳ありません。

それで,こんなことをお聞きした目的というか,意味は,資料2の6ページ,旧国語研と違って,資料収集なんかも世界諸言語に範囲を広げるということでございまして,それは大変いいことだと言いますか,画期的なことだと思っておりますが,資料収集に関しましては,予算上,これまでもずっと苦しい思いをされてきているところでしょうから,更に資料の収集範囲を広げるとすると,いろいろと予算上の問題が第一に発生するだろうと思うのです。

そういう点で言って,現在の予算に関してどういうふうな課題,問題をお持ちかということを承りたい,これが一つでございます。

【 影山国立国語研究所所長 】

発足から初年度,2年目は,独法の基準で,ある定まった額を年間図書費として割り当てておりました。今,所内でこの点,すなわち海外資料をもっと充実させよう,これを本腰入れてやろうということで,所内で運営委員会を作りまして,予算もそれなりに,研究所全体,とにかく全体のパイは決まっておりますから,どこかにしわ寄せが来るわけですけれども,バランスよく,これまでは図書費は図書費だけで,宛てがいぶちみたいに以前はやっていたようなんです。そうじゃなくて研究所全体のバランスで,共同研究に対して図書費は何%みたいな形で,総合的に検討しようという体制で取り組んでいます。

【 林主査 】

もう一つそれとは違うと言いますか,これからの問題についてお伺いしたいのですが,これは法律に基づきまして2年後の検証ということで,今回こういう機会ができたということでございますが,これからも法人としての外部評価,検証のシステム,これも実はよく勉強してくるべきことだったんだろうと思いますけれども,その点について私,知識がありませんので,この際,共通理解を得るためにお願いしたいと思うのですが…。

まず,第三者評価は,先ほど金田機構長が,これは国立大学法人法が根拠になっているとおっしゃいましたが,国立大学と同様に,国立大学の場合は6年,中期目標,中期計画の期間,それに準じた第三者評価のシステムが,こういう場合にはできているのでしょうか。それから,もしできているとすれば,その期間と,それから評価機関つまり評価する組織はどういうふうになっているのか,その辺を教えていただきたい。

【 金田人間文化研究機構長 】

国立国語研究所につきましては,独法時代の評価と,それから人間文化研究機構に設置された後の評価が,単年度の中に2回あるときもありまして,ちょっと煩雑であったということは事実なんですけれども,しかしながら,制度的に独法の評価もございましたし,それから,その次のスタートの年は半年でございましたけれども,半年は,人間文化研究機構としての評価も受けましたし,内部でもやりました。

今後のことについて言いますと,今後は大学共同利用機関法人として,国立大学法人と同じことですが,6年の中期目標,中期期間を設定いたしまして,それを文科大臣にお認めいただいた後は,それぞれの法人評価と研究所の評価とが二つの部に分かれておりますけれども,従来の国立大学法人と大学共同利用機関とは同じことになりますが,全くそれに従って,今後は国立国語研究所も完全にそのシステムに従って,評価対象としてやっていくということになろうかと思います。

【 伊東委員 】

本日の報告の中で,(4)の大学院教育等若手研究者の育成,そして,(5)社会への貢献等というところを拝見して感じたことなんですが,フェローの制度だとか若手育成者も重要だと思いますが,海外で研究者として活躍している者ですとか,日本語教育関係者が日本での研究をしたいといった場合の受入れということに関しても,是非充実させていただきたいなと思います。

東京外国語大学の場合は,アジア・アフリカ言語文化研究所ですとか大学院,学部等への海外からの研究申請が少なくないということを考えますと,社会貢献,そして研究者の育成ということを考えれば,是非とも海外からの研究者の研究機会を提供する場としての機能も充実させていただけたらなと思いますが,その辺のお考えについて,お聞かせいただけませんでしょうか。

【 金田人間文化研究機構長 】

国立国語研究所としても,具体的にお考えくださっていると思うんですが,機構全体といたしましても,例えば具体化しているのはまだ2か国でございまして,それ以上具体的には,全体としての計画は立っておりませんけれども,一つはイギリスのAHRCですね。日本の学振の人文部門みたいな感じのところでございますが,そことの協定を結びまして,そこから大学院生,あるいはポスドクも含めました方々の派遣要請を受けて,双方で審査をして,受入れの期間や教官を決めて受け入れるという事業を続けております。これは,イギリス側にも大変好評なようでして,更にイギリス側のプロジェクトとしても,それを拡大してやるということで,我々のところとの関係が実績として報告されているという状況でございます。

それから,フランスとの間にも同じような協定があるんですが,そこはまだ研究者交流だけで,学生のところは入っておりません。

そういったような状況でございまして,今のところ,その二つしか具体化しておりませんが,先ほどちょっと所長の方からもお話がありました,在外日本関連の調査,国際共同研究というのがございますが,それの場合もプロジェクトとして各機関と提携をしながらやっているということがございます。これも研究協定でございますが,ただ,その協定の中には,現地でワークショップなどを開いて,同時に日本語に関連する資料の取扱いとか教育も若干のことはできるような形で展開しておりまして,これはオランダ大使館レベルでもオランダの計画については大変好評を得ていて,是非ともバックアップしたいという御意見もいただいておりますので,そういうことを少しずつやっておりますが,なかなか一遍には難しいという状況です。

【 影山国立国語研究所所長 】

今,機構長が説明いたしましたのは,日本の機関と海外の機関との体系的な連携でございます。恐らく伊東委員の御趣旨は,個人的に,例えば日本語教師を外国でやっている人で,半分研修も兼ねて,研究で来たいという御趣旨だと思います。

これにつきましては,外来研究員という制度がございまして,昨日もキルギスから日本に,ロシア人ですけれども来られまして,1年間滞在されます。この春,3月に私,アメリカの日本語教育関係の学会で基調講演をしましたけれども,その時にも国語研の宣伝を大いにしまして,外来研究員という制度がございますから,皆さん日本に来てくださいということを訴えました。実際,サンフランシスコ州立大学のある教授は,このように国語研が開かれた存在になった,文字どおりガラス張りになったということを非常に喜んでおられまして,来年も,日本人ですけれども,アメリカで日本語教育をされている方が外来で来られることになっています。

研究所として受入れの制度はそのようにございます。ただ実際問題,机の数ですとか,最も問題になるのは宿舎の問題で,どの大学でもそうですが,宿舎がございませんので,そういったところで諸事情を勘案して,総合的に受入れを進めております。

【 北川委員 】

若手研究者の育成に関連の問題です。大学共同利用機関の三つの機能というのは,御存じのように,自らの研究と共同利用・共同研究,それから大学院教育,あるいは若手育成です。そういう意味で,先ほど所長が,全国の大学院生を対象にする,あるいは若手を対象にするチュートリアルセミナーというのを始めているという報告をされました。これは共同利用を,ある意味で教育の方にも広げていくという,非常にいい取組だと思います。

一方で,多くの大学共同利用機関は総研大の基盤機関となって,大学院教育を自らやるというところもやっておりますが,そこに対して国語研はどういうふうに考えられるのか,お教いただきたい。

【 金田人間文化研究機構長 】

私のところは,御承知いただいていますように,6研究機関ございますが,6研究機関のうちの3研究機関で,1研究科,4,000校を擁しております。ただ,それに,直接的に入っていないのは,現在のところ,総合地球環境学研究所,それから,国立国語研究所がそういう形では入っていないんですけれども,総合地球環境学研究所の方は博士課程後期以上のクラスの方々が研究プロジェクトに直接入ってやるという形での教育をしているというのと,それから名古屋大学と別途に連携大学院の協定を結びまして進行しております。

そういった状況で,国立国語研究所も,どういった方向が一番効果的なのかということは現在御検討いただいているわけでございますが,特に日本語研究という立場から,既に独法時代からの一橋大学との関係で,教育に協力していただいておりますが,それぞれの大学はそれを予定に組み込んで動いておりますので,急にやめるというわけには参りませんので,そこはきちっと,特に教育にとっては継続性が大事ですので,継続性を保持しながらお考えいただくことになると思いますけれども,国立国語研究所としての一番いい形ということを模索していただくということで,お願いをしております。

【 樺山主査 】

まだいろいろお答え,御質問等おありになろうかと思いますが,予定しておりました時間がぎりぎりになってまいりましたものですから,今後,私どもとしましては,3回以降の会におきましても,いろいろな御説明,御質問を行わせていただく機会もあろうかと思いますので,本日につきましては,これにて終了させていただきたいと存じます。

あえて申し上げるまでもありませんが,本日は大変に活発な御意見をいただきまして,合同部会でございますので,作業部会と小委員会,二つございますが,両委員会,両母体とも今日の情報等々を参考にしながら,最終的な結論に向けて,今後,議論を重ねていきたいと思っております。

本日は大変ありがとうございました。とりわけ金田機構長,影山所長,鈴木管理部長,御出席いただきまして,貴重な御意見,情報等々もたくさんいただきました。本当にありがとうございました。

それでは,まずは,私ども国語に関する学術研究の推進に関する作業部会について申し上げますけれども,次回は10月24日月曜日,午前10時からでございます。場所につきましては,追って事務局より御連絡申し上げます。

【 林主査 】

国語研究等小委員会でございますが,こちらの方は1週間遅れまして,10月31日の月曜日,10時から,文化庁の5階特別会議室で開催をいたしますので,よろしくお願いいたします。ちょっと付け加えて申し上げますと,本日,影山所長,金田機構長の御説明は大変分かりやすく,よく現状が理解できました。本当にありがとうございました。

【 樺山主査 】

それでは,これをもちまして,本日の合同会議,国語に関する学術研究の推進に関する作業部会と国語研究等小委員会の合同部会を閉会とさせていただきます。御多忙のところ,本日は御出席いただきましてあ style='font-size:10.5pt;font-family:"MS ゴシック";letter-spacing: 0pt'>りがとうございました。

お問合せ先

研究振興局学術機関課機構調整・共同利用係

小暮、藤野
電話番号:03-5253-4111(内線4299)、03-6734-4169(直通)