資料3 アルマ計画中間評価報告書骨子(案)

はじめに

これまでの経緯

 日本(国立天文台)、米国(国立科学財団)及び欧州(欧州南天天文台)の3者の国際協力プロジェクトで、銀河や惑星等の形成過程を解明することを目的に、口径12メートルアンテナ(68台)及び口径7メートルアンテナ(12台)の高精度電波望遠鏡等から構成されるアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計の建設・運用を行う。
 本計画については、平成12年12月に文部省学術審議会において「我が国における天文学研究の推進について(報告)」がなされ、「早期の実現を期待する。」との評価があり、平成15年1月の科学技術・学術審議会による事前評価において、日本のアルマ計画参加が了承されたことを受け、我が国は平成16年度からアルマ計画に参加し、建設に着手した。

本作業部会の設置

 現在、平成23年度の本格運用を目指して、日本が担当しているアンテナ、受信機及び相関器の製造等が進められ、アンテナの一部及び相関器は既にチリの現地に設置され、初期機能確認試験を実施しているところである。
 このような計画の進捗状況等について、前回の事前評価から3年以上が経過していることから、学術審議会において評価作業部会を設置し、事前評価における留意事項についての対応、アルマ建設計画の進捗状況、アルマの国際的運用計画、国際協力の状況について評価を行い、ここに結果を取りまとめた。

1.アルマ計画の意義及び進捗状況について

(1)アルマ計画の意義

 アルマ計画の実現によって、近傍の星形成領域にある原始惑星系円盤の構造が詳細に観測可能となり、円盤内の惑星の形成過程が初めて明らかになる。
 世界最先端の装置の開発・製造によって、研究が大きく進展し、天文学分野への国民の期待に応えられることができるものである。
 世界最高水準のプロジェクトに参加し、世界中に日本の科学力や技術の力量を示すことにより、国民の科学技術に対する関心を高めるものである。
 学問的にも社会的にも極めて重要な意義を持つプロジェクトであることに変わりない。

(2)アルマ計画の進捗状況

1.望遠鏡及び観測装置

 12メートルアンテナは4台すべて計画通り設置し、アンテナ性能の確認結果として、米欧に先んじて電波写真の撮影に成功している。
 バンド4(ミリ波)、バンド8(サブミリ波)受信機は、アルマ要求仕様をクリアし、現在、量産モデルを製造している。なお、すべてのバンドは、合計500台以上となるが、そのうち日本は、バンド4、8、10を担当している。
 平成16年度にACA用高分散相関器の製造を開始し、平成19年12月には、チリ現地山頂施設(標高5,000メートル)に設置を完了している。

2.運営

 運営体制は日米欧が協力して、アルマ評議会、アルマ科学諮問委員会、合同アルマ事務所などの組織が整えられている。日本として積極的な運営の参画を行っている。

3.国際協力

 平成17年9月、日本、中国、韓国、台湾の4か国・地域の天文学研究機関による、「東アジア中核天文台連合」を結成し、アルマを活用した研究協力について協議を実施している。
 また、平成22年度に東アジア地域を取りまとめる地域センターの完成を目指し、観測棟の建設を行う。

(3)事前評価における留意事項についての対応

  1. 平成16年度に予定されている大学共同利用機関の法人化に当たって、計画を着実なものとするため、基礎研究開発や参加計画の運営に関して十分に、法人組織における理解と協力を得つつ推進すること。
    (対応状況)
     平成16年4月に国立天文台は自然科学研究機構(以下「機構」)の一組織となったが、アルマ計画への参加は機構においても承認され、平成16年9月、自然科学研究機構(NINS)、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)により、日本・北米・欧州の三者によるアルマ共同建設に関する協定書が締結された。
     アルマ評議会における計画の意思決定への参加、建設への主導的参加、運用計画策定への参加等、米欧と対等の関係で計画を進めている。
  2. 参加計画の柱となるアタカマコンパクトアレイシステム、受信機及び高分散相関器の研究開発、整備に当たっては、我が国の参加の意義を十分に踏まえて、研究開発の進捗状況、全体の運用計画も考慮しつつ、我が国の特色を活かした優先的整備を図ること。
    (対応状況)
     ACA用12メートルアンテナ、高分散相関器についてはチリ現地へ設置し、天体からの電波の初受信に成功する等、アルマ仕様を満たすことを米欧に先んじて実証した。また、バンド4、バンド8、バンド10受信機においては、我が国が野辺山宇宙電波観測所で培ったミリ波天文学の技術を基礎に、開発・製造を進めている。
  3. アルマ計画に参加するに当たり、計画の進展に並行して、将来的なアジア地域における運用・協力体制の構築に最大限の努力をすること。
    (対応状況)
     平成17年9月、台湾の中央研究院天文及び天文物理研究所と締結した協力協定に基づき、アルマ計画の受信機システム製造やコンピューティングの分野で協力を推進することが合意された。
     アルマ評議会の下部組織であるアルマ科学諮問委員会において、アルマにおける科学研究の方針が議論されている。東アジアにおいては、平成18年10月、東アジア科学諮問委員会を設立し、アルマ科学諮問委員会に対する東アジアの意見をとりまとめる協力体制を構築している。
     東アジア地域の天文学研究に対する取り組みを協議する東アジア中核天文台連合(日本、中国、韓国、台湾の4か国・地域の天文学研究機関の代表により結成)において、アルマを活用した研究協力についても、日本の提案により協議することとなった。

(4)総合評価

 米欧に2年遅れて参画した日本であるが、

  • 米欧に先駆けて月の電波写真を撮影、12メートルアンテナの目標性能を確認
  • 運営体制についても、分担割合に等しい規模で参画
  • 平成15年1月の事前評価における留意事項への適切な対応

 時間的遅れを取り戻した努力に敬意。今後も順調に進捗するよう注力されたい。

2.本格運用に向けた課題について

 アルマ計画に投下する大きな資源が最大限の効用をもたらすような取り組みが必要である。

(1)東アジア地域のとりまとめ

 科学者が現地に直接赴かなくとも、観測提案、データ収集をできる遠隔観測を特徴とするアルマ計画では、近隣諸国の観測参加・支援を取りまとめる各極に置かれる地域センターの存在が重要であり、運用開始時には、東アジア地域の中核的拠点である、東アジア地域センターとしての役割を果たせるよう、建物を含めた体制の構築を計画通りに行う必要がある。

(2)協定に基づく運営経費の確保

 全体計画に支障が生じないよう、年度計画の進捗に伴い、必要となる運営経費をしっかりと確保し、着実な計画遂行に注力することが必要である。

(3)幅広い学問分野への波及のための工夫・努力が必要

 アルマ計画での成果は、天文学分野にとどまらず、さまざまな分野に広げていくことが必要なことから、今後、いろいろな研究コミュニティに広く周知するべく、シンポジウムの開催などの広報活動を全ての研究分野に対し、行っていくことが必要である。

おわりに

 アルマ計画が所期の科学的意義を達成するためには、技術面での下支えが極めて重要であり、技術面において日本の独自性を発揮し、プレゼンスをしっかり示すことが肝要である。具体的には、受信機や望遠鏡などの装置開発においても、日本の技術力において可能な限り最新・最高の技術をもって製造・設計にあたることで、本格運用時に向けたイニシアティブをとっていく必要がある。そのためには、研究機関としての取り組みのみならず、オールジャパン体制での研究コミュニティの取り組みが重要である。

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)