戦略的基礎研究部会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年5月19日(火曜日)14時00分~16時30分(議事が終了次第終了)

2.場所

文部科学省 5F3会議室

3.議題

  1. 戦略目標等策定指針について
  2. 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について
  3. その他

4.出席者

委員

大垣部会長、有信委員、角南委員、土井委員、宇川委員、貝淵委員、川上委員、小谷委員、小山委員、鈴木委員、竹山委員、波多野委員、柳川委員、若山委員

文部科学省

常盤研究振興局長、安藤大臣官房審議官(研究振興局担当)、行松基礎研究振興課長、岩渕基礎研究推進室長、他関係官

5.議事録

【大垣部会長】それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回科学技術・学術審議会戦略的基礎研究部会を開催いたします。大変暑い中、また本日は御多忙のところ、お集まりいただき、まことにありがとうございます。
まず、本日、御出席いただいております委員の皆様の中には、初めて出席される方もいらっしゃいますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
 【浅井室長補佐】本日初めて御出席いただいております2名の委員の方について御紹介いたします。臨時委員より、川上委員でいらっしゃいます。
 【川上臨時委員】  京都大学の川上でございます。私自身、もともと耳鼻科の医者だったのですが、その後、人生が変わりまして、アメリカの厚生省であるFDAというところで行政官をしていました。その後、日本で、現在の専門は、いわゆる医療系の各種データベースを用いたビッグデータの解析や費用対効果の研究でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 【浅井室長補佐】竹山委員でいらっしゃいます。
 【竹山臨時委員】早稲田大学の竹山と申します。よろしくお願いします。専門はバイオテクノロジー一般ということで、よろしくお願いいたします。
 【浅井室長補佐】なお、西尾部会長代理、阿部委員、長我部委員、片岡委員については、本日欠席の御連絡を頂いております。また、柳川委員については、少々遅れていらっしゃる模様でございます。
 【大垣部会長】それでは、まず事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
 【浅井室長補佐】議事次第の方を見ていただきますと、配付資料1-1、1-2、1-3、3までと、参考資料が1から6までとありますので、御確認ください。欠落等ございますでしょうか。万一、欠落等がございましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお知らせください。
 【大垣部会長】よろしいでしょうか。それでは、早速、議事に入りたいと思います
本日の議題ですが、まず「戦略目標等策定指針について」の審議を行いたいと思います。本日は、科学技術振興機構(JST)から酒井重樹戦略研究推進部企画・管理課長と黒沢努情報企画部情報分析室調査役に、日本医療研究開発機構(AMED)から渡邉淳戦略推進部次長にお越しいただき、戦略目標の策定に当たって留意してほしい点などについて御説明を頂きます。次に、「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について」の審議を行います。
 以上が、本日予定している議題でございます。質疑、意見交換等は事項ごとに行いたいと思っております。積極的に御意見を頂くとともに、議事の円滑な進行に御協力をいただければと思います。
それでは、まず「戦略目標等策定指針について」、審議を行いたいと思います。
まず、事務局から、平成27年度戦略目標及び研究開発目標の策定プロセスについて説明いただき、その後、JST、AMEDからそれぞれ御発表を頂きます。最後に、再度、事務局より論点を整理していただいた後に、委員の皆様から御質問、御議論を頂きたいと考えております。では、事務局から説明をお願いいたします。
 【岩渕基礎研究推進室長】まず事務局より資料1-1に基づき、御説明をいたします。
 資料1-1、タイトルが「平成27年度戦略目標及び研究開発目標について(報告)」ですが、ページをめくっていただきますと、1ページ目に、政策マネジメントサイクルと書かれたポンチ絵が1枚載っています。前回の会合でも御紹介したものですが、本日御議論いただくのは戦略目標策定指針についてです。戦略目標等を策定するためにプロセスなどを定義したものとして、1ページ目の一番左上の黄色い四角に書いてありますが、この策定指針を、この戦略基礎研究部会において定めていただく。これがこの部会の大きなミッションだと考えています。
そのことを議論するためには、まず、実際にどのような形で戦略目標が策定されているのかという文部科学省の中のプロセスをお知りいただくことが極めて大事だと思いますので、資料1-1においては、実際に今年度の戦略目標を文部科学省がどのようなステップにのっとりながら策定していったのかということについて、説明をさせていただき、後ほどJST、AMEDからの要望も踏まえながら、策定指針をどのように改良していくべきかという御意見を頂きたいと思っています。
また、戦略目標の策定指針についてのほかに、この部会では、戦略目標の評価についても行っていただきたいと考えています。ここでは戦略目標の策定指針の議論を行うわけですが、その後、目標の評価の方法についても御議論いただきたいと思っていますので、戦略目標策定についての青い部分の説明をこれからしますが、策定指針、あるいはこの目標の評価をする上でどういうことがあるかという目線で聞いていただければと思います。
2ページ目を見ていただきますと、戦略目標の策定プロセスと書いたSTEP1、STEP2、STEP3、これも前回御説明した資料が書かれています。本日は、このSTEP1、STEP2、STEP3のSTEPごとに、具体的に文部科学省がどのような策定をしたのか、直近の年度では先週金曜日に平成27年度の目標を発表しましたが、その目標を去年1年間かけてどのように議論したのかということについて、次のページから御説明いたします。
3ページ、STEP1の説明から入らせていただきます。STEP1、基礎研究を始めとした研究動向の俯瞰(ふかん)ということで、まず文部科学省が戦略目標の策定のファーストステップとして、サイエンスマップに示された研究領域の相関図をエリアに分割し、それぞれのエリアについて分析をしました。具体的には、そのマップ上に表れるエリアごとにTOP1%論文の多い研究領域、あるいは日本の研究者のシェアが高いような研究領域についての分析を行う。また、そうした領域について、科研費の最新の成果としてどういうものが表れているのかということについて併せ読むという作業をしました。3ページの上の四角の中に書いてありますが、そもそもサイエンスマップとは何かという説明が必要かと思います。御承知の方も多いと思いますが、参考資料として、15ページ以降がサイエンスマップの説明になっております。15ページを御覧いただけますでしょうか。このサイエンスマップは、論文分析により国際的に注目を集めている研究領域を定量的に把握し、そうした領域間がどのような位置関係にあるのかというのを可視化した手法で、文部科学省の科学技術・学術政策研究所において開発したものです。
 具体的にどのように可視化をしているかというと、16ページ一番上の四角に書かせていただきましたが、論文の共引用関係ということに着目して作成しています。共引用関係というのは、括弧書きにあるとおり、「注目する二つの論文がその他の論文によって同時に引用される」場合を定義しており、その二つの論文は近しい関係にあるということで、マップ上近い距離にマッピングするということです。
 分析の対象は、トムソン・ロイターのTOP1%論文です。このバージョンは、2007年から2012年までのTOP1%論文、7万件についての分析を行い、共引用関係に基づいて幾何学的な距離をマップ上に落とし込んだものです。論文に基づくものであるということ、共引用関係に基づいてその距離を定義しているということが言えます。
 改めて3ページのサイエンスマップをそのように御覧いただくと、横軸、縦軸というのは特に意味がありません。領域間の距離を平面にプロットしたらこうなったということで、近い分野が近くにマップされているということです。
ざっくり見ると、右下の方に素粒子・宇宙科学のようなものがあり、左上の方に医学のようなものがマップされている。近いエリアには近い研究領域がマップされているので、この全体を、この場合は20個を切り取り、その20個ごとに分析を行ったと書かれているわけです。この例示ですと、Bの3という象限に着目して拡大図を右の方に示していますが、こういう拡大図が得られて、その中でコアペーパのTOP1%論文数の多い領域はどういうところかを青で示していたり、あるいは日本の研究視野が高い領域を赤で示したりという形で分析をしています。
 続いて4ページですが、こうしたマップを見ながら、例えば今の、Bの3のエリアについて、更に詳細な分析資料、エビデンスを文科省の中で整えているということです。特にBの3の中でTOP1%が多い領域を三つここに例示していますが、そうした領域において、例えばデータとしてはTOP1%のペーパの数、あるいはTOP10%のペーパの数、あるいはそれぞれの日本のシェア、あるいは国際共著率といったものがデータとして把握できます。また、それぞれの研究領域について、科研費のデータベースとひも付けをしながら分析をし、特に関係する科研費の代表的な成果の例を一覧できるような形でデータとしてそろえています。Bの3の領域で、TOP1%の論文が多い場合というふうに切った場合はこうですが、こういうものを各象限においてそれぞれ分析していく、こうした分野ごとの最新の研究動向の把握をしていくというのがSTEP1の内容です。
 続いて6ページを御覧ください。STEP2、知の糾合による注目すべき研究動向の特定というプロセスで何をしているのかということの説明です。STEP2の段階では、STEP1で整理したエビデンスについて専門家の先生方に御意見を頂く、ここは定性的な御意見を頂くというプロセスです。STEP1で作成した分析資料等を用いて、JST研究開発戦略センターの各分野ユニットやNISTEPの科学技術動向研究センターの専門家ネットワークに参加いただいている専門家の方々に対してアンケートを実施しました。アンケートでどのようなことを聞いたのか、具体的なアンケート表を6ページの右の方に書いていますが、このサイエンスマップの資料を御覧いただいた上で、以下の質問に対して御意見記入願いますということで、このマップに登場している中で、今後7、8年にわたって投資すべき分野としてどういうところがあるのかという動向を自由に記載していただく。また、その動向について、サイエンスマップのポイントとしては、どこと特に関係があるのか、マップ上の位置を記載していただく。あるいはサイエンスマップにまだ登場していない、非常に新しい分野だけれども面白い、というものはないかということについても、この段階で、アンケートで記載していただいています。したがって、JST研究開発戦略センターの全てのユニットのフェローの方、そしてNISTEPの専門家ネットワークの約2,000名の方という、比較的多数の方にアンケートをとるということをまずしています。
その上で、7ページを見ていただきますと、それぞれの回答の例がここに書いてありますが、それぞれのフェローの方、専門家の方が注目するという動向の名前、その概要について自由記載をしていただいて、かつ、それがサイエンスマップのどこのエリアに対応しているかということを記載していただいています。これが二千何百名という方を対象にしたアンケートの回答ということになります。
8ページは、このアンケートの結果について、文部科学省において分析をいたしました。その分析の結果として、注目すべき研究動向の案というものを作成するということですが、各注目すべき研究動向、この2,000件のアンケートの中から、それぞれについて、サイエンスマップにおいて関係する研究領域における論文の数、日本のシェアの割合というのをスコア化して、一覧できるような形にしました。世界における注目度、あるいは日本における貢献度と、二つの指標でインデックスを付けました。当然ながら、世界においての注目度が高いけれども日本における貢献度は少ないというものもありますし、その逆の傾向を示す研究動向もありますが、そうした分野の特徴が比較的見やすいような形で研究動向を整理しました。
この基礎資料をもとに文部科学省内で検討をした結果、9ページに書かれている14の動向というのが注目すべき研究動向の案として浮かび上がったということです。
ここまでがSTEP2ですが、STEP2までのところにおいては、飽くまで研究動向やサイエンスとしての価値についての分析が行われていたということです。
STEP3においては、社会経済的な価値とのシーズとニーズのマッチングということを行います。10ページですが、STEP3、科学的な価値と社会経済的な価値の創造が両立可能な戦略目標等の決定ということで、STEP2までで導出された14個の研究動向のそれぞれについて、研究者と産業界の対話を行うためのワークショップを開催いたしました。ワークショップにおいて、注目すべき研究動向に関する研究の進展状況や社会・経済に与え得るインパクトの大きさ、こうしたものを議論するということです。
 具体的に参加者の例を見ていただくと、このワークショップのイメージが深まるかもしれませんが、研究動向ごとにワークショップを開いており、その研究動向で実際にシーズを生み出している研究者の方々、主として大学、もちろん国立研究開発法人の方なども含まれていますが、こういうアカデミアを中心とした研究者の方々と、ほぼ同数の産業界の方々にも参加していただきました。参加の条件として企業名を公開するという約束になっておりませんでしたので、A社、B社という形で書かせていただいていますが、産業界の方には、有識者個人というよりは、ある意味、会社、業界を代表したようなお立場で意見をお願いしたいということで御出席いただきました。こうした産業界の方と学術界の方が対話を行い、それぞれの研究動向について、戦略目標とするならどういう可能性があるのかということを議論していただいたということです。
11ページに、ワークショップにおける議論の流れの例を書きましたが、例えば最初に、学術界、産業界から注目すべき研究動向に関する取組を紹介していただいた上で、事前に行ったアンケート結果に基づきながら、社会・経済に与えるインパクト、そして、そのインパクトによって実現できる将来の社会像、こうしたことについて議論を頂きます。逆に、そうした社会像具現化のために、現在、研究開発として取り組むべきものとしてどういうものがあるのかといったことについても御議論を頂きました。
ワークショップにおけるコメントの例ということもそこに書かせていただきましたが、こうしたものを短時間でデータを実証できるものがあるのか、長期でやる基礎研究だが、イノベーション指向ということであれば、短期の間でも少しずつ何ができるかということを示すようなやり方ができなければ目標として正しくない、といった議論であるとか、研究体制を組むに当たって共通のプラットフォームが必要、あるいは研究のアプローチとして、この分野であればインフォマティクスの必要性が非常に高いので、そうした分野の方々が入りやすいような目標設定ということが必要だと、そのようなコメントがありました。
こうしたワークショップの開催結果がそれぞれレポートされる中で、文部科学省としては、各ワークショップを通じて出てきた目標の案について、12ページに示したような選定基準に基づいて絞り込みを行いました。目標選定基準を1から8まで書いてございますけれども、1番で、基礎研究をはじめとした研究動向を踏まえたものと、サイエンスとしてきちっとしたものであるかということ。2番、ニーズがあるのかということ。3番、日本の研究者の層がきちんと厚い分野なのか。4番、本制度の趣旨、規模が非常に大きいか。非常に小さいということだとこの制度とは合わないので、そうしたものがかなっているのか。5番、ほかの関連施策と重複の排除。6番、特定の機関のみが実施するようなプロジェクトではないか。特定の機関のみが実施するものであれば、こうした研究のファンディングによって支援するというよりは、その研究所が自ら行うプロジェクト型の方がふさわしいという観点から、ここで、特定の施設や設備の運営ではないということを確認します。8番、当然ですが、科学技術基本計画、あるいは健康・医療戦略といった国の方針に貢献するもの。こうした基準を基に文部科学省内で検討させていただき、13ページにあるとおり、27年度の場合は、六つの目標、JSTに向けての目標が上の四つ、AMED向けの目標が下の二つということで、合わせての6個の目標を先週の金曜日に発表しました。これが、これまで行ってきたプロセスの御紹介です。
 【大垣部会長】御苦労さまでした。それでは、続きまして酒井課長、それから黒沢調査役にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 【酒井企画・管理課長】科学技術振興機構の酒井でございます。本日はよろしくお願いいたします。JSTの方から、FMDB等を活用した研究動向に関するエビデンス解析と、それから今御紹介がありました戦略目標策定プロセスに対して、多少、意見、コメントをさせていただきたいと思います。まず、当方の情報分析室の黒沢の方から、エビデンス解析について御説明を申し上げます。
 【黒沢調査役】JST情報企画部の黒沢と申します。
JST情報事業では、今年度から情報分析室を立ち上げまして、長年実施、蓄積してまいりました文献データベースを中心に、これまで蓄積したデータと新たなデータを活用しまして、JST内外のニーズに応えるための業務をさせていただいております。本日は、それらのデータの中でも、JST内の業務、JSTの中で使うデータベースとして限定して使っておりますFMDBを中心に御報告を申し上げたいと思います。
3ページを御覧ください。先ほど申し上げましたJSTのFMDBですが、こちらはFunding Management DataBaseの略でございまして、主たる活用目的としまして、基礎研究におけるシームレスな連携のために科研費の研究課題情報を取り込んでおりまして、事業実施や、あるいは施策立案、こういったもののバックサイドのエビデンス作りということで活用させていただいております。
また、FMDBの主なデータ群というのが真ん中の方にございますが、JSTがもともとファンドしました研究課題、あるいはそういったものの研究制度や課題名、研究費、あるいは研究者名、総括、こういったものに加えまして、アウトプットとして出てまいります論文や特許等の研究成果情報の方を集積しまして、JSTの内部の職員、あるいは目利きの方向けのデータベースとして業務に生かしているということでございます。
4ページ目を御覧いただけますでしょうか。今回のエビデンスの収集と解析のプロセスとしまして、現在二つのテーマで進めております。一つ目は、各研究分野から研究の拡大・伸長が見込まれる領域の抽出ということをしております。こちらにつきましては、全ての分野にわたりまして独創的・先駆的な「学術研究」を支援されております科研費の課題情報について、キーワードの変化、あるいはそういったものの抽出を進めております。
 二つ目は、世界における研究動向の把握ということで、こちらについては、先ほどもNISTEPさんの御紹介がございましたが、論文の共引用関係、あるいは直接の引用関係、こういったもの二つを使いまして、注目領域の抽出を進めているというところでございます。
5ページ目を御覧ください。こちらのスライドは、科研費の研究課題のうち、総額が1,000万円以上、約2万件の課題を対象にマップ化をしたものでございまして、こちらは科研費における研究分野のサポート範囲が非常に幅が広いもので、科研費の研究をまず俯瞰(ふかん)したいということで、DocRederという解析ソフトを使いマップ化したものでございます。青いポツポツがございますが、こちら一つ一つが研究課題を含むクラスタになってございまして、このクラスタに研究課題に含まれるような特徴的なキーワードが含まれているようなイメージになります。また、この点が大きければ大きいほど特定のキーワードを含む課題数が多いことを示しまして、密集しているところほどキーワードとして近いものが集約されているというような形になります。この図の中に電子材料とか、ナノとか、バイオ系とか、幾つか見出しのようなものがございますが、こちらはその下の段に含まれています、例えば左上の電子材料でいいますと、材料、電子、原子、物理、こういったものがございますが、こういった中のキーワードを見た上で、この分野は電子材料の分野ですということを、実は手作業で分類を付与したものになってございまして、マップを書いたり、キーワードを抽出したりするところまでは自動なのですが、中身を解釈して分野を示しているところは手作業になっております。非常に様々なキーワードが含まれていますので、少し内容を限定したものを見たものが、次の6ページのスライドになります。
こちらは、先ほどのマップ全体に対して「藻類」というキーワードを含む課題に限定した上で、同じソフトウエアの中でヒートマップを描いたものでございます。ヒートマップですので、赤いものが最大になりまして、青いものが最小になります。白いものは何もないという形になります。藻類を含む研究課題のうち、一番左の2005年から2007年については、その下に幾つかキーワードがございますが、毒素とか、そういったもののキーワードが多く見られるということになっていまして、2008年から2010年については、微生物や気候変動、赤の丸で囲った矢印のところが増えております。2011年以降については、人工光合成や燃料、そういったものについてのキーワードが散見されておりました。しかしながら、科研費の研究開発は非常に広範囲で、多数のキーワードを含んでおりまして、今回注目するキーワードをどのように選定するか、あるいは内部的には複合語の処理がかなりございますので、どういった形で複合語を処理していくか、まだまだ課題が非常に大きいということを私たちも実感しているところでございます。
7ページ目でございます。こちらは世界における大学等の研究動向ということで、先ほどもありましたが、Web of Scienceをこちらも使っております。こちらはJST内で昨年度に内部で実施した内容になってございます。先ほどのサイエンスマップの御紹介にもありました共引用分析の手法を用いて、ライフサイエンスの分野に限って実施したものでございまして、幾つか手法を書かせていただいております。今回は、幅広く研究動向を捉えるという目的で、研究領域を作り出す対象の論文をWeb of ScienceのTOP1%ではなくてTOP10%まで広げまして、約20万件の論文を対象としております。そのうちのクラスタの一部分を折れ線グラフにしたものがその左下にあるものでございまして、クラスタを構成する論文が年々増えているものをその20万件のクラスタ群から見つけ出しまして、そこの中でDDSや、あるいは機能性RNA、ゲノム編集、こういったものについては、クラスタを構成する論文の中を目で見た上でラベリングをしたという形になります。それぞれ機能性RNAやゲノム編集の部分について、国際的なシェアを確認しまして、今回、機能性RNAについては、日本はシェアが3位だったのですが、こういったところを踏まえて、JSTの中での戦略検討の基礎データという形で使っております。
8ページを御覧ください。こちらは共引用関係ではなくて直接的な引用関係を使ってグラフ化したものでございまして、こちらもデータベースはWeb of Scienceを使っております。こちらの例は、東京工業大学の梶川先生による解析事例でございまして、論文の直接的な引用と被引用の関係の中で引用ネットワークを作成いたしまして、赤、青、緑のようなことがございますが、スライドで色分けされているクラスタに自動的に分類を行っています。こちら、色分けされたものに対して、左側、2007年ですとAgriculture、あるいはForestry、Businessとか、そういったところがございますが、こちらについても、論文の中を確認した上で手作業でラベリングを行っているということでございます。
こちらの例でいいますと、Sustainabilityをキーワードに含む論文を対象とした解析でございますが、2007年は比較的、産業系の分野がラベリングとしては非常に多く含まれているのに対しまして、2013年度については、赤い部分が大きくございますが、環境システムのようなものが大きな割合を占めているような形で、分野の構造が少し変化しているというような事例でございまして、9ページのところに、更にそれを少し、2013年度部分について、各年を深堀したものがございます。こちら、時系列に総体的な伸びをグラフ化したものでございます。クラスタを構成する論文の平均出版年が上のグラブでございますが、平均出版年が若い二つのクラスタ、こちらの方が伸びておりまして、注目領域であるというような研究結果が出ておりまして、現在、私どもも梶川先生にアドバイスを頂きつつ、更にほかの分野についても解析を進めているというところでございます。
 【酒井企画・管理課長】  それでは、引き続きまして、後半の戦略目標策定プロセスに対する要望といいますか、コメントをさせていただきたいということでございまして、11ページ目でございますが、実は、先ほど御説明ございました、先週発表されました戦略目標の策定プロセス、これは1年前から行いましたものを文科省と連携して進めさせていただきまして、今後もそういった連携をした形でお願いをしたいということでございます。具体的な連携の内容としましては、ちょっと順番が前後するんですけれども、今、黒沢の方から申しましたように、私どもでいろいろ文献情報の解析などをしたものを有効活用していただくとか、これは今御説明しましたように、私ども、まだ準備段階で十分手法が、まだまだ検討中なんですけれども、これを私どもとしても改善していきたいと思っておりますので、これを活用していただきたいということと、その後、第2ステップで、いろいろな有識者から意見を聞くというところで引き続き私どものCRDS、研究開発戦略センターの知見などを活用していただきたいということです。
それから、資料が間違っているんですけれども、第3ステップのワークショップを、共催ということを前回もさせていただいたんですが、引き続きそういうことをお願いしたいことと、JSTからも参加をさせていただくということで、議論をより活発に行いたいということでございまして、また、第2ステップから第3ステップ、このワークショップの企画などにおきましては、CRDSの個々のメンバーの見識ということもございますが、CRDSがまとめました戦略プロポーザルというレポートですとか、あるいはJSTの中にイノベーション企画推進室というものもございますので、ここのエビデンスなども有効活用していただければ有り難いというふうに思っております。
それから、2番目ですけれども、戦略目標策定・研究領域設定プロセスにより時間をかけるということで、今までも文科省とも話をしながら、時間を確保するように努力をしてきているのですけれども、引き続きそういうふうにしていきたいということでございまして、このワークショップなども、前回は初めてだったということもありまして、やや急いで準備したというようなこともございましたので、参加者の方によく趣旨を徹底するですとか、議論を活発にするための工夫、ちょっと具体的なアイデアはないんですけれども、その辺を工夫していくですとか、それから、必ずしもここの議論に係るかどうか分からないんですけれども、戦略目標をJSTが文科省から頂きますと、その後、具体的にそれを募集要項に落とし込むというプロセスがございますので、そこにも時間をかけると。ワークショップなどで議論が尽くされておりますと、JSTにおいても活用できますので、全体として時間をかけてよく議論をして作り込みを行いたいということでございます。
それから、次の12ページでございますが、情報科学分野や融合分野等への配慮ということでございまして、これも、私どもの中でも去年から議論があったんですけれども、こういう文献計量的な手法を使いますと、どうしても論文になるものの分野が一番拾いやすいというところがございまして、例えば情報分野なども、物理ですとか化学といった分野と比べると論文が出にくいというところもございますので、これは去年も配慮があって一定の数字の出し方を少し変えるなどして、それが見えるようにしたということがあったと思いますけれども、そういう工夫を引き続きやっていく、あるいはproceedingを入れるですとか、何か新しい手法というものも考えていく必要があろうということでございます。
それから、これも例えばワークショップのやり方の工夫ですとか、どこで工夫するかという問題はあるんですけれども、人文・社会科学との連携・融合ですとか、あるいは私ども戦略事業の中にさきがけという若手を重視したプログラムがございますので、そうした観点からしますと、将来のイノベーション人材層の形成という観点でも議論をできるようにしていただけると有り難いというふうに思っております。
 以上でございます。
 【大垣部会長】ありがとうございました。
それでは、続いて、渡邉次長より御説明をお願いいたします。
 【渡邉次長】日本医療研究開発機構戦略推進次長の渡邉でございます。本日はよろしくお願いいたします。
 前回のこちらの会議の方でAMED、当方について、どのような組織なのかということも含めて議論があったと伺いましたので、そういった概要を含めて御説明をしたいと思います。
 資料1-3をめくっていただきたいと思うんですけども、まず、よく御存じの方もいらっしゃると思いますけれども、政府全体として、実は内閣官房に健康・医療戦略推進本部というものが最近置かれてございまして、その前に閣議の方で健康・医療戦略というのを定められ、それに基づいて健康・医療分野の研究開発を進めているという状況でございます。その本部の方では、それに基づいた開発推進計画でございますとか、計画に基づいた予算要求配分調整などを行っているわけでございます。こちらについては、内閣官房の方に担当の室がございまして、そういった総合調整を行っているというものでございます。
そこで、赤い矢印がございますけれども、総合的な予算配分調整という、左側の方に国が定めた戦略に基づくトップダウンの研究とございます。この部分が当方の日本医療研究開発機構の方に文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省から予算が集まってまいりまして、約1,200億円の予算を集約化して執行しているという機関でございます。そのほか、調整費とありますけれども、総括会議の方でSIPといっている事業がございますが、そのお金、500億円のうち35%の175億円の執行も担当しているという状況でございます。これによって、各個別機関、大学研究などへのファンディングを行ったり、臨床研究中核病院などへの整備を行ったりしているところでございます。
ちなみに、右の方にインハウス研究というのがございますが、これは当方の予算でなく理研やナショナルセンターと言われる厚生労働省の機関、産総研などの独法などで研究をこの計画に基づいて行っているということでございます。
また、一番左に科学費助成事業とありますけれども、こちらも非常に学術の重要性、研究者の興味・関心に基づくということで、これも別途の、いわゆるJSPSの方で執行しているということになってございます。
 次のページにまいりまして、簡単にうちの組織体制でございますが、理事長は前慶應大学医学部長の末松がそれでございまして、そのほかに理事がいて、管理部門、支援部門、事業部門というのがございます。そのうちの私がおりますのは戦略推進部というところでございまして、ここは、がんでございますとか感染症、若しくは再生医療、事業分野別の重要な事業を担当しておりまして、その中で革新的な研究として、ここで議論していただく戦略目標に基づく研究も担当しているというところでございます。
 次に、めくっていただきまして、AMEDの研究開発のマネジメントの仕方ということで、理事長のもとにアドバイザリーボードを設置いたしまして、患者、医療現場、研究者、産業界からのニーズを把握するということでございますとか、これはこれからやっていきたいということでございますが、専門家によるシンクタンク機能を確保いたしまして、国内外の動向に基づいてテーマを抽出するということも今後やっていきたいと思っております。また、その課題選定に当たりましてはピア・レビューを行い、また、マネジメントにおきましては、PD、POという、今JSTさんでもかなりやっていらっしゃるような方法を活用したプロジェクトマネジメントを行っていきたいというところでございます。
 具体的なプロジェクトの実施分野でございますが、上に二つ丸がございますけれども、医薬品、医療機器、医療技術創出、再生医療、オーダーメイド・ゲノムという研究領域と、疾患に対応した研究ということで、がん、精神・神経疾患、感染症、希少・難治性疾患というのがございます。これは先ほど申し上げました内閣官房の定めた九つの柱というところの重要分野でございまして、実はまだこれだけが全てではなくて、その他というのがありますけれども、糖尿病、生活習慣病などの分野と、あと革新的、まさに今まで書かれていないような、今後新しく重要になるであろう研究として、革新的先端研究開発支援事業、これはまさにJSTから移管を頂きました事業として、今後AMEDが取り組んでいくという分野でございます。
 具体的にどのような状況かというと、今までJSTさんでやっていただいたものを受けて今年度からマネジメントを行っているわけでございますけれども、今年は、右側にありますような6領域を担当してやっているというところでございまして、27年度で二つ終わる予定でございますし、先ほど岩渕室長からも、新しい研究目標を決めたということでございまして、そのうち二つが今年度から新しくユニットで取り組んでいくという予定にしてございます。
ちなみに、左側に研究総括のユニットタイプ、ソロタイプというふうにございますが、ユニットタイプがまさにJSTでやっていただいているCRESTとほぼ同じでございまして、その中にソロタイプという、さきがけに近いような感じになろうかと思うんですけれども、その2種類の方法で今後ともいろいろな研究を推進していきたいというふうに考えてございます。
 研究開発目標のプロセスにおける意見ということがございましたが、現在考えているところでは、例えばSTEP1におかれましては、我々は医療研究にかなり特化したというか、それを対象とした研究分野でございますので、そういった分野への配慮というものをお願いしたいと思っているんですが、先ほど申し上げた、がんであるとか再生、そういった分野のものはかなりそこに取り組んでいけばいいと思っておりますので、先ほどもあった分野融合でありますとか、今後新たに取り組む重要であるような新しい研究開発課題などあれば、そういうものを積極的に議論していただきたいというふうに思ってございます。
また、STEP2におかれましても、今後、我々もいろいろとデータの蓄積などをしておけば、もう少し組織的にいろいろな情報の提供をしていきたいと思っておるんですが、現在でも科学技術顧問やPD、PS、POといった専門家がおりますので、そういった方々からの意見というのを是非活用していただきたいというふうに思います。
また、STEP3におかれましても、先ほどアカデミアと企業という話がございましたが、そういう医療に関係するようなテーマでございましたが、例えば臨床のお医者さんとか、そういう医療従事者の声というのも、その内容によって活用していただくような、くみ取っていただくようなことが大事だというふうに思ってございます。
 簡単ではございますけれども、以上でございます。
 【大垣部会長】ありがとうございました。それでは、最後に事務局より、論点の説明をお願いいたします。
 【岩渕基礎研究推進室長】資料1-4を御覧ください。この部会で御議論いただきたいことを重ね重ね申し上げると、戦略目標策定指針を策定するということです。現在、戦略目標策定指針としてどういうものがあるかについて、参考として、戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会報告書(抜粋)と書かれたものを2ページ目以降にあると思います。昨年研究振興局に設置し、大垣先生に座長をお願いしたこの検討会で、この報告書が昨年に出されています。この中で、次のような戦略目標策定指針を定めると決めていただき、文部科学省としては、この方針に基づいて去年1年間目標作りを行ったということですので、皆様の戦略目標策定指針の御議論のベースとなるのが、ここに書かれているということだと思っています。
 戦略目標策定指針の全体構成は、何度も事務局から御説明を申し上げております策定のための個別手順STEP1、2、3を規定した文書です。このそれぞれのSTEPについて、更に改良を加えるべきものは改良を加え、来年度の目標を決めるための戦略目標策定指針として改定、策定をしていただきたいということです。
それでは、資料1-4の1ページ目に戻りまして、論点の案というふうに書かせていただきました。簡単に御説明いたします。
 戦略的な基礎研究の在り方に関する検討会報告書に記載された戦略目標策定指針を踏まえつつ、戦略目標等策定手法のさらなる高度化に向けて、次のような点について検討を行う必要があるのではないかということを書いています。なお、今後策定過程の評価も行っていくことになると思いますので、評価を行いやすいようなプロセスになっているのかについても念頭に置く必要があろうかと思っています。STEP1、2、3ごとに論点の案を書かせていただきました。
STEP1ですが、これはエビデンスの分析のプロセスですが、FMDBとか新しい科研費の研究情報を用いた手法、JSTの中でも今いろいろな手法を開発中だというお話もありましたが、こうしたものを使いながら、どのような情報が抽出されることが望ましいのか。今、サイエンスマップで得られている情報に加えて、どのような情報がエビデンスとして把握されるべきなのか。あるいは二つ目のポツですが、今は論文分析、ある意味ワンショットで、2012年のサイエンスマップのような形で、2012年段階の優れたサイエンスの在り方はどこなのかということを分析していたわけですが、そうではなくて、経年変化を見るようなプロセス、そういうエビデンスを捉える手法が必要ではないか。例えばそういう論点があるのではないかと。実は、これは昨年1年間、サイエンスマップを使いながら目標づくりをしていく中で、この経年変化をどういうふうに見るかというのは非常にネックだと思いましたので、例えばそういうところは改良点ではないかという問題提起をさせていただきました。
STEP2、このエビデンスに専門家へのアンケートを通して分析を加えるプロセスですが、専門家に対してどのような設問、アンケートをとるべきなのかということ、このやり方については大いに議論する価値があるのではないか。また、そのアンケート結果、二千何百人のアンケート対象が出てくる膨大な情報をどのような視点で分析をしていくべきなのか、絞り込みを行うべきなのか、こういう視点についても更に議論を深める必要があるのではないかと考えており、論点として提起させていただきました。
STEP3、実はここが一番難しいプロセスで、科学的かつ社会経済的価値のマッチングのプロセスですが、このワークショップの開き方、今、AMEDの方から医療従事者などを入れたいということもありましたが、開催形態、構成員、最適な在り方というのはどういうものなのかということについても御議論いただければと思います。また、このワークショップにおいて何を議論するのか。目標が適切になるためにどういう点を重点的に議論すべきなのかという観点、あるいはJSTの方からも御指摘ありましたけれども、常々、社会経済的、社会科学、人文・科学的な視点というのがきちっと入っていないのではないのか、自然科学の中だけで目標をつくっているのではないかという議論もありましたので、そうした御批判に応えるためにはどのような改善があり得るのか、例えばそういう論点をSTEP3であげさせていただきましたが、これに限らず、この部会での議論を踏まえながら策定指針の改定というのをやっていきたいというふうに思いますので、いろいろな御議論を頂ければと思っています。
 事務局からは以上です。
 【大垣部会長】御苦労さまでした。
それでは、今説明のありました戦略目標策定指針について審議を行いたいと思います。御質問あるいは御意見ある方は、どうぞお願いをいたしたいと思います。はい、どうぞ。
 【有信委員】どうもいろいろと説明、ありがとうございました。非常に難しいプロセスを非常にきちんと分類したということが、大分理解できるようになっていると思います。今御指摘がありましたように、STEP3のところが極めて難しいと思うんです。これについて少し私のコメントを述べさせていただきたいと思いますけども、一つは、科学的な価値と社会経済的な価値というときに、基本的には社会経済的な価値というのが、現在直接的に見えるものと、いわば将来的にどういうものを実現しなければいけないか、あるいは企業的な観点でいえばどういう新しい製品が社会に価値を与えるのか、これは実は全く見えてないわけですよね。見えてないものがどういうふうに実現するかということをどう掘り起こしていくかというのが非常に重要なところで、このためにSTEP2があって、様々な動向を見ながら、その行く先で何が創造できるかというようなところを見ながらSTEP3につないでいくというところであろうと思います。
そうすると、STEP3のところの問題は、STEP3そのものが極めて創造的なプロセスでなきゃいけない。つまり、価値が両立するということを見るときに、将来の今見えてないものを、いわばここで出ている科学的な研究の方向だとか、科学的な価値の内容から見えるようにしていくという作業が必要になってくるんですね。これはただ単に意見を戦わせれば出てくるというよりは、もう少し創造的なプロセスを踏む必要があるので、ここについてはJSTさん、AMEDさんからも提案があったように、もう少し専門家を入れた形だとか、ここでも述べられていますけれども、社会科学とか人文科学の、ある意味で知識をかりてくるということではなくて、彼らがかなり真剣にこの議論にインプルーブされたような形でSTEP3を考えていくというプロセスをどう作っていくかというのが課題で、ここはよく考えてやっていく必要があると思います。それが第1点。
それから第2点は、科学的な価値というときに、やはり様々な研究で、特に基礎的な研究はそれぞれの研究の、ある意味で基本的な学理を追求するという部分があるわけですよね。その学理を追求するという方向と、さっき言ったように、社会経済的な価値という方向が必ずしも一致しない、研究としては。一致しないというのはちょっと乱暴な言い方なんですけども、それぞれの基本的な学理の追求の部分と、それをどういうふうに組み合わせていくのかとか、さっきJSTからも指摘がありました、いわゆる融合という視点の部分は、自然的に目的が明確になっていれば、それはそれで融合的な研究という形で進むんだけども、それが明確になっていなくて、分散的な学理追求のものを、いろんなディシプリンの違うものを融合しながら新しいものをつくり出して、新しい価値を与えて、それを社会経済的な価値に結び付くというような議論を考えると、ここの部分については、また違う視点がいるんじゃないかという気がしています。ここは非常に難しいなという気がしているんですけど、そこを何とかうまく道筋が付けられるといいなというのが第2点で、それから第3点は、さっき言った融合とか情報科学技術という分野ですけど、これはある意味で、目的思考的な研究になってくるわけですよね。目的思考的な研究と基本的な理念の部分と、例えば情報科学技術にしても、基本的な原理的な言及の部分と目的思考的な、いわばシンセシス的な研究の部分をどういうふうに見ていくかということで、特にシンセシス的な部分の研究をどううまく戦略目標として設定していくかというのは、これはダイレクトに出口につながっていくような気がしますので、そこはちょっと違う視点がやっぱりいるのかなという気がしています。その3点、コメントします。
 【大垣部会長】それでは、川上委員。
 【川上臨時委員】  川上です。今の有信先生の御意見にも近いところがあるのですが、今日このお話を聞いていて思ったのは、各研究分野において必ずしも手法というのが一定化できない可能性があるということです。例えば私自身は医学になりますけれども、医学の分野では、ニーズとシーズということを考えると、例えば基盤的研究の技術がたくさんあって、そうしたシーズがあるからといって世の中が幸せになりません。例えばNO(一酸化窒素)をコントローラブルにするよう物質を発見したとして、それをもし巨額をかけて開発した場合に、高血圧の薬を作ろうともし思っても、もう血圧の薬は世の中にたくさんあります。そう考えると、必ずしも技術があるからといってそれを開発するということが世の中を幸せにしない可能性があるので、シーズドリブンというほかの分野に比べて、医学や健康はニーズドリブンという部分をかなり重要視しないと間違えた方向にいく可能性があるということです。
そう考えると、例えばSTEP2でアンケートの解析を行うときに、例えばキーワードから、専門家がシーズを意識していっているのか、あるいはニーズを意識していっているのかということをちゃんとマッピングするという作業を入れないといけないだろうと思います。
また、同様に、STEP3に上がるときには、STEP3で今お話ありましたように、社会科学、あるいは人文科学的視点というのは極めて重要だと思うのです。医学も、ほかの分野でも当然のことだと思いますが、例えば人口問題の専門家とか、社会保障の専門家という方々の御意見をもし聞くことができるとすれば、この国が10年後、20年後、40年後にどういう人口分布で、どういうような購買行動とか、あるいは健康需要とかがあるのかということをしっかりと踏まえた上での戦略ということも考えることができると思います。これが1点目。
あともう1点、短く追加させていただくことがあるとすれば、分析、例えばSTEP1でマッピングをするときに、このやり方だと、各研究の領域ごとの相関性等はよくできると思うんですけれども、その分野の研究者が増えてきているかどうか。つまり研究論文の数が増えている際に、それに参入している研究者が増えているのかということの観点はあるのかなということが一つ疑問に思って聞きました。
 更に言えば、例えば分野における論文数の増加が、糖尿病の論文数がもし増えているということを考えた場合に、それは糖尿病のイメージング研究なのか、あるいは糖尿病の費用対効果を考えてデータを解析するとどのような予防をすれば人工透析が減るということを研究しているのか、と様々にあると思うんですね。そのようないわゆるエピデミオロジカルな研究解析ということもしっかりしておかないと、先ほどのシーズとニーズのマッチングにも近いことにもなりますが、正しい結果を得られないと思いました。
 以上です。
 【大垣部会長】ありがとうございました。 先に、研究者数の増加というデータは何かあるんでしょうか。
 【岩渕基礎研究推進室長】今回用いたサイエンスマップのデータでは、飽くまで研究論文の数に着目していますので、研究者の数は今回の分析には含めませんでした。そういう点は補完すべき要素の一つかなと今認識しました。
 【大垣部会長】ありがとうございます。貝淵委員。
 【貝淵臨時委員】私は医学部ですけど、ライフサイエンスの立場で、前回もちょっと言及したことを繰り返してお話ししたいと思いますけれども、今回の絞り込まれた目標を見ますと、AMEDの二つが医療機器とか医薬品の創出ということに絞られていますよね。そして植物の方も、どちらかというと、気候変動時代に食料安定確保、非常に具体的な目標設定になっているんですけども、実際にライフサイエンスの中には、そこまではっきりと目標設定できなくても重要な問題というのはいっぱいありまして、非常に大きなお金をかけて進むべき分野があるかと思います。
 例えば私が今一番インボルブしています精神・神経科学でいきますと、私たちがなぜ記憶できるかとか、私たちがなぜうれしいとか悲しいとか思うのかという心の動きですね、こういったことがだんだん今、分子とか回路の分野で明らかになるつつあるところで、しかし、具体的にはすぐにアルツハイマーの治療に結び付くわけではありませんので、こういった分野が取り残されていく可能性が高いという危惧を覚えています。AMEDのシステムは非常にいいと思うんですけども、その結果として、ライフサイエンスが持っている大きな可能性をかなり縮めてしまうことが起こるんじゃないかなと。例えば現在のCRESTでは、神経回路というのは非常に大きな基礎的な戦略目標が立っていますけども、こういったものが今後取り上げられなくなるのではないかなという危惧を持ちます。そこを考慮していただければなと。もちろんライフサイエンス以外にもそういう危惧はいっぱいあると思うんですけど、そのあたりを是非考えて進めていただけたらと思います。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかにはいかがですか。はい、鈴木委員。
 【鈴木臨時委員】ありがとうございます。
まず、AMEDの資料1-3の6ページにある医療従事者を加えたワークショップ等の開催、この医療従事者を加えたワークショップの重要性というのは、私も本当にそうだなと思います。まずそれが1点目。
それから2点目、資料1-1、11ページにワークショップにおけるコメントの例ということで、たまたまかもしれないんですけど、植物の生命現象解明を加速するという、そのお話の中でこの四つのコメントがあったんだと理解しますけれども、これは医学、医療の研究においても全く同じことが言えるので、こんなに同じなんだということを新鮮に感じました。
 特にこの四つのポイントを考えますと、今後、共有化できるプラットフォームというもの、抱え込むものと共有化できるもの、そしてみんなで可視化できるものというところのめりはり、それから、オールジャパンというコンセプトもありますけれども、必ずしもそうではなくて、国際競業が望ましいもの、そこのめりはり、このあたりのことについてはアンケート等を通して、皆さんがどのようなものだったら共有するとメリットがあって、共有したいと思えるのか、どのようなものであれば国際競業の方がオールジャパンよりもよいものかという意見は、面白いかなと思います。
それから、資料1-4のSTEP3の戦略目標等の作成に当たっての他の必要な留意事項というところなんですけれども、どのぐらいの期間というのもあるかもしれませんが、例えばそれが10年後の社会というふうに考えた場合に、健康長寿、医療費の効率化、それから何にも増して革新的治療の新たな創出というもの、これらは数値として明確に表せるものと考えます。
 以上です。
 【大垣部会長】ありがとうございます。小谷委員、どうぞ。
 【小谷臨時委員】今の最後のコメントともかぶさるのですが、戦略目標といっているので、この戦略を立てることによって、科学技術が何を社会にもたらすのかということが正確に、前回御説明あったのかもしれません、ちょっと忘れてしまいまして。STEP3を見ると、科学的な価値と社会経済的な価値の創造が同一可能なものを生み出すことによって科学技術が社会に役に立つようにするという、それに対して、それを達成するための戦略目標を立てるということなのかなというふうに思います。
その場合に、今御指摘があったことなんですが、科学的な価値を社会経済的な価値と結び付けるときに、どれぐらいのタイムスパンでそれが社会経済的価値と結び付くのかということによって全く異なると思いますし、どういう人を集めてどういうアンケートをすべきか、若しくはどういうことを議論すべきかということも違うかと思います。その辺は明確にしない、若しくは分野ごとに違うので様々なタイムスパンのものがあってもいいというか、その方がふさわしいという考え方もあるかと思いますし、そうではなくて、ある程度、ここで議論するものに関しては、これぐらいのタイムスパンで考えたいというようなこともあるのかもしれませんが、明確にしていただいた方が議論がしやすいし、もし評価ということがあるのであれば、それが明確でないと評価ということはしづらいと思いますので、もし御説明いただけるのであればよろしくお願いします。
 【大垣部会長】タイムスパンですが、いかがですか。
 【岩渕基礎研究推進室長】このJST、AMEDの戦略的な基礎研究の事業というのは、基本的に5年間の研究期間を設定しているものです。それ自体がどうなのかという御議論があるかもしれませんが。したがって、5年後の日本において、この基礎研究の成果が企業の方、医療の方が見て物になると感じていただけるようなレベルまで持っていくということが、この事業の考えているタイムスパンなのかなと思っています。
 【小谷臨時委員】物になるというのは、どのあたりのことをいうんでしょうか。企業で将来的にこういう価値を追求すれば何か出てくるかもしれないので、企業というのがどういう名前かよく分かりませんが、ワーキンググループのようなものを作ってもいいと思うようなことなのか、実際に商品にするために様々な方向から検討しようと思うのか、いろんなステップがあると思うんですが、物になるというのは、どの辺のことをイメージされているんでしょうか。
 【岩渕基礎研究推進室長】分野ごとに違うかもしれませんが、基本的には、企業が初期的な投資を行う判断を行うことができるだけの材料を集めると。プルーフ・オブ・コンセプトを実施するというところまで、この目標としては掲げているということです。
 【大垣部会長】例えばある分野は社会に実装するところまでいくのか、そうでなくて、非常に基本的な重要な事実を、エビデンスを5年で作り出すと、その後はまた次のステップがあるというのも一つの物になる形なんでしょうね。そうしないと、5年という期間が非常に短い設定になってしまう、戦略目標の対象が非常に狭くなるんじゃないかと思うんですが、それはそういう理解でいいですか。
 【岩渕基礎研究推進室長】そういう理解です。5年後に市場に出るというのは、基礎研究の範疇(はんちゅう)ではない。
 【大垣部会長】よろしいですか、小谷委員。
 【小谷臨時委員】はい。
 【大垣部会長】じゃ、小山委員。
 【小山臨時委員】  マッピングについて提案と申しますか、考え方についてですが、今見せていただいたマッピングを構成している個々のデータは、国力の源泉であると同時に、民間企業にしてみれば、技術的シーズに関する情報の宝庫だと思うんですね。ではこれらシーズをビジネスに展開していく際の考え方として、「出口を見据えた」ということになると、企業の場合ですと、出口としてのの「マーケティング結果」を現すマッピングというものがあって、それと、シーズマッピングの両方を照らし合わせて、つまり、自社の技術の強みであるシーズデータと、マーケティングしたデータを合わせて、どこを狙ったら勝てるだろうか、とやっていくんだと思うんです。ただ、日本全体でそれをやるのは非常に難しいとなると、別のやり方もあるかと思います。つまり、これは情報的に処理をするのが非常に難しいのかもしれませんが、例えば海外に対して、今日本国内に対して実施したのと同じようなシーズマッピングをしたときに、日本のマップの強みはこうだと、差別化することも可能です例えばアジアのある特定の国のマッピングはこうであり、一方で、我が国とはここが異なる、だとすれば、我が国のこの技術は、この特定国のこの技術と融合させれば、なかなか強くなるのではないかというような…つまり、日本の技術的強みを認識できるような何か新しい観点によって作成した差別化のためのマッピングがもう1個組み合わされば、今出てきたマップが非常に生きるのではないかなというふうに一つ考えます。
さらに、マッピングした情報の抽出や整理方法について経時変化について追うというのは非常に面白いと思います。経時変化を追うときに、単にグラフがどう変化しているかではなくて、これもなかなか見るのは大変かもしれませんけども、ある領域の研究がどう推移していったかという追跡がもし可能であったとしたら、それは面白いなと思います。特許を対象としたマッピング解析を実施する際には、ある特定の発明家の発明大賞の変化や、人材の流動なども追跡できるという話を聞いたことがございますので、論文でもそれが可能であれば、ある基礎研究をしている研究者の研究単にステップアップしていくことで成果が出ているのか、あるいはその研究者はずっとそこに残って研究だけが別のステージに移行しているのかとか、人材流動という点でも、日本に特徴的な強みというか、面白い情報が出ないだろうかというふうに思いました。
さらに、ジャーナルの種類を解析に用いるというやり方も面白いと思います。ジャーナルには、基礎研究が特にアップされるジャーナルと、応用開発段階になってきた論文を主に取り上げているジャーナル、産業界に非常に近い位置にあるジャーナル、というように幾つか特徴があると思うんですが、そういうところからどういうステージに研究ステージが上がってきたかというのを時系列に追うことで、対象とする技術の研究段階が基礎なのか応用なのかを探ることで日本の保有技術の特徴を浮き彫りにするというやり方もあるかなと思います。
さらに、最後のSTEP3のところの社会経済的な価値の創造というところなのですが、社会経済的価値というのは、もちろん利益を上げるという、外貨を獲得するとか、経済効率を国内でも上げていくということもあるかもしれないのですけども、今は、持続的経済成長というテーマの中で、「社会的責任投資」という言葉で投資を呼び込むという観点があるかと思います。実際に物をつくって販売し、それにより利益を生む、という前に、国としてどういう研究開発の姿勢を示しているかという観点で、海外に対しても、日本としてこういう姿勢で環境に負荷を与えない研究開発をしているという取組を前面に出すことができれば、ある意味、投資を呼び込めるということで経済活動につなげていくこともできると思いますので、そういう意味で、まず経済価値という観点での出口戦略思想を作っていくことも有効だと思います。そのためには、社会的価値というのを少し海外にも発信しやすい言葉にブレークダウンして、例えば、CSRとかSRIといった観点が入るようなディスカッションがワーキングでできてくればよろしいのではないかなと。ですので、川上から川下までのメーカープラス、そういった社会的責任投資という観点から議論できる人が加わったらいいのではないかと思います。
ごめんなさい、長くなりました。以上です。
 【大垣部会長】ありがとうございます。特によろしいですか。それでは、どうぞ。
 【波多野臨時委員】戦略目標が策定、最新のデータ分析法を取り入れたサイエンスマップをベースとするプロセスを初めて知りました。ありがとうございます。先ほど御意見がありましたように、マッピングは既に研究投資されている研究テーマであり、またシーズオリエントなマッピングですので、これを次のステップのアンケートやワークショップでどう戦略的基礎研究の目標に落とし込んでいくか、が重要と思います。マッピングに関しては、新しい価値の創生、分野融合的なテーマが俯瞰(ふかん)できるように、三次元の軸や深さ方向の指標が必要と思います。
 私は長年企業の研究開発におり、現在大学にいる立場から思いますに、最近グローバル化やオープンイノベーションが進み、企業での研究開発の役割や環境が変化している状況において、企業の研究者は10年より先の長期研究テーマとして何に取り組むべきか明確に示すことが難しくなっていると思います。したがって戦略的基礎研究の目標策定は、非常に関心が高いです。文科省への研究としては、応用に近いテーマよりも、新しい価値を見いだす研究への期待が高いはずで、参考の御意見をいただけると思います。その中で、次のステップの、「出口を見据えたというところがこの戦略的な目標」につなげるためのアンケートとワークショップがキーとなるわけですが、やや不十分かと考えます。アンケートの実施状況は、企業の方が13%という比率で少ない、また工学系が多く一方で社会経済は少ないという分野のバランスの改善が必要かと思います。アンケートの内容は6ページ目に示されているものでしょうか?少し曖昧です。特に先ほども小谷先生がおっしゃいましたように、どれぐらいの出口の研究を求めているか、ある程度明確に示す必要があると思います。産業界におりますと、出口イコール社会実装イコール製品化というイメージがありますので誤解を生じことがあります。一方で大学では、出口思考、社会実装を求められることが多くなり、混乱しています、また分野によっても出口の定義は異なると思います。いうのは違うと思います。ワークショップの開催も同様の工夫が必要と思います。
 以上です。
 【大垣部会長】ありがとうございます。では、柳川委員、お願いします。
 【柳川臨時委員】今の波多野委員のお話とも関係するんですけども、STEP3、大事なところだと思うんですけれども、私、経済学科で、社会科学の研究者としては、ここの部分は、単に産業界の方々にアンケートを聞くだけだと、なかなか本当の意味での社会経済的な価値の評価というのは難しいんじゃないかと思うんですね。ここは本来、社会科学・人文科学の研究者がきちっと研究をして、この価値と科学技術をどうやって結び付けるかというところをある程度しっかりやって、その成果を生かすという形にしないと、産業界の方がぱっとデータを見せられて、どうでしょうと言われても、なかなかそれは、もちろん、非常に商品化に近いところの者であれば、いや、うちはこれで商品できるかもしれませんということが議論、具体的に言えるかもしれませんけど、そういうレベルの話ではないというようなことがあったところなので。本来であれば、このSTEP3に向けて、STEP1、STEP2をというところまで必要ないのかもしれませんが、社会科学・人文科学の研究者、あるいは産業界の方と連携しながら、このところできちっと評価ができるような研究なり活動が不可欠なんではないかなと。現段階でそれがどの程度の時間と労力がかけられるかというのはあるんですけれども、本来はそういうことなんだろうと思います。その中には、そもそも商品化できるのかというレベルもありますけれども、何人かの委員からお話があったように、現状では商品化というところの目標自体も明確に企業の方々が把握できているとは限らなくて、ましてやCSRというお話もありましたけれども、社会経済的な価値と見据えた商品化という話は、なかなか具体的には目に見えていない。実際、本当に必要なことというのは、本当に人口問題等を含めて社会経済を抱えている、何となく大きな問題意識というのはみんなあるんだと思うんですけれど、それが科学技術と組み合わせることで、具体的な目標なり問題意識に落とし込めるかというところがないと、なかなかこの話はできないと思うので、そういう意味での研究者を少しここに入れてきて議論をするということは、それだけでは十分だと言っているつもりは全くないので、アンケート、ワークショップは必要だと思いますけれども、そういうところの可能性をできるだけ考えていただければというふうに思っております。
 【大垣部会長】ありがとうございます。それでは、まず竹山委員。
 【竹山臨時委員】このマップに関して、質問です。科研費をベースにした論文の出方ということでしたけれども、特許はどのように扱っていますか。特許は含まれないのでしょうか。
 【岩渕基礎研究推進室長】このプロセスでは、論文だけを見ていますので、パテントは見ていません。
 【竹山臨時委員】この図のつくり方に関しては、たくさんのコメントがありましたが、平面に落とす難しさがあります。事象が多次元だと思います。論文という次元に加えて、特許がありますが、分野によっては特許が出にくい、逆に非常に出ているころもあります。次元も異なりますね。
バイオエンジニアリング分野にいると感じますが、プラットフォーム的なテクノロジーは非常に重要だと思います。、例えば日本が次世代シーケンサー開発で全く負けてしまった現状があります。外国で開発発売されているものを日本全体として相当の金額を投入して購入します。昔はものづくりが非常に得意だった日本が、先を見越した技術開発に投資してこなかったのに比べて、外国、得にアメリカでは十年先を見越した戦略で進めています。一つ基盤技術ができることによって、メディカルから環境に至るまで幅広く波及することを視野に入れているのです。例えばサイエンスマップでは、そのような出口論はありますが、プラットフォームに関しては、あまり見えてきていないと思います。エネルギー分野では、プラットフォーム技術に注目はしているようですが、バイオサイエンスに関しては、弱いですね。本当の意味で日本の科学産業を活性化するのであれば、プラットフォーム技術開発が重要です。いつもユーザーでい続ける限りは、新たな産業は育たないし、日本が活性化する話にはつながらないですね。
そのようなプラットフォームになり得るところをマップから見いだすことができるのでしょうか。マップで常に赤くなってくるところは研究者数が多く、論文がたくさん出てくるかと思います。後追いで日本が参入するのか、日本が主導して新しくエリアを育てるのか、戦略が必要ですね。
プラットフォーム技術に対して注目するのも一つの戦略かと思います。
 【大垣部会長】ありがとうございます。では、若山委員。
 【若山臨時委員】  先ほどの3番目にある科学的な価値と社会経済的な価値の創造の両立可能な戦略にも関係して、直接的ではないと思いますが、未来、例えば10年後、20年後にどれだけの研究開発の人材が必要かということを想定するというか、議論するというか、それを各界の人たちから研究動向に照らし合わせて聞き検討してみるということは重要なんじゃないか。それがまた、例えば戦略目標作成プロセスにおいて、被引用度の解析などから、論文だけからでは分かりにくいという、そういう点もつかめるヒントになるんじゃないかと思いますので、このような観点を追加していただきたいと思います。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかには。それでは、角南委員。
 【角南委員】エビデンスの使い方なんですけども、多分これ、読み方とか、どういうデータを使って物を見るかというものは、むしろSTEP1、STEP2、STEP3というプロセスの前に、一度STEP3みたいなものをSTEP1の前にやっておくということが重要かなと思います。この流れでいうと、いろんなデータもあるし、分野によっても使いたいデータと使えないデータとか、いろんなものがあるわけで、それを全部STEP1で網羅をして出せといったら、これはどこかの参考資料のデータベースみたいになっちゃって、すごく分かりづらくなってくるということもあるんですね。データの分析の専門家から見れば、いろんな見方もできるし、いろんなプレゼンの仕方も、作り方もできるわけですから、普通はプロダクトが発注されるときは、発注者との間ですり合わせというのがあって、それで何となくこういうデータを作るんだというのが理解できるんですね。今までのNISTEPとかCRDSというのは、そこのところがやっぱり、少し政策を作る側との距離感というものが若干そういう問題があって、常にいいデータもあるし、すごく分析もできるんだけれども、使い勝手というと、みんないろんな意見が出てくると思うんですね。先ほどもパテントはどうか、あるいは人材の人の数もどうだ、まさにおっしゃるとおりで、そういうものがあって初めて戦略マッピングということになるんですけれども、データを作る側にしてみれば、言われれば出せるんだけど、最初からそれを想定して全部そろえちゃうと、今度は全部使ってくださいって、すごい何百ページのデータベースになっちゃうと。だから一度、そういうデータのことが分かっている、もちろん作り手の人と、ある程度のビジョン作りの人たちと簡単なワークショップ、STEP1の前に一度STEP3みたいなのをやって、STEP1をやって、STEP2をやって、またSTEP3に戻るという、ちょっと手間はかかるんですけど、そういうことをやっていかないと、分野によっても違うし、先ほどの川上委員の、医療だったらもっとマーケットがいいのでやらないと駄目だよねというようなこともあるでしょうから、そういうことを丁寧に少しやっていくプロセスを一度入れた方がいいではないかと思います。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかには。はい。
 【小谷臨時委員】私、先ほど質問したことの繰り返しになるんですが、この委員会の目標、目的が分からなくなってきて、例えばこの委員会で議論することが科学技術イノベーションをどうやって生み出すかということであれば、いろんな観点が必要かと思いますが、ここでやることというのは、戦略的基礎研究という委員会なので、前回、多分御説明されたと思うんですが、もう一度お聞きしたいのは、このSTEP1、STEP2、STEP3というのを見ると、ここで目標にしているのは、優れた基礎研究というのがまずあり、それをどういうふうにして社会的な価値につなげていくかということに関する戦略を立てろということなのかなというふうに、私は勝手に想像していたわけです。科学技術イノベーションを生み出す基が科学技術であっても、それは必ずしも質の高いサイエンスであるとは限らないので、もしそういうことも込みで科学技術を使って社会的な価値を生み出すという戦略目標を立てるのであれば、最初に科研費のデータを使うということではないと思いますし、そうではなくて質が高い研究があり、更に研究者人口もあり、日本の科学の強みであるところを上手に社会的な価値につなげていくための戦略目標であるというのであれば、このSTEP1、STEP2、STEP3でよろしくて、それにある程度フォーカスして議論をしないと、何となく発散してしまうと思います。
それから、いろいろな科学技術を社会に生かすためのツールというのもたくさんあって、例えばJSTだけでも、さきがけ、CRESTのようなものもあれば、ACCELもあり、A-STEPもあり、更に内閣まで入れればSIPとかImPACTとかいろいろなものがあって、それは全部同じフェーズを捉えているのであれば、単にお金の無駄使いなので。ここで議論しているのは、一体どのフェーズを捉えたいと思っているのかというのをもう一度御説明いただくと、議論が発散しないのかなというふうに思います。
 【岩渕基礎研究推進室長】総合科学技術イノベーション会議の小谷委員から頂いた御意見で、前回御説明した繰り返しになりますが、この会においては、出口を見据えた基礎研究というコンセプトで行うべき研究の在り方を議論したいのですが、出口を見据えたではないタイプとして、出口から見た研究というのもあるのではないかということを前回御説明しました。まず出口というものが明確にあって、その課題を解くために必要な研究を行うというタイプのものにも基礎研究というのはあるだろうと。これは出口から見た研究と定義して、ここではそうではなくて、この会は文部科学省の研究費の使い方についての会ですので、シーズの側から出口を見据えて、トップサイエンスの成果をトップイノベーションにつなげていくためにどうするのかという、飽くまでシーズプッシュ的なメカニズムである出口思考の研究、その戦略を立てていただきたいというふうに思っています。したがって、STEP1、STEP2、STEP3の順番が、まずサイエンスの動向を分析して、後ろの方でそのサイエンスが社会経済ニーズに結び付くのかどうかという議論、立て方、順番になっているのは、まさにこれが文部科学の出口を見据えた研究ということの戦略を議論しているからです。
 繰り返しですが、出口を見据えた研究だけが大事であるということを主張しているわけではなくて、我が国には経済産業省もあれば、内閣府のファンディングもあって、出口から見た課題解決型のファンディングというのはたくさんあるわけですので、それはそちらの方にお任せをして、この文部科学省のJST、あるいはAMEDを使ったファンディングの仕組みについては、サイエンスに基軸を置いた、出口を見据えた研究のやり方、これに集中して議論をしていただきたいと思っています。
 【大垣部会長】ちょっと確認ですけど、今、小谷委員の質問に、出口を見据えているとしても、シードありきなんですか、それともシードを作る研究も入るという理解でいいですか。要するに、このSTEP1という形で、1、2、3というふうにすると、1が大前提のように見えるもんですから。
 【岩渕基礎研究推進室長】シーズがある意味あって、科研費の基盤、成果がある中から光ったものを目利きをして見つける、例えばCRESTで山中先生を岸本先生が見いだしたように、萌芽(ほうが)的な研究の中からイノベーションに結び付くものを探し出すというようなイメージを持っています。
 【大垣部会長】ですから、iPS細胞はそのときにはなかったわけですよね。ですから、その分野が重要であるということで領域があった、そういうことも含むということは当然ですよね。
 【岩渕基礎研究推進室長】はい。
 【大垣部会長】シードありきの。すいません、念のために。よろしいですか、これは。
 【小谷臨時委員】はい。
 【大垣部会長】どうぞ、竹山委員。
 【竹山臨時委員】ということは、現状で研究人口が増え始めているというところを早めに見つけ出して、そこをもっと大きくするという意味合いでしょうか。
 【岩渕基礎研究推進室長】そういうイメージです。
 【竹山臨時委員】まだ未開拓の分野に投資して、新しい分野を作るのではなく、他と比べて多くの論文が出始めている分野を見つけ出してもっとアウトプットへ押し進めていく戦略を作るということですね。
 【岩渕基礎研究推進室長】流れは、そういう考え方に立っています。
 【宇川臨時委員】一言だけ。もう随分時間たっているので、もうごく簡単に。
 今の議論の論点ってすごく大事な点だと思っていまして、このSTEP1、2、3のサイクルは基礎研究なり科学的真実なりがあって、それを社会的価値に結び付けるという、そのサイクルでできているわけですよね。だけど、例えばJSTの資料の最後にも、情報科学技術分野がある意味抜け落ちてしまっているのは、これは一体どういうことなんだろうというふうなことがありますけども、例えばビッグデータなんていうのは、インターネットが発達して、社会的に様々なところでビッグデータが蓄積されて、実はそれをいろいろ使うといろんなことができるということが分かり始めて、それが非常に大きな活動になっているわけですよね。そこに科学的な真実であるとか、そういうことは必ずしも深いものはなくて、むしろそういった状況をいかに、情報科学技術を使って社会的な価値なり何なりに結び付けることができるかという観点で、ものすごく急速に発達している。したがって、論文もそんなにはないでしょうし、お互いに引用するというふうな文化もそこでは必要ないわけです。だけど、それは大事でないことでは必ずしもならないわけで、そういったものをここでどういうふうに、むしろ対象とするのかどうか。それから、対象とするのであれば、どうやって拾い上げるのかということをもっと検討しないと、今のこの仕組みで拾い上げられないものは、いつまでたっても拾い上げられないという状況は残ってしまうと思います。
 【岩渕基礎研究推進室長】おっしゃっるように、新興分野をいかに拾い上げるかということは確かにこのプロセスでは十分に表現できないという意識はしており、そこを読み込めるようなものに是非改善していただけると有り難いなと、そういう問題意識を持っています。
 【角南委員】ですので、データに頼る前に、今言ったようなことを専門家の方が議論していただいて、そうすれば、サイエンスマップをどうやって生かすかという、補完的なデータをとるとか、そうしないとデータを作る側も進化しないので、それを一つやるだけでも、かなり違うんじゃないか。それは現在の基礎からという今の流れを別にあれするわけではないんですけど、そういうところをうまくデータ的に出せというか、作ってっていう、そこがまずないと、そういう議論になると思います。
 【大垣部会長】STEP1にある研究動向の俯瞰(ふかん)という言葉は、データベースの俯瞰だけではなくて、広い意味の俯瞰であって、先ほど角南委員の前の発言で、STEP3を先にやる、議論するんですねというようなことにつながる、今の御発言も同じですね。
 【角南委員】はい。
 【大垣部会長】というようなことで、全体として御理解はよろしいでしょうか。予定時間がまいりましたので、特に発言はよろしいですか。
それでは、ありがとうございました。本日の審議内容を踏まえまして、事務局にて戦略目標策定指針の改定案を作成いただき、それを次回検討会で審議することとしたいと思います。
それでは、次の議題に入ります。
 「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)について」でありますが、まず、事務局よりWPIの最近の推進状況や成果について報告いただき、その後、WPIのプログラムディレクター代理である宇川委員から、WPIをめぐる最新の議論の状況について御説明を頂きます。
 最後に、再度、事務局より論点を整理していただいた後に、委員の皆様から御質問、御議論を頂きたいと思っております。
では、よろしくお願いいたします。
 【岩渕基礎研究推進室長】それでは、資料2-1の資料に基づいて御説明いたします。
 資料2-1を1枚めくっていただきますと、前回お示ししましたWPIプログラムの1枚での説明紙があります。前回の説明の中で、これまでのWPIプログラムの成果について十分説明ができなかったので、今回、プログラムの概要に加えて、具体的にどんな成果が上がっているのかという現況を御報告したいと思います。
2ページ目に、世界トップレベル研究拠点プログラムの発足経緯という紙を入れさせていただきました。このプログラムは平成18年に総合科学技術会議において、世界トップレベルの研究拠点づくりについてという報告を頂き、これに基づいて発足したという経緯があります。そのときの総合科学技術会議の文章を見ますと、このプログラムの狙いが比較的明らかに書かれておりますので、それを御紹介させていただきます。上の方の四角囲みの中ですが、世界トップレベルの研究拠点を従来の発想にとらわれることなく構築し、世界の頭脳が集い、優れた研究成果が生み出され、人材を育む「場」を我が国に作るということで、頭脳循環のハブとなるトップレベルの拠点を作るということが表明されています。その頭脳循環のハブになる世界トップレベル拠点のイメージが丸で四つ書かれており、一つ目、世界から注目されている研究者、集団を核にして「人」を重視した拠点を作る。二つ目、分野間にまたがるような融合領域の開拓をする。三つ目、国際競争力のある拠点ということで、研究者の国際公募であったり、英語での研究環境であったり、外国人研究者が集まるような拠点を作る。四つ目、従来の制度や慣習にとらわれないシステム改革に取り組む拠点を作るということ、トップダウンでの運営体制とか、年俸制によるメリットシステムの人事制度とか、そうしたことに取り組む拠点を作る。こうした先導的なトップレベル拠点を形成して、その成果については、これを日本のほかの研究機関に広めていくということのために、このプログラムをやるべきだということで始まった制度です。
この丸四つのそれぞれについて、平成19年以来どのような成果が出てきたのかについて、次のページから御紹介させていただきます。
めくっていただきまして、サイエンスの成果というポンチ絵です。サイエンスとしてこの8年間の政策推進の中で、WPIプログラムからどのような成果か生まれたかということを書かせていただきました。世界トップの大学等と同等の研究成果が得られているということで、TOP1%論文の創出割合について、これは右の方にグラフを書きましたが、上位1%へランクインする論文の割合、トムソン・ロイターのデータベースで並べものであります。WPI5拠点の平均値は4.63%ということで、全体の論文の中の4.6%がTOP1%にランクされています。この水準というのは、ロックフェラー、MITにつぐ数値で、極めて高い比率を示しています。
また、WPIの研究者の述べ26人がHightly Cited Researchersに選出されており、日本全体でこれに選ばれているのは100人ですから4分の1程度を占めているということになり、サイエンスとして非常にインパクトの高い成果を生み出しているということが言えると思います。
また、国内外の栄誉ある科学賞の受賞ということで、そこに例示をさせていただきましたが、WPIの拠点に所属している研究者の方で、そうした賞の受賞が数多くありました。
また、外部資金の獲得の数字を見ても、このサイエンスの質の高さが言えるのではないかということです。小谷先生もいらっしゃいますが、東北大学AIMRの研究者が獲得した外部資金というのは、東北大学全体の獲得額の5%から8%に当たるということで、極めて大きな評価、高い評価を研究ファンディング機関から受けているということが明らかです。
また、研究成果の実用化という観点でも幾つかの成果があがっているということを書かせていただいています。
 次のページが融合研究の成果です。この4本柱のプログラムの目的の一つである融合研究ですが、融合研究を推進するための様々な制度の構築、あるいはそうしたものに対する支援というものを行ってまいりました。融合研究立ち上げのためのスタートアップ経費の支給とか、あるいは異分野の研究者が一同に集うようなティータイム、合同セミナーの実施ということで、右の写真に書かせていただいておりますのは、東京大学のKavli IPMU拠点における、これは午後3時のティータイムの様子です。午後3時にあらゆる分野の研究者が一堂に会して異分野交流するということをこの拠点では実施をしていて、この中から具体的な分野融合の論文などが生まれているというようなことがあります。あるいは分野の壁を排除したアンダーワンルーフの研究棟の建設なども行われています。
 具体的に、異分野の研究者による共著論文の増加も確認されています。下の方に、ある拠点から出された論文の共著関係というものを示したグラフを付けました。それぞれがその拠点に属する研究者を示しており、色はその研究者の分野を示しています。丸と丸の間に線が引かれていますが、これは共著関係があることを示しており、その線が太い方が共著論文の数が多いということを示しています。この拠点プログラムが始まった当初において、この拠点は、物理学の学者さんの間では共著関係が若干見られますが、分野をまたいだ共著関係はほとんど見られなかったということですが、プログラムを推進する中で、拠点の中で異分野の研究者間の共著による研究、融合研究が進んだということで、物理学と材料科学と化学、工学と材料科学といった多様な分野間の融合研究が行われたということで、これも一つの成果だというふうに考えています。
 次のページは、国際化の成果です。このプログラムは、国際的な世界トップレベル拠点を目指していますが、徹底した国際化によって世界から目に見える拠点になっています。WPI拠点における外国人研究者の割合ですが、現在、平均で40%になっています。日本の大学の外国人研究者の平均というのは4.0%、研究大学と呼ばれておりますRU11でも教員に占める外国人研究者が4.8%ということですので、こうしたものと比べても極めて高い比率であるということが言えると思います。
ちなみに、ハーバードの外国人の割合が29%、イェールで31%、UCバークレーで30%ということですので、米国の主要な研究大学と比べても遜色のない比率になっているということが言えると思います。
また、こうした世界から目に見える拠点ということの表れの一つとして、東京大学のIPMU拠点は、米国の民間財団であるKavli財団から多額の寄附を頂きまして、巨額の基金を頂けるという程度までレピュテーションが高まっているということです。世界トップの大学等と同等の国際共著論文比率を示しているというのが左下にグラフとして書かれておりますし、右下のグラフの中では、外国人研究者からの応募が極めて多いということで、全体の90%程度は外国人が応募していると、こういうところからも世界的なこの拠点のビジビリティをうかがい知ることができると考えています。
また、次のページには、システム改革の成果を書かせていただいており、WPI発のシステム改革が国立大学改革プラン等を通して全国・全学に波及しているということが観察されています。例えば年俸制の導入について、WPIのある拠点においては年俸制を導入し、その年俸の額が学長さんの年収を超えるということで話題になったこともありましたが、そうしたWPI拠点において導入した人事給与システムというものが全学的に、あるいは全国的に波及しつつあるというような形でシステム改革の先駆けになったと。クロスアポイントメント制度についても、WPI拠点の設立において学内とのクロスアポイントメントが整備されたということを一つの引き金として、比較的、全国的に広がりつつあるというようなこと、あるいはその下の方、WPI拠点における先駆的なシステム改革として、拠点の運用システムとしてトップダウン型の意思決定システムを導入するとか、あるいは英語を公用語化して拠点を運営するといったことが実際に行われているということで、一つの成功事例かと思います。
 最後のページですけれども、プログラムへの全般的な評価として、例えば世界からの評価としては、ここにOECDのresearch excellenceプログラムのレポートを引用させていただきましたけれども、2014年のOECDのレポートによりますと、WPIプログラムが国際的なresearch excellence initiativeの一つであるというふうに、良い評価を頂いております。
また、日本政府の、あるいは与党の文書などを見ますと、自由民主党のJ-ファイルの中では、WPIの大幅な拡充に関する検討を行うべきというようなことがうたわれ、また、総合科学技術イノベーション会議のイニシアチブで閣議決定されます科学技術イノベーション総合戦略2014においても、国際的な取組を先導し優れた成果を上げ国際的な評価を行っているWPIということで、こうしたものについて、更に海外で活躍する日本人を含むトップレベル研究者を呼び込むような魅力あふれる研究環境を整備すべきということで、高い位置付けを与えていただいています。
WPIプログラムの現状ということで、これまでの成果を中心に少し御紹介をさせていただきました。
 以上です。
 【大垣部会長】それでは、続きまして、宇川委員よりお願いいたします。
 【宇川臨時委員】プログラムディレクター自身は、学振の黒木登志夫先生が最初からやられておりまして、私自身は2年前らかプログラムディレクター代理を務めさせていただいております。このWPIプログラムは2007年度に始まりましたので、今年で9年度目と。当初、10年の補助金のプログラムということで、そろそろ2年たつと10年の区切りがくるということで、最近、そのあたりを巡る議論が活発に行われているところです。
 私の話では、最初に、WPIプログラムがどうやって運営されているかということについて簡単に御説明した上で、最近の議論の状況をお話させていただき、最後に、私自身がどういったことをこの部会において議論していただきたいかということをお話ししたいというふうに思っております。
1枚めくっていただきますが、複層的なフォローアップ体制というふうに書いてございます。これを理解いただくために、もう1枚めくっていただいて、3ページ目です。プログラム委員会についてという紙がございます。4ページ目には、そのプログラム委員の顔写真が載っておりますが、WPIプログラム自身は、まずトップにプログラム委員会というのがあって、委員長は井村先生が務めていらっしゃる。4ページにもあるとおり、全体で15、6名からなりますけども、その中には6、7名の海外の方も入った有識者、非常に高いレベルの有識者から入った方々で構成された委員会ということでございます。
この委員会は年に1回あるいは2回開催されるわけですけども、実際の拠点、9拠点ございますけれども、その拠点の運営にはプログラムディレクター以下の方々が関わるということで、その次の5ページを御覧ください。
 拠点ごとにプログラムオフィサー1名、そのもとにワーキンググループ、7、8名からなるワーキンググループですけども、それが設置されております。ワーキンググループも半数が海外から、半数が日本からという構成で、様々な会議も全て英語でやると、英語が公用語という感じの会議になっております。そこにプログラムオフィサーの方々の顔写真も載っております。
 全体的なフォローアップ体制がどういうふうになっているかという御説明で、2ページのところに戻っていただきますが、左から右に年度当初の5月から年末の1、2月にかけての行事が書いてあります。毎年度、各拠点から拠点構想進捗状況報告書というものを提出していただいて、各拠点、9拠点ございますけども、そこに1泊2日の予定でプログラムディレクター、私、それからワーキンググループの方々がサイトビジットに行くと。サイトビジットでは、各拠点からの1年間の進捗状況を報告していただいて、いろんな議論をする。これに基づいてプログラムオフィサーがサイトビジットレポートと、10ページ程度の書類なのですけども、これを作ります。大体、例年10月にプログラム委員会が開催されて、そこでは各プログラムオフィサーから各拠点の報告があり、各拠点からは学長、研究担当理事の方からはホスト機関としてどういった支援をしているのかということが報告され、更に拠点長からは、科学技術上の進捗状況の報告がある。これを受けて、プログラム委員会の方で、1年間の進捗はどうであったのか、来年度に向けてどういったところを改善すべきか、こういう議論をする。これでもって終わりではございませんで、この議論を受けて、更にPD、POが拠点を訪問して、プログラム委員会の状況を伝え、次年度に向けての改善をお願いする。このサイクルを毎年毎年回しているわけでございます。選考プログラムとして、21世紀COEですとか、グローバルCOEとかございましたけども、各拠点に対してここまできめ細かいフォローアップをしているプログラムというのは、これが初めてではないかというふうに思います。
3ページを御覧ください。今御説明したことの繰り返しになりますけれども、採択から毎年毎年のフォローアップがございます。それを受けて5年目には中間評価が行われ、更にフォローアップが続いて、8年目に、10年以降をどうするかという審査があります。最後に10年目、あるいは15年目で最終評価をする、こういうサイクルで現在プログラムが動いているということになります。
 以上がフォローアップ体制なんですけども、次に、プログラム委員会において昨年から今年にかけてどういった議論が行われているかということの御説明をしたいと思います。
7ページを御覧ください。先ほど5年目の中間評価というものがございましたけども、2007年度に発足した5拠点については、既に平成23年度にこの中間評価が実施されております。その結果は2番目の丸に書いてございますけども、5拠点、東京大学のKavli IPMUがS評価、大阪大学IFReC・物材機構MANAがA評価、京都大学のiCeMSがAマイナス評価、東北大学のAIMRがB評価ということでございました。昨年度は平成22年度に採択された九州大学のI2CNER、グリーンイノベーションで採択されたところですけども、これの中間評価が行われてAマイナス。Aマイナスと申しますのは、現行の努力を継続することによって当初目的を達成することが可能と、そういう評価でございますけども、それがあったということであります。
 今年度はこういった中間評価はございませんけども、来年度になりますと、平成24年度に採択された3拠点に関する中間評価というものがございます。
 昨年度の議論の焦点が、次の8ページの延長審査というものでございます。WPI補助金の支援期間は原則10年間ということが公募書類にも明記されておりました。しかしながら、特に優れた成果を上げている拠点については、その取組を更に伸ばす観点から、支援期間を5年間延長することが可能である。これも公募要領には書かれていたことでございます。
 平成26年度、昨年度には発足以来8目を迎えて、平成19年度採択5拠点について、10年終了後、どうするのかということの審査が行われたということでございます。これについては、どういった観点から延長の可否を審査するのか。そもそもWPIの元々のミョッションが、どういうものと捉え付けて、何をもって達成されたとするのかということに関しての議論がかなりございました。それを受けて、支援期間は原則10年であるということ、それから、現在までに、先ほど岩渕室長からも御紹介ありましたように、成果が上がっているということを考えると、WPIプログラム自体の継続性ということも考えるべきではないかという観点から、そこの点線で囲ってある主に4点をポイントとして評価をすべきであろうということになりました。
まず、WPIプログラムの質の保証のためには、WPIにふさわしい成果が達成されたかどうかということは非常に厳しく評価されるべきである。これが1点目です。
その上で、5年延長に値する特に優れた成果というのは、極めて高い成果、例外的なケースのみ適用されるべきであるというのが2点目でございます。
 更に3点目として、WPI自身の成功を続けるためには、更新プロセスによるWPIプログラムの新陳代謝というのが重要である。10年をひとくくりとするプログラムですので、その次に続いていくためには、例えば新規拠点を採択して新陳代謝をしていくということが大事ではないかということが3点目であります。
それから4点目として、何度も繰り返して申し上げておりますけども、補助金終了後、原則10年ということでございましたけれども、終了後の拠点の維持というのは、ホスト機関が責任を持つものである。これも非常に大事なポイントとして強調されたところでございます。
こういった4点の基本的な視点を基にして評価が行われた結果、まずは五つの拠点それぞれが厳しい評価をパスするだけの業績を上げているかどうか、これについての評価が行われまして、5拠点それぞれが、プログラムが求めている成果を達成して世界トップレベルの研究機関の地位を確立したという評価でございました。その上で、例外的に優れているものはあるのかという議論が行われて、結果として東京大学Kavli IPMUが5年間延長というのに指名されたということでございます。
なかなか厳しい議論があったわけですけども、決定後に各方面からの意見がございましたので、紹介させていただきます。まず9ページ目、プログラム委員からの意見でありますけども、このプログラムは発足から8年で、五つの拠点が非常に高いレベルの研究拠点となった、そういう地位を確立することができた、これは非常にすばらしいことであるので、こうした成果を更に展開するために、新規拠点の公募について検討すべきではないか。10年で終わりということではないのではないかということが、まず1点目でございます。
それから2番目ですけども、WPI拠点というのは各ホスト機関の財産である。ここまで優れた研究拠点として育ったところは財産ではないか。ホスト機関が責任を持って維持することは当然ではあるけども、法人化以降、大学の財政事情が厳しい中で、その質を維持するということには様々な困難な問題も抱えているであろう。せっかくここまで育った拠点が補助金終了後も質を維持するというためには、どういった方策が必要かということの検討も必要ではないかというのが2点目でございます。
それから、いまやWPIは海外からも注目されていて、基礎研究所のブランドになっているのではないか。そうだとすれば、国としてもこのブランドを維持するための何らかの取組は検討すべきではないかというのが3点目でございます。
WPIプログラム自身に関しては、日本人だけではなくて外国人からも非常に高く評価されている発言が多々ございました。
それから次に、拠点からの意見でございます。1点目として、WPIというのは、短い期間で組織改革でありますとか分野融合、様々なチャレンジをしたわけでございますけども、これもWPIだからこそできたんだという御意見、それから、ホスト機関全体のシステム改革の駆動力としても大きな成果を上げたというのが1点目でございます。
それから、やはりWPIがブランドになったと、これは大事にしたいということは拠点側からも意見がございまして、拠点同士の団結力を高めて、ブランドを向上させるために、その成果を展開していくべきであろうというのが2点目でございます。
それから、世界的に見ますと、例えばドイツのマックスプランク研究所群というのは、センター的な研究所群として非常に名前が高いわけでございますけれども、将来的には、例えばWPIをマックスプランクにも比肩すべきブランドとするためには、補助金終了拠点も含めて、WPIの一員としての活動を保障するということを考える、何らかその仕組みを検討してはどうかということも意見としてございました。その内容としては、そこに書いてあるような、運営ワークショップの開催ですとか、合同アウトリーチ活動、それから国際的なビジビリティを高める様々な活動といったようなことが考えられるのではないかということがございました。
それから、現在の高いステータスの維持のためには、やはりプログラム委員会による定期的なフォローアップ、それによってWPIという名称の継続使用、ブランドの維持ということが1点、それから、それと併せてある程度の基盤的経費の措置というものも必要ではないかという御意見も拠点からはございました。
フォローアップの観点例としては、もちろんこのWPIにふさわしい維持をしているかどうか、ホスト機関はどういったサポートをしているのかといったようなことをチェックするというようなことがございました。
それから、基盤的経費に関しては、国際的な水準で国際的な環境の中で最高度の研究をやるというのがWPIではないかという観点からいたしますと、ブレインサーキュレーションの観点からの若手研究者の人件費でありますとか、そういったものを考えてもいいのではないか。そのときに10年で支援は、補助金は一旦終了ということでございますので、大学側がきちっとしたサポートをして、その上でマッチングファンドというふうなことを考えてもいいのではないかというふうを御意見がございました。
 今後の予定、11ページにございますけども、今年度のプログラム委員会は10月に開催の予定でございます。WPIプログラムのこれまでの状況、今後の展望について検討することになりますけども、以上のような御意見等を踏まえますと、1点目としては、新規拠点公募の必要性、あるいはその方針といったものの検討。これが1点目でございます。それから2点目として、補助金終了拠点を含めて、そういった拠点の維持・発展も含めてプログラム全体が発展していく、あるいは別の言い方をしますと、WPIプログラムが目指したものの成果の定着のための枠組みを検討するというのが、2点目ではないかなというふうに思います。
 諸外国の状況も参考にするために、10月のプログラム委員会の開催に合わせてワークショップを開催して、そういったところでの意見交換も踏まえて、こういった2点についてプログラム委員会としての結論を出していただいて、これを文科省に提案をプログラム委員会からする。これを受けて、この部会でWPIの今後についての議論をお願いするということになるというふうに思います。
 最後になりますけども、この部会で議論していただきたい点、もう少し踏み込んで書かせていただいたのが13ページということになります。1点目、新規拠点の公募についてでございますけども、これまでのWPIプログラムの成果を踏まえるとしますと、やはり新規拠点の公募をするかどうか、必要性云々(うんぬん)について検討を行う必要がある。一つポイントとしては、新規公募を行うのであれば、平成19年度採択拠点が10年目を迎える平成28年度、それを一区切りとしますと、平成29年度に新規拠点の公募を行うということを頭に置いて議論していただく必要があるのではないかというのが1点目でございます。
それから、2点目が補助金終了拠点の維持・発展を含めてのプログラム全体を今後どうしていくかということでございますけども、何度も申し上げたと思いますし、いろんなところからの意見でも、共通の観点として、各拠点は高い成果を上げている。したがって、これは今後、維持・発展させていくべきである。そのときの考え方として、例えばシステム改革の定着というふうな観点から、いわば拠点形成の最初の10年間、これはプロモーションフェーズというふうに言ってもいいかと思いますけれども、それとは異なる考え方で、それを更に維持・発展させていく枠組みを検討すべきではないか。その枠組みとしては、大きく分けて二つあるんではないか。
 一つは、先ほども申し上げましたけども、例えば若手研究者の雇用支援といったような、WPIとして維持すべき要になるところ、ここに焦点を当てた取組、枠組み、それが一つではないかというふうにございます。
それからもう一つは、例えばWPI Community、あるいはWPIアカデミーといったWPI拠点が構成する組織を設置してWPIの質の高さを維持していく。これは制度的な支援というふうに言えるかと思いますけども、その二つが考えられるのではないかというふうに思います。
 平成19年度採択拠点は、あと実際2年で終了するわけで、そのうちの4拠点につきましては、補助金についても10年度で終了ということですので、平成28年度には補助金が終了いたします。あと2年も切っているということを考えますと、こういった議論を今年度から始めていただく必要があるのではないか。特に制度的な支援が中心の枠組みについては時間もかかりますし、来年度から必要な予算を確保して実施すべきということを考えてもいいのではないかというふうに個人的には考えております。
 少し長くなりましたが、以上でございます。
 【大垣部会長】ありがうとうございました。
それでは、最後に、事務局より論点の説明をお願いいたします。
 【岩渕基礎研究推進室長】資料2-3の1枚紙を用意させていただきました。WPIに関する論点の素案です。
 平成28年度にはプログラム開始10年目を迎える、また、延長審査を終えた5拠点については補助金による支援期間が終了する拠点が出てくることなどを踏まえ、今後の論点として二つ書かせていただきました。
 論点の一つ目につきましては、新規拠点公募の必要性及びその方針についてということです。これまでのWPIプログラムが成功と評価されるのだろうか、あるいは評価される成果とはどういうものなのかということを客観的に振り返りながら、WPIの新拠点公募というものが今後必要なのかどうかという問題について御議論をいただければと思います。
また、こうした評価を踏まえて、仮にこれを続けるということであれば、今後、どのような成果をあげることを目指していくのか、あるいはそうした成果をあげるためには、こうした研究拠点整備という施策のスタイルが最適なのか、ほかの政策手段の方が良いのか、そうした選択についても御議論を頂ければ有り難いと思います。
また、形成された研究拠点の持続・発展を確保するための効果的な方策というものはどういうものなのかということも、新拠点公募をやる上では重要な論点かというふうに思っております。
 論点の二つ目ですが、補助金終了拠点の持続・発展も含めたプログラム全体としての政策成果の定着、これについても論点として幾つか書かせていただきました。
 最初の丸ですが、各拠点の持続というのは、当然ながら、原則ホスト機関の役割ですが、プログラム全体としてのブランド力の持続・発展ということのために、国としてフォローアップを行う必要があるのだろうか。国としてそれを行うのであれば、どのような観点で行うべきなのか、ということが議論の対象かと思っています。フォローアップの観点としては、二つほど書かせていただきましたが、世界トップレベル拠点として、その拠点の活動についてどういうふうに質の確保をしていくのかということ、また二つ目ですが、そうした拠点の成果を我が国全体にどういうふうに波及させていくのか、つまり、我が国の研究政策としての観点、こうした二つの観点からフォローアップをしていく必要があるのかどうかということについて御議論を頂ければと思っています。
また、補助金終了後の拠点が確実に持続されるために、これはホスト機関の役割が極めて大事なわけですが、ホスト機関はどのような支援を行ったのか、行っていくのかということについて、国として、補助金終了後においてもこうした評価やフォローアップをしていく必要があるのかどうかということについても論点の一つかと思っています。
 今後のスケジュールですが、新規拠点公募を仮に行うとすれば、先ほど宇川PD代理のお話にもありましたとおり、平成29年度から行うというのは予算の組立てからは自然なわけですが、そうしますと、来年の夏、平成28年の夏の概算要求において何らかの要求をする必要がありますので、それまでにこれをやるのかやらないのかという議論を固めていく必要があると思っています。また、今年秋、平成27年10月のプログラム委員会においても、このプログラムのこれまでの振り返り、自己評価の議論をしていただき、また新拠点公募を行うべきなのかどうかという御議論も頂くということですので、そうした議論の成果を踏まえながら、この部会でも議論をしていくということかと思います。
 一方で、宇川先生から御指摘のあったように、仮に来年度から早速取り組むべきような予算項目があれば、これは来年の夏の予算要求ということでは間に合わなくなってしまいますので、今年の8月の概算要求に間に合わせないといけないわけです。しかし、既に今年も5月になっておりますので、そうしたものがあるのであれば、この部会における審議を急ぎ、来年度に必要な予算とはどういうものなのかということについても検討しないといけないというようなことかと思っています。
 以上です。
 【大垣部会長】ありがとうございました。
それでは、今、説明のありましたWPIプログラムについて審議を行いたいと思います。御質問、御意見、御自由にお願いいたします。20分ほどを想定しております。はい、どうぞ。
 【有信委員】 簡単に。すごく難しい問題だと思うんですけども、私は全くの部外者なので、多少、傍目八目(おかめはちもく)的に発言をさせてもらいます。WPIが研究成果としては華々しい成果が上げられていること、これは明らかに事実であります。この点は認めますが、継続を議論するときには、じゃ、何を継続させるか。組織を継続させるのか、あるいは元々WPIができたときには、特定の人を中心にして、その分野に関係する研究者を世界中から集めて、世界最高の研究拠点を作るという形で、これは日本の大学の中でそれぞれの大学にお山の大将がぽつぽつといて、クリティカルマスを割っているような研究体制で、十分な成果が出し切れていないのに対して、極めて効果的な取組が行われたと思っています。したがって、こういう仕組みを、一つは組織的に、例えばマックスプランクという話が出ていましたけれども、継続させるのであれば、それはむしろ全く新しいタイプの、現在、議論されているような特定研究開発法人じゃないんですけども、そういう形の組織化をやるかというような議論に結び付くんだろうと思うんです。ただ、これは飽くまで大学の中の研究の在り方、基礎研究をやっていくという在り方に新しいシステム改革という切り口でやられたことなので、こういう部分をどんどん発展させていくべきだろうという、こういう視点で考えるべきだろうと思います。
そうだとすると、たとえ基礎研究にしても、10年継続をして、更にまた同じ内容で10年継続するというのは、個別にはそれぞれ議論が必要だと思いますが、一般的に言うとあり得ない話で、20年間、その研究生命が続いても、恐らく途中で多くのテーマは陳腐化してしまうし、新しい発想も出てこないので、優秀な研究者は必ずそれぐらいで研究テーマを変えたりするわけですね、意識的に。したがって、今のようなシステム改革の形を維持しながら新しいスターを生み出していくという意味で、新しい公募をやる視点を議論すべきだろうと思います。もちろん継続性とか、今のシステム改革で成果が上がっている部分について、個別個別に慎重な議論は必要だろうと思いますが、原則的には、そういう観点で進めた方がいいのではないかというふうに思っています。
 以上です。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかには。はい、どうぞ、竹山委員。
 【竹山臨時委員】相当額の資金が投入されていることを考えることと、外国の方も含めて優秀な人材を集めたというところで、当然のごとく費用対効果はそれなりのものがあってしかるべきと見ている方が多いと思います。ですので、トップクラスのデータが出てこないというのはおかしい話ではないでしょうか。その上で、さっき有信先生がおっしゃったように、10年という研究期間の後新しい公募を入れるのは当然の話かと思います。
あと気になるところは、どんなプログラムもそうですけれども、必ず終わりがきたら自己努力で継続しますとのお約束が前提ですが、規模をすごく小さくして名前だけ残しているという状況になってしまう例が多々見られているようです。今回、東大の事例では、もらっている額より研究費としてもっと外部資金を獲得している実績があるのであれば、その部分を伸ばしていただくという努力も必要かと思います。そのような努力なくして、次に当然お金がくるような思考というのはやはりおかしいと思います。先ほどの資料で、これによって波及効果があったという点があったかと思いますが、システム改革の成果にしても何かしらまたお国のお金が入って進んでいるものかと思います。クロスアポイントメントもSGU採択機関が率先して進めていますし、URAも国のプログラムで進んだものですね。自前で作り上げた制度は少ないですね。
新しい公募を入れることと、いい成果が出た機関は、終了後の独自の努力というものを見せていただきたい。よい成果が出たのであれば、それをどうやって維持するかということを、先に走っている機関が見せるということが必要だと思います。
 【大垣部会長】はい、どうぞ。
 【貝淵臨時委員】現実にプログラムオフィサーをやっている唯一の委員として、現状をもう少しだけ詳しく説明させていただきたいと思いますけども、新規公募をするということに関して、私も賛成であります。必ず新陳代謝は必要だと思います。
むしろ論点2の場合、プログラムが終わった後にどうするかということが現実に非常に大事な問題になってきていまして、今、国立大学が置かれている財務状況から考えると、恐らくWPIで非常に大きく成果を上げたところを、突然そのお金をなくしてしまうと失速していく可能性が極めて高いと思います。もちろん先生がおっしゃるように、自助努力は絶対に必要なんですけれども、それがカバーしきれない部分というのは必ず出てくると思います。
 一方で、このWPIの認知度、特に私の場合、ライフサイエンスですから3拠点です。iCeMSが肝細胞、IFReCが免疫、そして今できているIIISが睡眠ということで、これは極めて高いです。同じライフサイエンスをやっている人間から見ても、嫉妬を覚えているぐらい極めて高いレベルにあるので、せっかくこういうふうな形でできたものをこのまま失速させるのは、やはり国益に反するというのが私の正直な意見です。もちろん、破壊してしまって元からもう一度やればいいんだよという話もあるんですけども、これだけのものをこれだけの費用で作れたことは、今まで拠点形成ではなかったというふうに思います。したがいまして、これをいかにうまくソフトランディングさせていくかということは、感情論を抜いて、現実的に考えて、いい解決策を探していただきたいというのが私の偽らざる心情です。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかには御意見。はい、どうぞ、鈴木委員。
 【鈴木臨時委員】2点質問がございます。一つは、拠点と研究分野という、このつながりは絶対なのか。又は、拠点がまずあって、ほかの分野への応用も可能なのかということと、それから、先ほどPOC(プルーフ・オブ・コンセプト)というような定義が話題に上りましたけれども、具体的にどのようなPOCがこれまであったのか、また今後期待できるのかというところ。
 【岩渕基礎研究推進室長】まず二点目の方ですが、POCについて、先ほどJST、AMEDの戦略的研究について御説明しましたけれども、こちらのトップレベル研究拠点プログラムは若干色合いが違い、必ずしもイノベーションのための施策という組立てにはなっておりません。世界の頭脳循環のハブになること自体が国策として求められているというのが総合科学技術会議の最初の提言でしたので、そこはPOCのために行っているというものではないということです。もちろん拠点の中には、水素エネルギーの拠点などもあり、比較的POCが立てやすいものもありますが、そうではなく、宇宙の起源を探るといったような研究を行っている拠点もあります。若干、そこの捉え方は違うということです。
 最初の、拠点なのか分野なのかということですが、これも当初の総合科学技術会議の答申のとおりで、世界トップレベルの拠点を作るということ自体が目的になっています。これは世界の頭脳循環のハブになると、世界の研究者に注目される日本になるということ自体が目標となっていますので、拠点として世界に導いていかれるものを作ることが目標になっていますので、分野についての政策的な観念というものはそのときにはなく、どういう分野でも良いということで当初選んできたということがありました。ただ、新規拠点を今後仮に公募するとするならば、そういう考え方を維持するのか、あるいは日本として大事な分野に着目しながら拠点を作るべきということにするのか、議論の余地があると思っています。
 【鈴木臨時委員】ありがとうございます。
 【大垣部会長】今の御質問は、同じ拠点が分野を少し変えていくというようなことも質問の中にあったんですか。
 【鈴木臨時委員】はい。既存の拠点が分野を変えていくというコンセプトもあり得るのかなというのもお伺いしました。
 【岩渕基礎研究推進室長】なかなか急にこちらからこちらへということにはならないと思いますが、概念的にはあると思っています。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかにはいかがですか。はい、どうぞ。
 【小山臨時委員】  これも質問なんですけれども、「WPIが、すばらしい成果をあげた」、その理由というのは明らかになっているのでしょうか。
 【大垣部会長】お願いします。
 【宇川臨時委員】もちろん発足当初からトップレベルの研究を目指して、まずは拠点を形成する研究者はもちろん優秀な研究者からなっていましたし、海外からも集めた。それ以上に、それと並んでというべきかもしれませんけども、各拠点の運営において研究を従来の研究のしにくさをできるだけ排除する、研究がしやすい環境を作っていく。更にそれを我が国に閉じた環境ではなくて、グローバルな環境で情報交換なり刺激のし合いもできるような環境で行った。もちろん研究資金も潤沢に最初の10年間は投資をしていたということも、もちろん聞いております。
 【小山臨時委員】  どういった形で、次、ステップアップしていくか、あるいはWPIを今後どのような形にしていくかというのも含めて考えるとすると、今成果が上がっている理由をしっかり把握して、それを取り込んでまた次のステージに上げていくというのが正攻法ではないかと思うのです。例えば、よく聞く話が、海外のトップ研究拠点に行った研究者は、もう研究しかやることがない。とにかくスタッフが何もかもやってくれる、あるいは論文もラフスケッチを書けば仕上げてくれる人たちがスタンバイして、スタッフのメンバーの数が研究者と同じぐらいいるくらいというような、きちんと整備されていて、その中で、みんな各国の研究者がそこに来て、急所を得た論文をばんばん出していくというような体制が敷かれているというのを聞くのですけれども、WPIもそういうところに一つの目標があったのだと思うんですけれども、そういうシステムが生き生きと回っていけば、理想論を言えば、研究年限を限らなくても、システムさえ生き生き動いて、いろいろな人たちが場を活性化するということで参加してくれば、本当に自由な場になると思うんですよね。ですから、余り早い時期に、こうあるべきだというような余りタイトなルールを決めずに、なるべく自由で、でも、活性化していくような場を供給するにはどうしたらいいかというところも、経緯を踏まえながらですけれども、徐々に整備していくというふうに考えてもよいのではないかなと思います。
 以上です。
 【大垣部会長】研究支援スタッフの拠点での……。
 【小山臨時委員】はい、含めて。
 【大垣部会長】はい。
 【貝淵臨時委員】先生に対する質問の補足ですけど、もちろんスタッフが充実していて、研究がしやすいという制度はWPIでは海外と同等、あるいはそれ以上にできています。それプラス、私が感じるのは、フュージョンですね。例えばライフサイエンスの分野で免疫であれば、免疫学者だけがやっていたことと、今、イメージングが主体になった研究者がフュージョンすることによって、ほかのグループとか、ほかの海外の大学ができないような成果を出している。そういうアイデアは非常に大事で、個人のアイデアではなくて、インスティテュートとしてのアイデアとしていろんなものをフュージョンさせることによって世界トップレベルのものを輩出しているという現状があります。
 【大垣部会長】ありがとうございます。はい、どうぞ。
 【波多野臨時委員】急速に変化する世界の動向に対応し、新規公募することは重要と思います。また継続性については、各拠点が世界的な成果を出していて、確かにすごく惜しいと思いますので、ソフトランディングというよりもますますの発展を頂くのは最低限何が必要かを明確にする必要があると思います。また拠点間で連携して固定費を削減する、例えばスタッフを共通化する、研究者の拠点間の流動性を図る、などといった自助努力は必要と思います。一つの大学だけで自助努力というのは、今、私自身も大変だと感じておりますので、若い研究者や世界的な研究者が研究しやすい環境や運営を拠点間で連携する、世界と連携する、グローバルに産業界と連携するなど、新しい形の研究拠点の運営を示していただくロールモデルもWIPの重要な役割の一つだと思っています。
 【大垣部会長】  はい。
 【土井委員】二つの論点のうち一つ目に関しましては、やはり新規のものを募集するということは非常にそこを恒例にならってやっていくという意味では重要であるというふう考えております。
 二つ目の論点に関しましては、ここはすごく難しいところではありますが、国の予算が潤沢であれば、余り深く問題なくできるんだと思うんですけれども、そうではない状況でやったときに、逆に考えていかないといけないのかなと。それだけ成果を上げられたところであれば、自立して研究活動をしていくことができるはずで、そういう新しい、大学での今までの研究とは違うやり方ができる拠点として、どういう形で自立的な経営ができていくのかという、そういう見本を示していただくというのも、すごく重要であるのかなと。日本の大学は、国立も私立も国から運営交付金という形で受けていますが、それがこれから減らされるということで問題になっていますが、そういう観点から世界と戦うという意味でいえば、何らかの形で経営をしていく、経営できる拠点というのを作っていくということも非常に重要であるかなというふうに考えておりますので、Kavliのように寄附を得るという形もあるのかもしれませんし、別の観点で、EUのプロジェクトに関わるとか、いろいろな観点で自立して研究拠点が運営できるという新しい在り方を探っていただけるということを私は期待しております。
 【大垣部会長】ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。若山委員。
 【若山臨時委員】  この論点1、論点2の流れは原則的に賛成するものです。特に論点2についてですが 、同じことを言っているように聞こえてしまうかもしれませんけれども、持続・発展を促すということが大事だと思っていますので、その意味で、新規拠点公募というのと別に各拠点の特徴を生かしたような別枠での申請、つまり終了する拠点に対して公募をかけるような仕組みというのを少し検討してはいかがかと思います。
 【大垣部会長】  終了後の助成の資金に関して。
 【若山臨時委員】  そうです。予定された支援である10年が終わった後に、どんなふうにさらなる10年を展開していくかと、10年かどうか分かりませんけれども、ともかく長期間にわたって。
 【大垣部会長】ありがとうございました。竹山委員。
 【竹山臨時委員】今回、限られた資料でいろいろと深いディスカッションを、と言われても、何が焦点になるのかが分からず、普段から思っていることが意見となってしまいます。例えば今、皆さんが一番気になっているのは、今走っている拠点の終了後の対応かと思います。各拠点でも10年後終了した後のことに関しては、いろいろお考えもあるかと思います。その点に関してお聞かせいただきたいと思います。業績とその評価だけの情報ではわからないことが多いですね。特に継続性に関しては、拠点の中での考え方、どんな努力をしてきたのか等、終了までにそれを考えて何かやっていらっしゃって来たかと思いますので、そのところを聞かせていただいた方がいいと思いました。
 【大垣部会長】ありがとうございました。
ほかになければ、よろしいですか。今の件なんですが、実は、論点2に関しましては予算規模が書いていませんので、丸々そのままの継続もあるし、もっとずっと小さい形の助成という形で、その中でポイントになる、先ほど土井委員が言われた、新しい自立的な拠点への移行過程のための助成金とか、いろいろな形があると思います。予算額の問題も関係してくると思います。今御指摘のとおりで、情報が十分でないかも分かりません。
どうもありがとうございました。WPI、これでよろしいでしょうか。時間もありません。それでは、ありがとうございました。
 本日の審議内容を踏まえまして、事務局にて資料2-3の論点を改定していただきまして、次回検討会で更に審議するということにいたしたいと思います。
それでは、本日は以上で終了とさせていただきます。
 最後に、今後のスケジュール等について、事務局よりお願いいたします。
 【岩渕基礎研究推進室長】資料3に今後の予定を書かせていただきましたが、次回会合として6月8日月曜日、その次の会合として8月18日火曜日という日程を予定させていただいております。
また、今日の会議の議事録について、作成次第、皆様にお諮りしたいと思いますし、その後、ホームページで掲載をさせていただきます。
 今日の資料につきましては、封筒にお名前を記入していただき、机上に残していただきましたら、こちらから郵送させていただきます。
 以上です。
【大垣部会長】  それでは、以上をもちまして、第2回の戦略的基礎研究部会を閉会いたします。2時間半にわたり、どうも長時間ありがとうございました。

―― 了 ――


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