第6期研究費部会(第6回) 議事録

1.日時

平成24年4月16日(月曜日)13時~15時

2.場所

東海大学校友会館「望星の間」

3.議題

  1. 科学研究費助成事業(科研費)の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

平野部会長、甲斐委員、鎌田委員、小谷委員、小林委員、鈴木委員、田代委員、岡田委員、北岡委員、金田委員、小安委員、鈴村委員、谷口委員、野崎委員、家委員

文部科学省

吉田研究振興局長、渡邊学術研究助成課長、長澤学術基盤整備室長、岸本学術研究助成課企画室長、他関係官

5.議事録

(1)科学研究費助成事業(科研費)の在り方について

事務局より、資料2の1「前回(第5回)における意見概要」及び資料2の2「科学研究費助成事業(科研費)の在り方について(審議のまとめその2)に向けた論点メモ」に基づき説明があった後、審議が行われた。

【平野部会長】
時間になりましたので、あとお二人の委員が出席の予定ではございますが、第6回の研究費部会を始めさせていただきます。よろしくお願いします。
それでは、審議を始めたいと思います。本日は、この夏のところで審議のまとめをすることにしておりますが、引き続き研究ネットワークの強化支援策、新学術領域研究における重複応募制限の見直し等の各論点について、資料に基づき議論を進めていきたいと思っております。
資料2の2ですが、審議のまとめ、今後の科研費助成の在り方の論点においては大きく5つに分かれております。1番目は科研費そのものの役割でありますので、後の方とも関係はいたしますが、そもそもというところで御意見いただき、さらに、前から議論しております基金化の拡大、それから、新学術領域研究の見直しについて今日は特にかなり話を集中的にしていったほうがいいだろう。その次に4番目はこの後の議題になっておりますので、特に1、2及び3で関連するものとして5番目、若手の育成というところで議論いただきたいと思っております。
それではまず、1番目、科研費が果たす役割についてということで、特に役割意義、それから後にも関係する基金化の対象種目の拡大の部分、そもそもの点について、ここの記述以外に特に視点を置くべきところを議論していただきたいと思います。御自由にどうぞ。

【金田委員】
1番の3つ目の段落に予算の点で、要するに国立大学法人の運営費交付金が減少しているという認識で議論がなされている。そのとおりだと思うのですが、それを踏まえて科研費の在り方や方向性について議論するということはもちろん必要ですが、一方で、高等教育機関、研究機関が、特に大学がどういう形であるべきなのかという議論が全然なくて、予算の面だけで議論をするというのは少し一方的なのではないかと。つまり、あるべき大学像のような議論が一方にあって、それと科研費がどのような関わりであるべきかという議論が必要ではないかと思います。

【小安委員】
私も、この段落だけを読むと運営費交付金が減っている分を科研費で賄えるというようにも読めてしまい、本来、人材育成に大学側はどういう役割を果たすべきなのか。本来運営費交付金でやるべきことを競争的資金でやれと言われているように読めて、かなり違和感を感じます。今のお話のように、大学がどういう役割を果たすべきかということをきちんと考えた上でバランスを考えないといけないと思います。

【平野部会長】
ここでも再三そういう基盤的経費と競争的資金というお話がありましたが、今後取りまとめをする際には、そもそも大学はというところから始め、基盤的経費を確保しつつということに触れながら、その中で競争的資金としての科研費はいかにあるべきかという書き方とすべきではないかという御意見と理解いたしますが、よろしいでしょうか。

【甲斐委員】
私もお二人の意見に賛成ですけれども、書きぶりを連携して書いてほしくないと思います。減っているところは確保しつつ、その中で科研費はそれを埋めているという流れそのものがおかしいと思います。そう書いてしまったら、運営費交付金が下がったものは科研費で補っている、運営費交付金はゼロになっても、科研費さえ上げていけば大丈夫だと主張しているかのようにも読めてしまうので、一緒の段落にすることは適当でないと思います。

【平野部会長】
分かりました。運営費交付金についてまずそもそもで書き、段を変えて新たに競争的資金の在り方として科研費の在り方をきちっと述べていくという。

【甲斐委員】
科研費が上がっていることは、運営費交付金が下がっている分を補わなくてはいけないから上げているのではなく、日本の学術を振興するためにもっと必要だから上げているのだと書くべきで、運営費交付金が下がっているからというのは不要だと思います。

【岸本企画室長】
状況認識として運営費交付金という基盤的な部分がやせ細っているということは事実ですので、論点ペーパーの方には書かせていただいておりますけれども、まとめの記述については配慮させていただきます。

【平野部会長】
この部会でもよく出ておるところでありますので、留意して書くということにいたします。

【鈴村委員】
「研究費の助成を通じた若手研究者の養成」というところで確認したい点があります。この表現自体に異論はないのですが、先ほどの御説明の5ページから6ページにかけて、点線で囲ってある部分がありますが、これは1ページに書かれている若手研究者の養成の一部には、こういうことが含まれているという理解でしょうか。

【岸本企画室長】
人材委員会では、公的研究費は本来的には研究プロジェクトに対して研究成果を上げるために配分されるものですが、それを通じてもともと間接的に人材養成に資するものであったということを再確認した上で、今後それを明確化する方法として科研費を含めた公的研究費の評価に反映することなどを具体的に御提言されているものと受けとめております。

【鈴村委員】
もう少し踏み込んでお尋ねします。点線部分で書かれていることは、助成を受けた人たちに必ずしも研究成果を要求していないように読めます。経験を通じたラーニングによって、研究者としての基盤がもう少し拡大していくこと自体をプロモートすると書かれているように読めますが、それでいいのだろうかということを教えていただきたかったわけです。
点線部分には、研究計画において研究成果を具体的に求めるニュアンスは入っていないのではないですか。もしそうだとすれば、研究助成という観点からは問題だというべきではないでしょうか。

【甲斐委員】
私も違和感を感じたのですけれども、これは人材委員会で話し合われた内容のまとめですよね。でも、やはり若手を育成するというのは科研費の中心的な役割ではないと思うのです。科研費は、やはり研究成果を上げて学術の発展を最初に持っていって、その過程で若手が育っていくということに資したという書き方はいいのですが、そちらを明確化、強調して、若手をどれだけ育てたかとか、その人のキャリアパスがよかったから研究費はうまく使われたというのを中心に持っていくというのは違うと思います。やはり、大学とか大学院、あるいは運営費交付金で人材を育成するべきであって、先ほどの議論とも関係しますが、科研費が運営費交付金とか大学の示す役割の方も全て担うのだと聞こえるのです。ですから、人材委員会の中心的な話の結果がこうであったのか少々疑問に思うのですけれども、書き方を注意したほうがよろしいのではないかと思います。

【岸本企画室長】
人材委員会は、主に学術研究を支える人材の育成に関することを議論する場でございますので、あらゆる手段で若手の人材育成に資することを求めるということでございまして、このまとめにも、3のところで「各事業の目的や特性に応じて対応可能なものから」という書きぶりになっておりますので、そもそも例えば科研費制度の趣旨からして対応不可能ということであれば、別に対応を強制的に求められるものではありませんので、その点はここの研究費部会の場で御議論いただいて、そういうことを評価に反映させるべきでないとか、あるいは何らかの対応をするにしてもまとめの中に注意的に何かを書くということはあるかと思います。

【平野部会長】
基本的には、この科研費のところからしますと、科研費を通して学術の成果を上げ、それを通しながら若手の育成をする。そこに必要な若手のキャリアアップのためのエフォートとして、全て100パーセント科研費だけの研究だけに絞ることはないと。エフォートの中に一部含めても結構ですというのがこの人材委員会の中での本旨であり、かつ、人を育ててもらいたいということが裏に流れているところです。

【小安委員】
WPIのことを例に挙げられたのが、もう一つ私にとっては違和感がある部分です。WPIの場合には、科学研究費補助金のようなスキームではなく、研究費ではない予算ですね。そこで雇用されている方がいろいろなところへ行って、拠点の目的のために研究するというのは筋が通っていると思います。今の科研費の枠組みとは違った枠組みのことを並列で話して、例に挙げるのはミスリーディングなので注意していただいたほうがいいと思います。

【家委員】
対外的に発表する文書ではもう少し記述に気をつけていただけると思いますけれども、一番最初のパラグラフで、先ほど人材育成の話がありましたけれども、「研究費の助成を通じた」の後に挙がっている3点は、学術研究の振興が最初に来るべきです。それで、2番目の研究基盤整備に関しましても、本来は運営費交付金など概算要求でやるべきで、それを科研費が仕方ないから肩代わりしている面も現実としてありますけれども、それが科研費が果たすべき役割だと言われると、かなりの違和感を感じるのではないかと思いました。

【平野部会長】
ごもっともな指摘だと思いますので、学術研究の振興がまず第一に来るよう書き直しをしてまとめに入っていきたいと考えております。

【北岡委員】
出だしの科学技術予算案の主な増額を望めないという状況の中で、科研費が果たす役割ということを訴えて、今現在第4期科学技術基本計画で少なくとも30パーセントの採択率というのは基盤研究BやC、挑戦的萌芽研究等で実現できて、さらにこれを上位の研究費まで全部30パーセントでいくことを目指すというのは既にここでは了解され、そこを目指すということになったのでしょうか。

【平野部会長】
私が以前、部会長を務めていたころは厳しい状況で、皆さんの協力で科研費まず2000億、採択率30パーセントを目指そうということで来たことは事実でありますが、事務局としては今どうお考えか教えていただきたいということです。

【渡邊学術研究助成課長】
政府の科学技術基本計画の中に採択率30パーセントというのが挙がっており、科研費もその方向で目指してきた。今お話がありましたように、少額の種目についてはほぼ30パーセントを達成しているので、残っているのが大きい種目だけになっている。
一方、採択率30パーセントを達成すればもう十分ということではなくて、配分額がそもそも少ないというようなお話もずっと出ており、研究費部会では、実際に必要な額が三、四千億円ぐらいという数字も一度出したことがございますので、そういう意味では、ここでは採択率だけ挙げていますけれども、採択率の確保とともに配分額を引き上げていく。それと、種目の設定の仕方で基盤Cは3~5年でいい、500万となっていますけれども、そういうやり方がいいのか、各年で平均何百万円×好きな年数を選ぶといった方法がいいのか、そういったことも以前出ておりました。目指すものがまだまだあるということは我々も十分認識しておるところでございます。

【谷口委員】
書き出しという点では、やはり先ほどから大勢の委員の方がおっしゃっているように、そもそも科研費とはどうあるべきか。日本の学術が急速なグローバル化や大学の法人化とかいろいろな荒波の中で学術研究の在り方そのものが問われている状況になっていると多くの人が感じていると思うのです。そこをとらえて、その中で科研費がなぜ重要かという。その科研費が社会にも貢献する重要な研究費だということも含め、やはりそもそも論を少し練り上げたほうがよろしいかと思います。その中から各論の在り方が見えてくるので、これを抜きにして、後の議論で重複制限どうしましょうという議論になると非常に生産的でないという感じがいたします。
2ページ目の絵は私たちにとってはよく見慣れたピラミッド型ですが、外部のいろいろなところで評価を受けるときに、科研費の重要性という文脈の中でどう説得するかということを、我々自身、研究費部会としてしっかりとかみしめたほうがいいという気がします。例えば、一番上に国際的に評価の高い研究の推進というのが挙がっていますけれども、ここに行き着くためには特別推進研究でないと行き着かないと言っているわけではないということは明らかではありますが、一体どういう形でこの絵がかかれているかということを一般の人が見ると少しわかりにくいのではないかという気がします。
もう少し具体的なことを申しますと、たくさんの種目があるということに関して、以前総合科学技術会議からの意見もあったかと思いますけれども、そういうものも含めて、これからどのように対応していくのか。先ほど申し上げた、学術のこれからの在り方、科研費がどうあるべきかという文脈の中でこの仕組みをより深化させていくといいますか、改良するべきところは改良するという、そういう文脈で議論をしておいたほうがいいのではないかという気もいたしました。

【平野部会長】
各期ごとに科研費の在り方等々については議論を進めており、それぞれで取りまとめをしておるのですが、震災復興が昨年あったというところを除けば、私が知る限り、余り大きく変わってないのではないかと思います。それは最も重要であるからゆえでありますが、ぜひ次回、科研費とはというところをここ二、三回、各期で議論してまとめたのがありますから、そういうところを踏まえて、皆さん方にきちっとした書き出しの部分の意識を共有する資料として入れていただくほうがよいのではないかと。それを踏まえて後の方に行くべきですが、本日それをやっていると、多分もう何回かやらなくてはならないだろうと思いますので、今、皆さんからいただいた意見については、これまで2、3期の頭の部分をちょっとペーストし、今の御意見を聞いた上で事務局にて入れ込んでいただければ一番いいのですが、そうでなかったら、前の資料も同時に参考資料として皆さんにあらかじめお配りしていただけませんか。次回のときには、そもそものところをきちんと対応できるような書き出しにするとようにしたいのですが、よろしいでしょうか。
本当はここを全部詰めた後で2、3といきたいのでありますが、本日は2、3、4とありますし、4番目の点については今日準備もしてくださっておりますので、4番目の方については少し報告をいただいた上で議論を進めていきたいと思っております。
時間が限られておりますけれども、2番目の基金化の拡大という点についてはこれもこれまでよく議論をしてきたところですが、どうでしょうか。

【甲斐委員】
基金化について頑張っていただいていて、次々と基金化に移行していることは大変ありがたいと思っております。その上で、2ページ目の「検討の方向性」の中でお伺いしたいことがございます。「その一方」の後、「現下の厳しい財政状況を考えると、後年度に配分する予定の研究費全額を予め確保しなくても弾力的な研究費の使用ができるような基金の仕組みを」考えるべきではないかとありますが、具体的にはどんな仕組みを考えていらっしゃるのですか。

【岸本企画室長】
これまでの基金の考え方というのが、複数年の研究計画に必要な研究費を全て最初に積んでおいて、学術研究助成基金という基金が日本学術振興会にあって、そちらから毎年必要な分を配分していくということになっているわけですけれども、ここで申し上げている考え方というのは、全ての研究費を積まなくても出せるという基金、出せる仕組みというのを考えて、それが基金であるというふうに考えれば、それほど最初に全部お金をとっておかなくてもその他の種目にどんどん前倒しとか後ろ倒しといった使用の仕方を認めることができるような、そういう形での基金化というのを進めていくことができるのではないかということでございます。

【甲斐委員】
基金として学術振興会に渡さなくても、もし学術振興会に翌年度の基金分はゼロだとしても、一応セミ基金化で次の年は再来年度分まで必要ですと文科省に言うと出るということでしょうか。

【岡本企画室長補佐】
今、23年度には3種目が基金化されていて、それは全額基金化されているわけです。ですから、最長ですと5年間の予算を全て積んでいます。23年度に既に積んでいるわけです。24年度に500万円までを基金化する2種目については、500万円までではありますけれども、やはり最後までというか、研究期間全部積んでいるわけですね。これによって交付決定も単年度ではなくて最終年度まで行うというのが今の科研費になっているわけですけれども、これだと最後の年まで積んでいるわけですから、当然莫大な大きな研究費が必要になってくる。それは振興会の方に基金ができておりますので、そこにあるわけですけれども、今ここで書いてあるような仕組みというのは、一番重要なのは、基金にすることによって繰り越しが自由にできますということ。それと、今まで手続を踏んで繰り越しができていましたけれども、前倒しというのは全くできなかったわけですね。前倒しができるというのは非常に重要なところで、前倒しということは翌年度の話で、3年度、4年度目、先の話というのはちょっと置いておくことができるわけですね。ですから、既に3種目、23年度に基金化した分の次年度以降に使う分というのはかなりの額がありますので、そういうものを使って、例えば前倒しをする分であるとか、そういうものが確保できるのであれば、最後の年度まで全て基金として予算をあらかじめ積んでいなくても基金と同じような研究費の使い方ができるということがあるのではないかということで、そういう今の基金の形とはちょっと違う形ですが、それほど大きな予算が必要のない基金というものができないかということです。

【甲斐委員】
よくわからない。埋蔵金にならないですかね。

【鎌田委員】
基金化をしても、実際に基金化された部分を活用するのは、前倒しが一番大きいのだと思うのですけれども、全額一遍に全部の研究費について前倒しということはあり得ないわけですから、実際に積んでおかなきゃいけない金額というのは100パーセントではない。統計的に見て必要な額がバッファーとして積んであればそれで十分足りるので、それを常に100パーセント積んでおけというと基金化するためにかかる予算が非常に膨大であるから基金化の範囲は狭くなるかとか、あるいは基金化自体が予算に対する負担が大き過ぎるということで消極的な作用をもたらす危険性もありますので、こういう形で一定の割合を積んでおけばそれで足りるという方向を目指すのが現実的であり、かつ、妥当ではないかと考えます。

【平野部会長】
事務局が言われているのは、正に鎌田委員が今言われたことだというふうに私は理解しておりましたが、それでよろしいですね。埋蔵金でも何でもないのです。もともとあるところから配分するということですから。

【家委員】
質問ですけれども、平成24年度の場合には、やはり予算が足りないから全額ではなくて500万円分を基金化したわけですね。その方式と翌年分をとにかく基金化するという方式とどっちが予算的にはかかるんですか。

【渡邊学術研究助成課長】
まず、24年度に500万円の部分だけを基金化したというのは、予算が足りないからというよりも、財政当局との折衝の過程の中で、23年度には少額の500万円という、そこでの繰り越し手続の煩わしさ、そういったものを勘案して基金化に踏み切ったのであるから、それについて十分な検証がされていないのだけれども、その中で種目を拡大するに当たって、基盤Bとか若手Aの全額を数千万円基金化するというのではなくて、500万円だけということで折り合いましょうということでございました。それに伴って、全額基金化するよりも少ない予算で、23年度に比べて24年度は減額予算になったわけですけれども、その中でもどうにか2種目の追加ができたということがございます。
それで、ここで言っておりますあらかじめ確保しなくてもいい基金の仕組みというのは、ちょうど去年の今ごろ、むしろ小林先生の方から、そういう基金の考え方というのは可能ですかという御質問をいただきまして、そのとき我々は、果たして財政当局との間でそういった概念の基金ですね、基金というのは基本的に後年度分をしっかり積むものだという概念でそれまで走っておりましたので、これは後年度分を積まない基金という概念ですから概念が変わってくる。それが可能かどうかということで、よく見通しがつきませんというお話をさせていただきました。
一方において、今のような部分基金というのもできた。それで財政状況などもなかなか厳しいという中で、研究者側が実現したいのは研究費を複数年度で使えるということと、前倒しをすることで研究を効率的に行うということなので、いま一度そういうような仕組みについても幅広い中で考え方が変えられるのであったら行政として変えるべきではないかというような意味でございます。

【小安委員】
今の御説明は、もしそういうやり方が認められるのであれば、全ての種目を基金化するときに追い風になる、そういうことをお考えになっているという理解でよろしいのですか。

【渡邊学術研究助成課長】
そうですね。おっしゃるとおりで、これまでは1種目基金化するに当たって少し予算の増が要ったということですけれども、そうでないような基金化の仕方であれば、考えようによっては全部一気に基金化する、全種目基金化するということも可能になる。こういう仕組みが認められれば一気に全部を基金化するということも可能かなとは思っております。

【小谷委員】
全ての種目が基金化されると大変すばらしいと思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたいです。基金化のメリットとして、前倒しができるということのほかに、複数年度契約が可能だということがあります。複数年度契約をした場合に、途中で中断することはないと思うのですが、例えば何らかのことで中断した、取りやめになった場合、若しくは財政状況が極端に変わった場合に、後年度の契約が不履行になる可能性は必ずしもないわけではありません。そういう場合の責任の所在についてはどう考えるのでしょうか。

【渡邊学術研究助成課長】
これは今でもそうですけれども、今複数年度の研究について交付決定いたしますので、普通の科研費よりは数年間の権利として確保されるという中で、何らかの例えば研究に問題があったということで廃止せざるを得ないということも今でもございます。そういう際には、そこで何らかのリース契約などが複数年で行われたということであれば、それはその研究者なり、廃止された原因がどこにあるかというのはありますけれども、研究者サイドなり大学の方でどうにかしていただかなければならないということは今でも生じるかと思います。配分側で全て補償するということではないということかと思っております。

【田代委員】
先ほどの小林先生の御質問と連動しますけれども、全部基金化というところを目指される、そうしますと500万円を上限として基金化拡大したところの上限が外れることになるということでしょうか。
それから、このフレーズのところ、下へいきますと、配分額で見るとその対象は4割にとどまっていると。これは、ちょっと不満があるから4割にとどまっているというふうに考えているのですか。これを外れると結局10割になるということですか。

【渡邊学術研究助成課長】
採択件数9割というとほとんど基金化されたということに見えますけれども、大きい額のものが基金になっていないので額としては4割にしかなっていないというふうに言えるのではないかという意味です。
あとは全面基金化がそもそもほんとうに概念的に認められるかどうかというのは実現可能性が高いかというと必ずしもそうではないのでありますけれども、希望的なことも含めて申し上げております。仮にこういった形の新たな基金の仕組みというのが認められれば、500万円という上限というのは当然なくして、例えば特別推進研究が5億円ということであれば5億円については全部基金に一度入れたものの中から出す、全額が使いやすくなる、そういったものに当然したいというふうには考えております。

【平野部会長】
この点についてまだ御意見あるだろうとは思いますが、部会長として皆さん方の意見を拝聴しておりますと、柔軟な、かつ責任を持ってでありますが、基金の使用というのは非常に重要であろうと思っておりますので、この部会としては弾力的な研究費の使用ができるよう、基金の仕組みを行政側としてぜひお考えいただきたいという要望のまとめです。こう思いますが、よろしいでしょうか。この部会としてはそのような要望を出し、かつ、委員みんなが外部の人に働きかけていくということでいかがでしょうか。

【鈴木委員】
私は個人的にそもそも基金化がなぜ必要かというのが全くわからなくて、我々の分野では毎年毎年お金が足りなくて、余すなんていうことはまずないんですよね。それで、生命系の先生にどうして必要ですかと聞いたら、いや、生命系では先の見通しが立たない。そうするといつどうなるかわからないから基金化してもらったほうがいいと言うのです。前倒しなんて言われたら、我々はすぐ前倒しでやりますけれども、もともとの基金化の発想は、先がわからないから先に繰り越すということで研究が安心してできるという思想だったものですから、それを余り便利便利といいますと、私はやっぱりおかしいと思うのは、5年だったら5年でもって年次計画を練って、ここまでにこういう研究をやって、こういうものを装置をつくって、こうやってというのをつくるわけですよね。それを外してしまったら、本当に研究はうまくいくのでしょうか。最初からいい加減な計画を出して、そしてお金がついたから使おうとなってしまうと、余りいい方向にいかない点もあるので、その点だけはちょっと。

【平野部会長】
当然それは皆さん御理解の上だと私も信じておりますので、信じた上での発言でありますが、科学研究費そもそもの在り方を先ほど議論いただきましたような、それに基づいてのことであります。その中で基金化をしたところにおいての、その基金化の意味について理解し、かつ、その基金化については今後もできる限り柔軟性を持って運用ができるように拡大の努力をしたいということであります。

【渡邊学術研究助成課長】
1点、基金化のメリットをもう一つ追加させていただきますけれども、余る、余らないというお話がありましたが、単年度予算で研究を進めているときには、年度末というのが会計年度の締めであるというようなことで、実際上、年度末にはお金が使えない。2月ぐらいから大体締めなければいけない。なぜならば、そこで仮に3月の末で余った場合には返さなければならない。返すのは、やはりいただいたお金としてはもったいないということがあるので、使うのだったら2月初めにはもう使ってくださいということ。それと、2月に発注したのだけれども、3月に納品されなかったというようなときは、補助金は年度の縛りがありますと、入らなかったのだから返還しなさいというようなことがあって、それを恐れるが余り、もっと早くに購入の締め切りをする。そういったようなことが現場ではどうしても起きていた。基金化になりますと、そういったことが全く関係なくなりますので、正にそこのメリットが実際やってみますと非常に大きいと。年度末の物品購入というのが自由にできるようになったということもあります。科研費もまだ十分な額がいっていないというお話を先ほどもさせていただきましたので、必ずしも余らないよという方もたくさんいらっしゃるかと思うのですけれども、使い勝手としてはそういった面も含めてプラスになっているかと思っています。

【平野部会長】
どうもありがとうございます。
新学術領域研究等についても今日御意見をいただこうと思ったんですが、時間が押してきていますので、申し訳ありません、これについては次回に集中的にやらせていただいて、今日、出席をしていただいておりますので、次の議題に移りたいと思います。前回、研究成果公開促進費の改善について、学術情報基盤作業部会のまとめに基づき御議論をいただきましたけれども、本日はそれを受けまして、配分機関である学振において具体的な改善事項について検討をいただいてきました。その結果を報告いただき、議論をしてもらいたいと思います。
それでは、学振の学術システム研究センターの土屋専門研究員より説明をお願いします。

【土屋専門研究員】
資料3に基づいて御説明させていただきたいと思います。
資料3は、さらに参考の1、2、3、4とついております。その参考の4にあるものが、前回こちらで御議論いただいた、もともとは学術情報基盤作業部会の方から出てきた基本的な提案、問題提起です。それを受けまして、学術システム研究センターの中のタスクフォースで検討した結果を御報告したいと思います。時間の問題がありますので簡潔に、資料3の1枚目のところを中心に御説明したいと思います。
参考1と2というのは、基本的には公募要領などが出るときにこのようなイメージになるかということで書いてありますので、要点は資料3の方にまとめているとお考えください。

まず、番号を振ってないんですけれども、重要な点の第一としては、これまでの種目名自体を「学術定期刊行物」から「国際情報発信強化」と変えようということです。これは、特に現在多くの自然科学系を中心にして社会科学、人文科学でも非常に多くの雑誌が電子ジャーナルという形態をとってきて、電子ジャーナルの中には毎月届くといった形態を持っていないものもあるので、それを配慮して、この助成事業の趣旨である国際情報発信強化というところを全面に出した形の名称にすべきではないかというのが第一の結論です。
その後、具体的に申し上げますと、(1)にありますように、まず、支援する、助成する対象というのを今までは学術誌のタイトルごとに支援するという形をとっていたのですけれども、タイトルに対する支援ということではなくて、それをどのようにして国際情報発信力をつけていくかという取組を行っている、その取組に対する支援と助成というふうに考えたいということです。
その結果、実は今まで対象の経費というのが、そこにありますように直接出版費、欧文校閲費、海外レフェリー郵送料に限定されていたわけですけれども、国際情報発信力の強化につながるものであれば、基本的にここに例示されているように非常に広い範囲の取組のための経費に対して助成できるようにしたいというのが第二のポイントということです。
ただ、今までの刊行費助成ですと、基本的に1年ごとに一体刊行のためにどのぐらいかかるのかということを見て、それを補助するというような性格が強かったわけですけれども、このような取組に対する助成というふうに考えたときには、もうちょっと長い時間取り組んでいただかないと成果が出ないんじゃないかということから、原則5年間を事業期間として設定して申請していただくという形にしたほうがいいのではないかと考えました。もちろん5年間放っておくというわけにはまいりませんので、どのような形でそれぞれ中間地点及び完了地点において評価するかという計画を立てていただいて、それを審査する方向に持っていくこととしています。
ですから、今までどおり毎年同じ雑誌を出しますという形の申請ではなくて、その雑誌、雑誌でない、電子ジャーナルなり、いろいろなそういう国際情報発信に資する学術情報発信の取組のいろいろな新しい試みをしていただきたい。ただ、もちろん既に今いろいろな形で実現していて、十分意味のある、あるいは成果を生んでいるような取組。実際には、例えば商業出版社などが行っているものの中で、今まで学会では取り組めなかったようなものを取り入れるといった点も含めて評価の対象にしていきたいということです。
そういうふうに考えた結果、応募区分としてAとBというふうに、AとBでは全然わからないので、ここだけちょっと参考1をごらんいただきたいんですけれども、5年間の事業として2000万未満と2000万以上というのを1つ大きな枠組みとしたいということです。5年で100万以上というのはどのぐらい意味があるかわかりませんけれども、2000万というところを区切りとして、それより大きいものと小さいものという取組に分けていきたい。特にBの役割というのは、現在まで比較的長期にわたって学術定期刊行物の助成で刊行を継続してきた雑誌等も考慮して、その今までの助成金額というのを考慮した上でこの金額を設定したということです。
しかしながら、ただ、これで一体何をやるのかということについて、今回の改善の趣旨を考えてみますと、やはり重要なポイントというのを1つ出さなければならないということで、オープンアクセス刊行支援というカテゴリーを設けました。現在、各学会において既に学術雑誌の分野では、いわゆる商業出版社、あるいは有力学会誌といったところが、国際的有力学会といったところの出す雑誌が市場でいわば飽和している部分が結構あります。その中で現在、オープンアクセス刊行というものが現実性のある刊行形態として取り上げられつつあるということを考えまして、現在の段階で我が国における国際情報発信力の強化という観点をとった場合には、このカテゴリーというのはまだ十分押していくことができるのではないかということで、設けることにいたました。金額的には、この5年間2000万円以上ということになります。
そうなりますと、当然審査体制、審査基準といったことについても検討しなきゃいけないということで、幾つかの点については検討の結果が出ていますので、それを御報告させていただきます。

第一点としては、やはり現在、この上位カテゴリーの研究成果公開促進費という枠の中で一律にその他の図書の刊行とデータベース事業といったものと一緒に審査するのはなかなか難しいだろうということで、この内容の審査のために特に国際情報発信強化小委員会というのを設けて、特にこの種目のために審査体制をつくるべきだろうということです。
もう一点といたしましては、今まで、やはりこの研究成果公開促進費の枠の中では各分野の先生方に委員として学術的な水準を中心にした審査をしていただいていましたが、この国際情報発信強化という観点では、単に学術的な水準ということだけではなくて、実際にそれが現代の国際的な学術出版、学術情報流通の世界の中で通用するかどうかということについての検討が必要だろうということで、実際に出版社等で刊行業務を経験した担当者等を、出版社等というのは学術出版、学会出版も含めてですが、担当者を6名程度ということで、その10名強の人数でバランスをとって委員になっていただいて審査するという形が必要ではないだろうかということです。特に金額の多いものについてはヒアリングが必要かということと、それから5年という長目の事業期間を設定していますので、中間評価の実施というのは必要だろうということです。
特に今回このような枠組みで設定したということの、必ずしも明示的ではないですけれども、一つのポイントとしましては、このような形で我が国における学術情報発信、論文そのものはいろいろなところに投稿されているので既に国際的な発信はしているのですが、日本の学術コミュニティを基盤とした学術情報発信力の強化のためには、やはり複数学会等が連携して取り組むという方向性も考えられるではないかということで、そういうものについても配慮すべきではないかということで、参考資料1の(1)の「対象」の3つのポツの最初のところに挙げられています。
以上を検討結果として御報告いたします。

【平野部会長】
ただいまの御説明について御質疑、御意見をいただきたいと思います。

【鈴村委員】
私は以前、研究成果公開促進費の審査に関わっていた経験があります。また、国際査読雑誌を新たに立ち上げて、離陸させることに苦心した経験をしましたので、その経験を背景にして、ひとつお尋ねしたいことがあります。
ただいまの御説明から私が受けた印象は、新規雑誌を立ち上げるときに公的助成を与えるが、離陸後5年間で自立的な運営に移行してくださいというのが、制度設計のモデルになっているのではないかということです。私の印象の適否は簡単にお答えいただくとして、私の意見としては、確かに新規雑誌の離陸の助成は非常に重要ですが、ソリッドな学術雑誌の継続的な出版を困難にする事情は、離陸時に限られるわけではありません。日本から国際的な情報発信を継続して行うためには、雑誌に掲載する論文の英文校閲を制度化すること、雑誌の機関講読と個人購読の双方にわたり、国際的な経験と安定した流通ネットワークを持つ出版社と継続的な契約関係を結んでいくことが必要です。雑誌に公刊する論文のレフェリーイングと最終的な採択権を含めて、編集権限は日本の学会が保有することは当然として、出版と流通に関する経験の固まりのような出版社と契約することの重要性は否定できない現実だと思います。
それだけに、予め5年間の公的助成しか保障されないという条件の下で出版契約に関する交渉に臨むことは、なかなかの難事ではないかと私には懸念されます。その辺りはタスクフォースの議論ではどのように考えられているのでしょうか。

【土屋専門研究員】
第1点に関しましては、今の説明ですと新規雑誌創刊といったようなイメージがとられたかもしれません。必ずしもそういうことはございません。今まではいろいろなことをやりたいと思いながらも、今までの科研費の枠では直接印刷費等の刊行にとどまっていたので、新しい試みを使えなかったという部分をむしろ救済したいと。ですから、今まであるタイトルで、いわば学術的なステータスが確立しているものがより強く発信力強化につながるような取組をしたいというときに使えるような枠になればいいというのが一つの意図であったということです。
後者の部分に関しましては、幾つか論点はあると思いますけれども、5年では交渉力が低くなってしまうのではないかということについては、年限を区切らないわけにはいかないと。むしろ、今までは実質的に5年内約ということが実施されたケースは必ずしも多くなく、むしろ単年度という理解の方が学会側にもそれを請け負う出版社、印刷会社の側にも強かったということがあるので、これも外して、むしろ5年ぐらいの幅は持たせるということで、むしろ交渉力の強化につながることを期待したということはあります。

【鈴村委員】
簡単に確認させていただくとして、既に継続的に編集・出版されているソリッドな雑誌をサポートすることは、タスクフォースの議論の軌道から外れているわけではないのですね。

【土屋専門研究員】
むしろ、そのソリッドな雑誌がさらに強くなるための仕組みにしたいと。そのためには特に最初(1)のところで申し上げたように、対象経費をこれまでの直接出版費、欧文校閲費、海外レフェリー郵送料と、今どき郵送料というのも何だなと思ういますけれども、そういうものに限るというのはともかく外さなければならないのではないかということです。

【谷口委員】
不勉強なので理解していないのかもしれませんが、資料3参考4があります。先ほどから議論になっております電子ジャーナルとか国際情報発信強化とかいろいろキーワードが出てまいりましたけれども、一番右下にある「有力なジャーナルの育成」と書いておられるのは、例えば生命科学なら生命科学の分野での国際誌の発刊とかそういうことを意味しているわけですか。

【土屋専門研究員】
今申し上げたように、新規に出すということに限定することではなくて、もちろんそういうことです。日本の学会が基盤となって出されているジャーナル、ないし、その他の電子的な学術成果刊行のプラットフォームというのは国際的なステータスを持つということです。

【谷口委員】
今まで送信費はずっと継続しておったと思うのですが、具体的に日本発の研究成果が外に発信されて、実際にこういう効果があったというのは、この促進費で支援されたものというのはどういうものがあるのでしょうか。私は少なくとも余りそういうのに出会う機会がないものですからよくわからないのですけれども。

【土屋専門研究員】
これは回答が非常に難しくて、理屈が通る回答が全く反対の方向に2つあります。1つは、それなりの成果を上げてきたということを示す証拠というのは全然ないわけではない。例えば、現在、資料3の2枚目のところに現在のカテゴリー、左側に現行制度が挙げられていて、1、2、3とあって、この2というのが長い歴史の中で比較的最近つくられた特定欧文総合誌ということで、これは明らかに今有力誌というのを出そうということから意図されたものであったわけです。実際に現在も1誌支援を受けて出していて、それなりの評価を得ています。しかしながら、それに対しては目ざましいいわゆるトップジャーナルかと言われると、関係者の方がいらっしゃると非常に言いにくいのですが、そこまではいかないと。ですから、ある意味ではこの制度自体は、何度も何度も制度改善をして努力してきたことは事実です。しかしながら、それなりの成果が上がってきたのも事実ですけれども、それが端から見て、確かにこれでその分野のトップジャーナルができたというようなことがあったかと言われるとないと言わざるを得ないということですので、非常にお役所的な言い方になるかもしれないですけれども、今まで一定の成果を上げているので、より一層の改善を必要とするということかなと。
ただし、これも多分前回のこちらの部会で指摘された点だと思うんですけれども、科学研究費のこの学術定期刊行物に関しては、10年以上前に早急な検討が必要であるという審議まとめが出ているのですが、全く検討されなかったということなので、まずはそのお約束を果たさなきゃいけないということで出てきたところに、ちょうどこの学術情報基盤作業部会の具体的な提案というのがあったので、それを受けてこちらからこの部会の方で検討いただいたというふうに理解しております。

【谷口委員】
科研費でこういうのをサポートするということに反対をするつもりはないのですが、もう少し何か有効な利用方法というのはないのかなという感じがしないでもないというのは正直なところですね。
大学の世界ランキングとかいろいろ言われていますけれども、あの中で学術の発信力がどうなっているかというところも問われていますよね。そういうものを分析しながら日本から国際的に発信をするのに何が問題で、何が足りなくて、どういうふうな連携が、例えば社会の一般的なパブリッシャーと連携をするとか、そういう文脈の中で科研費でどのようにサポートすると日本からの発信力がより強くなるかといったことを考えたらいいのではないかということを思うわけです。

【土屋専門研究員】
僣越な言い方になるかもしれませんが、正にそういうことが考えられる枠組みが必要だと。今までのは、たびたび申し上げるように、直接出版費中心の助成だったので、いろいろな試みを助成できなかったというのが実態なわけです。最低限それは何とかしなければいけないということが今回の改善の趣旨と御理解いただければと思います。

【小安委員】
どうやったら日本から発信力の強いものができるかというのは、おそらく学術会議でも随分議論されてきたのではないかと思います。学術会議の協力団体になるためには何か定期刊行物を発行しなくてはいけないという一文があったと思います。それによって非常にたくさんの雑誌が日本にできています。ある分野をまとめて、協力して重要な雑誌を出していくためには、そのあたりから考え直したほうがいいのではないかと思うこともありますが、いかがですか。

【谷口委員】
学術会議のことは私申しませんが、こういうサポートというのは基本的に重要だと思います。ただ、何をサポートするか、サポートされる側はどういうビジョンを持ってコミットするか、どういう人がいるかがすごく重要です。それがないのに仕組みだけつくって、事が動くというものではないと思います。
ですから、卑近な例を申しますと、生命科学の分野であれば、彼がエディターインチーフをやるとか、あるいは国際的にこういう連携をするとか、今までの『ネイチャー』などのジャーナルとどこが違うかといったビジョンを明確にするとか、そういうことが初めにあって、さらにサポートがあれば何かが動くということはありますが、そうでないといくら周りがいろいろ議論をしてもなかなか発展的なところには至らないという印象を非常に強くしております。欧文学説ジャーナルというのも、最近我々の分野でも非常にたくさん出つつありまして、みんな外国に先手をとられてしまう。だからどのように連携をするかとか、日本がどのように主張をするかという仕組みを考えていかないと、予算がいくら立ってもなかなか実質的な結果が伴わないという心配を持つわけです。

【土屋専門研究員】
御指摘のとおりだという認識で検討いたしましたが、議論しきれないところもあって、そこは学会なり関係する方々が知恵を出していく必要があるだろうと思いますので、実際には参考3という資料、これは一体今後どういう枠組みで進むのかについての量的なシミュレーションなわけですが、このシミュレーションは、必ずしも根拠のあるシミュレーションではなく、今、実は10年ぐらい前だと9億ぐらいあった予算枠が3億を切っている状況になっています。これは申請数自体が減っているということにもよるので、いろいろなよい提案というのが出ることによって初めてこの仕組みが生かせるだろうということなので、そういう意味で、ある意味では提案のしやすい枠組みにしたということです。

【鈴村委員】
学術会議が登録学会の申請を受理する要件の中に、レフェリー制度の定期刊行物を出しているということが入っていることは確かです。しかし、学術会議がそういう要件を課していることが、学会の側にレフェリー制度の定期刊行物を出版する誘因を造り出しているのかと言えば、私には現在の組織原則を前提とする限り、疑問服がつくように思います。
もう一点発言します。自然科学の研究者が日本発のジャーナルを作るという際には、『サイエンス』とか『ネイチャー』の日本版を…というイメージが必ず登場するようです。このようなトップジャーナルを、たとえ5年間の助成をコミットするにせよ、この程度の規模の助成で造り出すことが可能であるとは思いません。雑誌が成功していくために必要なコミットメントは、献身的に雑誌の離陸と安定飛行に貢献する編集長とスタッフを始めとして、他にもたくさんあります。余りアンリーズナブルなベリー・ベストをイメージして雑誌の助成制度を設計しようとすると、かえって制度のつくり方として間違う可能性があるのではないかと思います。
私は、ベリー・ベストじゃなくて、現状を改善するベターな制度をどう工夫して造り出していくかという程度にモデストに考えて、そのための制度改革を地道にやらないと、現実を動かす力にはならないのではないかという気がいたします。継続は力なりという表現がありますが、ささやかな努力を継続していく努力に力添えをする制度が造られることを期待しています。

【家委員】
鈴村先生がおっしゃったことは私も同感で、これをやったからといって、いきなり世界に冠たるジャーナルができるわけではないとは思いますが、一方において、分野によって状況は違うけれども、日本の学術刊行は非常に頑張っていたところをこれでしっかり支援していただくというのは非常にいい方向に行くんじゃないかと思います。今までのはある種惰性でいっていたところがあるので、これで新しい取組ということが強調されることによって協会の方も考えると思います。
テクニカルな公募のイメージというのが資料3の参考1にありましたので質問ですけれども、(4)の重複応募に関して、これは応募主体としては学協会になるかと思うんですけれども、一方で複数の学協会の連携を尊重するというような考え方があるようですけれども、そういう場合に、やはり応募主体としては幹事学会のようなところが応募することになるのかというのが一点と、もう一点は1つの学協会で2つ以上のタイトルのジャーナルを出している場合、それらを合わせた取組という形で応募することができるのかどうかということをお伺いしたいのです。

【土屋専門研究員】
今の2点は非常にテクニカルで、詳細にわたって検討していない点です。基本的にはこちらの部会で方向性を決めていただいた上で文部科学省から示された方式で要領をもう一回作文するということになるわけですけれども、我々ある程度考えていることとしては、複数学会の場合にどういう形態をとるかというのは、例えばとして議論したのは、別に法人格はなくとも構わないので、合同出版会という形で、代表者や経理がきちんとしていればいいだろうと考えています。それから、もう一点は、1つの学会で複数出しているときに合わせて申請することもあり得るだろうと考えています。

【家委員】
前者の合同出版局という考え方は非常によくて、実はそういう試みもあったのですが、新公益法人制度の下、出版に係る経理をどこでやるかという点が、任意団体の形では非常に難しいということが最近の状況としてわかっておりまして、なかなか一筋縄でいかないということだけコメントしておきます。

【土屋専門研究員】
それに関して、参考1の2ページ(7)の留意点で、事業開始までには決めてくださいという形にしてあります。これはある程度改善になっていると考えておりまして、今までは学術団体の会計ルールというのを基本的に無視して国の会計ルールをそのまま適用しなさいという形で進んでいたところを会計執行機関がちゃんとしたルールを持っているということに変えたということです。

【金田委員】
こういう方向をお考えくださっているというのは賛成ですけれども、その一方でちょっと配慮をお願いしたいと点がございます。それは、日本語で発信している日本の文化、その他に関わる研究成果の発信ですが、例えば日本語を勉強して日本の文化やいろいろなものを研究する方々というのは、日本に来れば、あるいはその電子ジャーナルには日本語の文献がたくさんあって、その研究がちゃんと集積しているというのが非常に重要な事実なんですね。そうすると、保守的な言い方になって恐縮なんですが、従来行われてきた蓄積の発信が抑圧されるというか、うまく動かなくなるような形になるとよくないと思っておりまして、そういうの検討もしていただけたらありがたいと思います。

【土屋専門研究員】
その点に関しましては、学術情報基盤作業部会の議論の中でもかなり取り上げられた点です。今までは人文社会科学領域における和文中心のものに関する配慮として和文誌というカテゴリーがあったわけですけれども、それに対しても英文抄録をつけなさいということになっていました。ですから、そこを外すのは無茶な話なので、英文になっていることによっていろいろな人が見つけやすいということはあるということだと思いますから、例えば電子ジャーナルにするといった形で世界のどこからでもアクセス可能になるといった形で、和文で発表された内容というのがより広く、正にそれも国際発信ということの力を持つようになるのは望ましいというので、この種別2というのを設けて注記してあります。

(2)その他

事務局より、参考資料1「平成23年度科研費(補助金分・基金分)の配分について(第3回)」及び参考資料2「複数の科学研究費助成事業による共用設備の購入について(平成24年3月9日学術研究助成課長通知)」に基づき説明があった。特段の質疑はなし。

【平野部会長】
本日はどうもありがとうございました。それでは、また5月23日に議論いただきたいと思いますが、御意見がありましたら、ぜひ事務局にあらかじめお寄せいただきたいと思います。

―― 了 ――

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