資料1-4 戦略目標等策定指針に関する論点(案)

戦略目標等策定指針に関する論点(案)

「戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会報告書」に記載された戦略目標策定指針を踏まえつつ、戦略目標等の策定手法の更なる高度化に向けて、以下の点について検討を行う必要がある。
なお、今後、策定過程等の評価を行うことを念頭においた指針となっているかという観点も考慮する必要がある。

STEP1:基礎研究を始めとした研究動向の俯瞰

・FMDBを用いた科研費等による研究状況の分析によりどのような情報が抽出されることが重要か
・計量書誌学的手法を用いた論文分析を経年変化も含めて行うことでどのような情報が抽出されることが重要か

STEP2:知の糾合による注目すべき研究動向の特定

・STEP1における分析より抽出された情報を活用して専門家等に対しどのようにアンケートを行う必要があるか。
・アンケート結果について、どのような視点から分析を行う必要があるか。
・注目すべき研究動向はどのような観点・手法により絞り込みを行う必要があるか。

STEP3:科学的な価値と社会経済的な価値の創造が両立可能な戦略目標等の決定

・ワークショップの開催形態・構成員に関する留意点は何か。
・ワークショップにおいて、特に重点的に議論する必要がある事項は何か。
・社会科学・人文科学的視点を戦略目標等に入れ込むために必要な取組は何か。
・戦略目標等の策定に当たって他に必要な留意事項は何か。


(参考)
戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会
報告書(抜粋)

(1)戦略目標策定指針の制定

○ 「出口を見据えた研究」の趣旨を踏まえて戦略目標が策定されることを担保するために、また戦略目標策定過程の透明性を高めるために、以下のように戦略目標の定め方を規定する「戦略目標策定指針」を定める。

(戦略目標策定指針の全体構成)
○ 戦略目標策定指針は、「出口を見据えた研究」の趣旨を踏まえ、
1)我が国あるいは世界の基礎研究を始めとした研究動向について、科学計量学的手法を用いて論文・実績報告書等を分析し、研究動向を把握する。
2)分析結果等を活用して、最新の研究動向等に関する知見を有する組織・研究者に対する意見聴取を行うことで、注目すべき研究動向を特定する。
3)注目した研究動向に関する研究の進展等によってもたらされる社会・経済への影響等を推量し、科学的価値と社会的・経済的価値の創造が両立可能な戦略目標を決定する。
といった流れに沿って戦略目標を策定することを規定する。

(策定のための個別手順(Step 1, 2, 3))
○Step 1:基礎研究を始めとした研究動向の俯瞰
・国内動向の俯瞰
我が国における基礎研究を始めとした研究動向を俯瞰するためには、我が国の研究者により創出された「知」を広範に把握することが必要である。特に、日本学術振興会(JSPS)の知見を活用し、優れた研究シーズの宝庫である科学研究費助成事業の成果を確実に把握することが重要である。
このため、文部科学省が、我が国の研究者の論文あるいは科学研究費助成事業の実績報告書等を広範に参照可能なデータベース(Funding Management DataBase(FMDB))を活用して行う科学計量学的手法による分析をJSTに依頼し、我が国における研究動向を把握する。なお、分析の際には、研究動向の時間的な変化を把握し、分析することも重要である。具体的には、研究活動の盛衰や新たな研究概念の登場、研究間の連携・融合の進捗などについて把握することが重要である。

・世界動向の俯瞰
我が国における研究動向の俯瞰と同様に、世界における基礎研究を始めとした研究動向を俯瞰し、把握する必要がある。これには、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)においてサイエンスマップ  と呼ばれる優れた俯瞰図を作成しているため、文部科学省は、これを活用し、世界における研究動向を俯瞰する。なお、サイエンスマップを活用する場合も、我が国における研究動向と同様に、研究活動の盛衰などについても分析するとともに、世界における研究動向の中での我が国の参画状況等を把握することが重要である。

○Step 2:知の糾合による注目すべき研究動向の特定
・最新の研究動向に関して知見を有する組織・研究者に対する意見聴取
Step 1において行う研究動向の俯瞰は、論文・実績報告書等の書誌情報を用いて行われるものであるため、近過去の状況のみを表し、最新の研究動向を正確には表していない可能性がある。また、研究領域によっては、必ずしも書誌情報が研究動向を反映しているとは限らない領域も存在する。
この課題を解決し、注目すべき研究動向の特定に必要な情報を収集するために、JST研究開発戦略センター(CRDS)の戦略プロポーザルや各種科学技術に関する動向調査等 も参照しつつ、Step 1において得られた分析結果を客観的根拠として用いて、最新の研究動向に関して知見を有する組織 ・研究者に対し、意見聴取を行う。具体的には、文部科学省が、研究者とのネットワークを有するJSTの知見等を活用し、客観的根拠としてStep 1において得られた分析結果等を活用しながら、以下のような研究動向に関する質問を行うことで最新の研究動向の知見に基づいた、注目すべき研究動向の特定に必要な情報を収集する。
・分析結果等により示された研究動向に関係して、今後、注目すべき研究動向は何か。
・分析結果等により示された研究動向に関係して、今後、研究領域間等で連携を図ることで革新的な成果が創出されることが見込まれるものはあるか。

・注目すべき研究動向の特定
文部科学省は、最新の研究動向に関して知見を有する組織・研究者に対する意見聴取の結果を踏まえて、注目すべき研究動向の一覧を取りまとめる。その後、文部科学省は全体を俯瞰しつつ、研究動向の注目度、発展可能性等の観点から注目すべき研究動向について検討し、これを特定する。

○Step 3:科学的価値と社会的・経済的価値の創造が両立可能な戦略目標の決定
・社会・経済に与えうる影響等の推量
「出口を見据えた研究」を推進するための目標を設定するためには、注目すべき研究動向に関する研究の進展等により、社会・経済に与えうる影響等を推量することが重要である。
このため、文部科学省は、注目すべき研究動向に関係する研究者と国内外の産業界やベンチャーキャピタルなどの新たな市場の開拓等に関する知見を有する識者や公共ニーズを有する識者の参画を得たワークショップ等を研究者及び産業界等とのネットワークを有するJSTの知見等を活用し開催することで、注目した研究動向に関する研究の進展等により、社会・経済に与えうる影響等を推量する。
具体的には、ワークショップ等において、まず、注目した研究動向に関する研究において約10年後に見込まれる進展等を踏まえ、実現しうる20年先、30年先といった未来社会の姿を想定する。次に、想定した実現しうる未来社会の姿から、注目した研究動向に関する研究の進展が、社会・経済に与えうる影響の大きさと広さ等を推量する。最後に想定した未来社会の姿を実現するためには、注目した研究動向に関する研究がどのように進展していく必要があるか等を検討する 。

・戦略目標の決定
文部科学省は、ワークショップ等における結果を取りまとめ、注目した研究動向、当該研究の進展等により実現しうる未来社会の姿、当該研究の振興方針等を記載した戦略目標(案)を作成する。
その後、文部科学省は全体を俯瞰しつつ、注目した研究動向に関する研究が進展した場合に創出されうる科学的知見の革新性や社会・経済に与えうる影響の大きさや広さ、また想定した未来社会の姿が実現しうる蓋然性の高さ等の観点から検討を行い、戦略目標を決定する。

(戦略目標策定に当たっての留意事項)
○ 戦略目標を策定する際には、「出口を見据えた研究」の主体が研究者であることを踏まえ、過去の戦略目標の粒度を参考にしつつ、研究者のモチベーションを保つ目標となるよう留意する必要がある。

○ 例えば、戦略目標の策定に当たっては、研究者に政策意図を的確に伝えられる目標を掲げる必要がある一方で、基礎研究段階においては高い不確実性が存在することを念頭におき、過度に先鋭化された目標を掲げることで研究を萎縮させないよう留意する必要がある。

 

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