資料3 科学研究費補助金の一部基金化に伴う制度運用について

科学研究費補助金の一部基金化に伴う制度運用について

 科研費の「基金化」には、「独立行政法人日本学術振興会法」の改正が必要であり、去る2月4日、同法の一部を改正する法律案を国会に提出したところ。
 この法案については、今後、国会において審議される予定であるが、この法案が成立すれば、直ちに基金の運用が求められるため、あらかじめ基金化に伴う制度運用面についても検討を進めておく必要がある。

【基金の概要】

1.基金設置の目的

 科学研究費補助金は、研究の目的である真理の探究に向けて柔軟な発想や手法で取り組むことにより先駆的で独創的な成果が得られるのであって、一定の計画をもって行うものではありつつも、研究計画通りに遂行されるものではなく、年度ごとの計画に基づく単年度の助成方式には本来なじまない性格がある。
 このため、研究内容の性質上、事前の計画通りの進行管理が特に困難と認められる研究種目について複数年度にわたる研究費の使用を可能にし、年度の支出限度額にとらわれずに研究の進行状況に応じた研究費の使用ができるよう日本学術振興会(JSPS)に基金を創設する。

2.基金化対象の研究種目

 研究規模が小さく事前の計画通りの進行管理が特に困難と認められるものであり、かつ、多くの研究者が対象となっている「基盤研究(C)」、「挑戦的萌芽研究」及び「若手研究(B)」のうち平成23年度以降の新規採択分を基金化対象とする。
 ただし、当該研究種目で平成22年度以前に採択された継続研究課題については、従前と変わらず、単年度の助成方式である補助金として取り扱う。

3.制度運営の基本的考え方

 基金化後の運営についても、基本的に現行の科研費と同様の予算の適正な執行を担保する措置を講じることとする。一例としては、次のように対応する予定。
(1) 補助金の交付決定
 これまでのような単年度ではなく、研究期間全体の交付決定(注)を行う。
 (注)「交付決定」とは、補助金の交付申請者に対して一定の補助事業を遂行した場合には一定金額の補助金等を交付する旨の意思表示。支払行為そのものを指す用語ではない。

(2) 研究費の支払い
 研究者への研究費の支払いは、年度単位とする。なお、継続分については年度末に請求を行い、年度当初に研究費を支払うこととする。

(3) 研究費の管理
 現行の科研費と同様、研究者が所属する研究機関が適切に管理を行うこととする。

(4) 実績報告書の提出
 現行では、年度ごとに補助金の額の確定を行う必要があり毎年度の実績報告書を提出させているが、基金化後においては、研究期間終了後に実績報告書を提出すればよいこととなる。
 しかしながら、毎年度の研究の内容等を把握することが求められることから、「研究実施状況報告書(仮称)」を提出させ、研究費の執行状況について確認するとともに、万一不適切な使用があった場合には、その都度対応できるようにする。(内容としては、現在の実績報告書とほぼ同程度。)

4.単年度補助金との比較による主な変更点等

 「基金化」研究種目については、平成23年度分の研究費相当額だけでなく、平成24年度以降の研究費相当額(後年度負担分)についてもJSPSに予算措置し基金に財源を確保することとなる。これにより、全ての研究期間を通じた複数年度にわたる交付決定を行うことが可能となるため、研究費の使用に当たっては、

  1. 研究の進捗状況に合わせた研究費の前倒し使用
  2. 事前の繰越し手続きを要しない、研究費の次年度における使用
  3. 年度をまたぐ物品調達

等が可能となる。

<「研究費の前倒し請求」の現時点での構想>

○ 「研究費の前倒し請求」は、研究の進捗等の結果、研究者が年度当たりの研究費予定額を変更し前倒しして使用したい場合に利用できることとする。

○ 「研究費の前倒し請求」に当たっては、「研究費前倒し請求書(仮称)」の提出を求めることとし、事務的な確認を経て承認及び研究費の追加支払いを行う。

○ 「研究費前倒し請求書(仮称)」で説明を求める内容としては次の事項を想定。

  • 「理由(状況の説明)」、
  • 「研究費前倒し所要額」、
  • 「研究費前倒しに伴う変更後の研究計画」、  を概要で記載させることとする。

○ なお、本制度のスタート段階では、大学側、JSPS側双方の事務的対応を見極めつつ、年間を数回に分けた締切日を設定し対応する。

<「研究費の次年度使用」の現時点での構想>

○ 「研究費の次年度使用」は、研究を実施した結果、実際に使用した研究費が年度当たり研究費予定額を下回り、研究費に残余額が生じた場合、研究者による次年度使用を認めることとする。

○ 「研究費の次年度使用」による研究費移動(例えば、H23年度使用予定からH24使用予定への移動)の実際の内容は、毎年度終了時に作成する「研究実施状況報告書(仮称)」において事後的に説明を求める。説明を求める内容としては次の事項を想定。

  • 「理由(状況の説明)」、
  • 「次年度に使用する研究費の額」、 を概要で記載させることとする。

○ 研究計画最終年度の翌年度に「次年度使用」を行う場合(研究期間を延長する場合)には、事前に日本学術振興会の承認を必要とする。

○ なお、「研究実施状況報告書(仮称)」における次年度使用の理由が明らかに不適切と思われる場合にはJSPSが調査することとし、結果、「次年度使用の必要が認められない」と判断される場合は、当該「次年度使用予定額」の返還を求めることとする。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課