学術の基本問題に関する特別委員会(第6期)(第2回) 議事録

1.日時

平成23年5月24日(火曜日) 15時30分~17時30分

2.場所

合同庁舎4号館12階 共用1208特別会議室

3.出席者

委員

平野主査、谷口主査代理、鎌田委員、鈴木委員、柘植委員、深見委員、樺山委員、家委員、郷委員

(科学官)
北川科学官、佐藤科学官

文部科学省

倉持研究振興局長、合田科学技術・学術政策局長、戸渡審議官、
河村私学部長、永山振興企画課長、渡邊学術研究助成課長、澤川学術機関課長、田中学術企画室長、その他関係官

4.議事録

【平野主査】

  皆さん、こんにちは。それでは、第2回の委員会を開かせていただきます。お忙しい中、委員の先生方にはご意見を事務局のほうへお寄せいただきまして、まことにありがとうございます。それを含めて事務局のほうから、また後で説明をしていただきます。

 それでは、まず事務局より、配付資料の確認をお願いします。

【田中学術企画室長】

 それでは、失礼いたします。配付資料につきましては、議事次第の下に配付資料一覧にしておりますので、それもご参照いただきながらご確認をお願いいたします。

 まず配付資料1-1から1-7につきましては、本日の議題でございます学術振興上の重要な課題についての関係の資料を用意させていただいております。資料1-1が、検討の背景・観点などを整理したもの。資料1-2が、委員の先生方からいただいたご意見を整理したもの。資料1-3が、前回ご紹介させていただきました科学官の所見を整理させていただいたものでございます。それから、資料1-4から1-7につきましては、資料1-1の関係の参考資料を用意させていただいております。そして、資料2が、前回の委員会におきます主な意見をまとめたもの。資料3が、今後のスケジュール。そして、参考資料といたしまして、東日本大震災関係の資料を3点ほど、参考資料として用意させていただいております。欠落などがございましたら、事務局までお申し出ください。よろしくお願いいたします。

【平野主査】

 よろしいでしょうか。ありがとうございます。

  それでは、これより議事に入ります。本日は前回に引き続きまして、学術振興上の重要な課題についてご検討いただきたいと思います。学術分科会におきまして、戦略的な視点を持って学術研究の振興を図ることも重要であるとの報告をされております。この戦略的な視点を持って学術の振興を図るといったときに、ご意見もこの前出していただいたように、研究者の自由な発想の上で、自律的に研究を進めるということを基本とした上で、かつ戦略的な取組として、一体どのようなことがあるのか。共通理解を深めるためのご議論をいただきたいと思っております。

 この点について、前回事務局には、研究ターゲット、あるいは研究スタイルという形で整理をしていただいたところでありますが、それ以外でも構いませんので、戦略的な視点としてどのようなことが考えられるのか、今日はご意見をいただきたいと思います。前回における意見だとか、委員の皆様方や、科学官からいただきました所見を踏まえまして、議論の参考になる資料を準備していただいております。

  では、まず事務局のほうから、簡潔にこの資料に基づいて説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 【田中学術企画室長】

 それでは、失礼いたします。

 まず最初に、資料番号1-2をご覧いただけますでしょうか。まず、委員の先生方からいただきました意見につきまして、簡潔にご紹介させていただければと思います。3ページにわたっておりますが、一言で申し上げますと、多様性の確保をはじめといたしました学術の特性を踏まえた検討の必要性について、委員の先生方から意見をいただきました。

 例えば、1ページ目でございますが、最初の○のところでございますが、短期的な成果のみを追い続けることにならないように留意すべきといったご意見。あるいは、2番目の○でございますが、多様性の尊重ということが基本にあり、特定の政策によって生み出されるものとは違うのではないか。その中で、研究者の自主性をいかにして掘り起こして、飛躍的に研究を発展させることが必要かという観点が重要ではないかといったご意見。あるいは、3番目の○でございますが、我が国で生まれ、世界での優位性と独自性を重視するという観点。すなわち、例えば欧米にはできない研究で、我が国のポテンシャルを活用できる研究といった観点。あるいは、海外からの学生、大学院生等が集まるような、次世代の研究者の成長の場という観点から、重要な課題を検討することが必要ではないかというご意見をいただいております。また、4番目の○でございますが、学術システム全体を俯瞰した検討が必要であって、個別の分野やプロジェクトの検討とは異なるのではないかといったご意見。あるいは、最後の○でございますが、研究者の自主性と研究の多様性という問題について考えていくということが必要ではないかというご意見をいただいているところでございます。

 また、2ページ目でございますが、学術研究を推進する上での課題といたしましては、一番上の○でございますが、評価が分かれるような創造性豊かなポテンシャルを備えた研究者をコミュニティが育てていくという観点が重要であるといったご意見。あるいは、2番目の○でございますが、国家プロジェクトではカバーされないテーマについて検討することが必要ではないかというご意見。3番目の○でございますが、我が国の学術を強化するためには、人間社会における新たな価値観の創造など、人文社会科学の発展が重要であるといったご意見。4番目の○でございますが、従来の研究手法を超えた、例えば情報・データ集積型の研究と仮説検証型の研究の融合などが必要ではないかといったご意見。あるいは、5番目の○でございますが、若手研究者の交流を含めて、全国的な研究組織体制を構築することが必要ではないかといったご意見。

 3ページ目でございますが、一番上でございます。学際研究の成否は、その軸足となる基礎的な学問分野の卓越性と相関している、あるいは、そういった軸足が必要であるといったご意見。あるいは、2番目から4番目の○でございますが、多様性の確保という観点から、Dual Supportの確立、コミュニティの意向を踏まえた検討、あるいは、研究現場の独自の研究手法を助長するような取組が必要ではないかといったご意見をいただいたところでございます。また、その下の2つの○にございますように、柔軟な思考や多様性に富んだ、創造力を引き出す教育、いわゆる学横断的な教育、あるいは、定量化・数値化し難い学術研究の特性も踏まえた評価が必要ではないかといったご意見もいただいたところでございます。

 そういったご意見も踏まえまして、改めて学術振興上の重要な課題の検討の背景、観点につきましてまとめさせていただきましたものが資料1-1でございます。それでは、資料1-1をご覧いただけますでしょうか。

 まず、学術振興上の重要な課題の検討の背景といたしまして、1でございます。本年1月に、第5期学術分科会において取りまとめていただきました審議経過報告におきましては、研究者の自主性と研究の多様性の尊重を振興の前提・原則とするとともに、戦略的な視点を持って学術研究の振興を図ることも重要な課題と指摘をいただいているところでございます。そうした中で、先ほど主査からもご示唆いただきましたように、戦略的な視点を持った取組をどのようにとらえていくかということが、検討の背景としてあるわけでございます。

 その中で、学術振興上の重要な課題につきまして検討いただきたいということでございますが、まずその趣旨といたしましては、例えば、トップダウンのようなものを学術の世界に持ち込みまして、学術研究の特性を変えようとするものではございません。あくまでも研究者の自主性を前提とした上で、ただ、例えば多様性の確保、あるいは学術研究の発展のために研究者の自主性を掘り起こして、学術研究の多様性、さらには多様性に基づく発展といったものをするためには、学術の世界の中で重要課題の議論、検討が必要ではないかというのが、この検討の背景の趣旨でございます。

 そうした中で、2にございますが、例えば、大学における研究開発全体の状況を踏まえますと、大学におきましては科研費によりまして、研究者の自由な発想に基づく学術研究が行われるとともに、一方では、政策課題に対応する分野別の研究開発も行われているわけでございます。このような中、資料1-5に、科研費と、それから、政策課題対応型研究開発費の分野別の配分状況につきまして、資料1-5の1ページ、2ページ、3ページに資料をおつけしておりますが、科研費の分野別の配分はほぼ一定で推移しているところでございますが、政策課題対応型研究開発経費につきましては、第3期基本計画までの重点推進4分野等の取組によりまして、分野により大きく異なっているような状況があるわけでございます。そうした政策課題対応型の取組も含めまして、大学の研究のありようが影響を受けている、あるいは形成されている実態があるというのが事実と考えられるところでございます。

 そうした中、政策課題対応型の世界ではなく、学術の世界の中で検討していくことが必要ではないか。それは研究者の方々に、トップダウン的にこれをすることが必要だというような取組をするということではなく、研究者の自主性を引き出して、学術の世界で必要なものについて、多様性を確保していくという観点からの議論が必要ではないかということが、検討の背景の趣旨として言えるのではないかというのが2点目でございます。

 そして、その次の3番目でございますが、そうしたときに、学術の世界におけます重要な課題の検討といたしましては、政策や社会の課題に基づく検討ではなく、そこにございますように、国際的な学問分野の動向や、あるいは、我が国の状況も含めた学問的観点からの議論・検討ということが必要ではないか。言ってみれば、政策課題対応型のような政策や社会の課題ということではなくて、あくまでも学問的観点からの重要課題の議論・検討であるというのが3点目でございます。

 そうした例といたしまして、資料1-6に、国際的な学問分野の動向、あるいは、我が国の状況の一例といたしまして、論文に関します資料を用意させていただいております。では、資料1-6の3、4ページでございますが、主要国の論文数に占めますTOP10論文数の分野別の状況、傾向を整理した資料を用意させていただいております。その枠で囲っているところにございますように、近年の動向につきまして、上昇、横ばい、あるいは下降基調ということにつきまして、分野別の状況を整理した資料を用意させていただいております。また、資料の5ページ、6ページにつきましては、左側の欄が、分野別の各国の論文数の伸び率の状況でございます。そして右側が、いわゆるTOP10論文の各分野別の各国の伸び率の状況でございまして、全世界的に見ますと、論文数、TOP10論文数ともに1を超えている、増えているという状況がございます。

 そうした中で、我が国におきましても左側の欄、論文数につきましては、どの分野におきましても1を超えて伸びているという状況があるわけでございますが、例えば、TOP10論文数の伸び率につきましては、分野により異なる状況があるということが伺えるところでございます。例えば、化学、材料科学、工学におきましては、網かけで囲っておりますが、論文数全体は増えている一方で、TOP10論文の伸び率は減っています。それとは逆に、環境・地球科学におきましては、TOP10論文数の伸び率が、論文数の伸び率を大きく上回っているという状況でございます。

 それから、資料の7ページは、前回も用意させていただきましたサイエンスマップの中で、日本のコアペーパーシェア、いわゆる被引用度の高い論文が占める割合が高いものにつきまして、赤く囲わせていただいているところでございます。サイエンスマップにおきまして、世界の注目領域121領域を抽出しておりますが、その中で、赤で囲っております16領域が、サイエンスマップの研究領域のうち日本の高被引用度論文の割合が高いものでございます。

 また、資料8ページにつきましては、サイエンスマップで抽出しております647の研究領域の中で、TOP1%論文を有する研究領域の数を比較した資料でございます。これはあくまでも世界的な動向の中で、特に論文の状況についての資料でございます。我が国が追いついていくことが必要だということ以外に、委員の先生方からご意見でもいただいておりますように、我が国が強み、あるいは独自性を有するものについて、強化していくことが必要だという観点もあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、この資料1-6は、論文について一例として示させていただいておりますが、冒頭に申し上げましたように、政策や社会的課題という切り口ではなく、学問的観点から、学術研究の多様性、あるいは発展を図るために重要課題の議論・検討が必要ではないかというのが、3点目の趣旨でございます。

 資料1-1に戻っていただきまして、2ページをお開きください。4といたしまして、これは参考という趣旨でございますが、諸外国における取組につきまして、資料を用意させていただいております。

 資料1-7に、アメリカのNSFとイギリスの研究会議の取組の例を参考として用意させていただいております。まず、資料1-7の1ページでございますが、NSFにおきましては、非特定型のグラントに加えまして、特定型のグラントも実施をしておりまして、その中には、それぞれの分野における課題のほか、分野横断的な課題も設けられているところでございます。それは研究者の自由な発想に基づきピアレビューによって助成を図るというNSFの性格に照らしまして、設定されたテーマはいずれも包括的なもの、いわゆる研究者の自主性を導き出すような趣旨のものではないかとうかがえるものが設定されておりまして、その範囲内であれば、具体的な分野や内容を問わず、グラントの支給の対象となり得るものとなっていると伺っているところでございます。

 具体的に分野横断的な課題の例を幾つか示させていただいておりますが、例えば、最初のポツにございます、地球システム力学でございますとか、それから、2番目のポツの計算論的神経科学のように、学際的な研究課題、あるいは研究領域の設定のほか、下から3番目以降でございますが、研究連携ネットワークの構築、あるいは国際共同研究の推進などの研究手法的な課題の設定の例も見受けられるところでございます。

 その次に、2ページをお開きください。こちらはイギリスの研究会議におけます例でございます。イギリスの基礎研究段階の研究助成におきましては、7つの分野ごとの研究会議で助成が行われており、それぞれの研究会議によって助成システムなどが異なっている状況がありますが、幾つかの研究会議におきましては、領域未設定型の助成のほか、領域を設定した助成を行っている例も見受けられるところでございます。

 例えば、特別プログラムといたしまして、特定の領域に対して研究テーマを募集するプログラムでございますとか、一番下の○でございますが、バイオテクノロジー・生物科学研究会議におきましては、長期の研究機関等多額の資金を必要とする学際的な研究プロジェクトを支援するプログラムがあり、研究会議の中の戦略会議で議論して設定する戦略的優先分野について取り組む研究を対象としているところでございます。この戦略的優先分野につきましては、研究会議の戦略委員会の中で数年おきに議論し改定がなされているようですが、そうした戦略的に必要な分野を示した上で、学際的な研究を支援するといったプログラムも見受けられているところでございます。

 資料1-1に戻っていただきまして、2ページでございます。このような諸外国における戦略的な取組、いわゆる研究者の自主性の尊重、あるいは研究の多様性の確保ということを前提にした上での戦略的な取組といったことを参考にして、我が国においても、研究者の自主性を掘り起こして学術研究の発展を図るための取組が必要ではないかということでございます。

 以上の4点をまとめたものが、矢印のところでございます。今回、ご検討いただいております学術振興上の重要な課題のコンセプト、特に政策や社会の対応に基づく課題設定型との違いということをまとめさせていただいたのが、その矢印のところでございます。

 まず1点目といたしまして、国の政策や社会的課題に基づく課題ではなく、我が国の学術研究の学問的発展という観点からの議論・検討が必要ではないかということでございます。そして、2点目といたしまして、学術振興上の重要な課題は、研究者の自主性をあくまで前提として、その自主性を掘り起こして、例えば、新たな学術コミュニティの形成などの学術研究の発展を図るための、国や政策に基づくものではない、学術コミュニティ自身による議論・検討が必要ではないかということでございます。

 前回のご議論、あるいは委員の先生方からいただいたご意見を踏まえまして、資料1-1、あるいはその後の参考資料のような形で、学術振興上の重要な課題の背景・観点についてまとめさせていただいたところでございます。これにつきまして、学術の世界におけます戦略的な視点を持った取組、あるいは重要な課題の検討のとらえ方につきまして、ご議論、ご意見をいただければと思っているところでございます。説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【平野主査】

 どうもありがとうございました。今、説明していただきましたように、前回の議論を踏まえて、各委員からまたご意見を寄せていただいたのをまとめたもの、資料1-1でありますが、このような課題の検討についてという取りまとめをしていただいております。そもそもこの学術振興上の重要な課題のとらえ方という点について、そのあり方について、皆さん方からご意見をいただき、取りまとめるところはまとめて、具体的対応が必要だったら、それはまた別なところに持っていきたいと考えております。

 まず、今、説明をしていただいたことについて、質問等がありましたら、ぜひ自由にお受けしたいと思います。よろしくお願いします。いかがでしょうか。基本的な考え方は、この資料1-1にまとめてもらったようなところでよろしいということでしょうか。何か特に重大な修正等要するところがあったら、特にそこの点についてもご指摘いただきたいと思います。よろしいですか。今後のより具体の課題設定がもし必要になったら、そのところの参考にもなるように、ぜひご意見を何なりといただければと思いますが。

 私があまり自分で言ってはいけないと思いますが、きっかけとして、今の資料1-1の2ページ目のところで、一番最後のところでありますが、矢印の2番目のところ。これまでも文理融合とかいろいろなことで各大学努力をされてきたのですが、やはり時間が必要だということも事実ありますが、まだ何となくしっくりきていないなとも思います。そう言うと難しいんですが、どこかの銀行だとか大きい会社もそうですが、合併をいたしますと、その方々がその名前で採用されて、育って役員になって、責任がある方が育ってきたところでようやくユニファイされると同じ、またそれ以上に学術分野の融合が難しいようです。強制をするわけじゃ全くありませんけれども、この前ご意見いただいたように、このたびの大震災をみても、例えば歴史が既に証明をしているような事実について、文系、社会系分野かもしれませんが、それと自然科学をやっているところとのいい関係、議論の場、研究の場が、やはり希薄ではなかったのかということも、私は、いろいろな記事を見て反省もあるわけであります。

 そういう点で、ちょっと事務局の方ともお話をした、領域を超えて新たな学術コミュニティの形成に役に立つような、新学術領域とかいろいろありますけれども、何かきっかけをこういう研究費にかかる場で、テーマを決めるというよりは、そういう場をつくることも必要ではないかと思います。そこで議論をすることによって、次には自分たちが根に置いている学術コミュニティ自身からの議論が、また連携して出てくるんじゃないかと思ったものですから、1行を打ち合わせのときに加えさせていただきました。

 そのときに問題になるのは、寛容なお考えのリーダーがいないと、これもまとまらないものですから、言うは易し行うは難しでありますが、でも、何かこういう研究のあり方のきっかけとしてあればなとも思ったわけであります。ここはちょっと私の希望的な意見も入れさせていただいております。どうぞ、ご自由にご発言いただければと思います。どうぞ。

 【佐藤科学官】

 科学官の佐藤でございます。こういうふうにまとめていただくと、一個の研究者としては非常に耳障りがよろしいと申しましょうか、我々のコミュニティの中で十分議論をして、こういう研究をやるということがオーソライズされて、それは国としても認めていただけるというのは、我々の立場としては、それは大変に結構だと思います。一方では、これはどの分野でもそうかわかりませんけれども、学問のタコ壺化というようなことはあちこちで言われておりまして、いろいろな分野で、ずっと深くはなっていくけれども、周りとの関係が見えなくなり、挙げ句の果てには社会と学問との関連が失われてしまって、そもそも学問をサポートしている社会との関係が、どっちかというと希薄になるというようなことも考えないといけないかなという気がしております。

 その点では、もちろん学問をやる側の主体的なボトムアップ的な問題提起は重要なのでありますけれども、学問を見ている社会というものがあって、社会との関係をどこかで常に問われているというんでしょうか、チェックされるというんでしょうか。そういうことにも注意を払っておく必要があると思います。

【平野主査】

 どうもありがとうございます。重要な指摘だと思います。こういうところで一緒にやらせていただいておりますと、まさにどうやってきちっと発信をして、即刻何かの生活に役に立つということでなくても、それがどういう夢の実現に向けられるところにあるのかとか、若い人たちを激励できるのかということでも重要だと思うんです。私も長い間一緒にやらせてもらっていたう上での反省でもあるんですが、やはりどうしても自分たちのコミュニティの中にとどまってしまっておって、どこかが使ってくれれば大変喜ばしいというふうに受け身的でした。すべてを変えるわけじゃありませんが、どこかで少しそのあたりの発信のことも含めたコミュニティのあり方も、こういう研究費等を議論するときには必要なのかなと思っております。大変重要なご指摘だと思います。

 何かほかにありませんでしょうか。どうぞ。

【郷委員】

 よろしいでしょうか。この基本問題は、いつの時代にも考えていかなきゃいけないことだと思うんですけれども、この時期、東日本大震災があって、今、どういうことが起きているかということと切り離して考えることはどうしても難しいと思っています。

 具体的に申し上げると、今、高校生や中学生が、この災害でいろいろな今までなかったことが起きていること、あるいは、安全だと思っていたことが全然違っていたじゃないかと、言葉とか行動とかで今出てこないけれども、考えているのだろうと思います。おそらく、現場にいらっしゃる先生方は、そういう生徒たちと毎日つき合っている中で、学術や科学というのが、一体どういうふうに今の若い人たちに受けとめられているだろうかと考えています。もしかしたら、科学あるいは学術研究というのは、あまり役にも立たないし、うそかもしれないと思われているかもしれないと。私は今、高等学校とか予備校の先生とおつき合いすることがありまして、そのことに気がついて、やっぱり今までサイエンスや学術をやっていた人は、そういうことを考えたことがなかったと思うんですけれども、今、それを考えないわけにはいかないんじゃないかと思います。若い人たちが、ああ、やっぱり科学とか学術、研究というのは、人類に明るい未来をもたらしてくれるものだと思ってほしいし、そういうことをやりたいと思ってほしいというのは、私たちの切なる願いです。1つの例ですけれども、そういうことが今、いっぱいあるわけです。

  私たちは、社会との連携などという抽象的なことじゃなく、高校生や中学生に、今やっている研究がどういうふうに役立つのか、あるいは、原発の問題というのはどこが問題だったのかということを、やはり説明していかないと、対話も進まないし、これから将来を担う若い人にもついてきてもらえないんじゃないかと思います。最後にそういうことを申し上げようと思ったんですけれども、やはりこれは、非常に重要な今の問題としてとらえていくことが必要であり、学術や研究をコミュニティで考えるときにも、自分たちがやってきた今までの学会の中での印象で考えていくだけではだめじゃないかと気になりまして、少し補足をさせていただきました。

【平野主査】

 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。

 前回私も話しましたが、科学技術に携わっていた者として、私は理科離れがないように、一生懸命あちこちで講演したり、若い子とつき合ってきたんですが、原発事故で理科毛嫌いにならないようにということで、私、6月の休みの日に地元に帰って、若い子に説明をと考えています。私の周りを聞くと、これは皆さんも同じような考えでおられます。これは2ページ目の、領域を超えた新たな学術コミュニティをもっと拡大するという意味になると思いますが、今の先生方のご指摘は、今までアウトリーチということで言われておりましたけれども、それがどういうふうに社会に影響を与えておるかという意味の学問領域も、やっぱり必要かなと思いながらきました。

 私が先ほど言ったのは文理がほんとうに融合できるような、それぞれの学会で議論されていたのを後から知ったということではなく、新たな視点で学術活動ができないか、その観点で提言したんですが。今のアウトリーチを含めた、また別の課題も、この中に問題としては含まれてくるだろうと思います。

 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。

【鈴木委員】

 具体的な話ですが、資料1-1の1に、研究者の自主性と研究の多様性の尊重とあって、戦略的な視点を持ってとあります。この自主性という言葉と戦略という言葉は全く相いれない言葉ではないでしょうか。自主性を原則として、戦略的というと、どちらかを崩してしまうような言葉に聞こます。例えば、研究領域とか研究テーマに関しては、自主性と入れた言葉と、戦略的という言葉では全く話が変わってしまうので、「原則とするとともに、戦略的」となりますと、「ともに」という言葉は、この2つの言葉には通用しないような気がします。

 その意味では、私、研究者の自主性という言葉は、この分科会では、どんな分野やどんな領域ではなく、研究者から良いテーマを募るということを尊重し、“とともに戦略的”という言葉に関しては、むしろテーマや領域ではなく、それをいかにして育てるか、育成するかという手法に適用してはどうでしょうか。

 そのときに、戦略としての手法に関しては、研究を支援する人、あるいは教育を支援する人をつけるとか、単に研究費だけを出すというのではなく、現在の問題点をある程度カバーする形の支援方法を戦略的と考える。そういう言葉の見方もあるような気がします。だから、自主性は、研究そのものは自主性で、戦略という言葉は手法、サポートを、これまでの問題点をカバーするような新たな手法を考えるということにしてはいかがでしょうか。

【平野主査】

 わかりました。ということは、今の鈴木委員のご指摘で、文面ではなくて、この真意をきちっととりますと、「原則とするとともに、戦略的な視点を持って学術研究の振興を支援することも」とか、そういうような意味でしょうか。ここでこのままいくと誤解が生じるかもしれないというのは、トップダウンとボトムアップの課題のところで、戦略はトップダウンであるというふうにいたしますと、今のような解釈により強くなると思うので、ここのところは、学術研究の課題においても、ある目的を持って、当然研究も目的もというんですが、将来の展開として、国として何か見ながらコミュニティとしての発言を重視するとか、あるいはそれを支援するとか、そういう意味合いにとれるようなことならば間違いないんでしょうか。それは文面からしますと、どういうふうに。

【鈴木委員】

 一方、既に科学技術基本計画があり、他の分科会でも議論している。それに対して、またこの分科会でも単独に議論をすることに頭が痛みます。一方である議論がある場合には、それを補完するような議論が必要と思います。学術審議会全体で分科会間の横の連携を密にして、日本の学術をどう先導するのかという姿勢が大切ではないでしょうか。

【平野主査】

 いかがでしょうか。何か事務局、説明を。

【田中学術企画室長】

 失礼いたします。今ご指摘の点につきまして、先ほど冒頭で説明させていただきましたとおり、この戦略的な言葉というものにつきまして、何かトップダウンというものを学術の世界に持ち込むものではないということは、先ほど説明させていただいたとおりでございます。これは第5期学術分科会でいただいている審議経過報告でございます。資料1-4に抜粋をつけさせていただいております。

 資料1-4の1ページでございますが、今後の学術研究の振興の方向性といたしまして、まず最初の○が、まさに研究者の自主性と研究の多様性の尊重というものが、学術研究の不可欠の前提・原則であるとしているところでございます。

 2番目の○でございますが、その上で戦略的な視点も必要じゃないかと述べているのが、その2番目の○でございまして、その目的、趣旨といたしましては、我が国の学術研究が国際的な存在感を発揮し、発展していくためには、我が国の知を結集して、飛躍的な発見につなげていくことが必要であると。そういう必要性から、戦略的な視点が求められるというふうに、第5期審議経過報告ではご指摘をいただいているところでございます。

 すなわち、ここで言っている戦略的な視点とは、冒頭と繰り返しの説明になって恐縮でございますが、国や、あるいは政策に基づいて研究者の方々に、これをトップダウン的にすべきだ、あるいはやるべきだというような形の戦略ではなくて、そこにある言葉でいいますと、我が国の知を結集して飛躍的に学術研究を発展させていくと。つまり、研究者の自主性に基づく学術研究の知を結集して、学術研究の多様性も含めて発展させるということが必要だという趣旨でございます。

 その趣旨につきまして、今回の資料1-1では、先ほど説明させていただきましたように、研究者の自主性を掘り起こして、その学術研究の観点から重要ではないかという議論も含めた多様性の議論の中で、学術研究の多様性の確保、あるいは発展を図っていくということが、戦略的な取組として整理できるのではないかということでございます。

 簡潔に申し上げますと、第5期審議経過報告では、研究者の自主性と多様性を前提とした上で、そうした自主性や多様性に基づく知を結集して、学術研究の発展につなげていくと。それが戦略的な視点をもって取り組むというふうに整理をしていただいているところでございます。

【平野主査】

 よろしいでしょうか。どうぞ。

【谷口主査代理】

 今のご説明を伺い、資料1-4の資料を読ませていただきますと、戦略的視点を持ってということの意味がわかりやすい気がするんですね。しかしながら、資料1-1をパッと拝見しますと、ちょっとニュアンスが違ってくるというところがあるのではないかという感じがいたしました。要するに、先ほどから話が出ておりますように、善し悪しは別にしまして、研究者の自主性と多様性を前提とする、原則とするということは言うまでもないんだけれども、それを原則としながら、学術研究を推進、振興するためには、ただばらばらに自主性と多様性を確保するだけではなくて、もう少し戦略的な取組を行うことによって、自主性がさらに発展するんじゃないかという意味合いで書かれている文章なんだと、私は今、伺っておりまして理解をしたんですけれども。

 ですから、言葉のあやと言えばそれまでですけれども、この文書は、何とか何とかを原則とするとともに、学術研究の振興を戦略的に図っていくことも重要なのではないかということなのかなという理解をしたわけです。ですから、ボトムアップが基本であるという認識は変わらないということなので、その辺、ちょっとこの文章だけが出てくると、先ほどもご意見にありましたように、浮き上がってひとり歩きする危険性があるのではないかという印象を持ちました。

 ということを踏まえまして、ちょっと続けさせていただいてよろしいでしょうか。

【平野主査】

 はい、どうぞ。

【谷口主査代理】

 ここの学術の基本問題に関する検討委員会のメンバーというのは、私もその一人ですけれども、大体大学、研究機関等で基礎研究等に携わっている委員の方々ですから、温度差というのはあまりないところがかえってちょっと心配なところでもあるわけです。つまり、我々がここで議論していることが、先ほどのご意見にもありましたように、広く社会に理解されるかどうか、社会の支援を得ることができるんだろうかという問題は、日本を含む世界的に見た科学技術の潮流のなかでこれからの科学技術のあるべき姿という視点から見ますと、やっぱり避けられない課題なんだと思うんです。

 具体的な例としてはブダペスト宣言にあるように、そこでは科学や大学とは一体何のためにあるのかということがうたわれているわけです。そういうことを考えますと、従来のいわゆる文部省時代に、文部省が何があっても国立大学等をしっかりとサポートしてくれていた時代がありますがそのころの学術研究と、法人化した後の大学、そして世界的な科学をめぐる潮流の中で、果たして学術がどうあるべきかという、今我々が直面しつつある時代とはちょっと違うように思うんです。ですから、現実をしっかり見極めることが重要で、社会からの一層の理解や支援を得ながらこれからの大学等の在り方をしっかり見据えるべきである、という認識というのは、かなり深く持って学術のあり方に対する対応を考えていくことが大切ではないか、という感じがいたします。

 そういう観点からいたしますと、私は大変注目しましたのは、資料1-2にいろいろな意見が述べられておりますが、1つ注目に値することで私もなるほどなと思ったことは、1ページ目の一番下ですね。研究者の自主性と研究の多様性の尊重を、振興の前提・原則とするとある。そこに問題が蓄積しているんだというご指摘があるというのは、私は大変貴重なご意見だと思うんです。

 私たちは何となくこれが原則なんだということを、了解しているわけですけれども、果たしてこれが社会に受け入れられているのか。やはりこのような前提や原則を社会にちゃんと理解し、支援を得ていくことができるんだろうかという問題が、結構やっぱり根本的な問題としてあると思うんです。これについては、前回の委員会でも何人かの委員の先生からいろいろな言葉で言われておりましたように、やっぱりこの問題を解決というか放置して、そのままで何となく大切なんだねという形で進むというわけにもいかないのかなという印象をちょっと持ちました。

 大学が本来どうあるべきかという理念、ビジョンといったものなしに、学術をどうあるべきかというのを議論するというのは大変難しいところがあると思うんです。大学そのものも、大きな改革の時期を迎えて、これからどうあるべきかという姿を、やっぱりまだ私の見る目では提示できずにいるというか、これから提示していかなきゃいけないという、そういう非常にクリティカルな時期にきているのではないかという印象を持っております。以上です。

【平野主査】

 どうもありがとうございます。ここまで出していただいたご意見のところは、大変重要な、根本にかかわるところでありますので、ここは少し詰めてご意見を皆さんからお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【北川科学官】

 済みません、用務がありましてちょっとおくれてきました。それで全部把握しているわけではないんですが、前回ちょっと発言しなかったので、ちょっと発言させてもらおうと思います。前回、震災の後、どういう考え方をするかという議論があったかと思いますが、私自身、例えば、先日、トムソン・ロイター社が日本の分野のランキングを発表していました。まあ、一指標ですけれども。世界のトップ5の中に、幾つかの大学がランキングされていたと思います。そこまで日本の科学技術のレベルが上がったのは、よくよく考えてみますと、戦後、終戦を迎えてその後、猛烈に日本の科学技術が進歩したのは、皆さんの共通認識だと思います。やはり小学校、中学校の初等教育、中等教育、高校、そして大学の高等教育があってのことだと思うんです。

 それでランキングというのは、2002年から2010年までによってランキングされていましたが、例えば50代の方が大きなプロジェクト、こういう学術上の重要な課題のプロジェクトでやっている方が多いと思いますが、その方々が、最近10年間、競争的資金を受けたから、じゃ、ランキングが高かったのかといいますと、私は一概にはそう言えないと思うんです。つまり、日本の昔の文部省が、しっかりと初等教育、中等教育、高等教育をやってきたからだと僕は思うんです。それをもう一遍見直さないと、全体のこういう学術上の課題の検討というのは、なかなかできないんじゃないかと思います。

 つまり、私はちょうど50歳ですけれども、やはりしっかりとした義務教育を受けて、高等教育も受けて、大学も高等教育ですが、しっかりとした教育を受けてきました。まあ、一時ゆとり教育の問題がありましたけれども、やはり日本の教育レベルは非常に高いので、そこでしっかりと足腰鍛えられて、それでもってちょうど40代になったころに、私も競争的資金をとって、それでいい成果を出せると思います。したがって、ほんとうに出口の近いところの研究者に、競争的資金なり、重要な課題にトップダウン的にお金を落とすことで、日本の学術、科学技術の振興ができるかというと、ちょっと違うんじゃないかなという気がします。一度ほんとうにこういう震災があって、戦後、全体の日本の、私自身は文科省がやってきたあれは、大きくは間違っていないと思うので。そうじゃないと、これだけの世界のトップのレベルには、例えば私、化学ですけれども、世界4位と5位に日本の大学は入っていますから、まさしく化学分野は世界のトップだと言えます。ところが、終戦後すぐはそうじゃなかったと思います。

 私は何が言いたいかといいますと、やはりここでもう一遍、運営費交付金をしっかりと大学に戻すことを考えないと、毎年1%ずつ減らしていく中で、競争的資金を増やしていくことばかりを考えていても、やはり夢を持てないんじゃないかなと思います。だから、そういうことも含めてもう一度しっかりと考え直すことが、ほんとうは必要じゃないかと私は思うんです。それはもちろんここの委員会がそのすべてを担うわけではないと思いますが、私が今、一番感じているのは、運営費交付金をしっかりと元の状態に戻すということが、学術振興上非常に重要だと。そうじゃないと、競争的資金ばかりだけで、今のレベルはキープできないと、私は個人的には思っています。以上です。

【平野主査】

 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。どうぞ。

【家委員】

 前回はこの委員会で何を議論するかというのが、どうもまだつかみどころがなくて、いろいろ私も意見をメールで出しましたけれども、今回、冒頭のご説明を伺って少しわかってきたように思うんですけれども、まだ完全にはわかっていないようなところがあるので、そこも含めたいと思います。

 まず最初に、いわゆる国の社会的要請とか、国策とか、そういうものに対応したトップダウンのいろいろな学術政策に対するある種のカウンターバランスとして、学術の振興に何が大事かという観点でやるということ、それは大変いい方向だと思います。それで、学術振興上の重要な課題というふうになっているわけなんですけれども、これで、先ほど自主性に基づくものを知を結集してというキーワードがあったかと思うんですけれども、その知を結集するところに、ある種の誘導的な政策を持ってくるのか、あるいは、知を結集するところも、コミュニティの自主性に任せて、政策としてはそれのバックアップというか、そういう環境づくりのほうに徹するのか、その辺が1つポイントかなと思いました。つまり、前回はわりに具体的な分野の重要課題とか、そういうものが先に出てきてしまって、これを議論するのかなということをちょっと疑問に思ったものですから。

 それで、この委員会も、そう何回も開けるわけじゃないと思うし、ある種の議論のターゲットを念頭に置いておく必要があると思うんですけれども、例えば、ある種の概算要求に結びつくような、予算的措置を伴うような政策というのを打ち出していくことを目的とするのか、あるいは、もう少し長期的な、制度的な改革も含めたような、そっちにいくともう少しつかみどころがなくなるかもしれないんですけれども、そのあたりのところがどの辺にターゲットを絞って議論したらいいのかなというのは、私はちょっとつかみ難いところだと思っています。

【平野主査】

 わかりました。私はこの委員会に臨んでまず、学術振興上の科学技術の基本としたらどうあるべきかを考えます。すなわち何がそのもとになるのかを確認すること、特に研究者から見れば、研究者の自主性、あるいは研究の多様性が担保されるということが最も基本であり、重要であることを踏まえております。とはいえ、ある学術領域を超えた研究の課題の部分を、自由発想に基づいた上でここで提言されていけば、それはプラスできちっと組み合わせができるのではないかというふうに考えておりまして、基本の軸をなくするわけでは当然ありません。

 それから、今、北川科学官がおっしゃったように、当然私も、基盤的経費がしっかりした上での競争なんだと、強調してきました。これは当たり前で、だれでも訴えていることでありますが、とはいえ、それが担保されるという前提の上で、では、競争的なこういう科学技術の資金においてはどうあるべきかということになりますと、自由発想で出る上に、加えて自由発想とはいえ、ある課題を提唱できて、新分野の領域がここで提案ができるならば、それを支援する方策を、私は、よりもう一歩進められるのではないかと思っておるわけです。

 それについては、概算時期もありますので、来年の予算のほうを踏まえて、もしコミュニティから、課題がボトムアップ的に出るならば、よりその方向を1つここから提言してもよろしければ、そういう手も私は考えていったらいかがかと考えます。これはよりもう一歩進むといったら失礼ですが、私の望んでいるところでありますが、事務局、それで違うというならば、修正、あるいは補足をお願いします。

【永山振興企画課長】

 大きく2点あったのかなと思いますけれども、1つは今回、この委員会での議論の目的は、何を議論するかということだったかと思うんですけれども、少なくともはっきりしているのは、学術の振興ということが命題であれば、いわゆるトップダウン的な手法というのはなじまないであろうと。それはまた別なところでJSTなりがいろいろさまざまな施策を講じています。あるいは、他省庁、独法もそうですが、そういったところで目的に応じてやっている。それはそれでまたあるんだけれども、この委員会では、そういったことを議論することではないんだろうと思います。

 その際に、すべてがトップダウンかボトムアップかと画然と分かれるわけではないんですけれども、少なくとも国が一方的に示すというものではないんだろうと。じゃ、そうでないとすれば、例えば、そのやり方の1つとして、おっしゃった研究者コミュニティのご意見というのを十分聞くと。逆に言うと、それ抜きでは振興は進まないということもあるんだろうと思います。それを支えていくということも含めて、ここで議論をするということではないかなと思います。

 それからもう一つは、予算との関連でどうするかということだったんですけれども、これはどちらとも、まあ、予算を目的とするということもあるでしょうし、もっとさらにそれを広く大きくとらえて、さまざまな施策に結びつけていくということもあるでしょう。言葉を変えますと、ここでの議論を踏まえて、もし予算に活用するということであれば、そういうことが結果的にあるということはあり得ると思いますし、24年度の要求も含めてですね。ですけど、もちろんそれだけを目的に議論をしていただくということでは決してないということかなと思います。若干抽象的なお答えかもしれませんが、以上でございます。

【平野主査】

 よろしいでしょうか。ここの委員会は、私は、そもそもの重要な考え方の基本を打ち出していただければなと思っております。もしもうまくそれでリンクするならばという前提ですけれども、これはまた研究費部会等でそれが反映ができるならば、ボトムアップ型としてはできていくのではないかと考えます。

 それから、今、谷口委員がおっしゃったように、全く今、社会が求めていないことであっても当然やるべきだと思っています。将来、社会に何らかの形で役に立つことがあるということであるというのは必要でありますが、とはいえ、そればかりでいける時代でもないことも事実でありまして、これは研究者として、自分の首を締めないように、しかし、きちっとアウトリーチができるような体制だけは常に持ってなきゃいけないなとは思いながら、悩みどころであります。

 よろしいでしょうか。どうぞ。

【家委員】

 すみません、少し補足させていただきます。こういう質問をしたのは、一方の制度的なものとしては、研究振興上でいろいろな問題があるわけですね。例えば、研究者のキャリアパスの問題とか、それから、研究支援者の問題とか、あるいは研究成果の発信のステージとしての学術誌の戦略性の問題とか、そういうものは議論すればいろいろ議論できるんですけれども、そう短期間に答えが出るものではありません。一方において、コミュニティの自主性を重んじて知を結集するという仕組みとしては、科研費の枠組みでは、かつて新プログラムなどがあって、あれは非常にいいところと悪いところとあったと思うんです。そういう反省の上に立って、何か新しい仕組みをここで考えていくといういき方もあるかなと思ったものですから述べました。

【平野主査】

 ありがとうございます。柘植委員。

【柘植委員】

 柘植でございます。大変おくれて申しわけありません。先ほどの一連の議論で、特に谷口委員がおっしゃった話、いわゆる社会との合意形成という面が十分かとの視点が、私は必要だと思います。考え方の整理として、私は発言したいのですが、先ほどの研究者の自由な発想に基づくという話と重ねて、参考資料2のほうは、説明が終わっているでしょうか。参考資料2の総合科学技術会議の当面の科学技術政策の運営について説明があったんですか。

【田中学術企画室長】

 まだです。

【平野主査】

 基本的にその前までです。

【柘植委員】

 ああ、そうですか。実は、先ほどの谷口委員のご発言を、参考資料2の総合科学技術会議が何を考えているかということを重ねると、社会との合意形成の接点が見出せるのではないかということで、今、話し始めたんですが。話を続けると、参考資料2の7ページでは、平成24年度に向けた取組として、重点化して推進する課題に3点あって、復興・再生、災害からの安全性向上に対応する話、グリーンイノベーション、ライフイノベーションを打ち出しています。これはどちらかというと社会価値をつくるということの重点ですが、その下に、これらを支える基盤である基礎研究及び人材育成の強化が打ち出されています。

 ここで私が総合科学技術会議とも会話したときに、この基礎研究はどちらですか、すなわち、その上に書かれた復興・再生、こういう社会価値化をつくる研究も基礎研究が必要だし、こういう社会価値化とは別に、全く自由な発想の基礎研究を指しているのかというと聞きました。総合科学技術会議としては、後者の狭義の基礎研究を意味しますとの回答でした。すなわち、社会価値化に向けた基礎研究ではなくて、研究者の自由な発想に基づく基礎研究であります。それでは、その次の人材育成はどうなのかと聞きました。人材育成は、自由な発想に基づく基礎研究を支える人材の育成を指すというふうに文脈上読めてしまう。総合科学技術会議の回答は「いや、違う。ここで言う人材育成は、この上に記載の3つの大きな社会価値化を生み出す目的基礎研究も、それから、最終的に社会価値化にしてくれる人材も含めて、すべての人材スペクトルを考えている」とのこと。これは非常に文脈上混乱しますねと、こんな会話がありました。

 したがって、くどくど申し上げましたけれども、やはり谷口委員がおっしゃった、研究者の自由な発想に基づく学術研究の確保というのを、やはり総合科学技術会議は第4期基本計画に向けて、しっかり確保してくださいということを明確にすることが、本学術分科会の突破口と思います。

 一方では、やはり目的基礎研究というものも、学術振興上の立派な活動であり、社会価値化のための目的基礎研究は、学術研究の大事な研究であるとの主張も大切です。研究者の自由な発想ではないかもしれませんが、社会の課題を与えられた後の研究者の自由な発想というのはあるわけです。そのカテゴリーの目的基礎研究も、私は社会との共有化というか、コンセンサスをつくる際の整理に非常に役に立つのではないかと思います。以上です。

【平野主査】

 ありがとうございます。どうぞ。

【樺山委員】

 よろしいですか。この文章全体を拝見いたしまして、いろいろ読み方が可能だとは思うんですが、基本的にこれは学術分科会というよりも、学術を前提にした議論ですので、今まで皆さん方おっしゃってきたように、いわば研究者の自主性、もしくは多様性を前提としている、このことは譲れないと。ただ、にもかかわらず、実はそれだけでもって事柄が進むわけではないんだぞという宣言だというふうに読めると。1つは他方で、にもかかわらず戦略的な視点を持った学術研究の振興を図ることも重要であって、それとの間でどのような折り合いがつけられるのかということについては、具体的に考えてみようではないかということが1つ。

 それから、この文章にも2ページ目にありますけれども、国の政策や社会的課題に基づく課題ではなくてといっていますが、でも、国の政策はともかくとして、社会的課題のことを知らないで、自分たちは好きなことをやるんだぞというわけにはまいりませんので、当然社会的な課題を独創的な、あるいは自主的な研究の中でもってどのように受け取るかということについては、学術研究の中で責任を持って考えるんだぞということが2つ目。

 いま一つは、同時に、それを考えるための母体としての学術コミュニティというものがあるんだぞと。一人一人の研究者が、個人的に自覚したり自制したりするのではなくて、それ以上に学術コミュニティというものがあるんだぞと。それをどうやって決めることができるかなかなか難しいけれども、でもしかし、学術コミュニティの中でもって考えると。一人一人の研究者の自覚以上にコミュニティの問題だと。幾つかそれらの問題を、研究者の自主性、あるいは多様性の周辺に配置しているという文章だというふうに読めるなという感じがいたします。

 3つ申し上げましたけれども、事によるともう少しほかにあるのかもしれませんけれども、この文章としてはそういうふうに読んでほしいんだぞということを、世の中に対して宣言しているというふうに、私は理解いたしました。

【平野主査】

 ありがとうございます。わかりやすく説明をしていただいたかと思います。1-1の資料でいきますと、ここに要点を書いてくださっておりますので、ちょっと間のところでは、事務局から先ほど説明をしていただいたとおりの背景が1行ぐらいずつ、ここに大事なところが入っておったわけでありますが。前回のところで議論いただいた資料1-2ですが、資料1-2のところには、この文章全体に入れてくれてありますので、その部分がその中には当然背景として入っております。

 鈴木委員が危惧された資料1-1にいきますと、2行目のところが、場合によっては読み取り方を間違えると、懸念される方向にいくということです。ここについては要注意をしながら対応をすべきだし、今後もこの場の議論においては、基本としていきたいと理解をしております。この資料1というのが残るものですから、誤解のないようにもう数行加えていって、先ほど樺山委員がおっしゃってくれたような形で、社会への要請に伴う戦略というのか、これは言葉が非常に難しいんですね。大学では戦略というのがよくありませんでして、常に戦略というのはちょっと意味が違うということになっていたんですが、ただ、たまたま戦略というのがあちこちで使われていますので、それを背景に踏まえた上で、少しここに誤解のない私どもの共通用語を加えたいとおもいます。

 それから、あともう一つは、今の社会で課題となっている問題について、研究者は目を離さず、そこの視点を逃さないで対応していけるところはしていく必要がありますよということです。さらに、コミュニティを大切にし、そのコミュニティからの意見を重視しながら、学術の振興を進めていく、振興を図らなければいけないんだ、というふうに全体の筋として、この委員会では見ていきたいと考えますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 資料1-2と1-1は特に少し短くしていただいたものですから、ちょっと注意をしないと文脈が飛んでしまうところがありますので、資料については修正をというより、説明を加えていただくというのでいかがかと思いますが、事務局、どうでしょうか。

【田中学術企画室長】

 資料1-1、今日のご議論も踏まえて、さらに肉付けをしたいと思っております。先ほど説明させていただきましたように、資料1-1の1の審議経過報告でいえば、審議経過報告そのものをかなり要約している部分がございますので、趣旨については加えていきたいと思います。

 ここで1点補足させていただきます。先ほどより、「戦略的」という言葉につきましては、冒頭説明したとおり、あるいは今までの議論の中で、どのようなものかについてだいぶご議論をいただいたかと思いますが、「課題」という言葉についての補足でございます。これまでの議論を伺っておりますと、「課題」という言葉につきまして、いわゆる政策課題というとらえ方と、それから、課題設定型という場合の課題に対置する形での学問振興上の課題というとらえ方と、2点のとらえ方が交差しているかなという気がいたします。事務局といたしましては、学術振興上の重要な課題と申しますものは、資料1-4で紹介させていただきました戦略的な取組の意味合い、研究者の自主性と多様性を尊重しつつ、その研究者の方々の知を結集するために、向かうべき旗印といいますか、方向性といいますか、これは国の政策に基づくものではなく、学術コミュニティの自主的な議論に基づいて、学術の多様性を図るためにも、学術コミュニティの新たな形成も含めた向かうべき方向性、あるいは、必要なものという意味で使用しております。前回、研究スタイルや研究ターゲットという形で、いわゆる研究に求められる手法的なものも含めて提示させていただいたところでございます。

 そうした中で、課題につきましては、政策的な課題ではなく、先ほど説明させていただきましたような、学問的な要請、あるいは学術コミュニティの要請に基づいて、学術の発展に必要な研究の手法、あるいは新たな学術コミュニティの形成も含めた研究領域、そのようなイメージで考えていたところでございます。できればそのような課題の部分のとらえ方につきましても、この機会にご意見、ご議論をいただけるとありがたいと考えております。以上でございます。

【平野主査】

 ありがとうございます。基本的なところは、今、議論いただいたところをもとにしながら、もう一つ課題という問題について議論したいと思います。この課題については、前の委員会でも議論があったかと思いますが、これは個別の分野やプロジェクトそのものではないと理解しております。こういう理解をまずもとにしていくということでありますが、これについてよろしいでしょうか。

 ちょっと前回のときに、私があれっと思ったのは、少し絞りすぎた分野や、課題的なものが出てきたものですから、これはここでやることよりは、またあればその次ではないかと思ったところがありますが、その問題ではなくて、どういうような学術振興上のやり方といいますか、考え方があるか。そこにおける手法と今、言われましたが、その問題について、ここで検討するということでよろしいでしょうか。

 それでは、その点について何かご意見がありましたら、ぜひお伺いしたいと思います。よろしく。

【谷口主査代理】

 すみません、なかなか原則と現実というのが、いつも悩ましい状況になるんですけれども、概算要求とかいうものを視野に入れた議論を、先ほど家委員がおっしゃったように、数回の中で取りまとめていくということになると、現実論で議論するしかないという考えは、あくまで方向性のひとつとしてあると思うんですね。学術がなぜ重要かとかいう、そういう問題は置いといて、極論を申しますと、とにかくいい案をまとめるというあり方も1つあろうと思うんです。

 一方では、やはりこういう国難と言ってもいいほどの重要な時期に、はじめに学術ありきで、果たしていいのかという根本的な議論もあろうかとは思うんです。その辺をどこで収束させながら、現実的な対応を考えていくかということが重要かと思うんですが、後者の立場で、あえて申しますと、先ほどの1人のご意見の中にも集約されていると思うんですけれども、大学というところは一体何をするところだと。やはりこれは遅かれ早かれ、かなり問題が顕在化してくるのではないかということを、私の杞憂ならいいんですけれども、感じるわけです。やっぱりこれから高い経済成長も望めない、そのためには科学技術で何とか克服しなきゃいけないとかという流れがあり、一方では大災害や不景気などが続くことによって、やがて社会の不満が蓄積したりすることによってじわじわっと困難な時期がやってくるということを、私なんかは考えるわけです。

 そうしますと、やはりどこでどういうふうに優先的に予算をつければいいかという議論が必ず出てくるのではないかと。そういうようなことを考えていくと、じゃあ大学って一体何なのだと。学術研究とは一体何なのだと。ほんとうに役に立っているのかと。結局、大学の自主性とか、学問の自由とか言っているのは学者の勝手な論理で、好き勝手なことをやって国民の税金を無駄遣いして、それで大学の自主性をうたうというのは何事だという、そういう見方って出てくる可能性はあるのではないかと思います。そして、こんな大きな災害があっても大学は一体何をしてくれたんだという意見などもあるかもしれません。もちろん誤解などもあるでしょうし、実際に個別的には多くの方々がいろいろな対応はなさっているし、私はその方々に私はものすごく敬意を表するものでありますが、全体的にどう受け止められていつのか、今一度、考えるべきではないかと思います。

 そのときに、私たちが、いえ、学問の自由って大切なんですと、なぜかというとこうなんですということを、ほんとうに社会に向かって、例えば、何とかテレビというところに向かってみんなに訴えるようなことができるかどうかという、そこはやっぱり考えておかないと、基本的にはお城の外堀や内堀あたりが埋められているような印象を私は受けるんですね。やっぱり先生方もお考えになっているように、大学というのはそれなりの価値があって、私たちは身を粉にして働いているわけですが、それは社会のために働いているんで、そこはよく理解をしてもらわないと、学術の多様性や自主性ということを内向きにいくら議論をしても、なかなかこれからの我々が迎えるであろう時代に、厳しい状況にあるのではないかということだけは、私は申し上げたいと思うんです。

 それを視野に入れて、なおかつ運営費交付金も含めた大学の自主性や学問の自由がなぜ大切かということをきちんと議論をした中で、実際の対応のあり方。戦略的と申し上げてもいいんですか、やはりより基礎研究や学者の自主性を重んじた研究のあり方というのを、新しい概算要求のようなところに生かしていくかという現実の議論をすることは、非常に大切なんじゃないかと思いますけれども。

【平野主査】

 ありがとうございます。どうぞ。

【北川科学官】

 私も話を戻すつもりはないんですけれども、谷口先生のおっしゃったことに関連してなんですが、多くの大学の先生は、こんなに運営費交付金を減らされると自分の研究ができないと言っちゃうからこんなことになっちゃうわけで、運営費交付金というのは、基本原則は人材育成費だと思うんです。大学の一番の使命は――まあ、ここで言うことでもないですが、教育なので。ですから、国民に向かって、これ以上減らされると、これまで戦後ずっとしっかりと高等教育がやってきた人材育成ができなくなると言わないとだめだと思うんですが、ほとんどの教員はそう言わないで、自分の好き勝手な研究ができないと言ってしまうからこうなるわけです。

 先ほども言ったことなんですけれども、結局、競争的資金とか、こういう学術振興上の戦略的な課題、目標、プロジェクトも含めてですけれども、一種スパイスみたいなもので、しっかりとした人材育成が、要するに、足腰をしっかり鍛えた教育ができているというのが前提だと思うんです。ところが、今、例えば、40代、50代の人がイノベーション能力がないと、非常に社会から言われますよね。高度成長時代を支えた今の60代、70代の人はかなりあったと思うんですが、私も含めてですけれども、今の若い人にないのがイノベーション力で、やっぱり幅広い知識と、しっかりとした重厚な基礎学力といいますか、それがやっぱり今は。ゆとり教育も、やっぱり私は個人的には反対だったんですけれども、こういう現状になっていて。

 だから、もう一度ほんとうに小中高大の、全体の中でのグランドデザインなりフレームワークを考えた上で、ほんとうはこういう学術の基本的な問題、重要な課題を考えていかないと、前回の話は非常にいい話だったと思いますけれども、やっぱり震災があって、もう一度原点に戻って、これまで文科省がやってきた学術上の政策も踏まえて、ほんとうは考え直さないといけない時期にあるんじゃないかなと思います。多分、予算とかいろいろなことが関係しているんだろうとは思うんですけれども。

【平野主査】

 わかりました。できればここの委員会で、先ほどのそもそものところにちょっと絞りながらいきたいと思います。よくご理解いただいていますように、文部科学省のところで、このもとになっております科学技術・学術審議会においては、人材の育成も含めて分科会がありますので、前回お願いをしましたように、関連の課題のところについては、事務局からほかの委員会の資料も、こちらに必要に応じて出していただくということをしながら、それは参考にしていきたい。私、今、北川科学官がおっしゃったことは最も重要なことだと思っております。それが学術振興の基盤であるというのは、全く変わりません。

 尊重した上でありますが、そういう中において、私どもが研究という立場で見たところの学術研究の振興の中における課題、今までの問題点を含めて、あるいは、社会が要請するものについて、コミュニティからこういうようなものではないかというのがあれば、それはまたコミュニティにお尋ねしてもいいと思いますが、少なくとも手法等において検討すべきことがあったら、ここで絞りながら提案していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

【家委員】

  よろしいでしょうか。この議論を進める上で、先ほどから、戦略的という言葉とか、課題という言葉をどうとらえるかというような議論で、それで深まると思うんですけれども、もう一つ、自発的なコミュニティからの知の結集の動きということなんですけれども、実はコミュニティとは何かというのは結構難しい問題で、例えば、鈴木先生の高エネルギーのように、コミュニティが常に将来計画を議論するような、ある種かなり成熟したコミュニティもあるし、かなりばらばらでコミュニティの体をなしていない分野もあるわけです。ある程度コミュニティの自発性に任せると言ってしまえば、この委員会は楽になるんですけれども、果たしてそれだけでうまくいくかどうかというのは少し疑問があります。

 コミュニティというのは、やっぱり基本的な価値観を共有する集団でないとコミュニティにならないわけです。そこには、例えば前回も少しお話ししましたけれども、評価という問題とかそういうものが絡んで、下手をすると価値観の違うものはどんどんどんどん分かれて、家元制度みたいになってしまったりします。だけども、ボトムアップでコミュニティとして何が大事という議論をまとめていくためには、ほんとうに任せておいていいか、あるいは、何らかの誘導的なことが必要なのか。誘導的なことをやる場合に、どういうことがいいのかというのは、私にいいアイデアはないんですけれども、そんなこともちょっと思います。以上です。

 【平野主査】

 ありがとうございます。私が言ってはいけないかもしれないけれども、今、家委員のご発言は、まさにそういうようなところが、もしここで考えられるならば、ここの文章でいう戦略的な問題だと、理解をいたします。

【家委員】

 そのとおりだと思います。

【平野主査】

 コミュニティを無理につくってくれというわけではありませんが、ここの中でのある議論で、きっかけをつくってあるチームができるならば、これは細かい狭い分野の研究プログラムじゃなくて、社会的な課題に対応できる重要なここの役割じゃないか、こういう理解をしているわけです。

【家委員】

 賛成です。先般学術会議で、大型計画のいろいろなマスタープランを作成したときに、ああいうきっかけがあると、否応なしに議論が進むということもありますし、それから、先生がおっしゃった意味のコミュニティとしては、科研費の中では、かつての特定領域とか、今ああいう制度があって受け皿はあるので、そういうものを発展的にさせるという形でもいいのかなと思っております。

【平野主査】

 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【鈴木委員】

 コミュニティについてですが、日本に現存していないことは、ある分野、例えば我々の分野ですと素粒子・宇宙・天文・原子核などを、まとめて研究ロードマップの5年、10年、15年計画をつくり、プライオリティを決めて実施計画を立案し、それを3年ないし5年毎に国際評価を加えて見直しをする体制です。これを機会に、いろいろな分野でそういう体制をつくってはどうでしょうか。

 それからもう1点、先ほど谷口先生と北川先生の話に追加させていただきますが、世界に役立つ研究というと、すぐ世界は今、何を要求しているか、エネルギーやライフ等々と言いますが、社会に役に立つということは、先ほど皆さん言ったように、人を教育すること、人材を育成することも重要な社会貢献と思います。もっと大きい声で言ったほうがよいのではないでしょうか。

【平野主査】

 ありがとうございます。よくわかります。はい、どうぞ。

【郷委員】

 私も、今まで研究のことが主眼になると、教育という視点が抜けていたと思うんです。大学は、研究はやらなくても、教育は絶対やらなくてはいけない組織ですから、これからの戦略も、教育、どういう人を育てるか、その視点を、一度しっかり立ててみる必要はあるんじゃないか。自分たちの研究というところからではない、将来、次の世代がどう育ってほしいかという視点をぜひどこかに入れて、この戦略を考える必要があるのではないかと思います。

 そのときに、学会とか、コミュニティというのを超えた何かがないと。今の学会は、それなりの歴史を背負っていますけれども、学会がなくなるということはあまりないわけですね。新しい学会ができると、また別のグループが類似の学会をつくるという、非常に狭い意味の利害があるという感じを持っています。学会から出てくることが教育、これからの人材養成とかであれば大変いいと思うんですが。教育を考えることは、大事なことではないかと申し上げます。

【平野主査】

 どうぞ。

【深見委員】

 先ほど、大学は何をするところかというところのお話だったんですけれども、やっぱり私も私学ということもあって、研究するところと同時に教育をするところという意識は非常に高く持っています。そのときに、研究をする人材というところにばかり目が向きがちなんじゃないかと思うんです。やはり日本を支えてきたのは、中流の底力と言ったら何なんですけれども、先ほど北川先生もおっしゃいましたけれども、全体的な社会の教育の層の厚みというものが、やっぱり将来的な日本の基礎体力をつける。研究者とか、研究の人材育成はもちろん重要なんですけれども、いわゆる中堅層のきちっとしたことをやっていく能力というのがすごく重要だと思うんです。

 やっぱりそういうところの層もきちっと育てるという意識を、いろいろ大学によって、もちろんそういう目的を持っていると思うんですけれども、そういう視点を発信していくということが重要かなと思います。

 新しいコミュニティ、先ほど私もコミュニティということのとらえ方というのはなかなか難しかったんですけれども、いろいろな視点を持った若い世代が、流動的な接触をすることによって、新しいコミュニティができてくるわけですし、そういう意味でも、いろいろ人材を育てる、そして、その人材をどうやってまぜこぜにして新しい価値観を考えていくか。そういうふうな組織の構築というのが求められているのではないかなと考えます。

【平野主査】

 ありがとうございます。どうぞ。

【柘植委員】

 関連でよろしいですか。

【平野主査】

 どうぞ。

【柘植委員】

 実は私、科学技術・学術審議会の人材委員会の主査をしているもので、今の深見委員のおっしゃった話を補足と充足をしたいと思います。

 科学技術・学術審議会の人材委員会の第4次提言は、2年前にまとめて、総会にも報告いたし、公表しました。その狙いは、ちょうど内閣府が策定中の第4期科学技術基本計画に反映してもらうべく出しました。その科学技術関係人材の育成に関する第4次提言は、深見委員がおっしゃった視点でまとめております。すなわち、いわゆる知の源泉を創っていく人材から、最終的には社会価値化を創る人材まで、大きく分けると4つのタイプの人材像を描きました。この4つのタイプの人材それぞれを、きちっと育ててくださいと提言しました。さらにそれらを育てるための施策にも踏み込みまして、答申の結論には、「科学技術と教育とイノベーションを三位一体で推進することが必要だ」と結びました。

 この提言を本学術分科会と重ねて見たときに、やはり「人材」と郷委員がおっしゃった「教育」と重ねて、学術分科会の「教育」は、どこの範囲まで「教育」を考えているのかが見えるようにする必要があります。資料1-1の最初の3行は、研究者の自由な自主性と研究の多様性のこの振興を支えてくれる人材の教育と同時に、戦略的な視点という中に、社会価値化という目的を持つ、一方では、鈴木先生が言われている巨大科学という面での戦略もありますが、その両面の戦略的な視点を持った人材育成の振興をうたっています。すなわち、社会的な価値化を担う人材も育てるんだと、これを学術振興上の重要な課題に据えてくれるかどうかが論点です。このあたりの学術の捕まえ方を、社会は逆に学術側に聞きたいと思っています。郷委員がおっしゃった話は、そこまで踏み込まないと、本特別委員会は学術の世界だけで考えているのではないのと言われてしまうおそれがあると思います。

【佐藤科学官】

 1つ。

【平野主査】

 はい、どうぞ。

【佐藤科学官】

 まずちょっと基本的なことをお伺いしたいんですけれども、この文章を読む人はだれですか。

【平野主査】

 これは当然公表されますので、国民すべて読んでいただきたいという立場で考えるべきだと思いますが。それでいいですね、事務局。

【佐藤科学官】

 それならばということで申し上げたいと思うんですけれども、もうちょっと言葉を丁寧に書く必要があると思います。例えば、さっきから問題になっております「戦略的」もそうですけれども、例えば、研究者の自由な発想と言ってしまうと、多分普通の社会の人は、あいつら勝手なことをやっているととられかねないわけです。しかし、我々が自由な発想だと思っているものは、非常に強く社会的な、時代的な制約を受けているわけですから、やっぱりそういうこともきっちりと書いた上で、その上での自由な発想なんだということをちゃんと書いておかないといかんと思います。

 それから、もう一つ重要な言葉だと思うのは、多様性です。多様性を持ち出すと、議論を抜きにしていいものだと研究者コミュニティの中では議論するんですが、しかし、多様性が重要だという認識は、おそらく一般社会には、私はあまりないと思うんです。特にこれだけの効率化が言われる社会では、多様性は効率の敵ですから、あまりその言葉に説得力がない。なぜ多様性が重要かということから書いておかないと、理解が得られにくいのかなと思いますので、そういう点から、もうちょっと検討していただくとよいのではないかというご提案です。

【平野主査】

 ありがとうございます。私がかわって理解しているところでお話しいたしますと、先ほどお話をいたしましたように、前委員会で審議をされた継続部分のところから、ここで議論をすべきポイントとして出していただいたものですから、資料でいきますと1-4と、それからこれをあわせて見ていただくということが基本になります。そういうことで、これを委員会として、今、ご提案もありましたので、ここでご意見をいただいた内容を踏まえて、少し言葉の誤解がないように、この文章をあわせて検討していきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それで同時に、先ほど来皆様方からご意見を伺いますと、私個人的にも全く同感でありますが、今、柘植委員がおっしゃった広さ、狭さはありますけれども、この学術研究を通しながら、人材の育成も図るということを、ここの特別委員会においても、やはり訴えておく必要があるのかなと思いますが、これについていかがでしょうか。どうぞ。

【郷委員】

 私は、自由な発想とか多様性というのは、まさに教育、人間の教育そのものなんだと考えています。だから、研究じゃないんだと思うんです。自由な発想ができる人間を育てなければ、次の世代の世界はないわけですね。次々に環境も変われば、状況が変わっていく中で、力強く生きていける人を育てるというのは、まさに自由な研究をしているからできるわけで、その場に学生たちがいるから、自分たちもそれができるわけです。だから、多様性というのはゲノムの状況から明らかですけれども、みんな人は違うわけですから、みんな同じ研究をしろと言われてもそんなことはまずできない。非常に生物的な意味で、多様性と自由な発想というのは、教育と結びつけたら明らかなことです。それから、生物の進化から言えば、遺伝子が多様だから環境の変化に適応して生き残れてきたのです。そうやって生物は進化してきたわけで、そんなに難しいことではないのです。

 さっき申し上げた、教育と結びつけてというのは、私たちは次の時代の人類を育てる、研究も含めてですけれども、そういう立場にいるというところから書ければよいのではないか。むしろ科学技術だけではない、もっと広い視野からの発想が1つ要るのではないかということを、さっき申し上げたので、すみません。

【平野主査】

 ありがとうございます。どうぞ。

【鎌田委員】

 先ほどの佐藤科学官の、だれにあてた文章であるかという問題提起に関して、これは世間一般の人に読んでいただくということだったのですけれども、最も法律技術屋的な観点から、ちょっと違う意見をあえて申し上げるとすると、私が、資料1-4の前期の議論から資料1-1の文章になった流れを拝見していると、学術がいかにあるべきかという、文字どおりの学術の基本問題全体についての意見というよりも、学術研究の振興の具体的な方策を文部科学省として実施していく上でどうあるべきか、ということについての審議会としての意見を求めたことに対する回答を書いた文章として読むと、この1-1の1の、ある意味で一番議論になっています「研究者の自主性と研究の多様性の尊重を振興の前提・原則とするとともに」というのは、言い方は悪いですけれども、前置きでしかなくて、今後の振興策として、自主的な多様な研究について振興策を従来どおりとるけれども、それとあわせて1つの重点的に振興を図るべきものについて何らかの措置をとるべきであるという提言が、この3行の意味なんだろうという読み方ができると思うんです。

 ここで、「図ることの重要な課題として」という、この「課題」という字は取ったほうがいいと思います。後から出てくる「重要な課題」と、ここで言っている「課題」とは意味が明らかに違うんじゃないかと思うので、それが「重要である」とだけ言えば足りるように思います。そのときに、どうやって振興を図るか、どういうものについて振興を図るかというのがその下の3行の話で、それを研究分野、研究領域に着目した課題設定の仕方もあれば、研究推進体制の構築に着目した重点課題の設定の方式もありますよというのが、その下の3行ではないかなと理解しています。

 そのときに、重点的に振興を図るべき課題を選定していく方法といいますか、する際に配慮すべき事項が、1、2、3、4であるというふうな構成になっていると思います。結果的に、具体的にはどうするかというと、要は学術振興上の重要な課題というふうなものについて、重点的振興策をとりますよというのが、この矢印で書いてあるところの上の段であり、2つ目の黒ポツは、その課題を設定する方法は役所が決めるんじゃなくて、学術コミュニティ自身による議論によって課題を選定していくという方式をとりますという、こういう立て付けになっていると理解するんですけれども、必ずしもそれが一見してわかりやすい構造にはなっていないような気がします。

 それから、一般の人が見ると、先ほど来の議論でいくと、この矢印の1つ上の、「国の政策や社会的課題に基づく『課題』ではなく」というのは、現在の当面する政策的課題とか社会的要請に直接にこたえるというふうな決め方をするのは、今、ここの学術審議会に与えられた課題とは違うんですよという意味ではわかりやすいんですけれども、世間一般の人が見ると、社会的な課題や何かを一切意識しないことこそ学問だみたいな宣言をしているみたいにも読めますので、これは極端に言えば要らないと思います。「我が国の学術研究の学問的発展に必要な」ということがあればよくて、もっと上手に書けるなら工夫をした方がいいですけれども、ここで言っているのは、学術支援策であって、政策支援のための何とかじゃないということの理解を得たいという趣旨だろうと思います。

 それから、2つ目の黒ポツでは、「学術コミュニティの形成」と「学術コミュニティ自身」と言っているのですが、これらの学術コミュニティって、同じ概念ですかね。上のほうの「学術コミュニティの形成」というのは、新しい新学問領域をこれから生み出していくようなことも考えていくというような意味ですね。ところが、その下の「学術研究の発展を図るための学術コミュニティ自身による議論・検討」というのは、この重要な課題をどこが設定するかというのを学術コミュニティ自身によって議論しましょうよということですから、ここの下のほうの学術コミュニティというのは、かなり幅が広くて大きい存在を考えていて、役所じゃなくて研究者集団なんだというふうな意味なのかもしれないんだとすると、そこのところはもうちょっとわかりやすい表現にしたほうがいいかなというのが私の印象です。

 非常に純粋に世俗な、技術的な観点からの議論にしてしまって大変恐縮ですけれども、私がこれを拝見して思ったところはそのようなところでございます。

【平野主査】

 どうも。はい、どうぞ。

【佐藤科学官】

 すみません。私、まさにそういうことを申し上げたくて、この文章はだれが読むのかと聞いたんですけれども。

  やっぱり一番上の1の一番上の2行を読んでしまいますと、これは前提・原則なんだというのは、私も全然原則だとは思っているんですけれども、これを一般の人が前提・原則と読んでくれるかというところが果たしてそうなんだろうかという、そういう危惧があるという意味で、先ほどの意見を申し上げました。

【平野主査】

 どうも失礼をいたしました。

【佐藤科学官】

 ここも一応はやっぱり議論しないといけないのではないか。結論はそうなるんでしょうけれども。

【平野主査】

 どうぞ。

【谷口主査代理】

 今のご意見に関連してですけれども、先ほど北川委員がおっしゃったように、やはり戦後の日本が、これから何十年かたって新しい第3の開国を迎えるとも言われていますが、この間に文部省、文部科学省が支援していただいた大学のあり方、研究界のあり方というのは、非常に大きな実を結んだんだと思うんです。その中で、学術という、外国語にはなかなか翻訳しにくいすばらしい言葉があって、学術というのを国際語にしたらどうかと私なんかはふだんから言っているんですけれども、それは確かだと思うんです。しかしながら、一方でこれからの新しい時代に、どういうふうな学術を発展させればいいかというときに、今議論になっておりました、学術の本質を語ると、私の印象では、行き着くところは壮大な無駄の中に大きな意義がある、というところではないか、と思います。一見壮大な無駄と思われる研究の中からこそ新しい知が生まれる、無から有を生み出す、という学術の本質的な意味があり、それこそが明日のイノベーションに繋がり、国の文化や経済の発展に貢献するんだというところがあるんだと思うんです。

 それをどうやって広く説得させるかということは非常に難しい問題で、なかなかこれは簡単には社会等からの理解を得られにくいのではないか。申し上げるまでもありませんが、だからといって社会に迎合しようと言っているわけでは決してないんです。もうちょっと別の見方をすると、もう少し社会全般の人たち、国民の方々の支援を得やすいような、夢のあるようなあり方というのを考えるというのも、1つのあり方だと思うんです。

 要するに、一例を申し上げますとアメリカのNIHのファンディングなど参考になるかもしれません。ご存じかと思いますが、NIHのファンディングというのは、人の健康のためにということが基本ではありますが、実際にはそれを非常に広い視点から捉えることによって弾力的に運用し、例えばショウジョウバエの研究をやっている人もちゃんとサポートしている。そういうシステムをつくり上げているわけです。それは1つの例でありますけれども、今回、もちろん今まで培ってきた文部科学省のポリシーである科研費をしっかり確保するということは前提ではありますが、新しいこれからの時代に向けて、少し社会に夢を持ってもらうような研究というようなこともあり、科学者コミュニティがほんとうにしっかりしていれば、基本的にはボトムアップ型の新しい研究体制を構築できなくはないと思います。決してボスによる支配体制をつくるとか、そういうことは排除して、新しいコンソーシアムタイプの研究体制というのも考えられるのではないでしょうか。いわゆる戦略的な基礎研究の推進体制といってもいいのかも知れません。

 あくまで例えば、という話ですが、グリーンイノベーションを標榜したコンソーシアムとか、それから、ライフイノベーションを目指したコンソーシアムとかそういうのがあって、そのコンソーシアムというのは広くとらえることができるわけです。そこでは人文社会科学と医学、理工系の新しい融合研究なども考えられます。その中で、科学者コミュニティ、あるいは行政に携わる方々がしっかりとした信念を持っていれば、そこで学問の自由とか、自主性とか、多様性というのが保障される仕組みというのができるんだと思うんです。

 むろん、それはあくまで学術研究を更に発展させるための1つの戦略であって、むろん、学術の基本や原理原則を変えるものではあってはならないと思います。むろん、明日の知を生み出すためには壮大な無駄こそが大切なんだということは私の強い信念でもありますが、それだけを主張し続けるよりも、実際的に確保すべきことはしながら、新しい戦略を立てていくということも、それほど悪いことではないのではないかという気がするわけですけれどもね。問題は立て方次第によっては、学者の人たちのコミュニティがちゃんとしないと、おかしな修正になってしまうという可能性はありますが、やっぱりその中で、人文社会系と理工系の融合とか、私も意見の中でいろいろ書きましたけれども、新しい枠組みをつくっていくということは、これからの日本の科学技術の推進に大切なんだということを、やはり広くいろいろな方々に理解をしていただけるのではないか。そういう見方もできるんじゃないかと、私は思うんですけれどもね。

【平野主査】

 ありがとうございます。では、ちょっと短めに、どうぞ。

【北川科学官】

 同意見で。結局、先ほど郷先生がおっしゃったように、順不同の中からゼロを1にするか、最終的には社会に価値化できるような人材を育成できるような中での、それを担保した上の政策が必要で、今現在やられている競争的資金なり、ミッションオリエンテッドなプロジェクトはたくさんありますけれども、あれをずっとまだ続けると、非常に日本は将来危ないと思います。というのは、我々は非常に疲弊していて、その中でまともな人材育成の教育なんかできなくて、目の前の金を取ってくるなり、競争的資金のことしか頭になくなってきているわけです。だから、ほんとうに学術の政策、重要な課題の立て方は、もう一遍人材のことを考えながら、どうしたらいいかということを考える時期にきていると私は思います。

【平野主査】

 ありがとうございます。その点については、皆さん全部同意ですから、今後の議論に生かしていきたいと思います。

 基本的な立ち位置というのは、皆さんご理解いただけたかなと思いますので、次回に向けて少しわかりやすく整理をして、どなたが読んでいただいてもあまり誤解のないようにしたいと思います。どうも私ども、同じような仲間なものですから、多分発言の背景もある程度理解しながらいきますので、社会に向けてと言いながら、鎌田先生からご指摘いただいたように、通じないところが、誤解が生ずることが一番心配であります。

 そういう点では、例えば整理をするときに、今、わかりやすく1、2と資料1-1では書いていただいていますが、ここについては、今、ここでいう1の部分は前段ですよね、そもそもの背景ですので。それで、ここについては、先ほどの戦略的なというところが誤解のないようにつけ加えた上で、課題というのが今、ご指摘のあったように、とりようによっては2つあります。1つは、研究そのものの具体のテーマと、もう一つは、あり方についての問題点といいますか、その2つが課題というような意味でとられるおそれもありますので、振興を図ることも重要であるとしながら、前段に背景をいって、この点において、以下のような背景を勘案することが必要であるということで1、2になったのが、例えば1、2、3というふうに述べて、次のページのところでは誤解のないように、我が国の学術研究の学問的背景、発展にというふうに修正したいと思います。

 それから、もう一つは、中段のところのコミュニティというのは、これは学術領域。私はコミュニティと言いましたが、背景の誤解がないように修正をしたうえで、あらかじめ皆さんに次回までに資料をお送りして、それをもとにしながら、次に一歩進んでいきたいと考えております。

 ちょっと時間がかかりますが、共通的な認識を持つことが最も必要だと思います。司会がうまくなかったんですが、それを踏まえながら、次回、できれば社会的な背景、あるいは学術のいうコミュニティからのみでなく、私どもが何かの体制等の構築で問題があれば反省の上で、あるいは新たにつくる必要があるものがあれば、それを具体に提案をいただきながら検討していきたいと思っております。ぜひ次回までに、またこの間のようにご意見を寄せていただいて、そして事務局でそれをまた整理しておいていただいて、議論を進めていきたいと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。どうもありがとうございます。

 ちょっと時間が1、2分遅れるかもしれません。あとその他について、事務局から報告をしていただきます。よろしく。

【田中学術企画室長】

 失礼いたします。参考資料を3点つけております。東日本大震災関係のものでございます。簡潔に説明をさせていただきます。

 まず、参考資料1でございますが、これは本年3月に、科研費の特別研究促進費によりまして、東大の地震研等の研究者の方々に、巨大地震、あるいは津波の発生メカニズムの解明につきまして交付をしたというものでございます。

 参考資料2につきましては、総合科学技術会議で5月に取りまとめました、当面の科学技術政策の運営についてというものでございます。第4期科学技術基本計画の再検討に当たっての視点をまとめたものでございます。その中で、3ページ、再検討における視点というところでございます。大震災の社会・経済への影響を踏まえて、第4期科学技術基本計画の再検討を8月までに行うとされているところでございます。その下でございますが、その上で、復興、再生並びに災害からの安全性の向上への対応を、グリーンイノベーション、ライフイノベーションの2大イノベーションと並んで重点化の柱とするということなどが掲げられております。

 また4ページでございますが、基礎研究及び人材育成の強化につきましては、引き続き強化をしていくということと、さらに優れた研究者を我が国に引きつける、魅力ある研究環境の整備、あるいは設備を含む研究環境及び基盤の早期再生について、具体的な推進方策を明らかにするとされているところでございます。この視点を踏まえて、8月までに第4期科学技術基本計画の再検討が行われる予定でございます。

 そして、参考資料3につきましては、東日本大震災復興構想会議で、5月10日にまとめました復興構想7原則でございます。この7原則などを踏まえまして、今後5月に論点整理、6月に提言の取りまとめを行うこととされているところでございます。このような状況を踏まえまして、5月31日の科学技術・学術審議会の総会におきましては、第4期基本計画とともに、震災復興につきましても議論・検討が行われる予定と聞いているところでございます。震災関係のご報告につきましては、以上でございます。

【平野主査】

 ありがとうございました。

 それでは、本日の会議の終わりに当たりまして、今後のスケジュールについて、事務局よりご説明をお願いします。

【田中学術企画室長】

 失礼いたします。次回以降の日程につきましては、資料3で配付をさせていただいております。次回の本委員会につきましては、6月17日金曜日、14時から16時に文部科学省3階の講堂にて開催することを予定しております。また、本日の資料につきましては、お手元にございます封筒にお名前をご記入の上、机上に置いていただければ郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上でございます。

【平野主査】

 委員会がたて込んでおりますが、申しわけありません。よろしくお願い申し上げます。時間も追っていますが、せっかく局長が駆けつけてくれていますので、どうぞ何かありましたら。

【倉持研究振興局長】

 申し訳ありません、お時間のないところありがとうございます。ちょっと遅れて参りましたけれども、今日のご議論を伺っておりました。我々、政策をやっている側からしますと、やはり自主性、多様性が肝であるということはもちろん認識をしておりまして、基本的には科研費という制度を充実させて、それでそういう部分をきちんとサポートできるようにしていく。今回、基金化ということもできましたし、さらに充実を図っていくことはやらなければいけないと思っておりますけれども、他方、そういう競争的資金というのは、どちらかというと個人を相手に、それをサポートするという構想であります。やはり今、もう少し科学も進んできて、チームとか、今ご議論もありましたけれども、組織力を使うとか、まさにマスタープランであるとか、そういう議論も始まっているところでございまして、実は、そこに対するサポートという議論については、まだ十分にできていないのではないかなという問題意識は、私自身にはあります。

 ただそこについては、個人の研究者の方が自由な発想でいろいろおやりになることの戦略性、これは個人にお任せするわけですけれども、組織なり、チームなり、何がしかまとまった形でやるものについての戦略性というのは非常に重要なことだと思います。戦略というからには、今がどうだということではなくて、何を目指して、どうやって進んでいくのかという点で、要するに共通意識を持ってやっていくという部分を、どういうふうに形成していったらいいのかという部分でありますし、それをきっちりと議論していただいて、どうやってサポートしていったらいいのか。その辺は我々行政をしている者として、非常に関心がございます。

 あと、学術振興の課題と言えば、やはり唯我独尊になっていないかとか、学術のシアターがどういうふうに変化してきていて、それをこれからどういうふうになっていこうとしているのかについての語りかけが、学術以外の人たちに対する働きかけが、まだまだ弱いのではないか。その辺を強化していく必要があるんじゃないか。その辺のご議論が深まっていくと大変ありがたいなと思っております。

 今回、たくさん宿題をいただきましたので、事務局として、その辺をどういうふうに整理をして、また次にご議論いただけるかということを考えていきたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【平野主査】

 どうもありがとうございました。少し時間がたちましたが、また次回、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。これで終わります。

 

 ── 了 ──

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