基礎研究振興部会(第9回) 議事録

1.日時

令和5年1月12日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

オンライン開催

3.議題

  1. 基礎科学をはじめとした令和5年度予算(案)について 
  2. 数理科学の展開に係る最新の動向について
  3. 創発的研究支援事業の改善の方向性について

4.出席者

委員

観山部会長、黒田委員、小泉委員、小谷委員、齊藤委員、品田委員、辻委員、長谷山委員、美濃島委員

文部科学省

研究振興局長担当審議官 木村直人、研究振興局基礎・基盤研究課長 西山崇志、研究振興局学術研究推進課長 永田勝、科学技術・学術政策局 研究開発戦略課 戦略研究推進室長 釜井宏行、研究振興局基礎・基盤研究課 課長補佐 春田諒、研究振興局基礎・基盤研究課 融合領域研究推進官 藤井典宏

オブザーバー

国立研究開発法人 理化学研究所 宮園浩平 理事、創発的研究支援事業運営委員会 西尾章治郎 委員長

5.議事録

【観山部会長】  それでは、定刻になりましたので、ただいまから第9回科学技術・学術審議会基礎研究振興部会を開催いたします。
 本日の会議ですが、本部会運営規則に基づき公開の扱いとさせていただきますので、御承知おきくださるようお願いいたします。
 まず、事務局より、本日の出席者と議題の説明などをお願いいたします。

【藤井推進官】  本部会の事務局を担当しております文部科学省基礎基盤研究課融合領域研究推進官の藤井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の出席者を御紹介させていただきます。
 まず、観山正見部会長でいらっしゃいます。

【観山部会長】  よろしくお願いします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、黒田一幸委員でいらっしゃいます。

【黒田委員】   よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
続きまして、小泉周委員でいらっしゃいます。

【小泉委員】  よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、小谷元子委員でいらっしゃいます。

【小谷委員】  小谷でございます。よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、齊藤英治委員でいらっしゃいます。

【齊藤委員】  齊藤でございます。よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、品田博之委員でいらっしゃいます。

【品田委員】  品田です。よろしくお願いします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
 続きまして、辻篤子委員でいらっしゃいます。

【辻委員】  辻です。よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
続きまして、長谷山美紀委員でいらっしゃいます。

【長谷山委員】  長谷山です。よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  ありがとうございます。
 続きまして、美濃島薫委員でいらっしゃいます。

【美濃島委員】  美濃島です。よろしくお願いします。

【藤井推進官】  よろしくお願いいたします。
 また、天野浩委員、合田裕紀子委員、城山英明委員におかれましては、本日は御欠席との御連絡をいただいております。
 続きまして、文科省の出席者を紹介させていただきます。
 まず、研究振興局担当審議官の木村直人でございます。

【木村審議官】  木村でございます。よろしくお願いします。

【藤井推進官】   続きまして、研究振興局基礎・基盤研究課長の西山崇志でございます。

【西山課長】 西山です。よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  続きまして、研究振興局学術研究推進課長の永田勝でございます。

【永田課長】  永田です。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  続きまして、科学技術・学術政策局研究開発戦略課戦略研究推進室長の釜井宏行でございます。

【釜井室長】  釜井でございます。よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  続きまして、研究振興局基礎・基盤研究課課長補佐の春田諒でございます。

【春田課長補佐】  春田です。どうぞよろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  また、本日は議題1の関係で、国立研究開発法人理化学研究所の宮園浩平理事にも御出席をいただいております。

【宮園理事】  よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  また、議題3の関係で、創発的研究支援事業運営委員会の西尾章治郎委員長にも御出席をいただいております。

【西尾委員長】  西尾でございます。どうかよろしくお願いいたします。
 
【藤井推進官】  出席者につきましては、以上でございます。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。
 資料につきましては、メールでお送りをしておりますけれども、議事次第の配付資料一覧に記載をしておりますとおり、資料1-1から3までの7種類と、参考資料が2種類でございます。欠落などございましたら、画面越しに手を挙げて申し出ていただけますと幸いです。
 よろしいでしょうか。もし何か途中で気づかれましたら、チャット機能などでお知らせいただけますと幸いです。御確認ありがとうございました。
 続きまして、本日の議題について説明をさせていただきます。
 事務局から、西山課長、よろしくお願いします。

【西山課長】  西山です。本日も先生方、お忙しいところを御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の基礎研究振興部会、第9回目になるのですが、3つの議題がございます。議事次第のほうを御覧いただければと思います。
 1つ目の議題は、令和5年度の予算案についてです。昨年12月に政府予算案、閣議決定をしてございます。また、令和4年度の第2次補正予算についても昨年の臨時国会で成立をしておりますので、これらにつきまして、この部会でこれまで御議論、御審議いただきました事項を中心に、予算の内容について御報告申し上げたいと思います。これが1つ目です。
 2つ目、数理科学の関係でございます。昨年の7月、この基礎研究振興部会での御審議を踏まえまして、文部科学省のほうで「2030年に向けた数理科学の展開」という文書を文科省として決定をしております。
 これは2030年に向けたこの数理科学、数学に対して国としてどういう期待があり、また今後の政策展開における重要課題についてと、今後の取組についてまとめたものでございます。
 本日はこれに沿って、これまでの間、文科省において具体的な取組等を開始しておりますところ、進捗について御報告を申し上げまして、さらなる御議論をお願いしたいというのが2つ目でございます。
 3つ目、創発的研究支援事業でございます。これにつきましても、前回7月のこの部会におきまして、創発的研究支援事業の充実について委員の皆様から御意見をいただいたところでございます。
 本日は、これら頂戴した御意見に対して、今後のさらなる改善の方向について具体的な御議論をお願いしたいというものでございます。
 以上3つでございます。どうぞよろしくお願いします。

【藤井推進官】  事務局からの説明は以上でございます。

【観山部会長】  それでは、議事に入りたいと思います。まず議題1「基礎科学をはじめとした令和5年度予算(案)について」です。
 まず、資料1-1から資料1-3について事務局から説明いただき、その後、資料1-4について事務局及び理化学研究所の宮園理事から発表をお願いしたいと思います。御発表後、委員より御意見を頂戴できればと思います。
 まず、事務局より御説明をお願いいたします。よろしくどうぞ。

【永田課長】  それでは、資料1-1を御覧ください。学術研究推進課長の永田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私のほうからは、当課で所掌しております科研費、並びに創発的研究支援事業の関連予算について御説明をさせていただきたいと思います。
 令和4年度の2次補正予算と令和5年度の当初予算案につきまして、現在、このような形で大きく3つの枠組みの中で、予算措置、計上させていただいているところでございます。全体を通して、世界で活躍し、未来のアカデミアを牽引する若手研究者の飛躍を支援する、こういった観点から、この3つを挙げてございます。
 1つ目は、左側の真ん中にありますオレンジ色のくくりでございます。主に博士後期課程、並びにポスドクを対象としまして、日本学術振興会のほうで特別研究員という制度がありますけれども、こちらに対するアカデミアへのキャリアパスを支える切れ目ない支援の強化といたしまして、科研費で支援しております特別研究奨励費の基金化を推進するといったこと。ポスドクを対象に機関雇用の学術研究遂行のための条件整備を科研費で行うといったこと。さらには、この特別研究員に対しまして、海外での共同研究をしやすくするために渡航費・滞在費を支援しております国際共同研究強化の種目について、応募並びに受給の制限を緩和する、そういったことを、今回取組を行っているところでございます。
 また、2つ目としましては、右側にあります②でございますけれども、長期的研究に専念できる資金と環境の一体的な支援といたしまして、創発的研究支援事業の強化とさせていただいております。こちらにつきましては、令和4年度の2次補正予算としまして553億円を措置させていただいて、750件程度が採択できる規模となってございます。
 また、右側の下でございますけれども、トップレベル研究者間の主体的なネットワークによるハイレベルな国際共同研究を強化するといった観点から、科研費の国際先導研究の拡充といったものを、補正予算において充実を図っているところでございます。
 この種目につきましては、この国際共同研究の強化と併せまして、左側に少し伸びておりますけれども、ポスドクないしは博士学生を対象として、約8割程度を参画の要件といたしまして、若手を海外に長期間派遣するといったことも要件化した種目でございます。そういった観点から、国際共同研究の強化と併せまして、若手研究者の育成といった観点も入っているといったところでございます。
 こういった3つの取組を通じまして、世界水準の成果の創出、並びに人材育成の好循環を促しながら、日本全体の研究力を抜本的に強化してまいりたいというふうに考えてございます。
 では、具体的な取組について御説明させていただきます。2ページ目をお願いします。
 科研費につきましては、先ほど申し上げましたとおり、令和4年度の2次補正予算で156億円が措置されてございます。
 この内容としましては、1ポツにあります国際共同研究の強化といたしまして、国際先導研究の研究の充実として110億円が措置されてございます。また、残りの46億円が、特別研究員奨励費の基金化によるものでございます。
 これは、2ポツにございますアカデミアへのキャリアパスを支える切れ目ない支援といたしまして、特別研究員に既に採用された方々の分を基金化するといったことで、補正予算で措置されたところでございます。
 それに併せまして、令和5年度当初予算案ですけれども、予算規模といたしましては前年度同額の2,376億円が計上されてございます。この内容につきまして、先ほど申し上げました特別研究員奨励費が従来の補助金種目から、新規採用者につきましても基金化するといったところでございます。
 そのほか、先ほど申し上げました特別研究員につきまして、機関雇用に対する学術研究遂行の条件整備といった取組を科研費として支援するものでございます。個別の内容は、また別途で御説明させていただきます。
 3ページ目をお願いいたします。
 科研費では、今申し上げました国際先導研究でございますけれども、こちらについては令和3年度補正予算で110億円が措置されまして、今回、令和4年度の2次補正予算で110億円、同額の拡充が図られたといったところでございます。
 内容といたしましては、事業内容にありますとおり、高い研究実績と国際ネットワークを有するトップレベルの研究者が率いる優秀な研究チームによります、海外のトップレベル研究チームとの国際共同研究を強力に支援していくということ。さらに、この取組におきましては若手(ポスドク・大学院生)を参画要件といたしまして、若手を長期の海外派遣・交流・自立支援を行うことによりまして、世界を舞台に戦う優秀な若手研究者の育成を推進するといったものでございます。
 研究期間としては7年間、最大10年間までの延長可。予算規模としましては7年間で最大5億円まで。採択件数としましては15件程度となってございます。
 令和3年度の補正予算分につきましては、昨年12月20日に15件を採択し、既に公表されたところでございます。また、令和4年度の補正予算分につきましては、本日1月12日にJSPSのホームページにおいて開始されたところでございます。
 4ページ目をお願いいたします。
 科研費のもう1つの種目でございますけれども、特別研究員奨励費の改革でございます。
 下の赤囲みの中を御覧いただきたいと思いますけれども、特別研究員につきまして、国際的な研究活動とアカデミア採用前後の研究活動を継続・発展する仕組みを導入したいといったところから、今回の取組をしてございます。
 科研費の基金化の推進といたしまして、既に採択された研究者、さらに今回新たに令和5年度に採択される新規採択者について基金化を推進し、さらに、国際共同研究強化といった種目について、重複制限の緩和に取り組んでいるところでございます。
 ②といたしまして、ポスドクの特別研究員につきまして、研究時間を確保するといった観点から、現在は機関に雇用されていない環境下で、身分的には不自由なところがございます。そういったところを改善するため、機関管理の下で、PDにつきましては研究を活性化していただくということで、1人当たり100万円をそれぞれの機関に措置するといったことを、科研費において枠組みをつくることにしたところでございます。
 5ページ目をお願いいたします。
 3つ目の創発的研究支援事業でございますけれども、先ほど西山課長のほうからお話がありましたとおり、前回7月7日の基礎部会におきまして、本事業の継続について、皆様方から御意見を賜ったところでございます。
 おおむね、この事業につきましては引き続き継続・拡充していくべきという御意見を賜ったことを踏まえまして、本事業につきましては、令和4年度の2次補正予算におきまして、553億円の予算が措置されたところでございます。
 この予算規模につきましては、この上のほうにありますとおり750件程度の採択が見込める程度の予算規模となっておりこれは現在毎年250件程度、これまで3回、公募・採択等をしてございますけれども、同じと考えれば3回程度が公募できる規模感ということになってございます。
 この事業の特徴としましては、中段から真ん中にありますとおり、長期間、安定した資金を確保するという観点から、年700万円程度が7年間、最長10年間の長期的な研究資金が確保できるといったこと。さらには、その左側にありますとおり、研究環境改善のための追加的な支援といたしまして、所属する機関において研究時間を確保するための取組をしていただきまして、その取組に対して追加支援をするといった取組。さらには、その右側にありますとおり、採択者同士がプログラム・オフィサーのマネジメントの下、相互誘発できるような創発の場といったところを提供する。これらを通じまして、優れた人材の意欲と研究時間を最大化しまして、研究に専念していただき、破壊的イノベーションにつながるような成果を創出していただきたいといったところを目指してございます。
 私のほうからは以上でございます。よろしくお願いいたします。

【観山部会長】  続けてお願いいたします。

【釜井室長】  戦略研究推進室長の釜井でございます。資料1-2を御覧になっていただけますでしょうか。
 まず2ページ目のほうから、早速入らせていただきます。2ページ目、スライドお願いできますでしょうか。
 委員の皆様、戦略的創造研究推進事業、さきがけ、CREST、ERATO等について、既に過去にわたり様々な支援、御協力をくださいまして、本当にありがとうございます。ポイントだけ、私のほうからは説明させていただきます。
 2ページ目、今御覧になっているとおりでございますけれども、JSTの戦略創造事業につきましては、目的としては、国が定めた戦略目標の下に、イノベーションの源泉となる基礎研究を戦略的に推進するということで、新技術の創出、それからサイエンスの潮流を生み出すというふうなことでございます。
 特に、今までもそうでしたが通常の研究活動、学会活動で出会うことができない異分野の研究者との密接な交流、ネットワーク形成を可能として、異分野融合を促進してきたということがございます。ぜひこのようなところも重視しながらやっていければと考えております。
 資料の右肩にございますけれども、令和5年度の予算額として436.5億円ということで、前年度比8.6億円増ということになってございます。我々、せっかく頂いた予算でございますので、本当に効果が上がるように、大事に執行していければと考えております。
 メニューといたしましては、先生方御承知のとおり、トップの研究者が率いるチーム型としてのCREST、それから、真ん中にございますけれども、さきがけ、いわゆる個人型ですね。それに加えまして、ACT-Xといいまして、2019年に発足したのですが、博士号取得8年未満ということで、最初は情報とかAIの分野とかで支援してきたというのはあるのですが、こちらも若手支援のメニューとして加えさせていただいております。それから総括の実施型のERATOということで、本当にトップを支援するということでございます。
 今までの成果といたしまして、少し飛ぶのですが7ページ目のほうをスライドしていただけますでしょうか。
 皆様御承知のとおり、戦略創造事業ということについては、非常に研究力の上でも、特にトップ層の支援ということで貢献はしてきたかなと考えております。
 左側にもございますとおり、国内における世界3大科学誌への投稿論文ということでございますけれども、特に過去数年間にわたっては、2015年ぐらいからなのですが、2割以上というのをコンスタントに確保しております。
 それから、ノーベル賞が全てではございませんが、日本人のノーベル賞の候補についても約半数程度が同事業に関わってくださっているということでございます。
 あと重要なのは、例えばさきがけの採択者が若手研究者の昇進の重要な契機にということで、私どものほうも様々な有識者とも意見交換をさせていただいておりますけれども、さきがけの採択者というのが、同事業による支援を通じてネットワークが既に形成されておりますので、それが研究者としてのさらなるジャンプアップにつながるということで、ぜひそういった良い文化、それからブランド力も生かしながら、やっていければと思っております。
 では、3ページ目に移っていただけますでしょうか。
 こちらが令和5年度の予算案のポイントでございます。四捨五入すると437億円ということなのですが、メニューといたしましては新規で設定する研究領域のほうの充実ということで、今、予算上の整理でございますけれどもCRESTの新規領域数が4、さきがけが5、ERATOが4、ACT-Xが2ということでございます。
 あと、これは予算上のことでございますけれども、なかなか過去、新規の領域数というのは結構増減したりしたところがありましたがJSTの戦略創造事業は非常にコミュニティにとって重要ですし、科研費と並びまして基幹的なファンドだと理解していますので、新規領域数の確保というのも、今後さらに傾注しながらやっていければと考えております。
 なお、令和5年度の新しい戦略目標につきましては、今年の3月中頃、例年そうなのですけれども、確定いたしまして、大臣のほうから発表した上でプレスに公表ということで考えておりますので、引き続きよろしくお願いします。
 それから②といたしまして、ACT-XにおけるAIの関連の領域の設定ということなのですが、こちらにつきましては、昨年の6月に決定されました「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に、ディープラーニングを重要分野として位置づけてやっていくというふうなことがございましたので、これを踏まえた形として、今回の2領域のうち1領域についてディープラーニングを主としたAI関連の新規領域というものを設定すべく、現在調整をしているところでございます。
 ③といたしまして、CREST等における追加延長支援の設定ということでございます。
 こちらなのですけれども、例えばさきがけでは3年半、CRESTであれば5年半といった支援期間が終了したときに、サイエンスもしくは社会実装の観点で、もう少しやればさらに本当に良い成果ができるというふうなところについて、まだ規模として十分な予算は確保できていないのですが、全体のうちのそういったところに限った形で、1年間、追加延長支援を設定したいと考えておりまして、こちらの予算についても、少しではあるのですが確保できたところでございます。
 以上が、令和5年度のポイントでございます。
 最後になりますけれども、戦略目標の策定プロセスについては、いろいろ省内でも検討はしているのですが、省内の検討会のヘッドが文部科学審議官の増子でございまして、今ここの席にいらっしゃる木村審議官もメンバーでございますけれども、来年の戦略目標の決定に当たって相当、是々非々で検討もさせていただきましたので、ぜひ、より良い戦略目標がつくれるようにしたいということと、令和6年度以降でございますけれども、その検討会の過程で、さらに目標の大くくり化をしたほうが良いのではないかとか、あるいは複数の課の連携による政策的な提案もできると良いのではないか、といった意見交換もしてきました。ぜひそういったところを少しでも実現に移せるようにしていければと思っております。
 それからJSTのほうにつきましても、本事業、橋本理事長も非常に重要だと、コミュニティのためにも重要な事業だというふうにおっしゃっておりますので、執行も含めて、JSTと一緒になってやっていければと思っております。
 私からの説明は以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございました。少し、委員の皆さんからの意見交換の時間を取りたいと思いますので、すみません、簡潔にお願いします。
 資料1-3についてお願いします。

【春田課長補佐】  承知いたしました。基礎・基盤研究課の春田でございます。私のほうからは、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の令和5年度予算案について御説明をさせていただきます。
 2ページ目、お願いいたします。
 予算案の概要について御説明する前に、この予算編成に当たっての現状認識、そしてそこから見えてきましたWPIの方向性について、簡潔に御説明させていただければというふうに思っております。
 3ページ目、お願いいたします。
 まず基礎科学への投資でございますが、左のグラフにありますとおり諸外国――アメリカ、欧州、中国等でございますね、順調にこの基礎科学への投資を伸ばしておりまして、日本はあまり伸びていないというところがございます。
 さらにはポストコロナに向けて、コロナで停滞したムードを打破するために、各国共、基礎科学に対する投資を戦略的に進めているというところでございます。
 詳細については、こちら右側に書いておりますが、時間の関係でこちらは省略させていただきます。
 では4ページ目、お願いいたします。
 世界の研究者の主な流動でございますが、右の図にありますとおり、日本は必ずしも国際的な研究ネットワークの中核になっていなかったという現状がございます。そしてさらに、このコロナ期間中、厳しい入国制限等が行われた関係で、さらに取り残されるような現状になっているというところでございます。
 また他方で、米中対立やロシアのウクライナ侵攻など、国際的な頭脳循環を進める上で、日本にとって極めて重要な時期に差しかかっているというところでございます。
 次の5ページ目、お願いいたします。
 先ほどの国際ネットワークの関係でございますが、海外への派遣者及び海外からの受入れ研究者について、中長期での事例の推移を見ますと、このコロナの関係で、海外への派遣研究者数については約4分の1に、受入れ研究者数については約30%の減と、やはり国際ネットワークから取り残されているような現状が目に見えてきているという状況でございます。
 続いて6ページ目、お願いいたします。
 基礎科学の役割でございますが、この役割は現状、拡大しているというふうに考えております。特にプラットフォームとしての機能がかなり重要視されておりまして、この機能を強化していく必要性があるというふうに考えております。
 下のほうに書いてありますとおり、基礎科学そのもののダイナミズムに着目し、場のプラットフォームとしての活用、機能強化を進めるべきと、我々は考えているところでございます。
 7ページ目、お願いいたします。
 こちらは研究インテグリティの関係になりますが、基礎科学であっても、技術安全保障の観点から地政学的な影響を捉え、基礎科学を発展させる必要があるというふうな状況になってきております。
 いわゆる中国の関係でありますとか利益相反の関係、世界各国でいろいろ取り沙汰されております。基礎科学でもこの面にしっかりと着目し、手当てをしながら発展させていくべきというふうに考えているところでございます。
 8ページ目、WPIの成果でございます。
 WPIは創設から15年を経ておりますが、極めて高い成果を創出しているというふうに認識をしております。
 右の図にありますとおり、Top10%論文数そのものの数の多さもありますが、その割合が20%以上と、かなり高い割合を誇ってございます。
 また、そのTop10%論文数の数及び割合でございますが、補助金の支援期間中のみならず、補助金支援期間終了後も高いレベルを維持しているという状況がございます。これは、WPIプログラムによって世界から目に見える研究拠点というものがしっかりと確立されているというふうに考えているところでございます。
 このように、高い研究力と優れた国際研究環境を有する拠点を1つの機関に構築するということに対して、WPIプログラムはかなり成功していると考えています。そのことによって、機関内に研究マネジメントや国際研究環境の構築手法等のグッドプラクティスが蓄積しているという状況でございます。
 9ページ目でございますが、こうやっていろいろな成果を生み出してきたWPIでございますが、この15年を経て見えてきた新たな課題というものもございます。
 先ほど御説明いたしましたとおり、背景がかなり変わってきているというところもございまして、この基礎科学の意義は新しいステージへと入ってきているというふうに考えております。
 WPIは1つの機関に複数領域の研究者を集めて、融合研究の拠点として高い成果を創出してきておりますが、諸外国では先ほど御説明させていただいたとおり、経済・社会情勢の変化による価値観の変容に応じて、数十年先を見据えた視座からの研究にシフトしているという状況でございます。
 このため、世界にインパクトを与える新しい学術領域の創出には、各機関の強みの糾合が必要というふうに考えております。
 WPIは融合領域の創出に貢献した一方、新しい学術領域を日本発で創出している例は必ずしも多くないというふうに認識をしてございます。
 そのため、1つの機関だけでは困難であった新たな学術領域の創出に向けて、各機関の強みを糾合させる仕掛けが必要というふうに考えております。
 左下の黄色枠のところにありますとおり、大学・研究機関全体を公共財として捉えて、10年、20年先を見据えた長期的視座からの研究に変革する時期だというふうに考えております。
 続いて10ページ目、お願いいたします。先ほど説明のポイントをまとめさせていただいております。
 中長期的な視座から世界トップレベルの基礎科学に対して戦略的な投資を進める必要があるというふうに我々は考えております。
 さらに、世界規模の課題が発生しても持続的に機能を強化していける、国際的な頭脳循環のハブ拠点が必要だというふうに考えております。
 そして、基礎科学の役割が拡大していることから、このプラットフォームとしての機能強化を進めていくことが大変重要だというふうに考えています。
 また、研究インテグリティのところについても、しっかり手当てをするということが重要だと思っています。
 これらを踏まえまして、WPIの方向性として、大学研究機関全体を公共財として捉えて、新しい学術領域を創出、我が国主導でオーガナイズしていく仕組みへと進化させていく必要があるというふうに考えているところでございます。
 続いて、11ページ目は飛ばしまして、12ページ目、お願いいたします。
 これらを踏まえまして、令和5年度予算案では、前年度令和4年度予算額から10億円増の約71億円を計上しているというところでございます。
 このポイントでございますが、左の真ん中にあります令和5年度予算案のポイントというところを見ていただければと思いますが、新しく伴走成長方式であるWPI COREというものを令和5年度に新設いたしまして、こちらを2拠点、採択する予定でございます。
 または、この2拠点の採択のほかに、複数機関がアライアンスを組む形で1つの提案を行うことも可能としておりまして、このWPI CORE2拠点、あるいは複数機関でアライアンスを組む形での提案を採択したいというふうに考えております。
 WPI COREでございますが、右のほうに詳細が書いてありまして、5年目までにステージゲート審査を行ってステップアップするという方式で考えているところでございます。
 ステップアップ前については従前のWPIの規模の7割程度を要件といたしまして、ステップアップ後に従前規模にしていただくという形でございます。こうすることで、特色ある大学の強みを生かした研究拠点の形成ができるというふうに考えております。
 また、下の米印にありますとおり、複数の機関が強固な連携を組む形で1つの提案を行うことも可能という形にすることで、複数の機関の強みを糾合して新たな学術領域を創出していくということも可能になるというふうに考えているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。

【観山部会長】  ありがとうございます。次の資料1-4が終わったところで、皆さんからの御質問を受けたいと思います。
 それでは、事務局及び宮園理事により御説明をお願いしたいと思います。資料1-4ですね。

【春田課長補佐】  引き続きまして私のほうから、量子コンピュータ・スーパーコンピュータの組合せによる研究DX基盤の高度化(Transformative Research Innovation Platform of RIKEN Platforms)、略して「TRIP」という事業について御説明させていただきます。私のほうから簡単に概要を御説明いたしまして、詳細については宮園理事からお願いできればというふうに考えてございます。
 こちらの事業の背景でございますが、「背景・課題」に書いてありますとおり、現在マテリアル分野を中心に、AI・データ駆動型研究が進展しておりますが、分野を横断した研究DXの進展や、研究DXそのものの基盤の高度化というものが課題となっております。
 他方、理化学研究所は我が国最先端の研究開発法人として唯一、量子、AI、バイオテクノロジー等の分野の研究開発を、これら全ての分野でトップレベルで牽引しているというところでございます。
 これらを踏まえまして、このTRIPでは、理化学研究者が有する最先端の研究プラットフォームをつなぐために良質なデータを蓄積・統合するとともに、量子・スパコンのハイブリッドコンピューティングを導入、さらには数理科学を融合させてこれまでの研究DXの基盤を高度化し、次世代の研究DXプラットフォームを構築するということを目的としております。
 これによって、「未来の予測制御の科学」を分野の枠を超えて開拓し、社会変革のエンジンを国内外へ広く提供したいというふうに考えております。
 実施内容は大きく5つに分かれておりまして、1つ目が良質なデータ取得。2つ目がAIと数理科学の組合せによる予測科学の開拓。3つ目が量子古典ハイブリッドコンピューティングの基盤構築。4つ目がこれらの基盤を用いたユースケース。5つ目が国家的・社会的に重要な最先端技術に集中的に研究できる運営体制の整備という形になっております。
 具体な内容については、宮園理事からお願いいたします。

【宮園理事】  宮園です。それでは、3ページをお願いいたします。
 まず、今回のTRIPにつきまして御紹介いたしますが、ここにありますとおり「経済財政運営と改革の基本方針2022」、それから「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」におきまして、量子、AI、バイオテクノロジー、医療分野が、国益に直結する科学技術分野として重要性がうたわれております。
 理研はこれらの分野をカバーして最先端の研究者を有する国立の研究所であるということで、理研全体が総合力を発揮することで社会変革のエンジンとして貢献したいということで、この提案を行いました。
 次お願いいたします。4ページです。
 理化学研究所は、昨年の4月から、松本紘前理事長から五神真理事長に交代いたしまして、昨年4月から新しい経営体制になるとともに、第4期中長期計画の後半を迎えております。
 新しい経営体制では、「RIKEN’s Vision on the 2030 Horizon」、右下に書いてございます、これを策定いたしまして、戦略として「つなぐ科学」というのを掲げまして、理化学研究所が有する最先端の研究のプラットフォームをつなぐことで新しい価値を創出する、プラットフォームズ・オブ・プラットフォームということなのですが、こういったことを掲げたところであります。
 5ページをお願いいたします。
 「RIKEN’s Vision on the 2030 Horizon」は昨年の8月17日に発表いたしました。1から6までございますが、この中で2ポツのところを御覧いただきますと、ここにありますとおり世界最先端の研究者や技術者、最前線を行く科学技術を幅広くつなげるということ。
 そして3ポツにございますけれども、新たな領域を切り開くことで、急激に変化する現実的な諸問題に対応していくということで、この2030 Horizonという提案の下に、研究をこれから推進していくところです。
 6ページをお願いいたします。
 今回のTRIPですけれども、Transformative Research Innovation Platform of RIKEN Platformsです。
 この図を見ていただきますと、まず3つのプラットフォームがありまして、この丸の左上から御覧いただきますと、良質なデータ取得、蓄積・統合プラットフォーム、こちらでは理研の世界最先端の研究から創出される様々なデータを蓄積・統合することによる解析基盤整備を行うということで、こちらは国立情報学研究所(NII)とも連携し、整備したデータを理研外にも展開するという予定です。
 それから右上のAI×数理、予測の科学プラットフォームでは、最先端のAI、数理解析と量子技術によりまして、様々な分野における量子古典ハイブリッド計算のアルゴリズム開発などを行うということで、こちらは統計数理研究所とも連携を検討しているところです。
 それから下のところですけど、量子古典ハイブリッドコンピューティング、計算可能領域の拡張プラットフォームでは、スーパーコンピュータ「富岳」と、国産の超伝導量子コンピュータの両方を開発している理研の強みを生かしまして、ハイブリッドコンピューティングの基盤を開発するということと、次世代半導体の基盤技術の開発を行います。
 これらの3つのプラットフォームをつなぐことで、右下に書いておりますけれども、社会や地球規模の課題を予測するとともに、介入によりまして制御を目指す「未来の予測制御の科学」というものを改革したいと考えております。
 7ページをお願いいたします。TRIP1、2、3について順番に御紹介いたします。
 まずTRIP1、「良質なデータ取得」。この図、下のほうから、「従来の活動」というところから御覧いただきたいのですが、TRIP1では、放射光、加速器など最先端の研究設備や研究から生み出されるデータがありまして、こうした多様なデータを扱っていくための付随情報、メタデータですね、メタデータフォーマット等の作成をし、データベース化を推進しており、これらをさらに高度化して――この矢印の「高度化」というのを赤字で書いてございます、従来の活動に基づいてこれらを高度化してTRIPを実施していきます。
 高度化の取組ですけれども、真ん中辺りに書いてありますけれども、左から行きますと、分野を超えて横断的にデータ検索・活用が可能なメタデータ基盤の確立。それから、一元的に管理できるストレージシステムの構築。そして右端にありますが、セキュリティレベルに応じたコスト最適なデータ保管システムの確立ということを目指し、これをNIIと連携しながら進めていくということでございます。
 一番上に「達成目標」として書いておりますが、良質なデータ取得とデータの蓄積・統合による解析場の整備と、取組の成果を理研外へ公開・展開していくということであります。
 8ページをお願いいたします。
 次はTRIP2ですけれども、「AI×数理」のプラットフォーム、こちらも下から御覧いただきますと、左から、革新知能統合研究センターでは機械学習等の理論研究。それから、真ん中にありますが数理創造プログラムでは最先端の数理科学に基づいた異分野連携研究。右のほうが、計算科学研究センターを中心としまして、ビッグデータとシミュレーションをつなぐ同化技術等の研究を推進しております。
 これを高度化いたしまして、分野を超えたデータの利活用に向けて進めていくということであります。
 具体的には、量子-古典データの変換、量子機械アルゴリズムなどの量子古典ハイブリッド計算の基盤となるアルゴリズムの開発。それから、量子物理学、量子科学、生命科学の各分野において、量子計算科学のアプローチを検討していきます。
 これらの取組を通じまして、一番上に「達成目標」として掲げておりますけれども、良質なビッグデータと量子古典ハイブリッド計算をつなぐことで、様々な分野における予測精度の飛躍的向上と、予測に基づく能動的制御を可能にするということであります。この取組に当たりましては、統計数理研究所との連携を検討しています。
 9ページですが、TRIP2をもう少し紹介しますと、AI×数理のプラットフォームでは、このスライドにあります量子物理、量子科学、生命科学の縦串と、アルゴリズム、シミュレーションの横串をこのようにつなぐことで、理研の中での横断的なコンソーシアムをつくって、オール理研クオンタムというのを立ち上げていきたいと考えています。
 10ページをお願いいたします。
 次がTRIP3、「量子古典ハイブリッドコンピューティング」プラットフォームですけれども、こちらも一番下から御覧いただきますが、左にあります量子コンピュータ研究センターにおきます国産超伝導量子コンピュータの開発。それから、真ん中にありますが世界トップレベルのスーパーコンピュータ「富岳」の開発。この2つ、両方を有しているというのは理研の強みであります。
 これに加えまして、右にありますけれども、創発物性科学研究センターにおけるシリコン量子ビットの基礎研究や、光量子工学研究センターにおけるレーザー光源の技術開発がありまして、これらの従来の活動を基に、量子古典ハイブリッド計算に向けたハードウエアの基盤構築に取り組みます。
 高度化の取組ですけれども、ここにありますとおり、左から行きますと量子古典ハイブリッドコンピューティングの基盤となりますプログラミング言語やコンパイラーなどの開発。それから真ん中にありますが、この量子古典コンピュータを直結型で統合するということ。そして、右側にありますけれども、先端半導体の要素技術や、EUVリソグラフィー光源などの開発ということで、これらをつなぐことによりまして、一番上の達成目標になりますが、古典コンピュータの弱点の組合せ爆発と量子コンピュータの弱点の誤り訂正をハイブリッド化で克服することで計算基盤を構築すると。そして、人類が計算可能な領域を飛躍的に拡張するということを目指しております。
 11ページをお願いいたします。
 量子古典ハイブリッド計算です。Society5.0では、計算科学を制するということが、いわゆる勝ち組というのでしょうか、創薬分子探索とか機能性材料の探索など、科学計算の需要が急拡大しておりまして、ここにスパコン、AIだけでは間に合わない、量子の出番ということになります。
 右側に書いてございますけど、古典コンピュータはエラーはないが組合せ爆発に弱い。量子コンピュータのほうはエラー訂正が未達ということで、これらの弱点を補い合うことで、スパコンと量子コンピュータのハイブリッド化によりまして、一番下に書いてございますけれども、世界に先駆けて開発することが急務であり、この優位性を確保していきたいということであります。
 12ページをお願いいたします。
 TRIPというのは、この丸が3つに分かれておりますけれども、良質なデータの取得、蓄積・統合というのはいわゆるフィジカル空間に関するところであり、右のAI、数理、量子古典ハイブリッドコンピューティング、こちらの右上と下のほうはサイバー空間であり、フィジカルとサイバーの空間を融合するところで理研の最先端の科学をつなげていきたいということで、将来的に「未来の予測制御の科学」を分野の枠を超えて開拓して、理研内外で研究を一緒に推進していきたいということでございます。
 以上です。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、以上の説明に関して、委員の先生方から御質問や御意見がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。具体的に手を挙げるか、手を挙げる機能のものを使っていただいても良いですが。いかがでしょうか。
 それでは私のほうから一つ。最初の、予算確保で戦略的研究員を750名分、採択が実現したというのは非常に喜ばしいことだと思いますが、だんだん時間がたつと、このプロジェクトの評価みたいなものがどうせ始まるのではないかと思いますが、せっかく長い時間、7年間とか10年間ということを決めたので、細切れに評価するというようなことではなくて、やはり新しい創造的なものがどういうふうに出てきたかとかに観点を於いてほしいです。それから、すごく注意深くされていましたけども、研究員の研究時間をどれだけ確保できるのかとか、そういう観点からも見ていただくことが重要です。適切なプログラムの評価をぜひ考えていただきたいと思いますけども、いかがでしょうか。

【永田課長】  学術研究推進課長の永田でございます。観山先生、どうもありがとうございます。
 後ほど、最後の議題のほうで出てまいりますけれども、新しい資本主義社会のグランドデザインの中でも、初期の失敗を許容し、より長期評価を行う方向で改善・強化すべきという御指摘も出てございますので、このプログラムにつきましては3年目で第1ステージゲートの評価、7年目で2回目の評価という予定にしてございまして、その「失敗を許容し」といった観点も含めながら、今後評価の仕方というのは考えてまいりたいと思ってございます。ありがとうございます。

【観山部会長】  よろしくお願いいたします。
 先生方、いかがでしょうか。

【齊藤委員】  齊藤です。質問させていただいてよろしいでしょうか。
 理研の量子古典ハイブリッド計算は、まさに今、世界中で重要だと思っている本命中の本命だと思います。ここで、「国産」ということをかなり強調されていたと思うのですが、それはどのような意味の国産なのでしょうか。
 例えば、量子ハイブリッドするときに今一番キーになっているのは、古典系からフィードバックをするところの回路をつくるのが難しいなどの点かと思います。量子系そのものよりもその周辺系にも難しい技術があるということだと思うのです。その辺も含めた国産をするということなのでしょうか。
 それによって、どういう方向のメンバーシップになるかというのはかなり変わると思いましたので、質問をさせていただきました。

【観山部会長】  ありがとうございます。いかがでしょうか。

【斉藤部長】  理研の経営企画部長の斉藤でございます。ありがとうございました。
 「国産」というふうに資料のほうに書かせていただきましたのは、まさに先ほどの説明にもございましたけれども、理化学研究所の中で国産の量子コンピュータの第1号を今、まさに最終段階でつくっているというところと、「富岳」があるということで国産ということで書かせていただきました。
 あと、今、中で議論していますのは、その量子コンピュータと古典の通常のスパコンを結ぶに当たりまして、どの階層で、どのレイヤーで結ぶのが良いのかという議論をしています。
 例えば世界で普通に市販され始めている量子コンピュータを買ってきて、上のほうで、外に近いところでつなぐというのもあれば、ハードの深いところで、本当に最先端の部分でつなぐというやり方もありますし、どのやり方が正しいのかも含めてまだ分からないですし、どこでやったら良いのかというの自体が研究だというような議論にもなっています。
 なので、国産ということはハードの中の中まで触れるということですし、それはそれでやりつつ、それ以外の、もしかしたら超伝導以外の量子コンピュータも含めて、様々なことを試しながら最適解を見つけていきますというか、最先端を探っていくということまでやろうということを含めて考えておりまして、そういうことで国産ということを書かせていただいているということでございます。
 以上です。

【齊藤委員】  ありがとうございました。条件を付けすぎて足かせにならないと良いなと思っておりました。量子ビットそのものは日本でつくられていて、中村先生もお作りと思いますが、一方で冷凍機ですとかその周りの回路というのはなかなか全て日本で生産というのは難しいものもあると思いますが、可能な限り日本でできるものを広げていって、それと同時に、今使えるリソースも同時に使えるというふうに、両方の戦略を取っていくのが良いのではないかなと想像しております。

【斉藤部長】  ありがとうございました。

【観山部会長】  ほかにいかがでしょうか。

【美濃島委員】  美濃島です。理研のデータ、今のお話があったところについて少し質問させていただきます。データをいろいろ公開とか共有されてオープンサイエンスを進めていくというのは、国としても今、非常に進めていくということで動いていると思うのですが、私も自分の大学でその担当をしておりますけれども、現状としましては、実際どのように進めていくか、今、仕組みのほうを整備している状況というのが多くの機関の状況だと思うのです。
 その中で、今お話があった既存のプラットフォーム、データをオープンサイエンスに取り込んでいくというところのお話がありましたが、例えば既存の有用な物理的なデータですとか、サイエンスの中身を共有していくということで、各機関が苦労しているデータ公開ポリシーですとか、運用活用のポリシーについて、理研さんのほうはかなり挑戦的な、踏み込んだお話になっているかと思うので、その辺の仕組みや取組、実際にどのように動かしていくかというところについては、整理はどのようにお考えなのでしょうか。

【斉藤部長】  引き続きまして理研の斉藤でございますが、御質問ありがとうございます。このTRIPの絵でいいますと、1枚目のドーナツの絵(資料1-4)がございますが、この左上の部分の、特に御質問かと思います。
 もともとこの構想を考えましたときに、このドーナツの真ん中にありますけれども、文科省全体で進めています研究DXの関係で、データ、AI、スパコンを組み合わせることが重要だという研究DXを、理研の持っている様々なポテンシャルをもって、その研究DX全体の、まさにここに書いてある先駆的な取組として発展させて理研でやっていこうということで、もともとこの絵を描いてございます。
 この左上に関しましては、日本全体の枠組みは、先ほどの説明でもございました国立情報学研究所のほうで、日本全体のデータの統合・蓄積のことはもうやられていますので、それの参加機関として引き続き役割を果たしていくとともに、理研の中に関しましては、もともとこの構想ができる前から、理研の中のデータをどのように蓄積して統合していくかということは自前ではやっていたのですが、今回のこのTRIP構想も受けまして、より、研究DXとしてこの3つをぐるぐる回していくという観点で、理研の中のデータをどうするか、どう統合するかというのは、まさにこれからもう一回フェーズを上げてしっかり議論していくという方向で、ライフサイエンス、様々いろんな分野の方も巻き込んだ議論をしっかり進めていくという方向になっております。
 ですので、これからしっかり進めていきますということかと思います。
 以上です。

【美濃島委員】  日本の先駆的な取組で、まさにおっしゃるとおりだと思うのです。理研さんの中で非常に良質の様々なサイエンスのデータがあると思うのですが、分野によって公開する考え方とかも違うと思いますし、サイエンスの中身が伴ったうえで先駆的な公開の取組がうまくいくかというのは非常に重要なことだと思いますし、それを理研さんの中だけではなくて、外にもぜひ利活用ということをお考えいただきたいと思いますので、その辺、ぜひ進めていただければと思います。

【宮園理事】  宮園からも追加いたしますが、例えばバイオリソースセンターにはたくさんの遺伝子や細胞、それから様々なリソースがありまして、それらに対する様々な付加情報を、メタデータをつけて、より高い質の情報を集めた上で、それをきちんと蓄積・統合して公開していくということを、これから議論しながら考えていきたいと思います。
 多くのゲノムのデータもこうした様々な付加情報が非常に重要だということが議論されておりますので、これらも議論しながら進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

【観山部会長】  ありがとうございます。大変大切な指摘だと思います。
 そのほか、いかがでしょうか。
 小泉さん、どうぞ。

【小泉委員】  WPIの件、資料ありがとうございました。すごく読み応えがあって、WPI創設から15年を経た課題(資料1-3:9ページ)というところも、なるほどと思いながら見ていました。WPIは融合研究の創出に貢献した一方、新しい学術領域を創出している例は必ずしも多くはないというところが課題として見えてきたというところも、なるほどそうなのかと思いながら見ていたところです。
 質問としては、それを受けて、来年度予算としてWPI COREを2拠点立ち上げるというところで、日本発で主導する新しい学問領域を創出するということを目標とするというところなのですが、これまでの課題をこのWPI COREでどういうふうに解決しようとするとかというところを、もう少し詳しく教えていただければと思います。よろしくお願いします。

【春田課長補佐】  基礎・基盤研究課の春田でございます。御質問ありがとうございます。
 こちらのCOREに至った背景でございますが、今、先生からもお話いただきましたとおり、新しい学術領域をしっかりと創出していきたいというところが背景にございます。
 これまでのWPIの提案を見ていますと、どうしてもいわゆる各大学の強い部局の先生方を幾つかピックアップして、規模を何とか確保しようというふうな形で、必ずしもチャレンジするような提案というのがなかなかされてこなかったというところがございます。
 そのため、一番初めの要件を7割程度と少しシュリンクさせることで、よりチャレンジングな提案をしていただけるのではないかというふうに考えておりまして、そのため、このステップアップ方式というふうなCOREを今回創設したというところでございます。

【小泉委員】  ありがとうございます。そこで、できるだけチャレンジングな取組、融合から新しい学問領域を創出するものを後押ししようということですね。ありがとうございます。
 それから、ごめんなさい、もう1点、全然別件で、量子に関して、先ほど齊藤委員からも御発言ありましたけれども、まずは今、内閣府の方針もあって、量子に関してはまず国内で何とかしようというところの動きだと思うのですが、いずれどこかの段階で、日本だけでできるものではないと思っているので、戦略的な国際的な連携が必要になる段階が、量子コンピューティングについては出てくると思っています。
 そういったところを見据えながら、全部国内でやろうなんていうのは絶対難しい話になってくると思うので、その辺は少し戦略性を持って国際連携を進めるというところもあっても良いのかなと思ってお聞きしていたところでした。
 以上です。ありがとうございます。

【釜井室長】  すみません、文科省の戦略研究推進室長の釜井でございますけれども、小泉先生、ありがとうございました。
 先ほどの齊藤先生の御指摘にも関連しますけど、今、当室におきましては、ムーンショットの事業におきまして、目標6ですね、ムーンショットのうちの量子課題で、誤り耐性型のコンピューティング、量子コンピュータを実現するというような目標ですので、まさに今御指摘のあったような、どこまで本当に日本のほうでやるのかというのを、まさに今議論して、北川PDとかも含めて今検討をしている最中でございます。
 量子コンピュータの実現に必要な冷却装置やネットワークなども含め、どこで本当に日本として優位性を確保してやっていくんだというふうなことを、まさに今、内閣府とも相談しながら、ムーンショット制度自体について内閣府が音頭を取っているものですから、ぜひそこと協力しながら、現場の意見も踏まえて検討していきたいと思っております。貴重な御指摘ありがとうございます。

【小泉委員】  ありがとうございます。いかに戦略的に国際的に付き合っていきながら日本の優位性を保つかというところ、戦略的国際連携がとても重要だと思いますので、引き続き御検討よろしくお願いします。ありがとうございます。

【観山部会長】  WPIのことに関して少し質問したいです。一番最初のときは年額14億円ぐらいであって、その次、フォーカスというのが大体7億円レベルで、今度COREというチャレンジングなのが5億円規模だったのですが、やはり世界の拠点として人材を集めてくるには、ある種の支援金額のスレッショールドみたいなものがあるのではないかと思いますが。小谷先生、以前は代表者でありましたので、何かそこら辺の状況について御意見ありますでしょうか。

【小谷委員】  どうもありがとうございます。WPIの拠点長をさせていただいて、大変貴重な経験を積ませていただきました。
 当時、WPI拠点の規模を議論し、世界の中で認知されるためには、ある一定のクリティカル・マスが必要であるということが明確に言われていました。
 世界トップレベルの研究を推進することや、異分野融合で新しい領域をつくるということがミッションでございましたけれども、世界から認知される拠点を形成するということが重要なミッションでしたので観山先生が御指摘されたようにクリティカル・マスということは非常に重要と考えます。
 また、新しい領域を創成するということに関しても、確かに挑戦的であり、ある程度の人数でやらなければ、ある程度の大きな固まりでやらなければ、新しい領域を創成し、それが世界の中で領域の創設をリードしていくということはなかなか難しいと思っています。
 もう一点です。、国際的に卓越した研究者を日本に呼び込みたいということがございましたが、世界で行われているジョブ・リクルートメントの条件―をみますと、世界は非常に挑戦的にしており、WPIの予算規模ではかなわないと感じることもありました。

【観山部会長】  ありがとうございます。フォーカスで7億円規模の3拠点、その後に続いていますけども、結構頑張って評価は高いので、どれぐらいがクリティカル・マスなのかというのはなかなか分からないところです。5億円から初めてうまくチャレンジに行けるかどうかというのは、本当に学振とか文科省の非常に強い支援と誘導があることが必要ではないかと思います。
 だんだん支援資金が下がってくるので、それで良いのかなという感じは少し持ちますけども。
 ほかにいかがでしょうか。

【春田課長補佐】  基礎・基盤研究課の春田でございます。観山先生、小谷先生、コメントありがとうございます。
 おっしゃるとおり、クリティカル・マスというのは大変重要だと私たちも思っておりまして、なので、当初は5億円ですが、ステップアップ後は7億円にしっかりしていくということで考えています。
 また、いわゆるCOREで1大学1拠点という形以外にも、複数拠点が強固なアライアンスの形で1つの提案という形も考えておりまして、こちらの場合は10億円規模という形になるというところでございます。
 以上でございます。

【観山部会長】  なるほど。ありがとうございます。
 それでは、議題も次がありますので……あ、辻さん、どうぞ。

【辻委員】  先ほど海外からの受入れと、出ていくのが非常に減っているという、これは20年のデータでしたけれども(資料1-3:4ページ)、恐らく21年、22年度もそれほど変わっていないかと思われます。国際的な人の流動が非常に重要だと言われる中で、ここで減ってしまった分、一時的なもので戻るのもあるでしょうし、一方では来られないならやめてしまおうということもあり、中長期的な影響が出かねないとも言われているわけですが、その辺りの対策はどうお考えでしょうか。

【観山部会長】  重要な指摘だと思います。いかがでしょうか、事務局。

【春田課長補佐】  基礎・基盤研究課の春田でございます。WPI施策に関しては、いわゆる派遣研究者数、受入れ研究者数共に減っている現状を重く考えていまして、しっかりとWPI拠点、既存拠点の支援も含めて、世界から目に見えるトップレベルの研究拠点をつくって、より強化していかなければいけないというふうに考えております。
 私の所掌から少し外れてしまいますが、政府全体としても、この国際頭脳循環というのは強化していく形で考えておりまして、令和4年度の補正予算で、各国際共同研究や国際的なネットワークを強化するような予算というのが数百億円規模で計上されているところでございます。
 こういった取組で、今後この減っていったものについて、よりネットワークが途切れないような形で、しっかり強化していければというふうに考えているところでございます。

【黒田委員】  関連して、黒田ですがよろしいでしょうか。
 今の件に関して、欧米と日本の物価水準が随分変わってきてしまったということは認識していただく必要がありまして、今、欧米の若手研究者にとって日本に行くことが魅力的かどうかということと、提供される資金が、欧米の数字で見るとこれで足りるのだろうか、アパートが借りられるのだろうか、生きていけるのだろうかと思うような水準にあるとすると問題で、一方、こちらから出ていく研究者たちは、今度はアパート代の上昇や何やかやで非常に苦しくなりかけていると、そういう悲鳴も出ているところがありますので、どのようにして日本が研究拠点として魅力的であり続けるかというための財政的な裏づけも必要だと思っております。
 以上です。

【観山部会長】  重要な指摘だと思います。少し私の感想ですけども、資料1-3の4ページの、少し古いデータですけども世界の中での移動のグラフを見ると、日本ってヨーロッパとのつながりはほとんどないのですかね、これ事実ですか。

【春田課長補佐】  そうですね。こちらについては2006年から2016年の流動を論文のアフィリエーションから見ている形になっていまして、4,000人以上流動していれば矢印が引かれるという形になっています。
 なので、欧州とのいわゆる流動に関しては、4,000人未満しかないというふうな形になっているかと思います。

【観山部会長】  やはり多様な研究者と共同研究するということは非常に重要ですし、ここら辺も今後の課題ですね。

【春田課長補佐】  おっしゃるとおりだと思います。

【永田課長】  学術研究推進課長の永田でございます。若干私のほうから補足で。
 先ほど科研費の関係で御説明させていただきました国際先導研究の中では、やはり海外に行く研究者が減っているといったところを踏まえまして、若手研究者をグループに参画させ、その若手を長期間、2年から3年海外に派遣する。さらには、長期間以外の方も短期で海外にしっかり行っていただくというプログラムになってございます。
 これはボトムアップ型の国際共同研究、頭脳循環を図るといった観点でやっておりますけども、先ほど御説明にありましたように、JSTのほうでも今回の補正予算で、トップダウン型の国際頭脳循環の共同研究を強化するといった観点からのプログラムが進められておりますので、こういった取組を通じながら、研究者の海外での活動というものを活発にしてまいりたいと思ってございます。

【観山部会長】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして議題2「数理科学の展開に係る最新の動向について」に移りたいと思います。
 議題2につきましては、資料2について事務局に御説明いただき、その後、委員より御意見を頂戴できればと思っておりますので、それでは事務局、よろしくお願いいたします。

【藤井推進官】  基礎・基盤研究課の藤井と申します。御説明申し上げます。
 まずは参考資料2の表紙の部分をお願いします。ありがとうございます。
 こちらの資料ですけれども、昨年、基礎部会のほうでも御議論いただきました内容を昨年7月に研究振興局名で公開をさせていただきました、「2030年に向けた数理科学の展開」という資料になっております。
 本日の説明はこの中の取組状況に関するものですので、全体について一旦御説明をさせていただこうと思います。
 では、資料の2ページ目をお願いいたします。
 こちらのページにございますとおり、重要課題を1から5という形でまとめさせていただいておりまして、この5点につきまして、どのように施策の展開をしていくかということを次の3ページ目で記載をしておりますので、3ページ目で御説明をさせていただこうと思います。
 各重要課題につきまして、その現状の進捗状況ということを、簡単に口頭でまず御説明をさせていただこうと思います。
 まず、左上の重要課題の1でございますけども、「ビジョン共有型の基礎科学の振興」ということで、取組としては、数理科学イニシアティブ会議(仮称)を設置して取り組むということを記載しております。
 こちらにつきましては、現時点ではまだ正式な設置には至っておりませんけれども、アカデミアですとか産業界の有識者の皆様とお話しをしながら準備を進めておりますので、また準備ができましたら、別途御報告させていただこうと思っております。
 続きまして重要課題の2の「世界トップレベルの数理科学の探求拠点」でございます。こちらにつきましても現在検討中ですので、また別途御報告をさせていただきます。
 続きまして重要課題3、重要課題4の、「学際分野との連携」「社会との連携」でございます。こちらにつきましては、赤字で書いておりますとおり、数理科学の学問の幅を広げ進展させていく機能拡張モデルというのをつくっていくことが必要だろうということで、数理科学の知的アセットを社会との間で適切に価値化して、学問に再投資する仕組みを実践していく必要があるということですので、こちらにつきましては、後ほど資料2-2のほうで、少し詳しく御説明をしたいと思います。
 下の個別の項目の中で、赤字で書いております他の科学・産業・社会と協働するプラットフォーム組織・体制の整備というところにつきましては、東西2拠点に組織体制を構築するとしておりまして、こちらにつきましては次の資料2-1で御紹介をさせていただきます。
 そのほかに、下のほうへ行きまして、「研究DXを加速するべく、数理科学を活用してユースケースの形成を連携して実施」という部分につきましては、先ほど資料1-4でTRIPの説明がございましたけれども、TRIPにつきましてもこの一つの事例でございまして、そういった取組を進めていくこととしております。
 次に、共創の場の形成支援を活用するという部分につきましても、こちらにつきましても現在検討しておりますので、また説明ができる状況になりましたら御説明をさせていただこうと思います。
 最後に、右側の重要課題5の人材育成でございます。人材育成につきましては、例えば3つ目の丸にある新たなキャリアイメージをつくるということで、「ジョブ型研究インターンシップを促進」というのがございますけれども、文科省では高等局が中心となって取り組んでおりますけれども、当課においても、企業の方にお会いする際には、こういった取組があることを紹介し、その促進をするための活動をしているところでございます。
 全体の概要としては以上でございまして、資料に戻りますけれども、資料2-1でございます。
 資料2-1ですけれども、「諸科学、産業・社会と協働するプラットフォーム組織体制の整備」ということでございまして、東西2拠点に組織体制を整備するということで、ここでは九州大学さんと東北大学さんの体制を強化するということを行おうとしております。
 九州大学さんは、これまで九大の強みとして、真ん中辺りに記載をしておりますけども、産業数学での連携実績が豊富にございます。一方で、東北大学さんにつきましては、強みとしては訪問滞在型の研究ということに積極的に取り組んでいただいております。
 これら2つの拠点の体制を来年度から充実・強化することとしておりまして、各取組をより一層発展させていただくということで進めているところでございます。
 これは各大学の取組だけではなくて、一番下にございますけれども、「数学コミュニティ内で活動する異なる切り口からの産業界対応窓口群の横の連携」というふうに記載をさせていただいておりますけれども、両大学だけではなくて、産業界と全国の数理科学に取り組んでいる大学の連携の窓口としての機能も果たしていただくということで、一層の数理科学の発展に寄与していただくことを考えているところでございます。
 資料2-1につきましては以上でございまして、続きまして資料2-2でございます。
 資料2-2につきましては、大部ですので概略だけ御説明をさせていただきます。
 こちらの資料につきましては、知的アセットの価値化をいかに行うかということで、ほかの分野での取組などで参考になるものを取りまとめた資料となっております。
 こちらに「バージョン1.1」と書いておりますとおり、現時点で集められた情報をまとめた資料でございまして、今後、委員の先生方なり大学の関係者の皆様方から良い事例を御紹介いただければ、それもこちらの資料に掲載していきたいというふうに考えている資料でございます。
 2ページお願いします。
 こちらの資料の目的を申し上げておきますと、資料の目的としては、数理科学に限らず基礎科学として知的アセットの価値化をして、学問への再投資の好循環の仕組みを考えるということで、それの参考となる取組事例を紹介した資料でございまして、基礎科学の学問の幅を広げて進展させていくための機能拡張モデルの実践を後押しするための資料としてまとめてございます。
 続きまして、3ページ目でございます。
 この資料をまとめるに当たりまして、まず一番参考にしたものとしましては、文科省と経産省がまとめております「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン(追補版)」というのがございます。
 この中で、特徴の①に記載がございますとおり、「産学官連携をコストではなく価値への投資として捉え、知を価値づけ(値づけ)する手法を整理」というふうに書かれておりまして、まさに私たちが目指す目的と同じでございますので、このガイドラインを参考にしながら資料を取りまとめております。
 個々の取組につきましては、説明は割愛させていただくのですが、例えば7ページ目を御覧いただきたいと思いますけれども、各制度がどういったメリットがあるかなどを、ポイントとしてまとめさせていただいております。
 7ページ目ですと、これは研究者の知の価値への対価というのはどういった仕組みがあるかというところで、ポイントに書いておりますとおり、直接的に必要な「コスト積み上げ方式」の考え方から、「研究の価値への投資」と捉える契約形式へ変えていくべきだろうと。それをすることによって、学問への再投資の部分で、教育研究環境の改善や新たな研究課題に挑戦する費用等に充てることができるようになってくるということで、好循環が生まれるのではないかというふうに考えております。
 このような幾つかの制度を整理させていただいており、各制度ごとにポイントを示させていただいておりますので、そういったところを御覧いただきながら、今後の取組に役立てていただきたいといった資料となっております。
 簡単でございますけれども、以上でございます。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。ただいまの議題2に関する説明に関して、委員の先生方から御質問等ありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは私のほうから、産業社会との連携ということで、資料2-1にありますように九大と東北大、これは非常に実績もあるし、非常に結構なことだと思います。少し触れられておりましたけれども、大企業に関しては、九大、東北大であればいろいろな形で九州や東北に支社もあるでしょうから連携が割とたやすいかと思いますが、日本の基盤を支える中小企業等々だと、ロケーションが遠いとやはり壁があるので、これを九大、東北大を中心として、それぞれの地方の拠点で、やはり数理を産業界と連携するということはもう必須の状況でありますので、そこら辺をぜひうまくシステムをつくっていただければと思います。非常に期待したいところでございます。
 事務局は何かありますでしょうか。

【藤井推進官】  ありがとうございます。まさにそのように考えておりまして、各大学といろいろ密な話もしながら、より良い方向に進むように進めさせていただきたいと思っておりますので、もしよろしければ東北大学、小谷先生、何かございましたら。

【観山部会長】  そうですね。

【小谷委員】  どうもありがとうございます。この東と西の拠点ということですが、誤解がもしなければというふうに思いまして、九州大学がどこかの企業と何かをするとか、東北大学がどこかの企業と何かをするということを目指しているわけではなくて、それはそれで各大学でやるわけですけれども、むしろ国内・外の開かれたプラットフォームになるというものでございます。東北大学で行う訪問滞在型研究所は、産業界・社会の課題のなかで十分に数学として定式化できていないものを、どうやって課題を解決可能な形にしていくことができるのか、そのためにはどういうエクスパーティースが必要かというようなところを議論するオープンな場ということになってございます。
 そこに東北大学をはじめ日本の研究者のネットワークを活用して、世界中から必要なアセットを持ってきて議論をするということで、当然ここでやる研究会や、様々な議論やプロジェクトは、東北大学ではなく世界全体にオープンになるものでございます。
 また、昨今ベンチャーやスタートアップということの重要性が非常に言われていますけれども、そういうための場としても考えておりまして、中小企業ということとは少し違うのかもしれませんが、今ここで生まれる、そういう新しい産業、特に数理を活用した新しい産業というものを生み出すためのプラットフォームとして、九州大学と東北大学がお手伝いをしたいということだというふうに考えてございます。

【観山部会長】  非常に重要なことだと思いますので、期待しております。
 そのほかに、いかがでしょうか。
 それでは、資料2-2の知の価値化というか、産業界とのいろいろな連携で、間接経費、直接経費と知の経費というのがありましたけども、日本のいろんな大学と産業界の連携を見ると、なかなか人件費を出してくれない実績があります。
 海外の大学には、いろんな統計がありますけれども、調査がありますけども、額が1,000万を超えている。日本の大学の場合には大体お付き合いで100万か200万という、これはなかなか打破できないところがあって、これは本当に問題です。大学のほうにもしっかりしたレポートなど成果を出さないなど、すごく責任があると思いますけども、やはり産業界との連携のためには、それのプロジェクトに専属するような人をその経費の中で雇用して、しっかりとした連携協力事業を達成することが重要です。そして、しかりとしたレポートを出すというような形を、日本の大学も日本の企業もつくらないと、なかなか、お付き合いで共同研究しましょうということでは、やはり、いろんな問題を打破できないのではないかと思いますので、この方向性をぜひうまく進めるような形で、経産省とも連携して頑張っていただければと思います。

【藤井推進官】  ありがとうございます。

【品田委員】  すみません、日立の品田ですけども、連携させていただくほうの企業のほうからも。
 今、先生のおっしゃったとおりだと思います。どうしても海外の研究所との、大学とかも非常に高額ですね。
 この資料が事前に送られて、ざっと見たときに、いろいろたくさんページがあって回りくどいなと思ったのですが、要するに、一言で言うと観山先生がおっしゃられたようなことですよね。
 結局、実費だけで共同研究という形で、企業から費用を出してもらうというか、出すということになっているから額が少ないということになるのですかね。人をそれに専属して充てるという形にすることによってあるべき姿になっていくという、根本的にはそういう発想と考えてよろしいのでしょうか。

【西山課長】  ありがとうございます。基礎・基盤研究課長の西山です。
 今の品田先生の御意見、御指摘ですが、やはり日本の産学の共同研究は、多くがいわゆるコスト積み上げ型、コストマークアップ方式です。
 これは、例えば今回こういう資料を作りましたきっかけは、数理科学の取組を、これは2006年にNISTEP、科学技術・学術政策研究所が報告書を出したのをきっかけに、過去15年間、文科省と大学の先生方が一緒になって、数理科学・数学の社会もしくは他の学問分野との連携の取組を進めてきているのですけども、やはり特に数理科学・数学の分野というのは、共同研究でコストを積み上げるようなことをしても、多くがいわゆる無形の知的資産であります。
 その結果、共同研究なり産学連携をすればするほど、先生方の時間が、もしくはエフォートが割かれる形になり、本来研究者の方々が学術の場として行うべき研究というのも十分にできないような環境も、一部にはあるということでございます。
 我々としては、この数学・数理科学が今後の社会変革の大きな原動力になるということで大きな期待を持っているわけでして、その時に、やはり数学・数理科学という分野が社会と連携、産業と連携することによって、よりその学問の幅が広がっていくということができる、そういうモデルをきちんと示していかないと、産学連携すればするほど、言葉が良いかは分かりませんが、貧乏になっていくような状況があると。
 これは海外と比べても知の安売りのような状態でございまして、知的な価値、特に無形の知的な資産というのをどのように評価するかということがとても大事でございまして、これはコストマークアップ方式ではなく、知見そのものの価値、それがどういうインパクトを持つかということも含めて評価をし、適切な契約、その結果、得られた収益を次の学問に投資をしていくと。そういう好循環のサイクルをつくっていきたいということでございまして、今こういう資料も作りながら、大学、さらには産業界の皆様とも意見交換をしながら、大きく、特に数学・数理科学の分野をある意味きっかけにして、変えていきたいというふうに思っておりますので、引き続き御支援いただければありがたいというふうに思っております。

【品田委員】  分かりました。数理科学という分野は、特に顕著にそういう問題が生じるということは理解いたしましたけど、数理科学に限らない話だと思っていて、やはり高度な研究者、優秀な研究者の方の知的労働というのが、多分一番価値があるというか、そこに一番お金を払わなくてはいけないことだと思います。
 なので、それをちゃんと理屈を立てて、このようにリーズナブルな費用を積み上げて次に使っていくという取組はぜひお願いします。
 あと、企業としても、長い目で見れば当然プラスになりますので、理解もされていると思いますし、決してそういう、人の知的労働に対して価値を低く見ているというようなことは、基本的にはないと思うのです。
 なので、ぜひこういう取組をやっていって、研究がどんどん活発になることを期待しています。ありがとうございます。

【観山部会長】  ありがとうございます。やはり共同研究することによって人材が確保できるような形にしないと、事務局が言ったように先生がどんどんどんどんそれに関わって、研究時間がどんどん減るようだと本当に問題なので、そこら辺はもう十分分かっているのですが、なかなか世の中変わっていかないということなのですよね。

【品田委員】  この資料の最後のほうに、大阪大学の取組が随分ページを割かれていましたけれども(資料2-2:29-34ページ)、私も少し企業側としてこれに関係したことがございまして、ですので、こういう取組ですね、共同研究部門という形で、そこで進める中で、この資料にあるように費用をしっかり積み上げていくというふうにやっていくことを活性化していけば良いのかなというふうに、私も感じております。ありがとうございます。

【観山部会長】  それでは続きまして、議題3「創発的研究支援事業の改善の方向性について」に移りたいと思います。
 議題3につきましては、資料3について事務局及び創発的研究地域支援事業運営委員会の西尾委員長より御説明をいただき、その後、委員より御意見をいただければと思います。
 それでは、事務局及び西尾先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【永田課長】  それでは、学術研究推進課長の永田でございます。私のほうからまず概要等を説明させていただきまして、その後、創発運営委員会の西尾先生のほうから御説明いただきたいと思います。
 資料の1ページ目、2ページ目、概要につきましては先ほど説明したとおりでございます。
 なお、少し説明が抜けてございまして、令和4年度2次補正予算で措置されました553億円につきましては、採択750件程度というところでございますけれども、一応、真ん中の研究環境改善のための追加的支援の2つ目の四角のところなのですが、研究の進捗等に応じた柔軟な追加支援による研究加速を図るといった経費、この部分につきましては、いわゆる博士課程の協力者をRA経費として雇用の手当てをするというのがこの制度に入ってございまして、この部分については補正予算では措置されてございません。
 したがいまして、令和5年の予算案で2.3億円が計上されておりますが、こちらの追加支援の経費の一部が措置されたといったところでございます。750件程度を補完する追加支援はまだ十分な予算が確保されてございませんので、令和6年度以降も引き続き、この部分については予算要求等をしてまいりたいというふうに考えてございます。
 3ページお願いします。
 この事業につきましては、令和元年度の補正予算で3回分の事業が認められまして、4回目以降が非常に課題になっていたことから、この基礎部会でも御議論いただきまして、令和4年度の補正予算で何とか継続することができたといったところでございます。
 ただし、その継続の事業の実施に当たりましては、昨年度の6月の閣議決定「統合イノベーション戦略2022」におきまして、この事業については、研究環境改善に係る仕組みの効果検証、及びその他の研究事業の見直し等を踏まえながら、定常化を見据えて充実を図っていくとされてございます。
 したがいまして、この効果検証を行うためには、何らかの評価等を行いながら実施していく必要があるだろうといったことから、事業全体のレビューといったものも今回やりたいというふうに考えてございます。
 そのタイミングとしましては、第1回公募の採択者が、令和5年度に、来年度ですね、第1ステージゲートの審査がございます。それに合わせまして、所属機関の研究環境改善に係る取組を評価いたしまして追加支援を行う予定になってございますので、その結果等を踏まえながら中間的なレビューをし、さらに、JSTの今期の中期計画の最終期間であります令和8年度に事業全体のレビューを行いまして、この事業自体の制度改善や継続等について審議をしていきたいというふうに考えてございます。
 4ページお願いいたします。
 政策文書についてはこのような形で、先ほど観山先生のほうから御発言がありましたような観点が1つ目と2つ目のところで書いてございますので、御覧いただければと思います。
 5ページお願いします。
 今後の事業の改善、中間レビューに向けてというところでございますけれども、この表にありますとおり、7月の基礎研究部会におきまして、各先生方のほうから御意見を賜ったところでございます。
 特に大きくは、この事業について継続・拡大が強く望まれるという意見を賜ったわけでございますけれども、その他、大きなところといたしましては、採択率が10%というのは厳し過ぎるのではないか、若手研究者が申請を躊躇してしまうんじゃないかといった御意見。
 また、2つ目としましては、この700万円といった規模では破壊的イノベーションを起こすには不足ではないかといったこと。また、一番下のほうにありますとおり、海外で一、二年程度研究するということを認めるべきではないかといった御意見を賜りました。
 その結果を踏まえて、JSTの創発運営委員会におきましてもいろいろ御議論をいただきまして、今後の改善に向けた検討を進めているところでございます。
 その状況につきまして、西尾先生のほうから御報告、御発言等いただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【観山部会長】  西尾先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【西尾委員長】  発言の機会をいただきありがとうございます。
 今、永田課長からお話しいただきましたように、9ページ、10ページ、それから11ページに、前回本部会でいただきました貴重な御意見を基に、我々の運営委員会で議論してきた結果等について記しております。
 9ページは、採択率が10%というのは厳し過ぎるのではないかという御意見についての検討結果でございます。それから10ページでは、年間700万円の研究費では不足ではないかという御意見について記載しております。
 これらの御意見につきましては、我々も本当に重要なものと捉えまして、真摯に議論をしてまいりました。しかし、事業に対する総額が既に補正予算として決まってしまっておりますので、例えば採択率を上げますと、今度は1件当たりの研究費が少なくなってしまうため、両方を満たすのはなかなか難しい状況です。
 採択率の上昇という点のみを考えますと、応募の要件を厳しくして申請者を減らし、採択のパーセンテージを上げるということは形なりにはできます。
 創発の事業では、申請に当たってどういう条件を設けているのかといいますと、一つ目が採択後3年の間に独立に関する条件を満たすこと、そして二つ目の大きな原則が、博士号取得後15年以下であることです。
 これらの条件をさらに厳しくすれば、申請者数が減って採択率を上げることはできます。
 しかし、創発は、独立前後の研究者を対象とし、創発で3年程研究を行ったところで独立をしてもらうことが大きな特色ですので、採択後1年後に独立させるというように、条件をさらに厳しくすることは難しいと考えました。
 また、二つ目の条件につきましては、年齢で区切らず、博士号取得後15年以内としていることで、年齢が高い研究者も対象となってきますが、様々な経験を積んでから大学院に進む方もおられる現状や、ライフイベント等のことも考慮しますと、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンの観点から、単に年齢で条件を課すのではなく、このような条件にしております。これをさらに厳しくするのは、ダイバーシティを重んじる創発としては問題があるということから、応募要件の強化をするのは難しいという結論に至りました。
 続きまして、1人当たりの研究費を年間700万円とすることの意味についてお話しいたします。700万円という金額は、破壊的なイノベーションを起こすには少ないという御意見はごもっともですが、先ほど申しましたように、この金額を高くしますと採択数を減らさざるを得なくなります。
 また、この事業では、単に700万円を支給するだけではなく、その研究者が所属する研究機関に対して、採択された方に十分な研究環境を与えるということを、条件として要請いたしております。
 そういった観点から、研究者本人にとっては、700万円という金額にも勝る、付加的なアドバンテージがあると考えておりますので、金額の面につきましても、先ほど来申しますとおり、さらに高くするということは難しいと考えております。
 プログラム・オフィサーの方々からは、採択率等につきましては、クオリティーを維持する観点からも、この数値で妥当であるというお声をいただいております。採択率、研究費についての御意見に対しましては、まずは以上のような御返答をさせていただきます。
 三つ目の御意見ですが、11ページにございますように、国外の機関での研究の推進のため、創発研究者が1、2年間、海外で研究することを認めてほしいということを、前回の本部会で御指摘いただきました。
 創発では、研究の一時中断制度や、クロスアポイントメント等で日本と海外両方の研究機関に所属する場合など、一定の条件の下において海外での研究を認めるなど、現行制度においても海外での研究が可能となっております。
 他方、このことが研究者や研究機関に広く知られていない可能性がありますので、御意見を踏まえまして、本事業のウェブサイトや説明会を通じて周知徹底してまいることによって、いただきました御意見に対しての改善ができるのではないかと考えております。
 さらに、海外での研究経験が少ない創発研究者に対しては、海外での研究を奨励するメッセージを発していきたいと思っております。
 ただし、海外の研究機関のみに所属しておられるという場合については、制度的に研究の継続を認めていないということだけは言及させていただきます。
 12ページをお願いします。
 これらのこと以外に、本委員会の皆様の御支援と事務局の多大なる御尽力で、冒頭で説明がありましたとおり、第4期以降の公募が可能になりました。
 制度の改善の第一段階として、4回目以降の公募に当たっては、PO、ADを総入替えすることを考えております。
 私共といたしましては、第3回目まででPOの方が採用された研究者の皆様を、そのPOの方に、プロジェクトが終わるまで十分に指導していただくことを考えております。4回目以降もPOとして御活躍いただくことになりますと、各POの方が担当しなければならない創発研究者の数が雪だるま式に増えてしまい、きめ細やかな研究指導等ができないということで、4回目以降、PO、ADを総入替えします。
 また、科学技術・イノベーション基本計画において、人文学・社会科学分野が、イノベーションを起こすために重要だということが謳われておりまして、2回目の公募から、人文学・社会科学の要素を含んだ提案を審査するチームを新設しました。
 また、第3回目の公募においては、人文学・社会科学の視点で評価の高い案件も採択可能な仕組みを導入しております。今後も人文学・社会科学の視点は重要視していきたいと考えております。
 また、創発研究をRAとして支えている博士課程学生等への追加的な支援が、令和2年度補正予算、令和3年度補正予算で可能になっております。こちらは創発研究を加速するためにも非常に良い制度でありまして、修士学生の博士課程進学を後押ししているとも聞いております。
 他方、ご存じのように次世代研究者挑戦的研究プログラムなど、博士課程支援が充実してきておりますので、今後、博士課程学生のみを対象とするか、ポスドクまで対象を広げるべきか、ということについては、運営委員会で継続的に検討してまいります。
 最後ですけれども、今後さらに強化したいこととして、コロナ禍ではなかなか実現することが難しかった、対面での相互の触発、融合を促すために、POのマネジメントの下でパネル内だけではなく、分野の異なるパネル間の研究者同士の融合の場を設定することがあります。また、複数の創発研究者が自発的に境界領域における研究を行いたいという場合の経済支援なども行っていきたいと思っております。
 本事業のさらなる改善に向けて、本部会の委員の皆様からさらなる貴重な御意見等をいただけましたらありがたく、どうかよろしくお願いします。
 以上です。

【観山部会長】  西尾先生、どうもありがとうございました。まずはとにかく750人分、3年分確保できたということは非常にすばらしいことだと思っております。

【西尾委員長】  本部会の御支援、ありがとうございました。

【観山部会長】  頑張っていただきまして、ありがとうございます。
 委員の先生方から何か御質問、御意見ございましたら、どうぞ御発言いただければと思います。

【齊藤委員】  齊藤です。質問させていただきます。
 まず、すばらしい制度で、継続されてよかったと考えています。
 また、POとかADを、負担をあまり増やさないにするというのも、非常に良い政策だなと感心しております。
 令和4年6月7日の閣議決定では「破壊的イノベーションを目指し」ということが書いてあるのですが(資料3:4ページ)、これは結局、目指すということなのでしょうか。
 700万では少ないという意見と同時に、多分700万では多過ぎるという話もあったかと思います。ポイントは、諸分野によって必要となる研究の金額は相当の差があるので、一律にするというのが結果的に非効率になるのではないかという議論だったかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

【西尾委員長】  本当に貴重なコメントをありがとうございます。
 我々としては、10年間で破壊的なイノベーションが起こし切れるのかどうかは別として、その芽となるものをきっちりと創っていただくということで考えております。
 今、齊藤先生がおっしゃったように、700万円という金額が多いのか少ないのかという点については、分野の特性によって捉え方が異なります。純粋理論を研究する分野と、規模の大きい実験研究を行うような分野が同額で良いのかという御指摘もあるかと存じます。
 それは、今後の改善点として考えなければならないと思っております。ただし、現状では、例えば物理系と数学系が一緒の分野に入っていますので、1人のPOの下で、配分金額の枠組みをいろいろと変えてしまうというのは、混乱を招くものと思われます。今までの3年間を通じて、齊藤先生がおっしゃったような御意見も踏まえて、分野の再編成を検討しなければならないということを認識しおります。ある分野については限度額がここまでということが、皆様に広く御理解、御認識いただけるような形での制度改革を考えていかなければならないと思っております。

【齊藤委員】  ありがとうございます。あと、この予算を持っていると応募できなくなるような予算がないようにしてあげると、必要な研究経費が適時に行き渡っていくかと思います。

【西尾委員長】  そうですね。おっしゃるように、創発に採択されるような研究力を持っておられる方は、おそらく他の予算も獲得できますので、これについては永田課長がより詳しいかと思うのですが、ある研究費種目は複数申請ができて、ある研究費種目に関しては応募を控えていただくといった制約を緩和していく方向性は重要であると考えております。ありがとうございます。

【齊藤委員】  ありがとうございました。

【観山部会長】  永田課長、コメントがありますでしょうか。

【永田課長】  ありがとうございます。実際に応募された研究者の方々の状況を見ますと、やはり科研費を既に採択されている方が多いのではないかという印象を持ってございます。
 一方、JSTの「さきがけ」を採択された方については、重複で受給はできないということになってございまして、例えば今採択されていて来年切れるといった場合には、1年間猶予が与えられることとなっており、そういった柔軟な取扱いも、この制度ではなされてございますので、ほかの研究費も一緒に獲得しながらやっていただいているのが現状かなと思ってございます。
 科研費で言いますと、やはり金額の大きい基盤S、特推、あと学術変革領域のA、この辺はかなり高額なプロジェクトになってまいりますので、こちらとの重複は不可となってございます。

【齊藤委員】  できるだけ緩めてあげると、若手にとって良いかと思います。

【観山部会長】  ありがとうございます。

【小谷委員】  すみません、小谷です。質問よろしいでしょうか。

【観山部会長】  どうぞ、よろしくお願いします。

【小谷委員】  まず、創発的研究支援事業、4年目も公募されるということを大変うれしく思います。若手の研究者にとって大変に励みになっているプログラムですので、さらに発展していくように御尽力いただければ幸いでございます。
 私の質問ですが、創発的研究支援事業に関しては若手の研究者が持っている独創的なビジョンが非常に大切ということで、いわゆる既存の分野にとらわれないということが謳われています。
 そのような提案をするために、たくさんあるパネルの中のどのパネルに応募するかということに関して、そのパネルの構成員がどういう先生から成っているかということは、応募する上で非常に重要な情報でございます。
 特に人文・社会に関しては、2年目からそういうパネルができていたにもかかわらず、そのパネルにどういうかたがいるかという情報が開示されたのが第3回目以降だったということで、なかなか応募に踏み切れなかったという話も聞いています。
 今回、パネルが大きく変わるということですけれども、事前にパネルメンバーを公開することで、逆に不公平が生じない、そういう情報に皆さんアクセスできるという意味でも、全ての領域でどなたがパネルになっているかということは、最初から公開していただけると良いのではないでしょうか。

【西尾委員長】  小谷先生がおっしゃったように、創発は支援事業として、どういうことをやりたいかという申請者の意向を重視しておりますので、小谷先生からの御意見を鋭意、運営委員会でも今後協議してまいりたいと思います。
パネルの構成員を初年度は公表しなかった理由を再検証した上で、オープンにしていく方向で考えていきたいと思います。

【小谷委員】  今でも初年度は非公開になっていて、2年目からはそのまま同じ方がやられているので、恐らくオープンにしないことのデメリットというのはあまりなくて、1年目は知っている人は知っているかもしれないということになると、かえって不公平だと思いますので、よろしくお願いします。

【西尾委員長】  分かりました。フェアネスの観点からも検討いたします。ありがとうございました。

【観山部会長】  よろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。

【小泉委員】  すみません、小泉です。よろしいでしょうか。
 まずは先ほどの、齊藤先生の御指摘に永田課長の答えからいうと、むしろ創発的研究支援事業で受けた研究者が学術変革Aに出してもらったほうが、破壊的イノベーションにつながると思うので、その辺は緩やかに考えていただければと思います。
 それからもう一点、ここで重要なのは、個人個人に700万円以上配るか配らないかという議論もそうなのですが、研究環境改善のために大学と組織に追加的な支援をするという部分も非常に重要だと思っています。
 前回のこの委員会のときに、採択者のうち70%ぐらいしか大学や組織から支援されていないという、むしろ30%ぐらいはまだ支援されていないという答えがあったというところは、これはまずは採択者の支援というのを100%まで、大学として組織として研究環境改善をやっていく必要があると思います。それとともに、実はこれ、各大学において、この採択者に対する研究環境改善支援だけではなくて、それをきっかけとして、他の若手研究者にも研究環境改善につながるような取組をしてもらうと、単に採択された人だけではなくて、大学における若手研究者支援というものの広がりというのができてくるのかなと思っています。
 そういったところで、やはりこの研究環境改善のための追加的な支援をどう生かしていくかというのが、実はとても重要なところなのかなと思っていますので、引き続き、永田課長はじめ、制度設計のほうをぜひよろしくお願いいたします。
 以上です。すみません。

【西尾委員長】  小泉先生、本当にありがとうございます。今、小泉先生がおっしゃった点は非常に重要で、今までの様々な研究支援事業では、大学等に、独立間際の研究者をしっかりと支援するという要件を課すようなものはあまりありませんでした。
 その観点から、若手の研究者を抱えている各研究機関において、若手研究者支援の意識を醸成することが、創発の大きなミッションだと私は考えております。
 現在、文部科学省からは、採択されている研究者を擁する大学、研究機関等に、研究者支援が条件になっているということを再度きっちりと申し述べていただいております。それと同時に、支援の状況を評価した上での追加的配分を目に見える形で行うことによって、さらに研究者支援を加速していくことが、日本全体の若手研究者の環境改善のために非常に重要だと思っています。創発がその旗振り役を果たしていかなければならないと考えております。非常に貴重な御意見ありがとうございました。

【小泉委員】  西尾先生、100%賛成です。応援しておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【西尾委員長】  ありがとうございます。

【永田課長】  永田ですけれども、私のほうから少しよろしいでしょうか。
 一点補足させていただきます。小泉先生、どうも御意見ありがとうございます。
 私の説明が不十分でして、学術変革領域Aにつきましては、領域代表としての申請はできませんけれども、計画研究に携わるということは今もできる形になってございます。
 代表者にはなれないという意味でございますので、積極的に学術変革領域のほうにも参画していっていただきたいと思ってございます。
 また、この取組が若手研究者支援として、ほかの若手へも影響が広がっていくと良いというお話でございますけれども、前回7月の会議資料(第8回基礎礎研究振興部会:資料2)の中でも御報告させていただいたとおり、所属の研究機関にアンケートを取ったところ、全体の4分の3が、この創発事業を契機として、学内的にも若手を支援するという機運が高まってきたという回答をいただいてございます。
 こういった取組が、ほかの大学でも広がっていくことが我々としても望んでいるところでございますので、創発事業での取組について、今後好事例を広く展開してまいりたいと思ってございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【観山部会長】  ありがとうございました。当初予定された時間が来ておりますけれども、何かほかに、ここだけは言っておきたいということがありましたら。

【黒田委員】  黒田です。一点だけ。恐縮です。
 メンタリングと創発の場運営に関しまして、これも改正の例の中に入っておりますけれども、実際にどのようなメンタリングや創発の場の運営がなされているかということ。コロナ禍の中で難しかったとは思いますが、あるいは1期生の方々のフィードバックといいますか、何かその辺の情報等ございましたら、把握したいと思いました。
 以上です。

【西尾委員長】  まずメンタリングに関しては、最初の段階から良い評価をいただいています。創発に採択されなかった方からも、ヒアリング審査の段階で非常に時間をかけて、きっちりとコメントを言っていただけたというようなお話をお伺いしておりますし、採択された方とPO、あるいはADの皆様との間では、コロナ禍の中でも、オンラインでの様々な相談がなされ、それに対する回答がしっかりとできているとの情報を得ております。
 そういうこともありまして、第3期までの採用者に関しては、同じPOの方に引き続き面倒を見ていただきたいと考えています。他方で、1人のPOの方が担当する人数が増えていくという状況は望ましくないと考えており、これらのことが、第4期以降、POを総入替えする方向を考えていることの背景にあります。私は、メンタリングに関しては十分にできていると考えています。
 また、少しコロナが収まった昨年度には、全国の地域ブロックごとに創発に採用された研究者に集まっていただいて、意見交換やお互いの研究内容を紹介し合う場を設けさせていただきました。
 ただし、もう少しこのような取組みを活性化したいと思っております。POの方々の間でも、例えば何々パネルと何々パネルで一緒にミーティングを開催したら、新たな学術領域の地平が開けていくのではないか等の御意見を交換していただいているようですので、そういういった場の設定についても、今後増やしていきたいと思います。
 また、やはり、対面でのミーティングを行うことが非常に重要だという意見が数多く出ておりますので、そのことについては今後さらに活性化していきたいと思っております。

【観山部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議題は以上となります。
 基礎研究振興部会運営規則第7条に基づき、本部会の議事録を作成し、資料と共に公表することになっております。
 本日の議事録については、後日メールにてお送りしたいと思いますので、御確認をどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、少し延長しまして申し訳ありませんが、以上をもちまして、第9回基礎研究振興部会を閉会いたしたいと思います。本日は御参加どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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