第12期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第1回)議事録

1.日時

令和5年6月8日(木曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省会議室及び Web 会議(Webex)

3.議題

  1. 国際戦略委員会運営規則等について
  2. 国際的な科学技術・イノベーション活動の現状について
  3. その他

4.出席者

委員

菅野委員(主査)、相田(卓)委員、相田(美砂)委員、飯塚委員、石原委員、磯田委員、小川委員、梶原委員、狩野委員(主査代理)、鈴木委員、野本委員、林委員、松本委員

文部科学省

柿田科学技術・学術政策局長、清浦大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、大土井科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)、飯塚科学技術・学術政策局参事官(国際戦略担当)付参事官補佐

5.議事録

第12期科学技術・学術審議会 国際戦略委員会(第1回)

令和5年6月8日

 

【飯塚補佐】  では、定刻となりましたので、第12期科学技術・学術審議会国際戦略委員会を開催いたします。
 文部科学省科学技術・学術政策局参事官(国際担当)付の飯塚でございます。よろしくお願いいたします。
 本日は第12期科学技術・学術審議会における最初の国際戦略委員会でございます。委員の皆様におかれましては、本委員会の委員をお引き受けいただき誠にありがとうございます。また御多忙のところ御出席いただきまして、重ねて感謝申し上げます。
 初めに、開催に当たっての留意事項を申し上げます。配付資料につきましては、会場に御出席の委員の皆様はお手元にあります資料を御覧ください。オンラインで御出席の皆様は、事前に事務局から送付しましたファイルを御覧ください。座席表、議事次第、資料1から3、及び参考資料1から4となっております。なお、資料はオンラインの先生の方々は資料を一つのPDFにまとめており、しおり機能で各資料をすぐ開けるようにしておりますので御活用ください。ファイルの不備や操作方法に関してのお尋ねなどがございましたら、事務局までお知らせください。
 次に、発言される際の留意事項です。御発言がある場合は、会場に御出席の委員におかれては挙手を、オンラインで御出席の委員におかれてはWebexの挙手ボタンを押していただきますようお願いいたします。また、オンラインで御出席の皆様は、御発言されないときはマイクの設定をミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はマイク設定のミュートを解除し、御発言をお願いいたします。また、御発言の際はオンライン参加者にも分かりやすいよう、最初に御自身のお名前を御発言いただきますようお願いいたします。
 なお、本日の委員会は公開で開催させていただいております。
 続きまして、本委員会の委員の皆様を事務局より御紹介いたします。資料1の委員名簿を御覧いただきたいと思います。私から名前の順で御紹介させていただきます。
 お一人目、相田卓三委員です。
 お二人目、相田美砂子委員です。本日はオンラインでの御出席になっております。
 次、続きまして飯塚委員です。
 石原委員です。
 礒田委員です。本日はオンラインでの御出席になります。
 小川委員です。
 梶原委員です。
 次、狩野委員です。
 鈴木委員です。
 野本委員です。
 林委員です。
 すみません、飛ばしてしまって。菅野委員。申し訳ないです。大変失礼しました。
 林委員、本日はオンラインです。
 最後になりまして、松本委員です。こちらもオンラインでの御出席になります。
 続きまして、文部科学省の出席者を御紹介させていただきます。
 科学技術・学術政策局の柿田局長。
【柿田局長】  柿田でございます。よろしくお願いいたします。
【飯塚補佐】  清浦審議官。
【清浦審議官】  清浦です。よろしくお願いします。
【飯塚補佐】  大土井参事官です。
【大土井参事官】  大土井でございます。よろしくお願いします。
【飯塚補佐】  本委員会は、科学技術・学術審議会の決定により設置されているものであり、主査は、科学技術・学術審議会会長より指名されることとされております。審議会の大野会長より、菅野委員が本委員会の主査として指名されております。よろしくお願いいたします。また、主査代理については、菅野主査より狩野委員が指名されております。よろしくお願いいたします。
 それでは、これからの議事については菅野主査に進行をお願いいたします。
【菅野主査】  それでは、ただいまから第12期科学技術・学術審議会国際戦略委員会を開会いたします。今回は第1回目の委員会でありますので、まず私から一言御挨拶申し上げます。この国際戦略委員会の主査を務めさせていただくことになりました。これからどうぞよろしくお願いいたします。
 科学技術の国際戦略は、これからますます重要になっていくことは明らかです。現在、世界の中で日本の科学技術の位置が相対的に低下しているようなことが言われています。私どものサイエンスの現場では、私も含めて熱意を持って取り組み、十分世界の中で戦っていて、そんなことはないと言いたいところですが、実際に様々なデータを突きつけられますと愕然とするところもありますし、思い当たる点も多々あります。分野によって状況は違うと思いますが、今後の戦略が議論できればと思います。
 私自身は、エネルギーに関する分野で材料開発をこれまで行ってきました。新しい材料開発をおこなって、蓄電池などのデバイスに応用する研究が主なものです。特にリチウムイオン電池が開発される前の生みの苦しみの時代から黎明期、発展期、それからさらに次世代の電池開発に進む研究や技術開発の目まぐるしい展開の過程に実際に身を置いて、そこで基礎研究を行ってまいりました。その経験の中で科学と技術、産業に関して、いろいろと思うところもありますけれども、それはそれとしまして、この会議では委員の皆様とともに科学技術の戦略について、有意義な議論ができるように努めたいと考えています。何とぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、文部科学省を代表しまして柿田科学技術・学術政策局長より、一言御挨拶をお願いいたします。
【柿田局長】  ありがとうございます。今、御紹介いただきました、文科省の科学技術・学術政策局長の柿田でございます。本日は大変お忙しい中、先生方に御参画をいただきまして大変ありがとうございます。第12期の科学技術・学術審議会の国際戦略委員会、第1回目ということで一言御挨拶を申し上げたいと思います。
 気候変動、エネルギー、感染症、様々な本当に地球規模の課題、あるいは技術の急速な発展、生成系AIとか、そういったこともそうですけれども、非常に今までにないようなことが世界中で今、起こってきていると。国際社会が大きな転換期にあるように思います。そういった中で、こういった課題を解決していく上で科学技術イノベーションの役割というものは、やはり年々ますます高まっているように感じております。
 私も役人、もう30年以上やっておりまして、科学技術・学術審議会の中に国際委員会というのは昔からあるんですけれども、参加したのは多分、今日が初めてかもしれないですけれども、ようやく局長になって出ることになったわけなんですけれども、この国際戦略委員会という名のとおり、まさにこの国際という事柄について戦略的に取り扱うという、まさに今、そういう時代というか、そういう時になってきたのかなというように思っております。
 先ほど主査からも我が国の研究力の低下に関しての御発言ございましたけれども、相対的に下がってきているのではないかというような様々なデータも実際問題ありますし、様々国際的なトップ集団からの脱落とか、あるいは若手人材の国際的な育成の機会も損失されているのではないかというような、そういった様々な課題もあるように思います。そういった状況の中で今、日本が技術イノベーションをいかに強くしていくかと、いかに戦略的にやっていくかというのがますます求められているように思います。
 そういう中で先般、G7での議論もございましたけれども、あるいはほかの国との様々なバイの会談もやってきたわけでございますけれども、世界各国が日本との間での協力関係というか共同研究、人材の育成を含めてやりたいという物すごく強い声の高まりというものを、ひしひしと文科省としても感じております。
 そういう中で、昨年度の補正予算で500億円の基金を大土井参事官が確保しまして、それでいよいよこれから先進国との間で先端的な分野における国際共同研究をやっていくと、共同研究の中で若手を含めた人材の交流とか育成、そういったことも織り込みながら、まさに戦略的にやっていこうというような新しいプログラムも始まるところであります。この委員会でも様々、これまで御議論、御助言をいただいてそのプログラムの中に我々、生かしていきながら進めている状況でございます。また、加えてASEANといった地政学上、政策上、重要な国々との科学技術協力も進めてまいりたいと考えております。
 こういったことで大変世の中、物すごいスピードで変わっていく中で、科学技術の分野においての国際、この問題を戦略的に引き続き我々、皆様からの御意見、アドバイスをいただきながら進めてまいりたいと思っておりますので、どうぞ忌憚のない御意見をいただいて、そして我々の政策もさらにより良くしていくために御指導いただければと思います。
 以上でございます。よろしくお願いします。
【菅野主査】  柿田局長、どうもありがとうございました。
 それでは、ここから議事に入ります。まず、国際戦略委員会の運営規則等について、を議題といたします。本委員会の運営については、本委員会が定めることとされております。案については、事務局より御説明をお願いいたします。
【飯塚補佐】  それでは、事務局から御説明させていただきます。資料の2-1、資料2-2を御覧ください。まず2-1からですが、2-1、科学技術・学術審議会国際戦略委員会運営規則について説明させていただきます。
 こちら、運営規則ということで本委員会の運営の規則を定めております。第1条に規則の趣旨を定めております。その次、第2条は本委員会の下に作業部会を設置することができまして、それに係る諸々の手続等を定めさせていただいております。第3条は議事になっておりまして、委員や臨時委員の過半数が出席しなければ会議が成立しないことを定めております。第4条は書面による議決を定めております。第5条は会議の公開、第6条が議事録の公表、第7条はウェブ会議システムの利用について定めております。そして、第8条ではこの運営規則で定めるもののほか、運営に関し、必要な事項は主査が委員会等に諮って定めることと記載しております。
 続きまして、公開の手続について資料の2-2を御覧ください。科学技術・学術審議会令第11条及び、科学技術・学術審議会国際戦略委員会運営規則案第8条に基づきまして、本委員会の公開の手続について定めることとされております。1として、会議の開催に関する公表日について、2番には傍聴について、3番では関係者の陪席人数について定めております。
 事務局からの説明は以上です。
【菅野主査】  では、ただいまの事務局からの御説明のあった運営規則の案、及び公開の手続案について、御異議はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【菅野主査】  それでは、案のとおり定めます。
 それでは、次の議題です。国際的な科学技術・イノベーション活動等の現状について、に移ります。本日は第1回の委員会ですので、我が国の国際的な科学技術・イノベーション活動の現状と課題について意見交換をしたいと思います。まず、話題提供として資料3に基づいて事務局より御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【飯塚補佐】  引き続きまして、また私から資料3を説明させていただきます。資料3、国際的な科学技術・イノベーション活動の現状についてということで、大きく2点、現在の文部科学省における国際的な科学技術の施策の取組状況について御説明させていただき、2点目としては、直近の科学技術外交の結果などについて御報告させていただければと考えております。
 まず1点目、スライド3ページを御確認ください。スライド3ページ目、4ページ目ですけれども、第11期の国際戦略委員会におきまして、科学技術の国際展開の戦略的推進に向けて及び国際展開に関する戦略という2つの報告をおまとめいただいております。
 スライド3ページ目の戦略的推進に向けてにおきましては、まず上段を御覧いただければですけれども、世界秩序の再編や気候変動、パンデミック等のグローバルアジェンダの顕在化、さらには国際的な研究コミュニティーにおける存在感も低下している。こういった現状認識を改めて委員会で御確認いただきまして、これに基づきまして、ちょうど中段ですけれども国際交流協力の目的と考慮すべき観点をまとめていただいております。具体的には、研究力の強化や新たな価値の創造や社会課題の解決、科学技術外交、こういった観点を考慮すべきとしてまとめていただいております。
 そしてこの考慮すべき観点を踏まえまして、具体的な取組の方向性というもの、一番下の段のところで整理いただいております。大きくは国際頭脳循環と国際共同研究、それぞれ何をすべき、どういった方向性でやっていくべきかといった大枠の方向性をおまとめいただきました。
 続きまして、スライド4を御確認いただければですけれども、先ほどスライド3で方向性というものをお示しいただきまして、それを具体化する形でこの4ページの戦略をおまとめいただいております。具体的に取り組むべき施策としては、ちょうど資料の下側になりますとおり、国際頭脳循環のアウトバウンド、インバウンド、国際共同研究の拡大、ジョイント・ディグリーの推進、博士課程学生支援、この5つの観点で具体的な方策というのを定めていただいております。
 アウトバウンドであれば、今も従前からやっております基盤的なフェローシップ型渡航を引き続き推進するとか、あと移籍型渡航の新たな流動モードを促進するようなことを示していただきまして、インバウンドであればWPIで得られた国際的な研究環境整備のポイントをどんどん水平展開していくことが重要だと。
 また、国際共同研究の拡大という観点では、第3層の国際共同研究予算が近年伸びていないと。諸外国からtoo little, too lateと言われており、そういったところを改善するためにしっかりと予算を拡充すべきだといったことをお示しいただきましたと。そのほか、ジョイント・ディグリーなんかも、なお一層推進すべきだと。博士課程学生支援に関しては経済的支援を抜本的に拡充する、あるいはリサーチアシスタントとしての処遇改善を促進するようなことをお示しいただいております。
 こういったお示しいただいたものに沿って今、文部科学省では様々な具体的な取組を進めているところです。それらを現状の取組としてまとめているものがスライド5ページ以降になります。5ページ以降、かなりビジーな資料になっておりますので、ポイントだけ御説明させていただきます。
 まず5ページ目ですけれども、こちらは国際頭脳循環・国際共同研究の推進ということで、トップダウン、ボトムアップの両輪の観点から頭脳循環、共同研究を現在、推進しているところです。R5年度予算額としては約41億円措置しております。ボトムアップとして研究者の発意という観点からも科研費の国際先導なんかをしっかり進めているところです。
 一方で、トップダウンとしては新興国、途上国向けということで、ODAを利用した地球規模課題の解決に資するような国際共同研究をSATREPSで実施したりですとか、また科学技術合同委員会なので相手国との合意に基づいた国際共同研究を推進というようなこともSICORPの中で実施しております。加えて、先ほどの戦略の中でもお示しいただいている国際共同研究の予算の拡充ということで、R4年度補正予算で約500億円の基金を造成しまして、先端国際共同研究推進事業を新たに創設しているところです。
 スライドを次おめくりいただきまして今、申し上げました先端国際共同研究推進事業につきましては6ページを御覧ください。この中では、真ん中の事業概要のところを御覧いただければですけれども、高い科学技術水準を有する欧米等先進国を対象として、政府主導で設定する先端分野での大型国際共同研究を実施するための支援を今、まさに着手しているところです。一昨日6月6日よりJSTとAMEDでの公募を開始いたしました。政府で分野を選定することとなっておりまして、具体的には今回、バイオ、AI情報、マテリアル、半導体、エネルギー、量子、通信、あと健康医療、この8分野での国際共同研究を進めるということで進めているところです。
 続きまして7ページ、8ページ、9ページに関してはSICORP、SATREPS、科研費国際先導の詳細なので、ここは割愛させていただきます。
 11ページは、戦略のインバウンドの中でも述べられておりますWPIについてなんですけれども、WPIに関しまして令和5年度は約71億円の予算を措置しておりまして、引き続きしっかりWPIの事業を進めていっているところです。
 続きまして、12ページ、13ページ、これはジョイント・ディグリーですけれども、12ページはジョイント・ディグリーの概要なのでこちらも割愛させていただきますが、13ページ、新たな動きとして、今後の方向性のところに書いてありますけれども、本年4月に内閣官房の教育未来創造会議において第二次提言がまとめられまして、その中ではジョイント・ディグリー促進が重要だということで今現在、2033年までに27プログラムから50プログラムに増やすことが目標として設定されております。これに向けた見直し案というのが今、関係部局で進められているところです。
 続きまして14ページ、博士課程学生の支援ですが、こちらに関しても令和5年度約9,000人を対象とした経済的支援の強化というものを実施し、1つ目のポツの米印で書いておりますが、R2年度生活費相当額を受給していた博士課程学生はR2年度と比較して一応R5年度は約2倍で、1万8,000人程度になると推計しているところです。また、RAの処遇改善についても今、引き続き推進をしているところです。
 以上が文部科学省から、施策の取組状況について御説明させていただきました。
 続きましては、科学技術国際関係の直近の動きについて御説明させていただきます。スライド16ページ、17ページを御覧いただければですが、本年、日本がG7の議長国ということで、まず5月12日から14日の3日間で仙台市の秋保温泉においてG7科学技術大臣会合が開催されました。今回は「信頼に基づく、オープンで発展性のある研究エコシステムの実現」をテーマとして取り上げ、ここに書いてあるようなことがコミュニケにも盛り込まれているところです。特に第3章(4)に書いてありますが、国際的な人材の移動及び循環の促進という点も盛り込まれているところです。
 続きまして、17ページも御確認いただければですが、教育大臣会合もほぼ同じタイミングで開催されまして、富山県と、あと石川県で開催されております。基本的に教育なので子供たちの教育というのが中心ですけれども、テーマの中ではアントレプレナーシップ教育ですとか国際頭脳循環についても取り上げられ、コミュニケにも盛り込まれているところです。
 続きまして、18ページを御覧ください。G7期間中、関係閣僚が来日されましたので、この機会に永岡大臣等々とバイ会談というのが開催されております。具体的にはイギリス、ジョージ・フリーマンDSIT閣外大臣とのバイ会談が実施され、ほかにドイツ、フランス、イタリアの教育研究大臣等々とバイ会談をしております。その中で、科学技術分野における協力の促進というのも議論をされているところです。
 19ページ目ですが、このG7期間中、様々な科学技術関係の協定も締結されているところです。まず、アメリカとは文科省と国務省の間で教育関係に関する覚書が締結されました。この政府関係の覚書に基づく形で、下側ですけれども、東京大学とシカゴ大学やマイクロン社と広島大学等の大学群が機関間協定を締結しているところですと。東京大学とシカゴ大学に関しては量子物理学、マイクロン社と広島大学等に関しては半導体の分野での連携を締結しております。
 また、イギリスであれば東京大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、あと日立製作所の中でグリーンテックに関する協力が締結されております。また、あとJSTとUKRIでは半導体協力に関する覚書が締結されておるところです。また、イタリアに関しては文科省とイタリア研究・大学省との間で大学や研究機関、研究者同士の交流促進や科学技術・研究協力を目的とした協力覚書にも締結しているものです。
 続きまして20ページですが、G7のときに大体ほぼ同じタイミングで日米科学技術協力合同高級委員会も開催しております。大体4年ごとぐらいで開催されるものですけれども、今回も4年ぶりに、日本の東京で日本側は永岡文科大臣、高市科学技術政策担当大臣、アメリカ側はプラバカー大統領府、科学技術政策局長が共同議長を務める形で開催しております。科学技術イノベーション政策やデータサイエンス、AI、量子技術といった重要分野について議論をしているところです。
 そして最後に、簡単に今後の国際的なイベントというのもまとめさせていただいております。メインのイベントとしては、7月にG20研究大臣会合が開催され、あとG20の首脳サミットが9月に開催される予定でおります。またあと、今年は日ASEANが50周年ということで、それに関連するイベントというのが幾つか開催される予定でおりまして、8月であればイノベーションイベントがタイ、バンコクで開催される予定ですと。そして一番の大きなイベントとしては、12月に日ASEAN特別首脳会合が開催される予定でおります。そのほかに10月、これは定例行事ですがSTSフォーラムが開催されるとなっております。また2024年、来年なんですけれども4月にOECD、CSTPの閣僚級会合が、これは約10年ぶりに閣僚級としての会合が開催される例です。
 以上、非常に長い説明になりましたが、事務局からの説明は終わります。
【菅野主査】  御説明どうもありがとうございました。御質問は、この後の意見交換の中で併せていただければと思います。
 それでは、ただいまの説明も踏まえまして科学技術分野における国際戦略に関して、現状の課題や中長期的な視点から取り組むべき事項等について、各委員の方々全員から御意見を自己紹介も含めていただければと考えています。それではまずはお名前、名簿順で取りあえずはお一人3分程度、御意見をいただきたいと思います。
 それではまず、相田卓三先生。
【相田(卓)委員】  すいません、アレルギーで。コロナではありませんので御心配なく。
【菅野主査】  よろしくお願いいたします。
【相田(卓)委員】  私自身は国際頭脳循環のプログラム、JSTがやっているものの立ち上げと、POとしてそのプログラムに関わっています。プログラムは大変すばらしく、いろいろな懸念を払拭していきたいという思いが全体的に満ちており、今年、既に公募を開始したんですけれども。多分、大きな変化が現れるのではないかと思います。
 一方で、教育の現場に身を置く人間として非常に大きな懸念があるのは、例えば学生にとってアカデミックな研究の分野に進んでいくことが昔ほど魅力がないわけですね。一番深刻なことの一つは、日本における研究者とか教員の処遇が国際スタンダードからかけ離れたものになっている点でして、学生はそれを見ております。理系で学位を取得したものの、アカデミックではなくコンサルティングに進んでいくとか、優秀な学生ほど先が見えない分野には来ないようです。
 ここ数年博士課程のサポートを増やすことを随分やっていただいたわけですけど、やはり学生は今がどうかというよりは、先を見ているようです。日本の研究がもし世界のトップ、もう一度かつてのトップに躍り出るためには、教員や研究者の給与体系の改善は避けては通れないのではないかと考えております。今のままではトップの国際人材は日本には来ないと思います。
 20年前、30年前の大学ランキングでは、我々の大学はハーバードの次ぐらいに来ていたそうですが、今、見る影もない状況になっております。国際的に無視され始めている。前の五神総長のときに武者修行というプログラムをつくりまして、大学院生が一ヶ月間ほど海外のラボに滞在し、様々な経験をする試みをサポートすることにしたのですが、初回、そのプログラムに応募したのは全員留学生だったそうです。そういうことが続いておりまして。
 海外に行ってみたい、あるいは海外でいろいろなものを見てきたいという思いですが、アメリカでは例えばハーバードの学生でもギャップを設けて、例えばインドに半年ぐらい行っていろいろなことを見たり、あるいは体験したりし、自分をリノベートするわけですけど、日本では、ベルトコンベアにのって上まで継続的に上がっていくことが大事で、落下したらアウトだよというメッセージが社会に満ちているわけですね。なので、学生は落下しないように気を遣っているので、その間に不確定性の高い留学を入れるようなことはないんです。そうするとガラパゴスですので、入ってくる情報が非常に限られているということで、ステレオタイプの人間を増殖していく状況になります。なので、こういう政府の仕事をさせていただき、いいプログラムだなと思いつつも、いわゆる出口のところに社会との大きなギャップを感じます。
 今年、特にコロナの後で人手不足ということがありまして、もう既に就活が始まっております。マスターの1年に入って、これからいろいろ磨いていかなきゃというところですが、就活が始まっているんです。ですから大学院生が博士課程に進学するか否かを考えるどころではない状況になっていることも、ぜひお考えいただきたいと思います。ありがとうございました。
【菅野主査】  ありがとうございました。それでは次に、オンラインで参加いただいています相田美砂子委員、お願いいたします。
【相田(美)委員】  広島大学の相田です。よろしくお願いします。
 私はもともと化学が専門でして、専門の化学とは別に十数年前から博士人材の養成とか、それから女性研究者支援の取組をずっと続けています。博士人材の育成の中で企業さんへの長期インターンシップをという取組を実施していたときに、学生さんの希望で国内の企業さんに長期インターンシップに行くのももちろん多いんですけれども、海外の大学とか研究機関にインターンシップに行きたいという学生さんもいたので、経費的には厳しかったんですけれども何とかやりくりして、ぜいたくしないで暮らせるレベルの支援をして何人かの学生さんを海外に派遣しました。
 それぞれの学生の目的に応じて、みなさん、結構満足して帰ってきたなと思っております。最近、先ほど相田卓三先生がおっしゃったように学生さん自身もいろいろ大変で、悠長なこと言っていられないということももちろんあるんですけども、学生さんによっては海外に行こうという気がある人がいないわけではないので、そういう学生さんに、もうちょっと手を差し伸べられるような施策がもっとあるといいなと思っております。
 博士人材の取組とは別に若手研究人材、テニュアトラック教員を海外に派遣して、世界で活躍できる研究者を養成するというプログラムを今、進めているんですけれども、新型コロナウィルスの影響で海外に二、三年行けなかったんですが、昨年の後半から海外に行けるようになってきて、やっと本来の目的の内容を進めることができるようにはなっているんですけども、元の状態に戻るには、もうちょっとかかるかなと思っています。
 ここまでが私の自己紹介だったんですけれども、もう一言だけちょっと感じていることを言わせていただくと、今日、先ほど御紹介いただいたように多くの取組を随分長い間、文科省の方々も苦労して進めてくださっていると思うんですけれども、私、それぞれの事業の目標をもっと明確にすべきだと思うんです。
 例えば、研究力を測るのにトップ10%の論文がどうのとか、その割合がどうのとか、そんなことでは研究力は測れないことは当然なので、国際的な取組を戦略的に進めるんだったならば、なおさらのこと、どういう状態にしたいかということを明確にできるような指標が必要だと思うんです。それぞれの取組によって、つまり文科省全体としてはこういうことを目標とする、その中のこの取組は、特にこれはこれを目標としているということを分かりやすくすれば、その取組に関わろうとする人たちにとっても自分はこういうところをもっとやったほうがいい、だからこれをもうちょっと努力しよう、と明確なメッセージが伝わるんじゃないのかなと思うし、恐らく文科省も説明しやすくなるのではないかなと感じます。
 取り急ぎ以上です。どうぞよろしくお願いします。
【菅野主査】  相田先生、どうもありがとうございました。なかなか難しい課題を提示していただいたと思います。
 それでは、次は飯塚委員。
【飯塚委員】  ありがとうございます。政策研究大学院大学の飯塚と申します。私はこちらに2018年から在籍しておりますが、それ前、10年ほど海外の研究所におりました。ですので、私がこれから申し上げることはその経験に基づいたことと、最近、それからあと国際的な学会に行ったときの印象も含めて申し上げます。
 今までの委員の方々もおっしゃられたように、若い世代がなかなかあまり国際的な場所に行かないことも、何と言うかな、この間、学会に行って感じたところです。日本人はいるんですけど、大体いる人は海外組。海外組の方というのは、ここの去年出されたこの方策の中でインバウンドもアウトバウンドの両方ともにもカバーされていない。ですので、そこの部分をもしかしてカバーするともう少しローハンギングフルーツというか、もう海外に行っている人をどうやってその人たちを日本に引きつけるか、または日本に来てもらって、海外の人も来てもらうようにするというか、もう慣れている人にまずネットワークを持ってきてもらって、そこからスタートする一つの手もあるのかなというのが1点ございました。
 あともう一つ、若い頃から学会に出ているというのは、それから先のキャリアアップするにも、それから研究のビズビリティを広げるためには非常に重要なんだと思うんですが、そういった機会を日本に持ってくるというか、そういう学会を日本に招致するところのインセンティブがある程度あったほうがいいのではないか。
 それというのは非常に先生にとってはヘビー労働のかなりアクティビティーだと思うんですが、それに対してのある程度の支援とか、または評価というのがあると、より国際的な学会が日本であって、日本に学会があるということはより学生さんが目に触れたりする、学部の頃からそういった学術的なやり取りを目に触れることができることは、一つのオポチュニティとして重要なのかなと思いました。やっぱりそういった経験があると、今度やってみようとか、行ってみようという気になるのではないかなというのが一つ御提案でございます。
 あと一つ、こちらに多分紹介されていた国際共同研究事業というのは私、いただいてやっているんです。有機RIというところでJSPSが合同でやっている研究なんですが、一つ、ここで実際に行っていて、ちょっとこれ、もう少しこうあったらいいのかなと思う点が1点あって、それは共同の予算なんです。今のやり方というのはJSPS、それからUKRI両方が予算をつけて、両方のチームが一緒に研究しようというやり方なんですが、いかんせん、何か一緒にやろうといったときに一緒のお金が若干あったほうがいい。それはだから、全体の予算10%でも何でもいいんですが、何かやろうと思ったときに例えばUKからチームが来て日本でやろうというときに、こちらは通訳雇うと、こちらのお金は出せませんと、あちらのお金でやりなさいとか、何かそういうギスギスしたやり取り、何かこちらで雇ったほうが絶対的に安くつくとか。
 それとかあと、データを購入するに当たってそのデータをシェアして使えたりとか、なかなかできないという点がございますので、何らかその辺をちょっと柔軟にやれると、より共同の研究が進んだり、または交流が進むのではないかなと思いました。
 私からは多分この2点です。またいろいろ皆さんからお伺いして御提示させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。
【菅野主査】  ありがとうございました。海外での日本人の活躍、それから実際の実務について御指摘いただきました。
 それでは次に、石原委員ですね。
【石原委員】  千葉大学の石原です。私の専門は本当に基礎科学中の基礎科学で、現在は南極点にあるニュートリノ望遠鏡という装置を使って宇宙の研究を行っています。私も千葉大学にくる前は8年ほどアメリカにいました。
 そうですね、私も2つほど、思うことがあります。一つは昨今、国際化ということで大学レベルまで下りてくる様々な支援があって、非常に喜ばしいことだと思っているんですが、やはり現場まで来ると、それがなぜ支援として下りてきたのかというのが、各教員にはあまり伝わっていないところがあります。例えばジョイント・ディグリーの推進も、成功すれば非常に有効な施策になるのですが、現場の教員たちが何のためにジョイント・ディグリーを推進するのかという点で、あまり理解や納得をしてないものですから、結局、数合わせになってしまうという面があります。そうすると国際化に向けての試行錯誤はしていただきたいんですが、数合わせのための右往左往をすることになってしまっており、それはしてほしくないと思っています。まずは、大学の上のレベルの人たちが国際化がなぜ必要なのかという点を、心から納得、理解したうえで実際に各大学で制度を推進していただくことが非常に重要であるという点が一つです。そうでないとせっかくの制度も有効性は限られてしまいます。
 私の大学レベルの国際化の必要性の理解では、多様性というのが非常に重要となります。多様な価値観が当たり前になることよって、もう全く違うバックグラウンドの人たちに自分の意見を伝えるということや、また、違ったバックグラウンドを持った方たちの意見をちゃんと自分の中でかみ砕いて理解できるという、そういうやり取りができるようになる。それでこそ、海外に行って自分の意見がもうどんどん言えるような人間になっていくものだと思います。まず、制度が天下り式に降りてくる前や、一つ一つの施策を推し進めるときに、制度を通して何を達成したのかという点を丁寧に、上の方たちに説明していくということが必要かなというのを感じているところです。
 また、私は、国際共同研究を行っていますが、確かにtoo little, too lateというのは長い間、言われていることです。too littleを変えようとすると大変な予算が必要になるので、それはもういろいろなやり方で予算を増やしていくしかありません。一方、too lateに関しては少なくともそんなに予算を使わずに、工夫をすることで改善し戦略的に進めて評価を上げることができるところかなと思っています。
 例えば、我々は日本にいますが、海外の機関と協議の上、足並みをそろえることが重要です。そのためにはファンディングエージェンシーレベルの会合にちゃんと日本から出席して、海外ではどういう長期戦略や展望を持っているかというのを理解することです。基礎物理とかになりますともう最先端のテーマが幾つかありますが、それは10年20年計画になるので、それらをどういうタイミングで次の一歩を踏み出させるのかというのを、国際的に話し合う場に参加して、日本の戦略も含め意見を交換するというのが大切です。話し合ったうえで戦略的に次を見据えるということをするためには、草の根のレベルの研究者の努力だけではなくて、ハイレベルな話合いが必要なのではないかなと思っています。
 しかし一方で、現場の研究者や予算機関の皆さんはお忙しい、というのもひしひしと感じているところなので、提案としては、例えば日本は、海外の大学に比べ退官年齢が大変一律という点がありますが、65歳になってもそれまで国際研究で研究を引っ張ってきた研究者は分野に寄らず国際実験でいかに物事を進めるのかという点について多くの知見を持っています。例えば、まだ十分にバイタリティのあるそのような方たちに研究費で国際的に必要とされている部分というのを精査していただき、国際ファンディングエージェンシー間を取り持ち研究者レベルからの意見を伝えてもらうという形で関係性を構築し、少ない予算でもビジビリティを上げるための工夫を進める。これであれば当面そんなに大きな予算を使わずにできる。too lateの代わりに、大きな額じゃなくてもまさに必要なところにちょうどいいタイミングで出すことができるというだけでかなり国際的な評価も上がるんです。うまく回れば非常に効率のいい予算の使い方になるんではないかなということを考えております。
 以上になります。
【菅野主査】  ありがとうございました。研究現場と施策との乖離について、それから実際の国際共同のやり方について御意見いただきました。
 次はオンラインですね。礒田委員、お願いできますでしょうか。
【礒田委員】  礒田でございます。お願いいたします。私は食品機能学、天然物創薬という分野が専門なんですけれども、筑波大学に地中海・北アフリカ研究センターというところがありまして、そちらの担当ということもあり、当時、科研費基盤Aの海外学術という枠から始まりまして、あとSATREPSという、先ほど御紹介ありました案件を2回することにより十五、六年、そういった食薬資源の研究というのをやってきておりまして、その中で昨今、グローバルサウスの対応型のいろいろな政策的なことが出てきているんですけれども、それを考えて最近、現地の食薬を利用して、基礎研究からサプライチェーンの構築までという一気通貫の研究などが総合研究としてできるのであれば、グローバルサウスの地域においても、旧来の北半球だけではなく南アジアとか西アフリカ、サブサハラとか、いろいろなところで展開できるのではないかということで考えているところです。
 そのときに民間企業の参画いうのは非常に重要で、研究のシーズを実用化して事業化して、現地の企業と日本企業が連携してサプライチェーンが、あるいはバリューチェーンが構築されるとか、あるいはそういった産業創出によって雇用が創出できて、途上国においてもグローバルサウスにおいても雇用創出につながるところは非常に期待したい。特に日本はそういうところを強化していくことで、非常に親日的な対応をいただけるところもあると思いますし。
 また日本の大学院生は国際化ということで留学生と一緒に研究もやりますし、試験とか授業とかも出ているわけですけれども当然、英語でコミュニケーションして、そういう海外でも通用する人材というのは国内での日頃の英語でのコミュニケーションにより自分のプレゼンが英語でできるようになる、そういうことから海外に行って働いてみようかなというモチベーションにつながると、ずっと見ていて思っていました。特に途上国の学生なんかも非常にモチベーションが高くて、最近、日本企業に働きたいという学生もたくさんいるように思います。そういったときに、人材の多様性というところを産業界とアカデミアと両方で協力しながら構築していく研究体制というのが、御支援いただけるといいのかなと、考えました。
 以上になります。
【菅野主査】  ありがとうございました。食資源に関連して、途上国からの観点という視点で御意見いただきました。
 それでは次、小川委員、お願いいたします。
【小川委員】  ありがとうございます。経団連の産業技術本部長をしております、小川と申します。私は前期から務めさせていただいておりますが、多くの委員の皆さんと違ってアカデミアの研究現場のことを知っているわけでもなく、また企業の研究現場につきましては、ここにいらっしゃる鈴木委員や野本委員のほうがよほどよく御存じということで、いつも少しアウェイ感を感じながら参加しております。所管しております産業技術本部では科学技術イノベーション政策のほか、ヘルスケア、バイオテクノロジー、それからデジタルトランスフォーメーション、サイバーセキュリティー、知財、加えて宇宙防衛まで幅広くやっておりまして、一見ばらばらなようなんですけれども、昨今それらが非常にお互いに関連している事柄であることを実感しております。そうした分野につきまして経済界、特に経団連活動に参加しているある程度企業のトップに近い方々の感じをお伝えできると、何らか関連してくるところが出てくるかなと、そういう役割かなと心得ております。
 そういう中で最近、科学技術イノベーション等、国際戦略という関連で3つぐらい大きなポイントを感じております。一つは、まずやはりこういう御時世ということもあってトップの方々は、経済安保に敏感になっています。グローバルに展開している企業は当然のことながら研究開発活動もグローバルに行っている、あまり国内とか海外の大学とかということも意識せずに、必要なところとやるところではありますが、他方で国の競争力にとって不可欠な重要な技術分野につきましては、日本の中でしっかりと力を養っていく必要があるという問題意識は高いと思います。
 もちろん日本だけで孤立してやるわけにいきませんので、同志国としっかり連携もしつつ、しかし競争ということも意識しながら、日本の強みということをしっかり意識しながらやっていく必要があることは皆さん、非常におっしゃっていまして、そういったところも踏まえて、国内の産学連携もしっかりできればと感じているところです。
 2つ目としましては、最近ますます発言する方が増えている、ルール形成ということがあります。釈迦に説法ですが、よく「技術で勝ってビジネスで負ける」と言われるように、もともと技術は日本の大学の先生が発明されたのに、実はそれでもうけたのは海外の企業だったということが今までもさんざんあったと聞いています。
 やはり研究開発の初期の段階から大学、企業ともに産学官が連携をして、しっかりその技術を事業化して、さらにグローバルに市場も獲得していけるようなルール形成というところまで見据えて、一緒にやっていく必要があるのではないかという意識をますます強くしているところで、これは今年度、企業として何ができるかというところは経団連でも力を入れて議論していきたいと思っております。ルール形成活動においては、本当にアカデミアの皆様の御協力が不可欠ですので、ぜひ緊密に連携をさせていただければと思います。
 最後3つ目なんですけれども、研究開発の成果を社会実装するというときに、どうしても大企業は力はありますが、スピード感に欠けるところがあると思っています。あと、既存の事業の改善は非常に上手なのですが、破壊的なイノベーションで全く新しいビジネスを生み出すところは、やはりスタートアップに期待すべきではないかと思います。アメリカと日本のここ二、三十年の経済成長の差分というのが、実はGAFAMを除くとあまり差はなくて、GAFAMの成長の部分が差のほとんどを占めているというデータもあったりします。
 ですので、経団連としては大企業の組織ということではなくて日本経済全体を考えると、やはりスタートアップの振興に力を入れていきたいと思って、昨年の3月にはまとめて提言も出しているところです。こちらは政府にもしっかり受け止めていただいて今、全体で5か年計画ということで進めていただいていて大変ありがたいと思いますが、経団連としても特に大学発スタートアップのところは日本の大学の優れた技術の社会実装ということで、非常に期待をしているところです。
 その中で少し気になっていますのが、日本のスタートアップが数は増えてくるのですが、なかなか大きくスケールしない。その理由として、中途半端に大きな日本の国内市場で満足をしてしまって、あまりグローバルを見ていないということがあります。これをグローバルに視野を上げていくためには、海外からどんどんいろいろなスタートアップや研究者の方に来ていただいて、もまれて視座を上げる部分と、それからやはりこの委員会でも何度も議論されますけれども、早いうちからの留学によってグローバルを見て視座を上げていくところが不可欠だと思っておりますので、インバウンド、アウトバウンド含めて、研究者という狭い視点ではなくて多くの若者の頭脳循環を、そういう観点からもぜひ進めていただきたいと思っております。
 長くなりました、以上でございます。
【菅野主査】  ありがとうございました。産業界から、より大きな視点で3つ指摘をいただきました。
 それでは、次は梶原委員、お願いいたします。
【梶原委員】  東京工業大学の梶原と申します。よろしくお願いします。私は生命理工学院で今、学院長を務めており、研究分野も生命理工学関係なのですが、今回は、それに加え、私が幾つかの国際的な委員会の委員をしているということでこの委員会に出てきているんだと理解をしております。よって、そのような視点から少し意見を言わせていただければと思います。意見は幾つかある中で、人材に関してはもう色々な先生方が言われたので、それとは違う観点について2つほどお話しさせていただきたいと思います。
 1点は皆様、色々なお考えがあると思いますが、やはり日本の科学技術力というのが数値的に下がっていて、それが本当に下がっているかどうかというのは分野ごとによって違うと思うんですけども、幾つかの評価指標で出ているということは、やはり相対的には下がっていることには間違いがないのです。
 それで私が見る限りにおいては、少し前までの日本というのはGDPがすごく高くて、研究力もアメリカと一緒で強かったので、ある意味、米国は別としても、他の国々では日本は単独でできる国だという認識をずっと持っていたからこそ、あまり日本に声がけをして一緒にやろうというのはおこがましいと考えていたのじゃないかなと思います。しかし、ここ10年来で日本の科学技術力が低下したので、一緒に協力してやれる国なんじゃないかなと他の国が思い、一緒にやりましょう、一緒に共同研究やりましょうと声がかかっているのじゃないかなと思います。
 それはある意味、実際に日本の科学技術力が下がっていると外からも見られているということだと思います。我々としても、一人で全てをやれる研究は限られ、またそれぞれの研究はお金がどんどんかかり、かつ複雑化してきて、いろいろな方々と協力しながらやっていかなきゃいけないものがどんどん増えていると思います。そういった中で今後は海外と国際的な研究連携をより多方面で進めていって、しっかりと我々も得るものは得ることをしていかなきゃいけない、研究を競争と協調の部分にしっかりと分けていかなきゃいけないのですが、他国と連携しながら、しっかりと研究を推進していく協調の研究分野の割合をもっともっと増やしてもいいのではないかなと思います。
 予算的な面では、今日御紹介いただいた国際連携する政府予算はあるのですけども、全体の研究開発予算からしたらまだまだ微々たる部分だと思います。それをより多くの分野で、今回のG7等で他国から一緒にやりましょうとお申出があったので、我が国としても、それにタイアップするような予算も加えながら、一緒になって科学技術を進めていくことがもっともっとあっていいのではないかなとは感じているのが1点です。
 それから、もう1点は他の委員会等での関係で、ASEANとの連携について議論してきましたが、今日、局長からもお話がありましたようにASEANとの連携は今年は特に大事なのです。皆さん御存じのとおり今、ASEANというのは世界的にも注目されていて、青田買いではないですけども、色々な国や組織が今、連携を進めようとしています。昨年からOECDもASEANとの連携を打ち出し、アプローチをかけています。さらには複数のASEANの大学の先生と話をすると、特に中国がかなり研究協力を進め、そこに多額のお金をつけて一緒にやるような方向性を出しています。
 ASEANの人たちは沢山の研究資金をいただいて研究がやれるのですが、我が国として今後のASEAN連携を考えたときに、そのままほっといていいのかという思いもあります。ASEANというのが日本にとって大事なパートナーであり、それに加えグローバルサウスという国々もASEANに限らず沢山あるんですけど、特にASEANに関しては地理的にも我々の間近ですし、これからはもっと協力してやっていかなきゃいけない国々であり、もっとしっかりと協力し、日本のスタンスというのを示さないといけないのではないでしょうか。タイとかに行くと色々な場所にJICA等と協力した証拠として日本の国旗が掲げられているのですけど、あと10年後にはそれが全部、中国や他の国の旗になる可能性も出てくるのじゃないかなとは思っております。その点で、いかに国際的な科学技術連携でもっとASEANとの協力を強めていくかということは検討しなければならないんじゃないかなと考えています。以上2点について、今日はお話させていただきました。引き続きこれらも議論していただければと思います。よろしくお願いします。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。外からの観点ということで御意見いただきました。
 それでは次は狩野委員、お願いいたします。
【狩野主査代理】  私自身はもともと臨床医療を初めにやって、それから医療研究をやってきて、そのまま好奇心の赴くまま生きて今に至っている者です。その中で外務大臣次席科学技術顧問というのを1回させていただいたことがあります。それからこの委員会は3期目です。あと、人材委員会の主査をさせていただいているという状況です。
 その中で今日、申し上げてみようと思ったことは、肩書を離れて、そういう経験をさせていただいてきた個人としての意見ですけれども、3つ方向があります。
1つ目が何を目的にするのか、ということです。経験から、科学技術外交とは何かと考えたことがありまして。外交には、柱が3つあると思います。「富」と「安全」と、そして「魅力」、これらを高めることです。「富」と「安全」を高めていくことについては非常に努力されていると思いますけど、もう一つ「魅力」というのを高める仕事があるのかなと思っています。この「魅力」、では一体どうやって形作られてくるのか。これは多分、「自分は持っていないが欲しいこと、違うのだが必要とされていること」ということなのだろうと思うのです。では科学においては、我々は一体何が他国と違って、他国から何が必要とされているのか。それから、もう一つあとで申し上げたい軸として社会、あるいはソサイエタルな軸というのが最近非常に強くなってきたと思うんですけど、社会の軸で一体何が違って何を必要とされているのかということは、ぜひ「魅力」をつくる上で考えていかなきゃいけないことだと思っています。
 二つ目は、人材のことです。たくさんお話がもう既に出たんですけれども、好奇心の赴くままに生きるのと人生うまくいかないのでは、と思う人がきっとたくさんおられるのではないでしょうか。私のように好奇心の赴くままに生きていても、一応生きていけるのだということを、ぜひ背中としては示したい気持ちはあるところです。それに加えて、そういうマインドセットを持っている人は国内にあまりたくさん、もしかして、おられないかもしれないので、国外の有能なそういう方々が来たときに、ぜひ背中を見てほしいということがあります。日本出身で、国外で元気に活動しておられて、だけどそれが国内にいる若い人には背中が見えないということもあると思います。そういう方々とどうやってか、つなぐことをして、いろいろな生きざまが人間あるよということをいう中に、海外というものも入っているといいのかなということを思う次第でございます。勤め先である岡山大学の例を挙げると、SDGsの旗を振った結果、UNCTADという国連の機関が一緒にやりましょうと言ってくれまして、アジアとアフリカから女子研究者を派遣するというプログラムが走りました。その結果として、そういう元気のある人たちを見た若手の教員が、自分も何かやれないといけないねと感じている雰囲気を得ました。そういう、背中を見ることが大事かな、という具体的なエピソードとして一つ、申し上げてみました。もう一つ、昔、グローバルヤングアカデミーというのに私、入っていまして、そのときにヤングだった人なんですが、今となってみると某国の大臣顧問になっていたりとか、国連でアドバイザーやっているとか、たくさんそういう人がいるんですね。この国からそういうところに出ていくこと自体「一体何やってるんだ、君」っていう目線で周囲から見られていたように感じたのを思い出すと、本当はそういうコミュニティーに初めから入っていないと力が発揮できないと思うんですけど、そういう意味でも生き方の複線化が必要じゃないかなということは思うところがあります。
 これで今、2つ軸を申しました。
三つ目が、これは前の期にも少し申し上げたんですけど、我が国はいろいろな省庁からの関連の施策がたくさんあります。これらの中で一体どれがどんな目標で走っているのかという、マッピングをしたほうがいいんじゃないかということを前期少し申し上げて、多少前期やっていただいたかなと思っているんですけど、そのときの軸は一体どういう設定にするのがいいだろうかということを思います。その整理のための軸を3つぐらい例を申し上げてみたいと思います。
1つ目の整理軸が「優れる方向として一体どっち向きなのか」です。先ほども少しお話があったし、私も申し上げましたけどサイエンティフィックインパクトを求める方向なのか、それともソサエタルインパクトを求める方向なのか。これらは両方が交わるときもあるけれども交わらないときもたくさんあって、特にソサエタルは、例えばさっきお話があったグローバルサウスにもし展開しようとしたら最先端ではうまくいかなくて、安くてちゃんと使えることが大事だったりするわけですね。ところが、これはサイエンティフィックインパクトを求めると論文にならない方向の話でありまして、どうするの、ということがありますから、この辺の選び方ですね。何において優れているのかという線は一つ、置くことが要るのかなと思います。WPIはその意味でサイエンティフィックインパクトでしょうし、SICORPとかSATREPSはどっちかというとソサエタルインパクトだと思いますけど。加えて、このソサエタルインパクトに関係していうと、科学技術顧問制度とか、アドバイスっていうのは、何のために、何をしたいと思って走っているのかを考えると、過去の話を聞きたいのではなくて、過去の結果、「未来」どうなるんですか、だからいまどうすべきなのですが、というのを皆さん、聞きたいのだと思います。こういうことを、過去こうだったから、その先シナリオはこうなるはずですみたいな、そういう言い方ができる学者って全然近くにもいないし、自分もできていないなと思うことがあります。こういう能力は、育てる気はあるでしょうかというのは一つの質問ですね。もう一つの質問としては、一つの専門分野では社会のことは解決しないということは医学のときにとても分かりましたが、そうすると、多くおられる大変深くしっかり掘っておられる先生方をうまくコーディネートできるかたがいないといけないと思うのですが、これはどうやって育てましょうか、という質問も、一緒についてくるように思っております。
 2つ目の整理軸としては、「誰か先に行っている人たちに追いつきたい」話なのか、それとも「友達を増やしたい」話なのかというところです。もちろん重なるところはあると思うのですが、「より良いところに認められたい」発想の話はたくさん見かけるわけですが、さっきから少しあったグローバルサウスとかそれからASEANの話はどっちかというとまだ、ある程度、お友達というか、「一緒に助け合いましょう」ということが言えるようなところだと思うのです。これを進めるというのは、多分きっとまた、何を測定するのかが、違ってくると思いますので、この軸の設定が一つ要ると思います。
 3つ目の整理軸は、「今流行しているものを追いかけたい」のか、それとも「流行を我々からつくりたい」のかという質問です。今は、「流行を追いかけるほう」もたくさん見かけるんですが、そうするとtoo lateとかいうことを言われることはよくあるわけです。「我々からどういう魅力をつくりたいのか」というのはスタートアップの話に関係するんですけど、我が国ではなかなか難しいことだということは大変、今まで経験してよくは分かっているものの、だけど、これからはもう少しそこに力を入れる必要もあるのではないかということを思います。
今申し上げた3つの整理軸というか、何と言うんですか、象限というか、次元というんですか、これを念頭に、どんな政策があるかを、マッピングしてみて、どこが足りないかということを見直すことによって、こういう委員会の機能がより豊かに発揮できるのではないかというお話を申し上げてみました。
 以上です。
【菅野主査】  どうもありがとうございました。大変深い話でどうもありがとうございました。
 それでは次は、鈴木委員ですかね。鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】  日立製作所の研究開発グループからまいりました、鈴木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、現在は研究開発グループの中で環境関係の研究戦略や、事業化を担当しており研究開発に直接携わるという立場ではございません。今回は、本日の資料の19ページにありましたけれども、G7期間中の科学技術関連の協定等という形で紹介がありましたけれども、私も携わっているところでありますので、取り組みの背景も含めて、御紹介をさせていただきたいと思います。
 19ページに記載されておりましたが、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)と東京大学が、クリーンテックやエネルギーの研究のために新たな連携を構築しますと発表されています。G7期間中の5月の25日に調印式が行われまして、弊社の立ち位置としては立会人という形で記載をされているところです。何でこの様な運びになったかというところですが、実は東京大学と弊社は2016年から日立東大ラボというものを設置して、ずっとコラボレーションワークをやってきております。
 故中西会長が立ち上げた取り組みで、現在フェーズ3に突入しています。フェーズ1は、将来の電力システムの在り方を東大と日立で一緒に考えようじゃないかということで、中西さんが、このままでは日本の電力システムが破綻するのではないかという課題意識を思っていらして、それが発端となり、取組がされるようになったと聞いております。
 フェーズ2は、この3月までやっていましたが、電力よりもっと広くエネルギーシステムというところで、エネルギーをつくる側、あるいは使う側も含めた全体システムというところに着目して、カーボンニュートラルということが強く言われるようになっておりますので、カーボンニュートラルを実現しようとしたときに社会全体がどういう形でトランジションをしていく、そのパスウェイを描くような、そこで何か越えられないギャップみたいなものがあったならば、そここそがイノベーションで解決するところじゃないかと、そこを洗い出すという活動を進めてまいりました。
 その中で、気候変動はグローバルアジェンダですけれども、そういう地球規模の危機で、いかに日本がリーダーシップを発揮するかという議論が当然起こってまいります。そこには危機意識が東大の側にもありますし、弊社の側にもございました。その課題意識のもとに、グローバルなコラボレーションを通じて最先端の科学技術を活用して課題を解決していくことをまずやろうという方向性を見い出しまして、昨年の7月にICLと日立とで共同研究センターというのを発足しました。それが今般、ICLと東京大学の連携という形に発展した、輪が広がっていったという形になってございます。
 グローバルアジェンダからスタートしたとしても、世界の各地域固有の課題であったり、ドメイン固有の課題みたいなものが当然あって、一筋縄では解けないというようなことが活動を通じてひしひしと感じております。逆に、いろいろな地域でそういうコラボレーションの活動を、アカデミアと民間に限らず、民間同士というのもあるかと思いますけれども、それを各地域でやると、恐らくその中から、何かしら普遍的なもの、全ての地域、全てのドメインに適用可能なものがあぶり出されてくるんじゃないか、それを強化すれば日本がリーダーシップを発揮できるようになるんじゃないか、というような仮説を持っております。
 今は日本の東京大学、あるいは英国のICLのお話を差し上げたんですけれども、このほかに中国ですとか、ほかの地域でも同様の活動をやっています。その中から共有できるところは共有して、何が本質課題で、何がそれを共通で解けるソリューションになっているんだろうということを抽出できればいいなということで、活動しているところでございます。
 その活動の中で感じたこととして、人材に関して最後に1点だけ申し上げますと、日本の人材は、日本にいる弊社の研究開発グループにいる人材も含めてですが、課題を解くのは得意だけれども、自分で課題を発見するところが弱いと感じています。特に日本で教育を受けてきた研究者にそれを感じます。
 それに対して、海外でローカルの研究者と一緒に活動していて強く感じるところは、小学生とか中学生のうちから、自分の意見を述べる、人が言っていないことを発言するために常に課題を発見して、小さいものでも「私はあれが課題だと思う」と指摘するという様なことをずっとトレーニングされているので、そこが日本と違うと感じています。この様な「問題用紙を書ける人材」が、日本に欠けている部分じゃないかなというと日頃から強く感じているところであります。逆にその様な人材を育てると、国際競争力というのもおのずと上がってきたりするのではないかというような仮説を持っております。
 私からは以上となります。
【菅野主査】  ありがとうございました。リーダーシップに関して、それから教育について、これまで教育に携わってきた者にはちょっとぐさっと来るものがありますけれども、御指摘いただきました。ありがとうございました。
 それでは次、野本委員、お願いいたします。
【野本委員】  ソニーグループのテクノロジープラットフォームというR&Dを全体見ているところの、テクノロジーフェローを拝命している野本と申します。私自身の専門性は半導体やディスプレイ技術等であるのですが、ディスプレイではSociety for Information Displayという世界最大の国際コミュニティーがありまして、そちらからフェローの処遇を拝命しております。社内ではR&Dを広くデバイス領域から、最近ではXR、メタバース、それからソニーですので様々なコンテンツクリエーション技術もやっていますので、そういったところまでも広く技術マネジメントを担当しております。
 海外の経験としましては、社内に海外留学制度というものがありまして、それを利用してMITに留学したことがあったりとか、様々な学会発表をやらせていただいたり、ベルギーのimecという半導体の国際研究機関のScientific Advisory Boardというところをやらせてもらったりとか、あとは様々な企業との、本当にいろいろな欧米、韓国、台湾の企業との共同研究、事業連携というのもいろいろやってきております。
 それから、社内横断全体の技術人材の育成も担当しております。さらに昨年度まで慶應大学にリーディング大学院という総合人材育成のプログラムがありまして、そこで6年間、訪問教授としていろいろ学生さんともコミュニケーションさせていただいていました。
 企業から見た科学技術の国際化の課題とか意義に関してですが、私なりに考えてみると、非常に粗くまとめると3つぐらいあるのかなと思っています。1つ目はグローバルなオープンイノベーション、国際連携を通じた社会課題の抽出、開発加速、強化というところですね。それが1つ目。
 2つ目は、グローバルな視点を持った国際的に通用する人材育成、組織強化。
 3つ目が、国際人材市場からの優秀人材獲得。企業という大きな一人称は使いませんが、少なくとも私が関わる社内のところから見ると、この辺が大きくやっぱり意義があるところだと思っています。
 まず、1つ目のグローバルなオープンイノベーションを通じた開発促進、強化というところでは、これは実は企業的には1番目的がはっきりしていますので取り組みやすいところです。実際どうやっているかといいますと、世界の各国との共同研究も当然進めていますし、それ以上に弊社ですとイギリス、ドイツ、ベルギーや中国、台湾、アメリカ等々にローカルな研究所をつくりまして、そこで地の利を生かしたグローバルな研究開発を進めているというところです。ただ、世界中のラボを持つというのはそんな簡単なことではなくて、非常に苦労しているところでもあります。いろいろ地政学的なこともありますので、苦労しながらやっています。
 その中で人材関係で一番課題があるとすると、海外のラボの人材と日本の研究所のメンバーが足しげく交流があるかというと、非常に限定的な交流でしかないということで、それは一つ課題かなと思っております。
 それと関係するのですが、人材育成の部分ですと先ほど申しましたように、どの企業にもあると思うのですが海外留学制度というものがあります。これも何十年前からあるんですけれども、例えば30年前ぐらいであれば、研究者の一つのキャリアの積み方として1度は海外留学しないと、ということで非常に多くの応募があったんですけれども、リーマンショックを経て非常に不況になったところからどんどん人数が減り出しまして、最近はまたコロナがあってますます人数が減ってきているところがあります。経済的な事情も減少している原因としてあるんだとは思うんですけど、もう一つちょっと気になっているのが、30年前はわざわざ海外に行かないと本当に海外の研究の雰囲気って味わえなかったわけですけれども、最近はインターネットとかオンラインが非常に普及していまして、わざわざ海外に行かなくても情報交流、情報流通が可能になってきたことも、もしかしたらあるのかもしれないなと思っております。
 とはいえ、私個人的には実際にその地に行って、生のエンジニアあるいは研究者と会話することによって、いろいろなセレンディピティで新しいテーマが生まれたりとか、より本当に腹を割った深い交流が生まれるので交流を続けるべきだと思っていますが、やっぱりなかなかコロナの後遺症も非常に大きいところと、輪をかけてインフレの影響が大きくて海外留学生の生活支援、渡航支援等、苦労しております。
 あともう一つは、その海外留学がしっかりとキャリアアップにつながるのかというところも大きな課題だと思っていまして、そういったことも考えていかなければいけないなと一つ思っています。
 もう少しお話しさせていただきたいと思いますが、東京側の研究所の国際化というものも非常に大事だと思っておりまして、過去3年ぐらい前から東京側の研究所は公用語を英語にすることを進めました。ですので、あらゆる会議資料は全て英語化。ですので、研究所の所員のほとんどは、そのレベルに応じた英会話スクールに行くということの支援も行ってきました。
 加えて海外ラボと、ここもトップダウンで意識的に人材交流をさせることをやりましたが、これは非常に難しいです。当然、日本人の一人一人の英語能力の差もありますし、やはり一つ大きな問題といいますか、日本って難しい国だなと思ったのが、日本人同士の非常にハイコンテクトのコミュニケーションっていうのは成立しちゃうんですよね。それが非常にコミュニケーションの効率を良くしていて、そこに外国人が来た場合に本当に一から丁寧に説明するとかということも改めて必要になるとか、なかなか、どうしてそうみんな考えているのかという背景も含めて説明しなきゃいけないことがあります。
 なので、これを言ってしまうと身も蓋もないんですけれども、日本自身がやっぱり国際的じゃない国の中で、どうやって国際化を進めるのかというのは大きな問題だと思っています。海外から来た人も非常に苦労していると思いますね、コミュニケーションにおいて。
 ただ、一方で、最近はオンラインでいろいろとリモートの会話がやりやすくなっています。そういった技術を使って、よりコミュニケーションを活発化するかということも、やりやすくなってきていますので、そこは辛抱強くやっていくところかなと思っています。
 最後、人材獲得のところですけれども、弊社の場合、国際的な人材を獲得する方法は、主に2つのやり方になっていまして、一つは海外ラボを通じた国際的な人材獲得というところと、もう一つは日本の留学生の採用がメインになるんですね。海外ラボの場合に一つ課題なのは、最近インフレ率が非常に異なっていますので、特に欧米と日本人の給与格差が大きくて海外、特にシリコンバレー、皆さん御存じだと思うんですけれども、からの優秀人材の獲得は非常に苦労します。特別な制度とか、あるいは別会社にするとか、そういったことも工夫しながらやっていますがいろいろ苦労しているところであります。
 一方で、日本の人材市場、非常にコストパフォーマンスが良いんじゃないかって話もありまして、逆にそれが国際化の、何でしょうね、加速をさせにくくさせていることの一つだと思っています。 先ほども博士人材の話が出てきましたけれども、学生の時代から大きく国際的な感覚を身につけているのは博士人材だと思うんですね。博士人材を雇用するということもやらなきゃいけないということが分かっていながらも、現場での対応を考えると、修士の学生も日本人の場合、非常に優秀ですので、もうそれで入社していただいて、そこでいきなり事業や研究をしてもらうほうが効率がいいのではないかという話もあったり、その辺も非常に苦労しているところです。
 ただ、産学連携ところで、慶応リーディング大学とも直接、私も6年間通いましたけれども、そういったより深い連携ができると博士人材も直接本当に採用しやすくなることがあります。これができたら一つはいいのかなと思うのは、日本の大学の国際化が進みつつ、産学連携を強化させて結果、産業界にも国際的な人員入ってくるような何か流れがつくれると一つはいいのかなと。特に将来、少子化の流れもあるので、そういった対応がとれると一ついい流れになるのではないかなと思っております。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。
 それでは、次はオンラインで林委員、お願いいたします。
【林委員】  林です。私自身は文系の人間なので、アウェイといえば本当にアウェイなんですけれども、東京外大というところで今、学長やっておりますので、文系の立場から人社系の立場から日本の科学技術の国際戦略について思うところを述べさせていただきます。
 前期から委員をさせていただいていて、科学技術の特に国際的な共同研究の着地点が社会実装にあると考えると、社会を知っているメンバーが研究体制の中にある、いるということが本当に必要なんじゃないかということで、多くの大きな大型のプロジェクトや推薦によって構成されるものなどに人社系の知的なバックグラウンドを持った人の意見が入りやすくなるように、それをぜひ進めていただきたいなと思っております。そのような提言について、11期の提言で一定入れていただいてありがとうございました。そのことが今後とも実装されていけばいいなと思っております。
 なぜそれが必要かということなんですけれども、例えば国際戦略っていったときの、今までも既にいろいろ、いろいろな先生方から出ておりますが、国際というのは単純な話ではないわけで、先ほど競争の場面と協調の場面というお話もありましたし、経済安全保障の問題もあるし、地政学的な問題もあるし。一方で多様性が力になる側面もあるというときに、私、先ほど野本先生から日本の固有の特性が労働市場などでもメリットになったりするというお話があったのと同じような事情というのは、全ての地域、全ての社会にあるので、そういった事情を分かって共同研究を組み立てることが、やっぱり社会実装を進めていく上で大変重要なんじゃないかなと思います。
 国際的な視野でというか、国際的な共同研究を進める際に人社系の知見を入れた上でやることが一つの条件化されることが日本の社会的、国際的な評価にもつながっていくんじゃないかなと思っております。それが1点です。
 もう1点、大学の立場あるいは人文系の大学を見ていて今お話がありましたが、若者はすごくもう変わっているというのはもう皆さん、感じていらっしゃると思うんですけれども、インターネットが普通になり、スマホの時代になり、コロナも経て、私どもが育ってきた時代と今の若者たちが見ている世界、全然違う、感じ方も、感じ方の前提が違っている。世界に対する見方も変わってきている。
 今、海外に行かなくてもできることが増えているという話がありましたけれども、まさにそうで、東京外大というところの学生は世界を、多様性を見たいという学生が多いので留学はもう本当多いんですけれども、一般的には留学しなくなっているのは多分、当然だろうと思っていて、行っても驚きもないし、知っていることを確認するような世界になってしまっている。だからむしろ、ターゲット型の旅行とかのほうがはるかに増えていて、もう趣味に特化したような海外の行き方に今、特化するみたいなことがよく言われますけれども、そういう時代に若者は生きていると。
 その人たちに、でもやっぱり世界の人とちゃんと交わった経験を踏まえて、でもかつ、日本自身も多様化して、日本社会全体がユニな社会じゃなくなっているわけなので、そこに対応していく力というのを実社会においてつけていかなきゃいけないことを、教育の場では意識的にやっていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています。
 でも、ジョイント・ディグリーとかダブル・ディグリーなどもやってみると本当に難しいですね。大学はもうめちゃくちゃ手間暇かかるし、労力もかかるし、しかし学生は必ずしもそんなダブルだ、ジョイントのディグリーを喜ぶわけではないかもしれないですね。ディグリーなどの持つ意味そのものも変わってきているのかもしれないです。そういう社会の変化をよく見極めながら、政策を考えていかなきゃいけないんじゃないかなと思っております。
 雑駁ですけど以上です。
【菅野主査】  林先生、どうもありがとうございました。
 それでは、次もオンラインになりますけれども、松本委員。松本先生、よろしくお願いいたします。
【松本委員】  よろしくお願いします。自分の経歴からお話ししますと、学位を取った後に化学系の企業に3年ぐらいいまして、その後、名古屋大学にアカデミアに戻って研究を教員としてやってきました。10年ぐらい前に、WPIの拠点であるトランスフォーマティブ生命分子研究所が立ち上がって、研究支援を手伝ってほしいということで、現在はトランスフォーマティブ生命分子研究所の事務部門長、副拠点長として研究所の運営を担当しております。また少し前からトランスフォーマティブ生命分子研究所をコアとする卓越大学院プログラムも始まり、そのプログラム委員として学生海外派遣にも関わっています。
 その立場から幾つかお話しさせていただくと、WPIは狩野先生の話でいうとサイエンティフィックインパクトにおいてどのように貢献していくかというところになりますが、海外へのアウトバウンドを支援するプログラムは先ほど御紹介があったように非常にたくさん整備され充実していますので、残る問題は、研究者がそれを取りに行こうという気になるかどうか、それをどう促すかという点になるかと思います。
 相田卓三先生の話で、学生が海外に行く気にならないという問題は、名古屋大学ではあまり当てはまらず、海外行ってみたいという学生がたくさんいてくれるので、その辺はあまり心配していません。おそらく大学間でも結構意識の差があるのかなという気がしており、アンケートみたいなのがとれるといいなというのを前から思っているところです。分野や大学によってかなり差があるかもしれないという気がしています。
 学生のときに海外に行ったことがある教員は海外との連携に積極的であるように感じますけれども、海外経験がない教員、特に助教の人たちは、これは以前も議論に出ましたけど、テニュアトラックだったり、雇用が安定してない状況に置かれている人が多く、短期間で成果を出さないと次に進めないという、そういう問題を抱えています。
 その中で海外に行くとなると、分野によって、例えば理論科学者は海外での武者修行が成果に直結するかもしれないですが、実験化学系の人は成果を出すには数年かかるので、例えば3か月とか1年とか海外に行ってもただの海外経験みたいにしかならない。昔のようにポジションが確保されて安心して1年2年行ってきます、みたいなことができない状況にある。それを考えると、助教のときではなく、准教授のときにある程度強制的に海外に行かせるとか、何か少し違った考え方が必要なのかなという気はしています。
 併せて先ほどこれも話がありましたけど、海外に行ったことをどう評価するか、短期間で成果が出る分野と短期間では単なる海外経験で終わってしまわざるを得ない分野、例えば生物系なんかは本当に時間がかかる研究が多いので、海外に行っても研究の種をまいてくるだけになると思いますので、そういった点を考慮しつつ、どう評価してそのキャリアパスにつなげていくかというのは大学の課題なのかもしれませんが、全体としては文科省が評価をどう考えるのかというところもあると思います。
 一方、インバウンド側については、先ほどインフレの話がありましたけど、給与の問題が非常に大きいです。日本は給料が安過ぎるので、日本を選ばない可能性はあります。国にもよりますけど、特にアメリカからは来ないですね。ヨーロッパはまだましですけれども。
 それと併せて、WPIでは海外、外国人のPIをちゃんとフルタイムで雇えと非常に強く言われるわけですけど、海外の給料が高くなっている中で日本の給与規程内では雇えない問題があります。いろいろな大学で卓越教授みたいなのも始まりつつありますが、採用できる人数は限られています。WPIも予算が限られており、しかも10年の中でしか雇用財源が確約できません。理論系の人だったら二、三年、来てもらうことは可能かもしれないですが、実験系は異動に伴うセットアップが大変なので、海外から採用しようと思うと10年、あるいは20年を雇い続ける覚悟で引っ張ってこないといけないが、それは財源の面で難しい。
 それを考えると、例えばITbMが始めた海外PI制度、つまり海外PIは基本的に海外の拠点にいて、連携する准教授をCo-PIとしてITbMにフルタイムで置く仕組みは効果的だと考えています。そのグループが論文を出せば、海外の大学と名古屋大学の国際共著論文になるし、海外PIは自国でITbMという面白い研究所があるよ、と広めてくれて、海外での共同研究も広がります。
 このようなメリットを考えれば、この仕組みを部局にも取り入れ、海外大学のPIと連携するCo-PI的な教員を置き、そのグループに学生も配属する仕組みをつくれば海外連携が進むのかなという気がしています。承継枠が限られた中で部局がどう考えるかはわかりませんが。
 最後に、先ほど野本さんも言及されましたが、国として、あるいは大学として、あるいは文科省として外国人対応をする体制になっていないところは非常に根本的な問題です。事務は全員英語を話せるわけではないし、文科省側も文書の通知は相変わらず、まだ日本語のみで、各大学が全部英訳をする、あるいは大学の中でも必要な部局は勝手に英語を作れ、みたいな状況になっているのは、なかなか外国人をフルで大学に置く環境の整備にはまだまだほど遠い状況にあります。これは解決策がすぐ出ない話ですけれども、変わっていく覚悟は必要かと思います。
 以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。これまで様々な御意見いただきました。大分時間が過ぎてしまって自由な議論をする時間が少なくなってしまいましたけれども、私、何も考えていませんのでどうぞ御自由に、これまでのことに関して御意見いただければと思います。大変少ない時間になってしまいましたけれども、どうぞ御発言ください。
【狩野主査代理】  主査代理なので口火を切らせていただきます。
【菅野主査】  どうぞ。
【狩野主査代理】  幾つか伺っていた中で言いたくなったのは、1つ目は魅力の設定ですよね。お金の魅力がどうも設定できなくなってきてしまっている。
【大土井参事官】  お名前を。
【狩野主査代理】  狩野でございます。お金の魅力があまり設定しにくくなってきていて、それからアウトプットの魅力が何かいまいちになってきているときに、一体我々は何を魅力にするのか、もう1回考える必要があるなと思いました。
 一つは、西洋文化だと自然と人間というのは対立構造にあるわけですけど、日本文化は共生構造にあるということは一つ、我々が自覚さえすると何かの発想の元として使えるのではないかというのが、昨今の環境問題が勇ましくなってきた時代には一つあるのではないかと思います。それからあと、地形の問題もあるでしょうね。こういう辺を少し洗い出す必要が政策的にもあるんじゃないだろうかということは思いました。
 2つ目ですけど、さっき梶原先生がASEANのことをおっしゃって、私も最近ASEANに行って会議をやったときに、彼らと、なので、お金がもし魅力じゃないときに一体何なんだろうということを思ったときに、50周年で昔を遡ったら福田ドクトリンというのが思い起こされて、内容というのは平和のことが一つあるんですけど、あと「心と心でつながりましょう」というのと「対等な立場」っておっしゃっているんですね。この「対等な立場」、結構重要なことだなと思っていて、これはリマインドとすることによってほかの皆様が、さっき話題に出た国との違いをちょっと感じていただいたらと思うんですけど、それがお金の代わりにどのぐらいになるかというところが設定を戦略的にする必要あるなということは思いました。
 それから3つ目が、人材育成のところの探究というのが、人材委員会も担当しているのでさっきからのいろいろな御指摘が重なって聞こえてきたんですけれども、大学に入る時点で学部を決めるほうにほとんど我が国の大学はなっている以上、しかもそのときに高校のときの成績で、自分の好奇心よりは成績で多分決まっている人が多くなっていると、さっきのような好奇心に基づいた暮らしというのはしにくくなっていると。世情に敏感に、つまり大人の背中をよく見ている感じがするわけですが、そういう中でどう背中を押せばいいかということを考えると、やっぱり高校の時点でどういう刺激を加えるかも結構大事な視点かなということを思い始めています。省内他局とかも関係するだろう話なのであまり簡単じゃないとは思いながら、海外との連携というか、違いを知りたくなるような教育の仕方ということについては少し、せっかく文部科学省なので頑張っていただく必要があるのかなということを思って伺ったところでした。
 長くてごめんなさい。以上です。
【菅野主査】  ありがとうございました。ほかにどうぞ。
 国際化に関して、先ほどから皆さんから意見がありましたけれども、日本での研究、日本の特色が何かをもう一度考え直す必要があるのではないかと、少し感じました。私自身、海外にも出て研究を行ってきましたが、自身の研究を振り返ってみるとやはり日本での研究、日本人らしい研究をしてきたと非常に強く感じます。海外との交流によって、どのように違いを出して、また海外に持っていくかという、その観点が今、非常に重要であると感じさせていただきました。
 ほかに、どうぞ御自由に御発言ください。
【梶原委員】  よろしいですか。
【菅野主査】  梶原先生、どうぞ。
【梶原委員】  梶原です。先ほどお話ししたASEAN、グローバルサウスの問題ですけど、お金以外で他国と差別化できるものは何があるかということなのですが、お金というのはある意味、短期的なもので、あと10年たったときにお金を引き続き、その国が出してくれるかどうかなんか、分からないんですね。
 一方でこれまで50年間、日本がASEANに対して様々な協力をやってきたことは、ASEANの人たちはとても感謝をしています。そのことが財産であり、これをしっかりと維持するというか、より発展させることが必要で、これはお金に代えられるものではないと思います。そういった信頼のようなものをうまく、何と言うのかな、引き出して関係を続けていく、より良い関係に持っていくことが必要なのかなと思います。
 ASEANの人たちも、本当にドライに、お金出せばそっちに向く感じではないので、そこは今こそ、これまでの50年間に日本がやってきたことをうまく利用して、さらなる50年間に向けて展開すべきじゃないかなとは思います。
 それともう1点、これは人材のことですけど、最近、政府でやられていた特別高度人材のレジデンス取得の話で、これはこういう委員会でも発言した方がいいのかなとは思ってはいるのですが、長期レジデンスを取れる人たちへの拡充措置で、今年新しく制度化し、修士号以上を持ち、2,000万円以上の年収を取っていれば長期レジデンスが取れることになったのですけど、これはグローバル的にはそうかもしれないですが、今日本の大学にいる外国人の教員が長期レジデンスを取ろうとしたときに、年収2,000万円以上の人はほとんどいないのではないでしょうか。博士号を持っている人は別扱いにして、年収を下げてもらわないと、日本の大学教員で年収2,000万円以上は中々難しいのかなと思いました。この点は、学術界からももっと発言頂いて、有能な博士号学位取得の外国人であれば長期レジデンスもっと容易に取れるような形にしていただければと感じました。
 以上、ちょっとコメントとさせていただきます。
【菅野主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
【相田(卓)委員】  教育現場からしたときに、さっき野本さんのお話とも関係するんですけど、本当は企業が国際経験のある学生を優先採用すると言っていただければ、社会は簡単に変わります。ところが、それが必ずしも最終的なキャリアの形成につながらないという歩留りの悪さもありまして、学生はそれを見ていて、あえて海外に行くことによる得がないので行かないという結論をします。
 私のラボは、共通言語を英語にしています。学生を4年生で受け入れるときに、うちは共通言語が英語ですよというと希望学生がどんと減ります。しかし、それをあえてやっていました。また、ドクターの間に留学させるということ、一年間から半年間なんですけど、それもやっていました。それらの経験を積むと、学生は大きく変わります。先輩の変化を見て、自分も変わりたいと思う学生が次から次に入ってきてくれたのが現状かなと思います。その先が社会と遊離せず、そんな国際経験を有する学生にはいいことがあるんだという空気が社会に満ちているならありがたいと思うんですよ。でも、やっぱりそれは難しいですよね。
【野本委員】  そうですね。正直、弊社では採用のときに何%目標値で外国人を採用するというKPIを設定してやっているわけではないので、女性比率だとあったりするんですが。ただ、外国人だから採用しないということも当然ない。むしろ同じであれば、なるべくグローバルにしたいので外国人のほうが採用したいと思いつつ、本当にフラットに外国人と日本人を比べてどこを採るかということで決まっている現状です。
【狩野主査代理】  今のお話のポイントはもう一つあって、日本人の学生の中で海外経験がある人をより優先して採りませんかという内容が入っているところなんですけど。
【野本委員】  それは採っていると思います、同じであれば。能力として同じであれば当然、外国経験がある人を採るほうに動いているとは思うんですけど、レベルが低いけど海外経験があるから採ろうかみたいな判断までには行ってないところがあります。
【相田(卓)委員】  正のスパイラルがちゃんと回り始めると、必ずいい国際研究人材が行くはずですので、それまで少し待っていただく必要があります。
【野本委員】  企業側もそうですよね。そういった視点で何かの、何がしかのKPIを置きながら採用を進めることをする必要があるとは思っていますね。
【狩野主査代理】  それが文部科学省から出せると、そうなるんでしょうか。
【大土井参事官】  文科省サイドとして。るる先ほどの説明でもありましたとおりで、特効薬があるわけじゃないんです、国際化。例えばヨーロッパであればEUという経済圏ができて、そこでの域内の人材は比較的流動化していて、息をするように国際化しているわけですよね。アメリカは当然、人種のるつぼですから、あそこの世界も非常に国際化している。翻ってみると、アジアは中国であれだけの規模感があってスケールはあると。日本は島でこれだけの規模感。それの国際化って言ったときに、先ほどASEANもしかり、英語を普通に使えるんですよね、皆さん。息をするように国際化という世界に多分なっていく必要があるんだろうと思っています。
 あとは、そのために何をするかといろいろな取組があって、初中局、高等局それぞれやっているわけです。局別にいけばですね。我々サイドとしては科学の世界でありますので、先ほど話も、まずインナーサイクルに一つ入るのが一つあるんじゃないかと。インナーサイクルに入るために長い間、関係をつなげることが必要であろうと。そういうことで500億円の基金、今回つくらせていただいて、まずはちょっと前に国際的にすごく頑張っていた先生にぶら下がっている若い人たち、これでサークルに入ってもらおうということをまずはやりたいと思っています。
 一方で、先ほどの鈴木さんとか野本先生からもありましたとおり、小川先生からも指摘がありました。国際の点に当たっては一定程度の制約が今、顕在化していて、安全保障貿易管理でありますとか、その点、アカデミアサイドといえども無視できない状況になっている。それであるからといってその国だけじゃない取組もやっぱりやらなきゃいけない、ASEANは特にそうですから。なので多分トラックは幾つかに分かれて、いろいろ相手国に対してアプローチを変えて、いろいろなところの知見を入れながら日本の国際化、それを当たり前のようにしていくことをやるんだろうなというのが我々世代、大きな大きな話ではあります。
 ただ、そこの特効薬は何なのかという、あるいは効果が何がつながるのか。あるいは現場でこれが今、まだ足りていないところがあるのかというところをぜひ先生方にも教えていただければなと思っている次第でございます。
 すいません、長くなりました。
【菅野主査】  ありがとうございます。ほかに。どうぞ。
【小川委員】  話が戻りますが、先ほど日本のお金でも魅力がなくなってきて何が魅力かというところで、特に途上国の方とお話ししていると、課題先進国であるからこそ先に解決策を見つけていく日本に対する期待というのは大きいのかなと感じることがあります。少子高齢化が進む中で、例えば人生100年時代にどうやって健康寿命を延ばすのかとか、人手不足になっていくときにどう対応するのかとか、災害対策ですとか、いずれ通る道だったり、同じような課題を抱えていたりする国からは、日本の先を行く知見に期待しているところは一つ、価値としては認められているのかなという気がします。
【狩野主査代理】  それに関係する政策が増えることも一つ、望ましいことではございますね。きっとね。
【小川委員】  そうですね。
【菅野主査】  ほかにいかがでしょうか。もし、ぜひ発言を。お時間になっていますが。EUの強みというのはやっぱり羨ましいですね。域内で、我々の蓄電池の分野でも、いろいろな国のいろいろな大学が同じ教育課程をつくって、修士、ドクターの学生を育てるプログラムが走っていますので、国際化をうたわずとも、もうそれが当然というような状況になっています。日本は、その違いを考えるとなかなか努力が必要で、独りぼっちで悲しいというような思いになることがありますね。
 私、産業の方にお伺いしたい点が少しあります。産業の、特に大企業は日本だけでなくて世界に展開して研究所もつくり、世界をグローバルの一つとして見ています。産業の方が、こういう文科省サイドの国際共同研究というプログラムに関して、どのような見方をされているのかとを少しお聞かせいただければと思います。
【野本委員】  最近の日本の大学のことは詳しく知らないですが、急速にいろいろ改革が進んでいるのは知っているので、日本はこう、海外はこうって言い方は非常に乱暴だとは思うんですけども、少なくとも10年前ぐらいで感じていたことは、海外の多くの大学というのは、例えば何でしょうね、ウエアラブル・ヘルスケア・エレクトリックセンターみたいな横断センターを持っていたり、ナノエレクトロニクスセンターとか、大学の中でそういった横断センター的な機能を持っている、あるいはそういった活動している例がありまして、企業としては連携しやすいんですね。というのは、非常に広いアジェンダでセンターを持っているので、何かそこに関わっておいたら、その中で大学の様々なところと連携、オポチュニティが生まれるんでないかみたいな期待感もあり、非常に連携しやすかった記憶があります。
 一方、国内とやるときは、最近は変わっていると思うんですが、何とか先生の研究室との共同研究とか、非常にピンポイントで行かざるを得ないので、かなりいろいろ広く調査をしないと、自分たちが企業として抱えている問題が大学とうまく連携できるのかという、マッチングのところは非常に苦労した経験はあります。当然今、各大学、産学連携センターを持っていって、そういったマッチングをとる機能はあるとは思うんですけれども、何となくそこは日本の大学よりは海外の大学のほうが割と顕在化したセンター機能があったので、お付き合いしやすかったこともありました。
【菅野主査】  ありがとうございました。
【鈴木委員】  御質問に対するお答えになっていないのは承知で申し上げますと、資料3ページの上半分に書かれている「考慮すべき観点」のところまでは、ものすごくアグリーで、腹落ちしたんですが、次のページから出てくる施策とのギャップを非常に感じました。この課題に対して何故この施策なのかと。アカデミアの競争力をいかにグローバルで高めるかという点では施策は確かにこうでしょうけれども、先ほど外語大の林学長がおっしゃっていましたけれども、目的の設定が違ってやいないかというのが若干気になり、本当に率直な意見として申し上げました。
【菅野主査】  ありがとうございました。
【小川委員】  網羅的に調査はしていないので、感覚としてですが、あまり日本の企業の方は今、鈴木さんがおっしゃったように、この辺の事業に御関心がない、あるいはそもそも知らないかなと思います。大きく違うのは他府省の、一番近いのは経済産業省だと思いますし、NEDOとかですね。あと内閣府のSIPだったりというのは相当意識的に企業ともきちんと結びつけようということで、経団連にもお話しいただきますし、御紹介の機会もありますし、そういうことで関心を持って参加していただこうという取組をしているのですが、文科省さんのこういったことについて私どもにお話をいただいたことはないのですね。なので純粋にアカデミアの共同事業としてやられているのかなと捉えておりました。
 なので、もう少し結びつける努力。そのときには先ほど野本さんもおっしゃったように、海外の大学とやりやすいのは売り込みがうまいから、営業がうまいからですということは、よく企業の方からも聞きます。企業の方が乗りやすいように、魅力的に映るようにアレンジして売り込むところが海外に比べると少し弱いので、こういうところについても工夫をされるともう少し産業界にとっても身近になるかなという気がします。
【菅野主査】  ありがとうございます。国際連携プログラムにも重点領域が決まっています。それは今後の産業への連携ということを考えての重点分野ですから、大変参考になると思います。どうもありがとうございました。
 かなり時間が過ぎてしまいました。申し訳ありません。それでは、ここで司会を事務局にお返ししたいと思います。
【飯塚補佐】  では事務局から最後に。第2回の委員会は今後相談しながら、改めて日程等調整させていただければと思います。
 事務局からの連絡は以上です。
【菅野主査】  どうもありがとうございます。
【大土井参事官】  御意見まとめて、次のもう少し具体的な論点に絞りあげて、主査と御相談した上で第2回はアレンジしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【菅野主査】  本日はどうもありがとうございました。拙い司会で時間がオーバーしてしまいましたけれども、申し訳ありません。これからも、ぜひよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。
 
 


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