資料1-3 学術振興上の重要な課題の例(科学官の所見の整理)

1.研究スタイル

○研究者の組織化・結集

  • 純粋数学と物理・化学の融合等、基礎学問の枠を越えた研究者の結集
  • 学術研究が未来をどのように拓いていくかという観点からの、幅広い分野の知の統合による研究戦略の立案と新しい領域の創造
  • 多数の研究者が協力して長期的に取り組む大規模研究の推進

- 大型化、国際化、長期化が進んだ研究プロジェクトに関与する研究者の組織化や役割分担の明確化
- 一定期間の研究専念など、研究プロジェクトの進行状況に合わせた柔軟な人材配置や教育研究連携の推進
- 国際プログラムの政策担当者と研究者の協働による国際機関等からの提案への迅速な対応

○先端設備、研究情報基盤の共有と管理運営

  • 単独の研究者や部局では購入困難な機器へのアクセスを開くための、最先端機器を機関全体で共有し、優秀な実験技術者がその管理運営にあたるコアファシリティの創設
  • 科学の質を変える大容量データ(ソーシャルメディアとしてのウェブやブログとそのテキストコーパス、ゲノム情報、多様なセンサーヘルスケア情報等)の共創可能な巨大データクラウドプラットフォームの構築
  • ゲノムワイド遺伝子解析と高速シークエンス等から得た情報を、各領域の研究者が専門を踏まえて解析し、その結果をシステマティックにフィードバックして蓄積することにより、高次元での知の共有ライブラリの構築。
  • 様々な制度の設計・導入・評価における、客観的データ(ラボ実験、フィールド実験・調査等のデータ)に基づく分析手法の確立

2.研究ターゲット

○グローバル化が進展する中での国家の在り方

 グローバル化の進展により、国家の規制力が弱まり、既存の国家組織・国家統治が機能しなくなりつつある。このような中、様々な学問分野が協働しグローバル化現象の意味・影響等を分析するとともに、新しい状況に適合した国家の在り方、役割、組織を検討する

○優れた能力と人格をもつリーダーの育成

 国家を始めとして、さまざまな組織・機関で、優れた能力と人格をもつリーダーが強く求められており、優れた能力と人格をもつリーダーの育成システムについて、他国の例も分析しながら研究する。

○意志決定の基本構造の解明と社会制度の設計

 様々な選択を行う際の人々の意思決定のメカニズムを解明し、効率的かつ公正な制度を設計する。具体的には、リスク下の選択、異時点間選択、社会関係下の選択という3区分に分け、学融合的な手法によってそれぞれのメカニズムを解明し、その知見を活かした制度(市場、社会保障、公共財源供給)を設計する。

○宇宙創成の科学的解明

  初期宇宙の状態を知るためには、宇宙の果てから来る光を捉えるとともに、極微領域で成り立つ自然法則を知る必要がある。このため、大型望遠鏡観測、重力波観測、宇宙背景輻射観測、宇宙線観測、暗黒物質探索、高エネルギー加速器実験、原子物理の手法による基本法則の精密測定、大型計算機シミュレーションを含む理論研究を総合的に推進する。

○物質科学の新展開

 物質に内在するナノ、メソ、マクロ等の階層を越えた、新たな学理の創成を目指した物質科学を推進する。

 また、レーザーの超高強度化が革新的に進められる状況の中で、真空の崩壊現象等について包括的な極限物質科学を推進する。

○人工物による社会価値創造

 QOL、環境・エネルギーなどの具体的ターゲットを定め、人工物、人工システムを社会へ統合し、新しい価値を創造し、豊かで安全安心な持続的社会の実現を目指した研究を推進。

○生命現象あるいは疾患病態における相互関連の統合的理解とそれを制御する多次元情報ネットワークシステムの解明

 生体の多様性の本質に迫り、疾患治療への応用や他の領域にも新しい理念を提供するため、栄養エネルギー代謝、細胞増殖、細胞分化、免疫、炎症、老化、細胞死など生体に必須の生命現象の連関を俯瞰し、相互の制御メカニズムの解明に資する研究を推進。

○サイバーフィジカルシステム(サイバー世界と物理的実世界を有機的に結合した高信頼、高効率社会基盤システムの新しい方法論に関する研究)

 サイバー世界と物理的実世界を有機的に結合した高信頼、高効率社会基盤システムの新しい方法論に関する研究。

○アクティブ・ソシオセンスとそのリアルタイム解析・アーカイブ基盤

 震災データをはじめ、ある局面、ある指定領域に関して集中的にモニタリングを可能とするシステムを構築し、当該システム上で情報の集約発信が可能な基盤を構築。    

○新しい地球環境科学

 地球温暖化問題については国際的な取組が進められているほか、世界的に様々な自然災害(台風・ハリケーン、地震・津波)が頻発している。このような中、防災科学、気象学、地震学等の学問的進展と学際的研究により、我が国の存在感を高めるとともに国際貢献を推進する。

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研究振興局振興企画課学術企画室

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