→機関リポジトリには、発信環境の整備、研究環境の整備、学習環境・教育環境の整備の三つの要素があり、以下のような多様かつ重要な機能を有している。
→第4期科学技術基本計画において、国は、機関リポジトリの構築及びオープンアクセスを促進することとされている。
→これまで、各大学等の自発的な努力により、その構築が行われ、現在約200を超える機関において整備されている。昨年度からは、一層の推進を図るため、NIIによる共用リポジトリシステムの提供も開始された。
→一方、具体的な整備は、図書館を中心に、部局や研究者の協力を得て進められている状況であり、研究者の作業として、既に学術誌に掲載された論文を機関リポジトリに登載する場合、二重の負担になるという意識も強く、機関リポジトリの構築に対する研究者のインセンティブは高くない。
→そのため、機関リポジトリのコンテンツ登載を研究者のセルフアーカイブに任せているだけでは、大学等が情報発信のために必要と考えるコンテンツを幅広く収集することは困難と思われる。
→現在の整備状況や課題を踏まえ、機関リポジトリの意義および役割を一層明確にし、関係者の理解を促した上で、その充実及び機能の定着を図る必要があるのではないか。
→大学等の教育研究活動の成果を発信するとともに、今後の活動に生かしていくことは極めて重要であることから、その蓄積の場である機関リポジトリの整備・充実については、大学等の使命として自主的かつ積極的に取組むべきではないか。
→機関リポジトリに登載すべきコンテンツには、限定する必要はないものの、以下のような事項が考えられるのではないか。
-学術誌に掲載された論文
-研究紀要等による学内掲載論文
-博士論文
-国際会議等での口頭発表資料
-研究成果報告書、研究データ
-教育教材
→大学等は、情報戦略・整備方針等に基づき、どのようなコンテンツを重点的かつ網羅的に整備するか、また、オープンアクセスにするかは自ら判断して整備を進めるべきではないか。
→学術誌に掲載された論文については、オープンアクセス化を促進するために、研究者等の理解を得て、機関リポジトリに登載し、積極的な情報発信に取り組むべきではないか。
→大学等においては、学術関連のコンテンツに関する教育面、研究面での電子化・アーカイブ化・オンラインでの情報流通・発信など、様々な取組の実施が考えられる。そうした機能・サービス・システムと機関リポジトリとの連携や役割分担もしくは統合化についての検討も必要ではないか。
→機関リポジトリを活用して、科研費等の競争的資金を受けた研究成果等の情報発信を行う際に、学術雑誌の出版社に支払う経費等が発生する場合、大学等は間接経費を充当するなどにより運用に支障が出ないように対応すべきではないか。
→機関リポジトリの構築による情報発信の取組みについて、評価の際の観点に位置付ける等、大学等の組織的な取組を評価する仕組みを設けることが重要ではないか。
→大学等においては、研究者による機関リポジトリへのコンテンツの登載を通じた情報発信への取組を研究者の教育、研究、社会貢献にかかる業績として評価の観点に加えることが重要ではないか。
→研究者の負担を軽減するため、学術誌に掲載された論文については、出版元のポリシーに基づいた公開後、データの提供を受けて、スムーズに機関リポジトリに収納されるシステムが構築できないか。
→機関リポジトリの整備をさらに推進するために、NIIが提供する共用リポジトリの積極的な活用を促すほか、機関リポジトリのソフトウエアの高度化、電子刊行への対応など情報発信機能の強化、運用体制の強化等、サービスの充実が必要ではないか。
→ユーザーがコンテンツに多様な軸でアクセスできるよう、NIIが提供する学術コンテンツポータルの高度化、各大学等が整備する機関リポジトリの可能な範囲でのシステムの統一化、ネットワーク形成、国際連携等、機関リポジトリに関するサービス機能を強化することが重要ではないか。
→機関リポジトリに登載される日本語文献に対するニーズ・重要性が高い一方で、国際情報流通を促進する観点からは、そのようなコンテンツを自動的に英語で翻訳して収納するシステムを構築するなど、機関リポジトリのコンテンツを英語で発信するシステムの整備も必要ではないか。
第4期 科学技術基本計画(平成23年8月、閣議決定)4.国際水準の研究環境及び研究開発基盤の整備(3)研究情報基盤の整備<推進方策>
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