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研究費部会(第2期第14回)議事録


1. 日時    平成16年9月30日(木曜日)13時〜15時
2. 場所    如水会館 2階「オリオンルーム」
3. 出席者
 
委員: 池端部会長、家部会長代理、飯吉委員、池上委員、石井委員、井上委員、郷委員、垣生委員、伊賀委員、甲斐委員、鈴木(昭)委員、鈴木(厚)委員、野依委員
事務局: 清水研究振興局長、小田審議官、甲野学術研究助成課長、山田調査調整課長 ほか関係官
   
4. 審議概要
 
(1) 「今後の審議事項とスケジュール」について
 
 事務局から資料3「科学研究費補助金の在り方について(中間まとめ)」、資料4「研究費部会の審議事項」、資料5「今後の審議事項とスケジュールについて(案)」に基づいて説明があり、今後の審議事項及びスケジュールが原案どおり了承された。
   
(2) 研究種目の構成の見直し等について
 
 事務局から資料6「科学研究費補助金をめぐる諸情勢について」に基づいて説明の後、1研究種目の構成の見直し(研究種目そのものの見直し)、2申請・審査の在り方の見直し、3研究費の配分の在り方について意見交換があった。
   
  (○・・・委員 △・・・事務局)
   
 
委員  資料4で示された今後の審議事項のうち、9番目の「研究費全体の中の科学研究費補助金の在り方」に関連して、学術分科会基本問題特別委員会で「これからの学術研究の推進に向けて」という報告が6月30日に出されている。その中でデュアルサポートシステムについて触れられており、特に基盤的な研究資金の確保と科研費等の競争的資金の確保、その両者によって、我が国の学術研究を振興していくべきという方向性が示されている。
 国立大学の法人化に伴って運営費交付金に基づく大学の管理運営費、あるいは人件費、教育研究費等については、各大学が特色のある個性を発揮するという観点から検討し、配分していると思うが、共通経費を確保するため、研究者、教員に対する基盤的な研究費が減額されているという実態が生じていると思う。そういった点から見ると、科研費もさらに拡充し、それによって採択率を上げ、研究者の要請にできるだけ応えられるようにする必要があるのではないか。
 まして、これから運営費交付金に効率化係数が1%ずつかかり、運営費交付金が減っていくとすると、教育研究費にしわ寄せがくる心配がある。基盤的研究資金が減額されるとすれば、競争的資金によって研究者の自発的な研究をサポートすることが必要だと思う。その意味でも、科研費等競争的資金の拡充を強調する必要がある。
 研究費の配分について、従来から分野別の配分方式の必要性について検討が行われているが、人文社会系の中には、交付額が比較的少なくても成果を上げることができる分野があるので、それぞれの研究分野の実情、研究の在り方等を踏まえて、分野別に必要額というものを考えながら差別化した方が効率的な研究費の配分になるのではないか。
 科研費全体に占める人文社会系の採択件数の割合が現在18%程度となっており、自然科学系に比べると採択率が低いので、もう少し採択の幅を広げれば、人文社会系の研究者の応募も増えてくるのではないか。どちらかと言えば、今まで人文社会系の応募がやや少ないのではないかと思うので、そういった点についても今後検討すべきである。

委員  応募する研究者の側にとっては、おそらく研究費の配分の在り方が一番気になる部分だと思う。先ほど事務局から説明があったが、比較的交付額の大きな研究種目と、その必要性について問題提起された基盤研究(B)、(C)といった研究種目との性格の違いを十分わきまえた上で、その必要性、あるいは全体としての配分の方法を考えなければならないのではないか。
 現在の制度をそのまま今後も維持できれば研究者にとっては安心であるが、最近外部で行われている議論を見ていくと、守りきれなくなってくると思われる。そういった中で、競争的資金の中に国の政策がどのように反映されるかということが問題になってくると思う。資金規模の大きな、ある意味で研究者にとってハイリスクではあるけれどもハイリターンの研究費には、ある程度政策を反映させることもあってよいと思うが、一方で非常に基盤的な研究費については、現状を維持すべきことについてどのように説明すれば外部を納得させることができるか、その理論構成について我々は知恵を絞らなければならない。今、意見があったような大学の研究活動をどのように維持するかという視点もそこに入ってくると思うが、性格によって研究費を2つに大別して考えた方がよいと感じる。

委員  今の2人の意見に全面的に賛成である。
 政府の競争的資金全体では、文科省関係が75%ぐらいあるが、他省庁の制度はもちろん、文科省の競争的資金制度についてもこれからますます目的志向になってくると思う。科学技術振興調整費などの「重点課題解決型」の競争的資金では、ある目的に沿った基礎研究については助成するけれども、それ以外の基礎研究についてはなかなか助成できない。そういった中で日本の科学技術・学術の根本を支えているのは科研費だと個人的には理解しているが、将来を考えると、今意見のあったように、やはり基礎研究が重要であって、科研費の予算を増額するのであればむしろ基盤研究(B)と(C)を拡充すべきではないか。
 特に若手研究者に対しては、少額でもよいから科研費を交付し、あるいは採択率をさらに上げていくよう努めるべきである。そのような環境を整えるためにも、基盤研究(C)のような研究種目を拡充すべき。
 基盤研究(S)、(A)のような多額な助成については、分野により異なると思うが、設備依存度の高いところには必要である。しかし、設備の共同利用、共同利用施設の利用といったように、むしろ人間が移動していく考え方をとれば、もう少しうまくいくと思われる。また、大型装置を必要とする場合に、民間の資金の導入についても考える必要がある。

委員  今までの意見はとても重要で、繰り返しになるが、重点課題に対する大型の研究投資が非常に多くなってきている中で、科研費では、(C)を含めた基盤研究に重点的に配分するよう配慮してもらいたい。
 特定領域研究の内部でも、計画研究の部分が膨らんできて、若手研究者が応募できる公募研究に対してしわ寄せが来ていることを心配している。この種目が設けられた当時は(A)、(B)、(C)と分かれていて、比較的小規模の領域もあったかと思うが、今やほとんどの領域が超大型化しており、なかなか若手の研究者が入れない。入る余地が残っていないのではなくて、それは公募研究という形で残ってはいるが、多くの公募研究を採択しようという領域代表の意向があると、1人あたり100万円とか150万円とか、非常に小さな金額になってしまう。
 また、予備審査制の件だが、1度審査した上でもう一度細かくということだが、最初の審査の段階から研究目的ではなく研究計画に重点を置いて審査すべきで、その方が優れた研究課題を採択できると思う。目的を書くのは誰でも上手なことを書ける。最初から計画に重点を置くべき。

委員  先ほど指摘のあった、基盤的な研究費が削減されているという問題について申し上げたい。本部会はデュアルサポートの重要性を主張しており、これ自体を悪化させないように、文科省や総合科学技術会議、あるいは財政当局に対してだけではなく、大学に対しても注意喚起をする必要があるのではないか。
 なぜなら、国の予算の削減分よりは、大学内部の問題として学長裁量ないしリーダーシップによって基盤的な研究費が削減されている分の方が多いと思われ、そのために、競争的資金を獲得するようにという指導を学長が行っているのではないかと思う。これはデュアルサポートの原則から考えると由々しき事態ではないか。競争的資金である科研費が、基盤的研究費の不足の穴埋めをさせられる結果を招くだけであって、科研費がいくら合理的な制度設計及びその運用を行っても、「赤字の補填」のためにそれが使われてしまうということでは、本末転倒だろうと思う。
 従って、運営費交付金そのものの減少や、あるいはその配分の不適切さによって現場の基盤的経費が減っていくので基盤研究(B)や(C)を拡充するというのは、現実的な対応策としては理解できるが、根本的には対症療法でしかなく、副作用もある一種の劇薬ではないかと思う。この点は本部会として、きちんと大学に対して物申す必要があるのではないか。
 また、現在進行しようとしている、運営費交付金に対して年々効率化係数がかけられていくというシステムに対しても、本部会は重大な関心を持ちしっかりと意見を述べていかなければならない。デュアルサポートのもう一方が、きちんと大学の恒常的な体力維持を図るために措置されているかという点に関心を向け、デュアルサポート体制を維持するために必要な提言を行うべきではないか。この問題は科研費の範囲外のように見えるが、研究種目の見直しや配分の在り方等、科研費システムの問題は、全部そこのところにかかっている。

委員  大学の中のマネジメントに問題があるのではないかという意見であったが、まさにそのとおりである。例えばイギリスと比較しても、我が国より人文社会系を含めてサイエンスの層の厚さを感じる。率直に言えばこの問題は、学長が基礎研究をどのように考えるかという哲学に関係するもので、経営の面でどのように対応していくかという点は、その次の段階の問題であると思う。しかし、学長の一人として、予算の大幅な削減を前に、何かよい知恵があったら教えていただきたいというのが正直なところである。

委員  今、挙げられた問題に関連して、心配していることがある。それは今年の科研費の応募件数についてである。各機関が全員応募すべしと叱咤激励を行い、また、平成17年度公募分から「常勤」という枠を外したので、今まで応募が認められなかった研究者も数多く応募することになるので、実際の審査はどうなるのだろうかと非常に心配している。しかし、心配しつつ檄を飛ばさなければならないというのが学長の現状である。
 特別教育研究費や拠点形成など、国立大学の概算要求の仕組みとも関連して、デュアルサポート体制について議論を整理することはなか難しいことであると思う。個人的には、国立大学法人が自らの責任において国立大学協会等を通じて問題を提起していかなければならない問題だと認識している。また、研究費部会だけで競争的資金について議論することが、さまざまな要素でかなり難しくなっていると思う。

委員  少し具体的な話であるが、以前、国際学術研究という研究種目があったが、それが廃止された。この影響は国際共同研究については大きいのではないか。国際共同研究は、政府間または大学間、研究機関間で協定を結んで進めることが多く、信頼関係が必要であり、研究の継続性が非常に重要である。その継続性の問題で、国際共同研究はいつまでそれが保証されるのかということが明確にならないと成り立たず、そのために国際共同研究をやめたという例も聞いている。また、特別推進研究、特定領域研究の審査において、国際共同研究があるのでぜひ採択してほしいと言われる場合があるが、それは審査の障害になる場合もある。このため、プロジェクト研究とそれに伴う国際共同研究は別の研究種目を設定するという方向で考えた方がよいのではないかと思われるので、検討いただきたい。

委員  基盤研究(C)や(B)の問題について、先ほどの意見に同感で、科研費は決して基盤的なインフラ資金の補填ではないということを前提にした上で、本部会として少額の科研費というものの積極的な意味をアピールする必要があると思う。
 今回の資料6では、「基盤研究(B)、(C)は、人文社会系の研究者にとって不可欠な研究種目」であるという平成13年度の本部会の報告を引用しているが、これは人文社会系に限ったことではなくて、理工系、生物系にももちろん当てはまる。例えば実験の場合には、(C)で研究を始めて、成果が上がるにつれてもう少し高価な機器が必要となったため、(C)から(B)、(A)、さらには特別推進研究とステップアップする場合があるが、例えば理論や数学などの場合には、特にステップアップしなくても、きちんと研究を行い成果を上げていれば、コンスタントに科研費が得られるということが重要である。そのような積極的な意味をぜひアピールできるようにしたいと思う。

委員  基盤研究(B)、(C)の必要性については今の意見のとおりで、これら中小規模の研究種目を応募数が多すぎるという理由で廃止するなどのことは非常に危険であり、ぜひこの部会でサポートすべき。応募件数が多く、審査員に過重な負担がかかると心配するのであれば、人員を増やして審査を円滑にするよう総合科学技術会議等が手を打つのが筋であって、廃止すべきという意見は言語道断だと思う。このことは議事録に残して皆さんに見てもらう必要がある。
 基盤研究を担当する日本学術振興会は学術システム研究センターを設置しており、105人の研究者が所属しているので、合理性を求めるシステム改善は十分に可能である。ここにおられる委員の方々は既に基盤研究(C)から遠ざかって久しいと思うが、学術システム研究センターの若い教授の方々が実情をよく知っているので、システム改善等の実情に照らした改善は、そこへ検討を命じればよいと思う。なおかつその上に科学研究費委員会も置かれているので、そこでの議論をこちらに報告してもらうべきではないかと思う。
 企画調査にしても、「一般」と同じような研究課題を応募してくるというのでは、区分としてはよくないかもしれないので、例えば特定領域研究の準備調査が趣旨としてあるのであれば、もう少し目的を絞った調査研究とする必要がある。今の応募書類を見ても研究目的がよくわからないので、趣旨を明確にして存続させるのがよいのではないか。
 もう1つ、例えば基盤研究(C)の場合、研究費の継続期間が短いために3年目ぐらいには次の応募を行う必要があり、そのために応募件数が多くなってしまう。もう少し長期間に渡って助成すれば、応募件数は減ると思う。分野によっては長期間にコンスタントに助成する方が適している場合もあるので、そのような点も検証する必要があるのではないか。単に応募件数が多いので減らすべきという意見に対しては、本部会は慎重に考えなければならないと思う。

委員  先ほどの基盤的な研究資金と競争的資金の問題について、各大学の学長は競争的資金を獲得することによって、さらに研究を進めるという方向で教職員に対して呼びかけていることは事実だが、それは1つの意識改革として、研究資金をみんなが確保しようという方向に向かっていると理解した方がよいのではないかと思う。必ずしも基盤的経費が減ったから科研費で肩代わりするということではなく、意識改革を行い、競争的資金を獲得しようというチャレンジ精神が研究者に広がっていけば、それに応じて科研費を拡充させていくことは当然のことではないかと考えるべき。

委員  基盤研究(B)及び(C)は重要であるという意見には、全く賛成である。それについて問題はないが、(C)の応募者、あるいは採択された研究者の平均年齢がじりじりと上がっているという現状がある。
 これは運営費交付金等の不足を補うため、交付される金額は少なくても採択される可能性の高い(C)に年配の研究者が応募してくる傾向にあることが理由であると思われる。実際、日本学術振興会のデータベースで、過去5年の数字を調べてみたところ、それほど顕著ではないとはいえ、着実に高年齢化していることは否めない。
 これは(C)をどのような研究種目として設計するのかに関わる問題である。先ほど意見があったように、きちんと研究を行い成果を上げていればコンスタントに採択されるという、それは年齢を重ねていっても採択されるということを当然に含意することになると思うが、(C)を自立した若手研究者が、最初に自分の考え方を試してみるための種目と設計するとすれば、現状を踏まえて年齢制限などの措置も必要かもしれない。

委員  今の意見に全く同感である。事実、そのような現象が起こっていると思っており、客観的なデータがあれば公開してもらえるとそれが明確になる。
 それから企画調査についてであるが、この目的は公募要領等に明示してあるので、それがきちんと理解されていないというのは不可解である。特定領域研究では最近、特に生物系では色々なプロジェクト研究が数多く進められており、最先端のテーマにおいては、大部分の研究者が予算規模の大きなプロジェクトに参加している。
 それでは、特定領域研究というのはどのようなものが望ましいかと言えば、その分野を熟知している研究者から見ると、近い将来に必ず重要とされる分野において、日本でその分野の研究者が何人かいるといったものである。これをグループ化して特定領域とすることで、この分野の研究を一層強力に推進し、そして若手研究者にも参加してもらうという仕組みがこの特定領域研究であるが、どうも現在、そのような領域がなかなか応募されてこない。それは、そのような領域においてリーダーとなるべき研究者が、自分が多額の研究費を獲得しているので、わざわざそこまでの苦労をしないような傾向があるからではないかと思う。
 従って、この企画調査は交付される金額は少ないが、特定領域研究への領域応募に向けて研究者が集まっていろいろな調査を行うためには、それなりに意味のある額だと思うし、このような仕組みを残しておくべきである。これから10年先、あるいはもう少し早いかもしれないが、芽が見えていて、ぜひとも推進していくべき分野がなかなか応募されてこない現状を大変心配しており、特定領域研究をより活発なものにするために、企画調査を有効に活用できるようにすべきだと思う。

委員  今の意見は重要だと思う。平成17年度科研費補助金公募要領の1ページに「イニシアチブ」というのがあり、「政府による主導」に基づく研究と「研究者の自由な発想」に基づく研究の2つに分かれている。政府主導による研究というのは、自律的にメリハリが政府の意思によって効いているが、研究者コミュニティーの自由な発想に基づく研究についてもメリハリを付けることが必要だろう。しかし現状では、それぞれの研究者が全く個々に、自分のエゴで研究をしており、コミュニティあるいはその研究分野のことをあまり考えなくなっているため、重要な分野や研究テーマをくみ上げることができなくなっている。ちなみに、プロジェクトという研究もあるが、フィールドスペシフィックのリサーチとゴールオリエンテッドのリサーチは違うと思う。どのようなフィールドそしてどのようなサブジェクトが重要とするかについて、研究者集団として意思を出す必要がある。ビッグサイエンスではリーダーシップが取られていると思うが、スモールサイエンスではリーダーたちがコミュニティにおける責任を逃れていると言わざるを得ない。日本学術振興会の学術システム研究センターなど、研究者の集団できちんとした調査を行い、研究者側の意思としてのメリハリを効かせる必要があるのではないか。そうしないと、せっかく科研費の予算を増額しても、それだけの効果が出てこないのではないかと思う。

委員  先ほどの基盤研究(C)に応募する研究者の平均年齢が高くなっているという話だが、年配、若手に関係なく、優れた研究を採択すべきであると思う。自分自身は「若手」とつけるのが嫌いである。問題は、応募書類に名前と所属機関名を記載すると、審査員はそれに影響されて、能力のある研究者であるという先入観を持ってしまう場合があるので、名前や所属機関は伏せて研究者番号だけにして審査を行えば、本当に優れた研究が出てくるという気がする。そういった意味で、もう少し審査の方法も検討した方がよいのではないか。

委員  今までの意見で述べられた問題点についてだが、個人的には、基盤研究(C)が若手研究者向けの研究種目だとは必ずしも思わない。その趣旨のものとしては若手研究があり、それを拡充すべきということなら理解できるが、(C)は若手研究者向けの種目だから、年配の研究者が応募するのはある意味でけしからんという議論には多少の違和感を覚える。基盤研究に関しては、そのような性格を持たせない方がよいと思う。年配の研究者でも(C)の予算範囲で研究が十分可能であるなら(C)に応募すればよいわけで、必要に応じて研究種目を選べばよいと思う。
 応募者の氏名を伏せて審査を行うべきという意見についてだが、これは総合科学技術会議などが主張していた、「実績ではなく研究計画で審査すべき」という意見と非常に通ずるものがあると思う。しかし覆面審査となると、応募書類には当然ながら論文リスト等を含め業績は記載できなくなってしまう。アイデアとしてはおもしろいと思うが、現実的には非常に難しいことではないかと感じる。

委員  それでは、次のテーマに移りたい。
 申請・審査の在り方の見直しに関し、総合科学技術会議からの提案のあった事項が資料6にまとめてある。1つ目は年複数回申請の導入の是非、2つ目に、予備審査・2段階審査制の導入の必要性についてである。
 それから、研究計画調書を改善し、研究経歴や業績ではなく、研究計画で評価すべきという意見についてである。計画調書の改善については、本部会でも計画調書の記載量を増やすべきという議論は時々出されていた。
 また、現在の評価のルールについても見直しの必要があるかどうか、これらの点について意見をいただきたい。

委員  複数回の申請を認めるべきという意見は、一体何のためにそのようにするのかが全くわからない。アメリカがそれを認めているからということだろうが、科研費は予算単年度主義の枠の中で動いており、審査の手続は年度の予算が一応確定する1月以降にならざるを得ない。科研費は他の制度に比べはるかに模範的な運用を行っており、ほとんどが6月・7月には補助金が使えるようになる。複数回の申請を認めた場合、早期交付、あるいは早期の応募を認めるということが果たして可能なのか。次年度の予算が確定していない段階で、手続を正式に進めることはできないだろう。
 仮に複数回申請が導入された場合、2回目の公募で課題が採択された研究者に科研費が交付される時期を考えると、現在、早期交付のために最大限努力して6月だとすれば、2回目の公募分が交付されるのは12月ぐらいになってしまうだろう。その場合には、年度が終了するまでの3か月分を交付することになるのだろうか。もし1年間分を交付することになるとすれば、制度として包括的な繰越明許が可能となるような制度設計をする必要があるが、現在の予算単年度主義の大原則をほとんど崩さずに、個別の繰越明許だけで対応するのは難しいだろう。科研費の年間サイクルを考えていくと、複数回申請というのはあまり合理性がないと思う。また、配分機関の側が年間の作業が本当にうまく処理できるのかということまできちんと考えて、このような主張をしているのだろうか。これは実務をしっかり押さえてからでないと、軽々には言えない話である。

委員  確かに、現在の年一回の公募分に加えて、年度内の次の募集分のために予算を多く措置してもらえるのであればともかく、年2回の募集で、それぞれ2分の1ずつの予算を執行するということでは、配分機関の作業量が多くなるばかりでメリットは何もない。2度に分けて応募件数が半分になればよいが、趣旨としては、1回目で課題が採択されなかった研究者が、2回目に再度応募するという救済措置なのだろうと思う。それを導入した場合、2回目であってもかなりの数の応募件数となると思われるので、どのようになるのかシミュレーションをしておかないと大変なことになる。

委員  この複数回申請の導入に関しては、実際の体制の整備の問題とか、科研費の予算を倍増させるといった対応を考えているのでなければ、極めて非現実的な提案だと思う。
 予備審査制度の導入についてだが、これも一課題あたりの交付金額が非常に多額の制度であれば考えてもよいかもしれないが、現在、科研費で交付している程度の金額で予備審査をする必要性はあまり感じない。予備審査用に、ほんのわずかな記載で研究計画等も業績も詳しく書かれていないような書類が来ても、それだけで判断することは難しい。一瞥して判断できるような応募は、分厚い応募書類に簡単に目を通すだけでも優劣は判断できる。従って、その作業を2回行うよりは、最初からきちんとした応募書類を使用して審査を依頼した方が審査員の側としてもしっかりと判定できると思うし、現実に予備審査を導入して、審査員の負担が軽くなることはないと思う。

委員  この年複数回申請を求める意見は、研究者がこの科研費を有効に使えるようにするということだと思うので、複数回の応募ができればそれにこしたことはないと思う。先ほどの意見で、業務量が増えるので反対するというのは逆で、本当に効果があるのであれば、必要な体制を整えてもらい対応するというように発想すべきである。
 例えば、年度の途中で非常に研究が進んだような研究者や、外国から帰国し、年度途中で日本の大学等の研究機関に職を得た研究者に対し、速やかに応募の機会を与えたりできるだろう。そのようなケースは例外的で、それほど事務的な作業が増えるわけではないので、少し柔軟に、弾力的に運用することで可能ではないかと思う。

委員  通常の公募のように、全ての研究者に対してではなくて、途中から応募資格を得た研究者とか、外国から来た研究者などを対象に、別枠を設けることは可能かと思う。そのための予算を残しておくなど、運用の問題はあるかと思うが、考える余地はあると思う。全員に対して複数回となると、1回目の公募において採択されなかった研究者が、2回目の公募においても応募できるということだと思うが、その場合、1回目の公募で採択されなかった研究者全員が再度応募してくると思う。そうなった場合、現実的に事務方は対応できるのか、疑問に思う。

委員  年複数回の応募ができる制度を導入しても、予算を分割するのだから、採択率も現在の半分程度の十数パーセントになってしまうだろう。財務省が2回目の公募分の予算を措置するのであればよいが、それは考えづらい。

委員  今までの意見のとおり、言葉の真の意味の複数回申請というのはあまり議論しても仕方がないような、非現実的な話だと思う。特殊事情がある研究者のための中途審査は、これは技術的な問題で、可能ではあると思うが、その場合に問題になるのは、予算の配分方法である。基盤研究等に導入されている「試算型」の配分方式は、ある程度の応募件数があって成り立つもので、そういった応募に対し通常の応募分と公平感を持たせて審査するための方法が問題となる。
 先ほど基盤研究(C)の採択の平均年齢が上がっているとのことだったが、直感的に言うと、それは定年の延長とか、ポスドクとしての期間が長いため、応募資格のある職につく年齢が徐々に遅くなっているという、そういった要因の方が大きいのではないかと思う。

委員  分野別の配分方式について、審査を担当していて感じていることを申し上げたい。審査では、理工系と生物系と人文社会系とに分かれているが、例えば現在問題になっている環境や安全保障、人間科学といったものはいろいろな分野が共同して、研究テーマとして考えていかなければならないような融合的な研究課題が最近は増えてきている。しかし、3つの系のうち1つを選んで応募しなければならないということになると、どうしてもこれらの融合的な研究課題が審査の最初の段階で外れてしまうケースが多いように思う。
 審査部会では全ての分野の研究者が集まって総合的に議論しているので、ある程度カバーすることが可能だが、第1段審査でふるい落とされ、新しい分野がなかなか育たないということがあるのではないかと思う。審査体制を考えるべきではないか。

委員  新しい分野がなかなか育たないという今の意見に同感で、これも研究者コミュニティが自律性を持って対応すべき問題である。科学技術・学術審議会や政府が研究分野を指定するのではなく、研究者コミュニティが自律的に、今後重点化すべき分野を提案していく機運をつくっていくことが重要だろう。
 また、分野別の配分方式の必要性については、色々な意味が含まれていると思う。採択率を下げ、1件当たりの交付額を大きくする、あるいは逆に、もう少し均等に配分する。様々な方法があるかと思うが、キーワードは科研費をどのように効率的に配分するかということだろう。
 それからもう1つ、スモールサイエンスではもう少し工夫して合理的に配分することが必要だと思う。先ほど意見があったように、自然科学の研究分野のリーダーたちは傲慢で、利己的である。自分の研究のことしか考えず、1億円が上限の場合、限度額に近い9,800万円程度の申請を行う場合が多い。それに対して審査する側もきちんと査定せず、9,600万円程度交付してしまう。それをきちんと査定して合理的に配分すれば、次のランクの研究者が研究費を獲得できるようになる。全て平均的に配分にすればよいというわけではないが、できるだけ多くの能力のある、優れた研究を行う可能性がある研究者に合理的に配分できるようにする必要がある。

委員  事務局に質問だが、科研費はすべて試算型だと説明しているのか。特別推進研究や学術創成研究は試算型とは言えないと思うが、これらについてはどのように外部に説明しているのか。

事務局  その点は、昨年本部会でまとめていただいた、「科学研究費補助金制度の評価について」の中で明確にされており、特別推進研究や特定領域研究等、「学問的要請や社会的要請を第一線の研究者が総合的に判断して分野間調整を図るタイプ」は「分野調整型」と定義している。

委員  先ほどの研究領域・研究分野の選択の問題は非常に難しい。例えば、看護学関係や情報処理のある部分など、3つの系のうち、どこに該当するかの判断が難しい分野は全て人文社会系に応募されてくる。それらの課題について、応募先の分野が違うので審査に付さないと判断することはできないので、審査せざるを得ない。しかし、それは本当に科研費がある分野を育てていくことになるのだろうかと疑問に思う。
 従って、先ほどの意見にあったように、現状に合わせ、もう少し柔軟性のある分野の構成にする必要がある。

委員  計画調書の改善と評価体制の問題だが、その研究種目に合った審査体制を構築する必要があると思う。例えば、特別推進研究、基盤研究(S)や特定領域研究といった規模の大きな研究種目では、研究計画調書やプレゼンテーションでは、「はったり」をきかせることが可能で、それによって採択されてしまうおそれがある。それを防ぐために、結局は業績の大きな研究者の課題が優先されるという面もあるだろう。それが、特別推進研究や基盤研究(S)、特定領域研究に若手研究者の課題がなかなか採択されない原因にもなっているのではないか。計画調書と、もう一方で、この金額と研究期間で本当にこの研究が遂行できるかという研究の実現可能性を専門家が集中的に評価・審査する体制を整備していくべきである。

委員  先ほど提起された研究領域・研究分野の選択の問題についてだが、人文社会系、理工系、生物系の他に、総合領域、複合新領域が設けられており、研究テーマにあった分科細目への応募は可能だと思う。
 問題は審査員を確保することで、総合領域・複合新領域の審査員を探すのが非常に難しい。現状では、研究者に依頼しても断られる場合も多く、審査員を決定するのに非常に苦労する。従って、科研費に応募するならば審査も担当するという共通の認識を持ってもらうよう、科学技術・学術審議会等が研究機関、あるいは研究者に訴えていく必要があるのではないか。

委員  その問題については、少なくとも応募者に複数の分野を指定してもらうとよいと思う。第一段審査の際に、融合的な分野を1人で審査するとどうしても偏ってしまうので、複数の分野を指定してもらえば、それらの分野の複数の専門家に審査してもらうことが可能になるのではないか。
   
 
(3) その他
 事務局から、次回の第15回研究費部会の開催予定について連絡があった。

(研究振興局学術研究助成課企画室)

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