参考資料1-2 研究計画の概要(2011年東北地方太平洋沖地震に関する総合調査)

研究課題 2011年東北地方太平洋沖地震に関する総合調査

研究代表者 篠原雅尚 東京大学地震研究所 教授

研究目的

 2011年3月11日14時46分頃、東北地方太平洋沖で日本国内観測史上最大のM9.0の巨大地震が発生し、宮城県では気象庁震度階最大である震度7を記録したのをはじめ、北海道から関東地方にかけての広範囲で極めて強い揺れが観測された。この巨大地震に伴いM7以上の余震が多数発生しているほか、日本の太平洋沿岸で高さ7mを超える津波が観測され、甚大な地震動・津波被害をもたらしている。
 この巨大地震は陸域のプレートとこれに沈み込む太平洋プレートとの境界で発生した地震と考えられる。これまでの記録によれば、海外の地震を含めても1900年以降4番目に匹敵する規模であり、今世紀に限ればスマトラ地震(M9.1)に次ぐ2番目の大きさである。本地震に伴う余震活動の分布は南北約500kmにも及ぶ極めて広範囲である。
 このような巨大地震とそれに伴う現象は、世界的に見てもまれであり、日本のような観測網の充実した地域で発生した例はこれまでにない。この巨大地震の発生過程を明らかにすることは、我が国の研究者が全人類に果たすべき責務であると言える。地震発生領域が海域であるため、陸上観測網だけではその全貌は明らかにするには不十分であり、海域観測を強化する必要がある。また今後M7以上の地震活動が続くことが予想され、これらの地震活動の推移を調査することも重要である。
 同様の巨大地震が、日本沿岸の他の場所や国外で将来発生する可能性があるため、この巨大地震発生過程を明らかにし、今後の地震防災に資することは、社会的に強く要請されている。

調査内容

1.海底地震観測及び陸上地震観測による地震活動調査、震源域の地殻構造調査

 震源海域に自己浮上式海底地震計を設置すると同時に、陸域の地震観測点を増強し、海陸両方のデータを統合解析することにより、地震活動の時空間変化を明らかにする。また、地震発生前から設置されていた海底局を用いた海底地殻変動観測を実施する。更に、震源域において地震波反射法構造調査を行い、震源域の詳細な地下構造を求める。これらの観測により、震源断層の位置・形状を求め、今回の巨大地震の発生様式の解明に寄与する。

2.巨大地震発生機構と強震動発生の解明

 地震波形解析やシミュレーションにより今回の巨大地震断層がどのように破壊したのかを明らかにする。併せて、この地震による強震動特性を明らかにし、その励起過程を解明する。

3.津波発生過程の解明と津波被害調査

 今回大きな被害をもたらした津波について、津波遡上高、津波堆積物等の調査を実施し、津波発生メカニズムを解明する。また、津波被害調査を行い、甚大な被害をもたらした原因を解明する。

4.地震動による構造物等被害調査

 建築学会・土木学会・地震工学会等の合同で、今回発生した広域大災害の現地調査を行い、構造物被害や地盤災害の状況を明らかにするとともに、防災対策に資するデータを収集する。

研究経費

 48,900千円

研究組織

研究代表者

 篠原雅尚 東京大学地震研究所 教授(海洋地震学)研究統括

研究分担者※及び連携研究者
1.海底地震観測及び陸上地震観測による地震活動調査、震源域の地殻構造調査

 村井芳夫※ 北海道大学大学院理学研究院 准教授(地震学)海域地震観測・解析
 藤本博己※ 東北大学大学院理学研究科 教授(海底測地学)海底地殻変動観測
 日野亮太※ 東北大学大学院理学研究科 准教授(地震学)海域地震観測・解析
 佐藤利典※ 千葉大学大学院理学研究科 教授(地震学)海域地震観測・解析
 平田 直※ 東京大学地震研究所 教授(観測地震学)陸域地震観測・解析
 小原一成※ 東京大学地震研究所 教授(観測地震学)陸域地震観測・解析
 塩原 肇※ 東京大学地震研究所 准教授(海洋地震学)海域地震観測・解析
 飯尾能久※ 京都大学防災研究所 教授(地震学)陸域地震観測・解析
 植平賢司※ 九州大学大学院理学研究院 助教(地震学)地震観測・解析
 宮町宏樹※ 鹿児島大学理学部 教授(地震学)海域地震観測・解析
 金田義行※ 海洋研究開発機構 プロジェクトリーダー(海洋地震学)データ解析
 小平秀一※ 海洋研究開発機構 チームリーダー(海洋地震学)データ解析
 平田賢治 気象庁気象研究所 主任研究官(地震学)海域地震観測・解析

2.巨大地震発生機構と強震動発生の解明

 松澤 暢※ 東北大学大学院理学研究科 教授(地震学)震源過程解析
 岡田知己※ 東北大学大学院理学研究科 准教授(地震学)震源過程解析
 八木勇治※ 筑波大学大学院生命環境科学研究科 准教授(地震学)震源過程解析
 纐纈一起※ 東京大学地震研究所 教授(地震学)強震動解析
 山中佳子※ 名古屋大学大学院環境学研究科 准教授(地震学)震源過程解析
 平原和朗※ 京都大学大学院理学研究科 教授(地震学)数値シミュレーション

3.津波発生過程の解明と津波被害調査

 谷岡勇市郎※ 北海道大学大学院理学研究院 教授(津波地震学)津波調査
 今村文彦※ 東北大学大学院工学研究科 教授(津波工学)津波調査
 佐竹健治※ 東京大学地震研究所 教授(津波地震学)津波シミュレーション
 田中 淳※ 東京大学大学院情報学環 教授(災害情報学)津波調査
 高橋智幸※ 関西大学社会安全学部 教授(水災害学)津波調査
 岡村 眞※ 高知大学教育研究部 教授(地質学)津波調査
 都司嘉宣 東京大学地震研究所准教授(津波地震学)津波調査

4.地震動による構造物等被害調査

 安田 進※ 東京電機大学理工学部 教授(地盤工学)構造物等被害調査
 壁谷澤寿海※ 東京大学地震研究所 教授(建築学)構造物等被害調査
 堀 宗朗※ 東京大学地震研究所 教授(土木工学)構造物等被害調査
 高橋良和 京都大学防災研究所 准教授(橋梁工学)被害調査
 後藤浩之 京都大学防災研究所 助教(地震工学)被害調査
 盛川 仁 東京工業大学大学院総合理工学研究科 准教授(地震工学)被害調査

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研究振興局振興企画課学術企画室

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