光資源委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成19年1月26日(金曜日) 15時~17時

2.場所

丸の内仲通りビル 地下1階 K1会議室

3.出席者

委員

 飯吉委員、委員、深尾委員、三宅委員、大川委員、加藤委員、高辻委員、萩本委員、藤嶋委員、松見委員、緑川委員、森永委員、安河内委員、山田委員

文部科学省

 森口科学技術・学術政策局長、吉川科学技術・学術総括官、大山資源室長 ほか関係官

4.議事録

(委員)
 定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会資源調査分科会の光資源委員会の第3回目の会議を開催させていただきます。
 本日は、ご多忙の中ご出席いただきまして、まことにありがとうございました。
 初めに、事務局から委員の出欠と配付資料の確認についてお願いいたします。

(事務局)
 資料1で委員のリストをご用意しておりますけれども、このうち本日、唐木委員はご都合によりご欠席でございます。
 それから、事務局側の出席でございますけれども、1月15日付で科学技術・学術局長が交代いたしております。新局長、森口泰孝でございます。

(局長)
 森口でございます。よろしくお願いいたします。

(事務局)
 このほか、吉川科学技術・学術総括官が出席をいたしております。
 引き続き、資料の確認でございますけれども、資料2は、本日ご発表いただきます安河内委員の発表資料、資料3は、同じく大川委員の発表資料でございます。
 以上でございます。

(主査)
 それでは、早速、議事に入らせていただきます。
 局長から何か一言どうぞ。

(局長)
 1月15日付で、前は研究開発局長ということで、宇宙とか原子力とか海洋とか、あと次第にもありますが地震とか防災とか、そういうことをやっておりましたが、今回、政策局ということで横断的ないろいろな政策をということで、まだ勉強中でありますが、よろしくお願いいたします。

(主査)
 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日は、まず九州大学の大学院芸術工学研究院長の安河内委員から「照明光に対するヒトの適応能」というタイトルでお話をいただくことになっております。
 どうぞよろしくお願いいたします。

(委員)
 九州大学の芸術工学研究院の安河内でございます。どうもこんにちは。
 私どもは、今日、光と健康ということで何か話すようにということでしたので、これにありますように「照明光に対するヒトの適応能」というタイトルでお話をさせていただきます。特に「非視覚的影響に注目して」ということで、何が非視覚的かというのはまた後ほどご説明いたします。
 照明の話に入ります前に、私自身どういうバックグラウンドを持って、例えばこういう照明の話をしようとしているのか、そちらの方からまずお話をさせていただきます。
 私は、生理人類学という学問分野をフランチャイズしております。生理人類学、人類学という言葉がついていますので、考古学とかあるいは未開社会の人たちの研究とかというふうに考えられがちですけれども、私どもが研究対象にしていますのは現代文明の人間ということでございまして、まさに私たち自身そのものを研究対象にしていると、こういうことでございます。
 私たちがどういう環境に住んでいるかといいますと、さまざまな科学技術のベースのもとに、非常に便利で快適な生活空間に毎日暮らしているわけです。新しい技術が生まれれば、必ずまた次の新しい生活空間に生かされて、もっともっと快適になっていくということでございます。ただ、こういう快適ばかり求めていって本当に快適なのか。快適とは一体何なのか、どうとらえたらいいのか、そこにもし問題があるなら何が問題なのかといったところを考えていく必要があるのではないかというふうに考えております。
 そこで、今、私たちは、体に感じないんだけれども体に何かしら余分な緊張が、生理的に緊張が生じているのではないか。もしそういうことがあったら、取り除いていく必要があるのではないかということに注目しております。
 こういうことを考えるそのバックグラウンドとしましては、一つ、私たちの人類の歴史を振り返ってみる必要があると考えています。人類の歴史500万年、正確な年数はわかっておりませんが、少なくともこれぐらいのオーダーのスケールを持っていると、歴史を持っていると。私たちは、大きく見て第4ステージの新人の段階にいるわけですけれども、今のような科学技術の文明に至ったその最初のきっかけになるのは、やはり農業の発明だろうと思います。農業の発明を古く見積もって大体1万年前としますと、残りの499万年、すなわち人類史の99.8パーセントに相当しますが、狩猟採集生活の時代である。生物は、一般に環境に適応して初めて生き残ることができるわけでございます。そういう意味でも人間、人類もさまざまな環境要因があるわけですが、そういった環境要因に適応して生き残ることができたはずであると。
 では、適応した対象となる環境は何かといいますと、やはりこの私たちの人類史の大半を占める狩猟採集、この時代の生活環境に適応してきたはずであると。この辺は非常に理解しやすいと思います。ですから、私たちの体というのはこの時代にフィットするような体の形あるいは機能をつくり上げてきた、何万年というオーダーでつくり上げてきたというふうに考えることができます。
 ですから、今のこの科学技術に囲まれた世界、生活環境という空間に必ずしも適応しているとは言い切れないということを、まず考える必要があるんだろうと。
 ちょっとこの漫画ですけれども、私たちの体というのは、例えば氷河時代のネアンデルタール人とほとんど同じ体を現代に持ち込んでしまっている。しかし、私たちの脳というのは、今の環境を当たり前にとらえていると。少なくとも個人的には今の時代に生まれ育っているわけですので、自然に今の環境を受け入れるというのは当然であります。しかし、今、お話ししましたように、人類のそういう進化の歴史等を見ていきますと、私たちの体の反応と脳で考えていることと必ずしも一致してはいない。すなわち、脳と体のバランスというものを考えていく必要があるのではないかという観点でございます。
 まとめますと、私たちの脳というのは、今の近代的な生活環境に常に目を向けて、その中で快を求めようとする。少なくとも私たちの脳にはそういう快を求めようとする中枢がある。逆に、不快の中枢もあります。その快を求めようとする、いわゆる快を感じればそこに接近する、不快を感じればそこから離れるという情動と行動がリンクするシステムがあって、長い歴史の中で生き残るようなチャンスを広げてきたという、そういう歴史上の意味があるわけですけれども、しかし、そのシステムが生きてきたのは狩猟採集時代の環境であって、今のような人間がみずから勝手につくり上げて、全く昔とは違う環境の中にこのシステムというのは、果たしてうまく生きるのかどうかということを考えていく必要があります。
 したがいまして、私たちの体というのは、あくまでも昔のこういう環境になじんだはずなのに、今や全く違う環境の中に身をさらしている。すなわち、脳が求めるもの、そしてそれに対して体が反応するというところのバランスというのをきちんと考えていく必要があるのではないか。もし、そのバランスが悪ければ、恐らく意識に上れば簡単にそれは避ければいいわけですけれども、意識に上らない範囲でも余分な緊張というものが体に生じるのではないかというふうに考えています。
 このように、私たちというのは、今日のお話の光に限らず、いろいろな温熱とか重力とか気圧とか酸素濃度とか、あらゆる物理的な環境要因に対してきちんとバランスよく対応できているのかどうかということを見ていく必要があるということであります。
 そういう中で、今日のお話の照明、特に今日は色温度というところに注目してお話ししようと思うんですけれども、それの非視覚的な影響、つまり意識に上らない、視覚とは独立した影響ということに目を向けて考えてみようということです。
 これまで、光あるいは照明ということに関しての研究というのは、いわゆる明るい、暗い、いわゆる視認性の問題、明るさと視認性の問題、明るさと作業効率の問題、あるいは光の色合いと心理的な影響との関係、そういったところをよく注目されて研究されてきたわけですけれども、私ども、今、注目していますのは、視覚にはよらない生理的な影響、しかも意識に上らない変化というところに注目しています。それを非視覚的な影響というふうに呼んでおります。
 では、具体的に視覚によらない影響というのはどういうことかということで、これはラットの脳ですけれども、光がこの目に入りまして、網膜あるいは網膜下の光受容器から信号に変換されて、ちょっとこれは破線がずれておりますが、視覚野の方に信号が行って物のイメージを、イメージングと言いますが、イメージを形成して、いわゆる外界の世界を見てとることができるわけです。
 もう一つ、視覚野とは別のルートがございまして、こういうルートがあります。一たん脳を抜けて、また脳に戻って、松果体というところに行くルートがございます。このルートの中に、後ほど大川先生の方からもお話が出ると思うんですけれども、この視交叉上核という、いわゆる体内時計と言われているようなところを通りまして、また視床下部の中の室傍核というところを通って、脳幹網様体というようなところを通っていきます。例えば、この通り道にある視交叉上核というのは、さっき言いましたように、体内時計といいますか、生体リズムに関係するものです。また、室傍核というのは、循環系等を支配する自律神経とかいろいろなところですね。それからあと、コルチゾール等に関連した内部分泌、いろいろなところがここで関係しています。
 それから、脳管網様体は、これは賦活系ということで、上行性に行きますと、大脳の新皮質の広い範囲にわたっていわゆる覚醒水準に影響するし、今度、下行性をたどっていきますと、脊髄の運動神経を通って、筋の緊張道に関係してくる。そういう意味で、覚醒中枢系、あるいは運動系、あるいは自律神経系、内部分泌系、そしてこれが全体に影響を及ぼす生体リズムということで、光というのは恐らくこういう我々の体の中に存在するさまざまな機能に影響するということが予測される。しかも、それは視覚野に来るのとは別ルートでございますので、これは非視覚的な影響という形で見てとれる。そういうことで、一つこの辺の動きを注目すると。
 過去もう十四、五年、光をやってきておりますけれども、このすべてに光に関連してこの辺が動くということ、つまり影響されるということが確認されております。
 それでは、ちょっとお手元の資料にはこの図を入れておりませんでしたが、先ほどの図に戻りまして、ここのバランスというのは、照明という中ではどう考えていったらいいか。つまり、光によって先ほど体の中のさまざまなファンクションに影響するということでしたが、その影響というのは、本当にいいのか悪いのかというところをどう評価するかというところが一つの問題になってきます。これは確立された方法論はございませんけれども、私ども、今、やろうとしているアプローチとして、3つほどご紹介いたします。
 1つは、横軸に覚醒水準をとって、縦軸に作業効率あるいは作業成績をとったときに、古くからこの間には逆U字の関係があると言われています。実際、データをとってみるとなかなかきれいには出ないものですけれども、概念としてこういうものがある。例えば、寝ているときというのは非常に覚醒が低いときで、こういうときというのは、寝てるといいますかうとうとしているときというのは、作業がほとんどできないわけです。目が覚めてだんだんすっきりして覚醒が上がってきますと作業が進むということで、こういうふうに上っていくんですね。
 しかし、あるところからそれ以上覚醒が強くなり過ぎますと、今度は作業効率が下がってくると。日常的にはイライラ、カリカリしているときになかなか仕事がはかどらないというのは、非常に脳は興奮しているんだけれども作業ははかどらないという、こういう考え方になるわけです。ですから、ある刺激のもとに覚醒水準と作業効率が得られたときに、それが左半分のフェーズにあるのか、右半分のフェーズにあるのか、これをきちっととらえていく必要があるだろうという考え方です。
 ここまで来ると意識に上ると思うんですが、意識に上らない程度の右側のフェーズの初めの方の部分にもし位置するようなことがあれば、これは覚醒水準のレベルから見て余分な緊張がそこに働いているという判断が、一つできるんだろうという考え方です。
 それから自律神経系につきましては、副交感、交感のバランスで、例えば心拍数がそこで調整されている、血圧が調整されているというようなことになるわけですが、この図から見てわかるように、通常は、例えば心拍数ですと安静レベルの水準では、この副交感の緊張の程度によってコントロールされているんですが、何か精神作業であるとか、あるいは精神的な何か緊張を強いられるような場合には、交感神経の活動はぐっと増してくると。この総体的な比較で、例えば交感神経の活動が副交感神経の活動を上回って優位に立つような場合には、自律神経から見てそこに緊張が働いているという見方ができるのではないかということであります。
 それから光といいますと、この後、大川先生がお話になると思いますが、生体リズムに大きくかかわってきます。生体リズムで、例えば位相が変化するとか、それから振幅が変化するといったような場合に、やはりそこに緊張として見ることができるのではないかという考え方であります。
 ほかにもホルモンあるいは免疫といった指標からそういった緊張というものを見ることはできると思いますが、今日はこの3つを使いまして簡単にご紹介したいと思います。
 照明の色温度につきましての非視覚的な影響、それが余分な緊張としてどのように評価されるかということでありまして、その方法としては逆U字の関係、あるいは自律神経の緊張度から見た評価、あるいは生体リズムの位相の振幅度から見た評価といったようなところで一つ見ていきたいと思います。
 これは覚醒水準を見た図です。脳波の中の事象関連電位、これはある刺激に対して脳がその刺激に特定的に反応する部分を加算してその特徴をクリアにするという方法なんですけれども、いろいろな事象関連電位がありますが、その中の随伴性陰性変動という、ちょっとややこしい名前ですが、英語の頭文字をとってCLVと呼んでおりますが、これの初期成分は覚醒水準を反映するというふうに言われていまして、いずれにしましても、ここで覚醒水準を見ようとした実験であります。
 電球色の蛍光灯、それから昼光色、青っぽい光の蛍光灯を両方比較しまして、覚醒水準、CLVをはかったと。その結果、統計的に有意に青っぽい蛍光灯の光のもとにさらされた被験者の覚醒水準が有意に高いという結果が出ております。このCLVをはかるときに、パラダイムの中で反応時間をはかるようになっていますので、それをパフォーマンスとして見てみたときに、覚醒の高い青っぽい光のもとではかられた反応時間の方が遅くなっているということ、すなわちパフォーマンスが落ちているということでございます。
 先ほどの逆U字の例で見てみますと、覚醒水準が青っぽい光のもとでは高くなっている。こちら側のフェーズが高くなっているのか、こちら側のフェーズが高くなっているのか、それはパフォーマンスを見ればわかるわけで、この場合、覚醒水準が高くなってパフォーマンスが落ちているという、このフェーズの中にどうも青っぽい光というのは入っている。しかも、大体被験者というのは蛍光灯の昼光色と蛍光灯の電球色、その部屋に入ったすぐというのは非常にわかりやすいんですが、赤っぽい光、青っぽい光。5分もいればなれて感覚がなくなります。しかし、脳波上はこういったものがきちっと出ているわけです。そして、感覚ではとらえられていないわけで、そういう中で緊張といいますか、覚醒水準が増加している中でパフォーマンスが落ちているという現象が起きている。
 幾つか似たような実験をやりまして、常にこれが同じ結果が出るかというと、そうではありませんでした。ただ、ここの部分は常に青っぽい光で高くなるという追認は得られています。ただし、この反応時間の方は、青の方が大きくなるか、あるいは統計的に差がなくなるか。少なくとも覚醒の高い青い方でパフォーマンスが高くなるという結果は1回も得られておりません。そういう意味で、青っぽい光というのはどうも覚醒水準から見て余分な緊張を引き起こす可能性が非常に高いという考え方をしております。
 それから、今度は自律神経の方ですけれども、心拍変動と呼んでいますが、心電図上のR-R間隔の揺らぎを周波数解析して、そこから自律神経野の緊張度を出す指標がございまして、これの場合は、交感、副交感両方の緊張度をあらわすと言われていますLF成分を見た図です。これは照度が3水準あるんですけれども、分散分析の結果、照度の主効果ではなくて、色温度の主効果が出ている。すなわち、照度に関係なく色温度の違いが出たと。しかも昼白色、電球色よりも昼光色の青っぽい光のもとで自律神経に緊張が見られるという結果でございます。
 それから、私ども、実験室でリビング、そして寝室を想定した実験をやったわけですけれども、したがいまして、夜、被験者に実験室に来てもらうわけです。夕方6時に来てもらって、安静に1時間して、それからシャワーを浴びてもらいます。お風呂に入って、お風呂に入る手順も一応統一します。湯の温度も統一します。そして7時半に実験室に入ってもらいまして、この実験室というのはできるだけ実験室らしさをとるために、ソファを置いて、ベッドを置いて流し台もあるわけですが、音楽をかけてという、リラックスできるようにしています。リビングを想定したのが、夜の7時半から12時まで。それから今度は同じ部屋なんですけれども寝室を想定して12時から2時までで、あと2時以降は寝ると。通常より寝る時間は遅いんですけれども、メラトニンというホルモンをはかるために、このあたりがどうもピークになるということで、ちょっとここまで起きてもらって、それから寝るというスケジュールを組んでおります。夜の8時半にはお弁当で食事をとるということになっています。
 リビングを想定したこの中に3条件の色温度がありまして、それからこの寝室を想定したところでは寝室としてのまた色温度条件があります。本当は3条件の3条件で9条件やりたいんですけれども、1日に1人しかできませんので、被験者が10名ぐらいになりますと大変な実験の期間になってしまうということで、多少間引いてやっております。
 これは、ここがリビングのときの照明条件で、ここは寝室としての照明条件なんですが、これは3,000、3,000というのはリビングが3,000、それから寝室も3,000、全部通して3,000ですね。これが電球色、これが昼光色をやっております。
 そこで、縦軸は、これは先ほどの心拍変動から求められた、これは交感神経の活動度を見る指標であります。夜のリビングというのはリラックスしたい空間ですので、できるだけ交感神経の活動度は低い方がよかろうという期待があるわけです。
 こういう中で統計的な差が出ているのは、3カ所ございますが、ここはちょっとお弁当を食べているときですので無視しまして、こことここを見てみますと、リビングの最後の方なんですが、これは昼光色で有意に高くなっているというところでございます。それから寝室を想定した、これは寝る前の30分のところですが、ここでも交感神経の活動度は上がっているというところが見られております。
 今度は、軸がちょっと切れておりますが、副交感神経の活動度を見たもので、この場合はできるだけ副交感神経の活動度が高い方がリビングあるいは寝室としてよかろうという想定です。ここの2つの部分に注目しますと、先ほどの昼光色の蛍光灯のもとでは非常に低いところになってしまっているということで、先ほどの結果と合わせますと、交感神経の活動度は高くて、副交感神経の活動は低くなっているということで、ここでも自律神経から見て、リビングのあるいは寝室の光としては昼光色というのは余り向いていないのではないかというとらえ方でございます。
 これは寝室のところの収縮期血圧の結果であります。リビングはいずれも電球色なんですけれども、寝室で色温度が3条件変わったときにどうなるかという収縮期血圧の結果ですが、最初から30分のところは変わっておりませんが、だんだん昼白色、電球色ですと、少しずつ下がってくるんですが、昼光色の場合に下がり切れずに、結果的にここで差が出てしまったというような形になっております。寝る前30分で血圧は昼光色で有意に高い、結果的に高い形になっているということです。
 今度、消灯して寝たときの睡眠中の直腸温の変化でございます。
 これは朝方の5時にかけての変化ですけれども、通常寝るときに体のコンディションとして、最も寝るにふさわしい状態というのはスムーズに体温が下がっていくということと、それからメラトニンがスムーズに分泌されるということであります。これは消灯時なんですけれども、その電気を消す直前まで浴びていた光がどういう光であったかによって、その後の睡眠中の直腸温の変化に違いがある。赤が電球色、それまでさらされていた光が電球色の場合、あとは昼光色、昼白色ですが、電球色だった場合には、睡眠中、スムーズに体温が下がっておりますが、昼白色、昼光色の場合には十分下がり切れていないという状況。これは先ほどのリズムの振幅の変化という観点から見ることができると思うんですが、リビングや寝室の光としては、この場合、電球色がどうもよさそうであるという考え方になります。
 これは朝起きて、尿を採取して尿中のメラトニン濃度をはかったものですが、夜の間、どのぐらいメラトニンが出たかという一つの指標として見ますと、寝る前までに浴びていた光が電球色だった場合が最も多い。ただ、残念ながら、統計的な差は有意数字に達しておりませんけれども、先ほどの直腸の結果とかとあ合わせて考えますと、やはりこれは意味のある差ではないかというふうに考えております。
 それから、被験者には直接光源を見ないように、普通の生活を見立てて光源は見ないようにということは指示しております。
 これは睡眠中の脳波で、深睡眠の積算といいますか、トータルの時間を出したもので、これは睡眠の前半と後半を分けて、睡眠の前半の部分について、後半の部分は差がございませんでしたけれども、前半の部分で差が出ております。特に前半の部分で深睡眠が多く出ると言われておりますので、これの中で差が出たと。寝る直前まで浴びていたのが電球色であった場合と昼光色であった場合、昼光色であった場合には、この深睡眠の累積時間が有意に少なくなっているという結果でございます。
 そういうことから考えますと、夜のリビングあるいは寝室の光としては、この昼光色というのが自律神経、血圧とかあるいは心拍変動とか、あるいはメラトニンとか、あるいは睡眠の質という観点から見ますと、やはり昼光色というのは好ましくないという、総合的に考えてやはり好ましくないだろうというような判断をしております。
 これはまた別の実験なんですけれども、今度は色温度は一定なんですけれども、この低照度と高照度で見たときに、何を見ようとしたかといいますと、メラトニンと直腸温の関係で、以前からメラトニンというのは体温と関係していることを言われているんですけれども、それまでメラトニンを投与するとか、あるいは人工的にメラトニンをふやすということが非常に多いんですが、これは普通の生体の中の変化、光による変化でとらえたデータです。
 要するに何をあらわしているかといいますと、この横軸は高照度の5,000ケルビンでたくさん、光そのものはメラトニンの分泌を抑制する作用がありまして、この5,000ケルビンの光で最も分泌が多く抑制された場合には右に行きます。このスケールでいくと、右に行くほど5,000ケルビンでたくさん抑制されたと。縦の軸は体温ですけれども、下に行くほど体温の低下が小さい。本来、夜、睡眠中はどんどん低下していくんですが、その低下度が下に行くほど小さいということです。ですから、ここから言えますのは、高照度によってメラトニンがたくさん抑制された被験者ほど直腸温の下がりが小さかったということであります。
 これは非常に個人差がございますので、そういう意味では同じ光条件でもたくさん抑制される人と余り抑制されない人がいると。特に、たくさん抑制される人にとっては体温の低下はそこにも抑制が働くという結果であります。
 それから、先ほどと同じ36と5,000ルクスの違いの実験で、今度はリズムがどのぐらいずれるかという、位相がどのぐらいずれるかというデータです。
 ここから寝る、夜中の2時から睡眠に入るわけですけれども、これまで余り違いが出ておりませんが、こちらが寝る前までに浴びていた光が30ルクスの場合、このピンクの色が5,000ルクスだった場合です。大体、この体温が最も低くなる位置が、例えば30ルクスの場合はこのあたり、朝の5時ぐらいになるんですかね。5,000ケルビンだった場合は、大体1時間ぐらいずれてしまっているということであります。
 これは平均値なんですが、これは個人ごとに見た図で、この濃い茶色の方が30ルクス、ピンクの中を白く抜いている方が5,000ルクスということで、3時間ぐらいずれている人もいれば、余りずれていない人もいるんですが、平均値で見ますと、有意にここで1時間ぐらい違いが出ていると、こういうことであります。
 そういったリズムというのは、大体お母さんのお腹の中に赤ちゃんがまだいるころから働き出すというふうに、いわゆる体内時計が機能し出すというのは、受精後32週齢前後というふうに言われております。そして、お腹に入っているときの赤ちゃんのリズムというのは、お母さんのリズムと同期すると。生まれ出ても、これはラットの実験で言われているやつなんですけれども、母親に限らず子供を育てる人のリズムに同期するということであります。
 先ほどの、これもそうですけれども、私のデータではなくて文献から引っ張ってきたものです。早産で生まれた子の大体60のサンプルで、平均が27週で出てきた赤ちゃん、平均体重が1,000グラムですけれども、インキュベータに入れて育てるわけですけれども、そのときに先ほど申しました体内時計が機能し出すのは32週齢ぐらいで、32週齢から12時間明るくて12時間暗いという明暗のサイクルを与えた場合と、それから36週から明暗のリズムを与えた場合で、赤ちゃんの成長率が随分変わってくるというデータでございます。
 ですから、光というのは、そういう意味では非視覚的な影響ということ、さっきいろいろなファンクションへの影響をご紹介したわけですけれども、特にこの早産の赤ちゃんにとってはどういう光の明暗をどういうタイミングでやるかによって、こういう成長にも影響してくる。ですから、いろいろな面で光の影響というのは実はありそうだということが、最近、かなり注目されてきているということであります。
 メラトニンそのものは光で抑制されるということですので、昼間はほとんど出ておりません。夜、日が沈んで暗くなって初めてたくさん出てくるということでございます。ただ、私たちは現代文明の中で、非常に明るい照明の中で、特に日本人は明るい照明が大好きですので、夜、明るい中で過ごしていると。そうするとメラトニンというのはその明かりで抑制されるということになります。
 こういったメラトニンの抑制というのは、先ほど申しましたように、睡眠の質あるいは位相に影響する。そのほかにも余分な緊張として覚醒水準とか、自律神経とかというところでお見せしたように、いろいろなところに影響するわけです。
 一方で、最近注目されていますのは、がんの細胞の増殖にも、通常がん細胞の増殖をメラトニンは抑制する作用があると言われておりますので、そのメラトニンの分泌が抑制されますと、非常にこの辺が問題になるのではないかということであります。そういう意味で、快適な照明光源というのはどういうふうに考えていったらいいのか、そしてそれをどう使っていったらいいのかということが、非常にこれから重要な問題になってくるのではないかということであります。
 光がメラトニンを抑えると、分泌を抑制すると言いましたけれども、同じ光の中でもスペクトルで見ると、どのスペクトル成分が最も抑制するかということで、ブレナードという研究者が700回とか800回というようなすごい実験をやりまして、その中で出した答えがブルーの460ナノ前後の波長帯域が非常にメラトニンを抑制するのではないかというデータを出しているわけです。これが自然光、自然光もいろいろありますけれども、こういう自然光のスペクトル分布をておりまして、最も高いのが大体その短波長帯域。昼間、我々のメラトニンが抑えられているのは、一つはこういうことも考えられるということです。
 それから、人工照明としては、これは白熱灯の分光分布と。それから蛍光灯、私が中心に今日ご紹介しました光の蛍光灯の結果というのは、この三波長タイプでございます。この中の、特に昼光色といいますのは、この短波長成分がやや総体的に大きくなっていると、こちらがそうですけれども、三波長タイプの蛍光灯のここが相対的にエネルギーが強くなれば昼光色になりますし、こちらが相対的にもうちょっと強くなれば電球色になるしという、そういう関係ですが、この電球色と昼光色でそんなに大きな違いは恐らく出ないんですけれども、エネルギー分布上はそんなに大差は出ないんですけれども、それでも余分な緊張としていろいろなところに影響が見られると。
 今後、次世代の照明光源と言われているこのLED、これがもうあと数年で家庭の中にまで入ってくるだろうと言われておりますが、ご存じのように青色発光ダイオードが出てきて、RGBでいろいろな色がつくれるという時代になってきたわけです。結果的に白い普通の光でもその分光分布で見ると、この青の部分がぽんと突出してくる可能性があるわけです。この辺は今後のメーカーがどうそれを処理していくかという問題にかかってくるわけですが、少なくともこういったところに我々は注目して、我々の健康に問題がないような、あるいは我々の光に対する適応という観点から問題がないような分光分布をつくり上げる、あるいはそういったものに対する標準化を図っていくということが非常に重要ではないかというふうに考えています。
 これは、メラトニンとがん細胞増殖との関係ですが、これも外国の文献から引用したものですけれども、ラットの光、肝臓でできたがんを移殖しまして、そこに光条件を変えて、そのがん細胞の増殖の程度を見た図です。こちらの縦軸ががん細胞の増殖の程度で、上に行くほどたくさん増殖したと。こちらは飼育の日数であります。
 大きく3つのグループに分けられておりまして、この12L;12Lというのは、Lはライトで300ルクスの光であります。これは24時間ぶっ通しで300ルクス。こちらは12時間300ルクスで、残り12時間はディムライトで、わずか0.25ルクスの光であります。そして、こちらのグループは12時間300ルクス、12時間が全く光がない0ルクスになります。
 これで見ますと、夜も明るいあるいは夜はディムライト、わずか0.25ルクスでもほとんどこのがんの増殖の勾配は変わっておりません。こちらの方は夜、真っ暗という条件ではこのスロープが小さくなっていると。実際、メラトニンの分泌の量を見ますと、こちらがディムライトのとき、こちらが300ルクスのとき、ほとんどディムライトでも300ルクスと変わらないぐらいに抑えられていると。こちら0ルクスにしますとメラトニンが多く出ているということで、この辺の勾配の違いと、このメラトニンとの関係が今指摘されているということであります。ネズミですから、非常に夜行性ということ、それから光に敏感ということで、人間と同じには扱えませんけれども、少なくともメラトニンというものががんの増殖の抑制にかかわっているということは注目されているわけです。
 これはアメリカの女性の看護婦さん7万8,000人のオーダーで、10年間にわたって調査したものです。この図は外国の文献のデータですが、図としては産業医学総合研究所の高橋さんの図をお借りしてご紹介しております。
 看護婦さんは夜勤がありまして、特に病院は非常に明るい環境の中で仕事をするということでこういう調査を行われたわけです。夜勤が月3回以上の経験年数で、30年を超えますと、乳がんの発生率が0.3とか0.5ぐらいの範囲で出てくると。大腸がんのかかりやすさというのは、15年以上の経験年数で1.35から1.44ぐらい。この差が果たして、本当に夜勤による光の影響かどうかというのはなかなか特定はできないんですけれども、今いろいろな調査の中で、光とがんとの関係が注目されて、いろいろな研究が進められているという状況でございます。
 以上、簡単にまとめますと、私たちが日常生活の中で、オフィスであるとか、あるいは家庭の中のリビングとかお風呂とか、いろいろな空間で暮らしているんですが、暗いところが明るくなるという、そのために光があるという程度の考え方が主流、少なくともこれまでは主流だったわけですが、しかし、色温度一つでかなり我々のさまざまな生理機能に影響が出てくるということは、その空間の目的に合わせた光の使い方、今日は昼光色は余分な緊張ということで非常に悪く言ったわけですけれども、例えば同じ寝室という空間でも、夜はリラックスする空間が必要で、朝はすきっと目覚めなければいけない空間。すなわち、ここではむしろ緊張が求められている空間になるわけです。ですから、同じ空間でも時間によって求められる機能が変わってくるということでございます。こういった場合には、ここのできるだけ自然の光に近い、短波長よりも少なくとも昼光色のような光がむしろこちらでは望ましいということになるわけです。
 いずれにしましても、この生活空間に応じた光のレイアウトということをきちっと考えていく必要があるだろうと。
 それからあと、赤ちゃんについては生体リズム、それから成長という問題、それからストレス、あるいは免疫力、あるいは学習とかいろいろなところで今注目されておりますので、こういったところをもっときちっと精力的に研究を進めていく必要があるのではないかというふうに考えております。
 これは最後なんですが、これは今までの話とは違うんですけれども、私たちはユーザーサイエンス機構という一つのプロジェクトがありまして、科学技術振興調整費をいただいているんですが、この中で「住まう」というところの研究のプロジェクトを起こしていまして、光プロジェクトの中で私たちのグループの光の生理影響、それからここでは心理の人たちが光に対してどういう印象を持つかとか、光のレイアウト、広がりといったことですね。それから行為を想定したときの光の印象の持ち方、そういったところを調べて、両方うまくこれがかみ合うような光の条件というのは何だろうというところを見つけ出そうとしているわけです。
 それから内装プロというのは、例えば壁面が木であるとか、木の色がどうであるかということによって、木は短波長をたくさん吸収するというようなことを言われていますので、同じ光源でも、例えば昼光色であってもこういうインテリアの壁面の材質が何であるかとか、色が何であるかによってかなり短波長を吸収して、悪い影響を除けるのではないかと。あと吸音効果とか、木であれば木の持つ揮発性物質がどう影響してくるかとか、こういったところを総合的にやると。
 それから、VRというのは、これはバーチャル・リアリティのプロで、バーチャル・リアリティの中で光のレイアウトあるいは広がりがどうなるか。陰影をデータ化すると。人が動くことによってそれがどう変わっていくかと。それから、そういう住まいの中に、自分が実際にいるかのような形で光の状態とか、いろいろなことがそこで事前にチェックできるという、こういった組み合わせで、今、実験をやっているところであります。
 以上、簡単ですけれども、お話を終わります。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 どうぞご質問等お願いいたします。
 1つ質問させていただきます。今、3つぐらいの波長の光のお話がありましたが、自然光はどれに一番近いんでしょうか。

(委員)
 どれが一番近いかといいますと、蛍光灯でしかやっておりませんけれども、昼光色の光。ただ、その昼光色といっても、例えば夕日であるとか朝日であるとかなりますと電球色に近くなりますし、昼間ですと昼光色という形になります。

(主査)
 自然光と比較するというのは、余り意味がないんでしょうか。

(委員)
 自然光そのものは、例えば昼間ですと何万ルクスという光の強度になりますし、そこで天候によっても大きく違うわけですね。むしろ我々は自然光に適応してきているので、恐らくその辺は大きな問題はないだろうと。むしろ、今、朝から夜まで、例えばこういう地下ですと全く自然光はありません。こういう人工照明に常にさらされていると。そういう中で人間への影響というのはどうとらえていったらいいかということに非常に注目しているところです。

(主査)
 ほかにどなたか質問は。

(委員)
 メラトニンと直腸温の関連の件で、メラトニンの抑制と、それから体温の降下度がリンクしているということがあるんですが、その抑制率が低いということは、余り下がらないということですよね。

(委員)
 そうです。

(委員)
 そうですか、わかりました。ほか全部、次は私の生体と、それから病気の方の説明をするんですが、ここだけちょっと疑問に思いましたので質問しました。
 わかりました。普通ですと、メラトニンを人体に投与しますと、結構、体温次第では下がる、あるいは…。

(委員)
 ちょっと説明がわかりにくかったかもしれませんが、5,000ルクスですとたくさん抑制されますよね。たくさん抑制された方が、つまりメラトニンの絶対量が少ないわけです。少ない方が体温が、本来もっと下がるべきところが下がらない。ですから、メラトニンが多い方が下がるということと一致します。
 ちょっと表現がややこしいものですから。

(委員)
 そうですか、わかりました。勘違いしました、ありがとうございます。

(委員)
 その実験は、いろいろな光源の蛍光灯の光の強さは、ルーメンか何かの単位で統一されているんでしょうか。

(委員)
 一応ルクスで、メノトのところでやっております。

(委員)
 ルクスで同じ強さでね。
 それで、ただ、ロードプシンが関係しているのかどうか僕は知りませんけれども、ルクスでそういう生理反応はよろしいんでしょうか。というのは、網膜の反応というのは、必ずしもルクスではなくて、例えば光量子とか、そういう反応が起こるようなケースはどうなんでしょうか。

(委員)
 多分、実験の内容によって、私たちはその辺使い分けているんですけれども、例えばできるだけ光の影響を純粋に見ようとした場合に、ボックスをつくって、実際に光源を曇りガラスなんかを通して見るといった場合には、輝度とかあるいはそれをフォトに落とすとか、そういうことはしています。
 それから、本当はきちっと光彩を開いてやるのがいいんですけれども、私どもは自然な形でやっております。それをきちっと抑えたいときは人工的に穴をつくって、その辺を統一するとか、それはどちらかというと短波長の実験でやっています。

(委員)
 わかりました。

(委員)
 先ほどからいろいろな生活条件においては、電球色が適しているようにおっしゃっていましたが、昼光色というのは非常にいろいろな蛍光灯で多く用いられています。昼光色で1つだけいい点は、朝起きたときにとおっしゃいましたが、これでもパフォーマンスを落とすような傾向にあるとすると、一体、多く用いられている昼光色が非常に役立つというのはどのようなものなのか教えてください。

(委員)
 非常に表現が難しいんですけれども、恐らくパフォーマンスが落ちるといっても極端に落ちる感じじゃないと思います。ただ、それをずっと毎日毎日の積み重ねだろうと思いますし、それから昼光色の生かし方というのは、例えばオフィスの作業でも非常に単調作業な場合眠くなります。ですから、逆にBGMなんかで刺激を与えて眠らないようにする。そういったときにはむしろ昼光色が合う。それから、いろいろな創作活動とか、神経を集中しなければいけないような作業のときはできるだけ穏やかな環境ということで電球色の方がいいだろうという考え方で、状況に応じてその辺は。
 それからあと、昼光色が非常に、例えばメラトニンを抑制しやすいとかということで、この後、大川先生のところで出てくるかもしれませんが、逆にそれを使って光の治療に用いるとか、ずれた部分を逆に強制的に戻すためにそういう刺激の強いものを使うとか、いろいろな使い方がある。それからあとは明るさを明るくしてとかですね、いろいろな組み合わせで使う。むしろそっちの方がいいというような部分がこれからたくさん出てくるのではないかと思います。

(主査)
 ほかにいかがでしょうか。
 1つ、例えば先ほど波長に対してメラトニンの分布抑制のグラフがございました。2枚目の一番上の右側。470、単位がちょっとよくわからなかった。とにかく非常にピーク、かなりセンシティブなグラフになっていますですね。これはなぜかというのは何か調べられているんでしょうか。なぜそこにピークが来るかというのは。

(委員)
 いわゆる垂体とか桿体とかとございますが、あれの視感度曲線のピークと、これから違うということで、第三の受容器があるのではないかということが示唆されるのでありまして、それで神経肢節細胞というところのメラノプシンが関係しているのではないかとかという、その部分のアクションスペクトルというのがこれで一致するというようなことで、今、ちょうどその辺が議論されているところでございます。

(委員)
 多分、蛍光灯と電球で比較されているんですかね。

(委員)
 実はいろいろな光でやりたいんですけれども…。

(委員)
 というのは、時間的な変動なんですけれども、蛍光灯ですと普通60ヘルツの揺らぎが出てきているのではないかと思いまして、電球ですと白熱灯ですから、それは余り出てこない。その辺の影響というは、例えば人間のいらつきみたいな、そんなのには。

(委員)
 その辺は、きちんと私たちデータで整理しておりません。ただ、スウェーデンの学者でその辺も影響するのではないかという論文もございます。

(委員)
 ありがとうございます。

(委員)
 ただ、同じヘルツを持ちながら色温度でやはり違うというところが、いろいろな影響が出てきたのではないかと。
 それから、もう一つつけ加えさせていたますと、色温度、色温度といいますけれども、例えば同じ3,000ケルビンでも演色性が変わればスペクトルが変わります。そうすると、演色評価指数というRAという言葉で言われていますが、そのRA88というのに統一してやっている。そのRAが変わると、色温度の影響はまた変わってくるわけですね。だから、やればやるほどたくさんやらなければいけないという状況の中で、今、非常に条件をシンプルにしてやっている状況でございます。

(主査)
 よろしいでしょうか。

(委員)
 大変おもしろい話ありがとうございます。昼光色がいらつくとかというのは、例えば人間が昔、洞窟に住んでいて、低い温度のたき火、夜になるとたき火に当たって、それで寝ていくとか、そういう記憶が残っているからそういうのが好ましいとか、そういう説明はあるのでしょうか。

(委員)
 大変おもしろい話なんですけれども、昼光色がいらつくとかというのは、例えば人間が昔、洞窟に住んでいて、低い温度のたき火、夜になるとたき火に当たって、それで寝ていくとか、そういう記憶が残っているからそういうのが好ましいとか、そういうもっともらしい説明というのはあるんでしょうか。

(委員)
 私もその辺考えたいんですけれども、科学的に実証のしようがないものですから。
 ただ、青い光のもとだからいらつくというのではなくて、いわゆる意識に上らない程度の興奮ですので、いらつくという表現を私どもはしてはないんですけれども、余分な緊張を強いるという言い方です。
 それから、我々は、昼間の光は、昼間の我々の体の活動に対して昼間の光にフィットしているわけですね。夜は、本来は太陽の光がないわけですので、夜は昼間の光に適応していないですね。そういう中に、今、勝手に人工照明が昼間のスペクトルに近いものを持ち込んでいるというところに問題があるのではないかというとらえ方です。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 それでは、次の講演に移らせていただきます。
 今度は、滋賀医科大学の睡眠学講座特任教授の大川委員から、光生体リズム調節ということでお話をいただきます。

(委員)
 ご紹介いただきました大川です。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は、睡眠学講座に移ったのが11月からで、それまでは滋賀医科大学の精神医学講座の教授をしておりました。何をやっているかというと、睡眠障害の患者さんたちあるいはうつ病と言われているような、精神疾患の患者さんを診ているのが主な仕事だったんですが、実は卒業してからずっとこういう生体リズムと睡眠というテーマで来ておりまして、ここに発表させていただくのをとてもうれしく思います。
 それで、もう少し医学的に光を上手に応用する、あるいは光を治療的に使う、あるいは予防的に使うと生活習慣病がなくなるし、うつがなくなるし、子供たちの成長はいいしと、そんなことを毎日考えてやっておりました。
 これはちょっとイントロなんですが、実は、安河内先生は500年前からの図を出されましたが、私はそこまでいかなくて、例えば10世紀、11世紀、これは石山寺というのは、大津にある石山寺で、ここで源氏物語が執筆されたというんですが、実はこういう古い時代にもちょっとした明かりはある。満月の夜だったら、まあまあ何とかできるという生活が考えられるわけです。ところが、電気が発明されたのは1879年ですから、それからかなり私たちの生活が変わってきたというのがあると思います。
 それで、実際、例えば不眠症など、眠れない病気が古代にあったのかどうかということなんですが、ちょっと今日出していないんですが、9世紀に書かれた病草子という、これも絵巻があるんですが、実はほかの女官たちが全部眠っているのに1人だけ行灯のもとでぽーっと起きている、それが眠れない女官と書いてありました。そういうわけで、多分不眠というのは前から、ストレスの多い状況ではあっただろうと思うんです。
 もう一つ考えられることは、こういう電気が煌々とつく、これは夜の2時と聞いております。深夜ですよね。そこをスペースシャトルから撮ったと。日本がこんなにも明るい。それから台湾のこのあたりでしょうか、東南アジア、それからインドがこんなに明るいという、何か経済発展の様子をシンボリックにあらわしていて、北朝鮮が真っ暗なんです。
 だけど、これは何を意味しているかというと、だれかが起きている。さっきの看護婦さんが起きている、24時間ストアがオープンしているという、こういう状況でどういう病気が起こってくるかということなんですが、実はあっちこっちのところで眠っている学生、講習で眠っちゃう、電車の中で眠っている、こういう学生をどうするか。放っておいてあげた方が足りない睡眠を補っているので私はいいんじゃないかと思って学生を起こさないんです。ただし、アルバイトしながら24時間だれかが起きている、現代社会はこんな状況なわけです。
 そして、そういうことが引き金となってリズム障害という病気が起こる。これは近代病なんですよね。この概日リズムという約1日のリズム、Circadian Rhythm Sleep Disorderという、概日リズム睡眠障害という病気が認定されています。もう一つ、リズムが全くなくなってしまう。まるで生まれたばかりの赤ちゃんのように寝たり起きたりを繰り返しているという病気、それを不規則睡眠覚醒型の障害としますが、高齢者にかなり多くなっている。これは、今言われている認知症の患者さんたちがまさにこんな感じなんです。それから、もう一つは気分障害。これはうつ病なんです。これも最近物すごくふえておりまして、4万人の自殺者をなかなか減らせないという状況なわけです。
 それで、考えてみると、私たちは夜は眠るという昼行性の人類なんです。ほかの動物を見てみますと、こんなふうに10時間以上眠っているライオン、オオカミ、ネズミ、ところが2時間から5時間しか眠っていないヒツジ、ゾウ、キリンなんかも入ります。よく見ると、肉食動物というのは1匹のえさをつかまえた後は寝て暮らせるという、大変優雅なスピーシスといえます。ところが、このゾウとかキリンなどの草食動物は、あれだけ大きな体重を支えるのに草を絶えず食べていないといけない。ですから、睡眠時間というのは自分で調節するのではなくて、生きるための時間です。生き延びるための時間と考えられる。
 ところが、ヒトというのは、そういうわけで、睡眠時間が少なくてもいいのではないか、子供たちはそんなに寝ていたらせっかくの受験が間に合わないよという教育をされているわけです。だけど、私はおかしいなと思いながら考えてやっております。
 生物リズム、バイオロジカル・リズムというのは、夜行性と昼行性とであるんですが、夜行性の動物というのは夜に活動するという習性なんです。好き好んで夜起きているのではなくて、昼間明るいところに出ていくと天敵に食われてしまうという宿命があるものですから、必然的に夜に起きて生殖行動や繁殖行動をするというような感じになって、好き好んでやっているわけではないんですよね。
 この周期のことは後でお話ししますが、人間は本来24時間かなと思ったら、少し長目なんですね。そんなことがわかってきました。ところが、夜行性の哺乳類というのは、少し逆に短目らしいんですね。これは私の領域でないんですが。
 そういうわけで、もうちょっと基礎のところをいきますが、先ほどお話しいただきましたように、このように光が目から入るという、これが基本になります。そして、このSCNというSupra chiasmatic nucleusというのは、視交叉の上の核、本当に小さな器官です。それを壊すとリズムがなくなってしまう。ですから、寝たり起きたりを繰り返すというようなことになってしまう。ここを壊す実験というのは動物で行われております。ここがしっかりとないと、昼夜のリズムはとれなくなるということになります。そして、ここから入った光の信号が、この神経伝達を通って、そして上頚部交感神経節に入って、再度脳の中に入ります。単に明るいということだけでなくて、脈拍を上げ、血圧を上げという、起きるモードに入ってくるわけですね。ですから、朝に光をしっかり浴びるということが、起きることを体の中に伝えているわけです。そして、その起きたときからはメラトニンが全く分泌されない状況があって、夕方になると、少し暗くなってくると今度、メラトニンが分泌されます。
 ですから、松果体からメラトニンが分泌されるということは、夜に分泌されるという自然現象なんです。夜、光が少しずつ少なくなってくる、光の量が少なくなっていく。逆に夕方の6時ぐらいになると、だんだんメラトニンが上がってくるらしいんです。そして、ある程度の濃度になってから睡眠が始まるということになります。ですから、この間隔がうんと狭められているのが現代生活ではないかと思いますし、こういう状況で子供も生活しているということになるわけです。
 これはその中をちょっと見たものですが、さっきからの経路、ここまで来ました。松果体の中で分泌されるメラトニンの経路なんですか、トリプトファン、これは食事としてとったトリプトファンが変わってきてセロトニンになり、そしてメラトニンに変わります。そのときに、N-acetyltransferaseという酵素が、光があると活性化されないんですね。活性が抑えられているからメラトニンの経路が進まないと。だけど、暗くなってくると、やおらこの経路が進行します。ですから、決して光というのは気分でなくて、このように光合成と植物と同じように、人間もかかわっているということを示しております。
 そういうわけで、夜と昼と睡眠とメラトニン、体温の関係。これは昼の時間帯、夜の時間帯、1日目、2日目というこういうふうに見てください。ずっとこれが毎日繰り返されるわけなんですが、睡眠が終わって明るくなってきたときに光をしっかり浴びると、このメラトニンがすっと下がってくる。自然に下がりカーブを描きます。下がりカーブになるときに起きていることになります。そして、この体温とメラトニンが裏腹の関係になって、寝ているときにメラトニンがピークになるし、体温が最低になるということを繰り返しているわけです。昼間にしっかり光を浴びて、とてもビジランス、覚醒度が高くなって、作業能率もいいというときには、このように体温、正確には脳温が高いということ。
 ですから、この光の条件を変えるということは、体温リズムに影響してしまうわけです、夜働くとなると。しかも、明るいところで働いて、深夜の看護師さんということが出ましたが、メラトニン・体温リズムがばらばらになって非常に不規則になっている。人間はそんなに短期間に昼夜のリズムを変えられるかというと、それは人間の思い上がりで、そうはいかないんです。やはりメラトニン・体温リズムがしっかりしていて、初めて気持ちもとてもいいし、はつらつと仕事に取り組めるということになる。
 体内時計の働きで、朝日を浴びてから10時間ぐらいたつと深部体温が下降し始めてメラトニンが上昇し始めるという、これは一応健康な成人でやってみました。大体こんなもんなんです。高齢になると、少しこれが前倒しになる。早目に眠くなってくるリズムらしいんです。
 そういうわけで、朝、光を浴びるという、この朝日の条件というのが1日を決定しているんです。ですから、私ども時々、曇りの日なんかにぐっと遅くなって、何となく光を浴びないでいるような曇りの日とか、雨の日というのは、何か遅れがちなんです。それはこの朝の光が入っていないからなんです。ただ、人間というのはとても、それは生体の反応としてフレキシブルなんで、一日二日浴びなくたって、またすぐにしっかりと浴びれば戻るということになっております。
 これは体内時計、Biological Clockが、その周期が24時間より長いということを証明した実験なんですが、これは大体50年ぐらい前に盛んに行われました。全く自然光が差し込まない、昼夜の環境がわからない、テレビなどのう時計信号のないところで、とても環境のいいところで生活しますと、睡眠と覚醒の時刻が毎日1時間ずつもずれるんです。これは、もうかれこれ200人ぐらい、そういう洞窟みたいな条件のところに入ってもらいました。だれ一人として24時間を守れないんですね。自分は24時間の生活をしたといっても、よく見ていると25時間近く、24.5時間とかいろいろ個体差はあります。そして、光を起きたときにしっかり浴びると24時間に調整できるというメカニズム。また光がなくなるとずるずるとずれているということがわかりました。
 生体時計の周期が人は24時間より長い。生体リズムの仕組みは光がリセットして地球の自転に合わせるということになります。そして、明暗の周期を変えてもすぐには同調できない。これは、例えば海外旅行などに行ったときに、特に飛行機の中でのことを調整しないで行って、いきなり向こうの生活を始めると、なかなかお腹がすかないとか、頭がどうも働かないとか。あと代表的なのは、スポーツ選手がいきなり行っていい記録を出そうとしてもなかなか出ないんですね。そういうわけで、最近はスポーツ医学などにこういうようなことが取り入れられているんですが、どのぐらいで同調できるかというと、本当に同調できるのが、例えばニューヨークとか、日本からいうと地球の裏側にあたるところで、大体、早い人で7日、10日から2週間はかかると言われています。こんなことも、一つ研究応用に使えるんじゃないかと思いました。
 これは障害の話です。
 これは1日です。ここが夜の時間帯なんですが、私たちは健康時は大体ここの時間帯、24時から朝の6時とか7時ぐらいまで寝ている、1日目、2日目、3日目。ところが、睡眠相、これはスリープフェイズと言っていますが、それが後退してしまうと。後退というのはリレイという言葉を使います。リレイ・スリープフェイズ・シンドロームという言葉ですが。朝の3時とか4時に寝て、12時近くまで眠っているという、こういう人がいるんです。よく不登校の子供たちにもこんなタイプがいますし、サラリーマンにもいるんですが、それが治せないから病気とします。
 それから、自由継続は、ずるずるとずれていったようなタイプです。それから睡眠相前進、これは高齢者にも多いんですが、夕方の7時ぐらいに眠くなって床に入ります。でも、3時ぐらいに起きて、あとは好きなことをやれば、社会的にはほとんど問題ない。社会的に問題になるのは、この後退型あるいは不規則型ということです。交代勤務や、時差というのはここに入る感じです。
 患者さんのケース。ここの周辺にもいるのではないかと思うんですが、主訴は夜眠れないとか、朝起きられない。そんなのなまけ者だと、少し古い時代ではもう脱落ですよね、社会的に。50歳の男性ですが、学生時代から朝の起床困難があった。今の若い子たちもそうですし、小中学生からこんな感じの子がいるんですよね。大学を卒業した後、睡眠時間が遅れちゃって朝5時にならないと眠れない、13時にならないと起床できない。出社に支障を来して、これは自分でおれはだめだと思って退職したと言っていました。その後学習塾を経営して、16時から21時勤務。それだったらいいんじゃないかと言われるんですが、困るわけですよね。
 この人が書いてくれた、これは睡眠図といって、今はもっといいものを利用するんですが、この左端が0時で、12時、正午で24時、2日目という、こういう記録です。ほとんど昼間に近いところで眠って、何となくずるずるとずれているところもあるのがわかります。
 どういうふうに治療するかというと、この起きがけをねらって明るい光を浴びるという、これは人工光の治療器を使う場合もあるんですが、外に行って太陽光を浴びてもいいんですね。とにかく朝早く起きて外に行ってくださいという、それだけでよくなる。ただ、不登校の子供たちは外へ行くと格好悪い、知っている人に会いたくない。そういうときに光治療法器を使います。これは、ある電気メーカーさんにつくってもらったんです。非常に明るい光で、これは蛍光灯を使っています。光治療法器の前に座って、光が目から入ってくるという治療を受けていると、リズムが取り戻せるんです。
 さっきの男性、50歳の方ですが、光療法をする前は6時から12時まで寝ていました。これが眠りの時間帯です。だから、ほとんどがこの時間帯によく眠る。そして、直腸温の変化を見てみますと、このように12時のあたりが最低体温になっています。ですから、この人は夜型の生活に合ったような体温リズムになっていました。
 ところが、さっきの光の治療を行って、0時から6時ぐらいまでの睡眠が随分前に来ましたよね。とてもいい条件になったときの体温を見てみますと、これは7日間ずっと毎日毎日続けてつけたものを重ね書きしたものです。最低体温が治療前に比べてずっと前に来ています。
 それからもう一つわかることは振幅ですね。大体、直腸温で1度程度の振幅だったのが、1.5度から1.7~1.8ぐらいまで上昇しているんです。振幅が非常に高くなるし、それからリズムが前に来ている。この患者さんが何を言ったかというと、すごく体調がよくなりましたと。何かもやもやしていたんだけど、自分の体調ってこんなにいいんだというのがわかったと言ってくれました。こういう患者さんから、私たちも随分勉強になります。
 それで、同じようなことをメラトニンで見ても、光療法をする前はこんなふうにメラトニンリズムも遅れているんですが、3,000ルクスを2日間投与しただけで、体温、メラトニンのリズムも前進した。ですから、光により生体リズムを変えられるという、ここは患者さんでもわかります。
 先ほどから、夜の光、朝の光ということが出てきておりますが、これは位相反応曲線といって、どの時間帯に光を浴びるのか、それからどの時間に光を浴びるとどんな効果があるかというものですが、夜に光を浴びると、例えば夜の11時、12時に明るい光を浴びると睡眠が後退してしまう。ですから、ますます朝寝坊になってしまう。ところが、朝の光は睡眠を前進させるということがわかりました。というわけで、光を浴びる時間帯でも違う。何を指標にするかというと、体温の最低点が指標になるわけです。ですから、私ども普通の生活では朝方の3時、4時が最低体温になります。それの前の方、つまり、夕方から朝方、その時間帯は睡眠が後退してしまうんです。朝方に光を浴びると、大体起きて6時、7時、8時、9時、その時間帯は睡眠を前進させます。このように時間帯による違いもあるということです。
 先ほどからお話ししているように、なぜそれを病気とするか。睡眠相後退型の患者さんで、フリーライターか何かの女性の人の話ですが、とても大事な時点、結婚する段になって、まさか子供を深夜起こすというわけにいかないし、昼間銀行にも行けないし、あとだんなの生活リズムと合わせなくてはいけない。それでもちょっと自分は努力したんですけれどもやっぱり無理だと。結局、その結婚の話が破綻になってしまったと。普通は私たちは頑張ればできるんですが、がんばってもできない人がいるということになります。
 それから次には、高齢者の話です。これは夜と昼の時間帯で、これが1日になりますが、32歳の男性の場合は直腸温が明け方に最低になって、起きる少し前から上がり出して、昼間は非常に高い体温です。これは実際の記録なんですが、この下のメラトニンを見ていただきますと、やはりさっきお話ししたように、普通の夜間のピークの時間帯がこのあたりにありまして、最高値80とか90、100ぐらいまでもメラトニンのピークがあります。
 ところが高齢になりますと、体温が下がり切れない。そしてのっぺりとして振幅が低くなっているのがわかると思うんです。メラトニンも同じですね。高齢化により、メラトニンの分泌が低下したのではないかと考えられるわけですが、このように深い睡眠もあるのに、高齢者は睡眠が悪いんだという考えがある。それならメラトニンを飲んだらいいんじゃないかという治療法がまず浮かぶと思います。
 次に、これは共同研究者の三島先生(国立精神・神経センター)の研究成果です。一緒に見たものなんですが、これは3年間の追跡調査で、高齢者の51人の集団です。健康な普通に生活している人たちのメラトニンの分泌と睡眠の効率を見ているものです。睡眠潜時というのは床に入ってからどのぐらいで入眠できるかというものです。
 これは3年間の追跡で、メラトニンの分泌も低下し、そして睡眠の効率も低下する。この集団に比べて、これは余り変化しない、まあまあ健康。よく見てみますと、3年間でメラトニンの分泌も自然に低下してくるということも考えられるわけです。高齢になると睡眠が悪くなる、仕方ないかなと。でもちょっと待って、ということでやってみたんですが、これは24時間のメラトニンの変化です。不眠の高齢者を見てみますと、夜間のメラトニンの分泌の度合いが低いんですね、20以下になっていますし。そして、この方々には午前中10時から12時と14時から16時にしっかりと明るい光に当たってもらいました。そうしますと、光照射後メラトニンが、このように高くなりました。ということは、分泌機能が劣っているのではなく、もしかしたら悪いかもしれないんですが、光の量が足りないのではないかということが考えられるわけです。
 ですから、高齢の不眠の方にいきなり睡眠薬を投与するのではなくて、私はまずしっかりと生活を整えてみてください、光を浴びてみてくださいと指導しています。それだけで睡眠が改善される場合がありますし、また、実際そういうことでないかと思って、今、患者さんを見ております。
 これはもう少しひどい、非常に重症例ですが、不規則な睡眠活動。多発脳梗塞性認知症で、71歳の方。50歳ぐらいから高血圧治療を受けておりました。65歳から物忘れがひどくなって、不眠、そして夜起きていて、がたがたがたがた動き回ってしまうという症状で、とても家族が困り果てて病院に連れてきました。入院後も昼間に眠る、そして睡眠覚醒リズムが非常に不規則で、夜間に大声を出して徘徊、部屋の中で放尿してしまう、こんなことがあったわけなんです。
 これはスタートはもう15年も前のことで、まだ今ほど認知症が知られておりませんでみんなも困り果てて、ほったらかされておりました。看護研究から始まったんですが、昼間ぐうぐう寝ているのを寝させないようにして、昼間外に連れ出したらいいんじゃないかという看護婦さんのアイデアがあったわけです。
 これはさっきと同じような睡眠図といいますが、0時から12時、24時で1日、2日目と。これは看護婦さんたちのレポートなんですが、このように寝ているところ、そして夜間徘徊や不穏、せん妄があった時間帯が出ているんです。非常に睡眠の横棒が不規則であって、この丸いのがぼつぼつぼつぼつ入っているのがおわかりいただけると思いますが、ここになりまして働きかけ、戸外の散歩ということをしましたら、昼寝しているのが抑えられるようになっています。
 もう一つ、このような患者さんのメラトニンのリズムを見てみました。健康な高齢者は、これはN=15なんですが、このように24時、夜中の0時にピークが来ます。ところが、認知症のこの15例はピークがどこにあるか定かではありません。これは1人1人の15例なんですけれども、こんなふうに1日ばらばらしているということがわかりました。
 認知症患者の行動異常と睡眠をよく見ると、晴れた日や外で散歩した日はよく眠ってくれました。夜間の徘徊が減っているんですね。これは秋田大学での私の元のデータなんですが、雪で太陽が当たらないとか天候が悪いとか、とにかく高齢者の方が困っていました。恐らくこの昼夜のめり張りがしっかりしていないことがホルモンリズムの低下、そして体温リズムの振幅の低下を引き起こし、睡眠覚醒もめり張りがないのではないかと推測しました。そんなわけで、光を用いてはどうかという全くのこれはアイデア。
 こうやって夜、歩き回っているような老人です。さっき言ったテーマはこれでした。看護師さんたちが3人ぐらいを研究プロジェクトの患者さんとして外で皆さんと一緒に散歩、あるいは外で過ごすという、たったこれだけのアイデアが成功しているわけなんです。次に、リハビリのチームの一人がが、「先生、それでは暗いところでリハビリやるよりは、明るいところでリハビリやったら効率がもっと上がるんじゃないでしょうか」というアイデアを出して、リハビリの人たちが、光の条件のいいところと普通のところの比較をしてくださっていいデータが出ておりました。
 これは全く昼夜逆転して、昼間12時近くには熟睡状態、夜徘徊していたのが働きかけ、日光浴で治っていますよね。この人たち、何人かは退院できるようになるんです。ただ、しっかり働きかけや、毎日毎日光を浴びるということがないと、いずれまた崩れるんですね。ですから、高齢者にかける医療費の問題は、お薬を投与して睡眠薬でふらふらになっている老人がやがて転倒して骨折して、また医療費がかかるというそんなことにするのか、もうちょっと光を利用する、このように対人的なコミュニケーションを積極的に図っていく方がはるかにいいのではないかと私は考えております。
 それからもう一つ、最近は看護師さんが観察していちいち書く睡眠日誌でなくて、アクチウォッチといって、万歩計と同じようなものですが、しかも時系列が入っておりますので1カ月も記録できるものが開発されました。これは宇宙飛行士も使っているものですが、同時に光量センサーがあって、そんなことから光も計れます。ですから、将来考えるプロジェクトとして、本当に例えば赤ちゃんが明るい照明の下で一日中を過ごしたり、光リズムが非常に不規則だったり、少な過ぎる子供たちが、将来どんなふうになっていくかを追跡調査するという研究もできると思います。恐らく落ち着きのない子、あるいはなかなか眠らない子、あるいはさっきみたいな睡眠相後退の子供たち、あるいはうつ病の子供が最近多いんですが、子供たちの知らない間に母親たちが不注意なために環境によってそんなことを招いてしまったのではないかと考えております。
 そのような光量センサー、アクチウオッチを用いてよく見てみますと、このように、先ほどの施設ですが、健常な老人は大体昼間の時間帯にはこの程度の受光量がありました。ところが、認知症の高齢者で室内で過ごすことが多いような患者さんというのは、こんなふうに受光量が少ないんですね。恐らく光を工夫することによって、認知症を今防できるんじゃないかという考えがあると思います。
 先ほどブレナードさんというカナダの人ですが、オランダのグループは、これはオランダというのはとてもいろいろなことが国家プロジェクトで行われる国なんですが、全員がブレインバンクに登録するという話を聞いております。ですから、アルツハイマーの方の脳を見るというプロジェクトなんですが、実はさっきお話ししたSCNという小さな核がありましたよね。そこの細胞の含有細胞だとか、ニューロトランスミッターなんかも死後脳で見ているんですが、、光をしっかり浴びていいリズムだった人のSCNというのはきちっと保護されているんですが、アルツハイマーの病気を発症した人というのは、そのSCNが破壊されているというようなデータを最近、これも10年プロジェクトで出してきております。
 ですから、私、感心するんですが、かなり息の長い研究をやりながら、私どものこういう発表をどんどん取り入れてくれています。私が発表したのは15年前もなんですが、まだ残念ながら日本ではよく認知されていないんですが、オランダがはるかに先を行ってくれているような感じがして心強いです。ちょっと余談です。
 そういうわけで、高照度光療法を、朝照射と書きましたが、光療法をすることによってかなりの改善が見られております。47パーセントも光で改善します。こういう臨床試験の穴は、ああやって看護婦さんが患者さんを外に連れ出しても、光の効果なのか、自分たちが接しているからよくなってくれるのかというのが全くわからないんですよね。ですから、先ほどのような照明器具、あるいは光治療室を使ってコントロール実験します。社会的な働きかけだけで室内でもまあまあこの程度に改善が見られます。それだったらやはり考えられることは働きかけをしながら明るいところが一番いいんだなという感じはいたします。これは今後の高齢化社会の、これは厚生労働省になるんですが、プロジェクトとして入れるべきだと私は考えました。
 次に、気分障害です。
 気分障害なんですが、実は、これは何の写真かというと、これは極圏、かなり緯度が高いところです。私、スウェーデンに住んでいたことがあったんですが、夜になっても太陽が沈まないんです。またすーっと上がってくる。これは何とも不思議な感覚だったんですが、昼間は普通なんです。これの全く逆、これは夏なんですが、冬になると真っ暗なんですね。とにかく夜が明けないという1日があるんですね。それが1カ月とか2カ月も続くことになるんです、極圏では。そこに何があるかというと、うつ病が非常に多いんですね。それからもう一つは、不眠症なんです。
 私は、この留学当時はまだ余り精神科医としての経験がなかったんで、漠然と聞いていたんですか、ポーラーマッドネスという言葉があるらしいんです。極圏には、ですから精神障害が非常に多いと言われておりました。こんなわけで、ここに書いてありますが60度で、札幌や稚内あたりがこんなふうになるんでしょう。
 季節による変動が非常に大きいときによくみられる、この季節性うつ病というのは代表的な生体リズムの異常によるうつ病なんです。10月ぐらいから調子が悪くなって、大体2月ぐらいになると改善してしまう。ですから、春になれば治るよといって、昔は放っておかれたものですが、女性に多いんですね。困ることには、主婦になると何も家事ができなくなっちゃうんですね。気分が落ち込んでいるし、何となく焦燥感がある。もう一つ、おもしろいことに、過眠になるんですね。しょっちゅう寝て、とにかく考えてみると冬眠みたいなもんですよね。よく食べて、体重は増加して、冬の間休んでいる。甘いもの、炭水化物がおいしくなるという、こういう特徴を備えているのが季節性うつ病です。日本にないかというと、決してそうでなくて、結構いるんですよ。これも光療法が効果的です。
 これは少し前で、私どもの調査では93年に行ったものなんですが、日本の53大学附属病院の精神科外来の、このSeasonal Affective Disorderという、SADといいますが。欧米ではうつ病の10~30パーセントが季節性を持つと言っております。私も多分、かなりこれは近いんだろうなと思っているんですが、日本ではまだ、認知度が低いというよりは、日本というのはそんなに緯度が高くないんですが、でもこれは44度が札幌で、沖縄あたりですと27度ですか。ですから、日本はかなり差がありますよね。緯度の高い方に季節性うつ病が多いということがわかりました。そして、このように、特に秋田、日本海側あるいは札幌が多いんですが、寒くて冬には光が少なくなるという、そういうことを示しています。
 そして、これはさっきの向こうの写真でした。北欧の人はそういうことを知っていて、夏の季節にはとにかく外に出て、みんなで太陽を浴びようと。若い人も結構いますし、これが一つの生体リズムを利用した彼らの知恵じゃないかと思って、私、今、考えたんですが。
 ちょっとまとめなんですが、どういうふうに応用するかといって、睡眠が遅れている人には朝方に昼光色の蛍光灯あるいは外の光ですね、明るい光を朝、起きたところで浴びてもらう。それから睡眠相の前進、これは早く眠くなっちゃって困るという人は夜に浴びてもらう。そして、不規則な睡眠覚醒型は昼間でもいいと思います、振幅を上げるということで。
 先ほどのメラトニンで思いつくんですが、やはり日中高照度の光を浴びることによって体温を上げる、そして夜間のメラトニンの分泌をを促進するということによって夜にまとめて眠るという、まさに先ほど示していただいたデータで考えられると思います。そして、効果としては朝の光が睡眠覚醒リズムを前進させる。25時間の本来の時計の周期をリセットすると。ですから、これは私たちは知らず知らずの間に毎朝行っていることなんです。夕方の光が睡眠を遅らせる。ですから、子供たちは明るいコンビニなどに行くと、あれがたしか8,000とか1万ルクスあるらしいですが、ああいうところで過ごさない。そして昼間に明るい光を浴びると体温リズムの振幅が大きくなる、光が気分障害を改善する、そういうことになります。
 この気分障害に対する直接的な影響というのは、例えばセロトニンのことで説明されておりますが、健康人でもセロトニンのターンオーバーレートが夏には高くて冬には低いという実際にデータが出ています。ですから、私たちは何げなく季節を経験しているんですが、夏になるとやはり爽快になる、あるいは冬だと少し滅入るという、そういう自然の動物としての本来の習性が残っている可能性はあると思います。
 最後になりますが、その学問は医学的にどういう領域になっているかというと、さっきみたいな病気の人が、例えば朝は弱くて寝坊するからという、朝型、夜型という人間の特徴があると思うんですが、病気と区別できるのかどうか。このような朝型、夜型の遺伝子を調べています。そうしますと、極端な朝型の人に、遺伝子の配置の異常があることが確認されています。それから、さっきの概日リズム睡眠障害といって治せない患者さんたちも、全く同じところではないんですが、やはり塩基配列に異常が見られているという報告が出ています。これは分子生物学の領域、あるいはもっと動物、あるいは植物はちょっとわからないんですが、そんな領域でも十分に発展できる学問の領域だと思います。
 滋賀医大は、睡眠外来と睡眠学講座をつくっています。そして、この精神科の治療室に光治療室というのを設けました。ここに患者さんに薬を使わないでちょっと治してみましょうというプロジェクトで入院してもらいます。そうしますと、薬とどっちが効果があるかなんですが、実は抗うつ薬というのは治療の効果があらわれるまでに非常に時間がかかります。2週間から4週間あるいは3カ月ぐらいもかかる人がいるんですね。ところが、これを補助的に使う、あるいはこれだけでも本当に気分がよくなっていってしまう人もいます。
 そういうわけで、これで最後ですが、実は作業療法室に光をずっと敷き詰めるとか、リビングルームを明るくするという案も出ています。これを考えますと、夜の明かりや午前中の明かりをもうちょっと工夫していただくと、もしかしたら病院の意匠面にも先生方に役立てられるかなとちらちら考えていました。
 それからあとICUや、いろいろな病棟の設備にもう少しこんな光の応用ができるんじゃないかと考えています。一番いいのはのんびりと日光浴することだろうと思うんですが、少し私どもは忙し過ぎるのかもしれません。
 以上です。ありがとうございました。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 それでは、何かご質問がございましたらどうぞ。

(委員)
 どうもありがとうございました。
 光治療で、昼間ライトでするときに、午前2時間、午後2時間ぐらいの光の時間があったんですけれども、日光浴の場合、天気のあれにもよるかもしれないんですけれども、どのぐらいの時間で済むんですか。

(委員)
 天気のいい外というのは1万ルクス、2万ルクス、かなり明るいらしいですよね。そうしますと、時間が短くて済むようでした。さっきのコントロール実験では、5,000からちょっと欠ける、そのぐらいのまあまあ明るいという条件だったんですが、多分、もし自然光で外だったら午前だけで済むかもしれませんし。ちょうど掛け算ぐらいになるのではないでしょうか、明るさと時間とで。そこはまだ十分なコントロール実験になっていないんで、これからやるべきことかなと思っております。

(委員)
 ありがとうございます。
 もう1件ですけれども、日本は随分オフィスワークする人が多かったり、さっき言った地下で働く方というのはたくさんいると思うんですけれども、そういう意味では隠れたSADというのはたくさんいらっしゃるのではないかという感じがするんですけれども、その辺、何かデータがありましたら。

(委員)
 地下鉄の勤務者とか、それから運転手とか結構かかわっているんですけれども、うつが多いんですよね。ですけれども、それは中高年のうつ病が多いという、あの集団にも入ってしまうので、全く本当に地下鉄で光条件を見てやったというか、出されたデータではないと思うんですが、私は常々それは思っています。サラリーマンでも朝起きてすぐ地下鉄乗ってオフィス行ってこういうところで仕事しているというときには、光の量が足りないんじゃないかと思うんですよね。コンピュータ関連の人というのは、結構患者さんに多いです。

(委員)
 ありがとうございます。

(委員)
 そうすると、熱帯地方の人はうつ病が少ないんですか。日本だったら九州とか沖縄は。

(委員)
 いわゆるうつ病というのは少なくはないと思うんですが、こういうふうに見たときに、やはり気分の面で見てみますと、平均的に見て北の方の人がうつスケールが高いんですね。ですから、多分イタリアの人だとか地中海の沿岸の人ってとても元気ですよね。

(委員)
 そうしたら、うつ病になったら南に行けば治るということですか。

(委員)
 そういうわけで、さっき言った北極圏の人たちは何するかといって、今は飛行機で移動できますから、さっさとちょっと南に行ってきますと言うらしいです。でも、やはりそんなに会社を休んでもいられませんし。

(委員)
 もう一つだけ簡単な。
 昔から早寝早起き何文の得ということが言われてきましたけれども、個人的な経験でもそういう感じがするんですけれども、それは根拠があるんでしょうか、早寝早起き。

(委員)
 恐らく光を浴びて同時ぐらいに起きるというのは、生体リズムを整えるとてもいい信号になっていると思いますので、恐らく生体の機能がフルパワーで開拓されるのはやはり朝の光でしょうから、それがずれ込むと、全部ずれ込むかというと、例えば成長ホルモンのリズムや、高照度や体温がばらばらに何となくずれているということもありますよね。子供たちでわかっていることは、遅寝遅起きの子供はやはり振幅が低いですし、コルケゾールが夕方になってもなかなか下がらない。そんなことがわかっておりますので、やはり早寝早起き三文の得だと思います。
 科学が何を説明しているかというと、やはり本当だというのを説明しているのではないかと思いながら。ですから、恐らく私ども今後の何をやっていくかというと、それが妨げられているときにどうして妨げられているのか、それだったらどういうふうにこういう機器を応用するのかという方向で考えないと、これだけ便利になった文明を元に戻りましょうといって、それは不可能なことだと思います。そんなふうに考えています。

(委員)
 朝起きて日の光浴びる時、ちょっと浴びたぐらいでは余り効果がないわけですよね。だから、30分とか1時間とか、何かそういう目安はあるのですか。

(委員)
 大体患者さんにお話しするときは30分程度と言っております。そんなに時間とれないんですよね。そのときに一緒に、例えば運動効果を入れる。ですから、単にぽーっとしているのではなくて、ぐるっと30分回ってきなさいというと、そっちの方がもっといいと思います。運動効果としての体温上昇なども期待できます。
 それからもう一つ、朝食ですね。朝食をとること自体でやはり代謝を進めるし、体温を上げることになりますから。ですから、運動、休養、栄養というその3つはやはり人類の基本の本能として考えていただければいいんじゃないかと思います。

(委員)
 今の遅寝早起きとかそういうのがあるんですけれども、一番大事なのは血圧と、先ほど体温もありますけれども、お風呂にいつ入るかとか、そういうものはもっと大事というか、血圧及び体温を上げるお風呂との関係もあるのではないかと思います。その辺はいかがですか。

(委員)
 睡眠に対する影響、あるいはリズムに対する影響なんですが、確かに入浴を夜、寝る時間帯の少し前、しかもリラックスできるような温度で設定しますと、血圧も下がってきますし、とてもいい睡眠が得られます。
 そしてもう一つ、体温の方から申しますと、寝入るのは、やはり体温が下がってくる時期なんです。高齢者というのはなかなか下がりカーブがうまく急峻にいかないんで、体温の下降が妨げられていて寝つけないと。やたらと何か手足が冷たいなどと言っているんですが、あれは深部体温は高いままで手足が冷たいんです。放熱がうまく行われると体温が下がってくるということになりますので、お風呂をうまく使うとか、手足を温めるという、それも手足がぽかぽかすると眠るという子供をまさに応用するとよいですね。湯たんぽもいいです。もちろんお風呂に高齢者が入れればいいですが、施設なんかでは昼間に入れましょうということがあるんですが、生体リズムを考えると夜の時間帯に1人1人を入れてあげる…、そんなサービスをちゃんと考えて…、そういう世の中であっていいんじゃないかと私は思います。

(委員)
 それからもう一つ、植物の朝顔はいつ花を咲かせるかという本があって、植物の場合は体内時計があって、暗くなってからの6時間後に花が咲き始める。だから、朝顔も秋の朝顔は2時、3時には咲くんだということで、夏の朝顔はかなり遅く咲くといった、暗くなってからの時間をみんなカウントしているというのが朝顔なんかの例だということですけれども、それもやはり私たち人間も同じようなことですか。

(委員)
 そうですね。クロックとしての、明るくなるときのドーンシミュレーションとか、ダスクシミュレーションという、日が上るときと落ちるときとで別なリズムを支配しているんじゃないかというようなデータもあります。確かに、この生物リズムというのは植物から始まっているらしいと。リンネという植物学者です。
 大変参考にさせていただいてありがとうございます。

(委員)
 ちょっと最後にもう一つだけ。
 照明器具が、日本人は蛍光灯が好きであると。ヨーロッパは電球が好きである。それが何か睡眠とも関係がありますでしょうか。

(委員)
 確かに蛍光灯は昼間の光に近いし、電灯の方は赤色光に近いでしょう。考えてみると、日没、それから日照というあの光の条件というのは、まさに色、温度、それから輝度でしょうか、何かそれを組み合わせてうまく行うと、もう少し自然な生活に近づけるんじゃないかと思います。そして、蛍光灯はやはり明るいですから、コンビニが使っているのは全部蛍光灯ですよね。そんなわけで、もうちょっと改良が考えられると思うんです。ただ、売るときには明るい方がいいらしいです。そんな社会経済まで影響するような学問かもしれません。

(主査)
 ほかにいかがでしょうか。
 どうもありがとうございました。
 やはり人間は自然の中の人間というのが一番よろしいようでございます。どうも大変教訓的なお話、ありがとうございました。
 これできょうお二人のお話を伺いましたが、あとは本日の予定は終わりでございますので、事務局の方から少し説明をお願いいたします。

(事務局)
 既に皆様方には1月31日で一応任期が切れるということになっておりますので、事務的な手続を進めさせていただいております。大変ご面倒をおかけしておりますけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次回ですけれども、随分前にご予定をお伺いしている中では、3月5日の15時ぐらいからの時間帯というのが、山田委員と萩本委員にプレゼンテーションをお願いする予定ですけれども、そのお二人がご出席が可能で、かつかなりの先生方にお集まりいただけるようなスケジュールだったんですけれども、ちょっともう随分前のことでもございますので、改めて確認をさせていただきたいと存じますけれども、萩本委員と山田委員は3月5日の夕方というのは大丈夫でございましょうか。

(委員)
 私は大丈夫です。

(事務局)
 それでは、いずれにいたしましても、もう一度その確認をさせていただきますが、3月5日の3時ぐらいからというのを、一応仮に置かせていただければありがたいと思います。
 事務局からは以上でございます。

(主査)
 どうもありがとうございました。
 それでは、きょうの会議をこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。

午後 4時51分 閉会

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科学技術・学術政策局政策課資源室

(科学技術・学術政策局政策課資源室)