資料3‐6 第3期科学技術基本計画の重要政策(中間とりまとめ)【「評価」及び「成果公開」関係抜粋】(基本計画特別委員会)

学術分科会
学術研究推進部会(第10回)
平成17年6月7日

平成17年4月8日
科学技術・学術審議会
基本計画特別委員会

【評価関係】

3.知の時代を先導するイノベーションの創出

1.研究の発展段階に応じた研究開発資金制度の整備

(1)研究の発展段階に応じた各制度の趣旨等の明確化

 研究開発は、研究の発展段階や特性、求めるべき効果・効用の明確化の度合いに応じて、何を成果として求めるか等が異なるため、各種の研究開発資金制度(特に外部研究開発資金制度)は、それらを踏まえて、制度の趣旨、評価法、推進方策等を一層明確化すべきである。

(中略)

 例えば、競争的資金には様々な制度が存在するが、同分野の専門家により科学的・技術的な観点を専ら重視した評価を行う、いわゆるピアレビューを行う制度が多い。このようなピアレビューを主体とした競争的資金制度は、基本的に、基礎研究に適する制度である。一方、より具体的な応用や用途を想定する研究開発には、それに適した評価法や推進方策が必要である。

4.創造的で質の高い研究開発システムの構築

(1)競争的資金の拡充と制度改革の推進

1.競争的資金制度の充実
 競争的資金には様々な制度が存在するが、それぞれの制度においては、趣旨や目的を明確にするとともに、研究費規模、研究期間、研究体制、評価法、推進方策等がその制度の趣旨に応じ最適になるよう設計すべきである。

3.公正で透明性の高い評価システムの確立
 課題の審査・評価を充実するため、審査・評価体制を抜本的に強化する。
 課題の審査に当たっては、審査員等の増員と研究計画書の充実、審査基準や審査の観点の見直し等により、研究者の地位や肩書きに拠らない、申請書の内容と実施能力の観点をより重視した審査を行う。また、様々な角度・視点から評価を行うため、各競争的資金制度の趣旨に応じて民間人、若手研究者、外国人等多様な審査員の登用に努める。
 評価過程や評価結果の適切な開示は、評価システムの透明性の確保に加え、研究者の資質向上にも繋がるため、今後とも推進する。特に、評価結果の内容等をできる限り詳細に被評価者に伝えることを積極的に推進することにより、研究計画の充実や改善が図られるとともに、研究者(特に若手研究者)の表現力等資質の向上に寄与することが期待される。
 上述の審査・評価の充実に当たっては、そのために必要な体制を整備し、研究者(申請者及び評価者)の過大な負担にならないよう十分配慮する必要がある。

(2)評価システムの改革

 評価については、研究開発資金制度の趣旨や目的、課題の特性、研究の発展段階等に応じて行うことが基本である。
 第2期基本計画において重点的に進められてきた研究開発評価システムの改革の一層の推進に加え、所要の研究資源の中でより優れた成果の創出を図る観点から、

● 「研究者を励まし、優れた研究開発を積極的に見出し、伸ばし、育てる」ような評価の実施
● 評価の実効性を上げるために必要な資源の確保や評価支援体制の整備
● 評価に関連して発生している具体的な課題の克服

 に重点を置いて改革を進める。
 なお、国立大学法人や独立行政法人等の自主性を配慮すべき法人においては、法人化の趣旨を踏まえた適切な研究開発の評価が可能となるよう、国は十分配慮することが重要である。また、大学等においては、研究開発活動と教育活動が密接な関連をもって推進されているなどの特性に十分配慮した評価を実施する。

1.「研究者を励まし、優れた研究開発を積極的に見出し、伸ばし、育てる」ような評価の実施
 研究開発課題の評価については、評価者、被評価者が、各研究開発資金制度の趣旨や目的等を十分に理解するとともに、研究開発資金制度や課題の性格、研究目的、研究の発展段階等に応じて行う。
 具体的には、
 ● 研究者の自由な発想に基づく研究については、数量的指標に拘泥することなく、ピアレビューによる研究内容の質の面からのきめ細かな評価を行うことにより評価の実効性を確保する。また、必要に応じて、長期的・文化的なインパクトなどの多様な観点も踏まえた評価を行う。
 ● 国家的・社会的課題に対応した研究開発については、科学的・技術的な価値のみならず、経済的価値、社会的・公共的価値が十分尊重・考慮されるような評価項目、評価体制を構築する。なお、安全・安心に資する科学技術など評価法が十分に確立されていないものについては、適切な評価法を検討する。
 また、中間評価においては、必要に応じ新しい研究展開を指摘するような評価を実施する。例えば、進展の著しい領域の研究開発の中間評価においては、柔軟に研究計画を見直すことを提言する。
 事後評価においては、その評価結果に応じて、研究者がさらにその研究を発展させ、より一層の成果を上げることができるよう考慮するとともに、直後評価のみならず追跡評価等による適切な成果把握に努める。
 この際、必要に応じて、審査・採択、評価において一貫性を保つため、評価実施主体は、事前評価を行った者を中間及び事後評価等に加えるなどの工夫を行う。
 詳細な評価結果の開示は、研究計画の充実や改善及び研究者の表現力等資質の向上に寄与することから、評価実施主体は、被評価者に対し、評価結果の内容等をできる限り詳細に伝えるよう努める。
 また、研究機関の評価に関し、研究機関の運営は機関長の裁量で行われることから、研究機関評価の結果は、運営責任者である機関長の評価に繋げる。
 さらに、研究開発課題、研究機関、研究者の業績等の評価について、研究費の資源配分に直結することを志向するような単年度評価は、長期的な研究や重要であるが成果が現れにくい研究を敬遠させ、また、困難な課題に挑戦する姿勢を萎縮させる。このため、短期的な評価が必要なものを峻別し、例えば、長期的な研究等については、画一的な単年度評価は実施せず、定期的なモニタリングによる進捗把握等を実施する。
 また、知的基盤(研究用材料、計量標準、計測・分析・試験・評価方法及びそれらに係る先端的機器、データベース)が研究者の研究活動に不可欠であることを踏まえ、知的基盤の整備への貢献についても適切に評価する。

2.評価の実効性を上げるために必要な資源の確保や評価支援体制の整備

(a)研究開発システムの強化

 競争的資金配分機関においては、プログラムオフィサー(PO)の配置が進められているが、今後は、各制度の趣旨や目的等に応じて、POを最大限に活用した効率的かつ的確に評価を行うための方法や評価に関係する者の役割分担を検討した上で、POの充実強化を図る。
 競争的資金以外の大規模プロジェクト等においては、恒常的に当該プロジェクトに関与し、円滑な推進のために助言等を行う者を配置することを検討する。

(b)研究開発評価事務局の強化
 国・大学・公的研究機関の事務局における人的拡充も含めた研究開発評価体制の構築や職員等の評価実施能力の向上を図ることは、評価に係る各種作業を円滑に行う上で必要不可欠である。このため、職員等を対象とした研修等の開催、評価に係る相談窓口の設置、研究開発評価専門研究者等の派遣、評価のために必要な調査分析等の取組を進める。

(c)評価者等の評価スキル向上の支援
 評価者やPOは、評価結果の信頼性を確保する上で重要な役割を担っていることから、資質向上のための研修等を行う。

3.評価に関連して発生している具体的な課題の克服

(a)「評価疲れ」問題
 評価の実施による研究者や職員への作業負担が過重となる傾向を踏まえ、既存の評価結果の活用等による作業の合理化を引き続き進めるとともに、複数の評価が並立する現行の評価システム自体の整理・合理化を図る。そのため、類似する評価に当たっては、その目的・役割を一層明確にし、評価の重複による不要な作業を回避する。
 ●  評価実施主体は、評価の必要性の高いものを峻別して評価活動を効果的・効率的に実施する。例えば、萌芽的な研究、比較的小規模な研究、大学等における基盤的経費を財源とする基礎研究等は、必要に応じて中間及び事後評価を簡素化・省略化する。
 ●  特に、外部評価は、評価者、被評価者ともに大きな負担を強いるため、外部評価を実施すべき課題を峻別し、適切に評価を実施する。例えば、小規模な研究開発や、適切な評価を行い得る専門家が非常に少ない研究開発については、外部評価は実施しない。
 我が国では、評価に従事する者が質・量ともに不足しているため、競争的資金については、資金配分機関における評価体制の整備を図るとともに、評価業務の集約による評価体制の効率化を図ることが重要である。大学・公的研究機関における教育や研究活動と兼任している評価者やPOについては、過重な作業が原因で本来の教育や研究活動に支障が生じることのないよう、評価実施主体による所属機関に対する適切な支援策や所属機関における評価者、POに対する適切な措置などを検討することが必要である。
 また、研究者コミュニティにおいては、研究者の評価業務への参画が研究者のキャリアパスにおいて、十分意義あるとの認識の醸成を一層図っていくことが必要である。

(b)外部評価、第三者評価の例外事項
 外部評価等の活用は、評価における公平性と透明性を確保する観点から積極的に取り組むべきものであるが、国民の安全確保の観点等から公開することが不適切な場合については、外部評価等の例外事項とすべきである。更に、今後、外部評価等の例外事項について、より明確にする必要がある。

(c)数量的指標に係る問題
 数量的指標は、評価実施主体が使用目的を曖昧にしたまま安易に使用すると、被評価者の健全な研究活動を歪めてしまうことが懸念されることから、使用目的を被評価者に明示した上で慎重に使用する。特に、インパクトファクターは論文誌等の注目度を示す指標であり、必ずしも掲載論文の質を示す指標ではないことから、国内の論文誌等の育成との政策課題にも配慮しつつ、その使用について十分留意する。

(d)人文・社会科学の視点の配慮
 生命倫理、環境に関する問題のように、科学技術が人間と社会に与える影響が広く深くなりつつあることを踏まえ、人文・社会科学の視点にも配慮した評価体制を構築することが重要である。

【成果公開関係】

3.知の時代を先導するイノベーションの創出

4.創造的で質の高い研究開発システムの構築

(1)競争的資金の拡充と制度改革の推進

4.その他の制度改革の推進

(g)社会との関わり
 競争的資金を獲得した研究者が、自らの研究内容や研究成果等について、国民に分かりやすく説明するための活動(アウトリーチ活動(61ページ参照)を含む)を行う場合に、これに対し競争的資金から一定規模での支出を可能とするなど、これらの活動を促進するための仕組みを導入する。
 競争的資金による研究開発の成果については、国や独立した配分機関、研究機関においても、積極的に社会に発信するなど社会への普及・還元に努める。
 競争的資金により実施された研究成果の公開を促進するため、各研究者が研究成果を公開できるようなインターネット上のポータルサイトや研究成果の検索サイトの構築について検討する。

4.科学技術システムの基盤強化

4.科学技術と社会の関わり

(1)科学技術に関する国民意識の醸成と研究者等の社会的役割

1.国民と研究者等との双方向コミュニケーションの推進
 科学技術と社会の関係の深化に伴い、研究者等の活動が国民に正しく理解され、研究者等が信頼と支持を得ていくことが必要である。このため、研究機関・研究者等が研究内容や成果を社会に対してわかりやすく説明することを基本的責務と位置付けつつ、研究者等と国民が互いに対話しながら信頼を醸成していくことを目指すアウトリーチ活動※11を推進する。
 大学・公的研究機関等は、法人の中期計画などの運営方針の中に社会とのコミュニケーション活動を適切に含めることが期待される。また、法人においては、活動費の一部のアウトリーチ活動への投入やアウトリーチ活動を実施するための組織体制の整備、アウトリーチ活動を研究者等の業績として適切に評価していくこと等、より一層積極的かつ活発な社会とのコミュニケーションを図るための組織的な取組を推進していくことが期待される。
 国は、これらの活動を推進するため、(1)競争的資金を獲得した研究者又はその所属する研究機関に対してアウトリーチ活動への一定規模での支出を可能にするなどの仕組みの導入、(2)公的研究費による大規模な研究について、その研究の内容や進捗状況の情報発信を行い社会からの意見等を研究に反映するための取組をあらかじめ一定規模でプロジェクトに組み入れること、(3)アウトリーチ活動を実際に行う場を設定するための地域のネットワーク構築の推進等を行うとともに、これらの取組を通じて、科学技術コミュニケーション人材の養成・活躍の場を創出し、拡大する。
 また、産業界においては、企業の経営者や研究者等によるアウトリーチ活動や科学教室の開催等をより一層推進することを期待するとともに、学校と企業との連携を円滑にするコーディネート機能の充実を推進する。
 さらに、行政部局においても、政策のもたらした成果を国民にわかりやすく発信していくことが一層求められる。

※11 アウトリーチ活動:国民の研究活動・科学技術への興味や関心を高め、かつ国民との双方向的な対話を通じて国民のニーズを研究者が共有するため、研究者自身が国民一般に対して行う双方向的なコミュニケーション活動

2.研究者コミュニティの役割
 日本学術会議や学協会等の研究者コミュニティには、社会とのコミュニケーションを図りつつ、幅広く科学者の知識や意見を集約し、長期的・総合的・国際的観点から、社会に広く情報提供や提言を行うという重要な役割が期待されている。特に日本学術会議には我が国科学者コミュニティの代表機関として国内の課題はもとより地球規模課題の解決にむけての政策提言機能、コミュニケーション機能等を果たすべく新体制下における機能強化が期待される。

3.科学技術への理解と共感の醸成
 初等中等教育段階における理数教育の充実に加え、成人の科学技術リテラシー向上のための取組を強化することが求められている。このため、初等中等教育においては、学校での理数教育の一層の充実を図りつつ、大学、公的研究機関、企業等と学校の連携等を通じた、観察、実験等の体験的・問題解決的な学習や、意欲ある教員、ボランティアを支援し、理科や数学が好きな子どもの裾野を広げる取組を推進する。
 また、我が国の成人が身につけるべき科学技術リテラシー像(科学・数学・技術に関係した知識・技術・物の見方を具体化、文書化したもの)を明らかにすることは、国民の科学技術への関心の向上を図り、理数教育の向上に資する。このため、米国等の海外の事例も参考にしつつ、広く研究者・教育関係者等の英知を集めて、我が国にふさわしい科学技術リテラシー像を策定する。
 幼少期から高齢者まで広く国民を対象として、科学技術に触れ、学習できる機会の拡充を図ることとし、その際には芸術と科学技術を融合させた形態や生活に密着した形態等による親しみやすい情報提供を工夫する。また、国立科学博物館・日本科学未来館をはじめとする博物館・科学館等の充実を図ることとし、各地域の博物館・科学館については、その活動の活性化・充実についての設置者の一層の努力を期待する。また、地域におけるネットワークの拠点としての博物館・科学館等の積極的な活用、博物館・科学館職員、科学ボランティア・非営利団体(NPO)等の人材養成を推進する。加えて、大学においては社会人の受け入れ等の開かれた大学づくりや大学博物館の充実等の取組に期待する。

4.科学技術コミュニケーション人材の養成
 国は、科学技術をわかりやすく国民に伝え、研究者と一般国民の間のコミュニケーションを促進する役割を担う人材(科学技術コミュニケーター等)の養成・活躍を推進する。また、大学においては、科学技術と社会の関係等を学生が習得すべき基礎的・基盤的知識として人材養成に取り組むことが重要である。これにより、研究者等が社会との関わりについて倫理的な側面も含めて常に高い関心を持ちながら研究開発活動に取り組むようにするなどの研究者等の意識改革を進める。

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