光資源委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成19年3月5日(月曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省 M1 会議室(三菱ビル地下1階)

3.議事録

(主査)
 それでは、皆さんおそろいのようでございますので、ただいまから科学技術・学術審議会資源調査分科会の光資源委員会、第4回でございますが、開催させていただきます。
 本日は、先生方、忙しい中をご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 初めに、事務局から委員の出欠、並びに配付資料の確認をお願いいたします。

(資源室長)
 資料1に委員の名簿をお配り申し上げております。このうち、大川委員、藤嶋委員、緑川委員、本日ご欠席と承っております。事務局からは森口局長が出席をいたしております。
 それから、2月1日付で科学技術・学術審議会、第4期ということになりまして、資源調査分科会のメンバーもかわっております。本日、本委員会でも、委員各位のお手元に改めて任命関係の書類、用意させていただいておりますので、ご確認をいただきたいと思います。引き続き飯吉委員に主査を、委員に主査代理をお願いしております。よろしく委員お願い申し上げたいと存じます。
 その他の資料でございますけれども、資料2、本日ご発表いただきます委員の発表資料、資料3、同じく委員の発表資料でございます。
 それから、第1回から第3回までの議事録、不手際でまとまってしまって恐縮でございますが、お配りをしております。資料4から資料6でございます。
 参考資料1、報告書の構成と各委員の分担案、参考資料2、資源調査分科会の委員名簿でございます。
 以上、資料の欠落等ございましたら、お知らせをいただければと思います。

(主査)
本日、またお二人の委員の先生にお話を伺うことになっておりますが、まず初めに電気通信大学電気通信学部機能機械工学科教授の山田委員、「光を用いた非侵襲生体診断」というタイトルでご発表いただき、引き続き意見交換をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(委員)
 ご紹介いただきました山田でございます。今日は、「光を用いた非侵襲生体診断」というタイトルでお話をさせていただきますけれども、当初のタイトルのご希望は診断と治療という話がありましたので、簡単に治療のことを最初にお話をして、主に診断についてお話をさせていただきたいと思います。
 光を用いた生体工学という分野では、医療光学ということで広い分野がございます。その中に光を用いた治療と光を用いた生体診断がございます。今日は主にこちらをお話しさせていただくわけでございますけれども、この分野では光と生体組織のインタラクションといいますか、光が生体の中でどのように振る舞うかが非常に重要な現象でございますので、そのことについて簡単にお話をしたいと思います。
 生体組織に光が当たりますと、吸収と散乱と2つの現象がございまして、光が真っすぐ進んで、物質自身によって光がエネルギーを失って出ていくことを吸収といいます。普通は水のような透明な物体に光を通しますと、このように減衰するわけです。これが吸収でございますが、生体組織は吸収だけではなくて光を散乱する特徴を持っています。散乱というのは、このように光を入射しますと、真っすぐ進まずに、多くの粒子や細胞がありますので、あちらこちらに方向を変えて行ってしまいます。そのために、反対側で見ていますと、出てきた光のエネルギーというのは散乱によって検出できない光がたくさんあるものですから減衰してしまいます。実際、あらゆる方向に出てきた光を全部合わせますと、吸収がなければ入射したエネルギーと等しいエネルギーになるんですけれども、真っすぐのところから見ると非常に少ない分しか出てこないということで、あたかも光が減衰してしまったように見えるわけです。散乱のないこちらのほうはエネルギー自身が吸収されてしまって少なくなってしまいます。こういう2つの現象がございます。これを頭に入れていただきたいと思います。
 光の吸収と散乱に関して、生体組織が波長に対してどのような特性を持っているかというのがこのグラフです。生体組織の中で光を吸収する主要な物質というのは水とヘモグロビンでございます。メラニンもここに書いてありますけれども、メラニンは皮膚の表面にしかございませんので、ほとんど無視していいという状況です。ヘモグロビンはほとんど可視光に対して吸収を持っています。水は赤外光に対して非常に強い吸収を持っています。そうしますと、近赤外と呼ばれる700ナノメーターから千数百ナノメーターぐらいの間の波長ですけれども、ここのところでヘモグロビンも水も吸収が少なくなるために光が通りやすい。光学的な窓と呼ばれております。
 吸収は物質によって非常に特徴的な、ピークがたくさんあるスペクトルをしているわけですけれども、散乱はどちらかというと波長に対して非常に単調に振る舞います。波長が長くなると少しずつ散乱が弱くなるという形で、可視域では吸収と散乱が同程度、あるいは吸収が強くなる場合もあります。赤外線のところでは吸収のほうがずっと強いということになります。ちょうど光学的な窓のところでは、散乱のほうが吸収よりもずっと強いということになります。縦軸が対数スケールですので、光学的な窓のところでは散乱のほうが吸収よりも100倍ぐらい強いということになります。
 そうすると、ちょっと順番が前後してしまうんですけれども、いろいろな波長を出すレーザー光がありますが、そういうレーザー光を生体組織に照射しますと、どれだけ深く入っていくかが問題となります。それを生体組織への浸透深さと呼んでおりますが、それは各レーザー光の波長における吸収特性の逆数で表されます.エキシマレーザーと呼ばれる紫外線を出すレーザー光は数ミクロンしか入っていかない。可視域のレーザー光は大体数百ミクロンしか入っていかない。近赤外のところは、先ほどの光学的な窓と呼ばれるところですけれども、そこですと1,000ミクロン以上、つまり1ミリ以上入っていくということになります。それでまた波長が長くなっていきますと、数ミクロン、あるいは炭酸ガスですと20ミクロンぐらいということになります。浸透深さが光の波長によって全然違うということ利用して、治療とか診断の目的に応じて光の波長によって使い分けております。
 まず、光を用いた治療についてお話しいたします。強いレーザー光を生体組織に照射しますと、皮膚組織が蒸散されるます。アブレーションというのは蒸散という意味で、蒸発して飛び散ってしまう、なくなってしまうという意味ですけれども、レーザー光の波長により蒸散される深さが異なります.紫外光を出すエキシマレーザーでは、大体数ワットのエネルギーで1秒間照射しますと5ミクロンぐらいしか蒸散されません。1秒間で5ミクロンということですから、言ってみれば非常に精密な加工ができるわけです。そのために、これを使って最近よく行われておりますが,角膜矯正、非常に近眼の強い方とか遠視の強い方の角膜の形をこれで変えて視力回復の治療が行われています。
 それから、Arレーザー、これは500ナノメーターぐらいの緑色の光ですけれども、5ミリぐらい入って、生体組織の一部は蒸散されて、その下のほうは凝固してしまいます。そのために、これは止血とかあざの治療に使われます。
 ND:YAGレーザー、これは1,016ナノメーターの近赤外の光ですけれども、これですと10ミリぐらいまで入って、生体組織の上層は蒸散してしまう。この場合、あざ治療に使うことができます。
 あと、10ミクロンという非常に波長の長いCO2(二酸化炭素)レーザー、炭酸ガスレーザーですけれども、水を蒸発させることができるために非常に深い穴を掘ることができます。これは切開、つまりレーザーメスという形で使うことができます。
 これはすべて光のエネルギーで組織を破壊することに使われているわけですけれども、もう一つの光の使い方としてはがんの光化学的治療というものがございます。フォトダイナミックセラピーと呼ばれておりますけれども、これは組織を直接破壊するものではなくて、腫瘍に非常にくっつきやすい、しかも光を受けて反応する物質(光感受性物質)を投与します。それががんの組織にたまったところを見はからって光を照射します。そうすると、光化学反応によって活性酸素、ラジカルが発生しまして、それが細胞を死滅させるというメカニズムでがんを治療しようという手法です。この場合、光感受性物質を投与した後、腫瘍組織に物質がたまるまで少し時間がかかるわけですけれども、ほかの正常組織にも行き渡ってしまうわけですが、正常組織からは物質が早く排除されますので、腫瘍組織にたまりやすい。そのために選択的に腫瘍細胞を死滅させることができる。
 しかし、これは可視光を使うわけですけれども、光があまり深く浸透しない、1ミリぐらいしか入っていかないわけです。そうすると、光が深く浸透しないために皮膚とか管腔臓器の表面のがんの治療に限られます。具体的には、皮膚がんとか肺がん、食道がん、子宮がんなどでございます。早期がんでの治癒率は非常に高いと言われています。
 欠点としましては、日光過敏症というものがありまして、薬剤(光感受性物質)を投与した後、二、三週間は直射日光を浴びますと光感受性物質が活性酸素を出したりしますので、直射日光を避けるよう気をつけなければいけない。この治療法については、私は、あまり詳しくありませんので予備資料を参考にしていただきたいと思います。
 次に、今日の私のお話の中心でありますけれども、光を用いた生体診断のお話をさせていただきたいと思います。
 生体診断をするのに用いる光というのは主に近赤外光です。近赤外光というのは、先ほど申しましたように生体に関する光の窓と言われている波長で、比較的奥まで光が浸透しやすいということで生体の内部の診断が可能になります。
 近赤外光を用いる生体診断のお話しの内容は、まず原理と概念、それからこれを使ったいろいろな技術として、パルスオキシメータ、OCT(光干渉断層像)、酸素モニター、光マッピング、拡散光トモグラフィー、血糖値測定、の予定です.多過ぎて時間がなくなるかもしれませんけれども、お話をさせていただきたいと思います。
 これは近赤外光がいかに透過しやすいかを非常にわかりやすく示した写真です。手のひら側に800ナノメーターぐらいの近赤外光を当てまして、手の甲側から近赤外光を感じるカメラで写真を撮りますとこのように見えます。緑色の部分が光が通ってきた部分です。その中に縞状の線が見えますけれども、これは手の甲側の表面に近い太い静脈がこういうふうに黒く見えます。しかし、いくら目を凝らしても骨は見えません。なぜかといいますと、骨は光を散乱はしますけれども吸収はしませんので、こういうふうに黒くは見えないわけです。そのかわり、血液が光を吸収するためにこういうふうに黒く見えるわけです。
 この原理を使ったものが、最近、指の静脈認証とか手のひらの静脈認証で使われているわけです。実際、こういうポインターの光を指に当てますと、反対側がぽっと赤く見えるわけです。しかし、これで一生懸命見ても骨は黒く見えません。これと同じことです。赤い光は生体組織を比較的通りやすいので赤く見える。これは今、赤い光ですけれども、赤でなくても、白色光を当てて見ても赤く見えるわけです。つまり、太陽光に手をかざすと手が赤く見える。これも同じ原理です。可視光の赤よりも短い光は血液により吸収されるので透過せず、赤い光だけ透過して見えるわけです。これが近赤外光を使う原理的な現象です。
 もう一つは、近赤外光を使いますと血液の酸素飽和度を測定することができます。これは近赤外領域での酸素を持ったヘモグロビン、いわゆる動脈血のヘモグロビンの吸収スペクトルです。それから、酸素のないヘモグロビン、これは静脈血のヘモグロビンですけれども、このように動脈血と静脈血で吸収のスペクトルが異なります。可視域では酸素のないヘモグロビンのほうが吸収がずっと強い。したがって静脈血は暗赤色に見えて、動脈血は鮮紅色に見える。これらのスペクトルはその色の違いを示しているわけです。この血液の色を見ることによって酸素飽和度がわかるということで、2つの波長で血液の吸収の度合いを測定すれば生体組織の中に酸素がどれだけあるかがわかるわけです。近赤外光を使ったいろいろなデバイスでは酸素飽和度を出すものが多くを占めています。必ずしもこれだけではありませんが、これがもう一つの原理となっております。
 もう一度、くどいようですけれども、光の吸収と散乱を説明させていただきます。これは可視域でのヘモグロビンの吸収と散乱がどれだけ違うかを示した図です。
 縦軸が光の減衰の強さをあらわす指標です。吸光度と呼ばれるものです。赤血球の中に入っているヘモグロビンを抽出して、透明なヘモグロビン溶液をつくりまして測定しますと、このようなヘモグロビンの非常に特徴的な吸収スペクトルが観測されます。一方、同じ量のヘモグロビンを持つ赤血球を浮遊させた血液の透過光の減衰を見測定しますとこのようになります。同じ量のヘモグロビンであるのにこれだけ減衰量が違うのは、散乱によって光が減衰したからです。この部分だけが吸収というわけです。先ほどの酸素飽和度の測定には吸収の情報が必要ですけれども、光は散乱による減衰がずっと大きくて吸収による減衰が非常に小さいということで、散乱によってゆがめられた光の信号から小さな吸収の情報を引き出さなければいけないということで、難しさがあります。結局、散乱があるということが計測の難しさを招いているということになります。
 そういう非常に強い散乱の中の吸収の情報を取り出すいろいろな装置があるわけですけれども、最初にパルスオキシメータというものについてお話しします。
 これは日本の青柳さんが1964年ごろに発明された技術ですけれども、指に近赤外光、800ナノメーターぐらいの光を照射して透過した光の減衰量を時間を追って見てみますと、こんな変動をいたします。この変動は、心臓の拍動に対応した変動になっています。つまり、動脈の拍動成分とその他の直流成分とがあるわけですけれども、その原因を見ますと生体組織による減衰と静脈血による減衰、それから動脈血による減衰とあります。拍動による変動というのは、指の動脈でも拍動に従って拡張したり収縮しています。そのためにこのような拍動が見られます。
 この交流の部分だけを検出して2つの波長で振幅を見てみますと、動脈血の酸素飽和度をはかることができます。パルスというのは拍動という意味でオキシメーターは酸素計という意味です。パルスオキシメータは動脈血の酸素飽和度を非常に簡単に測定することができます。
 実際、このように指に挟んで、こちらに2波長を出す発光ダイオードを、こちらに受光素子を置いております。指先の動脈血の酸素飽和度、例えば97パーセントという数値があります。それから、脈拍が表示されます。これは動脈血の酸素飽和度を見ているわけですが、結局、血液中の酸素と炭酸ガスの交換がどれだけうまくいっているかを知ることができるわけですから、肺の機能を知ることができるというものです。これは世界中で非常にたくさん使われておりまして、どこの病院に行ってもありますし、救急車にも必ずついています。非常に簡便で安い装置であります。
 おもしろいといいますか、変な話ですけれども、先ほど言いましたようにこれは日本の青柳さんという方が1964年に発明されたんですが、実用化したのはアメリカの企業でありまして、日本では青柳さんの勤められている企業が実用化にあまり興味を示さなくて、むしろアメリカの会社がいいものだということで実用化をして、今現在、世界中に広まっているというものです。
 次は、OCT(Optical coherence Tomography)、日本語に訳しますと光干渉断層画像という技術です。これは酸素飽和度を出すのではなくて生体組織の構造を皮膚の表面から、皮膚だけではないんですけれども、表面からある深さのところまで構造を描き出すことができる装置です。これは1,300ナノメーターぐらいの近赤外光を使います。干渉性の非常に低い光を使うわけですけれども、光の干渉を使った装置です。
 発光ダイオードからの光を2つに分けまして、片方は生体組織、片方は参照光としてミラーに照射します。散乱してはね返ってきた光とミラーで反射してきた光をここで干渉させます。干渉した信号をデータ処理しますと、ちょうど生体組織の構造と一致して、散乱の強さをあらわす画像がこのように深さ方向に対して得ることができます。空間分解能は光の干渉性が低いということで、逆に空間分解能がよくなって、10ミクロンとかそれ以下、それよりもよい空間分解能で画像を得ることができます。
 これを最初に画像として出したのが1993年、91年ごろから研究されているわけですけれども、これは角膜です。これが前眼房と言われる水が入っているところ、これが虹彩です。これが水晶体です。これは生きたままの状態です。最初のころの研究だったので、人間ではなくたしかウサギだと思いますけれども、生きたままの状態でこういう断層像を描き出すことができました。
 これは目の網膜の奥のところです。中心窩と呼ばれる神経繊維がまとまって中に入っているところですけれども、そこの構造がこのようにきれいに、網膜も何層か、いろいろな層が見えています。私はあまり詳しくないんですけれども、非常に薄い層がたくさんあります。その構造がきれいに見えている。これが250ミクロンですから、大体10ミクロンとか20ミクロンの空間分解能で、生きたままの状態でこういう観察ができるようになったというわけです。
 この技術は、最近、非常に発展しておりまして、実際に目の網膜の断層像を撮るということで、眼科では非常に広く実用化されております。最近ではさらにいろいろな研究がなされて、非常に高速に断層像を撮ったり、高分解能化が進んでいます。どのぐらいかといいますと、細胞の中の核が見える高分解能ができる。それから、三次元化ができる。例えば、網膜の下の血管の像が三次元で見られるとか、内視鏡に応用して、胃の表面の断層像を撮るようなことに応用されています。もし、時間があれば、三次元化された画像を後でごらんに入れたいと思います。
 これも余談ですけれども、この技術について1991年、山形大学の丹野先生という方が特許を出されました。ほとんど同時に、アメリカのMITの日系人のフジモト先生という方がやはりアメリカで特許を出しておりまして、フジモト先生のほうは特許を出した後、実用化に向けていろいろ研究開発を進められて、実際に眼科で使われるものを開発されたんですけれども、日本の山形大学の先生は特許を出しただけで、ほとんど発表もせずに研究をやめられてしまったんです。でも、日本でOCTの眼科用の装置を売るときには、日本の先生に特許料を払わなければいけないということで、山形大学の先生は研究しなかったんですけれどもお金が入っているという状況です。日本はアイデアは出るんですけれども、どういうわけか実用化するところがあまり上手でないことが、これでおわかりになるかと思います。そこを何とかしていかなければいけないと思います。
 4番目のデバイス、酸素モニターというものがあります。パルスオキシメータは動脈血の酸素飽和度を出してきたわけですけれども、酸素モニターは動脈血ではなくて生体組織の平均的な酸素化状態の変動を見るというものです。これは島津製作所のカタログの絵ですけれども、このように近赤外光を額に照射しまして、数センチメーター離れたところに検出器を置いておきますと、光が中を通って脳まで通した後、また検出されるということになります。それでこの辺の酸素飽和度の変化がわかるという装置です。
 これを使って北海道大学の田村先生がおもしろい実験をされました。学生が先ほどの近赤外光の酸素モニターを額につけて、脳波計とか血圧計、パルスオキシメータ、レーザー血流計をつけて、計算問題とかいろいろなことを考えさせたわけです。それで、額の下にあります前頭前野の活動状況がわかるというわけです。
 これはちょっと見にくいんですけれども、横軸が時間で1分です。それから、線が3本ありますけれども、上から酸素のないヘモグロビンの変動、それから酸素化されたヘモグロビンの変動、それから全血液の変動です。この場合、1のところで学生に数学の問題を読んで聞かせます。問題の提示が終わって、ここから学生が考え始めた。一生懸命考えたものですから血液量が増えていったわけです。その問題がなかなか解けなくて、3番のところで一たん休んでしまって、4番からまた考え始めたんですけれども、5番のところで結局回答が出ずにあきらめたという結果です。
 こちらは別の学生です。これも同じように問題を与えて解かせたんですけれども、ほとんど血液量の変動がなくて、3番のところでもう答えが出てしまった。
 こちらは数学が得意な学生で、こちらは数学が苦手な学生だったそうで、苦手な学生のほうが一生懸命考えているんだけれども答えが出ない。数学の得意な学生はそんなに考えなくてもぱっと答えが出る。こういう結果が出たそうです。ただ、これは額のある1カ所にしかセンサーをつけておりませんので、脳のほかの部分がどういう活動をしたかちょっとわかりません。
 そこで先ほどのセンサーをたくさん頭につけて、脳全体がどのような活動をしているかを調べようというのが光マッピングというものです。先ほどの一つのペアではなくて、これをたくさん頭にくっつける。こんな感じです。最近、光トポグラフィー、この名称は日立の登録商標ですけれども、いろいろなところでこの装置が使われて、脳の活動を調べようということがなされております。例えば、これは言語の活動をつかさどる脳の部分だと思うんですけれども、何かを聞かせたときにここが活動したという結果です。
 これは脳のMRIの画像の上に光の画像を張りつけて、わかりやすくした画像です。長所は、非常に時間応答が速い。0.1秒ぐらいの変動がとれます。比較的自由な姿勢で計測ができる。このようにいすに座った状態で頭部に光ファイバをたくさんつけるわけですけれども、こんな感じで計測しますので、比較的自由な姿勢でとることができる。
 ほかにも脳活動を画像化する装置があります。fMRIとかPETとかありますけれども、非常に大きな装置の中で、ほとんど動かずに横になったままでしか計測できません。これはある程度自由な姿勢で、しかも動きがあっても構わないということです。そういう長所がございます。
 短所としましては、光があまり脳の深くには入らない。先ほどのモデルの図では光がかなり脳の中に入っているんですが、実際に光は脳の表面ぐらいまでしか到達しておりません。そのため、脳の深部の活動はわからないということです。
 それから、これは個人間の比較ができないということです。原理的にややこしいんですけれども、連続光を使っておりまして、光を通った部分の光路の長さ、それから血液濃度の変化の積で光量の変動が現れます。ところが、連続光を使っておりますと、平均の光路長がわからないんです。そのために、積はわかるんですけれども、それぞれを分離することができません。いろいろな場所で平均光路長がどういう値になるかわかりませんし、分離することができないということで定量性がありません。それで個人間の比較が不可能ということになります。それでも、特定の個人で同じ部位の変動を見ていれば、どんな脳の活動があったかが非常に簡便にわかりますので、いろいろな使い方がされております。最近、非常にいろいろなところでいろいろな応用がなされているということです。
 連続光を使いますと平均光路長と血液濃度を分離できないということでしたけれども、平均光路長というのはパルス光を使って非常に速いピコ秒の時間分解計測をしますと求めることができます。これはそうやって求めた光マッピング像で、光路長を求めることができましたので、例えば酸素化されたヘモグロビンの濃度の変化に書き直すことができます。これは右手の指を動かしたときに左の運動野が活動した様子です。左の脳が右半身の運動をコントロールしていますので、ちょうどそういう反応が出たわけです。ちなみに、これは私の脳で、右手の運動が左に出たということで脳が正常に機能していることがわかりました。
 ただ、これでもあまり正しくないんです。というのは、先ほどの光路長の中に骨とか皮膚が入っていますので、本来ならば脳の部分だけの光路長を求めたいんですけれども、それが求められないということで、これもそんなに正しい画像ではありません。結局、光マッピング法というのは、二次元的に、変動を平面上に並べているだけの画像ですので限界があるということであります。
 そこで、光を使った断層像、トモグラフィー、を撮ったらいいのではないかということで、以下のようなことを考えました。拡散光トモグラフィーとありますけれども、これは光が生体の中に入りますと非常に強く散乱されて、いわゆる拡散現象のような形で広がっていきますので、そういう意味で拡散光トモグラフィーと言われております。赤ん坊の頭ぐらいですと反対側でも検出ができますので、このような画像が出るのではないかということで、こんなモデルの図をかいております。
 この拡散光トモグラフィーの手法を簡単に説明します。生体組織がありまして、そこに光を当てると周囲全体で測定ができる。このときにはピコ秒のパルス光を使います。そうすると、検出器の信号はこんな感じで、横軸、時間、ピコ秒ですけれども、このような変動のデータが検出されます。入射点をいろいろ変えて、たくさんのデータをとります。
 一方では、逆問題計算をします。生体組織の中の散乱とか吸収の特性を仮定しまして、光の伝播のモデルを使って光がどのように伝播するかを解析します。そして、各検出器でどのような信号が得られるかを計算して実験結果と比較します。比較して、一致していれば最初に仮定した分布が解である。合わなければ、分布を仮定し直して繰り返し計算をやる。一致するまで繰り返し計算をやるわけです。そのようにしますと、散乱および吸収の情報が画像として得られます。
 光がどのように伝播するかをシミュレーションした人がいまして、頭にこのようなパルス光を入れました。それがどのように伝播していくか計算したわけですが、こんなふうにふわっと拡散現象という形で進んでいきます。こんなふうにあっという間に伝わります。これが0.17ナノ秒で、4ナノ秒ぐらいで光が全然なくなってしまうわけですけれども、こんなふうにして光がどのように伝播するかを解析することができます。この解析を使って逆問題解法を行いますと画像をつくり出すことができます。
 我々は、このように腕の回りに光ファイバをたくさん置きまして、グリップ運動をするときの変化がどうなったかということを画像化してみました。これが最終的な画像です。これは酸素のついていないヘモグロビンがどれだけ増えたか、グリップ運動をすることによって酸素のないヘモグロビンの血液が増えた、こういうところが増えたということを示しています。ですから、ここはおそらく筋肉であろう。それから、こちらの画像は酸素のついたヘモグロビンを示しており青いところで減っている。赤いところは増えていることを示しており、こちらの血液量を示す画像でもちょうど血液量も増えていまして、この部分は太い血管であろうと考えられます。腕は七、八センチの直径ですけれども、そういうところではこのように光の断層像を得ることができました。
 ところが、厚さが10センチを超えますと、透過した光を検出するのは非常に難しいわけです。それで現在は、こういう透過型ではなくて反射型、例えばここに光を当てて、先ほどのマッピングと同じような感じでたくさん光ファイバを置いて、同じような計算をやる。そうすると、脳内のどの深さのどの部分で活動が起こったか画像化することができております。今日は画像は持ってこなかったんですけれども、浜松ホトニクスが成功しております。
 それから、赤ん坊の絵がありましたけれども、赤ん坊にこういう測定を行いまして画像を撮る実験をやっております。
 最後に、酸素飽和度の測定とは異なる技術ですが、血糖値測定の話をしたいと思います。糖尿病の患者はインシュリンを打つ前に必ず指から採血をして血糖値の測定をしているわけです。それが非常に煩わしくて痛いということで、光を使って非侵襲で連続的に血糖値を測定できないかということで、もう20年ぐらい前から研究されている技術なんですけれども、うまくいかない、実用化されておりません。
 従来、どういう方法で光を使った血糖値測定の研究がされているかといいますと、まず事前に糖負荷試験というものを行います。つまり、砂糖水を飲んで、飲んだ直後に血糖値がどれだけ変化するか採血をして測定する。採血と同時に、ある部分の皮膚に光を当てて反射光のスペクトルを測定します。血糖値とスペクトルのデータを取得して、多変量解析という統計学的な手法を使って検量関数、簡単に言えば校正曲線を作成します。その作成した検量関数から、今度はスペクトルだけを測って血糖値を出しますと、糖負荷試験で取ったデータの範囲内ではまあまあの精度で血糖値を推定できるんですけれども、糖負荷試験をやった日以外では検量関数がうまく働かず、血糖値が推定できない。
 これはなぜかといいますと、血糖値の変動によるスペクトルの変化が非常に小さいんです。そのために、血糖値以外のいろいろな要因、水分とかたんぱく質とか脂肪とか、いろいろな生体成分がありますが、そういうものがほんのちょっと変化してもスペクトルが変わってしまって、それが血糖値の変動によるスペクトルの変動を隠してしまうということです。これが従来、血糖値の測定がうまくいかない原因になっています。
 我々はどういう新しいアプローチをとったかといいますと、糖負荷試験を行って求めるスペクトルというものシミュレーションで合成するという手法を考えました。そうしますと、わざわざ糖負荷試験をしなくても検量関数をつくり出すことができます。
 皮膚を表皮、真皮、皮下組織という3層構造に分けまして、光を入れたらどういう反射光が出てきて、それがどのように変わるかシミュレーションを行います。血糖値、いわゆるグルコースの変動とか、それから脂肪、たんぱく質、水分、皮膚の温度、いろいろな要因があるわけですけれども、その変動を組み込んで、これらの外乱要因といいますか血糖値以外の要因によるスペクトルの変動をシミュレーションにより求めます。そして、糖負荷試験という事前実験を行わずに検量関数を作成します。
 その検量関数を使って血糖値を推定した結果がこれでございます。最初だけまだキャリブレーションしないといけないんですけれども、校正実験をやります。血液をとって血糖値を測定して、検量関数から出す血糖値を合わせてやる。ここで糖負荷試験を始める。つまり、砂糖水を飲むわけです。その後、実際の血糖値の変動と、シミュレーションでつくった、作成した検量関数から求めた血糖値というのは非常によく一致しました。もう一つの例はちょっと一致が良くないんですけれども、非常に似たカーブを描いています。
 このようにして事前実験なしに血糖値を測定するというのは、患者の負担を非常に減らしますし、救急で入ってこられた患者については事前実験なんか絶対できませんから、そういう方でもシミュレーションでつくった検量関数を使えば、血糖値の連続的な測定ができるということで、我々は一つのブレークスルーに成功したと考えております。
 以上、幾つか話をしてきましたけれども、これから生体医用光学というのはいろいろな分野に発展していくと考えられています。例えば、病理検査、腫瘍たんぱく質分子を分子レベルで検出する。それから、小動物を使って遺伝子発現とか新薬の開発をする。これは蛍光とか発光というものを使うわけです。それから、血液診断、先ほど言いました血糖値の測定。それから、頭部の脳高次機能計測や手術支援。手術の最中に、例えば脳腫瘍を除去するときに言葉をつかさどる脳の部分を除去しないようにするとか、そういう支援もできるのではないか。それから、乳がんの診断、内視鏡とOCTや蛍光を組み合わせた内腔診断に発展していくと考えております。
 時間が延びましたが、以上でございます。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 それでは、質問等お願いをいたします。

(委員)
 興味深い話、どうもありがとうございます。
 光トポグラフィー、私、使ったことがないのでお尋ねしたいんですけれども、脳のマッピングするとき、MRI画像は個人ごとに撮ってやるということなんですか。

(委員)
 まだその辺が確立していないんですけれども、個人ごとにやる場合もありますし、最近は非常に多くの方のMRI画像の平均値をとって、それを標準脳という形にして、その上に光の画像を重ね合わせることも試みられているということでございます。

(委員)
 個人によって随分形が違うと思うんですが。

(委員)
 そうですね。どの程度の範囲まで標準脳がうまくいくのかわかりませんけれども、ある程度の範囲であればそういうものも可能なのではないかと思っております。

(委員)
 ありがとうございます。
 それともう一点、これは基本的に脳の浅い部分ということで大脳新皮質、前頭野なんか折れ込んでいる部分がありますよね。あの辺はどのくらいの深さまで可能ですか。

(委員)
 脳の表面の数ミリぐらいまでしか検出できていないと私は思います。そうすると、脳が切れ込んでいる中はちょっとわからない。実際に空間分解能がどれだけあるかといいますと非常に悪くて、入射点と検出点の間の距離が3センチぐらいあります。それを頭の上にたくさんくっつけるわけですけれども、これが3センチですから、画像の空間分解能というのは多めに見積もっても1センチぐらいしかないわけです。そうすると、脳にへこみがあっても全然検知しないと思います。

(委員)
 どうもありがとうございました。

(委員)
 分子イメージングと最近よく言われますけれども、いろいろな方法があると思うんですけれども、光計測という面から、全部レビューしていただいてもいいんですが、どういう方法がよさそうで、どの程度まで行くんですか。

(委員)
 分子イメージングというと、一分子イメージングから分子群のイメージングとか、どの範囲を分子イメージングというのか私もよくわからないんですけれども、蛍光を使いますと非常に感度がよくなりますので、一分子イメージングも可能になるのではないかと思います。それから、遺伝子発現、あるいは創薬のための薬剤がどこに移動したか、生体の中で輸送されたのかを知るためには、蛍光を使いますと蛍光のトモグラフィーということで、数ミリまで行くかどうかわかりませんけれども、1センチよりはいい空間分解能で、薬剤がどこに分布しているかを検出することが可能になると思っております。
 そうしますと、今まではたくさんの動物に一度に薬剤を投与して、1週間後にどこに移動したかを調べるために動物を殺して見る、また2週間後に別な動物を殺して見るということをやらなければいけなかったわけですけれども、それが非常に少ない動物で、あるいは同じ動物で時系列で追っていけるわけです。ですから、効率もよくなりますし、個体差の誤差も減らすことができると思っています。

(委員)
 例えば、生きている人間というか、生きている状態で適用は。

(委員)
 生きている人間は、私はちょっと難しいと思っています。というのは、まず蛍光を持って投与される薬を開発しなければいけないんですけれども、動物では多少毒性があっても構わないと思うんですが、人間の場合には毒性が非常に問題になる。毒性がなくて、蛍光特性を持ちながら腫瘍に蓄積しやすい薬剤を開発するというのは、非常に難しいのではないかと私は思っています。しかも、安全なものが開発できたとしても、蛍光が中から出るわけですけれども、それは皮膚よりも数センチのところでないと検出できない。ですから、深いところの蛍光は幾ら出ても検出できないと私は思っております。乳房は光が透過しやすいので適用が可能かもしれませんけれども、それ以外の深い臓器に対する適用というのは非常に難しいのではないかと考えております。

(委員)
 ありがとうございました。

(委員)
 テラヘルツも一時期、去年、おととしぐらいですか、利用応用がとても言われていたと思うんですけれども、先生はどのように可能性をお考えですか。

(委員)
 テラヘルツ光は非常に水に吸収されやすいんです。生体組織は70パーセント以上が水ですので、テラヘルツ光を生体組織に当てましても、数十ミクロンぐらいで全部吸収されてしまって透過しないんです。指でも透過することは非常に難しいと思います。ですから、どういうところで使われるのかまだちょっとわかりませんけれども、例えば今、使われているのは植物の葉、あれは非常に薄いですから水分があっても透過はまだできるんです。あるいは紙を透過する。水をほとんど含んでおりませんから透過するんですけれども、人間の体で数ミリの厚さの部位はほとんどありませんので、テラヘルツ光を適用することは不可能に近いのではないか。何かおもしろい別な応用、例えば採取した薄いサンプルや、細胞組織に対する顕微鏡的な観察では何かうまい利用法があるかも知れませんけれども、生きたままの状態でテラヘルツ光を応用するのは非常に難しいのではないかと考えています。

(委員)
 さらに光で高度なことをやっていこうとすると、レーザーとかいろいろなものをもっと容易に使えるようになりたいんですけれども、ピコ秒のパルスレーザーとか、なかなか国内で自由に使えるようなものが手に入らなくて、また値段も大変にお高い現状があると思うんですけれども、なぜ国内ではあまり製品開発が進まなかったんでしょうか。

(委員)
 やはり高価であるということが非常にネックになっていると思います。ピコ秒のパルスレーザーはそれほど高価ではないんですけれども、その検出系がもっと高価です。装置の概要を示さなかったんですけれども非常に高価です。我々が使いました装置は、私は以前、工業技術院におりまして、そこでNEDOのプロジェクトがあって、大変なお金をかけて装置をつくっていただいたんです。それをいまだに使っているわけですけれども、世界で我々とイギリスのロンドン大学、ヨーロッパではドイツのある大学、その3カ所しか今のところ装置を持っていないんです。もっと何らかの形で安くなればいいと思っているんですけれども、なかなか安くならないというのが現状です。

(委員)
 ありがとうございました。

(主査)
 ほかにいかがでしょうか。
 今、そこに絵がかいてありますけれども、脳の画像の場合、MRIと似ている、違いはどういうことになるんですか。

(委員)
 光では血液の酸素化度といいますか、酸素のついていない血液とついている血液、それから血液の総量の3つがわかります。定量性の問題がありますけれども、それがわかります。MRIで見えるのは、いわゆるファンクショナルMRI(fMRI)ですけれども、あれは鉄の磁性が変わることを見ていますので、酸素のないヘモグロビンの画像だけしかわかりません。

(主査)
 血液を見ていることは同じ。

(委員)
 同じですけれども、fMRIでは酸素のない血液の画像だけです。ですから、その辺でちょっと違いがあります。
 PETは全く違う原理で、あれはグルコースの代謝を見ておりますので血液ではないです。

(主査)
 逆に言うと、脳の活動のどういう現象を見ているのかがわかるのではないでしょうか。その辺をうまく。

(委員)
 そうですね。ただ、脳の神経活動は、電気的な活動が最初に起きるわけですけれども、それに伴って二次的に血液量が減ったり増えたりするところを見ておりますので、ちょっと違う。脳波ともちょっと違うということです。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。
 先生、どうもありがとうございました。
 では、次に移りたいと思います。今度は、NTT未来ねっと研究所所長の委員から、「大容量、高速光通信ネットワーク」のお話をお願いいたします。

(委員)
 NTT未来ねっと研究所所長の萩本と申します。高速大容量といいますか、光通信ネットワークの最近の現状を紹介したいと思います。
 私どもの研究所、三浦半島に先にありまして、横須賀の研究所でございます。ちょうど晴れた日には富士山が見えるのですが、ファイバの伝送損失はキロメートルあたり0.2デシベルということで、大体100キロ行って20デシベル、ですから100キロ先でパワーが100分の1になるというのか光ファイバのロスのパフォーマンスです。ちょうど富士山が見えるときが、大体100キロ離れていまして、減衰量も大体10デシベル、もっとガスがかかってしまうと見えないんですけれども、考えていくと、まさにガラス板がずっと並んでいてまだ向こうが、富士山が見えるぐらい透明なのがファイバというイメージでございます。
 ブロードバンドの時代ということでファイバが非常に活用さておりますが、もう一つユビキタスということで、これは無線に関係しますので、今日の主題からはちょっと外れておりますが、無線LANを含めて最後のアクセス部分は電波のほうが線がなくて便利です。最近だと、Suicaとか、ああいう非常に近距離を無線でつなぐことも大きく広がっています。ただ、そうやって集めたデータをストレージ側に運んだりするところでいうと、相変わらず光ファイバが非常に役に立っておりますので、見えないところも含めて光ファイバが裏側で頑張っているということでございます。
 光通信では単一モードの光ファイバというものが通常使われておりまして、単純な構造は、真ん中にコアというちょっと屈折率の高いところでございまして、その周りがクラッドというガラスで覆われています。光は全反射を使って伝播しております。ただ、単一モードといいまして、コアの半径は大体10ミクロンφです。クラッドが120ミクロンφですので、非常に細いところに、特に真ん中に小さいな屈折率の高い部分がある。ここに光が全部集められて、100キロ、1,000キロ、1万キロとつながっているということです。
 FTTHということで、ご家庭にもう光ファイバが入るようになりましたが、通常の簡単なコネクターで脱着ができるということです。それはとりもなおさずコネクターの形状からファイバの、最初のころはコアが真ん中に必ずしも行かなくて、横にずれたり、いわゆる偏芯といいますか、偏ったりします。そうすると、つけ合わせても一致しないものですから調整が要ったというのが二十数年前の実情ですが、現在では1センチもあるようなコネクターを差せば10ミクロンのコア同士が一致するという、すべてがよく管理されて高精度に接続できるようになったということでございます。
 光ファイバの特徴は、先ほど委員がいろいろな波長をご紹介されておりましたが、ちょうど1.5ミクロンの付近が光ファイバにとって一番ロスの少ない波長域でございます。歴史的には、1970年に光ファイバの測定損失の最初のチャレンジングなデータがコーニングから発表されて、さっき0.2デシベルと言いましたが、その当時は20dB/km(デシベル毎キロメートル)です。1キロメートルでパワーが100分の1になってしまう。今で言えば非常にロスが大きいんですが、そのころで言うと活気的なファイバで、それだったら頑張れば通信に使えるのではないかと言われたのが1970年代。同時に、半導体レーザーもダブルヘテロ構造というものがございまして、それで室温発信ができるようになってきました。ですから、光通信の根本の要素は、光通信のファイバと光源であるレーザーというのは非常に象徴的ですが、どちらも1970年におおむね今の構造が産声を上げて、10年もたつと社会の中に浸透し、現在で言えばどこでも使われているという状態になっています。
 自由なパラメーターは伝送損失、先ほど0.2dB/km(デシベル毎キロメートル)と申し上げたような、ファイバの中を光が減衰していくわけですが、散乱が非常に少ないために遠くまで届くということでございます。
 もう一つ重要な通信用のパラメーターとしては、ディスパージョンといいますか、光の波長が異なると伝播時間が若干異なります。光は空気中で言うと秒速30万キロメートル、ガラスは1.3の屈折率がございますので3分の2に落ちまして、秒速20万キロメートルで飛んでいきます。
 そのときに、わずかに違うために、後で申し上げますが、情報をたくさん載せますとスペクトルが広がります。例えば、1ギガビットの情報を載せると1ギガヘルツぐらいのスペクトル幅に信号が分布します。1ギガ違うだけで光の周波数が、現密に言うとわずかに違います。それが長い距離飛ばすと波形ひずみになって届かなくなってしまうということで、ディスパージョンとロスと両方を考えて光ファイバ通信というのは進展していきました。
 最初のころのファイバは、先ほど20dB/km(デシベル毎キロメートル)、1970年では実は波長は0.8ミクロンでもっと向こうの、近赤外で、すそ野が見えるので、赤く光っているぐらいの光源です。その後、ロスの要因として、水素がガラス中に混入しているとロスの原因になるということで、OH基を一生懸命抜いた。この辺はOHフリーのファイバの特性でして、レイリー散乱と赤外吸収で形が決まっています。この傾きがレイリー散乱です。これはどんな材料にも必ず残ってしまうものでございますが、波長が長くなるに従って通りやすくなるという特徴を持っています。
 その結果、0.8ミクロンだったものが1.3ミクロンになり、1.5ミクロンになって、ここからは実は赤外吸収のスペクトルがありますので、またロスが大きくなるんですが、この辺が非常に通信に向いていることがわかりました。
 同時に、半導体レーザーもガリウム砒素系からインジウムリン系に変わって、1.3とか1.55ミクロンというのはインジウムリンのレーザーがうまく光ってくれます。そこを使って光通信をやっている。
 多く使われているファイバは、波長特性としては1.5ミクロンで分散が大きい、ここがゼロですが、少し大きな値を持ちます。ただ、情報速度を極めて速くしなければ十分使えるので、加入者用とか、市内のリンクとか、そういうものはこのファイバがたくさん使われています。
 ロングディスタンス、長距離の東京-大阪を結ぶようなところでございますと、ロスも重要ですが、分散値が少ないことも重要でして、こちらのカーブの特性に載っています、ディスパージョンをちょっとコントロールしたファイバを使っています。
 最初のころは、シングルモードファイバでロスを起こすことに必死でしたので、この辺のファイバがたくさん入っています。かつ、だんだん屈折分布をいろいろ工夫できるになってまいりまして、この辺のファイバができたり、さらに分散も波長によって、これはある傾きを持っていますのでなるべく寝かそうということで、分散フラットファイバというものがつくられるになってきています。
 ただ、ファイバの値段はやはり生産量に非常に比例しますので、実際には加入者、FTTH、家庭まで引かれているようなファイバはすべてこのファイバで、ファイバ単体で言うとメーター1,000円という値段になってきていまして、これはいみじくも靴ひもよりも安いと言われてしまうぐらいファイバの値段としては安いです。もちろん、メーター単位で買えば数円ということになりません。何十キロも引くファイバのときの値段でございますが、ただ材料費プラスほんのわすがな製造コストという形になっております。
 1980年ぐらいから光ファイバ通信というのは進展してきておりますが、縦軸にコストの性能指数みたいなものをプロットしています。参考に、DC-400M、デジタルコアキシャルという同軸の伝送方式、これが最後といいますか、同軸方式としては最後に導入されたものです。このころのイメージで言うと、400Mというように400メガビットの容量を持っておりますが、中継距離は最大で1.5キロメートル、通常、マンホールに設置するために、マンホールというのは均等には並んでおりませんので、平均1キロメートルおきに中継器を並べた。東京-大阪ですと、ルート長でいうと600キロ近くございますので、600台並んで東京-大阪がつながったのがこのころです。
 それに対して、光ファイバを使うことで距離を大分延ばせそうだと一生懸命やったころでございまして、これは私の1年先輩で、1980年に現場試験、フィールドトライアルというものを八王子近辺でやっています。ファイバを使うと距離が延ばせそうだということで、マンホールに中継器を置くか置かないかというのは管理上の問題でもありました。ですので、これをなくせるといいねという課題がございました。
 最初のころは中継距離は20キロです。現在では80キロまで延ばしておりまして、80キロにすると当時のNTTの各主要都市にある局舎に装置が設置できます。そうすると、こちら側は八王子の電話局でやっている環境ですが、普通の局舎の中で中継局が動く。こちらはマンホールの中なので電源設備がないので、必ず電話局からケーブルの中に信号と一緒にエネルギーも送らないといけない。後でちょっと写真が出ますが、海底中継器というのはまさに同じことでございまして、もちろん海底、海の中には何もないので、太平洋横断、1万キロぐらいあるんですが、そこは両端からエネルギーを給電しています。陸上のシステムも同じように、局から給電してマンホールの中継器が動くという時代です。ここは実は酸欠になったり、水没したりして危険な作業場所でもあって、だれもあまり入りたくはなかったんです。
 いろいろな技術、先ほどフジモトさんの名前が出ましたが、MITで光の短パルスを研究していたハウスイッペンというグループがございまして、そこの助教授だったジェームス・フジモトさんが通信で使っていた短パルスを、トモグラフィーに応用して実用化されたということです。
 短パルスは、ここにソリトンテクノロジーとあります。これはマルチモードファイバの研究とか、光のコヒーレントの研究、あるいはソリトンの研究というのは、必ずしも全部がダイヤル通信用に実用化されてるわけではないんですが、いろいろな現象を理解するという点では非常に役に立って、今も光のコヒーレント変複調技術というのは相変わらず研究しています。それは主要の実用システムの性能向上のためです。
 ソリトンというのはファイバ中を、神経も同じだと言われていますが、パルスが崩れずにどこまでも飛んでいく。パルスが崩れてしまうのはなぜかというと、パルスというのはスペクトルで分解するとかなり広いスペクトルを持っています。その広いスペクトルに対して、伝播速度が何も変わらなければそのまま行くわけですが、残念ながらどんな材料にもわずかに分散が異なります。屈折率が若干異なる。その結果、伝播中にパルス内の移送が回ってきますので波形が崩れてしまう。それでとまらなくなってしまうんですが、ちょうどファイバの分散特性と光の非線形といいまして、パルスが高いと高いパワーがガラスの屈折率自身を変えてしまう。その結果、両方がうまくキャンセルするとどこまでも崩れずに飛ぶという原理でございます。
 そうはいっても、均一といっても信号レベルがずっと一緒だったり、増幅レベルがずっと一緒だったりするとそういうことは可能になるんですが、実験上は可能だったんですけれども、実用的にはそこまでしなくても行けてしまうというのが最近のテラビットのシステムです。例えば、1チャンネルの波長1波に10ギガの信号を載せて、これは80チャンネルですが、約100チャンネル載せれば1本のファイバに1テラビットが送れるということでございます。1ピコのパルスに情報を載せてもやはり1テラ送れるわけですが、非常にスペクトル管理が必要になりますので、マルチキャリアで、いわゆるWDMといいますが、要するに波長をたくさん立てて、一本一本に手ごろな情報を載せて送る。つまり、波長同士ではコヒーレンシーはないという状態です。
 それで実用化になってきました。後で主要な技術についてご紹介します。
 この辺は、e-Japan、u-Japanという言葉があるように、大容量の通信ネットワークインフラを整備して、ブロードバンドな環境を実現しようということで、政府の政策に基づいてNTTも進めてきています。特に我々にとって大きな課題といいますか、ブロードバンドに関連して申し上げると、特に光通信をやっていたほうから言うと、FTTHを早く浸透させたいということで、2010年までに3,000万のFTTHユーザーに提供しようということで目標を設定して、研究開発と導入を進めてきています。
 一言にFTTHといいますが、こういうふうにご家庭までファイバが行くということでございますが、電話の歴史も約100年以上かかっています。まず、ご家庭に線を引いて、津々浦々まで線を引きまくることが必要ですが、実は日本の場合、最後は電柱、電柱にはいっぱい線が走っています。電力線もあれば、CATVの線もあったり、電話線もあります。エアリアルという空中から家庭につながるわけですが、全部が全部、電柱で配信しているわけではありません。ごく家庭に近いところだけが電柱になっていまして、我々は基線点と呼んでいますが、あるところから地中にもぐって、電話局までは地中を通っていきます。大きなビルと大きなビルの間をつなぐ線もこれまたほとんど地中を通っています。特に東京の主要、山手線の中は、洞道と呼んでいますが、トンネルがいろいろできていまして、その中にケーブルを置いてつないだりしています。
 田舎のほうは、ファイバをあらかじめ引いておくのは手間もあり大変でありまして、長年、整備投資をして準備をしてきました。特に基線点までファイバ化しておくと、あとは需要に応じて、最後の500メートルとかラストワンマイルとよく言いますとが、1キロメートル前後をファイバでつなぐことになります。最近は基線点までほとんどファイバ化できておりますので、需要に基づいてファイバを敷設している。ただ、これは一本一本やらなくてはいけないということもあって、非常に時間がかかる、コストもかかるという状況がございます。この辺は最近の進展なので図を見ていただければと思います。
 これは日本が高いか安いかという比較で、特に韓国がADSLのころに安いと宣伝したのでITUでいろいろな比較をしております。これは一、二年前のデータで恐縮ですが、日本のFTTH、1ユーザー当たり最大100Mb/s(メガビットパーセカンド)が出ますけれども、それで5,000円弱ということになりますが、非常に安い料金モデルになっていまして、ある意味FTTHがこれだけ進んでいる環境を非常にうらやましがるユーザーが多いです。
 1980年ごろフィールドテストをやったんですが、その後、85年には北海道から九州、そのちょっと後に沖縄までファイバが全部引けました。それでもやはり四、五年かかっておりますので、主要都市を結ぶ、さらに地方都市を結ぶまでにかなりの時間が過去においてもかかっております。
 これは海底中継器の絵ですが、光アンプといいまして、光通信システムというのは光ファイバ通信というように光の信号が全部通っていくように思われると思いますが、最初のころに使われている光通信というのは、もちろんファイバ中は光ですけれども、中継器では必ず光を電気に変換して、電気の信号を増幅して、それでフリップホップといいますけれども、デジタル回路でゼロか1かの判定をして、また光に直して送ってやる。これを繰り返してデジタル中継通信システムが成り立っております。そういう電気に戻さずに、一遍に光のまま増幅してしまおうというのが光増幅器です。
 冒頭の写真にちょっと絵がありましたが、あれも実は光ファイバ増幅器でございまして、私どもも光増幅器に非常に注目していまして、1989年に初めてエルビウムという起動類が添付されているファイバを使って光信号を直接増幅して中継実験に成功しました。これは光アイソレーターをうまく配置することで安定して通信ができます。エルビウムファイバを使った増幅器というのは、EDFAという略称で呼びますが、基本的には30Eのレーザー線維モデルになります。双方向ゲインでございますので、ここにエルビウムが入っていて、ちょっと波長の短い光で活性化してやると、1.5ミクロンのところが非常に高いゲインを持つという構造でございます。LBMがいいのは、ファイバにとって一番低損失な1.55ミクロン近辺でゲインを持つというところにすべて起因しておりまして、一致しているということが非常にありがたい話です。
 ただ、双方向でゲインが落ちますので、信号、発信器に使う場合にはレーザーというのは光増幅器と共振器を組み合わせて発信器にしていますが、増幅器を使おうとすると発信してもらっては困ってしまいますので、まず発信を抑えるために反射を抑えるんですが、光アイソレーターを使って反射点からのインタラクションをなくすわけです。しかも、信号に対して1方向ゲインを持つようにアイソレーターを組み合わせると短方向利得を持つ増幅器ができます。
 太平洋横断は、これを300台連ねて、中継器間隔は30キロないし50キロで300台、約9,000キロです。沖縄からロサンゼルスが大体9,000キロです。一番長いのはチャイナ-USといいまして、上海からロサンゼルスが1万キロ余りありまして、そこが一番長いんですが、やはり光アンプが並んで入っています。
 どうなっているかというと、もし皆さんが1.5ミクロンに感度があれば、シングルモードファイバをのぞいて向こうが見えるというのは変ですけれども、だた、ほんとうにガラスだけで1万キロつながっておりますので、途中にエレクトロニクスは一切入っていないというのがこの状態です。
 陸上も、かなりの主要回線でそういう状態になっております。これはファイバと同じというか、普通のファイバに若干起動類が入っているだけですのでファイバと思っていただいていいんですが、そういう意味ではファイバとの接続性が、非常に親和性が高くてゲインを持つということなので、1本のファイバがずっと1万キロつながっていて、なぜか損失がないという状態が太平洋の中です。ただ、増幅器が入っていますので雑音は発生しますので、雑音の多い少ないでSNが決まって、中継距離が決まることになります。
 これが模式図です。最初が3Rといまして、再生して光信号が減衰して、電気で再生して、また送る。次が光増幅、一括増幅なんですが、波長多重と非常に親和性が非常にいいのは、先ほどの光増幅器はかなり広い帯域を持っておりますので、例えば波長を10波、100波と束ねて増幅するときに一遍に増幅できます。ですから、1本の増幅器で多数の波長多重された信号が送れます。光増幅器以前も波長多重という言葉があったんですが、基本的には使われていません。それはなぜかというと、再生中継器がやはり波長の数だけ要ることになりますので、ファイバのところは1本になるんですが、例えば波長多重10波すると10個並ぶ状態を繰り返していくということで中継器の数が非常に要るので、なかなか進まなかったわけですが、光アンプとの相性はばっちりということになりまして、まるで1本のファイバがあるようになります。
 ただ、後でちょっとご紹介するように、光パワーが高いとだんだん障害も発生するようになって、障害といいますか課題も出てきます。こういうローカライズしたアンプではなくて、全部分布したアンプで文字どおりファイバのロスとゲインとがバランスして、全く損失が起きずにつながるといいというのが3番目です。
 前後して恐縮ですが、これが89年に私どもが実験で増幅器として使ったときのスペクトルプロファイルで、ほとんどそのままゲイン特性を持っています。高いピークのところは1.535ミクロンでして、低い山が1.55ミクロンで、ほとんどの通信は1.55ミクロンで使っていますので、ここを使って中継地点も使っています。もちろん、ここも使いますが、こういうゲインギャップがあるので、これにいろいろな添加物をトライして、めぐりめぐってフラットになりましたということです。約10年たって、3デシベル幅で87ナノメーターぐらいの幅で、ほぼフラットな増幅器ができるようになってきました。
 1.5ミクロンについてEDFA、エルビウムをドープしたアンプが有効ですが、ほかの波長域もいろいろあるのではないかということで試してみた例がこれです。ただ、ガラスではなくてフッ化物ガラスという、ちょっと特殊なファイバにいろいろなものをドープすると、1.3ミクロン付近から広い波長域までカバーできます。これは1.45ぐらいしか載っていませんが、プロセーブジウムという、私、あまりなじみがないんですが、そういう材料を使うと1.3ミクロンでもゲインが落ちます。
 光増幅器にいろいろな波長を入れられるようになってきました。これはジェルジンガーさんという、インテルのCTOがISSCCで講演されたときの絵にちょっとプロットしてみたものですが、最近、インテルもマルチコアと言っているように、チップのプロセッサーの消費電力がだんだん上がってまいりまして、どんどん詰め込むことはできるんですが、それと同時にパワー消費電力も上がっていってしまうということで、パワーデンシティーは今後どんどん上がる一方だと言っていまして、ロケットノズルだとか、太陽表面にも近づきそうと発表した例です。それで彼らもマルチコアと言って、コアを複数に分けて、パワー密度の集中を少し抑えるアーキテクチャーで進んでいます。
 では、光ファイバ通信のほうはどうなっているかといいますと、先ほどBC-400メガという同時のサイドのシステムを、光電気変換をつけて、とにかく光ファイバの中に400メガの信号を送ろうということで、最初に実用化されたのがF-400なんですが、そのときの光パワーは大体0.1ミリワットぐらいをファイバに入れるというレベル、逆に言うと、レーザーのパワーもそのぐらいしか出なかったということでございます。
 それから、400メガを1.6ギガとか2.5ギガに容量を拡大して信号を送るようになりました。このころは半導体レーザーの性能も大分上がって、あとファイバとの結合効率も大分上がって、1ミリワットぐらい突っ込むようになりました。
 さらに10ギガビットになると、10ミリワット近いパワーをファイバにほうり込んでいます。
 波長多重で120ギガとか1テラになると、WDMで束ねようが、TDMで束ねようが、時分割多重で束ねようが、要するに1ビットの情報を光パワーでどれだけで送れるのかというと、一定の間隔がありまして、情報量を増やせば増やすほどファイバ中にパワーが要るということになります。これは一定のSNを確保するためには当然のメカニズムでございまして、では1テラビットはどのぐらい要るのだろうかというと、外挿線を引くと1ワットという値になります。1ワットそのものはそんなに大きな値ではないんですが、先ほどの10ミクロンφに1ワット突っ込むというのは、光のエネルギーはコアの8ミクロンぐらいのところにガウシャンの格好をして分布しています。ですから、πr2乗というのは面積で、大体200ミクロンスクエアぐらいになります。
 それを1ワット、2ワットいいますと、メートルでいうと大体10ギガワット/メータースクエアというレベルになります。先ほどのインテルのグラフにプロットすると、2ワット入れますと大体この辺、太陽サーセスには届かないけれども、ロケットノズルぐらいになるので、そのパワー密度であればいかなるものも溶かしてしまうんですが、少し事例を紹介します。
 これは2ワット入れてファイバを曲げていっているわけです。ファイバ自身は燃えたりはしないんですけれども、ただ光ファイバというのは表面波といいまして、光をコア中に閉じ込めているんですが、完全に閉じ込めているわけではなくて、曲げが強くなるとガイドされずに飛び出してしまいます。被服がナイロンだったりするものですから今みたいに燃えてしまうということです。ただ、通常、長い距離で徐々に減衰するので、別にファイバは燃えたりしないんですが、1カ所でいきなりナイロンに1ワット、2ワットというパワーが照射するとこうなってしまうということですので、あまりどんどんパワーを上げていくと、それは決していい方法ではないと考えています。
 その結果、アンプがローカライズするがために、光増幅した後が一番高いパワーになりまして、それで減衰して100分の1に落ちる。また増幅して高いパワーになるということで、なるべくディストリビュート、増幅をなるべくならしてやろうということで、分野アンプというものを最近は活用しています。
 これは最近の伝送実験の例で、14Tb/s(テラビットパーセカンド)というものを1本のファイバに突っ込んだときでございます。たくさんレーザーを並べて140チャンネル用意して、1チャンネル当たり100ギガビットの情報を載せていますが、最近は無線の方式を光の伝送方式でも活用するようになって、DQPSKという2値ではなくて4値の情報を載せて送る方式を使っています。4値の情報で、1つの波長当たり110ギガビット載せています。
 実はもう一個70個並べて、偏波多重といいまして2つの直行偏波がございますので、それを束ねると140チャンネル分たまります。それを1本のファイバに入れて、増幅器は先ほどのエルビウム増幅器だけではなくて、Ramanという、ファイバ中にある波長をポンピングしてやるとファイバそのものが増幅器に変わります。それによって分布的に増幅をすることが可能になりますので、集中型のアンプと少し分布しているアンプと組み合わせて80キロのファイバを2カ所入れて160キロの実験をした例です。1本のファイバで伝送実験の例でいうと、これがチャンピオンデータということになります。
 この例で重要なのは、もちろん14テラビットまで来たというのもありますけれども、1つは、DQPSKを使って1つの波長に100ギガ以上の情報を載せているという点で、現在、イーサのシステムがいろいろ使われておりますが、ギガイーサ、私のパソコンもギガイーサを使っています。ちょっとしたサーバーやトレージになると、10ギガイーサもだんだん使うようになってきます。なぜかここはわかりやすく10倍ずつ行くものですから、10ギガイーサの次は100ギガイーサだと言われておりまして、どうやってつくるのかは別にして、100ギガイーサというのはターゲットになっています。
 その100ギガの情報を、どうやってチョウケンまでファイバでトランスポートしてあげるのかということで言うと、DQPSKと組み合わせると1個の波長に100ギガ情報が載せられそうだ。ここまで波長を突っ込む必要があるかどうかは別にして、こういうことが可能になってきています。
 そのときのスペクトルといいますと、特殊と言えば特殊ですが、少し広帯域にEDFA増幅器を設計しまして、約7テラヘルツの増幅帯域を持っています。ここにさっきの140チャンネルレーザー光を並べると、こうやってつながって見えますが、一個一個にはこういう情報が、これはバイナリーに落としたところなので2値の情報で見えています。
 ハイパワーを入れても曲げると非常にトラブルが起きますが、ご家庭ではそれほどと言っては申しわけないんですが、FTTHのときに家庭の中でいろいろな急な曲げ要素があります。ここは曲げても、光が漏れても別にだれかが損傷を受けるということはないんですが、とにかく信号が減衰してしまうので切れてしまいますから、既にFTTHを引いているご家庭や、私のうちも引いてありますが、壁を突き抜けてリビングに引いています。ネットを電気のコードのように曲げたいんですけれども、あまり急に曲げるとロスしそうなので、私自身が光通信をやっていたせいもあって、急に曲げるのはやめたほうがいいと思って曲げていませんが、全然気にされない方は下手すればファイバを束ねかねないわけです。
 それで、今、もっとファイバを家庭の中でも扱いやすくしようということで、ホトニック結晶ファイバといって、ファイバ中に穴をいっぱい開けて結晶構造をつくり、結晶の一部を抜くとそこに光が閉じ込められるという現象があります。そこまで複雑なことをしなくても、ちょっとクラッドに穴をあけてやると、ファイバの設計パラメーターが随分変わりまして、非常に曲げに強いファイバができます。その結果、こういうふうに結んだり、これだけ曲げても全然ロスらないファイバができます。こういうことを家庭の中の配線で、ご自身で使ったり、あるいは何かとつなぐところで曲げが強い場合にはこういうファイバを使う。
 ただ、先ほどちょっと申し上げた、ファイバの値段がメーター数円という話になってきますと、こういう構造にするとすぐ高くなってしまうので、そこら辺が課題の一つではあります。ただ、短いファイバはコネクターの値段もばかにならないのでコネクターしか見えなくなってきますから、多少ファイバ自身が高くなっても使いやすれば十分ご活用いただけるのではないかと思います。
 この絵は『日経NETWORK』という雑誌から持ってきましたが、NTTの中の写真を簡単に公開できないのは保安上の問題もあって、これはNTTからの情報のはずですが、よく出ているので載せています。
 ビルの中とか、これは洞道です。それから、管路にもぐって、先ほどの基線点から電柱に上がって、クロージャーといいますが、この中にファイバが1本入っています。それで家庭につながっている。例えば、電話局でFTTH、3,000加入とか5,000加入とかどんどん増えてくると、それだけファイバがあるということになりますので、ものすごい束になります。PON、パッシブオプティカルネットワークと呼んでいますが、一つのファイバを家庭から電話局までつなぐのではなくて、途中に分岐を入れて、例えば8分岐、この部分は供用しましょう。そうすると、ファイバを引き込んだときに電話局にたくさんファイバが集まってくるんですが、そこの数が減るというのと、通信装置が供用できるのでコスト削減に有効ということで、最近、B-PONとかG-PONという言葉をお聞きになることがあるかもしれませんが、それはすべて分岐を入れて、マスに早くファイバを引くための経済化と設備の有効活用という2点で展開しております。
 あと、通信と放送の融合というものがありますので、家庭用でもIP通信に加えて映像を再放送してあげようとか、そういうトライアルがあったり、スカパーの映像チャンネルをそのまま波長に載せて送るというサービスがございます。ですから、家庭に向けても、ファイバ1本ですが、波長多重された信号が大体3波、上り下りと映像ということで3波の波長が載って使われるケースが一番ぜいたくな使い方です。少なくとも2波は使って上り下りはやっております。
 これからといいますか、今、光ファイバ通信というのはファイバの伝送能力が極めて高いこともあって有効性を疑う人はいませんが、ではノード装置の中ももう少し光を使うといいのではないかということで、クロスコネクトといいますが、経路切りかえ装置の中に光スイッチを使ってネットワークを構築している例です。
 光スイッチを使うとどうなるかというと、リングのネットワーク、地域の面はこういうリングになっています。山手線とか、そういうふうに考えていくとわかりやすいんですが、東京や新宿や池袋のようにトラフィックが集中するところがございます。そういうところをリングでつないでやると、全体のトラフィックをうまく面でシェアしてあげることが可能になるので、わりとネットワークの運用上いいです。
 特に最近のようにブロードバンドユーザーの場合、トラフィックがどこに集中するかが電話に比べるとはるかに予測がしづらいです。というのは、電話は人間がしゃべることもあって、人間がたくさんいるところにトラフィックがたくさん集中しますが、ブロードバンドといいますか、データトラフィックは人間とは関係なくて、大きなサーバーがあったり、人気のあるコンテンツがあったり、違うところにトラフィックが集中したりもしますので、予測が困難なために面的にトラフィックをさばいてやろうという考え方になっています。
 その間のファイバの物理的なトポロジーといいますか、接続形態をスイッチを使うと切りかえることができる。それと波長と組み合わせてあげると、例えば新宿から東京まで山手線の中をつないでやるのを、東京をやめて上野にしてくれと言えばスイッチを切りかえて上野にすることもできるという形です。フレキシビリティーが非常に上がるので、波長を組み合わせて、ポイント・トゥ・ポイントの線をいろいろ編集できるようにしています。
 あとは絵でごらんいただければと思うんですが、アプリケーションと広帯域のネットワークというのはセットでして、文部科学省の関係で言えば電波天文台のように、離れたアンテナで受けたデータを、あれは2.4ギガだと思いますが、丸々データを運んで、離れたアンテナ間のデータの相関をとることで、あたかも大きなアンテナがあるかのように受信できます。ほとんどが雑音だと聞いていますので、たくさんの雑音の中からデータの相関をとることで信号をあぶり出そうということです。
 重要な点は、リアルタイムでないといけないので、AというアンテナとBというアンテナでとったデータを同じ時刻に干渉させてやらないといけないので、もちろんデータですのでストレージして処理をすることはできますけれども、時刻とデータのストレージと、多分、コリレーターみたいなことをデジタル信号処理でやるんだと思うんですが、そういうことをやっています。
 そういう試みは類似したといいますか、大量のデータをいろいろ取り込んで図示化する試みがいろいろやられていますので、オプティピューターというプロジェクトに協力してやったりもしております。
 資源という関係でいうと、私のパソコンもたしか100ギガバイトのハードディスクを積んでいるはずですが、ほとんどいっぱいです。データ量は異常に増えていまして、あるUCバークレーの調査によると、2000年のときのデータですが、今まで人類がつくったデータを全部デジタル化するとどのぐらいになるのだろうということで積算した例で、正しいか正しくないかちょっと判断する情報を持ち合わせませんが、2003年ぐらいで24エクサバイト、エクサというのはテラのさらに3けた上ということです。そんな情報はどうするんだといっても、実はばらまかれているパソコンのストレージも同じようなレベルがもうあるので、うまく有効活用されればそれは全部取り込めることになります。
 最近は、グリッドコンピューティングというようにネットワークとストレージをつないだ連携もやられていますし、Googleのようにたくさんディストリビュートしたデータをうまく掘り出すというテクノロジーも非常に進歩しています。ただ、検索するキーワードとデータの居場所をある意味全部Googleに握られてしまうという恐ろしい側面もあって、これは非常に便利な道具ですけれども、頼っていていいのかという心配が時々あります。
 あとは同じような絵がございますので、ちょっとごらんください。
 冒頭にシネマの絵があったのは、私どもの4Kという4,000本の解像度のデジタル映像で映画を表示してみようという試みをやっておりまして、なぜ4Kかというと、ハイビジョンが1,000×2,000の映像プラットフォームです。デジタルコンテンツに映像を全部取り込もうとすると、どのくらい解像度があればいいのかちょっと考えたことがございまして、35ミリの銀塩フィルムが、垂直解像度で2,000本ぐらいあれば同等に近いものが得られるのではないかという推定をしたことがございます。では、そういう解像度で映像を撮ってみようということでつくりました。それはHDのちょうど4倍の情報量になります。
 それで、ハリウッドに持ち込んで、実際に見せて映画への可能性を試したことがあります。その前に日本でもいろいろトライアルをしたんですが、先ほど日本でなかなか実用化がというご紹介があったように、映画業界も日本で先にやってもハリウッドの映画がついてこないと判断できないとおっしゃる方も多かったので、では本丸に行ったほうが早いということでハリウッドに持ち込んだんです。
 もともとNTTがハリウッドとコネがあるわけではないので、これはシーグラフという映像系の大きな学会兼展示会がございまして、そこに持ち込みました。それがロサンゼルスでちょうどあったので、ハリウッドの関係者が、これは誘ったこともあって口コミで皆さん来ていただいて、非常に関心を呼んで、このぐらいの映像コンテンツならほんとうにフィルムをなくせるかもしれないということで始まりました。
 残念ながら、まだ実験レベルですが、もう既に東宝の映画館3カ所と、ワーナーマイカル、東京で5カ所、実際にプロジェクターを置いて、「ハリー・ポッター」とか、この間アカデミー賞をとった、難しいタイトルだったから忘れてしまいましたが、とにかく新しい映画をハリウッドから供給してもらっています。
 映像的にはもちろんきれいで、満足いただいております。というのは、普通に皆さんごらんになる映画は、3回か4回ぐらいコピーした後のフィルムを見ていますので、オリジナルと比べるとはるかに劣化したものです。オリジナルはそこそこきれいなんですけれども、1本しかできませんので、残念ながらそれは監督でもなかなか見られないです。それをすぐにデジタルで撮って配信するとオリジナルが見られる。今の地上デジタルも、放送局のクォリティーが家庭で見られるということになりますが、デジタルのよさは途中の劣化がないということでございますので、映画でも同じような、映画撮影現場のクォリティーで見られるということです。
 実際、「ハリー・ポッター」もほかの映画もみんなそうですが、最近は特殊撮影を使っていますので、実写で撮った映像もすぐデジタル化して、別のデジタルコンテンツと組み合わせて、空を飛んだり、顔が化けたり、ちょっとやり過ぎなぐらい好き勝手にやって、そういうことに非常に親和性がよくなってきたので、間もなく実際に広く4Kでもごらんいただけるようになるのではないかと思っています。
 ちょっと延びましてすみませんでした。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 ご質問なり、コメントなりどうぞ。

(委員)
 ちょっと機能的な話ですけれども、ディスパージョンと光ソリトンによってノンリニアでキャンセルするというお話をいただきましたけれども、あれは実用化といいますか現実になっているんですか。

(委員)
 特徴的なものとして光ソリトンという言葉で、光ソリトンそのものは実験はたくさんやられていますが、実用化にはなっていません。

(委員)
 ならないだろうと。

(委員)
 非線形を積極的に活用した伝送にはもう既になっています。というのは、短パルスでなくても、矩形のパルスを送ってもショルダーといいますかパルスが行きますので、光のレベルが急に上がるわけです。そこでファイバ中の屈折率は実際に変化します。その結果、パルス自身がモジュレーションを受けます。そのことは考慮して設計がされているんですが、ディスパージョンと完全にキャンセルするところまでは実はやらずに実用化をします。

(委員)
 もう一つ、簡単で結構です。RamanパンプというのはRaman効果を使ったからあれだけ速い。

(委員)
 誘導Ramanも使った増幅器です。

(委員)
 実用化したんですか。

(委員)
 はい、実用化しました。私もまさか実用化するとは20年前は思っていませんでした。

(委員)
 ほんとうですか。驚いた。

(委員)
 今、実用化しています。東京-大阪も含めて、NTTコミュニケーションのかなりのところがRamanです。

(委員)
 ありがとうございました。

(委員)
 こういうIT技術がどんどん進んできて、IT社会がどうなるかという未来予測みたいなことをされていると思うんですけれども、先ほど委員のお話にもあったように、日本で何かのアイデアをつくっても、実際、使うということになるとアメリカのほうが得意で、そちらでどんどん伸ばしていくということがあると思うんですけれども、NTTでどれぐらいそういうことをやれているかわからないんですが、こういういろいろなものを使う技術というんでしょうか、使い方に対してどういう考え方を持っておられるのでしょうか。

(委員)
 NTT研究所としては、NTT自身が研究したことももちろんですが、日本の技術を中に、有効に活用して世界のデファクト、あるいは標準にもしていきたいと思っています。ただ、マーケットというとやはりアメリカが大きいせいもあって、アメリカとうまく渡り合わないと、なかなか標準をかち取ることは困難です。
 そういう意味で、ITUというものが標準化の団体として、特に通信関係では代表的にありますが、昨年、うちの取締役をやっています井上がITU-Tという通信の議長に、これは日本で推されて立候補しました。ただ、アジアとのいろいろな関係もあって、たしか2カ国差で負けてITU議長にはなりませんでした。その前は内海さんが事務局長をやっておりますので、日本も標準化の中枢に入っていかないと、変な表現ですが、学会でも運営側になるか、ただ参加するかはえらい違いでして、標準化のコミュニティーに入って、技術というのは変わっていきますので、変わっていくこと自体しようがないんですが、変わってから追いかけるのと、一緒に変えていくのとでは月とスッポンでして、やはりコミュニティーに入っていくのが重要です。そうなると、ギブ・アンド・テイクということがありますので、まず自分たちはこういう技術があるんだと一方で見せながらやっていかないとリードすることは、コミュニティーに参画して一緒に標準化を進めていくことはなかなか困難ということで、懲りずにやっておりますが、十分できているとは言いがたいですけれども、やっております。
 先ほどの光通信の関係で、OTNと呼んでいますけれども、情報をカプセル化して送る方式についてはNTTが提案したものが標準化されています。

(委員)
 どうもありがとうございます。

(委員)
 超高速ネットワークというのはNTTもやっていらっしゃるし、総務省がいろいろなお金でつくってネットワーク化しているように思うんですが、そういうものの管理とセーフティーは、将来、どういうぐあいにやっていけばいいかということなんですが。例えば、どこかはがれたら一斉に何もかもだめになってしまうということでは困るわけですよね。そういうところはどういうふうに考えていらっしゃるかということなんですか。

(委員)
 ディプリケートさせるしかないので、電話のネットワークであれば、電話の接続情報というのは常に情報として持っているんですが、それは関東エリアと関西の、たしか四国だと思いますが、2カ所に情報はコピーを持って運用されています。それは常にリングが張られて書きかえられていますが、どちらにしても1カ所に情報が集中すると、そこが壊れたときにパッパラパーになってしまうという問題がありますので、インターネットそのものが、ダーパーが、もともとペンタゴンを攻撃されても仕返しができるようにネットワークをディストリビュートさせるという研究でスタートして、その結果がインターネットでございます。それは分散処理ということにもなりますし、いろいろな情報を1カ所に蓄えるのではなくて分散させている。
 分散させるとデータを首尾一貫して管理するのは困難になって、あるところがおくれて、あるところが速くなったりするので、そうするとまた集中したくなるわけです。例えば、Googleがああやって検索エンジンをきちんとできるのは、ものすごい膨大なコンピューターデータを、ほんとうの1カ所ではないんですが、かなり集めて運用しています。それはそれで心配なことが出てくるので、集中と分散というのは常に繰り返されていきますが、とにかくセキュリティーを高めるためには分散させることが重要でして、例えば首相官邸が全部の情報を把握するのは理想ですけれども、要らない情報もいっぱい来てしまうことにもなるので、やはり分散させる。そうすると、なかなかきちんとした情報がうまく伝わらない。
 常にネットワークの中の繰り返しでございますが、今はデータ系はインターネットを使って分散化させる。NGN(ネクストジェネレーションネットワーク)のときは、データのQOSといいますが、優先制御、重要な情報と必ずしも重要ではない情報と、区別を簡単にキャリア側がつけるわけにはいかないので、ユーザー側と契約で整理する。たとえネットワークが込んでいても、救急車、あるいはパトカーはサイレンを鳴らしながら突き抜けていけるように、あれは一番象徴的ですけれども、優先するトラフィックと待たせてもいいトラフィックと分けてやろう。インターネットというのは画一、全部均一なフラットなネットワークなので、いい情報も悪い情報もとにかくいっぱいあって、スパムメールも強烈にたくさん来るという弊害もありますが、利便性も非常に高い。

(委員)
 その交通整理はどこでやっているんですか。

(委員)
 安全性の交通整理はこれからです。通信の秘密ということもあるので、中はもちろん見ないので、まず優先制御に対して契約しないといけないです。FTTHで家庭にファイバがつながる時代ですから、我が家の情報は100メガもあれば、ほんの数分もあれば全部抜き出すことは可能だと思いますが、特定の人とはそういう情報はやりとりしますけれども、不特定多数な人に公開する人は毛頭ないですから、ネットワークの中にサブネットワークとか、クローズドネットワークをつくってあげる必要があります。そういうメカニズムをインターネットのテクノロジーと、従来からの回線交換のように、あれは線をほんとうに張って、糸電話のように最終的には線が張られた状態で話をしている。終わると線が開放されるわけですから、その両方のよさを組み合わせて次のジェネレーションに持っていこうというのがねらいです。従来の回線交換だけでいくと料金が高いという問題も一方で残っておりますので、インターネットのよさを最大限活用しながらというのが次のステージのチャレンジでございます。

(委員)
 もう一つ、細かいことを教えていただきたいんですが、先ほど受信光スペクトラムで非常に広帯域のものはほとんどフラットだと言われたんですが、あれは1本のケーブルであれだけフラット、大容量なものが送れるわけですが。

(委員)
 あれは信号をゲイン調整してフラットになっています。

(委員)
 あれだけの容量を1本のケーブルでは送れないわけですね。

(委員)
 この絵のことですか。

(委員)
 はい。

(委員)
 これは1本のファイバに入っているスペクトルです。

(委員)
 そんなに。そうですか。

(委員)
 はい。7テラヘルツの情報スペクトルを入れています。もちろん、途中にいろいろなばらつき要素がありますので、それは調整してこうなっています。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 予定の時間になりましたので、今日はこれで終わりたいと思います。両先生、どうもありがとうございました。
 それでは、事務局のほうから。

(資源室長)
 次回の委員会ですけれども、委員と緑川専門委員からご発表いただく予定になっております。日程につきましては改めて調整をさせていただきます。
 それから、お手元に議事録の案、配付させていただいております一度お目通しいただいておりますけれども、何か特別ございましたら今週中ぐらいにご連絡をいただきたいと思います。それをもちまして最終案といたしまして、公表ということにさせていただきたいと思っております。
 以上でございます。

(主査)
 この次で一応予定していたプレゼンテーションは終わり、あとはまとめということになりますね。

(資源室長)
 そうです。

(主査)
 今日はどうもありがとうございました。

午後5時3分 閉会

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課資源室

(科学技術・学術政策局政策課資源室)