共同利用・共同研究拠点の国際化に関する各委員のご意見

 これまでの経緯について

1.共同利用・共同研究拠点の国際化の目的は何か

2.共同利用・共同研究拠点の国際化を進めることでどのような効果があるか

3.全ての共同利用・共同研究拠点の国際化を目指すべきか

4.国際化を進める共同利用・共同研究拠点に対して、どのような方策で支援することが必要か。また、その際に留意すべき点として、どのようなものが考えられるか

5.国際化に係る支援の対象となる共同利用・共同研究拠点に求める条件として、どのようなものが考えられるか

6.国際化に係る支援の内容として、どのようなものが必要か

7.共同利用・共同研究拠点が国際化を進めるに当たって留意すべき点として、どのようなものが考えられるか
(1)国際化に向けた体制の整備について
(2)国内の研究者との関係について


本資料は、「今後の共同利用・共同研究体制の在り方について(意見の整理)」(平成29年2月14日)で掲げられた「研究の国際化の推進」について、上記7つの論点に沿って、第9期究環境基盤部会における各委員の発言内容等を整理したものである。


これまでの経緯について

○第8期の研究環境基盤部会では、今後の共同利用・共同研究体制の在り方について議論し、平成29年2月、「意見の整理」として、4つの視点でまとめた。その中の1つとして「研究の国際化の推進」が掲げられ、当該分野における我が国のCOEたる共同利用・共同研究拠点が、更なる研究力の強化に向け、国際的な研究環境を整備するための取組に対し、重点的に支援することについて、平成29年度中に検討し、結論を得るとした。
○これに関連して、第88回研究環境基盤部会(平成29年5月31日)にて、「国際共同利用・共同研究拠点構想」として、共同利用・共同研究拠点の特性の1つである国際性について、世界を率いるような卓越した活動を行っているところを支えてはどうかという趣旨のご提案をいただいた。
○第89回研究環境基盤部会(平成29年6月28日)では、東京大学物性研究所、琉球大学熱帯生物圏研究センター及び北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターから、国際化の取組について発表いただくとともに、国立大学共同利用・共同研究拠点協議会から、上記提案に関する意見が述べられた。

1.共同利用・共同研究拠点の国際化の目的は何か

○国際ステージでの共同利用・共同研究を推進し、国際共著論文の増加をはじめ、より高いレベルの研究を実施し、もって、我が国の研究力を強化し、プレゼンスを一段と向上させることが目的。
○共同利用・共同研究拠点の価値ある研究資源を最大限有効活用し、拠点の研究成果の最大化を図ることが目的であり、国際化はそのための手段である。

2.共同利用・共同研究拠点の国際化を進めることでどのような効果があるか

○異なる研究環境、異なる考え方を持つ研究者間の継続的な議論から、思いがけないアイデアや画期的な成果が生まれる。
○国際共著論文数の増加につながる。
○拠点が持っている価値ある研究資源を活かして、レベルの高い国際共同研究を推進することができ、非常に質の高い、波及効果の大きな論文に直結する。
○優れた外国人研究者との共同研究により、拠点教員・大学院生の研究の質が向上し、研究内容が多様化する。

3.全ての共同利用・共同研究拠点の国際化を目指すべきか

○研究の国際化について、分野によってもその在り方は異なるので、一律かつ外形的に国際化を図るのではなく、分野の特性に応じて推進する必要がある。
○国際化を目指すのはよいが、全ての共同利用・共同研究拠点を国際化することはありえない。
○附置研究所だったものが、機能に着目した共同利用・共同研究拠点制度に変わり、今後、どのように在りうべきかと考えた際に、1つのメルクマールとして国際性があるのではないか。国際化の程度について、一般的な活動や、一定水準を超えない活動にとどまっている拠点もあり、それはそれでよい。一方で、世界を率いる卓越した活動を行っている拠点もあり、そのような特殊性を際立たせるため、我が国として力を入れて支えていくことも大切。

4.国際化を進める共同利用・共同研究拠点に対して、どのような方策で支援することが必要か。また、その際に留意すべき点として、どのようなものが考えられるか

○国際ステージでの共同利用・共同研究を推進し、国際共著論文の増加をはじめ、より高いレベルの研究を実施し、もって、我が国の研究力を強化し、プレゼンスを一段と向上させるため、「国際共同利用・共同研究拠点」の創設を考えてみてはどうか。
○国際化は必要なことであり、全ての共同利用・共同研究拠点がそれなりに取り組んでいると考えられるが、「国際共同利用・共同研究拠点」は、それを制度として可視化することが趣旨だと捉えている。
○「国際共同利用・共同研究拠点」は、ある程度、選択と集中をすることであると思うが、その中で、どう多様性を保っていくかというバランスを考える必要がある。
○国全体の研究力を上げるために、共同利用・共同研究拠点に国際性という要素を加えることは重要だと思う。一方で、大学の特色は多様性であり、「トップの研究者を引き上げる」、「優秀な研究機関を作る」という視点のみでは、多様性の豊かな大学で研究者が育っていくという芽を摘んでしまうことを危惧する。
○支援対象をトップレベルの拠点以外の層にまで広げて、これらの研究グループを強化する方策にしていただきたい。
○トップを伸ばすだけでなく、裾野を全体的に高めることが大切であり、地方の研究者や学生が研究装置などを使いやすくするという視点も大事。
○トップに続く次の層を強くするという観点から、共同利用・共同研究に携わる公私立大学の研究者を増やす工夫も必要だと思う。
○大学の多様性は重要であると思う。一方で、コミュニティが、国際性の中で評価されて、位置付けられるべきであるとも思う。
○「運営」の国際化を最小限にして「研究」の国際化の制度としてほしい。
○申請書・評価調書作成に係る負担等を考慮いただきたい。

5.国際化に係る支援の対象となる共同利用・共同研究拠点に求める条件として、どのようなものが考えられるか

○「国際共同利用・共同研究拠点」に求められる基準として、1.学内において、人事権やガバナンス体制について一定の独立性があること、2.共同利用・共同研究の意思決定機関において国際的な研究者コミュニティの意向を反映すること、3.研究課題を国際的に公募し、国際的な研究者コミュニティの意向を踏まえて採択すること、4.国際的な支援体制が構築されていること、5.国際的な研究者コミュニティからの要望を踏まえた拠点であること、6.KPI(Top1%、Top10%論文輩出率など)を設定し国際外部評価を実施すること、7.クロス・アポイントメントの拡充など各種改革を行うことが考えられる。
○運営の国際化、つまり、共同利用・共同研究に関する運営会議、申請や手続等の多くを英文化することや、海外からの招へい研究者の生活に関する支援を含めた国際支援体制の整備の業務を現有の拠点事務部が行うことは、大部分の拠点では現実的には困難である。
○国際公募は、確かに負荷はかかるだろうが、国際競争の中でしっかりとした成果をあげていくことが重要であり、公平性を確保する観点からも、国内研究者コミュニティとのバランスを考慮しつつ、実施してはどうか。
○研究者を増やすにあたっては、多様性が必要であることから、「国際共同利用・共同研究拠点」の認定に当たっては、女性研究者等、研究者の多様性も考慮してはどうか。

6.国際化に係る支援の内容として、どのようなものが必要か

○拠点が自助努力で進めている国際化事業に数名程度の事務的な業務を行う専従人員の配置と外国人研究者の滞在費、研究費等の予算配分を行うことによって、国際化の強化が可能となる。
○研究者に対する技術支援が脆弱であるほか、管理・運営体制の国際化、外国人研究者やその家族に対する生活支援も含めた包括的な環境整備が課題となっている。
○組織を国際化するには、外国語を話せる事務員が数名程度必要。この事務員が国際公募の申請書式の作成や、応募の取りまとめをすることが想定される。
○国際シンポジウムを開催する際の準備、国際的な学術誌を出版する際の編集作業、外国人研究者の生活支援等の負担により、教員も事務職員も業務量が増え、研究に専念できる時間が減っている。研究支援体制の強化が必要ではないか。

7.共同利用・共同研究拠点が国際化を進めるに当たって留意すべき点として、どのようなものが考えられるか

(1)国際化に向けた体制の整備について

○共同研究に関する運営会議、申請手続の英文化等の国際支援体制の整備を現有の拠点事務局が担うことは困難である。このため、運営の国際化は、各大学における国際化指針と足並みをそろえ、慎重に進める必要がある。
○大学は、外国人教員や留学生の獲得など国際化にはかなり力を入れている。附置研究所だけ切り離すのではなく、大学と一体になった国際化を進めていった方が、効率が良い。
○国際化が進むと、研究室規模の交流も出てくる可能性があり、教育も念頭において国際化を進めていく体制づくりが必要。
○国際化のための課題を一拠点で解決するのではなく、全体で共有して、例えば大学共同利用機関法人が一括して支援する体制を考えていく方法もある。
○現在の予算的な枠組みが変わらないまま、国際化するための方法として、各研究所がよく似た研究を行う場合、最初の企画段階からネットワークを組んで国際ファンドを取りに行くなど、自力で研究費を獲得する方法もあると思う。
○運営の国際化の負担増に対する解決策として、申請書の多言語化については、1.テンプレート化し、間接業務のスリム化を図ること、2.英語も堪能で技術も分かっている地域のシニア人材の力を借りることがあるのではないか。
○民間には資金に余裕があるところがあり、投資先を探している傾向にある。面白い研究者が集まるところには、資金も集まり、さらに研究者が集まるという好循環ができている。英語化は確かに大事だが、魅力を表現して資金を集めることができない組織は運営上大きな問題があると思う。したがって、資金を集める仕組みを、共同利用・共同研究拠点の中にも入れる必要がある。

(2)国内の研究者との関係について

○国外研究者の受入が多くなると、国内研究者の利用を断るケースがあり、「日本の税金を使って日本人よりも外国人にサービスを提供している」との批判が考えられる。このため、当該拠点以外の国内研究者が参画できる国際共同研究を行う必要がある。
○共同利用・共同研究拠点について、国内研究者が使う上では無料であることが大原則だと思うが、外国人研究者については、そのまま当てはめてよいのかどうか議論が必要。外国人研究者からはお金を徴収するというのも場合によってはありうるのではないか。
○「国際共同利用・共同研究拠点」の取組を当該拠点のみならず、大学やコミュニティと連携し、波及効果を持たせることが大切。
○滞在型ワークショップ等の研究会の開催によって、国内研究者コミュニティが国際共同研究に参加できる機会を提供するなど、国内研究者コミュニティに還元する仕組みを作ることが大事。

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