第5期研究費部会(第16回) 議事録

1.日時

平成22年5月27日(木曜日) 10時30分~12時30分

2.場所

文部科学省13F1~3会議室

3.出席者

委員

 有川部会長、小林委員、佐藤委員、鈴木委員、田代委員、中西委員、三宅委員、井上(明)委員、井上(一)委員、金田委員、鈴村委員、谷口委員、宮坂委員

文部科学省

 山口学術研究助成課長ほか関係官

4.報告概要

 事務局より、参考資料1「平成22年度科学研究費補助金の配分について」、参考資料2「科学技術基本政策策定の基本方針(案)」、参考資料3「研究開発を担う法人の機能強化検討チーム中間報告」、参考資料4「研究開発システムワーキング・グループ中間とりまとめ(案)」について報告を行った。

5.議事録

(1)科学研究費補助金の在り方について

 事務局より、資料2「科学研究費補助金に関し当面講ずべき措置について(報告)(素案その2)」について説明を行った後、審議を行った。

【有川部会長】
 前回の研究費部会での議論を踏まえて整理し、最近の事業仕分けや外的なことも取り入れた上で、「科学研究費補助金に関し当面講ずべき措置について(報告)(素案その2)」をまとめていただいており、時間までご議論いただきたい。分量がかなり多いので、区分を設け、その中で議論していただくのが効率的だと思う。まず見え消し版の「資料3」であるが、1ページから9ページまでの、これまでの検討の経緯についてご意見があればいただきたい。

【三宅委員】
 <事業仕分け第2弾について>の4ページの最後に、研究開始後の評価という話が出てきており、後にもたくさん出てくるが、事業仕分けで言われている評価とは、「最初にこういう成果を出します」と言ったものが成果として出ることに重点をおいているのか。そうだとすると基盤研究として実施したときに、当初に目的とした成果を出すことを目標にすると成果が出るような申請しかしなくなるのではないか。もう一方では独法ができ、チャレンジングな研究も基盤研究の中でやれることが大事という話があることを考えると、この評価というものを相当多面的に考える必要があると思うが、仕分けの中で言われている評価というものはどういうところに力点があるのか。

【山口学術研究助成課長】
 非常に難しい問題だが、事業仕分けの中で言われていることは、一つには、政府として税金を使う以上は国民の理解を得られる形にしなければいけないというのが大前提としてある。その観点で言えば、どのような成果が上がっているかについてきちんと評価すべきという議論だと思うが、科研費が対象としている基礎研究については評価が非常に難しいことは評価者の先生方もご認識だと思う。ただ、一切評価なしでやるわけにはいかないので、そういう面ではどのような評価が行われているのかというご質問があった。
 その中では研究種目に応じて、金額や研究期間に応じて中間評価、あるいは進捗状況評価、事後評価等々行っているが、研究として見た場合には、次の補助金へアプライしたときにそれまでの実績がきちんと評価されることが科研費では非常に重要であると説明しており、研究者同士で評価が行われていると思う。
 例えば、研究期間が3年間や2年間であれば頻繁に評価の時期が来るが、研究期間が5年間になったときにかなり長いのではないかというご意見もありうるので、今まで、あまり議論はなかったが、ご議論いただければと思い、※印を附している。
 4ページの<事業仕分け第2段について>の最後の2行は、評価が適切に行われているかどうか、特に成果が上がっているのかどうかが国民の目から見てわかりづらいということの問題提起としてあったということである。

【有川部会長】
 これは税金を使ってやっている事業であるので、納税者に対する説明のために何らかの形の評価を行うことが重要である。実施方法としては、次の補助金の申請のときに行う方法があると思うが、現在でも研究成果報告書などは作成しており、論文を出すときも、何によってサポートされたのかは書くという習慣ができているが、それ以外に、基盤研究などの成果や中間の成果を評価するような評価の手法が開発されてくるのではないのかと思う。日本学術振興会でそういったことを検討されていくと思う。あまり詳しくやりすぎると、かなり時間がかかるし、ある種の計量的な評価も含めて可能なのではないかと思う。ただ、きちんと評価を行っているということはきちんと示しておかなければいけないと思う。

【谷口委員】
 若干印象と意見とを申し上げたいと思うが、先ほどから社会に対する責任、タックスペイヤーに対する責任という議論もあり、社会に理解を求めながら研究を進めなければいけないという視点からも事業仕分け等がなされており、時代の大きな流れを非常に感じる。
 一方で、今度はひるがえって国の政策という観点から、参考資料2等を拝見すると、「科学技術基本政策策定の基本方針(案)」の中ではダイナミックな世界の変化から始まった、非常に大上段から我が国のこれからの科学技術のあり方が述べられている。その中で、基礎研究の抜本的強化ということがうたわれるのは、総論としては大変結構だと思う。その中でさらによく読んでみると科研費のことまで触れられていて、これも総論としては大変結構であると思う。しかし、その中で採択率の問題とか、分科細目の問題まで議論されているということに時代の流れを非常に強く感じる。つまり、今までとは全く違った形で、法人化の前ぐらいまでの大学のあり方や国の科学技術政策やその実行のあり方といったものが大きな転換点を迎えているのではないかという印象を持つわけである。
 国として基礎研究の重要性を認識していただき、それを適切に資源配分に反映するような施策を考えていただくことは非常に重要だが、先ほど委員のご意見も出ていたように、大学というのは一体何をするところなのか、国立研究機関を大学に含めると、一体何をなすべきかという、ただ単に国民の負託に政策がこたえ、その政策を忠実に実行するだけが大学の役割ということではないだろうという側面もあるだろうと思う。
 一方で、大学はかなり体力が弱っているので、弱った中でこれからこういう方策がいい方向に向かえばいいが、本来の大学のあり方を大学そのものが考えなくてはいけないし、文部科学省の科研費として運営してきたこの科研費のあり方が、国の国家戦略の一環としての科研費という位置づけで検討されていくことについては、やはり文部科学省や、その一端を担う研究者が集まった研究費部会としては、悪いというわけではないが、一定の緊張関係を持って、しっかりと認識をしておく必要があるのではないかと思っている。
 各論としては、例えば昨今、科研費の若手研究(B)のあり方、それから基盤研究(C)のあり方が議論されているが、若手研究(B)よりも基盤研究(C)のほうが弱いので、何とかしなくてはいけないという議論は正論であると思うが、もう少し大づかみ的な議論をしたほうがいいのではないかという気がする。
 というのも、参考資料2の中で、ペンディングという条件つきではあるが、NIHやフランスの国立研究機構に比べて、研究種目が細分化され過ぎているとか、研究費の1件当たりの額が少な過ぎるとか、細部にわたって述べられている。これについて文科省や研究費部会として、若手研究(B)や基盤研究(C)のあり方をどうとらえていくかということは結構重要なことだと思う。つまり、小手先論で議論するのでは、なかなか困難な事態が将来出てくる可能性があるのではないかと思う。
 つまり、国の戦略としてこういうことをしなさいと言われたときに、「日本の学術の、あるいは研究者の人材育成を図るためには、こういうものが必要です」としっかり主張するのであれば、議論をしておかないとかなり難しいことになるのではないかと感じる。
 底流にあるのは、データとか統計等に裏付けられた、説得力のある議論をどこまでできるかというところである。例えば若手研究(B)や基盤研究(C)をやることによってどんな成果が上がったとか、なぜ重要なのかということを統計的なデータに基づいて議論できないというのは、我が国のなかなか難しいところであると日本学術会議でも議論しているので、統計的なデータはしっかりと整備をしていくことも重要だと思うが、それは長期的な問題であるので、それはともかくとして、国から投げかけられてくるそういう問題に関しても、やはりきちんとした議論をしておかないとかなり厳しいのではないかと思う。

【有川部会長】
 非常に難しい問題提起である。例えば先ほどの参考資料2の20ページから21ページあたりのところなどにかなり詳しいことが書いてあるが、ここは一方では、基礎研究の抜本的強化ということで科研費の重要性などについてもしっかり具体的に言及されている。そういう意味でのポジティブな評価ができる面もあると思う。
 特に大事なこととして、20ページの一番下の○の下の・であるが、これは科研費の本当に一番大事な理念である「研究者が自らの発想に基づいて行う研究を支援するとともに」、そして「学問的な多様性・継続性を確保して発想の」といったところが、科研費の重要性などについて理解を示しているといえると思う。21ページには細かなところまで言及しており、いわゆるPIのことなどは、我々のこの委員会でもあまり議論していないところで、このような細かいことをこのレベルでやれることではないという趣旨だったと思う。一方では第1回目の仕分けなどでかなり大づかみな議論をされてしまったような印象もあり、「いろいろな競争的資金があるので、一本化したらどうか」という評価結果もあったわけである。そういった中で考えると、私どもが一番基本として考えておかなければいけないのは、いわゆる基盤的経費であって、そして、2つ目が20ページあたりにも書いてあるような研究者の自由な発想に基づく研究によって多様性と重層性、それから次世代、次々世代の非常に重要な研究テーマを顕在化させていくという競争的資金で、3つ目がその他の政策課題誘導型の各種の競争的資金であるといったようなとらえ方が一番大事なのではないかと思う。
 特に科研費の部分について、ほかと一緒のところに入ってしまうことになると非常に大変なことになるのではないかと危惧するが、こういったところに「研究者が自らの発想に基づいて行う研究によって…」ときちんと書いてくれていると見れないこともないとも思う。
 それから、若手研究、基盤研究に関しての谷口委員のお考えであるが、これはこの部会でも何度か話題になっていて、例えば基盤研究の中で(A)、(B)、(C)については、(C)より(B)がよくて、(B)より(A)がいいということではないだろうということも議論されている。それから、例えば「生命科学系であれば基盤研究(C)はほとんど意味がない」という意見もかなり強く出されているが、一方で「人社系にとっては基盤研究(C)こそ大事であり、もう少しその額は少なくても幅広く措置されるということが大事だ」という発言があったと思う。
 幾つかのことについては、これまでの研究費部会でかなり議論されてきたと思うが、谷口委員のご指摘のとおり、大学における研究をどう展開していくか、その研究活動をどのような形で支援していくのか、そういう仕掛けをどう求めていくのかということについては常に根源的なところから考えていかなければいけないと思う。

【谷口委員】
 補足させていただくが、私は決してあれがいけない、これがいけないと申し上げているわけではなく、非常に前向きに考えるべきだけれども、一方で粛々と対応したり、あるいは検討していかなくてはいけないこともあるということを申し上げたかったので、基盤研究、若手研究、ともに重要であるということは申し上げるまでもない。
 ただ、一方でPIの問題もここで出てきている背景には、やはり「若手研究とか基盤研究として研究費が出ているが、それはボスが研究室の若手研究者に研究費を取らせるための手段になっているのではないか」とか、そういう議論がおそらく背景にあって出ていると思うが、そうではないと反論できる理論構築や、エビデンスといったものをきちんと出していかないとなかなか対応できないと思う。今までは文科省の中で大学と一緒になってこういうシステムを動かしてきたわけであるが、どうもそうとも言えないような状況になりつつあるというところがポイントだと思った次第である。

【鈴村委員】
 2ページの最初の○の文章が非常にわかりにくい。3行目の「採択率等に大きな影響を与えることが確実であると予想されたことから」を「採択率の維持等に大きな影響を与えることが確実であると予想されたため」と修正をしていただければ趣旨は通ると思うので、修正をお願いしたいと思う。「の維持」を「採択率」の後に入れていただけないかと。それから、最後のところ「予想されたことから」というのはあいまいであるので、「予想されたため」ということで、その後がそれに対応する措置になるので、いかがでしょうかという、ただそれだけのことである。

【有川部会長】
 「採択率等に大きな影響を与える」の「採択率」の後に、「の維持」を入れていただきたいとのご意見であるが、この後、新規採択率30%に持っていきたいという主張が出てくるので、ここで「維持」という表現にしてしまうと、現在の二十数%でとまってしまうことになるが、それでもよろしいか。

【鈴村委員】
 適切な語句は後で考えていただければ結構である。

【有川部会長】
 それでは、そこは事務局で検討していただくということでよろしいか。
 続いて10ページから17ページにかけて、科研費における今後の若手研究者支援のあり方についてまとめられているが、9ページからは科研費における若手研究者の支援の現状、それから11ページからはこの部会におけるこれまでの審議の概要、そして16ページには若手研究の見直しの方向ということでまとめられている。この部分についてご意見をいただきたいと思う。

【鈴村委員】
 若手優遇措置が経過的に必要だということについては議論が十分なされたと思うし、了承している。ただ、やはりそれは制度を新たなものに収れんさせるための経過措置としての位置づけが重要だということを再三申し上げた。今回の案を見せていただくと、例えば15ページの最初の○の2行目のところに「一定の期限を設ける」とか、それから16ページの最後の・に、「優遇措置については経過措置であり、期限を設ける」という旨の書き方はしていただいているが、制度の詳細の部分に書き添えるのではなく、制度の設計の考え方そのものの中に、「これはあくまで経過的な措置なのであって、本来の制度は」ということを書き込まなくていいのだろうか。これは制度全体のあり方に関しての懸念であるので、発言させていただいた。
 それから、もう一つは、谷口委員のお話にも若干あらわれていたが、優遇措置という表現が使われているが、これは本当に若手自身のイニシアチブによる研究をサポートして離陸するための制度になっているかどうかということが一番大きな問題だと思う。これもやはりどこかに書かれていたが、大学側で若手の人たちの伸びてくる芽をきちんと処遇できるような仕組みをつくることの、文字通りその経過措置という考え方もできるのではないかと思う。
 全体として言うと、この中で細かく書き込んでいただくこともさりながら、なぜこういう優遇措置が経過的にせよ必要とされているかということへの意見表明がなくてよいのだろうかということである。

【有川部会長】
 ただし書き的に書き添えるのではなくて、もう少し根源的なものを示してその中できちんと説明しておくべきではないかという意見であるが、これは確かにその通りであり、そのことについてはこれまでかなり議論をしてきたのではないのかと思う。議論の方向としては、出だしの、いわゆる若手研究(B)というような制度は依然として大事だが、基盤研究の中でみんなと一緒にやっていくような仕掛けにすべきではないかと、こういったことが基本としてあったと思う。基盤研究へ移行していくときに、継続の研究課題があり、そことのギャップが生じる可能性もあるので、それに対する措置についての話になっていると思うが、そのあたりについてはかなり整理されてきていると思う。
 ただ、「科研費全体を、例えば基盤研究という名称も含めて、抜本的に考え直せ」というご意見だとすると、相当大がかりな議論をしなければいけないと思うが、今回そこまで踏み込むべきか。科研費の理念になっている「自由な発想に基づく研究」ということがしっかり担保されるようにしておくことが、特に大事だと思っていて、それについてはしっかりそうした方向になっていると思う。

【井上(明)委員】
 この10ページ、11ページの「『若手研究』の現状と課題」の、特に11ページについては日本学術振興会の資料で、若手研究(B)から基盤研究(C)に最終年度前年度応募の人の採択率は四十何%という非常に高いというデータなど、若手研究(B)から基盤研究(C)、あるいは若手研究(A)から基盤研究(A・B)への最終年度前年度応募の場合は採択率が高いというような資料があると思う。非常にスムーズな移行がなされつつあるというような表現で、何かこのあたりにもデータを入れられたほうがいいと思う。
 後で研究期間について議論されると思うが、そのあたりをもう少し、前年度だけではなく終わる2年前ぐらいから研究に応じて柔軟性を持たせれば、若手研究から基盤研究へ移る考え方も少し柔軟になってくると思う。

【有川部会長】
 これは資料が以前に示されていると思う。

【山口学術研究助成課長】
 若手研究(S・A・B)に最終年度前年度応募という制度が、今年度の応募から導入されたので、そこの部分についてデータを日本学術振興会のほうからいただいて、公表できるものであれば入れて、前回のご提言に沿った形で公募が行われて、それによってこういう効果が出たんだというようなデータをどこかに書き入れさせていただきたいと思う。

【有川部会長】
 今の若手研究の見直しの方向に関しては、16ページのところにまとめられている。大事な点としては、「若手研究者のための中核的研究種目として30%の採択率の確保へ向けて」という表現が出てきているが、ここに関しては採択率30%を目指す根拠があったほうがいいと思う。諸外国との比較やもう少し違った観点もあり得ると思う。
 続いて今度は18ページから27ページにかけての、今後の基盤研究のあり方についてであるが、18ページからは基盤研究の現状と20ページからこの部会におけるこれまでの審議の概要、それから26ページからは基盤研究の見直しの方向について記載されているが、ご意見をいただければと思う。

【田代委員】
 大変いろいろな意見をまとめていただき、何回か参加させていただいたが、意見が反映されていて、とてもよくまとまっていると思うが、将来像と現状、こうしてほしい、こうありたいということと、現状とがかなり矛盾している部分が随分あるのではないかと思う。これは何かというと、至るところに採択率30%という表現が出てくるが、なぜ採択率が30%なのかという根拠がわからないということもあるが、30%の採択率、これはすばらしいことで、理想だと思うが、そうすると1件当たり平均配分額を向上したいということが幾つか出てくると思う。これは予算が相当な大幅増加しないと達成できないことだと思うが、しかし、なぜ今、こういう問題が達成できないのかということになると、科研費の全体の予算は増えていて、次第にパイは大きくなっているが、それに応募する、つまりパイを食べようとする人たちがかなり増加していて、それに追いつかない。結局、1件当たりの配分額を落とさないようにすると、新規採択率30%というのは達成できないという構造になってくる。
 しかしながら、ここで第1案、第2案、第3案が22ページ、23ページに、何回も提示されていて、拝見すると、すべてそれが新規採択率の向上ということが破られるようなことがデメリットに書いてある。例えば、第1案のところのデメリットであるが、「応募総額の上限を引き上げつつ新規採択率を……するには、大幅な予算が必要だ」と書いてあり、大幅な予算を必要とする。しかし、たくさんの人間が応募する。そして1件当たりの平均配分額の向上を図ると。これはもう達成できるはずがないということになってくる。第2案のところも全く同じような構造が見られ、やはりデメリットに、新規採択率が低下していくということが明らかにデメリットとして挙げられている。そして、第3案であるが、これはおそらく大変乱暴な案だという意見が以前出ていたと思うが、かなり審査に混乱を来すのではないかと思うが、やはりこれも最後のデメリットの下のほうに、予算額の増額がなければ新規採択率が低下するという、そういう案である。
 だから、この理想とする新規採択率30%や予算を増やしてほしい、1件当たりの配分額を上げてほしいということは全部難しい課題である。現状と全然合わないということが一目瞭然であるが、その案をあえてなぜこういうふうに提示されていくのかが、私としてはよくわからないところである。

【有川部会長】
 これは、現行は第1案であるが、ほかにもいろいろ考えられるだろうということだと思う。例えば、若手研究は(A・B・S)という研究種目があったわけであるが、そういったものを検討する中で、基盤研究との関係があり、そちらも柔軟に考えることがあるのではないか。それから、先ほども、人社系と生命科学系とでは全く基盤研究(C)に関する考え方も違うということも出てきた。そういった意見があったので、ほかに考えられるものとして第2案とか第3案があるということである。
 そして新規採択率も上げるということだが、実際には、いわゆる18歳人口というのは減っているが、大学の数はどんどん増えており、国立大学については法人化される前の100から統合などの結果現在86になったが、公立大学、私立大学はどんどん増え、現在、総数で765大学になっている。研究者も増えている。それぞれ大学の経営も厳しいということもあって、みんなが応募できる競争的資金への応募者が増えていることが背景にあるのだと思う。
 一方では、教育研究としても18歳だけではなく、もう少し年齢の高い人たちが出たり入ったりするということも考えていくと、こういった状況がしばらく続くと思う。要するに非常に科研費の必要性が増してきているわけであるので、それに対する措置はしていかなければいけない。諸外国においては、どの国をとっても、そういったことについては日本より手厚く予算措置がされているというような状況もあるので、今、財政的に厳しいけれども、そういったデータを用意しながら、これからアピールしていくことも必要ではないかと思う。

【小林委員】
 新規採択率30%が実現すれば望ましいというのは、それはそれでよろしいが、新規採択率だけに議論が集中していて、継続研究課題分についてのことがあまり考慮されていないことについて少しコメントしておきたいと思う。先ほどの第2案についても新規採択率は下がると書かれているが、ここのコメントの前段にあるように、これは長期の応募が増えることによって下がるということ。きちんと考えなければいけないことは、トータルでどれだけの人が科研費を受けることができるかということだと思う。大まかにいうと、研究期間が長期になれば、各年度で採択される人の数が減っても、トータルで採択されている人の数は増える。そこの計算を考えていただきたい。だから、新規採択率30%という数字をあまり強調することについて気にかかる。
 それに関連して、研究期間を3年間から5年間を2年間から4年間、あるいは2年間から5年間にするという議論が出てきているが、3年間を2年間にするというのは非常に大きな影響があると思う。例えば基盤研究(C)のように、ほとんどが3年間で応募しているところを2年間にすれば、そのすべての人が多分2年間で応募してくると思う。それは単年度当たりの単価を上げることになる。単純に言えば1.5倍になるので、同じ人数に配分しようとすれば、予算を1.5倍にしないと実現しない。研究期間を3年間から2年間にするというのは、予算的には非常にリスキーなことであるので、慎重にご検討いただきたいと思う。

【有川部会長】
 最後のところは、基盤研究(C)の総額が幾らとなっているので、5年間であれば5分の1のところが2年間だと2分の1ということになり、そこに固まってくると全体の予算がうんと膨らんでしまうということである。
 それから、最初におっしゃったのは、例えば、みんなが5年間で応募して、新規採択率が20%だと、それは理論化すると、みんな何か科研費を持っているということになると思う。その辺はひとつ定性的な説明の仕方には使えると思う。

【井上(一)委員】
 今の小林委員の考えに私は賛成である。最初の第2案、第3案というような案を考えるときには、きめ細かく考えたほうがいいと思うが、科研費に採択されている研究者が二重に応募するということがなければ、新規採択率についても小林委員の考えと同じようなことになるはずである。それだけ科研費に採択されている人が多いわけであるので、応募してくる人の割合がその分だけ減るはずで、新規採択率も実はそのまま下がるということにはならないと思う。その辺はもう少しきめ細かいことを考えなければいけないと思う。
 第1案、第2案、第3案という議論をこれまでも何回かやってきたと思うが、少なくとも第3案は、皆さんはいきなり採用するのは無理と思われているような気がする。第1案、第2案ということで言えば、新規採択率も上げ、研究者に対する充足率というか、継続の研究課題数まで考えて、どちらの案ということではなくて、全体のうまい設計というのを考えるのが何となく現実的であると思う。

【有川部会長】
 おそらくその辺への解はあると思う。

【佐藤委員】
 新規採択率30%の話がさきほどから出ているが、これは我が部会で答申をして、去年10月に報告として出している数字であるし、それを受けて学術の基本問題に関する特別委員会でもエンドースをしている。ただ、これは第4次科学技術基本計画を目指しての話であるので、すぐ来年そうならなければいけないと言っているわけではなくて、長期的な目標であり、書きぶりの問題であるが、あまり強調すべきことではないというニュアンスにはならないほうがいいと思う。目標そのものは今、我々が否定するわけにはいかないのだろうと思う。

【鈴木委員】
 第1案、第2案は前回からも話があるようなので、私はできるだけシンプルに基盤研究(A)、基盤研究(B)というのはあまり変えないのがいいと思う。基盤研究(C)については議論があったようなので、基盤研究(C)を多機能な種目に対応するようにすることを提案したいと思うが、全体の表現の中で若干心配なのは、人文・社会系はこうだ、生命科学系はこうだという表現があるが、これは私はおかしいと思う。理系でも数学の研究者はお金を必ずしも使わないと思うし、生命系の方でもお金を使わない人はいるわけで、むしろ研究の規模で分けるべきであって、あまり理系、文系の違いについて強く出すべきではないと思う。

【有川部会長】
 最終的にはやはりそういったことに配慮しないといけないと思う。まさに先生がおっしゃるとおりだと思う。

【鈴村委員】
 今のご意見に少し関係するが、基盤研究(C)に関して、少なくとも前回の議論では、特に生物系の方からは、「そんな金額では論文1本も書けません」というご発言まであって、それではという背景があったことは事実だと思う。
 そうはいっても、今のご発言は、私も正当なご意見だと思うので、本当に使い勝手がよくて、研究のニーズにマッチするようなカテゴリーはどうつくればよいかということに絞って考えればいいと思う。ただ1つだけ問題は、実際の科研費の配分を考える際には、分野ごとの申請件数掛ける平均的な申請額ということで分野に配分されていく。そうすると、例えば基盤研究(C)の上限を大きく引き上げる一方で、例えば基盤研究(D)のように、もう少し小さなニーズにもきちんとマッチする制度をつくることにした際、ほんとうに充足率が高まって、ニーズにうまく均てんされるような制度になってくれるかどうかということと、今のような分野別の科研費総額の配分のルールとが整合しない可能性があると思う。
 24ページの下のほうの○の「その一方で」の2番目の・であるが、ここでは、今、私が申し上げたような配分金額の算出方法は「分野別のニーズに応じた配分を可能にしており」と書いてあるが、私はこれがむしろ問題になって、基盤研究(D)のような提案も出てきたのだと思う。ここは正確に記載しておいていただかないと、今後の議論の出発点にも多分なると思うので、必要なことだろうと思う。

【谷口委員】
 最後の、18ページから始まる「今後の『基盤研究』の在り方について」という大きなタイトルがあって、後でいろいろな議論が展開されているわけであるが、考えられることは、21ページあたりに基盤研究と、基盤的経費の関係とがいろいろ述べられていて、それなりに正しいと思っているが、もちろん基盤的経費が大学等で減少されるのをよしと思っているわけでは決してない。しかし、こういう危機的な状況があるということから基盤研究というものの重要性がますます増している状況はあると思う。
 そのようなポイントと、日本の大学等における基礎研究の支援のあり方と、外国等の状況を十把一からげにして議論するということについては無理があるので、私が申し上げたいのは、今後の基盤研究については、科研費の根幹を担う研究費であるということである。なぜならば、こうこう、こうだという、大上段に振りかぶったような議論をして、その文脈において実際にはこうこう、こういう配分をするべきであるといったようなことを少し肉づけするなど、少しその辺を考えたらどうかと思う。

【有川部会長】
 科研費の理念みたいなものを最初にきちんとうたっておくと。そして、必然的な帰結としてこういうことが大事だと、そういう論調にしたらどうかということで、おっしゃるとおりだと思う。

【村上主任研究員】
 昨年ヒアリングしていただいて、この第1案、第2案のところに関連して日本学術振興会からも意見を述べさせていただいたが、1つ訂正をしたいと思う。訂正というか、第1案、第2案はこちらでまとめられたものだと思うが、日本学術振興会から提案したものは第2案に非常に近いものである。近いが、根本的に違っているところがあり、これは長期間、安定して研究を行うためにはこういう制度がいいという提案をしたが、第2案のデメリットに書いてある、現実の研究計画は、設備などにより初年度に大きな金額が必要になるものが多いので、単年度当たりの上限を定める方式は適当でないと書かれている。我々が提案したのは、単年度に幾らまで使ってはいけないということではなく、初年度に幾ら使ってもいいが、研究期間を選べるというところにポイントがあり、例えば基盤研究(C)であれば、5年間を選ぶと1,000万円まで使用できる、ただし、その1,000万円については、1年目で800万円使ってもよろしいと、そういう案を述べさせていだいた。それが1点。
 それともう一つ、日本学術振興会から、とにかく特に基盤研究(C)などは若手研究からの移行をスムーズにするために上限金額を上げてほしいという意見を出したが、その前提としては、採択率の維持向上は必ず前提にしてほしいということで、例えば第1案というものをとると、非常に高額な申請が集中するので、採択率が非常に落ちるということを大変危惧しており、そこはまず前提として考えていただきたいと申し上げたということを述べさせていただきたいと思う。

【有川部会長】
 今おっしゃった最初のほうのことと、第1案などをうまくつないでいくと、今日議論したことが実現できるのではないかという感じを持っている。
 今日は、基盤研究(C)に関して研究期間を2年間からに変更することについても少し議論をしていただきたかったのだが、時間が尽きてしまった。この辺はまた次回も予定されているようなので、その中でやっていただければと思う。今日の段階で後半部分の議論に関して何かぜひ議論してほしいことがあればお願いしたい。まずいただいたご意見は、次回の資料の中には適当な格好で反映させていただき、後半についてはまた次回議論していただきたいと思う。国のほうの動きもあるので、そういったこととも同期しながらやっていかなければいけないと思う。

(2)その他

 事務局から、次回の研究費部会は6月25日(金曜日)13時30分から開催予定である旨、連絡があった。

(以上)

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課