学術研究機関及び研究設備の現状と課題_4

国立大学法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点

文部科学大臣が第1期中期目標期間終了時に行う組織・業務全般の見直しに盛り込むことが必要と考えられる内容のうち、主として現在各国立大学法人が行っている第2期中期目標・中期計画の素案の検討に資するものとしては、以下の視点を挙げることができるのではないか。

1.見直しの基本的な方向性

  • 国立大学は、第1期中期目標期間において、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担うとともに、全国的に均衡のとれた配置により、地域の教育、文化、産業の基盤を支え、学生の経済状況に左右されない進学機会を提供するなど、重要な役割を果たしてきた。第2期中期目標期間においては、さらにこの役割を十分に果たしていくとともに、第1期において必ずしも国民の期待に応えられていない点は改善していく観点から、第2期中期目標期間を迎えるこの機会にしっかりと組織及び業務を見直すことが必要である。
     
  • その際、個々の国立大学法人を見ると、規模、特性、状況等は千差万別であり、国民が各法人に期待する役割等も同じではないことから、第2期中期目標期間は、大学の機能別分化を進めるため、各法人の目指す方向性が明らかになるよう、各法人の特性を踏まえた一層の個性化が明確となる中期目標・中期計画とすることが必要である。
     
  • また、世界の様々な状況が大きく変わる中、国立大学法人をとりまく状況も変化し、新たな課題が生じている。このような課題にも留意した中期目標・中期計画とすることが必要である。
     
  • さらに、我が国の人口が初めて減少局面を迎え、各種の社会システムの見直しが求められ、中央教育審議会において我が国の大学全体の量的規模の在り方について検討が行われている。また、地方分権についての議論や独立行政法人の見直しも進められている。国立大学法人の組織及び業務全般の見直しが全体として、このような状況を踏まえたものとすることが求められる。

 

2.組織の見直しに関する視点

  • 大学院の博士(後期)課程においては、法人のミッションに照らした役割や国立大学の機能別分化の促進の観点、又は学生収容定員の未充足状況の観点等を総合的に勘案しつつ、大学院教育の質の維持・確保の観点から、入学定員や組織等の見直しが必要ではないか。
     
  • 法科大学院においては、入学者選抜における競争性の確保が困難で、修了者の多くが司法試験に合格していない状況がみられる場合等は、法科大学院教育の質の向上の観点から、入学定員や組織等の見直しが必要ではないか。
     
  • 教員養成系学部においては、教員採用数の動向等も踏まえ、入学定員や組織等の見直しが必要ではないか。
     
  • その他の学部・研究科等においても、当該分野に係る人材の需給見通し等を勘案しつつ、必要に応じ、入学定員や組織等の見直しが必要ではないか。
     
  • 附置研究所においては、大学評価・学位授与機構の現況分析の結果等を踏まえ、当該研究所の設置目的や特色ある研究の達成、COE性の発揮に加えて、共同利用・共同研究機能の向上等の観点を総合的に勘案しつつ、研究の質の向上に向けた研究体制等の見直しが必要ではないか。
     
  • 分野を融合した学際的な学部・研究科等の組織に関しては、当該組織の理念が達成されているか、社会の要請や時代の変化に対応した教育研究が行われているか等の検証を行い、各法人の実態に応じ、組織等の見直しが必要ではないか。
     
  • 学内の様々な体制整備に際しては、必要に応じ、既存の組織の見直しも併せて進め、責任ある教育研究体制の維持・形成に努めるべきではないか。

 

3.業務全般の見直しに関する視点

(1)教育研究等の質の向上  

  • 教育研究の内容に関しては、各法人が大学評価・学位授与機構による教育研究組織ごとの現況分析等の結果を十分踏まえ、自主的に見直しを行うことが必要ではないか。
     
  • 教養教育について、その内容や実施体制を含めた改善の観点が必要ではないか。
     
  • 国立大学法人等の公的な役割に鑑み、各地域における知の拠点として、社会貢献や地域貢献を一層果たしていく観点が必要ではないか。
     
  • 高等教育のグローバル化を受け、国際化を一層推進する観点が必要ではないか。
     
  • 教育研究資源を有効活用し、質の高い教育研究を行う観点から、教育課程の共同実施を図ることが必要ではないか。
     
  • 教員の採用や配置に当たり、女性、外国人、若手等の比率を考慮した教員構成を多様化することや、女性等の能力の一層の活用に努めることが必要ではないか。
     
  • 経済的に困窮している学生等に対する支援の充実や、雇用情勢への対応を含めた就職支援の取組など学生支援機能の強化を行う必要があるのではないか。
     
  • 附属病院は、社会の要請に応えられる優れた医療人を養成する教育研究機関であるとの基本的認識を踏まえつつ、卒前教育と卒後教育の一体的な魅力ある教育プログラムの構築や地域との連携を推進すること等により、特色ある病院運営の強化を図ることが必要ではないか。
     
  • 附属学校は、学部・研究科等における教育に関する研究に組織的に協力することや、教育実習の実施への協力を行う等を通じて、附属学校の本来の設置趣旨に基づいた活動を推進することにより、その存在意義を明確にしていくことが必要ではないか。
     
  • 全国共同利用機能を持つ附置研究所は、大学評価・学位授与機構の現況分析の結果等を踏まえて、共同利用・共同研究機能の向上に向けて業務を見直すことが必要ではないか。

 (2)業務運営の改善及び効率化、財務内容の改善、その他業務運営  

  • 法人本部が各部局等を含めた法人全体をマネジメントできるような仕組みとするよう、法人内部のガバナンスの在り方を検討することが必要ではないか。
     
  • 法人の特性を踏まえつつ、学長等の裁量による経費や人員等の配分など、学長のリーダーシップが図れる取組みを進めることが必要ではないか。
     
  • 法人の運営改善に資するよう、経営協議会の運用の工夫改善等により、学外者の意見の一層の活用を図ることが必要ではないか。
     
  • 監事監査や内部監査等の監査結果を運営改善に反映するサイクルの構築を図ることが必要ではないか。
     
  • 外部資金の獲得や多様な資金調達による自己収入の増加、管理的経費の一層の抑制等、財務に関する各法人のさらなる努力が必要ではないか。
     
  • 資産を有効活用するため、農場、演習林、船舶等について、他の大学等との共同利用の推進を図ることが必要ではないか。
     
  • 効率的な法人運営を行うため、他の大学との事務の共同実施の推進や、アウトソーシングの推進を図ることが必要ではないか。
     
  • 既存施設の有効活用、施設の計画的な維持管理の着実な実施等の施設マネジメントの一層の推進を図ることが必要ではないか。
     
  • 国立大学法人には多額の公的な資金が投入されていること、成果等が社会に還元されるべきものであることを十分認識し、各法人の実情や果たしている機能等を国民に分かりやすい形で示すように情報提供することが必要ではないか。
     
  • 経営協議会は審議すべき事項が法定されていることから、報告事項として扱うことのないようにする等、法令遵守(コンプライアンス)体制を確保する観点が必要ではないか。

 

大学共同利用機関法人の組織及び業務全般の見直しに関する視点

文部科学大臣が第1期中期目標期間終了時に行う組織・業務全般の見直しに盛り込むことが必要と考えられる内容のうち、主として現在大学共同利用機関法人が行っている第2期中期目標・中期計画の素案の検討に資するものとしては、以下の視点を挙げることができるのではないか。

1.見直しの基本的な方向性

  • 大学共同利用機関法人は、平成16年度に16の大学共同利用機関が再編され、現在の4機構として発足して以降、各機関が当該分野における全大学の共同利用機関として共同利用・共同研究を推進するとともに、異なる研究者コミュニティに支えられた機関が機構を構成したメリットを活かし、従来の学問分野を越えた取組を進め、一定の成果を上げてきた。一方で、機構としての一体的な運営を一層推進することが今後の課題である。
     
  • このため、機構創設の趣旨を踏まえ、新たな学問領域の創成や機構の存在意義である共同利用・共同研究機能の向上を図る観点から、第2期中期目標期間を迎えるこの機会に、各機関間の連携を取りながら、機構としての一体的な運営を行う体制を強化することが必要である。また、各機構においてしっかりと今後の組織や業務の在り方を検討し、所要の見直しを行うことが必要である。
     
  • 各機構においては、内外の学問動向を踏まえ、当該学問分野の総合的な発展をリードするとともに、新たな学問領域の創成に資する観点から、機構運営に関する機構長のヴィジョンを明確にすることが必要である。また、大学や大学共同利用機関を取り巻く状況の変化や課題にも留意して、中期目標・中期計画を策定することが必要である。

 

2.組織の見直しに関する視点

  • 各機構においては、新たな学問領域の創成や共同利用・共同研究機能の向上を図る観点から、機構化のメリットを活かして、機構長のリーダーシップの下で、今後の機構の組織等の在り方を検討することが必要ではないか。その際、各機関については、大学評価・学位授与機構の現況分析の結果等を踏まえ、共同利用・共同研究機能の向上を図る観点から、検討を行うことが必要ではないか。

 

3.業務全般の見直しに関する視点

(1)教育研究等の質の向上  

  • 共同利用・共同研究機能を一層高める観点から、大学評価・学位授与機構の現況分析の結果や、国公私立大学や研究者コミュニティのニーズ等を踏まえ、実施体制の見直しや利便性の一層の向上など研究環境の一層の充実を図ることが必要ではないか。
     
  • 多様な分野の研究者の参加による共同利用・共同研究を促進する観点から、研究者の流動性を一層高めることが必要ではないか。また、これまで以上に活力のある創造的な研究環境を整備する観点から、各機構の実情を踏まえ、研究者の年齢構成や他機関での経験を考慮した採用、女性や外国人研究者等の比率を考慮した採用、若手研究者の自立的研究環境の整備、女性研究者等の能力の活用等を一層推進することが必要ではないか。  
     
  • 新たな学問領域の創成に資するとともに、共同利用・共同研究を一層充実させる観点から、人事面・予算面における機構長の裁量を拡大することが必要ではないか。
     
  • 各機構が、我が国全体の共同利用・共同研究をリードし、新たな学問領域の創成に資する観点から、共同利用・共同研究拠点を含め、国公私立大学や機構内外の研究機関との連携を一層推進することが必要ではないか。
     
  • 各機構が、研究者コミュニティの中核としての役割を果たし、新たな学問領域の創成に資する観点から、教育研究評議会をより幅広い関係者から構成するなど、運営体制の改善を図ることが必要ではないか。
     
  • 大学における独創的・先端的研究を支援する観点から、異分野の研究者による研究交流の場の提供や、サバティカル制度等の活用により大学の研究者の共同利用・共同研究への参画を促進するような仕組等を検討することが必要ではないか。
     
  • 優れた研究環境を有効に活用して人材育成を進める観点から、大学との連携による教育活動を一層充実することが必要ではないか。

 (2)業務運営の改善及び効率化、財務内容の改善、その他業務運営

  • 機構としての一体的な運営を推進する観点から、人事面も含め、機構本部の事務局機能の抜本的強化を図ることが必要ではないか。
     
  • 法人の運営改善に資するよう、経営協議会の運用の工夫改善等により、学外者の意見の一層の活用を図ることが必要ではないか。
     
  • 監事監査や内部監査等の監査結果を運営改善に反映するサイクルの構築を図ることが必要ではないか。
     
  • 外部資金の獲得や多様な資金調達による自己収入の増加、管理的経費の一層の抑制等、財務に関し各法人のさらなる努力が必要ではないか。
     
  • 効率的な機構運営を行うため、アウトソーシングの推進を図ることが必要ではないか。
     
  • 既存施設の有効活用、施設の計画的な維持管理の着実な実施等の施設マネジメントの一層の推進を図ることが必要ではないか。
     
  • 大学共同利用機関法人には多額の公的な資金が投入されていることを十分認識し、研究の成果及び社会や大学への貢献の状況等について、国民に分かりやすい形で示すことが必要ではないか。
     
  • 経営協議会は審議すべき事項が法定されていることから、報告事項として扱うことのないようにする等、法令遵守(コンプライアンス)体制を確保する観点が必要ではないか。
     
  • 業務の一層の効率化を図る観点から、他の国立大学法人・大学共同利用機関法人における取組事例も参考にしつつ業務見直しを進めることが必要ではないか。

 

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