資料2 学修環境充実のための学術情報基盤整備について

学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(論点ペーパー)

(問題意識) 1.図書館の活用による能動的学修環境整備の在り方について

 中教審答申では、大学教育改革に対する期待が高まり、その中で、「従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要。」とされている。
 また、学生には、授業のための事前準備・授業受講・事後展開を通して主体的な学修に要する総学修時間の確保、教員には、学生の主体的な学修の確立のために、教員と学生あるいは学生同士のコミュニケーションを取り入れた授業方法の工夫、十分な授業の準備、学生の学修へのきめの細かい支援などが求められるとなっている。
 このようなアクティブ・ラーニングのための場所として、図書館の機能が見直され、そのためのスペースを整備する動きが広まりつつあるが、その規模、内容は大学によってまちまちである。
 整備にあたっては、スペースの用意・確保とともに、そのスペースをどのように活かすかが重要であることから、利活用を促進させるための効果的な方策について検討し、その周知を図ることは意義があると考えられる。
(アクティブ・ラーニング・スペースの整備方策、主体的学修における教員・図書館職員・TA等のスタッフと学生との協働の在り方、授業と主体的学修との効果的な連携・接続など)

(問題意識) 2.教材、授業等、学習資源の保存・共有・普及の促進について

 教育改革に資する学習機能の高度化において、各大学の有する優れた教材、授業等の学習資源の電子的保存・共有・普及は意義があるという意見は多いが、機関リポジトリへの登載による流通など、あまり進んでいない。授業の予習・復習など、アクティブ・ラーニングの推進においても、これら学習資源の電子的活用は、極めて重要であることから、積極的に推進する必要がある。
 学習資源の共有に関しては、現在、関心のある大学や機関間において、様々な取組が個別に検討されている状況であり、その流通を統一的に推進するための課題を明確にした上で、必要な対応策等についてとりまとめ、実行することが効果的・効率的である。
(電子化における著作権処理、電子データの標準化、共通プラットフォームの構築、機関リポジトリの活用、学習資源と公開範囲の考え方など)

(問題意識) 3.大学図書館における学術書のデジタル化の促進について

1) 海外では、書籍を含む学術情報のデジタル化による効率的な利活用が進んでいるが、日本は、特に図書館の蔵書に関するデジタル化が著しく遅れている。
 日本では、蔵書の数を誇り、紙媒体を残そうという意識が強い。各図書館では蔵書が継続的に増加するため、国立大学における図書館関係の施設設備要求はその多くが集密書架という状況である。
 こうした状況を改善するため、例えば、1蔵書について、デジタル化・保存を進めつつ、貴重書や稼働率の高い書籍など、紙媒体で維持すべきものとそうでないものに分け、省資源化する。2紙媒体資料の保存については、国立国会図書館もしくは複数の図書館に限定し、重複保存を抑えるシェアードプリントの考え方を導入する。などの対応が考えられる。
 蔵書のデジタル化、シェアードプリント等による合理化の促進により、集密書架に対する設備投資の抑制や合理化した図書館スペースのラーニング・コモンズ等への活用が可能になる。

2) 学術書に対する電子的利用に対する学生のニーズは極めて強い。学術書の出版において、電子的な利用を基本として、必要に応じて、POD(プリントオンデマンド)により、データを出力し、冊子体を作成する流れが進展しつつある。欧米に比べて本を読まないとされる日本の学生に多くの学術書に接する機会を与え、教育改革の一環としての効果が期待できる。

3) デジタル化の促進にあたっては、著作権処理の問題を解決する必要がある。現在、著作権法の改正により、国立国会図書館に限って、著作権者の許諾なしで、保存のためのデジタル化及び絶版本等について大学図書館等への配信が可能になった。ただし、その利用は、図書館内での閲覧と一定範囲の印刷に限られている。
 著作権に関する解釈・取り扱いを確認しつつ、より円滑な学術情報のデジタル化に向けた対応を検討・促進させることは重要である。

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