資料6 平成22年度の国立大学法人運営費交付金による支援に係る留意点について

1 支援の基本的な考え方

平成22年度の国立大学法人運営費交付金による支援の基本的な考え方を以下の通り示す。

1.国立大学法人における教育研究活動

 各国立大学法人における教育研究活動については、それぞれの目標・理念や経営戦略に則り、中期目標及び中期計画に沿って、自主性・自律性を発揮しながら取り組むべきものであり、世界最高水準の教育研究の実施、計画的な人材養成、大規模基礎研究や先端的・実験的な教育研究の実施、重要な学問分野の継承・発展、高等教育の機会提供、地域への貢献など、国立大学が果たすべき役割をしっかりと担うことが強く求められる。

2.国立大学法人における教育研究活動に対する支援

 各国立大学法人における教育研究活動は、各法人の個性や特色に応じて意欲的かつ重点的に取り組まれるものであるが、同時に、社会経済の変化や学術研究の進展等を踏まえた我が国の高等教育政策、学術政策の推進の観点からも、その中核を担う重要な活動であり、次の〈1〉から〈5〉までに掲げる事業等について必要な支援を行うことが重要である。

 その際には、平成22年度からの第2期の中期目標・中期計画や国の各種政策との関連性・整合性も勘案した上で、各国立大学法人の優先度を尊重した支援を基本としつつ、適切な支援となるようにすることが必要である。

 また、学部・研究科や研究所・センター等の教育研究組織については、学問分野の継承・発展や学生の視点に留意しつつ、社会ニーズ、入学・就職等の状況及び将来見通しを踏まえた、各法人の自主的な教育内容の改善や組織の改組・再編、入学定員の改訂等の取組を促すことが重要である。なお、教育研究組織の整備等については、基本的には既存組織の見直しにより対応することになるが、新領域等に係る教員の配置に必要となる経費の増額など既存組織からの財源捻出だけでは対応が困難な場合には、必要に応じて、国として支援を行うことが必要である。

〈1〉国立大学法人の特色・個性を生かした教育研究活動への支援

 各国立大学法人としての役割や使命を果たすため、その特色・個性を生かした先導的・萌芽的な取組、各種の社会的な要請、学問バランス等を踏まえた個性豊かな取組や、既存の組織の見直し(新たな組織の整備を含む。)につながる取組を支援

〈2〉学生に係る教育研究環境の充実など国立大学法人の基盤をなす機能の充実への支援

 各国立大学法人における教育研究基盤設備等の充実、留学生や障害のある学生のための教育環境の整備など、各法人の基盤をなす機能の充実に対して支援

〈3〉大学間の連携・協力に基づく取組への支援

 「共同利用・共同研究拠点」を含め、大学同士の連携・協力に基づき、各大学単独では不可能であった教育や研究等の抜本的な改革・発展につながる取組を支援

〈4〉国の政策課題等を踏まえて自主的に取り組まれる教育研究活動への支援

 国の政策課題や地域の課題等を踏まえて各国立大学法人が自主的に取り組む教育研究活動を支援

〈5〉教育研究診療基盤設備の老朽化対応への支援

各国立大学法人が保有する教育研究診療基盤設備の老朽化等への対応のため、各法人の自助努力を求めつつ、教育研究診療基盤設備の重点的な整備を支援

 

2 各国立大学法人における留意点

平成22年度の国立大学法人運営費交付金による支援に関して、各国立大学法人における留意点を以下の通り示す。

1.教育研究事業に係る留意点

(1)各事業区分に共通した留意点

 〈1〉事業区分との適合性等

  ・事業区分に対応した取組として具体的かつ明確に事業内容が設定され、社会ニーズや学問の進展を踏 まえたものとなっているか。

  ・各種の競争的資金による事業との違いが明確となっているか。

 〈2〉実現可能性等

  ・事業の目的、目標が具体的かつ明確に設定され、かつ実現可能な内容となっているか。

  ・組織、経費、実施体制などについて、事業の推進にふさわしい計画となっているか。

  ・事業を確実に実現するため、学内外の協力体制の構築などの具体的な工夫が行われているか。

  ・他大学等の諸機関との連携により推進する事業については、i)連携先との調整や役割分担の明確化が図られ、連携による事業効果が期待できるものとなっているか、ii)それぞれが分担する経費の内容が明確になっているか、iii)国立大学法人の主体性が確保されているか。

 〈3〉社会的効果等

  ・事業成果の具体的な活用方策や、事業成果による波及効果が十分に期待できるものとなっているか。

  ・事業が大学の教育研究活動の改善をもたらすものとなっているか。

(2)各事業区分ごとの留意点

 〈1〉プロジェクト分

 <国際的に卓越した教育研究拠点機能の充実>

  ・推進する事業が国際的に卓越していることの検証が十分に行われているか。

  ・国内外の大学や教育研究機関との連携が位置付けられているなど、拠点機能を発揮することが確実に見込まれるものとなっているか。

 <高度な専門職業人の養成や専門教育機能の充実>

  ・高度な専門職業人の養成に関する事業については、教育方法の開発や教育内容の質の向上が見込まれるものとなっているか。

  ・専門教育機能の充実に関する事業については、高い専門性や実践的な能力を培うための教育内容・方法の改善が見込まれるものとなっているか。

 <幅広い職業人の養成や教養教育機能の充実>

  ・教育目標の明確化とこれに伴う教育課程の改善、成績評価の在り方の改善、学生の就職活動などに係る学生支援体制の抜本的充実に向けた取組など、教育効果の創出が期待できるものとなっているか。

 <大学の特性を生かした多様な学術研究機能の充実>

  ・推進する事業の当該研究分野における位置付けや意義についての検証が十分に行われているか。

  ・長年取り組んできた分野の更なる発展を図ろうとする取組、当該大学の利点を生かした新たな研究分野・領域への挑戦など、各大学の特性を生かした取組となっているか。

 <産学連携機能の充実>

  ・事業内容全体と連携内容との整合性や、連携先との調整や役割分担の明確化が図られており、連携による事業効果が期待できるものとなっているか。

 <地域貢献機能の充実>

  ・地域において当該大学に期待される役割を発揮しようとするものであり、各大学の特性を生かした取組となっているか。

 〈2〉全国共同利用・共同実施分

  ・文部科学大臣が認定する共同利用・共同研究拠点については、当該拠点におけるプロジェクトが拠点としての機能発揮が期待でき、関係分野のニーズを的確に反映した内容を有しているか。

  ・文部科学大臣が認定する共同利用・共同研究拠点における運営費については、当該拠点の目的・趣旨に合致し、拠点としての活動を行う上で必要不可欠な経費となっているか。

 〈3〉基盤的設備等整備分

  ・教育用、研究用、医療用設備について設備マスタープランを策定し、計画的、継続的な設備充実のための取組を行っているか。

  ・設備マスタープランにおいて具体的な設備整備(設備名、金額、財源等)についての年次計画が設定されているか。

(3)継続事業についての留意点

  第1期中期目標期間から継続する事業については、当該事業の進捗状況を把握し、事業計画の有効かつ効率的な推進が図られているか。

【進捗状況の把握の観点(例)】

 〈1〉当初の目的・目標に沿って計画が進展しているか。

 〈2〉事業を確実に実施するための学内外の協力体制があるか。

 〈3〉事業の実施により社会的課題や教育研究活動に改善効果をもたらしてきているか。

 〈4〉経費が効率的・効果的に使用されてきているか。

 〈5〉事業の実施上の課題に対して適切に改善策を検討し、改善を講じているか。

 〈6〉事業計画に沿って事業が進展していない場合の解決策や、計画で見込まれた以上の成果が得られた場合の対応策について検討しているか。

 〈7〉事業計画を変更する場合には、変更内容や変更理由が合理的であるか。

2.教育研究組織の整備に関する留意点

 各国立大学法人の学部・研究科や研究所・センター等の教育研究組織については、学問分野の継承・発展や学生の視点に留意しつつ、社会ニーズ、入学・就職等の状況及び将来見通しを踏まえた、各法人の自主的な教育内容の改善や組織の改組・再編、入学定員の改訂を含めた組織全般にわたる検討が必要である。その上で、以下に示す点に留意しつつ、学内における資源の再配分の努力を十分に行いながら、新たな学問分野の発展や社会ニーズに適切に対応するために必要な組織整備を行うことが求められる。

(1)18歳人口の減少を踏まえつつ、社会ニーズ、入学・就職等の状況及び将来見通しを踏まえた学部段階の規模の検討が十分に行われているか。

(2)大学院の入学定員については、課程ごとの学位授与の実績や見込みの検証、大学院教育の質の維持・確保、課程や分野ごとの人材の需給見通し等を総合的に勘案し、検討が十分に行われているか。

(3)改組・再編等にあたっては、改組前の教育課程の継続的な提供体制が確保されているか。

(4)研究所やセンター等については、新たな学問分野の発展や社会ニーズの変化等と当該組織整備との関係・必然性、当該組織における教育研究が継続的に行われることの必要性についての検証が十分に行われているか。

(5)各国立大学法人の置かれた状況や、その個性・特色を生かし、かつ地域社会の特性や要請を踏まえたものとなっているか。

(6)当該組織が、中央教育審議会答申等を踏まえるなど、我が国の高等教育政策、学術政策の方向性を反映した位置付けとなっているか。

 

(注)「Ⅰ 支援の基本的な考え方」及び「Ⅱ 各国立大学法人における留意点」については、大学共同利用機関法人についても基本的に同一である。なお、学術研究関係については、科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会の報告「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ(平成20年5月27日)」等を踏まえた平成22年度に向けた取組が期待される。

 

(参考)第1期中期目標期間における取扱いからの主な変更点

1.教育研究事業に関する支援

 国立大学法人運営費交付金に特別経費(第1期中期目標期間における「特別教育研究経費」に相当。)等を設け、特別経費のうち各法人からの要望に基づき支援を行うものとして、各法人における各種のプロジェクトを支援する「プロジェクト分」、各法人における基盤的設備の計画的整備等を支援する「基盤的設備等整備分」及び文部科学大臣が認定する共同利用・共同研究拠点等における各種プロジェクト等を支援する「全国共同利用・共同実施分」等の区分を設ける。

2.教育研究組織の整備に関する支援

 第1期中期目標期間においては、学部・学科、大学院研究科・専攻についてのみ、新たな組織設置等を行う際に「教育研究組織係数」を適用し教育研究組織の整備を支援してきたが、今後、組織改革を促進するため、研究所やセンター等における教育研究組織の整備をも支援することとし、学内ポストの再配置等の資源再配分を行った上で、新領域等に係る教員の配置が不可欠な場合など、なお追加的な支援が必要な場合、附置研究所経費及び附属施設等経費に教員の配置に必要となる経費を措置する。

平成22年度の国立大学法人及び大学共同利用機関法人における学術研究活動に対する支援について

  平成22年度の国立大学法人運営費交付金による国立大学法人及び大学共同利用機関法人における学術研究活動への支援については、「平成22年度の国立大学法人運営費交付金による支援に係る留意点について」(以下、「留意点」という。)を踏まえ、以下の基本的視点に立ち、適切に支援することが重要と考えている。

1.共同利用・共同研究拠点等への支援

 留意点で指摘しているとおり、学術研究関係については、科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会の報告「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ」(平成20年5月27日)等を踏まえた平成22年度に向けた取組が期待されている。

 このことを踏まえ、平成22年度の国立大学法人及び大学共同利用機関法人における学術研究活動に対する支援については、特に以下の点を考慮する。

(1)共同利用・共同研究拠点の認定を受けた研究施設への支援

 共同利用・共同研究拠点として文部科学大臣の認定を受けた研究施設に関して、当該拠点の運営経費や共同利用・共同研究に係る研究費等については、個々の法人の枠を越え、我が国全体の学術研究の発展に資する経費であり、国において安定的な財政支援を行うことが重要である。(※)

(2)大学共同利用機関法人における共同利用・共同研究の推進への支援

 大学共同利用機関には、国公私立大学との連携の強化等により、関連分野全体をリードする中核としての機能を果たすことが期待されており、共同利用・共同研究の一層の推進を図るための取組について財政支援を行うことが重要である。

 また、新たな学問領域の創成につながるなど大学共同利用機関法人の更なる一体的運営を加速するような取組についても配慮する必要がある。

2.大学等の特性を活かした多様な学術研究機能の充実

 学術研究の推進においては、各法人における多様な研究活動を支援することも重要である。特に、学際的・学融合的分野など新たな学問領域に係る研究組織や、当該分野の研究を行う数少ない研究の場となる研究組織については、研究の多様性を確保する観点から、各法人の取組を支援することが重要である。

 その場合、研究者の数が少なくコミュニティとしての広がりが必ずしも大きくない研究分野についても、研究の深まりにつれて、新たな研究者コミュニティが形成されたり、研究者コミュニティの広がりが生まれること等が考えられることから、学術政策上の必要性も勘案した上で、適切に支援することが重要である。

3.基盤的な研究環境の整備・充実に対する支援

 各法人における特色ある研究を支え、研究の発展を築くために必要不可欠となる基盤的な研究環境の整備・充実を図ることは重要である。

 このため、各法人の設備マスタープラン等における研究環境基盤の整備計画等を踏まえ、各法人の自助努力を基本としつつ、適切に支援することが必要である。また、例えば、法人間の連携による効率的・効果的な研究設備等の整備についても配慮することが必要である。

(※)共同利用・共同研究拠点の認定を受けた研究施設について

「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ(報告)」(平成20年5月27日科学技術・学術審議会学術分科会研究環境基盤部会)を踏まえ、平成20年7月に学校教育法施行規則の改正等を行い、文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点の認定制度を創設。

 ※参照法令等

 学校教育法施行規則第143条の2

  共同利用・共同研究拠点の認定等に関する規程(平成20年文部科学省告示第133号)

国立大学法人運営費交付金の配分ルールについて(案)

1.基本方針

 人件費・物件費の区分のない「渡し切り」の交付金とする等の第1期の国立大学法人運営費交付金の基本的性格は、第2期においても継続する。

 ただし、国立大学法人を巡る諸状況を勘案し、具体的配分ルールについては見直しを行う。

2.主な見直しの内容

(1)特別経費

 従来の特別教育研究経費を廃止し、「特別経費」を新設する。「特別経費」は、〈1〉評価反映分、〈2〉プロジェクト分、〈3〉大学改革共通課題分、〈4〉基盤的設備等整備分、〈5〉全国共同利用・共同実施分の5区分とする。

〈1〉評価反映分

 ○ 第1期中期目標期間における各大学の努力と成果を踏まえ交付する経費。「評価反映分」の使途は特定しない。

 ○ 「評価反映分」は、国立大学法人評価委員会が行う法人ごとの達成度評価の結果及び独立行政法人大学評価・学位授与機構が行う学部・研究科等ごとの水準評価の結果に基づき、当該組織の規模や学問分野等に従い、一定の調整を行った上で交付。

 ○ 評価結果を踏まえ、具体的な反映方法についてはさらに検討。

〈2〉プロジェクト分

 ○ 各法人における各種プロジェクトを支援する経費。各法人からの申請に基づき、外部有識者による審査を経て選定。

〈3〉大学改革共通課題分

 ○ 第1期の特別教育研究経費における「特別支援事業」と同様、各種の大学改革上の共通課題に対応するための取組に対し、機動的な支援を行う経費。

(想定される大学改革共通課題の例)

留学生受入の推進、障害学生学習支援の充実、臨床研修体制の充実等附属病院の機能強化、業務運営の改善(大学の再編統合、事務機構の改編、FD・SDの実施、大学の管理運営基盤の充実強化等)など

〈4〉基盤的設備等整備分

 ○ 第1期の特別教育研究経費における「基盤的設備等整備」と同様、各法人が策定している設備マスタープランに基づく基盤的設備の計画的整備等を支援する経費。

 

〈5〉全国共同利用・共同実施分

 ○ 文部科学大臣が認定する共同利用・共同研究拠点等(現在、中央教育審議会大学分科会で検討されている「教育分野における共同利用拠点」(仮称)を含む予定。)における各種プロジェクト等を支援する経費。各法人からの申請に基づき、外部有識者による審査を経て選定。

 

(2)一般経費

 〈1〉第1期における「教育研究経費相当分」を改称し「一般経費」とし、第2期中期目標・中期計画に定める大学の教育研究組織を運営し、当該中期目標・中期計画に定める業務を確実に実施できるよう、必要な経費を措置。

 〈2〉「一般経費」のうち設置基準上必要とされる専任教員の給与費相当額等を除く部分を対象として、「効率化係数」による毎年度一定の交付金額削減を継続。その中で、「効率化係数」については、一律に設定した上で、各法人の規模(事業費)や人件費比率等により補正。

  併せて、従来、学部・学科、大学院研究科・専攻についてのみ、入学定員を措置する際に「教育研究組織係数」を適用してきたが、今後、組織改革を促進するため、これを入学定員を伴わない教育・研究その他を担う研究所やセンター等にも適用。

(3)附属病院

 〈1〉第1期同様、運営費交付金の算定上、附属病院に係る経費を「教育研究」と「一般診療」に区分し、「教育研究」に係る経費には運営費交付金を交付する一方、「一般診療」に係る経費(一般診療経費及び債務償還経費)は原則として附属病院収入で対応。

 〈2〉債務償還に必要な経費の一部に相当する額を新たに運営費交付金で措置。

 〈3〉上記措置を行った上でさらに「一般診療」に係る経費が附属病院収入等で対応できない場合は、「附属病院運営費交付金」を措置。ただし、同交付金は、経営改善のための一定の削減を実施。 

お問合せ先

研究振興局学術機関課

高橋、中村、谷村
電話番号:03-5253-4111(内線4295)、03-6734-4169

-- 登録:平成21年以前 --