研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第13回) 議事要旨

1.日時

平成20年2月22日(金曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省3F2特別会議室(文部科学省東館3階)

3.出席者

委員

 有川主査、伊井主査代理、三宅委員、上島委員、潮田委員、小谷委員、後藤委員、坂内委員、土屋委員、美濃委員、山口委員、米澤委員

文部科学省

 徳永研究振興局長、勝野情報課長、井深学術基盤整備室長
 その他関係官
(学術調査官)
 逸村学術調査官

4.議事要旨

【有川主査】
 本作業部会では、4回にわたり有識者等からの意見聴取を行うとともに、各委員に情報基盤センター等を訪問いただき、様々な意見交換、審議を重ねてきたところです。
 一方、現在、審議いただいている情報基盤センター及び学術情報ネットワークについては、教育・研究を支える重要な基盤として、国公私立大学に幅広く関わりを持つものであります。これまでの意見聴取や現地訪問については、情報基盤センター等の施設を有する大学が中心でありましたが、今後、情報基盤センター及び学術情報ネットワークの在り方を議論していく上では、こうした施設を有していない国公私立大学等、幅広い立場からご意見を伺うことが必要と考えております。
 また、平成18年3月に取りまとめられた報告においては、今後の学術情報基盤整備の基本的な方向性が示されており、今後、議論を進めるためには、この辺で再度、報告で示された考え方を踏まえ、我が国の学術情報基盤全体を俯瞰しながら議論することが必要であると考えております。
 そこで、本日は、平成18年3月の報告や我が国の学術情報基盤の現状、これまでのこの作業部会での意見聴取や現地訪問での意見等を参考にしつつ、コンピュータ及びネットワークを中心とした学術情報基盤全体について自由に議論いただきたいと思います。

 資料1「学術情報基盤の今後の在り方について(報告)」、資料2「我が国の大学のコンピュータ及びネットワークの現状等について」、資料3「学術情報基盤整備に関する国立大学等の取組状況について」について、事務局より説明がなされ、その後、意見交換が行われた。

【有川主査】
 平成18年3月の報告の概要、平成17年度学術情報基盤実態調査における我が国の大学のコンピュータ及びネットワークの現状等について説明いただきましたが、平成17年5月時点の国立大学は、法人化してまだ1年しか経っていないという状況であり、その後大きな展開があったかもしれません。これはデータが古いだというようなことがあればご指摘いただき、そのほかお気付きの点があればご意見をいただきたいと思います。

【土屋委員】
 大学数を数えた統計が非常に多いのですが、大学別の、特にコンピュータ・ネットワークの環境がどのような状況であるのかということがわかる数字はあるのか教えていただきたい。

【井深学術基盤整備室長】
 机上資料として「学術情報基盤実態調査結果報告」がありますが、その中は、大学の規模により整理されています。

【勝野情報課長】
 補足いたしますと、Aが一番大規模大学で、B、C、Dに行くに従って、小規模大学、単科大学となっています。例えば、学内LANの整備が82ページにありますが、国立大学であれば、全て整備しています。私立大学であれば、大規模大学は100パーセントですが、小規模大学になると、ごく僅か整備されていないという違いが出てきているところがあります。
 通信速度については、国立大学は規模によって変化はありませんが、私立大学では、少し大学の規模によって差が出てくるということが表れています。

【三宅委員】
 補足ですが、ある一つの研究室が最速通信速度で1ギガ持っているが、幾つかの学部では100メガしか整備されていないという状況の場合など、この調査にどの部分を回答するか非常に難しいと感じました。

【土屋委員】
 基礎的なデータがあるのであれば、それを活用し、必要に応じて仔細分析できるようにしていただきたいと思います。

【坂内委員】
 平成18年3月の報告については、ここで書かれたことの定性的な重要さというのは、今も鮮度は落ちていないと思うのですが、欧米の動きとも比較してみると、どういう成立モデルでこれをいつまでに推進していくのかというところが必ずしも明確ではないということ。
 それからもう一点は、特に地方の小規模大学などでは、設備的なものが不足しているし、また、学術のコモディティサービス的なものを自前で整備していくことが大変になってきている。何か個々に調達するにしても、大学間で連携して、団体割引を効かせる仕組みのようなものを早急に進める必要があるのではないかと思います。
 もう一点は、コンピューティングサービスや実験データの共有、あるいはネット上の研究室を、組織の枠を超えてつくっていくなど、そのようなサービスの仮想化をセキュリティ環境のもとで、どう実現するのか。情報基盤の問題だけではなく、どのようなリソースを共有し合うかということも不可分になっており、コンテンツの中身、サービスの中身にも踏み込んで、計画していくことが早急に必要であると思います。
 ヨーロッパ、アメリカ等でも、E-サイエンスやE-エンジニアリングという基盤と、その上で、研究を推進していくという流れが非常に強くなってきているので、日本でもそのような方向で研究教育のアクティベートを図らなければならないと思います。

【有川主査】
 学術情報基盤を考えたときに、新たなサービスやリソース、コンテンツなども含めて、広くなってきているのではないかと思います。大学全体を、IT化というよりも、ICTをベースにして考え直すというようなことが必要ではないかと思います。
 コンテンツ系に関しては、大学図書館、あるいは情報発信といったところでもまた出てきますし、一方では、統合データベースの話、あるいはアーカイブの問題といったことにも関連します。また、ネットワークあるいはコンピュータを活用した新たなサービスが出てきているということを意識しながら、議論していなかければならないと思います。

【後藤委員】
 誰がどこまでやるべきかというような話は、その時々で見直す必要があると思います。
 また、坂内委員が言われた、ネットワークによる仮想化ということは、世の中全般に非常に注目されており、カナダでは、ネットワークのCANARIEが最近のニュースレターの多くの号で仮想化の話題を取り上げています。。日本においても、いずれはそういう要素も出てくるのではないかと考えています。

【山口委員】
 実態調査の報告の、「コンピュータ及びネットワーク編」の94ページ、「ネットワークを介した遠隔教育」の部分で質問です。一つ有用なのは、どのようにネットワークを活用していくかということかと思いますが、このデータは、国内における遠隔教育という理解でよろしいですか。

【小酒井学術基盤整備室長補佐】
 各大学への調査依頼時に、国内、国外を問うておりませんので、国内外の両方が入っていると思います。

【山口委員】
 今後、教育面でのネットワークの活用について分析する際に、インパクトが重要になってくると思います。この3年、4年の間に、海外においても「遠隔教育」の在り方、ネットワークを通じた国際連携の在り方が大きく変化していますので、日本の大学が国内に対して行っているものと、海外に対して行っているものを区分し、規模、受け入れ側の数なども調査する必要があるのではないかと思います。海外の大学等に対しての遠隔教育は、私立大学も含めて、多様な取り組みがなされていると思いますので、その辺を調査するのは、今後の国際連携の在り方や日本が情報発信を強化する観点からも重要ではないかと思います。

【逸村学術調査官】
 平成18年3月報告の65ページに、教育、学習、学術資源などの道標であるパスファインダーについて記述されており、ネットワーク上で簡単につくれるようになっているということで、中小規模の大学でも、いわゆるオープンソースの様々な学術資源に対して作成が可能です。今後、大学が教育に力を入れるのであれば、今後の調査項目に挙げることで、紹介することができるのではないかと思います。

【有川主査】
 これまで比較的大規模な情報基盤センター等を中心に議論してきましたが、私立大学等における課題等について、お話を伺いたいと思います。

【小谷委員】
 東京電機大学では、現在、総合メディアセンターという組織があります。以前はコンピュータセンターと図書館が分かれていましたが、これらを統合し設置しました。このセンターには、教員が4名、事務局が28名在籍しています。
 当大学では、非常にコンピュータに力を入れており、最初のコンピュータは、1963年にNECのNEACというものを導入し、1989年には、スーパーコンピュータを導入し5~6年毎に更新してきました。2001年にも、スーパーコンピュータを更新しましたが、2006年になると、利用者数が十数名になってしまいましたので、昨年からスーパーコンピュータを自ら持たずに、東京大学のスーパーコンピュータを利用することになりました。
 また、ネットワークに関しては、SINETを利用しており、東京大学に回線を接続しているのですが、回線使用料として年間約350万円も払っており、私立大学にとっては、この費用が相当負担になっていると思います。
 また、当大学には千葉と、埼玉にもキャンパスがあり、その3つのキャンパスにあるコンピュータを使って教育をしておりますが、キャンパス間のネットワーク回線を高速化すると使用料が2億円ぐらいかかるということで、高速化が図れない状況にあります。

【有川主査】
 ネットワークの2億円とはどの程度の速度の料金ですか。

【小谷委員】
 1Gbps(ギガビットパーセカンド)の速度での見積額です。現在は、500Mbps(メガビットパーセカンド)で、1億円程度を支払っています。

【美濃委員】
 我々は昔から遠隔講義をしていますが、90年代はインターネットではなく、NTTの支援を受けて、NTT内部のネットワークを通っていました。当時を考えますと現在のネットワーク環境での遠隔講義は、高画質であり、簡単にできるようになりました。このため、現在は、どのような戦略で遠隔講義をするか、どのように国際的なものを企画していくかというところに重点が移ってきていると思います。

【土屋委員】
 先ほどの話は、キャンパス間といっても、学内LANの整備だと思います。それは基本的に、それぞれの大学が整備しなさいという原則になっているので、キャンパスがたくさんあるところは非常に負担が大きくなっていると思います。これは、基本的に私学助成も対象にならないので、その辺のところをどのように考えていくかが問題だと思います。つまり、キャンパスが複数あるとしても、それは法人で考えたことなので、責任を持って整備すべきだという考え方がある一方で、特に国立大学に関しては、大きい大学ほどノード校になっていて、速い回線で整備されているという状況になっていると思います。
 日本の高等教育全体を考えたときに、最低限のところまでは我が国全体の基盤整備として面倒みなければいけないと考えるべきなのか、法人の判断に委ねるとするのか、方向性を少し大きな枠組みとして考えていかないと、次の具体的な話というのはできないと思います。

【有川主査】
 キャンパス間はそれぞれの大学でいろいろ工夫していると思います。また、東京電機大学では、最初の頃のコンピュータから、最近のスーパーコンピュータまで整備していたが、徐々にユーザーが減少し、スーパーコンピュータを利用するような研究課題を持つ研究者が少なくなった、あるいはワークステーションやパソコンで出来るようになったということかと思います。この辺はコンピュータの発展の歴史と大体符牒が合っていますし、そういうことで、東京大学のスーパーコンピュータを使うということは、本来の全国共同利用施設の趣旨に合致したもので、適切な方向ではないかと思います。

【土屋委員】
 国立情報学研究所のSINET、国公私立大学のキャンパス間、あるいはキャンパス内のLANも含めて、日本の大学関係機関における年間のネットワーク経費の総額はわかりますか。

【井深学術情報基盤整備室長】
 SINETの運営経費などは分かりますが、大学におけるキャンパス間のネットワーク経費などは把握しておりません。

【有川主査】
 それぞれの回線経費については大学毎に把握しているものと思います。

【小谷委員】
 ネットワークやコンピュータの整備には、費用対効果も考慮する必要があると思います。先ほどもお話しましたが、東京電機大学では、スーパーコンピュータをこれまで持っており、レンタル経費として月に4,000万円払っておりました。しかし、利用者が10人ぐらいになってしまったということで、自前で持つことをやめたということです。

【坂内委員】
 様々なコンピューティングリソースを自前で置いておくのではなく、ソフトもデータベースもいろいろ活用し合って、ネットワークを通じて仮想化してやっていくと、経費的にもトータルで考えると随分プラスになる可能性があると思います。

【有川主査】
 10人で月額4,000万円の借料が高いかどうかは、どのような研究をしているかにもよりますので、その内容に比してどうかということかと思います。

【土屋委員】
 今の話であれば、近くにある東京大学のスーパーコンピュータを利用するということではなくても、例えば、京都大学の方が安いからそちらを使うという話は当然あり得ると思います。

【有川主査】
 今は物理的な近さというのはあまり関係ないと思いますし、そのような話をしていただくと、冒頭で申し上げましたような、大規模な情報基盤センターを持たない大学の状況がどうかということがわかって、今後の議論に焦点が合ってくると思います。それでは次に、潮田委員に大学の現状をお聞きしたいと思います。

【潮田委員】
 北陸先端科学技術大学院大学は、大学としては小規模で、学生数は、約1,000名の大学院のみの組織です。教員が約150名、事務職員が約150名です。
 この大学の設立が1992年ですが、非常にITを意識したキャンパスをつくったので、学内のデータ通信速度などは非常に高くできていると思います。ですから、議事録など、ほとんどすべて電子メールでやりとりしています。また、日本語と英語と両方を使うというような特徴があります。
 情報基盤の維持管理は、情報科学研究センターという組織があり、そこに教授が3名、准教授が3名、全部で6名の教員がおり、また、技術系職員が6名います。それで、全キャンパスのITシステムを動かしています。私が着任するまでは、ソフトに関しては、研究室等が各自で調達していたのですが、新たに学長補佐(情報担当)のポストをつくり、仕様の決定など全て、その学長補佐を通じ無駄がないようにしています。
 ハードに関しては、リース契約をしており、毎年4分の1ずつハードウェアを更新しています。また、当大学が恵まれているのは、最初につくったときから学生1人当たり、教員1人当たり、ワークステーション1台という原則を今でも守っています。
 なお、無線LANも使用しており、公務員宿舎においても利用が可能です。
 遠隔教育については、石川地区の大学コンソーシアムに対して遠隔教育を行っていますが、ユニークな取組として、ベトナム工科大学と、相互大学院協定を結び、授業もテレビ会議的に実施しています。昨年は入学式もテレビ会議で実施しました。また、東京キャンパスを田町に置いていますが、そこでは主にMOTなどの社会人教育は、ネットワークを通じ行っています。
 また最近、マイクロソフトと包括協定を結び、OSとofficeを自由に利用できるようにしました。それと同時に、新教育プランとして、マイクロソフトとの協定には、ソフトを使うというほか、学生を派遣してトレーニングをしてもらうというような部分があります。

【徳永研究振興局長】
 北陸先端科学技術大学院大学は、名称からも分かるように我が国の先端科学技術大学院大学であり、設立当初から、学生1人にワークステーション1台という、先端的な大学として設立しています。逆に気になるのは、最初の段階で、その当時の技術水準で構築しており、あとでかえって困ったということはないかということです。

【潮田委員】
 そのようなことはありません。ハードウェアはほとんどリースですので、常に更新されています。ハードウェアのうち光ケーブル、高圧線のケーブル、LANの部分は、リースではなく、大学で設定したものですが、技術が上がってくるに従って、学内予算で更新をするようにしています。

【土屋委員】
 1つ質問してよろしいですか。情報基盤を維持管理されているのは、その研究センターという言い方をされたと思いますが、研究センターが管理するというのは、少なくとも言葉の上だと非常に奇妙に感じられます。

【潮田委員】
 一つの考え方として、研究センターとなっていますが、実際には、全キャンパスで興味があるのは、そのサービス部分です。完全なテクニカルサービスを扱う組織にしてしまうのがいいのではないかと思ったのですが、研究をしていかないと最新のテクノロジーに付いていけないということがあります。したがって、完全なテクニカルサービスにはしていません。また、センターの教員は、ほかの教員よりも研究の比重を少なくして、人事評価をするといった工夫をしています。さらに、教員の公募の際にも、完全なテクニカルサービスを行うというより、研究も行っていただくという方が優秀な人材が来てくれます。

【土屋委員】
 今のご説明は、いつまでもつ議論なのかと思います。最初言われたように、テクニカルなサポートなどは、テクニカルで通せばいいという議論と、常に最先端の技術が必要であり、教員並みの専門知識と研究能力がないとだめだと言ってきたという感じがします。現実に、ベンダー、メーカーの人たちは、別に研究スタッフではなくても十分な力を持っている人はいるはずだと考えると、大学だけ研究、研究と言わなくてはいけないのかという議論にさらされる可能性は十分あると思います。
 実際に、今まで議論をしている情報基盤センターにしても、それ以外の総合情報センターレベルにしても、この作業部会で決着つけるような話ではないと思いますが、それについての考え方は、どのようにしたらよろしいのですか。

【潮田委員】
 それは難しい問題で、おそらく土屋委員が言われるように、どこの大学でも直面する問題だと思います。
 私が前にいたカリフォルニア大学は、完全にテクニカルサービスです。いわゆる教員はいません。そのかわり非常にいいのは、何かトラブルが起きたら、リモートで向こうからチェックしてくれるし、どうも線がつながっていないらしいといったら、どこの部屋でも人が来ます。先ほど述べた研究をある程度やらせないと、いい人が来ないなどという議論は確かに難しい課題だと思っています。

【有川主査】
 その辺は、人材育成などのところにも関係する課題だと思います。大学においては、ネットワークやサービス、コンテンツなどで、何が問題かというようなことを常に把握しておかなければならないという面があるかと思います。一方、技術者といったときに、まだ日本では、安定的に供給できる体制にないために、先生方が関係しながらやっていくという状況にあるのではないでしょうか。
 北陸先端科学技術大学院大学は、学術情報基盤の整備の仕方に関する一つのお手本と考えていいのではないでしょうか。ただし、電子ジャーナル等のインフラの問題や情報発信などは、創設当時にはなかったことですので、そうした課題に今後どのように対応されるのか非常に興味深いところですが、本日は、ネットワークやコンピュータにフォーカスをした学術情報基盤についてお聞きしました。
 それでは、上島委員、お願いします。

【上島委員】
 関西大学は学生数が約3万人です。大学においては、コンピュータを使いたい、ネットワークを使いたいという要望は沢山あります。当大学は、SINETのノード校になっているので、これが非常に大きいと思っています。私学全体でノード校になっている大学はほとんどありません。私学にとっては、ネットワークは、太く安定的につながるというのが要望ではないかと思います。
 全学組織としては、ITセンターとして組織を置いています。専任職員35名のうち、ネットワークに関する職員は4名です。また、常駐SE、業者の方などがいて、総合的に運用している状況です。
 ここで、教員の関わり方ですが、現在、委員会制度という形をとっており、各学部から代表の先生方に入っていただいき、全学のニーズを吸収するというようなことで運用しています。
 しかし、ますます情報基盤が高度化してきており、並列計算機を動かしたり、ネットワークの制御をしたりするという運用自身も大変難しくなってきたと思います。
 このため、委員会において、今後の高度情報化環境に対応するため、教員を配置をする方向に動いています。しかし、この方の役割は非常に難しいと思います。
 それから、規模ですが、SINETノード校にしていただいていますが、人件費を除く機械類だけで年額10億円程度かかっています。そこで先生が委員会と係わって、事務局と教員が共同で方向性を出しているところです。
 システムに関しては、汎用コンピュータはやめて、CPUが24から32程度の計算サーバを置いています。
 また、認証基盤の構築やセキュリティ基盤の対応をしています。実際に対応するのは、今のところ職員ではないので、研究以外にこんなサービスをしないといけないのかと言われることは無いのですが、今後教員の配置によって、同じような問題も起きてくるのではないかと想像しています。
 このITセンターにはテクニカルスタッフが配置されていますが、こういった事務職の方のキャリアパス、評価の問題、それと同時に、今後、教員をITセンターへ配置することになった場合のキャリアパス、研究の保証を考える必要があると思います。
 また、ITセンターが少し役割として変わってきたなと感じることは、競争的資金によるアジア、中国、米国との共同研究、デュアルデグリー、語学の遠隔共同レッスンなどにインターネットを通じたようなものが出てきており、ITセンターが関わりを持つようになったことです。
 そのような競争的資金に絡んだ仕事になりますと、大学間連携を結ぶことが多くなっています。学術協定に基づいていろんなことをするということも多くなっていますし、また、インターンシップやエクスターンシップなど、自治体、企業にまで、大学の範囲が広がっているような状況です。そういったときに、SINETとの在り方として、ネットワークを利用して、このような取組をして問題にならないか。アジアと共同開催とか、東京工業大学のCPUを外部から使うということが果たしてどこまで可能なのか、よくわからないところです。

【坂内委員】
 現在のSINET3は、研究教育活動、大学の情報インフラとして幅広く使うという位置づけですので、この研究だけにしか使わないということではなく、産業界とのコラボレーションなども含めて利用していただければと思います。

【三宅委員】
 中京大学においてもSINETに接続しているのですが、SINET一本だと、全学の電気系統の保守などにより、いつも接続しているという状態にならない場合があるので、例えば情報理工学部では、バックラインを別の回路でつなぐなどの対応をしています。
 それから、スタッフのキャリアパスの話がありましたが、本学のようなレベルですと、そのスタッフにいろんなことをやってもらわなくてはならないのです。その人たちは全学を見ており、それだけで忙しく、彼ら自身がそのテクニカルなことについても自分で勉強していくためのサポートとか、環境整備というものができていないので、結局、人を変えていかざるを得なくなるというような無駄があります。こういうところでうまく何か連携ができるというようなことがあればいいのかなということをいつも考えています。

【有川主査】
 本日冒頭で申し上げました課題に関する議論は一通りできたと思っています。今日は、委員の先生方から現状とそれに対するある種の評価も含めてお話していただきました。また、国立大学と私立大学の違いについても、北陸先端科学技術大学院大学のように、最初からしっかりした計画性を持って運用されているところもあり、はっきり見えてきた部分もあったように思います。
 今後、何人かの有識者においでいただき、お話をお聞きし、我が国の学術情報基盤の現状をどう評価するのか、あるいは今日的な課題は何か、戦略的な整備についてどう考えるか、それらを踏まえて重視すべき課題は何かというようなことをクローズアップして議論を進めていくことになると思います。最後に、徳永研究振興局長、一言お願いします。

【徳永研究振興局長】
 まず、北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究センターの研究センターという名称について申し上げますと、ネットワーキング技術そのものの研究開発を行う組織としての位置付けがあるからということを補足しておきます。
 それから、我が国全体の学術情報基盤をどうしていくのかという議論については、もちろんそういったことの中核を担うのは、これまで、ヒアリングをしていただき、ご議論いただいた大規模大学の情報基盤センターであることは、論を待たないと思います。一方で、最近では、SINET3の新しい仕組みの中で、情報基盤センター自体が他大学に対するサービス負担ということがかなり軽減されたと思っておりますが、それでもなお、様々な大学の状況を考えたときに、今後、我が国全体の情報基盤をどうしていくのか、そういう視点の中で、情報基盤センターの位置付けということについて少し考えなければならないと思っております。
 また、研究環境基盤部会では、国公私立大学を大学の設置形態を超えた形で、ネットワーク型で共同利用あるいは共同研究の拠点を形成していこうということが、本日開催の同部会で了承され、いよいよパブリックコメントを出そうという状況になってきましたので、特に私立大学等の中に、これまでご議論いただいたような国立大学の情報基盤センターと肩を並べるような意味で、その一翼を担い得るようなものがあるのかないのかといったことも含めてご議論いただき、その上でさらに国立情報学研究所の役割についても改めて考えていく必要があるのではないかと思います。
 さらに、そういったことに対する財源措置が、国立大学法人運営交付金や私学助成の中での積算要素という形がいいのかどうかというようなことについても少し広げていただいた上で、議論していただくことにより、これまでご議論いただいた大規模大学の情報基盤センターの役割についてもさらに明確になるのではないかと思っています。
 議論を進めていく上では、少し遠回りをした方がかえって近道であるということもあると思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【有川主査】
 ありがとうございました。当然我々は国全体の学術情報基盤をどうするのかということを審議するわけでして、国公私立、それから、規模、また、東京あるいは地方といった、さまざまな形態があるわけですが、そうしたことをしっかり把握した上で、唯一の情報学の研究所であり、ネットワークあるいはその他の事業を持っている国立情報学研究所の役割、情報基盤センターの役割等について新たな位置づけというようなことも、この作業部会で審議していければと思います。

 次に、事務局より、次回の開催は、平成20年3月17日(金曜日)15時から17時を予定している旨説明があり、本日の作業部会を終了した。

─了─

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)