研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会(第17回) 議事録

1.日時

平成20年7月3日(木曜日) 15時~17時

2.場所

中央合同庁舎第7号館共用会議室(金融庁13階)

3.出席者

委員

 有川主査、三宅委員、上島委員、潮田委員、小谷委員、後藤委員、坂内委員、土屋委員、美濃委員、米澤委員

文部科学省

 喜連川科学官、阿部学術調査官、勝野情報課長、井上情報科学技術研究企画官、飯澤学術基盤整備室長、その他関係官

4.議事録

【有川主査】
 本作業部会ではこれまで7回にわたりまして、学術情報基盤に関する有識者及び国公私立大学の関係者等からの意見聴取を行うとともに、各委員に実際に国立大学の情報基盤センターを訪問していただき、これらを通じて意見交換を重ねてきたところです。
 本日は、意見聴取や現地訪問での関係者の意見及び本作業部会委員からこれまで出されました主な意見などをもとに、特に情報基盤センターの今後の在り方についてご議論いただきたいと思います。

 議事に先立ち、事務局より新たに情報科学技術研究企画官に就任した、井上企画官の紹介が行われた。

 次に、資料1「学術情報基盤の今後の在り方に関する意見聴取の概要」、資料2「情報基盤センターの現地訪問における主な意見の概要」、資料3−1 「情報基盤センター関係者等からの意見の概要」、資料3−2「情報基盤センター利用者等からの意見の概要」、資料5「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ−国公私立大学等を通じた共同利用・共同研究拠点の推進−(報告)」について事務局より説明がなされ、その後、質疑応答及び意見交換が行われた。

【潮田委員】
 「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ」で、申請を踏まえて国公私立大学の研究施設を共同利用・共同研究拠点に位置付けると書いてありますが、位置付けたら予算をどのように措置するかは明記されていないのでしょうか。
 私が大阪大学サイバーメディアセンターへ現地訪問に行った際に、他大学に対してサービスすることが非常に重要になってきており、全ての予算を大阪大学で措置するのではなく、共同利用施設として別枠で予算を組まないとうまく運営ができないということを伺いました。共同利用・共同研究拠点に対する予算措置の問題も、情報基盤センターに関係するところだと思ったのですが、拠点の位置付けが与えられても、予算をどう措置するのか明記されていないと、具体的なイメージがわかないと思います。

【有川主査】
 研究環境基盤部会からの報告によりますと、共同利用・共同研究拠点に関しては、国公私立を問わず国が重点的に支援するとことになっています。このため、大学の中に閉じている研究所は、通常の研究科や学部等と同じ扱いをされますが、共同利用・共同研究拠点に関しては、国立大学だけではなく、公私立大学に関しても、財政的支援をするというメッセージだと思っています。

【飯澤学術基盤整備室長】
 それに関する本文の記述では、16ページのところに共同利用・共同研究拠点に対する経費の負担ということで一応述べられていますが、ここでは、必要な経費については、個々の国公私立大学の枠を越えて国全体の学術研究の発展に資するための経費であることから、国において安定的な財政措置を行うことが重要であるということは書かれています。ただし、それから先のことは、これからということになります。

【有川主査】
 大学附置の研究所でも、共同利用研究所に関しては、プラスアルファの予算措置がされているところです。そのような体制を広く国公私立を問わず適用するということが、一つのポイントだと思います。
 また、拠点の基準と研究環境基盤部会における審査においては、研究者コミュニティからの要請が必要であるという点が非常に大事だと思います。

 続いて、資料4「我が国の情報基盤と情報基盤センターの在り方について(議論のためのメモ)」について事務局より説明がなされ、その後、資料4に基づき意見交換が行われた。

【有川主査】
 資料4のタイトルが「情報基盤センターの在り方」ということですが、ここでの「情報基盤センター」とは、7大学に設置されております情報基盤センターを指しています。そのつもりで議論していただければと思います。
 最初に、1番目ですが、我が国の学術研究を支える情報基盤(計算資源等)の今後の整備についてどう考えるか。そして、幾つかの項目にさらに分かれておりますが、最初はスーパーコンピュータを活用した研究の高度化、多様化、計算科学の進展に伴う計算ニーズの増大に対する対応と、大規模化、高速化、グリッド・コンピューティング、計算環境、といったことですが、この順番にご発言いただければと思います。
 これまでのヒアリング等でも幾つかの議論はされておりますが、本日は、在り方についてということで一つの方向性を出していただく必要があります。

【土屋委員】
 例えば10年、20年後はこのぐらいの計算ニーズがあるので、このぐらいのCPU、ストレージを用意しておかなければならないということが、我が国として共通理解があるならば教えていただきたいし、その中で個別的な話になるのだと思います。そうでないならば、量的な側面に触れないで、議論してもよいのかということについて、教えていただきたいと思います。

【有川主査】
 一つはっきりしていることは、資料にも書いてありますが、次世代スーパーコンピュータについての議論がされており、我が国の計算環境の充実を図るということで、ニーズがあることは確認されています。
 それから、7つの国立大学に情報基盤センターがあるわけですけれども、情報基盤センターの存在と、活動から捉えられるエビデンスがあると思っています。東京大学情報基盤センター長の米澤委員、何かご意見をいただけますか。

【米澤委員】
 数量的なことを言えば、東京大学情報基盤センターは、スパコンを2台所有していまして、古いほうのマシンで3、4年前の稼働率が90パーセントぐらいで、利用者が800人から900人程度です。また、今年6月に導入したマシンは、まだ、課金をしていない期間ですが、利用者が多く、1年間を通して何ノード使いたいという利用者に対して、断らなくてはならない状態になっています。この種のものは、おそらくSINETが整備された時もそうかもしれませんが、容量があるだけニーズが出てくるのが一般的ですので、このぐらい需要があるから、これだけ用意しておかなければならないという議論はしにくいと感じています。

【有川主査】
 京都大学学術情報メディアセンター長の美濃委員はいかがでしょう。

【美濃委員】
 基本的には米澤委員と同様の考えです。我々のセンターにおいても、今年6月に新しいマシンを導入し、スパコンの利用者は格段に増えました。まだ、利用実態は比較的小規模な並列化から始まっていますが、利用者が多すぎるので、利用者に対して希望するノード数を減らしてほしいという話をしている状況です。今後の課題としては、いかに利用者を大規模計算に引き込むかであると思います。だから、利用者の裾野を広げながら、大規模計算に引き込んでいくというような考え方で進めていますので、今後10年間というときに、数量的な目標を定めるのは難しいというのが現状だと思います。

【有川主査】
 計算ニーズは相当あるということです。例えば、本作業部会委員による情報基盤センター現地訪問の報告によれば、東北大学のセンターにおいても、非常に計算ニーズが増えているとのことでした。それから、東京大学のセンターでは新しいマシンが導入され、科研費特定領域研究の「情報爆発時代に向けた新しいIT 基盤技術の研究」関係者も利用されていると聞いています。代表者である喜連川先生は何かご意見等はありますか。

【喜連川科学官】
 「情報爆発」は情報系の特定研究領域の中では一番大きなプロジェクトであり、自前で並列分散処理環境を構築したり、東京大学のスパコンを活用するなどして、次世代の大規模な問題、即ち、グランドチャレンジ型研究開発に取組んでいます。
 美濃先生のご発言にありました並列化という観点では、現時点では精緻な並列化を追求している研究者は必ずしも多くないと思います。つまり、アルゴリズムの高速化と並列化の効率を比べると、一般にアルゴリズムの効率化を良くすれば並列化は難しくなるという傾向にありまして、アルゴリズムの質と並列化の質は一致しません。加えて、並列化の努力をする以前の学問的課題が沢山あるというのが現状認識です。従いまして、並列処理としては、簡単に出来る形態に止まっていますが、大規模処理な処理は広がってきています。
 今、Googleではマップリデュースというプログラミングモデルを用いて、1日当たり20ペタバイトという膨大なデータ処理していると言われておりますが、この処理は、CPU利用率が低いという特性があります。非常に多くのノードを用いて処理がなされますが、膨大なデータ処理をするものの単位データ当たりの処理は低く、ほとんどの時間がノード間のデータ移動に費やされます。次世代の情報分野のキラーアプリケーションになってきており、我々のプロジェクトでも同様の方式で膨大なテキストを処理しております。即ち、スーパーコンピュータも、今までのCPUの浮動小数点演算性能だけではないような領域も出てきており、ニーズは大きく多様化し、その計算資源へのニーズ予測は困難と考えます。

【有川主査】
 土屋先生、そういうことでよろしいでしょうか。

【土屋委員】
 確かに計算機、ネットワークにしても、キャパシティに応じて、次の機器を導入してきたことは事実ですが、今まではそのような状況に対して、ハードウェアが低額化するなどの背景もあり、ある程度計算ニーズに対応できていたと思いますが、そのあたりの予想も含めて、考えなければいけないだろうと感じました。

【有川主査】
 最近の動向というのは、少し前までとは違ってきていて、喜連川先生からもお話がございましたけれども、以前は想定していなかったような動きが出てきていると思っております。勝野課長、いかがですか。

【勝野情報課長】
 今、具体的にご議論いただいている内容を補足するデータとして、机上参考資料の東北大学情報シナジーセンターの資料を見ていただきますと、演算処理量の推移ということで、計算機の運用を24時間、340日行い、90パーセントの利用率で提供可能な極限処理量に対して現実の処理量がこのくらいという状況が示されておりまして、この間に機種の更新を行って性能向上を図っているわけですけれども、結局、それに伴って、さらに大規模な計算ニーズが発生してきて、現実には、追いつき追い越されという形で、計算機の性能向上と利用ニーズあるいは計算ニーズの増大というのが、いわば比例するような形で来ているというのが一つの実態ではないかと考えております。

【有川主査】
 計算ニーズは増大していくという認識で話を進めていいのかと思います。研究の高度化、多様化、進展に伴って、当然、計算ニーズも高くなるのですが、それを定量的に検討するのは先ほどぐらいにしておいて、議論を先に進めましょう。

【三宅委員】
 我が国の学術研究を支える情報基盤の今後の整備を考えていく際、スパコンが議論の中心になることはわかりますが、本作業部会では、ネットワーク整備が進んでいない、研究環境が良くない私立大学などもカバーしていこうという話は多少出てきていると思います。学術研究にかかわる研究者や研究者にこれからなるような人達を、あまねくカバーしていく情報基盤が必要であるということは、資料4には整理されないのでしょうか。

【有川主査】
 それは、3番目の項目の「今後、情報基盤センターにはどのような機能の充実が求められるか」の部分に整理されていると思います。
 情報基盤センターには、これまでの議論にもありましたように、従来はスパコンを中心とした計算パワーや計算資源の提供が求められていましたが、最近では、教育、研修の実施、地域貢献なども求められています。これらは、大型計算機センターが設立された時期には想定されていなかったことです。そのようことも踏まえて、情報基盤センターは、今後どのように在るべきかお考えいただければと思います。

【土屋委員】
 情報基盤センターの前身の大型計算機センターは、1960年代から70年代にかけて整備されたもので、当時、計算機は一般的ではなく、ごく一部の研究者が利用するという理解の下で整備されてきたという背景があると思います。しかし、言うまでもなく80年代、90年代を経て、計算量の多寡はあれ、計算機に一切触れずに仕事をする人はいなくなって、かつ研究者であれば使わないはずはなく、最低限論文を書くときには使っているという時代になっている。そういうときの資料4の「情報基盤(計算資源等)」という言葉の意味は、大型計算機センターが整備された時代とは変わっているであろうという認識は明確にしなければいけないと思います。

【有川主査】
 その辺りについては、これまでに議論してきたと思っております。いわゆる大型計算機センター群が設置された頃というのは、他に計算機、コンピュータというのはなかったわけです。その後ワークステーションやパソコンが普及して、大型計算機センターを利用しなくても、ある程度のことはできる時代になった。しかし、それで済むということではなく、今日でも非常に大規模な計算が必要な分野があって、時代とともに変遷し、計算科学からのニーズに応えながら、今日まで来ていると思います。
 そういった背景を踏まえ、情報基盤センター、スーパーコンピュータ、そして現在、プロジェクトが進行中の次世代スパコンにつながっていくイメージを持ちながら議論していただければいいのではないかと思います。

【坂内委員】
 今のお話に関連することで、数年前に国際科学会議で、研究あるいはそれに連動する教育のパラダイムが切りかわっているという話がありました。固定価値を解明することから、これから重要になるのは変化過程を解明することであり、大きな研究のターゲットのパラダイムシフトが起こっている。その変化過程を解明していく上での手段として何が大事かというと、様々な条件を入れたシミュレーションと、それからデータを集めて解析すること。そういうことで研究の方法論も計算機科学、あるいはデータセントリック科学の二つに大きくシフトしてきている。そういう背景があって、学問の体系、研究の方法論が大きく変わってきていて、シミュレーション、データに係ることが重要性を増してきている。それゆえに計算機資源に係ることが非常に重要です。
 スパコンは各研究機関が様々な分野で使っているわけですけれども、スパコンの最先端の使い方ができるのか、メンテナンスができるのかということになってくると、研究機関の自前ではだんだん運用できなくなりつつあり、データセンターのサービス提供を受けたり、あるいはSaaSの提供を受けるなど、スキルのあるところに機能を集約していくという大きな流れがあるのではないかと思います。
 例えば、東京大学の気候システム研究センターでは、膨大な量のシミュレーションを行うようですが、情報基盤センターのスパコンを計算資源として用いていると伺いました。
 これを日本全体で考えると、重要なものを情報基盤センターに集中していくというような方向性があってしかるべきではないでしょうか。また、大型計算機を自前で抱えておくことが負担になってきているという流れがあると思います。だから、今後は計算資源の集約が情報基盤センターの重要なミッションになっていくと考えられます。

【有川主査】
 現在、東京大学情報基盤センターと気候システム研究センターが始めた取り組みが広がっており、一つの着実な方向を示していると思います。

【喜連川科学官】
 今のお話に関連してですが、ITのコンソリデーションという考え方が大きな潮流になっています。どういうことかといいますと、バラバラに新しい機器を買うよりも、機器の維持の視点からは、一か所に機器を集約し、資源調整を機動的に行うことが最も効率的であるという方法論です。現時点ではそれ以外に、明快な手法がありません。

【有川主査】
 次に2番目の項目「情報基盤センターの現状・課題、これまで果たしてきた役割や今後期待される役割を踏まえ、情報基盤センターの方向性についてどう考えるか」に関する議論に入りたいと思います。特に、「研究の高度化・多様化に対応して求められる活動」、それから「全国の大学等関係者に対する計算資源の提供の観点から求められる機能」、「情報基盤センターを有しない大学等からの要望への対応」について議論していただきたいと思います。

【土屋委員】
 これまでのお話を伺っていると、研究の方法論の動向として、シミュレーションとデータセントリック科学にシフトしてきているということ、また計算資源は、コンソリデーションするということが大きな潮流であるということであり、「情報基盤センターを有しない大学等からの要望への対応」というのは、まさに情報基盤センターを有しない大学等も含めた日本の学術機関や社会からの要望に対応するべく、情報基盤センターに計算資源を置いておくという方向に、今の議論だけではまとまってしまうのですが、それでよければ議論に整合性もあると感じますが、いかがでしょう。

【有川主査】
 情報基盤センターに計算資源をコンソリデーションすることになっていても、自前で中小規模の計算機を持ちたいという願望は、いつの時代でもあると思います。それは研究用ということもあるでしょうし、特別な目的のために所有したいというよう領域もあると思います。
 それから、教育面に関しては、ほとんどの情報基盤センターは、いわゆる全国共同利用施設であった大型計算機センターと、それから学内の情報処理教育センター的なものが、統合した形になっており、研究と教育の両方の機能を持ち合わせています。これまでの意見聴取等でも、他大学に対して教育、あるいは研修の機会も提供してほしいという意見がありました。これについて、情報基盤センター長として、美濃委員から経験をお話しいただけますでしょうか。

【美濃委員】
 本学センターは、情報処理教育センターと統合された際に、教育に力を入れようとして、コンテンツ作成部門を立ち上げた経緯があります。また、近隣の大学から話を聞く機会があり、要望などを聞いていますと、自前でハードウェア環境を構築しにくい大学もあるので、大きなハードウェア環境は集中させて、各大学が利用できるようにしてほしいというサービス提供の要望が多くあります。
 最近、鳥取大学など2、3の大学に対する計算資源を試行的に提供・支援していますが、ソフトウェアライセンスの問題がすごく大きいということがわかりました。そのあたりが大きな課題としてありますが、全体としては、ある程度集中し管理したほうが効率等の面からも非常に良いと思います。

【有川主査】
 では、議論を先に進めまして、研究環境基盤部会において、共同利用・共同研究の推進ということについて審議され報告がまとめられておりますが、今後、情報基盤センター等は再度、共同利用・共同研究の拠点としての申請をするということになるわけです。その際、報告に書いてあります「研究者コミュニティからの要望」といった点も押さえながら申請しなければなりません。情報基盤センターは元々、全国共同利用ということで設置されていますので、申請に当たり多くのことはクリアできると思いますが、少し気になるところもあります。
 例えば、物理系の共同研究などは研究者コミュニティが明確ですが、情報基盤センターの場合、そのコミュニティはどこにあるのでしょうか。あらゆる分野の人が利用することから、センター自体が研究者コミュニティなのですが、この辺をどう考えているかお話いただきたいと思います。

【米澤委員】
 我々のセンターも共同利用・共同研究拠点として申請すると思うのですが、研究者コミュニティからの要望という部分をどうするかと思います。その点について、例えば、情報処理学会や電子情報通信学会のお墨つきをもらうという方策はどうかと思っています。我々のセンターの部門にHPC関係の研究会があるので、そこを通して推薦状をいただくということが考えられます。
 これらの話に関連して、伺いたいことがあります。研究環境基盤部会の報告「学術研究の推進体制に関する審議のまとめ」の20ページの、拠点の運営体制に関して、「外部委員が半数程度以上を占める運営委員会等を設けること」とありますが、我々のセンターの運営委員会は、情報基盤センター以外の、東京大学内の先生が70パーセントぐらいを占めています。どこの大学もそうだと思いますが、20ページに書いてある、半数程度以上の外部委員というのは、外部の大学という意味になるのでしょうか。その場合、人事も外部の方が決めるということになりますが。

【三宅委員】
 私も研究環境基盤部会の委員ですので、ご説明いたしますと、外部委員というのは、外部機関に所属しているという意味ではなくて、そのコミュニティの外部の方であればいいということだったので、同じ大学内で別の学部に所属している方が、外部委員になる可能性があると理解しています。

【米澤委員】
 我々のセンターの場合は、運営委員会が人事の最終機関です。ほとんど外部の方が運営委員を務める研究所があって、人事が非常に大変だという話を聞きました。

【土屋委員】
 共同利用・共同研究拠点に関して、情報基盤センターの場合にはコミュニティの性質が違うということをはっきり言っておく必要があると思います。

【有川主査】
 研究環境基盤部会ではコミュニティとは何かということは詰めませんでした。分野に応じて、様々なコミュニティがあります。例えば、日本学術会議や学会もあるでしょうということで、敢えてこれがコミュニティであるという議論はしておりません。学術研究というのは、研究者の自発的なボトムアップ的側面が非常に大事であるということが大前提としてあり、それを表現したのが「コミュニティ」ということになっていると思います。
 ただ、さきほど話に出てきた情報処理学会や電子情報通信学会に入っていない方でも熱心な利用者がたくさんいるわけです。

【潮田委員】
 やはり研究者コミュニティではなく、情報基盤センターは、ユーザーコミュニティの性質と考えられます。

【有川主査】
 そういう意味で、情報基盤センターは、他の共同利用・共同研究拠点とは違うということを意識しておかなければいけないと思います。

【土屋委員】
 一方で、例えば物理なら物理のコミュニティで使う計算資源があり、計算の手法があって、機関ごとに計算機を持つ。それぞれの研究分野ごとに、いわば最適化した計算資源をそれぞれに配置するという状況があれば、情報基盤センターは必要ないのではないかという議論に対しては、どのように答えたらよろしいでしょうか。

【喜連川科学官】
 私が付き合いのある科学分野の方々で、自分でハードウェアのリソースを持ちたいと思っている方はおりません。
 ただ、土屋委員のご指摘のように、それぞれの機関がそれなりのポリシーを持って運用したいという考えがあると思うので、それに対して、ポリシーのレイヤーまで操作、管理できるようにしていくという技術的課題を含めた資源提供ができれば、情報基盤センターが不必要という議論にはならないと思います。

【土屋委員】
 もう一つ、よろしいですか。資料4の「我が国の情報基盤」ということで、二百数十万人の学生のうち、関係しているのはほんの何万人というような規模かもしれません。つまり、私立大学でワープロなどを教えることが業務の中心になるような、情報系センターも多くあるわけです。そのような意味で最終的にどのように、審議をまとめていくのか確認しておいたほうがよいのではないでしょうか。

【有川主査】
 小規模な大学の情報系センターは基本的な情報リテラシー教育しか行わないかもしれませんが、必要が生じたら、ここで議論している情報基盤センターとのつながりを作って対応することになるのではないでしょうか。
 繰り返しますが、今の議論は大型計算機センターから発展した情報基盤センターのことを言っておりますので、情報処理教育を主に担当するセンターと同じレベルで考えると話が複雑になります。

【三宅委員】
 しかし、情報処理系の教育が他と切り離せるものなのだろうかと思います。e-Learningや人材育成という話が出てきたときに、非常に計算科学寄りの人材育成の話をしているように見える部分と、我が国における教育の質の向上に資する情報基盤がつながっているのかよくわからない気がいたします。

【有川主査】
 京都大学は情報処理教育センターを包含する形で、情報基盤センターが設置されていますが、美濃委員いかがでしょうか。

【美濃委員】
 本学の情報基盤センターは、学内の2,000台程度のPC端末を全部マネジメントしながら、学生の相談にも応じている部門があります。したがって、決して切れているとは思っておりません。e-Learning教材を作成しようとする先生方も来られますし、その意味では教育支援を同じ情報基盤の上で行っています。だから、教育支援、研究支援から事務支援まで、同じ情報基盤だと思います。基本的には情報基盤というしっかりした土台があって、その上で教育、研究、事務も動いている。そういう意識を我々は持っています。だから、その中の研究支援のところを中心に議論しているだけであって、全国共同利用として、教育支援にまで情報基盤センターは踏み込むのかという議論が今後出てくるものと思っています。我々のセンターは特に教育支援についても力を入れておりますので、研究だけではなく、教育、事務のためにも情報基盤を使っているというスタンスだと思います。

【勝野情報課長】
 資料4がやや不透明であったため、議論を混乱させてしまったと思います。今回、情報基盤(計算資源等)という書き方をしていますが、基本的に私どもが本作業部会においてご議論いただきたいと思っているのは、学術情報基盤としての情報基盤であり、学術情報基盤とは何かということについては、18年3月報告の『学術情報基盤の今後の在り方について』の冒頭に「学術情報基盤(学術研究全般を支えるコンピュータ、ネットワーク、学術図書資料等)」という定義づけをしております。したがって、学術情報基盤としてのコンピュータ等の計算資源について、本日はご議論をいただきたいということを念頭に置いて考えております。資料4で、情報基盤センターに求められる機能ということで、人材育成が出てまいりますので、そういう意味で、学術情報基盤としての計算資源等を支える人材育成という部分と、もっとあまねく広く大学における情報教育も幅広く念頭に置いたものなのか、そこのところがやや不透明になったと思うのですけれども、学術情報基盤、学術研究を支える情報基盤、それを支える人材をどう育成していくかを念頭に置いたということがこのペーパーの本旨でございます。
 一方で、そういった幅広い情報分野、情報関係の教育については考えないのかということにつきましては、本日の資料3−2で、情報基盤センターの利用者等、国公私立大学からのヒアリングの際にも、やはりこういった教育面での支援に対する強い期待も表明されておりますので、議論の中心は先ほど申し上げたところに焦点を当てつつも、今までに出された意見を今後の議論の中でどのように整理していただくのかというところが、新しく出てきた課題としてあるのではないかと考えております。

【有川主査】
 7大学の情報基盤センターに議論を集中し過ぎたところがありましたが、議論をあまり分散させてしまうと、収拾がつかなくなりますので、そういうことを申し上げたわけでございます。

【後藤委員】
 あまり議論を広げすぎないようにしたいと思いますけれども、資料3−1で学内支援という中に、「今後、大学の様々な活動は全てデジタル化されて記録されることから、これらの情報を長期的に保存していく上で情報基盤センターがどのように関わっていくかが重要な問題である」とあります。つまりデータベースですが、それを先ほどのハードウェアのリソースと同じような意味で、どの機関がどこまで持つかということを考えなければなりません。アメリカの様子をみると、その地域の中核的な大学が、他大学の面倒もみているという状況があり、あるいは大学内のデータベースも、従来、学生は教務部門等で、教員は総務部門等が管理しているところが、統合されていく傾向にあるようです。どこまでが研究基盤であるかという区別がつきにくいと思うのですが、これから先何年の展望を考えるときには、そういった見取り図の上で、どの機関がどこまで担当するかを、お互いに考えていかなければならないかと思います。

【有川主査】
 議論は尽きないですが、項目4「我が国の学術研究を支える共通基盤としての計算環境の充実を図る観点から、情報基盤センター間の一体的な連携システムをどう構築するか。また、次世代スーパーコンピュータを含む関連機関との連携協力についてどう考えるか」に移りたいと思います。
 なお、地域・社会貢献ということで、地域の大学に関しては議論ができたのですが、もう少し議論しておいてもいいかと思います。

【土屋委員】
 資料3−2の情報基盤センター利用者等からの意見を読むと、技術職員を対象にした実務研修機会の提供と一方で言いながら、例えば、情報基盤センターを有しない大学からの意見聴取では、人事異動で職員がすぐに入れ替わってしまう大学もあると伺いました。実務研修を行う意味がないわけですから、それならもっと計算資源を寄せたほうがいいのではないかという議論になりかねないような気がして、地域貢献の性質については慎重に表現しなければいけないという感じがしました。
 もう一つは、現在、日本は都道府県ごとに国立大学があって、実際にはその周りに10、20の私立大学があるから、その面倒をある程度見るというようなことを考えたとしても、個人的な印象ですけれども、今の地方国立大学ではその力はないという感じがします。逆に7大学の情報基盤センターのみでは、面倒をみる大学数が多過ぎると思います。

【有川主査】
 情報基盤センターは全国共同利用の施設として、それぞれの地域で結構しっかりした根を張って活動しており、ユーザーコミュニティをこれまで何十年かにわたって形成してきているので、現在、情報基盤センターはすんなりとそういった活動はできるのだと思っております。
 その他の面につきまして、資料4の項目4に戻って、学術研究を支える共通基盤としての計算環境の充実を図る観点から、情報基盤センター間の一体的な連携システムをどう構築するか。そして、次世代スーパーコンピュータ等を含む関連機関との連携協力についてどう考えるかについても議論しておきたいと思います。

【小谷委員】
 次世代スーパーコンピュータの運用が開始されれば、我が国の計算資源の頂点に立つわけですが、何らかの理由で次世代スーパーコンピュータが使えなくなる場合もあると考えられますから、それに準ずる機関として、7大学の情報基盤センターを充実して、各センターに特徴を持たすべきだと思っています。例えば京都大学はこの分野に強い、東京大学はこの分野が強いなど、各情報基盤センターはある分野ではトップという、次世代スーパーコンピュータと対等ぐらいの性能を持つくらいになればいいと思います。

【有川主査】
 ひところは大型計算機センターのスーパーコンピュータがトップを走るということもあったと思いますが、現在、次世代スーパーコンピュータ並みのスパコンを、情報基盤センターが持つことは困難です。そういうことで、規模が違うスパコンがあって、ネットワークでつなげて支え合うというイメージが考えられます。その際に、今、小谷委員がおっしゃいましたように、分野ごとに特徴を持たすという考え方もあります。
 それから一方では、情報基盤センターがスーパーコンピュータを調達する時期が分かれるので、3年おきとすれば、毎年2、3の情報基盤センターが更新するというような形になると思いますが、そうすると常に新しい高機能のマシンが利用できることになります。そうした整備の仕方、分担の仕方を工夫することもできると思います。

【潮田委員】
 質問なのですが、項目4で「一体的な連携システム」と言っている意味は、ハードウェア的なことを指しているのですか、それとも運営・管理面を指しているのでしょうか。つまりハードウェア的にはネットワークでつながっているわけで、それをさらに統一的に連携させることをイメージしているのですか。

【勝野情報課長】
 文面だけではわかりづらい面もあるかと思いますが、まず基本的な問題意識として、本作業部会でのヒアリングを通じて、情報基盤センターの機能充実に対して、様々なご意見があり、それが項目3に整理されております。一方で、これに加えて、特に国立大学法人化後、情報基盤センターに対する学内からの要望、要求も非常に強くなってきていることをあわせて考えますと、項目3にあるような機能を全ての情報基盤センターが一律に持つことは、現実には難しいのではないか。そういう点から考えると、各情報���盤センターがそれぞれコアな部分は持ちつつも、様々な独自性、特色を出していくという方向もあるのではないか。そうした場合に、我が国全体としての学術研究を支える基盤として、必要な機能を持っていくためには、機能面あるいは組織面にも踏み込むのかもしれませんが、そういった連携の仕組みというものを、新たに付加することが必要ではないかと考えられます。
 例えば、今お話が出ましたけれども、各情報基盤センターがそれぞれに行っているスーパーコンピュータの定期的な調達を、各センター独自に行うことでいいのか、それとも7つの情報基盤センターが我が国全体として、調達のロードマップを描く必要があるのかを考えた場合には、そういった機能面での連携よりも、もう少し踏み込んだ連携ということもあり得るのではないかということを含めた趣旨でございます。

【有川主査】
 これは筑波大学と東京大学、京都大学のT2Kオープンスパコンも1つの事例として考えてよろしいと思います。
 本日の議論では、情報基盤センターの今後の在り方について、大事なポイントは幾つか出されていますので、事務局の方で案を作成いただきまして、さらに議論していただくということになるかと思います。
 次回は学術情報ネットワークの整備の在り方を中心に審議してまいります。

 次に、事務局より、次回の開催は平成20年7月24日(木曜日)15時から17時を予定している旨説明があり、本日の作業部会を終了した。

—了—

お問合せ先

研究振興局情報課学術基盤整備室

(研究振興局情報課学術基盤整備室)