ジャーナル問題検討部会(第9回)議事録

1.日時

令和2年12月22日(火曜日)17時00分~19時00分

2.場所

オンライン会議

3.議題

  1. ジャーナルに係る課題について
  2. その他

4.出席者

委員

引原主査、竹内主査代理、家委員、小賀坂委員、尾上委員、倉田委員、小安委員、高橋委員、谷藤委員、林和弘委員、林隆之委員

文部科学省

塩崎大臣官房審議官(研究振興局担当)、橋爪参事官(情報担当)、三宅学術基盤整備室長、土井参事官補佐

オブザーバー

阿部 前国公私立大学図書館協力委員会委員長、筑波大学副学長・附属図書館長、上保 国立国会図書館利用者サービス部科学技術・経済課長、須田 国公私立大学図書館協力委員会委員長、慶應義塾大学メディアセンター所長、平田 大学図書館コンソーシアム連合事務局長、国立情報学研究所学術基盤推進部図書館連携・協力室長

5.議事録

【引原主査】 皆さん、こんにちは。時間になりましたので、ただいまより第9回ジャーナル問題検討部会を開催させていただきます。
本日も、コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインで開催することといたします。通信状態の不具合が生じるなど続行できなくなった場合、検討部会を中断する可能性がありますので、あらかじめ御了承ください。
それでは、事務局より本日の委員の出席状況、配付資料の確認、オンライン会議の注意事項について御説明をお願いいたします。
【土井参事官補佐】 事務局でございます。本日は委員、オブザーバーの皆様、全員御出席いただいております。
また、冒頭より傍聴者の方を入れておりますので、御承知おきください。傍聴希望の登録は81名で、報道関係者の方からも登録がございます。
配付資料ですが、議事次第のとおり、資料1から資料3まで事前にお送りしているかと思います。
続きまして、オンライン会議の注意事項でございます。まず、通信の安定のために、発言を除きまして常時ミュート、またビデオはオンにしてください。主査におかれましては、常時ミュートを解除、またビデオをオンにしてください。
発言する場合は、手のアイコン又は挙手をクリックして御連絡をお願いいたします。主査におかれましては、参加者一覧を常に開いておきまして、手のアイコンを表示している委員を御指名ください。指名された委員の先生方におかれましては、御自身でミュートの解除の操作をお願いいたします。また、御発言の後は、御自身で手のアイコンの非表示、またミュートの操作をお願いいたします。
今回も速記者を入れてございますので、発言の際には、お名前からゆっくり発言をいただければと思います。また、トラブル発生時は、事前にお伝えしております事務局の指定の電話番号に御連絡をお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございました。それでは、早速ですけれども、審議に入らせていただきます。
前回の検討部会では、日本学術会議の提言について山口先生から、それからJ-STAGE Dataについて小賀坂委員から御紹介いただきました。御議論いただきました結果については御存じのとおりでございます。
今回は、まず林隆之委員(政策研究大学院大学)より大学の研究評価制度におけるオープンアクセス、オープンサイエンスの扱い、それにつきまして、日本学術会議におけます議論も含めて御紹介いただきます。その後、「これまでの議論のまとめ(案)」について再度御提示させていただきますので、御審議いただければと思います。
それでは、最初に林隆之委員、よろしくお願いいたします。
【林(隆)委員】 政策研究大学院大学の林です。私は数年前まで国の大学評価を行う機関にいましたので、研究評価をずっと見ていたわけです。このジャーナル問題検討部会の論点はジャーナル問題であるとかオープンアクセス、オープンサイエンスの話なんですが、研究評価の議論で、どこまでその話が議論されていたかというと、実感としては、そんなに議論していなかったという感じではあるんですけれども、ただ、今日はそこに引きつけて議論をしていきたいと思います。
大きくは、今日申し上げたいことは2つのパートになっています。1つが、大学の研究評価制度におけるオープンアクセスの扱いです。後ほど御紹介しますが、イギリスの状況を日本も見ているわけですが、その中で日本としてどう考えるかというところ、個人的には、そこで、評価機関にいたときには悩んだなというところがあります。
それから2つ目ですが、オープンサイエンスの進展の中での研究評価の議論状況ということです。これまでのこの部会での議論でも、基本的にはインパクトファクターが高いような商業出版、商業ジャーナルに載った論文が評価をされるという状態が維持される限り、なかなかオープンアクセスであるとかオープンサイエンスも進まないという議論があったと理解しています。
後ほど御説明しますが、国が行っている研究評価の制度に関しては、そこまでインパクトファクターが高いジャーナルの論文が評価されると、そういう状態ではないということは御説明したいと思います。ただ、先ほど主査からあったように、日本学術会議での議論等もしておりますので、その辺りのお話をさせていただければと思っております。
まず1つ目が、研究評価制度におけるオープンアクセスの扱いの話でございます。イギリスのResearch Excellence Framework(以下REF)の話から入るわけですが、委員の中には、よっぽど私よりも御承知の方も多いと思うんですが。
まずREFの話ですが、イギリスはブロックグラント、大学への、日本で言えば運営費交付金を傾斜配分するために、特に研究のための運営費交付金の部分ですけれども、を傾斜配分するために、その資金配分機関が大学の研究評価Research Excellence Frameworkを6から7年に1回程度で実施しています。
その評価基準は3つあるわけですが、研究の質、これは研究成果の質ですが、それと研究の社会的なインパクト、そして研究環境と、この3つの評価基準で評価がされる形になっています。
この1つ目の研究の質に関しては、2014年に行われたREFでは154大学から19万1,150件の研究業績が提出されて、それが評価をされると、そういう状況でございました。
次回のREFは2021年なんですけれども、2014年の3月に、次回のREF2021では、この提出される、前回で言えば19万件の業績に対してオープンアクセスを求める方針がもう決定されました。
このREFをやっているところが示している基本的な発想としては、評価実施を行っているのが資金配分機関なわけですが、資金配分機関からの資金で行われる研究は広く無償でアクセスできるべきであると。それから、オープンアクセスにすることによって、研究成果が即時に広く普及されることが可能になると。それによって研究のプロセスも効率化するし、研究成果が経済成長を推進することを可能にするし、また研究への公衆理解も増すだろうと。
こういう発想の下でオープンアクセスを求めていくという形に決定がされました。
ただ、オープンアクセスといっても、グリーンです。基本的には、以下の2点を満たす提出される業績はオープンアクセスの基準を満たさなければいけないとなっています。2つの基準というのがISSNのついたジャーナルの論文あるいは国際会議録の予稿、そして、出版への受理日付が2016年4月1日以降であると。
当然ながら対象外というのもあるんですが、書籍であったり、あるいはそれに準ずるような長文の出版物、あるいはそもそも文章でないものであるとか、ワーキングペーパー、プレプリントもそうです。それからデータ、それから当然、非公表の機密報告書など、そういうものは対象外であると。
ただ、上記の2つを満たす提出業績のうちの5%まではオープンアクセス基準を満たさなくても認めると。逆に言えば、5%を超えるものがオープンアクセスになっていなかったら評価のところで問題になると、そういうことになっています。
3つのオープンアクセス基準、これを3つを満たさなければいけないということですが、Deposit requirementsとしては、アウトプットは機関のレポジトリ、あるいは複数機関で共用しているレポジトリのサービス、それから分野別のレポジトリに登録されなければならないと。
その下にあるように、受理されたものは出版から3か月以内に登録されなければいけないと、そういうことが要件になっていると。
更にDiscovery requirementということで、サーチエンジンで検索可能なようにメタデータをつけるであるとか、あるいはAccess requirementsで、誰もが無料でアクセスし、読めて、ダウンロードできる形になっている必要があると。ただ、出版社によってエンバーゴ期間が設定されている場合は非公開で登録されていればいいと、そういう状態になっています。
これがRequirementなんですけれども、さらに、そういうふうにオープンアクセスにちゃんとできているかの監査も実施しますということで、かなり厳しく運用がされることになっています。
2021年の第1四半期には監査が実施されると。提出されたリストをオープンアクセスの論文の検索システムで検索して、リスクが高い、そこでオープンアクセスになっていないようなものが多い大学に対しては、どうやって大学内でオープンアクセスにすることをやっているのかということを文書で求めるようになっています。こういう監査が行われると。
なので、今イギリスの各大学のホームページとか行くと、もうこういう情報の下でレポジトリに入れなければいけないよということを大学内の教員に説明をして入れさせるようなウェブサイトが各大学、作られていると、そういう状態になっています。
こういう話が2014年3月には公表されていて、2013年からそういう議論は既にされていたわけなんですが、一方で日本の場合どうかというと、後ほど御説明しますが、日本の場合も、例えば国立大学法人評価ですと「研究業績水準判定」ということで1万3,000件の研究業績が提出されます。ただ日本の場合、研究業績というのが、そこの中に3本まで研究論文等の成果が書けるというものを研究業績と定義しているので、前回の場合ですと3万2,000件の研究業績が提出されたと、そういうようなものになっています。
2013、4年の時点で私は評価機関にいたわけですが、イギリスのこのオープンアクセスの状況を見て、当然オープンアクセスにすれば広く研究成果が使われるような状況になりますので、イギリスがそういうふうに踏み出している中で日本がどうするべきか、日本の大学評価機関はどうするべきかということを考えなければいけないなとは思ったんですが、少なくともその当時、明確な政府方針がないので、評価機関としては独自の判断するのは大変難しかった。当時も文部科学省の方にお話を聞きはしたんですが、競争的資金の中からオープンアクセスにするための経費が出せるような状態になっているので、そこまでで議論は取りあえず終わっているので、それ以上イギリスのような形に踏み出すことは検討されていないと、そういう話になっていましたので、そこの時点では踏み出すことはできませんでした。
今、科研費等でもオープンアクセスであることを求めてはいますが、ただイギリスの今のように、かなり厳密な形では求めていません。
ですので、今後の評価の仕組みの中でオープンアクセスをどういうふうに考えるのかということは、恐らく、文部科学省のここの部会であるなり、あるいは学術審議会などで方針を示さない限り、評価機関が独自にそういうことを考えていくことというのは非常に難しいと思いますので、そういうことも是非検討していただきたいというのが1つ目の話です。
それから2つ目の話ですが、多様な評価基準の話になります。先ほどから出ているREF、イギリスの大学評価ですが、研究成果を提出すると申し上げましたが。ここに挙げているのは、2001年の実施分、2008年実施分、そして2014年の実施分で提出された研究成果、先ほど2014年は19万件と言いましたが、その中で、どういう種類の研究業績が出されたかというところを見ています。
この黒字になっているDのJournal articleが70%から81%と割合を増していると。これは全分野ですが、人文社会系を見ても、Journal articleという形態が増えていて、書籍が減っている。なので、やはり大学の研究評価が進んでいくことによって、ジャーナル論文というのが主要な研究成果として認識されている状況は確かに生まれているということは言えるかと思います。
ただ、イギリスも、やはりそういう状態を見ていますので、これ2020年の10月の科学担当大臣の発言ですが、研究者はピアからの敬意を得るために特定の場で出版するというプレッシャーを感じていると。それは、どこに出版するかが、論文の中で何を述べるかよりも重視されるという間違った傾向を生んでいる。REF-able publication、REFという研究評価に提出することができる研究業績というような考え方をしていることは、研究の価値をひずませて、研究目的の多様性を制限している。調査では研究者10人のうち4人が、所属機関では研究の質よりも指標が重視されていると述べている。
ということで、このREFについて次回が終わった後、次回以降について検討することが必要だというような、そういう宣言を既にしています。
こういう議論が世界中である種、同じ方向を向いて議論が今なされていて、幾つかキーワードがあるんですが、今日はResponsible research assessmentというキーワードで持ってきています。責任ある研究評価ということです。
定義としては、多様で包摂的な研究文化の下で、複数の異なる特性を有する質の高い研究を促し、把握し、報奨するような評価のアプローチを指す。研究というのは多様なので、そういう多様な研究をちゃんと促して把握していこうと、そういうような考え方になります。責任ある研究測定という言葉もあります。
ジャーナル問題と関連するような問題意識としては、やはりその研究成果が、掲載されたジャーナルなどで間接的に評価されているという現状があり、それが学術出版社の地位を強化するという状況を生んでしまっている。そういう問題意識はかなり強く、このResponsible research assessmentの議論の中ではあります。
世界的に共通の方向でと申し上げましたが、それは様々な国あるいは地域から、今申し上げたような、そういうResponsible research assessmentの発想の下での宣言、提言というのが相次いで出ている状況になっています。
ここに15件挙げておりますが、上の3つが基本的に国際的にも非常に有名なものになります。恐らく委員の皆様方も御承知のものだと思いますけれども。
次のページに一応、概略が書いてありますので、今は飛ばしますが、DORA(San Francisco Declaration on Research Assessment)とかLeiden Manifesto、The Metrics Tideというのが国際的に特に有名なものですが、それ以外にも幾つかのものがあって、例えば8番ですとEC、European CommissionのOpen Science Policy Platformの方でNext Generation Metricsという形で、オープンサイエンスとの絡みでの議論もなされております。
後ほど日本学術会議の提言、まだ検討中なんですが、それの御紹介もしますが、基本的には日本学術会議の提言は、こういうものと並ぶものとして日本からも一つの提言が必要だということで議論をしている、そういう状態になっています。
一応DORA、Leiden Manifesto、The Metrics Tideの概略ですが、DORA、研究評価に関するサンフランシスコ宣言ということで、この宣言は、ジャーナル・インパクト・ファクターの限界を指摘して、それを科学者を評価する際に代替指標として用いないことを勧告している宣言になります。2020年現在で2,000組織が署名しているんですが、日本からの団体の署名は3つだけ。大学や資金配分機関からの署名はない。ほかの国では大学やファンディングエージェンシーが署名をしていますが、日本はかなり反応が薄いという状態になっています。DORAは2017年から単なる提言を超えて様々なキャンペーンをするような組織にはなっています。
それからLeiden Manifestoは、DORAがインパクトファクターの話がかなり中心的に議論されていますが、もうちょっと広く、研究評価における計量データの利用についてのあるべき姿を議論しているようなものになっています。
それからThe Metrics Tideは、先ほどのREFを行っている機関からの委託で行われていった調査になりますが、やはり研究評価における指標の多様性ということを検討しているようなレポートになっています。
Responsible research assessment、それらを包括した言葉ですが、それについての暫定的定義はこういうものになっています。Global Research Councilという、世界中のファンディングエージェンシーのネットワーク組織みたいなところでの議論ですけれども、やはり基本的には、2つ目にあるような、定量的評価は定性的な専門家ベース──要はピアレビューですけれども──の評価を支援することが必要と、そういうスタンスの下での議論が中心となっています。全ては読み上げませんが、こういうものになっています。
日本学術会議ですが、今、提言案を検討しています。日本学術会議の中で科学者委員会の下に研究評価分科会か置かれています。委員長は三成先生、奈良女子大学の先生でいらっしゃいますが、委員長の下で既に提言の案は作ってあって「学術の振興に寄与する研究評価を目指して」ということで提言の案ができています。
既に、その案について2回シンポジウムを開催して議論をしています。ちょうど日本学術会議の期が替わるところでしたので、新たな期の下で早々に提言を発出することを目指して今後やっていくという形になります。
提言のスタンスですが、本提言は日本学術会議がこれまでに発出した提言・報告を踏まえて、定量的評価手法の見直しを求める国際的な動向を参考しつつ──これが先ほどのResponsible research assessmentですが──定量的指標への過度の依存を脱し、研究の本質的多様性を尊重するという見地から、研究評価に関して堅持すべき原則及び留意事項を6つにまとめると、そういうのが提言になっています。下には目次が書いてあります。
6つの提言でございますが、一応、提言はまだ案ですが、ここに持ってきています。
提言の1つ目は、資源配分との関係ですけれども、研究成果に基づく資源配分には慎重な配慮を求めたいと、そういうことになっています。
そして提言の2ですが、ここは研究の多様性を最大限尊重すべきであると。研究目標も研究手法も多様であって、それに応じて評価基準も異なるということで書いています。
そして提言の3ですが、研究の分野別の特性に応じて研究評価の在り方を提案して、説明責任も果たすべきだろうということで書いています。
そして提言の4ですが、研究評価の制度設計に当たり、ピアレビューを中核とする定性的評価を基本にすべきであると。定量的指標には過度に依存しない。
そして提言の5ですが、多角的な見地からの学術的な貢献の評価だけでなくて、将来の可能性を含めた社会・経済・文化的なインパクトの評価等も留意すべきであると。
そして提言の6は、研究評価が学術の在り方に多大な影響を与えることに鑑みて、不断に検証していく。そういうことで6つの提言を書いているところでございます。
日本学術会議としては提言を発出することを目指しているんですが、ただ、先ほどから私は大学評価のところにいたと申し上げましたが、国が制度として行うような大学評価の中では、研究成果の多様性というのは基本的には、ある程度考慮されてきたと考えています。法人評価の研究業績判定というものもしていますが、基本的にはピアレビュー中心でこれまでも行ってきておりますので、ピアが見るわけですから、そこにどんな業績が出てきてもピアは判断するということで、多様な研究成果の形態を許容することが前提になっています。
その評価の中では、各大学が自分で研究業績について、その内容とともに、優れていると考えられる理由を根拠データを用いつつ説明をして、学術面と社会・経済・文化的なインパクトの2つの点から評価をするという形になっています。
これが第2期。今ちょうど第3期の評価をやっている最中ですが、その一つ前の第2期で使っていた研究業績説明書のシートの様式ですが、先ほど申し上げたように、1つの研究業績に3つ論文等が書けるという形にはなっています。
この判断基準というところで、なぜこういう研究業績が優れていると言えるのかを大学自身が説明する形を取っていますので、別に、もちろんそれが優れた著名なジャーナルに出されたということがあってもいいんですが、当然そうじゃないようなものも書けますので、様々な研究業績を書いて、様々な説明ができるような、そういう形にはなっています。
ただ、日本もそうですし、イギリスもそうなんですが、そうはいっても、やはり引用数等のデータというのは存在しているわけですので、前回の評価においても、評価者に対しては、論文が提出された場合には、その論文が引用数が何回であり、それが分野の中で、パーセンタイルと言いますが、上位何%くらいの引用数であるのかと。それから、やはり同じようにジャーナルについても、上位、各分野の中でどのくらいの、引用数で言えば、どのくらいのレベルにあるジャーナルであるのかという情報は提供することをいたしました。
ここに、その評価が終わった後に評価者にアンケートをした結果を示していますが、多くの人は根拠の一つとして随時参考にしたという、その程度のもので、最も重要な根拠としたとか、重要な根拠の一つとして参考にしたというのは20%程度ですので、必ずしも引用数とか、そういう指標によって判断をしているということではないということになります。
ここの参考と書いてあるページは、事務局の方から少しデータベースの話を説明をしてくれということがありましたので、参考でつけています。先ほど説明しました研究業績判定ではElsevierのScopusのデータをつけています。イギリスも今、Scopusですけれども、イギリスの方は、もっと提出システムとがっちり組み合わされたシステムをつくって評価をしています。ScopusもWeb of Scienceもあるわけですが、Web of ScienceもProceedingsのCitation Index等を使うと、そんなにScopusとは大きく変わらないデータになっていますので、金銭的な問題として、どっちを使うかというのが各国で判断はされているというところかと思います。
ScopusやWeb of Scienceを使うことで、例えば分野であるとか、出版物の形態によって、そのデータベースを使うことによってバイアスがかかるのかということの注釈ですが、よくWeb of ScienceよりもScopusの方が、カンファレンスのProceedingsが多いという話はあるんですが、ただWeb of Scienceも、ProceedingsのCitation Indexまで含めれば、そんなに変わらない。それぞれのデータベースによってカバー率の違いはあるんですけれども。
例えばアーティクルだけを見れば、Scopusを基準とした場合の、これWeb of Scienceのアーティクルのカバー率ですが、8割くらいがカバーされていて、Web of Scienceを基準とした場合のScopusも9割くらいカバーされているということで、これを大きな差と見るかどうかは議論がありますが、そんなに差はないのかなと見ています。
今のは注釈なんですが、先ほどの日本の研究評価のところで、実際に、3万件の研究業績出されてきたわけですが、それがScopusに載っているようなジャーナル論文であった割合がどのくらいかというのを示しているのが、この図になります。
そうすると、右の下の方に医学分野ありますが、医学分野だと9割くらいは確かに、そういうジャーナル論文が出ているんですが、人文学とかは数%ということで、この図を見ていただいても、制度として行われている研究評価については、必ずしもジャーナル論文だけじゃなくて、書籍も、あるいは日本の雑誌への論文等も多く出されていると、そういう状況が、この結果からは分かっていただけるんじゃないかと思います。
今、研究評価の現状、実態についてお話ししましたが、文部科学省の方で研究及び開発に関する評価指針というのをつくっていて、そこでも既に論文至上主義に偏し過ぎないようにとか、専門家集団における学問的意義についての評価が基本であるとか、そういうことは留意事項として既に、いろいろと示されているような状態にはなっています。
ただ、ほかの国だと、もう少しそこで、例えば大学の研究評価のところでも、日本よりはもうちょっと一歩進んだ形で、多様性を更に進めるであるとか、オープンサイエンスを更に進めるであるとか、そういうような誘導というんですかね、評価の中でも取り入れられていると、そういう状況にあります。
というふうに今、制度として行われている評価では、基本的には多様な研究成果というのは留意されていると申し上げたんですが、ただ、ちょっと状況が変わりつつあって、日本の場合も運営費交付金の一部が、ここにあるように、運営費交付金コスト当たりのTOP10%論文数であるとか、常勤教員当たり研究業績数というのが指標として使われて配分されるように、ちょっと変わりつつあります。そうすると、分野の差を考えずにTOP10%論文が使われるであるとか、先ほどのResponsible research assessmentの発想から言うと、よくない方向に変わりつつある状況がありますので、こういうものについてどう考えていくかというのが今の課題かと思います。
ここは、少し時間がないので飛ばします。もし質問があれば後で申し上げますが。
そのように制度として行われているような研究評価については、これまではピアレビューだったんですけれども、指標でお金を配分するみたいな話になると、ちょっと難しいところがあるということを申し上げたんですが、一方で、ほかの国の議論を見ても、日本の状況を見ても、悩ましいのは、大学の中で行われている教員や研究者の評価という少しミクロなレベルというか、国の制度じゃないところの方が問題が大きいと思っています。
これは欧州大学協会が行ったResearch Assessment in the Transition to Open Scienceという調査のレポートですが、この中で、各大学の中で研究者評価をするときにどういう観点を重視しているかというのを見ると、Research Publicationsというのが非常に大きい、それから外部研究資金も大きいということで、その他の研究アウトプット(データ)と書いてあるんですけれども、そういうものは非常に少ない。オープンサイエンス、オープンアクセスも一番下であるとか、そういうところはほとんど見られていない。
それから同じように、大学内で研究者の研究成果を測定するときにどういう指標を使っているかとなると、インパクトファクターが75%というように、やはり大学内での評価設計が非常に悩ましいというところかと思います。
今のが欧州大学協会の調査ですが、同じような調査というのは、平成26年の時点では文部科学省の評価の委員会の方で行っています。国公私立の大学、ここに書いてある大学に対して調査をかけたわけですが、インパクトファクター、国立だと、やはり40%くらいが、教員の個人評価において参照している。当然、論文数とかそういうものの方が多いわけですが、それでもインパクトファクター等も、やはり多く使われていると、そういう状態になっています。
もちろんそれだけで評価をされているわけじゃなくて、ここにあるように教育活動であるとか、社会貢献活動であるとか、そういうものも使われているわけですが、インパクトファクターの指標等が使われているという状態になっています。
それから、今のが大学の中での研究者の評価ですが、もう一つ悩ましいのが資金配分機関における評価になります。これもGlobal Research Council、世界の資金配分機関のネットワークでの調査の結果ですが、今どういう研究評価指標を使っているかとなると、やはり論文数のようなものが多くて、例えばOpen research dataというのは、今は29%のところが使っている。そのくらいでしかないと。
ただ、こちらが将来使う可能性があるとして考えているというのでは非常に大きい形になりますので、こういうものを将来的にどう考えていくかというのが今の課題になっているかと思います。
最後のページですが、課題、課題といっても話は進まないので、既に様々な実践例がなされています。
1つの実践例ですが、競争的資金の中で当然、研究費申請の書類の中には過去の研究業績みたいな欄が通常あるわけですが、そういうものについて、これまで、そういう欄がジャーナル名などで判断がされやすい形式になっていたという反省の下に、いろんな取組があるんですが、イギリスのRoyal Societyが、Resume for Researchersという、もうちょっと説明をたくさん書くような様式を開発しました。それは、例えば人材育成であるとか、様々な幅広い研究者コミュニティーへの貢献であるとか、あるいは社会への貢献とか、そういう欄がある。そういう形で、これまでの研究業績を書くような様式を作り、そして、既にアイルランドのScience Foundation Irelandという資金配分機関ですが、そこでは競争的資金配分をするときの過去の研究実績欄を、この様式を使うというふうに変わってきている。
なので、各国、単に多様な研究成果を尊重する必要があると言っているのではなくて、様式を変えるとか具体的な取組に今は変わりつつあると、そういう状況になっているということを認識した上で、日本もどう考えていくかということが課題になっているのかと思います。
これで以上になります。
【引原主査】 ありがとうございました。大変細かいデータを出していただいてありがとうございます。
今の御説明に対しまして御質問ございましたら、よろしくお願いいたします。手のひらを挙げていただいて。竹内先生、よろしくお願いします。
【竹内主査代理】 千葉大学の竹内でございます。大変詳細な御説明いただきましてありがとうございました。いろいろなことが分かりました。
ちょっと確認をさせていただきたいことがあります。スライド番号32番の資金配分機関における傾向というところで、一番上のところにPublication Outputsというのが研究評価指標として挙がっていますが、これは、そのままイコール、インパクトファクターということではないという理解でよろしいでしょうか。
【林(隆)委員】 はい。これは、どちらかというと論文数というような、そういう指標と考えていただいた方がいいと思います。
【竹内主査代理】 わかりました。では、この調査の中では、インパクトファクターは研究評価指標として、もはや挙げられていないという理解でよろしいということですね。
【林(隆)委員】 そうですね。ざっと見た感じ、インパクトファクターあるいはジャーナルに関する指標というのは今、挙がっていませんので、既に調査対象からもないということになります。
【竹内主査代理】 ありがとうございました。
【引原主査】 ありがとうございます。ほか、いかがでしょうか。
小安先生、よろしくお願いします。
【小安委員】 ありがとうございました。一番最後に、新しい方式としてナラティブに書くというような例を挙げていただいたのですが、こういう場合、科研費などでも、いろいろ見ていると、例えば過去5年以内の業績を後ろの方にリストで掲載するというような場合に、それより以前の論文を本文の中でわざわざ引用するような形で書いてくる例というのをしばしば見ていました。それも要するに、結局のところは、インパクトファクターとかサイテーションインデックスにつながるような訴え方だと思います。
先ほど御紹介いただいたナラティブの場合には、generation of knowledgeというところに、そういうやり方で論文の引用を禁じているのか、それとも全くそこを自由にさせているのか、もし分かれば教えていただきたいのですが。
【林(隆)委員】 そうですね。ちょっとそこまで確認していないので、すぐには分かりません。
ただ、おっしゃったとおり、generation of knowledgeのところは、まだ、それとの親和性があるんですが、それ以外のところは、そもそも論文を書く内容でもないと。幅広い社会への貢献ですので、そちらは説明を書くと。
今、御質問あったところについては、ちょっと確認しないと分からないですね。
【引原主査】 今の件ですけど、私、この形式の研究評価に加わったことがあるんですけれども、今のgeneration of knowledgeのところは、論文についての記述というのはほとんどないです。研究のオリジナリティーとか、それからモチベーションのところが非常に重要でして、それに対する自分たちの準備がどういうふうになっているか、それらがそのうちどうつながっていくという書き方になっていました。
【小安委員】 なるほど。ありがとうございます。
【引原主査】 ほか、いかがでしょうか。いっぱい挙がっていますね。すみません。家先生、どうぞ。
【家委員】 ありがとうございます。大変参考になりました。
今、科研費のことが話題に出たので、少し紹介しておきますと、かつて科研費の計画調書では研究業績欄というのがあって、そこには皆さん、いわゆる論文リストを書いてくるんですね。御丁寧な方は、そこにインパクトファクターを書いて、それのトータルまでつけてくれる人もいたんですけれども、それがあまりに本質から外れているということで、科研費改革2018で、この、かつて「研究業績」欄と言っていたものを、「研究遂行能力」を説明する欄というふうに変えました。そこでは、今話題に出ていた、いわゆるナラティブに書いて、ただし、それの根拠になるような業績、論文のリストは適宜つけるという方式に変わっています。
ただ、その改革の趣旨が情報として正しく伝わらなくて、「論文リストを書けなくなった」という誤解が拡散して一部で大騒ぎになったことがあります。そこは丁寧に説明して、少しは落ち着いてきたかなと思っていますけれども。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。
林和弘先生、どうぞ。
【林(和)委員】 詳細な御説明ありがとうございました。2点ありまして、1つが、イギリスでも論文を中心に、REFの2004年、9年、14年と研究評価に工夫をされていったとき、結果的に提出された研究成果がジャーナル論文の方に寄っていったというのが大変興味深いデータで、定性と定量の評価を組み合わせることに大変慎重に動いているイギリスでも、結果的に原著論文への偏りが見られたということでよろしいんでしょうか。定量的かつ多様な研究評価に向かう中で、結果的なジャーナル論文への誘導みたいなことが起きたという解釈にみえ、そんな簡単な話ではないとは思うんですけれども、80%まで増えていったというところをどう理解すればいいのかについて、今、私のような観点から見たようなことを含めて、もう一度、改めてコメントを頂ければというのがまず1点で。
まず、次、全然違う話になるので、1回これで、お答えいただけると助かります。
【林(隆)委員】 おっしゃるとおりだと思います。制度としては、ここの今、AからEまで書いてありますかね。先ほどの資料ですけれども、書籍から、それ以外にもデータだとか何だとかいう、いろんなものが書ける形式になっているんですが。様式はそうでも、今御指摘のとおり、ジャーナルアーティクルに寄っていってしまっている。特に自然科学は昔からジャーナルアーティクルが中心だったと思いますけれども、それ以外の人社含めて寄っていっているような状況があるというのが事実として確認できています。
その上で、先ほどイギリスの科学大臣の説明の中にもREF-able publicationとありましたけれども、やはりREFに出せる、1人4編までなので、そうすると、どんなものを出せるかというのを、下手に変なものを出すと大学自身の評判が落ちるので、大学の中で自分で委員会つくってセレクションするということを各大学の中でやっていてですね。
【林(和)委員】 ああ、そのプロセスではジャーナル論文に寄ってしまいますね。
【林(隆)委員】 そうなんです。そういうところで、恐らく一部の大学はインパクトファクターみたいな指標も使いながらセレクションするとか、そういうことをしていると思うので、そういうことで寄っていくんだと思います。
なので、後半の議論にも研究者評価のところもありましたけれども、国の制度よりは、個々の大学とかそういうところでどういうことを行っているかは、かなり影響しているんじゃないかなとは思っています。
【林(和)委員】 それで、日本は多分この流れを、どうも追っかけているような気配は感じていて、この後同じようなデータで出てきそうだなという予察を実は持っているので質問させていただきました。
それに関連して、次の質問に移ります。結局、このような議論、評価のポイントが分かる評価者の教育ということが今一層大事になっていく中で、イギリスはどうされているのかと、あと、イギリスの事情はあくまで参考として、日本は日本なりの文化、環境要因があるので、それを踏まえて、どうやって評価者を育てていくのがよいのかを伺えればと思います。そして、この育成において、やはり学術情報流通の正しい姿を表裏合わせて理解いただくことが重要という議論につながってくると思っています。取り急ぎ現状はいかがでしょうか。
【林(隆)委員】 イギリスの場合は、日本なんかよりもしっかりと研修みたいなことをやっていて、あるいは各分野別の部会ごとの会議を何回もやっていて、そもそも、その提出を求めるガイドラインのところに多様な研究をちゃんと認めるということが書いてあって、それが検証される形になっていますので、そういうことは行われていると。
日本の場合も、私の経験でも、評価者への研修のところでは、やっぱり評価者の先生は見識があるので、ちゃんと自分で論文を読んでピアとして判断したいとおっしゃる方も多い。なので、各個別の先生方は、そういう思いは強く持っていらっしゃるんだと思います。
ただ、もうちょっと全体として、そういう方向に推し進めるということであれば、やはりさっきの日本学術会議の提言のような形で、何とか国全体として、そういうようなピアレビューが必要だという共通認識を盛り上げていくということを、もうちょっとする必要があるのかなとは思っています。
【林(和)委員】 今のを踏まえて感じたんですけど、組織として判断する際に、先ほどもちょっとエピソードで御紹介いただいた、やっぱり中間の組織でまとめるときに、どうしても定量的にみて便利なものに頼って判断したことにしてしまう(そして成果の多様性が結果的に失われる場合もある)と、そういうところをいかに、より健全にするかというのは大事なポイントなんだろうなということを私自身、改めて気づきました。ありがとうございました。
【引原主査】 ありがとうございました。
では、続きまして阿部先生、よろしくお願いします。
【阿部オブザーバー】 ちょっと今の話に関係するんだと思うんですけれども、20ページの資料、非常に興味深く拝見しまして、第2期ですけれども、論文データベースに基づく評価者への参考情報の提示というので、被引用数とか、インパクトファクターとか、何かこれ評価者に、第1期においては御提示されていたわけですかね。それが何か影響していない、しているという話もあるんでしょうけど、参考にしたよという以上の人は65%ぐらい、どうもあるみたいなんですけれども。やっぱりこれにある程度影響されているのが第2期とかの評価なのかなという気がちょっとしたんですけれども、それはどうかなというのが1点と。
あと、第3期も似たような方式になりそうですかというふうな、ちょっとインナーな情報かもしれませんけど。それになるとすると、今の話的に、より健全な方向に向かうべきだとは思うんですけれども、健全な方向の、やっぱり指標は指標で、それは見ざるを得ないのかなというのが現実にも見えるんですけど、いかがですか。
【林(隆)委員】 ありがとうございます。20ページの資料で、まず81%の人が参照したと書いてあるんですが、それはデータをお渡しした人が80%くらいだったと。つまり、歴史学の先生とか、渡すデータもないので、そういう意味では8割くらいの人にデータを渡したということですけれども。
今おっしゃったように、何らかの参考にしたという人は、確かに8割くらいになりますかね。若干利用することがあったみたいな、そういうのも入れれば。
ただ、ここで申し上げたのは、必ずしも、そのサイテーションのデータで直判断をした人はかなり少ないということは申し上げたかったことです。
私も評価機関にいたので、そもそも、お渡しする前に評価者へのお願いとして、それで、そのまま判断しないでくださいということは、当然ながら、お願いをしていたわけです。
その上で、こういうデータを出すことがいいのか悪いのかということなんですが、一応、私がいたときの判断としては、「ピアレビュアーは多様なデータの下で主観的な判断をすべきだ、様々なデータを見ながら判断をすべきだ」というスタンスにありましたので。先ほど申し上げたように、各大学は各大学でちゃんと、この業績がなぜ優れているかの説明はつけてくるので、それプラス、サイテーションのデータを一つの参考情報としてお渡しするという、そのくらいな位置づけのものとして提供したという形になります。
それがいいのかどうかというのは、ほかの方の批判を仰がないといけないかもしれませんけれども、そういう話になっています。
次の第3期は既に、実は評価としては終わりかけているところで、私はもう評価機関の中にいないのでインナーな情報は分からないんですが、ただ基本的には、やはり同じように引用数のデータは評価者にも提供していますし、今回は大学の方にも、評価者が見るのと同じデータは提供するという形を取っていましたので、2期よりは、かなりシステマティックな形で、システムとして動く形で、やはり引用数のデータは参考情報の一つとして使ったという形になっています。
【引原主査】 阿部先生、よろしいでしょうか。
【阿部オブザーバー】 どうもありがとうございます。非常に有用というか、現状の職務上ですけれども。どうもありがとうございます。
【引原主査】 じゃあ順番ですけれども、小賀坂様、よろしくお願いします。
【小賀坂委員】 科学技術振興機構(以下JST)、小賀坂でございます。どうもありがとうございました。
質問といいますか、コメントさせていただきますけれども、JSTにおきましては、これまで評価関わってまいりますと、ほぼ論文との定量的指標というのは使われていないように思っております。
論文が登場する場面は、事前評価においては、研究遂行能力のエビデンスとして使われることが。これは家先生がおっしゃったのと同じことです。
それから事後評価においては、波及効果のところで、その論文の量というのははかるのかなと思いますけれども、基本的には目標達成度でもって評価をするということなので、もはや、あまりファンディングデシジョンの局面では、定量的評価というのはないんじゃないかなという気はしております。
実際に、おっしゃった記述形式の提案書ないし成果報告書でもって評価するんですけれども、ただ、ここはやっぱり困難さが出てまいりまして、完全に支援的な評価であれば、ケーススタディーですとかで対応できると思うんですけれども、どうしても、ここは査定的な評価が必要になってまいりますので、その場合には基準が必要になると。
この場合、基準は、分野常識によらざるを得なくなってくるのですが、もし今後、そういう定性的評価を強化するのであれば、どのように分野常識に根差した評価基準を打ち立てるのかということは、これまで以上に求められるのかなと思われますのと、やはりJSTのファンディング見ていましても、分野融合的な、分野横断的な提案や研究領域が増えてまいりますので、ますますピア、若しくはエキスパートパネルの常識による評価というのが、暗黙知の世界ですと困難さを帯びてくるのかなということは日々感じております。
ですから、この今発表された日本学術会議の提言が、その辺どこまで踏み込まれるのか分かりませんけれども、できるだけ、その後に続く評価の技術の開発がやりやすいような感じになるといいのかなと感じておりました。
ありがとうございました。
【林(隆)委員】 コメントしていいですか。ありがとうございます。日本学術会議では、正におっしゃるとおりで、分野ごとに一体どういうものを質の高い研究として考えていくべきかというのを議論できればいいと思っています。ただ一方で、分野によっては、そういう標準化をすることを嫌うというか、そういうことに抵抗もあったりしてですね。
ですので、ある程度の多様性を前提としながら、多様ながらもどういうものを見ていくのかと、そういう議論をもう少し醸成させなければいけないと日本学術会議でも一応、方向性としては考えています。そこまで、まだ議論は進んでいませんけれども、おっしゃるとおりだと思います。
以上です。
【引原主査】 では次、尾上先生どうぞ。
【尾上委員】 いろいろ御説明ありがとうございます。非常に興味深い内容であります。
26ページで、林先生も御懸念出されていたところなんですが、この共通指標の配分のところなんですけれども、昨日でしたっけ、出た令和3年の予算案だと、この辺は850から1,000億にアップして、更に振れ幅もアップしている。去年から今年になったときに、この論文数、業績数って非常に端的な数値で判断されるというのが多分、増えているので、恐らく令和3年度も、そんな方向に行っちゃうのかなと思うんですけれども。
一方で、先ほどおっしゃっていただいた、20ページに出ていた2期の評価のときに、数値的なものがどれぐらい参考にされているかというところとの兼ね合いというのは結構あると思うんですよね。
この辺りは、例えば先ほどの20ページに出ていた、どれぐらい参考にされたけれども参考にしていない人がどういうふうにいるとかという情報は、この共通指標とかの評価のところとか、そういうところにフィードバックってされているものなんですかね。すみません。
【林(隆)委員】 まず、具体的に法人評価の結果がフィードバックされているかというと、そういう状態ではないと思います。
ただ、この26ページの資金配分のところ、私も今、国立大学協会の関係の委員会の委員もやっていますので、やはり議論はしていて、この研究業績数も本来は、やはりほかの国みたいにピアレビューの結果、日本で言うと法人評価の先ほどの研究業績評価の結果なのかと思いますけれども、ピアレビューの結果を、本来は利用すべきだというのが前提であり、ただ、先ほど申し上げたように、最新の評価が今ちょうど終わりかけているくらいの段階なので、まだ使える状態にはないので、しようがないから研究業績数を使うことでよしとしようというのが一応、国立大学協会の委員会での議論になっています。
ですので、それが今後、どういう指標を使い、どういうところはピアレビューをちゃんと活用していくのかということは、まだ議論が煮詰まっていませんし、あるいは、もうちょっといろんなところで、そういう議論が醸成していかないとうまく進まないと思いますので、この部会も含めてですけれども、指標の使い方の在り方というのは多面的に議論がなされるといいなとは思っております。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。尾上先生、まだ続きございますか。手が挙がっていますけど。
【尾上委員】 すみません。下げます。
【引原主査】 ほか、いかがでしょうか。
今お話を聞いていますと、評価指標という意味では、あらかじめこの指標が最初から提示されていて、その上でデータを出してきて評価するというんじゃない。後でこうであったという話になると、どうしても疑心暗鬼になって、お互いに競争してしまうという方向が、第2期のときはよくあったように思うんです。特に内部の委員会でという話がございましたけれども、委員会に出ていくときは本当に多様なもの出ていっているんですけれども、そのときに、やっぱりふるいにかけて、トップ1%とか10%だけしか許さないというような、何か憲兵のような人たちが現れてくるわけです。
だから、それは、やはり最初に指標が出た上で報告をさせていくということが本来あるべき姿なんじゃないかなと思うんですけど、その辺は林先生いかがでしょうか。
【林(隆)委員】 難しい話だと思います。先ほど林和弘委員の方からも質問があって、それで私、イギリスの話はしたんですが、今、委員長おっしゃったように、日本も全く同じで、評価機関としてはいろんな業績あってもいいとは言っているんですが、各大学の中で、今、委員長言われたように、引用数でふるいにかけて、その結果を出してくるのが行われているというのは私も聞いていますので、日本も、やはり各大学の中での扱いというのが課題かと思います。
ただ一方で、事前にどういう指標がいいというのをどこまで出せるかというのは、なかなかやっぱり難しいところがあって、多様な研究業績でいい、多様な評価の観点があっていいと言いながら、どこまで共通の指標を出せるかというのは非常に難しくて、それはやっぱり分野ごとのピアの委員会とか、そういうところで決めてもらうしかないんじゃないかと私は思っています。日本学術会議の先ほどの議論も、やはりそういうところに資することができればと思っていますので、そういう議論をもう少し進められれば、ある程度、多様性は担保しながらも、こういう指標は一つの標準的なものとして見られるとか、そういう議論がもうちょっとできるんじゃないかなとは思っていますが、日本はまだそこまで、そういう段階までは行っていないかなと思います。
【引原主査】 ありがとうございます。結局、ジャーナル問題の検討部会としましては、インパクトファクターを目指さないような点検のやり方とか、あるいはデータベースのうまい運用の仕方で、どのデータベースで評価していてもあまり変わらないんだよというような情報ですね、そういうものが表に出てこないと、結局Scopusだけでは駄目で、Web of Science買って、MicrosoftのAcademicを買ってと、そういうところに流れていくわけですよね。だから、それはどれであってもかまわないから、その指標でコアな部分だけ見るとか、そういうようなことが提示されないと、結局、無駄なお金をここに投資することになりますよね。
評価されるデータは評価側から提示しますから、その中で自分たちの挙げてくださいというような、そういうことをするかですね。
何か前提条件がないまま、どんどん、どんどん境界を広げていって、お金を出した者が勝っていくような、そういうやり方というのは、やっぱりよろしくないわけですよ。
だから、そこの定義の仕方と、掛けていくジャーナル、あるいはそのデータベース等への資金の関係というのが、やはり問題になるのではないかなと思うんですけど、それはいかがでしょうか。
【林(隆)委員】 そうですね。実は説明飛ばしたんですが、お手元の27ページにノルウェーの例があって、これは何かというと、商業データベースじゃなくて、国として多様な研究業績が入力できるシステムをつくっていて、ただ、そこに、どういう業績を入れるかというと、例えばピアレビューを受けている論文や書籍じゃないといけないとか、そういうものはちゃんと、日本で言えば大学協会の下にあるような部会みたいなところで、対象となるジャーナルと出版社を選定すると、そういうことをしています。
こういうふうに、ノルウェー以外もフィンランドとか、北欧はみんな、こういうやり方をやっていますが、商業出版データベースじゃないものを使って、しっかりと指標化をしていくという取組は、また別にあってもいいと思っています。もちろんScopus、Web of Science、どれ使ってもという話もあってもいいとも思うんですけれども、それ以外の策というのも、もうちょっと考えてもいいのかなとは思っています。
【引原主査】 その辺が、ひょっとしたら多様性という部分の重要なポイントなのかもしれません。ありがとうございます。
ほかに御質問ございませんでしょうか。まだ、もう少し時間がありますけれども。御質問がなかった先生方、いかがでしょうか。どうでしょうか。
ジャーナル問題という観点からというところで、ちょっと難しい御説明を頂いたかと思うんですけれども、評価側が、そのジャーナル問題の影響を落としているかどうかというのが、ここは大きなポイントなんだと思いますが、JSTの方は既にそんなことはやっていないと小賀坂さんはおっしゃっていましたが、皆さん本当にそう思っていないところが、また問題でして、JSTに出すときは、そこを必死になって、みんな出していると思うんですね。
最初のふるいのところぐらいしかということで、ファンディングデシジョンではないといいながらも、そこはどうしても入れるとは思うんですけど。
小賀坂さん、手が挙がりました。よろしくお願いします。
【小賀坂委員】 もう少し詳しくお話をしますと、結局やはり分野の先生方が集まって評価会をやるんですけれども、その先生方個々人の御認識あるいは分野の認識として、これくらい論文出ているべきだと。例えば提案書に、こういうふうに研究構想を書くなら、それを支えるエビデンスとして、この程度の論文は出ているべきとか、あるいは事後評価あるいは追跡評価において、この分野だったら、これくらいの本数の論文は出ていてしかるべきだと、そういう御発言が委員の先生方から出ることはあります。
私の印象ですと、それは評価基準としてビルトインされているというよりは、ピアないしはエキスパートとしての評価者が自らの内に持っている評価基準の中に、論文の本数という定量的な数字が入っているんだと思います。
ですから、パネルの中でも、いや、論文の数など関係ないんだとおっしゃる先生方もおられますし、そういう見方をされているというのが私の経験上のことでございます。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。先ほども研究遂行能力を評価するときに使うぐらいかなとおっしゃっていたのは、その辺また、当にその点だと思いますけれども。
あと、すみません、手を挙げていらっしゃいますね。小安先生、どうぞ。
【小安委員】 小賀坂さんに今のフォローアップで伺いたいのですが、JSTでも、例えばプロジェクトの評価、終了評価をしたときに、経験したことがあるのですが、分野によっては、プロジェクトの開始から論文が出るまでの時間というのはすごく違っていて、現在ライフサイエンスですと、きちんとした仕事をまとめようとすると四、五年は簡単にかかります。そうすると、プロジェクトが終わった頃には、まだ論文は出ないことが多いです。見ていると、プロジェクト以前の成果が、そこに何となく入っている場合というのが結構多くて、評価に困ったことがあります。そういう点はJSTで議論されているのでしょうか。
【引原主査】 小賀坂さん、どうぞ。
【小賀坂委員】 JSTワイドで統一的な基準があるかというお尋ねであれば、そういうものはないんですけれども、事業を長くやっておりますと、その事業の性格や分野の資格によって、何となくJSTの職員の中にも常識感というのが生まれてきまして。
ですから、例えば1年目、2年目の年度の成果報告書に、例えば10本、20本、論文が並んでいるところはおかしいというようなことは当然分かりますし、パネル、プログラムオフィサーからも、これ何か交じってないかというような御指摘は頂いたりします。
論文の出方についても、御指摘のとおりで、そこが顕著に表れるのは、やっぱり先生御指摘のとおりの終了直後評価です。
例えば、個別のことを申しますと、CREST(戦略的創造研究推進事業)なら5年半実施すると、5年やったんだからこれぐらい出ているんじゃないのかねというような御質問が出る領域もあれば、論文はこれからですねというようなコメントが出る領域もあります。
それから面白いのは、この先生のこの研究は、論文なんか後回しでいいから、どんどん研究してもらったらいいよという御意見が出ることもあれば、まずは先取権取得のために論文出さなきゃというアドバイスをなさる先生方もおられるということで、かなり多様だと思います。
以上です。
【引原主査】 ちょっと話がそれてしまうかもしれないので、もう一回戻したいと思うんですけれども。先ほど機関の評価をされるときに、林先生の方から御説明ありましたけれども、機関としての全体ではなくて、その中のミクロな評価というのは、どういうふうに位置づけられているんでしょうか。ちょっと個人的な興味になるのかもしれませんけど。
【林(隆)委員】 個別の研究業績の評価が大学全体の評価にどうつながっていくのかという話と理解しますれば。
【引原主査】 そうです。はい。
【林(隆)委員】 日本の現状の仕組みだと、各大学から出された分野別、分野ごとのそれぞれの研究業績は、科研費と同じで、分野・分科・細目みたいな構造で評価者が評価をするわけですが、その段階判定したものが、学部単位で集計がされる。ですので、そこになると、集計値として戻ってきて、その集計値を参考にしながら、もちろん研究業績だけじゃなくて様々な研究の体制であるとか、共同研究の状況だとか、いろんな視点がありますので、そういうのも含めて学部単位の研究の評価がなされるというのが、今の日本のやり方になっています。
ただ、そんな、せっかくのデータを、どんどん丸めていっていいのかというのは、ちょっと悩ましいところだと私は思っていますけれども、そういう形で動いています。
【引原主査】 なるほど。ありがとうございます。ピークが立っているものを丸められたら、ほとんど意味がなくなってしまうということになるかと思いますけど。
小安先生、手が挙がっていますけど、御質問。違いますか。
いかがでしょうか。林先生の方からは文部科学省というか、この委員会というか、全体としての方向性、評価をどうするかという問題よりも、こうあるべきだというのを出していくべきだというお話があったと思うんですね。ファンディングは既に使っていないという話を小賀坂委員から話があって、じゃあ今起きていることは一体何なのかという、その分析が、これは何か単に井戸端か、疑心暗鬼か、その辺のところで動いちゃって、機関の方が、それを決めてしまっているようなことになってしまっているのではないかと見えるんです。それに一体どこから切り込んだらいいかというのは、どうでしょう。もうジャーナルは関係ないよと言っちゃっていいかという問題があるわけですけれども。誰か御意見ございましたら、よろしくお願いします。議事録に残して……。
【阿部オブザーバー】 阿部なんですけど、よろしいでしょうか。
【引原主査】 はい、どうぞ。
【阿部オブザーバー】 今のお話とちょっと逆のことを示すのかもしれないんですけれども、リアルに連動していると思われます、大学の現場ではですね。
やっぱり大学の中期目標とか中期計画側の評価、第2期とか、第3期とかいう部門における業績をお出ししているわけですけれども、それが疑心暗鬼かどうかは別にして、それとちょっと連動する形で、例えば学内の成果的なものも、ピアが入った分で、サイテーションでインパクトファクターとか、やっぱりそれがあるというのが現実だと思うんですよね。それの基になるものは、やっぱりジャーナル。今だと、もう電子ジャーナルという形になっていて、マクロ的には、やっぱりそういうものから脱却して、特にコストかかりますので、そこら辺から、例えばフォーサイエンス的なものとかに行くべきだという議論はあるんだと思うんです。
けれども、今現時点においては、やはりそこら辺にかなり連動性があって、イヤーのあるジャーナル、それが評価、学内とか大学とかの評価で、結果的にジャーナルのようなものから離脱できないとかですね。
それをどうしましょうかという話では、かなり強く連動している現実があるのかなというのが現場の立場なんですけど、特にそういう意味で、先ほど第2期とかの評価のときに評価者に、ああいうものがあらかじめありました、渡されていましたというのは非常に重要と取られてしまったんですね。
ただ、引原先生おっしゃるとおり、事前に、この評価、この指標が大事だよとか、基づくよということがはっきりしていれば、逆に見えるかなということもあるのかもしれないかなとは思います。
ただ、この時点においては、現場における状況はそんな感じですね、と思われます。
【引原主査】 ありがとうございます。筑波大学としては、前々回ですか、御報告いただいたF1000Researchの試みとか、そういうのも別の流れをおつくりになろうというところだと思いますし、プレプリントなんかもそういう話だと思いますので、傾向として、今後の準備をしておかないといけないんじゃないかというのが、ここの委員会だと思います。
今すぐは、当然ながら、今の指標を使えるものを皆さん使って、少しでも上に上がろうとするわけですけれども、そのときに、もっとオープンサイエンスとかオープンデータ、あるいはジャーナルの今の在り方を見直すための準備を、どうやって図っていくかということを考えて動かないといけないだろうと。
それが中期から長期に当たるところのジャーナル問題の取組として重要なポイントなんじゃないかなと。
評価に使うか使わないかは別として、それ以上のもっと広がりをつけておかないと、結局は同じ指標、物差しでしか見てもらえないからデータベースを買う、あるいは特定のジャーナルを目指すという流れをつくってしまうということになるわけですよね。
だから、理想論を申し上げていますけれども、その辺のコメント等を残しながら、方向性をコメントしていくことが重要なんじゃないかなと思っております。
今日、もう次の話になりますので、現状では一応そういうことにさせていただきます。
何かもう少しお話になりたい方いらっしゃいますでしょうか。
【阿部オブザーバー】 すみません、阿部なんですけど、おっしゃるとおりだと思います。うちのF1000Researchとかの話というのが、日本語とか人文系の論文が結局そういう指標に引っかからないという弱みがあって。
要するに、ゼロを1とか2とかにするというのと、2とか3とかを10とか50とかにするというのが、ある意味、ちょっと違う話かもしれないので。例えば筑波大学で言うと、人文系というのは、かなりな領域、割合を占めていますので、そこに載せられる指標。今、引原先生おっしゃったように、いろんな指標を用意するとか、そういうことが求められているという認識の下で、ちょっとトライアルしているとか、それぐらいはあると思います。
【引原主査】 ビジビリティーを上げるトライアルというのが本当は一番価値があるのかもしれないなと私は思ったりしているわけです。それがその次につながるわけですから、すぐ、今リアルタイムにそれが返ってくると考えて準備する余裕があるかどうかというのが一番重要かなと思いますね。
そうしましたら、林先生どうもありがとうございました。では、引き続きよろしくお願いします。
では、次の議題に移らせていただきたいと思います。次の議題につきまして、事務局からよろしくお願いいたします。
【三宅学術基盤整備室長】 事務局でございます。それでは、私からは資料2に基づいて説明させていただきます。
前回、中間まとめを御議論いただきましてありがとうございました。ジャーナル問題検討部会、科学技術・学術審議会も含めて、今期の期の終わりが2月に控えておりますので、今期のまとめという形で本検討部会の議論のまとめを作成したいと考えております。ジャーナル問題検討部会については、次回1月が最終回ということで予定をしておりまして、そこで一旦、今期の議論のまとめというものを整理させていただきたいと考えております。
中間まとめ以降、並行して様々な御議論を頂いておりますが、第6回から第8回の議論を踏まえまして、中間まとめに肉づけをするという形で、今期のまとめの案を作成させていただきました資料2につきましては、中間まとめからの更新部分のみ赤字で表記をさせていただいておりまして、こちらについて御議論をいただければと考えております。
前段の部分、1ページから5ページ辺りまでは若干の時点修正と、あと後段の修正に伴った変更はございますが、基本的に内容への変更ではございませんので、変更させていただいている5ページの(3)中期的課題以降について簡単に御説明させていただければと考えております。
まず最初は前提の部分でございます。短期的な課題への対応が当面のアクセス維持の緊急対策であるならば、中期的課題への対応は、これから出版される論文も含めた学術情報資源の分散配置とアクセスする仕組みの構築である。そのための手段は、少なくともこれから出版される公的資金による論文について、オープンアクセスを原則とすることであると書かせていただいています。
これについては、既に「学術情報のオープン化の推進について(審議まとめ)」において、公的研究資金による論文については、原則公開とすることを第5期科学技術基本計画中に実行すべきだと明記されており、オープンアクセス論文が増加傾向であるものの、実行できているとは言い難いという前提で、書かせていただいております。
そのため国は、公的資金による研究の成果としての論文の原則オープンアクセス化を研究者に求める等、より実効性を持たせる必要があるとさせていただいています。こちらは、第6回の林隆之先生からの御意見を踏まえて記載させていただいております。
なお書き以降でございます。なお、出版社の中には、購読契約をしている大学には、著者最終稿を閲覧できるサービスを開始するところも出てきている。同サービスを否定するものではないが、出版社の都合により閲覧が終了することもあり得る。これは第8回における引原主査からの意見を参考に記載させていただいております。
続きまして、グリーンオープンアクセスを主軸にしてきた我が国にとって最も重要なことは、著者最終稿及びエビデンスデータを大学等研究機関がそれぞれの機関リポジトリに保有しているという点である。これは、現在、我が国で進めている研究データの管理・利活用についても共通のものである。こちらは第8回で谷藤委員からの御意見を参考に記載させていただいております。
続けます。近年、世界的には、出版する論文のエビデンスデータの公開を必須若しくは推奨しているジャーナルが増加しており、ジャーナルにおける研究データポリシーの整備が潮流となっている。加えて、出版社が持つリポジトリの整備も進んでいる。こちらは第8回の小賀坂委員の発表を参考に記載させていただいております。
この潮流に乗り遅れないようにするため、我が国の学協会においては、発行するジャーナルの研究データポリシーを策定した上で、研究データリポジトリを整備する必要がある。研究データリポジトリの整備に関しては、JSTが現在試行運用しているJ-STAGE登載論文に関連する研究データを搭載するリポジトリである「J-STAGE Data」や国立情報学研究所が開発を進めている研究データを平易に保存・管理・公開することができる「NII-RDC」の活用も考えられると。こちらは第8回の山口先生からの発表を参考に記載をさせていただいております。
続きまして、長期的課題に関してでございます。
これまで、学術情報流通の在り方は、時代とともに大きく変遷してきた。手紙や電話等の研究者個人の交流から始まり、17世紀末には学術雑誌の創刊、20世紀には商業化の進展、そして情報通信技術の飛躍的な進展に伴い電子ジャーナルが急速に普及することとなった。加えて、プレプリント、動画ジャーナル、データジャーナル等の新しい学術情報流通の形が従来のものを補完ないし代替している。物理学、数学、計算機科学、情報学等の研究分野においては、プレプリントを共有し、プレプリントを引用するという文化が既に醸成されており、これは研究サイクルの速さに従来の査読システムが追いついていないということを示し、また、従来の査読システムに乗らない学術情報流通の形が既に生まれていると言えると。この辺りは、第7回の林和弘委員の御発表を参考に記載させていただいております。
なお、Open Research Centralのように、論文をまずはデータとともに公開し、その後、透明性の高い査読とコミュニティーからのコメントにより改訂を加えていくという出版プロセスも現れている。例えば、筑波大学ではF1000 Research社と契約し、研究者が英語又は日本語で論文が出版できる筑波大学ゲートウェイを構築する等、上述のような「F1000Research 出版モデル」の今後の展開が期待される。こちらは第7回の筑波大学様からの御発表を参考に記載させていただいております。
以下、このように学術情報が多様化する現在、研究評価の観点ということで、本日の議論を踏まえて、追記を進めたいと考えております。
続きまして、5ポツでございます。中間まとめでは中期的な課題と長期的な課題で、それぞれで記載させていただきましたが、今回は最後にまとめて、その引き続き検討を要する事項として、まとめて記載をさせていただいてはどうかということで、このように整理をさせていただきます。
前段の部分は導入でございます。ジャーナルを巡る動向は現在も刻一刻と変化し続けており、世界の研究コミュニティーに学術情報流通の在り方を見詰め直す契機を与えている。現状、研究コミュニティーは、「オープンサイエンス」という理念の下で、出版界とも呼応し、あるときには相反しながら、あるべき学術情報流通を追い求めている状況である。さらに、我が国においては、科学技術・学術分野での世界における我が国の国際競争力や国際プレゼンスの向上を果たすことも求められる。このため、今後も、以下の観点、事項について継続して検討していく必要がある。
これ以下につきましては、本日これからの議論を踏まえて追記を進めたいと思います。
御参考までに、中間まとめに記載の観点ということで、研究成果公開の在り方等々の観点の記載事項、またページをおめくりいただきまして、研究成果の発信力強化、研究評価の関係ということで3点ほど、中間まとめにあった記載を転記させていただいております。
このほか、これまでの議論になかった点として、図書館の役割、在り方等の論点も考えられておりますので、付記させていただいております。
以上でございます。こちらにつきましては、本日の議論を踏まえて再度修正の後、次回の検討部会において最終的な取りまとめに示させていただければと思っております。
以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございました。
まず、この前提となっています中間まとめでございますけれども、中間まとめを先月の情報委員会で御報告させていただきまして、そこで、情報委員会からの御意見も頂いております。中間まとめの段階で、こちらで申し上げましたのは、この委員会、それから情報委員会だけにとどめるものじゃなくて、ほかの委員会との議論に使っていただいて、更に情報を共有して、全体として動けるような体制をつくっていただきたいということでした。特に国立大学協会であるとか、日本学術会議等ということを申し上げております。
それはそれとして、本委員会が今年度として、あと1回ございますけれども、その時点で一区切りをつけておきたいと思います。その後のことは何とも、そんなことを考えて放置しておくわけにはいきませんので、ここで書き込んでおかないといけないことを、今日この後、忌憚のない御意見を頂ければと思います。これは確定稿ではございませんので、是非よろしくお願いいたします。急には難しいかもしれませんが、いかがでしょうか。倉田先生、よろしくお願いします。
【倉田委員】 細かいことで恐縮ですが、やはりこの書き方では、中期的課題と長期的課題で何が違うのかが全く分からないです。ポイントを絞って書いていただかないと、要するに何が言いたいのか、申し訳ないんですが、分からないです。
例えば、オープンアクセスをもっと推進すべきだというのは、中期的課題なのでしょうか。また、研究データに関して何か言うことは、中期的課題で、長期的課題ではないということでしょうか。この書き方では分からないですね。
少なくとも論文のエビデンスデータの公開というのは、中期的課題の中で述べてもいいことなのではないかと思うのですが、直接そうは言えなくて、ジャーナルの研究データポリシーの整備という話に持って行かないといけないということでしょうか。中期的課題では、今のジャーナルを、ある意味では前提とした上で、よりオープンなものに向かう方向を考えるという観点でいけば、オープンアクセスと研究データ、エビデンスデータとしての公開を、より進める方策を考えるべきであるということに集中してはどうかというのが私の意見です。
長期的な方に関しましては、もっと、やはり今日の林先生からの御報告も含め、ジャーナルだけでいいのかというのが、この委員会の多くの方が思っていらっしゃることではないのでしょうか。私は先ほどは発言できませんでしたけれども、引原主査からのコメントを私としてはそう受け止めました。商業的なジャーナルが中心に動くという学術情報流通そのものをどういう形で、コミュニティーと申しますか、我々研究者にとって、研究の実践を行うのに最も適切なやり方を考えるということを、具体的な課題としては今すぐ表現はできないのですけれども、そういうことを、せめて最後くらいは少し大きな話を言っては駄目なのかなというのが、私の勝手な感想でございます。
どこまでどういうふうに書いて、どこは書かない方がいいのかというところは、皆様のお考えとか、やはり方向性というのがあると思いますので、書けること書けないことはあるというのは十分承知しておりますが、それにしても、せめて今ある程度書けそうなこと、今動いていることを具体的に書く部分と、将来の方向として今はまだ具体的ではないが、考えなくてはいけないのではないかということとは、分けて書いた方がいいのではないかと思います。
その中間にあるのが、今回の研究評価の問題と密接に関係しているのが、雑誌の査読というシステムではないかと思っています。研究評価でも、基本はピアレビューということになるわけで、今の学術雑誌の査読システムは、そのピアレビューの最たるものというか、最もシステム化されている、最も明確に示されているものだと思います。
個々の研究の評価を、掲載された雑誌のインパクトファクターという簡単に定量化できる指標だからといって安易に使うのは単純に、本当にばかばかしいことですが、現在ハイジャーナルと言われている雑誌が、その根幹には査読システムを持っているということは忘れるわけにはいかないと思います。学術雑誌の査読システムはピアレビューの代表だと、出版社は主張できるわけです。
オープンアクセス、オープンサイエンスにしていくといっても、そこの最後の評価のところが、やっぱり何かひっくり返らない限り、結局は現在のシステムを変えることはできないのではないかと思います。ほかにも評価できるものはいろいろあるじゃないか、例えばカンファレンスペーパーやプレプリントを研究業績として評価したり、逆に査読していることを評価したりとか、いろいろ研究や研究者を評価する手段はあるとは思いますが、それだけでは、ちゃんとピアレビューを受けた査読済み学術雑誌論文というものの重要性は簡単にはひっくり返らないと思います。
そこのところ、査読とピアレビューと研究評価ということは、これは簡単には全然いかない話で、そういうことを中心に長期的な課題を、是非書いていただきたいなと思いました。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。倉田先生にそう言っていただけて初めて書けると思いますので、期待していたんですけれども。事務局がおまとめいただくのは、委員会で発言があったことを中心におまとめになります。それは非常に真面目な態度だと思うんです。ようやく倉田先生から本筋の話を言っていただいたように思います。ありがとうございます。
今は忌憚のない御意見いただいているわけですから、倉田先生の御意見に対してでも構いませんので、御意見いただければと思います。よろしくお願いします。平田さん、どうぞ。
【平田オブザーバー】 すみません、JUSTICE事務局の平田です。今回おまとめありがとうございます。
ちょっとお聞きしたいというか、確認したい部分があるんですけれども、6ページ目のなお書きのところですね。「なお、出版社の中には、購読契約している大学には」云々というところなんですけれども、ここのところをちょっと教えていただきたいんですが。恐らく前回御報告したElsevier社のことを、ここ指しているんだと思うんですけれども、この購読契約とは関係なく今、著者最終稿を含む提供可能なバージョンを閲覧させるサービスというのが出版社で出てきているんじゃないかと私、認識しておりまして、例えば、この点に関しては、CHORUS(Clearinghouse for the Open Research of the United States)と契約関係にあるJSTさんとか、千葉大学さんの関係者の方がお詳しいと思うんですが、その辺りのことを教えていただけないかなと思っています。
その際に、例えば今回のElsevier社の場合はそんなことないと思うんですが、そのような枠組みの場合は出版社の都合により閲覧が終了することがあり得るのかどうかというのも、ちょっと教えていただけたらと思います。
もしそのようなサービスがほかにもあるのであれば、この「購読契約している大学には」ということには限定なさらずに、こういったサービスに対する検討部会の見解を述べた方がいいのではないと思うんですが、いかがでしょうか。ちょっとこの辺、もし御存じの方いらしたら、教えていただけますでしょうか。
【引原主査】 ありがとうございます。ちょっと今、話が交ざっているかもしれないので。購読契約と最終稿の話と、それからCHORUS等の話ですね。それ、どちらからでも構いませんが。あと竹内先生、何か千葉大学のケースで、今、名前出てきましたけど、いかがでしょうか。
【竹内主査代理】 CHORUS云々ということ関係なく、商業出版社の中には、著者最終稿を閲覧できるサービスをやっているところはあります。これは主として様々なファンディングエージェンシーの出版に関する条件を満たすためにやっているのであって、契約購読している、してないということとは全く関係ありませんし、CHORUSのメンバーであるかどうかということについても関係ないと私は理解しております。まずこれが1点目です。
それから、このようなサービスを出版社がやめてしまうかもしれないということについてですが、どの出版社もいつかはやめますなんてことは言わないだろうと思います。しかし永久的にその実施を保証できる出版社が世の中に存在しているわけではないので、やめてしまう可能性だってあり得るというのは当たり前の話だと思います。
ただ、こういったことを、我々のまとめの中で案に示されているような形で書く必要があるのかどうかということについては全く別の問題で、ちょっと話が逸れてしまって申し訳ないんですけれども、この3つのパラグラフのうち、赤字で始まっているところは、まずオープンアクセスの義務化ということについての議論があって、その次にオープンアクセスの方法についての議論というのがあって、最後のパラグラフが、それに関連するデータのオープン化についての議論ということだと思います。そのように整理したときにこの中身が本当に妥当かどうかということをきちんと議論すべきだと私は思います。特に、なお書きのパラグラフについては、私個人としてはいろいろと違和感がある部分で、我々が今後、論文のオープンアクセスを進めようとしていく上で、どういうことを考えていくべきなのか、あるいはどういうメッセージを出すべきなのかという観点から、きちんと議論し直すべきではないかと考えています。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。平田さん、それで回答よろしいでしょうか。
【平田オブザーバー】 はい。ありがとうございます。そのように議論していただけると非常に有り難いかなと思います。よろしくお願いします。
【引原主査】 はい。じゃ、小賀坂さん、どうぞ。
【小賀坂委員】 JST、小賀坂でございます。竹内先生にお答えいただいたので、ほぼ尽きておるんですけれども、私の立場で、もう少し言葉を足しますと、なお書き以降のところで述べられていることといいますか、そこで私個人として述べた方がいいと思っておりますのは、オープンアクセスの形について、竹内さんおっしゃいました、要するに、物理的なデータを手元に持つか持たないかによって、やはりOAの形は変わってくるということが一つあると思います。
Elsevierのサービスについては中身知りませんけれども、CHORUSがやっているOA、それから各出版社が昔からベストアベイラブルバージョンという形で提供していますけれども、オープンアクセスの業界では、Elsevierもそうですけど、あれはグリーンOAとは呼ばれていないわけでありまして、一番の問題は、いわゆるオープンアクセスと呼ばれるものが備えるべき要件、特にライセンス要件を備えていないものもあります。
ですから、ここで書くべきことは、むしろ日本として、そういうものをオープンアクセスの形態として認めるのか、許容するのかどうかということかなと思います。
と申し上げた上で、多分これは委員会の中で、どこかで議論あったと思うんですけれども、アクセシビリティーを上げていくことはよいのですけれども、OAというタームにこだわるのであれば、よいことではあるけれども目的の達成には資しないということは、はっきりとメッセージとして出すべきかなと思います。
どんな形でも読めるようになっていれば我が国として満足ということであればいいんですけれども、不完全なライセンスのOAを認めてしまいますと、それはOAの本来の理念にもとるわけですから、委員会としてどういうメッセージを出すかということかとは思います。
以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございます。
手、誰が挙がって誰が挙がっていないのか分からないので、今、すみません。さっき高橋先生、手を挙げていらっしゃったと思うんですけれども。はい、高橋先生。
【高橋委員】 はい。挙げておりましたが、どこで発表したらよろしいのか、よく分からなかったものですから。
先ほど倉田先生の方からもお話があったことにも少し関係するのかもしれませんが、やはり短期的な課題で、ここに挙げてあるものに関しては、課題だけではなくて、次にやっぱり何をやるかということを、この委員会の中から何らかの、1つでもいいですし、2つでもいいので、ここをまず手をつけるべき。
情報委員会の方に、先ほど引原先生がお話しされたように、ここの委員会だけでなく、ほかのところまで組んだような検討の場が必要だということであれば、そこをやっぱり課題と解決のための道筋の全体像ではなくても、どこからアクションを取るのかということぐらいは、この中に書かないと。やっぱり検討だけして必要であるということだけが言われているので、ふんふん、そうなんだ、そうであるということは、よく分かるんですけれども。これまでの議論の記録として残すのは結構ですけれど、委員会として何を考えて、どう思うのかというのが、やっぱりどうしても必要なのではないかという気がいたしましたので、短期的なこととしては、少なくとも次の会で先生方、幾つの意見になるか分かりませんけれども、挙げて、書くべきではないかと思いましたので、手を挙げさせていただきました。
以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございます。積極的な方向というか、それを示すべきであるというのは、もうそのとおりだと思います。
と言いながら、私、誰も弁護するわけでもないんですけれども、前回の委員会のときに議論されたことが誰も実行しないという状況がありました。その中で実行しないといけないとかなり強く書いているんですけれども、現状として、実行してこなかったという実態があるわけです。
じゃあ何が問題だったかといったときに、結局は委員会で実行すべきだと言ったことが、どこにも部隊がない、動かすものがないというのが現実だったように思います。最終的には各大学で考えなさいよというような、そんな状況だったわけです。
ですから、今回、日本学術会議の御報告も頂きましたし、今、国立大学協会等でも委員会が動いていますし、ほかの委員会もございますので、ここは必ずしも孤立して誰が先にというのじゃなくて、全体が動けるような道筋をつくっていくのが今回、重要なのではないかなと私は思っております。そういう意味でも中間まとめを早く情報委員会に上げて承認を受けた後、ほかに広げていきたいと考えた次第でございます。
お話ございましたので、高橋先生の御意見も最後に、どういうふうに組めるかというのを検討させていただきたいと思っております。ありがとうございます。
小安先生、手が挙がっていますが、いかがですか。
【小安委員】 ありがとうございます。私も2つ、3つあります。やはり今の高橋先生と同じ感覚を持っていて、短期的課題のところに、「必要である」というのが3つ、4つあります。これをはっきりと、例えば最後のところには提言風に、やるべきことのようにして、箇条書のリストのようにしてくっつけるというのが一つの見せ方かなと思いました。
それから長期的課題のところでは、倉田先生がおっしゃったところに全て含まれているのかもしれませんが、評価に関しては、これ、この委員会始まる前のプレ会議のときに、喜連川さんと私が同じこと申し上げたと思います。やはり評価のことは絶対に長期的なところには入れるべきだと思います。それからもう一つ、ここ、本来は入っているはずなのですが、そもそも学術研究を遂行するために、こういうオープンアクセスとかデータの問題というのがとても大事だと思います。これまで得られたものを公開するというだけではなく、今後の学術研究を進めるために、今までとは違った仕組みがどんどん動いているのは事実だと思いますので、長期的には、やはり学術研究をうまく進めるためにどうすべきかという観点から、こういうことが入るべき問題のような気がします。何かそういう関係を少し書き加えていただけたら良いのではないかと思いました。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。最初の方は割とテクニカルな話で、この短期で議論したことは既にそれをやりなさいという方向で書きなさいということだと思います。長期の方は、そうなんですね。今日の評価の話もございますけれども、皆さん方の御意見の方向性がそろえば、ちゃんと書けると思いますので、一度、下書きをしてもらった上で、もう一度、議論した方がいいかなと思っております。
まだ小安先生、手を下げていただければ。平田さんも、どうなんでしょう。平田さん、まだ何か。手を挙げて……。違うんですか。
【平田オブザーバー】 失礼しました。
【引原主査】 すみません。じゃあ話、続けますけれども、長期の方がかなり重要だと思いますので、長期は、この委員会で終わる話じゃなくて、おっしゃるように学術としてどうあるべきかという話が、やはりこれあって、長期の視点を持って書かないといけないと思うんです。
倉田先生おっしゃったように、データに関するのは本当に短期に近いような状態で、私自身は本当はそこに危機感を持っていまして、ジャーナルの議論なんかしている場合じゃないというのは、どこかで言ったこともあるんですが、いつまでたってもジャーナルでオープンアクセスのポリシーも書けないような大学というのがいっぱいあるわけですよね。そんなのでジャーナルが問題だと言っている場合じゃないんじゃないかって。ちょっとこれ記録そのまま残っちゃいますけれども、これ言うと図書館の方に怒られてしまいますが、現実には、そうなわけです。
それは何かというと、結局、研究の現場を全然知らないからなわけです。差し迫った状態としてデータが今、その評価には上がっていないけど、あっという間に海外でも動いちゃうわけですよね。それが見えていないからということだと思うんです。
ということが、ここに書けるかどうかという話になるかと思いますので、倉田先生、最初に言っていただいてありがとうございます。
竹内先生どうぞ。
【竹内主査代理】 ありがとうございます。今出ていた話で申し上げると、6ページのオープンアクセスについて「原則オープンアクセス化を研究者に求める等」云々という記述がありますけれども、そこについては、はっきり義務化ということを書かなければ意味がないのではないかというのが、これまでの長い検討の歴史を踏まえればはっきりしていることだと思います。
それから、もう一つ重要なポイントは、やはり、このジャーナル問題検討部会が評価を扱う意味がどこにあるのかということについてで、先ほど来いろいろと御発言はあったと思うんですけれども、今日の林委員の御発表のスライドの11枚目にある、「研究成果がその質で直接的に評価されず掲載されたジャーナルなどで間接的に評価されている。それによって学術出版社の地位が強化される状況を生んでいる」という表現が問題を明確に示していると思いますので、この点を明確にした上で、長期的な課題としてまとめの中で展開していくというのが、ジャーナル問題検討部会としてのスタンスなのではないかと私は考えております。
ですので、それより前の諸問題というのは、基本的には中期的な問題として処理をしておくべきであって、長期的な問題というのは評価を絡めて展開していくということがいいのではないか。そうすると、先ほど引原先生がおっしゃっていたような、学術の問題としてこれをどう捉えるのかといったふうに展開できるのではないかと考えております。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。竹内先生に、かなり書きぶりのことを言っていただいていますので、委員会としては動きやすいと思いますが。それはそのまま先生に跳ね返るかもしれませんけれども、是非ともよろしくお願いします。いや、主査代理でいらっしゃいますから、よろしくお願いします。
阿部先生、どうぞ。
【阿部オブザーバー】 すみません、ちょっと言葉的なものかもしれないんですけど。短期、中期、長期と、そういう構成でなっているんですけれども、質問が1つと、ちょっとどうなのかなという指摘がもう一つあるんですけれども。
時間スケールはどのくらいなのかなというのが、短期、中期、長期という言葉を使うと、何となく読み手としては、それが気になるのかもしれないというのが1つあったんですね。5年なのか、10年なのか、本当に数年なのかと、そういうことが、ちょっと読んだ瞬間に出てくるかもしれないというのが1つと、それから(1)、(2)、(3)の短期、中期、長期、中身を、こういう形になった状態で読ませていただくと、例えば中期だと、これオープンアクセスに向けてという、何かそういうことの内容になっていそうで、(3)ですね。(4)の長期的という方は、どうも研究評価の方の内容にフォーカスされて、記載内容が組まれているのかなという、そんなふうにも見えて、(2)の短期的といった場合においては、本当に当面の課題で、先ほどお話あったみたいに、どうすべきかとか、どうしなさいとか、義務化みたいな話も出ましたけど、そういうものを含めた、本当にやるべき、できてやりそうなことは書くという、内容的には、そんなふうにも見えたんですけれども、いかがでしょうかということなんですが。
【引原主査】 ありがとうございます。最初のときに短期、中期、長期という言葉で分けさせていただいたんですけれども、これ私の感覚から言えば、短期的視点を持ってという意味で、短期に解決しないといけない問題という意味合いがかなり強かったです。中期的視点であって長期的視点というか、まだ先を見ながら今から始めないといけないのが長期だと。中期も、そういう意味合いだったんですけれども。
今、先生に言われて気がついたんですが、長期にすると、まだやらなくていいやとか、中期にすると、そのうち考えましょう、短期にすると、まあ、今から始めましょうと、何かそば屋の出前みたいな話になっちゃうわけですよね。
だから、それではまずいので、やっぱりここ、視点としてここに置きながら今始めることという書き方の方が多分いいんだろうなとは思います。それ今初めて気が付きました。ありがとうございます。
林委員、どうぞ。
【林(和)委員】 今の議論を聞いていて、少々気の早い話なのかもしれませんが、ジャーナル問題検討部会というジャーナルの問題に端を発しながらも結局、学術の将来を考えなければいけないことを念頭におくと、小安委員からの御指摘があった観点を、もう少し粒度を小さくして、成果公開共有メディアが変わろうとしている点を指摘したいと思います。(現状のジャーナルと論文以外の多様な)成果公開共有メディアの在り方という、そこの問題をこれから考えていくことが重要です。それは、すなわち研究データも踏まえてということで、我々が考えてきたことは既にジャーナルの世界を飛び越えたところに踏み込んでいることを認識する必要があります。これを一足飛びに学術の将来としてしまうと、本当に雲をつかむ話になりますが、よく学術論文というのは学術情報流通の貨幣という表現をされることがあり、それをもって、レピュテーション(評判)、プロモーション(昇進)、それからバジェット(研究費獲得)につながるという研究活動の世界があるわけですが、その流通の単位、メディアが拡張しているという文脈で、研究成果公開共有のメディアが変わろうとしていることを、最初か最後かに書くような話だと思います。倉田先生の御指摘の中に既に十分含まれていたとは思うんですけれども、改めて、粒度感を少し小さくして指摘できると思ってコメントさせていただきました。
【引原主査】 ありがとうございます。視点として、要するに、どう見るかということだと思いますね。ありがとうございます。
かなり皆さん方の意見で、これは、それ詰めるだけでも物すごい大変なことになるなと思うんですけれども、しかしながら、委員会としての意見としては強いものが出るかなと思います。まとめはまとめだったんですけど、この最後はまとめで終わるかどうかは別として、表現を考えながら、そこは入れ込ませていただきたいと思います。
まだ、もう少し時間ありますけれども、何か御発言いただければと思いますが。林先生、どうぞ。
【林(隆)委員】 議論としては、皆様がおっしゃった話と基本的には一緒なんですけれども、最初のところのオープンアクセス、私、今日のプレゼンでも申し上げましたが、評価機関にいたときも結局、明確なメッセージがないと全く動けなかったんですね。例えば次の大学評価の設計も始まりますから、そうすると、次の大学評価で検討することが必要であるとか、あるいは、私、さっきも国立大学協会の評価の委員会も入っていると言いましたけど、この文書を見たって、その委員会でオープンアクセスの論文しか論文数としてカウントしないように変えようなんて、正直この提言だけで、そんなふうに議論しようなんて思わないので。そうすると、もうちょっと何か現状に対して、このままでいったら問題があるみたいな、何かもうちょっと明確なメッセージと、誰が議論を引き継いでやらなきゃいけないという、その主体をはっきり書かないと、恐らく次の議論に続かないような気がするんですね。
なので、ここ、もし本当にオープンアクセスのところを進めていただけるのであれば、大学評価機関なり、あるいは次の交付金の指標等でオープンアクセスの論文に、例えば限定することもあり得て、それをどこが検討するかとかですね。もちろん日本学術会議もあるんですけれども、何かそういう検討する主体をはっきりさせた方が、次の議論にはつながると思います。
ちょっと言いながら、どこまでそんなことを本当に求められるんだろうかと思っているのは私も半分あるんですけれども、ただ、本当に動かすんだったら、そこまでやらないと動かないなという気がいたします。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。多分、そこまでやっても動かないというのが現実かもしれないなと思うんですけれども。揚げ足取るようで申し訳ありません。
前期の委員会のとき、これは竹内先生の方がよく御存じですけれども、かなり強い、こうあるべきだと、グリーンオープンアクセスということも言ってきているわけですけれども、まだ時期が早過ぎたのか、あるいは意識が足りなかったのか、皆さん動かれなくてというのが現実だったと思うんですね。
今回、また同じようなことで終わらせるわけにはいかないので、やっぱり体制として、基本的にはグリーンオープンというのがバックアップで必ずあって、それ以上のものを目指すところはゴールドでも何でもよいということでというのは基本であると思うんです。その辺のところは、もう少しニュアンスとして出して、そのベースは固めた方がいいと思います。
今の場合、それ、やらなくてもいいんだというのは、まだ残っているような気がしますので、そこは必要かなと思います。
さっき言い忘れましたけど、言い忘れましたというか、言っていいのか悪いのか分からないんですけど、この間のまとめの、中間まとめをここで議論しているのを公開されているわけですが、その議論を受けて、ある関係者が、やはり契約主体として組むべきかという動きも始まったりしています。ですので、公開されている場でまとめ、あるいはこういう議論しているということが、かなり国立大学協会であれ、図書館関係を動かしたりとか、大学の執行関係に、かなり刺激を与えているのは事実です。ですので、その人たちが動きやすいように最後まとめていくのが必要かなという視点もあるかな、と私、思いました。
国立大学協会であるとか日本学術会議は、やはりイナーシャが強くてなかなか動かないんですけれども、現場と一緒であれば動き出すとは思いますので、そういう視点もちょっと入れた方がいいかなと思います。
まだもう少し、あと一、二分ですけれども、何か最後に、じゃあ御意見、もしございましたら。最後というと言いにくいかもしれませんが、御発言がなかった方も、いかがでしょうか。小賀坂さん、どうぞ。
【小賀坂委員】 公開の場で、ちょっと申し上げにくいんですけれども、ファンド機関の担当者として、オープンアクセス方針を強化するのにためらっている理由は、ファンド機関が強化したときに、困るのは研究者自身なんですね。グリーンOAをやりなさいといったときに、研究者は全部、出版社からマニュスクリプト取り寄せてリポジトリに登載することをやらなきゃいけないと。出版社によってはグリーンを認めていないところもあるわけで、それは悪くすると研究者を、出版社との間の法的論争に引きずり込むことになる。あるいはゴールドにしてもAPCの問題があるということで、よくファンダーがポリシー強化すればいいんだという議論があるんですけれども、そんな単純ではない。これは委員の皆さんは、よく御存じのことです。
ですから、実効性を持たせる、先ほど来、議論の対象になっているオープンアクセス化を原則とするということ、あるいは義務化ということについて、本当に実行してもらうようにするのであれば、先生方御指摘のとおりで、誰が何をしなさいということを、ある程度、影響の大きさは片方に置いておいて書き込むということも必要かなと思います。
具体的に言えば、大学における機関リポジトリ搭載についての支援の強化であるとか、それから国として出版社に対してグリーンOAを認めるようにという働きかけの強化であるとか、そういうことが考えられるかもしれませんけれども。すみません、皆さん、もうお分かりのことを再度申して恐縮ですけれども、そんなふうにも思いました。
以上です。
【引原主査】 ありがとうございます。書き込む用語を提示いただいたものと思いますので、そのように理解して、その記述をさせていただければと思いますが。
この辺の認識が、やはりオープンアクセスの認識が、まだ、いまだに固まっていない部分があるというのが、ちょっと残念なところなんですが、機関リポジトリもあればプレプリントもあるわけですし、それから別の紀要等ですね。人社系ですと紀要がプレプリントなのか、あるいはリポジトリなのか、ちょっと分からないところがございます。そういうものが一体として、どこかでアクセスできるという形が本来の姿ではあろう、学術全体としては、あり得ると思うんですね。それを同じところに全部持ってくるというのは、物すごい労力としては大きいわけで、世の中も動かし切れないところがあります。
ですから、そういうのは、どれかで必ず見えていて、最後、出版版が見えるという形ですかね、そういうものが許されるんだよということが分かるように、何かしておかないといけないかなとは、今お聞きして思いました。ありがとうございます。
大まかな話になっちゃいましたけれども、最後は、もう時間になりましたので、一旦ここで、この議論を終わらせていただきまして、今の議論を受けて、更にというか、まとめていただきたいと思っています。三宅室長、いかがでしょうか。
【三宅学術基盤整備室長】 どうもありがとうございました。本日頂いた御意見につきましては、まずは事務局にて整理させていただきます。また、本日コメントし切れなかった部分に関しましては、追加の意見等ございましたら、事務局にお寄せいただければと思います。基本的に、作業の時間もありますが、年内に頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。改めてメールでも周知させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【土井参事官補佐】 続きまして、本日の議事録は、先生方に御確認いただいた上で公開させていただきますので、協力のほどよろしくお願いいたします。
次回、第10回の日程ですが、資料3のとおり、候補日時を設定させていただいておりますので、スケジュールの確保をお願いいたします。その上で、開催の方法等も含めて、決まり次第、御連絡をさせていただきます。
事務局からは以上でございます。
【引原主査】 ありがとうございました。
もう時間になりましたが、夜遅くまで皆様方、御議論いただきましてありがとうございました。しかも年末なわけですから、もう少し真っ当な生活をしたいような気もしますけれども、皆様方、どうもありがとうございました。
じゃあ、本日はこれで失礼させていただきます。ありがとうございました。

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