参考資料7 平成28年度 戦略目標及び研究開発目標

【戦略目標】

  • ○ 生命科学分野における光操作技術の開発とそれを用いた生命機能メカニズムの解明(2ページ~5ページ)
  • ○ 材料研究をはじめとする最先端研究における計測技術と高度情報処理の融合(6ページ~10ページ)
  • ○ 量子状態の高度制御による新たな物性・情報科学フロンティアの開拓(11ページ~15ページ)
  • ○ 急速に高度化・複雑化が進む人工知能基盤技術を用いて多種膨大な情報の利活用を可能とする統合化技術の創出(16ページ~21ページ)

【研究開発目標】

  • ○ 宿主と微生物叢(そう)間クロストーク・共生の解明と健康・医療への応用(22ページ~26ページ)

平成28年度戦略目標

1. 目標名

生命科学分野における光操作技術の開発とそれを用いた生命機能メカニズムの解明

2. 概要

 近年、光の特性を利用した生命機能の制御技術が飛躍的な進展を遂げている。例えば、光遺伝学は、光感受性タンパク質を遺伝子工学の手法により特定の細胞に発現させ、その機能を特定の波長の光照射によって高い時間精度で操作する技術として脳・神経科学分野で急速に浸透している。本技術は特定の神経活動と行動発現を直接つなげることを可能とし、神経細胞の機能解明の研究パラダイムに革命的な変化をもたらしている。また、最近では脳・神経科学分野だけではなく、酵素活性操作や細胞内シグナル伝達操作、遺伝子発現操作、さらにはゲノム編集操作などの萌芽的な光操作技術も登場し、その研究対象は神経活動から生体の機能全般へと広がりを見せつつある。
 以上を踏まえ、本戦略目標では、新しい光操作技術の開発や既存技術の高度化、関連する操作・計測技術等の開発を異分野技術との融合によって推進することで、現在もなお発展途上にある技術課題を克服し、光操作技術を生命科学研究における汎用基盤技術に発展させることを目指す。また、脳・神経科学分野では、細胞の現象から神経回路、さらには個体レベルの行動に至る過程をシームレスにつなげ、様々な脳の動作原理や疾患・障害に関わる神経回路の解明等を目指す。発生・再生・免疫・代謝等の分野においては、光操作技術の最大の特徴である高い空間・時間精度を活用し、多様な細胞・組織等の生命機能メカニズムの解明を目指す。

3. 達成目標

 本戦略目標では、脳・神経科学分野とともに多様な生命科学分野を対象とし、光操作技術を用いて生命現象の理解を目指す。また、技術開発においては、物理学・工学・化学・情報科学等の異分野とも連携・融合し、光操作技術を「生体の様々な機能を操作する汎用基盤技術」へと発展させることを目指す。具体的には、以下の達成を目指す。

  • (1)生命機能を光によって自在に操作する基盤技術の確立
  • (2)光操作によって表出する機能の計測技術・解析技術等の開発
  • (3)光操作技術を用いた多様な細胞・組織等の生命機能メカニズムの解明

4. 研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 本戦略目標で見いだされた光操作技術が、生体の機能を担う様々な実態を自在に操作する汎用技術として発展し、生命機能メカニズム解明のための強力な基盤技術として確立されることで、生命科学研究におけるイノベーション創出力が向上した社会。
  • 光操作技術を用いて、現在では解明不可能な生命機能メカニズムを明らかにすることによって、生命科学の知的基盤が強化された社会。また、見いだされたシーズをもとにした、難病を含む様々な疾患メカニズムの解明、さらには診断・治療・予防法の創出による医療革新、作物・家畜の効率的生産法の創出による農業・畜産業の持続的発展、人工知能の性能向上による情報処理・通信基盤の高度化等により、人々の健康長寿や産業発展を実現した社会。

5. 具体的な研究例

(1)生命機能を光によって自在に操作する基盤技術の確立

 光操作技術の新規開拓や既存技術の高度化を異分野技術との融合によって推進することで、現在もなお発展途上にある技術課題を克服することを目指す。例えば、生体の深部を非侵襲的に操作するための近赤外光・超音波・磁場等を利用した光操作技術の開発や、対象とする動物種の小動物から霊長類への拡大を可能とする技術開発、これら技術開発の基盤となる光感受性分子の構造解析や光情報変換メカニズムの解明等を行う。また、酵素活性操作や細胞内シグナル伝達操作、遺伝子発現操作、ゲノム編集操作、細胞内小器官の生理機能操作等の近年新たに登場した光操作技術の更なる高度化や新規開拓を進める。

(2)光操作によって表出する機能の計測技術・解析技術等の開発

 光操作技術を用いて生命機能メカニズムを解明する際に必要な観察・解析技術を開発する。例えば、生体の深部の機能を非侵襲的に可視化するための技術開発や、光による操作と同時に光を用いた計測を行う技術開発、ライブイメージング技術開発、複数の種類の観察結果を対応付ける技術開発等を進める。

(3)光操作技術を用いた多様な細胞・組織等の生命機能メカニズムの解明

 光操作技術を用いることで、これまで解明できなかった様々な生命機能メカニズムを明らかにする。例えば、記憶形成や意思決定、本能行動(睡眠・摂食・性行動等)を制御する機構の解明や、発生・再生・免疫・代謝系等のメカニズムの解明、生命現象のモデル構築等を進める。

6. 国内外の研究動向

(国内動向)

 米国において光遺伝学が神経科学分野で創始されたのとほぼ同時期に、我が国からも動物(マウス)での成果が報告されるなど先駆的な業績が上がっている。当初は個々の研究者によって光遺伝学の開発・導入がなされたのみで、研究成果としては米国に遅れを取っていた。しかしながら、関連する研究者による研究会の設立などにより脳・神経科学分野において本技術の普及が進んだこともあり、2015年末までの論文数は米国・ドイツに次ぐ3位と健闘するに至っている。例えば、逆行性ウイルスベクターを用いた特定の神経経路への選択的な遺伝子導入技術の開発や、シナプス光遺伝学の創出といった脳・神経科学分野での顕著な業績のみならず、世界最速で切り替わる「光スイッチタンパク質」に代表される世界最先端の技術の創出や、チャネルロドプシンの構造解析等の基盤的な研究成果など、個別の研究レベルは高く我が国の強みとなっている。一方、それらを利用して生命科学的課題の解明につなげる融合的研究においては、米国にやや遅れを取っており、最近になって記憶のメカニズム解明など国際的評価の高い研究成果が出始めたところである。

(国外動向)

 米国では、2005年に神経細胞での世界で最初の光遺伝学に関する報告がなされ、Nature Methods誌により全自然科学研究分野の中から最もインパクトのある技術として2010年度のMethod of the yearに選出された。光遺伝学の創始後、特に2010年以降は脳・神経科学分野を中心に世界的に関連する論文数が飛躍的に増加している中で、米国が関連論文数の半数以上を占め、現在も世界の研究をリードしている。欧米、特に米国では生命科学・物理学・工学・化学等の異分野の研究者が一体となって取り組み、各々の技術を迅速に融合し重要な生命科学的課題の解決を推進する体制ができている。

7. 検討の経緯

 「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下の通り検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)

 科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)

 「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「脳科学をはじめとする生命科学の革新をめざした光科学研究と光操作技術応用」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)

 注目すべき研究動向「脳科学をはじめとする生命科学の革新をめざした光科学研究と光操作技術応用」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8. 閣議決定文書等における関係記載

「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)

第1部 第1章 2.

 「超スマート社会」において我が国の強みを活かし幅広い分野でのビジネス創出の可能性を秘めるセンサ、ロボット、先端計測、光・量子技術、素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の共通基盤的な技術の先導的推進を図ることも重要である。

9. その他

○既存の研究開発事業では、科学技術振興機構(JST)CREST「新たな光機能や光物性の発現・利活用を基軸とする次世代フォトニクスの基盤技術」(平成27年度発足)やさきがけ「光の極限制御・積極利用と新分野開拓」(平成27年度発足)において、多様な分野における光利用や光科学技術開発等を目指した研究が行われている。また、日本医療研究開発機構(AMED)「革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト」(平成26年度~平成35年度)の一部において、既存の光遺伝学によるマーモセットの大脳皮質高次機能回路操作等にターゲットを限定した研究が行われている。本戦略目標の下で行われる研究との連携により、成果創出の加速が期待される。

平成28年度戦略目標

1. 目標名

 材料研究をはじめとする最先端研究における計測技術と高度情報処理の融合

2. 概要

 放射光施設等の大型の研究施設から、汎用の計測機器に至るまで、計測技術は材料科学やライフサイエンス等様々な研究分野に浸透し、有効に活用されているが、計測データから有意な情報を読み解く際に研究者の経験に頼る部分もまだまだ多い。一方、情報科学や数理科学の分野においては、データから最大限の情報を読み解く手法の研究が進んできている。
 そこで、本戦略目標では、第5期科学技術基本計画で掲げられた「超スマート社会」(Society 5.0)における一つの取組として、日本が強みを有する計測技術を近年急速に進展している情報科学・数理科学等と融合し、新たな「情報計測」分野を創出することを目指す。X線、中性子を用いた量子ビーム施設や、電子顕微鏡、NMR等の汎用機器を用いた様々な計測技術と、データ同化、スパースモデリング、画像解析、信号解析等の情報科学・数理科学等の双方向(Bi-directional)の解析により、見えない物理量を計る、見えなかった変化を見る、見つけられなかった変化を見つけること等を実現する情報計測技術を構築する。これにより、物質・材料、資源・エネルギー、医療・創薬等、科学技術全般の新たな科学上の発見を促す。

3. 達成目標

 本戦略目標では、材料科学・ライフサイエンス等の分野において、計測・解析技術の深化により新たな科学の開拓が強く期待される研究課題について、計測対象の特徴量解析技術を構築するとともに、それらを新たな計測・解析技術へと展開することを目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。

(1)計測対象の特徴量解析技術の構築

 例えば、シグナル対ノイズ比の低いスペクトルや画像等からの特徴量抽出技術やより少ないデータから有用な情報を引き出す情報再構成技術、異種情報の統合解析技術を構築する。

(2)(1)を活用した新たな計測・解析技術の構築

4. 研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 科学技術全般の研究開発サイクルが加速されている社会
  • 計測・検出したデータから最大限の情報を読み解く解析アプリケーションが開発され、材料科学やライフサイエンス等の各分野が飛躍的に進展し、研究成果のより早い社会還元が実現されている社会
  • 計測、情報・数理、材料科学・ライフサイエンス等の融合領域の研究を推進する研究者が育成・発掘されている社会

5. 具体的な研究例

(1)計測対象の特徴量解析技術の構築

 シグナル対ノイズ比の低いスペクトルや画像等からの特徴量抽出技術としては、例えば電子顕微鏡像から特徴量を定量解析する技術や、実用条件下での触媒・電池等の材料表面において、反応状態の超短時間現象を動的に観察する手法、生理活性が発現している状態において、生体分子と基質・シグナル分子の結合等を解析するナノスケールでの動態解析手法を構築する。
 より少ないデータからの情報再構成技術としては、例えば放射光の高輝度化に伴う放射線損壊を起こさず、より少ない光子数での計測を可能とするための解析手法や、脳血流のリアルタイム解析を可能とする従来の10分の1以下のデータ量から血管像を再構成するための解析手法を構築する。
 異種情報の統合解析技術としては、例えば生体分子複合体の立体構造解析等において、複数の異なる解析手段から得られたデータを統合し複合的に解析する手法を構築する。

(2)(1)を活用した計測手法の構築

 計測対象の特徴量解析技術を活用し、最適化された計測条件をフィードバックする計測手法や計測限界を定量的に評価できる枠組みの構築や、汎用計測機器を用いた従来の大型計測施設並みの高度計測技術の開発を行う。

6. 国内外の研究動向

(国内動向)

 先端計測については、大型施設(SPring-8, J-PARC等)を用いた研究による成果が着実に上がっているが、各研究者あたりの大型研究施設のリソースは限られており、また、これらのデータから有意な情報を読み解く際には研究者の経験に頼るところが多い。一方で、科学研究費助成事業新学術領域研究「スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成」(平成25年度~平成29年度)では、生物学と地学を対象に、情報科学が、計測結果の解析に使えることを実証する等、近年急速に進展している。

(国外動向)

 データ科学や情報科学の他分野への有効活用という観点から関連する国外動向としては、最先端の情報科学的手法を物質・材料研究へ融合させ、開発期間を大幅に短縮する試みとして、アメリカの「マテリアルズゲノムイニシアティブ」(MGI:年間予算約100億円)や、MGIを支えるコンソーシアムとして国立標準技術研究所(NIST)が資金提供している「Center for Hierarchical Materials Design」が挙げられる。ヨーロッパ、中国でも同様の検討が始められている。

7. 検討の経緯

 「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下の通り検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)

 科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)

 「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「材料研究をはじめとする最先端研究における計測技術と高度情報処理の融合」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)

 注目すべき研究動向「材料研究をはじめとする最先端研究における計測技術と高度情報処理の融合」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8. 閣議決定文書等における関係記載

「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)

第2部 第1章 2.

「超スマート社会」において我が国の強みを活かし幅広い分野でのビジネス創出の可能性を秘めるセンサ、ロボット、先端計測、光・量子技術、素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の共通基盤的な技術の先導的推進を図ることも重要である。

第2部 第2章 4.3)2.

ニーズの先取りを可能とするビッグデータ収集・解析システムを開発することも重要であり、最終的にこれらのシステムを統合することで、(中略)材料開発期間の短縮による製品開発の加速、さらには新市場の創出を通して経済的な効果が生み出される。

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)

第2章(3)2.2)

新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する技術として、国は、特に以下の基盤技術について強化を図る。

(中略)

  • 革新的な構造材料や新機能材料など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながる「素材・ナノテクノロジー」
  • 革新的な計測技術、情報・エネルギー伝達技術、加工技術など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながる「光・量子技術」

9. その他

○大型施設等を用いた計測の高度化としては「光・量子融合連携研究開発プログラム」(平成25年度~平成29年度)や、「X線自由電子レーザー施設重点戦略課題推進事業」(平成24年度~平成28年度)が行われているが、データ解析に特化したプロジェクトではなく、情報科学との連携については十分ではない。

○情報科学の近年の進展を他の分野へ展開する研究は、科学研究費助成事業の基盤研究や、地学・生物学を対象にした科学研究費助成事業新学術領域研究「スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成」(平成25年度~平成29年度)において実施されている(新学術領域研究「スパースモデリングの深化と高次元データ駆動科学の創成」では、物質・材料研究は対象とされていない)。また、科学研究費助成事業新学術領域研究「ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開」(平成25年度~平成29年度)の一部ではデータ解析手法を材料研究へ展開する試みが実施されており、情報科学を物質・材料研究へ展開する機運は高まりつつある。

○大量のデータを活用した物質・材料研究の新機軸として、マテリアルズインフォマティクスが挙げられる。国内では、科学技術振興機構(JST)さきがけ「理論・実験・計算科学とデータ科学が連携・融合した先進的マテリアルズインフォマティクスのための基盤技術の構築」(平成27年度発足)や、「イノベーションハブ構築支援事業」(平成27年度~平成31年度)において「情報統合型 物質・材料開発イニシアティブ(MI2I)」が開始されており、データ活用の機運が高まっている。本戦略目標により、情報科学と物質・材料研究が融合してデータ取得の手法が高度化すれば、世界をリードする新しい研究開発のスキーム・基盤技術の構築が可能となる。

平成28年度戦略目標

1. 目標名

量子状態の高度制御による新たな物性・情報科学フロンティアの開拓

2. 概要

 半導体やレーザーなど、量子論を応用した科学技術の進展はこれまでも産業や社会に大きなインパクトを与えてきたが、1990年代以降、量子情報処理を可能とする物理素子が開発され、先端レーザー等による量子状態の制御技術も磨かれてきた中で、量子論を包括的かつ高度に応用しつつ産業応用までを視野に入れた新たな技術体系の発展の兆しが見られるようになった。近年、欧米政府や世界的企業が量子科学技術への投資を拡大している中、我が国においても、最先端の量子研究に光科学技術、物性物理、ナノテクノロジー等の強みを糾合させ、中長期的な視座から量子科学のフロンティア開拓を先導するとともに、超スマート社会の実現に向け、新たな産業や技術基盤の創出の核となるコア量子技術を世界に先駆けて生み出していくことが重要である。
 このため、本戦略目標では、技術的フィージビリティや国際優位性、先進性等の観点を総合的に勘案した上で研究領域・方向性を特定し、その研究開発を重点的に進めることにより、新たな量子物性の開拓や量子情報システムの開発等を通じて幅広いイノベーションの源泉(新技術シーズ)を生み出すとともに、今後大きく変革する社会像の基盤となる量子技術・システム実装を世界に先駆けて実現することを目指す。

3. 達成目標

 本戦略目標では、量子の孤立系から多体系、巨視的な凝縮体に至るまで、多彩な量子状態の高度制御を実現することにより、未知の物理現象や物質機能・物性の探索、新たな概念に基づく情報科学の開拓及び新技術シーズ創出を図ることを目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。

  • (1)量子情報処理・シミュレーションの高度化により、複雑な量子系の実験的な解析・描像解明に向けた基盤を構築するとともに、従来手法では不可能な大規模・省エネ情報処理に係る要素技術を実現する。
  • (2)多彩な物理・工学系をつなぐ基盤的な量子技術・システムの開発により、既存技術分野(フォトニクス、エレクトロニクス等)の発展的融合・ブレークスルーを促す。
  • (3)巨視的な量子効果や先端量子光学等の応用により、計測・解析技術を飛躍的に向上させ、従来精度・感度の限界を超えたセンシング・イメージング技術の革新につなげる。

4. 研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 通信秘匿性の格段の高度化やビッグデータの超高速処理、超省エネ・高速・大規模情報処理が可能となるとともに環境負荷の低減が進展した超サイバー社会、及びこれらの情報処理・通信基盤に基づき物理空間とサイバー空間とが高次に結合された超スマート社会。
  • 環境エネルギー、安全・安心、健康・医療等の地球規模の社会的課題の解決・緩和、知識集約度の高い装置・部材・技術産業等を源泉としたグローバル・バリュー・チェーンにおける優位性の確保、人々の多様なニーズに応える新たな価値を生み出すシステムの形成等を通じて質の高い生活の実現された社会。
  • 物質・生命理解を含めた知識体系の革新により、次々世代の価値創造や安全・安心確保のコアとなる科学基盤・技術基盤が確保された社会。

5. 具体的な研究例

(1)超電導回路、単一スピン、半導体量子ドットなど多彩な量子ビット技術の高度化による量子コンピューティング要素技術の開発

 古典的コンピュータの計算性能を凌駕する量子計算手法のデバイス実装に向けては、欧米をはじめ各国の国家プロジェクトにおいて、量子情報の最小単位である様々な量子ビット及びその制御技術の開発やそれらのポートフォリオの戦略的な開拓が進められている。本分野において、我が国の光科学技術や量子基盤技術の強みを活かした研究開発を進めることで、世界に先駆けた量子暗号通信、量子コンピューティング等の要素技術の開発及びシステム実装を加速する。例えば、長距離で秘匿性の高い広帯域通信方式を確立するためには、多数ビット間での制御ゲート動作検証に加え、十分なコヒーレント時間の確保が重要であり、その実現に向けた特色ある量子ビットの開発及び組合せや量子コヒーレント制御技術の高度化等を行う。

(2)多彩な量子自由度を利用した新たな光・電子制御デバイスや超高感度計測技術の開発

 量子ドットにおける単一電子スピンのコヒーレント制御など、個々のスピン状態の制御技術の高度化・実用化(新機能材料開発等)や、オプト・メカニクスの要素技術開発、極低温原子気体やイオン、固体等の多彩な量子多体系の制御技術の組合せによる量子シミュレーション技術の高度化等に向けた研究開発を進める。これにより、力学系と量子光学・スピン系との融合を実現し、既存技術では不可能な微弱な相互作用の制御や従来精度の限界を超えた精密測定など新たな量子基盤技術の獲得を目指す。あわせて、量子多体系の電磁応答に関する第一原理計算の大規模化・高度化から期待される新原理に基づく超高感度センサー等の新技術創出に向けた基礎研究を推進する。

(3)巨視的な量子状態の精密制御による超高精度センサー等の開発

 分子やクラスター等の量子多体系における極低温状態の制御技術の高度化や、巨視的な量子波動性を利用した高精度な量子センサー等の開発を推進する。
 具体的には、ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)の人工的操作・制御技術の高度化により最先端の原子物理や量子光学、超伝導や超流動等の量子論特有の現象に関する本質的な理解深化を促すとともに、高感度かつ高精度なBEC原子干渉計(加速度センサー、重力勾配計、ナビゲーション)など量子波の特長を活かした計測手段の開発・利活用等に取り組む。また、従来の補償光学応用では限界のある生体等の複雑構造系に対しても、量子もつれの干渉効果を利用することにより分散の影響の極めて少ない高分解能計測が期待できるため、その実用化・高度化に向けた技術開発を進める。

6. 国内外の研究動向

(国内動向)

 最先端研究開発支援プログラム(FIRST)「量子情報処理プロジェクト」(平成21年度~平成25年度)、科学研究費助成事業新学術領域研究「量子サイバネティクス」(平成21年度~平成25年度)などで、超伝導量子ビット、電子スピンを用いた量子ビット、及びこれらのハイブリッド量子系の研究が行われ、これらの成果を発展させた革新的研究開発推進プログラム (ImPACT)「量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現」(平成26年度~平成30年度)では脳型情報処理を量子コンピュータに取り込んだ量子人工脳の開発が進められている。

(国外動向)

 英国では2014年から量子科学研究の5年プロジェクト(予算:約2.7億英ポンド)が始まっており、ハブとなる4拠点において量子コンピューティング、量子センサー等の研究開発拠点形成プロジェクトが始動するなど具体的な強化策がとられている。量子コンピューティング関係では、カナダのベンチャー企業であるD-Wave社が開発した、世界初の市販量子コンピュータとされる「D-Wave 2」を米国のグーグル社やNASAが購入(2014年)するなど、産業界を巻き込んだ研究開発が進められている。また、D-Wave社の採用した量子アニーリング手法に基づくアナログ量子コンピュータに加え、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)・グーグル社や欧州では超伝導素子を用いたデジタル量子コンピュータ(論理ゲート方式)の開発も活発に進められている。オランダでは、デジタル量子コンピュータに特化した研究機関「QuTech」において10年間の量子科学研究イニシアティブ(予算:約1.4億ユーロ)を2015年に開始しており、マイクロソフト社やインテル社も支援・共同研究を行うなど量子コンピュータ実現に向けた研究開発を加速させている。
 マクロ量子制御に基づく時間標準の研究は、これまで日本と米国がリードしてきたが、近年では欧州でも活発化しているほか、原子イオンに関連した物性研究では中国も追い上げを見せており、本技術を発展させた量子シミュレーションの研究が世界中で開始されている。また、従来の古典光によっては実現不可能な感度・分解能を有する量子もつれに基づく計測・イメージング技術や物質制御技術が注目されているほか、量子科学に基づく計測技術に関して、従来は理想的な完全測定を目指した研究が進められてきたのに対し、数学的な推定処理を前提とした不完全測定・弱測定など将来的な実用性を考慮した研究へのシフトが見られる。

7. 検討の経緯

 「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下の通り検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)

 科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)

 「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「量子状態の高度制御による新たな物性物理・情報科学フロンティアの開拓」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)

 注目すべき研究動向「量子状態の高度制御による新たな物性物理・情報科学フロンティアの開拓」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8. 閣議決定文書等における関係記載

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)

第2章(3)2.2)

個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する技術として、国は、特に以下の基盤技術について強化を図る。

(中略)

  • 革新的な計測技術、情報・エネルギー伝達技術、加工技術など、様々なコンポーネントの高度化によりシステムの差別化につながる「光・量子技術」

「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)

第1部 第1章 2.

「超スマート社会」において我が国の強みを活かし幅広い分野でのビジネス創出の可能性を秘めるセンサ、ロボット、先端計測、光・量子技術、素材、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の共通基盤的な技術の先導的推進を図ることも重要である。

9. その他

○平成27年度の戦略目標「新たな光機能や光物性の発現・利活用による次世代フォトニクスの開拓」では、新たな光機能や光物性の解明・利活用・制御等を通じて従来の光科学技術を横断的かつ重層的に集積・発展させることにより、将来の社会・産業ニーズに応える新たなフォトニクス分野の進展を加速させるとともに、新技術シーズの創出を支える基礎的な原理の解明にも併せて取り組むことで、新たな光機能物質の人工生成や革新的な光通信技術の開発・活用、微細構造の高時空間分解可視化、先端数理科学との融合による複合光基盤技術・システムの創出等を目指している。ここで創出された優れた研究シーズを、本戦略目標を通じて相乗的に伸ばしていくことで、最先端の光・量子科学技術の実用化を加速していくことが重要である。

平成28年度戦略目標

1. 目標名

 急速に高度化・複雑化が進む人工知能基盤技術を用いて多種膨大な情報の利活用を可能とする統合化技術の創出

2. 概要

 情報技術が世界的に発展し、50年来の大きな技術的ブレークスルーと言われるディープラーニングに代表される人工知能技術の進展に対する関心が高まり、各分野における活用も急速に進みつつある。文部科学省では「AIP:人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」が実施され、世界的に優れた競争力を持つ研究者の力を結集させるための、革新的人工知能技術を中核とした統合研究開発拠点が理化学研究所に新たに設置されており、一体的な事業実施が、本戦略目標の下でなされることとなっている。
 「第5期科学技術基本計画(平成28年1月閣議決定)」においても、世界に先駆けた「超スマート社会」の構築が重要な課題とされており、コホートデータ等の医療・健康関連のデータや材料・物性に関するデータ、都市のインフラや地球環境に関するデータ等、多種多様なビッグデータが社会の様々な場面で生み出され集積されつつある。
 このような、実社会で用いられているデータについて多様な状況や要求に応じ、知的・統合的に解析・処理・制御を行う必要があるが、現時点ではそのための基盤技術が確立できていない。また、将来において社会がこれらの技術基盤を最大限活用できるようにするために、将来的な拡大を踏まえたセキュアな情報技術についても早急に構築・実装される必要がある。
 このため、本戦略目標では、膨大なデータを知的・統合的かつセキュアに収集・処理・制御するための基盤技術を確立し、その成果を組み合わせることにより、膨大な情報の利活用が更に高度かつ広範に浸透した将来社会を念頭に、モビリティ、介護・ヘルスケア、防災・減災、ロボティクス等、実社会の様々な分野に適用可能な、既存サービスのさらなる効率化や新サービスの創出等に資する技術の確立を目指す。

3. 達成目標

 本戦略目標では、世界的に発展しつつある革新的な人工知能技術の成果や国内で研究開発が進展している新たなアルゴリズム等を更に発展させ、社会の様々な分野における多種・膨大な情報をもとに状況に応じ、知的で統合的な解析・処理・制御を行うことのできる情報基盤技術を確立することを目的とする。具体的には、以下の達成を目指す。

  • (1)社会・経済等に貢献するため、多種・膨大な情報を組み合わせ解析する技術開発
  • (2)多種・膨大な情報に基づき、状況に応じ最適化されるシステムのための技術開発
  • (3)多種多様な要素で構成される複雑なシステムに適用可能なセキュリティ技術開発

4. 研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 今後、量・種類ともに爆発的に増大する情報を最大限に活用するための革新的人工知能技術が広く利用され、様々な分野において将来にわたる効果的な情報活用が実現された社会。
  • 急激に進化する情報技術・環境を有効に活用し、ネットワークにつながった人々に最適なサービス等を提供する、一人一人に優しい社会。(例:平常時には、混雑のない都市交通や、地域・個人ごとのニーズにきめ細かく応える介護・ヘルスケアサービスを提供するが、一方で災害時には発災直後の情報が入らない混乱期を短縮する等の目的で、平常時と異なるデータを結びつけたサービスを迅速に構築・提供できる社会。)
  • 産業界で分野横断的に活用される情報基盤技術が確立され、その成果を通じて交通・物流や人々の暮らしに関わるシステムが業種等の垣根を越えて最適化されることにより、社会コストの大幅な削減や、これまでにないビジネスやサービスの創出が可能となる社会。
  • あらゆるモノがネットワークに接続される多様な状況において、セキュアな情報環境が適切に埋め込まれることにより、高度で多彩なサービスをストレスなく享受できる社会。

5. 具体的な研究例

(1)社会・経済等に貢献するため、多種・膨大な情報を組み合わせ解析する技術開発

 新たな革新的人工知能基盤技術等を活用して、多様な解析情報を自律的に整理し組み合わせることで、絶えず変化する環境やニーズに応じた適切なサービスの構築や提供につながる技術の研究開発、複数の要素技術を統合的に取り扱うための研究開発等を推進する。
 具体例としては、カプセル内視鏡やCTなどから取得される膨大な医療画像を診断において高速処理する技術や電子カルテの高度解析による投薬や治療計画最適化をサポートする技術、及びこれらの技術から得られる解析情報を整理し組み合わせることにより病気の予兆を発見する技術等の研究開発や、個別の機能・サービスを統合するために必要なソフトウェア技術、これらの技術に基づくサービスプラットフォーム構築技術の研究開発等を推進する。

(2)多種・膨大な情報に基づき、状況に応じ最適化されるシステムのための技術開発

 個別の状況や環境に応じ、知的かつ自律的に最適なデータ取得を可能にする技術や、多様な機器等が存在する中できめ細かなニーズに応じた配置・構成を可能にする制御技術の開発、最先端の機械学習アルゴリズムにより多種・大容量の情報の超高速な解析を行い最適化した制御を行うための技術、状況・環境等の変化に応じてオンデマンドで最適な処理を実現するための技術の研究開発等を行う。
 具体例としては、自動運転において車載カメラやミリ波センサ等から連続して生み出される膨大な情報から安全走行に必要な情報のみを高度な知的情報処理を行い取捨選択しストリーム処理にかかる計算負荷を大幅に低減するデータ処理技術、災害発生時に現場の情報を迅速に把握するため平常時は他の目的に利用している街頭のカメラ・モバイル機器・医療用機器・自動車等から必要なデータを取得できるネットワークを状況に応じ自律的に構成する技術、多様なデータの意味を高度に理解してデータの統合分析を可能とするオントロジー等を多様に組み合わせた異種データ統合技術、時系列データをリアルタイムで分析するための各種の機械学習の活用技術、介護等で利用されるシステムにおいて被介護者の生体情報や環境データ等連続的に大量に発生する時系列データの処理をシステム本体周辺やクラウドサーバで分散しシステムの安定性やデータ処理遅延抑制等を実現する技術等の研究開発を推進する。

(3)多種多様な要素で構成される複雑なシステムに適用可能なセキュリティ技術開発

 多様な機器で実現可能な高機能かつ軽量な暗号化技術や、複雑多様な状況に対応するセキュリティ技術の研究開発等を行う。
 具体例としては、革新的人工知能技術等を活用した予測型セキュリティ技術や、高機能な軽量暗号化アルゴリズムの開発・実装、多種膨大な情報を扱うネットワークシステム等に実装可能なセキュリティ・バイ・デザイン、来歴等のエビデンス情報(プロヴェナンス)によるデータ信頼性検証技術等の研究開発を推進する。

6. 国内外の研究動向

(国内動向)

 平成26年度戦略目標「人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発」、平成25年度戦略目標「分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化」等の下で、デバイス・ハードウェアから人工知能(知的情報処理)、ビッグデータ(基盤・応用)といったミドルウェアに係る研究開発が進められている。また、コンピュータとモノを対象としてサービス提供まで見据えた研究開発が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「IT融合による新社会システムの開発・実証プロジェクト」(平成24年度~平成25年度)等において実施されている。これらに加え、状況により変容する多種多様なデータについて、コンピュータとモノ、更にヒトまで対象として、オンデマンドでサービスを提供可能なプラットフォームやその社会実装に向けた研究開発が期待されている。
 セキュリティ関連では、現実の脅威への対応を主眼として、ネットワークセキュリティに関する研究開発が情報通信研究機構(NICT)等において、クラウドでの秘匿計算等の研究開発が産業技術総合研究所(AIST)等において推進されている。今後の情報社会の特徴でもある、仕様や運用が統一的に管理されないシステムにおけるセキュリティについては取り組みの初期的段階であり、アカデミア、企業からなる「重要生活機器連携セキュリティ協議会(CCDS)」が2014年に設立され、セキュリティの研究開発・人材育成が開始される等、我が国においても機運が盛り上がってきている。

(国外動向)

 米国においては、米国国立科学財団(NSF)が2006年から多種・大容量のデータ処理等関連技術の基盤となる研究開発を継続的に支援しており、2015年からの新たなプログラムでは、基礎研究(3年)、学際研究(3~4年)、大規模研究(4~5年)の募集が数十万~100万ドル規模で実施されている。民間企業においても、GE社が「インダストリアル・インターネット」構想を掲げ、産業用機器のデータ集約、分析による多様なサービスの展開を推進している。欧州では、「Horizon 2020」(2012年1月~)において2016、2017年を対象としたプログラムとして関連研究開発に約1億3,900万ユーロが配分されるほか、特にドイツでは製造業の産業競争力強化を目指して「Industrie 4.0」が推進され、関連したシステム研究開発等を実施している。
 セキュリティ関連では、EUにおいてはHorizon 2020で「Secure societies」としてセキュリティ関連の課題が挙げられ、総額約17億ユーロの研究予算を計上している。米国ではセキュリティ研究開発予算が大幅に増額されている(2014年度には8億ドル規模)。

7. 検討の経緯

 「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下の通り検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)

 科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)

 「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「人工知能・ビッグデータ・IoTの融合による将来の社会システム技術の構築」及び「IoT時代に向けたセキュアなサイバー社会を実現するための研究開発」を特定した。

(ワークショップの開催及び戦略目標の作成)

 注目すべき研究動向「人工知能・ビッグデータ・IoTの融合による将来の社会システム技術の構築」及び「IoT時代に向けたセキュアなサイバー社会を実現するための研究開発」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、戦略目標を作成した。

8. 閣議決定文書等における関係記載

 「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」(平成27年6月30日閣議決定)

第二 一.1.(3)v)4.

人工知能や情報処理技術、高性能デバイス、ネットワーク技術、電波利用技術等については、世界最先端の技術・知見を我が国に集積するためのコアテクノロジーの確立及び社会実装を推進する。また、同様にIoT・ビッグデータ・人工知能に関し、分野を超えて融合・活用する次世代プラットフォームの整備に必要となる研究開発や制度整備改革等を行う

「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)

第1部 第1章 2.

「システム化」が進むとともに、より大量なデータをリアルタイムで取得し、高度かつ大規模なデータ処理等を行うことが求められる。このため、将来を見据え、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ解析、数理科学、計算科学技術、AI(Artificial Intelligence)、サイバーセキュリティ等の先導的な基盤技術の強化が必須である。

第2部 第2章

統合的なシステムを支えるIoT、ビッグデータ解析、AI、サイバーセキュリティ等の基盤技術について、各政策課題の解決に横断的に活用できる観点も踏まえて、研究開発を推進する。

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)

第2章(2)2.

複数のシステム間の連携協調を可能とし、現在では想定されないような新しいサービスも含め、様々なサービスに活用できる共通のプラットフォームを段階的に構築していく。(中略)システム全体の企画・設計段階からセキュリティの確保を盛り込むセキュリティ・バイ・デザインの考え方に基づき推進することが必要である。(中略)産学官・関係府省連携の下で、超スマート社会の実現に向けてIoTを有効活用した共通のプラットフォーム(以下「超スマート社会サービスプラットフォーム」という。)の構築に必要となる取組を推進する。

第2章(3)2. 1)

特に以下の基盤技術について速やかな強化を図る。

  • 設計から廃棄までのライフサイクルが長いといったIoTの特徴も踏まえた、安全な情報通信を支える「サイバーセキュリティ技術」
  • 非構造データを含む多種多様で大規模なデータから知識・価値を導出する「ビッグデータ解析技術」
  • IoTやビッグデータ解析、高度なコミュニケーションを支える「AI技術」
  • 大規模データの高速・リアルタイム処理を低消費電力で実現するための「デバイス技術」
  • 大規模化するデータを大容量・高速で流通するための「ネットワーク技術」
  • IoTの高度化に必要となる現場システムでのリアルタイム処理の高速化や多様化を実現する「エッジコンピューティング」

また、これらの基盤技術を支える横断的な科学技術として数理科学が挙げられ、各技術の研究開発との連携強化や人材育成の強化に留意しつつ、その振興を図る。

9. その他

○現在、情報分野においては平成26年度戦略目標「人間と機械の創造的協働を実現する知的情報処理技術の開発」、平成25年度戦略目標「分野を超えたビッグデータ利活用により新たな知識や洞察を得るための革新的な情報技術及びそれらを支える数理的手法の創出・高度化・体系化」が設定されているが、これらの研究開発とも連携しつつ、異種データをオンデマンドでリアルタイムに収集・処理し、多様な場面で安全に活用する等、技術的特性を踏まえて社会における活用を具体的に見通した研究開発を実施することが重要である。

○「社会システム・サービス最適化のためのサイバーフィジカルIT統合基盤の研究」(平成24年度より開始)においては、ビル、大学キャンパス、自治体といった規模を対象として実社会とサイバー空間とを有機的に連携させフィードバックを行う「ソーシャルCPS」を研究対象としている。同事業は、人工知能、IoT、セキュリティ等の研究開発を統合的に推進する「AIP: 人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」(平成28年度より開始)と一体的に実施される予定であり、本戦略目標下で実施される研究開発においても、関連分野を含めた密接な一体的推進による研究開発の加速が期待される。

○本戦略目標下における情報セキュリティ分野に関する研究では、将来の実装を見越し、システム全体の設計・構築方法やソフトウェア工学など学術的な基礎にまで踏み込んだ実証的な基礎研究の実施が期待される。研究の推進に当たっては、情報通信や情報処理分野における現実の脅威に対応することを主目的とした研究開発等とも連携することが重要である。新たなセキュリティ技術等を各産業ドメインに閉じずに、多種多様な機器が接続する社会において横展開する上では、アカデミアが重要な役割を担うことが期待される。

平成28年度研究開発目標

1. 目標名

 宿主と微生物叢(そう)間クロストーク・共生の解明と健康・医療への応用

2. 概要

 ヒトをはじめとする動物の皮膚や消化管等には、宿主の体を構成する細胞よりもはるかに多い数の細菌や真菌、寄生虫、ウイルスといった微生物が集合体となって生息しており、総称して微生物叢(マイクロバイオーム)と呼ばれる。近年、多くの疾患、病態(肥満症等)で微生物叢が健常者と異なっており、疾患の発症や進行と関連する可能性が示されるなど、微生物叢に着目した研究が世界的な盛り上がりを見せている。更には、難治性下痢症である偽膜性腸炎をはじめ、様々な疾患において糞便微生物叢移植の臨床試験が実施されるなど、大きく注目されている。微生物叢に着目した革新的な健康・医療技術の創出や、食品、化粧品、畜産等の新たな産業への波及効果が期待されており、今後、宿主と微生物叢の相互作用(クロストーク)や共生に関するメカニズムを解明していくことが急務である。
 本研究開発目標では、免疫研究、微生物培養技術、代謝物解析研究、モデル動物技術、小腸内視鏡による腸内細菌採取技術等、我が国が誇る研究・技術分野を融合し、研究を戦略的に展開することで、微生物叢を制御する手法を確立し、健康寿命の延伸や医療費の最適化等の社会的価値へとつなげる。

3. 達成目標

 本研究開発目標では、微生物叢という新たなフロンティアに切り込むことで、生命や疾患の理解の深化、そして従来とは異なる新しいコンセプトに基づく健康・医療技術の創出などを目指す。具体的には、以下の達成を目指す。

  • (1)微生物叢の解析技術の高度化
  • (2)宿主―微生物叢間の相互作用、疾患発症機序の解明
  • (3)ヒト微生物叢に着目した、予防・診断・治療技術の創出

4. 研究推進の際に見据えるべき将来の社会像

3.「達成目標」に記載した事項の達成を通じ、以下に挙げるような社会の実現に貢献する。

  • 宿主と微生物叢との関係が解明され制御が可能となることにより、革新的な予防・診断・治療技術が創出され、健康寿命の延伸が実現するとともに、医療制度の持続性が確保されている社会。
  • 微生物叢と健康長寿等との関連が明らかになることで、健康増進機能を有する食品の開発や、食品の高付加価値化等に応用され、新たな産業が創出される社会。

5. 具体的な研究例

(1)微生物叢の解析技術の高度化

 分離・選別が困難な微生物を培養可能とする技術や、同時に多数の微生物を解析可能とするハイスループット化技術等、更なる培養技術の高度化を行う。また、微生物叢の産生する膨大な種類の生体分子から、宿主の健康状態や疾患発症と関係する機能性代謝産物を選別するための、メタボローム解析技術の更なる高度化と網羅的・体系的な解析を行う。更には、微生物叢のより高い精度での解析、大規模データの短時間での解析を可能とする微生物ゲノム解析技術の高度化及び微生物叢転写産物の網羅的解析(メタトランスクリプトーム解析)を推進する。得られたデータを統合し、人工知能(AI)等も活用しながらシステムバイオロジー研究を推進し、微生物叢の極めて複雑な代謝パスウェイの解明等を行う。

(2)宿主―微生物叢間の相互作用、疾患発症機序の解明

 全身の様々な部位に影響を与えると想定される生体分子をメタボローム解析で同定し、受容体、代謝経路を明らかにするなど、生体上皮における粘膜免疫システムと特定の微生物(群)あるいはその代謝産物等の複雑な相互作用を解明する。また、従来は単独の菌と宿主相互作用に関する研究が中心であったが、微生物叢と宿主との関係を見る研究を加速させる。更には、生活環境の変化が微生物叢の変化へとつながり、それが徐々に生体へ影響を与える過程を明らかにするなど、疾患発症機序の解明も推進する。

(3)ヒト微生物叢に着目した、予防・診断・治療技術の創出

 上記で明らかになった知見も生かしながら、ヒト微生物叢制御に着目した健康・医療技術を創出する。具体的には、健常者・患者における微生物叢プロファイルや微生物代謝産物を解析することによる発症予測バイオマーカー等の新規診断法の開発や、医薬品・ワクチン等の有効性・副作用と微生物叢との関連を解明することによる医療の最適化を進める。更に、微生物叢の制御や宿主状態の改善を可能とする因子を解明することにより、微生物カクテル、医薬品、健康増進機能を有する食品等の治療・予防医療等を開発する。

6. 国内外の研究動向

(国内動向)

 微生物叢研究は1960年代に世界的な盛り上がりを見せ、いわゆる腸内細菌叢の概念が構築された。なかでも我が国の腸内細菌培養技術の開発や分類体系の確立などの先駆的な成果は世界的にも高く評価されている。その後も、我が国においては微生物培養技術、モデル動物技術、発酵生産・プロバイオティクス開発などの地道な研究が脈々と続いてきており、産業界でも乳製品メーカーを中心に乳酸菌やビフィズス菌、乳製品の摂取による整腸効果などの研究が長年にわたって実施されている。微生物叢の網羅的ゲノム解析が可能となった当初より、我が国では個々の研究者が散発的に研究を進めているが、免疫研究、微生物培養技術、代謝物解析研究、モデル動物技術など我が国の優れた研究・技術のコラボレーションにより世界トップレベルの研究事例が近年いくつか生み出されている。我が国の基礎研究成果を元に米国で設立されたベンチャー企業が、世界で最も注目される微生物叢関連ベンチャーの1つとなるなどの事例も認められる。微生物叢研究のための基盤解析技術の開発やその応用展開も進みつつある。

(国外動向)

 2005年の次世代シークエンサーの登場、それに伴う微生物叢の網羅的ゲノム解析の発展、普及によって、近年の論文数は急増している。米国は、国家プロジェクトとして微生物叢の解析を推し進めており、2008年より開始した「Human Microbiome Project」は、第一期に約210億円が投資され、健常者の微生物叢解析情報、3000種類の微生物ゲノム情報などの基盤的な情報を整備してきた。2013年からは第二期に入っており、総額約30億円の投資の下、第一期で構築した基盤を活用した腸内細菌関連の疾患研究が行われている。また、欧州及び中国は「Metagenomics of the Human Intestinal Tract(MetaHIT)」を2008年に開始しており、約20億円の投資で健常者の微生物叢解析が行われてきた。こちらも2013年から後続のプロジェクトである「MetaGenoPoliS(MGPS))へと移行しており、米国同様に先行するプロジェクトで構築された基盤を活用した腸内細菌関連の疾患及び食品関係への展開も意識した研究を進めている。一方、健常者の便からの微生物叢を含む抽出液を患者の腸管に投与する糞便微生物叢移植の臨床応用が始まっており、偽膜性腸炎やメタボリックシンドロームではランダム化比較試験での有用性が示されている。より安全性、有効性、社会受容性の高い技術とするため、有効な微生物集団を絞り込む研究が進められており、それらについて複数のベンチャーが設立され、疾患への有効性を示す微生物を混合した微生物カクテルの臨床試験が米国で推進され、巨大製薬企業によるベンチャーの買収も始まっている。微生物叢の代謝産物あるいはその受容体を創薬ターゲットとする方向性も見られ始めている。

7. 検討の経緯

「戦略目標等策定指針」(平成27年6月8日科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会決定)に基づき、以下の通り検討を行った。

(科学研究費助成事業データベース等を用いた科学計量学的手法による国内外の研究動向に関する分析資料の作成)

 科学研究費助成事業データベース等を用いて、研究論文の共引用関係又は直接引用関係の分析等の科学計量学的手法を活用することにより、国内外の研究動向に関する分析資料を作成した。

(分析資料を用いた専門家へのアンケートの実施及び注目すべき研究動向の作成)

 「科学技術振興機構研究開発戦略センターの各分野ユニット」、「日本医療研究開発機構のプログラムディレクター等」及び「科学技術・学術政策研究所科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参画している専門家」に対し、作成した分析資料を用いて今後注目すべき研究動向に関するアンケートを実施した。その後、アンケートの結果の分析等を行い、注目すべき研究動向として「宿主と微生物叢間クロストークの解明と医療への応用」を特定した。

(ワークショップの開催及び研究開発目標の作成)

 注目すべき研究動向「宿主と微生物叢間クロストークの解明と医療への応用」に関係する産学の有識者が一堂に会するワークショップを開催し、特に注目すべき国内外の動向、研究や技術開発の進展が社会的・経済的に与え得るインパクトやその結果実現し得る将来の社会像、研究期間中に達成すべき目標などについて議論を行い、ワークショップにおける議論等を踏まえ、研究開発目標を作成した。

8. 閣議決定文書等における関係記載

「第5期科学技術基本計画」(平成28年1月22日閣議決定)

第3章(1)2. 1)

 我が国は既に世界に先駆けて超高齢社会を迎えており、我が国の基礎科学研究を展開して医療技術の開発を推進し、その成果を活用した健康寿命の延伸を実現するとともに、医療制度の持続性を確保することが求められている。その際、我が国発の創薬や医療機器及び医療技術開発の実現を通じて、医療関連分野における産業競争力の向上を図り、我が国の経済成長に貢献することが期待される。

「医療分野研究開発推進計画」(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)

2.1.(5)2.

 日本人(あるいは東アジア人)のゲノム多型情報やアジア人に固有の腸内細菌のゲノム情報の集積を行い、疾患の診断治療のみでなく、重症化や薬剤副作用の予防、発症予防の実現に向けた研究開発の促進及び環境整備等が必要である。

9. その他

○本研究開発目標の下で行われる研究によって生み出される成果は、医薬品、医療機器、予防医療・個別化医療等の幅広い分野への応用が期待される。そのため、日本医療研究開発機構(AMED)における連携プロジェクト「オールジャパンでの医薬品創出」、「疾患克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト」等と連携することにより、実用化に向けた着実な展開がなされることが期待される。

○本研究開発目標の下で行われる研究によって得られたデータ(患者情報や、レファレンスとしての健常者情報も含む)や生体分子については、科学技術振興機構(JST)の「ライフサイエンスデータベース統合推進事業」(平成23年度~)等と連携しながら、データベース化、ライブラリ化等により更なる研究展開に向けた基盤を構築するなど、効率的・効果的な研究推進のための取組が期待される。

お問合せ先

基礎研究振興課

電話番号:03‐5253‐4111(内線4244)