第6期研究費部会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年2月24日(木曜日)10時~12時

2.場所

霞山会館「霞山の間」(東京都千代田区霞ヶ関3-2-1 霞が関コモンゲート西館37階)

3.議題

  1. 部会長及び部会長代理の選任について
  2. 議事運営等について
  3. 科学研究費補助金の一部基金化に伴う制度運用について
  4. 第6期研究費部会における検討課題について
  5. その他

4.出席者

委員

平野部会長、甲斐委員、鎌田委員、小谷委員、小林委員、佐藤委員、田代委員、
岡田委員、北岡委員、小安委員、鈴村委員、谷口委員、野崎委員、家委員

文部科学省

倉持研究振興局長、戸渡大臣官房審議官(研究振興局担当)、
永山振興企画課長、渡邊学術研究助成課長ほか関係官

オブザーバー

独立行政法人日本学術振興会 学術システム研究センター村上主任研究員、
小山内研究事業部長

5.議事録

(1)部会長及び部会長代理の選任について

 委員の互選により、平野委員が部会長として選出された。平野部会長によって、深見委員が部会長代理に指名された。

(2)議事運営等について

 事務局より、資料2-1から2-5に基づき説明があった後、「科学技術・学術審議会学術分科会研究費部会の公開の手続きについて」について、原案のとおり了承、決定された。

(3)科学研究費補助金の一部基金化に伴う制度運用について

 事務局より、資料3「科学研究費補助金の一部基金化に伴う制度運用について」及び資料5「基金化に伴う制度設計上のポイント及び制度改善について(案)」、日本学術振興会学術システム研究センター村上主任研究員より資料4「科学研究費補助金の基金化に向けた日本学術振興会・学術システム研究センター科研費WGでの検討状況」に基づき説明があった後、審議を行った。

【平野部会長】
 文部科学省及び日本学術振興会から資料の説明、検討状況の報告をしてもらったが、それらを踏まえ自由に意見をいただきたい。

【小安委員】
 前倒し使用に関して説明いただいたが、今回、基金化されると初年度に交付決定がなされて、その段階で交付申請書を一括して、例えば4年分なら4年分出すと思うが、その上で、例えば研究の進捗状況によってどうしてもある備品が必要になり、それがないと研究が前に進まないということになると、場合によっては次年度分を100%前倒ししてその備品を買いたいということが生じるかもしれない。交付申請書の段階ではわかっていないということが生じると思うが、それは柔軟に対応しようというのが、現在の文科省の考えというように理解していいか。

【渡邊学術研究助成課長】
 そのとおりである。

【岡田委員】
 随分と柔軟になって、非常にありがたいが、研究の中断というところで、今、我々の機関でもいろいろ議論して制度化しようとしているのは、いわゆるサバティカルな制度についてということがあり、例えば研究室や、研究所から出ていく場合と、ほかの大学、基本的には国内の大学から来てもらう場合と両方あるわけだが、その場合に科研費を大抵の人は持っていて、それが今の制度では3か月以上離れると、科研費を返還しなければならないということがあり、そのあたりがサバティカルな制度をうまく運用するところと、少しコンフリクトが出ることも考えられる。これからサバティカル制度もいろいろやっていこうというのは、科学技術・学術審議会でも言われていることだと思うが、そのあたりはうまく考えているのか。

【渡邊学術研究助成課長】
 まず基本的に科研費の場合、例えば申請していた職場を3か月離れたら廃止しなければならないということはない。
 研究者の身分が喪失するというようなことになれば、機関管理ができず、研究もできないということで廃止することはあるが、例えば大学に籍を置きつつ、しばらくアメリカに行くというようなことであっても、大学に籍があるという状態であれば、必ずしも中断というようなことはなく、大学でしっかり管理するのであれば、アメリカに行って一部の研究費を使うということも、可能であるというように、既に運用している。

【北岡委員】
 前倒し使用の件について、若手研究(B)あるいは基盤研究(C)で4年申請して、3年目に基盤研究(B)などに申請した事例があったとする。そうすると、いわゆる若手研究(B)や基盤研究(C)のお金は、その3年間で使い切れるということの提案だったのか。学振は50%ということで、制限をかけると言っていたが、本来、若手研究(B)や、その上位の研究費を充てて研究を発展させていくような状況の中で、基盤研究(C)や若手研究(B)に関して4年間の期間だったものが、3年で全て使い切るということを、提案されたと理解してよろしいか。

【渡邊学術研究助成課長】
 前倒し使用と前年度応募に関係することだと思うが、例えば4年で基盤研究(C)をやっているが、3年目の途中で前年度応募をして、当初予定されていた研究期間の4年が終わる前に基盤研究(B)に発展させる場合、今だと4年目の基盤研究(C)については交付されないことになる。ただし、もし基盤研究(B)が採択にならなかった場合は、基盤研究(C)で4年目をやる。受かれば4年目をやめて基盤研究(B)に移ることができる。今回はそれとは別に研究費の前倒し使用ができるということなので、例えば基盤研究(C)の4年目分をどんどん前倒しをして、ほとんど使い切るような形でさらに前年度応募をするということが可能になるのではないかというのが日本学術振興会の懸念だと思う。4年の研究費を3年でほぼ使い切って、さらに基盤研究(B)に移るということが結果としてはできるようになるわけだが、基盤研究(B)が不採択になれば逆に4年目にほとんど研究費がないというリスクを負うということなので、そういうふうにやる人というのは、余り出てこないのではないかというのが我々の考えであるが、結果として、今言ったようなことは起き得るというふうに考えている。

【北岡臨時委員】
 科研費の基盤研究(C)、挑戦的萌芽研究、若手研究(B)は500万円上限で30%採択という、非常に喜ばしい長年の悲願が達成できると思うが、この八百数十億の積算として、採択率を30%にしたときに各種目の平均の採択額は、幾らぐらいになると予想しているのか。

【渡邊学術研究助成課長】
 研究費部会の議論の中で、例えば同じ500万円の種目でも若手研究(B)と基盤研究(C)を比べると、若手研究(B)の方が、平均配分額が高くておかしいのではないか、逆転しているという矛盾が指摘されていた。今回の予算要求の中ではここを改善して、同じ採択率30%であるが、積算上、平均配分単価を基盤研究(C)については特に高めている。これまでは、いずれの研究種目も配分単価を抑えてきたということがあるが、今回、特に基盤研究(C)については若手研究(B)との再逆転を図ったところである。

【小安委員】
 1つ前の質問の答えで、結局、4年分の研究費を3年で使い切ってやることも許すという話だったが、若干懸念がある。最終的には全ての科研費を基金化したいというのが希望だと思うが、今回は基盤研究(C)と若手研究(B)と挑戦的萌芽研究だけの基金化を行うというところ、これが将来的に全ての研究種目に広がっていったときに、それでも今言ったような方針で、大丈夫なのだろうかと若干懸念を抱いている。そこまで検討された上での先ほどの答えなのか。

【渡邊学術研究助成課長】
 そこまでの検討というところまではいっていない。いろいろ懸念しだすと切りがないところだが、意図的に、悪用するといっては言葉が悪いが、変に利用するということは、余り想定できないのではないかと考えている。ただし、これから運用していく段階で思いもしないことが起きて、それが余りよくないだろうということになれば、その段階で規制を考えていきたい。

【佐藤委員】
 特に今回対象になった若い研究者は、最近、任期がついている人が多いと思う。そうすると、任期の残りが2年や3年という人は、4年分の計画というのは申請が認められるのか。

【渡邊学術研究助成課長】
 基本的にその方の身分がどうなるというのは、大学の方でもなかなか2年前、3年前からわからないので、とりあえず出してよいということだと思う。自分のところの任期がつなげるかどうかわからないから申請できないということはない。転勤する人もたくさんいるので、大学では、任期がなくなるから申請させないということはしていないというように理解している。

【鈴村委員】
 今日のこの議論の趣旨からするとやや付随的なところとして、従来、萌芽的・実験的研究に関しての研究成果報告書は要求していなかったが、今回、それも導入したいという話があった。念のためにそれについて聞きたいのだが、先ほど言っていた、実験的・萌芽的であるだけに成功しない場合もあるだろうが、さりながらそれはそれで提出してもらうという報告の趣旨、これはわからないではない。ただ、むしろ制度の目的は、実験的・萌芽的な研究がしっかりと羽ばたいてくれるようにということであって、そういう成功例について、その段階で研究成果報告書の提出を求められるということは、ある意味では、むしろ書きにくいことが多いだろうと思う。
 挑戦的・萌芽的な研究が成功したときにもっと大きなプロジェクトとして申請を行う場合においては、申請書類はその計画を評価する立場の人の目に触れるような形で書いていて、公開ではない、審査会のための資料として提出できる。しかし、もし、研究成果報告書を、成功したものについて今後こういうような研究をやりたいということで、しかしまだ現実にはこれからの問題だというものを、公開して不特定多数の人に見せるような趣旨で求められるとしたら、分野によっては多少戸惑いがあるだろうと懸念する。だから、そこの趣旨を少し教えてもらいたい。

【渡邊学術研究助成課長】
 まず研究成果報告書というのは公開を前提としている。5年なら5年の研究期間の最終報告ということで、研究の経過、概要、どう成果があったのかというのをまとめて書いてもらうという趣旨のものである。中には特許などの関係から書けない部分もあるということもあり、当然、自身の判断で書き方を工夫するということになるが、提出されたものは科研費データベースの中で、全て公表するという形にしている。

【鈴村委員】
 分野によっては、制度として、そういう形での研究成果報告書を求められるということが、今までのような実験的・萌芽的研究として大胆なことをして、成功したら次のステップにジャンプできるという、制度の意味を少し変えてしまうのではないかという懸念を持った。

【小谷委員】
 私も全く同じような危惧を持っている。まず挑戦的萌芽研究とは、他の研究費と異なる性質を持っていて、全く違うカテゴリーで考えられているわけだが、短期的に成果を求められると、研究が小粒になるのではないか。特に、事後に研究成果を報告しなければならないとなると、研究者は、できると分かっていることだけを研究するということにならないか、まずそれが1つの懸念である。また、逆に大きなことに挑戦したときに、萌芽的なアイデア段階の報告書が万人の目にさらされるとなると、研究者は熾烈な競争をしている中、なかなか書きにくいところもあるのではないかというのが2つめの懸念である。挑戦的萌芽研究という研究種目の趣旨に照らし合わせたときに、この2つの点で研究成果報告書を全ての人について提出させることが、社会の理解を得る方法であるか懸念を抱く。

【平野部会長】
 学振では何かこういう件で、検討委員会で議論されたことはあるか。

【村上主任研究員】
 今のような懸念が議論されたわけではないが、我々の議論の中では挑戦的萌芽研究に関しても、当然科研費の一種であるので、資金をもらった後の結果というのは、当然、何らかの形で報告すべきだろうということを考えて報告した次第である。

【小安委員】
 結局、研究成果報告書といっても、ある意味一番クリティカルなところを、その研究成果報告書に本当に書く必要があるか。例えば先ほどの議論にもあったが、特許に関連するようなところは、そこに書く義務はないのではないかと思う。なので、報告書の書きぶりはいろいろあっても、やはり報告するということが大事なのではないかと感じた。

【鈴村委員】
 そのような趣旨ならばそれで結構だろうと思うが、このような制度をつくった際に、どういう形でそれをインプリメントするかということに関しての理解を、多少ともはっきりさせておかないと、今のような懸念は持たれる可能性が多分にあると思う。だから、そういう点で配慮してもらいたいと思っている。

【平野部会長】
 今、委員の方の話の中を推察すると、ある形での研究成果の報告は出してもらったらどうであろうか。ただし、その報告の書き方については、在り方をまた検討し、特に本人には趣旨を伝えることができるような形で、報告書にまとめてもらうという方向でどうか。特に今、アウトリーチをよくやっているが、研究者自身はわかっているつもりでも、研究者ではない人にとってみるとどうもよくわからないという声も多い。何らかの形で、この研究はこういうようなところの成果が得られたという、わかりやすい言葉で何か報告があったほうがいいのではないかとずっと思っていた。ただ、懸念はよく分かるので、特にこの挑戦的萌芽研究については研究成果報告書の書き方を、研究者に余り細かい無理強いをしないように、少し事務的に示唆をしたらどうか。

【小安委員】
 全般的にこの内容、私は結構だと思う。やはり、この基金化というのは非常に研究者にとってはありがたいことで、一番のメリットは年度の枠がなくなるということに尽きると思う。年度を超えていろいろなことができる。しかし、資金を管理する研究機関側から見ると、おそらく頭痛の種だと思うし、やりたくないことだと思う。しかし、そこのところをきちんとやってもらわない限りは、我々にとって何のメリットもない。先ほど日本学術振興会からの報告の一番最後にあったが、各機関にきちんと説明をするということが、非常に大事なことではないかと感じている。何年か前に文部科学省が研究費の実績報告の締切りを5月にし、3月31日まできちんと研究ができるようにと言ってくれたのだが、例えば私の大学だと、いまだに3月はお金が使えない。機関に任せるというのを言質にとっている。したがって、幾ら文部科学省がそういうふうに言っても、「うちはこのルールです」というのが通ってしまう。今度基金化されたときにも同じことが起きたら、何のための基金化かわからないことになる。
 したがって、文部科学省から命令してもらってもいいかもしれないと思うくらいで、基金化にはきちんと対応してやりなさい、ということをやはり言ってもらわないと、おそらく現場サイドでは何も変わってないじゃないかということを懸念する。だから、そこを是非繰り返し説明してもらいたい。もちろん、科学研究費補助金が全て変わるわけではないので、現行の科学研究補助金に関してはこれまでのルールで、基金のものに関してはこのルールでということは、もちろん説明してもらわなければならないと思うが、そこのところを是非徹底してもらいたい。

【平野部会長】
 大変重要な指摘で、現場に行けば行くほど、より間違いのないようにと思うため、厳しめしめつけになるということがある。

【渡邊学術研究助成課長】
 今、小安委員からいただいた点は非常に重要だと認識しており、我々の反省としては、制度は改善したので使えるはずだというところで終わっていたところがあるかもしれない。そのため、そういった実態を調べる必要もあるだろうし、当然ながらそういうふうにしてもらう、あるいは、何らかの対応をしてもらわないと困るというような強い指導をするなどいろいろな方法があると思うので、今後是非検討していきたい。

【平野部会長】
 基金の制度を設けたというのは、研究者にとって大変重要な進歩だと思っている。是非今日ここでの貴重な意見を、Q&Aのような形で説明のときに使いながら、その場に合うような形でしっかりと説明してもらえれば、有効にこの制度が動くのではないかと期待している。

【谷口委員】
 基金化ということについてはそれ自身非常に結構なことで、先ほどから全体的に委員の方々が発言していることに、特に反対ではないが、こういう問題を議論するのが研究費部会のミッションなので仕方ないとは思うものの、何か研究者がますます縛られて、がんじがらめになっていくような、そういう危機感を少し覚える。これは学術研究助成課や文部科学省がけしからんとか、そういうことを言っているわけでは決してなく、一生懸命努力をされていて、科研費も充実をして、研究者がより研究しやすい環境をということを標榜していることは十分理解しているが、先ほどの鈴村委員の発言にもあったように、やはり挑戦的萌芽的研究にも研究成果報告書を、それから、ここにも書かれているような自己評価の充実とか、何のための自己評価なのかといったようなことを、今回、ここで議論する時間がおそらくないので、この部会かあるいはしかるべきところで議論してもいいのだが、大学等で行われる本当に独創的な研究を支える根幹に、何があるのかということを1つは踏まえることと、もう一方では、やはり国民の税金を使って研究をしているという、その立場はやはり重要視するべきだと思う。
 無責任なことをやるわけにはいかない。しかしながら、過度な縛りをかけてしまうと、本来、学術の進展のあるべき姿が、おかしな方向に行ってしまうというところも否定できないところがあり、その辺は短期には解決しないのかもしれないが、少なくともそういう複眼的な視点というか、長期的な視点を持って、この部会なり、あるいはしかるべきところでしっかりと考えてもらわないと、少し大げさな言い方をすると、いつの間にか気づいたら学問の自由って一体何なんだったということになりかねないということを少し留意しておくべきというように、研究者の一人として思う。

【平野部会長】
 研究費部会の重要な議論のテーマでもあるので、これは本日に限らず、いろいろなところで、研究費に関係することとして、また議論をしていきたいと思う。この後の議題で、今後の検討課題と、この部会の検討課題というところがあるので、是非重要な課題にしておきたいと思う。何か問題が起こったとすると、それが何か全ての問題のように思われて、そしてまたどんどんと詰められるというのがこれまでに起こってきたことである。大変悩ましい問題だが、研究費を有効にかつ皆さんが使いやすいようにするためにはどうすべきかということを、この研究費部会で必要に応じて議論していきたいと思う。

(4)第6期研究費部会における検討課題について

 事務局より、資料6「第6期研究費部会における検討課題について」に基づき説明があった後、審議を行った。

【平野部会長】
 本日は第1回の部会であるので、今期の部会でどのような事項を検討すべきか、特に、今、説明をした項目、あるいはそのほかのここの部会で検討すべき項目について、自由に意見をいただきたい。

【北岡委員】
 科研費の研究種目の在り方について、大型研究費の特別推進研究・基盤研究(S)に関してだが、ご存じのように最先端研究開発支援プログラム、それと最先端・次世代研究開発支援プログラムで合計1,500億のお金がこの3年間投資される。それはあくまでもトップダウンのグリーンイノベーションやライフイノベーションという枠組みの中で投資されている。それが3年後、それは正に先端研究助成基金という形で基金化されてやっているということで、この第6期研究費部会の中では今後3年後に、大型種目に対して今度は学術研究の立場からボトムアップ的な大型研究に対して、基金化も含めてどういうような研究種目を設けてやるかという議論を是非ともやっていただきたい。特に2,600億と1,500億で3年でいくと1兆3,000億近くのお金を、この3年間で投入するので、その研究者の責任も重いと思うし、この枠組みでやられた最先端のお金というのは、トップダウンの形になっているわけだが、非常に優秀な研究者がいることもあり、その後、3年後に学術研究としてさらに強いところを伸ばしていく、いわゆる大型研究種目に関しての議論も、この6期に是非ともお願いしたい。

【平野部会長】
 検討できるように組み入れていきたいと思う。

【野崎委員】
 今発言があった内閣府の予算や、それからJST、NEDO、厚労省の科研費、そういったものとの関連はここが話す場なのか、もっと上に話すべきところがあるのか、ここで何か言って、それがどうにかなるものなのか教えてもらいたい。

【平野部会長】
 大変重要なところで、いつもいつも悩ましく、他の研究費とはどうあるかというのが、ここの会でも以前も議論が出ている。重複がけしからんという意見と、いや、一部の重複はあって当然で、それは重複とは言わず、並行してそれを支えながらやる研究であるとか、いろいろあって大変難しい。

【渡邊学術研究助成課長】
 全ての競争的資金について全部考えを示せるかといえば、なかなかそこまでは難しいが、やはり前期の中でも出ていたが、科研費だけで考えるのではなくて、その周辺のものも含めて考えていくべきではないかということなので、少なくともそういった観点では、もう少し幅広く検討することはあると思う。あとは先ほど委員から発言のあった最先端研究開発支援プログラムや、最先端・次世代研究開発支援プログラムというものが、今後、何年間で終わるということを見据えて、少なくとも科研費がどうあるべきなのか、科研費だけで受けとめられないということであれば、研究費制度全体としてどうあるべきなのか、そういった議論はしていただいて構わないと思う。

【野崎委員】
 国の予算全てを統括的に議論する場というのは内閣府しかなく、それが本気でやらない限りは動かないということか。

【渡邊学術研究助成課長】
 省を超えてということになると、そういうことになると思う。

【平野部会長】
 個人的にずっと外に訴えていたのは、今正に指摘いただいたその点でした。国として科学技術をどのようにもっていくのか。本当はあるべき司令塔が見えないといわれてきている。司令塔がどれだけ責任を持って、国の形をつくろうと思っているのかが見えないのだと。
 ただ、ここに関わる予算については、私たちとしても、こういう形でこのような予算が要るということを、是非議論をして要求すべきところには言っていくべきだと思うので、それは研究費の在り方という項目の中で是非議論は出していきたいし、もしいい形で国に提案ができるならば、この部会から、全体像は別にして、その中の一角を支えるものとして、ボトムアップの部分を出していけたらと思っている。

【小安委員】
 内閣府という言葉が出てきたが、総合科学技術会議だとやはりどうしても科学技術という言葉が、先に行ってしまうような気がする。やはり日本全体の学術研究はどうかということになったときには、ボトムアップをどう考えるかの問題だと思う。本来だと日本学術会議がきちんとそういうことに関して提案をするようなことや、研究費部会とどう連携できるのかというあたりが大事ではないかと感じる。そういうやり方をしていかないと、なかなか全体を見てバランスよく学術を振興していくということが難しいのではないかと感じるので、何かそういう仕組みを考えてもらえると、非常にプラスになるのではないかという感じがする。

【田代委員】
 科学研究費自体に関して、どの研究がすばらしいかを選ぶ審査員の件であるが、長い間審査をしている人がかなりいる。この審査員の確保というのは非常に大変なことだと思う。特に基盤研究(C)は応募件数が非常に多いので、研究期間を延ばしたというのは、1つには審査コストが非常にかかるということがあったのではないかと思うが、そういったコストは全体の科研費の中に響いてくるのか、それが反映しているのかどうか、それはどういうふうになっているのか。また、かなり長い間審査をしている人たちがいるので、それをもっと新規開拓するという体制が、日本学術振興会でどのようになっているのか聞きたい。

【渡邊学術研究助成課長】
 審査は日本学術振興会に移管してからかなり充実し、非常に精緻にやっている。審査負担というのは非常に大きいものがあるかと思うが、コストがかかるからこれ以上何か充実できないとか、そのような意味でコストがかかるというようには考えていない。アメリカのNSFなどに比べても非常に効率的にやっているので、コスト的な問題というのは余り気にしていない。それと、後で日本学術振興会から説明があるかと思うが、今、審査員は審査委員候補者データベースというものから選んでおり、連続して何回もやるということは避けるようにしている。何年間かおいてまたその人にお願いするということはあるかと思うが。

【村上主任研究員】
 2番目の質問の答えだが、審査員選びは非常に大変である。今、全体で五千数百人の人が審査員をしており、データベースにはその大体10倍程度の登録がある。選ぶときも今の懸念の点は十分に考えて、なるべく審査員に若手研究者も入れるということで、平均年齢が何歳だというのを、それぞれの分野で競い合っているぐらいで、なるべく固定した審査員を避けて、なるべく広くやろうという努力はしているけれども、どうしてもやはり選んでいくと、その審査に非常にマッチした人というのを、まず選んでしまうというところがあり、一方で審査員の固定化を避けるというところとバランスをとりながら、各専門研究員の方を含めてやっているという状況なので、努力はしているが、現実上、御指摘のようになっている部分も、残念ながら現状ではあるかと思う。

【谷口委員】
 競争的資金としての科研費がこうやって増えている傾向にあるということは、大変好ましいことだと思うが、ご存じのように、運営費交付金がかなり削減をされて、今年少し下げ止まりがあったとはいえ、科研費の増額に比べると圧倒的な大学等への交付金の削減がある。科研費が充実すれば学術全体が発展するかどうかはまた別の問題で、これも研究費部会で議論をして意味があるかどうかということは私にはわからないが、一応そういう視点を持っておいたほうがいいだろうと思う。そこがやはり大学等における学術研究の、学術の推進の重要なところであり、また難しいところでもあるので、我が国の特性を生かしたファンディングの在り方というのを考えていかないと、競争的資金が増えれば学術が発展するかということは必ずしもイコールではないという、その視点は重要ではないかと思う。
 もう1点は、科研費そのものだが、やがてこれが、少なくとも我々にはいい方向に向かうと思われる、さらなる科研費の増額をしましょうという流れがあったときに、必ずそこでイントリンジックというか、付随して出てくる問題は、そのかわりにこういうことをしなさいというデューティが出てくるという問題はあると思う。詳細は省くが、前回の部会でも、科研費は非常に細かく細分化されており、これは非常によくないので改善をしたほうがいいのではないかという意見があったと思う。これは研究費部会が直面する課題で、今、文科省がどうとらえているかわからないが、細分化されているということを私たちはどう受けとめて、それが我が国の学術の推進に適切であるならあるという理論武装をしておかないと、やがて、抗し切れないメカニズムが働いて、積み上げてきたものがおかしくなってしまうということはあり得るのではないかと少し懸念するが、その問題についてはまだ課題はあると考えていいのか。

【渡邊学術研究助成課長】  今の御発言は分科細目の点だと思うが、現在、分科細目について10年に1回の大改正の時期で、日本学術振興会で改正案の作成作業をしており、今年、科学研究費補助金審査部会に報告をするという流れになっている。それで、平成25年度の科研費から新たな分科細目で大くくり化というような議論を指しているかと思うが、余りに細か過ぎるから大くくり化したほうがいいのではないかというような意見もあったり、そうではなくて、きちんとした審査のためには、やはり今のような細分化が必要だという意見もある。そういったところを踏まえて、日本学術振興会で今検討しているという状況である。

【谷口委員】
 その問題も非常に重要かと思うが、私が申し上げているもう一つの点は、特別推進研究から小型研究まで、いろいろな種目に分かれている。これが平たく言うといけないという話が前にあったかと思う。それがどうなるかということを聞きたい。

【平野部会長】
 研究種目のことですね。

【渡邊学術研究助成課長】
 そういった意見も一部いただくこともある。例えば昨年の事業仕分け等の見直しの中でもそういった意見が出たことは確かだが、それに対しては今の考え方を説明して、今のところはそれでおさまっている。そういったことも含めて、研究種目の在り方、又はその上限が500万円であるというようなことでよいのか、あるいは特別推進研究と基盤研究(S)というようなものをどうするか、それは研究種目をこれで全く動かさないというわけでもなく、学術の振興のためにより望ましいものにしていく、そういった点でこの部会で正に議論いただくべきことかと思っている。

【谷口委員】
 この研究費部会の始まりということで確認をしたいが、大まかな把握というか、科研費が1,500億ぐらいだった時代の話かもしれないが、科研費に応募できる研究者というのは、大学等含めて約25万人いて、競争的資金を受領している人数はその中の約5万人しかいない。つまり5人に1人しか研究費をもらっていない。この研究費の平均総額が300万円であるというのが、非常に大ざっぱな把握の仕方だが、今は2,000億に増えているとはいえ、基本的にはそういう状況であり、ごく一部の応募資格のある人が競争的資金をとっているという現実があるというのを、先ほどの運営交付金の話も含めて少し把握しておきたいと思うが、大体そのような理解でよろしいか。

【渡邊学術研究助成課長】
 概ねそういう理解で構わない。なるべくそういったデータも示し、現状を委員の方々に御理解いただきながら、この研究費部会を進めたいと思っている。今の指摘のような点も、例えば参考資料7で平成22年度の科研費の配分状況を示したものがある。正に谷口委員から発言があった、1課題当たり配分額が253万円と出ており、平均的に言うと、1人当たりこのぐらいもらっていて、そのもらっている人が約5万7,000人くらいのオーダーであるということである。

【平野部会長】
 今指摘の点というのは、この部会で議論をし、将来必要な改善として提案できることについては、提案をしていくことがここの任務だとも思っている。以前から基盤的経費と競争的経費というのは、10年近くずっと議論が続いている。前回、前々回もそうだと思うが、必ず競争的資金のところでは、そのもとになる基盤的資金の在り方というのも、同時に提案をしているが、ここで対応すべきものとしての提案として、きちっとまとめていきたいと思っている。

【小谷委員】
 少し今のこととも関係するのだが、ここに示していただいた検討課題の中に、研究分野の特性と研究種目の関係というのがある。分野の特性ということが、現在は生かされていないが、どういうところにどういうお金があると使いやすいかは分野によって違う。分野の特性にあわせて研究種目の配分を変えるなど、特に昔のように運営交付金が十分でない状況では、そのようなことを考えてもらいたいと思う。

【平野部会長】
 科研費の研究費の在り方の中でまた議論をしたいと思う。
 事務局と相談をして、次回はどれを中心に議論をするのか、事務局から提案があった4件について、これをくくりながら、特にこのうち1件について次回検討したいという提案をし、委員の方々に意見があればあらかじめ事務局に寄せてもらい、それを整理した上で、議論をしていきたいと思っている。今の点も大変重要だと思う。前々回でも人文社会系の科研費の在り方について議論した。非常に大きな金額でなくてもいいけれども、調査研究が伴うような部分については、継続的に時間を長くする必要もあるのではないかという議論もあるので、研究費の在り方、その項目については是非集中的に、今後対応したいと思っている。

【甲斐委員】
 科研費の内容についての細かい議論というのは、正にこの部会でやることだと思うので、これから細かく審議していくことにはとても賛成である。それから、デュアルサポートについても常に話題になり、この親部会でもよく出ることなので、それも重要だと思う。
 1点、資料6の2番目の科研費を含む研究費の在り方についてだが、先ほど文科省から、省を超えることに関しては総合科学技術会議が、内閣府がメインにやっているので、それはなかなか触れにくいというように言っていたが、文科省の中で、トップダウン、あるいはセミトップダウンというか、競争的と言いつつ分けているような、JSTが行っているものがあるが、そういうものについて総合的に内情がきれいに開示されたことというのは、ここでは余りないように思う。科研費に関しては詳しく過去のことから、どのように審査をし、どういうことがいいのかということをすごくやるのだが、あれはあちらといって、どのように決められ、どのぐらいの配分でということを議論する場というのがどこだかわからない。一度、資料6の2番にあるように科研費を含む研究費の在り方という大きなタイトルで、全体を議論させていただけるのであれば、一度そういう中身も開示していただいて、同じ土俵で一度諮らせてもらい、我々の意見を言わせてもらえるような場を設けていただけるとありがたい。

【平野部会長】
 少なくとも文部科学省が扱う研究費の在り方及び基盤研究費の在り方が、総合的にどのような議論の場で動くのであろうかということだと思う。これはまた事務局の方で整理してもらい、今後の会議の中で入れたいと思う。

【鈴村委員】
 先ほどの議論の中で少し日本学術会議のことに言及されたので、少しそのことを発言させていただきたい。日本学術会議は、大分、組織のつくり方自体も歴史的に変わってきており、かつては科研費の中で審査委員の推薦とか、そういう形にかなり踏み込んだ形で機能するような組織だったわけだが、その仕組みそのものはもう解消されて、会員の選挙の仕組み自体が相当変わってきている。しかしながら、日本のサイエンスコミュニティ全体の代表機関という、法的な構成自体はもちろん新しい仕組みのもとでも変わっていない。したがって、先ほど要望があったように、もっと日本学術会議を巻き込む形で、日本の学術のプロモーションという観点から議論するということについては、日本学術会議にも当然そのような意欲はある。将来にかけて何らかの意味でのインターフェースがもう少し広く厚くつくられていくことを、日本学術会議としても希望するということを申し上げたい。
 あと1つ、日本のサイエンス・アンド・テクノロジーの推進ということからいうと、一種のヘッドクオーターみたいな役割を果たしていると言われている総合科学技術会議との関わりで言うと、実は科学技術というコンセプト自体が、本来的には総合科学技術会議の方でのコンセプトには、人文社会科学は含まれていないということで来ていたわけなので、少なくとも過去数年間にわたり、日本学術会議はやはり人文社会も含めた日本のサイエンスコミュニティ全体のプロモーションということをバランスよく考えないと、狭義のサイエンス・アンド・テクノロジーということを考える上でも、ゆがみが出るということで努力をしてきて、かなりその様子は変わってきたとは思っている。
 ただ、科研費制度のような具体的なプロモーションのための制度の在り方に関しても、当然日本学術会議としても関心はあるので、できればコーディネートするような形の協力関係ができていくといいなというように希望はする。私は現在副会長をやっているが、会員任期が切れる際に組織に残しておく伝達事項として、日本学術会議側にも申し上げておきたいと思っているので、検討いただけるとありがたいと思う。

【佐藤委員】
 この部会は科学研究費の充実について極めて専門的は議論をしてきたわけであり、ほかに場がないので、引き続きそれはとても大切な活動と思っているが、ただ、いつも全体との関係というのはどうなるのかということがある。それは特に、今、閣議決定をされる今度の科学技術基本計画などは、どちらかというと、国家全体の目標を比較的しっかりと出しており、そうすると、例えば甲斐委員から発言のあったセミトップダウンと別のカテゴリーの、例えばボトムアップではあるが、国家目標とどうリンクしているかというような課題も出てくる。
 それをどう扱うかというのは非常に大きな課題である。しかもボトムアップとトップダウンは車の両輪といっても、基本計画の中では、どちらかといえばトップダウンの話ばかり書かれており、学術分科会あるいは科学技術・学術審議会全体として、どこでどういうふうにスタンスを考えていくのかというのは、考える必要があると思う。

【平野部会長】
 大変重要な指摘であり、佐藤委員が発言したようなことは、国全体の中での研究費の在り方として提案をし、あるいは説明にも回ろうと思う。

【岡田委員】
 やはり現在は、科学技術・学術の展開には、ますます若手の人たちの意欲を発揮してもらうことは大事だと思う。そういう意味では、現在、若手の人たちの日本へのいわゆる閉塞感や日本国内のいわば閉じこもりということが多くあるということは、非常にまずいことなので、それを何とかしたいと思う。その中で研究費部会の中で何ができるかとなってくるが、今、先ほど北岡委員が発言していた、非常に大きなトップダウンのお金があって、それが5、6年で終わる。その後どうなるかというのはもちろんわからない。PIの人たちにとっても専念義務があり、いわば科研費からはいったん外れていることになる。しかし、それも問題だが、それだけではなくて、大きなお金だけにポスドクといった形で、若い人たちも随分そこに関わっている。その人たちが6年後に例えばまた戻ってくる、あるいは、どうするかということは非常に大きな問題になってくる。
 だから、そのあたりはどのような動きがあるのか。下手なことをすると、今の科学研究費のシステムを、ある意味非常に毀損するということになりかねないと思うので、是非そのあたりの動き、あるいは予想といったことは、調査あるいは分析といったことをしていただきたい。既に始められているかもしれないが、先ほどの検討課題の中に「新たな調査・分析があれば、実施することが可能」と書かれていたので、そういったことについても是非やっていただければと思う。

【平野部会長】
 重要な課題だと思う。今の件については日本学術振興会でまずデータがあれば、どこかの機会に、特に若手の動きについて示してもらい、科研費を中心とする研究費の中で、どういうような動きが今後出るであろうかということについて、議論をする場を設けたいと思う。

(5)その他

 事務局から、次回の研究費部会は、日程調整の上、改めて開催の通知を行う旨の連絡があった。

―― 了 ――

 

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