学術研究推進部会 アルマ計画評価作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成20年5月16日(金曜日) 13時~15時25分

2.場所

文部科学省 16階特別会議室

3.議題

  1. アルマ計画の概要等について
  2. これまでの評価について
  3. アルマ計画評価作業部会の進め方について

4.出席者

委員

 飯吉主査、井上委員、鳥井委員、柴田委員、永原委員、牟田委員、山本委員

文部科学省

 片岡参事官、笹川宇宙科学専門官、他 関係職員

オブザーバー

(科学官)
 福島科学官
(国立天文台)
 観山台長、立松アルマ推進室長、井口アルマプロジェクトマネージャ

5.議事録

 会議に先立ち、主査代理として、飯吉主査より鳥井弘之臨時委員への指名があった。
 次に事務局より、本作業部会の位置付け・経緯等についての説明があった。

議題(1)~(3)について国立天文台及び事務局より説明があり、下記のような質疑応答がなされた。

【井上委員】
 日米欧の三者が対等に近い、ある意味では新しい国際協力の形だと思う。ただし、日本が主導権をちゃんと持つというか、プレゼンスを示す部分が欧米の後ろになってしまうところが心配である。日本のプレゼンスというのはどういう位置にあるのか。

【観山台長】
 アルマボードという最高決定機関で決議している。当初に比べ、現在は日本の負担である25パーセントに見合った形となっている。
 また、小委員会にもそれぞれ参加している。さらにチリ現地に、ハワイと同じような事務所を置き、常時滞在する体制を作った。

【井上委員】
 日米欧の3者の中で、やはり技術があってこそ発言力が増すというようなことがあると思うが、どのような状況か。

【観山台長】
 サブミリ波は、非常に技術的なスペックが高い。受信機の950ギガヘルツのスペックに見合う技術力は、世界のどこにもなかった。
 バンド10に関しては始めるときも、委員の皆さんから大丈夫かという危惧の声があったが、厳しい評価を完全にクリア出来そうなので、欧米も非常に評価しており、日本の技術力については評価してくれていると思う。

【鳥井主査代理】
 アルマ計画に、他の国が参加したい場合、運用からの参加とプロジェクト自体に参加という部分があると思うが、その場合の体制はどうなっているか。

【観山台長】
 今は主として建設中なので、建設の期間から参加したいという具体的な要請はない。
 例えば、受信機は七つの種類を作っているが、当初の計画では10種類であったので、いろいろなグループから提案は出ているが、正式には予算を確保し、持ってくるというところは、来ていない。
 運用に関しても、現在は来ていないが、電波望遠鏡の実績があり、今まで非常に高いレベルにあるオーストラリアが、まだ参加していない。今後、運用段階で入ってくることも予想される。
 また、中国やインドも、参入がありえる。4領域、台湾、中国、韓国、日本の台長が年1回会合を持つ、「EACOA」という場があり、いろいろな協力協定を議論するが、そこでも話題に上がっている。現在、台湾は具体的に参加しているが、韓国や中国も、実際に運用段階になって、すばらしいデータが出始めれば、いろいろな形で運営資金を持ってくると思う。しかし、そこまでフォローする段階には至っていないため、実際の運用の段階で観測時間を確保できるかは、アルマボードでの議論になると思われる。

【牟田専門委員】
 運用経費が年間30億円ほどと記載してあるが、この中には人件費が含まれるのか、詳細を御説明願いたい。

【観山台長】
 人件費については、現地雇用職員は、3カ国の配分比率に合わせた形でここに含まれている。ただし、国内の研究者・技術者・非常勤職員はここに含まれていない。
 年30億円の内訳は、現地でアルマ観測所を動かす総経費の25パーセントであり、こちらで製造した機器の保守費用も含まれている。
 また、それぞれの国で観測棟の運用経費も含まれるので、現地で動かす経費、保守費用と合わせた3種類も含めて30億円になっている。

【牟田専門委員】
 例えば国立大学法人の大きなクラスは、毎年300億円程度の運営費交付金をもらっているが、そこから考えると10分の1程度となるが、国の方では易々と出してもらえそうな感触があるか。

【観山台長】
 今はなかなか厳しい状況だが、しっかりと、またこちらの委員会でも、しっかりとしたサポートをしていただければ、我々が獲得する一つの助けになるかと思う。

【鳥井主査代理】
 天文の観測技術にも寿命があると思うが、この干渉による観測の寿命及び機器の寿命をお教え願いたい。

【観山台長】
 現在、10年観測している「すばる」と同様に考えると、望遠鏡そのものは30年間。また、野辺山の45メートルの望遠鏡は、20数年観測している。
 アルマの望遠鏡自体は、「すばる」や野辺山と同規模であり、30年は維持しようと思っている。
 ただ、「すばる」も同様に光を受けるカメラのような部分がある。これは世界との競争で、日進月歩で進んでいる。各国も、望遠鏡はそうそう簡単には作れないので、約30年のサイクルで作るが、観測装置は、例えば「すばる」の場合、10年たってやっと新しい二、三機がだんだんできているので、5年程度の周期で動かしていくことが予想される。
 アルマに関しても、先述のとおり、現在未作成のバンドをどこかが担当して作るという提案や、現在作成中の素子も時代に応じ進歩していくので、今の感度よりも10倍ぐらいのものができた場合、その技術に応じて取りかえていくことになる。ただし、アルマの場合、「すばる」とは違い、対応する80台すべての受信機を製作するする必要があるので、経費的にも、能力的にも相当労力を伴う。ただし、学界からの要望は来ている。

【柴田専門委員】
 先ほどの、国際協力の中で日本のプレゼンスをいかに出していくかという事に関係するが、望遠鏡が完成した後、実際に運用を始め出したときに、欧米は観測時間の確保などの主張が強くなることが予想される。
 その中で日本もしっかり時間を確保し、科学的な成果を出すことが重要なことではあるが、その仕組みと準備状況を確認したい。

【観山台長】
 初めは各建設分担の割合に応じた観測計画を考えていたが、そのようにすると、重複した研究計画の場合は分担できないので、個々の研究計画や要請に対応する場を一つで行うようにした。その中で寄与度に応じた分け方を複雑だが作り、個々の年ではなく数年間の平均では寄与度に応じた割り当てとなるような仕組みを考えている。
 また、銀河や星形成、惑星形成など、様々な研究領域が東アジアとして、事前に勉強会などを開き、対応していく方策を期待している。

【柴田専門委員】
 非常に国際的で、平等な仕組みの中で競争を行うことは、理解したが、これは、初期運用の段階から始めるのか。

【観山台長】
 初期運用には、望遠鏡の性能確認を行ったときに、観測結果が得られて科学的成果に繋がる場合と完全に公開して形で企画競争を行う2種類が考えられる。

【福島科学官】
 先ほど委員が言われたことは非常に重要で、従来は天文学を進める上で、波長で縦割り型であった。例えば、私は電波を観測する人、私は光の望遠鏡を使う人、私は理論で計算、シミュレーションする人というように、わりと分野別であったが、アルマのように、本当に世界で一つしかないような装置ができて、それをどうやって使うかというのは、逆にいうと、個別の分野で競争していたのでは特色が出ない。
 例えば、私は光もやってきて、「すばる」でこういう結果が出たので、アルマで見たい。あるいは、N体シミュレーションではこういうギャップができるというのが予想できるので、それを確かめるために実際に惑星系を見てみたい。もう少し広い考え方で、天文学にとどまらず、地球惑星分野の人が、すぐ近くのちょっと違う天体を見てみたいということがありえる。アルマというのは、一つの道具なので、道具を作った人たちだけのために使うのではなく、もっと広い意味で考えて、広い科学を進めるという考えであれば、もう少し観測時間をとるとかという日本のプレゼンスは、あながち難しいことではないような気がする。

【牟田専門委員】
 私は高エネルギーの分野が専門だが、加速器は世界に幾つかしかなく、まさにこれに似た状況である。高エネルギー実験を行っている研究者を見ると、機器稼働の間に、膨大なデータが溜まっていく。それを分析することで、いろいろな論文をたくさん書けるという仕組みになっている。アルマを見ていると、それにだんだん近づいてきたなという印象を受ける。

【観山台長】
 素粒子実験の場合は、データを後で使って、実際に実験には参加しないけれども、たくさん論文が出ている。このように新しいデータベース天文学というものが始まると思う。これは一部始まっているが、天文の場合は難しいのは、例えば観測しているときに雲が流れていっているとか、いろいろ環境の状況というのが非常に正確に記録されていないとならない。それから、観測装置の状態の記録もなくてはいけない。
 こういった条件などの付帯的なデータも1年後には作るよう設計している。
  1年後に、観測者以外に完全にオープンになるので、星の研究者は星のために作ったけれど、その背景に映っている銀河を調べたい人たちがその目的で使うことが可能で、銀河のいろいろな研究をしている人たちは、前方に映っている星や成分の状態のデータにも使うので、いろいろな形で、いろいろな分野の方に利用できるようになる。

【牟田専門委員】
 小さい目的のために、小さいグループが観測時間の取り合いをするというようなことは、段々なくなってくるのではないかという理解でよいか。

【観山台長】
 結局、ある領域のこういう深さというか、こういう実験で作ったデータがあるかどうかというのを簡単に探せるようになれば、実際の観測はしなくても、それだけで論文を書けるという世界になると思う。

【井口(国立天文台)】
 似たような背景であるアメリカ国立電波天文台が作ったVLAという、アルマより低い周波数であるが、25メートルの望遠鏡が27台揃っているものがある。
 VLAも、最初は小さなグループが、いろいろな提案を出して観測していたが、観測の結果が揃ってくると、より大きな研究を行うようになっていった。
 これは時代の流れと共に構築されていくので、これだけ特別な望遠鏡であると、いろいろな可能性も考えられる。
 また、宇宙観とか世界観というものは、いろいろなデータで補完することによって劇的に変わっていくので、おもしろさがあると思われる。

【山本専門委員】
 話が戻るが、アルマというのは科学的には天文学のみではなく、ほかの分野もということがしばしば指摘されている。また、実際にそのとおりだと思われる。ただ、完成してから、他の研究領域に考えてくださいといっても、それはとても遅いと考える。
 例えば、天文学の電波以外の分野、惑星科学、地球科学、分子化学とか、そういう分野に対する何かアプローチ、あるいは宣伝というものを、これまでどういった形で行ってきたか。あるいは、今後どういうふうに発展されるかを御紹介願う。

【立松室長】
 今年の5月末に日本地球惑星科学連合の大会があるが、アルマは毎年ブースを出している。
 今年はアルマの目標、運用体制、サイエンスについて説明するので、惑星科学の方にも宣伝をして、そういうところでいろいろなディスカッションができればと考えている。物理学会の方にも、アルマから発表を出したり、いろいろ努力しているということを行っていて、いろいろな分野の人と、アルマでできるサイエンスを議論しようという努力をしている。
 多分、観測が始まる前に、我々ワークショップ等々も活発に開催して、そのようにアルマを使った、例えば惑星科学とアルマの連携とか、分子化学とアルマとの共同、そういうのをスコープにして、いいサイエンスが生み出せるように努力していくことが必要だと思い、またそのように予定している。
 また、アルマで観測する時、分子のデータのカタログというのが非常に重要で、それはこういう分子のラインがあるという実験室のデータがないと、観測がうまくいかない。その点では富山大学の小林かおり准教授などのグループに、分子のカタログ作りを天文台と共同してやっていただいている。そういう面では共同というのが進められているということを報告させていただく。

【観山台長】
 現在もいろいろな働きかけは行っているが、さらに努力し、先ほど言われたように、分子化学、星間科学の分野や惑星科学などに働きかけたい。例えば、我々の太陽系のおもしろい天体としては、木星の衛星で、火山を吹き出している衛星があるが、アルマはものすごく解像力があるので、火山の根元だとか、どういう物質が吹き出しているかということがわかるので、そういう分野の研究者も、宣伝すれば興味を持ってくれるのではないかと思っている。引き続き働きかけていくが、相当広範囲に活動すると、まだまだおもしろい提案がたくさん出てくると思っている。

【鳥井主査代理】
 例えば、加速器の分野でも同様と思われるが、最初はその分野の専門家の方のみ、自分達ものだという考えがあるが、次第に広がってくる。例えば理研のSPring-8なども、いろいろな努力をされることによってコミュニティーが広がっていき、また実際にコミュニティーが起こってもいる。

【永原専門委員】
 建設計画そのものについてお伺いしたい。先ほどのお話を伺うと、バンド素子の開発も順調に進んでいて、今日の説明から推測すると、あとはもう作るだけのような印象であった。これはそういう理解でよろしいか。技術的な問題は、基本的にクリアできているということか。

【立松室長】
 一番難しいのは、バンド10の受信機の性能で、周波数のある帯域で、アルマのスペックを満たさなくてはいけない。ピンポイントの周波数では目処が立って来たが、まだ努力が必要だと思っている。

【永原専門委員】
 そのほかの部分は、全体目標でいうと、当初の建設計画そのものに関しては、基本的にクリアしているということか。

【井口(国立天文台)】
 一つだけを作るのであれば、既に世界最高能力のものを示せているが、それを80台量産することは未知の領域なので、本当に性能を維持できるかは、作りながら実現していくところだと思っている。バンド10についても、引き続きたくさんそういうところがある。

【観山台長】
 我々の初めての試みは、各受信機80台ずつを3種類作るということである。量産というのは、一応1千台から1万台以上を量産というかもしれないが、中途半端な量産をし、なおかつ性能を維持しなければならない。内部製造をしているので、30年間の保守も行わなければならない。

【井口(国立天文台)】
 受信機そのものの仕様は、1台につき15年間壊れないように作る予定である。ところが、日本はバンド4、8、10のすべてを足すと300台近く作る。そこから推測すると、年間20台不具合が生じる可能性がある。

【鳥井主査代理】
 全体計画に遅れを生じることはないのか、先ほど、相関器というものは、10年ぐらいたつと更新の必要が出てくるという話だが、保守経費の中に、減価償却を見越した費用は入っているか。

【観山台長】
 今までの大型装置の反省も踏まえ、遅れが生じないよう、足並みを揃えて行ってきている。
 また、減価償却については、一応の形として一般企業と同様に、資産は減っていくことになる。
 しかし、技術や観測方式の発展などにより、次の装置を開発し、更新する必要が出てくるので、減価償却を見越した経費の充当という意味合いではないが、一般企業でいう減価償却費に相当していると考える。

【永原専門委員】
 質問が二つあり、一つ目の質問は、本格運用の際に、国際的な評価システムで予算などが決定されるということだが、そもそも部分運用期の予算みたいなものも、外部評価委員会で決まるのかどうか。
 二つ目の質問は、アルマ計画における予算要求の姿勢についてであるが、橋やトンネルと違い、アルマは作っただけでは、ただの箱であり、国民にとっては何の価値も持たない。
 国際的責務という問題が非常に強調されているが、現在の日本の厳しい経済状況の中で、他国の土地に資金を投入するのだから、観測を行う建物も含めた運用経費も必要であり、成果を国民に還元していくためには、日本も投資に見合った観測を行い、学術的な成果を出すことが必要であるという主張を、外に対してもっと積極的に行っていくことが重要だと考える。

【観山台長】
 部分運用期の予算に関しても、アルマ評議会で決定していく。
 次に、主張については、基本的には国立天文台ひいては、自然科学研究機構において、積極的に訴えかける必要があると考える。例えば、総合科学技術会議(CSTP)でも事前評価をされて、しっかりとやるべきであるという評価をいただいているので、作ったものを有効にして、なおかつ世界に対して、日本の科学、学術を示すということは、国のレベルの向上にもつながるわけで、国としてはしっかりと支援していただくことが重要だと思っている。
 このような理解の上で、国家間での取り組みではなく、自然科学研究機構とアメリカ国立科学財団(NSF)、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の三者が、それぞれ有効に運用していくことが責務であると思っている。

【飯吉主査】
 こういう大きな国の予算をつけて、実験、研究をやる限りは、日本独自の研究目的というのがあって、それをしっかり達成するということが基本にあると考える。
 このアルマ計画は、割合と各国が平等に、研究計画も研究結果も共有しながらやっていきましょうという考えに見受けられるが、大きなプロジェクトをやる意義をお教え願いたい。

【観山台長】
 例えば、非常に端的に言うと、これはミリ波サブミリ波の望遠鏡を作るということになっているが、サブミリ波の望遠鏡を作りたいという提案は、我々の独自の提案である。
 当初はアルマというのは、スペイン語で心とか魂とかという言葉だが、Atacama Large Millimeter Arrayという名称の省略形である。つまり元々は、サブミリは入っていなかったが、日本が参画した時から、Atacama Large Millimeter/submillimeter Arrayという、サブミリメーターを公式名の中に入れた。これは、我々の独自のものである。
 もう一つは、そういう波長を使って何を見るかという独自性としては、我々の惑星系を作る分野は、京都大学の林忠四郎名誉教授を中心とした惑星形成論が京都モデルとか、世界的にも評価されている理論的な枠組みがある。
 また、東京工業大学の中澤清教授などから惑星科学にも広がった分野がある。
 野辺山や、「すばる」などを使って、世界も注目するような分野である惑星科学、惑星形成論に関するサイエンス分野は我々も非常に大きなアイデアであり独自性だと思っている。
 また、サブミリメーターの素子を作ることはかなり難しいが、素子開発の経験が野辺山であるので、そういう点では非常に強い独自性である。
 実際の成功例というのはまだまだ少ないが、受信機を作成していく上で、大きなスピンオフが期待できると思っている。

【飯吉主査】
 安心した。要するに、そういうものをもっと表面に出して、やはりこれだけ大きなお金をかけ、国民の理解を得ようというのであれば、これだけすばらしい実験結果ができますよと。もちろんこれはやってみないとわからないことではあるが、夢のようなものをやっぱり出していただいて、それがちゃんと確保できるような、そういう実験ができるような運用を、ぜひ主張をしていただいて、そういう意味でのプレゼンスをしっかりしていただきたい。

【鳥井主査代理】
 これまで難しい技術開発をしてきて、こういう波及効果があったとか、これを運用していって、こういうことをどんどん改良していくと、こういう波及効果があるというようなことも、少し訴えられた方がいいような気がする。

【飯吉主査】
 計画の参画は遅れたけれども、既に技術の面で、世界に先駆けて、アンテナも現地に据えつけているよといったことは、大いなるプレゼンスを出したことになるので、そういうものをこの中に盛り込んでいただく方が良いと思う。

【山本専門委員】
 私、わりと分野に近い方で、実際にアルマのユーザーになるだろうという形で、電波の観測をしている。そして、最近結構いろいろな国際会議に出ているが、やはり各国とも、非常に準備に熱を上げている。それも、単なる研究会ではなく、アルマを特に意識して研究会等がオーガナイズされている。それは本当にここ数年の特徴。
 そういう中にあって、日本はポテンシャルはあるが、このまま放っておけば成果が出るかと。決してそうではないと思っている。早期に、先ほど来話題になっている部分運用の時点から、研究者が共同できるようなシステムや支援がなければ、非常にビハインドを持ってしまう可能性を感じる。そういう意味で、初期運用の時点から戦いは始まっていて、実は今からもう始まっているが、できたときには、誰が何をやるか決まっているように思える。
 そういう世界なので、初期運用だから、そこは取りこぼしても本格運用で挽回するという意識では、とても世界に伍していけないだろうという印象を持っている。

【井上委員】
 今のことに多分関係すると思うが、なかなか我々、天文学の分野とか、これだけ大きいものを持っていくようになったときには、今度は後ろ側の利用、研究者が大型装置に対してかかわっていく体制みたいなものを一緒に考えていかないといけないような気がしている。しかも、こういう文科省の評価というものとは別の、何かコミュニティーとしての評価をやっていくようなものを、研究者自身が作っていかないといけないのではないかと考える。我々自身がやっているスペースでの活動も、同じようなことを今感じていて、その辺を一緒に考えていきたいと思う。

【観山台長】
 全く同感で、これは宇宙科学本部というか、JAXA(ジャクサ)を中心に、今までエックス線や赤外線も、太陽の「ひので」も同様だが、我々は、「すばる」をはじめ、野辺山などでも、世界に対して非常にレベルの高い装置を持ってきたということは、基本的に、研究者間の連携を深めて、天文学だけではなくてもっと広い、例えば、「すばる」は、ダークエネルギーや素粒子などの分野にも波及するような研究も展開できるので、オールジャパン・オール東アジアで頑張るというような形の組織作りをしなければいけないと思っている。ほかの分野を交えて、また、他の波長分野も交えて、欧米でも随分準備しているので、これはしっかり取り組もうと思っている。

【鳥井主査代理】
 事務局に質問であるが、今回のこの中間評価では、何を目的に評価するのか。

【笹川宇宙科学専門官】
 お答えいたします。まず、プロジェクトが始まって、今半分たっているので、この間に、万が一アルマ計画の目的や意義が陳腐化していたり、もう日本で進める必要はないのではないかということが仮にあったりする場合は、プロジェクト全体の見直しも検討するが、今回のアルマ計画の場合においては、計画が順調に進んでいるということで、1つの時点評価のような位置づけで考えている。そして、残りの4年間で何をすべきかを、いま一度先生方にお考えいただきたいということで、今回、この会を開催している。

【飯吉主査】
 進捗状況については、今日御報告があって、最初は少し遅れてスタートが、今はむしろリーディングカントリーになっていることを、ちゃんと明記していただきたいと思う。
 また、アルマ計画の今後の進め方は、本日出た意見などを注意しながら、遺漏なきよう研究してもらいたい。

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)