学術の基本問題に関する特別委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成21年3月31日(火曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室

3.出席者

委員

佐々木委員、小林委員、白井委員、柘植委員、三宅委員、家委員、樺山委員、鈴村委員、谷口委員、平尾委員、磯貝委員、古城委員、中村委員、沼尾委員、鷲田委員

(科学官) 
縣科学官、喜連川科学官、佐藤科学官、高山科学官、福島科学官

文部科学省

土屋政策評価審議官、泉科学技術・学術政策局長、磯田研究振興局長、倉持研究振興局担当審議官、奈良振興企画課長、戸渡政策課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、松川総括研究官、門岡学術企画室長 その他関係官

4.議事録

【谷口主査代理】 

 ただいまより、科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会、第2回目の会合を開催させていただきます。
 主査の佐々木先生が、少々遅れてお越しになるということですので、代理の私、谷口が、しばらくお務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 では、まず、配布資料の確認等をお願いいたします。

【門岡学術企画室長】 

 はい。
 資料につきましては、お手元の議事次第2枚目に配布資料一覧がございます。欠落等ございましたら、お知らせいただきたいと思いますが、資料といたしましては、資料1で、学術の基本問題に関する特別委員会 今後の予定、資料2として、本日ご議論いただく中の1つ、学術研究の意義・社会的役割についての資料、資料3といたしまして、学術研究機関及び研究設備の現状と課題、資料4といたしまして、学術情報基盤の現状と課題、それから参考資料1といたしまして、資料番号を付しておりませんが、黄色い冊子、学術研究の推進体制に関する審議のまとめ、それから参考資料2といたしまして、学術情報基盤整備に関する対応方策等について(審議のまとめ)、それから参考資料3といたしまして、第5期研究費部会において検討をお願いしたい事項、それから机上配布といたしまして、学術の基本問題に関する特別委員会(第1回)におけます主な意見。これは議事録とは別に、学術企画室として主な意見をまとめたものが机上配布資料、それからもう一つ、学術機関課のほうで用意しております国立大学附置研究所及び全国共同利用型研究施設のマッピングしたこの資料が、机上配布として、お手元にお配りしております。欠落等ございましたら、お申し出いただきたいと思います。
 それから、前回の資料といたしまして、机上にドッチファイルが用意してありますが、これは参考となる基礎資料としての、報告関係を入れた部分と、あとは第1回目の会議資料等を入れたものでございます。今後、会議を重ねるごとに、これについても、順次加えていきたいと思っております。
 以上でございます。

【谷口主査代理】 

 ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前に、前回ご欠席の方で、本日初めてご出席になりました委員の方をご紹介いただければと思います。

【門岡学術企画室長】 

 はい。
 本日初めてご出席、ご参画いただいた先生方について、ご紹介をさせていただきます。
 初めに、柘植委員でいらっしゃいます。

【柘植委員】 

 柘植でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【門岡学術企画室長】 

 次に、家委員でございます。

【家委員】 

 家でございます。よろしくお願いします。

【門岡学術企画室長】 

 次に、平尾委員でございます。

【平尾委員】 

 平尾でございます。よろしくお願いいたします。

【門岡学術企画室長】 

 次に、鷲田委員でございます。

【鷲田委員】 

 鷲田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【門岡学術企画室長】 

 以上です。

【谷口主査代理】 

 ありがとうございました。
 本委員会は特別委員会でありますので、非常に重いミッションを担っている委員会だと思っております。先生方、同じお気持ちを持ってくださっていると思いますが、それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、これより議事に入ります。
 本委員会では、1、学術の意義や特性について、2、学術と社会との関係について、3、学問の特性を踏まえた我が国の学術の振興のための施策の方向性について、以上3つの事項について審議をすることが求められております。あわせて、第4期科学技術基本計画の策定を視野に入れた議論を進めていくことも求められております。
 本委員会第1回目におきましては、学術の基本問題に関する論点整理ということで、大学における研究を取り巻く現状と課題について、委員の皆様より自由にご意見をいただいたところでございます。
 前回の委員会でのご意見を踏まえながら、今後の進め方を事務局で整理してくださいました。
 資料1をごらんいただきたいと思います。
 今後の論点を、学術研究の意義・役割、学術の研究環境基盤の在り方、研究費の在り方、研究評価や研究支援体制の在り方、人材養成の在り方として整理をしております。
 資料1でよろしいですか。

【門岡学術企画室長】 

 はい。

【谷口主査代理】 

 また、第4期科学技術基本計画に向けての論点の検討ということも必要と考えております。これは先ほど申し上げたとおりですね。
 本日以降6月までの審議におきましては、これらについて議論を深め、課題を抽出していく形で作業を進めていきたいと思います。
 そこでですけれども、第2回目の審議となる本日については、1番、学術研究の意義・社会的役割について、2番、学術研究の推進に向けた研究環境基盤の在り方、以上2つの論点について、議論を深めてまいりたいと思います。
 なお、本委員会を進めていくに当たっては、データや事例に基づいた議論を行っていきたいと考えておりますので、適宜事務局の方で必要な資料のご準備をお願いするということにいたしております。
 また、委員の皆様におかれましても、質疑の際には各分野の実情に基づいたご意見をいただきますとともに、議論に資する資料がございましたら、ぜひ本委員会にご提出いただければありがたいと思っております。
 それでは、まずは学術の基本問題についてということで、少し時間をかけて議論をしてまいりたいと思います。
 1番の、先ほど申し上げた「学術研究の意義・社会的役割について」という課題について、審議に入りたいと思います。
 最初に議題1、「学術の意義・社会的役割について」の審議を進めます。
 「学術の意義・社会的役割について」は、前回も議論がございましたが、今後の学術研究の推進方策を検討していく上で、学術研究を振興することの意味や考え方について、委員会での共通のイメージを得ておくことが重要と考えられます。したがいまして、この点について、ある程度の理解の共有というのを図ることが、まず重要であろうと考えます。
 事務局の方で、論点メモ及びこれまでの「学術」の用語について整理した資料を用意してくださっておりますので、事務局よりご説明をいただきます。よろしくお願いいたします。

【松川総括研究官】 

 はい。それでは資料2をごらんください。学術研究の意義・社会的役割について、簡単な論点メモをご用意いたしました。
 論点4つほど挙げてございますが、1番目は大学等における学術研究にどのような意義、役割があるのかと、2点目として、学術研究の意義や公財政支援の必要性について、社会の理解を得るための方策、3つ目は用語の問題にもなりますけれども、「学術研究」と「基礎研究」「基礎科学」、あるいは「研究者の自由な発想に基づく研究」といった、いろんな使われ方がするわけでございますが、それらとの関係をどうとらえるかということでございます。それとも関連いたしまして、4点目として、科学技術基本計画の中で、学術研究をどのように位置づけるべきかと、4点ほど整理してございます。
 その下に※をつけておりまして、これらの検討を進めるに当たっては、科学技術基本計画や国立大学等の法人化などの政策動向の中で、学術研究の全般的な現状、課題に関する問題意識も視野に入れて、あわせて議論していくこととしてはどうかというふうに書いておりますが、今申し上げました1から4のような論点、これまでにもいろいろ、縷々議論がなされてきた経緯はあるわけでございます。それなりのまとめも何度も出ておるわけでございますが、それを繰り返すということではなく、それらも踏まえた上で、今、学術研究に何が問題になっているのかという問題意識も踏まえた上で、学術の意義を、ある意味、再定義するというような観点でのご議論をいただければと思っております。
 その下に、「議論の切り口として」と、幾つかワードを挙げてございますが、これは前回の委員会などでも出された事柄から少しピックアップしておりますが、ご参考程度ということでございます。
 その上で、1枚おめくりいただきまして、「学術研究の意義・役割について 学術キーワード」と書いた資料がございます。今申し上げましたとおり、これまでの学術審議会の答申等で学術の意義について触れられた記述の部分から、学術研究の意義・役割、あるいは特徴、あるいは推進する際の基本的な考え方にかかわるような幾つかのキーワードを事務局でピックアップしたものでございます。ざっとごらんいただけますと、どんな議論がなされたのかというのは、イメージ的にはおわかりいただけるかと思います。詳しくのご説明は省略させていただきます。
 具体的には、もう1枚おめくりいただきました2ページ以降に答申等の抜粋を全部おつけしてございます。昭和48年の学術審議会答申から始まりまして、これまでに出されたものの抜粋でございます。中身のご紹介は割愛させていただきますが、それが8ページまで続きます。
 9ページをごらんいただきますと、こちらは学術審議会等とは別に、平成8年以降から現行第3期までの科学技術基本計画の中における基礎研究の意義についての該当部分の抜粋でございます。
 ご承知のとおり、科学技術基本計画の中では、学術研究という言葉は出てまいりませんで、それに近い概念として、基礎研究というものが出てまいります。ざっと記述をごらんいただきますと、例えば、第1期では、新しい法則・原理の発見とか、第2期でいう研究者の自由な発想に基づき云々、かなり学術研究の意義に近いような記述にもなっておるわけでございますが、科学技術基本計画では、こういった整理がなされているということでございます。
 さらに、もう1枚おめくりいただきました10ページには、これも少し古い文書になりますが、昭和50年に、当時の文部省学術国際局で出した「我が国の学術」という本。ある意味、学術白書のような出版物がございまして、その中の序章部分の学術研究の意義に関する部分を抜粋したものでございます。ある程度、コンパクトに学術の意義等が書かれているのかと思っておりまして、これも参考におつけしております。
 さらに補足いたしますと、第4期の科学技術基本計画に向けての議論というのは、前回もご紹介しましたとおり、日本学術会議でございますとか、総合科学技術会議の中でもいろいろ議論が進んでおります。例えば、学術会議の中では、基礎科学というワーディングになっておったように記憶しておりますが、の意義でありますとか、あるいは総合科学技術会議のワーキンググループでは、基礎研究の意義といったようなものを確認する議論も行われております。そういった検討に加わっていらっしゃる先生方が、この委員会の中にも何名かご参画いただいておりますので、もしよろしければ、そういった議論等も紹介していただきながら、学術研究の意義についてのご議論をいただければと思っております。
 資料の説明は以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 私、遅参いたしまして、まことに申しわけございません。それでは、これから司会をやらせていただきます。
 それでは、ただいま総括研究官のほうから、議論の1つの手がかりとして、学術研究の意義・社会的役割についてということに係る、これまでのいろいろな取り組み等につきまして報告をいただいたところでありますが、あくまでもこれは切り口でございますから、今までのこれはこれといたしまして、皆様からご発言をお願いしたいと思います。できるだけ手短にご発言をいただくようご協力いただければと思います。できるだけ多くの方にご発言いただければという趣旨でございます。
 いかがでございましょうか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、柘植委員。

【柘植委員】 

 柘植でございます。口火を切るということですので、多分、批判もある発言になるかもしれません。
 まず、資料2の学術キーワードの中で、少しコンセンサスを得たほうがいいかなと思いますのは、2のキーワードの中で、下から2つ目に、「人文・社会科学から自然科学までのあらゆる学問分野」という、キーワードになってない表現があります。日本学術会議は、あらゆる学問分野を科学としてとらえたときに、認識科学と設計科学という分け方を、2007年の3月の提言の中でしております。人文・社会及び自然科学の三つの科学領域の共通の中で、認識科学、これは、あるものを探求するという科学、それから設計科学は、あるべきものを科学すると言えます。私の専門の工学や、法学は設計科学の最たるものと、認識をしております。学術研究のキーワードの中に、ぜひ認識科学と設計科学との二つの科学を用いることで、学術研究の100%を包含していると言えましょう。これはご批判があるかもしれません。
 それから、もう一つの点、9ページで第3期の科学技術基本計画で、私も策定に参画しましたが、2番目のパラグラフの「基礎研究」には2つの定義をしております。簡単に言えば、純粋基礎研究と目的基礎研究とに分かれています。ここではそういう表現は使っていませんが、基礎研究に2つの定義をしているということでありまして、この点が、産業、アカデミア、両方の視点から見て、この2つの定義をきちんと分けてない議論をするために、議論のすれ違いが生じています。例えば、イノベーションという言葉を使ったときに、「基礎研究はイノベーションのためじゃない」という考え方と、「目的を持った基礎研究というのは、やはりイノベーションにつながる視点を持つべきである。」という、二つの異なった価値観の違いが十分に認識されていないままの議論をしているなと、いろんなところで遭遇しております。 基礎研究の定義については9ページの第3期科学技術基本計画の2つ目のパラグラフの記述を非常に大事にしたいなと思っています。
 以上です。

【佐々木主査】 

 はい。どうもありがとうございました。
 それでは、ほかにもいろいろご意見、ご感想おありかと思いますので、お願いします。それでは、中村委員、よろしくお願いします。

【中村委員】 

 常々、人材育成と学術研究は表裏一体だと思っていたのですけれども、今日、最後の今のところの10ページにくっついている「我が国の学術」ですか、これを再度読んでみると、一番下に大変によいことが書いてあります。要は、学術研究は教育と密接な関係を持っているということです。教育ということは、やはりどこかにキーワードの中に入っていないといけない。どうも人材育成というと研究人材の育成のような雰囲気がしてきてしまって、人材育成はすぐに研究人材育成につながってしまい、広い意味の教育という観点にはたどり着かない。何というのか、少しイメージが違いますよね。ここには、大学における学術研究というのも、要は、大学においては最先端の学問を教えるのだから学術研究と表裏一体であると書いてある。
 もちろん小学校、中学校、高校までも学術研究の昔の成果がそこに生かされていて、これは我々が今、人材育成と言っている言葉と少し違う。学術研究は教育と表裏一体であるということが書いてあります。私もかなりそういうふうなことを感じていました、今再度見てみたら、まさにそう書いてあったので驚きました。
 ですから、学術研究と、初等から高等教育までの教育が密接に関係あるということは、ぜひキーワードの中にいれて、これから少し考えたほうがよいのではないかと思います。ここのところ、学術研究は、要は応用研究の基盤であるとか、そういう話にばかり終始してきています。CSTPの議論でも基礎研究は応用研究といつもペアになっていて、教育というと、別の話になってしまうので、どうも違和感を感じていたのですけれども、今回、学術研究は教育の礎というところを、ぜひ入れていただきたいと思います。大学における先端的学術研究なしにおいては、先端の教育というのはあり得ない。それは大学の使命ですから、そういうことをぜひ入れていただきたいと思います。

【佐々木主査】 

 中村委員、どうもありがとうございました。
 それでは、ほかの方。白井委員、家委員と行きましょう。

【白井委員】 

 柘植委員と中村委員のおっしゃられた、これまでのこの何年か、10年か何かそのいろいろな議論というのは、確かにそういう方向はあって、柘植委員から言わせると、そういうのはちゃんとしっかり分けてよく議論しないから、いつまでたっても整理されなくて、話が行ったり来たりだというご意見だと思うのですが。もちろん、それは常に繰り返されていることでもあるから仕方がないのかなという意味もあるのですが、確かに少し割り切って、きっちり選別して考えないと、いつも混乱している。どこにお金を投ずるのですかという議論がなかなか割り切れないという結果になっているのかなという印象を確かに僕も持ちます。
 ただ、最近思うのは、少し違う観点なのですが、日本の学問的地位というのは、必ずしもどんどん上がっているとは思えないような気もするのです。だけど、それは一体どのぐらいの貢献度が我々可能なのかというようなことを、いろいろな観点から検討すべきです。例えば、お金を学問にどの位投ずるべきでしょうか。例えば、GDPで何%とか、我々はよく言うわけですけれども、ほんとうにそういうものなのかどうか。そのアウトプットの量を、簡単に単純に論文の量や何かではかれるものではもちろんないのだけれども、しかし、いろいろな分野で日本人、あるいは日本国全体が、外国人も含めてもいいけれど、どういう貢献をしていると言えるのだろうかということを知っておきたい。例えば、GDP、経済的な規模にもよるだろうし、分野のカバーをどのぐらいしているのだろうかとか、あるいは我々独自の役割みたいな、世界のある種の文化とか、歴史とか、そういう観点からいって、十分なことをやっているのかいないのか。これは学問をやる人、みんな自分の関心を言うに決まっているのだけど、それだけで、客観評価にはなっていない。やはり、もしこういうところで議論するとすれば、政策というのが、若干でも、自由にやる学問の中でもあるのだとすれば、どういうところを我々は担ってやらなくてはいけないんだというようなことが、もう少し明確に出てきていいのではないか。そうじゃないと、単純に、ある分野の、今ここがはやりで競争だと。そこだけが非常に脚光を浴びるし、そこに投資がほとんど偏ってしまうということが現実に起こりますよね。競争も大事だということは私も思うけれど、それだけではないのではないかと。
 それから、もう一つは、お金を投じれば、確かにアウトプットはある程度出ます。だけど、方法論みたいな、どういうふうに投じたらいいかとか、こういう分野には、どんなふうに、どのぐらいやったらいいかというようなことの分析が少し足らない。ファンディングのやり方もまさにそうなのですが、やはり効率的にお金が使われるべきだということに関して、税金だということを考えれば、いかにお金が使われるべきなのかということを、分野ごとに、ある程度真剣に、使うほうも考えるべきです。それから、今、最後におっしゃられた研究者養成とか人材育成ということにもつながるかと思うのですが、知的基盤社会というのは、私よくわからなかったのだけれど、要するに、人類一人一人の個人的可能性であるとか、そういうものをもっと拡大する方向というのでしょうか、そういうことをやらないと。教育も含めて、まさに社会科学、人文科学ってなぜ重要かということですよね。そういうことについての学術的な面からどうしたらいいかというのは、要するに、人類の生物的な可能性というのは、そこにやはり、少し外れたところにもう出てきているわけですよね。単純に社会的な集団的な可能性だけではだめで、だから脳科学だの何だの、非常に重要になってくるのだと思うけれども、そういう種類のところまで、我々説得性あることをしていかないと、学者って存在価値がないのではないかいかというのが最近の印象なのですが。抽象的で、すいません。

【佐々木主査】 

 家委員、お願いします。

【家委員】 

 はい。
 柘植先生が口火を切ってくださった部分に戻ります。9ページのところの第3期科学技術基本計画の記述なのですけれども、ここに書いてあることで、基礎研究の定義として、研究者の自由な発想と書いてありますが、これは研究のやり方とか研究マネジメントの話であって、私の感覚からいうと、基礎研究というのは、もちろん人文・社会科学も含め、世の中の森羅万象、それから自然もあり、社会もあり、あるいは人間の心の問題もあるかもしれないので、そういうものを解き明かしたいという、そういう動機に基づくアクティビティーだと思うわけです。それに対して、基礎に対して応用があるとすれば、応用。だから、その基礎に関して言えば、応用に対するものとしては、そこでそれが研究成果が役に立つか立たないかという価値判断とは一線を画すというようなことかなと。
 その2番目に書いてあるものは、私の。こういう言葉の定義というのは、多分、その人がどの位置に立っているかによって大分違うので、私の感覚からいうと、後者は応用研究と呼ぶのですけれど、別にそれを応用基礎研究と呼んでいただいても結構だと思います。その先にどういう議論があるかということで、基礎にしろ、応用にしろ、それは判然と分かれるものではなくて、1人の研究者の中にもある割合で混在しているものでありますから、それを言葉を定義した上で、それがどういうふうな政策なら政策に結びつくのかというところが、ちょっと見えないものですから。あまり言葉遊びになってもいけないですが、やはりこれは重要な部分だと、そういう感じがいたします。

【佐々木主査】 

 はい。それでは、鈴村委員。

【鈴村委員】 

 先ほど柘植委員は、学術会議における議論を踏まえて、認識科学と設計科学という重要な用語法を持ち込んで下さいました。これは有益な二分法ですが、軽率に使用すると誤解を招く可能性があると思います。例えば、経済メカニズムの機能を理解しようとする研究は、おそらく認識科学の一部であると認められると思いますが,この作業に際しては、原理的に望ましい経済メカニズムが満たすべき性能基準を、設計者の観点から予め整備してこそ、現実の経済メカニズムを有効かつ批判的に観察・認識できるのではないかと思います。別の表現をしますと、望ましい経済メカニズムの設計科学的な研究は、現実のメカニズムに関する認識科学的な研究のための前提条件であると思います。逆に、設計科学の基礎に置かれる経済メカニズムの性能基準は、理論家の全くの空想の産物であって現実の経済の進化過程に根差していなければ、およそ迫真性を欠くことは否めないと思います。現存の、あるいは歴史的に存在した経済メカニズムが現実に備えていた優れた性能基準とか,失敗した経済メカニズムの改革のために人々が実際に追求してきた理想的な性能基準など、経済メカニズムを巡る人々の現実の経験と模索に根差した性能基準こそ、経済メカニズムに関する設計科学的な研究においても迫真性と説得性に富む基準なのだと思います。このように、認識科学と設計科学は相補性を持つ2つの研究方法なのであって、相補性のない両極端の研究分野ではないということを,念のために指摘させていただきます。

【佐々木主査】 

 はい。わかりました。
 それでは、谷口委員、お願いします。

【谷口主査代理】 

 このセッションといいますか、今問題になっているのは、我々がこの委員会で共有意識を持てるかどうかというのが1つの課題だったと思います。そういう観点から、この配布資料の10ページをごらんいただきますと、「学術研究の意義と特質」というところがありますが、ここで述べられていることは、私は基本的には大変きっちりと述べられているなという印象を持ちます。
 あえて2点申しますと、1点は、やはり哲学、文学など、狭義の人文科学、社会学云々という文章がありますが、これは言ってみれば学体系的な物のとらえ方で、確かにこれがつくられた当時は適切であったというふうに考えられますが、我々がこれから21世紀の学問、学術、サイエンスを標榜するときに、このような学体系的なものでは、新しく生まれ変わるような時代になっているという認識は1つ重要だろうと思うのです。
 それからもう一つ重要な認識は、これはぜひ、ここでやはり共有しないとなかなか進まないということであえて申し上げますと、学術研究というのは、ここで定義されているのは、決して基礎研究のことを言っているわけではない。むしろ基礎研究から応用研究に至るまで、幅広い全体のことを学術研究と言っているのだということを、ここでは述べられているわけです。このような幅広い学術研究を進めるためにこそ、基礎的な研究が重要であるという認識で、これから議論を進めていいのか、あるいは、この認識が共有されないということであれば、先にいろいろまた議論が沸騰するのではないか、こんなことを思います。

【佐々木主査】 

 これまでいろいろご発言いただいておりますけれども、ほかの方から、ご感想なりコメントも含めて、ご発言いただきたいと思います。
 どうぞ。

【小林委員】 

 少々よろしいですか。

【佐々木主査】 

 それでは、小林委員、お願いします。

【小林委員】 

 学術というのは広い意味だということでいいかと思うのですけれども、むしろ質問なのですが、科学技術という言葉と学術というのをどう区別するかという、そこのところを実は教えていただきたいという気がします。

【佐々木主査】 

 何かその点についてご意見あればいただいて。

【柘植委員】 

 いいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ。

【柘植委員】 

 小林先生に対して、私はとてもとても意見を述べることではないのですが、10ページに書かれていることが、私はこれはみなさんと合意したい。私は大賛成であります。したがって、学術というのは、ここに1行目に書いてあるように、人文科学、社会科学並びに応用の研究である、こういう記述されている。
 1つだけ、家先生がおっしゃったことが、少々気になります。これは非常に今後の議論の中で分かれ目になりますので、意見を述べます。
 それは9ページの第3期の基本計画の「基礎研究には」との記述箇所で、2つの定義がなされています。この定義は、前者、後者と分かれています。これに対して、後者を基礎研究ではない、応用研究であるというふうに理解されるのは、私は反対なのです。つまり、ある程度の仮説を持ちながら、ひょっとしたら、これは社会のために役に立つかもしれない、しかし、間違っているかもしれないという、そういう不確定性と多様性を持って研究するものを応用研究と言ってしまうのは、ものすごく私は危険なことであると感じています。基本計画は、いわゆる行政側の定義ですけれども、私はアカデミアとしても、不確定性・不確実性を持ちながら、目的を持った基礎をやるものについては、やはり後者の基礎研究という形で育成していくメカニズムは持つべきだと思っています。さっき家先生がおっしゃったのとは、これは大きな分かれ道だろうと認識しています。

【佐々木主査】 

 家委員、分かれ道になると。

【家委員】 

 いや、大きな分かれ道なのか、そうでないのか、私にはよくわからないのですが。言葉の定義という問題はありますけれども、多分、理学系から工学系、どの辺に立つかによって、大分感覚的には違うのだろうかなと。いや、それはそれを応用基礎研究と呼んでいただいても結構だと私は思うのですが。

【柘植委員】 

 いや、基礎研究と言っています。応用なんて使っていない。

【家委員】 

 でも、2種類あるとおっしゃったわけですね。

【柘植委員】 

 ええ。基礎研究が2つある。

【家委員】 

 だから、純粋基礎研究と応用基礎研究があるとおっしゃったのではなかったでしょうか。

【柘植委員】 

 いや、基礎研究には2つあるということを、この9ページは第3期でうたっていまして。

【家委員】 

 はい。で、その2つは、どういう名前をつけていらっしゃるのですか。

【柘植委員】 

 それは基礎研究なんです。どちらの基礎研究について議論をしているかを、きちんと定義していくことが大切です。

【家委員】 

 その2つは区別しないということですか。

【柘植委員】 

 そうです。もし区別するとしたら、認識科学と設計科学という分け方ができる。決して二極論ではないのですけれども、便宜上、あるものを探求するというものと、あるべきものを探求するという、その分け方で、この基礎研究の前者と後者というのは分かれると考えます。

【家委員】 

 私の感覚は単純でありまして、そのテーマの選択において、これが役に立つだろうか、立たないだろうかということを意識してやるというものを、私の言葉では応用研究と呼んでおります。基礎研究は、そういう価値観とは切り離して、知的好奇心と言ったらいいのか、そういうものなのです。

【柘植委員】 

 言葉の定義は応用研究でも良いのですが、もし応用研究となったときに、基礎研究の学術の世界で、直ちにそれは応用研究だというレッテルで否定されてしまうことの危険性に私はこだわり続けたいのです。そこの担保があれば、別に言葉の定義は、そんなにこだわらないのですけれど、やはりいろいろ、私も産業側とアカデミアと両方二またかけてくると、この点が、「これは応用研究ですね」という話の議論になってしまう弊害を指摘したい。やってみたら失敗するかもしれない、間違っているかもしれない、けれども、やはり基礎的に詰めるべき研究を育てる芽を摘んでしまう危険性をずっと感じています。

【佐々木主査】 

 谷口委員。

【谷口主査代理】 

 今の問題に関しまして、少々コメントさせていただきますが。
 昨日も本委員会とは別の研究費部会というのがありまして、わりあい共通のメンバーも、ここにいらっしゃるのですが、このことが問題になっていて、これは私、補足があれば、訂正等していただきたいのですが、そもそも第3期科学技術基本計画に書かれている文言を議論すること自身に少し再検討を要する点があるのではないかと思います。自由な発想に基づく研究のみが基礎研究ではなく、研究にはすべて研究者の自由な発想があるはずではないか、という議論も出ました。研究というのは、やはり基本的には重要な発想に、研究者の発想がもとにならなければ、それは進まないものでありましてね。
 もう一つ、これは少し短くしますけれども、例えば、今、科研費がありますね。科研費は基本的には申し上げるまでもなく基礎研究だと思います。しかし、厳密に考えれば、科研費の中には応用的な研究もあるわけです。例えば、疾病の新しい治療に向けた研究というのは、例えば基盤研究や新学術領域などで遂行されることはあるわけですね。つまり、応用的要素を含んだ基礎研究もあるわけです。ですから、そういうところの定義をあまり議論してしまうと、かなり悩ましいところに陥ってしまうのではないかという気もいたします。ですから、やはり基礎研究というのを、もう少し広くとらえて、そして、これから我が国において重要であるのかという議論をするのがいいのかなという、そんな印象を持ちますが、いかがでしょうか。

【佐々木主査】 

 それでは、三宅委員。

【三宅委員】 

 うまく表現できないのですが、基礎と応用、あるいは認識と設計を分けるという思想、分けなくてはいけなくなるという考え方の裏に、例えば、学術キーワードに載っている項目はどれも比較的固定した静的なものとして考えられているということがあるのではないか、これをもっと変化するもの、動的なものとして捉えようとすると、かならずしもそれらを分けなくても良い、ということがあるのではないかと思います。知的レベルがここまで来たとか、科学がここまで進んだとか、政策として、今こういう形のものがよいその理由は何々の理論によるとなどの言い方をすると、それらはどれも現状を大変静的なものとして扱っている気がするのですが、先ほど白井先生のおっしゃったことを少しオーバーインタープリットしますと、人類の社会的な可能性はかなり可変的なところにある、という話が成り立つのではないかと思います。あるいは人材育成とか教育という話も、実は人がどうやってだんだん賢くなっていくものかということについての可変的な知見が必要だろうと思います。そうすると、これは基礎も応用も一緒にして、ある理論に基づいて設計した学習環境の中で人は賢くなるはずだという予測が立つなら、実際設計して実践してみないことには、はっきりしたことわかりません。そういう動的な変化を扱えるキーワードがここに1つ入るか何かしないと、全体としてスタティックな感じがするような気がいたします。

【佐々木主査】 

 わかりました。
 それでは、平尾委員、どうぞ。

【平尾委員】 

 私、工学の分野なので、少し先ほどからの議論には違和感があるのですけれども。
 我々、基盤研究というのと応用研究というのがまずありまして、それぞれに対して基礎という重要な理論を入れていましてね。たとえば先端基礎理論とか。それらがうまくかみ合い、三位一体で基礎が基盤と応用にうまく役に立って開発に行くというような感覚で、皆さん、進められています。ですから、基礎研究と応用というのを分けるというのが、あまり一般的でないので、少しだけ申し上げたいと思います。

【佐々木主査】 

 そうですか。なかなか、それぞれのところというか、語感も違いますので、あるいはいろいろな領域の違いもあろうかと思いますが。特に追加的なご発言あればいただきます。
 縣科学官、どうぞ。

【縣科学官】 

 最初に、小林先生が提示された問題で、非常にプリミティブですが、日本語で学術と科学は同義語なのかということは、ここで確定していただきたいと思います。例えば、私たちの名前、科学官ですが、これは学術官でもいいのか。
 つまり、先ほどの5ページの定義を引用されましたが、ここでは学術の中に人文社会、自然科学というふうになっています。というのは、その科学というのは、学問のある性格を物語っていて、学問体系全体を学術というのか、あるいは学術と科学が同義だったら、どちらかにまとめたほうがいいと思います。実は、私の専門は行政学ですので、行政用語上も非常に不明確で、何を指しているのかよくわからない。科学技術基本計画とおっしゃったときに、第一感では、どちらかというと自然科学的なことを感じます。しかし、よく読むと、人文社会も含まれているかもしれない。それは非常に誤解を生むので、そこは、やはり、もし同義ならば統一すべきであるし、そうでなければ、明確に定義していただかないと、これはいろいろ社会的にも混乱を招いているのではないかと、私は常々思います。

【佐々木主査】 

 それについて、この前、鈴村委員、何かおっしゃられたように記憶していますけれども。

【鈴村委員】 

 発言よろしいでしょうか。

【佐々木主査】 

 どうぞ。

【鈴村委員】 

 現在私は、日本学術会議に所属して活動しています。この組織の名称には《学術》という表現が用いられていますが、公式の英訳名は Science Council of Japan です。しかもこの組織は、人文学・社会科学、生命科学、理・工学をおしなべて包摂しています。すなわち、《学術》と《科学》があたかも同義語のように取り扱われているとともに、科学という用語には文系、理系いずれの研究分野も含まれているという建前になっています。学術会議では長く慣用されているこの用語法ですが、必ずしも広く受け入れられているとは言えない状況にあるようです。そもそも人文学の一部の研究者たちは、人文《科学》という分野の括り方に、強いアレルギーを持っておられるように思われます。また、例えば科学技術基本法には、《科学》という表現は固有の人文・社会科学は含まないと明記されています。こうなって見ると、《科学》と《学術》に関する議論に混乱が生じない方が不思議だという気がします。学術の基本問題を検討する場では、この混沌を正して建設的な議論の軌道を敷くことが、必要不可欠な最初のステップではないでしょうか。これが私が発言したかった第1点です。
 もう1点だけ述べさせていただいてよろしいでしょうか。

【佐々木主査】 

 どうぞ。

【鈴村委員】 

 価値という考え方が分岐点になるというご指摘が、先ほどございました。このご発言の主旨が、科学者自身が信奉する個人的価値の座標軸に拘泥した発言や行動は、科学とは一線を画するべき活動だということを差すのであれば、それなりに理解することができます。しかし、例えば社会を構成する人々がそれぞれに持つ価値を追求することの客観的・社会的な帰結を明らかにする作業とか、人々が実現を求める価値の間に衝突がある場合に、その対立を調整して整合化を実現することができるための条件を発見する作業などは、価値を取り扱っているとはいえ、当然のことながら社会科学の重要な課題です。この意味では、科学者が科学の立場から価値の問題を取り扱うことは、可能でもあり、重要でもあると思います。それまでも否定すると、社会認識の方法に大きな歪みが生じることになると思います。

【佐々木主査】 

 はい。
 科学技術とは何ぞやという小林委員からの質問と、縣科学官からの問題提起と、それから、ほかの方からも、いろいろな、何といいますか、実線なのか破線なのか、あるいはこれは引くべきか引かざるべきかということで、かなり基本的な問題についてのご発言をいただいたと思います。私としては、今ここでこうだということを申し上げるわけにはいかないと思いますけれども、本委員会としては、少なくとも、私が拝聴している限りにおいて、学術という概念をあまり狭くしないでいきましょうと。それからスタティックでなく、そういうスタティックなニュアンスを与えるような形でなく。ということは、つまり狭くとるということは、結果としてスタティックなものにつながるということもありますから、ある意味では人間の知的エネルギーというか、あるいは潜在能力というのか、そういったものも視野に入れながら、広い知的な活動領域として考えていこうというあたりについては、皆さんの中で異論があるとは私は思えないわけであります。ただ、サブのところでどういう線を引くのかとか何とかいう話になってくると、いろいろご意見も出てくるかなという感想を持ったところでありまして、おそらく領域ごとに、いろんな違和感があることは、正直なところ、あまり否定しないほうがいいのではないかと。むしろ、あることを踏まえた上で、どうするかという話にしたほうが私はよろしいのではないかなという感想を持ったところでありますが、本日は、もう一つ議題があるものですから、いろいろご発言いただきましたので、そのことについては大変ありがたかったと思っております。
 これについて同じ議論を行いますと、多分また同じことが、今度は若干違った角度から出されると思いますが、ステップアップしていきたいという感じも正直しております。こういう方向で行きましょうなんていう、非常にかたく、早々と固める必要はないのですけれども、一応、次はこういうふうな格好で、前回はこういうことしましたというような形で、少しずつステップを踏んでいきたいという気持ちを持っております。今後の学術研究の意義・社会的役割という大きな項目につきましては、今日の議論を踏まえて、若干の委員の方にご協力をいただくよう事務局からお願いがあると思いますので、その際はご協力のほど、よろしくお願いしたいと思います。その上で、また次回以降、議論をさせていただきたいと、このように思いますので、お願いを兼ねて、今日の大変すばらしい議論に対して、感謝申し上げたいと思います。
 どうぞ、中村委員。

【中村委員】 

 少し違う切り口なので、お話ししなかったのですが、今、社会という話が出ました。昭和50年のときには、「研究は研究者の自由な発想で行うものである」という定義でよかったのでしょうが、最近、研究に対する国民の見方が変わってきた。やはり今の政策文書として書くときに、「研究者が勝手に好きなことをやっていい」というのは、なかなか国民には受け入れられないのではないかという気がいたします。ですから、どこかに、やはり「研究の社会的価値」について、書き込まないと議論が通らないのではないかと思います。この会議のようなものも、我々は研究者ですから、外からみると「研究者が勝手にやっているのね」ということになるわけで、国民は無視されているように感じると思います。ですから、やはり、ただ単に勝手にやりますというのではなくて、社会、世界のために研究するんだ、少なくとも反社会的であったり、反世界的ではない研究をするんだ、と言う必要がある。そういうようなことを、うまく書き込む必要が出てきている時代かと思っております。

【佐々木主査】 

 これはもう、この10年あまり、さんざん私も悩まされてきたテーマですから、よくわからないのです。相当ブレークダウンして、きっちり説明しないままに概念を使って、社会的役割とか何とかいうことをやっていると、自分自身もわからなくなってくるという意味では、整理をするいい時期じゃないかと。ですから、逃げないで、どういう形で書くかというのをトライをしてみるというのは、私はむしろ賛成です。そうしないと、何かいつも非常に違和感を持って対峙しているような感じになるのはよろしくないというふうに感じておりますので、可能な限り皆さんと一緒にやってみたい、努力してみたいと思います。
 もう時間が来ておりますので、大変申しわけないですが、「学術研究の推進に向けた研究環境基盤の在り方」に審議を移らせていただきます。
 前回の委員会の議論の中でも、研究体制に関するご意見、研究インフラなど研究基盤に関する大変重要なご指摘をいただいたと記憶しております。学術研究の推進に向けた研究体制、研究基盤の在り方に関する問題は、研究環境基盤部会でも議論を進めていただいております。白井委員が、その責任者でございます。これは我が国の学術振興を考える上での基本的な問題であります。
 先ほど言いましたように、この研究環境基盤部会の会長の白井委員をはじめ、皆さん、何人かの委員が、そちらと兼ねていらっしゃるわけでありますが、本委員会との密接な連関のもとで、今後、議論を進めていくということにしたいと私自身は思っているわけであります。
 さて、本日の審議では、研究環境基盤の在り方という観点から、学術研究における大学の附置研究所や大学共同利用機関などの位置づけや機能・社会的役割など、学術研究機関の在り方、それから学術研究設備の在り方、学術情報基盤の在り方について議論をいたしたいと思います。
 事務局で、これらの課題につきまして資料を用意しておりますので、とりあえず、まず、その資料の説明から入りたいと思います。
 このほかに、もちろん研究体制や研究基盤の在り方に関する論点があろうかと思いますので、それにつきましても、その資料とかかわりなく、ご意見、ご質問を出していただければと思います。
 まず事務局から資料の説明をお願いします。
 それでは、勝野学術機関課長からお願いします。

【勝野学術機関課長】 

 それでは、資料の3に基づきまして、学術研究機関及び研究設備の現状と課題につきまして、ご説明申し上げます。
 資料3を1ページめくっていただきまして、学術機関、それから研究設備、大きく2つに分けてございます。もう1枚めくっていただきますと、学術研究機関の概要ということでお示ししておりますが、学術研究機関といった場合に、明確な定義づけが法律等であるわけではございませんが、一般的には、大学の附置研、これは学校教育法に大学に研究所を附置するという設置根拠がございます。また、大学共同利用機関につきましては、国立大学法人法に基づいての設置根拠があるということでございまして、そのほかにも、例えば、学内の研究施設ですとか、あるいは研究科の附属施設といったような組織におきましても、学術研究機関としての活動をやっていただいているわけでございますが、ここでは主として附置研と大学共同利用機関についてご説明させていただきます。
 まず、1ページのところにございますが、現在、附置研といたしましては、国立大学、公立・私立大学に約230の大学に附置される研究所というものがございます。また、大学共同利用機関につきましては、現在16機関がございます。
 具体的には2ページのほうになりますが、特にこの中で、国立大学に設置されております附置研究所につきましては、本日、机上配布で1枚資料をご用意しております。そちらのほうを見ていただきますと、具体的な研究施設の概要がわかるかと思いますが、国立大学につきましては、現在60の研究所がございまして、その中に全国共同利用型、いわゆる共同利用・共同研究を行う、そういう研究所が20あるということでございます。また、附置研に準ずる研究組織といたしまして、研究センターと言われております組織の中で、全国共同利用のものが28あるというような状況になってございます。
 資料の本文のほうをもう1枚めくっていただきますと、附置研においては、それぞれの附置研のミッションに基づいての研究を行うということが基本でございますけれども、先ほど申し上げましたように、個々の大学の附置研究所という活動を離れまして、全国のその分野における研究コミュニティのための共同利用・共同研究システム、その実現のための研究所というものがございます。附置研究所の中でも、いわゆる全共(全国共同利用)の附置研究所と言われている施設でございますが、こういった研究所におきましては、当該大学における研究活動だけでなくて、コミュニティの受け入れと、それからそのコミュニティからの要請に基づく共同研究とを行っているということで、3ページのところでは、そういった共同研究の実態についての状況をお示ししております。
 具体的には、4ページのほうになりますけれども、例えば、全国共同利用の研究所の場合ですと、それぞれ分野に応じまして、多少の差はございますけれども、学内における研究者の利用というのは比較的少なく、むしろ学外からの利用。例えば、理工系でありますと、学内の利用が24%に対しまして、残りの4分の3は学外の研究者の利用という形で、いわば大学に附置される研究所としての性格と、当該分野のコミュニティ全体の研究所という2つの性格をあわせ有するような、そういう研究所としての活動を行っているという現状をお示ししております。
 それから、5ページのところは、研究成果の最近の成果事例をお示ししておりますが、詳細は省略させていただきます。
 6ページのところで、こういった研究所の活動に対する評価について、お示ししております。平成20年3月とありますけれども、平成21年の3月の間違いでございますので、訂正いただきたいと思いますが、先ごろ大学評価・学位授与機構から、第1期の中期目標期間における研究所の現況分析、活動の現況分析、評価の結果が出ております。全体、そこにお示ししておりますように、期待される水準以上の評価を得た研究所がほとんどでございまして、総じて附置研究所の研究レベルが非常に高いという評価が得られているところでございます。
 7ページのところは、近年における附置研究所改革の1つの方向性ということでございますが、前期の研究環境基盤部会におきまして、この附置研究所につきましてご議論いただきました。そういう中から、従来は附置研究所と申しますのは、実態としては国立大学の附置研究所に対する対応ということが中心であったわけでございますが、国公私立を通じた新しい共同利用・共同研究の拠点制度というものを、昨年の5月の研究環境基盤部会の報告でご提言をいただきまして、学校教育法の施行規則を改正いたしまして、文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点の認定制度というものを新たに創設したところでございます。
 8ページのところに、昨年の10月に第1弾として認定した施設をお示ししております。私立大学等におきましても、こういった全国の研究コミュニティのための共同利用・共同研究拠点ということで、早稲田大学のイスラーム地域研究機構をはじめ、全部でこれまでに6つの私立大学におきましても、こういう拠点というものが認定されておりまして、国公私立を通じた、こういう共同利用・共同研究のシステムというものを、これから拡充していくということが、1つ、この附置研のこれからの方向性としてあるかと思っております。
 10ページからは大学共同利用機関でございます。16の研究機関がございますけれども、平成16年の法人化の際に、お示ししておりますような4つの機構のもとに、この16の研究機関が再編されております。
 大学共同利用機関の役割といたしましては、一番大きな役割は、共同利用・共同研究のための全国の大学研究者の共同の研究所というのが共同利用機関の中心的な役割でございます。
 11ページのところで、その活動状況をお示ししておりますけれども、機構によりまして、研究分野の広がりですとか研究の特性がございますので、共同研究課題数、あるいは受け入れ数について差はございますけれども、全体としては活発な活動が行われているかと思っています。
 12ページのところは、もう一つの役割といたしまして、それぞれの研究分野における人材育成に貢献していくという観点から、総合研究大学院大学の学生をそれぞれの大学共同利用機関において受け入れて、教育活動を行っております。こういった教育の現在の取り組み状況をお示ししております。
 13ページは成果事例ということですが、説明は省略させていただきます。
 14ページのところで、これも大学評価・学位授与機構の評価結果が出ておりますけれども、附置研究所と同様に、期待される水準以上という評価をすべての共同利用機関が得ているということで、全体として非常に研究ポテンシャルはアクティビティーは高いのではないかと考えております。
 15ページのところから、大型プロジェクトの概要をお示ししておりますが、こういった大学共同利用機関が中心になって担っております学術研究として、大型プロジェクトというものがございます。非常に大型の研究装置を用いまして、全国の研究者を受け入れて、素粒子ですとか、あるいは核融合、そして天文学といったような分野における研究活動を進めているプロジェクトの概要でございます。現在進めておりますプロジェクトとして、右下にございますアルマ計画という国立天文台の計画が23年度に建設を完了するということで、今後の課題としては、次期の大型プロジェクトに向けての検討を進めていくということが1つの課題としてあろうかと思います。
 17ページのところで、こういった学術研究機関の課題についてお示ししております。
 附置研究所につきましては、16年の国立大学の法人化を踏まえまして、それぞれの法人における附置研究所の役割、あるいは附置研究所に対する要請というものと、それから全国のコミュニティからの要請、そういったものをどう両立していくかという課題、また、財政難の中での必要なプロジェクトを国全体としてどう進めていくかというような課題、それから共同利用・共同研究拠点という新しい制度をきっかけとして、これからの附置研の主体的な改革をどう進めていくかというような課題があろうかと思っております。
 また、共同利用機関につきましては、第1期に法人化とともに機構化ということで、非常に大きな改革が行われたわけでして、その課題と成果を第2期に向けてどのように引き継いで発展させていくかということが1つの大きな課題だと思っております。
 また、共同利用・共同研究拠点がこれから増えていく、また、一方で独立行政法人の研究開発機関、そういったものとの共同プロジェクトというようなものも出てきている中で、他のこういう研究機関等の役割、あるいは関係というものをどう考えていくかというようなところも課題としてあるのではないかと思っております。
 それから、少し飛びまして、23ページからごらんいただきたいと思いますが、大学等における研究設備の概要について、お示ししております。
 研究設備と申しましても、非常に大型から小型まで、あるいは非常に大きなお金がかかるものから、そうでないものまで、極めて多様な研究設備があるわけでございますが、おおよそ類型化すると、ごらんのような形になるかと思っております。先ほど申し上げましたような大型プロジェクトで扱っておりますような、例えば、大型の望遠鏡ですとか、あるいは素粒子関係の加速器、そういったものから、小さいものですと、大学の研究室、あるいは学内施設に入っている測定機器、分析機器、そういったものまで多様な研究設備があるわけでございまして、そういったものを計画的に、また有効活用されるように、どう整備を進めていくかいうところが大きな課題かと思っております。
 特に、24ページをごらんいただきますとわかりますように、研究設備の高度化、あるいは先端化ということとともに、設備の老朽化、更新ということがどうしても進んでまいりますので、定期的にこういったものを更新・整備をしていかなければいけないわけでありますけれども、平成10年度以前ですと、かなり大型の補正というものがありまして、そういう中で、こういう設備も集中的に整備ができたわけでございますが、近年においては、そういう補正がないという状況の中で、大学からの要求に対して、必ずしも十分こたえられていないというような状況が続いております。そういった結果、右側の表にございますように、設備を設置してから、比較的長期間の経過を、年数を要しているような、古くなっている、そういう設備というものが蓄積してきている。そういうものに対して、どう効果的に設備の更新を進めていくかということが課題かと思っております。
 25ページ、26ページのところで、科学技術政策研究所が行いました最近の調査の結果などでも、他の公的研究機関と比較しても、大学の設備の更新がおくれているというような現状も出てきているわけでございます。
 最後に課題ということで、27ページに1枚まとめておりますけれども、まずは計画的な整備ということが重要であることは言うまでもありませんけれども、もう一つには、やはり財政的な制約の中で、より費用対効果の高い形での整備方策の工夫ということの検討が必要ではないかと思っております。
 また、研究環境基盤部会でもご意見等ありましたけれども、整備されたものを、どう維持していくのかという観点から、維持費の問題ですとか、あるいはそれを有効活用するための研究者を補佐する支援スタッフの問題、そういうようなことについても、あわせて、これから研究環境基盤部会で議論を行っていただくという予定になってございます。まず、研究設備と共同利用機関の関係は以上でございます。

【佐々木主査】 

 それでは、次、お願いします。どうぞ。

【舟橋情報課長】 

 資料4をお願いいたします。学術情報基盤の現状と課題について、まとめてあります。
 1枚目には学術情報基盤の整備の全体の概要をまとめております。全体といたしまして、最先端学術情報基盤の構築を目指しておりますけれども、我が国の大学等や研究機関が有しているコンピュータ等の設備、基盤的ソフトウェア、コンテンツ及びデータベース、人材、研究グループそのものを超高速のネットワークの上で共有するための基盤というふうに位置づけまして、その整備に取り組んでおります。
 柱としては大きく3つございまして、一つ目は国立情報学研究所が整備・運用しております学術情報ネットワーク(SINET3)。二つ目は、各大学等における学術情報基盤の整備ということで、情報基盤センターなどの情報処理施設の整備、また各大学における学内LAN、大学図書館設備の整備に取り組んでおります。三つ目は、学術情報の流通促進のための基盤の整備ということにも取り組んでおります。
 2枚目をごらんいただきたいと思いますが、学術情報ネットワークの整備・運用等についてご説明します。これにつきましては、学術研究や教育活動を活性化・効率化させるための基盤といたしまして、安定的で信頼性の高いネットワーク環境を提供するということを目的にしてございます。また、国際的な研究ネットワークとの相互接続による国際共同研究の支援を行う。さらに、ネットワーク環境の提供とあわせまして、電子認証基盤の構築、スーパーコンピュータ連携ソフトウェアの開発といった業務も行っております。
 このSINET3の現状でございますが、707機関が加入してございまして、全国の国公私立大学、共同利用機関等の200万人の研究者、学生等に利用されているということでございます。
 回線速度といたしましては、中継ノードから一般ノードにおきましては、1Gbps~20Gbpsの回線を整備しておりまして、基幹回線におきましては最大40Gbpsという状況になっております。
 今後の課題ということでございますが、この点については、お手元に参考資料ということで、昨年、学術情報基盤作業部会においてとりまとめていただきました、「学術情報基盤整備に関する対応方策等について(審議のまとめ)」を配布させていただいておりますが、この中でご指摘をいただいていることを、ここにまとめております。この学術情報ネットワークは、平成23年度からの移行を予定している次期学術情報ネットワーク(SINET4)の計画期間に向けて、今後の需要の見込み、それから教育研究活動の進展を勘案いたしますと、回線速度の増強、高機能化が求められるということでございます。
 あわせまして、経済性の一層の向上を図るという必要がございますので、先進的な技術、研究開発によるネットワーク設計などが必要でございます。
 また、今後とも安定的な運用を図るという観点からは、ネットワーク加入機関と連携した継続的な整備方策の検討が必要であるというご指摘をいただいておりますが、これは大量のデータの流通を必要とする、特別なニーズを持ったような研究を実施する場合には、当該利用機関に対しても、ネットワーク運営について応分の経費負担を求めていくことを含めた検討が必要ではないかということでございます。
 3枚目をごらんいただきますと、学術コンテンツの確保・発信システムの形成ということでございます。
 教育研究活動に必要不可欠な学術コンテンツということで、論文情報ですとか、図書・雑誌情報、あるいは研究成果情報、こういった学術コンテンツを確保し、安定的に提供していくということで、国立情報学研究所を中心に取り組んでおります。現在、GeNiiというコンテンツ・ポータルで、さまざまなコンテンツを統合的に検索し、提供できるようなシステムを提供しており、学術論文、図書、雑誌の書誌情報等、それぞれのコンテンツについての提供するサービスを実施をしておるという状況でございます。これらにつきましても、今後の課題ということで、これらのサービス機能について引き続き拡充を図っていくということでございますとか、学術機関リポジトリの構築などによりまして、学術情報の流通を促進していくということがあろうかと考えております。
 4枚目でございますが、各大学における学術情報基盤の整備ということでございまして、まず、情報処理施設については全国の7つの国立大学に置かれております情報基盤センターをはじめ、メディア基盤センター、総合情報処理センターなど、各情報処理施設の整備を進めております。
 それから、各大学における学内LAN、大学図書館設備の整備にも取り組んでおるところでございます。
 今後の課題といたしましては、これは中期目標・中期計画ですとか、あるいは国の政策との関連を勘案しながら、各大学の優先順位の尊重をしつつ整備を引き続き支援していくということでございます。また、情報処理施設につきましては、各情報基盤センター等の特色を生かした機能の強化ですとか、関係機関との連携強化を図っていくということでございます。
 大学図書館につきましては、大学図書館の教育研究活動上の位置づけの明確化ですとか、電子化等を踏まえた機能の強化を図ることが課題ではないかと考えております。
 5ページでございますが、学術情報の流通促進ということでございます。これにつきましては、先ほどの国立情報学研究所の行っておりますコンテンツ事業とかなり重複いたしますけれども、研究成果の流通について、さまざまな取り組みを進めております。
 学術情報の関係では、近年、電子ジャーナルの価格が非常に高騰しておるというようなことで、大学における図書館資料費が圧迫されているというような状況がございます。これについて、各大学において、間接経費の活用や、コンソーシアムを形成し、主要な外国出版社と契約交渉するなどの取り組みを行っていただいておるところでございますが、直接的な対応ということだけではなくて、例えば、オープンアクセスの推進など、有効な学術情報流通の取り組みを実施していくべきことなのではないかと考えているところでございます。
 6ページにつきまして、これらの学術情報基盤の在り方につきましては、学術分科会研究環境基盤部会の学術情報基盤作業部会で、ただいま申し上げましたような課題認識のもとで、現在、大学図書館及び学術情報流通の問題について、ご議論をいただいております。
 最後に、7ページでございますが、次期学術情報ネットワークの具体的な在り方につきましても、有識者によります検討会を設けまして、現在、ご検討いただいておるという状況でございます。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 それでは、この会議、大体4時近くまで議論をお願いしたいと思います。いろいろご質問もあろうかと思いますし、あるいはご要望もあろうかと思いますので、どうぞご自由に。それでは、沼尾委員。

【沼尾委員】 

 大阪大学の沼尾でございます。
 資料3の17ページに、大学内部からの要請とコミュニティからの要請の両立という記述があります。これら二つの要請を両立するために、ネットワーク型の共同利用が提案されています。資料にはそのような記述がないようですが、ぜひ、取り入れていただければと思います。

【佐々木主査】 

 はい。それは前期のときに、そのような提案で、報告書がまとまっておりますので、あとはステップとしては、実施に移るということかと思います。
 ほかにございませんでしょうか。はい。それでは、どうぞ。佐藤科学官。

【佐藤科学官】 

 資料3の23ページを拝見すると、要するに、大学共同利用機関、それから全共、その他大学に附置されている研究機関の施設等、こういうように整備をしていかれているわけでありますけれども、この下の要素という整理は、何と申しましょうか、コミュニティが極めて大きな汎用型の施設を必要とするという分野では、確かにこういう整理でよろしいのかと思うのですが、人文・社会科学でありますとか、自然科学の中でも、そうではない分野というのはたくさんあるわけでありまして、大学共同利用機関があたかもこれに対応するかのように書かれてしまいますと、とまどいを覚えます。具体的に言いますと、私のところなんかは人間文化研究機構でございまして、こういうものとは、少し合わないような気がしております。ここら辺のところについては、どうかなという感想を持ちます。
 以上です。

【佐々木主査】 

 はい。
 それでは、樺山委員、どうぞ。

【樺山委員】 

 先ほどの報告の中にもありましたが、図書館問題というのは、大変、近年、難しいところに来ているということであります。この中の自由記述の中にも、図書館を何とかしてくれという、多分、附置研究所の所長さんからの意見だろうと思いますが、こうした問題があります。
 もちろん、私ども人文科学を担当している人間にとって、書物、あるいはそれに伴うさまざまな資料をいかに有効に利用するかということについてのサービス機能について、いま少し踏み込んだ検討をいただきたいと思います。それは、あえて申しますと、図書館だけではなくて、近年、呼び名で申しますと、資料館ですとか、文書館でありますとか、あるいは博物館、美術館等、こうした多様な文化的な財の蓄積装置があります。これとの間の、これと大学、もしくは研究所との間の関連、あるいはコーポレーション、コラボレーションについても、いま少し学術体制として踏み込む必要があると。私、博物館におりますものですから、私どもは個別にそれぞれの活動をしておりますけれども、同時に、これは大学もしくは学術機関との間の有効な交流関係が、いま少し、これまで実現していなかったということについて、この場で、こういう形でもって、1度、学術側から提言していただくと、ずっとこうしたものに対する対応がしやすくなってくるということで、ぜひとも、どこかでご議論いただきたいと思います。
 以上です。

【佐々木主査】 

 では、よろしくお願いします。
 はい、どうぞ。福島科学官。

【福島科学官】 

 研究環境基盤という中で、物件費に相当するような議論は、今、お話しいただいたと思います。これはタブーなのか、よくわかりませんけれども、人件費に関する基盤的な考え方はどういうものなのでしょうか。例えば、ありていに言いますと、研究者、あるいは研究を支える技術や事務の人。今、その方たちが、何人ぐらいいて、一体幾らぐらいのお給料をもらっているのか。我が国が学術を進める上で、そのレベルは良いのか悪いのか。実は常勤の、いわゆる昔で言うと国家公務員に相当する人の数は、定員削減等のあおりを食らって、だんだん減っているわけですけど、そうでない、ポスドクも含めて、契約的に雇用している短期雇用、任期雇用の人々がどれぐらいいて、どれぐらいのペイをもらっているのか。別に諸外国と比べる必要はないですけれど、これらの現状は、我が国が学術を進める上で、果たして良いレベルにあるのかないのかは、1度議論しておいたほうがいいと思います。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 前回、中村委員から委員自身の研究費か何かでアメリカのことを調査されたという話がございましたが、網羅的にはできませんけれども、今回、何かそういう具体的なデータを集めるようなことを、ぜひ考えるようにということを事務局にはお願いをしております。どういう形でやるかについては、また結果をいずれお話ししたいと思いますけれども、ぜひ、そういう課題を取り上げたい。
 ただ、具体的なデータに基づかないと、議論がね。

【福島科学官】 

 そうですね。やはり実データに基づいて議論することが非常に重要です。例えば、先ほどお話しになられた研究費、これは多分、物件費ですけど、ある意味、学術の全分野で均等ではなくて、わりと自然科学とか大型科学、ビッグサイエンスと呼ばれるところに非常に偏っています。しかし、人文系のところでは、やはり基盤的な頭割の校費みたいな部分と、それからやはり人的ポストの確保が非常に重要だと思います。これらに関しては、実際のデータがあると、非常にありがたいと思います。

【佐々木主査】 

 はい。それでは、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】 

 国内での共同研究のネットワーク化についていろいろご議論が出ていますが、共同研究をネットワーク化するのであれば、視野は国内に留まらず、国際的な共同研究をも構想に含めるのがむしろ当然ではないかと思います。現状では、外部の研究者の受け入れ状況を見ましても、外国の研究機関からの受け入れは、確かに増加はしているのでしょうが依然として限られているのみならず、受け入れ研究者を処遇する環境としては、外国の研究者の受け入れを前提として作られているとは思われない不備が多々見られます。今後、大学及び研究所のネットワークをできるだけリンクしつつ共同研究を推進するということであれば、構想されるネットワークの視野は当然グローバルにする必要があると思います。
 人件費に関してもご発言がありました。コンピュータのファシリティーに関わる人件費も非常に重要ではありますが、研究活動の潤滑油となる研究支援スタッフの充実も,それに劣らない重要性を持っていると思います。広い意味でのセクレタリー機能の充実です。生命科学系や理工系の研究室の事情は異なるのかもしれませんが、少なくとも人文学・社会科学系の分野では、この側面に関する日本の大学及びその他の研究機関の貧困は、2、3の例外的な組織を除けば、あまりにも顕著だと言わざるを得ません。科学研究費その他での研究補助スタッフの契約には、およそ経験知の蓄積を許さない愚かな制約が課されていて、なんとか隘路を突破しようとする研究者は徒労感との戦いに疲弊しています。大学その他の研究機関の一層の改革のためには、フローとしての人件費の充実を否定する必要は全くありませんが、研究体制のストックの充実の一部として、研究補助スタッフの充実をシステミックに考えることも必要ではないでしょうか。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 鷲田委員、どうぞ。

【鷲田委員】 

 今の鈴村委員の意見に関連して、もう少し別の視点から補足したいと思うのですが。
 資料3が、学術研究機関及び研究設備の現状と課題となっているのですが、研究設備のところに、ぜひ中黒で環境という視点も入れていただきたいと思います。これは研究環境の整備でもあると同時に、研究者の生活環境の整備という意味でもあります。
 といいますのは、今、鈴村委員のほうからもありましたけれども、ある意味でトップレベルの学術研究を維持していくような研究機関というのは、国内的な視野だけじゃなく、やはり国際的な研究者の交流、集合というようなことを考えないといけないと思うのですけれども、特に大学院とか学部の場合は、留学するのだから日本語も覚えてというふうに、ある程度言うこともできますが、特に研究機関、研究所、研究センターの場合は、必ずしもそういう日本語を覚えてくださいというような条件を課す必要もないと思います。
 そんな中で、日本に海外の優秀な研究者をお招きするときにいつもネックになるのが、ご家族の問題です。具体的に言うと宿舎の問題、それから非常に便利なナースリーとか幼稚園があるかどうか、それからもう1点は、近くにインターナショナルスクールがあるかどうかということです。さらに欲を言えば、研究所に英語で対応できるような事務スタッフがそろっているかどうか。これは最後のは別にしましても、ハード面でいいますと、今言った宿舎、それから初等教育の学校、あるいはそういうものですね。そういうものの整備を同時にしていかないと、実質的には家族の反対で研究者が来られないというような例を、やはり私は自分のところの大学でも多々経験しておりますので、そのあたりの視点というのも、ぜひ入れていただきたいと思います。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 それでは、小林委員、それから磯貝委員。

【小林委員】 

 国際的な共同研究のついでにですが、問題、もう一つは、国外から資金を受け入れるのが難しいかと思います。実際、共同研究して、外国からのコントリビューション、今お金では難しいというので、インカインド、物を持ってきてもらうということにしているケースが多いと思いますが、そういう国外からの資金を受け入れることがもう少し容易になるようなシステムを考えていただきたいと思います。

【佐々木主査】 

 磯貝委員、どうぞ。

【磯貝委員】 

 少し違う話ですが、学術情報基盤のところで、多分、学術情報基盤には図書館の問題も入っていると思うのですが、今、全国の大学で、要するに、雑誌を買うのに、どのぐらい金が使われているのか。かなりいろいろな大学で困っていると思います。どうも資料がないからよくわからないのですが、1回調査していただいて、大体そのために幾らお金が、ある意味では出版社に流れていると言うと変ですが、そういう形で使われているのか。それがわかると何ができるかというのはよくわかりませんが、やはり、かなり今の、特に自然科学系の商業誌の高騰には研究者は随分困っているし、大学も困っているのではないかと思います。何かの方策を考える必要があるのではないかと思っています。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。
 それでは、柘植委員、どうぞ。

【柘植委員】 

 資料3の勝野課長が言われた資料の27ページ、設備研究に関する課題の意見ですが、この課題は第3期の科学技術基本計画の中の大目標のうちで、最初の「人類の英知に対する挑戦」と大目標を実行していく中で、私は確かに、大学、国研の法人化の根本的な制度設計の欠陥が出てきていると思います。したがって、ここに書いてある主な課題というものを、今の制度設計のもとで、対症療法的には解決出来ないと、私は根本的にずっと思い続けております。そこのところを、ぜひ、この27ページの主な課題を一つ一つ、対症療法という言葉は少し悪いかもしれませんけれども、やっていって解が得られるのかということの掘り下げをやっていただきたい。つまり、今の法人化の制度の設計の中では根本解決は無理だという話が私はあり得ると考えます。
 例えば、下から2つ目の有効な維持管理方法ですけれども、言うならば設備建設と維持とは全然予算枠が違っているわけですね。これはもう産業から見ると信じられない話でありまして、設備をつくったら、その設備の寿命が終わるまでのものを、きちっと予算確保するというのが当たり前なのに、子供を産むほうと、それを育てるほうとは全然予算は別だなんていう話が、ほんとうに産業から見ると、何という投資をしているのだと考えます。そういう意味で、どうもそういう制度設計改革まで戻らないといけないのではないかと。このまま27ページの課題を、第4期の基本計画の中に当てはめるだけでは無理なのではないかと思っています。その点、ぜひ掘り下げていただきたいと思います。

【佐々木主査】 

 多分それは法人化以前からそうです。

【柘植委員】 

 そうですか。

【佐々木主査】 

 だから法人化。

【柘植委員】 

 法人化が原因ではない?

【佐々木主査】 

 つくる話はつくるのだけれども、あとはないよというので、私も非常に苦労させられた。

【白井委員】 

 法人化したほうが、まだましだって。

【佐々木主査】 

 だから、もちろん法人化もあるかもしれませんが、かなり長い時間にわたった問題かと思います。事の重要性は、おっしゃるとおりです。
 ほかにございませんでしょうか。
 それでは、古城委員、どうぞ。

【古城委員】 

 先ほど鷲田先生がおっしゃった最後の外国との共同研究するときに、外国との英語でやりとりし事務手続ができる方が必要という問題ですが、これは、今、国際化が必要と言われているのであれば、非常に必要とされるポジションで、早急に手当することが必要だと思います。
 現状ですと、職員数が減っており、なおかつ教員の数も減っています。この現状で、国際的な学術研究をやらなければいけないというと、教員が諸々の手続をほぼ担うということになります。現状では、中間的なポジションに人を雇うということが非常に難しくなっています。ですから、そのようなポジションをある程度文科省のほうで認めていただかないと、大学側で、予算が削減されている中で、手当てするというのは非常に難しいです。
 また、この問題は研究面だけではなくて、留学生の受入の問題とも非常にかかわる問題です。留学生の受入れにおいても、このようなポジションが非常に必要ではないかと思うので、早急にこのようなポジションに人を手当するしくみを考えていただければと思っています。

【佐々木主査】 

 今のことは私立大学ではどうですか。国立のほうは多分無理として。

【白井委員】 

 私立大学ですか。いや、もう全然。統計に私立大学にも研究所はあるなんて書いてありますが、ほとんどこれは、そういうふうに文科省に届けているかもしれないが、実態はないと思っていただいたほうがいいのではないかと思いますが、それはさておいて、この国立大学法人にある、これまでやってきた附置研、あるいは共同利用研究施設というものは、これまでの長い歴史で確かにできてきた。だけど、ここに課題を書き出されているように、どうしたらいいのだろうという状況である。それから管轄というか、組織的には、共同利用研究施設に大体統合されていくような傾向にあるわけだけれど、果たして、そういう動きだけで全部がうまく動くのかなというのは、私にはちょっとわからない。
 なぜかというと、こういう研究所や何かができてきた理由は、基本的に各国立大学に予算をつけるためには、何かつくらないと人もつかないし、何もつかないしというので、セクションをつくってきたのですよね。もちろん、それは学問的にいろいろ理由があって、当然つくっているのだけれど、それを別々につくればつくったで、そこのところにオートノミーというのはある程度出てくるし、時間がかかって、なかなかやりにくくなる。ですから、予算のつけ方なんかを、国立大学法人にもどういうふうにつけて、これを管轄するのかという逆の動きもほんとうは必要ですよね。これ、文科省管轄で直接的にコントロールしていくというのは結構難しいのではないかなと思います。私は基盤部会という部会に参加しているから、真剣に考えると、これは非常に難しいなという気がしますよね。
 ついでに言って、もっと非常に根本的なものを考えると、それこそ各省庁またがって、非常に大きな問題があります。ですから、ここにメス入れるぐらいのことをやらないと、日本の学術とか科学技術研究って、ほんとうにはなかなかむだが多過ぎてしまうという気がしますけどね。

【佐々木主査】 

 ほかにございませんでしょうか。
 縣科学官、どうぞ。

【縣科学官】 

 大変不勉強で恐縮なのですが、日本の社会で研究振興するモデルは何なのかということを、今、白井総長がおっしゃられたことの関係で考えたいと思います。例えば、この表を見ただけで、端的に、もし政府主導であれば、学術は将来どうなるのかということを憂いざるを得ないわけです。例えば、極分化すれば、市場優先・主導で研究推進が行われるというような社会であれば、それは政府が果たす役割というのは小さくていいと思われます。しかし、日本が過去そうではなかったであろうし、将来もそういうモデルに移行できるのかということを考えたときに、やはり政府が総体として、文科省だけではなくて、総体として、研究推進にどれぐらいの役割を果たすのかということの認識をしっかり持っていただきたい。そしてそれを、例えば、統計的にある程度時系列に把握して、そしてその上で、資源がどういうふうに使われてきたかを、例えば、今まで仰せになった統計として描いていく必要があると思います。その根本的な、基本的な像というのが、私にはよく分りません。そこは今後どのようにしていくのか、ということをどうお考えになるのでしょうか。

【佐々木主査】 

 だれか、ご意見ある方は。

【白井委員】 

 1つだけ言うと、マネジメントの細分化の方向性というのは、必ずしもそれでいいのかどうかということが1つ大きくある。だから、これ、それぞれ独立ではないけれども、かなり独立に動いていくようなしくみが望まれている。やはり大学というのを、もう少し大事にしたほうがいいのかもしれないし、そこは分かれ目に来ていると思います。

【佐々木主査】 

 どうぞ、谷口委員。

【谷口主査代理】 

 なかなか問題が大き過ぎて、茫洋というか広範過ぎて、どこからどうやってメスを入れたらいいのかという、ほんとうに基本的な問題があると思います。
 やはり大学、法人化を、是非はともかくとしましても、やはり国立大学ではなくなった大学、国が必ずしも支援するというわけではない共同利用機構といったものを、しかしながら国が支援せざるを得ないという、こういう状況のもとに、これからの大学や研究所がいかにあるべきかという根本的な問題があると思います。
 ただ、日本の社会は、やはり国の税金に頼らざるを得ないという、よそのアメリカなどとはかなり状況が異なっていることも捉えておく必要があるのではないか、と思います。アメリカのすべてがいいとは決して申しませんが、財政的な支援体制が異なっているわけです。さっきの図書館の問題なんかもしかりで、やはり人文社会系から自然科学にすべて至るまで、やはり社会を支える、学問を支える、学術を支える基盤というのが日本と異なっているので、ここは日本として何ができるかということを考えざるを得ないというのが現状ではないかと思います。やはりこれらの課題については基本的なことに戻って議論をしないと、なかなか解決しないのではないかと。しかしながらこれはかなり問題が大きすぎ、ここで議論すべきかどうか、難しいとは思います。
 現在、問題になっているのは、今日はなぜこれが、共同利用機関の問題が出てくるかという背景には、やはり学術機関課というところが、従来からずっとこういう大型研究施設等をサポートしてきたものの、かなり予算が逼迫して厳しい状況になっているというふうなことだろうと思われます。それをどうサポートするか、する必要があるか、あるいはしなくてはいけないか、そのための論理構築をどうしなきゃいけないのかという問題も、おそらくあると思うので、それは今日議論に出ている学術の問題に関する基本的な問題に抵触するかという気もします。例えば、15ページにありますアルマ計画とか、ニュートリノとか、いろいろ、天文学研究の推進とか書かれていますが、これが明日の経済効果を生むとか、そういうような基礎研究とかいう観点から、おそらく理解はされないだろう。そうすると、学術の一端を担う重要な側面として、一体、我が国が何を大切にしているかという問題があって、広い視点に立った知の創造、というのが文明社会のデューティーといいますか、文化国家として発展するためには、やはりこれが重要なのだということを広く認識していくことだと思うのです。
 卑近な例を出して大変失礼なことを言うかもしれませんが、この前、WBCで日本が世界一になったときに、アナウンサーが絶叫していて、去年はノーベル賞、今年は野球で世界一という、これは市民の一般的な感覚で、科学、芸術、スポーツに至るまで社会に見える貢献というのは大切にしていくべきと思います。つまり、社会へのアカウンタビリティーという視点で見ると、これは、いろんな効果があって、文化国家としての意義というのを、我々は社会によく理解していただくことが大切ではないかと思います。知を生み出すというのは、一方では、そういう文明社会のデューティーとしての学術の推進であり、その中には人文社会系も、こういう天文学も、物理学も、すべてが含まれると。もう一つは、明日の技術革新を生むための必須の学術研究であると思います。その視点がすごく重要なのはないかと思います。その辺も、統計的な数値に基づいた議論も大切ですが、意識の高揚とかいった感情的側面にも訴えるということも重要だと思います。 むろんそれと同時に、統計的な分析というのが重要であって、それに基づいた論理構築をしていくことは大切です、例えば、研究費は中国やアメリカにもう追い抜かれている。とっくに追い抜かれている。開発に対する投資は、もう5分の1ぐらいに日本はなっていると。研究費はすぐに、比較しても日本が2分の1で低いとかといったような説得力のある論理構築をするとか、あるいは大学で20万人程度の研究者がいて、実際に研究費をもらっている、科研費をもらっているのは5万人程度しかいない。平均300万ですね。これで日本の大学は成り立つのか、どうすればいいかといったような、そういう論理構築というのを、ぜひ、これからつくっていって、具体的には施策に生かしていただく、そういう進め方をしていただきたいなと思います。
 長くなってすみません。

【佐々木主査】 

 ありがとうございます。大変難しい問題が全体としてあることは事実だろうと思います。
 こういう意見もありますね。無限の可能性を追求するという学問の性格はそうなのだけれども、先立つものは無限にはないという中で、一体、どのようなお金の使い方が効果的であり、かつどのような形でのサポートがより効果的であるかということについて、1度立ちどまって考えなければいけないという段階にあるということを、多分、白井委員も違った角度で言われたのではないかと私自身は思っております。ですから、我々としては、そういう意味で、今日もいろいろご議論いただいたように、いや、もう少しやるだけでも随分違うというような話が、実はなかなか手がつかなくて、それで、それと関係ないところで、ぼーんと、人文・社会系は被害者意識で見ているからと言うと問題なのだけれども、すごいお金が動いているように見える。このインバランスというものは、一体どういう格好で、しかるべき形でコントロールされ得るのかというような問題が、正直なところ、我々の目の前にあることは否定しないほうがいいだろうというふうに思います。足元がふらついている、そのふらついていることを括弧に入れたままで、先生方がサポーティングスタッフの代行を必死にやりながら何とかしていくというような形では、3年や5年は続くかもしれないけれど、10年、15年になったら、これはもたないと。ですから、いわば補給部隊を持たない軍隊みたいな話になるのは非常に困るわけですよね。まさにそういう、非常に卑俗な表現を使ってまことに恐縮なのですが、その辺、柘植委員なんかは全体を見ていらっしゃるから、いろいろご意見あろうかと思いますけれども。

【白井委員】 

 兵站なしだから。

【佐々木主査】 

 皆さんは、そういうような体験と、もう一押ししてくれると随分違うなという希望と両方持って参加されているのではないか。そのあたりをできれば生かせるような格好にできればなと私は自身は考えているわけであります。先ほど、出ましたように、文科省のほうからいろいろな研究基盤の整備については、これから具体的な提案があろうと思いますが、白井委員が部会長でございますので、今日の話をいろいろ受けとめていただいてよろしくお願いしたい。
 ただ、やはり一番難しいのは、人の問題をどうするかということでしょう。やはりこれは受け切れないところもあるかもしれないという点は、正直なところ、いささか心配しているわけでありますけれども、その意味で、第4期の計画に向けて、先ほど谷口委員からもお話あったように、きっちりとした根拠に基づく議論をしていきましょうという前提に立ちながら、先ほど申し上げたようなことを大切にするということも忘れないでいきたいなと、私自身はそんなふうに思っているわけであります。そもそも3期までの計画というのは、どういう成果を上げて、どういうふうに評価されるのかという評価を聞かないで、次を考えるというのは、まことにおかしな話で、政府としてはどう考えているのかというのは、率直に私は一番聞きたいところです。ですから、まず事務局には、ぜひそういうものも含めて、我々に至高のデータを提出してくださいということを、いろいろお願いしているというところであります。余計なことを申し上げたかもしれません。
 時間がだんだんなくなってきまして、あと10分ぐらいありますけれど、もしご発言があれば。
 高山科学官、何かございませんか。

【高山科学官】 

 今まで言われてきたことと関係していることですけれど、学術研究を支える基本的なところが、かなり傷んできているのだと思います。サポーティング・スタッフの問題もそうですし、学術研究を行う場、つまり、大学の物理的環境や設備、あるいは研究者がいる場所そのものが劣悪な状況になっていると思っています。つまり、学術研究を行う上での最低限の条件すら、整っていない。これは、これはやはり、何とかしないといけないと思います。
 前回も申し上げましたけれど、スペースそのもの、つまり、自分が研究する物理的空間がほとんどないという現実があります。私の場合、東大で歴史を教えていますが、大学には自分の研究を行える場所がありません。図書館の問題とも絡んできますが、私が研究の場としてあてがわれた場所は、通常の部屋ではなく、西洋史学研究室の書庫の一角です。大学の蔵書がつまった書棚が並ぶ書庫の一角に机を入れてもらい、そこにパソコンと電話が置いてあります。これは、もちろん、教員の部屋が足りないから、仕方なくやっていることですが、このような環境で一体どのような研究をしろというのかと、絶望的な気分になります。
「学術の基本問題」を検討するということであれば、まず、このような基本的な問題、どのような学術研究を行うにしろ、最低限必要な物理的環境の問題を第一に考えていただきたいと思います。究極のところ、スペース(物理的な空間)と時間の劣化の問題ということなのかもしれません。競争的資金は増えたかもしれませんが、サポーティング・スタッフが削られることによって研究・教育以外の業務が増え、物理的環境整備はなおざりにされ、結局、学術研究の土台ともいうべき、スペースと時間が大幅に劣化してしまっているということなのだと思います。

【佐々木主査】 

 ほかにございますか。どうぞ。それと、樺山委員に。どうぞ、喜連川科学官。

【喜連川科学官】 

 喜連川でございます。
 時間というお話いただいたかと思いますが、ハードウェアとしての設備というのも非常に重要ではあるかと思うのですが、やはり研究の全体のプロセスというものを効率化するサービスインフラということをしっかりと考えざるを得ないのではないかなという気がしています。
 日本も、それほど経済成長は、なかなか見込めないところでもありますので、沢山秘書を雇うというような贅沢は出来ないわけで、いかに効率的に、事務的な仕事、自分自身の研究を出来るかということが重要になります。この間もノーベル賞受賞者が出られた、某研究所の外部評価にお伺いしますと、CERNから来た研究者が、これほど手書きでドキュメントを出さなきゃいけないとは信じられないというようなことを、かなりはっきりとおっしゃる。すなわち、研究のための情報インフラとしてのネットワークも重要なのですが、サービスというレベルをもっと上げるということこそが重要で、研究者の雑用を大幅に減らしていくという努力も非常に重要なポイントになってくると感じます。
 以上です。

【佐々木主査】 

 はい。ありがとうございます。
 樺山委員、どうぞ。

【樺山委員】 

 学術研究について、大まかに言うと、世界的に2つのパターンがあると思うのですが、1つは、いわゆるアカデミー形態と言われるもので、かつて社会主義国、あるいは現在ではフランスがかなりそれに近いですが、政府が主導し、したがって、そのスタッフも基本的には公務員であると、研究に専念する公務員であるという、そういう形と、それから日本、あるいはアメリカもそうですが、大学を主な拠点にしているという2つの形があると。いずれかというと、後者は能率が悪いと思います。大学に置かれることによって、大学の数が多い、あるいは研究者、それぞれかなり個性的であるということ、あるいは私も研究者ですが、なかなか合意形成が難しいということ、能率が悪いということ。であるにもかかわらず、やはり大学に置かれていることのメリットといいますか、そのことを適切に理解し、そのメリットを開発していくことが必要だと思います。もちろん、アカデミックフリーダムが保障されていることとか、あるいは大学ですから、当然、学生がいる、大学院生がいる、後継者がいるという、そのこと。このメリットをどうやって生かしていくことができるかということが、やはり日本の学術研究の大事な問題だと思います。能率が悪くてだめだだめだと言うのは簡単なのですが、その中でもって、大学に学術研究が置かれている、主要な拠点が置かれていることの意味を、今後とも考えていく必要があるだろうと、そういう感じがいたします。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 大変活発なご議論をいただきまして、ありがとうございました。時間が迫ってまいりましたので、そろそろ質疑を終わりたいと思います。
 今日ご議論いただきました、学術研究機関や学術情報基盤に関する議論につきましては、引き続き、白井委員のもとで、研究環境基盤部会でご審議を続けていただきたいと思います。
 また、部会の議論につきましては、適宜、本委員会にご報告をお願いするということにさせていただきます。
 それでは、本日の会議はこのあたりで終わらせていただきますが、門岡室長、何かありますか。

【門岡学術企画室長】 

 資料1をごらんいただきたいと思いますが、次回の学術の基本問題に関する特別委員会は4月23日、木曜日、15時から17時で予定しております。
 それから、先ほど主査のほうからお話がありましたが、資料に基づいて議論するということにつきましては、前回のときにも論文の数、引用の関係とか、その辺りについて科学官のほうからもご指摘がありました。そこら辺についても、マクロだけではなくて、分野別の分析とか、あとは中村委員のほうで、三菱総研にお願いして、アメリカの事情を調べられた結果など、適宜、会の中で二、三十分程度お時間をいただいて、またご議論するといったこともやっていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それから、本日ご用意させていただきました資料につきましては、お手元の封筒にお名前を記入の上、資料を机の上に置いていただければ郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 また、ドッチファイルにつきましては、机上にお残しいただきたいと思います。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 どうもありがとうございました。それでは、皆様、どうもご苦労さまでございます。これで終わります。

 ―― 了 ――
 

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