既収載食品のデータ補完について(脂肪酸・アミノ酸)

既収載食品のデータ補完について(脂肪酸成分)

1 現状

 各脂肪酸のデータについては、5訂増補脂肪酸成分表に870食品を収載。未収載食品のうち、脂質含有量が0、(0)又はTrのものを除くと、470食品。うち脂質含有量が1.0%以上のものは88食品。
 成分表活用の観点から、同種・類似の食品や海外のデータを活用した推計により、可能な限り未収載成分項目を減らしていくべきとの指摘。

2 参考となる推計方法

(1)佐々木敏委員らによる脂肪酸推計(別添1)

  • 当時、日本食品成分表(四訂フォローアップ:日本食品脂溶性成分表)に脂肪酸データが未収載の食品のうち、脂肪酸摂取量の算出に必要と考えられる794食品について推計を実施。(脂質が1%以上の食品、Trを超えるもののうちDietary record(DR)に出てくる食品が対象)
  • 推計方法は
    A:同種の食品から推計(生と調理品、天然と養殖(栽培)、異なる産出国など)
    B:類似の種の食品から推計
    C:USDAの成分表から推計
    D:レシピから推計
    (計算方法 :参照食品と脂肪酸組成が同一と仮定して、脂質1g中の脂肪酸量に脂質含有量を乗じて計算。加熱食品については水分の減少率を勘案して計算。)
  • 分析データのある食品を用いて、上記の推計方法の妥当性を検証
    A:相関係数平均0.97(魚の2食品R=0.72,0.86を除く)
    B:相関係数平均0.96、C:相関係数平均0.84、 D:相関係数平均0.80
  • ・その後の日本食品標準成分表の改訂により、動物性食品や主要な植物性食品について脂肪酸データが充実。推計された794食品のうち、(1)脂肪酸既収載のもの、(2)25/26年度に分析予定のもの、(3)改訂により食品番号がなくなったものを除くと、約200食品(主に野菜、果物)。

【活用にあたっての留意点】
(佐々木敏委員のご意見)

  • 論文自体の評価は高いものの、14年前の仕事であり、USAD第11版(1997年)を参照しているなどデータが古い。この論文の手法を活用し、改めて再推計する必要がある。
  • 当時の作業過程も残っておらず、数字を小手先で入れ替えるよりは、一からやり直した方が早い。計算する食品の選定についても、参照したDRの規模が小さいことから、改めてやり直すべき。(作業方針によっては膨大な量となる可能性)
  • データの表記については、()書き等で計算値であることを明確にし、今後の成分分析の妨げとならないよう配慮する必要。

(渡邊委員のご意見)

  • 推計する食品は脂質含有量1.0%以上のものでよいのではないか。 

(2)渡邊委員らによる推計(別添2)

  • 五訂増補脂肪酸成分表に未収載の食品のうち、原材料の成分値が収載されている食品を選択し、48食品を推計。(原材料が単品であれば原材料の脂肪酸成分表収載値を用い、原材料が複数であれば五訂増補成分表に記載されている原材料食品の配合割合を用いて五訂増補成分表と同様の方法で算出)

3 要検討事項

  • 推計方法の妥当性
  • 収載食品の選定方針(脂質含有量、国民栄養調査での出現頻度、流通量、食事におけるウェイトなど)
  • 作業の進め方((1)各食品群担当委員が食品ごとに参照食品・参照文献等を選定→事務局が推計作業をして委員会にフィードバック、(2)大学研究室に丸ごと依頼しフィードバック・・・など)
    別添資料1:Satoshi Sasaki, Minatsu Kobayashi and Shoichiro Tsugane. "Development of Substituted Fatty Acid Food Composition Table for the Use in Nutritional Epidemiologic Studies for Japanese Populations: Its Methodological Backgrounds and the Evaluation." J. Epidemiol. 1999; 9:190-207.
    別添資料2:渡邊智子、佐藤裕美、鈴木亜夕帆、山口美保子”「五訂増補日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編」未収載食品の脂肪酸表及びトランス型脂肪酸表”Jpn. J. Nutr. Diet., 2008; 66(2) 83ー91

収載食品のデータ補完について(アミノ酸成分)

1 現状

 各アミノ酸のデータについては、アミノ酸成分表2010に337食品を収載。未収載の食品のうち、タンパク質含有量が0、(0)又はTrのものを除くと、1471食品。
 脂肪酸成分同様、可能な限り推計によりデータを補完していくべきとの指摘。 

2 参考となる推計方法

Suga et al., 2013(別添3)

  • 日本食品標準成分表2010にアミノ酸データが未収載の食品のうち、タンパク質を含まない食品を除く1471食品を検討し、推計方法の見つかった1100食品について作成。
  • 推計方法は
    Step1)文献からの分析値の収集(25食品) 
    Step2)USDAの成分表(23版、2010)から推計(122食品)
    類似の食品を検索し、窒素含有量で補正
    推計値= 参照食品(USDA)のアミノ酸含有量×求める食品の窒素含有量/参照食品(USDA)の窒素含有量
    Step3)類似食品からの推計
    a)生から加熱調理品の推計(620 食品)
    推計値= 参照食品(生)のアミノ酸含有量×求める食品の窒素含有量/参照食品(生)の窒素含有量
    b)近縁種からの推計(217食品)
    同じ属や科の食品から推計。遺伝的近さ、植物の成熟度、動物の年齢、植物の部位などから参照食品を選定。
    推計値= 参照食品(類似食品)のアミノ酸含有量×求める食品の窒素含有量/参照食品(類似食品)の窒素含有量
    Step4)複数食材の食品の計算による推計(菓子、パン)(116食品)
     成分表に材料の使用量が収載されているものについては、スクロース含有量から可食部100グラム当たりの各材料の使用量を推計
    分析値と計算値でエネルギー値が20%以上異ならないことをカットオフラインとして推計。
    成分表に材料が収載されていないものについては、業者の材料リストを用い、trial-and -error technicsで材料の割合を推計。

【活用の留意点】
(佐々木敏委員のご意見)

  • 近年、計算されたものであり、ほぼそのまま活用可能と考えられる。
  • 推計作業の詳細は保管されているが、作業用ファイルのため第三者にわかりやすいよう整理が必要。
  • 推計の妥当性検証を可能な限り実施する必要。
     (今後の追加分析食品と計算結果の比較検証を行うことも一案)
  • Step1の分析値については、データの質が不明なものがあるため注意。
  • 脂肪酸と同様、今後の成分分析の妨げとならないよう配慮する必要。

(渡邊委員のご意見)

  • 成分表に収載されている食品のデータを活用して推計する場合には、収載値ではなく分析値を用いて計算した方がよい。
  • 参照食品や参照文献等の妥当性を検証する必要があり、各食品担当委員が推計を実施すべき。

3 要検討事項

 脂肪酸に同じ。

別添資料3:Hitomi Suga, Kentaro Murakami and Satoshi Sasaki. "Development of an amino acid composition database and estimation of amino acid intake in Japanese adults." Asia Pac J clin Nutr 2013;22(2):188-199.

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