1.人文学及び社会科学の現状と課題について

(1)人文学及び社会科学における「創造性」の現状と課題

(「創造的な研究」と「国際的な研究」)

  •  「創造的な研究」とは、目の前の「不思議な現象」に懸命に納得性の高い説明を与えようとするものである。そこから、国際的に受け入れられる普遍性の高い論理を持った説明枠組みの創出を目指していくのである。
  •  ただし、真に創造的な研究は、国際的なジャーナルのレフェリー審査を通りにくいことがままある。レフェリー集団が、その時点の主流パラダイムに収まる研究を評価する可能性があるからである。特に、アメリカの国際ジャーナルには、そのような傾向が見られる。
  •  このため、人文学及び社会科学の場合、国際的なジャーナルでの発表をあまり過大に取り上げない方がよいのではないか。国・地域や文化の特殊性の影響がない自然科学の研究においては、国際的なジャーナルでの発表の意味があるが、国・地域、文化の特殊性の影響を受ける人文学及び社会科学系の研究においては、必ずしも向いていない。また、研究成果の発表形態として、短い量の論文ではなく、一定のまとまりのある書籍の方が適切なケースが多い。

(「他人の研究を研究する」という研究方法)

  •  我が国の社会科学研究においては、「他人の研究を研究する」研究者がかなり存在する(X学習研究)。
  •  「他国の研究者がその国で行った研究の日本における再試」や、「他人の研究に少し修正を加える研究」(X派生研究)は、研究者としての成長段階の初期にはあってもよいが、派生研究のままで終始してしまう研究者が多いようだ。
  •  研究の創造性の観点から言えば、他の研究者の研究成果であるXがないと存在できないという意味で、「X学習研究」も「X派生研究」も似たようなものである。

(我が国において創造的な研究が推進されるために)

  •  日本にある「不思議な現象」を懸命に解き明かそうとしている人文学及び社会科学研究に光を当てることが必要である。
  •  「X学習研究」や「X派生研究」ではなく、「X」そのものを我が国の研究者が創造していくことが必要である。国際的にも意味の大きな「X」とは、社会現象を見るための新しい概念枠組みを提供するものとなる場合が多い。

(2)その他

(若手研究者の現状)

  •  人文学及び社会科学系のポストが少なく、若手研究者の行き場がないという現状がある。
  •  若手研究者の養成において、実験の結果をどのように自分の考えとしてまとめていくといった、まさに「概念化」する力が弱体化している。

(大学等における研究者の現状)

  •  地方の大学は、研究者の減少や、財政規模が小さく資料の購入が困難であったり、多忙で研究時間が確保できないなどの、様々な悩みを抱えている。

(基礎研究の重要性)

  •  我が国では、歴史的に応用系の学問が重視されすぎているのではないか。我が国の社会科学を、国際的にも高く評価される水準のものとするためには、真理を追究し、普遍的な命題を創出する基礎学をおろそかにしてはならない。

(評価の重要性)

  •  問題は、客観的データの活用やモデルの開発等を行わず、単なる評論で終わってしまっている我が国の社会科学の現状ではないか。米国等で高く評価されている研究者の研究活動をしっかりと評価していかなければならない。

次のページへ