5.学術情報の流通・発信力強化に関わる事業実施機関(NII、JST、NDL、JSPS)の連携・協力等の取組強化について

a.関係機関の目的及び事業

○ 学術情報の流通・発信力の強化に関しては、国立情報学研究所(NII)、科学技術振興機構(JST)、国立国会図書館(NDL)、日本学術振興会(JSPS)の各機関(関係機関)がそれぞれの目的に基づいて支援事業等を実施している。
 限られた資源の中で、効率的・効果的に施策を展開するためには、関係機関が実施する事業の内容・状況を踏まえ、連携・協力、役割分担等を進めつつ、事業の拡充・強化を図る必要がある。

○ 関係機関における学術情報の流通・発信強化に関わる部分としての目的及び事業の概要は、以下のとおりである。

〔国立情報学研究所(NII)〕

 大学共同利用機関として、国公私立大学全体の教育研究活動に資する設備や資料等を共同利用に供するため、学術情報流通のための先端的な基盤の開発、整備、運用等を行い、大学における学術研究の発展等に資する。
 大学図書館等との連携により、図書・雑誌、機関リポジトリ等の学術情報の流通・発信に係る事業を実施している。〔GeNii、CiNii、JAIRO、SPARC Japan等〕

〔科学技術振興機構(JST)〕

 我が国における科学技術振興に関する中枢的機関として、我が国のイノベーション創出の源泉となる知識の創出及び研究成果の社会・国民への還元を総合的に推進する。
 専門的なサービスとの連携により、多様な科学技術情報(論文、研究者、専門用語、特許等)の流通・発信に係る事業を実施している。〔J-GLOBAL、J-STAGE、ジャパンリンクセンター 等〕

〔国立国会図書館(NDL)〕

 我が国における唯一の国立図書館として、納本制度に基づき国内出版物を網羅的に収集し、国民の文化的財産として永く保存するとともに、これらの資料を基に、国会、行政及び司法の各部門、国民に対してサービスを提供する。
 国内外の関係機関と連携し、電子図書館サービスの拡充に取り組んでいる。〔国立国会図書館サーチ、国立国会図書館デジタル化資料、インターネット収集保存事業 等〕

〔日本学術振興会(JSPS)〕

 我が国唯一の学術の振興を目的とする資金配分機関として、学術研究の振興と普及に資するとともに、学術の国際交流に寄与することを目的として、優れた研究成果の流通の促進を図っている。
 科学研究費補助金により重要な研究成果の刊行及びデータベースの作成について助成する事業を実施している。〔科学研究費補助金 研究成果公開促進費(学術定期刊行物、学術図書、データベース)〕

b. 関係機関の連携・協力の現状

(関係機関の有する学術情報の相互利用及び統合検索機能の連携)

○ 学術情報の流通・発信に関して、各機関とも目的及び事業内容に沿った情報を収集し、それぞれにアクセスするための検索サイトを用意している。(NII:GeNii、JST:J-GLOBAL、NDL:国立国会図書館サーチ)
 その整備に当たっては、主な対象として想定している利用者が異なることから、利用者のニーズや利便性を配慮しつつ、幅広いコンテンツの充実に努めているが、その際、ニーズの重複する論文情報等については、NII、JST、NDLの各機関の有する情報を相互に共通利用できるように連携を進めており、望ましい方向での整備が図られている。

○ なお、従来の検索は、メタデータ(分類、件名、キーワードを含む)や論文の抄録に基づくものが多かったが、全文が電子化された資料が増加しているので、全文を対象とした検索機能の拡充が期待される。画像としての電子化では、テキストデータが利用できないため直ぐには対応できない可能性もあるが、全文検索により資料の検索可能性が飛躍的に増大するという認識を持つことが重要である。

(ジャーナルの電子化に関する役割分担と連携)

○ ジャーナルの国際情報発信力強化において、重要な電子ジャーナル化に関しても、「科学研究費補助金研究成果公開促進費」による助成事業を行うJSPS、「J-STAGE」によりジャーナルを電子的に流通させるためのプラットフォームを提供するJST、「SPARC Japan」としてジャーナルの電子化を含む国際化促進のためのセミナー事業等を展開するNII、と役割分担を進めつつ、事業を展開している。

(その他)

○ 図書館の総合目録に関するNIIとNDLの役割分担、学術雑誌の電子的収集・保存におけるJSTとNIIの役割分担、学術情報の共有促進に関するジャパンリンクセンターにおけるJST、NII、NDLとの連携、独自事業としてのNIIの機関リポジトリ形成支援やNDLのデジタル化・インターネット資料収集など、関係機関における連携・協力、役割分担に対する意識や取組は進んでいる。

c.関係機関が連携・協力を図りつつ推進すべき事業

(ジャパンリンクセンターによるDOIの付与)

○ 学術情報の国際流通を促進するためには、機関間の連携のもと、学術情報のメタデータの標準化とその国際連携を促進することが必要である。そのため、学術情報に対する識別方法として世界的に普及しつつあるDOI(Digital Object Identifier)の導入・付与は急務とされている。
 平成24年4月からは、国内の関係機関が持つ書誌・所在情報を一元的に管理することにより、学術コンテンツの共有・活用を推進するため、JSTを中心にNII、NDL等とジャパンリンクセンターの共同運営を開始した。本組織は、世界第9番目のDOI付与機関として指定されている。今後、この枠組みを活用して、我が国の学術情報に対するDOI付与を早急に軌道に乗せることが重要である。

○ DOIの付与において、論文情報に関する出版版と著者最終原稿等の区分が識別できるように設定できれば、機関リポジトリ等への著者最終原稿の登載に対する抵抗感も少なくなると考えられる。

(J-STAGE3による電子ジャーナル流通機能の高度化)

○ 平成24年5月からは、J-STAGE3の運用を開始し、デザイン/ユーザーインタフェースを一新して、データベース形式の国際標準(XML)への移行、投稿査読システムの改善が行われたところであるが、機能高度化に対する学協会からの期待は大きい。我が国のジャーナルのさらなる電子化促進や諸外国へのプラットフォームの普及なども重要な課題である。引き続き、関係機関や日本学術会議などと連携を密にし、我が国発の電子ジャーナルプラットフォームとして、学術情報の流通・発信強化に向けた取組の充実が望まれる。

(SPARC Japanを活用した情報共有による国際化の促進)

○ NIIがSPARC Japanとして、欧米のSPARC US、SPARC Europeと連携しつつ、国内外の動向を踏まえて、セミナー開催等の形で進めている電子ジャーナル化、オープンアクセスなどの有益な情報に関するプロモーション活動については、学協会、大学図書館等の意識向上、情報共有の場として、非常に重要であることから、充実・強化を図る必要がある。また、こうした活動について、積極的に周知し、広めていくべきである。

(関係機関間の更なるデータ連携、サービス連携の推進)

○ 関係機関がその目的に従って、電子化の促進、手続きの簡素化等によりコンテンツの収集・発信を推進することはもちろん、各機関のデータ連携、サービス連携により、メタデータ、論文識別方法、著者情報などの「標準化」、論文の全文情報など、より詳細な学術情報へのアクセスを容易にする「統合検索機能」の強化、また、利用データの把握などの「分析ツール・統計機能」の充実を図ることが重要である。

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)