学術研究推進部会 人文学及び社会科学の振興に関する委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成19年8月9日(木曜日) 15時~17時

2.場所

霞が関東京會舘 「シルバースタールーム」(35階)

3.出席者

委員

伊井主査、佐々木分科会長、立本主査代理、井上孝美委員、上野委員、白井委員、中西委員、家委員、井上明久委員、伊丹委員、猪口委員、今田委員、谷岡委員、深川委員、藤崎委員

(科学官)
高埜科学官、辻中科学官

文部科学省

徳永研究振興局長、藤木審議官、吉川科学技術・学術総括官、森学術機関課長、戸渡政策課長、江崎企画官、松永研究調整官、袖山企画室長、後藤主任学術調査官、高橋人文社会専門官 他関係官

4.議事録

【伊井主査】 

 どうもお待たせしました。お暑い中、どうもありがとうございます。
 ただいまから、科学技術・学術審議会学術分科会学術研究推進部会人文学及び社会科学の振興に関する委員会人文学及び社会科学の振興に関する委員会第7回の会合を開催いたします。

【伊井主査】 

 本日はまとめでもございますものですから、科学技術・学術審議会学術分科会会長の佐々木毅委員にも出席をいただいております。どうもありがとうございます。
 それでは、まず、配布資料のご確認をお願いいたします。

【高橋人文社会専門官】 

 配布資料につきましては、お手元の配布資料一覧のとおり、配付させていただいております。議事次第の2枚目でございます。欠落等ございましたら、お知らせいただければと思います。
 それから、基礎的な資料をドッヂファイルで机の上に用意させていただいておりますので、そちらのほうも適宜ごらんいただければと思います。
 以上でございます。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。
 では、これから審議に入ることにいたします。本日は、長く審議をしていただきましてご提案をいただきましたが、「人文学及び社会科学の振興について」の審議のまとめということで、案を提出させていただいております。大半は、本日はこの審議のまとめにつきまして、ご審議をいただき、後半にまた別の議題もございますけれども、専らこのまとめについてのご意見を賜ればと思っているわけでございます。これまで人文学及び社会科学の学問的特性とか、社会的な意義、あるいは各委員及び外部有識者のご専門の観点からいろんなプレゼンテーションをいただきましたけれども、これに対する皆様のご意見というふうなものをいただいたところでございます。ちょうど折しも概算要求の時期ということもございますものですから、このあたりでまとめましたもののご意見を賜って、さらに進めてまいりたいと思っておるわけでございます。そこで、前回、論点及び政策の方向性の案を提示いたしまして、「人文学及び社会科学の振興について」の審議のまとめ案というものを作成して、皆様からご意見をいただいたところでございますけれども、きょうは、少しまとまった時間を確保してございますものですから、この審議のまとめ案につきまして、さらに論議を深めていただければと。そして、できれば次回の委員会の取りまとめを目指してまいりたいと考えているところでございます。
 なお、前回ちょうだいしましたご意見を踏まえて、少し修正をしたものがごらんのとおりとなりますので、少し事務局からもご説明をいただければと思っています。よろしくお願いをいたします。

【高橋人文社会専門官】 

 それでは、資料の1-1、それから、1-2に基づきまして、主に前回からの変更点を中心にご説明させていただきたいと思います。
 資料の1-1が前回からの修正を見え消しで反映させたもの。それから、1-2は、それを溶け込ませたものになっております。1-1のほうが、前回からの比較という点でわかりやすいと思いますので、資料1-1に基づきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、資料1-1の1ページをごらんいただきたいと思います。まず、人文学及び社会科学の意義ということでございますが、前回1.から4.までの意義があるのではないかということで、案を提示させていただいております。その中で3.の社会における批判的役割というところにつきまして、批判だけではなくて、もうすこしポジティブな積極的な役割というのがあるのではないかというご意見がございましたので、批判的役割というところを社会的な課題の解決に向けた多様な知見の提供というふうに変えさせていただいております。それから、これにあわせて、文章のほうも、「大所高所から必要な批判を行い、社会をよりよくする」というところを「批判を含めた多様な知見を社会に提供」するということ。それから、知見の提供ですと、英知の創造とあまり違いが出ないかもしれませんので、下に2つ目のパラグラフとして、「多様な視点の提供に当たっては、学術的な知見の提供とともに、政策形成に直接的に寄与する観点に立った知見の提供」とか、そういったものもあるということで、ちょっと英知の創造とは区別をするような形の書きぶりに直してございます。
 それから、2ページでございますけれども、人文学及び社会科学の特性というところでございます。まず、人文学の特性というのがあって、ここで、これは書き方の問題なのですが、太字の下線になっているところと、細字の下線になっているところがございまして、細字の下線のところが修正部分でございまして、太字の下線は、本文として強調している部分でございますので、修正箇所ではありません。ちょっとあらかじめ申し上げます。戻りまして、人文学の特性のところは特に修正をしておりません。
 それから、社会科学の特性のところですが、若干修正してございますが、これは文章をよりわかりやすくしたという意味でございますので、内容は特に変えておりません。
 それから、研究方法の特性でございますけれども、1つ目のパラグラフは特に修正はございません。2つ目のパラグラフは、全部削除になっておりますが、これは削除というよりは、3つ目の丸、4つ目の丸、下線が引いてあります、2つの丸がございますが、2つ目の丸を消して3つ目、4つ目のほうにより詳しく書き下ろしたというものでございます。趣旨は大体同じです。3つ目の丸を読みますと、「人間や社会の在り方を把握するためには、人間の意図や思想といった価値の問題を避けて通ることはできないことから、人文学及び社会科学の研究を進めるに当たっては、実証的な方法による「事実」への接近の努力とともに、研究者の見識や価値判断を通じた「意味づけ」を行うことが不可欠である」と。
 3ページにまいりまして、続いている文章があるのですが、「このような意味で、たとえ実証的な方法による事実への接近の精密度をいかに高めようとも、実証的な方法により獲得されたデータ等に対する解釈が求められ、その意味で、研究者の多くが「結論」の段階で一定の「飛躍」を行うことは避けられない。また、その「飛躍」こそが人文学及び社会科学の特性でもある」という形で直させていただいております。
 それから、3ページ目の2つ目の丸でございますが、ここ「科学的」というところを「実証的」というふうに直しておりますが、全体を通じて言えるのですが、研究方法のところで自然科学同様の方法とか、自然科学類似の方法という形でこれまで記述をしておりますが、前回委員の方から、自然科学類似とか、同様というよりは、もう少し和らげた言葉のほうがよろしいのではないかというご指摘がありましたので、実証的という言葉にさせていただいております。したがいまして、3ページ目の研究成果の特性の直前にある「科学的なアプローチ」も「実証的な方法」というふうに変えさせていただいております。
 それから、次に、3ページ目の一番下の(4)研究成果の特性というところですが、これは、新たに追加をさせていただいております。まず、内容を読み上げますけれども、まず、1つ目の丸ですが、「一つの価値基準の下で研究を行いうる自然科学の研究成果が、明示された一つの「真実」という性格を帯びるのに対して、「価値」そのものも対象として研究を行う人文学や社会科学の研究成果は、人々の主観に依拠した「真実らしさ」という基準の範囲内で提示された社会や人間の在り方に関する複数の選択肢の一つという性格を帯びる。」
 4ページでございますが、続いているのですが、「人文学や社会科学の研究成果の活用に関する意思決定は、あくまで社会を構成する人々が行うものであり、人々は、研究成果として示された社会や人間の在り方の可能性とは異なる行動をとることができる。このような意味で、人文学及び社会科学については、ある研究課題について、多様な視点から議論が継続されていることそれ自体が、研究成果と言うこともできる。」
 最後の丸ですが、人文学及び社会科学の研究成果の特性は、以上のようなことを踏まえれば、多様性にあるということが言えるのではないかということでございます。ここにつきましては、これまで委員の方々のプレゼンテーション、あるいはやりとりの中から、さまざまなご意見がありましたが、それをいろんなところに出たいろんなものをまとめてみると、こういう性格づけができるのではないかということで、まとめてみたものでございます。
 それから、もう一つ、概算要求の関係ということもありますので、その観点から言いますと、特に人文社会科学につきましては、財政当局といつもやりとりをしている中で、研究成果は何なのかということが常に毎年、毎年言われます。自然科学と同じような意味で、何か開発が行われて、1つ何か製品ができるような、そういうイメージで常に成果を求められるのですが、人文社会科学の場合は、成果の性質が自然科学と学問の特性の観点からちょっと違うのではないかなという問題意識もありまして、結論を1つ何か出して、それが社会の側ですべて受け入れられるものという形での成果ではなくて、選択肢を提示して、実際にそれを受け入れるか、受け入れないかは、世の中が決めていくような、そういったタイプの成果になるのではないかというふうな問題意識でもありまして、委員の皆様方から、いろいろ出たフレーズだとかをうまくないかもしれませんが、まとめて、こういう形にさせていただいたところでございます。
 それから、4ページのローマ数字の3でございます。振興方策についてでございます。1つ目は、まず(1)総論でございますが、ここで文章を消しておりますけれども、これは文章を消して、下線を引いた丸で2つ目の丸を全部書きかえております。これは内容は変わらないんですけれども、疑問形だったものを肯定文に直したと。前は、質問を投げるような形でしたので、まとめですから、肯定文にしないといけないので、以下のような自然科学の政策体系を踏まえて、人文社会科学ではどうかというような形でしたけれども、これを肯定文に直しております。
 それで、5ページでございます。ここは、4ページの下半分を受けまして、こういう施策体系のもとで、自然科学では施策が行われていることを踏まえて、では、人文社会科学では、以下のような3つの点を基本的な考え方とするという形に直しております。前回、提示させていただいた1.、2.、3.をもう少しこなれた形にして、もう一度書き直したものが、5ページの下の下線部分でございます。読み上げますと、1.実証的な研究方法を採り入れた政策や社会の要請に応える人文学及び社会科学の研究については、自然科学に対する支援又は推進施策と同様、学術研究支援施策とともに、積極的な施策の展開を行っていくということで、実証的な方法などを取り入れているタイプのものについては、いわゆる政策や社会の要請にこたえるタイプの研究支援、そういったものもより積極的に行っていってはどうかということでございます。
 2.でございますが、2.は、専ら伝統的な研究方法により行われる人文学及び社会科学の研究については、今後とも継続的に施策のあり方を検討する。こちら主に人文学を念頭に置いておりますが、まだ、本委員会できちっとした形で議論なされていないと思っておりますので、今後検討していくと。それから、なお書きですが、なお、今後の検討に当たっては、アメリカにおいて、哲学、文学、歴史学等の伝統的な人文学の振興を担う機関(NEH)が行動科学等の実証的な社会科学の振興を担う機関(NSF)と独立して存在していることなども考慮して、学問の特性に応じた支援のあり方を検討するとなお書きで書いております。
 それから、3つ目ですが、いわゆる「文理融合研究」などについては、1.と同様の扱いとするということでございます。
 それから、6ページでございますが、施策の、今までが総論ですけれども、ここから各論になりまして、(2)として、国公私立大学等を通じた共同研究等の振興ということで、これは研究環境基盤部会のほうで主に議論されているものを人文社会科学の振興の観点からも少し書いたものでございます。基本的に前回と変わっておりませんが、細い下線を引いたところが1パラグラフ目にございますが、ちょっと説明を補足したというぐらいのことでございます。それから、(3)でございますが、科研費の関係で、どういうふうに支援していくかというところでございます。前回は、(3)の1つの目の丸の2行だけを書いてございましたが、これをもう少し詳しく、書き下ろしたものが、6ページの下から2つ目の丸でございます。科学研究費補助金は、人文学・社会科学から自然科学までのすべての分野にわたり、研究者の自由な発想に基づく研究(学術研究)を支援する唯一の競争的資金であり、その中でも、大学等を通じて最も多くの応募がなされている研究種目が「基盤研究」である。ほかの競争的資金では研究費用を措置することが難しい人文学及び社会科学等の研究に十分配慮するためには、「基盤研究」などに着目した予算の充実を図るべきである。少し詳しくしたところでございます。それから、6ページの一番下の丸でございますが、これは、少し追加的に書いたものでございます。研究費部会などの議論を少し踏まえまして、追加で書いたものです。人文学及び社会科学に関連する新興・融合領域の形成にも配慮して、審査体制のあり方の見直しなど、科研費全体としての制度設計を行っていく必要がある。また、研究方法など学問の特性の観点から、科学研究費補助金の分科細目等のあり方を検討することが必要であるということでございます。
 それから、7ページでございますが、7ページは、「政策や社会の要請に応える研究の振興」というところでございます。前回は、7ページの一番上の1つ目のパラグラフだけが書いてあったのですが、具体的な例えば研究課題の例のようなものも、書き加えてはどうかというご指摘もございましたので、少し具体的なものを7ページの後半部分から8ページにかけて入れて、追加しております。まず、7ページの一番上の丸でございますが、ここは、意義ということで、少し文章を整理させていただいております。「我が国の人文学や社会科学にあっては、欧米からの新知識の輸入という面も含め、「知の蓄積」の観点からの「学術研究」が中心だった。しかし、地球環境問題や貧困問題などのグローバルな課題や、少子・高齢化問題など我が国が直面する課題など、人文学や社会科学に対する政策や社会の要請は、今後ますます高まることが予想される。このため、学術研究に加え、「知の活用」の観点から、「政策や社会の要請に応える研究」の振興を図ることが重要である。また、以下は、ここは前回委員からのご指摘を踏まえまして、削除しております。
 それから、2つ目の丸ですが、これも説明を追加しているようなものでございますけれども、「政策や社会の要請に応える研究」は、「学術研究」や「基礎研究」という概念に対して、純粋な学問的動機というよりも、現在の社会に存在する価値観を前提に行われるタイプの研究と言いうるものであり、人文学及び社会科学において、このようなタイプの研究を進めていくことが必要である。大体同じようなことをもう一度言っているということです。
 それから、次の3つ目の丸ですが、ここから具体的なことを少し書いてみたところです。研究方法:実証的な研究、「政策や社会の要請に応える研究」の実施に当たっては、実証的な方法による事実への接近の努力と、研究者の見識や価値判断を通じた意味づけとの適切なバランスが確保された研究が行われることが必要である。次に、研究内容、政策や社会の要請でございます。研究の前提となる「政策や社会の要請」については、地球環境問題、貧困問題などの近未来における全地球的な課題の解決や、少子・高齢化問題などの近未来において我が国が直面する課題が考えられる。具体的な研究課題の例としては、以下のものが考えられる。近未来における全地球的な課題の例として、貧困問題、それから、エネルギー問題、それから、8ページに行きまして、人口問題、環境保全と経済成長、それから、価値観の異なる文明の共存といった課題があるのではないかと、例でございますけれども。それから、我が国が直面する課題の例として、4つほど掲げてございます。少子・高齢化を前提とした我が国社会のあり方、生活の質の向上、それから、東アジアの環境問題の具体的な解決、我が国経済の成長制約条件の解明と打破といった、こんなようなことがあるのではないかということでございます。
 それから、次の丸ですが、これは地域研究についての「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」という、今文科省が行っている事業について、ご説明をさせていただいて、意見交換させていただきましたので、ここに一言だけ書かせていただいております。現在実施されている「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」については、新しい地域を視野に入れつつ、「地域」と「日本」との関係性の解明など、政策や社会の要請に基づいた研究を、引き続き諸学の協働により実施していくことが重要である。それから、次に、研究の支援でございますが、「政策や社会の要請に応える研究」の実施に当たっては、実務の専門家との連携や、社会調査や、コンピュータを活用した研究方法など、手厚い研究支援を前提とした研究活動が展開されることが予想されることから、研究支援が行えるよう間接経費の措置などが必要だということで、支援の話なども少し具体的に書かせていただいております。
 それから、施策の最後ですが、研究成果の海外発信ということで、これは、前回書いたものと同じものでございます。
 私のほうからは、以上でございます。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。大半は、これまでいろいろ審議をしていただいたことの内容をまとめていただいているところでございますし、資料の1-1は、前回のものに少しいろいろ手を加えてわかりやすくしている、アンダーラインとか、見え消しなどしているところでございますけれども、細かな審議内容につきましては、これまで逐一毎回配付されております資料2のような各委員からのご意見をまとめたものがございますけれども、本日は、その審議のまとめにつきまして、大綱をまとめて、ご意見を賜って、そして、大きなところは大体きょうでまとまっていきまして、次回、最終的な結論に持っていきたいと思っているところでございますので、よろしくご協力ください。
 今、ご説明いただきました全般的なことを説明していただいたのですが、どこからでもといいというと大変なことになりますので、大体ローマ数字の1番が人文学及び社会科学の意義ということ、そして、2番が人文学及び社会科学の特性というふうなことで、4ページぐらいまで行っておりますので、そのあたりまでで、何かご意見をいただければと思いますが、どうぞ、その中でご活発にご意見賜ればと思いますが、どうぞ。

【高埜科学官】 

 1ページ目の1の2.の文化や価値の継承というところでございますけれども、ここで述べられている内容は、いわば歴史的な継承という考え方が記されているように思うのですが、どうも、今回のというか、この全体の議論の中で、この場になって申し上げるのも何なのですが、全体として、異文化に対する理解という、その点がもう一つ欠けているような印象がありまして、つまり、文化や価値の継承面、歴史的な継承面だけではなくて、外国など異文化からこれをどれだけ価値を吸収できるのか。そしてまた、それは同時に発信していくという、その点の内容を何か言葉として含めていただけるとよいのではないか。それはどういうことかというと、全体の議論として、この間、明治以降、日本はやはり、もちろん現在英語が世界共通語になろうとしていますから、英語がとっても大切であることは言うまでもないのですが、やはり文化を理解するためには、外国語を通して、フランス語であれ、ドイツ語であれ、中国語であれ、韓国語であれ、こういうものが、人文学の一分野として、しっかり研究されたり、担っている方が多数いらっしゃるわけですから、ぜひ、その存在並びにその意義が反映される形での文面がまとめられると、ふさわしいのではないかと、そのように感じました。何だか、今さらになってというような感じもいたしますが、やや大きな問題だと思いますので、以上でございます。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。文化の多様性に対する理解力なり、発信力ということですね。

【高埜科学官】 

 外国との関係ですね。

【伊井主査】 

 異文化との交流だとか、異文化とのいろんな理解を、お互いにし合うというようなことだろうと思いますが、もちろんそれは入っていないわけではない。多様性というような言葉で、包括しているところもあるのですが、それはぜひどこかに入れていきたいと思っております。ありがとうございます。
 どうぞ、上野さん。

【上野委員】 

 済みません、二度ほどちょっと欠席しましたので、整理の段階になって、私も恐縮です。
 今のご発言に、私も賛成です。1ページのところで継承という言葉でとどめるのではなくて、新たな状況にきちんと対応し得るように発展させる、というような表現が要るんだろうと思います。
 それから、同じく4.教育への貢献というところで、議論の詳しいまとめには、社会教育の観点というのが出ているんですが、ここでは、2行で整理してあって、2行目のところの「次代の社会を構成する人間を育成するという役割」だけが書いてあるんだけれども、社会教育の面、市民教育といいますか、記録では、教養ある市民の育成という表現になっていましたが、ちょっとそれを入れておくと、いいのではないか。今の異文化とも関係しますが、それが2点目です。
 趣旨は同じなんですが、同じく2ページで、(2)の社会科学の特性のところなんですが、社会科学は社会を研究対象とする学問であるというのが、3行ありまして、研究方法については、自然科学的なものを踏襲することもできるという、ここの間に、今の異文化もそうですし、そのほかに福祉とか、教育とか、そういうジャンル、つまり、自然科学のように、一元的な価値を求めるところにおさまらない、非常に多義的な価値を求めるジャンルがあるので、その部分について、少し文言を加えることができれば、人文学の他のジャンルを組み込むことができるかなと思います。そのことが、人文系ではどういう成果が出るのかと問われるとおっしゃる部分ですが、これは海外との関係とか、日本国内での物の考え方とか、そういう部分にかなり成果を上げることができると位置づけていただくと、よりよいのではないかと思います。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。ちょっと確認ですけれども、今最後におっしゃったのは、2ページ目の(2)社会科学の特性ですか。

【上野委員】 

 2ページの特性の第1段落が社会科学は云々ですね。それで、研究方法については、自然科学の手法をというので、自然科学の手法を踏襲できるのではないかというニュアンスになっているところを、人文学に独自な研究方法があるのではないかということを多様性、多義性を前提としたアプローチ等、ここに入れるといいのではないかという趣旨です。

【伊井主査】 

 じゃあ、また、後でちょっと考えます。ありがとうございます。
 ほかに、どうぞ。

【今田委員】 

 2ページ目の一番上のほうに、人文学の特性と書いてあって、2行目ぐらいに自然科学とは違って、自然科学は1つの価値基準のもとで研究を進めることができるというのは、自然科学の人にしかられると思います。別に1つの価値基準のもとで研究を進めているわけではないので、例えば価値判断の問題にそれほど神経質にならなくてもよいとか、何かちょっと和らいだほうが、1つというのは、自然科学の1つって、何ですかと言われたときに答えるのが難しいと思います。
 それから、次のページの一番上の段落の、人文社会科学では、「結論」の段階で一定の「飛躍」を行うことは避けられない。飛躍って、どうやって、何をすることですかと言われたときに、ちょっとジャンプすると言ったって、論理を外して飛んでもよいというふうにも解釈できるし、論理ではなくて、いろんな意味解釈で、なるほどというふうに納得するのか、ちょっと説明を加えたほうが誤解されないのだろうと。

【伊井主査】 

 以前のプレゼンテーションで、飛躍というふうな言葉が盛んに出たものですから、ここに入ってしまったのですが、論理的な構築のもとに結論が導かれていくなら、どれだって同じことだと思いますので、それを捨象して、いきなり飛躍することはないのだろうと思いますけれども、しかし、この飛躍という言葉につきまして、もう少し慎重に考えていこうと思います。

【今田委員】 

 もう1点、最後に、その同じページの研究成果の特性のちょっと上で、人文社会科学においても、自然科学的な方法というもので、数理的な方法と実験的手法、フィールド研究、もう一つ、やっぱり調査統計的な方法というのも入れておいたほうがいいのではないでしょうか。

【伊井主査】 

 調査……。

【今田委員】 

 社会調査なんかで、それで統計解析なんかやりますよ。それ、数理の中に入っているのでしょうか。普通数理的研究法というと、数学的なモデルをつくって、それを解析するというニュアンスになるので、もっと言えば、最近は、天文学その他でシミュレーションで全部やりますから、実験的シミュレーション的手法というふうにやっておいたほうが、シミュレーション、随分社会科学で増えてきましたから。以上ですが。

【伊井主査】 

 わかりました。そこらの要望はなかなか書かないところもあるものですから。どうぞ。

【猪口委員】 

 人文学の特性、(1)のところですが、人文学は人間を研究対象とする、あまりにもそっけない感じで、僕は、人間とその自己表現を研究対象とするとか、何とか入れたほうがいいのかななんて思いました。
 それから、あと(2)社会科学の特性のところの上から2行目ですが、何とか何とかは、価値の問題を取り扱うって、価値の問題というか、価値判断を要する問題とか、何か、ちょっと価値の問題というと、やっぱりそっけない感じがして。

【伊井主査】 

 2ページ目の上のところですね。

【猪口委員】 

 (2)の社会科学の特性の丸の2番目。それから、(3)の研究方法の特性について、一番下のパラグラフですけれども、やっぱり価値の問題と書いてあるのですが、判断を要する、そうすると、変になるんですかね。価値の問題、何か、避けて通ること、大賛成なのですが、何かもうちょっと文章を考え直す、言葉を考えたらいいかなと思いました。
 それから、飛躍についてですけれども、3ページの一番上の、これ、だから、論理と証拠というふうにやれば、ある程度証拠ははっきりと直接的に目に見える形になっても、飛躍というのは、あらざるを得ないとか、もうちょっと積極的に言っておられるとどうなのでしょうか。

【伊井主査】 

 飛躍ということは、よろしいわけですか。

【猪口委員】 

 いいのですが、だから、論理と証拠、2つ持ってこないと、論理だけで、論理を飛躍するというのも、また、ちょっと、蛮勇になっちゃうから。証拠はなくても、そういう感じがするとか、哲学的に飛躍するというような感じを入れるために、論理と証拠と、2つ持ってきて、人文学では、証拠というのにはそれほどこだわらないとか、こだわっても、なかなか見つからないとか、何かそういう感じの形で飛躍を入れていけば、あまり気にならない。これじゃあ、飛躍って、どっかから飛び下りて、死んじゃうみたいだ。特に論理しか出てこないと。論理を殺しても、飛躍して好きなこと言いましょうみたいな感じがして、ちょっと。
 それから、一番心配なのは、3ページの(4)の研究成果の特性で、ここは、何かよくわからないのですが、多様性だ、いろいろあるのがいいって。そうしたら、好きなことを言っているのが社会科学の成果の特性みたいで、ちょっと極端過ぎるのではないかなと思ったのです。とりわけ、やはり2のほうでも、その3ページの一番上のパラグラフでも、「事実への接近の精密度をいかに高めようとも、実証的な方法により獲得されたデータ等の解釈が求められ、その意味で」何とか何とかという中で、「飛躍」と。飛躍のほうを強調し過ぎなのではないかなと思って。それで、多様性がいっぱいある。いろんな意見があるのがいいというふうにすると、それこそみんなが飛躍しちゃって、ダブル飛躍、三重飛躍。何か、フィギュアスケートみたいになっていく。ちょっとこれ、ちょっとだから、それ、何とかそんないいかげんにやっているのではないというのをむしろ強調したほうがいいんじゃないかなという気がしますね。実証的方法に隠されたデータについて、精度を高めるとか、物すごい解釈を入れてもあれだけど、論理と証拠の両方から攻めて、どこまで行くか。ぎりぎりの何とかするというところを強調したほうがいいので、でも、最後はやっぱりある程度の判断が必要だとか、価値判断が必要だとかという形での飛躍はいいと思うんですけれども、あんまり何か初めから飛んだりはねたりしている、フィギュアスケートじゃないから、僕はこの(3)の研究方法の特性の一番、4番目のパラグラフですね。3ページの一番上のパラグラフですね。ちょっとこれ、変えたほうが、変えたというか、もうちょっと工夫したらいいかなと思います。
 それから、それと関連で、(4)研究成果の特性、3ページから4ページにかけてですが、これ、本当にたくさんあって、いろんなのがあっていいのだというのは、僕も大賛成なのですが、それについて、特性はと言っても、それは、ちょっと違う、いっぱいあっても、とんでもない議論というのは、必ずあるので、それはどこかで消えていくわけですよね。だから、そういうことについても考えをある程度いたさないと、ちょっとこれ、ノー天気みたいになっちゃう。(4)研究成果の特性、3つパラグラフありますけれども、社会科学はノー天気科学みたいになっちゃう、これだと。成果の特性といって、何かちょっとどういうふうに具体的に文言をすればいいか考えないと、ちょっとまずいのではないかな。だって、例えばどうして中国には、日本とか西欧で考えるような封建主義はなかったとか、いろいろ議論があって、福田徳三をはじめ、エドウィン・ライシャワー、何でもいい、あるわけです。それなりに何か理由があったので、でも、あったんだという人もあるけれども、それはあんまり強くなくなったのですよね。それは、そういうので、どうしてそうなったかというのは、みんなで飛躍して、好きなことを言って、それで多様性が成果だという感じにとれるような文言はちょっとまずいと思いますよ、この(4)はとりわけ。それでは、それは(3)の方法についての3ページの一番上のパラグラフとの関連で、ちょっと直さんとだめだと思いますね。これだと、ちょっと恥ずかしい感じ。

【伊井主査】 

 わかりました。1つは、ちょっと強調し過ぎているところもあるのだと思いますが、自然科学と人文学、社会科学がどう違うかということを財務省などに説明するときに、多様性というふうなものが1つの人文学、社会科学の特性でもあるというふうなことを説明するために、こういうところも使っているところもありますが、ちょっといろいろと訂正をしていこうと思っています。

【猪口委員】 

 財務省の役人を説得するのは難しいのではないか、これ。社会科学者、ノー天気だってなっちゃいかねない。

【伊井主査】 

 どうぞ、上野さん。

【上野委員】 

 先ほど申し上げたかったことは、そこに関係していて、内容的には私も問題関心が一緒なんです。ここでは、いろんな意見交換の中で、必ずしも、それが焦点になっていないのですが、そういう実証的であること等々が、自然科学と社会科学、人文科学との量的な違いであるという1つの流れがここでの議論の中にあって、それでこういう書きぶりも生まれてくるのかなと私としては、解釈したのです。私は、質的に違うだろうと思っていて、今ご指摘のところは、先ほど私も、多様性とか、多義性とか申しましたが、社会科学、純粋には、私、人文のほうだろうと、自分で思っているのですが、ともあれ、ケーススタディ的なものとか、いろんな多様な見解が出されて、その中で、自然科学のように実験で一元化できない性格、やっぱり質的に違う部分があるので、その部分を今ご指摘のところで少し反映させるような書き方になれば、ここでの議論を受け継ぎつつ、人文科学の独自性というのも書けるのではないか。そういう意味で、多様性イコールすばらしいのだということではないと。それはやっぱり収束させるわけですから、そういう意味では、今のご意見に賛成です。以上です。

【伊井主査】

 中西委員、何か。

【中西委員】 

 最初に、特性というところに、やはり私も物すごく気になりまして、人文学は人間を研究の対象とする学問というのは、医学もそうです。本当は、人文学、心のあり方だと思います。人間の考え方を究めるというのが人文学で、私が個人的に思うのは、学術というのは、本当は人文学、社会科学とか、自然科学と分けられない。安全・安心といって、安全は証明できても、安心は人文学ができないといけない。学術にない構造的なものがあって、それを全体を俯瞰するのが人文学だと思うのですが、ただ、でも、予算を取るためのほうがかかわっているのでしたら、あれですけれども、どうしても、自然科学との対比というふうに考えて、書かれているのですけれども、そうじゃないと思うのですね。両方ないと、うまく学術は育たないということになる。社会科学も、社会を研究対象とするよりも、人間と社会のかかわり方ですね。それを行動学も出てきますし、歴史から見たりとか、外国と比べたりとかいうことがあるので、もう少し特性と書かれるからには、専門家の方もたくさんいらっしゃるので、もう少し練っていただけると。

【伊井主査】 

 いろんな方のこれまでの4月以来のご意見を混ぜてつくっているところがあるので、整合性は必ずしもないところもあるかと思いますが、今おっしゃった人文学の特性、社会科学の特性というようなことが、これから非常に大きくかかわってまいっているだろうと思いますけれども、何か、これにつきまして、特にこうすべきであるというご意見があれば、どうぞおっしゃってくだされば、ありがたいんですけれども、どうぞ。

【伊丹委員】 

 2ページ目の人文学の特性と社会科学の特性のところについては、人間というそっけない言葉だとちょっと誤解を招くとか、これは言葉を、猪口さんがおっしゃったように、自己表現ということを入れるのかとか、そういう工夫を若干意が尽くせるようにすれば、それで済む話ではないかという気がいたします。
 ただ、大変なのは、あまり私は意識していなかったんですけれども、財務省へ持っていって、自然科学とどう違うのだと言われたときに、何か説明資料になるような、その種の文書としての意義ということを考えた、4ページ目の研究成果のところですね。これについては、多様性にあると言っちゃうと、猪口さんのような解釈がついされてしまう。猪口さんがおそれられておられるような解釈がされてしまう危険もあるし、ここのところについては、どういう形でおさめるのがいいのかわかコジマ電りませんけれども、きょう、みんなでどういったタイプのことを本当に特性かなというのを改めて議論してみるのが、一番いいのかもしれませんね。これは、ちょっと今までそう表立って出ていた話じゃないですよね。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。今の研究成果の特性というふうなことを含めまして、何かほかにもご意見があれば、どうぞ。

【今田委員】 

 今ずっと3ページ、4ページまで読んでいて、気になったというか、頭の中にひっかかって、残っている言葉、価値と価値判断というのは物すごく多いのですね、この表現の中に。ということは、ここで、人文学と社会科学を自然科学と差別化するために、選んだキーワードが価値というようなニュアンスになるのですが、それで、通すんですかね。それだと、何ていうのかな、昔から、自然科学は価値にかかわらないから、社会と違うのだという、人文社会科学と違うのだというのとは、あまり変わらなくなっちゃうから、もうちょい何か工夫を、それは成果のところにも、今おっしゃられた成果のところにもかかわるのだけれども、あまりにも、価値の問題というのが、十幾つ、私ちょっと数えたのですが、出てきますんで、4ページぐらいの間に。ちょっとその辺を価値の問題が重要であれば、価値のどういうふうなところが問題かというのを咀嚼して書くと、もうちょっとわかりやすくなるし、それから、研究成果のほうに関しても、多様性ということの方向性が出てくる。これだと価値観の多様化とライフスタイルの個性化というジャーナリズム用語とあまり変わらなくなっちゃう危険がちょっと感じますね。

【伊井主査】 

 わかりました。どうぞ。

【猪口委員】 

 さっきの続きで、研究成果の特性なのですけれども、よくわからない。自然科学がそんな1つの真実なんか、やっているのかなというのは、非常に疑問に思いますけれども、財務省ということが出たので、それを念頭に何か議論をここで展開するようにしたらいいのかなと思ったのです。そして、それをどういうふうにするかというと、社会科学が対象としている主題というものは、非常に不確定であり、予測可能性が低いものであるから、実は、研究予算がたくさん要るというような感じに結びつけるというのがむしろいいのではないかなと。これ、冗談じゃなくてですね。結局、非常に何ていうか、人のいろんな判断も入るし、思わぬ展開をすることもあるし、思わぬ変数がひょろひょろと出てきたりするから、非常に多様性とか、不確定性とか、そういうことを入れることによって、予算がいっぱい必要だというのは、入れる必要はないのですが、必ずしも、単細胞的な研究作業が望ましくもないみたいな感じで、何かできないかなと思いましたね。その財務省なんて、僕も考えたことなかったので、自然科学でも、1つの真実だとか、1つの何とか求めているなんて絶対ないと思いますよ。感じとしては、ほとんど同じですよ。複雑な心、千々に乱れてやっていますというのが、僕のあれで、そんなここに区別して、財務省の役人、そんな変な論理で議論進めることによって、予算がいっぱい来そうなのですか。そんなことないと思いますよ。これはボロが出やすい議論で、すぐ足をひっくりかえられて、足払いでひっくりかえっちゃいますよ、これ。だから、ちょっと何か僕、議論としては、人間というのは、複雑な動物なのだと。いろんなことを1人の人が考えているのだと。それがごちゃごちゃいろいろ対立したり、競争したりするから、社会現象というのは、本当に複雑なのだと。これはいろんな観点から見ないとわかりにくいし、いろんな方法でもやらなきゃわからないと。だから、その成果については、そういうものを反映した成果が出るので、多様でもあり、それで、そのプロセスも注意しないと、なかなか永久の真実というわけにもいかないと。したがって、しっかりした社会科学者は大量に養成する。国益があることは確かだし、大量の予算を投入しなければならないと。力強くいくというのが一番いいと思います。あまり自然科学、関係ない。こういうところに出す必要ない。財務省の役人がそんな議論を持ってきたら、足払いでひっくりかえせばいい。

【伊井主査】 

 おっしゃるとおりで、それで理解していただければ一番いいわけでしょうけれども、価値の多様性ということを書いたのも、先ほどの異文化というようなこともありましたけれども、いろんな価値がございますが、それは時代だとか、地域によっても、異端と言われたものが主流になったり、いろいろ多様になってくるものですから、そういうところが1つの目玉にもなるのかなというようなことで書いているわけですが、済みません、先ほど深川委員が、お手が挙がっておりましたが、どうぞ。

【深川委員】 

 私は、別に自分がそういうことをやっているわけではないのですが、同僚の人々のために、一応言わなければいけないかなと思って、経済学にいる人間というのは、やっぱり数学が主たる記述方法だと信じている人が非常に主流になっていると思います。その人たちは、社会科学に分類されているのがいいかどうかという議論は、多分あると思いますし、もう金融工学の世界は、本当に金融工学ですので、扱っているのも人間じゃなくて、マネーですので、その世界まで含んでしまうと、少なくとも、マルクス経済学でない人たちにとっては、自然言語に、特に数学でなくと強調されているので非常に違和感があって、今経済学の人間というのは、何を考えて、何とか、数学を必修にして、マスキャンプに学生を送って、入試に数学を入れられるかと、もうこれしか考えてないですから、カリキュラム的には。相当違和感、やっぱりあると思います。それから、学会の主流も、もはや実験経済学も大きい分野になってますし、普遍性を追求しなければ、ジャーナルに乗らないという、もう切実な問題があるので、私は、自分がそれをやっているわけではありませんが、ちょっと同僚のためにあまりにも、極端に強調されるんではなく、例えば「数学ではなく」をとって、「主として」とかいうふうにしていただければ、若干わりと包括性があるかなというふうに思っていますし、その次の丸のところに数理的研究とか、実験的手法とかいうのがまた出てきちゃうので、財務省的には、こういう矛盾というのは、やっぱりわりと印象はよくないのではないかと思うのですね。一方で、どうせ言語でしかできないとか、解釈が大事とか、非実験系だと言いながら、でも、こういうのもあるみたいなのは、ちょっと矛盾した感じもあるので、少しならしたバランスある書き方にしたほうが突かれないかなと思います。
 あとやっぱり予算をつける側からおそらく財務省、財務官僚との接触、私も多いほうだと思いますけれども、やっぱり多様性で非常に複雑な世の中をどう理解するかということのニーズというのは、彼らもよくわかっていると思います。特に主計系の人は、金融とか、財政の人たちとは違いますので、おわかりだとは思うのですけれども、しかし、さはさりながら、そのいわゆるああいう予算をつける人の発想というのは何かというと、タコツボ的な、もうインプリケーションが広がっていかない。「So what?」みたいなのは、あまり出されても困りますよねって、そういうボトムラインがあると思うのですね。なので、多様性とか、複雑性を扱うのだけれども、こういう例えば研究体制をとって、こういう予算管理の仕方をすれば、こういう枠組みをはめていけば、ボトムラインとして、インプリケーションのあるものはかなり出てくる可能性はあるということをやっぱり打ち出していったほうが、人文であっても、社会科学的な分野であっても、わりと強く主張できるのではないかというふうに思います。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。どうぞ。

【家委員】 

 今のご指摘ですけれども、多分、これはこのパラグラフと次のパラグラフ、セットで読むのだろうと思ういます。伝統的な学問観によればという、最初にまくら言葉がついていて、多分こんなイメージを伝統的には人文学、社会科学に対して持っている。その一方で、こういう数理科学的な研究手法とかいう、新しい動きもありますという、そういう記述ではないのかなと、私は読んでいたんですけれども。

【猪口委員】 

 これは、人文学及び社会科学のと、2つ載せないで、人文学についてだけ言っているのだとばっかり思っていたんですよ。

【家委員】 

 いえ、そうじゃないです、これは伝統的な学問からの話です。下が伝統的でない人たちもいるって書いてあるのだから、これはバランスがとれていていいのではないのですか。

【伊井主査】 

 高埜科学官、どうぞ。

【高埜科学官】 

 先ほども発言しました1ページの1の2.の文化や価値の継承のところの文章は、人文学が、2行目の歴史などの文化、社会科学が自由、民主主義などの価値というふうに対応しているように読めるわけでございまして、先ほど今田先生がおっしゃった、価値がその後たくさん出てくるというところで、2ページの1番の人文学の特性というところで、人間を研究対象とする学問であると書かれていますけれども、やはりそういうところには、文化という言葉を入れる必要があるのだろうと。やはり人文学こそが文化を研究する学問で、その1ページとの対応性が出るのではないかというふうに思いますけれども。

【伊井主査】 

 どうぞ、井上委員。

【井上(明)委員】 

 済みません。3ページ目の一番上の白丸の件で、この飛躍ということ、これ、自然科学でも、我々一番、もし何かの現象があって、ブレークスルー的なものをしょっちゅう言って、非常にこれにちょっとこだわってはいて、ずっとさっきから考えているのですが、この自然科学においても、飛躍、現象から結論を得るのに、やっぱり飛躍と。ただ、それを実証していく。さらにこうだろうという。だから、人文社会科学においても飛躍でこうだと。それをやはり、それで飛躍で終わってしまっていたら、単なる空想になってしまいますから、おそらく実証されるのだと思います。その実証のときに自然科学よりも、人間を対象としていますから、非常に多くの現象あり、多様性あり、複雑性がある。だから、余計複雑な学問で、対財務省かどうかわかりませんが、非常にそういう意味での経費もかさむかどうかわからないのですが、何かそういうようなことがあってもいいような気がします。これだと、飛躍こそが人文科学、社会科学の特性である。自然科学、全く何かないような、そういうような、自然科学は、そこで、空想でとまってはだめですけれども、そうあって、思考過程において、それを実証するために研究を重ねるということですから、何か飛躍を自然科学が否定されているような印象もあり、発言いたしました。

【伊井主査】 

 わかりました。考えてみます。まだいっぱいあるんだろうと思いますが、これだけにこだわるわけにいかないもので、また後で戻っていただいても結構ですが、4ページ目の人文学及び社会科学の振興方策についてというかなり具体的なことにつきまして、最後のところまで、何かまたご意見を賜ればと思いますが、いかがでしょうか。

【立木主査代理】 

 おそらく議論に入る前に、質問なのですが、5ページの支援または推進施策というのがございますね。それから、1.のところに、「自然科学に対する支援又は推進施策と同様、学術研究支援施策とともに、積極的な施策の展開を行う。」この辺がちょっと整理がはっきりわからないのですが、支援、これは一番上の丸の支援または推進施策というのは、支援施策と推進施策を考えているわけですかね。それと最後の1.の積極的な施策と。そうすると、その施策というのは、どういうようなことを考えればいいのかなという、その施策と支援、または推進施策、この言葉の意味を少し教えてください。

【伊井主査】 

 どうぞ、事務局、お願いします。

【高橋人文社会専門官】 

 言葉の使い方がよくなかったと、改めて思っているのですが、支援または推進というところなのですが、支援というのは、いわゆるボトムアップの学術研究支援という意味です。推進のほうは、政策や社会の要請にこたえるタイプの施策のほうを一般に推進という言葉であらわす場合がわりとあるので、4ページのところで、参考とありますが、支援または推進方策というのがあります。(1)は学術研究支援で、学術研究については、わりと支援という言葉を使うケースが多くて、政策や社会の要請にこたえる政策目的的なトップダウン的なものは、推進という、そういう言葉を使っているという、これはそれ以上の意味ではありません。
 それから、また、5ページの1.に戻りますが、自然科学に対する支援または推進施策と同様、学術研究支援施策とともに、積極的な施策というのは、これは政策や社会の要請に基づくタイプの施策の推進という意味です。ちょっとこれ、舌足らずでしたので、申しわけありませんでした。

【伊井主査】 

 よろしいでしょうか。それでは、前半とも絡めながら、何かご質問いただければと、ご意見賜ればと思いますが、どうぞ、家委員。

【家委員】 

 5ページの2.のところのなお以下のところですけれども、アメリカでは、哲学、文学等の別機関があるという、ここにわざわざ書いてあるのは、これ、どういう意味合いで書いているのでしょうか。というのは、その次の6ページのところには、科研費では、科研費というのは、人文社会科学から自然科学まですべてをサポートしているというのは、常々うたい文句にしているわけで、そのこととどういう関係、これは何を意図しているかという。

【伊井主査】 

 これは、人文学と社会科学と一くくりにできないところもあるものですから、こういう文言にもなっているんですが、何か高橋さんのほうで、ご説明いただければ。

【高橋人文社会専門官】 

 ご質問、ごもっともだと思います。ちょっとここに入れるのが適切かどうかということもありますし、また、伊井主査からもお話がありましたけれども、これを入れた意図というのは、人文社会科学を一くくりにして、考えていいかどうかということをちょっと投げかけるような意味で書いたと。あと場所がここでいいかということがもう一つ問題になると思います。別に移したり、あるいは削るということも含めて、それは幾らでも対応はできると思っております。

【伊井主査】 

 何かご意見かお考えありますでしょうか、家さんのほうで。

【家委員】

 人文学は、これ、読みようによると、人文学は科研費ではなかなかうまくサポートできないから、別組織をつくれというふうにも読めるのですが、そういうことなんですか。

【伊井主査】 

 そんな背景もあるということと、人文学と社会科学はどうしても、一くくりにできないところもあって、社会科学はかなり自然科学的な手法でやる場合もあるだろうというような背景に意味合いがあるのだと思いますけれども、どうぞ。

【高橋人文社会専門官】 

 今のご質問なのですが、具体的に何かをどうしようというところまで考えているわけではございません。ただ、1つにまとめて、考えていいのかどうかということの疑問を投げかけているような、それをただ抽象的に書いてもあれなので、実際にこういう仕組みでやっている場合もありますが、どうでしょうかというぐらいの意味です。特に別に科研費をどうこうするとか、そこまで考えているわけではございません。以上です。

【家委員】 

 とかく外国ではこうなっていると書くと、それが非常にポジティブに評価しているような受けとめられ方をしかねないので。

【伊井主査】 

 わかりました。どうぞ、ほかに、藤崎委員。

【藤崎委員】 

 方法論のタイプとしては、3ページのところから伝統的な方法と実証的な方法という2つの区分が示されて、それで、3ページのところにもそれぞれに対応した特性というのが出ておりますし、そして、5ページのところに、また、その同じ類型で、実証的な方法と伝統的な方法によって行われる研究に対する支援のあり方ということが書いてあります。要するに、実証的な方法をとる研究に関しては、より自然科学に近いというとらえ方で、その支援のあり方もかなり、大規模な予算を投入してというようなことが、暗に想定されているように思います。一方、伝統的方法による研究は、そこまでお金は要らないんじゃないかというようなことも含んでいるのかなと思うんですけれども、1つには、ネーミングの問題で、実証的な方法というのは、まだわかるようにも思うんですけれども、前者のほう、伝統的な方法という言い方をしてもいいのかなというのは、ちょっと疑問です。社会科学においても、意味や解釈ということを重視する方法と、実証的な方法というのは、常に共存していると思いますし、ですから、伝統的な方法という言い方が非常にマイナスイメージにとらえられないかなという懸念が1つあります。5ページのところで、さっきも言いましたように、かなりその2つの方法に関して、支援の強弱がつけられているような受け取り方もできると思います。一般論としては、前者のほう、つまり、実証的な研究方法のほうが、より高額な予算投入を必要とするとは思いますが、後者のほうならば、あまりお金が要らないというわけでもないとも思います。ここで、明らかに力の入れ方を変えてよいというふうな書き方は、少し疑問に思いました。

【伊井主査】 

 3ページのところから5ページにかけてのことですね。ちょっとメモし切れないものですから、済みません、また後でお聞きします。何かほかに、どうぞ、井上委員。

【井上(孝)委員】 

 4ページの人文学及び社会科学の振興方策のところで、まず自然科学について、その(1)の総論の下で、参考というのが出ているのですが、これは、考えてみると、(1)の学術研究支援施策も人文社会系でも同じじゃないかと。要するに、科研費でも、人文社会を対象にしているし、それから、競争的資金も、人文社会系にももちろん出ているわけですし、それから、運営費交付金と、それから、私学助成、これもやはり同じなのです。これ、何を言わんとしているのか。それから、(2)も、最近は政策目的の達成、あるいは社会の要請で、科学技術振興調整費でも、例えば地域再生プログラムなどは、社会科学系も入ってきたり、また、そういう政策目的、例えば研究開発型、独立行政法人の研究開発の推進とありますが、独法でやっているのは、国語研究所とか、大学共同利用機関では人文研究開発機構とか、いろいろあるし、何をここで言わんとしているのかわからないので、やはりそれなら、焦点が当たっているのが、人文社会学の振興ですから、そちらが今現状はこうなっていると。それをさらに改善すべきだというのならわかるのですが、自然科学の例に並べても、何の役に立つのか、ちょっとわかりにくいと思います。

【伊井主査】 

 対比的に出そうとしたのですが、高橋専門官、何かありますでしょうか、

【高橋人文社会専門官】 

 自然科学のほうとの施策の体系、特に政策目的型の研究開発をかなり大きなウエートを、自然科学が占めていますので、それとの対比を出そうということで、書いたというだけですので、ここはまたいろいろ検討させていただきたいと思います。

【徳永研究振興局長】 

 そうじゃないです。あえて申しますと、自然科学のほうは、きちっと体系的になっているわけで、先ほど井上先生がおっしゃっておられたのは、例えば大学共同利用機関は確かにありますけれども、いわば政策主導に基づくトップダウン型の別に政策研究機関というのは、国語研究所はありますけれども、それはまあ、国語というごく特定の分野だけで、いわば整合的に置かれているわけではありませんし、それから、また、例えば政策型のさまざまな開発プロジェクトについても、いわばほかの自然科学研究の分野については、例えば戦略のようなものもありますし、地域に着目したものもありますが、一方では、それぞれ例えばライフサイエンスならライフサイエンス、材料分野なら材料分野だけのプロジェクトがあるという形で展開をしているわけで、いわば人文学、社会科学についても、そういう形で整合的にそれぞれ分野ごとに政策を展開していくことまで行くべきではないかというようなことも含めて、自然科学では、こういう整合的、体系的に展開をされていますという説明をしたわけでございます。

【井上(孝)委員】 

 人間文化研究機構なんかで、この間も、イスラーム研究とか、そういう報告はあったけれども、ああいうところからやはりプロジェクト研究で、積極的にそういう研究を推進しているわけでしょうしね。

【徳永研究振興局長】 

 あれは、大学共同利用機関ですから、一応トップダウン型ではなくて、ボトムアップ型の研究ということになっています。

【井上(孝)委員】 

 だから、そうすると、(4)の政策目的のところだけが違うというわけですね。

【徳永研究振興局長】 

 そうです。

【猪口委員】 

 今の件ですけれども、私も、井上先生と同じような、何か何でというのがわからないのが出てきまして、局長の意見とちょっと似ておりまして、文化系のほうというか、人文学、社会科学のほうにあるのは、大学共同関係のばかりで、しゃべる人がいっぱいいる、多様性ばっかりで、それが何も成果出てないと言うと悪いのですが、いることによって、成果になるという期待のもとにやっているわけで、こっちの自然科学分野の研究における支援推進というふうに、それなりのしっかり予算的基盤を持って、何かやっているというのとは大違いで、何か要するにお祭りみたいなもので、根本的に、共同運営ですし、時限措置がついておりますし、要するに、制度的な、制度化は行われないということがあって、みんなただ、集まっていろんな意見を言って、ああだ、こうだと言って、成果は多様性にあるというような感じで、我慢しているという感じでしか、ここ、こういうのをある程度考えるのは、すごく重要だと思いますね。それから、文理融合というのなら、それなりにあるのですが、この理科系のまた、これ、理科系の悪いところということもないのですが、文科系はもっと悪いのですが、みんな分かれておりまして、ああ、それは、例えば科学技術振興機構だったっけ、何かだったら、うちはハードのだけで、物理とか、機械とか、そういうほうであって、ましてや言葉とか、体とか、そういうのはもう関係ないと。それはたとえ文理融合みたいな、物すごく巨大な予算を必要なみたいでも関係ない、関係ないって、物すごく自分のやりたいところだけ、ぐーっとなっていって、とてもじゃないけど、文理融合さえ成り立たないみたいなつくり方をやっているという感じが非常にするので、この理もいいモデルではないけれども、文のほうは、本当に夏に大きなお祭りやって、楽しかったと、いろんなことを言い合って、おもしろかったという感じで、とんでもないことで、そういう何ていうか、ちょっと危機感ができるだけ人文学とか、社会科学も振興しようということで、この会議の一端の目的はあるわけで、同じじゃないかというか、今は結局予算の規模で押されるみたいなところがかなりありますし、学者の数も、理科系のほうが圧倒的に多いものですから、そういう危機に瀕する学問みたいな、危機意識が人文学はとりわけ多いし、社会科学も何しろノー天気な人だと思われているところが多いものだから、すごく危機意識は多いわけで、何とかもうちょっとしっかりできないかとやろうとしているので、これはだから、具体的に人文学、社会科学について、こんなことはなれないかというのは、仮に研究所というのを、何とか研究所というのを案として出せばいいのではないかなと思います。もちろん財務省は絶対反対すると思いますけどね。それが何ですか。だから、それは頑張らなきゃだめなので、論理武装が弱いんだと思います。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。そういう理論武装、我々はどうやってやるかということがあるんだろうと思いますけれども、どうぞ。

【伊丹委員】 

 今の4ページの総論のところがいきなり自然科学では、こうですというところがおそらく唐突過ぎて、問題があるのだろうと思いますので、徳永局長がおっしゃったように、人文科学の、人文学と社会科学に対する研究振興方策も統合的に全体の枠組みをきちんとつくって考えるべきだという、そういう趣旨の文章をきちんと入れたほうがいいのではないでしょう。ちなみに自然科学では、この種のものがあって、それのいいところ、悪いところ、ちゃんと考えた上で参考にしたらいいと。それぐらいの意味の参考だったら、いいと思うのですが、このままだと、自然科学ではこうやっているから、人文社会でも同じようなことをやりましょうというと、何となく、ただの右へ倣えで、やっぱり皆さんおもしろくないでしょうね。

【伊井主査】 

 おっしゃるとおりだと思いますが、自然科学は非常にかなりそうでない部分も多いのでしょうが、体系的な支援とか、推進政策があるということで。

【伊丹委員】 

 ですから、統合的政策、体系的推進ということをきちんとやるべきで、やるということを明言すると。それが一番大切なポイントではないでしょうか。
 それから、具体的な施策のほうで、6ページに国公立大学を通じた共同研究等の振興というところがあって、この出だしについては、大賛成なのですが、少数の研究者が多数の大学に散在していて、そのために実は力が出ない。その問題を解決するための方策は2つあり得て、1つは多数の大学に散在したまま、しかし、研究所で共同研究という工夫はできないかという、そういうやり方と、もう一つは、少数の機関、大学等でいいから、比較的多数の研究者が集積するような拠点をつくれないかというのと、2つあると思うのです。その両方を書くべきじゃないでしょうか。

【伊井主査】 

 拠点ですね。どうぞ、井上委員。

【井上(孝)委員】 

 先ほどとも関連するのですが、実際に人文学及び社会科学の支援または推進施策について、以下の3点ということで、先ほどもちょっとお話が、2.のところで、なお書きでわざわざアメリカにおいて、哲学、文学、歴史学等の伝統的な人文学の振興を担う機関があって、それを学問の特性に応じた支援のあり方を検討するというと、どうしても、これは積極的に今の学術振興会とは別にそういうものをつくれというように受け取られるのではないかと思います。別に今の、学振と文科省でやっている、そういう科研費の審査とか、そういうのをあり方までこの委員会として見直せというところまでの意見はなかったと思うし、こういう表現をやっていると、誤解を与えるのではないかと思います。それとの関連で、6ページの科学研究費補助金における人文学及び社会科学研究支援のあり方の中で、その(3)1.のところの下のほうなのですが、他の競争的資金では研究費用を措置することは難しい。人文学及び社会科学等の研究に十分に配慮するためには、基盤研究に着目した予算の充実を図るべきであるというのは、これは予算の充実を図らなければ、人文社会科学の研究に配慮するのはできないということを、これ、言っているように受け取れるんですね。そうすると、何のため、この委員会やってきたかということになるので、おまけに、シーリングはまだ案の段階ですけれども、科学技術振興費は、シーリングゼロというのは、原案であるようですと。予算が伸びないで、基盤研究のほうに注目していた予算の充実を図ることもできなければ、人文社会系に配慮できないということを言うことになるのではないかと思います。やはりこの委員会の成果を生かすような表現にしておくべきじゃないかと思います。

【伊井主査】 

 なかなか予算伸びない中で、自己撞着みたいなところがあるのですけれども、どうぞ。

【今田委員】 

 後のほうをもう中心にしますが、前半の流れの印象であれなんですが、最初に、人文学及び社会科学の意義みたいな、理念で掲げて、4つぐらい出ているんですけれども、それずーっと話がだんだん進んでいって、最後、科研費をどうしたらいいか、どういうふうにして、審査してあげればいいかとか、そういうちょっと何ていうか、だんだん話が何て言えばいいのか、理念から離れて、もう要するに、具体的に個別に研究費の割り当てどういうふうにしたらいいという話に、落差がすごく感じられて、もう少し、それで、最後が政策や社会の要請にこたえると。それもいいのですが、具体的な話になってくると、貧困やエネルギー問題とかというような感じになって、個別の具体的なものになっていって、少し何となく流れは、最初のところと後のほうの落差が大き過ぎるよう感じがするのですが、もう少し流れをよくするような形で最後のほうに持っていく方法がないのかなという感じがします。要するに、人文学及び社会科学の振興についてなんですが、何のために振興するかというところで、4つほど挙がっているのですが、何でこの4つなのですかというのが、あまりぴんとこないというか、もう21世紀の社会を見据えて、人間社会、技術のあり方をどうするかというのをどう考えるかという、何かそういうのがあって、この4つぐらいのものに分解して、それを実現するために人文学、社会科学、自然科学もあるのでしょうが、どう貢献するという話にして、その成果として、どんなものが期待されるというふうにしていったほうが、なっているような感じなのだけど、もうちょっとめり張りつけて、そういう流れにしたほうがいいのではないかと。特に最後の7ページあたりに出てくる政策や社会の要請にこたえる研究の振興はいいのですが、具体的な例の挙げ方が、ちょっとやっぱり偏りが、バイアスがあって、もっと広いいろんな問題があるのではないかな。これ、読んじゃうと、環境問題と貧困問題と、少子高齢社会とみたいなものが中心になるのかなというふうに思われるので、もうちょっと広がりのあるものを出したほうがいいのではないかという気がしました。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。何か先ほど予算のこともありまして、局長のほうでお考えはありますか。

【徳永研究振興局長】 

 予算は増やすというためにやって、これは基本的に科学技術・学術審議会総会というものがあって、その中の学術分科会でして、その中でさらに学術研究推進部会で、その中のごく一委員会でございますから、初めから、人文と社会科学を目指してやるということは決まっておりますので、そういう、あんまり大上段に振りかぶったことじゃない。むしろ大事なことは行政文書でございますから、まず、人文学と社会科学の意義を確認して、あとは政策手段に訴えるということが基本的に審議会の役割でございますので、そこはきちっと、これは学術論文を書いているわけじゃありませんので、そこはご理解いただきたいと思います。
 それから、もう一つは、先ほど井上委員から、予算は増えるのかと言われて、昨年も実績ベースで科研費は18億円で、節約解除ということにおいて、実績178億円ぐらい執行は増えておりますが、今後どういう分野で科学研究費補助金を増やしていくのかということで、これは500億円の枠もございますので、昨年も研究振興費予算、総額で1.2%ぐらい伸びておりますから、ぜひ、そういう範囲内で科研費も1%伸びれば、それなりに20億円ぐらい伸びますので、頑張りたいと思っております。
 ただ、そういう中で、特にこれまで科学研究費の採択に当たりましては、いわば分野別の枠取りという考えなしに、いわば応募状況等に応じて採択をするというのがずっとこれまでやってきた方向でございますが、その中で、ここで問題提起をしているのは、あえて、そういう枠取りのような考え方を導入するのが正しいのか、あるいは科学研究費補助金のあり方から言って、そういうことはやっぱり間違いなのかということについて、ひとつこの委員会としてのお考えをお示しをいただきたいということで、多分こういうことを担当のほうでは書いたのだろうと思っております。
 それから、例示につきましてもちょっとお聞きしましたけれども、例示も、この会議で確かに例示を書いたほうがいいということの中でありましたから、ぜひ、皆様方から、少し担当のほうの原案が極めて枝ぶりもよろしくないということであれば、また、逆にここの枝ぶりなり、内容を豊富化するために、皆さん委員の方々からご提案をいただいて、どんどん内容を豊かなものにしていただければ大変幸いでございます。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。これまで意義だとか、特性、そして、振興策については、いろいろプレゼンテーションを含めた議論をしていただいたものの最大公約数のような形でまとめたところもあって、なかなか学術論文のようにはならないところもあるんですけれども、どうぞ、白井委員。

【白井委員】 

 当初の議論からすれば、大分いじけたところが少し回復されてきたというふうに私は思って、いいのではないかなと思うんだけど、確かに少しまだ、何かぱっと読んだときに、しっくりこないというのは、皆さん多分同じような気持ちがあるのではないか。私自身もどう書いたらいいのかよくわからないけれども、人文学、社会科学の意義と書いてある。やっぱり自然科学と並べて分離することは、もちろんそれはそれでいと思うのだけれども、全体の科学がやっぱり必要なわけですよね。そういう中で、とりわけ、人文科学、社会科学と呼ばれている範疇のものが、どういう特性があって、どうだという議論は僕はあると思うけれども、自然科学と切り離してやると、今ほとんどナンセンスだから、そういう学問全体をどういうふうに扱っていくかという中で言えば、やっぱりそういう位置づけがないと、自然科学と人文科学、社会科学を対比させるような書き方というのは、何か非常に違和感があります、僕はですよ。いや、そうではないという、今までの我々の、我々というか、人文社会系の方々が受けてきた待遇ではないけど、それがしみついているというのがあるのかもしれない。少しわからないのですが、いずれにしても、もう少し格好よく書いてもいいのではないかなと私は思うんですけどね。
 それで、姿勢として、随分、この社会科学的な方法等々で政策的にもやらなければいけないし、そういう役割はすごく重要なんだということは、かなりはっきり書かれているようになったとは思うのですが、やっぱり人文学、あるいは社会科学というものが、どういうことを果たさなければいけなくて、それに対して、どういう責任をとるというかな、そういう迫力、気迫がやっぱりないと、税金使う意味がはっきりしてこないと思います。最低限、こういうことは絶対に必要と。もう極端に言うと、人文科学と呼ばれているようなものは、そんなもの、お金なんか要らないと言わないですよね、みんな。そうすると、なぜ、必要で、どういうことをやるんだということは、うそでも、本当でも、とにかく迫力をもってやはり書かないといけないのではないかなと。先ほど異文化等々のお話なんかも、非常に具体的にあったけれども、これから日本の社会、変わっていくときには、日本の文化というものに対して、どれだけ我々がまとめて、そのアイデンティティを主張していくかということと、先ほど言われたような、異文化との関係で、どういうふうにやっておけば、やっていけるのかという、そういうようなことは、非常に深刻な問題ですよね。だから、そういうことに対して、備えるということは、人文学の中で猛烈にあることというふうに思います。
 それから、もう一つは、自然科学に対することなのですが、何か自然科学の予算は当然であって、社会科学のほうにもくれなきゃ困るというそういう書き方になっています。少しだから、さっき一番最初におっしゃられたように、おかしいと思う。特に、私、いつも思うことは、例えば非常に大型の予算というのはあります、自然科学の中では。巨大、お金がなきゃできないという研究があります。これはもちろん政治的であったり、本当にそういうことは国際間の共同でなければ絶対できっこない。そういうものだということは、非常によくわかりますよね。だから、日本の国力から言ったって、それは当然参加もしたいし、研究者もたくさんおられる。だから、みんなの意思なんだ。それも、わかるけど。だけど、それでは、どうして、日本がどのぐらいのレベルで、そのものに参加してやっていくべきかということは、ほとんど研究というよりも、根拠がないと、僕は思いますよ。ですから、そういうものに対して、根拠を与えることができるとしたら、それは人文的、あるいは社会科学的な研究だと思います。そういうものがなかったら、本当は、適当にこのぐらいがお金が出せる限界だから、このぐらいで参加しましょうというのは、僕はおかしい。価値観が全然、何ていうか、判断されていないのだから、政治的判断しかないわけですよね。仕方がない面は、もちろんあると思うから、そんなことはあまり荒立てて言うのは、おかしいとは思うけれども、でも、一番根本的には、そういう巨大科学みたいなもの、世界でどういうベースでやっていって、本当は予算をどういうふうに世界の中で分配していくかという問題だって、本当は大きいのだから、そういうことから言えば、大したお金ではないのかもしれないけれども、要するに世界の中ではね。だけど、我々の乏しい、こういう研究費の中では非常に大きいウエートを占めるとすれば、それの配分というのは、もう少し考え方があって、皆納得するところでやられるべきだ。その根拠は、やっぱり社会科学的な、まさに研究とか、そういうものに裏づけされるのではないでしょうかと、僕は思うね。だから、全体がもう少し理解し合ったほうがいいんのではないかという気がする。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。とりわけ人文学、社会科学における社会的な意義、説明というようなものをもう少し主張したほうがいいというようなことでありますが、ちょっといろいろ議論があると思いますが、まだ、もう一つ、少し簡単な審議もしたいのですが、いろいろご議論があって、最大公約数的なものを入れたところがあるのでありますが、私もメモをとり切れないものですから、まだ、もう少し続けますけれども、ご議論がありますご意見をメール等によって、ぜひとも、事務局のほうにご連絡いただければ本当にありがたいと思っております。それでまた、こちらのほうでまとめますので、申しわけありません、少しお手が挙がったので、どうぞ。

【辻中科学官】 

 8ページの最後の研究成果の海外発信というのが、少し出ているんですが、中に翻訳のことが書いてあるのですけれども、やはり一番重要なのは、人文社会の研究が国際的な研究をするということで、そのために大学で一番特に人社系の若手の人が欠けているものというのは、やはり時間だと思うんですね。シニアの先生もそうですけれども、議論の中では、サバティカルな話も出たと思うのですが、やはり海外の研究者と、今、途上国の学者もみんなサバティカルをとって、しっかり1年間研究しに来るわけですね。そういう機会が日本の場合は、ほとんど制度化されていないというのは、非常に大きな欠陥です。武者修行型の研究なんかは、ある程度理系なんかも含めて、COEなんかでもできるようになっていますけれども、やはり1年間じっくり人文社会の研究者は、その価値の問題なんかも含めて、国際的な場で闘ってくるということを定期的にやらないと、なかなか国際的な場では闘えない。その辺はもう議論は出たと思うのですが、最後に研究成果の海外発信という形で、大量に翻訳しましょうというのは、少しすごく寂しい結論だと思いますので、国際的な場で、実際闘える人間を養成するのが、本来の筋であると。そのためには、やはりサバティカルというのを各大学で研究しているのですが、今人件費の削減の問題とか、大学自体忙しくなっていることもあって、すごく皆さん、提案してもなかなか大学の中でも人件費の問題もあるし、みんな忙しいし、いろいろやりましょうということで、実現しにくい。したとしても、その間、給与カットしましょうとかいうような厳しいサバティカル、これ、サバティカルじゃなくて、一時失業で、レイオフじゃないかと思うのですが、そういう状況です。これ、やはりここで取り上げないと、大きな枠組みでやはりこういう場でサバティカルをやらなければ日本の人文社会はだめだというのを出すべきではないかと思います。

【伊井主査】 

 それはもう非常に大事なことで、どうぞ、高埜科学官。

【高埜科学官】 

 先ほど白井先生からご発言がありましたが、この委員会の第1回目で、伊井座長から、源氏物語の話を伺えたわけですが、いわば象徴的に1000年前の文化資産というものを継承するという話があったわけで、やはり人文学の意義は、文化をこの先、50年、100年先まで継承させていくという、そういう長いスパンでのとらえ方が1つ存在しているのだろうと思います。しかし、それだけではなくて、8ページにあります近未来における直面する課題にこたえなくてはいけない。先ほど局長から何かつけ加えろとおっしゃっていただいたので、1点だけ、多分、これ、議論したら、いろんな意見が出ると思うのですが、1点だけ申し上げますが、社会保険庁のあの記録に対する認識は、今もう国民がだれもが感じているところですが、日本社会には、アーカイブスとして、これをきっちり管理していく、保存管理していくというそういう価値観、思想が極めて希薄だったわけです。それのみならず、実は今世界全体で、電子情報化した記録、レコードをどういうふうに将来にアーカイブス化していくのかという課題に取り組んでいます。この問題について、やはりまず、思想を持っていなかった上に、新しい難題を今押しつけられているというか、このことに対して何ら重点的な解決策、取り組みをやろうとしているようには見えないわけで、やはりしっかり予算をつけて、重点的に取り組んでいくべき課題として、ぜひとも、1項目今の問題、いかに記録保存をしていくのかという、その問題をつけ加えていただけたら、幸いであります。
 以上です。

【伊井主査】 

 近未来における課題というのは、まだいろいろとあるだろうと思いますけれども、これまた、考えていきたいと思います。どうぞ。

【今田委員】 

 5ページの下のほうに、さっき少し話題になりましたが、専ら伝統的な研究方法により行われている人文学、社会科学のところなのですが、その伝統的な研究方法という言葉を使うかどうかは別にして、その下のところにアメリカでどういうふうにして振興のための施策をやっているかを調べて、比較検討というのが出ているのですが、これ、別に伝統的なやつだけではなくて、人文学、社会科学一般、実証的なほうも含めて、アメリカだけではなくて、フランスどうやっているのですか、イギリスどうやっているのですか、ドイツどうやっているのですかというので、少し比較をしてみて、日本のスタンスをいいところを決めるというふうにしたほうがわかりやすいのではないかなという、今津古ぢそんな気がして、日本の中では、どうしたらいい、ああしたらいいというのも、もちろん大事なのですが、比較すると、どういうふうな特徴があるか、特徴づけができるか、よくわかるので、ぜひ、そのアメリカ、先進社会のフランス、イギリス、ドイツも含めて、人文社会科学一般の伝統的なのだけじゃなくて、先進的なほうも含めて、どういうふうな形で振興策をしているかというのを少しサーベイされるといいのではないかなという気がいたしました。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。これは先ほどもちょっと問題で提起したものでありますけれども、どうぞ、委員の方で、そういう情報を持っていらっしゃる方がいれば、ぜひとも教えていただいて、こちらのほうで全部とても把握できないところもございますので、よろしくご協力のほどをお願いをいたします。

【井上(孝)委員】 

 最後の8ページの研究成果の海外発信のところで、確かに人文学は人間の心の研究とか、日本の研究が中心かもしれませんが、社会科学では、経済のグローバル化などでも、国際学会と英語で論文を発表し、また、発表しなければもう相手にされないという時代なのに、日本語で書かれた研究成果のもので質の高いものを大量に翻訳してと、日本語だけに注目しているのですが、やはり人文社会科学の中でも、そういう英語で発表されているもので、優秀なものも海外に改めてそういう出版して、そういう情報提供するということも必要だと思うので、これ、少しそういうところを補充する必要があるのではないかと思います。気がつきました。

【伊井主査】 

 それもはなから、もう英語でやっていますからね。

【井上(孝)委員】 

 そうですね。特に社会科学はそうだと思うのですが。

【伊井主査】 

 ほかに、特にご意見がございますか。どうぞ。

【深川委員】 

 政策や社会の要請に応える研究の振興と、これ、あまりご意見がなかったように見えたのですけれども、私は、どのレベルで政策というかというのは、やはりしっかりイメージしたほうがいいと思います。というのは、結局この国でなぜ政策研究がだめで、なぜシンクタンクが育たないかというのは、非常にクリアで、役所が縦割りで単年度で動いていて、役人にとっての政策ニーズというのは、1年ぽっきりのニーズでしかないという現実があって、これは変えられないということですね。しかも、その役所のニーズとして、大きいのは、大きくそれを埋めているのは、審議会と研究所、それも役所のインハウスの研究所ですね。ここに参加していれば、その役所の持っているローデータをふんだんにいただけますので、これは、自由にできますが、そうでない人に対しては、実はチャンスは限られているというのが現状、特に社会科学、こういうのが多いと思います。役所は役所で、なぜ、インハウスがオープンにならないかと。これはもう明らかで、それぞれの政策、イデオロギーに沿った研究をやっているからです。必要な学者さんたちは、外から呼べば、それは審議会も同じですが、成り立ってしまうわけですね。なので、ニーズがない。少なくともその1年ぽっきりのどたどたとした政策ニーズに対するものを、大学教員にアウトソーシングしても、役所のニーズは満たされないので、これは財務省が一番よく知っていると思いますから、多分あまり魅力を感じてもらえないと思います。どたどたしていますから、1年以内にすぱっと研究成果、出てこなきゃいけないのですね。でも、大学のシステムというのは、そうではないですから、やはり大学がやっている政策研究というのは、むしろ政策そのものではなくて、そのインプリケーション、重要だと思いますけれども、もっと政策を方向づけるような、やはり学術の本来のテリトリーというのは、基礎研究とか、学術研究なわけで、役所のインハウスにおもねってもしようがないわけで、そこをやはり大学でできる政策研究というのは、違う付加価値がある。例えば多分政治的な中立性とか、役所のイデオロギーからの自由さとか、主流の理論に立脚しているかとか、そういうところというのは、大学でしかつけられない付加価値なので、そういうふうに記述しないと、現実にはなかなか沿わないと私は思います。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。どうぞ。

【徳永研究振興局長】 

 深川先生、これが、要するに、いわゆるポリシーサイエンスということで、書いているわけではないのだと思うので、多分、今ここで政策や社会の要請にこたえる研究と言って、ここで言っているのは、いわば政策課題に基づいて、例えば5年スパンぐらいでやるような研究のことを言っていますから、いわゆる公共政策学そのものの研究のことではないと思いますので、いわば必ずしも、役所のインハウスの研究でやっているような研究ではないところの、いわばそれに使える、そういう課題意識に基づいて、5年とか、そういうスパンでやっていくような学問的な中身のある研究だということだと思いますので、もし、いわゆる政策科学的な内容のことを直ここでやるということでは、少し違います。もちろんそういうことのいわば研究ということも実は社会科学の大きな課題ではございますが、もし、そちらのほうの記述が必要であれば、それはきちっと書き分けていく必要があると思いますけれども、その点、多分担当者のほうは、公共政策、政策科学的なことを書いたのではないと思っておりますけれども。

【伊井主査】 

 よろしいでしょうか。過去では、イスラームについての研究というもので5年間今やっているというようなこともあるものですから、人文学研究の広い視野で長いスパンでやっていこうということで書かれていると思いますので。
 佐々木先生、何か今までお聞きになって、ご感想でも何かございますでしょうか。

【佐々木分科会長】 

 大変ご苦労さまで、きょうは取りまとめだというので、来いというので、来ました。そろそろ取りまとまったのかなという感じがしないでもないのですけれども、もう一段ポリッシュしていただくということで、先ほど局長からお話がありましたように、何かの形でいわゆる支援のコアをつくるアイデアを出してもらおうということで、学術審議会全体として、分科会として全体として動いているという中のこれは一環ということだろうと思っております。いろいろ魅力あるアイデアを出そうと思うと、いろいろ障害も出てきたり、こちらは非常に予算当局等々との関係で、十分読んだつもりが、全然読んでなかったりとか、いろいろ、先ほどご注意をいただいた点も場合によっては出てくるかもしれません。しかし、基本はやっぱり学術研究という基盤の上で何ができるかということについて、足が地に着いたことをやはりきっちりやるということであろうかと思います。そういう中で、どのようなレーバンシーみたいなものを効果的にメッセージとして伝えられるかということについて、きょうも大分絞られてきたかなと思いますけれども、もう一段ひとつご苦労をおかけすることになるような形勢だなと思って、先ほどから見ております。何かえらいところに来たなというような、そもそも、人文学、社会科学とは何ぞやという話から始まりまして、いささか少し戸惑ったわけでありますけれども、局長からもお話がありましたようなことで、もう一度頭の整理をし直して、何か読ませる文章にするべく、もう一段のご努力とご貢献をいただければという感想を改めて持ったところでございます。本当にご苦労さまです。よろしくひとつお願いいたします。

【伊井主査】 

 人文学とか、社会科学は非常に重要であるということはだれも認識しているわけで、財務省だって反対しないわけですけれども、いざ予算化するとなると、これはなかなか、どういうふうに説明するのかと。大事だ、大事だと言ったって、これは予算化できないものですから、何とかもっともらしいことを書かなくてはいけないという背景があるものですから、こういう形で今まとめさせていただいているというところでございますが、きょう出ました意見すべて取り込むわけにいかないだろうと思いますが、ぜひとも、これはもう外すなとか、ここはこういうふうに書いてくれというようなことがあれば、何らかの形でご意見をいただければと思っております。そういう形で、最終的に、大体きょうほとんど大体合意ができているかなと思っておりますので、次回は、これをまとめたところでお認めいただいて、概算要求のほうに利用させていただくということで、ご理解賜ればと思っております。特に今こういうことだけは注意しろということがございますでしょうか。どうぞ。

【立木主査代理】 

 先ほど今田委員が指摘され、首尾一貫性ですけれども、これをやはりきちんと知っていただかなければいけないんではないかな。我々がするときはです。この意義、特性と、これが受けて、この5ページの支援推進政策の基本的な考え方に来るわけですね。その基本的な考え方の具体的なのが、6ページ以下と、こういうふうな大きな枠組みでいきますと、これがやはりぼんやりとしてでも、対応していなければ、今のところ、これ、少し対応が非常に見えるのが難しいという、特に基本的な考え方というのが、これが次のに少し結びついているかもわからないですけれども、前の特性とか、意義とか、そういうのに結びついてない。今佐々木分科会長の指摘もありました、読ませるようにというようなところは、今までは、あれもこれもという、いろいろな最大公約数でやられておりましたけれども、委員会での最大公約数での報告というのは、論理のほこりが必ず出ますので、一応そういうふうなのを切り捨てて、首尾一貫性ということをぜひお願いしたいというのがあります。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。意義、特性、そして、振興策ということで、首尾一貫した形で少しまとめさせていただこうと思っております。1人で書いてしまうと、楽なのですが、いろいろ皆さんのご意見を何とか入れたいというようなところで、なかなか難しいところもございますが、この議論は、こういう形で収束をする方向でよろしゅうございましょうか。どうもご協力のほどありがとうございます。きょうの議論を踏まえまして、審議のまとめ案を修正したものを次回の委員会で改めてお示しをして、取りまとめていきたいと思っております。最終的な「てにをは」を含めて、それなどは、私のほうにお任せいただかなくてはいけないだろうと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
 それでは、2つ目のことについて、ちょっと簡単に申し上げます。これまで、この委員会では、人文学及び社会科学の学問的特性とか、社会的な意義につきまして、ご意見をいただいたわけでございますけれども、それは既に体系された学を前提としているわけであります。一方、これまで人文学だとか、社会科学の枠組みにとらわれない学問領域を取り扱う学部などが私立大学を中心としてあらわれてきているわけでございまして、いわば新しい学とも言うべきものだろうと思うのであります。これまでの諸学の知見を活用しながら、現実社会における実務の要請にこたえることを目的としているのが、その特徴でありますが、本日は大学等の状況について、事務局から説明をしていただき、簡単にご紹介する時間をいただければと思っております。とりわけ、近年大学等におきましては、新しい学を冠にいたしました学部等がどの程度あらわれているかということをまとめたものが資料の3でございまして、これにつきまして、少し簡単に事務局のほうからご説明をお願いいたします。

【高橋人文社会専門官】 

 資料の3に基づきまして、ご説明させていただきます。時間がありませんので、簡潔にいたします。
 これまで、研究方法につきましては、委員の方々、有識者の方々が、プレゼンテーションなどいただいてきましたが、次に、いわゆるこれからご紹介します子ども学とか、観光学とか、そういった新しいタイプのくくりをしている学問について、次、プレゼンテーションなどにつなげていこうという流れの中で、総論的に資料3という形で少しまとめてみたところでございます。伊井主査からもございましたとおり、私立大学等を中心にしまして、主に実学的な観点からいろいろな、いわゆる縦割りの諸学の知を結集したような形で、実学的な形で、新しいタイプの学問の名を掲げた学部などが設置される傾向がございます。その大きな方向性だけご紹介したいと思います。資料3の1ページと2ページということになりますが、趣旨は今述べたとおりでございますので、割愛します。2で、「新しい学」の類型というところがございますが、ここに幾つか例が掲げております。例えば子ども学ということで、保育、幼児教育、子育て支援などを担う人材の養成を対象とする学問ということで、教育学や保育学、児童福祉学などの知見を集めたような、そういったものでございます。例として、目白大学であるとか、京都造形美術大学などでこういった学部、学科があるということでございます。
 それから、2つ目は、観光学、それから、3つ目がキャリアデザイン学とか、ライフデザイン学というカテゴリーがございます。それから、4つ目がデザインとか、表現系の学ということで、デザイン関係の写真とか、映画とか、そういった関係の学問、それから、あとその他ということで、いわゆる国際コミュニケーションとか、あるいは中国ビジネスとか、特定の地域を対象とした実学的なものが5つ目のカテゴリーとしてあるかなと思っております。
 2ページが、新しい学を冠した学部学科の設置状況ということで、おおむねこんな形になってございます。3ページ以降が平成18年度、19年度、20年度の大学の学部等の設置状況ということで、網をかけた部分が一応事務局のほうで見て、いわゆる新しい学とでも言うようなカテゴリーでまとめられるようなものではないかということで、網かけをしております。こちら参考にしていただければと思います。
 以上でございます。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。
 今、ご説明がありましたように、全国の私立大学を中心としまして、新しい学問というのか、実学的な方向の大学の学科の設置がこういうような傾向にあると。こういうことを知っていただいて、我々のこれからの人文学及び社会科学の研究とどうかかわっていくのかということで、参考に供するという次第でございます。これ、ごらんになって、何かご意見でもございますでしょうか。ご質問があれば、よろしいでしょうか。これを見ますと、何かよくわからないようなところもいっぱいあるのでありますけれども、どんどんと人文学と先ほどありました伝統的な学科がなくなって、こういうふうな新しい分野ができていくという傾向にあるのかなというようなことを思ったりもするのですが、特にないようでございましたら、そろそろ時間もちょうど数分前になりましたので、本日の会議はこのあたりで終わらせていただこうと思っておりますが、次回の予定等につきまして、事務局のほうからよろしくお願いをいたします。

【高橋人文社会専門官】 

 次回の日程でございますけれども、資料4にございますとおり、次回は8月の22日水曜日15時から17時、学術総合センターを会場として開催を予定してございます。詳細等の案内は、また改めてお知らせ申し上げます。次回は、学術研究推進部会との合同という形になろうかと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 それから、本日ご用意させていただきました資料につきましては、封筒に資料を入れていただいて、机の上に置いておいていただければ、後ほど郵送させていただきたいと思います。ドッヂファイルはそのまま置いておいていただければと思います。
 以上でございます。

【伊井主査】 

 ありがとうございます。それから、先ほど申し上げましたように、本日の議論のまとめを、まとめなくてはいけないので、また、皆様のご意見をいただくというようなこともあるだろうと思っております。どうぞよろしくご協力のほどお願いをいたします。次回は、8月の22日ということでございます。ありがとうございました。本日の会議は、これで終了といたします。皆さん、どうもありがとうございました。

 ―― 了 ―― 

 

(研究振興局振興企画課学術企画室)