学術の基本問題に関する特別委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成21年6月11日(木曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省16F特別会議室

3.出席者

委員

佐々木委員、小林委員、白井委員、柘植委員、樺山委員、鈴村委員、磯貝委員、古城委員、中村委員、沼尾委員

(科学官)  
喜連川科学官、佐藤科学官、高山科学官

文部科学省

磯田研究振興局長、倉持研究振興局担当審議官、奈良振興企画課長、合田総括審議官、土屋政策評価審議官、藤原会計課長、戸渡政策課長、舟橋情報課長、勝野学術機関課長、山口研究助成課長、松川総括研究官、門岡学術企画室長 その他関係官

4.議事録

【佐々木主査】 

 それでは、ただいまから科学技術・学術審議会学術分科会学術の基本問題に関する特別委員会の第5回会合を開催いたします。
 それでは、まず配付資料の確認を事務局からお願いします。

【門岡学術企画室長】 

 それでは、資料につきまして確認させていただきます。お手元の議事次第2枚目、配付資料一覧のとおりご用意しております。欠落等ございましたらお知らせいただければと思います。
 また、前回の資料とこれまでの報告書等をまとめました資料をドッチファイルにまとめまして机上にご用意しておりますので、こちらの資料も適宜ごらんいただければと思います。
 なお、本日配付いたしました資料につきまして簡単にご紹介いたします。資料1につきましては、本日ご議論いただきます、これまでの4回の審議の整理をしたものを案として準備しております。
 それから、参考資料1でございますけれども、これは教育再生懇談会第4次報告の抜粋ということで用意しております。この中で「教育のグローバル化と創造性に富んだ科学技術人材の育成」というものが2枚目のところに記述されております。この委員会は小林先生が参加されている会議でございます。
 それから、参考資料2でございますけれども、「『基礎研究強化に向けた長期方策検討ワーキング・グループ』における審議経過について」、これは総合科学技術会議の本庶先生が中心となって議論をされているものでありまして、5月にワーキンググループでの中間まとめということで報告がまとまったものでございます。
 それから、参考資料3といたしまして「第4期科学技術基本計画の策定に向けた検討の視点例」ということで、これは6月2日に第1回の基本計画特別委員会が開催されました。そこで示されました検討の視点の例ということで出されたものでございます。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 それでは、これから審議に入ります。
 確認的なことになりますけれども、本委員会では学術の意義や特性について、それから、学術と社会との関係について、それから、学問の特性を踏まえた学術の振興のための施策の方向性についてという3つの事項について審議を求められているわけであります。あわせて、第4期科学技術基本計画の策定を視野に入れた議論を進めていくということになっております。
 第1回目の会合におきましては、学術の基本問題に関する論点の整理ということで、大学等における研究を取り巻く現状と課題について自由なご発言をいただいたところであります。第2回目以降の審議におきましては、皆様からいただいたご意見の中から重要な事項をピックアップして議論を深める試みをしてまいりました。特に学術研究の意義、社会的役割、学術研究の推進に向けた学術研究基盤のあり方、研究費のあり方、研究者養成のあり方、研究支援体制のあり方など、重要な課題につきましては一通り議論することができたと考えております。
 これまでの議論の中で、今後論点とすべき事項がある程度明確になりつつあると思いますので、本日の委員会では今後の審議に向けてこれまでのご議論いただいた内容について一度整理をするというような作業をしたいと思っております。
 お手元の資料1「これまでの審議の整理(案)」をお配りしております。こちらについてご確認かたがた、さらに重要な論点や付加すべき事項につきましてご意見をいただきたいと、このように思っております。
 それでは、この資料につきまして事務局のほうから経過を含めて説明をお願いします。

【松川総括研究官】 

 それでは、ご説明させていただきます。
 資料1の性格は今、主査のほうからお話があったとおりでございまして、4回の意見を整理したということでございますので、必ずしも体系だってないところもありますし、網羅的でないところもあろうかと思います。そういった点をご了解いただいた上でざっとごらんいただければと思っております。
 それから、もう一つ、文中にアンダーラインを引いているところがございますが、これは本日のご説明の便宜上引いているものでして特段それ以上の意味はございませんので、その点もご了解いただきたいと思います。
 それで、前回まで4回の議論を踏まえまして、大きく幾つかの項目ごとに意見を整理していったものでございます。1つ目の柱が「学術研究の社会的意義と支援の必要性について」ということでございまして、まず、現状と課題についてはここに書いてあるような問題意識が出されております。1つには、日本の学術研究が低落傾向にあるのではないかと。それから、基本計画との関係でいえば、基礎研究の推進というのが書かれているが、学術研究を推進するための方針が明確になっていないのではないかと。また、重点分野の研究やプロジェクト研究に対して投資が集中しているのではないかといったような問題意識がございます。
 その上で、学術研究の意義・特性についてですが、学術研究の特性としてはここに幾つか掲げてあるようなキーワードのようなものが出されております。例えばLiberal Arts & Sciencesでありますとか、好奇心、無から有を生みだす等々幾つかの事柄が整理されているのではないかと思っております。
 それを踏まえて、学術研究を振興する意義でございますが、こちらも切り口が幾つか出されております。日本の国際責務であるとか、文化力、国際競争力を高める等々、あと、教育と表裏一体であるといったようなことがかなり整理されてございます。
 その上で、次のページでございますが、今後さらにこれを議論していく際の方向性としては、寛容性、価値観の多様性という考え方に立つべきだと。それから、3つ目の丸にございますとおり、大学の自治や学生の存在といった大学ならではのメリットに着目した議論をしていくべきと。それから、最後の丸にございますとおり、各分野の特性に応じた議論をしていくべきだというようなこともございまして、これらを踏まえてさらにもう少し整理が必要なところもあるかと思っております。
 それから、2つ目の柱が「研究環境・研究支援体制」でございます。
 こちらも現状と課題につきましては、1つ目の丸は委員からの発表がございました東京大学の調査を引用しておりますが、研究レベルは世界トップに伍しているけれども、環境面での課題があるといったようなこと。
 それから、2つ目の丸では、その環境という点では人的な研究支援体制というのが大事であると。統計によると支援者の数は増えているようですけれども、定員削減の影響等で能力面で問題があるといった指摘もございまして、これについてはもう少しデータに基づいた検討が必要ではないかと。さらには、コーディネーターの役割の方が必要ではないかといったような問題意識が出されております。
 それから、もう一つの問題点として、教員の研究時間が減っていると。それの一方、組織運営にかかわる時間が増えていると。特に増えているのは評価業務への対応でありますとか、競争的資金を獲得するための作業といったようなことに時間をとられているという問題意識も出されております。
 それから、それとも関連いたしまして、大学の事務体制の整備として、例えばですが、留学生担当のようなものの戦略的機構が必要だと。あるいは、米国のようなリサーチアドミニストレーターが必要ではないかといったような意見がございます。
 さらに、3ページ目をごらんいただきますと、特に国際共同研究というのを推進していく上で受け入れの設備の整備、それから、スタッフの問題等々、環境の整備が必要であるという意見もございます。
 これらを踏まえまして、今後の方向性としては、1つには研究者の支援体制を充実するということで、人材の確保と資質の向上が必要、それから、事務機構の確立、さらには、研究を支える人材を適切に評価することを確立していくべきだといったようなことがあろうかと思います。
 もう一つは、教員の職務でございますが、教員と教員でない職員等が担うべき職務を明確に分担すべきといった視点でありますとか、さらに、教員の中でもどこにウエートを置くかについてはそれぞれ差があってもよいのではないかといったような意見がございました。
 3点目の柱が「基盤の整備・研究費の在り方」でございます。
 まず、現状と課題につきましては、基盤的経費が減っている中で、それと競争的資金のバランスがどうなっているのかという問題意識、それから、研究設備の整備費が減少しているということもありまして、インフラ面での脆弱化が進んでいるのではないかといったような問題意識がございます。
 さらに、その下の研究資金の意義というところでございますが、本来、競争的資金でまかなうべきでない設備のメンテナンス経費のようなものが競争的資金で出されている。あるいは、交付金で足りない教育経費を科研費でカバーしていると。それから、文系の場合は図書の購入などに苦慮しているといったような問題。
 以上をまとめると最後の丸になりますが、例えば科研費に対して教育経費、設備の購入などさまざまな役割を期待する面も実際にあるわけですけれども、それでは本来の競争的資金としての性格が不明確にならないかといったようなことがあろうかと思います。
 それから、もう一つの視点として新しい研究領域を振興するということで、既存の大学制度や研究者の領域意識を壊すぐらいの仕組みをつくらなければいけないとか、あるいは、異分野交流のための仕組みをつくるというような議論が必要であるといった問題意識が出されております。
 今後の方向性といたしまして、まず、設備につきましては1つには設備整備と維持の予算が分かれていることなど制度設計レベル面での検討が必要ではないかといったこと、さらには、学内での共同利用もあまり行われていないということで、広く利用できるようなシステムをつくる必要があるのではないか。さらには、大学の外にあります資料館や博物館等との交流といったような切り口も指摘されてございます。
 一方、研究費のあり方につきましては、1つ目の丸にございますとおり、科研費を大学における基盤的な研究を支えるものとしてもう少し広くとらえて位置づけていくべきではないかといった意見、さらには、これについても分野の特性に応じた制度を設ける必要性があるのではないかといった論点が出されております。
 それから、4つ目が研究者への支援の問題でございます。
 現状と課題でございますが、博士課程修了者の進路について統計データもお出しいたしましたけれども、全体で45%の人材が社会的に不安定な立場に置かれている。その結果、次のページでございますが、優秀な学生が大学に残らなくなっている現状がある。
 それから、次のポストドクターの位置づけでございますが、ポスドクの大半がプロジェクト経費で雇われているのだけれども、むしろポスドクという時期を研究者を育てる時期、期間として見なければいけないのではないか。
 さらに、キャリアパスの問題としては、ここでは特に人文学の分野での深刻さということが発表の中でもございました。その一つとして、研究者になるためのハードルが高くなって、そのための時間、期間も長くなっているというようなご意見もございました。また、IT系ではキャリアパスのデザインというのがなかなか難しいといった問題提起も出されてございます。
 今後の方向性でございますが、ポスドクの位置づけにつきましては、第4期の基本計画に向けて大きなテーマになる。具体的には若手研究者のポストの確保でありますとか、ポスドクの将来の職場やロールモデルを社会の中につくっていくといった必要性が指摘されております。この点についても分野ごとの状況や特性を踏まえた対応が必要であるという意見もございます。
 それから、ポスドク等への支援ということでございますが、1つ目の丸にございますとおり、大学に残ることが研究者としてすぐれているという価値観が支配的なのだけれども、もう少し多様な研究者としての発展のあり方を認識できる社会をつくるべき。それから、学生に対しては、競争やハードルがあるのは当然としても、経路とゴールがある程度見えるようなキャリアパスを考える必要がないか。その点から、任期制や流動性のあり方についても検討が必要ではないか。次のページでございますが、経済的サポートの必要性、特に大学院生に対しましても一律は無理だとしても何らかのサポートを考えるべきだといったような方向性が出されております。
 それから、この4点目とも絡みますが、5点目として「大学院教育の在り方について」でございます。
 現状と課題については、アメリカと違って日本の大学院は教育ミッションが不明確ではないか。具体的にその下にアメリカと比較した記述も幾つかございますが、3つ目の丸では、ここでは工学分野の博士ということになっておりますが、産業界が求める幅広い能力の水準を大学で身につけていない、逆に、産業側でも博士レベルの人材の重要性への認識が不足しているといったような現状があるのではないか。
 それから、大学院教育の現状については、4つ目の丸ですが、ここでは人文系に関してとなっておりますが、国際的な研究者を育てるのか、国内向けの教育者を育てるのか、個人の関心による勉強を続けているのか、目標の置き方によって問題点も違ってくるという指摘もございます。さらに、IT系の場合であれば、専門職としての教育とのバランスが重要だといったような指摘もございます。
 今後の方向性でございますが、目的、それぞれの目的に応じた教育システムを大学院教育の中で考えていくべきではないかといったようなことがあろうかと思っております。
 発言者の意図とずれたまとめをしているところがもしかしたらあるかもしれませんけれども、おおむね4回の議論でこういったところが出てきたのではないかと事務局として考えております。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。
 おそらく皆様方のご発言がいろいろなところに入っているのだろうと思います。それで、それがどの程度正確に反映されているか等も含めてまたご指摘をいただければと思います。便宜上、議論の整理という進め方について私から少々ご提案させていただきたいのですが、まず1.の「社会的意義と支援の必要性について」ということについてご意見を伺って、次いで、2.と3.を扱って、4.が若手にかかわる問題でありますので、それはそれで一緒に扱おうかなと思います。往復していただいても結構ですが、とりあえず便宜上、そういう格好でやらせていただきたいと思います。
 その上で、早速でございますけれども、1.の「学術研究の社会的意義と支援の必要性について」というあたりから何かご指摘があれば、これに入ってない論点も含めて、あるいは、強調点も含めて何かご発言いただければと思います。
 それから、事務局からもありましたが、これはここに入っているけれどほんとうはここではないかというような話もぜひこの際ご指摘いただければと思います。
 私も少々気がついたのですが、この4ページ目の新しい研究領域の振興みたいなものは、この上から2つ目というか、「学問の発展に向けた新しい研究領域の振興」といったようなもの、振興になるとこちらへ入るのかもしれませんが、1.のところに入ってもおかしくないテーマだろうとか、そういうような形でのご指摘ももちろんいただければと思います。例えば一例でございますけれども、そういった点も含めて、とりあえず1.のところから始めさせていただきたいと思います。
 それでは、1.のところで。どうぞ。

【中村委員】 

 これ、1.なのかどうかよくわからないのと、いつか申し上げた気もしますが、これから人口がどんどん減っていく中で、この担い手が減る中で、30年後に人口が相当減ったときに、学術研究をどういう形につくるのかという議論を始めなくてはいけない時期だと思います。そういう観点が抜けているかなと思いました。
 これは今議論するというわけでもないのかもしれませんが、人口減少したときにすべての学術領域が全部カバーできるのかどうかということは深刻な課題と思います。

【佐々木主査】 

 そういう話はどこでやるのでしょうか。ここでやってもいいのですが。局長、何か。

【磯田研究振興局長】 

 実は、大学分科会と、人材委員会で議論されております。大学分科会におきましては、全体の人口減に伴ってどちらかというと高等教育を縮小する方向で議論が進んでいるのではないかと仄聞をしております。
 それから、人材委員会のほうでも実は事務的な議論をしたのですが、どちらかといえばポスドクがオーバーフローしているのではないかとか、ポスドクの方を社会にもっと幅広く供給していくと。そのために必要な教育内容の、教育のための教育という議論でございまして、実は中村先生がご指摘のような観点が比較的少ないのではないかという問題の認識を持っております。
 それで、それに対して、何人かのそれぞれの委員会の委員の先生方からは、大学院のむしろマスについては現状を維持して、そして、質を高めるべきであると。その維持のためには、当然ですけれども、かなりの外国からの留学生を確保して、かなりヘテロな状況の中で教育研究をやるのが日本の学術研究者の養成になるのではないかという、そういう議論の方が強いとは承知しておりますが、ご指摘のとおり、今議論しているところは少ないですし、かつ、そういう視点は意外と軽いと思いますので、ぜひここでご議論いただければと思います。我々も今日ここに入る前にそういう事務的には論点があるということを承知しております。

【佐々木主査】 

 人材育成のことは何かありますか。

【柘植委員】  

 別の観点から、いいでしょうか。

【佐々木主査】 

 どうぞ。

【柘植委員】 

 1ページの学術研究の特性の4つ目の丸で、「認識科学と設計科学に分類できるのではないか、インタラクティブな関係にあるのではないか」との記述があります。この議論は私と鈴村先生との話がここにまとめられているのですけれども、この3行までの話は日本学術会議の知の統合の分科会の提言として、一昨年の3月だったと思いますが、正式に公表されています。
 むしろ、やはりこの場では、「このインタラクティブな関係を口語体で言うと、従来の学術研究のレッセフェールに任せておいてこのインタラクティブの関係が誘発されるのだろうかと、あるいは、別な言い方をすると、インタラクティブな関係が阻害される要因は何だろうか、それを取り除くためにはどうしたらいいのだろうか」と、ここまで踏み込みたい。それはまた学術会議に課題として投げ返してもいいのかもしれないですが、ここに3行で書くならばもう一歩踏み込んだとらまえ方を書いたほうが次の進歩につながっていくなと思っているのですが。私自身の課題もあるのですけれども。

【佐々木主査】 

 鈴村委員、何か今の点、ございますか。

【鈴村委員】 

 その点は同感です。もう一歩進めるためにこの委員会での議論があると思っています。とりあえずは学術会議でなされた議論が一応テーブルに載ったと。その先をどうするかという議論を改めて深めていただければと思います。

【佐々木主査】 

 これは非常に重要な論点ですから、またいろいろな機会にぜひほかの方からもご意見を伺いたいと私は思っております。
 その阻害する要因というのは。

【柘植委員】 

 私の感じは、実はその下の記述にあるように、「学術研究は基礎研究から応用研究まで幅広い意味でとらえるべき」だとあるのですが、どうしてもやはり設計科学というのはあるべきものを科学するという、探求するとなってくると、やはり基礎といいながら応用的な社会のニーズに応えられるのではないかという仮説で設計科学というのはされると思います。ですから、この基礎科学と応用科学、応用研究とのインタラクティブというのとかなりアナロジーなところがあると私は思っているわけです。
 したがって、この下の「基礎、応用の幅広い意味でとらえるべき」という記述と、ここのところと密接にかかわっていて、逆に幅広くとらえられていないのではないかと、あるいは、インタラクティブにとらえられてないメカニズムが学術の世界にあるのではないかと、こういう見方を私はしております。

【佐々木主査】 

 どう説明するかはともかく、あることはあると思います。
 今の点について、ほかの方から何かご発言があれば伺います。

【白井委員】 

 1つよろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、白井委員。

【白井委員】 

 今の点、全く私もそうだと思うのですが、全体のバランスとしてやはり日本で今わりに短期的なものになっていくというか、そういう分野をどうしてもやらなければならないという事情はもちろんあると思うのですが、基礎科学で問題意識、新しい問題意識が生まれてくるというのは必ずしも何か方針を立てたらそこから生まれてくるわけでもないから、やはり自由に発想が出るような場所、そういうような機関なり組織なり、そういうことがもう少し自由に設定されないとやはり無理があると思います。そういうところに人が集まっておもしろがってやるというか、問題意識持つというか、そういう部分がないと新しい学問というのかな、何かそういうものは生まれにくいと。
 そこの部分はやはり少し日本は弱いのではないでしょうかね。決まった形のあるものについて、ここは、この問題はやらなくてはいけないからこれだけ投じようというようなプロジェクト的研究は非常に多いけれども、そこから新しい学問体系、体系までいかなくても新しい何かが生まれてくるというその強さのある新しいものはまだなかなか出てこない。それを出るような雰囲気というのはやはりどこかに余裕として持たないとならないので。

【鈴村委員】 

 よろしいでしょうか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、鈴村委員。

【鈴村委員】 

 多少今のご発言にも関係すると思いますが、学術研究の意義・特性の3つ目の丸で、学術研究を体系化して教科書を作製するというのは、非常にありたきりな活動であります。むしろ学者というのは学術研究の先端に立って、あえて異端の説でも唱えるということにも言及がないと、学術の基本問題というにはやや寂しいと。少なくとも新しい知見の開拓と確立にあたって勇敢であろうということも、メッセージとして送る必要があると思います。
 例えば、現在では大講座制とか大部門制とかいって、かつてのような小さな垣根で学問をとじ込めることはしなくなってきているとは思うのですが、かつてのイメージはそれなりに残っているところもあって、自分のテリトリーなどという意識がどうしても残っている。そのような意識が崩れるのは、学問の内発的なダイナミズムに基づくというよりは、何か外国で起こった流行にいち早く乗って、それをすることこそ先端的な研究であるかのような雰囲気になるときです。
 これは私は間違いだと思います。借り物に便乗した革新ではなく、内発的な学術の革新が群生するような機構をどうやってつくるかということが、学術の基本問題だと思います。そういう点を含めた掘り下げを、これから議論できたらいいと思います。

【佐々木主査】 

 今のお話に即、即応するかどうかわかりませんが、先ほど少々申し上げました4ページの上から2つ目の、新しい研究領域の振興という表現がいいのかどうかわからないけども、やはりこの項目はある面組織問題と、それから、精神的姿勢の問題、抜きがたくあるある種の固定観念みたいなものをどうするかということはあるのではないか。
 そういう応用、設計科学と認識科学、基礎研究から応用研究、こういう表現もあるし、いろんな表現がもっとそこにあって、そして、その特性がもうちょっと膨らんでいく可能性があるものであるというイメージを強く出すということは非常に大事な点ではないかなということは私もそう思いますね。ですから、そこはメッセージとしてあまり受け身的で縦割り的イメージを出さないように、ぜひそうしていきたいなと思います。
 ですから、今の点も含めて、樺山委員、どうぞ。

【樺山委員】 

 事務局で適切に整理していただきましたのでよく理解できるようになりましたけれども、今話題になってまいりました1ページ目真ん中のところ、学術研究の意義・特性のその中の学術研究の特性というところにつきましては5つ、差し当たりは私どももいろいろなことを言いましたのでばらばらに羅列しているように見えますけれども、最初の丸は別にいたしまして、残りの4つは大まかに言うと2つに分けることができると。
 初めのもの、つまり2番目と3番目は一方では好奇心もしくは新しい技術に関する発見という、そこを志向する学問のあり方と、他方ではそれを体系化し、かつ、社会に対して発信するという両方の役割があるということを2番目と3番目、それぞれ別の言い方ですけれども、指摘しているということがあります。
 それから、4番目と5番目は今までここでもご指摘がありましたとおりに、認識科学と設計科学、もしくは、基礎研究と応用科学というこの相互の関係を今少し整理する必要があるということを前提にして、やはり4番目と5つ目とは同じ問題群として整理することができるということだと思いますね。
 ということですので、ここまでいろんなことを言っておりますのでもう少し整理が必要ですが、その2つの問題群を中核に置きながら、これに関する今後の振興の方式を考えていくということで十分にここは諸問題をすくい取っているなという感じがいたしましたので、私どもが考えるのも大変ですので、事務局で今少しここを整理していただけたらなという感想、感じがいたしました。

【小林委員】 

 まだ設計科学とか応用科学研究という言葉を正確に理解してないかという気がするのですが、いわゆる課題解決型のプロジェクト研究のようなものと、設計、応用というのは重なる部分があると思うのですが、そこは区別するのですか。同じものと、重なっているものと理解するのでしょうか。そのあたりを。

【佐々木主査】 

 いかがでしょうか。どうですか、柘植委員。

【柘植委員】 

 これはこのあたりから個人の意見に分かれてしまうのですけれども、ここでは一応、学術研究を「認識科学、あるものを探求するという行為を認識科学」という形と、「設計科学、あるべきものを探求するという科学的行為」との二つのカテゴリーに分けているわけです。
 今、小林先生のお話は、「では、応用研究が設計科学なのか。」というご質問ですね。私は「設計科学の中でも基礎研究と応用研究がインタラクティブであるべき」だと思います。その中に認識科学まで入っていく、当然基礎研究というものもあるわけですので、そういう認識しています。答えになっていないかもしれないです。むしろ鈴村先生のお話を。

【佐々木主査】 

 鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】 

 自らの研究分野に引き寄せた言い方になって恐縮ですが、経済の現状評価と制度設計を研究する際には、現存する経済システムはどういう仕組みになっているかを認識することが前提になりますが、その場合にも現存する仕組みを見る切り口はいろいろあるわけですから、我々が望ましいシステムに関するイメージを持って、それとの対照で現状を観察して評価する必要がどうしても出てくるだろうと。
 そうすると、現状を認識する前提として、まずどこに注目すべきかというところで経済システムの設計者の観点に一応身を置いて、望ましいシステムはどういうものかを考える必要があることになります。
 逆に、望ましい経済システムを設計者の観点から考えるとか、望ましい経済政策を考えるという場合でも、全く絵にかいたもちをかくだけでは無意味ですから、どういう選択肢が実際の社会の内発的な展開と整合性を持つかという認識を前提とした上で設計する必要がある。この意味で、設計科学の側も認識科学と完全に独立ではないのだと思いますね。
 このように、設計科学と認識科学との間にはインタラクティブな関係があって、そのことを踏まえた上でもなお認識科学と設計科学という見方自体は意味を持つ。これが柘植委員がおっしゃる議論ではないかと思います。

【佐々木主査】 

 小林委員。

【小林委員】 

 そこの区別は何となくわかるのですが、現実のもう少しサイエンスとか工学の分野でいうと圧倒的にたくさんの資金も人もいわゆる課題解決型のところにいるわけですね。
 そういう研究課題とか資金の出方も学術の中の応用科学であるというのか、それはまた違うものだと見なすべきなのか、そこのあたりを教えていただく。

【磯貝委員】 

 よろしいでしょうか。

【佐々木主査】 

 どうぞ。

【磯貝委員】 

 私は農学ですので、農学というのはご存じのように実学なわけで、農学を認識科学と設計科学という分け方で考えると、私は認識科学というのは見つける科学で設計科学というのは端的につくる科学だというふうに理解していまして、それぞれに当然基礎も応用もある。学術というのは私は研究者が自分の興味で始めるのが学術であるといふうに自分の中では整理しています。ですから、だれかから課題を与えられて、これをやるためにお金をやるよというのが学術研究かと言われると、少しそれは違う。
 ここの上のほうに書いてあるように、まさに好奇心とか研究者がみずからの発想で例えば応用的な研究をやっても、それは私は学術研究だと。その中にやはり応用するためには何かをまず見つけなければいけないと。例えば、微生物を使った抗生物質研究なんていうのはまさに応用のための基礎研究であったと私は思っていますし、特に農学という分野は基礎と応用、あるいは、認識科学と設計科学が極めて密接につながった学問領域だというふうに理解しています。

【佐々木主査】 

 これは私の感触ですけれども、やはり鈴村委員が言われるように社会を扱うような学問領域と、今、磯貝委員が言われたような領域とでは、若干、例えば好奇心と言われると、我々社会をやっている人間は好奇心は好奇心だけれども、先ほど鈴村委員が言われたように問題意識とか観点とか、何かもう少し対象との、ある種のかかわり合い方みたいなもののニュアンスが違うのかもしれないという感じはします。
 ですから、好奇心は好奇心で私は大変いいと思うのですが、もう少しこの辺も少し幅を広げて表現するほうが、ベターではないか。おそらく古城委員のところもそうだと思うのだけれど、好奇心は好奇心なのだけども、もう少しそれは説明可能なある種のメッセージ性を持ち得るものもあり得ると思うので、そういうものも含めていくということは認識のほうでも当然あると思います。
 私自身の印象だと、やはり日本はそこのあたりについてあまり二元論をやり過ぎて自縄自縛になっているという面が1つあって、それに対して今ここに出ている観点はそれを少し見直しましょうというのはそれはそれでいいのですが、他方で、最初の認識のところの練り方というのか、こなれ方というのか、これをどうするかという問題はやはりないわけではないですよね。
 ですから、これは私はそう思いますというだけでは、アイ・シンクだけではやはり少々ぐあいが悪いわけで、特に社会とか何かを考えるときは一種の共有、ある面共有されてほかの人間と重なったようなコミュニケート可能なものがそこにないといけない。
 おそらく、好奇心と言われるものもそういう意味では何か非常に主観的なイメージだけでとらえられると少々狭いかなと思います。それだと、学術研究というものが何か趣味でやっているとか何かという話にいきなり行ってしまうのを、もう少しガードできないかというのが私の気持ちなので、何か表現を含めて皆さんからまた工夫があれば提案していただくといいのではないかという感じを持っています。
 高山科学官、どうぞ、何かありますか。

【高山科学官】 

 今お話になっていることと絡んでいますが、既存の知といいますか、我々がある意味では共有できるような、もちろん個人的には学ばなくてはいけないものがたくさんあるのですが、その学びの過程、研究者でも学んでいかなくてはいけないのですが、その部分と、それから、新しい知をつくり出す、そこがオリジナリティというところなのだと思うのですけれど、その部分の違いをある程度意識して議論したほうがわかりやすいのではないかと思います。
 好奇心というのは個人の好奇心ですから、既存の知の中に既に存在しているものを個人的に見出して満足を得るような行為も含まれています。しかし、そのような行為は個人的には意味をもつとしても、学問的に意味があるわけではありません。それが学問の中で意味を持つのは、人類が共有している知の体系の外に出ている、あるいは、新たな知を創出している場合に限られているということだと思います。
 すぐれた研究者になるためには学びの行為を続けなくてはなりませんが、その学びの行為と新たな知を創造する行為は、ある程度区別して議論したほうがよいのではないかと思うのです。いかがでしょうか。

【佐々木主査】 

 それは先ほど樺山委員がおっしゃったこととかなり重なると認識してよろしいですか。

【高山科学官】 

 そうですね。

【佐々木主査】 

 それは先ほど樺山委員からご提案いただいたところだと思います。
 どうぞ。

【樺山委員】 

 ちょっと付言させていただきますが、好奇心という言葉はたまたま出た言葉なので、もう少しこれは心理学用語ではなく学問用語として整理する必要があるということだと思います。
 例えば、未決の問題、解決されてない問題の発見であるとか、あるいは、問題そのものとして立てられてない事柄を発見することとか、そういうことだと思うのですが、これらは普通に言うと通常いわゆるオーディナリーな学知ではなくて、それを超したところに何かがあると。
 ときによるとそれは結局学術ではなくて宗教だったり哲学だったり倫理だったりするかもしれないのですが、そうではなくて、学術的にもとらえることができるような領域がどこかにあるぞという直感であるとか、あるいは、場合によってはその見通しであるとか展望であるとか、そういうことだと思うのですけれども、それを上手に表現する言葉が今のところありませんので、差し当たり好奇心と呼んだのだと思います。今少しこれは私どもを含みまして説明用語を開発する必要があるなと考えております。

【柘植委員】 

 関連ですけれど、高山先生がおっしゃったことに、私、かなり同感をします。ただ、この議論をしていくと、つまり研究資金のファンディング側、またその上流にある行政側がはっきり分けるべきではなくて、やはり学術を担っている我々がやっぱり旗幟鮮明というか、できるだけ「そこを私はここをねらっているのだと、それが強いて分けろと言われたらこれは認識科学だとか、好奇心駆動型だ」とか、アカデミア自らからが旗幟鮮明にすべきだと高山先生もおっしゃったと私は思うのですが、そうとらえるだけじゃいけませんでしょうか。

【白井委員】 

 表現が難しいですね。ぎりぎりのところが。

【佐々木主査】 

 高山科学官、何かありますか。

【高山科学官】 

 実際のところはやはり難しいのかもしれませんね。私もどういうふうに整理すれば一番いいのか、悩ましいところなのですが・・・。どうも引っかかるといいますか・・・、スキルや知識を手に入れるレベルの知的活動と、それから先の闘いといいますか、人類が共有する知や知的認識領域を拡大する闘い、新たな知を創出する闘いというのはある種次元が違うと思うのです。
 学術振興や研究助成の議論をしていると、この前のほう、つまり、高度な知識や技術を身につけるという点に関しては具体的にいろんな方策が見えるのですが、後の方、新たな知を創出するという点に関しては非常に難しくて・・・、これは当然リスキーで最終的にはわからない部分なのですけれども。ただ、多くの人たちが気にしている一番大事なところは、この部分なのではないかという気がしています。日本の学術の衰退といっているのは、このオリジナリティを出せる部分、そこを問題にしているように思えるのですね。
 だから、この新しい知を創出するという部分を問題にするのであれば、その部分に固有の問題、あるいは、必要な方策というものを考える。これはやっぱり避けて通れないのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。

【白井委員】 

 いいですか。

【佐々木主査】 

 白井委員。

【白井委員】 

 私も、非常に表現は難しいのだろうと思うのですが、先ほど主査が言われた現状と課題の中に新しい研究領域の振興とか、そういったたぐいのものが移ったほうがそういうところも表現できるのではないか。
 先ほどご意見があったとおり、学術研究の特性のところに好奇心という言葉、確かにこの表現をやるとすぐにあなたたちは趣味だけでこうやっているのかというふうに言われるから、やはりもう少し新しい問題意識であるとか、何か要するに世の中の貢献にある程度つながっていくような一般的な問題をきっちりやって、それの興味でやっていくのだというような、何かぎりぎりですが、そういう表現を入れるにするというのは私も賛成ですね。

【佐々木主査】 

 これまた入れ過ぎるといろいろ問題が出てくるという、そこは難しいのですけれども。難しいのですが、何かここの特性のところで事務局からも、整理しながらおそらくいろいろあったのかと思うので、松川総括研究官、何かありますか。特にございませんか。

【松川総括研究官】 

 はい。

【佐々木主査】 

 よろしいですか。
 それでは、どうぞ、中村委員。

【中村委員】 

 よろしいですか。足りないとしたら、やはり世界とか人類とかそういう大枠の言葉がないのではないか。やはり人類全体の何か知的レベルを向上させるということ。
 それから、もう一つ、絶対欲しいのは自律的であること。自分で律してきっちりやるという、自律した個人が行うものが学術研究であるということを述べる必要があると思います。子供の好奇心と違うのは、自分の方向性は自分で決めるということでしょうか。主体が個人か個人のグループかもしれませんが、外から言われるものではない。
 開発研究というのは社会の要請を受け入れて行うもの。学術研究は、基本的に自律的に動く人が自分の興味に従って、しかしその目的は世界の英知を、つまり個人的なものではなくて、人類全体の英知を向上させるという目的意識を持っているということだと思います。

【佐々木主査】 

 どうぞ、佐藤科学官。

【佐藤科学官】 

 今のお話の続きになると思うのですが、私は設計科学という言葉のよしあしはまた別として、あるべきものの探求というのはある意味で価値を議論する作業ではないかと思います。その前半のところの探求というのは、これはある言い方をすると価値とか判断というものを極力排除してやっていこうというもので、後半のところは反対にとことん、ある意味では2人の違う立場の人がいると真正面から対立するかもしれないような価値観なり立場を加えた議論をすべきではないかと思います。
 あるべきものを探求するとなると、この辺のところはやはり哲学であるとか宗教学であるとか、そういうふうなものが入ってくる要素が大きいのではないかと、そんな感じがずっとしております。

【佐々木主査】 

 そのまた価値という言葉もややこしくて、これも先ほどの好奇心ではないのだけれど、非常に狭くとられ過ぎるというのがあり、これもなかなか使うとまた説明が要るようになってくる面もあるのではないかなと。

【中村委員】 

 1ついいですか。

【佐々木主査】 

 中村委員、どうぞ。

【中村委員】 

 それについて、私は、英語でいうとアナリシスとシンセシス、分割していくほうとくっつけていくほうということをおっしゃっているのではないかなと思っています。探求、アナリシスでしょうか。

【佐々木主査】 

 同じこと。

【中村委員】 

 解析と合成みたいなことかなと思いました。

【佐々木主査】 

 そういう理解もあるかのかもしれないけれども、これもやはり我が委員会としては最後まで残る問題かもしれません。
 ただ、大枠どのような方向で議論を深めていくべきかということについては今日いろいろ議論いただいたところで、今までよりはこういう方向を追求すべきだとか、あるいは、こういう点を留意すべきだということについてはご指摘いただいた点を生かすようにしたいと、このように思います。
 それで、この1.のところのほかの項目等はいかがでございましょうか。そういうことも含めて、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】 

 これ、最初のところの丸が先ほどから気になって仕方がないのですが、これは一体どういう認識かということなのですが。

【佐々木主査】 

 どこの最初ですか。

【鈴村委員】 

 「長期低落傾向にある」という宿命論的な昔懐かしい表現になっている点です。こういう認識は、どういう考え方に基づくのかということを、もう少しはっきりさせる必要があるように思います。
 学術の基本問題を考える際に、長期低落傾向という現状認識ないし近未来に対する危惧から出発することが、ほんとうにいい選択かということを思ってのことです。

【佐々木主査】 

 これはどこから来たのでしょうか。門岡室長。

【門岡学術企画室長】 

 普通に我々が文章を書こうとすると、やはり危惧されるというふうな表現に多分なるのだと思うのですが、この委員会を4回行っている中で、論文の数ですとか質の問題といったところに触れられて、ここの10年ぐらいを見ると日本の地位というのはやはり低下しているのではないかというご発言もありまして。これは書き込み過ぎなのかもしれませんけれども、あえて少し書いてみたというところです。

【鈴村委員】 

 学術の水準を議論する際には、ある分野の最先端を行くトップ・ランナーのパフォーマンスに注目するような見方と、その分野のサイエンス・コミュニティのすそ野全体の活性度に注目して見る場合とでは、よほど姿が違ってくると思います。
 グローバルな意味でのリーダーシップがどうもあまりとられていないということを危惧するのであれば、それはそれで考え方としてあり得るけれども、日本のいわば基盤的な学術教育システム自体が崩れつつあるという危惧であるならば、考え方も非常に違うし、危機に対処する補正措置もまるで違ってくると思うのです。
 こういう認識から出発するというのは大事だと思うけれども、内容を精密にスペシファイしないと、特に冒頭に来ることだけに、私は気になるということです。

【佐々木主査】 

 そうです。それは、だから、具体的に何に即して語るかという話がないと、ということだと思いますので。

【松川総括研究官】 

 鈴村委員が言われるように、方向性としてのこれからの議論を進める上での切り口というか、その方向性をまた言っていただければ、それを踏まえてこのお話を展開していくということはできると思います。

【佐々木主査】 

 確かに、ですから、それこそさっきの認識科学ではないのだけれども、これも認識の問題なので、ですから、何に即して何を言うかという話をどのように書くかということについてはご注意いただいたということですね。

【樺山委員】 

 すみません。

【佐々木主査】 

 樺山委員。

【樺山委員】 

 今のところですが、私も気になっているのは、そこもありますが、「国立大学の法人化以降」とあります、このまくらがこれでいいのかなと。これは通常読みますと法人化があったのが悪かったのでこうなったと読めますので、これは担当としてやはり文部科学省の文書としてはまずいだろうと。
 当然、問題含みであることはよく知られていますけれども、まさかやはり法人化があったからとは言えないという気がいたします。

【佐々木主査】 

 ほかにも。中村委員、どうぞ。

【中村委員】 

 そこは多分書きぶりの問題だと思いますけれど、例の論文の発表のシェアとか特許の問題、あれは相対値だと思いますね。

【佐々木主査】 

 そうですね。

【中村委員】 

 アジアのほかの国も非常に力を注いでいますから、それに比べてシェアが落ちているということをおっしゃっているのだと思いますね。学術研究も競争ですから、競いの場に入っていかないとけ落とされてしまうということがある。そういうことを言っておられる。だから、絶対的水準が低落しているのかどうかは、伸びは落ちているのかもしれません。しかし相対的に劣ってきていることは事実でしょう。

【佐々木主査】 

 いずれにしても、すべて物事はコンディショナルに言えるものですから、その辺の書きぶりについては法人化以降のほうが重要なのか、水準が問題なのか、両方ともこれでこの1番目の丸はいろいろ出たということで、確かにそういうご注意ももっともだと思いますが。
 ほかの点はいかがでしょうか。

【柘植委員】 

 今、1.だけですね。

【佐々木主査】 

 とりあえず1.ということにして、あんまりあちこちめぐらなくてもいいようにというか、課題からしてやはり少し問題が違うと思うので。
 それでは、急ぐわけではないのですけれども、2.、3.あたりの研究環境・研究支援体制、研究費のあり方というあたりに少し重点を移した議論をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

【柘植委員】 

 1つよろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、柘植委員。

【柘植委員】 

 4ページの上の「学問の発展に向けた新しい研究領域の振興」ということで、ここに書いてある1つ目の丸はもう今までも、例えば第3期の科学技術基本計画の中でも「新興領域、融合領域の対応の留意」ということで5行ほど書き込んであります。
しかし、言っている部分は、この新しい研究領域の振興、そして、2つ目の丸のいろんな仕組み、異分野交流の仕組みが必要ではないかということです。
 この記述は、第3期科学技術基本計画の13ページに書いてありますが、書いたにもかかわらず生かされていないし、科学技術行政のほうでも、どうもこの記述に実行を推進・奨励してないのではないかと、危惧をしています。
 むしろ、この丸も、「もうこれは今まで言い古されていて、むしろこれがなぜ5年前にも立てられているのに生きてないのか。」と、そこのところの掘り下げをもっとすべきだと、そういうふうに私は認識しています。

【白井委員】 

 よろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、白井委員。

【白井委員】 

 この研究環境とか支援体制にも入るのかどうかなのですが、例のポスドクの問題とか、大学院生の数が今は適切であるかどうかとか、分野がどうだとか、そういう議論は確かにまだ十分ではないかもしれないけれども、いずれにしても、諸外国等と比べてドクターの数がものすごく多いというわけでもないですよね。
 そうだとすると、全体的に日本の学術というのはある程度量的にも必要だと。人口比に対してどのぐらいのシェアを持つべきかというのはよくわからないところがあるから、先ほどのご意見のような、これから人口減少期になってどのぐらいまで頑張れるのかという、そういうこともあるのかもしれない。けれど、現状の人口比とか大学院生の数からいっても、私はやはり研究機関の組織の研究セクターの量、絶対量が少ない、これはあるのではないかと思う。
 資料をいただいたけれども、国立大学、あるいは、研究機関の研究者の数、これが例えば国立大学で言えば大学教員の数はどうなのでしょうか、十七、八万人か、そんなものでしょう。そうすると、年間に5,000人とか何かその程度の数が更新するわけですよね。その中で、ドクターを取った人が入ってくるのは2,000人ぐらいだと。
 もう少し入ってもいいかなという気がするのだけれども、それはさておいても、いずれにしても、毎年1万何千人というドクターが仮に生まれていくとすれば、その中でせいぜい二、三千人ぐらいしか研究機関にはなかなか入れてないわけですよね。もちろん民間のいろんな研究機関もあるから、それはそうでいいのですけれども、いずれにしても、かなりレベルの高い人が現実に自分の望むような研究職についていないという事実だけは確かですよね。
 ということは、その研究が要らないと、日本としてはもうそういう人が別に研究者としては要らないと、違うところで働いてくれという決断はもちろんないとは言わないけれども、どうも少し違うのではないかなと。
 そうだとすれば、日本の研究セクターというところの量を、どういう形でもいいとは言わないけれども、大学がこれまでどおり何か拡充していくのか、そういう違うやり方はもちろんたくさんあると思うのですが、教育と研究との問題もあるでしょう、そういうことも組みかえて、研究をやれる場所というのは、それは分野ももちろんよく考えた上でもう少し拡大しませんと無理だと思いますね。そうじゃないと、先ほどの最初の学術研究、新しいものを生み出すほどの余裕がないとも思われる。
 そういう意味で、今度消費税を上げるのだそうですけど、そうすると、非常に単純に考えても多分1兆円ぐらい増やさないと、これは私は今私学にいるから私学予算も若干増やしてほしいけれども、とにかく研究面だけ取り上げても何千億かの補強はしないとしかるべくほんとうに有能な研究者としてやりたいと思っている意欲のある人たちが働ける場所がないということは言えるのではないかと。
 だから、それをやはりある程度ロジカルに説明して、消費税を上げるのであればその中の0.何%かは研究セクターにちゃんと回してくれと、そういう基礎をつくらないと日本の学術ってやはり無理ですよ。いくら何でも無理だと。いくらなぎなたじゃないけど竹やりか何かで頑張るとしたって、それは無理だということを明確に言っていかないと。いつも言われていることなのだけれど、この基本問題ではやはりそれははっきり言っておく必要があるのではないでしょうか。

【佐々木主査】 

 それはおそらく4.と5.にかかわることですね。

【白井委員】 

 そうですね。

【佐々木主査】 

 若手研究者の関係、どちらかというとね。

【白井委員】 

 少し先に行ってしまうかもしれないけれども、研究環境・研究支援、そうかもしれないのだけど、一番大元の前提としてね。

【佐々木主査】 

 では、それはいずれまた皆さんからそこで議論を伺いますが。
 2.と3.のところで特にほかにございませんか。小林委員、どうぞ。

【小林委員】 

 4ページの「研究費の在り方」というところで、「科学研究費補助金は」、「大学における基盤的な研究を支えるものとして」、「広く捉えて位置づけていくべきではないか」とありますが、基盤の経費を支えるためのお金が必要だというのは共通認識だと思います。それを科研費でというのはどうかという気がする。むしろ、基盤経費のための新たなファンディングのシステムを本来つくるべきではないかという気がします。まさにそのための財源として、白井先生がおっしゃられたみたいに何千億というものを用意するのが本来の進み方ではないかなという気がします。

【佐々木主査】 

 なるほどね。
 それでは、古城委員、どうぞ。

【古城委員】 

 今の小林委員がおっしゃったところなのですが、最初の「学術研究の社会的意義と支援の必要性」という1.のところで、「基盤的経費が削減される一方、重点分野の研究やプロジェクト研究に対し投資が集中している」というのが「現状と課題」というところで出ていますよね。それを考えて2.以下のことをどういうふうに関連づけるかというところで、少しロジックが抜けているような感じがいたします。
 私は1.と2.以下の問題というのはかなり密接に関連しているような気がするのですが、そのあたりのロジックをもう少し詰めたほうがわかりやすいのではないか。ちょっと1.以下のところがばらばらな印象を受けます。2.以下のことを1.の課題にもう少し、現状がこういう状況にあるから2.、3.、4.の課題が出てきているのか、あるいは、それとは関係なく全く別の要因で出てきているのか、はっきりさせることが必要ではないかと思います。

【佐々木主査】 

 1.は問題点の指摘なのでしょうね、現状の問題点。これを受けてどういうふうに2.以下で受けるかということについてのご提案だということですね。
 それが、だから、こういう丸2つ目が大変結構ですという話なわけではないと思いますけれど、ただ、後のほうが結構ですということになるとちょっとぐあいが悪いという話かもしれない、話だと思います。先ほどの白井委員の話とも関連するし、今古城委員が言われたこととも関連するのですが。
 そうすると、そこの点について、これはいわゆる基盤的経費の削減問題という話を科研費の問題で置きかえるような議論ではいかがなものかというのが小林委員から出たということで、それは非常にやはり重要なポイントです。
 実際こういう機能を果たしていることは事実問題そうなのだけども、しかし、それでいいのかという、こういうことですよね。

【古城委員】 

 そうです。

【中村委員】 

 よろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、中村委員。

【中村委員】 

 科研費は補助金ということで、そもそも大学に基盤的なものがあった上でできたのですから、もう前提が変わっているということです。それはもう間違いないですね。

【佐々木主査】 

 だから、私も法人化のときに総長をやっているうちに、どんどん競争的資金に向かったでしょう。もともとは基盤的経費を自由に使えるようにするという話だったのだけれど、それが使えないほうへ行ってしまうわけですよ。マネジメントをやっているほうからすると、それは全部どこかと研究組織とが直結で競争的資金をもらうということになりまして、どんどんトップの裁量の余地は実はなくなっていくというのが私が総長をしていたときの実感でもあるし、削減されたという問題はもちろんあるのだけれども、結局何か前とあまり変わらないというか、全然トップのリーダーシップがどうだこうだという話とは平仄が合わないような実態がどんどんできてきて、パーツはパーツで動き出したというだけの話だったじゃないかというのは確かに実感としてはありますね。
 もちろん学内的に言うとトップがいろんなことをやり過ぎるのがいいのか悪いのかと、学部との綱引きはどうなるかとか、そういう大学内部にわたる話はちょっとここで括弧に置いておくとして、今の基盤的経費の問題についてはそれを科研費で代替するかのごときであるから減らしてはいけないという話はロジックとして危ないという。

【白井委員】 

 危ない。

【佐々木主査】 

 これが小林委員の意見ですよね。

【白井委員】 

 私がさっき言ったこと、要するに、今後の方向性というところでいきなりここに来ること自体が少し私、初めから気に食わないというか。
 要するに、今の研究体制というのに2つあると思うのですが、1つは各大学というものの運営交付金等々が減ってきて、そこら辺、やりたい研究かどんどん狭められているという問題意識はもちろんありますよね。
 あるけれども、先ほど申し上げたポスドクも含めて、ほんとうに日本の研究をレベルアップするためにはもうちょっと抜本的にきっちりした研究機関の設定と、どういう組織になるかは別問題としても、とにかくそういうことをもう少し大きい設定をしないと基盤は正直言って上がらないと。
 要するに、各大学にもちろんどんどんあげるという方法ももちろんありますよ。それは一つの方法だからそれでいいけれども、いずれにしても、しっかりした先ほど言った相当多くの人たちが働ける、全部とは言わないけれども、相当行けるような、思い切ったことができるようなそういう場所設定をしなかったらやはり無理ではないのかということ。
 だから、科学研究費を増して間接経費が増えるから、それでしっかり頑張りなさいよというレベルの問題ではないのではないかということを書いてほしいという。

【佐々木主査】 

 ご趣旨はわかりました。
 その点について、何かほかの方から意見ございませんか。もしそういう格好で、場所はともかく。

【白井委員】 

 いろいろなやり方はありますからね。

【佐々木主査】 

 ともかく書いて、そういう形の意思表示をするということについて何かご意見ありませんか。よろしいですか。
 それでは、今の点について、中村委員、何か意見ありますか。

【中村委員】 

 ここのところを見ていると、全体として何か研究環境・研究支援が研究現場レベルの責任で行われるべきだというようなニュアンスが出ているのですが、これは研究現場のレベルの問題じゃなくて、やはり大学本部が現場のことを自ら考えて、大学全体としてどうするかという方向性を打ち立ててやるべきだ。こういうニュアンスがどこかにないといけないと思います。今のまとめは結局研究者が悪いという話になりそうな方向で書かれていると思うのですが。
 大学自身が何か方向性を打ち立てていくというのがどこかにないとうまく動かないのではないかと思いますが。

【佐々木主査】 

 だから、もちろん大学に言及したところはあるのですが、しかし、それにしても、逆に言えば、大学というのが自分の判断でできる話が非常に極小化してきているというのが、おそらく磯貝委員のところもそうだと思うので、そうなってくると、あとは大学ないし個々の先生の話に行ってしまうという話ですよね。

【磯貝委員】 

 よろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、磯貝委員。

【磯貝委員】 

 先ほど白井先生が言われたことは全く私もそのとおりだと思っていて、大学レベルでできることって極めて限られていて、ポスドク問題は1個の大学では片づかないし、先生が言われたように、ある意味、研究機関、あるいは、研究セクターを大きくするという、つくるという以外に多分ないのだろうと。
 その上で、個々の大学で例えばこれからの学術振興にどういう貢献ができるか、あるいは、何を考えるかというときに、やはりこうずっと書いてあるのですが、結局大学は装置産業じゃなくて人的資源で動いている産業なのに、どんどん人件費を減らせという。これからいろいろな業種、いろいろな仕事をする人が増えてきて、いろいろなことを大学が企画してやらなければいけない、それは人が動かさなければいけないときに、人を雇う金を減らしなさいという政策自体がどうも納得できないと私は思っています。今度もきのうあたり通達が来て、中期目標に人件費削減を明記しろと、見本まで来ているわけで、それでこのままやられたら大学は動けない。
 その中で、しかも、新しいことを見つけろ、あるいは、やれと言われても、なかなか現実には動かない。大学ができる裁量の余地をもうすこしやはり広げてくれないと責任がとれないという気は最近しています。

【佐々木主査】 

 研究振興局のテーマでは、直接的には中期目標のテーマではないのかもしれません。しかし、研究機関の問題、研究体制の問題ですから。
 今のお話に即して、この辺の書き分け、あるいは、整理を少し、少しではなくて大いにし直す。ただ、先生が言われるように、その数をどうするかとかいう話はどこまで言える話でしょうか。

【白井委員】 

 もう少し何かな。だって、支援者でいいますと確かにいます。いるけども、それは今日いるけども、基本問題ですからね、これは。

【佐々木主査】 

 人材委員会も関係するのだけれども、どんなぐあいなのでしょうか。

【柘植委員】 

 そこまではまだ、今の磯貝委員の言われたところまでは踏み込んでいないですね。

【白井委員】 

 だから、大学自身がそれなりにやはりしっかりよく考えて、できるだけ有効にやらなくてはいけない。それはそういうことももちろん書くべきだと思うけれど。

【佐々木主査】 

 書くべき。それにしても、そのための前提条件が。

【白井委員】 

 前提条件が少し厳し過ぎてね。

【佐々木主査】 

 厳し過ぎるということですね。それはわかりました。そういう書き方でいいと思います。それに、そういう体制づくりというものについてもっと積極的に取り組まなければならないという、そういうことをね。

【白井委員】 

 文科省はもっと図太く主張しないと。何とか頑張りますからとばっかり言っていると、頑張れ、頑張れとしか来ないですから。

【佐々木主査】 

 今日は会計課長も来ていますから、ひとつ。
 中期目標の話はここでは、少しややこしくなるから立ち入りませんけれども、磯貝委員が言われた問題というのは基本的に私もそうだと思いますね。ですから、いろんな試みをするのとあわせて、どのようにして基盤的なものをきっちり確保していくかということについてもっと積極的な主張をするということと、それから、科研費の問題とごちゃごちゃにしないようにしようということは、そうなると、今度はこちらを減らすとかいう話になる可能性はあるかもしれないけども、そのリスクもゼロとは言えないけども、出すべき数字はきっちり出そうということでよろしいというのであれば、それは一つの考え方。結果についてはわかりませんが。

【白井委員】 

 消費税を上げるのであれば、教育研究関係で0.5%分ぐらいはもらってもいいのでは。

【佐々木主査】 

 それでは、もう既に議論は4.、5.にも入っていますので、残ったところを含めて、いろいろな点を。柘植委員、どうぞ。

【柘植委員】 

 4.、5.ですね。これは私もほんとうに、結論から先に言いますと、4.の「若手研究者への支援の在り方」と5.の「若手研究者の育成に向けた大学院教育の在り方」、これは課題設定を1つにしないといけないという結論です。それで、4.、5.をくっつけて、5.の表題の「若手研究者の育成に向けた大学院教育とポスドク支援の在り方について」と、こういう形にしないと、この2つの路線だけではとても今の問題は解決できないということが結論です。
 具体的に言いますと、4ページのこの「若手研究者への支援の在り方」の現状と課題の問題は3行書いてありますが、ここのところは結局、前回も出たと思うのですけれども、このポスドクの現状というものは、外からこれは国の財産に対する犯罪的な行為であるというふうに言われてもある意味では仕方がない面があると思いますね。
 すなわち、「再発防止、今のポスドクの悪い面の再発防止をする」ということと、それから、「同時に生まれてしまったポストドクターの問題に対しての解決策」と、そして、「本当に必要なポスドクというものを育成していく」ものと3つの問題が4.と5.には共通の問題であります。
 そういう観点から、5ページでずっとポスドクの位置づけをずっと言っていますが、実は再発防止のためというのは5.の「大学院教育の在り方」と一緒にしない限り、再発防止はできない。
 そういうことで、私の提案は4.と5.を「若手研究者の育成に向けた大学院教育とポスドク支援の在り方」として、こういう形でひもときをすべきだと思います。

【佐々木主査】 

 なるほど。これを分けないで、一つの大きなくくりの中で扱うということですね。

【柘植委員】 

 はい。それで、その中で、今言ったように、既に生まれてしまったポスドクに対しての国の財産をいかにきちっと活用していくかということと、それから、そういう再発防止をすることと、それから、ほんとうに良質のポスドクをきちっと支援していくという3つの大きな考え方で分けて、多分ここに書いてあることは生かされてくると私は思います。

【佐々木主査】 

 どうでしょう。事務局から何かありますか。それも試みとしてはあり得るということですね。

【松川総括研究官】 

 はい。

【柘植委員】 

 検討してもらいましょう。

【佐々木主査】 

 検討してもらいましょう。
 ほかに、どうぞ。

【白井委員】 

 やはり先ほどと全く同じ意見ですけれど、これからもドクターを1万何千人、分野をいろいろ調整するにしても、同じような規模で出していくのであれば、その人たちがどこか滞留してしまうようなシステムというのはおかしい。
 やはり有効にその人たちがほんとうに気分よく働けるような環境、あるいは、育成されていくようなシステムというのがある程度見えないとね。もちろん、その人たちが努力しなくてはだめだという環境は必要だと思うけれども、何かほとんどの人、これだって45%ぐらい不安定だなんていうことで、ずっと不安定では困りますよね、やはり。
 明らかにそうですよ。教職につきたいばっかりが希望だというのはそれは確かにおかしい。おかしいけれども、教職じゃなくてもいいので、研究者として相当自分の好きな研究に近いところで働けるという、そういう環境が社会としてあるから、初めてそこでドクターを育成することが意味があるので、そうではなかったら、ドクターを育成するのをやめたほうがいいのではないか。
 やはりそういうことはしっかり考えないとまずいのではないかと思いますけどね。

【佐々木主査】 

 私はちょっと正確に記憶してないのですが、何かごく最近、新聞に大学院の定員のあり方の問題について文科省からメッセージが出ましたよ。

【磯田研究振興局長】 

 あれは先ほど磯貝先生もご指摘になりましたように、野依先生が委員長をされております国立大学評価委員会のご意見を踏まえまして、各大学に次期中期計画策定の際には大学院の充足状況等々を踏まえてちゃんと定員について見直しを行うように、組織についても、改変まで書いてある、細かいところは間違ったらお許しいただきたいのですが、そういうものを書いております。
 それで、それ自体はそのとおりなのですが、さらに毎日新聞さんが突っ込んで、それが文部科学省の方針転換じゃないかと、そういう記事をお書きになったということでございます。

【佐々木主査】 

 そうですか。そのニュースを私は見たという。

【磯田研究振興局長】 

 はい。そうです。

【佐々木主査】 

 それは例の評価委員会からのメッセージなのでしょうか。

【磯田研究振興局長】 

 そうでございます。

【佐々木主査】 

 そうですか。

【磯貝委員】 

 評価委員会のメッセージを踏まえて、文部科学大臣通達という形できのうその内容が来ています、各大学に。

【佐々木主査】 

 そうですか。ということは。

【磯貝委員】 

 だから、法人評価委員会の判断ではなくて、文部科学省、あるいは、文部科学大臣の判断というレベルになっています。

【佐々木主査】 

 その意図するところはどのように受け取れる。

【磯貝委員】 

 わからない、それを聞きたいという。ただ、方針変換ではないという話が説明の中で伝わってきていますので、方針変換をしたわけではなくて、現状に合わせて、各大学の機能を理解する中で自分たちで考えなさいという通達内容になっています。

【佐々木主査】 

 そうですか。考えるとどういう結果が出てくるのか、どういう形成になるということが書いてあるのでしょうか。

【磯貝委員】 

 変な話になってきましたけれど、それはこれから1週間か2週間の間に答えを考えないといけない、各大学でみんな答えを考えないといけないという、対応策をきちっと示して文書で出せという話になっています。

【佐々木主査】 

 そうですか。
 中村委員、どうぞ。ほかの点も含めて。

【中村委員】 

 実は1.のときに言おうかなと思って言えなかったのですが、学術研究は日本のいろんな意味での競争力を支えるものだということ、これはどうしても書いたほうがいいのではないかと思いますね。
 つまり、理工系はなぜ重要かというと、理工系は経済、産業を支えている。一方、人文系は日本国のビジョンを示す国の顔である、というような宣言です。
 そういうふうなことがどこかに書かれてないといけません。国の資金を投じて行われている学術研究は研究者個人の問題ではなく、日本国全体の力を増すために重要であるというところは絶対必要ですね。
 この点を良く理解しないと、大学院定員問題なども実績主義で施策を決めるという安易な方向に流れかねません。例えば博士の学生が減っている工学部はどんどん削減、博士が沢山いる人文系はますます拡充ということになります。もし国として産業振興が必要だと思うなら、工学部のトップを引き上げてやらないと実力が全体に下がってしまうでしょう。
 ですから、学術研究のあり方から始めてポスドク問題、そして大学院問題に至るという議論が必要と理解します。
 ところで、私もこれまでポスドク、日本人も外国人もたくさん持ってきたのですが、やはり質が均質ではないですね。非常にすばらしい人からあまりすばらしくない人がどうしてもあると。国によっても違います。
 ですから、やはりポスドク問題を議論するためには、博士の資格、博士のクオリフィケーションがやはりきっちりしてないといけません。この手の議論は、博士のクオリフィケーションを避けて通れないです。つまり、どんどんはけていくところは十分に博士のレベルが高いからどんどんと社会にはけていくのかもしれない。だから、工学系のようにポスドクが少ないという分野こそ、実は大いに政府のお金を掛けて支援するべきなのかもしれないです。

【佐々木主査】 

 喜連川科学官、どうぞ。

【喜連川科学官】 

 私も中村先生が今おっしゃられたご意見に全く同感でございまして、充足率のコントロールの問題に起因するのかもしれないのですけれども、ドクターに入る入りやすさというものが比較的だんだん緩くなってきているような気がいたします。
 私どもも感じておりますのは、売れるドクターはもう山のように引く手あまたです。企業のニーズとの遊離があるというようなことが記載がありますけれども、そんなことは全然ございませんで、向こうから頭を下げてどうしてもくださいというような人材は幾らでもいます。
 それから、ワールドワイドのマーケットを今見ますと、このリセッションのおかげでドクターというのが市場に山のように出てきているわけですね。ですから、大手のベンダーからしますと今一番いい有能な人材を得るチャンスなわけです。その中で売れる人数というのはほんの限られたものでしかない。逆に言うと、出ているそのドクター、ポスドクの質というものをもっともっと上げていく必要があるのではないかなと思います。
 それは、では、どこに問題があるのかというと基本は教育のほうで、研究も重要なのですが、私は日本で今やはり大学の先生の評価基準というものが研究のアチーブメントにあまりに強くシフトしているのはいかがなものかと思います。つまり、教育というものをもっともっと高く評価するというフレームワークをつくらないといけないと感じます。入ってくる学生に基礎がなかったらどんな研究をさせようとしてももたないのです。
 特に工学もそうですけれども、ターゲットはここ二、三年ではないのですね。やはりターゲットは少なくとも15年後先に役に立つようなものの考え方をたたき込まなくてはいけないわけですけれども、基礎がなかったら何もできない。
 ですから、大学院もそうですけれども、学部での基礎教育をいかにしっかりさせるかということは非常に大切であると今強く感じているというところでございます。以上でございます。
 すなわち、教員の教育コントリビューションを正当に評価する、ここが一番重要ではないかなと。

【佐々木主査】 

 それでは、沼尾委員、どうぞ。

【沼尾委員】

 今の話とも関連するのですが、6ページの「工学分野の博士が想像力や企画力など幅広い水準を大学において十分身につけていない」という部分について、コメントがあります。工学分野では、博士課程への進学が少ないことが問題になっています。しかし、工学分野で博士を取得した人が、企業などへの就職先がなくて困っているということは、殆どないと思います。種々の問題はあるとしても、工学分野では、博士課程は有効に機能しています。この部分の書き方ですと、何か問題があって、工学分野の博士が世の中の役に立っていないような印象を与えてしまいます。工学分野の博士課程について、ネガティブな誤解が生じることを危惧いたします。

【佐々木主査】 

 これは問題。

【沼尾委員】 

 といいますか、もう少しポジティブな書き方をして頂ければと思います。

【佐々木主査】 

 もうちょっとポジティブな面も入れてほしいと。

【沼尾委員】 

 はい。

【佐々木主査】 

 データ、統計的な話があってこういう記述になっていると思いますけれど。

【中村委員】 

 いや、それは。いいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、中村委員。

【中村委員】 

 経団連の調査では、博士卒採用、収支卒採用、学部卒採用の社員を比べて見ると、博士に満足している率は極めて高いそうです。博士を採ったところは皆さん満足しているのではないかと思います。それに比べて、学部卒業生には皆さん不満を持っているということが報告されています。

【佐々木主査】 

 柘植委員からご発言があります。

【柘植委員】 

 企業経験者ですけれども、あの経団連のデータは正しいです。ただ、もうほんとに企業はドクター修了者に対しては厳選しています。修士、学部出についてはとにかく来てくれればいいと、東大出てればいい、早稲田出てればいいという感じなのですけれども。博士課程修了者の採用は厳選しているから、満足度は高いです。
 問題は、やはり今大学が輩出しているドクターの数から見ると、企業が採ろうとしている数は少ない。なぜかというとここに書いたことが本音にあるからで、喜連川先生の育てる学生だとこれを満たしているわけですよ。ですから、もう引く手あまたです。
 そうマクロ的に「ポスドク問題を引き起こしてしまっている問題」に対して企業は論点を絞っています。正解的な知の創造競争に勝ち残るためには、産業界は博士課程修了者採用をもっと増やさないといけない。それは企業の認識も不足しているし、我々大学のほうももう一歩、大学院教育だけでなく学部教育からも、頑張らないとだめだということです。

【喜連川科学官】 

 少し申し上げづらいのですけれども、ドクターを出てポスドクに来ても売れない子はなかなか売れないのですよね。とりわけ海外からやはり相当我々はアプライが来まして、海外の中のトップの大学から来てこられてもなかなかうまくいかない場合もあります。
 多くの場合はやはり基礎学力が足らないのですね。だから、分野がどんどん変化していくところに柔軟に適合させていきながら論文を書き出し続けるという能力、つまり、アメリカのテニュアでは5年間でどれだけ論文出すかで、それで勝負が決まるわけですね。6年目に論文出ても大学のファカルティにはなれないわけですね。
 その適応力はやはり基礎力が本質だと思うのですが、それはやはりその国の教育システムによって全然違っていて、かわいそうなぐらい難しくなってしまう場合もやはり出てきてしまいます。
 ですから、我が国がこれから少なくとも一人あたりのGDPをもう一度1けた台の世界順位に戻そうというのであれば、そういう高度な人材をどうやって出すのかというところに本質の議論を展開すべきではないかなと私は思います。

【佐々木主査】 

 どうぞ、中村委員。

【中村委員】 

 私もそう思います。アジアの国を見ているとプロジェクトに注力している研究室で実験だけして基礎を勉強していないと、学生の時に論文をたくさん書いていても、ポスドクに来ても伸びないように思います。大学で学部、大学院をきっちりやっているところはやはり基礎があって伸びるというのはもう明らかですね。

【古城委員】 

 そうですね。

【中村委員】 

 それに比べると、私たちが知る限り日本の化学系の大学院学生はそれなりにきっちり教育されていると思いますね。

【佐々木主査】 

 果たして、我々の認識が共有できたかどうか、いささか自信はないのだけれども。

【磯貝委員】 

 1つだけよろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、磯貝委員。

【磯貝委員】 

 今、ドクターの質の問題が出てきているのですが、大学で預かる立場でいうと、ドクターの定員充足率が色々なもののパラメータに使われているということが一つ大変ややこしい問題をもたらしていると思っています。

【佐々木主査】 

 そうですね。

【磯貝委員】 

 80%でなくてはいけないとか、90%でなくてはいけないとか。でも、質の高いドクターを出すのが大学院教育の目的だとすれば、それは定員充足率とかいう問題ではないはず。で、一方で定員充足率を満たせ、あるいは、3年で出せと、出した数を評価するというとそれはもう数の問題で質の問題ではなくなってくる。
 だから、ドクターコースというのは一体目的は何なんだというところがまさに何か意識が共有できないというのですかね、現実に問題がある一つのポイントではないかと。
 私は、ですから、いろいろな競争的資金とか何とかいうのでも、ドクター充足率とか3年卒業率なんて、ああいう枠を全部外してほしい。どのくらい優秀なドクターを育てたのかという意味で大学院の各課程の質を比べられるのならばそれは納得できるのですが、そうでないところが何か多過ぎるのは大変気になっています。

【柘植委員】 

 関連です。全く同じで、私も行政にいたときからも大学と文科省は同じに言って、つまり質の高い博士を生み出すのが我々は求められていると。そうしたら、定員を例えば極端な場合半分にすれば、世界水準のもっと高いパーセントの博士を生み出すのだと、こういうことを言って、一方では、それはそうすると財務のほうは、では、もう金削りますと。金を削ることのディカップリングをしない限りだめだと。つまり、今出されているお金をもっと増やさないといけないと、減らさないで定員もやはり適正に減らしていくということを文科省と大学とは一緒になってやらないといけないと。それ以外の解決は、先生方、ないと私は思うのです、今の博士課程の質の向上をするという手は。

【佐々木主査】 

 人文社会系からはいかがでございましょうか。古城委員、どうぞ。

【古城委員】 

 全く同じことで、充足率を高めようとすると、こんなことを言っては何ですが、人数が増えると質はやはり落ちていくということは経験的にありますね。というのは、充足率を上げようとすると、以前は無理だったけれど、という人を上げざるを得ないというようなことも出てくる。
 ただ、社会科学系の場合、ドクターを出た場合はあまり就職がないものですから、それは本人にとってもいいかどうかわからないので私たちは大変悩みます。そこで充足率ではなくて質で採ることをきちんと確保する、担保していただくと、大学院教育というのはもっとやりやすくなるのではないかというふうに思います。
 定員の充足率が予算とか人員等にほんとうにつながっていると思うと、というか、私たちはそういうふうに思わされているのですから、かなり選考のときに苦しい決断をするということはよくあります。

【柘植委員】 

 会計課長に頑張ってもらわないと。

【佐々木主査】 

 高山科学官、人文系ではどうですか。

【高山科学官】 

 全く同感なのですが、皆さんと。充足率は一時かなり上がりましたが、これではだめだということで、また、下がってきている状態だと思います。

【佐々木主査】 

 なるほど。

【高山科学官】 

 それが現状ですね。

【佐々木主査】 

 どうぞ、樺山委員。

【樺山委員】 

 私、今、大学に籍を置いてないものですから大学それ自体が直面している問題について鈍感なのですが、今までのご議論はそのとおりだと思うのですが、しかし、財務省を相手にするときは別にして、タックスペイヤーに対して、定員充足を緩目にして、例えば半数にして、でも、お金だけはもとどおりくださいというのはこれはやはり説明が難しいところがあるなと思いますね。
 だから、よほどそれは、質の問題であるということも含めて、むしろ財務省、あるいは、官庁を相手とするよりは、一般国民といいますかタックスペイヤーに対してどういう理論的な説明ができるかということは、これは文科省というよりはむしろ大学あるいは研究者自身にとって重要な問題になってくるなと。
 そこのところの説得力が今のところ必ずしもあるとは思ってないものですから、どうしても身勝手な話だと。手数を減らしてお金はもとどおりにしてくれという、こういう話に聞こえがちだというのは事実だと思うのです。
 そこら辺は努力が要ると思います。

【佐々木主査】 

 私の記憶だと法人化のときにこれは大問題になりました。結局、大学として定員というのはどう考えるかということになったときに、ドクターを全学として何百人、それから、マスターは何百人、学部学生は何百人ということになったんですね。内部ではもう私のところはドクターは要らないというところも出てきたり、では下さいというところが出てきたり、一騒ぎありました。
 そして、その中でそれがパーセンテージでもって運営費交付金の算定基準にカウントされると、こういうことがありましたので、中ではいろんなことが実は起こったのですよ。ですから、あるところはドクターをもっとたくさん採りたいと、どことは言いませんが、そういうところもありましたし、いや、もうどうぞ、どうぞというところもあったのが実態ですね。
 そして、もっと言うと、今度は学部とマスターとドクターという枠を外すのかどうかという話に今の話だとなるのですよ。ですから、ほんとうを言うとそこまで外してしまって、内部をさらに枠を自由にするという感じは今の樺山さんの話との応答で言えば私はあり得るかと思います。
 ですから、私のところは学部をもっとたくさん採りたいと、ドクターはそのかわりもう少し。これは要するに授業料の要するに収入問題との絡みで出てくる話なのですね。ですから、それを採らないと何だかんだという話がどうしても出てくるので、法人法の枠の中でいっても、できることはその3つをそれぞれセパレートして、これはこれ、これはこれというのをもっと、もう少しそこの中で自由に処理できるということができれば、先ほど磯貝委員が言われたような話も管理職のほうとしては扱いやすくなると。
 ただ、これは今度はまた私立大学との関係でどうだとかこうだとか。

【磯貝委員】 

 はい、それは。

【佐々木主査】 

 特に学部学生の問題になると色々な話が出てくるので、そこはそう簡単にはいかないという面が出てくるのですが、法人法の中のスキームだけで言えばそういうあたりは私は必ずしもネゴシエーションできないテーマではないかなという感じはします。
 ただ、これはまたややローカルな話になりますが、クオリティを上げるという話については皆さんから強く出ましたので、そういう角度をもう少しきっちりこの中に書き込むという話として承ったということで、とりあえずよろしいですかね、中村委員、沼尾委員、喜連川科学官から出されたような問題関心は。それでよろしければ、そういう形で少し事務局にそういう点を工夫してもらうと。

【沼尾委員】 

 少しだけいいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、沼尾委員。

【沼尾委員】 

 先ほど定員を満たさないという問題を議論しました。逆に、オーバーしている場合、前でしたら、かなりフレキシブルに、少しオーバーして多目に採ることもできました。最近は、我々末端から見るとかなりうるさくなって、オーバーしているのもまずいし、足りないのもまずいということになっています。しかも、各専攻ごとに、きちんと数合わせしなければいけないと言われています。

【佐々木主査】 

 それは制度として、私の理解は少し違うのですが。

【沼尾委員】 

 そうでしょうか。最近、定員の数合わせが厳しくなっているような気がします。

【中村委員】 

 そうですね、この前そういう文科省の書類を書かされましたよ。

【佐々木主査】 

 そうですか。

【沼尾委員】 

 年々、厳しくなっています。毎年細かく合わせることが要求されており、あまりにも融通が利かないと思います。

【佐々木主査】 

 それでは、前と同じ話ではないですか、法人法以前と。以前に戻っているということではないですか。

【沼尾委員】 

 むしろ、法人化してからうるさくなっているような印象を持ちます。

【佐々木主査】 

 私はもう完全に、中の区切りは学内問題だと思う。

【沼尾委員】 

 学内でそういうふうに自主規制みたいな形になっているかもしれないですね。

【佐々木主査】 

 制度はそう、制度は、ですから、自主規制が好きな学部長とか学長がいるということじゃないですか。

【沼尾委員】 

 そうでしょうか。自主規制をする理由は何なのでしょうか。

【中村委員】 

 東大は修士の募集定員が文部科学省の規定より多いので即刻是正しろと去年来たはずです。その指示に従って我々は募集定員を変更しました。

【佐々木主査】 

 そうですか。

【中村委員】 

 文科省定員より多い部分はカットです。

【佐々木主査】 

 そうですか。これはちょっと大学執行部の頑張りが足りないということではないでしょうか。

【中村委員】 

 もう一つよろしいですか。

【佐々木主査】 

 少し話がずれました。

【中村委員】 

 ドクターのレベルの話ですが、外国人のことに関する記述もここに絶対必要だと思いますね。

【佐々木主査】 

 それはそうですね。

【中村委員】 

 先般お話ししたように、アメリカの大学院を見てみると、10番目ぐらいまでだと大学院生、外国人を一、二割採っていると競争力は保てるのですが、20位ぐらいと、下がってくるともう半分ぐらい外国人を採らないとまともな研究ができない。下の方の大学では、アメリカ人学生だけには頼れない、良くできる外国人学生を受け入れないと研究上の競争に勝てないという現実がアメリカではよく認識されているわけですね。
 ですから、これを日本に翻訳すれば、10位、20位の大学は外国からいい学生を採ってこないと世界と競争できるような研究レベルは保てないという認識です。日本も必要に応じては国外から人を採ってこないとしたら、研究レベルはじり貧になるのは明らかです。
 残念ながら今は外国人研究者や、優れた留学生を引っ張ってくる仕組みができてない。大学院初年度から生活費の支給があり学費も免除されているアメリカなどと競争していい学生を採るためには、マスターコースから資金援助しない限り採れるわけがない。中国、アメリカ、韓国、台湾、みんなマスターのときから国からの支援を受けて大学院生活をしているわけですから、こんな国の学生を日本に引っ張るのに、自分のお金で自分で留学、生活費を取ってこいなんて取ってこられるわけがないです。
 それから、第2。今、定員問題が出ましたけど、私の理解では外国人の留学生は定員に入ってないのではないかと思います。ですから、外国人をカウントすると充足率はあがるのでしょうが、日本人だけだと充足しない。そうすると、ますます定員を減らされるという。
 ですから、今、国を挙げて外国留学生を採れと言われているわりには、外国人はカウント外ですから、努力もしがいがないですね。

【佐々木主査】 

 そうですね。

【白井委員】 

 おそらくそこでカウントを外している。今、私立はちゃんと入れていますけどね。そうじゃないと、定員って意味がないのでは。

【磯貝委員】 

 私のところも入れています。

【白井委員】 

 普通入れますよ。入れないところもあるみたいで、数に。
 今、中村委員が言われたとおりだと思うのです。ですから、単純に充足率が低いから定員減らせという、そんな何か市場の自由、動きに任せるようなそういう通達はいかにも無責任で、やはりある種ポリシーというのでしょうか、質の問題と、それから、どういう分野がある程度必要だからということも考えた上での政策としてやはり出されていかないとちょっとぐあいが悪いと思いますね。
 そういうニュアンスのことがやはりここにあったほうがいいのではないでしょうか。

【佐々木主査】 

 どう整理するかはまたご相談させていただきます。
 ほかの方から。それでは、鈴村委員、どうぞ。

【鈴村委員】 

 違う点でもよろしいですか。

【佐々木主査】 

 どうぞ、もちろん。

【鈴村委員】 

 議論の中で先ほどから首をひねっているのは、5ページ目の上から括弧でいうと一番上、ポストドクターの位置づけです。ここに書かれていることは、おそらく社会科学と自然科学とでは、認識が相当違うと思います。ここは、成果を出すための要員としてポスドクの大部分をプロジェクト経費で雇っていて、それで人が育たないと書いているわけですが、これは要員として雇用した人たちに何をやってもらっているかという使い方の問題だと思います。
 社会科学の場合であれば、特にドクターを取っている人はインディペンデント・リサーチャーとして処置して、彼らにそのプロジェクトの継続期間は安定的なサポートを与え、テイクオフの機会を提供しています。むしろ、人を育てるために雇用機会を使っているというのが私たちの認識で、現実にその趣旨で使っています。
 ここに書かれたような問題があるとしたら、それはむしろ雇っているほうがそんな使い方をしているからいけないということで、そちらのほうが反省してもらわなくてはいけないことではないかと思うのですが。

【磯貝委員】 

 よろしいですか。これは私が話したことなので、若干。
私がこの発言をした後、ほかの方からもそんなことはないと、十分ポスドクで教育しているので問題はないという反論をいただきましたし、これを残していただく必要はないのですが、傾向としてプロジェクト研究そのもののあり方がやっぱりある特定のテーマでやれという傾向があるのですね。特に大型プロジェクトというと。それを私は心配して、こういう傾向もあるけども大丈夫かという発言をしたので、そういう意味では反論もいただきましたし、この部分はむしろちゃんと育てることに使うべきだという、問題だというよりも、方向性を書いていただく書き方にしていただいたほうがいいのではないかと思います。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。

【鈴村委員】 

 よくわかりました。

【佐々木主査】 

 ほかにどうぞ。柘植委員、どうぞ。

【柘植委員】 

 全体を通して、この学術の基本問題に関する委員会のこれが国民というか私も含めて市民が見たときに、我々のミッションは2つあったのですけれども、1つは学術と社会というそのとらまえ方ですね。
 つまり、社会の構成員から見たときに、学術というのは大切だなと、うちの子供たちもやはりそういう学術に対する尊敬の念を持って学びたいと思っていくと、それが結果的に小学校、中学校、高校、ひいては大学というそういう形で段階を上っていくと、上っていきたいなと、そういう社会が思う、そういうことのとらまえ方が、この1ページでは、イントロでは意義とか振興する意義、学術研究の意義、こう書いて、先ほどももう少し人類とか地球ともう少し大きな表現が要るというコメントがあって、反映されるわけですけれども、それでもまだ何か社会から見たときにこれはアカデミアの論理だけを並べてくれたなというふうに、そういうとらまえ方をされてしまうような気がしていて、これ、そういう議論を今まで我々はしなかったでしょうかということなのですよね。
 してなかったらしてないことに対してしようがないのですが、やったこと以上のことを書けませんので、私自身の問題でもあるのですが、そういう風に今思っています。

【佐々木主査】 

 おそらく書き方の問題もあるかと思いますね。それから、1.をどういうふうに書いていくかということ、例えばこういう項目をどういうふうな順番で書くかということも含めてやれば、100%満足いただけるかどうかわからないのですけれども、これは極端なことを言えば一種のアンタインテリクチャリズムみたいな話というのはどこの社会にもありますから難しい問題はあろうかとは思いますけれども、この振興する意義のところと課題のところなんかをうまく整理すれば、かなり踏み込んだメッセージが出せそうな気がします。
 ただ、おっしゃるように、わかってもらえるかどうかについてはそれはもちろんまだまだいろんな議論の余地があって、最後までここは工夫しなくてはいけないと思いますね。
 ですから、そこは最後までとっておいてと言っては悪いけれども、工夫をできるだけ皆さんにもしていただいて、こびる必要はないのだけれども、しかし、他方であまりにも狭い意味で学術というものをとらえ過ぎていて、何か先ほどの話ではないけれど、狭い意味での好奇心みたいな話だけでイメージされるようなことがないようにする努力はもっと何段階かしなくてはいけないなというふうには私は思っております。
 ですから、この点は皆さんにもぜひ考えていただいて、最後まで工夫をしていただくというふうにお願いしたい。そういう意味で、いい意味でいろんな領域ごとに少しずつ違うニュアンスはあっていいですから、それでメッセージの説得性を高めるべく努力したいなと思っております。
 ですから、ここは最後までおそらく課題が残るのではないかと思いますが、まだまだ、おそらく分科会でもいろいろ議論が出ると思いますので、それをまた受けてやるしかないなと覚悟を決めて、ここは腹を決めてそういうふうな覚悟で行こうかなと私自身は思っております。ご注意は非常にわかりました。ご協力をお願いしたいと思います。
 お約束いただいた時間がそろそろ来ましたので、特に何かこれからの作業で、喜連川科学官、何かありますか。

【喜連川科学官】 

 先ほど経費を現状に置きながら質を高くするというのはタックスペイヤーに対して云々というのは私もそのとおりだと思いますけれども、かなりトレーサビリティで追えることができるようになっていると思います。したがいまして、どこの大学を卒業した人がどこの大学の先生になってどうなっているかというのは相当定量的に今もう出せるようになっていますので、逆にそれをしっかりと発信していけばご理解いただけるのではないかなというのが個人的なエモーションでございます。それが1点。
 それから、大分前でございますけれども、柘植先生から学問の研究領域の交流、異種交流、異分野交流というところのご指摘があったかと思います。私もこれは非常に重要な問題だと思うのですけれども、この中でやっぱり最近よく感じますのは、問題がちょっと隣の人と少し話するような交流では済まない問題が世の中で大きくなってきているのではないかなと。例えば今ですと、ヘルスケアの問題をとってもそうですし、例えば食物をごみとして捨ててしまうような問題をいかに効率よくするか。そういうことを考えますと、日本の省庁ですと一省庁、二省庁ではもう終わらないスケール感なのですね。
 そういう問題を一体どこが、リーダーシップをとってこういうことをやっていきましょうよというようなことを言ってくれないと、大学の先生というのは基本的には霞を食べていますので、あんまり押してくれないと動きづらいなという気がします。
 もう一つ重要なポイントは、そのときのレギュレーションです。つまり、これをしていいのか、これをしてはいけないのかというレギュレーションがものすごく複雑なのでさっぱりわからないと。著作権制度の一部改正が良い事例です。つまり今度の国会を通ってやっと大学、研究者がウェブページを使えるようになったわけですけれども、今、個人の情報、パーソナル情報のようなものをどうやって取り扱っていいかというのを医学部の先生なんかとやろうと思っても、まずできないです。
 ですから、レギュレーションをどこかに少し配慮するというようなこともご記載いただけると、我が国の科学振興はすごく大きくなるのではないかなと個人的には感じています。
 以上でございます。

【佐々木主査】 

 レギュレーション?

【喜連川科学官】 

 法律的な制約というものが、つまりどこまで研究として利用していいのかどうかというのがわからないのです。ある大学の先生が、ある放送業界のテレビの映像を使ってこんないい研究成果が出ましたといって論文をその放送会社にお礼を込めてお送りしたところ、向こうから請求書が来たと。それが現実です。
 ですから、やっぱり何をどこまでが許容、許諾範囲になっているのかというのはものすごく難しい問題です。とりわけ、今ヘルスケアになってきますと個人情報にかかわります。そういうところを少しご配慮いただけるとありがたいと。

【中村委員】 

 よろしいですか、もう一つ。

【佐々木主査】 

 中村委員、どうぞ。

【中村委員】 

 1つ、完全に欠落していることを思い出しました。
 アメリカのファンディング・エージェンシーは将来の研究の方向性を示すのですね。ある将来の方向に向かって研究資金配分のアレンジをする。日本はJSPSもJSTもNEDOもアレンジしているのだけれども、少しアレンジの方向性が違うのかしれません。全体としてファンディング・エージェンシー自身がもっと学術研究に研究者と一緒にかかわってくるというようなことが必要なのではないかと思っています。そういう問題も今まで全く議論されなかったのですが。

【佐々木主査】 

 それは今の喜連川科学官が言ったような話もその中に入ってくる。

【中村委員】 

 そうですね。やはり全体のアレンジをするというようなイメージですね。

【佐々木主査】 

 なるほど。

【喜連川科学官】 

 そうですね。それはどこで議論されるのかわかりませんけれども、例えば、DARPAのアレンジャーなんていうのは大体4年というタームをフィックスしておいて、そのタームの中にどれだけおもしろいプロジェクトをつくれたかということでその人のキャリアになる。つまり、JSTとか産総研とかで長い間いるということはプレステージにも何もならないという、そういう制度枠の中でうまく研究というものが回っている。多分、中村先生はそうおっしゃられたと思うのですけれども、そういうこと自身が日本の中にまだ浸透してないというか、見出すことができないというのも一つの問題かなと感じます。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。

【白井委員】 

 1つだけいいでしょうか。 

【佐々木主査】 

 お願いします。

【白井委員】 

 全体のトーンですが、学術というもののとり方が、少しクラシックかなという感じがします。やはり、今既にもういろんなところでフィールドみたいなものがものすごく重要になっているわけでしょう。そうすると、そういうところから出てくる取組みたいなものがどういうふうにこういう中で位置づくのか、問題意識のとり方、つかまえ方にもよるのだろうけれども、もう少しそういうようなニュアンスがあっても私はいいのではないかという気がするので。

【佐々木主査】 

 わかりました。
 たくさん注文が出まして、これは委員会が活発であるということの兆候でございますので事務局としては大いに喜んでいただきたいと思っておりますが、そう無責任なことも言っていられないのでございますが、今日はこの案を出させていただきましていろいろご指摘をいただきまして、ありがとうございました。
 皆様からの意見を、ご意見を踏まえた上で6月11日時点でのこれまでの審議の整理という形にさせていただきたいと思います。
 修正につきましては私のほうが今日の議論を十分受けとめることができるかどうか、いささか自信がないところもありますけれども、ほかにどなたかにお願いすべきものでもございませんので、修正については私の責任ということでさせていただくということでよろしゅうございますか。とりあえずそういうことで。
 既に議論が出ましたように、まだいろいろ不十分で、もっとやっていかなくてはいけないという点はまた今後ともよろしくお願いします。
 それを踏まえて、6月17日に予定されております学術分科会で報告をさせていただきたいと思いますので、ご承知おきいただきたいと思います。
 なお、これまでの審議等で出てきた論点に関しまして、この委員会として今後いろいろデータや事例などを調査したいというようなことも含めまして、本委員会の何名かの先生に作業をお願いする、事務局と一緒に作業することをお願いしたいということを考えておりますので、そのメンバーにつきましては事務局とも相談をして決めてまいりたいと思います。その際にはよろしくご協力のほどをお願いしたいと思います。
 それでは、本日はこの辺で終わらせていただきたいと思いますが、予定等、事務局から何かございましたら、どうぞ。

【門岡学術企画室長】 

 次回の学術の基本問題に関する特別委員会につきましては、現在日程調整をさせていただいているところでございますので、決定次第、ご連絡をさせていただきたいと思います。
 以上です。

【佐々木主査】 

 ありがとうございました。本日はこれで終了といたします。

―― 了 ――

 

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