研究環境基盤部会 学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会(第82回) 議事録

1.日時

令和元年 6月18日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所

文部科学省東館5F3会議室

3.議題

  1. 学術研究の大型プロジェクトについて(機関からの発表等)
  2. 進捗評価について
  3. その他

4.出席者

委員

小林主査、松岡主査代理、岡部委員、城石委員、竹山委員、田村委員、東嶋委員、中野委員、八田委員、樋口委員、山本委員、吉田委員

文部科学省

増子大臣官房審議官(研究振興局担当)、西井学術機関課長、降籏学術機関課学術研究調整官、小林学術機関課課長補佐、吉居学術機関課課長補佐、二瓶学術機関課連携推進専門官

5.議事録

【小林主査】  それでは、定刻よりまだ少し前ですけど、樋口委員が後からということになりますので、ただいまから第82回科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会学術研究の大型プロジェクトに関する作業部会第10期3回目を開催いたします。委員の先生におかれましては、御多忙中出席いただきまして、ありがとうございます。
 本日は、大型プロジェクトの在り方に関して議論をすることになっておりますが、まず、事務局から委員の出欠、配付資料、傍聴登録の確認をお願いします。
【小林学術機関課課長補佐】  ありがとうございます。本日は、鈴木委員、原田委員が御欠席となっております。
 また、傍聴登録ですが、41名の登録を頂いているところでございます。
 続きまして、配付資料及び机上資料の確認をさせていただきます。
 本日はペーパーレス会議にて実施させていただきます。配付資料といたしましては、こちらの左手側ですね、皆さんお持ちの横向きになっているところに、配付資料といたしまして、00番の議事次第から、05番の今後の新規スケジュールについてが入っているかと思います。また、机上資料といたしましては、この右肩ですね、縦向きになっているところ、こちらに机上資料が入っているところでございます。
 不足などございましたら事務局までお申し出ください。
 また、タブレットの操作に関することで御不明な点、若しくは、資料の不足等ございましたら、事務局までお申し出ください。
【小林主査】  ありがとうございました。
 本日は、前回に続きまして、次期大型ロードマップの策定方針の検討や進捗管理の徹底など、大型プロジェクトの在り方に関する議論を深めていただくために、現在実施中の大型プロジェクトについて、実施機関から発表を頂くことになっております。本日、3件ございます。
 最初に、人間文化研究機構国文学研究資料館、ロバート・キャンベル所長より、日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画について、次に、自然科学研究機構国立天文台、常田台長より、国立天文台大型プロジェクトの推進について、最後に、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所、後田教授より、Super KEK B-factory計画、Super KEK BとBelle 2について、それぞれ20分程度で発表いただき、発表ごとに10分程度の意見交換をお願いできればと思います。
 それでは、早速ですが、まず、人間文化研究機構国文学研究資料館より、発表をお願いいたします。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  ありがとうございます。国文学研究資料館の館長のロバート・キャンベルと申します。
 私たちが進めている「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」について、今日、概要と進捗状況について報告をしたいと思っております。
 中身に入りますちょっと一歩手前のところで、少し俯瞰(ふかん)的な立場から、このプロジェクトの必要性、緊急性について特に申し上げたいと思います。お手元の資料では8枚目になりますが、三つほどの要点を絞ってみました。
 後ほど御説明しますように、私たちは前近代の日本に伝存する大量の古典籍というものを対象とするわけですけれども、世界で見ていきますと、そういった書籍等の大規模デジタル化においては、日本は著しく後れを取っている現状がございます。
 ここに書きましたけれども、一つ、これは大変大きなことですけれども、韓国や中国の国際的な地位の向上に伴う、欧米などにおける日本文化そのものの位置付け、つまり、そのプレゼンス力の低下ということがまず大きな状況としてございます。
 次に、記憶に新しい東日本大震災、あるいは、昨年の西日本豪雨などに代表されるような災害がもたらす日本語で記された文字記録、日本の正に歴史的な知恵というものがモノとして喪失していく、あるいは、されている、されようとしているという現実、言い換えるならば日本文化そのものの裏付けとなるモノの喪失ということがあります。
 そして三つ目に、国民の幸福が経済的な価値だけに限定されるとは限らない現代において、「意味」でありますとか「価値」を探求する学問である国文学、広義の日本文学の振興が不可欠であるということは、例えば「Society 5.0」においても、科学技術の社会実装に向け、人文科学、社会科学に大きく期待が寄せられているという状況を見てもわかるわけです。
 例えば、アメリカのデジタル公共図書館、DPLAを見ますと、1,600万点以上のデジタル化が進められ、ほぼ全てがオンラインで参照可能です。Europeanaという、EUが10年ほど前から推進している巨大な文化収集、データ収集と発信事業では1,200万点以上ございます。中国でも、CADALの中で276万点、あるいは、韓国の国立中央図書館においても、65万点の韓国・朝鮮半島の資料というものが、そのまま様々な素材として、あらゆる分野、あらゆる地域の人たちによって供給され、発信されているという現実がまずあるということです。
 そのことから、今日これから御報告しますこの「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」そのものは、日本が相対的に近年プレゼンスを低下させている問題、そして、モノそのものの脆弱性、何がどこにあり、どのようにそれがまずあり、どのように供給されていくかという問題、さらに、何よりもこの古典籍をデータ化していく、そしてそれを持続可能な国際研究のネットワークの中に構築することによって、どのような波及、どのような効果があるのかということが、現在において、最も日本の中で求められている人文科学そのものの促進、充実に直結するものだというふうに認識しております。
 まず、数回既に申し上げている「古典籍」という言葉ですけれども、言葉で説明するよりも早く、実際に委員の方々にごらんいただいた方がよいと思いまして、きょうは私たちの収蔵庫の深いところから、様々な日本の装幀、装本、時代にわたって、誠に多様な世界の中でも非常にまれな多様性、多元性を示すもの……、レーザーポインタで指しますと、ちょっと目に入るかもしれませんので、指しませんけれども、「奈良絵本」ですとか、あるいは、それ以前の時代の巻物といったようなものがここにありますので、是非、時間が許す限り、見ていただきたいと思います。
 今、私が手に取っておりますのは、18世紀に出版されました「万葉集」の巻5が収められている古典籍。本当はこういうふうに持たない方がいいのですけれど、すみません、今日はピンマイクではなくて手持ちマイクなのでお許しいただきたいと思いますが、「梅花歌三十二首并序」という、4月に発表されて5月から始まった新しい時代、「令和」という時代の典拠になる「初春にして令月、気淑く風和ぎ」というところがちょうど入っている箇所がここにあり、その周りにたくさんの書き込みや、注釈、すなわち歴史的にこの文言を人々がどのように理解し、どのような知恵や、あるいは、力をそこから得たかということが古典籍の中にたくさん示されているわけですね。
 古典籍というのは、「国書総目録」という、英語でいうところのユニオン・カタログ、どういったものがどこにあるか、基本的な書誌を書いたものが日本では1960年代から作られていまして、現在、国文学研究資料館がその著作権を持っておりまして、それを基にして、私たちがはじき出した数値、どれぐらいこの国に実際に古典籍が残存をしているかというようなことの概算を作っているわけですね。
 およそ50万点。「点」というのはタイトルのことでして、例えば「源氏物語」は54冊ございますけれども、1点と数えるわけです。何百万冊ということになるわけです。そうしますと、分類別でいいますと、文学が大体19%、仏教と神道を加えれば、同じぐらいの割合、そして、ほかに医学や武術や歴史などのものが、このような割合で残っているということが知られているわけです。
 広義の文学ということを先ほど申し上げましたけれども、日本の古典籍は、正に近現代のフィクションでありますとか、エッセイでありますとか、あるいは、詩歌でありますとかというものよりもはるかに広い範囲を覆っておりまして、例えば平安、鎌倉時代、江戸時代の古典籍には、オーロラですとか、彗星(すいせい)などの天文情報、あるいは地震・干ばつ・洪水、つまり人間社会が直面する様々な人災、天災のことが細かく書かれている。人のこととして書かれているわけです。
 この資料(PPT)には、元歴2年(1185)に都を襲った大地震を記録した「方丈記」という古い書物がありますし、安政2年(1855)に江戸、関東一円を襲った大きな地震の記録を書いた「安政風聞集」といったものがあります。ほかの国々や地域を見ていきますと、文学作品の中に実際にこの地球上で起こったこと、あるいは、人々の争いや様々な社会の出来事が織り込まれ、文字と絵とが一体になった形で情報が蓄積されたということはほとんどありません。これが存在するのが日本の古典籍の大きな特徴であり、そして、我々がそれをデジタル化していき、それを使って研究することが世界から期待されているゆえんでもあるわけです。
 私たちのプロジェクトの中では、こういった「古典籍に埋もれた知」というものを世界に発信するために、国文学以外の古典籍、今申し上げましたように、広義の日本文学ですね、ここには様々な比率を書いているわけですけれども、文学は大体3分の1、それ以外は、歴史でありますとか、音楽でありますとか、理学でありますとか、天文学ですとか、実は多様な内容にわたるものを対象としているわけです。
 概要に入っていきたいと思いますけれども、古典籍に蓄積された「日本の知」というものを、大規模な画像データベースとしてまず整備をするということが私たちに付託された大きなミッションです。
 一つの例として、ここに正徳2年(1712)年に関孝和によって書かれた「括要算法」という有名な和算書がありますけれども、こういったものが実際に読み物として、序文や跋文(ばつぶん)が漢文で書かれていますが、流布していた状況にありまして、そういったものを取り込むことによって、様々な科学、自然科学をも包摂した異分野の研究者コミュニティ、並びに、海外の研究者コミュニティとの縫い目ない共同・連携というものを作り、活用して、現代に活(い)かしていただくことを目指しているということです。
 私は日曜日までロンドンに出張しておりまして、大英博物館で数週間前からやっていた「漫画展」を御覧いたしました。大変大規模なもので、ヨーロッパの中で今最も入場者が多い。すばらしい展示を企画した学芸員と一緒に見て回りましたけれども、いわゆるサブカルチャー、漫画やアニメとは言われるものが一夜にしてできたものではなくて、長いルーツがあり、大英博物館の展示は、実際に18世紀から19世紀、葛飾北斎や歌川国芳、国貞といった浮世絵師たちから説き起こして、非常に丁寧に、なぜこの漫画、アニメ文化というものが起こったのかということを示してくれています。
 これからの21世紀という時代の中で、日本に脈々とあるそうした文化、「古典知」というものがさらなるイノベーションや文化的な発展につながるということが、彼らも非常に期待しているといいましょうか、それを一つのソースとして、人類のソースとして、十分既に活用されているということがあります。
 先ほど、この必要性・緊急性について触れましたので、進めていきたいと思いますが、概要のところでは三つの柱があります。先ほど申し上げましたこの「歴史的画像データベースの構築」。30万点、すなわち50万点あると確認されているうちの30万点の画像データベースを作成し、それを進めながら、「国際共同研究ネットワークの構築」、それから、「国際共同研究の推進」ということを、異分野融合研究、あるいは、「総合書物学」といった非常に学際的な研究通じて国内外の研究者たちとともに進めていくというものでございます。
 とても細かい字で大変恐縮ですけれども、ロードマップをここに書きました。平成26年から始まり、令和5年に終了する、それぞれの私たちの過程、今の三つの柱に即して、どのように、これは同時並行で、あるいは、シナジーを持って進めていこうということが書かれていますので、御参照いただきたい思います。
 まず、このプロジェクトの大きな概要図ですけれども、先ほど申し上げました30万点の古典籍データベースを作りながら、それをオープンデータ化していくということが、非常に重要な、私たちのプラットフォームの基本になるわけです。その上で、データベースを利活用した学術研究の推進と、そして、既に3・4年ほど前から、他機構、他機関との連携による文理融合研究を進めています。
 具体的に文理融合を進めている幾つかの機関、NII(国立情報学研究所)でありますとか、それから富山大学とは本草学ですとか、あるいは、公立はこだて未来大学とは、「くずし字」、判読できないくずし字の自動翻刻に関連した開発を一緒にしているわけですね。
 いろんな社会や科学の領域にこれらが直結するわけですけれども、生命科学、天文学、防災・災害のほかに、情報学というものが非常に重要であると考えております。
 30万点の画像データベースを作ることによって、新領域の研究の開拓を促し、そして、私たちが率先して企画・計画をし、推進していく国際共同研究を実施し、そこから具体的に、例えば検索機能の強化、今見ていただいている古典籍からも御覧いただいてわかりますように、文字と絵が、一体になっていることが日本の資料の特徴でして、タグ付けを一つ一つ進めると同時に、専門家の目によって一つ一つの画像と、文字にタグ付けを行うことを進め、それから、検索技術のステップアップとして絵検索といったものを開発し、それらをオンライン上で繋ぎ進めていくことなどをやっております。この一つの循環を作ることで、これからの日本の人文科学のレベルそのもののステップアップを目指すということがあります。
 データベースの構築によって期待される他分野への寄与、どのように寄与するかということですけれども、ここでは幾つかのサンプルを書きました。一つ、ここに書かれていませんけれども、先ほど申し上げましたように、情報学分野では、例えばくずし字の解像度(分析)というものの高度化を進めることによって、情報化そのものに寄与するということも挙げられますし、防災分野ですと、災害の予知予防、古い様々な記録を読み解いていくということがあります。農業では、農書や様々な料理本というものがたくさんありまして、それぞれの産地にどういうものがあり、それぞれの地域のストーリーや産物を今一度検証し、農業技術向上の支援でありますとか、あるいは、観光資源というものにつなげていく。実際に「文献観光資源学」という総合プロジェクトを今進めておりまして、青森県などと協力し進めている現状にあります。
 広がっていくわけです。文学、狭義の文学から広義へ、そして、そこから様々な社会や学問領域、あるいは技術への寄与というスキーマになります。
 このプロジェクトの組織体制という点ですが、これは後ほど詳細に見ていただきたいと思いますけれども、館長の下に、古典籍共同研究事業センターというものを作り、センター長、副センター長、その下に教員と事務方、専門家のスタッフが段差なく日々一緒に頑張って取り組んでいるということです。
 外部の専門家が入っている委員会をたくさん作っていまして、特にここにあります四つの委員会は、モニタリングや評価、あるいは、様々な企画協力を一緒に進めているわけです。
 国内の拠点は20拠点ございまして、その内訳は古典籍の多くを保有している資料保有拠点、そして研究を共に進めている拠点です。それに加えて、国外の18の機関、これは毎年増えていまして、一番下にあります大英図書館、こちらには膨大な19世紀に持ち運ばれた日本の資料がありますけれども、先週の金曜日に大英図書館長と学術交流協定書の調印式をロンドンで行ってきたばかりです。これらが今後ずっと増えていくようにしていきます。
 時間がありませんのでちょっと端折(はしょ)っていきますけれども、進捗状況については、10年間の中で、私たちは30万タイトルを目指していくわけですが、現在は11万点ほどの古典籍画像を用意しております。昨年度から、専門の撮影業者だけではなく、「内製化」を進めておりまして、自前で撮影することで単価を抑えて点数を増やしており、そのような形で、これからの最後の4年間の作成予定表ということになります。Japan Knowledgeというポータル、あるいは、CiNiiというポータルとリンクすることによって、私たちのプレゼンスが可視化されるという取り組みも進めておりまして、次々と拠点大学以外の機関、あるいは、個人、あるいは、学会から古典籍資料の提供の申出を頂いております。一昨年の10月の公開以来、データベースのヒット数もそうですけれども、実際に資料を持っておられる機関や個人から多くの申出があるということになります。
 私たちはいろんなところに出掛けていきまして調査をするわけですけれども、データベースのアクセス数もかなりユーザー数が海外からのものが多く、順調に増えており、特に北米やアジアの中では既に一定のプレゼンスの確立をしていると理解しております。
 この国際共同研究ネットワークは非常に重要なものでして、国内にとどまらず、海外の方々、研究者、あるいは、文学のみならず、様々な分野の研究者たちに注目していただき、日本にこのような資源があるということの周知と、それを用いて国際的な研究をどういうものができるのかということへの協力は非常に重要なことだと思います。
 国際共同研究の推進においては、これは一昨年から様々な取り組みをしてきました。報道にも載りましたけれども、例えばオーロラの研究、文理融合型の共同研究ということをしましたし、これはちょうど今やっている最中ですけれども、江戸時代の書物に、例えば表紙を作るときにすき返しの紙を使っているのですが、中には人の、人間の髪や爪とか、そういったものが入りまして、そこからDNAを採出することが、当時の物質的な文化の中で実は最も可能性の高い有効なものだということが最近分かりまして、その研究を進めているところです。
 他にも様々な、先ほど申し上げましたように、深層学習によるスケッチから類似の挿絵を探す絵検索という研究事業を進めておりますし、あとは、様々な料理研究、料理本のレシピ集をオープンデータ化すること、公開することによって、実際に江戸時代の料理というものを現代に再現をする取り組みなどをし、それは大変大きな反響を頂くこととなりました。
 多言語化ということも、実に必要不可欠なことでして、喫緊の課題だと認識をしているのですけれども、現在の私たちの予算のレベルから考えますと、全てできるわけではありません。限られた予算の中で、海外の研究者たちと大勢連携をしまして、英文によるオンライン・ジャーナル“Studies in Japanese Literature and Culture”というものを、今年の3月に第2号を出しました、もちろんウエブサイトから見ることができるわけですが非常に多くの様々な学会でも注目されまして、アメリカなど、英語圏の国では教室で既に資料として使われているという報告を受けています。
 情報発信の面ですが、画像作成、公開を進めていく、データベースを進めていくことによって得られた知見を、市販のブックレットのシリーズに載せて市民に理解してもらう。あるいは国文研が、これはセンターではないのですけれども、西東京の地元の産業界の力を得て、学術文化のレベルを上げていけるよう、また、私たちの研究を社会に還元をしていけるよう、寄附金を募る組織を昨年作りました。
 他にもアーティストたちに実際に来ていただいて、レジデンス制度というものを作り、今、皆様が見ていただいている古典籍に実際に触れてもらい、全く新たな表現や価値というものを創出し、発信をしていくというようなことを循環的にやっていくことをしております。
 留意事項について、最後に申し上げたいと思います。幾つか指摘をしていただいているわけですけれども、組織の改編、外部委員の増加、そういった形で対応しています。
 もしできれば、最後の1分、2分ほど、私たちがこれからどういうことをこの今後の計画に基づいて展開をしていくかということを申し上げたいと思います。
 大量なデータが蓄積され、そして、様々な分野の研究者たちと持続的な連携協力関係を作った上で、「データ駆動型の人文学」を構築していきます。多角的な分析、多様な利用を可能にするために、この歴史的典籍ネットワーク事業を基盤として、マテリアル分析でありますとか、データ拡大と変換、あるいはコンテンツ解析などを展開します。異分野融合研究の国際展開が一丁目一番地になると思いますけれども、人文系のデータ分析ということを、私たちが蓄積したデータと国際的なネットワークを用いて、しっかりとしたID管理の下にデータを連携させ、作っていく。次の時代のデジタル・ヒューマニティーズの基盤を一層能動的に作って、世界に打って出ていくということを計画している次第です。
 様々なマテリアル分析ですが、先ほど申し上げましたように、実際に分析をすることによって、遺伝子解析で「1000年のヒトを知る」ことができる。既に私たちの教員が共著、共著書になっているものが昨年の8月に「Scientific Reports」に発表されていますし、IIIFというブラウザ、新しいブラウザを活用することによって、本の異同の同定ということができる。それらをもっとビッグデータを使ってやっていこうということなどを考えているわけです。
 他機関、他機構との連携の中で、データ駆動型の研究ということを進めていきたいと思っております。
 西洋では、テキストマイニング、デジタル・ヒューマニティーズというのがかなり人文科学では普遍的になっているのですけれども、私たちもいわゆるdistant readingということを様々な古典籍を解析する方法として日本の人文科学の中で表現したい。その基盤となるような人文系データの分析とオープンデータ化ということを一層進めていきたいと思っております。
 長くなりましたけれども、私の概況と進捗状況の報告を以上とさせてください。ありがとうございました。
【小林主査】  ありがとうございました。限られた予算の中で、努力をしていただいていることは感謝をしております。
 今の報告で、まとめますと、スライド8にありますとおり、海外で、中国とか韓国のデジタルが非常に大量に公開されていることで、海外における日本研究が非常にシュリンクしているという状況を何とかサポート、支援していただいていると思います。
 それから、文学だけではなくて、幅広い分野をデジタル化していただいているということ、あるいは、古典の崩し字の解像などを通して、情報学に対してもコントリビューションがあるということは分かりました。
 早速質疑に入りたいと思いますが、よろしければ、私の方から3点ほど伺わせていただければと思います。
 国際ネットワーク、非常に重要なことですが、バイラテラルな国文研究資料カタログというような感じで受け取ったのですが、一歩進めた、例えばこのマルチラテラルな、日本を代表する国文学研究資料館、例えばヨーロッパの大英博物館、例えばアメリカでしたらスミソニアンとか、そういうところとが、国文学資料館を含めて、その3者ぐらいが多分イニシアチブを取って、マルチラテラルなネットワークを作り、それぞれの予算を持ち寄ってもう一歩進んだ国際ネットワークの計画があるかどうかというのが1点目です。
 2点目ですが、多言語化で、英文ジャーナルを出しているというのは分かったのですが、コンテンツの多言語化、あるいは、多言語による検索、この辺は今、どういうことをお考で、どういうふうに進んでいるのかというのが2点目。
 3点目ですが、従来の国文学とこの日本古典籍をデジタル化したことによって分かった国文学、従来の国文学では分からなかった何が分かったのかと、今の時点でもし何かあれば、少し何となくニュアンスとしては分かったのですが、もしそれが明確に分かれば、その3点を教えていただければと思います。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  ありがとうございます。
 まず、1点目ですけれども、私たちは、きょうは概要と進捗状況の報告ということで、現在、この予算枠の中で、プロジェクトとして進めようとしていることに話をとどめたわけですけれども、一方では、後継の、次に私たちが踏み出していかないといけないそのビジョンのど真ん中に、国際コンソーシアムというものを作ろう、構築をしようと思っております。
 現在は、当初から国内の20の連携大学、拠点連携委員会、そして、彼らとの画像作成、共同研究という取組がありまして、一方では、海外にある国際ネットワークというものがあるわけです。そこからも資料の供与をうけているわけですけれども、別々にあるものとしているわけですね。
 次の段階では、是非、段差をなくしまして、海外における日本研究の拠点、つまり、日本の資料の保有拠点と、国内のものとを同じ土俵の上で研究を進めていきたいと思います。
 コンソーシアムという言葉からも分かりますように、これは誰かがお金を取ってきまして、それを再配分するのではなくて、お互いにいわば互助的に費用分担をして研究を進めていくというスキーマにすべきと理解して進めようとしているわけですね。
 今おっしゃっていただいた中では、例えば、スミソニアン・インスティテュートのフリーアギャラリーと今年度、協定を結ぶ予定です。協定はほぼできているのですけれども、そこと、例えば大英図書館の書物と、私たち国文研が持っている、あるいは、作っているその画像データベースというものを使って、それぞれが一定の割合で、例えばスミソニアンが3割、大英図書館が2割で日本、国文研が例えば5割というふうに予算を出し合って、若手育成を含めた研究と、それから、資料のデータ化、データの開発ということをしていくということは十分に可能です。
 まだ予算の措置がありませんので、それぞれのパートナーと具体的にそれを詰めるという段階ではないと思っていますが、国際コンソーシアムそのものは今年度、私たちが青写真を作り、国内と海外のそれぞれの機関にお示しをして、協議をしていただいて、どういうことが望ましいのか、特に費用分担でシナジーを持ってどういう研究ができるのかということなどを進めていこうとしています。
 私の経験では、特にアメリカのスミソニアン・インスティテュートと、それから、大英博物館と大英図書館は非常に高度な資料のオープン化を進めており、私たちも学ぶこともたくさんありますし、逆に、この金曜日に大英図書館で少しプレゼンテーションをしましたけれども、彼らの情報システムの担当者たちが来ていまして、是非、一緒に自分たちもやりたい。けれども、やれていない部分もありますので、そこはそれぞれの費用分担ということで、マッチングという形で進めていきたいという話をいたしました。
 2番目は、先生、申し訳ないです、もう一度おっしゃっていただけますか。
【小林主査】  多言語化ということで、英語ジャーナルを出していますが、コンテンツの多言語化はどうですか。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  そうですね。これは、このプロジェクトが始まる前段階の企画の中には、テキストのデータ化ということが入っておりまして、残念ながら、その予算を措置していただくということはできませんでしたので、私たちは現在あるもので、著作権などをクリアしたものをリンクしていくという準備はしているわけです。
 古典籍はなかなか難しく一旦これを現代語訳にして、現代語訳から例えば英語なら英語に持っていかないといけないということがあるので、その都度の工程ということ、人の目を介していかないといけないのが現況ですけれども、自動翻刻(解読)もそうですけれども、年々精度が上がってきていますので、私たちも、凸版印刷やNIIさん、あるいは、先ほど申し上げた公立はこだて未来大学と組んで、その精度を上げながら、予算の中でどういうことができるかということを、できるところからやろうとしているということです。
 研究については、まず、これからピアレビューのジャーナル発行に発展させていこうと思うのですけれども、多言語化はされてないけれども、日本語のテキストを研究者たちに見て、使って、発見をしてもらって、その成果をオンライン・ジャーナルに発表していただき、それを共有することによって、国内に対してもこれだけのニーズがあるということを示しながら、テキストそのものの多言語化ということを加速化していきたいと思っております。
 生々しい話ですけど、これは予算次第ということでして、これは重要なことだと考えております。
【小林主査】  ほかの委員の方から。では、八田先生。
【八田委員】  ありがとうございました。
 一応30万点ほどあるところの11万点が終わられたというところが書いてございます。古典籍、分野がいろいろあるんですよね。限られた予算、限られた人員でどういう優先順位で、この分野からということでやっておられるんですか。それとも、まずはやりやすいところからというか、どういう順位でやっておられるんでしょうか。あるいは、そういう基準があるんでしょうか。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  ありがとうございます。
 先ほどちょっとお見せしましたけれども、何ページでしょうか、前の方ですね。分類は既にされているので、私たちが一番アクセスをしやすいのは文学ですね。文学分野はかなり既に画像化が進んでいたり、書誌情報、メタデータがかなり集まっていたりするので、それをやろうと思えばかなりできるんですけれども、そもそもこのネットワーク事業というのは、異分野融合でありますとか、国際共同研究ということを中心にしているので、日本文学研究者たちだけが依然として集まって、たくさん資料が集まるだけでは、これは違う名目といいますか、このネットワーク事業にちょっと値しないという判断が最初からあります。あえて、去年は例えば武道学会と協定をしまして、武術の資料をたくさんそこに入れるようにするとか、天文学をたくさん入れるとか、和算もそうですね。そうしてそれぞれの原資料に当たって研究している学協会と連携をして、その方々の力を得て、研究資源の開発、それから、メタデータの整備ということを進め、できるだけパラレルに、いろんなこと、モノの相乗性ということが期待できるような形にしています。10年間の間でも、(新日本古典籍総合データベースという形で)一昨年発信が始まったわけですけれども、最初から一つの分野に偏らずに、古典籍全体のスコープということが見えるように既定をしています。
 余りそこのところを強調しなければ、多分かなりたくさん早くできるとは思うんですけど、そうしますと、最後の方が非常に苦労するということもありますので、バランス良く分野を見て撮っていき、それから、共同研究をそれぞれの分野の中で進めていこうというふうにしているんです。
 ありがとうございました。
【小林主査】  ほかの方はよろしいでしょうか。では、順番に。
【東嶋委員】  キャンベル先生、御報告、ありがとうございました。科学ジャーナリストの東嶋と申します。
 質問ということではないんですけれども、コメントなんですが、私のちょうど前に「養生訓」があったものですから、私、「養生訓」について、国立がん研究センターの垣添先生から、もう20年近く、日本人の疫学調査、がんの疫学調査をやってきたけれども、調べて分かったことは全て「養生訓」に書いてあったというふうに垣添先生がおっしゃいまして、それをきっかけに、「養生訓」について12年間ほど、月刊「文藝春秋」に、現在の最新の医学健康情報と「養生訓」に書いてある医学情報を突き合わせるというコラムを書いておりました。
 それで感じましたのは、やはり私たち現代に生きる日本人のほぼ全員が、古典籍の中にある知財を理解してないがために、その知財を十分活用できていないということを実感いたしまして、是非、今、分野についても御意見ありましたけれども、文学が多くなってはおりますけれども、過去のサイエンスの分野についても書いてあるものを、是非、現代文に掘り起こしていただいて、多くの人が利用できるようにしていただければと思います。
 特に崩し字の自動解読について、私も1年ぐらい勉強したんですが、なかなか読めませんでした。ですので、これをAIでやっていただくということで、是非、進捗を進めていただければと思います。
 期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
【小林主査】  今の、御要望ということでよろしいですね。
【東嶋委員】  はい。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  ありがとうございます。
【小林主査】  では、次で最後とさせていただきます。
【田村委員】  前回もお聞きしてちょっと心配していたのが、デジタル化の内製のお話なんですが、予算が十分付かなかったために、若いスタッフの方がコピーをする時間を取られてしまって、御自分の研究時間がなくなってしまうというのは心配だと我々も思っていたんですけれども、予定を見ると、きちんと期間内に全部デジタル化されるという御予定なんですが、実際はその現場のその若い人たちとか、そういう内製している方というのは問題なくやられているんでしょうか。それから、どれぐらいの人数の方が関わっていらっしゃるんでしょうか。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  ありがとうございます。
 20の拠点大学との間に、話を最初からさせていただいていまして、スキャナーを複数台、国文研で購入をし、それを貸し出す。そして、若い人たちも多いんですけど、実は老若男女、それぞれの機関の中で、司書の専任の方もいらっしゃれば、大学院生もいますし、近くのそういう文献が好きな人たちもいるという様々な形で、それぞれの機関が、こちらの方から人件費は払いますけれども、どういった体制で実際に人を集めるかということを委ねるようにしているのです。
 ただ、これには全部統一した標準的な仕様というものがありまして、それに従っていただかないと使えませんので、マニュアルを作っております。そのマニュアルも多言語化を今しようとしていて、海外でもこれが展開できるようにしているわけですけれども、大学や各機関によっては、かなりの規模、あるいは、時期によってもかなりの空間や、立会いを必要とすることが多いので、職員の手当てができる時期とそうじゃない時期という事情など、かなりきめ細やかにといいますか、当然のことですけれども、細やかにそれぞれの機関の要望や状況を考慮しながら進めているところです。
 今、先ほど、若い人たちがずっとコピー(撮影)をしているという話があったのですけれども、今はどちらかというと、アルバイトとして、大学院生たちも中にはいますけれども、学芸員でありますとか、それぞれの地域のほかの機関から、「内製化」ですから、時間外でもできることですので、やっていただいたりするということがあります。現場の中で、何か私たちは若手育成をしなければならない、実際にはしているんですけれども、それが逆効果にならないように注意をしています。
 昨年から本格的に始めましたので、前回頂いた注意も十分に現場に、それぞれの現場にお伝えをしていますけれど、今のところ、無理がいっているというようなお話は聞き及んでおりません。
【田村委員】  分かりました。安心いたしました。ありがとうございます。
【小林主査】  ありがとうございました。申請予算に対して、多分5分の1ぐらいだったというふうに思いますので、いろんなところで無理をされているような気もしてはいましたが、そうでないと伺って非常に安心しましたけど、とにかく若手研究者の研究時間を確保していただいて、若手が逃げないように、是非、ほかへ行ってしまわないように、お願いをしたいと。
 それから、文系といえども、今の時代に、やはり国際費用分担は避けられないですから、そこのところを十分にお考えいただいているということは非常に安心をいたしました。今後とも頑張っていただければと思います。
 どうもありがとうございました。
【ロバート・キャンベル国文学研究資料館長】  ありがとうございました。
【小林主査】  それでは、続きまして、自然科学研究機構国立天文台の方から発表をお願いいたします。
【常田国立天文台長】  国立天文台の常田と申します。着席して説明させていただきます。
 御指示のありましたマネジメント状況、特に計画の進捗評価、資金計画管理、コミュニティの状況、特に学術的潮流・動向、それから、国際協力等の連携方策実態などでございます。
 その前に、国立天文台のプロフィールをちょっと紹介させていただきます。右上の4ページでございますが、ミッションとプロダクトというのを定めております。ミッションですが、大型天文研究施設を開発・建設、共同利用に供する。そこから、世界最先端の天文学的成果を出す。それから、情報提供を通じて社会に貢献するということでございます。プロダクト、デリバラブル・アイテムを明確にしておりまして、研究成果を出すこと、それから、それを社会へ還元すること、それから、次世代研究者を育てることでございます。
 国立天文台のプロフィールでございますが、総予算が約141億円、3大プロジェクト、これがフロンティア予算に対応するものですが、約81億円、その他のもの全部あわせて、運営費交付金で約60億円でございます。科研費が約4億円。
 職員のプロファイルについては、女性職員比率ですが、研究系では14%で、天文台の運営に参加し得る教授は、約30名のうち2名おります。それから、外国人比率は研究系では約10%でございます。
 大学院生については、全体で61名ということで、教員が約140名ですので、プロジェクトに専任、海外で専任している研究者の方も多いところ、悪くない数字かというふうに思っております。
 論文成果でありますが、論文指標で被引用数Top10%が16.2%、Top1%が2%で、国際共著率が77%で、いずれも非常にいい数字かと思っております。もう少し分析しますと、天文台論文の世界シェアが8.5%であります。日本の自然科学14分野で最高です。それから、IAU、国際天文台学連合の日本人割合が5.7%ですので、絶対値としても数の比を上回っているというふうに思います。それから、伸び率でありますが、最近、日本の論文の伸び率が下がっているというふうに言われておりますが、約45%の増大を示していまして、自然科学14分野でこれも国内最高であります。
 次に大型観測施設が論文的にどういう成果が出ているかというと、日本のすばる、米国のGeminiとKeckというのがあります。Geminiは2台、それから、Keckも2台入れますので、ちょっと比較できるために半分にさせていただきますと、10%シェア、それから、1%シェア、国際競争率とも、すばるが米国の同等施設に比べて非常に優位に立っているということが数値的にも示されております。
 国立天文台にはいろんな観測施設があるわけですけど、それの改変の状況については、岡山188センチ反射望遠鏡、野辺山太陽電波観測所は歴史的使命を終えまして共同利用を終了し、ただ、施設は科学的生産性がありますので、大学等で運用して成果を出しております。野辺山45メートル電波望遠鏡、水沢VERA観測所におきましては、台内において、2022年3月までに共同利用、あるいは、相当する観測を終了するということで、コミュニティの了解を得つつ、縮小の動きを行っております。
 東アジア天文台、JCMTについても財政的支援を行っておりましたが、国際公約を守りつつ、支援規模を縮小させているところであります。
 すばるにありましては、広視野の特徴を行かして運用の簡素化を行うと同時に、TMTの完成をめどに、ハワイ観測所として、すばるとTMTの一体運用を図るよう、現在、体制整備を進めているところであります。一方、現在、学術会議のマスタープランにすばる、アルマ、TMTとも出させていただいたわけでありますが、すばる、アルマについては特段の発展を期すということで、すばる2、アルマ2という呼び名で提案させていただいております。
 その骨子は、すばる2に向けた開発というところがございまして、超広視野主焦点カメラ、さっきの広視野を生かす装置ですね、これが現在フルに稼働して、先ほど申しましたすばる望遠鏡の高い論文生産性を支えております。超広視野多天体分光器については、現在、東京大学、IPMUを中心に開発中でありまして、22年には稼働を始めるということで、世界的期待が非常に高いものです。
 その下の広視野高解像度赤外線観測装置というのは、現在、概念検討フェーズにあって、2020年代後半の稼働を目指しているということで、いずれもすばるの広視野、超広視野を最大限生かしたものとなっております。これによって、説明はいたしませんが、キーワードだけ、右側のダークマター・ダークエネルギー、マルチメッセンジャー天文学で世界の主導権を握っていくという構想でございます。
 アルマ2でありますが、アルマ2に向けた検討は、後で述べますように、大変精力的に思われておりまして、これにより、このキーワードだけでありますが、地球型惑星形成、惑星形成領域での惑星形成の理解、惑星系誕生領域の生命素材の理解、有機物の発見ですね、初代銀河と元素合成の開始地点の探求ということに迫るつもりであります。この辺については後でもう少し詳しく御説明させていただくと思います。
 TMTは現在、ハワイ島マウナ・ケアで建設開始の準備を慎重に行っているところでありますが、その科学目的が三つありまして、地球型系外惑星の直接観測とその大気の表面の分光診断による生命探査、宇宙は最初、水素とヘリウムしかなかったわけですけど、そのような天体の発見と、そのときの状況の物理学的解明、ダークマター・ダークエネルギーの性質の解明ということでございます。
 世界の天文学者が誰でも2020年代、30年代に解明したいという項目がまとめてございます。5項目ありますが、それぞれにブレークダウンしてありまして、すばる、アルマ、TMTが有機的にどういうふうにそれぞれの課題を解決しているかというものを簡潔に示したものでございます。
 これらが天文学を中心とした3大プロジェクト、3大観測所の姿でありますけど、一つアピールしておきたいのが、これらが持つ最先端技術としての意味合いでございます。
 左側の1980年代から右側2020年代が終わるまで、野辺山に始まってTMTに至るまで、各種の地上、宇宙の望遠鏡が書かれておりますが、これらは波長、それから、その構造が大幅に違いますが、そこの規定と流れる技術的なものに非常に共通のものがありまして、国立天文台と日本の産業界が協力することによって、こういう最先端技術の持続的発展が図られているという点も、科学ではありませんが、強調したいと思います。その結果、いろんな応用が、スピンオフがあるわけですが、JAXAの深宇宙アンテナ2基、それから、最近、スペースデブリが問題になっておりますが、JAXAの美星スペースガードセンターにも多大な貢献をしていると思います。
 要素技術の観点から見ますと、日本のお家芸となりました補償光学、像をシャープにする技術ですね。それから、超伝導受信機、フォトニック技術、テラヘルツ時代に向かって基幹となる技術を国立天文台が、世界で数箇所しかないわけですけど、基本技術として押さえています。また、ここにはちょっと書いていませんが、センサ技術についても同じ状況でありまして、感度の高いCCD、米国に基本技術を押さえられています赤外線センサの独自開発等を行っているところでございます。
 この辺りが天文台の全体的な紹介ですが、次に、アルマ望遠鏡の方に参りたいというふうに思います。
 右上の5ページに、アルマ望遠鏡の概要というところがございます。日本、欧州、米国の22か国及び地域が協力して建設しました。東アジアにおいては、我が国を中心として、台湾、韓国が参入しています。下の方に費用のことがありまして、日本は全体の貢献割合の25%、建設費総額251億円、年間運用費29億円を負担しているということでございます。
 次の6ページですが、性能については、何度もいろんなところで説明しておると思いますが、高い感度、解像度、分光能力ということで、10倍とか100倍とかいう数字が並んでいますが、これに見合った圧倒的な成果が現在、アルマから出ているというふうに思います。非常に多様な、天文学の多様な分野に貢献しておりますので、科学目的を改めて申し上げますと、その1、太陽系以外の惑星系とその形成を解明、その2、銀河形成と諸天体の歴史の解明、その3、膨張宇宙における物質進化を解明というふうになっております。後で少し詳しく御紹介させていただきたいと思います。
 全体の感じをつかんでいただくための写真ですが、これは1キロぐらいの部分しか写っておりませんが、全体は10キロ以上で、山手線サイズ程度だということで、アンテナが散らばっていますけど、これは計画的に配置されているもので、全体を一つの望遠鏡として、大口径の電波望遠鏡として高い解像度を実現するという干渉計技術の粋でございます。
 次に、マネジメントの状況ということでありますが、出発点は、2015年に日米欧でアルマ望遠鏡の運用に関する三者協定に署名したことでございます。これが今日の協力の枠組みを決定しておりまして、協定締結に至るまでに、日本も中心メンバーとして参加して、約2年にわたる協定締結の努力が国立天文台の関係者によって行われたわけですが、出発点が非常に良かったということで、その後の運用も非常に順調に推移しておるところであります。
 その辺を、これから数ページで詳しく申し上げてまいります。まず、これが全体のパートナーの構造であります。左の方に、まず、左上に今の三者協定がありまして、それに基づいて、アルマ評議会というのがあります。これが最終的な決定権があります。各機関の代表者、及び、各地域の科学者で構成し、矢印が下に向けておりますが、合同アルマ観測所、そして各地域センターをその下に置いているというところであります。
 これが横軸としますと、縦軸に、日本、米国、欧州のそれぞれのファンディングエージェンシー、ないし、天文台が関与しているという図でございます。これはもう少し後で分かりやすく説明いたします。
 予算分担については、日本が、先ほど申しました25%というのが下に少し小さい字で書かれておりますが、その下に、望遠鏡時間割合というのが書いてあります。大事ですので、ちょっと説明させていただきますと、日・米・欧・チリ以外の研究者に5%の観測時間を割り当てると、これは無料で出すということで、オープンスカイと呼ばれております。残りの95%を、チリ10%、日本22.5%、米国と欧州33.75%で割り当てた結果、日本の割合が21.4%ということで、これが割り当てられる観測時間に対応することになります。お金を出して、それに対応するリターンを得るということであります。お金というのは、実際は建設期間中ではほとんど日本の最先端技術を供給するというインカインドの形でございます。
 次、11ページでありますが、ガバナンスの構造、意思決定プロセスを図示したものであります。先ほど言いましたように、アルマ評議会というのが中心にありまして、前議長は大阪府立大学の大西利和先生で、大変的確な指揮を執っていただきました。左に所長会議とありまして、ここで大事なことを事前打合せして、正式にアルマ評議会で決定します。
その右側に、チャージということで矢印が出ていますが、評価委員会、それから、科学諮問委員会があります。アルマ評議会が、下の方のアルマ所長、副所長、その他の箱がありますけど、そこに指示をしていくということでございます。
 その辺のファンクションを示したものが次の12ページでありまして、世界望遠鏡としてのアルマを運用するということが説明されております。チリにあります合同アルマ観測所、これが先ほどの評議会の下にある観測所でありますが、日米欧共同で運用しまして、具体的な内容としては、気象条件に合致した観測プログラムの選択・実行、望遠鏡の効率的運用、装置保守、装置提供者の責任と予防点検、装置提供者の責任というのは、各部分がインカインドで供給されていますので、チリの合同アルマ観測所で保守する部分と、装置提供者が区分するものと両方あるという意味合いも含まれております。望遠鏡運転時間の高いアベイラビリティ実現、高いお金を使って維持していますので、何%運用できたかというのが非常に重要な指標となっております。
 日米欧で取り決めた機能と装置などを備えた地域センターの運用が行われていまして、その一つがアルマ東アジア地域センターであります。どういうことをやっているかというのが左下、例示で書いてありまして、観測提案、データ解析機能、競争が非常に激しいので、特に若い人たちに向けて支援が要る、ネイティブ言語による支援、天文プロパーでなく、例えば太陽系科学などの幅広い研究者層が利用可能なようにしていくということでございます。
 合同アルマ観測所の運用体制でありますけど、日本、米国、欧州がここに書かれているような負担率で負担して、運用経費、現地職員、全体で220名おります。それから、国際職員、40名おります。それらを負担しております。
 左下に組織図が書いてありますが、幾つかの技術部とか科学運用部がありますけど、例えば技術部長は水野範和国立天文台教授が務めております。日本の内訳としては、運用経費及び現地職員雇用経費の25%分担と10名の国際職員派遣ということで、これはお金でない人的貢献をして、国際的責務を果たしております。それから、水野先生は、この220人の職員のうち、最大規模のグループ、チリ人スタッフ140人より成る技術部を統括しているという重責を担っております。
 それで、東アジア地域センターの方でありますが、ここはプロジェクトマネージャがAlvaro Gonzalez国立天文台准教授であります。その下にいろんな役割分担があります。科学運用マネージャの深川国立天文台教授は先ほどの女性教授二人のうちの一人でございます。
 次に参りまして、先ほど国際評価を行っているということを申しましたが、2019年9月にはアルマ国際外部評価委員会が開かれます。その準備として、先日も国立天文台での委員会が開かれたわけですけど、議長はOschmannさんというBall Aerospaceの副社長だった方、宇宙研の満田先生、そしてさらにに川口先生が日本から加わっています。
 この国際評価委員会の目的ですが、そこに書かれておりますけど、プロジェクトの科学目標に対する進捗状況、予算や運用体制、将来の開発計画について、専門家による幅広い観点からの審査を実施するということで、先ほどの中心となるアルマ評議会に報告書を提出するということになっております。
 次に、現地雇用職員との団体交渉というのがありまして、これが非常に重要なこととなっております。背景のところで、2017年のチリ労働法改正により、団体交渉・ストライキの取扱いが労働者側に有利な状況となったこと、労働組合の組織率も上昇し、チリ現地雇用職員220名のうち、91%の組織率に達したこと、団体交渉は2010年より行われてきたことがそこに書かれております。
 2017年の労働法改正以降、初めてとなった2018年の交渉では、ストライキは辛うじて回避されたが、2020年に次の交渉がありまして、更に厳しい局面が予想されるということで、団体交渉で職員の給与がどうなるかが直接総経費に依存する感度が高いということで、この辺りを非常に注視して準備を行っているところで、2020年の団体交渉への準備状況ということで、アルマ望遠鏡の三者管理協定書に従い、各地域から参加する戦略チームが交渉の戦略を立て、チリ人からのみ構成される交渉チームが交渉に当たるということで、政府機関で勤務経験のある弁護士、人事マネージャなど、2018年交渉で力を発揮したメンバーで構成されるということで、かなりタフな交渉を引き続き行わなければならない状況です。
 もう一つありまして、最後に書いてありますが、チリ現地雇用職員と活発に意思疎通、及び、情報共有を行うということで、業務の明確な目標、アルマの運営組織や予算等の情報を共有というのが、職員の意識改革に取り組むとわざわざ書いてあるのは、やはり合同アルマ観測所の幹部と現場で働いている人たちの意思疎通が若干欠けていて、組合のプロパガンダが優勢であったという反省で、その辺を積極的に今から強化改善していこうということでございます。
 人材育成でありますが、先ほど申しましたように、日本から派遣された10名の国際職員が国際観測所で働いています。上司は外国人で、ほとんどの場合、外国人で、その人に評価も受けるということであります。水野先生は140名の現地雇用ということで、お話ししましたが、彼はスペイン語を自由に自在に操り、現地雇用職員をまとめ上げ、信頼を得ているということであります。
 それから、若い国立天文台准教授や助教がこの10名のほとんどなのですが、国際組織に入って活躍しているということで、次の世代の大きなプロジェクトを率いるリーダーになっていくというふうに天文台としても期待しております。そのほか、大学院生の派遣、みんなデータ解析ばっかりやっているのではなくて、いろんな装置開発をやっている若手もおるということがそこに書かれております。
 安全体制でございます。読み上げませんが、治安のよい地域に住むということ、在チリ日本企業との交流促進をする、夜間のタクシー利用促進、携帯電話の貸与、病院との緊急連絡カードを付与ということで、きめ細かい対応を行っているところであります。やはり日本に比べると盗難等が多くて多少不安があるということで、安全対策については十分注意しておるところでございます。
 次に、課題ということですが、ここはちょっと大事なので読ませていただきますが、学術の大型計画は、今後なお一層、国際共同利用研究の下で推進されると考えられます。大型計画を推進する際には、リスクを同定し、それを管理する必要がある。米欧の計画では、不測の事態のための予備費が用意されております。日本においても、研究開発法人のJAXAの大型プロジェクトではこういうものに対するものがあるというふうに認識しております。
 一方、日本には、その高い研究力と技術力をもって、最重要な装置等を分担することが期待されています。これはアルマにおいてもTMTについても実際そうであります。その重責に伴い、計画全体におけるリスクもまた低くないものがあるということで、リスク負担においても応分の責務を負うことが期待されています。日本の責によって計画が中断しないようなことが大事であるということで、リスクを管理し、その責務を負うことで、国際共同研究における日本が最も重要な決断の場で存在感を示し、計画を主導的に推進することが重要であると思います。
 現在、日本では、大学共同利用機関に関しては、学術の大型計画において予備費を申請することが認めていただいてないということで、これが大型計画に外国の地で体を張って邁進(まいしん)する職員の大きな負担になっているということで、課題ということで書かせていただきました。
 次に、17ページですが、論文数で見た成果でございます。アルマでございますね。右のところだけ見ていただければ、各地域の論文数分布で、望遠鏡時間割合は、さっきの計算で21.4%です。East Asiaからの論文が18%で、3%低い状態になって、これをどう見るかということであります。負担に近い値に近付けていく努力は行っております。一方、「nature」、「Science」については東アジアからかなり出ていまして、23%の割合を占めております。
 それから、各国の論文生産性が次のページにございますが、アメリカに次いで日本が2位ということで、その下にヨーロッパ諸国が並んでいるということで、ヨーロッパは全体として非常に強いのでありますが、各国分布で見ると、こういうことになります。それから、我々の仲間であります台湾、韓国においても非常に良い成果を出しており研究者の数等を考えますと、非常に良い結果であると認識しております。
 次に、科学目標、先ほど三つあると申し上げましたが、これの達成度であります。ちょっとお時間の関係で、この内容を説明しておりますと越えてしまいますので、ここに書いてある書き方をちょっと申し上げますと、最初に三つの科学目標に対する成果が書いてあります。それが、その下に、当該分野へのインパクトということで、その分野の研究にどういうインパクトを上げたかというのが総括されています。
 先ほど言いましたように、それからアルマ2にどうやって行くのかということを説明してありまして、例として、科学目標1について少し具体的に説明させていただきますと、この絵で円盤がどんどん解像度が上がっていく様子を示しておるわけですけど、一番左のハッブルの画像からすばるに行って、天王星の軌道まで行きました。アルマに行って、これ、ちょっと物理学的に見えているものが違うのですが、地球軌道まで分解されていると、1AUですね、地球と太陽の距離に当たるところまで分解されたことが見えます。
 それのインパクトが次のページにありまして、京都モデルと呼ばれる日本が先導しました標準的な惑星形成理論の見直しを迫られておりまして、例えば円盤の形に、左下で見るようないろんな多様性が生じているということ等があります。
 その次、どうするのかというのがその下にありまして、地球軌道スケールを見分けられる地球に近いところまで解像できているわけですけど、解像度を上げることで、その観測対象数を大幅に増やすことを目指します。今は近いところにある数天体しか見られないのを、2倍解像度を上げることで数百に増えるということで、多様性を完全に押さえるということで、アルマ2は、こういう意味で、科学目標1に関しては非常に重要であるということを書かせていただいております。
 科学目標2については、どれだけ遠方の銀河を観測できたかということで、右下の方に9というのがあって、ちょっと前ですが、これは大阪産業大学の井上先生の「Science」の記事ですけど、131億年まで達しました。次が、名古屋大学の田村先生ですけれど、下の真ん中の4ですけど、132億年まで達しまして、次は、大阪産業大学の橋本先生の「Nature」では132.8億年ということで、何かだんだん小数点以下でどんどん先まで行っているということで、遠くに達することに意義があるということじゃなく、宇宙再電離の謎に迫ることができ、物理学的にトランジションするところに入っていくことで、ここの遠くに延ばしていくということが非常に大事で、アルマがこの分野でも、多くの研究者に驚きを与えたわけですけど、非常に強力な武器であるということが分かったということで、これも感度を上げることで、一番大事な星がないところに入っていくということ、感度を上げてこのような新しい研究分野が開花されたことを述べさせていただいております。
【小林主査】  恐縮ですが、そろそろまとめていただけますか。
【常田国立天文台長】  ありがとうございます。
 じゃあ、ここはスキップいたしまして、最後は、大学の、もうあと1ページです。研究者がどう参加しているかという右下の絵だけ見ていただきたいのですが、国立天文台の研究者に加え、国立大学、公立大学、私立大学、その他の機関ということで、国立天文台以外のそれらが半分以上を占めまして、大学共同利用機関の共同利用観測ツール、観測装置であるアルマが非常に広く使われているということを示しております。
 アルマ2の計画状況については、最後の1枚でありますが、アルマ全体でロードマップを作成して、それに対応してアルマ2ということを定義して提案させていただいております。
 長くなりまして申し訳ありません。
【小林主査】  どうもありがとうございました。アルマ、すばる、共に非常に多くの研究成果を上げていらっしゃることはよく分かったところです。
 それでは、質疑に移りたいと思いますが、私の方から1点だけ。
 大変恐縮なのですが、本日のテーマが国立天文台の大型プロジェクトの推進についてということですので、どうしてもTMTについて伺わざるを得ないのですが、これについてはハワイ州に一義的に問題があり、国立天文台は、私、個人的には被害者だというふうに捉えてきたのですが、ただ、とはいえ、2019年6月ということになると、やはり適切な進捗管理をしているかということも今度はこちらも問われてきますので、どうしも伺わざるを得ないのですが、数年後にGMTが観測開始に入っていくことになると思うのですが、今、TMTとしては、遅くともいつまでに建設開始になり、遅くともいつまでに観測開始ができるのか、是非ここのところは伺いたいと思うのですが。
【常田国立天文台長】  今、小林先生が御指摘いただいたように、ハワイのいわゆる先住民族、ネイティブハワイアンと呼ばれる方の一部の反対運動で建設が止まっておるわけで、これは国内における実施責任機関は国立天文台でございますので、遅延によって大変な御迷惑を掛けているというふうに認識しております。
 現在、御承知のように、米国国内問題でありますが、ハワイ州最高裁で必要な裁判の勝訴を勝ち取りまして、TIO(TMT International Observatory)の本部とハワイ州当局で工事再開の準備をしております。工事再開はいつかというのが御質問だったと思いますけど、本年、間もなく、本年度ということではなくて、本年間もなく工事が再開されるように準備をしております。
 日本のTMTプロジェクト、天文台にプロジェクトオフィスがあるわけですが、先ほどのTIO及びハワイ州当局と密接に連絡を取って情報を共有しておるわけでありますが、非常に具体的にどうかということはちょっとこの場では、全体のコンティデンシャリティもあって控えさせていただきますけど、19年に遅くない時期に工事を再開するということでございます。
 それから、なぜ工事が遅れたかというところで、先生の方から、米国の文化とハワイの文化とのある種の意思疎通が欠けていたというような御趣旨のお話があったと思いますが、そういう面はありまして、日本はすばる望遠鏡もありまして、ハワイのコミュニティ、それから、ネイティブハワイアンコミュニティからは非常にポジィティブに受け取られまして、矛先が日本に来ているということはなくて、やはりTIOという、TMTという巨大な最先端科学施設が、彼らの聖地ですね、神様の地であるマウナ・ケアの山頂に建つということに対する違和感ということがありますので、我々がハワイコミュニティの中でいい位置におりますので、TIOのヘッドクオーターとともに、できるだけ意識の乖離(かいり)がない理解を頂くように、種々の活動を行っておるところであります。これらの活動、従来から行ってきましたけど、最近一層レベルを上げて行っているところであります。
 それから、もう一つ、小林先生の方から御質問がありました、いつ完成するかということですか、当初は2027年度と申しましておりましたけど、それが2029年度に遅れることになります。29年度というのがこの本格的な30メートルの望遠鏡としての活動の観測の開始でありますので、実際は、27年度近傍に部分観測、試験観測、ちょっと言い方ははっきり決まっているのですが、今思い出せないのですが、そういうものを開始します。
 セグメント鏡ですので、30メートルの直径に1.5メートルぐらいの大きさのミラーが敷き詰めてあるわけですけど、中心部から敷き詰めていき、一番確実にできる日本の研磨したミラーが一番重要な中心部を占めております。それだけで約8メートルの望遠鏡になりまして、すばると同じ性能になります。その日本の三菱電機の主に開発した望遠鏡構造に、日本が最終研磨したミラーを敷き詰めて、そこで、27年度前後に最初の科学的観測を行っていくということで、全体の完成は行われますが、できるだけそういう初期観測で装置の全体のキャリブレーションを行うと同時に、科学的成果も出していきたいというふうに思っております。
【小林主査】  ありがとうございました。
 では、ほかの。どうぞ。
【中野委員】  予備費についてお伺いしたいんですけど、現在、米欧からは予備費が出ているというふうに考えてよろしいですか。
【常田国立天文台長】  はい。そのように理解しています。
【中野委員】  その予備費の執行に当たっては、どういうふうな形で意思決定されているんでしょうか。予備費を出してない国には、その予備費をどう使うかということに対して、一切意見が述べられないという状況、それとも、例えば日本が提供したその最先端の装置に不測の事態が起こった場合は、その予備費を使いましょうという提案が日本からできるのでしょうか。
【常田国立天文台長】  基本的に、予算の横への移動というのはありませんので、飽くまでも国際的な分担というのは評議会で決められますので、その国、地域の責任において完遂するということで今まで守られてきました。
 それから、米欧がどういうふうに予備費を使ったかというのは、やはり予算上のことですので、必ずしもはっきりしないです。予備費、リザーブがあるということは分かっておりますが、それらがどのように執行されたのかまでは必ずしも確定的に分かっておりません。すみません。
【中野委員】  マイクロマネジメントというか、それぞれの国々が予備費を別々に使っているということですか。
【常田国立天文台長】  そういう理解であります。
【中野委員】  分かりました。
【山本委員】  今のことで、大体、規模としては、年間予算のどのぐらいの割合の予備費があれば足りると考えている。
【常田国立天文台長】  これは、申し訳ありませんが、担当者に回答してもらってもいいでしょうか、一言で。
【井口国立天文台副台長】  アルマでは、欧州が大体20%で、米国は30%ぐらいです。
【山本委員】  それは年間予算の30%?
【井口国立天文台副台長】  総額です。
【山本委員】  総額?
【井口国立天文台副台長】  総建設費のうち、米国は30%弱でした。
【山本委員】  いや、運用予算に関しては。
【井口国立天文台副台長】  運用予算については、予備費はないと聞いております。
【山本委員】  ないわけね。
【小林主査】  これは天文台だけの話ではなくて、例えばKEKさんでも、電気料金が上がったり、下がったりすると、予備費がなければ大変なことになりますから、これは全体としてこういう枠というのは、どうしても国際共同研究、国際共同費用分担をやっていく中では、どうしてもこれは必要なところで、どこかで検討していかなければいけないことだろうと思います。
 ほかに、よろしいでしょうか。では最後でよろしいでしょうか。
【中野委員】  このところ、一番新しいのはやはりマルチメッセンジャー天文学の急速な発展だと思うのですが、例えば重力波が観測されたら、その方向に合わせないといけないんですけど、そういうときの決定というのはどの国がどういうふうにしていくんでしょうか。
【常田国立天文台長】  すばる望遠鏡ですと、すばるの所長が、すばるのいわゆる所長保持時間を持ち、この時間を使って決定して、今まで動いている観測から動かして、そのイベントに対応した観測を実施します。アルマの場合は、どうするか、元プロマネの井口先生、お願いします。
【井口国立天文台副台長】  アルマの場合は、すばるのようなマルチメッセンジャーを想定したイベントに対し、直ちに観測が実行できる対応はまだできておりません。
 ただ、実は、こういう突発イベント、ニュートリノバーストや中性子合体による重力波、特にガンマ線バーストでは、そのエネルギーが電波まで落ちてくるのに数日掛かるようで、今すぐに対応をしなければならない状況にはいと考えております。ただ、今、台長が述べたように、光赤外ではイベント発生後直ちに観測を開始しなければならず、すばるの超広視野をもってすれば、発生源の天体位置を早期に同定することができると我々は考えています。
【小林主査】  ありがとうございました。
 まだ御質問ある方もいらっしゃるかもしれませんが、時間の都合もありますので、続きまして、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所より、発表の方をよろしくお願いいたします。
 天文台の方は、どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。
【後田素粒子原子核研究所教授】  それでは、Super KEK B-factory、SuperKEKBとBell eII について御報告いたします。高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所の後田と申します。よろしくお願いします。
 本日お話しすることは、プロジェクトについてイントロをした後に、要求されておりますこの項目について話します。国内外コミュニティの学術的動向、国際協力、共同利用研究体制の実態、それから、プロジェクトのマネジメント状況、その他国際的な側面についてコメントいたします。
 まず、SuperKEKBとBelleII ですが、SuperKEKBという加速器、高エネ研のつくばキャンパスにある周長3キロのリングがありまして、そこを使った加速器です。ここで、1999年からこの前身の実験をやっていたわけですが、それを高度化したというものでして、新しい衝突方式、ナノビームという衝突方式を実現させることによって、衝突の性能を現在の世界記録の40倍に向上してやろうというものです。
 前身計画でやると500年掛かるようなデータを、10年程度で製造してやろうと。実際、反応としてはB中間子がペアでできるような反応とか、タウのペアができる、チャームのペアができるといったものが、500年分といいますと、合計で1,600億対というものなんですが、これを10年程度で製造するということで、それがプロジェクトの名前のSuper B-factoryのfactoryの由来になっています。
 Googleで調べただけですが、車を世界で年間何台ぐらい新規販売しているかというと、年間1億台ぐらい、スマホで14億台ぐらいなので、これを10で割ると、平均して年間160億対ということで、スーパーファクトリーと呼んでも過言ではないかなと思います。
 この新しい衝突方式によって、この右上の絵は、横軸が年で1970年から2020年ぐらいまで書いてあって、縦軸が衝突性能を対数でプロットしているわけですが、今まで電子、陽電子衝突型の加速器、世界中のものが競争しながら、この性能を上げていっていた中で、前身のKEKBというのがその最高記録を持っておりまして、それを40倍に高めるというものになっていまして、ここにブレークスルーがあるということです。
 それから、測定器の方、この3キロのリングの1か所で反応を起こして、そこで、その素粒子の反応を記録するわけですが、そのための測定器、縦横高さが8メートルぐらいで重さが1,400トンぐらいの大きなものですが、それがBelleIIと呼ばれる測定器です。こちら、前のものより性能が良くなっていまして、素粒子反応を詳細に記録するための目になっています。
 1秒間に、先ほどのこういったものが2,600対ぐらい起きるんですが、そのほかの反応も含めてやって、1秒間に3万回、この素粒子反応のデータを記録することができます。世の中に言われるハイスピードカメラというのはピンキリなんですが、1,000fpsぐらいあると非常に興味深いスローな動画が撮れるわけですが、BelleIIは3万回撮れるということで、実はその3万回もそれぞれが小さな動画になっているということで、実はもっと凄(すご)いんですが、非常に高性能な記録装置になっています。
 これらを使って、宇宙初期に起きていた反応を人工的に再現してやる、それを観測してやるということをやります。それによって、素粒子の標準理論を越えるような新しい物理現象を探索していると。それによって、例えばこの宇宙の中に反物質がなくて、何で物質だらけなのかとか、暗黒物質が何なのかとか、そういった大きな謎の解明へと繋いでいくというわけです。
 これは精密測定の一環としてやっていまして、いろんな業界で精密測定を行うと良いことが、凄(すご)いことが分かるというのはよくある話なんですが、例えばCMB、宇宙背景放射を観測したのもCOBEから始まって、WMAP、Planckをやって、どんどん精密に測ることによって、インフレーションからその後の物質と光の相互作用まで分かるようになってくるのと同様に、我々もこのB-factoryで、この絵にあります三角形を何となく測っているわけですが、B-factory以前は、ここに三角形があるかどうかも何も分からない状態でした。これはB-factoryをやることによって、ここに確かに三角形がありますねということを確認して、これが小林益川のノーベル賞に繋(つな)がっています。
 次にやろうとしているのは、これを、まだぼんやりしているので、これを更に高精細に測ってやると、実は、小林益川では予言し切れていなかった新しい現象が隠れているんじゃないかということです。
 何でそんなことを言い出したかというと、小林益川による粒子、反粒子の違いというのはこの宇宙の粒子、反粒子の違いを表すには足りていないから、きっとそこには別のものがあるだろうということが分かってきたからで、それをちゃんと調べてやろうということで、Super B-factoryで実際に、素粒子が標準理論だけで記述されるような反応と、標準理論と別のものが入り得る反応というのを比べてやって、その新しい物理を取り出してやるということをやります。
 このようなブレークスルーを伴う新しいプロジェクトなので、世界から注目されておりまして、たくさんの人が日本に集まってきています。ヨーロッパから400名、アジアから210名、アメリカから150名、日本に160名、併せて900から1,000弱ぐらい、これ、2月の時点の数字ですが、たくさんの人が集まっています。国籍という意味でいうと、日本人が150名ぐらいです。ほとんどは日本にいます。あとは数名です。
 26か国、113機関、きのう、実は2機関、追加がありました。1,000名弱の研究者が集まっていて、この計画のR&Dを開始したのは2000年頃なんですが、建設を開始したのが約10年たって2011年春で、その後、5年ぐらい建設をやった後で、2016年に試験運転をやっています。更に建設を進めて、2018年には調整運転をして、4月に初衝突を記録している。その後に、最後の検出器を挿入して、この春3月から本格的な物理運転を開始したところです。建設当時、開始当時は400名ぐらいだったのが、今、もう倍以上に膨れ上がっているということで、注目の高さが伺えると思います。これからどんどん走ってデータをためていこうという段階にあります。
 世の中の、うちの業界のですが、学術的動向としましては、そもそもそういった新しい物理を探そうというアプローチには二通りありまして、高エネルギーな衝突によって、そういう未知の重い粒子を直接作ってやろうというアプローチ、それがヨーロッパで行われていますATLASとかCMSとかいったLHCの実験ですね。それと、別のアプローチとして、未知の重い粒子の量子力学的な寄与を精密測定によって見付けてやろうと、そういうもの、ここに全部挙げ切れてないんですが、大きな計画としては、うちのBelleII 実験とヨーロッパのLHCb実験というのが挙げられています。
 現在、その直接探索の方でヒッグスは見付けたんですが、期待されていたSUSY粒子というのは今のところ見えてないというわけで、彼らはもうちょっと重いところまで探そうとしている。もしかしたら、SUSY、簡単に見つからないので、SUSYじゃないかもしれないということで、虚心坦懐(きょしんたんかい)に新しい物理が何かを探そうという段階で、理論ではなくて実験主導で次はどんな理論が正しいのかというのを決定したいという、そういう段階にあります。
 直接は見えてないんですが、実はLHCbとか、前身のBelle実験とかで新しいというか、何か怪しげな兆候が見えております。何かもうちょっとデータがあると確認できるかもしれないというところにあって、なので、BelleIIからの独立な報告というのが非常に期待されているわけです。
 LHCbとはライバル関係にありまして、できるところがオーバーラップして、ちょっと違っていたりするんですが、うちですね、SuperKEKB、BelleIIは電子陽電子をぶつけるクリーンな環境での精密測定ができることが売りです。このBとかDとかτといったものにアクセスできると。LHCbはハドロン反応なので、余りきれいではないんですが、大量のデータが得られるということで、ちょっとタイプが違います。BとBs、Dといった形で、τにはアクセスは余りできないんですが、ちょっとずれてオーバーラップした観測網になっています。
 それで、運転計画ですが、今後、年間8か月から9か月、運用することを期待してやっていますが、そのときに、これまでの前身のKEKBの経験からすると、4年ぐらいで設計性能に到達できるんじゃないかと考えていて、それに従って性能をだんだん上げていきながら、データを蓄積していくと、この緑の線にあるような感じで、年とともにデータがたまっていくというわけです。
 先ほど言ったような何か怪しげな兆候があるといったものが本当だとすると、こういった形でデータがたまるにつれて、3σとか5σとかいった形で新発見が報告できるというわけです。3σ、5σと言ったのは、我々、標準理論とそれとは違うというものを測りたいわけですが、何か測ると、統計的にその値がふらついてしまいます。なので、何か別の値が得られたと思っても、それが単なるふらつきなのか、別の新しい現象なのかというのはすぐには分からない。
 3σあったら、その3σの間に入るのは99.7%という高い確率で、5σまで行くと、9が6個ぐらい並ぶような高い確率なので、そこまでいけば認めましょうということで、うちの業界は標準理論もそのような実験結果に基づいて築き上げてきました。なので、この3とか5というのを超えないとニュースにもなかなかできないし、認めてももらえないということで、これが一つの目標になります。
 これを推進する体制ですが、ここに大きな枠があるのがKEKですね。KEKとKEKが招集する外部委員会が書いてあります。こちらの枠がBelleII国際コラボレーションという形で別の組織です。これから説明します。
 KEK内には、素粒子原子核研究所が測定器と物理の担当をしていて、加速器研究施設というのがあって、加速器の担当をしている。あと、共通基盤が協力してくれていて、もちろん管理局も協力してくれていると。これらが一堂に会する会議というのがBファクトリー計画推進委員会というのがあって、この下に推進室打合せというのがあって、もうちょっと小規模に、もっと頻繁に会議をしています。この辺に書いてあるのが外部評価委員会で、これについては後で説明します。
 加速器側は、海外機関と個別に技術協力をするという形で基本的にはやっています。一応、KEKの多国籍ラボという仕組みを使って、日米、日仏などの加速器専門家と協力してやる。測定器側は、別の何か一つの国際組織というのを作っています。
 こちらの国際コラボレーション、BelleIIの中身ですが、一番上に書かれているのがInstitutional Boardといいまして、参加機関の代表者から成る議決機関です。国会のようなものです。
 その下に書かれているマネジメント、執行部がいて、中にはSpokespersonと呼ばれる選挙で選ばれた実験の代表者と、プロジェクトマネージャというのは私ですけれども、こういった場で話をする役割だったりとか、マネジメントする人ですね。ファイナンシャルオフィサーというのがあって、右に行きますと、その執行部の下にある例えば諮問機関であるExecutive Boardであったり、運営費の財務を担当するFinancial Board、それから、Computing Steering Groupですね、というのが計算機資源について管理をしています。
 下に書かれているのが研究活動の推進のための組織で、測定器やデータプロセスとか、運転、それから、ソフトウエア、計算機、物理解析などについていろんなグループがあって、推進していると。
 それから、左の方に書いてあるのは、左上ですね、これが研究生活に関わるところで、Speakers Committeeというのが国際会議で誰が登壇するかというのを決めるような、それから、Publication Committee、これは論文を出版するときに誰が著者になってとか、どういうところに出してとか、そういう管理をするところ、Shift + Service Committeeというのは運転当番、誰がいつ取って、それが何カウントあるかとか、そういった管理、あと、サービスの方は、運転当番でないデューティをどれだけやっているのを管理する。Outreachは広報活動ですね。それから、Diversity Officersというのがあります。
 組織上の決定はこの議決機関がやると、Institutional Board。それから、分担する運営費の決定というのはこちらのM&Oと呼ばれる、ここですね、Financial Board、技術的な決定はこの下にあるTechnical Boardが担当して、CSGは先ほど説明しました。全体方針の決定はこの諮問機関であるExecutive Boardが行う。
 Spokesperson、ここのマネジメントのトップにあるSpokesperson、ちなみに、この金曜日からここに来ている飯嶋さんという名古屋大学の先生が代表者に選ばれたわけですが、Spokespersonと物理コーディネーターですね、この二人は、構成員全体が投票して選ぶということになっています。勝手にKEKが決めていいものではない。
 Institutional Board、この議決機関、国会に相当するものの代表というのがまた重要な役割を果たすわけですが、こちらもそのIB、Institutional Boardの構成員の互選によって選んでおります。Deputyを1年間やった後で、Chairとしてもう一年Serveしてもらうと。その他の役職はSpokespersonがEBと相談しながら決めて、同意の上で、IBがRatifyすると。
 そういったことはBelleIIのby-lawsと呼ばれる規定に、規約集に書かれておりまして、今、16ページぐらいあるものですが、それはウェブで公開されております。これを変更するためには、3分の2の同意が必要という形で運営しています。
 コラボレーションに加入するためにはどんなことが必要になるか、そもそも入るのはどういう人かというところからお話ししたいと思いますが、参加機関の興味としては、持っている技術を生かしたいとか伸ばしたいとか、そういったことです。
 あるいは、この時期になるとデータがもう出てきますので、これを解析したい、物理論文の著者になりたい。コラボレーション側としては、そういった人に来てもらうと、専門性を持った人たちが測定器の運転、維持をしてくれるし、ソフトウエアの整備、改善が進むのでうれしいと。運転に必要なコスト、維持費、計算機、シフト要員の分配ができるのでうれしいと。新しいアイデアを持って入ってくれるので、そういったものが導入できるのもうれしいということです。
 新規参入機関、このバランスで決まるわけですが、新規参入機関は、応募の動機、グループの規模、歴史、service taskとして何をするかとかを表明して、推薦書を添えて、先ほどのIBに申請をして、コラボレーションとしては参加を許可したらメリットがちゃんと得られると、グループの規模とかファンディングがちゃんと適切になされているかとか、過去の実績は良好かなどを審議して、投票して、これを認めるかどうかを決めるというわけです。
 参加機関は、当然、入ったからには、service taskをやるといったことはやらないといけないし、各種のシフト、運転当番を取って、資金と計算機資源の割当て分はちゃんと充足すると。一方で、参加研究者はデータを解析してよくて、データは共有されておりますので、それを自由に解析できて、物理論文の著者、これはコラボレーションの共著として出すわけですが、その共著の著者になる権利を得ることができます。
 これら進捗の外部評価ですが、二つ、進捗を評価するものが二つあります。まず、素核研側ですね、測定器側、Bファクトリー実験専門評価委員会、我々がBPACと呼んでいるものですが、11名の委員と、審査のテーマに応じて、委員外の専門家を毎回5から9名程度招集して審査を行っています。年に3から4回ぐらい実験していて、直近はこの2月にあって、次は来週ですね。報告書が毎回出てきていると。委員はこういった世界の著明な物理学者です。あるいは、測定器の専門家。
 Bファクトリー加速器レビュー委員会というのは加速器の専門家の方で、加速器の評価委員で、16名の外部委員とKEKから4名の役職指定メンバーが入っておりまして、年に1回ぐらいの頻度でやっております。こう見ると、二つ独立にやっているかのようですが、それぞれ双方の会議にお互いに出席して議論するのと、あと、委員の一人には両方の委員会を兼務していただいております。こういった審査の内容とか、報告書とかも全てウェブで公開されています。
 それから、海外との費用分担ですが、建設ももう費用を分担して行ってきたわけですがそこは終わったので、これからの運転のお話をしますと、加速器の運転維持費というのは国際的合意に基づいてICFAのガイドラインというのがあるんですが、あれに基づいて、ホストであるKEKが負担、全額負担することになっています。これはお互いさまで、我々が外国のこういう似たような国際協力実験に参加するときは、加速器の運転費、出しなさいとは言われずに、その施設を利用することができます。
 それから、測定器の方は国際分担でやってよくて、実際、国際分担でやっています。運転維持費が年間、最近だと3億に、2から3億円と書いていますが、3億に近いですが、ホストであるKEKが半分、残りをそれ以外が、学位保持者数に従って分配するということで、現状大体60%が日本の負担になっています。
 それから、計算機維持運転費、これ、計算機も非常に強力な計算機が必要なので、日本だけで賄うことはなかなか難しくて、仮に日本だけでやったとすると、年間23億円ぐらい必要になってしまうということで、海外に協力してもらって、海外のいろんなサイトにあるCPUとか、記録するためのリソースをネットワークでつないで利用していると。日本の負担分は20%程度というので、かなりの額が海外から貢献として得られています。
 これら、日本の負担分、KEKの負担額として併せると、年間約80から90億円になります。
 こうした運転維持費と計算機資源の管理ですが、素核研の下にある財政監督委員会、それから、財政監督精査委員会ですね、フィナンシャル・オーバー・サイト・パネルとこのスクルティニー・コミッティーですけど、これと先ほども登場したBPACが審査します。BPACはこの計算機の資源の見積りが妥当であるか、それが正しく使われているかといったことを審査します。そのFOP、スクルティニー・コミッティーの方はその運転、運営維持費の方ですね、M&Oの方が正しく使われているか、予算は妥当かということを審査します。
 それを、例えば2020年4月からのリソースのためには1年以上前から議論を積み重ねていまして、このFOPの会議というのが大体10月ぐらいに行われるんですが、それに合わせてステップを踏んで、認めてもらうと。それに基づいてリソースを用意して、4月から活用するという形になっています。
 そのほか、国際的な運営についてコメントですが、そもそも素粒子の大型計画では、物理目標を達するために国際的な協力が不可欠になっていまして、長年の間、それを当然のものとして受け入れる土壌が既にありますので、規制の枠組みというのがあります。なので、我々のところでも、参加機関の義務と権利は明確にされていますし、参加研究者による投票で代表者を選びますし、議決によって、参加機関による投票で重要項目は議決します。こういった一般的な組織運営を行っている。
 測定器運転のための予算や資源の分担というのは、学位を保有する研究者数に応じて公平に決められて、審査の仕組みも確立しています。物理解析のために必要な計算機資源やデータは各地に分散されて共有されます。情報の区分ごとの共有方針というのも明文化されております。
 それから、研究者、技術者ともに、特に国境は意識してなくて、協力して課題を遂行します。若手研究者のキャリアパスとしても、国境に関係なく、コラボレーション内、あるいは、外に広がっています。プロジェクトとしては、可能な限り、single point of failureをなくしたくて、このために、情報共有というのはもちろん国境関係なくしますし、技術移転も進めております。
 そんな中で、公平な運営をするんだから、わざわざホストしなくても行ってやればいいじゃないかという考えもあるんですが、どんなメリットがホスト国にあるかというと、そもそもホストができる国というのは限られていまして、高度な加速器・測定器の技術が必要というのはもちろんですし、エンジニアリングのスキルも要るんですが、インフラが高いレベルでなきゃいけないし、ロジもしっかりしてないといけないしということで、国際組織の運営能力というのが求められますので、なかなかできるものではないんですが、そのために、ホストをすることは日本の国際的信用を高めることにつながる。海外に行くだけではなくて、日本でしっかりホストしておくと、胸を張って、海外でやっている実験にも参加できるということです。
 それから、もちろんプロジェクトが成功した際には、その最大の栄誉はホストしたところが得られます。日本のおかげでこんなプロジェクトが成し遂げられて、成果が得られたと言えるわけです。
 それから、世界中から、先ほども人が集まっていると言いましたが、人は技術を持ってくるので、最先端の技術と頭脳が集まって、非常に大きな高度な頭脳循環、知の拠点としてそれが日本に実現されるということで、そこで技術交流が進んで水準が向上できると。そういった最先端の施設が身近に日本にあるということで、国民にその科学のすばらしさを通じて、夢と希望を与えることができるというわけです。
 これを前身のBelle計画……。
【小林主査】  申し訳ありません、時間かなり過ぎていますので、まとめていただければと思います。
【後田素粒子原子核研究所教授】  あと1枚です。
 簡単に比較しますと、Belleの頃は、建設費、運転経費、全てKEKが負担しておりました。計算機の資源もそうです。だから、一部例外はあるんですが、ほぼ全てというか、日本がやった、外国から人は来るけれども、日本の計画という形でした。運営は一応国際的にやっていまして、選挙によって代表は選んでいるし、先ほど言ったボードというのもありました。
 発表の仕方とか、そういったのも国際的でしたが、そういう意味では、国際的に資金繰りからやったというふうに、本当の意味での国際コラボレーションになっていると。その代わり、何だろう、昔は、隣のドアの人のところをノックして物事を決めればよかったのを、今はそうはいかなくて、ちゃんと提案してボードで承認を受けてという、そういった手続は経なければいけない。
 ということで、まとめを読み上げるのは省略しますが、お伝えしたとおりの国際的な運営をしております。
 すみません、遅くなりまして。
【小林主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、どなたからでも御質問。はい。
【松岡主査代理】  御説明、どうもありがとうございます。
 資料の9ページ、10ページ辺りにありました国際コラボレーションとそれに加入の手続辺りについてちょっと知りたいことを質問させてください。
 ちょっと質問ポイントは三つほどあるんですけれども、まず、加入を、これ、グループでやるというような環境の今日、御説明があったんですけれども、やっぱりある程度の大きさのグループの加入をもう前提としているのか、例えば個人レベルで加入するとかいうことには対応していないのかということが一つ。
 それから、二つ目がかなり公平な、メンバーにとっては何か権利は公平であるというような、そういう体制を取っていらっしゃるということなんですけれども、得たデータを、もうコラボレーションであれば、もう誰でも、ちょっと極端な話をすれば、昨日加入した人がもういきなりほかの人が何か取った、ほかの人がということもないですけど、取ったデータが使えるような状況になっているのか、それとも、さっき発表についてはちょっといろいろそれを決めるところがあるという話がありましたけど、そういうところである程度何かちょっとそういうところを考えるような仕組みというのができているのか。
 それから、三つ目は、逆に、このコラボレーションの外にデータを出す、例えば一定期間たったデータは出すというような、そういうような仕組みがあるかどうかというのを、できればちょっとそういう何か体制にしているポリシーみたいな考え方をちょっと補足して説明いただければと思います。
【後田素粒子原子核研究所教授】  たくさんあると、私、覚え切れないんですが、一つ目が、だから、個人で参加できるかどうか。個人レベルだと、やっぱりリソースがちゃんと続くかとか、タスクを与えてちゃんとこなせるかというところを疑問視されるので、ある程度のクリティカルマスといいますか、ないと入れないことになっています。
 ただ、例外というのがあって、日本の原子核とかハドロンの研究をする研究室で非常に小さいグループが各地にあるんですが、そういった方々が実はコラボレーションに入る素粒子の実験なんですが、そういったところのデータもいいのが取れるんで、そういった方が集まってきて研究をしたいといったときに、個別に、じゃあ、東北大学のこの一人の人に入ってくださいというのはなかなかちょっと難しいなということで、例外的にそういった人たちを一つのコンソーシアムにまとめて、一機関と認めて、15名ぐらいですかね、10名ぐらいですかね、その方が入っているという例があります。そういう運用をしております。
 二つ目が……。
【松岡主査代理】  すみません、メンバーに対して公平にしているというのがちょっとどういう。
【後田素粒子原子核研究所教授】  参加したときに、すぐに著者には載れません。一応、規定上は、半年相当のサービスタスクをちゃんとこなさないと駄目ですよということになっているんですが、昨日も実は深夜まで議論していたんですが、半年相当って一体どういうことやというところがこれからちゃんと明確にしないといけないんですが、そういう細かいことを除くと、すぐにはなれないということははっきりしていると。
 それから、国際会議で登壇する上でも、コミッティーがちゃんと見ていて、この人は、複数候補が、登壇者の候補があるわけですが、この人はこのぐらいの仕事をしている、あの人はしていないから、じゃあ、この人にしましょうというのはちゃんと選択するようになっています。
 それから、三つ目が。
【松岡主査代理】  最後がもっと広い開示。
【後田素粒子原子核研究所教授】  公開ですね。うちの、素粒子の実験ではなかなかそういうことはこれまでやってきてなくて、その背景には、測定器というのが一つのプロジェクトで非常に特化した測定器を使うわけですけど、そこの測定器の反応とか誤差とかというのを完璧に理解できているのが自分たちしかいないだろうというのがあります。
 これは単にデータを公開すれば、誰でも解析できるのかというと、恐らく間違った使い方をするんじゃないかと思っていて、それを正しく理解できる人だけに公開しましょうということで、グループ内に限って解析をして良いようにしています。
【松岡主査代理】  よく分かりました。ありがとうございます。
【小林主査】  それでは、中野先生、山本先生までということで、では、順番にどうぞ。
【中野委員】  順調に海外からコラボレーターは増えているんですが、その一番の原因は、LHCでは新粒子は見つかっていないという消極的なものなのか、それとも、LHCbよりもこちらの方がいいという比較なのか、それとも、一旦走り始めたら最後まで走り切ってくれるんじゃないかという日本に対する期待なのか、いろんな理由はあると思うんですが、何が一番でしょうか。
【後田素粒子原子核研究所教授】  今の中では3番目が一番大きいと思います。やはりこれまでも苦労して作り上げたものを当然走らせると世界中思っていて、だからこそ、今、非常にたくさんの人が流れてきています。
 私としては、もちろんもうちょっと早く来て、造るところを手伝ってほしかったんですが、データがあると分かると、たくさんの人が、実際にLHCbを今までやっていたけど、やめて、こちらに来るという人も入ってきています。
【山本委員】  非常に進んだコラボレーションのシステムだと私は思います。それで、ただ、これが若手の研究者の育成とか、我が国でのそういう、何というか、学術の発展に資するための基盤を形成するという点で、どういうふうにお考えですか。このやり方というのはどこか矛盾があるのか、それとも、これでもうパーフェクトだと、そういう面においてもパーフェクトだと考えているのか。
【後田素粒子原子核研究所教授】  若手の育成に関しましては、この前身計画で実際、たくさんの若手を輩出していまして、素粒子実験、うちだけじゃなくて、あちこちのプロジェクトで非常に重要な役割を果たしている研究者がうちの元のBelle実験卒業者だったりするんで、非常にうまくいっている方だと思います。
 その背景には、たくさん、ファクトリーと言いましたけど、たくさんの粒子ができる、別の種類の粒子ができる。それぞれの粒子の壊れ方というのはものすごく多くて、一人の学生が来たときに、それを解析するのに何でも選べるんですね。大きな実験だけど、これしか測れないとか、そういったものじゃなくて、非常に選択肢が広いので、人がやらないことを自分の力だけでできてしまうというんで、やったことは正しくその人の業績だと評価してもらえるので、そういった意味で非常に若手の育成にも役に立っていると思います。
【小林主査】  どうも、それでは、ありがとうございました。
【後田素粒子原子核研究所教授】  ありがとうございました。
【小林主査】  進行不手際で申し訳ありませんが、あと5分ほどお時間を頂ければと思います。
 2019年度に実施する大規模フロンティア促進事業の進捗評価について、資料4に基づいて、事務局から資料の説明をお願いいたします。
【小林学術機関課課長補佐】  それでは、事務局から資料4につきまして簡潔に御説明させていただきます。
 資料4につきましては、来月から実施を予定しております大規模学術フロンティア促進事業の進捗評価についての御説明であります。なお、詳細につきましては、この後、事務局の方からメールにて補足いたしますので、この資料は簡潔にさせてもらいたいと思います。
 まず、一つ目のポツですが、今年度、2019年度に実施する進捗評価の対象についてでございますが、二つで考えでおります。一つ目がすばる、もう一つがTMTでございます。その下の括弧に経緯を書いておりますが、すばるにつきましては、2017年度に既に進捗評価といったものを実施しておりますが、その際、フロンティア事業の進捗評価について、平成30年5月18日時点ですが、両プロジェクトが将来的に一体的な運用を目指していることから、TMTの現地における建設再開を目途として、あわせて、2019年度に進捗評価を実施することとなっております。
 先ほど台長の方から、工事の再開については、本年間もなく実施できるように、ハワイ州の当局と密接に連絡を取り合っている旨、御説明いただきましたので、事務局といたしましては、今年度、すばるとTMTの進捗評価を実施したいと考えております。
 1枚ページをおめくりいただきまして、二つ目のポツ、現地調査でございますが、今回の進捗評価における現地調査につきましては、後日、日程調整をさせていただきたいと思っております。
 また、最後、簡潔に、4ポツ目、実施機関からのヒアリングでございますが、実施機関からの説明、ないし、質疑応答、最後、意見交換を実施いたしました合計2時間、120分を考えております。
 以上でございます。
【小林主査】  ありがとうございました。
 ただいまの説明に対して、御意見あれば、事務局までメールでお願いをできればと思います。
 2010年度に実施したすばるの進捗評価の留意事項として書かれておりますとおり、将来的な一体的運用から、TMTの進捗評価時に合わせて、改めてすばるの進捗評価を行うということになっております。次回、両方のプロジェクトについてヒアリングによる進捗評価を行うことになりますので、委員の皆様におかれましては、よろしくお願いいたします。
 なお、専門的な見地からのアドバイスを頂くために、数名のアドバイザーにも協力いただくことになっておりますが、アドバイザーの選出においては、事務局と調整しますので、私の方に一存を頂ければと思います。
 また、現地調査にいては、事務局より説明のあったとおり、後日、調整をさせていただければと思います。
 最後に、事務局から今後のスケジュールについて説明をお願いします。
【小林学術機関課課長補佐】  それでは、資料5、今後のスケジュールでございますが、次回は2019年7月の中旬から8月の下旬で合計2回ほど、進捗評価として考えております。なお、こちらにつきましては、個別案件の評価になりますので、非公開になる旨、補足させていただきます。
 以上でございます。
【小林主査】  ほかに何か事務局からありますでしょうか。よろしい……。
【小林学術機関課課長補佐】  先ほど申し上げましたとおり、進捗評価の詳細につきましては、また事務局よりメールにて御案内いたしますとともに、もし紙の配付資料を机上に残していただければ、後日、郵送させていただきます。
 以上です。
【小林主査】  本日の会議はこれで終了とさせていただきます。ちょっと1分ほど伸びましたが、申し訳ありません。どうもありがとうございました。

お問合せ先

研究振興局学術機関課

機構調整・共同利用係
電話番号:03-5253-4111(内線4299,4085)