基礎研究振興部会(第10回) 議事録

1.日時

令和5年5月25日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 部会長の選任等について(非公開)
  2. 部会の議事運営について
  3. 基礎研究振興部会での審議内容について
  4. 基礎科学の更なる発展に向けた研究DXの推進について
  5. 生成系AIによる研究DXの加速について
  6. 「創発的研究支援事業」研究機関による研究環境改善の取組<好事例>

4.出席者

委員

観山部会長、佐伯部会長代理、有馬委員、上杉委員、小泉委員、齊藤委員、品田委員、城山委員、辻委員、長谷山委員、前田委員、美濃島委員

文部科学省

研究振興局長 森晃憲、研究振興局長担当審議官 奥野真、研究振興局基礎・基盤研究課長 西山崇志、研究振興局学術研究推進課企画室長 松本昌三、研究振興局 参事官(情報担当)参事官補佐 廣瀬麻野、研究振興局基礎・基盤研究課 課長補佐 春田諒、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 藤井典宏

オブザーバー

国立研究開発法人理化学研究所  初田哲男 TRIP事業本部副本部長/数理創造研究プログラムプログラムディレクター、国立研究開発法人理化学研究所 生命機能科学研究センター 泰地真弘人 副センター長、国立研究開発法人科学技術振興機構 高杉秀隆 創発的研究推進部長

5.議事録

議題(1)部会長の選任等について(非公開)

【観山部会長】  部会長の観山でございます。第10回基礎研究振興部会について、これより公開議事を進めてまいります。委員の皆様におかれましては、これから2年間、御審議のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 部会長を拝命いたしましたので、一言御挨拶申し上げたいと思います。この基礎研究振興部会では、事業としての創発的研究支援事業だとか、WPI事業だとか、数理、数学、数理科学の振興とか、そういうものもありますが、最近の話題としては、今日も後で議論があると思いますが、量子コンピュータだとか、生成AIだとか、もう目まぐるしく基礎的な研究分野が発展しておりますので、どうぞ活発な意見交換ができればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、部会長代理に就任いただきました佐伯委員に一言、御挨拶願えればと思います。よろしくお願いいたします。

【佐伯部会長代理】  部会長代理を拝命いたしました九州大学マス・フォア・インダストリ研究所の佐伯です。こちらの基礎研究振興部会は、今初めて参加しております。以前、オブザーバーとして参加したこともございますけれども、こういった形で委員として参加させていただくのは今日が初めてということですので、まだ新参ではございますが、よろしくお願いいたします。
 専門は数学・数理科学で、これまで数学・数理科学の振興にいろいろ尽力させていただきました。今後とも数学・数理科学だけではなくて、基礎科学一般につきまして国力の増強等に資するように尽力していきたいと思いますので、どうぞ皆様よろしくお願いいたします。

【観山部会長】  よろしくお願いします。ありがとうございました。
 続きまして、文部科学省より森局長から御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【森局長】  文部科学省研究振興局長をしております森と申します。本日、今期の基礎研究振興部会の最初の会合でございますので、一言御挨拶申し上げたいと思います。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しいところこの部会の委員をお引受けいただきまして、また、本日、会議に御参加いただき、誠にありがとうございます。
 近年、我が国は諸外国に比べて研究力が相対的に低下傾向にあるという指摘もあるところではございます。また、基礎研究に求められる役割、機能についても変革期に差しかかっておりまして、新たな価値創造を目指した研究に取り組む必要があると考えているところでございます。
 基礎研究は新たな知的、文化的な価値を創造し、イノベーションの源泉となる、いわば社会発展の基盤たるものでございまして、科学技術立国を目指す我が国として、その多様性と厚みを増していくことや、基礎研究の知的アセットを適切に価値化し、社会との間で好循環を形成することも極めて重要と考えております。
 基礎研究の振興のために何が必要なのか。各学問分野で卓越した知見を持つ委員の先生方からの御意見を踏まえまして、基礎研究力の抜本的な強化につながる取組を進めてまいりたいと考えております。皆様方には、基礎研究の振興やさらなる可能性について、多様な観点から忌憚のない御意見を賜りますよう、お願い申し上げます。何とぞよろしくお願い申し上げます。

【観山部会長】  森局長、どうもありがとうございました。
 続きまして、本日の議題について事務局より説明をお願いしたいと思います。

【西山課長】  ありがとうございます。基礎・基盤研究課長、西山です。本日、第12期の基礎研究振興部会の初めての会になります。委員の先生方、どうぞよろしくお願いいたします。この部会、基礎研究振興部会としての所掌の範囲ですとか、審議事項の全体の範囲につきましては、後ほど詳細に御説明をしたいと思います。
 資料の議事次第のペーパーを御覧いただきたいのですが、本日の審議事項、大きく分けて3つございます。議題と書いてあるところの(4)(5)(6)が主な審議事項でございます。まず、(4)の研究DXでございます。これにつきましては、前期の頃から文科省の取組を中心に御議論をいただいてきました。また、令和5年度の予算で理化学研究所においてTRIPの事業を開始しているところでございます。本日は、文科省及び理研での取組の現状について御報告をし、今後の展開について御議論をお願いしたいというのがまず1つ目でございます。
 (5)の生成系AIによる研究DXの加速、これは先ほど観山部会長からも言及がございましたが、ChatGPTのように毎日、この件、報道がございます。また、政府全体としてもAI戦略本部などで今後の取組について検討が進められております。これらの状況を踏まえつつ、文部科学省としての今後の展開について御議論をお願いしたいと思っております。
 特にこの部会では、研究DXとの関連で生成AIが科学研究の方法そのものを大きく変えていく可能性もあると文科省では認識をしております。この先取りをどのようにしていくか、どういう手を打っていくかということで、これは令和6年度の予算要求の方向にも行く行くはつながっていくものと思ってございまして、本日は文科省から概要の紹介、また、理化学研究所から生成系AIのその科学研究への波及の可能性について御紹介をしていただきます。今後、この部会で数回にわたって文科省の今後の研究開発取組へとつなげていくべく御議論をお願いしたいと思ってございます。
 (6)創発的研究支援事業でございます。これについては、前期の頃から本部会で御意見を賜ってきた施策でございます。創発的研究支援事業、これを行っている大学研究機関における研究環境改善の取組について、本日、グッドプラクティスを御紹介していただくということでございます。
 以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 それでは、議事を進めてまいりたいと思います。議題(2)部会の議事運営についてですが、基礎研究振興部会の運営規則(案)及び公開の手続(案)について事務局から説明をお願いいたします。

【藤井推進官】  事務局、藤井でございます。まず、資料2-1を御覧いただきたいと思いますけれども、基礎研究振興部会運営規則(案)でございます。幾つかの条文だけ御紹介をさせていただきます。まず、1ページ目、一番下に第4条(議事)というのがございますけれども、この部会は、その当該部会に属する委員及び議事に関係のある臨時委員の過半数が出席しなければ会議を開き、議決することはできないとしてございます。
 続きまして2ページ目でございます。上から、第5条のところでございます。委員等の出欠等でございますけれども、委員等が部会を欠席される場合、代理人を部会に出席させることはできないとしてございます。
 続いて第6条でございます。会議の公開でございますけれども、原則的には会議は公開でございますけれども、漢数字、一、二、三と書いておりますとおり、人事に係る案件ですとか、行政処分に係る案件、その他個別利害に直結する事項に係る案件という場合には非公開とさせていただくということを記載しております。
 続きまして、第7条でございますけれども、議事録の公表、こちらも原則的には公表でございますけれども、先ほどの会議の公開のところで非公開とするということになった場合につきましては、そちらの議事録につきましても非公表とすることができるとしてございます。
 続いて、第8条でございますけれども、ウェブ会議で参加された場合の扱いでございますけれども、こちらも会議室にお集まりいただく場合と基本的には同様でございます。そういったことをこちらに記載をさせていただいております。
 資料2-1については以上でございます。
 続けて資料2-2でございます。基礎研究振興部会の公開の手続について(案)でございます。こちらにつきましては、例えば1のところで、原則1週間前にインターネットに掲載するといったような事務的な内容を多く定めてございまして、特に御確認いただきたい部分は、2の(3)のところでございます。(3)で会議の撮影、録画、録音についてでございます。①でございますけれども、傍聴者は部会長が禁止することが適当であると認める場合を除き、会議を撮影、録画、録音することができるとしております。
 簡単ではございますが、資料2-2は以上でございますので、御審議のほどよろしくお願いいたします。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 基礎研究振興部会の運営規則及び公開の手続について、問題ない基本的な部分だと思いますので、案のとおり決定してよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、そのように決定させていただきまして、運営規則、公開の手続をこのように決定した形で進めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。議題(3)基礎研究振興部会における審議内容について、事務局より説明をお願いいたします。

【藤井推進官】  続きまして、藤井から御説明を申し上げます。資料3-1を御覧いただきたいと思いますけれども、こちらの基礎研究振興部会で実際にどのような内容を審議するかということをまとめた資料でございます。大きく分けて3点ございます。まず、1.のところでございますが、基礎研究の振興についてでございますが、我が国の基礎研究について10年、20年先を見据えた視座から発展させるために、基礎研究の振興に資する内容を幅広く御議論いただきたいと考えております。例えば創発的研究支援事業ですとか、戦略的創造事業とか、WPIですとか、数学・数理科学といった内容について御議論をいただきたいと考えております。
 続きまして、2.のところですけれども、基礎研究の更なる発展に向けた研究DXの推進についてでございます。こちらにつきましては、冒頭、観山部会長からもお話があり、西山課長からも説明がありましたとおり、ChatGPTのような生成系AIが登場しておりますけれども、そういった中で基礎研究に求められる役割、機能が変容しておりまして、研究の取組についても変革が求められているところでございます。そのために新たな価値創造を目指した研究DXに関する内容について御議論をいただきたいと考えております。例えば研究DXの推進ですとか、理化学研究所が実施をしておりますTRIP事業といったところを議論いただこうと考えております。
 続きまして、3.のところでございます。基礎研究の社会的意義・価値についてでございます。こちらにつきましても、その基礎科学の価値が適切に評価されるということは重要だと考えておりまして、基礎科学の知的アセットを適切に価値化しまして、社会との間で好循環を形成することが非常に重要だと考えておりますので、そのための方策について御議論をいただきたいと考えております。
 資料3-1については以上でございまして、次の資料3-2と3-3でございますが、こちらにつきましては、基礎部会で取り上げます事業の今年度の予算ですとか、実際の取組の概要、そういったものを資料3-2と3-3でお示ししておりますので、御参考までに御覧をいただけたらと思っております。
 御説明は以上となります。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 3-1は今までのこの部会の議論も踏まえて、事務局が作られた原案でありますが、これ以外の分野に関しましても、基礎研究の振興という観点から幅広く御意見をいただいて検討したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、引き続き議題(4)「基礎科学の更なる発展に向けた研究DXの推進について」という議題に移りたいと思います。資料4-1、4-2について、まず文部科学省から説明をいただきまして、その後、4-3について理化学研究所の初田先生から御発表をお願いいたします。その御発表後に委員より御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、事務局からよろしくお願いします。

【廣瀬参事官補佐】  研究振興局情報参事官付の廣瀬と申します。本日は、研究DXの推進についてという題名で、文部科学省の取組について御紹介させていただきたいと思っております。
 2ページをおめくりください。今回、話題となりますDX、デジタルトランスフォーメーションですけれども、コロナ禍の影響もありまして、社会全体としてDXを進めていこうという動きがあるのは、先生方も御存じのとおりかと思います。その動きですけれども、研究分野においても同じトレンドだと考えております。特に資料の背景・課題のところにありますとおり、AI技術やビッグデータ解析の手法の発展、研究機器等のリモート化・スマート化等によりまして、人の能力を超えた新たな発見・理解の拡大であったり、時間や場所、人的、人手の制約からの解放であったりといった研究活動に大きな転換をもたらし、研究の生産性や成果のインパクトを飛躍的に高める成果というのが出てきていると承知しております。
 そのため、文部科学省では、これらの動きというものを全国規模に発展させ、世界に先駆けてAI・データ駆動型研究開発による成果創出を推進していきたいと考えておりまして、我が国の研究リソースを結集し、研究DXプラットフォームの開発というのを加速・高度化していきたいと考えております。主な取組内容は、その下、資料下のところにあります3つから成っております。順番が異なりますが、一番下のところから御説明させていただきます。
 1つ目が一番下にあります研究デジタルインフラ等の効果的活用です。こちらはスパコン「富岳」をはじめとするHPCIやSINETなどの計算資源ストレージ、通信環境のほかSpring-8、J-PARC、NanoTerasuといった大型研究施設などの研究に必要なインフラに関しまして、その利便性の向上、高度化というものを進めているものになります。
 続きまして、真ん中のところ、全国的なデータ共有・利活用を促進する基盤的機能の強化のところです。これは後ほど、その中の1つの取組、詳細を御説明させていただきたいと思っておりますが、全国の大学・研究機関におけるAI・データ駆動型研究開発を推進するために、分野・機関を超えた研究データの共有・利活用を促進するためのデータ基盤の整備などについて進めているというものになります。
 そして最後に一番上のところです。価値創造を目指したユースケースの形成・普及です。インフラで出してきたデータを集めたところに関しまして、例えば気候変動、マテリアル、ライフサイエンスといった分野におけるAI・データ駆動型の研究開発におけるユースケースを創出するための研究開発を行うとともに、そこで得られた成果というものの発信というものに取り組んでおります。
 3ページをおめくりください。こちらは理論・実験・計算・データという4つの科学を簡単に図示したものになっておりまして、私がいる情報参事官付というところは、ここの赤い枠のところというものを主に担当していますというのを御紹介した資料になっております。
 4ページを御覧ください。こちらのページは、一番初めに御説明させていただきました3層のものというのをデータのフローの側面からイメージを再度作成し直した資料となっております。まず、左上のところ、こちらはフィジカルな世界でデータの計測・収集し、高品質な研究データというのを収集していくというものになります。また、その左下のところ、こちらはリアルの空間で取得が難しい、そういった研究データにつきましてシミュレーションによって、その実データを補完するということを行います。これら2つの取組によって集められたデータというものを、これら右上のストレージの部分において大規模データアセット群としてセキュアな環境下に保護します。それによって知識空間というのを構築していくというふうに考えております。
 ただ、これらデータというものは、集まっただけでは研究としては使うことが難しいということが現状だと思います。これらをどう統合し、知識化していくかというところが問題です。そのため、そこで登場するのが一番左下にあります数理・情報科学による研究というのが重要になると考えております。これはデータ間の関係性などを整理しながら、ここで集められたデータアセットを知識として統合するとともに、統合化されたデータを活用して高付加価値な研究成果や、新しい機能の創出といったものを目指したいと考えております。また、こういった活動の中でシミュレーションの高度化といったところも期待できると考えておりまして、データの高度化、それによって、さらにまたこの高付加価値な研究成果の創出といった正の循環というのを回していったらと考えております。
 5ページをおめくりください。こちらは先ほどの資料の右上にありました研究データの蓄積、構築をするために、現在、推進している取組について簡単に図示したものです。これはNII-RDCといいまして、国立情報学研究所のリサーチデータクラウドを図示したものになります。これは3つの要素から成り立っておりまして、まず1つ目が左下にありますデータ管理基盤になります。これは収集データの保存、共有等の管理を行うための基盤となっております。2つ目が右端にありますオレンジのデータ公開基盤です。これは各大学等に設けられた機関リポジトリというものがありますが、これらをクラウドでつなげ、研究成果やデータの公開というものを行う基盤になっております。そして、最後が一番ピラミッドの頂点になりますデータ検索基盤としてのCiNii Researchというものです。こちらは、ここで連結されているものの得られた情報というものを一括して検索できる体制というのを構築している、そういったシステムになっております。
 6ページをおめくりください。こういったNII-RDCですけれども、昨年度より文部科学省のAI等の活用を推進する研究データエコシステム構築事業といったものにおいて、このシステムの高度化というものを行っております。また、高度化につきましては、NIIだけではなく、理化学研究所さんであったり、東京大学、名大、阪大といったところとも連携しながら、例えばプラットフォームの連携であったり、活用ルールガイドライン、人材育成、そういったものも併せて行い、より研究データの収集、活用がしやすい体制というものを現在構築していきたいと考えております。
 7ページをおめくりお願いします。こちらは最後になります。最後に研究データを用いた新しい展開の可能性について触れさせていただきたいと思います。先ほど西山課長や観山部会長からも触れられたと思っておりますが、昨今、GPT-3、GPT-4といったように基盤モデルに関して話題になっていると思っております。また、我々としましても、こういった基盤モデルというのはデータ駆動型の研究においても新しい展開をもたらすものだと思っております。例えば海外では、こちらの例にありますとおり、既に基盤モデルを活用した研究分野でのサービス、アプリケーションの開発というのが展開されておりまして、我が国においても、こういったものを進めていくことが必要と考えておりまして、今後の大きな論点だと思っております。
 私からは以上です。ありがとうございました。

【観山部会長】  では、続けてどうぞ。

【春田課長補佐】  ありがとうございます。では、続きまして基礎・基盤研究課の春田より資料4-2に基づきまして、先ほど情報担当参事官付から説明がありました研究DX推進の一環として、理化学研究所にて中心的に行っていますTRIP事業について、その背景と概要を説明させていただきます。資料4-2を御覧ください。
 まず1ページ目でございますが、こちらの事業につきましては、右肩にございますとおり、令和4年度第2次補正予算として47億円ほどを計上してございまして、こちらを用いて必要な設備整備を進めるとともに、令和5年度予算において23億円を計上し、研究開発を本格的に推進しているところでございます。こちらの事業につきまして、日本語名称としましては、量子コンピュータ、スーパーコンピュータの組合せによる研究DX基盤の高度化という形になってございまして、略称としてTRIPというものを用いているものでございます。
 事業の概要につきましては、青色の帯にありますとおり、理化学研究所の最先端研究プラットフォームをつなぐために、良質なデータを蓄積・統合するとともに、量子・スパコンのハイブリッドコンピューティングの導入、数理科学の融合によりこれまでの研究DXの基盤を高度化することで次世代の研究DXプラットフォームを構築し、これにより未来の予測制御の科学を分野の枠を超えて開拓し、社会変革のエンジンを国内・国際社会に広く提供する、こういったことのためにこの事業を行っているというところでございます。
 続きまして、1ページおめくりいただいて2ページ目でございます。こちら、本年度より本事業を開始する必要性、重要性についてまとめたものでございます。大きく分けて技術動向と政府方針に分けて必要性・重要性をまとめているところでございます。技術動向につきましては、大きく3つに分けてございます。1つ目が量子の関係でございまして、量子コンピュータの実機が昨年度公開されたことにもありますとおり、量子コンピュータを活用するといったことができるような時代に突入してきたといったところが大きな背景としてございます。また、AI、ビッグデータの文脈で申し上げますと、「富岳」、Spring-8、SACLAなどの最先端基盤によりビッグデータが豊富に創出されているといったところがございます。また、数理に関しましては、数理科学と諸科学、社会・産業との連携が進んでいるといった背景がございます。
 これらの技術動向に加えまして政府方針といたしまして、こちらに書いてありますとおり、経済財政運営と改革の基本方針2022や新しい資本主義のブランドデザイン及び実行計画におきまして、量子、AI、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子治療等のバイオテクノロジー・医療分野は、我が国の国益に直結する科学技術分野というふうに記載されているところでございます。これらを踏まえて本年度よりTRIP事業を本格的に開始しているといったところでございます。
 このTRIP事業の概要について御説明を差し上げます。次の3ページ目をおめくりください。TRIP事業でございますが、大きく分けて3つの基盤に係る取組と、それらを活用したユースケースの創出に関する取組を進めているところでございます。
 基盤に係る取組の1つ目といたしましては、丸の図に示してありますところの左上の青色の部分でございますが、良質なデータ取得という形で様々な最先端の施設から生み出される多様なデータを良質な形で蓄積・統合する取組を進めているところでございます。また、2つ目の基盤に係る取組として、AI、数理というものをつなぎ合わせまして、量子古典ハイブリッド計算用のアルゴリズム開発といったものを進めてございます。さらには、最後、3つ目の基盤に係る取組として、量子古典ハイブリッドコンピューティングに係る取組を進めてございまして、こちらにつきましては、ハードウエアレイヤー層や、もしくはソフトウエアにおいても低レイヤー層に係る量子コンピュータとスーパーコンピュータを高速にやりとりする、そういったものに必要な要素技術の研究開発等を行っているといったところでございます。
 また、これらの取組を通じて構築されました基盤を用いたユースケースに係る取組も大きく分けて3つ推進をしてございます。1つ目が元素変換と予測制御という取組でございまして、2つ目が電子状態の予測制御という形でございます。最後の3つ目が生態系の予測制御という形で、これら3つの基盤と3つのユースケースを本年度より本格的に進めているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 説明が続きますけれども、続けて理研の初田先生より御説明をお願いしたいと思います。

【初田副本部長】  よろしくお願いします。では、10分ほどで説明させていただきます。先ほどの続きになりますけれども、量子コンピュータ、スーパーコンピュータの組合せによる研究DX基盤の高度化、理研ではこれをTRIPと呼んで今年度から本格的に活動を始めているところです。
 2ページをお願いします。先ほどと同じになりますけれども、真ん中にある円のところで、左上が良質なデータを取得する。右上が、それをAIや数理で処理し、そこから知識を抜き出す。特に大量なデータの場合には量子計算、あるいは古典計算、あるいは量子古典のハイブリッドコンピューティングを行って処理し、新たなデータ取得にもつなげていくというスキームです。これは右回りもあるでしょうし、左回りもあるでしょうけれども、そういう活動を理研横断的に進めるというのがTRIP事業です。
 左上の良質なデータ取得というところでは理研の中には、13のセンター、情報統合本部、開拓研究本部があり、そこで得られた大量のデータをメタデータ化し、様々な分野の共通の財産にしていくということ、それらを蓄積・転送するシステムを構築することが大きな課題になります。
 右側のところでは、近年急速に発展している量子計算科学、特に、物理学、化学はもとより、将来的には生物学にも適用できるような量子古典ハイブリッドコンピューティングのアルゴリズム開発を行い実証します。そのためにRIKEN Quantumという新しい横断的プログラムを立ち上げ、分野を超えた理論科学、情報科学、計算科学の研究者が情報共有を開始している状況です。
 左下の量子古典ハイブリッドコンピューティングに関してですが、、現在の量子計算機ではまだ誤り訂正ができません。誤り耐性をもつ1論理キュービットには、数千から1万程度のキュービットが必要になりますが、まだそこまでの量子計算機は実現していません。そのような状況においても、量子計算と古典計算と組み合わせて現実の問題を解ける可能性を量子古典ハイブリッドコンピューティングは持っています。今年度、計算科学研究センターに量子HPC連携プラットフォーム部門が新たに設置され、量子古典ハイブリッドコンピューティングに向けたソフトウエアやシミュレーション開発、プラットフォーム構築に向けた体制構築が進んでいます。また、2023年3月には理研の量子コンピュータ研究センターから64キュービットの超伝導型の量子コンピュータの運用が開始されたので、その活用が今年度から進みはじめます。
先ほどのTRIP1,TRIP2,TRiP3がぐるりと回ってアウトプットが出すというユーズケース3つが発足し、それぞれ研究開発を始めているというところです。その1つは元素変換、いわゆる原子核物理学の核反応の予測と制御および医療用のアイソトープの生成、2つ目は、多電子集団における新機能発現で、電子系における様々な新物質設計ですが、いずれにおいても量子計算が重要になってくる可能性があります。3つ目はグリーンデジタルトランスフォーメーション、特に網羅的な解析により、土壌、微生物、植物を全体として理解し、新しい農業につなげていくというものです。このために必要なビッグデータの活用に量子機械学習が使える可能性があります。
 3ページをお願いします。これらを支えるには、前のページにあったようにTRIP1、2、3が断片的であってはいけないので、真ん中に車軸が必要で、そのために今年度からTRIP事業本部が発足しました。TRIP事業本部には、先ほどの1、2、3、およびユースケースを有機的につないで研究者間の交流を促す機能と、新たなユースケースを発掘していくという機能があり、本部長として理研の宮園理事、副本部長としてTRIP1、TRIP2、TRIP3をそれぞれ吉田稔理事、私、そして川﨑研究政策審議役が担当しています。
TRIP1では、データの蓄積、情報基盤の整備、研究DXを加速するための基盤となる専門職員の育成などの機能が柱になります。TRIP2ではQuantumとAIが重要な2本柱になります。TRIP3では、量子HPCIを構築していくことが重要な柱になります。ユースケースは、先ほどお話ししたように今年度は元素変換、多電子集団、グリーンDXとなっております。
 4ページをお願いします。TRIP1では、Spring-8、SACLA、バイオリソースセンター、仁科センター、ライフサイエンス研究などで個別に集められてきたデータをメタデータ化して、データエコシステムの構築事業をNIIと協力して行うことになります。
 5ページをお願いします。さらに、メタデータ基盤の確立とコスト最適なデータ保管システムの構築に向けた体制が、情報統合本部内部に複数のユニットが立ち上げることで進められています。
 6ページをお願いします。全理研ネットという既存のネットがあり、それは10Gbpsだったのですが、新たに研究開発ネットを構築し、100Gbpsで理研内をつなぐことを今年度内に行う予定で、理研の各拠点に10ペタバイト級のストレージを置くということが予定されております。
 7ページをお願いします。TRIP2では、革新知能統合研究センターにおける人工知能の研究、数理創造プログラムにおける数理科学の研究、計算科学研究センターにおけるデータ同化や大規模計算の研究などを統合するとともに、物理学、化学、生命科学において量子古典ハイブリッド計算が有効な問題を見い出すことを目指します。
 8ページをお願いします。物理学、化学、生命科学における個別課題、例えば生命科学であれば、タンパク質の折り畳み構造の研究に現れる最適化問題、などに量子計算科学が貢献するだろうと考えられます。これらの研究を支える体制として、右下の図にあるように、物理学、化学、生命科学をアルゴリズムやシミュレーションで横につなぐRIKEN Quantumというプラットフォームに、8研究センター、10研究室が参画しています。
 9ページをお願いします。4月から立ち上がったRIKEN Quantumに参画しているPIの方々を示しています。理研の強みは、このように様々な分野の研究者がバリアなく相互に交流できるというところです。実機としては、昨年度、新川崎に27キュービットのIBM-Q量子計算機が導入されています。東京大学、理化学研究所、慶應大学、企業14社からなる量子イノベーションイニシアティブ協議会が設立され、その下でこのIBM-Qを利用可能になっています。RIKEN Quantumを含めて、理研の中で10センターから50数名のIBM-Q利用登録者があり、IBM-Qユーザーグループを立ち上げて、既に論文が幾つか出ている状況です。この体制をさらに拡大し、若い研究者を中心に量子計算科学の研究を推進します。当然、理研量子コンピュータセンターで稼働を始めた64キュービットの量子計算機も今後利用することになります。
 10ページをお願いします。TRIP3は量子古典ハイブリッドコンピューティングのプラットフォームをつくるということで、一番下にある超伝導型の国産量子コンピュータとスーパーコンピュータ「富岳」が基盤になります。量子コンピュータに関しては超伝導型、イオントラップ型など様々な可能性があり、最終的にどれが最適かというのは自明でなく、特にシリコン量子ビットを用いた量子計算機、これは半導体の開発と関係してくるわけですけれども、も視野に見据えて理研の中で研究開発を進めていくというのがTRIP3となります。
 11ページをお願いします。量子古典ハイブリッドコンピューティングでは、プログラミング言語の開発、コンパイラの開発、量子コンピュータと古典コンピュータの接続方式の開発、さらに半導体の要素技術の開発などの研究があります。すでに述べたように、計算科学研究センターでは、今年度から量子HPC連携プラットフォーム部門を設立しています。
 12ページは重複になりますので説明を割愛します。
 13ページの、ユースケース一番目は元素変換で、いろいろな条件下でおこる核反応の実験データの整理と、背後にある論理を理解するための数値計算に量子計算機が力を発揮する可能性があります。2番目の多電子集団では、多電子の集団運動が量子多体系の物性や機能に大きな影響を与えることがあり、そのような現象の本質的理解に量子計算が力を発揮する可能性があります。三番目のグリーンデジタルトランスフォーメーションでは、植物、微生物、土壌などを一体的に解析する上で量子機械学習の手法が力を発揮する可能性があります。今年度からそれぞれのユースケースで理研横断的に研究を開始している状況です。
 以上です。ありがとうございました。

【観山部会長】  初田先生、どうもありがとうございました。
 それでは、以上の、まず文部科学省並びに理研の初田先生からお話を聞きましたけれども、委員の先生方から御質問や御意見がありましたら、どうぞ挙手のボタンを押してお願いします。いかがでしょうか。
 では、私のほうから、初田先生、こういう量子コンピュータとか、そういう話を聞きますし、先ほども少しありましたけれども、IBMの先行的な状況があるとか聞きました。そして、最後にあるいろいろなユースケースの話があるのですけれども、質問は、1つは日本の研究の世界の中での位置づけというか、キャッチアップの状況なのか、先端を走っているのかと言う点をお聞きしたいです。それから、さっきの例えばこのユースケースで言うと、今後の量子計算とか、量子計算機ということに関して、ロードマップというか、どれぐらいで社会に関係するような計算ができるような状況なのか、2つの点を教えてもらいたいのですけれども。

【初田副本部長】  一言で言うと、きちんとしたロードマップはまだありません。非常に強みを発揮している部分もあるし、まだまだというところもあるのですが、特に量子計算科学に関して言うと、研究者の層が海外に比べてまだ薄いので、もっと若い方々がたくさん参入してもらうことが必要です。もちろん物理学の研究をしていたら、量子力学は学部で学ぶことですから、幾らでも参入できるわけですけれども、若い方々が、特に量子計算科学が面白い、やりたいと思える土壌を作ることが重要で、先ほどのRIKEN Quantumが、その入り口の一つになると思います。
 また、国際連携を進めることは重要で、特に欧米との連携研究の必要があります。海外では企業とアカデミアの境界がかなりなくなり、AI研究の場合と同様に、企業の研究者が最先端の量子計算研究で論文を書き、アカデミアの研究者と交流することはあたりまえです。残念ながら、そういう相互作用はまだまだ日本では薄いので、国内の企業研究者の底上げ、海外の研究者との交流は極めて大事だと思います。
 理研の強みと思えるのは、「富岳」のような最先端ハイパフォーマンスコンピュータがあり、かつ国産で中身が見える量子コンピュータも持っていることです。それらをハイブリッドすることによって何が生まれるのか。これは世界的にも未知の領域だと思いますので、一気に最先端に躍り出ること可能性は、個人的にはあると思っています。

【観山部会長】  特に若手の人材がこういう分野にいかに入っていくかというのは、重要なポイントだと思います。なかなか新しい分野というのは、その先のテニュアトラックがあるかどうかというのがやっぱり不安材料だと思います。そこら辺が初田先生とか、そういうところの上のレベルの方が将来を、ポストを作っていくという状況が1つは重要だと思います。理研に関しては、話の中で随分いろいろ出てきました。新しい若手というのは大学とつながっていないとなかなか難しいのではないでしょうか?つまり、いろいろな大学の既存の研究室、たとえば物理分野とか、関連分野はたくさんあるわけですけれども、そういうところとうまく理研がつながっていないと難しい面がありませんか? 大学院生や学生にとって面白そうだけれども、本当にポストがあるのかねとかいう感じで思われると、そこら辺の仕組みの作り方みたいなのはありますか。

【初田副本部長】 先ほど言いましたような、RIKEN Quantumに参画している方々は、それぞれ個別に大学の研究者とつながっていますし、理研には日本で一番すばらしいポスドク制度である基礎科学特別研究員制度がありますので、大学で博士号を取得して理研に来ることができ、また大学に戻っていくこともできます。また、こういう分野では大学に戻る必要もなくて、企業に行って基礎研究をすることも可能です。実際、私がディレクターを務めている数理創造プログラムからは量子コンピュータ関係の企業に就職して基礎研究を行なっている方々もおり、さらには、そこからアカデミアに戻ってくる方もいます。
 また、量子イノベーションイニシアティブ協議会には企業と東大、理研、慶應大学などが参画しており、その中で学生やポスドクが興味を持ってこの分野に入ってくることはありえると思います。私の周りでは、物理や化学の分野で研究してきた若手のポスドクが量子計算科学に興味を持って参入してくる例も多く見られるようになりました。面白い分野だという雰囲気の醸成がとても大事ではないかと思います。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 委員の先生方、いかがでしょうか。全体の絵が見えていないので、手を挙げて……。

【上杉委員】  よろしいでしょうか。今、手を挙げています。

【観山部会長】  はい。どうぞ。

【上杉委員】  上杉です。

【観山部会長】  上杉さん、はい。

【上杉委員】  最初の文部科学省の御説明になった研究DX、そして理化学研究所のプラン、両方とも大変すばらしいというか、正しい方法だと私は思います。ただ、心配なのは、ほかの国々も同じことを考えていてやっているのではないか。大切だから、他の国もやっているのだと思うのですね。それで、お伺いしたいのは、これはどなたかが御説明していただいても良いのですけれども、日本の特徴というのはあるのでしょうか。同じことをやって、予算が大きければそれも特徴とも言えるのですけれども、予算が他国と比べて大きくないのであれば、何らかの特徴というのがあるのかなと思っていたのです。我々の国でやるこの研究DXは、どういう特徴があるのでしょうか。

【観山部会長】  よろしくお願いします。まず、初田さんから答えていただけますか。

【初田副本部長】  今回は理研の発表だったので理研のことを述べますと、生命科学、物理学、化学、情報科学など、さまざまな分野が1つの研究所の中にあって、かつ分野間の壁が低いというのは素晴らしい理研の特徴で、そこを生かそうというのが今回のTRIP構想です。理研には生命科学の研究者がたくさんおられます。生命科学において量子計算がこれからどういう役割を果たし、どういう新しいブレークスルーを生み出すのか、これは全く未知の状況ですが、そういうことを生み出せる可能性のある貴重なプラットフォームを理研は提供できるのではないかと私自身は感じています。
私のほうからは、以上となります。

【観山部会長】  このユースケースの中の3番目のGX、DXという感じのところは、なかなか、あんまり聞いたことがないので期待したいなというところですね。
 よろしいでしょうか。また遡って質問いただく――事務局のほうから何かありますか、文科省のほうから。廣瀬さん、何かありますでしょうか。上杉さんの質問に対して。

【廣瀬参事官補佐】  すみません、接続が悪く、反応が遅くなり、申し訳ございません。情報担当付の廣瀬です。
 我々の認識としましては、先ほど一番初めの資料のほうで研究デジタルインフラ等の効果、活用というところで、いわゆる我々の日本、Spring-8、J-PARC、NanoTerasu、またはNMRとかいろいろな基礎研究でこれまで培ってきました良質なデータといったところが、日本はそこが強みになるのではないのかなと考えております。また、国際連携の観点で言いますと、このNII-RDCというのは、実はヨーロッパと連携もしておりますので、そういったところもまた強みの1つになるのかなと思っております。
 私からは以上です。

【観山部会長】  はい。分かりました。海外にも良質なデータはたくさんあると思うのですけれども、非常に最先端の実験装置があるということと、量子データが蓄積しているということは事実だと思います。
 多分、ほかにもあると思うのですけれども、次の議題、遡ってまた質問ができると思いますので、次の議題に移りたいと思います。議題(5)……。

【藤井推進官】  観山部会長、すみません、事務局の藤井でございます。

【観山部会長】  はい。どうぞ。

【藤井推進官】  申し訳ございません。事務的な連絡で申し訳ございません。齊藤英治委員におかれまして、御欠席と伺っておりましたけれども、出席をいただいておりまして、今、入られていますので、御紹介をさせていただきました。本日、齊藤委員、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【齊藤委員】  齊藤です。どうぞよろしくお願いいたします。齊藤でございます。何かの間違えで欠席の連絡が行ってしまったみたいです。すみません。失礼いたしました。

【観山部会長】  はい。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題(5)生成系AIによる研究DXの加速について、移りたいと思います。まず資料5-1について文部科学省より説明いただき、その後、資料5-2について理化学研究所の泰地先生から発表をお願いいたします。発表後、委員より御意見を頂戴したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【春田課長補佐】  では、基礎・基盤研究課の春田から資料5-1に基づきまして、生成系AIについて御紹介をさせていただきます。釈迦に説法の部分、多分にあるかと思いますが、共通認識を醸成するために改めて御説明をさせていただきます。
 2ページ目、おめくりください。まず、生成系AI(Generative AI)と呼ばれるものでございますが、こちらにつきましては人工知能技術の1つでございまして、大量のデータを学習して新しい文書やコンテンツ(画像、音声、動画、ソースコードなど)を生成する技術でございます。こちらの技術につきましては、従来のAI、機械学習では困難でございました様々な創造的な取組を人間に代わって、あるいは人間を支援する形で行える可能性がございまして、国民生活や研究を含む知的生産活動に大きな影響を与えると考えられているところでございます。下の表にございますとおり、生成系AIの代表といたしましては、文章を生成する、昨今、ちまたを賑わせておりますChatGPTや画像を生成するStable Diffusion、音声を生成するVALL-Eなどがあるといったところでございます。
 続きまして3ページ目、おめくりください。生成系AIにおける学習(開発)と推論(利用)のイメージをまとめたものでございます。生成系AIの学習においては、大量のデータを学習のインプットとアウトプットのどちらともに使う学習手法である自己教師あり学習が現在主流となってございます。
 下の青色の学習(開発)プロセスのところを見ていただければと思いますが、大量の文章のデータセットを基に、こちらをインプットとして使用しながら、一部にマスクをかけて、そこの部分の正答を上げるようなモデルのパラメータの改善を行っていくといった形で自己教師あり学習をしているといったところでございます。実際には、単語のベクトル空間上への埋め込みやセルフアテンションメカニズムなどより複雑なことをしてございますが、簡単な説明としては、ここにありますとおり、自己教師あり学習という形でインプットとアウトプット、どちらともに大量のデータを用いて学習できるような機構を用いているといったところでございます。
 この自己教師あり学習で事前学習した上で、さらに応答のデータセット、教師ありのデータセットを用いましてファインチューニング、調整をすることで特定のタスクに対してより精度の良いモデルができ上がるという形になってございます。このような学習を経て作成したモデルを最終的には推論(利用)の過程で使いまして、下の青色の推論(利用)プロセスにありますとおり、あるプロンプト(作業指示)を与えますと、それに応じたアウトプットをかなり高精度に作成するといったことができるようになっているところでございます。
 続きまして、4ページ目、おめくりいただきまして、生成AIと基盤モデル(Foundation Model)の関係について御説明をいたします。まず、基盤モデルに関しましては、大量かつ多様なデータで訓練され、多様な下流タスクに適応できるモデルというふうに論文において定義づけがされているところでございます。基盤モデルに関しましては、下の概念図にありますとおり、いわゆる生成系のタスク以外にも画像分類でありますとか、物体検出などその他多様なタスクに適応できるモデルといった形になってございます。この基盤モデルを活用することで、生成系AIを含め、様々な用途に活用可能なAIを作成することができるとされてございます。
 また、ある論文におきまして、この基盤モデルの性能は経験則として、モデルサイズ、学習データセットの大きさ、学習に使用した計算量、こちらの3変数のべき乗則に従うといったことが分かっておりまして、こちらを大きくすればするほど、現在のところ性能が向上していくといったことが分かっているところでございます。
 5ページ目、生成系AI開発の流れをまとめたものでございます。ChatGPTを例に取り上げてございますが、先ほど申し上げました事前学習をすることで、こちら、基盤モデルという形で、いわゆるGPT-3やGPT-4と言われるものができ上がってくるわけでございます。こちらにさらにInstructionや調整アノテーションすることで最終的なサービス商品でありますChatGPTという形のものができ上がるという形になってございます。
 先ほどの経験則で分かっているべき乗数に従う3変数に絡みまして、基盤モデルの開発に必要となる主な要素をまとめたのが下のものでございまして、1つ目がやはりデータが大変重要といった形になってございます。さらには計算量によって性能が変わるといったところがございますので、この学習に要する膨大な計算資源といったところも必要でございます。さらにはモデル自身についても、単にパラメータ数を増やせば良いといったものではございませんで、パラメータ数を増やした分だけ性能が上がるようなアーキテクチャといったものが必要で、そこに関してこのアルゴリズムを作る研究者、エンジニアの方々についても大変重要といった形になってございます。
 最後、この生成系AI基盤モデルにつきまして、科学研究へどういうふうな活用が現在されているか、また、考えられるかをまとめたものが6ページ目でございます。こちらに関しましては、下の応用例にまとめてありますとおり、専門分野に特化したデータから作成されたモデルや既存の言語モデルをベースに、あるいは活用して専門のデータを追加学習し作成されたモデルの開発・公開が進んでいる状況でございます。下の表にありますとおり、生命科学分野においては、タンパク質や生体分子の構造の迅速な予測や目的とする機能を有するタンパク質、化合物の迅速な生成を可能とするような技術といったものが登場してきているところでございます。
 最後、参考として先ほどのべき乗数に関するものでありますとか、約1023FLOPsの計算量を超えたところで創発現象というものが起きてくるといったものを8ページ目、参考としてつけているところでございます。
 私からの生成系AIに関する説明については、以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。
 続けて泰地副センター長から御発表をお願いいたします。

【泰地副センター長】  では、理化学研究所の泰地から生成系AIの科学研究への波及ということでお話しさせていただきます。
 2ページ、お願いします。今、基盤モデルと生成AIについては春田さんからお話があったところですが、まとめて説明いたしますと、基盤モデルというのは汎用的に利用可能で、結果として高度な推論を内包するようになってきた大規模モデルになるかと思います。代表例としては、GPTシリーズになるのですかね。大規模言語モデルが代表的な成功例として知られています。この基盤モデルは2021年にスタンフォードのグループが論文で、こういうものを基盤モデルと呼ぼうといって始めたものでありまして、非常に最近です。スタンフォードでは、この基盤モデルの研究センターというのができて、世界各国で基盤モデルの開発が進んでいるところです。
 生成AIというのも、これもかなり昔にVariational Autoencoderから始まったものですけれども、最近では、この例のように自然言語を基に画像を出したりとか、または文章を出したり、あるいは化学構造を出したりといったような形で、大規模言語モデルに基づくような文章生成とか、潜在拡散アルゴリズムに基づく、これは画像生成などで大きく発展しまして、こちらも内部のロジックらしきものを内包するようになった。今は並みの人間が作るものと遜色ないレベルに到達しているという状況です。私、ハードウエアの設計が専門ですけれども、ChatGPTでハードウエアを生成させると、そこそこのものが出てきたり、画像などもこのプロンプトというのをうまく与えると、人間が描くものとかなり遜色ないものが出てくるようになっています。
 3ページ、お願いします。この大規模言語モデルには知性みたいなものが創発したように見えておりましす。その背景としてスケーリング則というのが大体2020年ぐらいに発見されています。こちらは先ほどの春田さんの説明にもありましたが、計算量に応じて最適なモデル規模とかデータ量が決められるようになって、それで、計算量を指標にいろいろな性能がパッと決められるようになった。どんどんその計算量を増やすとモデルの精度も上がりますよということが、この辺りで分かったということになります。この辺りから計算量の厚さにAIのフェーズが切り替わってきました。
 昨年、Googleの人たちが、ブログのほうに出しているデータですが、1YFLOPs、先ほど春田さんは23乗と言っていましたけれども、大体同じぐらいですけれども、「富岳」の半精度ピーク性能の約6日分です。これはピークなので、実際の実行時間としては多分これの5倍から10倍ぐらいになると思いますが、これぐらいの計算をすると大規模言語モデルというのに、急に能力が創発しているように見える。例えばこの多段の推論、この一番端は何か順序を追って計算して問題を解くような算数の問題、真ん中は、このMulti-task NLUというのは、何かいろいろな種類のタスク、例えば電話を受けるとか、何か文章を書くとか、そういう何か違うタスクをやる。同じ1つのものにやらせたときにちゃんとできるかというようなところ、こういう多段の推論や状況に応じたタスクの選択など、かなり人間らしい知性が大規模言語モデルの中に創発しているように見えるというふうになってきました。
 4ページ、お願いします。こういう大規模言語モデルに創発したような知性というのは、今後の社会全般とか、研究活動に大きなインパクトがあると考えています。これを活用して発展させる基盤というのは、国内に必須だろうと思っています。基盤はいろいろありますけれども、まずは、計算基盤はスパコンとか、あとは低電力の実行環境も含まれます。マイクロソフトは、やっぱり電気を食い過ぎるので専用のコンピュータを作ろうというような動きをしています。あとは、モデル基盤は、大規模言語モデルはもちろんですけれども、その他のモデル開発。それを応用基盤としては、それを各ドメインにチューニングしていく。理論のほうでは、実はさっきのスケーリング則とか、創発というのが何で起こるかということは、まだ誰も分かっていなくて、これが何でこの辺りで起こるように見えるのかという研究も重要と考えております。あと、これはビジネスになりますけれども、サービスの基盤も必要となってくる。
 理研のほうは、この辺の計算とか、応用とか、理論で割と強い基盤を持っていまして、今後やはりこの計算基盤をさらに強化しなければいけないですし、TRIPの中でこのAIと各ドメイン研究の融合、それから、理論研究なども推進していきたいと考えています。
 5ページ、お願いします。今後非常に重要なのは、このマルチモーダルの基盤モデルということを重要と考えております。ChatGPTはマルチモーダルではなくて、基本的には言語だけです。まだ公開されていないのですが、GPT-4は画像を受けつけていまして、これまでのChatGPTに目がついたというような状態です。今後はやはり目だけではなくて、いろいろなデータをこの直接入力していくようなチャネルが必要だろうと。ある意味では、バーチャルなBrain-Machine Interfaceみたいなものを開発して、モデルにどうやってデータを入力していくかというのをやるのが重要と思っています。
 一般的なマルチモーダルというと、大体、この画像と言語と音声なのですけれども、サイエンスの分野では、やはりそれだけではなくて、サイエンスのデータをどういうふうにこの基盤モデルに入れていくかが非常に重要なポイントになると思います。ここはまだかなり手つかずの状態で、発展の余地が大きいと思っていまして、画像や音声の統合とか、ロボティクスとか、医療分野での画像診断などで検討が進んでいるところですけれども、今後モデル圧縮とか省電力化が進めば自動運転とか、生活支援などにも直接つながってくる話だろうと考えております。
 6ページ、お願いします。これは根本的な問題として、やはり大規模言語モデルだけだと、人間のこれまでの言語活動から学習しているわけなので、人間の知性というのをそれだけで大きく超えることは難しいだろうと。いろいろなことを勉強しますので、かなり賢い人にはなると思うのですけれども、そこから超えていくというのはなかなか難しいのではないかなと。これをマルチモーダルにしていって、数値情報とか、高速計算とか、情報処理をこの自然言語に加えていく。そうすると、やはり人間は、本来、こういう数値情報を扱うというのは特に苦手でして、そういうようなことをAIの中身に加えていくことで、超知性のような存在にも進化可能なのではないかと、これは少し妄想気味ですけれども考えているところです。ここのところはかなりいろいろな技術開発、数理的な技術開発が必要になってくるものかと考えてございます。
 7ページ、お願いします。私はこのライフサイエンスの分野におりますので、特にライフサイエンス分野のこのマルチモーダル基盤モデルというのは重要ではないかなと考えております。ライフサイエンスの分野では、特にいろいろな多くの種類のデータを扱います。遺伝子からタンパク質、それから、生体のイメージング、それから、タンパク質の発現のプロテオームとか、あと脳とか、その他ももちろん動物の形態とか行動みたいな表現型がございます。理研はこの辺の生命科学基盤はたくさん持っておりますので、マルチモーダル基盤モデルをライフサイエンス分野で作る上では、非常に適した場所かなと思っております。いろいろな可能性の検討を今進めているところです。
 この大規模言語モデルを使って、活用していくというのがベースなのですけれども、それにいろいろ文献データも含め、実験データやシミュレーションデータを統合したような基盤モデルを作成していって、これを医療とか創薬、もちろん生命科学そのものの研究の加速というところが一番重要なところかと思います。このマルチモーダルの技術というのは、いろいろなところにもいろいろデュアルユースができていくものではないかなと考えておりまして、それに合わせた計算機関連の技術発展と、このAIをどういうふうに社会に使っていくというところの模索にもつながっていくものと考えております。
 8ページ、お願いします。生命科学における基盤モデルの例ですけれども、これは先ほど春田さんからも例がありましたが、BioBERTとか、幾つかありまして、BioGPT、MedGPT、それから、GatorTronというのは、これは最近、フロリダのほうで電子カルテをスクラッチから、ほかの言語モデルを使わずにスクラッチから学習したというモデルも出されています。タンパク質のほうは、メタのグループがやっているESM-2、それから、ベイカーのほうがやっているRF Diffusion、これはタンパク質設計用の生成モデルでして、基盤とは少し性格が違います。それから、GenSLMというのも、これも去年出たゲノムの進化モデルでして、進化予測等をやっています。
 scGPTは、つい今月ぐらいに論文が出ていたSingle-Cell GPTの略ですけれども、シングルセルのトランスデータを基盤モデルにつくというもので、遺伝子の発現とか細胞のクラシフィケーションとか、そういうことをうまくできる。化合物のほうは、化合物ライブラリを学習させて、化合物を生成するようなモデル、これはかなり昔からあるのですけれども、これもだんだん基盤モデル的に大規模化するという流れが強くなってきているところです。イメージとか遺伝子発現データの統合というのは、まだまだあまり進んでいなくて、この辺はやはり今後の課題になるかなと思っています。ゲノムのところは仕事があるのですけれども、ゲノムは結構、長い距離での相関みたいなのが重要で、そこをうまく取り込めるようにするというところが技術のポイントになろうかなと思っていて、まだやっぱり決定打はないかなという状況です。
 9ページ、お願いします。その中で、一番成功しているものは、このESM-2というものだと思いますので、これの御紹介を差し上げます。これはメタが開発したEvolutionary Scale model、2番目のというやつですね。蛇足になりますが、これはメタAIがやっているのですけれども、実はニューヨーク大学とか、ほかのシカゴ大とかの若手の研究者の人が、メタに短期滞在して、兼任みたいな感じですかね、そこで、そういう人たちが主力になって作っているものになります。これはタンパク質のアミノ酸配列を学習させたモデルで、データは公開データのこのUniRef というものをケースに大体6,000万配列ぐらいを学習させて、標準的なトランスフォーマーで自己教師あり学習をさせております。自己教師ありというのは、配列をマスクしたところを予測するというような、そういうタイプの学習ですね。言語モデルと全く同じです。最大で150Bパラメータというモデルを作っています。
 このESM-2というものの上に、タンパク質立体構造のデータバンク、プロテインデータバンクの立体構造のうちから、それなりに精度が良いもの、数は分からないですけれども、多分、1万から10万ぐらいだと思うのですけれども、これを追加学習させて、それで、その結果から立体構造予測をするソフトウェア、ESMFoldというのを作っています。これはタンパク質内のこのアミノ酸同士のどれが近くにあるかコンタクト情報を予測するのですけれども、これは単語の間がどういうふうに関連しているかというのに非常に似ているので、言語モデルと非常に近い形でうまく予測できていて、結果としては、これまで有名だったAlphaFold2というのとほぼ同等の性能を圧倒的な高速で実現できるという結果になっております。
 AlphaFold2は、Multiple Sequence Alignmentといって、このタンパク質の配列をいっぱい縦に並べ、どこが似ているかというのやって計算していくのですけれども、これはそういうものがなくて、一発でどんな配列かというのを出してきて、それをベースにやるとちゃんとAlphaFold2並みの性能が出ますよということになっています。
 10ページ、お願いします。これは……。

【観山部会長】  泰地先生、少し急いでいただければと思います。

【泰地副センター長】  これは去年のものですけれども、去年出てきたもので、これはちょっと意外でして、僕、これで少しびっくりしたことがあって、それで少し慌て出したのですけれども、これ、データの量は6,000万ぐらいで、まあまああるのですが、実際のタンパク質のフォールドというのは、10万とか、それぐらいなのですね。それでもこのモデル規模を大きくしていくほど予測性能が上がる。この150億というところで性能が上がる。こういうものというのは、昔の機械学習の常識だと、データが足りないところはモデルを多くしてもしようがない。逆に予測性能が下がったりするというのは割と一般的な理解だったのですけれども、そうではなくてモデルを多くすると良いと。そうするとやっぱり、この生命科学、あるいはほかの自然科学分野でこういう基盤モデルを使って何か有効な例というのは、今あるデータぐらいでも結構、いっぱいあるのではないかなと思うようになったというところが1つ私の意外だったところですね。
 11ページ、お願いします。生命科学にはこのマルチモーダルなものというのは、まだ端緒レベルでありまして、先ほど話したような画像関係で診断情報と合わせたものとか、化合物生成で物性と合わせたモデル等もありますが、こういうマルチモーダル系モデルというのは、ライフサイエンスの長年の課題であるデータ統合、いろいろなデータを統合していくためというところのキーテクノロジーになると考えておりまして、真のトランスオミックス、また複雑な生命システムというものを複雑なままモデル化して、それを予測する。生命システムを、単純化して予測するというのではなくて、何か複雑なモデルDigital Twinみたいなもので、複雑なモデルとしてのマルチモーダル基盤モデルというのができるのではないかなと考えて、これもまだ妄想レベルですけれども、非常に可能性があると考えてございます。
 12ページ、お願いします。こちらは開発ロードマップなのですけれども、やはりロードマップとしては、まず各データの基盤モデル化というところが核になりまして、遺伝子配列のところ、こちらはお話ししたようにまだ決定打がなくて、可能性があるところなのかなというところです。あとは画像情報のところは、これは非常に理化学研究所が強いところですので、顕微鏡動画像の生成モデルなどを作って、この細胞が次にどういうふうに発展するかとか、マルチモーダルでオミックス精度と合わせて、画像からのオミックス予測だとか、そういうところをやっていくべきなのだろうと。
 それから、文献情報は、一般の言語モデルに追加学習していくような形かなとは思っていますが、それができた後にこの大規模言語モデルと各モデル、あるいは各モデル間の融合をしていってマルチモーダル化していくというところで、この段階で言語モデルの論理機能をうまく使えるようにして、自然言語インターフェースでいろいろなものを使えるようにする。その中に内包させているロジックで、いろいろな実験結果の自動化のようなこともできるようになるとよろしいかなと考えているところです。
 3番目のところは、こういうものも全部がっちゃんこしたようなものができていって、さらにシミュレーションとか演繹モデルとか、先ほど課長さんからお話があった量子計算技術との融合なども、その先には考えられるかなと思っているところです。
 13ページ、お願いします。これは最後のポンチ絵ですけれども、こんな形でライフサイエンス分野の広範なデータと自然言語データを基に、この複数の用途に汎用可能な基盤モデルというところを開発していくというのが重要だと考えておりまして、そのために大規模データと計算資源、それから、アルゴリズムを融合させていくというところを考えているところでございます。また、これはライフサイエンスだけではなくてほかの分野でもいろいろ検討しておりまして、エンジニアリングの分野とか、あとは少し毛色が変わりますけれども、社会科学のようなところ、こちらは大規模言語モデルを用いたマルチエージェントシミュレーションみたいなものが既にやられていますけれども、そういったものを使った人間社会のモデルなども非常に可能性があるかなと考えているところでございます。
 発表は以上になります。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 生成AI、特に泰地先生は生命医学分野における基盤モデルについてお話しいただきました。いかがでしょうか、委員の方々から御質問等ありましたら。この共有画面を消してもらえると、皆さんの反応が見えますのでお願いします。どうぞ、御質問等、御意見がありましたら。
 辻先生、どうぞ、よろしくお願いします。

【辻委員】  辻です。素朴な質問をさせてください。ChatGPTにしても、ほかのいろいろなAIにしても、大体アメリカから出てきていて、この分野で日本はなかなか大変であるということを聞くのですけれども、とすると、日本は基本的にユーザーとしてやっていくことになるのか。国内的な基盤が必要だということも出てきましたが、こうした現状で、日本の戦略、あるいは日本が生きる道は、どの辺りにあるのでしょうか。すみません、素朴な質問です。

【観山部会長】  いやいや、皆さん、多分、同じような疑問をお持ちだと思いますが。

【辻委員】  よろしくお願いします。

【観山部会長】  どなたに答えていただきましょう。泰地さん、いかがですか。

【泰地副センター長】  正直、これ、日本で大規模モデルを作っている人って、LINEのグループとかサイバーエージェントのグループ、あとは、最近、富岳GPTのグループとかなのですけれども、ある意味では、これって計算資源というところが結構、一番重要なところもあって、その先のノウハウがどれぐらい重要かというところもまだ分かっている人はそんなにいないという状況です。1つ言えるのは、まず、アーキテクチャ的には、少なくともGPT-2ぐらいのところまではかなりシンプルです。これはある程度そのリソースを突っ込めばできるよねという感覚は、皆さん持っていて、逆にそれがAI研究者の人から見れば単純過ぎて面白くないなというぐらいに思っているところだと思うのです。
 そういう意味では、まずキャッチアップしようと思ったら、確かに計算資源とかリソースの面でそれなりの投資は必要ですけれども、全然できないことはないだろうなというのがまず1つの考えです。確かにユーザーでも良いのかもしれないですけれども、ユーザーになるだけだと危ないなというところもあるのだと思っていて、この先、多分、これをどういうふうに規制していくかとか、そういう話になっていくと思うのですね。やはり我々の側に何も技術を持っていないと、この規制の議論とかにも入っていけなくなる可能性があって、そうなったときに日本は、これをどういうふうに使っていくかとか、そういう議論、例えばある程度のところまでアメリカの人たちが開発してしまったら、その先は国際的に開発禁止とか、そういうふうになったりする可能性もゼロではないので、そういう規制の議論とかに入っていく上でもかなり根幹的なところになると思っております。

【西山課長】  文部科学省ですが、少し発言してもよろしいでしょうか。

【観山部会長】  はい。どうぞ。西山さん、どうぞ。

【西山課長】  ありがとうございます。辻先生の御質問は、根本的かつ重要な御指摘だと思います。政府全体の議論で申しますと、今、各省庁の連携の下でAI戦略本部が立ち上がっており、そこでこの生成系AIを中心としたポテンシャルと、リスクについて議論が進められています。かなり急ピッチで議論は進んでいます。そこでの全体の日本としての方針、方向を踏まえて文部科学省としてもしっかりやっていくというのが今の状況なのですが、海外が先行しているというのはおっしゃるとおりでございまして、これはあくまで個人的な意見と捉えてほしいのですが、当面は利活用をいかに進めるかということが先行するのではないかとは思います。
 他方で、今週、月曜日に理化学研究所が「富岳」においても基盤モデルの開発を進めていくということを発表しておりますとおり、日本としてもこの基盤モデルを作っていく、そういう開発能力はきっちりと持っていく、持つべきではないかというご意見も強くあるところでございます。今日の泰地先生の発表にもあるとおり、文科省の関連で言うと、科学研究にも大きな変革をもたらす可能性があると思っていまして、そもそものその基盤を日本が持っていないと、ある意味、データを全て海外に提供しないといけなくなるようなことも、可能性としては考えられるわけでございまして、きっちりとこれは国の競争力もしくは広い意味での安全保障的な観点も含めて、生成AIの開発力、基盤の開発力というのはしっかりと進めていく必要があるのではないかというのが個人的な意見になります。

【観山部会長】  今までのコンピュータの結果とは違って、どういうリスクがあるのかとか、どういう正確性があるのかというのが分からないままどんどん答えが出てきてしまうというような、何か不思議なものなので違和感があります。さっき泰地さんが言われたように、どういう性格を持っているとか、どういう危険を持っているかということをやっぱり我々としてもしっかりと押さえていかないと、使い方も非常にリスクがあるという状況ではないかと思います。
 すみません、有馬さん、どうぞ。

【有馬委員】  私、この部会も初めてですし、それから、今みたいに質問と何とかという形が良いのか分からない。こんなふうにしたら良いのではないかみたいな話を、しかも、そんなにずっと考えていたわけではないので、非常にラフな話をさせていただきますと、先ほどの量子コンピュータの話にせよ、生成AIの話にせよ、日本が多分、ナンバーワンではないというのは確かで、今の御質問、そうだと思うのですけれども、では、どうするかというときに、結局、人材が必要で、リソースが必要で、それから、多分、良質なデータが必要でということだと思っています。
 あともう一つは、リソースというときに、例えば先ほどのスーパーコンピュータの話にしても、多分、GPGPUのNVIDIAのやつにずっと頼っていると思うのですけれども、そういうスタイルだと、今度、電力消費量とか、そちらのほうで大変問題になるということもある。そうすると、半導体のところをどうするかという技術の話もあるので、全部を日本でナンバーワンにするというのは、多分、不可能だと思うのですね。そうすると、幾つかのところは、多分、欧米とかと組む。幾つかのところ、大事なところはちゃんと日本が貢献する。そういうことで完全に日本のデータが全部持っていかれるというような形ではない形で、ウィン・ウィンでやっていくしか、多分、生きる道がないような気が個人的にはしています。
 では、そのときに一番大事なのは何かというと、恐らく人なのではないかなと思っていて、そのときに例えば量子コンピュータで申し上げると、結局、量子コンピュータを大学生がちょっと使ったことがあるというような感じにしないと駄目なのかなと思いますし、もちろん専門的に、初田先生がおっしゃったようにいろいろな最先端のところをやる人が意思を持って量子コンピュータを使うというのも大事だけれども、大学生が、普通に今、パソコンって使えるから、みんなパソコンのことを知っているわけですよね。そのぐらいのことで量子コンピュータを使ったことがあるよというようなプラットフォームが文科省のほうで、もしそういうことを計画されるなら、とてもすばらしいことかなと1つは思います。
 それから、人に関して、もう少し申し上げると、結局、日本の人口、若者はどんどん減っていくので、海外の人をどういうふうに入れていくかって大事なのですけれども、そのときに今度、使うほうで、先ほどの生成AIみたいなのを言語の壁をなくすために、例えば各大学が使えるようにして、そうするとアジアの留学生が普通に日本に来て、優秀層をちゃんととってきて教育できるというような形にするという、そういうような、これはちょっとしたアイディアですけれども、そういうことに使う。つまり、そういうことを通して自然に使って、しかも、優秀な人が日本に来て、それで、一番良いのは日本にそのままとどまってもらって開発に協力してもらうとか、そういうような感じの、何かいろいろなところをこういう生成AIあり、量子コンピュータありきの形で少しずつ変えていくような感じで考えていくと良いのかなと、そういうふうな完全な個人的な、しかも、あまり考えていない意見ですが、思いました。
 以上です。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 重要な視点だと思いますけれども、少し時間が押しているのですが興味深いテーマでございますので、議論したいと思います。ChatGPTは簡単に使えるのだけれども、中身がなかなかよく分からないということもあって、質問がなかなかしにくいところではないかと思いますが、やっぱり日本の現状とか、日本は今後どうするのかというのは大きなテーマだと思いますけれども、いかがですか。
 美濃島さん、どうぞ。

【美濃島委員】  面白いお話、ありがとうございました。泰地先生にお伺いします。素朴な質問に近いのですが、今日、御紹介いただいたマルチモーダル基盤モデルというのは、今のお話では、今までの、単純にデータを言語的に学習するだけではなくて、質的に学習の仕方を変えるという御提案なのかなとお聞きしたのですけれども、それでよろしいでしょうか。
特に、学習の仕方について、すごくたくさんの数値データとか、データの量を増やすことによって質的な転換を目指しているのか、それとも、学習の仕方自体が従来のものと質的に違うのかというところがちょっとよく分かりませんでした。この質問の意図は、日本の強みが何かという議論があったと思うのですけれども、まだ例えば学習の仕方ですとか、そういったアイディアの部分で日本が独自性を出せるという可能性があるというふうにお考えでしょうか。それともそれ自体もいろいろやられていて、ユーザーとして技術の進展にアクセスするというのが良いのかという、そこを教えていただきたいのですけれども。

【泰地副センター長】  ありがとうございます。まさにそこはまだやり方が分かっていなくて、まだまだいろいろアイディアは出せると考えています。今の自然言語モデルの場合は、基本的に文章の中の穴埋めをしています。穴埋めというのは、例えばI eat何とかと言ったら、そこに来るのは多分食べ物というふうに決まっていて、何かそこの可能性というのはかなり限定されてきて、割とこの言語の場合というのは決まったものが来るのですけれども、サイエンスの分野では、例えばこういう条件で計測したら、そこにこういう数値がペタッとはまったときに、その数値は何だというところを限定するというのは、かなり難しいのですよね。そこの数値を限定するというところをやろうと思うと、やっぱりもう少ししっかりした演繹モデルを援用したり、あるいは従来的な統計モデルとかを使ったりとか、そういうものをほかの自然言語モデルと組み合わせていくということは必ず必要になってくると私としては想定しています。そこのところは、まだ誰も技術開発していない部分で、今後、誰かがやらなければいけないことかなと思っております。

【美濃島委員】  ありがとうございます。それでは、日本もいろいろそういうところでまだ活躍できる種があるということですね。

【泰地副センター長】  そうですね。はい。

【観山部会長】  齊藤先生、お願いします。

【齊藤委員】  齊藤でございます。この分野の進展、科学の発展の歴史の中で初めての研究のスタイルだと思うのですね。自然言語分野は、これが良いのではないかという研究が長くあって、それがいきなり根底から引っくり返って、いや、それは不要で、こういうほうが良いですよとかいう歴史を何回かしてきた。今のセルフアテンションもGoogleが最初に論文で言って、そこでもう完全に引っくり返って、全てのモデルがリセットされたと。
 これほどの頻度でちゃぶ台返しが起こる学問って、多分、歴史上なくて、ずっと学術体系を連続的に作っていくスタイルではないのですね。だから、そういう意味で、若者がすごく活躍できる場でもあって、あまり年齢が関係なくて、どういう学問上の経験をしてきたかということすら不可欠な要素ではないということなので、人材活用を考えていく、そこが重要なポイントになって、ある意味、オープンイノベーションの仕組みをどこまで広げるかという設計がかなり重要になってくるのではないかなと思います。そういう意味で、今、ベンチャー促進政策をやっていますが、そういうものとの親和性も非常に良いのではないかなと感じております。
 以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 小泉さん。

【小泉委員】  ありがとうございます。齊藤先生、あと、先ほど有馬先生もおっしゃったみたいに、人というのはとても重要だなと思いながら聞いていたところで、どうも日本の政策だと、これ、結局、ChatGPTにしても、こういった生成系AIの話にしても、一番初めのTRIPの話にしても、プラットフォーマーになれるか、なれないかという話だと思うのですよ。日本がプラットフォームを牛耳れるかどうかって、多分、無理。多分、日本だけで、このプラットフォームのサイズの争いをし始めてしまうと、日本が作ろうとするプラットフォームのサイズとアメリカとか中国とかがやろうとしているサイズが大きく違っていて、日本は良質なデータがあると幾ら言っても、日本の研究力の現状からすると、多分、それを中国とか、アメリカとか、ヨーロッパを凌駕するだけの良質なデータをそんなサイズで争うぐらい集めることは、日本だけで集めることは多分無理。そう考えたときに、では、そのプラットフォームのサイズだけで争うのではなくて、どこに投資するのかがやっぱり重要で、やっぱり人に投資したりとか、あとはもう少しやり方を工夫したりとか、何かそういった特徴がもう少し必要なのかなと思ってお話を聞いていたところです。
 特に人の投資というのは、有馬先生も言われていたみたいに、ちゃんとここ、人を育てていかないといけないところだと思って、プラットフォームを作れば良いというところだけではなくて、ちゃんとそこも人を育てていくというところもしっかりやっていかないと、いけない。やっぱり日本はサイズで戦うのは無理だとすると、アイディアを出して、人を育てていく、そこで工夫をして戦っていかなければいけないと思っているので、そこのところがいろいろ重要なのかなと。あとアルゴリズム解析とか、理研だけで全てが完結するわけではないともちろん思っていらっしゃると思うし、TRIPには例えば統数研も加わっているので、統数研には本当に、持橋さんとか頭の良い方々もたくさんいるので、うまく人を活用しながら世界と戦えるようなプラットフォームを作っていくのが良いのかなと思いながら聞いていたところです。すみません、感想レベルの話でした。

【観山部会長】  非常に重要なテーマで、今日、時間ののこりが少なくて申し訳ありません。量子コンピュータと生成AIと両方、非常にホットなテーマでありますので、これは今後も議論を続けていきたいと思いますし、特にどういう観点から我々は日本の戦略を立てて作っていくのかということが重要と思います。人材だとか良質のデータだとか、いろいろな御意見が出ましたけれども、これは本当に去年の後半から、さっき言われたように大学の中でも、みんないろいろなことでワイワイと議論していることです。こういうものを日本発信ではなくて、外から来ているのだなという感じも、ぜひこの部会で今期の重要なテーマとして議論していきたいと思います。初田さん、それから、泰地さん、今後も話題提供もしていただければと思いますのでよろしくお願いします。すみませんが、まだまだ御質問があると思うのですけれども、もう一つ議題がありますので、もう時間がなくなりそうなので、ここまでにしたいと思います。事務局のほうは、ぜひこういうテーマでもう1回、何回も今期、会合を設定していただければと思います。
 それでは、議題の(6)番、創発的研究支援事業の研究機関による研究環境改善の好事例について、文科省から、事務局から、時間が押していますので簡単に説明していただければと思います。よろしくお願いします。

【松本室長】  それでは、創発的研究支援事業について説明いたします。本事業につきましては、第11期の本部会におきましても事業の充実・改善について報告させていただいて、御意見をいただいてきているところです。本日は、本事業における、研究機関における研究環境改善の取組を紹介させていただければと思っています。
 1ページをお願いします。まず、創発的研究支援事業の概要について説明いたします。本事業は、自由で挑戦的・融合的な構想にリスクを恐れず挑戦し続ける独立前後の多様な研究者を対象に、最長10年間の安定した研究資金と研究に専念できる環境の確保を一体的に支援する事業です。これまで3回の公募を行い774件を採択しています。第1期生が研究開始3年目を迎えているところです。令和4年度の第2次補正予算におきまして、新たに750件程度の採択が可能となる予算が措置され、今年の夏頃には第4回目の公募を予定しています。
 事業の特徴としては、資料の真ん中ほどに書いてございますけれども、本日は、このうち赤い枠で囲んでいる研究環境改善に努めた所属機関を追加的に支援し、取組を引き出す、このことについて各機関で実施されている様々な取組を紹介させていただければと思っています。
 2ページをお願いします。研究環境改善のための追加的な支援の取組の内容につきまして、募集要綱の抜粋で説明をさせていただきます。本事業創設時の文科大臣のメッセージにもありますとおり、創設したときから研究に専念できる環境の確保を一体的に支援する事業として期待が寄せられています。下のほうの四角の中が支援の詳細になります。本事業におきましては、研究開始3年目に研究の進捗や取組状況を確認するステージゲート審査というのを設けています。
 各創発研究者のステージゲート審査と併せて、研究機関が創発研究者に対して実施した研究環境の改善内容を審査して、1期ごとに1機関当たり最大5,000万円程度の支援を行うということになっています。この追加研究環境整備支援は、創発研究者を中心とした若手研究者の研究環境改善を目的とした用途に利用することができ、研究機関の取組を評価した上で更なる取組を促進する仕組みとなっています。先ほども申し上げたとおり、本年度、第1期生が研究開始3年目を迎えていますので、研究環境改善整備支援の審査については、第1期生のステージゲート審査と合わせて本年度の下半期に予定をしているところです。
 3ページをお願いします。こちらで研究機関の取組事例を紹介します。この資料につきましては、JSTや文部科学省がこれまで研究者や研究機関向けに実施したアンケートや聞き取り等を基に作成したものでございます。網羅的に全ての取組をまとめたものではありませんけれども、研究機関がほかの機関でどのような取組を行っているのか参考にしていただきたいなという思いもありまして、今回、好事例として発表をさせていただくというものです。
 まず、独立支援という観点から、ポストの確保に関連しまして、例えばテニュアのポストに移行したであるとか、テニュアトラックの審査期間が短縮されたといった事例。また、創発事業を契機に若手研究者の昇任枠の拡充に取り組んでいただいた機関もございますし、部局でこれを財源が確保できなくなった場合においても、本部が人件費を補填するということをやられている機関もあるということでございます。それから、研究時間確保に向けた……。

【観山部会長】  すみません、少し時間が。

【松本室長】  分かりました。

【観山部会長】  約束の時間が来ていますので、少し急いでお願いいたします。

【松本室長】  はい。それぞれ研究時間確保に向けた配慮でありますとか、研究加速に向けた支援、こちらに書かれているような取組をそれぞれの大学、各研究機関でやられているというようなことでございます。
 4ページをお願いします。その他いろいろこちらに書かれているような取組も各機関で行われているということでございます。
 以上、研究環境改善の事例を紹介させていただきました。昨年度所属機関に取ったアンケートにおいては、本事業を契機として若手研究者支援の機運が高まったという回答もいただいております。本日、御紹介した取組を参考にしていただきながら、研究機関には研究者に寄り添った更なる支援の充実を期待しているところです。
 説明は以上です。

【観山部会長】  急がせまして、どうもありがとうございました。
 今までとは違って7年、10年とかいうような長期間の支援事業でありまして、非常に期待が大きいです。ただ、今、3年目、最初の採択者については3年目になっています。そこで、ステージゲートの評価をどういうふうにするのかというのが課題であります。ご意見などいかがでしょうか。時間があまりありませんけれども、何か。
 小泉さん、どうぞ。

【小泉委員】  ありがとうございます。まさに今、部会長も言われたみたいに、この創発は特にやはり若手研究者の研究環境改善も重要なポイントで、単にお金を、研究費を与えるだけではない。選ばれた人にお金を配るだけではなくて、研究環境改善をするためのこういった資金を大学に与えるというところがすばらしい取組なのだと思っています。
さらに、研究環境改善の好事例のところも、2種類あるような気がしていて、1種類目は、この創発で選ばれた人にメリットがあるような、創発の研究者に向けたメリットがあるようなサポート。もう一つは、やっぱり重要だと思うのは、創発研究者を中心に、それ以外の若手研究者にも裨益するような大学の仕組みの改革というか、大学の中のほかの若手研究者にも裨益するような研究環境改善に使っていくということができているかどうかというところ、そこがもう一つポイント。
だから、好事例も2つに分けたら良いと思うのですね。創発、選ばれた人にあげるという部分と、それから、創発に選ばれていない人も含めて、若手研究者の研究環境改善全体としてやっているという好事例、その2つに分けたほうが見やすいかなと思って松本さんのお話を聞いていました。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 今後の参考にしていただければ。どうぞ。

【松本室長】  小泉先生、ありがとうございました。今後、紹介する際に工夫させていただきたいと思っています。ありがとうございました。

【観山部会長】  ほかにいかがでしょうか。これはぜひ4回で終わらずに、ずっと続くような仕組みにしていただけることが重要ですので、その点は財政的な確保をぜひぜひよろしくお願いしたいと思います。
 短時間になりましたけれども、本日の議題は以上になります。また、先ほどの生成AIだとか、それから、量子コンピュータだとかということについては、今後も議論させていただきたいと思います。この部会でいつも海外から来た新しいテーマについて、いつも何か議論しているような感じです。我が国発の新しいパラダイムというのが何かできないのかなということをいつも思っていますが、それはやっぱり若手の自由な発想に基づいて、そこら辺をエンカレッジする仕組みが重要だと思います。今の創発的な支援事業も、その1つではないかと思いますが、まだ3年しかたっていませんので、今後、彼ら、彼女らがどういうふうに新しいものを作ってくれるかというのは期待したいところでありますが、そういう新しい面をぜひぜひこの部会でも考えたいと思います。
 それでは、申し訳ありませんけれども、時間も押していますので、本日の議題は以上となります。基礎研究振興部会運営規則第7条に基づき、本部会の議事録を作成し、資料とともに公表することとなっております。本日の議事録は、後日、メールで事務局からお送りすると思いますので、御確認をよろしくお願いいたします。
 事務局のほうから何かアナウンスはありますでしょうか。

【藤井推進官】  特にございません。ありがとうございます。

【観山部会長】  それでは、以上をもちまして第10回の基盤研究振興部会を閉会したいと思います。時間が押していまして、いろいろまだまだ御意見があったと思いますけれども、また次回、こういう機会を設けたいと思いますので、今日は参加いただきまして、ありがとうございました。失礼いたします。
 
―― 了 ――
 

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