情報委員会(第17回) 議事録

1.日時

令和3年6月3日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. 当面の検討事項について
  2. 研究のDXの推進方策について
  3. その他

4.出席者

委員

安浦主査、相澤委員、奥野委員、川添委員、小池委員、後藤厚宏委員、後藤吉正委員、佐古委員、田浦委員、瀧委員、塚本委員、引原委員、長谷山委員、深澤委員、星野委員、八木委員、若目田委員

文部科学省

橋爪参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、黒橋科学官、竹房学術調査官、池内学術調査官

5.議事録

【安浦主査】 それでは、定刻になりましたので、科学技術・学術審議会情報委員会の第17回会合を開催いたします。本日もコロナウイルス感染症拡大防止のため、オンライン開催することにいたしました。
本会の議事は全て公開としております。報道関係者も含め、傍聴者の皆様もウェブ参加いただいておりますので、御承知おきください。また、通信状態等に不具合が生じるなど、続行できなかった場合、委員会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了解ください。
本日は、井上委員と美濃委員から御欠席の御連絡をいただいております。また、後藤吉正委員が1時間程度、星野委員が15分程度遅れて御参加の旨を伺っております。
事務局から配付資料の確認とオンライン会議の注意事項の説明をお願いします。
 
【齊藤情報科学技術推進官】 事務局でございます。議事次第に基づきまして、配付資料を確認させていただきます。
本日の配付資料は、ホームページまたはアップローダーのほうから既にダウンロードしていただいていることと思います。もしお困りのこと等ございましたら、事務局までお知らせください。
配付資料でございますが、資料1として「情報委員会における主な検討課題(案)」でございます。資料2として、深澤主査代理から頂いております「研究DXへの視点~AXIESの提言を踏まえ~」でございます。資料3として、相澤委員から頂いております「国立情報学研究所について~SINET/研究データ基盤と情報学研究~」でございます。資料4として、「研究のデジタルトランスフォーメーション(DX)」という資料でございます。
また、参考資料1及び2として、大学ICT推進協議会の提言と統合イノベーション戦略推進会議の基本的な考え方をおつけしてございます。
以上でございます。
引き続いて、オンライン会議の注意事項を申し上げさせていただきます。本日は、通信の安定のため、委員の皆様、発言時を除き、常時マイクをオフ、ビデオをオフにしてください。主査の安浦先生におかれましては、常時マイクをオン、ビデオをオンにしていただければと思います。御発言される場合は、手を挙げるボタンを押して御連絡ください。
安浦主査は参加者一覧を常に開いていただき、手のアイコンを表示している委員を御指名ください。
議事録作成のため、本日は速記者の方に入っていただいております。そのため、発言する際はお名前から御発言をお願いいたします。
トラブル発生時には、電話にて事務局の指定の番号まで御連絡をお願いいたします。
傍聴者の方には本日はZoomで御参加いただいております。システムが不調の場合は、後日公開する議事録を御覧いただければと思います。
以上でございます。
 
【安浦主査】 ありがとうございます。
何か資料の不備はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、本日は主に議題1の当面の検討事項について、それから議題2の研究のDXの推進方策について、という2つの議題を中心に進めてまいりたいと思います。
それでは、まず、当面の検討事項について事務局から御説明をお願いします。
 
【橋爪参事官】 それでは、資料1に基づきまして説明をさせていただきます。
前回の情報委員会におきまして、今後、情報委員会で検討を行っていく課題について議論をいただきました。また、その後、メールで一部の委員の方々からは御意見もいただいております。それを踏まえて、前回事務局から提案させていただきましたものを見直したものが資料1でございます。順次、改めて御説明をさせていただきます。
まず、情報委員会で今後検討していく課題としては、第6期の科学技術・イノベーション基本計画を踏まえた情報分野の戦略ということをやっていくという大きな方針については、特段、委員の先生の異論はなく、この方向でやっていくということかと考えております。
その中で幾つか課題があるわけでございますけれども、1つは研究のDXとそれを支える学術情報基盤の在り方でございます。それから、情報分野の研究開発課題という項目もございます。また、教育その他の分野との連携というのも検討課題ということでございます。
さらには人材育成確保の観点、これは研究人材のみならず情報基盤を担う人材も含めて、検討していく必要があるのではないかというお話もございました。
つきましてはこの4つの検討課題というのが当面我々として念頭に置いていくべきことではないかということでまとめをさせていただいております。これはいちどきに議論するというよりは、このテーマごとに順次検討を行っていく方向でいかがかというのが事務局からの御提案でございます。
今回議題に上げさせていただいているのが研究のDXとそれを支える学術情報基盤の在り方ということで、1つ目でございます。今後、主査とも御相談しながら、順次、次の課題等々に進めていければと考えてございます。
その横にある四角というのは、これら課題を検討していくに当たりまして、横串で考えていかないといけない点をまとめたものであります。セキュリティー・トラスト、あるいはカーボンニュートラル、国際等の視点。それから、データ戦略や半導体戦略、beyond 5Gへの取組等、こうした情報基盤、情報分野の様々な戦略との整合性あるいは連携というのをしっかり考えていくべきであるということでございます。
ただ、このセキュリティー・トラストやカーボンニュートラルというものは、こうしたものを実現していくという目的であるとともに、例えば研究開発課題の中でもこれに直結するような課題を検討していくなど、目的であると同時に課題でもあるというような性格を持っているのではないかという御議論もありましたので、我々もそのような視点で捉えていきたいと考えております。
それから、下の部分に書いてあるのは情報委員会本体というよりは、下部組織あるいは外部の組織と連携して検討する課題ということで、3点挙げさせていただいております。1つは次世代の計算基盤に関する検討、もう一つはネットワーク基盤に関する検討。そして、研究データ・オープンサイエンスの推進に関する検討ということで、特にデータの利活用ルールの観点でありますとか学術情報流通の在り方、図書館のDXの推進等につきましては、外部の検討の場というのも考えていく方向でいかがかということでございます。
こうした全体像を念頭に置きながら、もちろんこれは今後の状況に応じて適宜見直しも必要となると思いますが、進めていく方向でいかがかということで、前回の議論も踏まえてまとめさせていただきました。
それから、2ページ目でございますけれども、個別に前回の議論、あるいはメールでいただいた委員からの主なコメントを紹介させていただきます。
まず1点目としては、先ほども申し上げましたが、2050年のカーボンニュートラルの目標達成については、目的だけでなく、研究開発課題としても重要という御意見ございました。
また、人材育成に関しましては、1つは、初等中等教育段階の教育への大学の情報学の教員の貢献の視点が重要ではないか。また、研究だけではなくて、情報基盤の整備・運用を担う人材の評価、キャリアパスの検討が重要ではないかという御意見ございました。
また、イノベーションとの関係では、今回、基本法にイノベーションという語が入ったことも含めて、その視点を重視していくべきではないか。また、デジタルツイン環境を活用して、こうしたイノベーション創出がさらに迅速かつ量的にも大量に行える環境を構築していくということで、イノベーションを加速していくということが重要じゃないかという御指摘もございました。
また、データ利活用に関しましては、緊急時も視野に入れながら平常時から有用なデータを蓄積する、これは研究で生み出されるデータだけではなくて、社会の様々なデータを研究の視点からもきちっと整備しておくべきではないかという御指摘であります。
それから、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストの枠組みを実質化するために、データが付加価値を生み出して、社会で好循環していくような仕組みをつくっていくべきであるし、それを技術的に支える取組というのが重要ではないかというお話がありました。そして、そのためにはデータオーナーシップあるいはデータガバナンス等の在り方の検討も課題であるという御指摘がありました。
研究開発の課題に関しては、勝ち筋だけではなくて、日本が本来保持すべき技術という視点も重要だという御指摘がございました。
それから、DXの関係につきましては、本来、DXについては大学、国研の業務改革にもつながるようなことが重要であるということでありますとか、データ基盤等の様々な基盤が必要になってくるわけでございますが、単なる最初の構築だけではなくて、その後の運用のための持続的な体制、システムについてもしっかりと念頭に置いていくべきだという御指摘がございました。
以上、資料1の御紹介をさせていただきました。
 
【安浦主査】 橋爪参事官、どうもありがとうございました。
ただいまの御説明について御質問等ございましたら、お受けしたいと思います。それぞれ委員の先生方から、前回の会議の後、メール等で事務局にこの2ページ目の御意見等をいただきまして、どうもありがとうございました。どなたかございますでしょうか。瀧先生、どうぞ。
 
【瀧委員】 先ほどの御説明の中で、研究データ、オープンサイエンスの推進等に関する検討というところがございましたけれども、この中で、研究におけるデータの利活用に関するルールの整理、整備というのは非常に重要だと考えています。今までの実験系の研究等は、要するに自分でデータを作って、自分で解析して研究する。非常にクローズドな世界で行われてきているわけですけれども、ここで特に考えていかないといけないのは、多くの人が実験データを共有して使っていけるようにということかと思います。自分が最初に見つけたものは自分で解析して使うのは当然ですけれども、例えば、日本全体での研究力を底上げしようとすると、ここで皆さんがデータをいかに流通させて使うかということです。データを出した人もいい分析をされると褒められる、何かそういう仕組みづくりも併せて出てくるといいなと思います。
それがあると、研究のDXを支える学術基盤についても新たなニーズが出てくる可能性がありますので、今後皆さんで検討していけるというのがいいなと思っています。以上です。
 
【安浦主査】 瀧先生、どうも貴重な御意見ありがとうございます。データの提供者も、ある意味でのメリットが受けられるような仕組みというのをつけて、これは評価とかにも絡んでまいりますけども、今後非常に重要になってくるポイントかと思います。
ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。またこの会議の途中で思いつかれましたら、最後の討論の際に御発言いただければと思います。
それでは、次の議事としまして、研究のDXの議題に入っていきたいと思います。研究のDXの推進方策に関しまして、まず初めに、大学ICT推進協議会、AXIESと呼んでおりますが、こちらの代表も務めていらっしゃいます本会の主査代理をお願いしています深澤先生から、昨年12月にAXIESから出されました提言も踏まえて、少し御意見をいただきたいと思います。
深澤先生、よろしくお願いいたします。
 
【深澤主査代理】 では、資料を共有させていただきます。研究DXへの1つの視点として、AXIESからの提言も踏まえてお話をさせていただきます。早稲田大学の深澤と申します。今、安浦先生の御紹介にありましたように、大学ICT推進協議会、AXIESと呼んでおりますが、そこの会長をさせていただいております。ちなみに私は3代目の会長でして、初代の会長が主査の安浦先生でございます。
AXIESについて、御存じではない方もいらっしゃるかと思いますが、簡単に何をしている組織かを説明しますと、ICTを利用した高等教育・学術研究機関の教育・研究・経営を飛躍的に強化するためにどうしたらいいのかというところを考えてきている団体でありまして、2011年に作られました。ですから、10年の歴史しかないのですが、現在138機関、ほとんど大学でございますが、あと企業78社の賛助会員を得ておりまして、この数はどんどん増えてきております。
2つの車輪は年次大会と部会の活動です。年次大会は毎年1,400人を超える方に御参加いただいておりまして、部会は現在14部会が動いております。
このAXIESの最近のアクティビティーを2つだけ紹介していきますが、1つは、教育・学習データの利活用ポリシーのひな形というのを出しました。これは何かというと、日本学術会議の提言も含めまして、各大学で教育・学習データがどんどんたまってきている。それらを活用するときに、例えば個人情報的な側面も含めてどうすればいいのかというものでございます。
それから、今日お話をさせていただくのは、上にあります今後の大学における情報環境の整備の在り方に関する提言というもので、これはあくまでも大学DX全体を含んでおりますので、教育や研究のDX、大学の事務DX全てを含んでおります。これは大学デジタルトランスフォーメーション・タスクフォースというタスクフォースを作りまして、京都大学の梶田先生に主査をお願いしております。
3つの要素からできておりまして、まずは2030年、約10年後に大学の情報環境というのはどうなっているべきであろうかということを考えまして、それを実現するために大学はどうすればいいのか、かつ、政策立案者にはどういうことをお願いしていけばいいのかということが3本立てとなっています。
2030年どうなっているか、細かいことは分からないのですが、大体この4点に集約されるのではないかと思っております。
1つは、運営母体としての大学間の共同事業体、今までのように1大学が完全に独立してやっていくのではなくて、複数の大学が協働して運営していくことが普通になってきているのではないか。
それから、大学経営における情報戦略が今まで以上に育ってくるのではないか。
それから、ICT人材、キャリアパスが多層化して、我々はリサーチエンジニアと呼んでおりますが、博士号を持ち、大学だけでなくいろんな企業のICTを引っ張っていくような職種が出てきてほしいと思っております。
それから最後は国際通用性、国際的に通用してほしい。
そのために、2つ目でございますが、大学への提言として、情報戦略をどうやって立案すればいいのか。集約化・共通化・協働化をどうやっていけばいいのか。それから、オープンスタンダードやオープンソースをどうやって使っていけばいいのか。それから、こういうことが大学経営にどうインパクトを与えるかについて評価をしなければいけない。それから、サービスポートフォリオをつくりましょうということです。
それから先ほどありましたように、人材強化もしなければいけないということで、細かいことをお話しする時間はございませんが、答申の中では、情報戦略の立案としては、例えばネットワーク基盤をどうやってつくればいいのか、あるいはクラウドをどうすればいいのか等、研究に関わることから教育に関わること、それから大学の事務に関わることまで書かれております。
政策立案者への提言というのが3本柱のもう一つでして、そこの中ではキャリアパスをつくってほしい、それから共通基盤開発を強化してほしい。まさにこの委員会で扱っていくようなNIIやICTに係る協働事業体等で大学を横断するような組織を強くしていかなければいけない。
それから、産官学で最先端の設備を実現するとともに、予算を安定的に確保し、それから、結構重要だと思っておりますが、情報環境の格差を是正していかなければいけないので、そこをうまくコーディネートしなければいけないとなっております。これがAXIESから提案されている大学DXの答申の概要でございます。詳細につきましては、今日お配りしている参考資料もしくはAXIESのホームページに掲載してございますので、そこを御覧いただければと思います。
ここからは私の個人的な意見です。現状どうなってきているかといいますと、この1年ちょっとの間、様々な形式でのネットワーク授業が実施されました。その結果として、膨大な量の教育データが収集、蓄積されています。かつ、教育データだけでなく、先生が作った教育コンテンツもたまってきています。当然、これら教育データの分析結果を教育に反映しなければいけませんし、それから教育コンテンツは今後の授業で活用していくことが想定されます。
ただ、それは自分の大学だけではなくて、多くの大学でうまくシェアしていくことが重要かと思っております。そこは、実はこのシェアしていくとこというところに視点を向けますと、将来的な単位互換だとか、あるいはMOOCの活用だとか、ここに道があるのかとも思っております。
各大学で共有していくためには何をしなければいけないかというと、当然、大容量の教育情報データベースが必要なわけで、これができれば、データ駆動型、このデータを使った教育、あるいはその教育に関するデータ駆動型の研究によって使うことができるでしょう。これを広範囲にわたる研究へ拡張しましょう。つまり言いたいことは1つでして、今、教育の世界でデータがたまってきていて、データ駆動の教育、あるいはデータ駆動の教育に関する研究が非常にやりやすい環境になってきたということです。
それはコロナの影響が強く反映されている。これをほかの分野にも反映させなければいけないということで、もう少し反映するには何が必要かというのを少し見てみますと、まず、当然、先ほどお話ししたように、基盤のデータプラットフォームが必要でしょう。重要なことは何かというと、技術面だけではなくて、非技術面、例えばどうやって使っていくかのガイドラインだとか、それを使う人の人材育成だとか、それから技術面と非技術面にわたること、どうやってデータ管理をしていけばいいのか、個人情報はどうやって管理していけばいいのか等、技術面だけではないということが1つです。
それから2つ目は、連携するといったときに、共有と分散、どういうふうに共有して、どういうふうに分散させていけばいいのだろうか。1つは研究領域ごとで分野別のリポジトリみたいな在り方はあるでしょう。ただ、科研費の審査区分みたいに全部をうまく割るのではなくて、分野の提示方式、この指とまれ方式、こんな分野、こんな分野とぽつぽつ立ち上げていって、やがてそれが全分野を覆うような形にせざるを得ないのかなと思っております。
もう一つは、研究組織ごと、大学ごとに、今まで機関リポジトリというのがありました。ただ、それは今もちろんありますが、在り方と実装というのは考えなければいけないと思っております。機関リポジトリというのは、昔は各大学で一生懸命サーバーを立ち上げまして、そこで論文データ等を持っていました。
ただ、今や多くの大学はNIIが提供しておりますJAIRO Cloudに移ったり、あるいはもう少し先の話でいえばGakuNin RDMに移ったりしており、つまり、何があるかというのと、それをどうやって実現するのかというのはきちんと分けて考えたいと思っております。
最後は、研究について、研究をするほうから見ればライフサイクルがあります。ライフサイクルをどう考えるかは色々あるでしょうけども、テーマを決めて、文献を調べて、研究して、評価をして、論文にして出版するのだと思うと、このライフサイクルの中で今まで問題となっているのは、例えば評価の再現性、オープンサイエンスの話です。それから出版、これオープン化、APCを払ってでもオープン化するという話があります。
それ以外に、もしこういう環境が出てきたときには、今まで文献調査をすればよかったのですが、これからはデータ調査みたいなもの、この分野でこんな研究をしようとすれば、既にどんなデータがあるのかという調査だとか、あるいは研究を実施していくときに、不正防止のために、研究の中間データもきちんとどこかに改ざんできないような形でアップしましょうという話がありましたが、そういうときにも使えるのかと思っております。
終わりにですが、今日は短い時間ですが、前半はAXIESの提言の話をさせていただきまして、後半は研究DXの1例として、データ駆動型の研究に必要なファクターについてお話をさせていただきました。
ただ、そんなにうまくいくと思っていません。うまくいかないと思っている一番の理由は、研究者というのは自分の研究スタイルを持っています。それに対して大学は基本的に口を出せません。論文を書けとは言えませんが、どういうふうに研究しろとは今まで言ってきておりません。しかも、いわゆる大先生ほど自分の研究スタイルへの執着が強いのだと思っています。
このような環境で研究のDXを進めるためには何が必要かというと、やはりその慣性を変えるためには何をしなければいけないのか。研究のスタイルの変革を促進するためには何が必要なのか。多くの研究者に納得いただけるためには、研究DXって本当に必要なのか、データ駆動型の研究は本当に優れているのかというようなきちんとした論証ができなければいけないと思っています。
もちろん、このようなことを無視していて、やがて世代交代を待って、新しい世代の研究者が生まれてくるのを待つというのも方策としてはあるのかもしれませんが、30年とか50年というスパンがかかってしまいますので、これはいかがなものかと思います。となると、何が必要かというと、成功事例をやはり公表して、そちらに向けて研究者全体を引っ張っていくことが必要かと思っています。
となると、プロトタイプの研究を進めていって、それでうまくいった、あるいはこういう問題があった等を、研究の結果ではなくて、研究のスタイルに対する積み重ねが必要なのかと思っております。
かつ、それを進めていくためには何らかのインセンティブが必要かなと思っておりまして、呼び水としての研究費も必要なのかなと思っております。
以上でございます。何か御意見等がございましたら、お受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【安浦主査】 深澤先生、どうもありがとうございました。
今回のコロナを災い転じて福となすということで、そこから入って教育自身を研究対象にした研究のDXから始めて、具体的に問題を、先ほど瀧先生からも御指摘いただいたような問題も解決できるのではないかというご提案でした。ただ険しい道であるという御指摘もございました。
それでは、色々御意見をいただきたいと思います。奥野先生、どうぞ。
 
【奥野委員】 京都大学の奥野です。大変興味深いお話をありがとうございます。
今のコロナ禍でDXというか、遠隔で様々なことをやらなければならないのを余儀なくされている、社会的にされているのですけれども、ある意味、DX化の、ちょっと卑近な言い方をすると、大規模の社会実験が世界的に行われているような状況だと思うのです。
そういう中で、今の状況の中で何かよくて、何が不便でというような、そこの検証というのが実は最もこの数年でやるべきことではないのかなというように思っています。そういう中で、次に、具体的にDXをするために何をやらなければならないのか、DXの限界はどこまでなのかというのが分かるのではないかと思っておりますが、そのあたりの検証等を行うような活動の御計画というのはおありなのでしょうか。
 
【深澤主査代理】 私自身は、計画そのものは持っておりませんが、ラーニングアナリティクス等を専門にやっておられる方もいらっしゃいまして、要はここの矢印は、データがたまっていったときに、そのデータの中の何が有効であり何が有効ではないのかの分析をして、有効なものを今後の教育に反映させていくというところです。今御指摘いただいたのはここだと思っておりまして、これに関しましては、御存じかと思いますが、京都大学でも盛んにやられておりますし、あと北海道大学とか九州大学でも色々な研究成果が上がってきていると思っております。
以上でお答えになっているでしょうか。
 
【奥野委員】 ありがとうございます。
 
【安浦主査】 ほかにございますか。星野先生、どうぞ。
 
【星野委員】 慶應大学の星野と申します。私は教育経済学等の研究をしておりますので、ICT投資の費用対効果ですとか、あとデータ駆動型の教育については非常に重要な取組だと思います。非常にすばらしいと存じます。
教育ももちろんそうでございますが、それ以外に例えば経済学とか心理学とか社会学等の実験とか調査とか、そういったものの例えばDX化みたいなもの、これまでですと紙媒体でやったりしていたものを、一括でDXでやるとかということも非常に重要ですし、あとは、経営企画的な研究、例えば教育機関を組織と考えて、組織のアウトプット、これがどのような組織形態等によって変わるのかという研究というのは非常に重要だと思いますが、そういう観点でも多分いろんな研究が可能かと思います。
恐らくその際に重要なのは、教育や経営的な研究でもそうでございますが、ログデータ等だけではなくて、どういった機関から取られているデータだとか、その機関自体の情報だとか、どのような組織形態によってそれが実現されるのかといったようなメタデータ的なところも同時に集めていただけると、研究者としては非常に重要です。色々な研究ができると思いますので、既にかなり整備はされていると思いますが、ぜひそういったところも一緒につけていただくような形で整備していただけるとありがたいと存じます。
 
【深澤主査代理】 ありがとうございます。AXIESの提言は大学への提言なのですけど、今御指摘いただいたのは、4番、5番のところをしっかりとやるべきである、ということかと思います。そのとおりだと思います。
 
【安浦主査】 ありがとうございます。今、星野先生からお話がありました人文・社会系の学問については、これまでアンケートベースが多かったのに対して、デジタル技術を使った新しいいろいろな情報の集め方が少しずつ始まっておりまして、例えば、今回のコロナの問題に関して、文部科学省も1月から3月にかけて全国の約3,000人の学生にアンケートを取って、1,700人ぐらい回答したらしいです。その中には、学習の問題、遠隔講義はうまくいっているかとかいう問題とか、家にいないといけないので心の病の問題だとか、生活がどれくらい苦しいかとか、そういった情報が全部集められて、整理され、5月25日に文科省のホームページにも出ております。そういうことが中央官庁でもやられるようになったということ自身がある意味、DXが少しずつ始まっているという感じを私も持っております。少し付け加えさせていただきました。
田浦先生、どうぞ。
 
【田浦委員】 お話ありがとうございました。リサーチエンジニアについては、私もすごく重要だと思っております。この議論にも参加させていただいて、リサーチプログラマーやリサーチエンジニアと呼ばれる方々が今すごく必要とされているというところは、全くそうだと思っています。
政策提言というか、文科省に例えば何か具体的な提言をいう場合に、どこがボトルネックになっているか、簡単にできないことで本当に国にやってほしいことがどこであり、どこまでは本当は大学の中で頑張ればできることなのかというあたりが、私も何か事あるごとに、重要だ重要だとだけ言っていて、大学の中では何もあまりできていないところを少し反省しながら日々過ごしています。例えば給料ですね。給料の問題だとすると、それは学内の反対を押し切って、これは重要だから民間並みの給料このぐらいって、そこを大学の中で頑張ればいいという話なのか。それとも、もう少しそういう職種が色々と全国の大学で整備されたりして、職の互換性が全国でないといけないという話なのか、それとも何かそういう制度をやろうと思ったときに本当に規則的に足かせとなっているところがあるのかとか、そのあたり議論を深めようと思ったときにどこに焦点を当てればいいのかというのは、もし御意見がございましたらお願いします。
 
【深澤主査代理】 ありがとうございます。田浦先生はこのワーキンググループのメンバーとして色々御尽力いただきました。今の御質問に対しての私なりの答えは、一番重要なのはキャリアパスをどうやってつくっていくのかだと思っています。
短期的に、例えば5年間給料を払えるではなくて、5年だったら5年たった後、その人はどういうふうな職種、あるいはどういうふうな身分になっていくのかというところが見えていないと駄目だと思っていて、そこの設計がとても難しいんのではないかと思っております。
 
【田浦委員】 産学連携ということだと多分、給料が一番、大きい要素になるのかと思っています。あと、大学の中でのキャリアパスであれば、ごく少数の大学だけではなく、色々な組織でそういうポジションがデフォルトとしてあるのが重要なことなのかなと思うのですね。
 
【深澤主査代理】 そうですね。
 
【安浦主査】 ありがとうございました。
一応、また後で御質問があれば受けたいと思いますけども、もう1件、お話を用意しておりますので、2番目の御説明に移りたいと思います。2番目は、国立情報学研究所、NIIの副所長の相澤先生から、NIIで運用しているSINETやデータ基盤等について、いわゆる研究ではなく、サービスに当たる部分になりますが、その部分を中心にNIIの活動について御説明いただきたいと思います。
相澤先生、よろしくお願いいたします。
 
【相澤委員】 よろしくお願いいたします。画面共有をいたします。
それでは、説明をさせていただきます。国立情報学研究所の相澤です。まず、簡単な自己紹介となりますが、私は少し古い話ですが、卒論でNIIの初代所長でもある猪瀬博先生の研究室に配属になりまして、単純なキーワード検索を超える論文検索システムの実現というテーマをいただきました。学位を取った後、学術情報センターに就職しまして、論文の解析は今でも私の研究トピックの1つとなっております。というわけで、現在事業サービスに直接に関わってはいないのですが、長年のNII愛にあふれる立場ということで、僣越ながら御紹介をさせていただきます。
国立情報学研究所は、御存じのない委員の先生もいらっしゃるかと存じますが、大学の共同利用機関であります。大学の共同利用機関というのは各研究分野において、個別の大学では整備・維持が困難な研究リソースを全国の研究者に提供し、共同研究を推進することがミッションになっています。
ここで研究分野が情報学だということで、国立情報学研究所自体は大学共同利用機関の中で非常にユニークな立ち位置にいます。情報学の研究分野自体が他の学問領域の中で融合研究を次々に生み出しているということもありますし、その提供する基盤サービスというのもあらゆる学術分野を支えるというものになっています。情報学の分野にとどまらず、全ての学問分野を支えているという位置づけです。
そのようなNIIを支えている理念というのは、車の両輪という考え方で、研究と事業を車の両輪となすものです。NIIの創設時の準備委員会では、医学部には病院が必要であるように、情報学には情報基盤が必要であるというお話をいただいたのを覚えております。
本日これから簡単に御紹介いたしますが、GakuNin RDMというサービスが本年2月に本格運用スタートし、そして、SINET6の運用が来年2022年4月にスタートを予定しているということで、今、私どもは次世代学術研究プラットフォームに向けた始動期という時期でございます。以降はその現状と今後の計画について簡単に御紹介をいたします。
まず、SINETの概要についてです。SINETは全ての国立大学を含む全国の975の参加機関をつなぐ全国規模のネットワーク基盤であります。基本的には、データの移動を伴う全ての活動を支えているもので、非常に幅広いインフラとなっています。SINETは、IT技術はもちろん進歩しますし、コミュニティーからも色々な要望があるということで、段階的に拡張をしていまして、先ほど申し上げましたとおり、今、SINET5からSINET6への移行期になります。
以下では、まず、SINET5の現状、そしてSINET6の予定の順番で御紹介を申し上げます。
SINET5の現状ですが、SINET5は全国のネットワークということで、全都道府県にSINETのデータセンターを設置し、100ギガで結ぶというものでございます。2019年12月には世界初の長距離400Gbps回線を東京-大阪間で導入しています。
また、国際回線については2019年に全てを100Gbps化していて、この図では少し分かりにくいのですが、北極側から見ると、ニューヨークとアムステルダムも結んで、ぐるっと一周する形になっていて、世界初の地球一周高信頼化を実現したということであります。
また、SINETは最先端のネットワーク技術を適用していて、それを示すものとして、例えばサイバーに対する高い安定性や、ここにありますとおり最先端の実証実験などがあります。
SINETでありますが、超高速である、あるいは高信頼性を実現しているということに加えまして、キラーサービスとなっているのは、セキュアな通信環境を実現する仮想ネットワークVPNのサービスです。このVPNについて、例えばオンデマンドのVPNサービス、あるいはSINET直結クラウド、セキュアモバイルサービスなどにも展開しているところです。
こちらが、SINETの利用例、様々な研究分野、大型研究、ハイパフォーマンスコンピューティング、核融合、あるいは地震研究、リアルタイムな津波予測、天文研究、「はやぶさ」、そして医療、遠隔手術支援ロボットなどの様々な利用をいただいているところでございます。
こちらがSINETの直結クラウドで、参加機関が商用のクラウドサービスを高速・安全・低価格で利用するためのクラウドとなっていて、310以上の加入機関に提供いたしております。
こちらはSINETモバイル機能で、これは、これまでのネットワーク、線型のSINETでカバーできていなかった遠隔地や広範囲のエリアや移動体などに対して、面の形でセキュアなモバイル通信化を提供するというもので、センサー等から発生するデータを大学等のサーバーまでセキュアなVPNによって転送可能というものです。このモバイル機能については2018年12月から公募によって実証実験を開始していて、多くの利用ケースが蓄積されていて、今後に向けても期待が集まるところであります。
以上、SINET5の簡単な御説明でございました。
来年予定しているSINET6については、これに対して機能の拡張を行っていくということで、幾つかポイントがございます。簡単にご紹介しますと、全国のノードDCを400ギガでつなぐ、あるいは拡張DCの設置、それから国際回線の帯域増加、帯域をシンガポールへ拡大。それから、5GモバイルSINET、NFVとルータによる柔軟なサービスということで、簡単な図をお手元の資料には載せていますが、時間の関係で項目のご紹介のみにとどめたいと思います。
以上がSINETの概要の説明でございました。
次に、研究データ基盤の概要について簡単に御説明をいたします。研究データ基盤につきましては、様々な国内の科学技術政策が進む中で、NIIでは2017年4月にオープンサイエンス基盤研究センターを設置して、この基盤構築に取り組んでおります。
こちらが現在の研究データ基盤のコンセプトを表す図となっています。各所で使われているので、御覧になられた先生方も多いかと思います。
ややビジーなので、簡単にすると、3つの基盤を作りましょうと。データ検索基盤、データ公開基盤、データ管理基盤を作っていくというコンセプトであります。
これらについて、ごく簡単ではありますが、見ていきます。まずデータ検索基盤ですが、データ検索基盤の役割というのは、研究者による発見のプロセスをサポートするというものであります。データ検索基盤として、NIIでは年間6億ページビューをいただいている論文ポータルCiNiiというサービスがありまして、このCiNiiにデータ検索機能を持たせるという形で実現をします。2020年の1月には試行版が、11月にプレ版が完成しています。
データに限らず、いわゆるサイエンティフィックエンティティーと呼ばれるプロジェクトや成果物、またファンディングエージェンシーのような全てのエンティティーの検索を可能にするようなデータ基盤を構築するというものであります。
次に、2番目の基盤であるデータ公開基盤です。データ公開基盤は現在の図書館に近い基盤ではないかと思います。役割としては、研究データに、例えば永久識別子を付与する。あるいはランディングページを提供する、アクセス統計をカウントする等があります。
このデータ公開基盤については、現行JAIRO Cloudというサービスがあります。このJAIRO Cloudというのはオープンアクセスリポジトリ推進協議会JPCOARとNIIが提供する機関リポジトリ環境提供サービスで、700程度の機関が現在利用しているのですが、この文献リポジトリを中心として機能を実現しているこのJAIRO Cloudにデータリポジトリも合わせるという形で開発を進めているところでございます。例えばマルチテナント機能とかワークフロー機能と呼ばれるものがあります。
次に、3番目がデータ管理基盤、GakuNin RDMと呼ばれるものです。最初の2つの基盤、データ検索基盤とデータ公開基盤が、NIIが既に実績のあるSINET、JAIRO Cloudというサービスを展開する形で実現するのに対して、データ管理基盤はゼロからのスタートでの実装、開発となりました。急ピッチで開発を進めて、2021年2月に正式運用開始に進んだところです。
このGakuNin RDM、データ管理基盤というのは多様なサービスを実現しているものでありますが、大きく分けて、研究者向けのサービスと機関の管理者向けのサービスというのがあります。研究者向けのサービスは、認証サービスを利用したシングルサインオンで、1回サインオンすると、例えば、研究室で利用可能な複数のクラウドや外部ツールをつなぐとか、あるいは自分が所属している複数の研究グループを切り替えてデータ共有が柔軟にできるといった機能を実現したものです。
機関管理者向けの機能としては、研究書籍の保存機能、あるいは組織内で利用するストレージや連携サービスを接続する機能があります。
研究データ管理基盤、GakuNin RDMは今24機関に御利用いただいていて、その実証において、例えば大学経営統合に向けたIT化とか、あるいは生命科学分野の研究不正防止などのユースケースの蓄積が進んでいるところでございます。
少しスライドを進めまして、NIIではオープンサイエンスの推進のための人材育成のためのコンテンツや学習環境整備にも取り組んでいるというのがこちらのスライドとなっています。
以上が現状の3つの基盤の話でしたが、次に、次世代の研究データ基盤に向けてということで若干お話をさせていただきます。3つの研究基盤というのはデータ管理、公開、検索と1つの直線的な作業フローの上で、研究データを扱う上で必要な機能を実現しているわけですけれども、例えば、実際にこれらの基盤を各研究分野でカスタマイズしながら共通基盤を有効活用していくとなったときには、これを円にして、研究データのサイクルの中で必要となる機能を判断しながら実装、強化していく必要があるということです。
それで、そういった機能は何があるかということで、利用者のニーズに応える形で、3つの基盤に加えて、管理、蓄積、活用、流通、信頼、育成という6つの機能を策定して、分野での利用の促進や組織内での意義の強化を図るというのが、次の研究データ基盤に向けた方向性となるというふうに今はなっております。
こちらが次世代研究基盤のコンセプト図であります。先ほど申し上げたとおり、データガバナンス機能、セキュア解析機能、データプロビナンス機能、キュレーション機能、そしてセキュア蓄積環境、人材育成基盤という6つの機能を合わせて次世代研究基盤を構想していこうということです。
以下は若干私見を交えて言いますが、ただ、特に研究データ基盤は始まったばかりで、どこまでを拡大するものか、どこまで到達すれば一区切りなのかということもまだこれからの状況ではあります。
はっきりしているのは、やるべきことはたくさんあるということです。自動車が制御できれば、自動運転ができるわけではないというのと同じ意味で、データがコンピューターに保存できれば活用ができるわけではないという意味で、非常に多くのことを検討していく必要があると感じています。
そういう意味では、DXのコスト目算が恐らく非常に大きなものであるということは、議論の中でよく意識することが重要だという気がしております。
最後に、まとめといたしまして、この次世代学術研究プラットフォーム、これは最初に上げさせていただきました図ですが、このような形で、今、SINET5とこの3つの基盤の研究データプラットフォームから、この右側の図へと移行している。この中で、例えばネットワーク基盤と研究データ基盤を融合することが必要であるとか、あるいは利用者が機関、図書館、基盤センターからさらに研究グループや研究者にと広がっていく。あるいは、その利用が人間だけではなくてコンピューター、つまり、データとそれを検索するプログラムが不可分な形で流通するので、コンピューターが自律的にデータを読む必要がある、コンピューターあるいはAIリーダブルなデータをどうやって取っていくかということが問題になってくるところではないかと思います。
最後に、車の両輪に戻りますが、NIIは情報学の分野で、情報学研究と学術情報基盤を両輪として、多様な研究分野を支える情報学の大学共同利用機関としてミッションをいただいております。それを踏まえて、それを生かすためにはどうすればいいかというのが、課題としてここに挙げさせていただいた項目です。
特に、5番のコロナ禍で動きが加速化した教育関係、教育分野における新しいニーズについては、先ほども議論がございましたが、どうすればいいかですとか、データ基盤に対して既存の枠組みを超えたリソースの増強や、先ほど議論があった優秀なテストリサーチエンジニアの方々のキャリアパスは、皆様特に知っている問題です。
以上で発表を終わらせていただきます。
 
【安浦主査】 どうも相澤先生、本当に膨大な内容を短時間にまとめていただきまして、ありがとうございました。
 
【相澤委員】 急ぎ足で申し訳ございません。
 
【安浦主査】 いえ、こちらが時間をちょっと短く設定し過ぎて、大変申し訳ございませんでした。
何か御質問あればお願いしたいと思います。奥野先生、どうぞ。
 
【奥野委員】 京都大学の奥野です。恐らく想像を絶するぐらいの御苦労で全ての分野の基盤をつくられていると思うのですが、私自身医学部の者ですので、12ページの医療情報のバックアップ等の取組について少しお伺いしたいと思っているのですけれども、こちらはバックアップというふうに書かれているのですが、このバックアップしたものを、例えばAI研究に用いる等の利活用に持っていくところのコンセプト等はお持ちでしょうか。先生の分かる範囲でお願いします。
 
【相澤委員】 早速難しい質問をいただいてしまいましたが、そのあたりがまさにこの研究データを分野に展開していくという話なのではないかと思います。バックアップの部分は病院間の例えばセキュアなデータ転送で行うということですが、むしろ奥野先生に教えていただきたいところです。直接のお答えになっておらず、すみません。
 
【奥野委員】 医療データを使ったAI研究等ですと、もはや本当にオールジャパンでそのデータ共有をしていく、場合によっては世界も含めて共有しなければ、多分本当に利するものにはならないような状況でございます。そういう意味で、誰が全国統一をしてくれるのかというところが非常に医療分野の皆さんは期待しているところで、そういう意味では、NII、SINETをベースにして、この標準でやってくださいというような形でやっていただけると、私としては非常に良いと常々思っていました。そういう中で、特に私が問題点と思っているのが、どうしても病院等というのは厚労省管轄になりまして、そうしたときに省庁間の問題がいつもある。これは厚労省のプロジェクトだから、というような部分というのがまだまだ厳しいのではないかと思います。
恐らくこの取組はAMED等の厚労省管轄の予算の範囲の取組だと思うのですけれども、何かそういう部分で、これもまさに色々な省庁をまたいだ取組だと思いますが、何かそういう省庁をまたいだところの不便さとか、先生方が感じられている御意見等ございますでしょうか。
 
【相澤委員】 私が申し上げてよいか分からないのですけど、AMEDの予算というのはNIIとしても初めて参画して非常に力を入れて頑張ったものですが、やはりその予算が切れると、そこまでになってしまって、あとはやってくださいという状態は非常につらいです。そのため、基盤という意味では、獲得した研究予算でかろうじて動いていくというよりは、もうちょっとステーブルなものが必要だというふうに議論が行くべきという気がします。
 
【奥野委員】 まさに先生がおっしゃっていただいたところで、気づいたのですが、例えば医療系の研究費というのはAMEDで統括されて、主に文科省、厚労省、経産省の3省庁の医療系予算をAMED側で統括をして、そこからファンディングするというような形式を取られているのですが、情報系の予算というのも、同じように、省庁をまたいで情報系のファンディングエージェンシーのようなものを作って、NIIかもしくは他の同様の機構というのがひょっとしたら必要ではないかなといました。
恐らくこのSINETの取組で様々な省庁に関係する全ての基盤を担っておられると思いますので、そういう意味では、こちら側で情報系として統括するようなファンディングエージェンシーみたいなものがあれば、それをベースでNIIさんのこの基盤構築事業を進められるのが一番いいのではないのかと、ジャストアイデアですけれども、思いました。ありがとうございます。
 
【相澤委員】 御意見をいただき、ありがとうございます。
 
【安浦主査】 奥野先生の今のお話は、今後の議論の1つの大きなテーマになり得ると思いますので、少し預からせていただきたいと思います。ありがとうございます。
それでは、引原先生、お願いします。
 
【引原委員】 京都大学の引原です。このシステム立ち上げは本当に御苦労さまです。これまでの経緯もよく知っていますので、大変だなと思いながら拝見しておりました。
それで、お伺いしたいのは、24ページで研究基盤データの3つのCiNii、GakuNin RDMとJAIRO Cloudでトライアングルになっているものがありますけれども、それぞれは確立してきたと思うのですが、先ほど深澤先生の話にもありました研究サイクルをぐるっと回すためのフォースを、この研究データ基盤の上で何か考えていらっしゃるのでしょうか。
 
【相澤委員】 ぐるっと回すという意味では、例えば、JAIRO CloudからCiNiiのほうにメタデータをアップロードする仕組みを持っております。
 
【引原委員】 それは、データ共有という意味ではそうですけれども、例えば、研究者がこれを使っていったときに、データを取っている人がほかのところへ回っていかないといけませんし、研究者を動かすためにはどういう仕掛けをお考えでしょうかということです。
 
【相澤委員】 ありがとうございます。私の説明が足りなかったかもしれないですけれども、それを踏まえて、最後に示したこの3つの基盤に加えて、6つの機能を強化していこうという次世代に向けての発想になっているということでございます。
 
【引原委員】 そういう意味ですか。なるほど。それを聞いて分かりました。
もう1件ですけども、今のトライアングルの中で、データに関しては、最近データジャーナルのようなものがありますけども世の中の色々な動きからすると、JAIROが持つのはパブリッシュされた論文に対するエビデンスデータを回すような形になりますし、データだったらデータに対するデータジャーナルを置いておいて、それに対する論文をつけていくような流れになると思うのです。
これの上位階層というのが何か出てこないといけないと思うのですけれども、そういうことはどうでしょうか。上位というのは、データがあるだけではなくて、データジャーナルがあるような感じなのですけども。
 
【相澤委員】 御指摘ありがとうございます。
まず、本当に複雑だと思うのですけれども、データ管理基盤の中の機能として、例えば、実行可能なプログラム、ジュピターノートのようなデータとプログラムをペアにしてディストリビュートする枠組みは今でも小さなものはあるので、それらを通して、例えば、計算基盤あるいはプログラムと一緒にデータを共有していく。あるいはデータ自体が公開できないものであった場合に、プログラムだけを流通して、データの公開自体は非公開データもデータ管理基盤の中には管理する内容として扱っていますので、そういったところをうまく組み合わせるなど、様々な手段で・・・。
 
【引原委員】 なるほど。分かりました。ありがとうございます。ちょうど間を埋めるようなものを置いていくということですね、ありがとうございました。
 
【安浦主査】 あと、八木先生と後藤厚宏先生が手を挙げていらっしゃるので、お二人だけ御質問受けたいと思います。八木先生、どうぞ。
 
【八木委員】 八木です。相澤先生ありがとうございました。
これからのこういうデータの考え方、特に学術研究のデータは、学術研究の中で研究と教育という観点でシェアされるだけでいいのかと思うのです。先ほどのスライドの中にも産学連携という言葉も含まれていました。多くのデータはその中でうまく使えて、システムができればいいと思うのですが、先ほどの奥野先生の話のように、人のデータという話になってくると、この間のAMEDの事業では、学術研究で集めたデータをそのままでは企業でなかなか使えない等、課題が残って前へ進めない部分がありました。
長期的に考えるなら、その部分を真剣に考えないと、ヒューマンデータの利活用がうまく進まないだろうという気がします。それはおそらく、喜連川先生もかなり考えていらっしゃると思うのですが、その辺り、NIIとしてはどう考えていくのでしょうか。
私はもっと積極的に、学術、医療も含めたそういうデータが民間を含めてイノベーティブに使えるような仕組みがNII中心に作られると、日本はもっと強くなると思うのですが、いかがでしょうか。
 
【相澤委員】 それは非常に重たい宿題でございますが、取りあえずできることとしては、税金が投入されている研究予算のかかったデータはパブリックのものであるということで、まずは、学術界のデータをオープンにすることで、その価値を知らしめていくというような、できるところから取り組んでいくという方針を取らざるを得ないということだとは思います。
ただ、ヒューマンデータの利活用について、八木先生は大変苦労されていらっしゃることと存じます。また皆様と協力しながらということで、この委員会でもぜひ御議論を賜ればというところでございます。
 
【八木委員】 安浦先生、何か面白いことできたらいいですよね、そういうの。
 
【安浦主査】 この問題もやはりこの委員会で積極的な、答申ではないですが、提言のようなものを本省のほうに出していきたいと思いますので、また後々議論をよろしくお願いいたします。
それでは、後藤厚宏先生、お願いいたします。
 
【後藤(厚)委員】 ありがとうございます。後藤厚宏でございます。相澤先生、詳しい内容をコンパクトにありがとうございます。
私自身、研究データ基盤というか、上位層の基盤は非常に期待しておりまして、ぜひ応援したいと思っています。ただ、難しさもあるだろうと思っています。その件について、コメントなのですが、例えばSINETのネットワーク基盤の部分は比較的、例えばパフォーマンスも価値も分かりやすいので、提供する側も使う側もやりやすいだろうと思うのです。
一方、上位層になってくると、提供しようとしている内容が、今のお客様、ほかの大学の先生や研究機関の方には伝わらないだろうと思います。研究機関の方も、何か間違った期待だったり、過剰な期待があったりして、擦れ違いも多いだろうと思うと、そのあたりの苦労は多いとお察しします。
先ほど深澤先生の話の中にリサーチエンジニアがありました。まさにそういう人に加えて、例えば、リサーチ営業とかリサーチヘルプデスクとか、そういう本当のビジネスを支える機能をNIIのようなところでやるのは難しいだろうと思います。特に予算的なサポートがないとそういうリサーチ営業の方も雇えないと思うと、そのあたりが結果的には研究者の方の負担になってしまい、お互いに苦労ばかり増えてしまう気がします。
キュレーターの部分については、コンサルタントのようなところで期待ができるのかと思っていましたが、もっとこういうサポート体制や取組がないと、なかなか長続きしないと思っていまして、そういうものに関してもどんどん要求を出されるといいのではないかと思った次第でございます。以上です。
 
【相澤委員】 どうもありがとうございます。本当にそのとおりで、サポート体制も非常に重要ですし、たとえば今のシステムを構築していく上でも、UIのデザインも非常に重要ですが、UIのデザインそのものは恐らくシステム構築するのと同じぐらいのコストがかかるものですので、なかなかそこがしっかりいかないと、研究者の方々にインセンティブを持って使っていただくところに行けないという苦労はありますので、折りに触れ御助言もいただきながら進めていきたいと思います。
 
【後藤(厚)委員】 はい。そういうところはどんどんアピールして、要求を出されるといいのではないかと思いました。以上です。
 
【相澤委員】 ありがとうございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。まだ御議論があるかもしれませんが、後ほどの総合討論のところでいただきたいと思います。相澤先生、どうもありがとうございました。
 
【相澤委員】 ありがとうございました。
 
【安浦主査】 それでは次に、事務局のほうから、研究DXをめぐる動向と検討すべき論点の例について御説明をいただきたいと思います。
橋爪参事官、よろしくお願いします。
 
【橋爪参事官】 第6期基本計画での研究DXの扱いなど、今後御検討いただくに当たっての基礎情報について、事務局から御説明させていただきます。資料4でございます。
まず、研究のデジタルトランスフォーメーション、DXの概念についてです。文科省では、単なる研究プロセスのデジタル化ということではなくて、例えば、データ基盤を構築して新しいスタイルの研究を生み出していく、次世代の研究手法の開発、AI、あるいはデータ駆動型の研究の推進ということで、科学自体をDXによって発展をさせるというところまで考えて取り組んできているところでございます。
このデータ基盤については、先ほども御議論ございましたけれども、研究で生み出されたデータだけではなくて、研究で使われる様々な有用なデータ、そこには、社会あるいは個人のデータも含まれますが、そういうものも入ってくるとい考えてございます。
それから、2つ目の柱としては、研究施設・設備のリモート化・スマート化ということでありますけれども、これも、これを実現することによって研究者の研究環境が抜本的に変わって、研究活動自体が新しい形でできるようになる、個々人の研究者のニーズ、あるいは生活環境によって様々な可能性が広がっていくというところまで射程に置いていきたいと考えております。
さらに3番目としては、全体を支える情報インフラを整備していくということで、ネットワークや計算資源等をしっかり整備していく、文科省では、こうした3つの柱に従ってこれまで取組を進めてきております。
その上で、2ページ目でありますけれども、第6期の科学技術・イノベーション基本計画との関係でありますが、我が国が目指すべき社会として、基本計画ではSociety 5.0が打ち出されております。これはサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会課題解決を両立させる人間中心の社会ということでありまして、これによって持続可能性と強靱性を備え、国民の安全・安心を確保していく、また、一人一人の多様な幸せ、ウェルビーイングを実現していくことを目指す、こうした社会が目指すべき社会として提示されております。
このための取組が幾つか挙げられておりますが、その中の研究力強化の主要な柱として、新たな研究システムの構築、オープンサイエンスとデータ駆動型研究等の推進ということが掲げられておりまして、これはまさに研究DXの推進ということとなっております。
さらにそこを具体的に見てまいりますと、3ページ目でございますが、基本計画の中で、あるべき姿、研究DXによって実現すべき姿として、社会全体のデジタル化や世界的なオープンサイエンスの潮流を捉えた研究そのもののDXを通じて、より付加価値の高い研究成果を創出し、我が国が存在感を発揮することを目指すということが示されております。
そのための主な取組といたしまして、特に文科省関連でございますけれども、1つには研究データ基盤システムを普及させ、必要な高度化、持続的運営を図っていくということと、そうした全国的な基盤と分野ごとのデータ基盤との間で相互に利活用を図るということ、それから、研究データの管理・利活用を促進するための人材育成や国際連携、仕組みやルールの整備についても課題が書かれております。
さらに、情報インフラとしては、SINETといったネットワーク、それから計算資源の増強という点がございますのと、大型研究施設・設備のリモート化、スマート化の課題が挙げられてございます。
さらには、データ基盤、それからインフラを整備した上で、それらを活用して高付加価値な研究を加速させるということで、マテリアル、ライフサイエンス分野、環境・エネルギー分野、海洋・防災分野等におけるデータ駆動型研究の振興が課題として提示されております。
この中でもデータ基盤の構築ということについては、先ほどから御議論ありますように、今後のデータ駆動型研究を進めていく上で非常に大きな課題になってきているのではないかと考えております。
4ページ目でございますが、こうした研究データの管理・利活用の枠組みとして、基本的な考え方が令和3年4月、統合イノベーション戦略推進会議において決定されております。公的資金による研究データについて、アカデミア、産業界等でしっかりと利活用していただくための仕組みということで、大学や研究機関においては、データポリシーを定め、研究者がメタデータを付与した研究データをリポジトリに収載をしていく、そして、NIIのリサーチデータクラウドを中核的なデータのプラットフォームとして位置づけるとの方向性が定められております。そして、それを、様々な既存の分野別のデータプラットフォームと連携をさせて、日本全体として、研究者それから産業界にも活用していただけるようなプラットフォームを研究の世界で作っていくということの方向性が示されてございます。
これを具体的なイメージにしたのが次のページでございますけれども、基盤的な情報技術を活用しながら、SINET、HPCI等のインフラを整備して、その上に研究データを活用できる基盤を作っていく、さらに、そうしたインフラを活用して、データ駆動型の研究を推進し、最終的には社会課題の解決や経済発展につなげていくということでありますけれども、右側に赤字で書いてありますように、それぞれの階層に応じて、まだまだ課題があると捉えてございます。
先ほどから先生方の御発表で色々な論点等挙げられておりますけれども、6ページ目でありますけれども、事務局からあくまで参考の論点例として幾つか御紹介をさせていただきます。
まず1つ目としては、これも既にありましたけれども、データ駆動型研究とかデータの共有を促進するための有効な仕掛けについてどう考えていくべきかという点。
それから、データを戦略的に蓄積していくための方策としてどのようなものが有効なのか。あるいは、全国的な研究データ基盤を構築していく上で、どのような機能が求められているのか。データも様々な特性がございますが、そうした色々な性格のデータに応じて、取扱いルールをどのように決めていくべきか。
それから、データの利活用、共有を進める上で必要な人材をどう確保していくのか。
データ駆動型研究は様々な分野との連携の上に成り立ちますが、情報分野と各分野の連携マッチングをどのように進めていくべきか。
既に御議論が先ほどから始まっておりますけれども、議論の出発点として御紹介をさせていただきました。
あとは、7ページ目以降では参考資料を載せさせていただいております。既に御発表のあったものも含めてでございますが、8ページ目が次世代のSINETでございます。なお、SINETにつきましては、大学を結ぶものでありますけれども、共同研究という形で産業界の皆様にも活用していただける枠組みになってございます。
それから、9ページが計算資源、HPCIについての資料、10ページが、データを特にリアルタイムに活用できるようなシステムであるmdxです。
11ページ目は、各分野における研究データ基盤の構築状況ということで、分野別のリポジトリの主なものを挙げさせていただいております。例えば、マテリアルでありますと、NIMSで整備が進んでおりますし、環境分野ではDIAS、防災では防災科学技術研究所で取組が進んでいます。ライフサイエンスはかなり細かく分かれているというような状況でございます。
12ページ目、13ページ目は、マテリアル分野におけるデータ駆動型研究の加速に向けた取組の御紹介、14ページ目は、データサイエンスに係る各国の取組の資料ということでございます。
以上でございます。
 
【安浦主査】 橋爪参事官、どうもありがとうございました。
それでは、残った時間を総合討論に充てたいと思いますが、その前に、前回第16回の情報委員会に御都合により御欠席でしたJSTの後藤吉正委員が今回初めての御参加になりますので、一言自己紹介をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【後藤(吉)委員】 今、御紹介いただきましたJSTの後藤でございます。安浦主査はじめ、日頃から皆様に大変お世話になっております。この委員会でもできるだけ貢献したく、私自身のバックグラウンドも情報系の仕事をしてきましたので、大変関心ありますし、ファンディングエージェンシーのJSTにとっても、情報系の基盤の点でも、それから情報系の研究の点でも、また、今日のお話があったDXの点でも非常に大事な事案だと思っておりますので、貢献していきたいと思います。皆様からの色々と御支援もよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 
【安浦主査】 後藤委員、よろしくお願い申し上げます。特にファンディングのほうはよろしくお願いいたします。
それでは、事務局から先ほど説明のあった論点、あるいは深澤先生、相澤先生からのお話を中心に、それ以外の部分でも結構でございますので、研究のDXということについて御意見、あるいは御質問でも結構です。ありましたら、挙手をお願いいたします。川添委員、どうぞ。
 
【川添委員】 相澤先生、それから深澤先生、事務局の皆様、御説明ありがとうございました。
私からは、今回DXというキーワードなので、研究のDXでありますけども、企業のほうでDXをどう捉えているかということを、御参考になるかなと思いまして、少し御説明していきたいと思います。DXが非常に重要だということですが、DXについて、モード1、モード2という捉え方をしているというのは皆さん御存じの方が多いと思います。モード1と言っているのは、いわゆるデジタル化で代表されるように、効率を上げて高めていくというDXで、よく言われる判子をなくすというようなこともモード1です。
確かに、効率を高めていくということは、さらなる色々な価値を生み出すことにつながりますが、そこでは、ある意味、価値の種類はそれほど変わらなくて、量が増えたり、スピードがアップするということだと思います。
一方でモード2と呼ばれているものは、これは新しい価値を生み出すためのDXで、単にデジタル化して効率が上がるわけではなくて、A足すBでCが生まれるときに、それは今までにない新しい価値につながるということを目指すDXです。今回の研究のDXといったときもこの2つの話が一緒になっているというような感じは少ししました。
確かにモード2に行くためにはモード1も絶対必要なのですが、そこを少し整理していったほうが良いと思います。特に最終的にはモード2が重要です。モード2まで行かなくてはいけないのですけども、モード2に至るためにどういう新しい価値を生み出すかということの成功イメージをつくっていきながらやっていかないといけなくて、単なるデジタル化、DXという形だとなかなか生まれないと思います。
企業では本当にこれが非常に重要なテーマになっていて、まさにお客様に色々なものを御提案するに当たっても、そのお客様にとってみて新しい価値が何なのかということを、私たちは想像しながら御提案しているというような状況でございます。なので、この研究DXの仕組みの中においてもそれをぜひ考えていただきたいと思いました。それが1つです。
すみません、続けて。今、企業の立場でと言いましたけど、もう一つ別の私の立場で、実はつい2時間ほど前に総会が開かれまして、電子情報通信学会の次期会長に就任いたしました。実は学会の立場で見ても、恐らく先生の方々もよく御存じのとおり、今、学会が非常に危機的な感じになりつつあって、会員が減っていくこともそうですし、アクティビティーもどんどん高めていかないといけない状況ですけど、それがうまくいってないという中でいうと、今日、相澤先生から御紹介いただいたような仕組みが、学会の中でもうまく使っていくようなことが非常に有効かもしれないなと思っております。ぜひとも、日本の学会をさらに支援していく中でもこの活動がつながっていくことがあればと思った次第です。以上です。
 
【安浦主査】 川添委員、どうもありがとうございました。次期会長就任おめでとうございます、また御苦労さまでございます。よろしくお願いいたします。
それでは、奥野委員から手が挙がっておりますので、奥野先生、どうぞ。
 
【奥野委員】 京都大学の奥野です。先ほど川添先生からモード1、モード2の分け方をおっしゃっていただきましたけれども、もう一つ、このDXにおいて非常に重要なところは、いわゆる研究レベルでプルーフオブコンセプトを検証したり、新たな技術開発をしていくという研究レベルのことと、あとは社会実装で本当に社会で回していくというところの両輪というのが極めて重要ではないかなと思っています。
特に医療におけるICT、あるいはAI研究においては、研究レベルの研究費というのは非常に盛んに進められているのですが、それを本当に、医療のAIと自分の病院のデータを使って、うまく行きますか、それを本当に社会実装できますかと言われると、そこから本当に社会実装するところまでは物すごくハードルが高いと思います。
ところが、色々なAMEDのファンディング等でも社会実装しなさいということを求められるのですが、やはり本音を言うと、こんな予算でこんな組織状況でできるわけがないと思っています。
そういう意味で、基礎研究に対してしっかりとファンドをしていく。なおかつ、基盤ついては、むしろ競争的ではなくて、先ほどのNIIさんのようなところでしっかりと安心できる予算を担保していくというような、やはりその両輪をしっかりと分けて考えていく必要があると思いました。
 
【安浦主査】 どうも貴重な御意見ありがとうございます。
川添委員、奥野委員のお話を伺い、これは私の私見ですけども、大学において、モード1というのは、例えば大学における事務方の事務処理とか、今までの教育の現場とか、その辺りはまだモード1を必要としている部分がたくさんあると思います。
先端研究の部分は結構モード2を求めていて、それをサポートするため、相澤先生からお話のあったNIIの様々な取組をはじめとした取り組み、あるいはスーパーコンピューターなんかも含めて、国策として進められているということだと思います。
さらに、今、奥野先生から御指摘のあったモード3というのは、これは特にSociety 5.0というのが言われるようになって、ますます社会実装まで責任を持たないといけないような要求が一方でありながら、それに対しての予算措置は必ずしもされていないという状況かと思います。
その辺で多分苦しんでおられる八木先生、何か一言ございますか。
 
【八木委員】 日本の予算は限られているので、その限られている予算をいかに有効に活用するのかということは、やはり誰か高所に立ってまとめないと、単にオープンな戦略だけでもうまく回らないし、そこの策がいつも要るとずっと思っています。
データは特に、どういう具合に掛け合わせるかによって価値が生まれますし、それ自体の価値が生み出されると、新たな研究が生まれてくるので、それがやりやすいような仕組みをどうやってつくるのかということを、本当はこういうところで議論できて、今、文科省が打っているような色々な施策が連結されて、日本全体の科学技術とイノベーションを両方支えるものになったら一番理想かとは思っています。
 
【安浦主査】 突然当てて申し訳ございません。
JSTの後藤委員から手が挙がっております。後藤委員、お願いします。
 
【後藤(吉)委員】 先ほどDXのモード1、モード2というお話があり、非常に分かりやすい区分かと思います。私どもは、色々な研究テーマを御支援させていただいておりまして、このモード2の研究が今たくさん出てきているように思います。
モード2の研究には、2種類ありまして、今のコンピューティング環境を使って、DX的な研究をやっている、例えばゲノム合成の研究ですとか、ゲノム関係の研究等は、相当に今、情報処理が入ってきているわけです。
もう一つは、研究DXを実現するための研究もございまして、例えばロボティクスバイオロジーと言われるような分野で、バイオ関係の今まで手作業でやっていた研究を全てロボット化することによって、実験のクオリティーを高める、あるいは実験のプロトコルの標準化を図っていくというようなものがございます。
こういったものを進めるうえで、私どもが1つ気になっているのが、研究資金の確保で、先ほどの御発言にもありましたけれども、そういうコンピューティング環境とかデータのインフラ等にかなりお金がかかるわけです。それを個々の研究者のところ、あるいは個々のテーマにお金をつけるのではなくて、ある程度1個にまとまった拠点のようなものが必要になってくる場合もあるかと思います。
先ほどSINETのお話があったように、ネットワークインフラというレベルのかなり広いものと、それから研究領域ごとの拠点的なものという両方で、やはり資金の使い方に一工夫要るのではないかと思いますので、そういった御配慮をお願いしたいとともに、ここでも御検討いただけたらと思います。以上でございます。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。私も4月からNIIをお手伝いするようになりましたが、NIIもなかなか限られた人のプールの中であれだけのことをやられているわけでございまして、これは早晩非常に大きな問題になってくると思っております。
少なくとも日本の情報基盤を支えるために、これだけの資源、特に人材ですね、が必要かは明確にする必要があります。今、コロナで病床はあってもお医者さんとか看護師さんがいないという状況が世の中に起こっていますけど、まさに、そこでSINETの400ギガの通信基盤は、お金を出せばNTTさんがきちっと提供はしてくださるわけですけど、それを管理運営していくというのは、これはNIIなり、それを管理するこちら側のインフラを整備する側の仕事になるわけです。そこにどれだけの人を手当てできるか。それは、先ほどの最初の深澤先生がお話しになられたリサーチエンジニアのレベルの、研究者クラスの知識と技能を持った上で、かつ、ある程度サービスに徹した仕事をしていただく人をどう処遇していくかという問題にまで多分つながっていくのだと思います。
深澤先生、その辺の話、何か付け加えることございますでしょうか。
 
【深澤主査代理】 特にございません。今、安浦先生におまとめいただいたとおりで結構だと思います。
 
【安浦主査】 これ、各大学でもそうですよね。
 
【深澤主査代理】 はい。そう思っています。ただ、例えば、図書館界だと、職員の部長クラスが色々な大学を回ったり、あるいは、研究でもリサーチ・アドミニストレーターなんかが職種として割と大学の中で育ってきたりしているような気がするので、その辺りを学ぶことは必要と思っています。
 
【安浦主査】 ありがとうございます。他に。八木先生がまた手を挙げられています。
 
【八木委員】 今の話を聞いていて思ったのですが、自分自身が色々なプロジェクトを進めていて、共通的にあったらいいと感じるのは、研究者、また研究をするドクターとかは自分のところで何とかなるのですけども、実際に色々なシステムやデータをきっちりと基盤として使って、動かしていこうと思うと、その人材を安定的にうまく持てるかどうかというのは結構大きいです。
例えば知財ですと、INPITみたいに人材を派遣してくれるような仕組みがあるわけですが、情報基盤においてもそういう人材派遣をして、色々な競争的資金を支えるという仕組みがあってもいいのかなと今ふと思いました。以上です。
 
【安浦主査】 非常に面白いアイデアかもしれませんけど、どういう組織がそれを担うのかというのはなかなか難しくて、ある種のヒューマンリソースバンクみたいな、そんな役割を果たす組織ですね。
 
【八木委員】 そうですね、本当はそういうのがあったら一番理想だとは思います。みんなハッピーになると思います。
 
【安浦主査】 ほかにどなたか御発言ございますでしょうか。
後藤厚宏先生にお伺いしたいのですけども、先生の御専門のセキュリティーの分野で、産業界も含めて、そういうヒューマンリソースのプールとか、あるいは、うまく人を必要なところに動かしていくような仕掛けというのはできているのでしょうか。
 
【後藤(厚)委員】 ど真ん中の御質問ですけど、正直申して、それができてなくて今、日本は苦労しているという状況でございます。
ただ、セキュリティー人材に関しましては、必要性に関して産官学それぞれで意識が高まってきたこともあって、多分日本の固定的な雇用関係の中で、技術系の人間も含めて、相当流動化が始まったと思います。そういう意味で、セキュリティーのエキスパートがそのエキスパータイズを生かす職に就きやすくなったことは確かでございます。
ただし、プールという形で十分共有できるというレベルにはまだまだ達していなくて、そういう意味では、NIIのセキュリティーのチームも非常に苦労なさっているのではないかと思っております。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございました。突然振って申し訳ございませんでした。
この辺は日本の雇用問題とも絡んでくるとは思いますけども、アメリカのように、ジョブが中心で、組織よりも自分はこの仕事・職種が専門であって、たまたまA大学で働いて、B企業に移って、またC大学に移るという働き方をしている人たちが普通におられます。例えば情報のCIOをやるような人たちなんかもそうやって組織を渡り歩いているわけですけども、そういう仕掛けが、先ほどの深澤先生の御提案のリサーチエンジニアのような形で、キャリアパスをきちんと見せる形でつくっていければいいような気はいたします。
八木先生、どうぞ。
 
【八木委員】 今の話で、そうなったときに日本は今のところなかなか流動性のある社会ではないので、雇用の安定・生活の安定ということが満たされると比較的、給料が低くても実施できると思うのです。海外はそういった方々に支払うお金が高いじゃないですか。そういう高いお金を払ってでも回すのか、安定性をうまくつくって回すのか、両方の考え方があるのかなという気がいたします。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。
 
【川添委員】 NTTの川添ですけど、今のポイントでもう一つ、先生に言っていただいたことに加えて、例えばNTTでぜひ増やしていきたいと思っているのは、クロスアポイントメントです。NTTにいながら、各大学の先生でもあったりするという、2つのポジションを持っていただくという形の雇用形態も今後もっと増やすことができたらいいと思っている次第です。
それはある意味、自分自身の収入の安定化にもつながるかもしれないし、将来どういう方向に行くのかというような人生の選択にもつながると思っている次第です。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。クロスアポイントメントは随分増えてはきていますけども、教員として大学に来ていただく方は多いのですが、例えばサービス部門で、ポジションとしては教授とかいう名前は与えてサービスに徹するという形でも、NTTさんからは出てきていただける方は、可能性はあるのでしょうか。
 
【川添委員】 大いにあると思います。それは人にもよるかもしれませんけど、あるいは組織、会社によるかもしれませんけど、今後やはりそういう形態はどんどん増えてくるのではないでしょうか。よろしくお願いします。
 
【安浦主査】 どうもありがとうございます。
ほかに何かございますか。そろそろ時間が来ましたけど、今日は深澤先生と相澤先生からかなりリッチな内容の御紹介をいただきました。この委員会に初めて御参加いただいた委員の方々は、こういうNIIの活動だとかAXIESの活動について、あまりお聞きになられていなかった方もおありかと思いまして、あえてお願いしたところでございます。
まだ、今日は本当に15分と限られた時間で、お二人の先生には大変御苦労をおかけしいたしましたけれども、こういうことをきっかけに、大学あるいは研究、研究といっても、その後に必ず教育とさまざまな事務作業がくっついていまして、そういったことも含めたDXというものを進めていかないと、なかなか日本全体のアカデミアはこの難局を乗り切れないのではないかと思います。
奥野先生からも、医学系のかなり複雑な問題をお持ちであるということも御紹介いただきました。もし、これ以外のことでさらに御意見等ございましたら、ぜひ事務局のほうにメール等で御意見をいただければと思います。
ここで何か最後に御発言されたい方があれば、お受けいたしますけど、よろしいでしょうか。
この問題は、今、NIIがSINETとデータ基盤のところ、それから、理研がスーパーコンピューターと、それから理研と一緒になってハイパフォーマンスコンピューティングインフラストラクチャーということで、田浦先生の東大の基盤センターをはじめとする八大学の基盤センターが計算基盤を辛うじて支えているという状況です。この体制のままDXは進められるかという、構造改革、お金の問題もありますけども、仕組みの改革の問題も当然視野には入れて議論していただいて結構かと思いますので、もし何か御提案等、あるいは、こういう仕掛けというのは可能性あるのかというようなお話をしていただける可能性がございましたら、事務局に言っていただければ、次回以降、お話しいただくような機会を作らせていただきたいと思います。そういう積極的な御意見等もいただければ幸いでございます。
それでは、本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。事務局に事務連絡をお願いしたいと思います。
 
【齊藤情報科学技術推進官】 次回委員会の予定でございますが、次回は第18回として、6月30日水曜日15時から17時を予定してございます。有識者から御発表いただいた後、御議論いただくことを考えてございます。以上でございます。
 
【安浦主査】 ありがとうございます。
それでは、これで本日の委員会閉会とさせていただきたいと思います。少し遅い時間でございましたけども、お集まりいただきましてありがとうございます。次回もよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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