第9期基礎基盤研究部会研究基盤整備・高度化委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成31年1月23日(水曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

文部科学省5階 5F5会議室

3.議題

  1. 今後の課題・検討事項について【公開】
  2. 共用プラットフォーム形成支援プログラムの中間評価【非公開】

4.出席者

委員

佐藤主査、西島主査代理、尾嶋委員、知野委員、原田委員、飯島委員、江龍委員、大竹委員、岡本委員、金澤委員、木川委員、杉沢委員、高橋委員、田沼委員、中村委員、野村委員、横山委員

文部科学省

渡邉課長、黒川課長補佐

オブザーバー

国立研究開発法人海洋研究開発機構 伊藤 元雄
国立大学法人熊本大学  田上 友貴
国立大学法人北海道大学 佐々木 隆太
国立大学法人北海道大学 江端 新吾
国立大学法人大阪大学 稲角 直也
国立大学法人名古屋工業大学 玉岡 悟司

5.議事録

今回の議事は、審議の円滑な実施に影響の生じるものであるため、基礎基盤研究部会研究基礎整備・高度化委員会運営規則第4条第三号に基づき、議題2については非公開とされた。


【佐藤主査】  それでは、時間になりましたので、第6回の委員会を開催したいと思います。年明けて初めてですね。今年もよろしくお願いします。
 今日の議題は、最初に、第6期の科学技術基本計画に向けて、今この委員会としてやっているのは、共用の事業と、それから研究機器共通基盤技術の開発をどうするか、その2つの大きなテーマがあります。それについて皆さんといろいろ、今までも議論してきたのですけれども、まだ時間はありますが、もう少し深めて第6期に反映させていきたいと考えています。
  では、今日の議題、資料等について、黒川さんから。

 (事務局より、委員の出欠と配布資料の紹介)

【佐藤主査】  それでは、最初の議題なのですけれども、今日は皆さんにとっては突然かもしれないのですが、新共用に関する全国連絡協議会というのを行っていて、その幹事校の方々から、また、技術職員の方々から色々な意見が出ているようです。前から共用、あるいは大型の設備運営に関して技術職員の役割が不十分だねという話は出ていて、キャリアパスもどうするかとか、いろいろな話が出ていて、問題になっているのですけれども、なかなかそれに取り組めていないというところもあって、技術職員の関係者の方々からこの機会に皆さんにお話をしていただいて、議論を深めてもらえればなと思っておりますので、よろしくお願いします。
 では、最初の議題について、黒川さんの方からお願いします。

【黒川課長補佐】  まず、お手元資料1と資料2をお開きいただきまして、前回の委員会以降の動きを御紹介させていただきたいと思います。
 資料1ですけれども、前回12月26日の高度化委員会で、第6期の科学技術基本計画を見据えた課題・検討事項ということで、1.先端研究施設・設備・機器の共用と、それから、2.研究機器・共通基盤技術の開発ということで、先生方から頂いた御意見を整理させていただきまして、特に共用プラットフォームの中間評価を頂いておりましたので、そのあたりを中心に御議論をいただいておりました。
 本日は、1.の下2つですけれども、各機関の組織としての整備、新共用、それから、その下の人材育成等、ここに関する事項につきまして議論を深めていただければと思っております。
 次に、資料2でございます。最近、共用に関することがかなりいろいろなところで注目を浴びております。これは、総合科学技術・イノベーション会議、政府全体の科学技術の司令塔でございますが、そこの有識者議員懇談会が今年の1月17日にございました。そこで、文科省からも装置の共有化の現状等々について説明をしてほしいということで、公開の場で当局より説明をさせていただきました。
 そこでは、ここの委員会でも御議論いただきました、この右の図にもあります3C構造という形で、共用促進法に基づく特定先端大型研究施設と、それから共用プラットフォームのような国内有数の大型研究施設・設備、それから、各研究室で分散管理されてきた研究設備・機器についての共用を、フェーズに分けて促進をしてまいりましたと。特に新共用部分についての説明を是非ということでしたので、その部分につきましては、競争的研究費等で購入した機器について、2015年度に原則公用化をしまして、公募要領においてその事項を明記するとか、あるいは、そういう機器の管理を個々の研究室から研究組織へ移行するために新共用事業というのを開始したと。これまでにも幾つか成果が上がっておりますと。
 ただ、今後の課題として共用化をする上でのボトルネック、あるいは数億、数十億円規模、競金ではなかなか買えないような機器の新規購入の更新、さらには技術職員の育成・確保というところが課題としてなってきますということを、御紹介をさせていただいたところでございます。
 こういった動きを踏まえまして、今日、新共用の担当をいただいている皆様、技術職員の皆様から、いろいろと御紹介をいただきまして御議論をいただければと考えております。以上でございます。

【佐藤主査】  これは、反応はどうだったのですか、懇談会の先生方の。

【渡邉課長】  やっぱり今まで、こういう、よくヒト・モノ・カネと言われる中で、研究者の話と研究資金の話というのはかなり議論されてきて、基盤はその後かなというイメージを持っていたんですけれども、次の6期なりに向けて基盤もやっぱり重要ではないかということがかなり言われてきて、そういう意味では、我々、今後ちゃんとやっていかなければいけないなという思いを非常に強く持つようになったという状況です。

【佐藤主査】  もっと積極的にやれという話になりつつあると。

【渡邉課長】  いろいろな問題も顕在化してきているのかなとも思います。

【西島主査代理】  総額は変わらないんですか。

【渡邉課長】  予算はなかなか厳しい中ではありますけれども。

【西島主査代理】  逆に言うと、第5期の目標達成に対しての達成額というのをいつも出していますけれども、達していませんよね。
【渡邉課長】  第何期で何兆円と出ていますけれども、このままだと達成は難しそうな感じがいたします。

【佐藤主査】  これに関して何かありますか。参考資料というのは、これは説明したの。

【黒川課長補佐】  これも資料に付けさせていただいた、競争的研究費改革の検討会の中間取りまとめ、要は機器を共用化しますとか、あるいは、文部科学省の公募型研究資金の公募要領には、共用に関する事項というのは既に書いておりますということを御紹介しました。また、次のページでは、全国全ての大学・共同利用機関法人に対して、研究機器の共用の状況について調査をさせていただいて、こういうものが共用されている、あるいは共用化されていないのはこういう事情だったということを御紹介いたしました。

【佐藤主査】  恐らくこういう懇談会で取り上げたということは、やっぱり日本の科学技術力が世界的に見て、少しずつ落ちてきていると。論文数もそうだし、予算もほとんど増えていないという状況があるので、それを最終的にどういうふうに挽回していくかということを、恐らく考えているのだと思います。
 それを含めてですけれども、お金は潤沢にあるわけではないから、最も効率良い方法で共用化とか、効率化を進めながら、科学技術力をどうやって向上させるかということにつなげたいというのが、多分意向ではないかなという気はするので。お金はやっぱり出なきゃ駄目ですよと言いたい。

【渡邉課長】  それは言い続けはするのですけれども、ただ、全体を見ると、簡単に言ったら付くというものでもない中で、いろいろ効率化も考えつつ、必要なものについて、要求していくということだと思います。

【佐藤主査】  ということですね。何か皆さんの方からありますか、この辺に関して。取り上げられたことはすごくいいことで、少し注目してもらわないと困るなということなので。
 よろしいですか。あとは、技術職員の問題だとか、いろいろな問題が、課題としてはあるので、それは後で議論させていただきますけれども、これに関してよろしいですか。
 では、次は具体的に説明していただいた方がいいかな。

【黒川課長補佐】  はい。

【佐藤主査】  そうしたら、こっち側の最初のたたき台は、この前議論したから。

【黒川課長補佐】  はい、そのままでございます。

【佐藤主査】  これは、この前の議論をまとめて、今回もう一回出してもらったということで、よろしいですか。ここは違っているよという話はないですね。よろしいですか。最初の方の共用のところを、もう少し関連する関係者の方々からお話を頂いた上で議論して、2番目の研究機器・共通基盤技術の開発というところは、少しその後、これに関してはまだ余り十分検討できていないので、それで議論があれば、続けてやりたいと思いますので。
 最初の方の先端研究基盤共用促進事業全国連絡協議会ということで、いろいろ検討されているようなので、そちらの方の説明をお願いします。これは、伊藤さんの方からでいいのかな。よろしくお願いします。

【新共用(伊藤)】  初めまして、JAMSTECの伊藤です。よろしくお願いします。今日は、こういう機会を頂きましてありがとうございます。なかなか皆さんとこうやって話をする機会もないので、非常に緊張もしていますし、言いたいことを言いに来たというところは正直あるんです。

【佐藤主査】  大丈夫です、皆さんの意見を真摯に聞く委員会になっていますから。

【新共用(伊藤)】  もちろんです、それを期待して来ました。江龍先生がいるので、非常に心強く思っています。
 結論から言いますと、新共用事業というのは非常にいい事業だと思っています。何でかというと、やっぱり、僕は高知大学とJAMSTECの高知で組んでやっている事業なんですけれども、地方は地方のよさがあり、地方は地方の困ったものがあり。でも、それは高知だけかといったら、僕の横にいる方は熊本大学の方なんですけれども、熊本大学ではまた違う問題があり、また、北海道大学では、大きい大学なりの違う問題がありと、そういうのを3年間やってきた中で、いろいろな問題とか、ここはいいところがあったね、でも、ここをサポートするには、この新共用の事業では足りないねというところが顕在化してきてので、今回はそれをこの20枚にまとめてあります。
 後ろの方は、補足として、僕らから、今まで連絡協議会を何回か通じたところで分かってきたこと、これは次期の例えばSHAREとありましたけれども、そこに反映してもらいたい、あるいは6期のところで反映してもらいたいということを書いています。その後には、好事例とありますけれども、この事業ってまだたった3年間なんです。短いところは1年なんですけれども、この中でも十分好事例として取り上げられるべきことが書いてあるので、それはまた後ほど、皆さん、御参照いただければと思います。
 最初のページからちょっと説明させていただきます。1枚目、これがほぼほぼ全てなんですが、僕はやっぱりまだ現役の研究者なので、この事業をやるときには、共用を先にする事業ではなくて、やっぱり研究者としては、我々のやる研究力を強化してもらいたい。しかも、皆さん、先ほどから御指摘されているように、研究力というのはどんどん落ちてきている。それを何とか底上げする、サポートするような事業であってほしい。かつ、日本というのは、もちろん、僕はアメリカに10年ぐらいいたんですけれども、非常に評価されている。何でかというと、やっぱり今までの貯金があるから。でも、その貯金を使い果たしたときには、今後どうなるか全然分からないんですけれども、今現在まだ僕らは一線級を張れる。
 そういうエッジの効いたサイエンスを行うためには、こういう下支えの事業というのはめちゃくちゃ重要で、そこをサポートするような事業に成長してもらいたいというのが、我々幹事校であり、連絡協議会全体の願いです。
 よく文科省がこの絵を出しますね。真ん中に赤いのがあって、一番お金を食っている人たちで、次が共用プラットフォームで次にお金を食っている人たちで、僕らって実際余りお金がないんです。これ、非常に正しい図で、新共用って、実は一番関連する研究者であるとか、関連するサイエンス、いろいろなフィールドの方たちがやっているので、やっぱり一番現場に近い。僕が全部知っているわけではないですが、我々幹事校の集まり、連絡協議会に集まってくる人たちが、本当に日本の地方から中央までのいろいろな問題を知っているというのは間違いないですね。我々の意見を是非取り入れてほしいというのが願いです。
 そういう観点から言うと、僕の希望としては、例えばSPring-8であるとか、京であるとか、今年1億円、僕らのところを削って新共用にあげてくれよとか、そういうふうなことがもしできるんだったら、是非やってもらいたい。正直、3年間、年間1,500万円で時限付きで人を雇ったときに、3年間僕らが一生懸命育てた人材が、クビですねと言われたときに、僕らも困るし、彼らもキャリアパスとして成り立たない。そんな事業であっていいわけがないわけです。
 やっぱり我々、人を育てて、研究基盤をちゃんと熟成させて、そこで育った人がどんどん上のプラットフォームに行く、あるいは、その上のSPring-8、あるいは京、あるいは理研とかに行って、ちゃんとそこの研究をサポートするという人材を生み出す一番の場だと思っています。そういうことを是非考えていただきたいです。
 そういうことを考えて、2ページ目になりますが、そういうことは多分我々の全国連絡協議会では認識を一致して、1回目、2回目、熊本大学、高知大学でやっています。採択機関ほぼ全員参加されて、100名以上の方が来て、今度、3回目は金沢大学でやらせていただきます。
 採択機関としては何を目的としたかというと、2つあります。1つは、事務、あるいはそこに我々がやっている技術専門人材の方たち、あるいはURAの方たち一同から、この制度の問題点であるとか、実際にやったときの、こういうことをやったらいいねという意見を出し合った。一方、それだけではなくて、もうちょっとマネジャー級、つまりこのプロポーザルを書いた、例えば僕とか、後ろにいる佐々木さんとか、江端さんらが、もうちょっと大きな目で、これを次のステップとしてはどういうことをやっていったらいいか、これを提言としてまとめて、次の施策にどういうふうにやったらいいのかということをまとめているわけです。
 もちろん、それは我々が“わっ”と言っているだけではなくて、文科省の方に、これは次、例えば次年度から反映できるんだから、これは是非やってもらいたい。あるいは、JSTには、ちょっと君たち、お金に関してはうるさいけど、我々の抱えている問題点は分からないよね、みたいなところをちゃんと議論をする。
 一方、それだけ外に投げればいいかといったら、そうではなくて、我々もちゃんと考えなければいけないところがあって、それは我々自身だけではなくて、機関の経営陣、例えばJAMSTECだったら平朝彦という人がいますけれども、彼にこういうところが間違っているから、やってほしいというような意見をちゃんと固めて持っていきたいと思っています。

【佐藤主査】  委員の先生方は、こういう協議会というのがあるということ自体が分かっていない、ということが分かったのですよ。これはどういうふうにしてできて、経緯。

【新共用(伊藤)】  経緯ですか。

【佐藤主査】  その辺があれば、先にちょっとお話をしていただいて、その上で言ってもらった方がいいと思うのですね。

【新共用(伊藤)】  なるほど。江端さん、お願いしていいですか。

【新共用・技術職員(江端)】  それでは、江端の方から簡単に説明させていただきます。この新共用事業自体、立ち上がって数年たちまして、初年度採択校が今年度で終了するということで、その次の施策、その成果を次にどうつなげていくかということを現場レベルで相談を始めていました。

【佐藤主査】  これ自発的にということですか。

【新共用・技術職員(江端)】  自発的にです。今現在幹事校になっている北海道大学、JAMSTEC・高知大学、熊本大学、金沢大学、この4つの機関からスタートしております。文科省の方にもオブザーバーとしてご参加いただきながら、この連絡協議会の方針や本事業における課題等について現場レベルで話をさせていただきました。その中で、いろいろなアプローチでここで何を議論すべきか、その議論をどう持っていくべきかということも含めて、幹事校の方である程度方針を決めさせていただいて、連絡協議会でさらに議論を深め、提言としてまとめました。それを元に文科省と相談し、今回、ここまでつなげてきたという流れになります。

【佐藤主査】  なるほど。やっぱり基本的には自発的に出てきているのだね、問題を感じて。

【新共用・技術職員(江端)】  はい。ですから、この協議会自体は、教員だけではなくて、技術職員の方もいるし、URAの方もいらっしゃいますし、事務職員の方もいらっしゃる。これら本事業に関わるステークホルダー全員が集まり、本当に現場で困っていることを共有し、各々の機関や国全体における次世代研究基盤戦略について真剣に考える場になってきました。今回の提言はそれらをまとめたものになります。

【西島主査代理】  僕が聞いちゃいけないのかもしれない。さっきのこのいわゆる3Cの一番外側のブルーの部分、そこに入っている全体の対象大学という機関は何校あるの。

【新共用・技術職員(江端)】  70拠点です。

【黒川課長補佐】  70組織37機関です。

【西島主査代理】  そこに全部に声掛けて、全部から来ている?

【新共用・技術職員(江端)】  全部から来ましたっけ。

【新共用(伊藤)】  第1回の熊本では36機関で116名、第2回の高知では32機関で98名来ています。だから、9割ぐらいはいらしています。

【西島主査代理】  全部に声を掛けたのですか。

【新共用(伊藤)】  もちろん。

【新共用・技術職員(江端)】  スタートの時点、これ第1回なんですけれども、第0回(プレ協議会)というのがありまして、プレ協議会のときにはほぼ全ての採択機関から参加していただきました。そこで今回の幹事校も挙手という形で決まりました。

【佐藤主査】  なるほど。

【新共用(伊藤)】  一応、文科省の方でコンタクトアドレスというのを把握していますので、それを我々が頂いて、その方たち全員に同じ内容のものを発信しています。ここでまとめたものも、一応最初は幹事校でもんで、その後、採択機関の全員に投げて、そこの中でまた意見が出てきたら、またそれを入れて、直すという作業をしています。

【佐藤主査】  ありがとうございます。続けてください。

【新共用(伊藤)】  次は3ページ目ですね。次、いろいろと話した結果、みんな困っていることは地域によっても違うし、規模感によっても違うんですけれども、この5つぐらいにしかまとまらないわけです。あとは、困ったなと酒を飲んで大体解決するぐらいのものなんですけれども、これはここの委員会で議論して、かつ、文科省、あるいはJSTのところで何らか手を打っていただかないと、多分駄目だろうというキーワードが5つあります。
 1つ目が、技術専門人材、URA、コーディネーターなど、この事業というか、研究基盤をしっかりサポートする人材のこと。共用事業、共用機器って、いろいろ機械はあるんですけれども、それを提供するのはいいんですけれども、じゃ、提供した研究者、あるいは学科としての取組に何らかいいことがないと、提供する気にはなかなかならない。例えばそれがメンテナンスのフィーであったり、最初うち50%の機器運用時間は提供した我々に使わせてもらう。 僕の場合は、研究者なので、例えば科研費に0.1点でもポイントが付くんだったら、非常にうれしい。学科としたら、例えばそこに優先的に運交金が落ちるようなシステムを作る、そういうものが絶対要るだろうと思っています。
 3番目は、もちろん、お金を稼ぐというのもまあまあ重要なので、利用料収入の使途の柔軟性、単年度会計をいつか打破したい。こういうものをある程度パイルアップ(年度またぎの積立)して、大きなお金になれば何か買えるよというところ。
 次は、ほかの事業とか、ほかの研究機関との連携をやりたい。これは、個々の人材のエフォート管理も含むということです。
 5番目、これは非常に難しいんですけれども、多分大学とか研究機関のそれぞれポリシーであるとか、得意・不得意な部分があるので、そこはやっぱり何らかの形で選択、あるいは集中しなければいけない。それをどういうふうに決めるのかというところが問題かなと思っています。
 こういう問題があるにしても、やっぱりみんな研究を研究者に存分にやってもらいたいという気持ちは変わりないので、提言をしたいなと考えていて、それが世界の科学技術の潮流と、今だけではなくて10年後を見据えた段階的な機器の要素技術の開発、機器更新の長期ビジョンを大学、機関、あるいはこういう委員会でビジョンを策定していけるという、そのための提言をしたいと考えています。
 その後、4ページ目から5ページ目は、いろいろなこと、多分こういうことを採択機関内で解決ができるだろうと考えていることを羅列しています。あるいは、文科省として、すぐ次年度からでも取り組んでもらいたいこと、次の事業において反映させてもらいたいという事項というのがまとめてあります。なので、すごいところにお金を投資するのもいいんですけれども、たまには、お金の投資配分を逆にするというアイデアはないのかなと思わないでもないです。例えば10億円あって、4、3、2、1というのだったら、上から1、2、3、4として、3年間やってみて、その中でそれぞれどういう影響があるのかということを試してみるとか。これは、あくまでアイデアなので、本当にそれが是とは僕も思いません。
 もちろん、大きなところを持っているのはお金が掛かるのは分かりますし、それだけの人を雇用しているのでお金が要るのもよく分かっているんですけれども、やっぱりどこかの段階で一番広くお金を使わなきゃいけない、たくさん使わなきゃいけないところには投資するべき。その投資というのは、お金だけではなくて、人もそうだし、そこで育てたものがどんどん上に上っていくというスキームを作るべきときじゃないかなと思っています。

【新共用・技術職員(江端)】  少しだけ補足させていただきます。今回、連絡協議会でこの議論をした結果として本資料に書かれていることは、文科省事業の骨子として、基本的には全て書かれています。ただ、書かれたことを全て実施せよという要領になっているので、それは現場の立ち位置からすると、やはり現場で優先順位をしっかりと決めていかなければいけない。本資料に記載されていることというのは、次世代研究基盤政策において是非とも優先的に御検討いただきたい事項です。
 採択機関として実施期間内できっちりやるべきこと、そして、文科省がしっかりと考えるべきこと、さらに、次期の事業において必ずこれは反映してほしいという現場の意見として優先順位を決めて、今回、提案させていただきました。

【西島主査代理】  これまで、全体で5年間事業で、3年間ずれていって、5年間全体の取りまとめというのはまだこれからやるわけでしょう。

【渡邉課長】  事業全体の取りまとめについては、何らかやらないといけないと思っていますけれども。

【西島主査代理】  実際問題、3年間動いてみて、利用料収入によってある程度自立化というのも最初にあったと思うんだけれども。その問題と、雇用の問題なんだけれども、よく聞いてみると、これによって雇用した2人のうち、少なくとも1人は雇用を継続したいという大学もあるんだけれども、全員雇用したいという大学は意外と少ないと思うんです。その辺はどうですか、現場にいる人たちで。

【新共用(伊藤)】  すごい難しいことを聞かれますけど、例えば、我々の機関から言うと、正直ベースで言うと、僕らは年間1,500万円ぐらい頂いているんです。それで、2人フルタイム、1人支援という形でやっていたんです、1年目からそうです。2年目は、お金がなくなったので、3年目は減額されたので、支援の方に辞めていただかざるを得なかった。3年目終わった後、その1,000万円が消えちゃうので、3年目以降どうしよう。その2人というのは、僕ら、手塩に掛けて育ててきたわけです。
 大学としても、高知大学でここまでちゃんとやってくれる人は少ない、雇用したい、でも、財源がないから駄目であるということで、困っている。一方、利用料収入はどれぐらいあるかというと、JAMSTECの高知コア研だと、僕は今年600万円稼ぎました。高知大学は200万円、両機関併せて800万円です。でも、それが人件費に充当できるかというと、やっぱりノーなんです、ソフトマネーなので。
 なので、いろいろなソフトマネーを集めて雇用をちゃんとしてもいいよ、つまりマルチファンドで人を雇っていいよということを。

【野村委員】  今はいいのですか。

【新共用(伊藤)】  それが、JAMSTECは駄目なんです。

【野村委員】  それは機関の問題。

【西島主査代理】  機関の問題。

【新共用(伊藤)】  それと、多分問題は、この事業で雇われた人は、エフォートを100%、これでやりなさいよと言われていると、マルチファンドがそもそもできないんです。来年からは変わるらしいですけれども。

【渡邉課長】  済みません、今年度の契約分から改善し、エフォートは60%以上にしました。専らここに携わる人というイメージで、全部が全部というわけではないとしています。

【西島主査代理】  共用促進法の部分は施設の建設費も高いし、維持費も高いから、国としてもそれなりのやり繰りで維持して有効活用していただく必要もある。国家事業としても意義もあり重要なことから、産業界とも上手く連携している。大型施設の建設経費・全維持費を利用者が負担するということでは利用者が激減するが、共用促進法によってSPring-8、スパコン京等を許容範囲内の設定料金で利用できることは、産業界として大変嬉しいというのが本音です。
 さらに、施設内のスタッフが安定していることは重要である。国内の大型施設で最先端研究を実施する場合には、その施設を利用する研究者が安心して研究に専念できる環境整備、特にスタッフ充実が必要である。また、その装置の高度化というのも重要で、今新しくて数年後には陳腐化してしまうので、それを高度化しつつ維持していくということも踏まえつつ現場に一番近いところの環境整備を長期的に考えていかないといけないんじゃないかなという気がします。
 細かいことで、もう一点、こういう連絡協議会みたいなのが動き始めて、みんなで励まし合っているというのは、共用促進事業をやった賜物ですから、この1点を捉えても、文部科学省としてはいい仕事をしたのではないかと思います。

【渡邉課長】  ありがとうございます。

【佐藤主査】  それはいいと思うのですけれども、せっかく現場の先生方のこういう問題提起を、かなり大きな、すごく中身をちょっと見ただけでも、全体に関わるような大きな問題になるので、もうちょっと現場の方からの意見をいただきたいと思います。例えば今日出席されている先生方に、例えば高知大学JAMSTECだったら、好事例というのがあるじゃないですか。この事業によってどういうことが出てきたか、皆さんに認識を共有してもらうために少しお話ししてもらえませんか。
 その後、熊本大学、それから北海道大学。

【新共用(伊藤)】  では、私の方から、高知大学JAMSTECの好事例をお話しします。高知って、皆さん、多分場所は御存じだと思うんですけれども、かなり田舎なんです。そういうところだと、やっぱり地方の企業が困っていることって結構いっぱいあるんです。なぜかというと、大企業がそういうところに工場を作って、さらに下請が高知とかにいる。そういう人たちって結構切実で、分析機器がない、能力がないから、これ、問題と言われても分からない。そして大企業に文句を言われる。
 そういう人たちが僕らのところに来て、それを僕らが分析技術とかでいろいろ助けて、それをまた上に持っていって、よかったねと。なので、地方の産官学連携というのが非常にまず活発になったというのが1つ。
 もう一つ、僕は二次イオン質量分析計というのが専門で、NanoSIMSという機械を持っているんですけれども、それは非常に大企業でも今、注目されている機械です。例えば、この場だから言いますけれども、大手化粧品メーカーであるとか、大手タイヤメーカーであるとか、半導体メーカーという人たちが、イノベーションジャパンとか、そういうところに積極的にアピールをしているので、彼らが来て、共同研究を結ぶ、あるいは委託事業を結んで、それが600万円につながる。
 そういう地方だけではなくて、大企業の困ったことというのを産官学がちゃんとやるような、それで新しい製品の創出、あるいは、まだプレスリリースまではやっていないですけれども、それに近いところまではやっていることはあると。
 もう一つおもしろいのは、僕らは地球科学であるとか、そういうのがメインなんですけれども、全然違う半導体の方から、こういう分析というのはできないのか、あるいは医薬、創薬の方の人から、こういう分析はできないのかという、そういう分野融合というのが非常に活発になってきたと。
 あと、おもしろいのは、例えば我々が雇っている技術員というのは、北海道大学の顕微イメージングプラットフォームがあるんですけれども、そこで研さんを積んだ方が我々の方に来て、今一緒にやっている。そういうプラットフォーム事業との人材のやりとり、育成というのも実際にやっています。
 あとは、我々、高知大学の方は長年共同利用・共同研究拠点としてやっています。そこの事業と半分マージするような形で、この事業というのも並行して走っている。つまり、共共拠点というのはプロポーザルベースで、年間フリーで使える機械なんですけれども、お金を持っている先生方は、別にプロポーザルを書くのも面倒くさいので、1時間幾ら払えばすぐできる、そういうような受け皿があるというのは非常にいいということで、利用料もそこで獲得ができる。
 僕は、もう一つやってよかったなと思うのは、高知県が内閣府のまち・ひと・しごとの地方大学・地域産業創生交付金に今年採択されまして、そこの中の分析部隊として我々は入って、向こう7年間、年間500万円ぐらいの分析委託費というのをもらって、彼らをサポートするというところまで来たので、いろいろな好事例が本当に生まれているのかと思っています。

【佐藤主査】  そうすると、伊藤先生のところは、最初の現場からの意見という意味では、安定的な運用をするためにキーワードを5つぐらい挙げたじゃないですか。現場から見たら、今後、こういう事業をこうやっていけば、もう少しこういうふうに発展できるのじゃないかというような意見を一言で言うとしたら、どうなりますか。

【新共用(伊藤)】  やっぱり人材をちゃんとセキュアな状態で、この事業、あるいは研究開発基盤に充てるというのが、多分ベストだと思います。

【佐藤主査】  中途半端じゃなくて、もっと。

【新共用(伊藤)】  3年とかだったら、はっきり言ってない方がましです、みんな期待するので。それだったら、科研費をがんがん取る。

【佐藤主査】  やっぱりそこに来るのだね。

【新共用(伊藤)】  と思います。

【佐藤主査】  そうか、これ全部聞いていたら、時間的に大変なことになるね。
 次、熊本大学かな。

【新共用(田上)】  熊本大学の田上と申します。私は、この事業の予算で雇用されている技術系人材の1人になります。熊大の好事例が20ページに載っているんですけれども、熊大の医学部、薬学部の生命系5部局が保有する共用機器というのを、この事業によって設置場所、予約状況などが一括検索、予約、あと各部局で行っている機器セミナーの情報なども、一括で閲覧できるような窓口サイトを立ち上げることができました。
 また、この事業で任期付きの技術系人材が私を含めて3名雇用されています。主に共用機器の管理から、機器利用セミナーの開催、機器情報、登録案内のコンシェルジュのような業務――機器コンシェルジュと名付けているんですけれども、そういった業務から、あと高度な技術、知識が必要な機器ですとか、サンプル作成の受託支援まで行っています。
 それに関連するんですけれども、今まで先端機器の使用説明とか、高度な技術を必要とするような研究支援に時間を割いていた先生たちが解放されることで、自分の研究を推進する時間の増加が図られているというところで、熊本大学の方からも人材についてのお願いを提案したいんです。
 熊本大学は九州の地方で中規模の大学ですので、なかなか優秀な人材が集まりにくい環境にあります。さらに、私も非正規雇用になるので、5年雇い止めの問題も出てきてしまうんです。技術系人材に掛ける予算の確保ですとか、人材を継続的にバックアップするためのシステム構築というのを提案したくて、全国連絡協議会の方でも意見が上がっていたんですけれども、私自身も熊本大学の大学院を出て、この事業で働いています。修士とか、博士課程の人材を高度な知識とか技術を持つような人材に育成するようなシステムですとか、あと、近隣エリアの大学とか、企業間で連携した人材のプラットフォームというのを作るというようなことをお願いしたいという意見が、大学の中からは出てきています。

【佐藤主査】  なるほど。それは、熊本大学が雇用してくれなきゃいけないよね。本当はね。

【原田委員】  運営費交付金が減らされているから、、結局そのようになってしまうんですよね。

【佐藤主査】  分かる、分かる。現実は分かるのだけれども、そういう事情だね。

【西島主査代理】  でも、九州の中ではまだ熊大は恵まれている方だと思うんです。ほかの大学はもっと大変だよね。

【佐藤主査】  ほかは先生方の話を聞いてからにしましょう。次は北海道大学お願いします。

【新共用(佐々木)】  北海道大学の佐々木と申します。北海道大学は今、6拠点採択をしていただいております。この事業、1つ良かったのは、統括部局というのが1つあるということで、我々はGFC(グローバルファシリティーセンター)が統括部局として機能しております。GFCは大学の研究戦略というのにも反映しているので、そういう研究戦略というのを反映して本事業を展開したというのが、1つ、好事例かと思います。
 あと、このGFCには、新共用にはマネジメントの強化としてURAを配置しておりまして、URA、教員、事務職員、技術職員と、多様な人材がこの事業を動かしていて、この事業終了後も、共用として全学的に連携しながら継続していくという体制ができました。
 あと、GFCが中心として進めているオープンファシリティーとか、受託とか、設備市場、いろいろな取組、展開していますが、それとうまく連動して新共用事業が動いております。例えばオープンファシリティー、時間貸しの共用なんですが、これにこの事業終了後は登録してくださいというお願いをしています。事業開始時よりも1.5倍、機器の登録が増えておりまして、あとは受託分析の装置に集約していると。新共用の事業拠点から、これを受託として使ってくださいという話も来ております。
 あとは、他大学との技術支援人材、技術専門職員の育成ということで、名古屋大学、鳥取大学とも大学間交流等を始めておりまして、こういう事業の中で人材育成も含めて展開しているといったところです。人材育成に関しましては、RA、TAという形で、後進の育成も念頭に置きまして、博士研究員とか技術職員さんのトレーニングを実施しております。
 あと、今回の新共用で行うことで、結構我々はGFCとしては全学的な共用を進めている組織なんですが、一方で、今回、新共用は研究組織なので、研究者同士、研究者と企業と、実際に共同研究をしていて、そこからも共用というのが進んでおります。何か違う方向から、本事業によって、現場レベル、研究者同士、研究者と企業、そこから共用というのが促進されているという構図になっています。以上です。

【佐藤主査】  もともと北海道大学はそういうセンターみたいなのがあるじゃないですか、分析関係の。

【新共用(佐々木)】  はい。

【佐藤主査】  新共用をやったことによって、こういうのが生まれたという意味では、今の共同研究とか。

【新共用(佐々木)】  そうですね、共同研究、あるいは新しい企業さんが使いに来るようになったということはあります。

【尾嶋委員】  北海道大学は顕微のプラットフォームというのをやっておられますね。そことの連携というのはどんな形で進んでいるんでしょう。

【新共用(佐々木)】  そことの連携としましては、オープンファシリティーの方に顕微の装置も登録してもらっているので、そこでうまく連携して。

【新共用・技術職員(江端)】  基本的には料金体系等です。なるべく利用料収入を増やして自立できるようなシステムにするために、統括部局のグローバルファシリティセンターを中心に大学の研究基盤戦略と合わせて検討した上、顕微プラットフォームとも連携することにより体系を最適化しています。利用者に分かりやすい窓口という意味でも、本事業によって統括部局として認識されることでグローバルファシリティセンターが担うことができました。それによって、全学的に展開できるようになりました。

【尾嶋委員】  それは、両方ともが自立できるような方向ですか。

【新共用・技術職員(江端)】  全ては難しいのですが、できる限り。

【西島主査代理】  北海道大学は、これは結構採択されて、成功している事例だと僕は思っているんだけれども、その中で、最初に比べて、思いも寄らず大変だったという1点は何ですか。例えば大学のトップレベルの理解がなかったとか。例えばメンテナンス経費の工面とか、機器の高度化とか、修繕予算化とか、何かそういうので、一番苦労したのは何なの、予想に比べて。

【新共用・技術職員(江端)】  そうですね、やっぱりメンテナンスの話ですかね。

【西島主査代理】  費用、大変だよね。

【新共用・技術職員(江端)】  ええ、ですから実際にこれによって利用は増えていることは間違ありませんが、トータルの利用は増えても、採択拠点分拠点数が増えているわけですから、大学全体の共用意識の醸成や潜在的には取れるはずだった利用料収入が取れたという意味では非常に有用だったのですが、1拠点のみで自立できうるだけの利用料収入というのは稼げていないというのが、正直なところですね。
【西島主査代理】  さっきのキーワードの5番目の選択と集中だけれども、いろいろな申請書を見ると、僕の言っている選択と集中、そちらとは違うと思うんだけれども、共用に選んでいる対象機器を絞って、その機器群を集中的にメンテナンスして、総稼働率と利用実績を高めたという話も聞きますが、如何でしょうか?

【新共用・技術職員(江端)】  ええ、それを狙って次世代研究基盤戦略を立てています。北大はグローバルファシリティセンターを統括部局として、先端研究基盤共用促進事業全部でプラットフォームを含めて8拠点採択されています。新共用だけで6拠点で、NMRプラットフォームと顕微プラットフォームの2拠点です。これらGFCを中心とした8拠点における戦略を北海道大学の次世代研究基盤戦略として、トップダウンで決めた採択拠点に関する研究領域、あるいは、採択拠点に関する研究基盤は優先的に強化するという形でやり始めています。3年間では自立まではさすがに難しかったです。
 ただ、本事業によりグローバルファシリティセンターを中心にやるという北海道大学のシステムが全学的にもコンセンサスが取れたことで、運交金であったり、概算要求の設備要求の部分であったり、優先的に研究基盤整備ができるようになりました。つまり、設備マネジメントをするという体制は整えることができたという形です。

【佐藤主査】  なるほどね。あとは、いいですか。ほかの先生方は、せっかく来られているから。いいですか。

【渡邉課長】  であれば、是非、名古屋工業大学の事例も説明してください。ちょうどありますから。

【江龍委員】  ありがとうございます。それでは、せっかくですので、簡単に。既にいろいろお話が出ているんですけれども、名古屋工業大学、17ページで一番下の部分、人材育成の1つということを書かせていただいています。特に40歳以下の先生方が、自発的に自分たちが共用で出している装置、関わっている装置を全学的に使っていただくことで、利用料収入が上がる。でも、その利用料収入というのは、実は学内に入っているお金が還流するだけなんです。還流するだけなんですが、還流した結果、大学が使えるように見えるお金に貯金されていくだけなんです。
 それを、産学官金連携機構が外部から本当に真水として取ってきたお金と置き換えて、装置をリニューアルすると、そういったことに使えて、若手の研究者が、思い切ってやると装置が壊れるじゃないですか。そういった限界を超えたようないい仕事をしたら、直してやるぜというようなお金として巻き返ることができたと――学長はにらまれていますけれども、そういうことができたのは、まさに学内の脱私物化。
 偉い先生方がいっぱいいいお金を取ってこられて買った装置を若手に使っていただいたという、脱私物化に一歩踏み込めたという点において、この新共用というのはすごく加速できたと思っています。

【佐藤主査】  その予算を置き換えるって、どういうことですか。

【江龍委員】  余りでかい声で言うと、あっちに怒られるかもしれませんけど。

【佐藤主査】  メンテナンスの費用に、使える形に持っていったということ?

【江龍委員】  はい、間接経費で大学が一般管理費で頂く部分を巻き変えていくというやり方を、機構としてお預かりしているものをそっちへ充てるというようなやり方をしました。学内で。

【渡邉課長】  大学の裁量の範囲内であればいい話で。

【江龍委員】  そこです、アシストありがとうございます。

【渡邉課長】  そういう意味で、やっぱり経営陣がかなり入ってくれると、お金の融通は多分かなり利かせられることができる。

【江龍委員】  そうです。

【渡邉課長】  そういう意味で、学部単位なのか、全学単位なのか、いろいろあるのではないかと思います。

【江龍委員】  スペースチャージもゼロにするとか、そういったことを。

【野村委員】  そういう意味で、脱法行為は駄目だけれども、好事例というのはやはりできるだけオープンにしていかないと、要するに経営陣が入らないと、事務方の頭がかたいです。数十年前に教育を受けた人たちで、その頃は絶対しちゃいけないと言われていたことを、今やらなくちゃいけない時代になっているので、そういう好事例はやっぱりどんどんオープンにしていった方がいいと思いますね。

【佐藤主査】  木川さん、監査上はどう、監査から見ると。

【木川委員】  そこなんですね。ある程度すごく好転したときに、会計監査に怒られると、別に我々というか、経理契約の人たちがある程度独自にルールの運用を始めるということが結構あります。そうすると、その複数年何とかという話も、最近また駄目になってきたということもあるんですが。そこら辺を、いかに研究力を上げるためにどれくらい頑張れるかというあたりのやりとりですね。
 あと、もう一つ、実は文部科学省は認めているんだけれども、理化学研究所の事務が認めないとかいうことはあるわけで、これは結構、江龍先生はよく御存じだと思います。そこは、多分そういう意味では、文部科学省だけが頑張ってもいけなくて、恐らくこの好事例というのは一番多分分かるべきは大学の経営陣。大学だけでなく、そうですね、機関の経営陣、機関の人たちがいかに分かって、じゃ、これをやろうかというふうにやるところが、多分非常に大事なんだと思います。それは、人の問題も含めてですね。
 そこがうまくやれているところはかなり行くし、うまくいかないと、非常に大変な目に遭っているということではないかと。それは自分たちもそうで、別にうまく行っていないときもあるので、大変な思いをしているところもいっぱいあるんですが、そこら辺がこの好事例とか、そういうことがうまく経営陣に伝わって、それが研究力の強化だと分かってくれて、施策につながるようにという努力がやっぱり必要なのではないかと。

【佐藤主査】  それは可能なのかね。税法上の問題とか、何とか、いろいろ絡んでくる。

【木川委員】  そういうのは、済みません、今の発言はそういうことをベースにはしていないんですが、幾つかのことはそういう事例もありますし。

【佐藤主査】  駄目な事例も出てくるよね。

【木川委員】  例えば大学によっても扱いが全然違うところもいっぱいありますので。だから、それはいろいろ監査の問題とかも含めて、経験的に積み重ねられて、そういう対応になってきたのもあると思います。

【佐藤主査】  文科省は保守的に行くから、なるべく問題が起こらないように。

【木川委員】  いや、肩を持つつもりはないんですが、例えば旅費の問題とかは、意外と大学側の運用の問題に最近なっているものがあります。例を上げて申し訳ないんですが、東京工業大学のあれでかなり一時期非常に厳しい運用があった後に、それは行き過ぎだということで戻したときに、あれ、文部科学省から通達が出ているんです。何処とは言いませんが、某国立研究機関はそれにもかかわらず駄目と。東京工業大学でこれ、通っているんですけれどもと言ったら、駄目と怒られました。

【渡邉課長】  そういう意味では、こういう好事例で規制緩和の問題とかもかなりある。あそこの大学ではこういうことをやって、こっちはこうやって、では、向こうでやって、何でこっちはできないんですかって融通を利かせるだけで、かなり機関ごとにできるものの範囲は増えると思うんです。

【木川委員】  恐らく規制緩和という概念が全然浸透していない。世の中、規制がある程度どんどん緩和されて、いろいろやれることができても、アカデミアの世界は古い時代の概念にいまだに従っているということは多分あると思います。
【新共用・技術職員(江端)】  この連絡協議会を設立したときに、やはりポジティブな好事例は、ある意味みんな言いたいので、黙っていても結構出てきたりとかする、うまく行っていますという感じで。一方で、うまくいかないですということをいかにして共有するかというのが、こういった事業を回すことに非常に重要です。我々、文科省の方ともお話ししながら、例えばなんですけれども、Q&A集みたいなものをこの連絡協議会で作ってみて、うまくいかない場合は、こういうふうにやったら事務的にうまく通りましたとか、そういうものの事例を全部まとめていったらどうかという提案もあります。

【佐藤主査】  いいね、それはね。

【新共用・技術職員(江端)】  ですので、それはまさに現場レベルでないと分からない、それこそ一部の運営者だけでなく、事務系の方々技術系の方々も交ざって一緒に話をしないと、本質的な課題は浮き出てこないと思いますので、現場発の協議会をうまく使ってまとめていけたらいいなということを考えて、こういったネットワークを作りました。そのような経緯もありますので、Q&A集みたいなものについては是非文科省の方とも相談しながら進めさせていただければなと思っています。

【佐藤主査】  これ、文科省としては最高じゃない、そういうことが現場から上がってきて、それをちゃんとどういうふうに対処できるかということで。

【渡邉課長】  我々もいろいろな話題、こういうことができたんですよ、いいですよという事例を紹介して回っているんです。最近はエビデンスとなるデータや数字をくれとかよく言われているので、もう少し精緻なものも必要かもしれない。でも、まだ省内でも、こういう取組をしているということが余り知られていない部分もあって、先ほど総合科学技術・イノベーション会議の話もありましたけれども、ああいうところで発表して、ああ、そういうこともやっているんだということで、今普及啓発に努めているところでもあります。

【佐藤主査】  そうだね。あと、よろしいですか。

【新共用(伊藤)】  ちょっとよろしいですか。これは、大学と国研と多分大きく違うと思うんですけれども。大学は多分、文科省の所掌としては、例えばこういう研究開発基盤であるとか、高等教育とかというのだと思うんですけれども、恥ずかしながら我がJAMSTECは、はっきり言って海洋地球課しか見ていないわけです。だから、こういうところで出たこういう意見を、ちゃんと我々の経営陣が見るかというと、僕は全く期待していない。そういう観点から言うと、多分文科省の方で、ちゃんとこういう事例というのは全ての分科会とかで共有してほしいというふうに切に思います。

【渡邉課長】  そういう意味では、共用なりの事業というのは、大学のみならず、JAMSTECもそうですし、理研もそうですけれども、全体としてやっていくべきものではあると思うんです。先ほどから申し上げていますけれども、こういう基盤の充実なり、利用促進というのは、注目を浴びているところではありますので、そこはなるべく大学に限らず、広く周知をして、担当課にもわかってもらうことは当然重要だなと思っています。

【佐藤主査】  何か皆さん、意見ありますか。質問も含めて。

【渡邉課長】  次のものもありますので、聞いていただいてから、またでもよろしいと思うんですが。

【野村委員】  この中に共用化のデメリットというのがちょっと書かれていたんですけれども、8ページのところ。

【新共用(伊藤)】  非常に言いづらいんですけれども、これは基本的には僕個人的な意見です。

【野村委員】  何で学生教育の低下がしちゃうのかというのが、理解しがたいというのが。

【新共用(伊藤)】  学生、もちろん、データを与えるとか、そういうことはいいんですけれども、じゃ、クレージーなぐらいその機械を愛する学生を育てられるかというのは、やっぱりラボにその機械があってこそだと思うんです。例えばうち、僕は学生を1人持っているんですけれども、やっぱり自分のラボにある機械でさえなかなか使えるようにはならないんです。
 そうすると、例えば大学の分析センターにある機械を使いに行ったときに、やっぱりありきたり、一辺倒のことしかできない。それって、本当に学生が伸びるのかというのは非常に思うんですね。
 なので、こういうシステムというのは、ちょっと自分の言っていること、余り論理的ではない、整合はないんですけれども、ポスドクとか、多分研究者にはすごい良いシステムなんですけれども、学生にそれをやらせちゃうと、多分装置はブラックボックスのままデータだけ出てしまって、それが、どういう意味があるのと聞いたときに答えられないような学生しか、今後輩出できない可能性がある。
 それを考えると、本当にこれだけ進めていいのかなとは多少思うんです。

【新共用・技術職員(江端)】  今のご意見について、本事業で統括部局となったような部局・センターが、大学、あるいは機関の教育に対しても装置を提供できるようなシステムにするというのは非常に重要で、1つの解決策になりうると考えています。これも少し個人的な意見ですけれども、装置をばらしたりとか、実際に中身を見たり触ったり、そういった経験がないと、装置の本質的なところというのは理解できずなかなか身に付かないと思うんです。
 そういった教育ができる場として、古い装置でも何でも集められる場所というのが必要で、それがそういった統括部局であれば、なお教育に資するような全学的な取組もできるのではないかなと考えています。

【野村委員】  壊れた装置を学生が直したら、御褒美を上げるとかやるのは、すごい勉強にもなるし、メリットもありますよね。我々の学生の頃って、よその研究室が捨てたものを拾ってきて、直して使ったりの時代なんで。

【新共用(江端)】  そういうの、結構ありますね。

【佐藤主査】  なかなか難しいな。全部人海戦術でやるというのは、どっちにしても難しいでしょう、教育するにしてもね。装置の使い方とか、原理を学生に教えるにしても。さっき言ったプラットフォーム化みたいなことを考える。何かITを含めてプラットフォーム化を考えていかないと、とてもじゃないけれどもできないですね。科学技術の進歩も早いから、それも考慮してスムーズに発展できるように。そこに人も育っていくみたいな形になっていないと。今は、どちらかというと、日本は匠の世界というのを強調し過ぎるから、それではいけないですよ、絶対。

【新共用・技術職員(江端)】  例えばITと絡めた教育の話で言うと、木川先生のNMRプラットフォームでも少しやられていると思いますし、北海道大学においては、オープンエデュケーションセンターや企業と連携して、教材のIT化をして、Web上で授業をできるような仕組みを作っています。
 最近ですと、データサイエンティストの先生と連携して、このグローバルファシリティセンターにある分析データだったり、研究者のデータであったり、それらをどううまく使うかということの議論を始めています。
 このように、大学全体の連携をとるためには、やはり統括部局というのが非常に重要なのではないかなというのが、今回、本事業を実施した結果として改めて感じたところです。

【佐藤主査】  一足飛びには行けないのだけれども、雇用の問題も解決しながら云々していくためには、現場の問題と、それから、もうちょっと俯瞰的に見て生産性を10倍とかに上げられるぐらいのことをやっていかないと、結局雇用にもお金が回らないのだね、今の日本というのは。だから、これは、そこの問題もすごく言っていることになるので、すごく大きな問題だなとは思うのだけれども。
 現場の今の問題はよく分かります。それを踏まえて、どういう施策にしていくのかというのを考えないといけないということだね。よろしいですか。

【大竹委員】  雇用の問題も重要で、もう一つ悩みがあるなと思っているのが、最初、伊藤先生がおっしゃった、研究力強化にどう効くか、これが最終目標なんだと、そのとおりだと思うんです。確かに新共用って効いていると思うんですよ。それに効果があると思うんですけれども、それをいかに見せるかというのは、現場としては結構難しくて、論文数幾つですよと言うけど、その中も新共用の部分というのは一体どこなんですかと問われた瞬間に結構難しくなってしまうんです。
 なので、このプログラム自身が日本の科学技術にどれぐらい貢献しているのかというのをどう見せていくのかというのは、ここは1つ、課題かなと、悩ましいところかなと、現場としてもそういう意見はいかがでしたかという質問ですけれども。そういう話はありましたか。

【新共用(伊藤)】  難しいですね、それは。僕らは非常に小さい組織でやっているので、例えば近々だと、3週間ぐらい前、徳島大学の学生とポスドクの方が来て、ここの分析がないとこの論文が通らないので助けてくださいと言って、2日掛けて一生懸命やったら、2週間後にアクセプトが出たので、よかったです。僕らを共著に入れてくれた上、ちゃんと謝辞のところに我々のオープンファシリティーを使ったというふうに書いてくれるので、それは一応窓口を通って来て、それがペーパー、あるいは何かのファンディングにつながる、何か産学連携につながるというのは必ず入れてもらうようにしてもらってはいます。
 だから、難しいと言われれば、確かに100%の論文のうち多分1%ぐらいでしょうけれども、それを数値化というのはできないですね。でも、彼らにしてみたら、僕らのデータがあったからこそ、リジェクト寸前のやつがアクセプトされたというのは非常に大きいはずなので、彼らから見たら100%ですけれども、僕らから見たら、本当に彼らの使った時間の多分1%、2%なので、その辺はなかなか言いづらいところはあるのかなと思うんですけれども。

【佐藤主査】  謝辞に上げて、新共用とか、そういうことに対する謝辞が上がれば、それはこの事業の効果だから、どんどんオープンにしていいと思うのだよね。論文だけではないからね、効果としては。

【新共用(伊藤)】  はい。そうですね。もう一つ、多分そういうことをやるためには、いろいろな技術の専門人材とか、URAとか、コーディネーターの方々がそれに至るまでの技術を開発する、制度を設計する、そういう人たちと相談をできる窓口を作るというところも非常に労力を掛けているので、そこを評価はなかなかできないと思うんですけれども、そういうのも引っくるめて謝辞の中に1行ある中で、この事業は成功したというふうに言ってもいいのではないかと個人的には思います。

【佐藤主査】  そういうのをどんどん上げてもらうことじゃない、大竹先生。

【大竹委員】  そうですね。おっしゃるとおり。

【木川委員】  それ、どこでも多分問題になっていて、SPring-8なんかも今ちゃんとこういうふうに書きなさいと書いてありますけれども、でも、書く人が忘れたりするとかいうこともあるんですけれども。それを制度化して、ちゃんと守るようにして、そうすると、後からデータベースをキーワードで引くと。それは非常に前から問題になっていて、でも、書いていないだろう、この論文はという問題も。

【西島主査代理】  謝辞の書き方まで、分類まで載せて、英文と和文で。

【木川委員】  利用のときに、最初に、こういうふうに書いてくださいとひな形を渡してやって、それでも書いてくれる人が半分ぐらい。それでも、それを徹底していく。SPring-8なんかは、それをすごく徹底していて、今は多分結構書いている人は多いと思うんですけれども。そこから多分引いて、そうすると、これ、こういう公共の論文データベースからキーワード、インデックスサーチをして、これくらい利用がありましたというレポートを多分作っているみたいなんですけれども。

【西島主査代理】  結構、それは地道だよね。

【木川委員】  地道ですね。

【西島主査代理】  運営委員会で地道に、ここまでやるのかというぐらい。最近は学会発表とかには必ず。

【木川委員】  言ってくれと、それで言っても、半分ぐらいですかね、言ってくれるのは。

【西島主査代理】  今はもっと上がっているんじゃない。

【野村委員】  そういう意味では、日本はまだ遅れているんだけど、ORCIDを日本全体で活用できるようになれば、それで検索を掛けられるんですよね。

【佐藤主査】  これは、文科省からも、やっぱりそういうことを促進できるように出すべきだね。

【渡邉課長】  問題意識はございますが、なかなか難しいところなので。

【佐藤主査】  文科省の成果、この事業の成果なのだもの、だって、それは。

【田沼委員】  ナノプラでも全く一緒で、使ってもらったものの追跡がすごく難しくて。例えば今ナノプラが捕捉している論文は多分、発表されたものうちの6割だと思っているんです。それはどうやったかというと、年度を超えてリピーターになってくれる人はちゃんと報告してくれるんですけれども、1回しか使わない人はほとんど捕捉はできないので。それで、今おっしゃったように、ORCID番号でも振っておいた方がよかったかなというのを、今考えています。
 それから、学生さんの学生研修したあとの追跡がすごく難しくて。だから、特に学生研修でやった人はORCID番号をとっていただけると、将来どこに行ったかも分かるので、そういう識別番号が欲しいんですけれども。勝手に振るわけにいかないので、ORCIDが皆さん、とってくれれば、すごくいいなとは思っています。とにかく自分たちで調べないと、ユーザーは使うときだけはいいんですけど、なかなかユーザーからの報告は期待できませんし、強くも言えないんですね。

【佐藤主査】  そうだよね。

【田沼委員】  そういう問題があります。

【佐藤主査】  そういうところまで感謝の念は回らないものね、多分。

【田沼委員】  そうなんです。うちは謝辞はこう書いてくださいというのは、みんな決まっているんですけれども、6割でしょうね。

【佐藤主査】  先生方なんか、指導したって謝辞に入っていないとか、結構あるじゃないですか。まあ、それはちょっと、この事業としても成果としてちゃんとやらなくてはいけないから。

【渡邉課長】  非常にこの事業はいいと言われているんですけれども、やっぱり事例なり、データなりを示していかないと、今後、次の事業をアピールするためには説得感が出ないので、是非また引き続きいろいろと教えていただければと思っています。

【佐藤主査】  そうですね。時間がなくなっちゃうので、技術職員の問題、技術職員の関係者からのことについて、お話を。
 これは、江端さんでいいのかな、お願いします。

【新共用・技術職員(江端)】  はい、それでは本提案に至った経緯について私の方から説明させていただきます。今回、こちらの資料1にも書かれていますとおり、技術人材であったり、その方々のキャリアパスだったり、評価や機関を超えたような技術者の養成であったり、あとは西島先生の御意見にもありましたとおり、技術支援スタッフのノウハウの維持など、それらを踏まえて、実際に現場の技術職員の方々が自分たちで何ができるのかということを真剣に自発的に話し始めたというタイミングで、たまたまなんですけれども、私に研究基盤政策の現実について話してほしいという依頼がありました。そこで横山先生の事業と連携しプレゼンする場をセットしていただきざっくばらんに技術職員の方々と意見交換をしました。第6期科学技術基本計画に向けた準備が始まっているタイミングでもありましたので、是非技術職員の方々で現場の考えをまとめて、1回基本計画に向けた提案を作ってみたらどうかとお話をさせていただいたところ、皆さん非常にモチベーションが高く、それならすぐにやってみようということで、この有志の会というのが設立されました。
 そこで議論されてきて、その1つの案としてまとめたものが今回提出させていただいた資料になります。是非、この機会に現場の技術職員の方に生の声をこちらで伝えさせていただきたいということで、大阪大学と名古屋工業大学から2名来ていただいていますので、御説明をさせていただきます。それではよろしくお願いします。

【技術職員(稲角)】  本日は、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。私は、大阪大学理学部でNMRを担当しています技術職員の稲角と申します。本日はよろしくお願いします。有志の会でということで、全国の大学の技術職員で話し合った結果をまとめさせていただいて、今回提出させていただきましたので、説明させていただきたいと思います。
 先ほどもありましたが、私も新共用のプロジェクトで実際、運営側として技術職員の中で報告書とか、事業計画書とかにも携わらせていただきましてやっている観点から申しますと、やはり研究者の皆さんは機器にアクセスできる機会がすごく増えたなと。機器を管理していても、理学研究科以外の先生方からもすごく問い合わせが増えてきたというのが最近の実感であります。
 その中で、新共用に関して見ていますと、やっぱり技術職員がついている装置と、ついていない装置との稼働率というのは明確に違っております。技術職員がついている中でも、技術相談とか、また技術提案ができるような技術職員がついている装置というのは、すごく稼働率が高くて、実際にいま私は、理学研究科で10台のNMRを管理しているんですけれども、ほぼ年間いっぱいで受けることができないという状態にもなっています。
 先ほどからもすごく御議論いただいています技術専門人材というものを、私たちとしても非常にどんどん活用していっていただければと考えているところです。どのように活用していくかというところで、当初、技術職員というのは研究室に配属されて、研究室のミッションとして先生と一緒に技術を研さんしてきたんですけれども、法人化以降になって、それが部局の共通の人材になったり、近年では、大学によっては、大学全体の技術組織というのを作って、大学のミッションを共有し、マネジメントして、問題解決に当たっていくということを担っている大学も増えてきています。
 まだまだそういうふうな状況にない大学、大阪大学もそうなんですけれども、これが1つの課題です。規模を大きくすることによって、大学のミッションが自分の業務の一環であるというのがやはり明確に示されないと、この事業を行うにしても、他部局の依頼をなぜやっているのかという話になる可能性があります。職務専念義務があるでしょうみたいな話で。
 僕の場合は、今新共用というプロジェクトに関わっているので、問題ありませんけども、なぜ理学部の仕事を放ったらかしにしてそんなことをするんだという話になってしまうことがありますので、大学としてもそういうふうに組織をきちんと作って、人材の活用というものの指針など出していただきますと、僕たちもすごく仕事がしやすくなります。
 特に、最近、僕よりもちょっと若手の人材などは、博士号を持った技術職員の方は結構大きな割合で採用されています。ですので、研究に対して本当に提案しながら一緒にできるという、高度専門人材という形になってきています。その人たちをいかに有効活用するかというのが重要で、今、その組織化というのが1つの課題かなというのが、現場にいてちょっと感じていることです。
 あと、組織を作っていくと、やはり業務が効率化されていくんですけれども、技術職員というのは年々減っていっているという統計があると思います。同じ大学に、同じ業務をしている人がいないということが、やっぱり大学によっては増えてきています。そうすると、技術の継承というのが1つの大学ではできないので、なるべく自分の大学で人材育成をしていくということは最低限、当然のことながらも、それもかなわない場合に、全国規模で人材交流、人材育成ができる仕組みというのを、今後作っていくべきではないかと考えております。
 現在、分子科学研究所さんが行っている、大学連携研究設備ネットワークの中の研究設備の相互利用加速事業というものの中で、大学連携研究設備ネットワークに登録している装置の利用を促進するという形で、他大学の技術職員を自大学の技術職員が教えに行くという試みも昨年度から始まっております。そういう取組を、もっと今後、同様のナノテクプラットフォーム等でも多分やられていると思いますけれども、連携、継続していくことで、技術職員という人材をもっと高度化し、活用していくというのが非常に重要になってくるのかと思っております。
 また先ほど言いました業務の明確化ですが、やはりどうしても縛られています。事務職員と同じですので、業務に書かれていること以外というのはなかなかできないです。人材交流が非常に重要ということは、先ほどからも議論があったと思うんですけれども、こういうことをする上で業務を明確化したい。技術職員が見えないというふうによく事務の同期の方からも言われるんですけれども、技術職員というのは一体何をしている人なのとしょっちゅう言われてきています。
 もちろん、これは僕たちが余り外に発信していかなかったということもあるんですけれども、技術職員の見える化、技術組織、研究支援の明確化というのを進めていくことで、もっともっと寄与できるのではないかと思いまして、今回この様な提言をまとめさせていただき、出させていただきました。また、こういうふうにすることで研究者の装置の管理業務とか、業務の削減とか、あと、私たち、長年いろいろな分析をしていますので、NMRでしたら、NMRを使って非常に多く研究している先生と一緒に研究することで得た知識を、ちょっとNMRを使ってみたいというユーザーさんが来られたときに、最先端の測定方法で、こういう結果が出せますという提案などもできます。
 ですのでそういう形で、先ほどもありました、3年では専門技術の習得が難しいというのは僕も非常に思っておりまして、長年培ってきた経験を生かせる環境作りというのが、今後の科学技術の発展を促進すると思いますので、どうぞ御検討いただければと思います。

【佐藤主査】  なるほど、ありがとうございます。

【西島主査代理】  NMR10台を扱っていて、最後のところ、大変重要だと思うんですけれども、新しい技術を学んだり、高度化というときに、御自身がNMRの時間枠の中で何%かを使って共同研究枠にと、そういう枠組みというのは持っていますか。

【技術職員(稲角)】  実際、僕の場合は今現在、3つ共同研究に関わっております。そこで、技術職員というのは測定するのがすごく上手なんです。ただ、測定するのが上手なんですけれども、結果に結び付けるところの練習ができていないというのが1つの課題でありまして、そこは共同研究をすることで、この出たデータをどういうふうに解釈して持っていくと結果に結び付くかというのをやっていくことで、やっぱり技術職員というのはスキルが上がっていくものと考えています。

【西島主査代理】  僕たち、SPring-8、ビームラインを10年間保有したときは、15%はそのビームの一番いい状態を再現するという意味合いで、製薬会社のたんぱくというと面倒くさいので、理研のたんぱく質を解いて、それを国際学会に発表させて、モチベーションを上げるというので磨いたと。その磨いた技術が、各社の製薬会社に行ったときに随分役立ったので、そういう枠組みを持つとモチベーションも上がるし。
 10台、ただ忙しくて1日終わっちゃったというのではなくて、その人たちの高度化とか、モチベーションというのは結局浸透するので、さっきスタッフがいると機会もあるというのは、そういうところが重要かなと思っています。

【技術職員(稲角)】  私も去年、奨励研究という科研費に応募させていただきまして、低温技術の開発というので、通常マイナス100度までしか測れない検出器を、マイナス150度とか、170度でも測れるようにという開発をしたんです。そのときも、日本電子の方と一緒にさせてもらって、ぎりぎりはどこまで、どこまでは装置として、スペックがマイナス100というのは、なぜマイナス100なのかというところから始まって、そこを解決して達成できました。 そういうモチベーションの上がる装置を触りながら、マニアックにやるというのが技術職員のすごくモチベーションにもなります。
 今回、NMRの技術職員を全国で集めていまして、教育プログラムを作ろうじゃないかという形で、新しくNMRの技術職員としてある大学が採用したら、その教育プログラムを受けることで、最低限の技術を学んだ上で、あとはその大学の先生の研究によっても分野が多分変わっていくと思うんですけれども、それを伸ばしていってもらう。それをまた共用していくという取組を始めようとはしています。

【佐藤主査】  ちょっと時間がなくなってきたので、もう一つ、名古屋工業大学の玉岡さんから説明、何かありますか。

【技術職員(玉岡)】  名古屋工業大学の玉岡と申します。今日はこのような場に参加させていただきまして、ありがとうございます。ほぼ稲角さんの方から話が出たんですけれども、私の方からも1つ。やっぱり技術職員というのは、先ほどから言われているように人数が減ってきて、一人職場というのが多くの大学で言われています。結局学びたくても学べない、学ぶ人がいないということで、先ほど言われたように、NMRはやっている人たちが集まって情報共有したりとか、今後教育しましょうというシステムができているところもあるんですけれども。
 あと、電子顕微鏡だとか、そういう分野によっては情報共有ができているところもあります。また、今回、分子科学研究所さんの方で、設備・研究ネットワークの方でいろいろな研修をやっていただいて、それは資料4にも書かれていますけれども、かなり成果を上げていて、参加した人たちに非常に有効だという意見もあるんですけれども。
 しかしそれは短期間で、1日とか、3日間とか、そういうオーダーなので、やっぱりできることというのは数が限られてきてしまって、もう少し突っ込んだことをやりたいという要望はたくさんあるんです。だけれども、実際には、大学に採用された人たちは、大学の仕事がメインになってしまいますので、そこからほかの仕事をやるというのはなかなか難しいし、現実問題として、技術職員というのは異動というのがないものですから、そこでずっと、場合によったら一生そこのことをやらざるを得ないというふうだと、せっかく培った技術も陳腐化してしまうとか。
 やっぱり一人だとなかなかできないというのもあるので、僕は、そこの提案すべき事項にも書かせていただいたんですけれども、人的な交流、装置を共有化するのであっても、人が共有化できていないというか、そういった側面があるので、人的な交流を促進していただけるようなシステムを作っていただきたいなと、切に思う次第であります。

【知野委員】  質問よろしいですか。

【佐藤主査】  ちょっと、最後まで聞いてからにしようと思ったのです。これ、最後のページで、技術職員の人事制度というのがあるじゃないですか。これ、誰か説明できる人はいますか。

【新共用・技術職員(江端)】  これは、第6期科学技術基本計画に掲載すべき事項の(案)のところの、3番目の人事評価制度の適正化と業務の明確化というところの最後のところに、キャリアパスをしっかり作り出せるようにしたいということを書かせていただいています。実際に、技術職員の方々のモチベーションがなかなか上がらない理由の1つとして、職階がそもそも少ないという現場も話もあります。
 例えば、こちらの最後の資料の上のページで、一番右側に以前の専門職名、職階というふうに書かれております。ですから、技術職員、技術専門職員、技術専門員という形で、3段階しかなかったというのが、これまでの状況です。本資料は名古屋大学さんの全学技術センターの事例で、6つの職階を作り、トップに新しく技術部長を入れ、俸給表に合わせた形で職階をちゃんと作っていこうとされています。全学的に技術職員の方々を見える化していこうという取組を先進的に実施されていますので、名大さん同意の上で今回事例紹介として本資料を添付させていただいております。
 特に各機関のキャリアパスのプランについて、技術職員の方々が自分の研究支援、あるいは研究推進、そして、稲角さんは科研費を取って、自分の研究にも携われているということなので、そういった方々が自分の実績を踏まえて、どういう形でキャリアアップしていくのかについて明確にしていく必要があるということで、それぞれの職、能力に応じてこういった名称で、若くても技術がある方はステップアップできるという制度を作っていくべきではないかと個人的に考えております。
 私はURAですが、URAにおいても同様の議論がなされています。マネジメント人材という新しい職を、実際に必要とされるような形で設計する上では、このキャリアパスというのは重要であるということです。北大URAは理事につながる職として位置づけております。
 技術職員の方々でも、適性がある方は適切に最終的に大学の理事等になれるという形で、つながっていけるようにキャリアパスを考えていくべきではないかという話がありましたので、今回、参考資料として提出させていただきました。

【佐藤主査】  今は名古屋大学だけですか。

【新共用・技術職員(江端)】  埼玉大学でしたっけ。

【技術職員(玉岡)】  この形はそうですね。

【佐藤主査】  少しずつそういう方向に動きつつあるのでしょうか。

【新共用・技術職員(江端)】  はい。議論としては進めるべきとなっていますが、この話をしていくとなかなか進まないというのがあります。
 なぜ進まないかというと、技術職員の方が自分たちのことを議論すべき場所というのが、機関にそもそもないというのがあります。ですから、トップダウンで経営陣の方々が言ってくれない限りは、自分たちからも発信できません。そういう意味で、名古屋大学さんは突破口を開いたということで、私自身は非常にすばらしい制度を作られたなと思います。実際の運用についてはまた難しい課題に直面することもあるかと思いますが、これは、やはり全国的にもこういった形を示すことによって、技術職員の方々のモチベーションを上げていくことができ、見える化が促進され、リソースを最大限生かした大学経営に繋げることができるのではないかと思います。
 さらに、稲角さんからもありましたが、博士人材が今技術職員に就職されているということもありますので、そういった人材をいかに活用していくかという面において、こういったキャリアプランは明確に示す必要があるのではないかなと思っています。

【佐藤主査】  これはすごいね。今までキャリアパスというのを盛んに問題にしていたから、こういうのがちゃんとできるという制度ができたら――人事制度から言うと、ちょっと垣根を超えているけれども、その垣根なんか本来ぶっ壊してもいいと思うのだけれども、こういうキャリアパスがあるというのはすごくいいね。
 じゃ、時間がないので、皆さんの方から。

【知野委員】  1ついいですか。この技術職員有志の会で、2ページを提案しようと考えていらっしゃるのでしょうか。

【新共用・技術職員(江端)】  はい。

【知野委員】  初めて読む者の感想としては、その前のページに書いている1とか、2とか、ありますね。つまり、技術職員が見えないという御指摘、さっき御自身でもされていたと思うんですけれども、この案の並びだと、技術職員というものが全く見えてこないんです。まず技術職員というのがどれだけ必要かということを、この1ページの要素を短くして、とにかくこの案の中に盛り込んで、その上で必要性の明記をしないと、部外者には説得力を持ちにくいと思いますので、お変えになった方がいいのではないかと思いました。

【新共用・技術職員(江端)】  はい、ありがとうございます。

【西島主査代理】  そうだね、確かにそれはそうだ。

【杉沢委員】  私から少しコメントさせていただいてよろしいですか。今先生がおっしゃられたとおりで、この1番のところが非常に重要だと思っています。
 技術職員というのは確かに見えない存在で、縁の下の力持ち的なところがあります。研究室があって、そこに装置があって、そのサポーターとして技術職員がついている時代であればその位置づけでも良いのかもしれませんが、共用化が進んで共用機器を用いて成果を上げていく時代となると、それを運用する主体である技術職員こそが、研究開発の大きな推進力とならねばならなのではないかと考えています。技術職員こそが、研究基盤を運用するリーダーになるべきではないかと考えられます。ですので、ここにまずそういった一番大きな点を書いたらどうかと思います。研究者の方々は、個々の装置を使って、個々のテーマに沿って研究をされていくのに対して、技術職員の方は共用設備全体を効率的に運用して、研究者の方が効果的に成果を出していくための要となる人材です。ここでは、技術職員の方の役割と意義を明確に記載し、その重要性を示すことが大事だと思います。 
この2番のところは非常にばらしいと思っています。研究者の方々というのは、自分のテーマを深く追いその分野での新たなる発見を目指すものですが、最先端の分野で競争していると異分野に視野を広げる余裕はなかなか持てないと思います。一方で、技術職員の方は様々な研究分野のサポートを通じて、多種多様な研究分野を俯瞰的に見ることができます。そういったポジションというのは技術職員の大きな強みと感じています。イノベーションというのは、必ずしも、特定の分野を深く研究することで生まれるわけではなくて、これまで思いつきもしなかった異分野の技術の組み合わせで生まれるものです。大きなイノベーションは、技術職員の方々の横の俯瞰的な見方によって生まれる可能性が大きいのではないかと思うので、この2番の記述は大変素晴らしいと思います。
 これから日本のイノベーションを生む1つのキーがここにあるという形で、うまく書かれたらいいのかなと思いました。是非こういったものを前文に挙げてはどうかと思います。

【新共用・技術職員(江端)】  ありがとうございます。

【佐藤主査】  ほかの先生方から、どうぞ。

【高橋委員】  私どももそうなんですけれども、技術職の幅広さというのが非常に大きいのもありまして、幅広というのはどういうことかというと、いろいろな職種というのもあるんですけれども、各技術者が持つ技術力をどういうふうに評価し、それをそれぞれの方々がどういうふうにレベルアップしていくかというのを、もう少し明確化する必要があるのではないかなと思います。
 それが、もっと定量的というか、定性的にはっきり分かってくると、どこにどういう人材がいて、それをどこに派遣することもできるしという、協力の具体的なことがもう少しできるのではないかなと常々思っているんですけれども、なかなかそういう幅広で、なおかつ、専門職になっているところもあるので、そこの体系化みたいなのがなかなかできないというのも、私たち現場の悩みでもあるというところもあるんですが、いかがでしょうか、そこら辺。

【技術職員(玉岡)】  先生が言われて、まさにそのとおりで、技術職員というのは今までそういうのが全然やられていないんです。だから、誰がどういうふうにして評価して、この人をこういうところにやった方がいいという訓練というか、そういう経験もほとんどなくて、さっきの話ではないですけれども、技術のところをずっとやるというのが今までだったんです。そこのところは、これから流動化だとか共用化というのを進めていけば、当然そういうマネジメントをする人材というのを技術職員の中でつくっていかないといけないですけれども、それは今後の課題というふうに、僕らは認識しております。

【新共用・技術職員(江端)】  技術職員というくくりでなかなか議論できない大きな理由の1つとして、大学の技術職員というと、船に乗っている人とか、演習林で研究されている方とかも含めて技術職員と言われています。
 我々は、本事業に関連して議論する際には、分析系の技術職員という限定した形で話ができないと、なかなかフォーカスした議論にならないということもありまして、この人事制度に手を加えられないという大きな理由の1つとしては、高橋先生がおっしゃったとおり、人事制度をいじると、評価基準を1つにしないといけないのですが、職種によって評価基準を変えなければいけなくなってきて、かなり複雑化する。
 かつ、それが総合大学、単科大学、そのほかの大学とで、それぞれいろいろな形の技術職員という方がおり、その名称と、その切り分け、定義というものがはっきりしていないという現状もありますので、この名古屋大学さんのような思い切ったことがなかなか各大学で進まないというところもあります。

【佐藤主査】  なるほどね、確かに。岡本先生、どうですか。

【岡本委員】  技術職員についてのコメントというか、ちょっと戻ってしまうのですけれども、セオリーが使えると思いました。マズローの6階層モデルとか、ハーズバーグの衛生理論とか、古典的なセオリーを使えば結構きれいにまとまるんじゃないかと感じました。それがコメントです。
 それから、戻ってよろしいでしょうか。新共用の促進について私は完全にアグリーです。ただ、今回のこの好事例に関しては、残念ながら本来の好事例になっていないと感じました。どういうことかというと、極めて表現が定性的なんです。
 例えば熊本大学の事例で言うと、20ページの「サンプルを効率よく測定できた」という表現、定量化すればもっと分かりやすくなって、どのくらい産業界に価値があったかというのを、さっきORCIDの話が出ましたけれども、もっと定量的に見える化すれば、もっとよくなると思っています。

【新共用(伊藤)】  それは、多分幹事校の方から、まず好事例、何でもいいから思ったことを書いてくださいとしたんです、まず。だって、1年目もいれば、3年目もいるので、その間にどれぐらい定量的な話ができるのか、やっぱりなかなか難しい。僕らが判断して、まずは好事例を挙げてくださいと。こんないいことがありました。じゃ、それをみんなで共用化して、あれ、実は、これ、僕ら普通だと思っていたけれども、これってほかから見たら好事例じゃないかというところを、まず認識を持ってほしかったというところが1つあります。
 多分その次のステップに、おっしゃることだと思います。

【岡本委員】  そうですね。次のステップで、是非ここまでやって、定量化して、これはこういう価値が生まれる。これによって、IFの高い論文を出したとか、といった話ではなくて、どのように社会とか企業に価値をもたらしたかというのを、もう少し。
 金額ベースで経済的な対価に落とし込めば、恐らく予算を出す方も分かりやすくなるのではないかと感じました。非常に定性的だったので、これはもったいないと思った。それが本音です。ありがとうございました。以上です。

【佐藤主査】  これ、出せますよね、それは。難しいですか。

【新共用・技術職員(江端)】  文科省の方にいろいろ御協力を頂きながら、そういった試算というのはやらないといけないのかなと、逆に思いますけれども。

【渡邉課長】  多分、とりやすいものと難しいものとあると思うので。

【木川委員】  数えれば、それはすごく大変だと思うんですけれども、そういう習慣は、多分共用とかをやるときに身に付けていかないといけないので、それは今までやっていないと結構大変なんですけれども、でも、それをちゃんとやっていく習慣を付ければ、それはちゃんとエビデンスとして出てくるはずです。少なくとも僕らの経験からは。

【新共用・技術職員(江端)】  数のカウントはできるんですけれども。

【木川委員】  いろいろなものが、ちゃんと記録を取るとか、ちゃんとデータにするということを習慣付けていくと、これまた非常に大事なんですけれども、そうなっていくと出てくると思いますので、それは是非やっていただきたい。

【新共用・技術職員(江端)】  そこは、アグリーですし。

【木川委員】  ちょっと、ものすごく大変ですけれども。

【新共用・技術職員(江端)】  社会や企業に対しての経済効果という話は、なかなかちょっと、すぐに各機関が出せるようなものではないのかなと思います。

【岡本委員】  考えて変えていくのが大事かなと。今、田沼さんとお話をしたんですけれども、難しいのは分かっているんです。私もナノテクを見ていますけれども、変える仕組みを作っていかないと。やっぱり定量化、見える化しないといけない。

【佐藤主査】  どうぞ。

【杉沢委員】  その点に関して、一つコメントがあります。今回ご説明いただいている関係者の方々は、共用施策における3Cグループの外側に属する方々です。3Cグループの内側に行くほど、組織が大きくなり、運営拠点の数が少なくなりますので、成果をとりまとめたり報告するための技術職員の数や運営体制も充実しております。一方で、外側のグループは、組織が小さく全国に分散しているので、自分たちでデータを集計したり、統計的にまとめる作業はなかなか難しいのではないかと思います。ご指摘の点は重要なことだとは思うのですが、それを現場にやりなさいと言うのはちょっと過酷ではないかなと私は思っています。
 3Cの外側に薄く点在している組織の成果のとりまとめや統計的なまとめの作業は文科省でとは言いませんけれども、中央の組織がまとめて行うようにできないのでしょうか。

【渡邉課長】  いろいろと文科省も統計なりデータというのはとってきているんですけれども、余りこの分野というのは実際ない。

【杉沢委員】  そうだと思います。

【渡邉課長】  当初、余り重要視されていなかった、焦点が当たっていなかったところなので、6期とかに向かって言うためには、とりあえずある中ででも、数値化できるもの、エビデンスというものは頂いた上で、本当に必要であったところは、最終的に政府の統計とかに例えば持っていく必要はあると思うんです。
 例えば今、URAとか技術職員が減っているということが言われているんですけれども、データではないんです。数は減っていない。どうも常勤は減っているのではないか。それは聞いているだけで数字がないので、例えば有志だけでももらえれば、我々は訴えることができます。それは段階だと思うので、できるものからまず頂いて、本当に重要であれば、もっと力を入れて統計なりをとっていくということはできるようになるし、必要だと認められれば、今後頑張っていきたいと思います。

【佐藤主査】  どうぞ。

【飯島委員】  個人的には、やっぱり最後に示していただいている技術職員の人事制度、これが私は一番キーポイントではないかなと思います。どうしてかというと、従来のこの右側の端の絵だと、あくまでサポート部隊という認識なんですね。名古屋大学が作られたのだと、やっぱりマネジャー的存在が必要で、そういう方が下の方を評価するとか、大学とかの中で技術職員の立場をアピールするとか、そういった方がどうしても必要だと思うんです。
 見える化といっても、御自身たちでうまく表現するのは結構難しいと思うんです。やっぱり主張してくださる方が必要だと思うので、技術が重要だということをもっと認識して、こういう人事制度に変えていただくのが一番早いのではないかと思うんですけれども。そこは、文科省の力ではないかと。

【佐藤主査】  そうだね。

【渡邉課長】  今後の議論のまとめとかで、そういう提言を例えば挙げていって、ほかにもいろいろと問題がある中でですけれども、そういう中でどういう説得力を持って説明していくかというのは、やはりデータなり、先生方からの意見、お力も頂きながら、さらに上位の方に上げていくということかなと思っております。

【田沼委員】  物材機構なのでちょっと名称は違うんですけれども、このキャリアパスプランがほぼ物材機構では、これとほとんどそっくりなんです。

【佐藤主査】  できているのですか。

【田沼委員】  もう15年前からやっています。ちょうど研究職と一緒なので、技術職員が1級から5級まであり、主席技師が5級相当になって、ほとんど一緒です。給与も基本的に研究職と一緒になっています。そういうことでこれをやっていて、今ここで言う主席技師は5級相当で、NIMSでは主席エンジニアとステーション長とか、あとは部門長クラスになります。ということで、これ、ほとんど実現しているんですけれども。
 それで、難しいのは、研究職の方は論文を書くと何点とか点数でやっているんですけれども、技術職は評価がすごく難しい。それだけ技術職はスペクトルがすごく広いんです。ですから研究で使えるような論文とかいう共通指標がないので、結局今は外部から稼いだお金とか、あとは特許のお金とかいうことになっているんでが、そういう評価の問題があります。
 あと、もう一つ問題点は、これを作っても、やっぱり雇用の問題があるので、結局人数は増やせないんです。ですから、ここに乗ってこない任期制の職員が増えているので、このような制度をいくら作っても、任期制が増えちゃうと、これが本当に一種のエリートコースというか、上まで行く人だけになってしまうんです。
 ですから、もうちょっと、できたらそれを逆に言うと、任期制もこれに当てはめて、給与が3年でも、5年でも、ちゃんと評価をして上がってくるような仕組みを作らないといけないかなと思っているんです。今、任期制は本当に初年度採用すると、ほぼ3年間ほとんど上がらないので、そういうふうになると思います。

【野村委員】  いいですか。もう時間がないのであれですけれども、私、KEK(高エネルギー加速器研究機構)なので、もともとこういう技術部というのがありまして。ただ、そういう時代があったんですけれども、ある意味、実際の仕事は研究者、教員と技術職員がかなりペアになってやらなくてはいけなくて、指揮命令系統が2本になるのは非常に困るという声もあったりして、本当にどういうものを作るのがいいのかというのは、我々もずっと苦労していますけれども、いろいろ御相談しながらやれればいいかなと思います。
 特に、技術職員の場合、いわゆるマネジメントに進む道と、あとやっぱりスペシャリストとして本当に優れた技術を持った方をきちんと評価するようなことと、両方考えていかないといけないんだろうと思っています。

【佐藤主査】  難しいね。

【大竹委員】  関連して、ショートクエスチョンで。キャリアパスプランはすばらしいと思うんですけれども、質問として、この図は右に流れる1方向なんですか。これ、意外と難しくて、教員の場合というのは専攻長というのは持ち回りで、またそれがなくなっても、教授は教授なんですね。今のお話のとおりなんですけれども、マネジメントを何年間かやったら、専門の力って落ちてしまうじゃないですか。
 マネジメントをやる人というのは、それをやることになったら、もう専門には戻らないぞという図なのか、それとも、ある程度やって、また戻るんだぞという図なのか、どういうお考えなのかなというのを伺いたかったんです。

【新共用・技術職員(江端)】  詳しいことは名古屋大学の方にお聞きしないと分からないことはありますが、基本的にはポジティブな流れとして右方向に行くという考え方だと思います。例えば北海道大学で主催毎年しているオープンファシリティシンポジウムに、バークレー国立研究所からエンジニア部門の部門長の方にお越しいただいて、あちらでどういうキャリアパスプランを作っているかということをお聞きしました。
 そのときには、技術職員と研究者というのはやはり横並びで、技術の人たちから研究者として研究に従事できるような人たちというのもありますし、スペシャリストという先ほどお話がありましたが、そういったキャリアパスというのを歩むことができるということもありました。ですから、キャリアパスとしてどっちに行くかということに関しては、理想的にはその人の能力によって、どちらにでもパスが行けるようなものを作るべきと考えておりますが、実際に各大学・機関の戦略、それに基づいた技術職員の方々の役割によって、このキャリアをどう歩んでいくかというのは多分決まってくるようなものだと思います。
 現状ですと、まず最初のこの3段階から6段階にしたというところから、じゃ、次、その行き来をどうするかという議論になっていくのではないかなと思います。

【佐藤主査】  なるほど。余り時間がなくなってきちゃったのだけれども、最後にまとめようと思ったのだけれども、まとめ切れないなと思いながら。
 最終的には、これはやっぱり人事制度が絡む。今のこの2つの問題というのは、結局は、最終的に人事制度が絡んでくるなと。だけれども、人事制度というのは、企業も大学も色々取組んできている。しかし、大学は余り変革できていない、企業はいろいろなことをやってきたのだけれども、なかなか余りうまく行っていないのです。何でかというと、要するに先ほど来、話もあったと思うのですけれども、結局はその人がやりがい、生きがいを持って仕事ができるかということなんですよ。
 そのためのモチベーションが何ですかということになってくるので、単に部長になればいいですよねとかいうことではないような気がするので、それで技術系のパスと、マネジメント系のパスと、企業なんかでは分けたり、いろいろなことをやっているのだけれども、なかなかうまくいかないんですよね。だから、そこを大学なんか、そういう意味ではほとんどできていないですから。私は、企業から行って、大学を見たときに、大学の最大の問題は人事制度、全くできていないと。
 これを変えるということもできないのかなと、特に、技術を伝承しなければいけないということと、大学の自治を守る、というのがあるから、今のいわゆる教授、准教授、助教、という制度があって。これらを踏まえた大学改革、ということが求められている。
昔は、我々の時代というのは、技術職員、怖くてしようがなかったんです。だって、研究したくて、使ってやりたくたって、おまえたちに使わせたら、すぐ壊されるから駄目とか言われて、使わせてくれないのですよ。
 だから、必死になって、やりますからとか言ってやって、技術職員というのはすごく偉い存在だったのです。今、どうも話を聞いていると、そんな感じになっていないなと。そのぐらいの権限とか、権威とか、研究に対する寄与だとかいうのはあっていいのではないかという気がするのだね。そういうことも踏まえて、人事としてどうあるべきなのか。
 今、任期付きというのが増えちゃっているから、これも解決しない限りは多分難しい問題なので、それらを総合して問題を次に出していかないといけないという気はしますね。
 そういうことで、事務局にそれを渡します。

【渡邉課長】  まだ継続課題ですから。

【佐藤主査】  よろしいですか。

【渡邉課長】  まだいろいろな問題点を今日お聞きしたので、解決策、方策、どうしていくかというのは引き続き先生方のお知恵を頂きながら、我々も考えていきたいということです。

【佐藤主査】  そうですね。まだ第6期に向けて時間がもう少しあるので、非常に有益な問題提起を頂いたので、それも踏まえて皆さんから意見をこの後是非どんどん出してもらって、少し提言できる形に持っていきたいと思います。よろしくお願いします。どうも、今日はありがとうございました。

【佐藤主査】  時間が長くなってしまったので、もう一つの研究機器共通基盤技術の開発というのが、実は第6期に向けて課題としてあって、そこを議論する時間がほとんどなくなっちゃったので、今回だけではなくて、これはこの後もまだ時間はあると思うので、皆さんの方からまた事務局側にいろいろな意見を。さっきの共用の話も含めて意見を、改めて問題提起がいろいろ出てきたので、それも含めて是非出していただければと思います。
 2月4日でしたっけ。

【黒川課長補佐】  はい、次は2月4日です。

【佐藤主査】  2月4日まで余り時間がないのですけれども、それまで、この場で議論できないので、少し皆さんの意見を上げておいてもらえれば、またそれを集約してもらって、出してもらうという形でいいですか。

【黒川課長補佐】  はい。

【佐藤主査】  ということで、開発については今日議論はやめます。


(議題(2)は非公開)


【佐藤主査】  では、今日の会議はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)