総合政策特別委員会(第25回) 議事録

1.日時

平成31年4月18日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省13階 13F1~3会議室

東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 総合政策特別委員会の議事運営について(非公開)
  2. 国内外の研究開発動向について
  3. 今後の論点について
  4. その他

4.出席者

委員

濵口主査、新井委員、大島委員、越智委員、川端委員、菊池委員、郡委員、五神委員、白石委員、新保委員、菅委員、角南委員、竹山委員、知野委員、塚本委員、十倉委員、橋本委員、畑中委員

文部科学省

山脇文部科学審議官、生川官房長、菱山サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、磯谷振興局長、坪井科学技術・学術政策研究所長、渡辺科学技術・学術政策局審議官、井上科学技術・学術政策局企画評価課長、大洞文部科学戦略官、中澤企画官、倉持科学技術振興機構研究開発戦略センター副センター長、中山科学技術振興機構研究開発戦略センター企画運営室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 総合政策特別委員会(第25回)


平成31年4月18日


○主査には、科学技術・学術審議会運営規則第6条第3項の規定に基づき、濵口委員が指名された。

○主査代理は、科学技術・学術審議会運営規則第6条第7項の規定に基づき、橋本委員が指名された。
 

【濵口主査】
  それでは、次の議題に移る前に、今回は第10期科学技術・学術審議会となってから最初の委員会でございますので、主査の私から一言、御挨拶申し上げます。
 第9期総合政策特別委員会に引き続き、今期も、僭越ながら主査を務めさせていただきます。会議の開催に当たり一言申し上げます。
 第5期科学技術基本計画平成28年1月22日閣議決定の策定後、約3年が経過しております。今後、第6期科学技術基本計画の策定に向けた文部科学省における検討を本格化する必要があります。その意味で今期は非常に重要な時期に入ると思います。今後、総合政策特別委員会は、2月に提示した論点取りまとめを踏まえつつ、我が国と世界の社会経済のパラダイムシフト、目指すべき国の姿などを見据えて、また我が国の科学技術が重大な岐路に立っており、抜本的な改革にスピード感を持って取り組まなければならないとの認識の下、重要な論点を洗い出し、骨太な議論を行い、総合科学技術・イノベーション会議での検討としてまいりたいと思います。
 どうぞ委員の皆様におかれましては活発な御議論をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議題2、国内外の研究開発動向に移ります。
 本日は、倉持科学技術振興機構研究開発戦略副センター長及び中山企画運営室長に来ていただいております。御説明をお願いいたします。

【倉持JST研究開発戦略センター副センター長】
  ありがとうございます。それでは、時間も限られておりますので、早速、今般私どもがまとめました俯瞰調査から、最近の動向と、そこから見出した主要な課題について御報告させていただきたいと思います。お手元の資料2でございます。よろしくお願いします。

【倉持JST研究開発戦略センター副センター長】
  よろしいでしょうか。
最初のページをごらんいただきます。私どもは、この資料の後の方に参考として添付しております4分野を詳細に分析しておりますけれども、ここではそれらを横断的に見たものをまとめております。少し抽象度が上がりますけれども、お許し願いたいと思います。
 まず、世界の研究開発の潮流についてでございます。近年の情報技術の進展、これは研究開発自体にも大きな変化をもたらしておりまして、研究手法のみならず研究開発の発想の拡大など、質的な変革をもたらしていることがあります。それから、科学技術と社会の関係の深化が進んでおりまして、ELSIであるとか、責任あるリサーチ、RRIといったことが重視されるようになってございます。それから主要国におきましては、研究開発の成果をイノベーションにつなげようとする、各国そういう競争になっているわけですが、社会課題の解決に向けた研究と基礎的な研究の両輪が重視されている状況にあります。それから、新興技術への戦略的取組とともに、特にSDGsにつきましては、その実現に向けて科学技術イノベーションの貢献が期待され、ESG投資の効果もありまして、ビジネスのバリューチェーン強化に努める企業と研究コミュニティーの協働が起こりつつあります。他方、グローバル化の動きとは逆に、米中を中心に技術覇権競争の様相も見られるようになっている。それから、イノベーション創出に向けて、従来のサイロを超えた連携を促進する動きが盛んになっているということが見出されております。
 そうした潮流を認識しながら我が国の状況を見ますと、まずもって主要国が科学技術を重視し、研究開発投資を拡充する中、日本の存在感が低下傾向にあります。もちろん個別分野では世界をリードする部分がございますけれども、やはり長期的に見て、今後は人材の確保が懸念される状況にございます。それから、社会ニーズの予測、創出、あるいは対応といったことと基礎科学の双方を見据えて、いわゆる研究基盤の整備が急務になっているのではないかということでございます。それから、Society 5.0であるとかSDGsといったビジョン、あるいは社会変革の目標達成に向けて、いわゆるミッション指向型の研究開発推進方策、後で少し述べますけれども、ここが必要な状況にあるのではないかということです。それから、研究成果を社会価値に転換していくために、規制やファイナンスも含めたエコシステムの形成であるとかELSIなどへの取組の強化が急務になっているということでございます。最後に、標準化や規制戦略などルールづくりがますます重要になるところ、この面での強化が必要だということでございます。
 資料の右側でございますけれども、ここでは注目動向と重視すべき方向性として、我々の問題意識を取りまとめさせていただいています。
 まずライフサイエンス関連では、データ駆動型研究であるとかイメージング等と合わせた、いわゆる技術領域統合型の研究に期待が寄せられている一方で、ハイスループット化や高コスト化への対応が迫られている状況にございます。私どもとしては、個別化・層別化医療であるとか、いわゆるバイオエコノミー等に注目しながら、データ・情報統合型の研究の推進や研究エコシステム・プラットフォームの構築が急務と捉えております。
 次に環境・エネルギー関連では、SDGsや気候変動対応への関心も高まっておりまして、温室効果ガス排出ネットゼロといった循環型社会形成等に資する研究開発への期待が高まっている状況にございます。私どもとしましては、CO2変換等に注目しながら、国際社会の要請への対応、あるいは多様なエネルギー源の最適制御といったところが課題というふうに捉えております。
 次に、システム・情報科学関連では、いわゆる技術のスマート化、システム化、サービス化が進んでおります。次の世代のAIとか情報科学技術と人文社会の連携といったところに注目しながら、情報技術とその他の横断・融合領域がこれから重要になるというふうに捉えております。
 ナノテク・材料関連では、我が国の競争力の維持が誠にクリティカルな状況になっているという認識であります。今後、IoT/AI時代のコアテクノロジーとしての新材料・デバイス・プロセス技術に期待が掛かっております。私どもといたしましては、多機能・低消費電力のIoTであるとか量子技術のデバイス化等に着目しながら、やはりここでも研究環境、技術基盤の強化が急務というふうに捉えております。
 それで、大変恐縮でございますが、次のページをごらんいただきたいと思います。ここでは主要国の科学技術イノベーション政策動向といったものをまとめております。
 まず米国でございますけれども、御承知のように、トランプ大統領は研究開発投資に厳しい姿勢でございます。それでも連邦政府の研究開発の優先事項として、安全保障と並んで、4つの未来産業における優位性を確保したいということで、AI、量子、5G、そして先端製造技術を重視しています。また来年度の研究開発優先項目におきましては、政府機関は基礎研究と初期段階の応用研究に焦点を当てるとしております。その中で、未来産業関係と併せて、NSFのコンバージェンス研究であるとかDODのデュアルユース研究重視の動向が注目されるところでございます。
 中国につきましては、正に正に国家戦略として科学技術を重視している国でございますが、2016年に国務院から打ち出された国家イノベーション駆動発展戦略綱要、ここでは、2050年までに世界の科学技術の中心になる、そしてイノベーションの先導者になるという目標を打ち出しております。それを受けて、まずファンディングを統合する改革を行いました。また、千人計画等で海外から優秀な人材を呼び込んで、国際的に人的ネットワークの形成も進んでいる状況にございます。また、中国製造2025であるとかAI2030といった国家戦略を次々に打ち出しまして、量子研究に集中投資を行うなど、産業力強化や企業を巻き込んだ拠点形成施策によるエコシステム形成などにも積極的に取り組んでおります。
 次に欧州でございますけれども、欧州は、EUの2021年からの次期フレームワークプログラムでありますHorizon Europeにつきまして、昨年、欧州委員会から案が提示されました。現在、欧州理事会、欧州議会との3者間調整が進んでいるところでございますけれども、英国の離脱問題や欧州議会選挙などがあって、まだ全貌が固まったわけではありませんけれども、現行のHorizon2020のレビューを踏まえて、それを更に前進させる内容になっています。
 Horizon2020では、ここにございますように3つの柱、卓越した科学、産業界のリーダーシップ、社会的課題への取組というものを立てておりました。このうち卓越した科学による最先端研究支援は高い評価を受けて、Horizon Europeでも継続拡充しようということになっています。それから、第2、第3の柱につきましては、折からのSDGsをめぐる動き、あるいは破壊的イノベーションをめぐる議論などを背景に、再整理がされております。Horizon Europeでは、第2の柱を地球規模課題と欧州の産業競争力といたしまして、この第2の柱において、6つのクラスター、健康であるとか気候・エネルギー・モビリティーだとか、そういうものですけれども、それを設定して、そのクラスターを横断する形でミッションを設定して、研究開発を進めることとしています。少し強調させていただきたいことは、こうしたミッション型の研究開発を進めるために、ステークホルダーとともに、時間を掛け、ステップを踏んで研究計画を決めている点でございます。
 それから、Horizon Europeの第3の柱はイノベーティブ・ヨーロッパということになりました。ここでは新たに欧州イノベーション会議というのを設置いたしまして、ハイリスク・ハイインパクトな技術開発の推進だとか、スタートアップ環境の整備を図ろうとしています。なお、Horizon2020のフューチャー・エマージング・テクノロジーというプログラムも評価が高くて、Horizon Europeに引き継がれることになっています。
 このように、EUでは研究開発をめぐる様々な要素を整理して、3つのフレームに分けてマネジメントを行おうとしており、学ぶべき点も多いように思います。
 続いて英国でございますけれども、英国は、基礎研究は強いけれども、その成果がイノベーションにつながらないところが課題とされてまいりました。2017年に産業戦略、将来に適応する英国の建設というものを打ち出しまして、2030年までに英国を世界最大のイノベーション国家にすることを目指すとし、グローバルな技術革命を主導できる領域としてグランド・チャレンジを設定いたしております。また、英国の研究イノベーション機構を新設して、その下に従来のリサーチカウンシルであるとかイノベートUKといったファンディングの組織を統合しております。今、EU離脱で大変なことになっていますけれども、科学技術面ではEU離脱後も準加盟国として参加する意向と承知しております。
 ドイツにつきましては、2006年以降、ハイテク戦略、新ハイテク戦略等を順次打ち出してきておりますけれども、昨年、ハイテク戦略2025というものを発表いたしております。高い科学技術力で飛躍的なイノベーションを創出していこうということで、産学官が連携して優先度の高い領域を決め、ステークホルダー共通のミッションを設定して推進しようとしています。そして、「飛躍的イノベーション庁」であるとか「サイバーセキュリティー庁」というものを新設しております。
 フランスにつきましては、マクロン政権になって、政府横断的にイノベーション創出を図るためにイノベーション審議会というものを新設いたしておりまして、研究から産業へのシームレスな体制整備を目指しております。イノベーションと産業のための基金というのを設けまして、その果実を関連施策に充てるということでございますけれども、また、それとともに大学再編と大規模化を進めて、地域ごとの研究力の向上を図っている状況にございます。
 恐縮ですが、また前のページに戻っていただいて、一番下段をごらんいただきたいと思います。ここは、研究基盤であるとか推進方策の課題についてまとめております。
 まず研究開発人材の育成はもとより、研究開発に関わる高度専門人材の育成・確保でございます。特に後者につきましてはキャリア形成も重要な課題になっております。
 次に、新興技術への取組に関しまして、ELSI/RRIの検討がますます重要になっていることがあります。特に、国際的にもこうした議論が進む中、日本からの発信が必要な状況と認識しております。それからSDGsにつきましては、もう御承知のとおり、国際社会が合意した社会変革目標でございます。SDGsを共通目標に、ステークホルダーが協働することが求められているわけでございまして、これは科学技術イノベーションのためのエコシステム形成にとって大変大事な機会となっております。ですからEUも次期フレームワークで第2の柱の中心にSDGsを据えまして、新たな官民パートナーシップの形成も視野にミッション型研究開発を進めようとしておりまして、日本もそのような推進方策が必要になっていると思われます。
 それから、研究テーマの高度化あるいは分業化と拠点化等を踏まえた、いわゆるラボ改革は、もはや待ったなしの課題でございます。これまでもナノテクプラットフォームなどの施策が打たれておりますけれども、分野を超えてフェーズアップが必要になっていると思われます。あと、データ駆動型研究を現実のものとしていく上で不可欠なデータの取扱いも重要な課題となっております。
 最後に、新興技術を創出してイノベーションにつなげる、あるいは融合・横断領域の研究開発を促進することは極めて重要な課題となっており、サイロを超えるために、その障壁を取り除くことは各国共通の課題でもあります。特に価値づくりだとか社会変革に貢献する科学技術が求められるようになりまして、人間の行動だとか思考といった側面と、従来の自然科学が扱ってきた側面との接点がとても重要になってきていると思われます。すなわち自然科学と人文社会科学の連携が大変重要になってきていることに触れさせていただきたいと思います。
 最後に一言でございますが、私どもCRDSでは、今回の俯瞰調査において、その前提となる社会動向等についても考察してまいりましたけれども、そこで出てきた問題意識を3つ、紹介させていただきたいと思います。
 1つは、いわゆるグローバリズムが揺らぐ中で、科学技術の規範性も問われているのではないかというところでございます。科学技術はむしろ格差拡大を牽引しているのではないか、あるいは本当に人類の幸福に寄与できるのかという議論さえ起きつつあるということでございます。こうした中で、国家戦略としての科学技術イノベーション政策を実効あるものにするためには、やはり国としてのビジョンの下に、教育政策であるとか産業政策であるとか、他の主要政策との接点を共有した上で、主要政策分野の課題を科学技術の課題に置き直して、その課題のソリューションを生み出せるようなエコシステムの構築が必要ではないかという点でございます。
 2つ目は、科学技術イノベーション政策は国情によって大きく異なるものでございますけれども、先ほどのEUの例にございますように、基本となるフレームに沿った理念の共有とマネジメントの実践が必要であり、特に望ましい社会変革に向けた研究開発活動を促進するための工夫が必要なのではないかという点です。
 3つ目は、いわゆる研究開発の土壌とか風土の問題でございまして、日本は分野横断性や人の流動性において課題があるわけでございますけれども、その根源はどうしてなのか、日本の研究土壌はどのような姿が望ましいのかというようなことが大事だなというところでございます。私どもといたしましては、こうした点に深い関心を持ちながら、俯瞰調査で抽出した課題について検討を深めていきたいと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。ありがとうございました。

【濵口主査】
  ありがとうございました。大変たくさんの情報をいただきましたが、ただいまの発表に御意見、御質問ございましたら、発言をお願いしたいと思いますが。
 新井先生、どうぞ。

【新井委員】
  貴重な情報をありがとうございました。最近の動向で気になっていることで、これに多分間に合わなかったのかなと思うので、お尋ねしたいんですけれども、IPAIというお話がありますよね。フランスとカナダが中心になって、AIと倫理に関しての2国での、何というか、G7に向けて打ち出しをしようというような話が出ていると思うのですけれども、我が国でもG7に向けてこの議論をリードしようというようなことのお話が官邸からも出ているのに、IPAIに日本が入っていないというか、日本側の、誰が責任者なのかとか誰が入っているのかとかが全然見えてきていない状況があります。
 やはりフランスとカナダに関しては、このAIと倫理とか、ロボットと倫理というのは、単にそういうことも考えておく必要がありますねみたいな話では全くなくて、アメリカとか中国の動向に対して、それの対抗手段として、ある意味、軸として戦略的に打ち上げたところがあります。日本ではまだそこのところが、CSTI等でも2年前くらいに報告書は出したんですけれども、国として戦略的にそこのところで中国やアメリカと対抗しようというような軸がまだ出てきていないような面があるかなと思っているのですけれども、IPAIの動向に関して、JSTというか、CRDSとしてお考えのところとか、把握していらっしゃる部分があれば教えてください。

【倉持JST研究開発戦略センター副センター長】
  ありがとうございます。私自身は、そこについての詳細な情報というのは持ち合わせていません。EUでもAIのガイドラインを出したりしていることについて、あるいは今御指摘になった、正に正に戦略性を持ってそういう議論がなされている状況が今回の俯瞰の中でも感じられましたので、今日御説明申し上げましたのは、そういう動向があるということと、そこから見出されたこと、そこについて見出された、気になることについては、我々としてもこれから深掘りをしますので、是非またその辺について改めてねじを巻かせていただきたいなというように思っております。

【新井委員】
  追加でよろしいですか。このAIと倫理という話をやろうとすると、例えば人工知能学会みたいなところがやっているという話もありますけれども、そうではなくて、むしろ日本側の法学部がどういう動きをしているかとか、そういうのを研究しているところがあるのかとか、そういうあたりもお調べになった方がいいのではないかなということで、一言。

【倉持JST研究開発戦略センター副センター長】
  ありがとうございます。

【濵口主査】
  ほか、いかがでしょうか。
 新保先生、どうぞ。

【新保委員】
  慶應義塾大学の新保です。今回、国内の政策及び国内外の政策について、海外の政策も含めて御紹介をいただいている資料かと思います。そうすると、米国だけでなく中国、EUなども含めて、諸外国全般の政策を把握するということを前提とする場合に、1つ抜けているのではないかという点が気になるところであります。
 2017年3月24日に我が国におきましては、日本学術会議が「軍事的安全保障研究に関する声明」を出しているということを前提とした上で、海外の動向も検討すると、日本の今後の科学技術政策を考える上では、国際会議に私も参加するたびに、ほとんど毎回議論になるのは、最近はAI兵器をめぐる、特にリーサル・オートノマス・ウェポン・システム、LAWSをめぐる議論というものがかなりの比率を占めているということを実感しております。とりわけ国際会議で喫緊の課題として、やはり特に倫理面など切迫した問題として議論がなされるものとしては、そのような自律型兵器などの問題が非常に議論されていると。
 特に、海外の動向ということで御紹介をいただいておりますけれども、例えば中国国務院が次世代人工知能発展計画というものを2017年7月に公表したときには、6つの明確な政策を打ち出しているわけでありますけれども、その4つ目には軍民融合領域におけるAIの強化ということで、中国は明確に軍事技術を民間にも転用するということを前提とした研究を行っています。我が国ではこれはできないとは思いますけれども、ただ、現在の諸外国における状況としては、この部分はやはり避けては通れない部分ではないかと思っておりますので、こういった諸外国の動向を適切に把握するということを前提としているのであれば、そういったところについて我が国ではどうするかということを考える上での基礎資料として、そのような点についても触れられてはどうかというように思います。

【倉持JST研究開発戦略センター副センター長】
  御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。私どもの立場は、できるだけ客観性を持ってきちんと状況をお伝えするということでございますので、御指摘のあったところについて意を用いていきたいというふうに思います。ありがとうございます。

【濵口主査】
  ほか、いかがでしょうか。
 菅先生、お願いします。

【菅委員】
  東大の菅です。CRDSの任務として、こういう技術動向を非常に調べていただいてありがとうございます。一番やはり問題なのは、どうしてもこれを見ると、ここの分野がすごい進んでいるので、日本が追い付いていかないといけないという議論に非常に聞こえてしまうのは避けられないのかもしれないですけれども、本来は、日本はもうこれから大きなお金をどんとどこかに、競争部分につぎ込むという体力がない可能性が高くて、そうでないところがどこかというのを一番知りたいんだと思うんですね。自前のことで恐縮ですけれども、例えば私が率いた特殊ペプチドなんて、誰も何も言っていなかったし、国から大きなお金を、サポートをいただいたような記憶もないし、こういうところに出たこともない。ですけれども、結果的に言うと非常に大きなインパクトを与えて、今、大手の製薬企業はほとんどペプチドの新しいユニットを抱えている状況に変わってきています。
 だから難しいのは、やはりどこにどういうふうにそういう芽があるかというのを、日本の中で、国内の中で見付けて、それを前面に押し出せるような、動向の中のどこに、どういう位置にどういうところがあるかというのを、非常にきっちりとした、明確なところを見据えることが今後重要になっていくのかなと思いますので、その辺も考えて、今後、国内のことを議論するときは、是非お願いしたいと思います。

【倉持JST研究開発戦略センター副センター長】
  ありがとうございます。とても大事な御指摘だと思います。私どもは、基本的には幾つかの分野について、科学の動きであるとか社会ニーズがどう動いているか、多少そういう理屈で考えて、俯瞰の構造を自分たちで議論して、それでいろいろな方々と議論しながら潮流を見出してきております。
 そういう形なんですけれども、今、先生御指摘のように、恐らくこれからの議論というのは、やはりいろいろなアイデアがどんどん生まれてくるような、正に正にそういう状況を作っていかなくてはいけなくて、その中で、果たしてどういうものがこれから夢を持てるのかみたいなところを引き上げるみたいなところがとても大事になってくると思います。従来型ですと、全体を見て、これだ、あれだということが見えるような、あらかじめプログラムされているような見方にどうしてもなってしまいますけれども、正に正にそういうものの中から浮き上がってくるものをどういう目でスクリーニングしていったらいいのかみたいなところについての目の磨き方とか、そういったところが極めて大事になると思いますが、そこのところというのは、恐らく1つだけの物差しではなくて、やはり幾つかの価値観で見ていくような状態を作っていかなければいけないのかなというふうにも思っております。ありがとうございます。

【濵口主査】
  今の御指摘は本当に大事だと思いますけれども、戦略的に見れば、敵を知り己を知れば百戦危うからずの、現状は適応している議論のところだと思いますので、日本の強みというか、我々の持っている潜在的な力をどう具現化していくかというところの議論がこれから非常に大事かなと。決して10兆円を超す規模を出しているEUとまともに正面から競争して何かやるということだけではないように思いますので、いろいろお知恵を拝借したいと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 ほか、よろしいでしょうか。よろしければ、議題を次に移らせていただきたいと思います。この課題はもう少し議論を深めていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします。
 それでは、議題の3、今後の論点について、まず事務局から説明をお願いいたします。

【大洞文部科学戦略官】
  説明させていただきます。資料は3-1と3-2を使わせていただきます。こちらについては、議論しやすいように机上にも配付させいただきますので、そちらを適宜御参照ください。
 まず3-1のスケジュールですけれども、右側にCSTI、総合科学技術・イノベーション会議のスケジュールが書いてあります。5月頃から基本計画の検討を本格化して、来年6月ぐらいには中間取りまとめを出したいと聞いております。それにしっかりとインプットしていくためにスケジュールを組んでおります。
 まず6月から8月に掛けて骨子案の取りまとめ、中間取りまとめをしていきたいと考えています。矢印にありますように、関係部会におきまして研究力向上に向けたシステム改革を今検討いただいておりまして、そちらのインプットが6月上旬にこちらの委員会にも来るようにお願いしています。そちらを踏まえ、まず前半ではシステム改革に係ることを御議論いただきたいと思っております。
 後半ですが、10月に、今正に正に議論になったような個別の分野についても関係部会からの知見をいただくということになっておりますので、そちらも踏まえまして、最終的には来年3月に最終取りまとめをしていきたいと考えています。
 スケジュールは以上でございます。
 続きまして、3-2の論点について御説明させていただきます。こちらはあくまでたたき台ということで、今日こちらで御議論いただくためのものですので、御自由に御意見をいただいて、それを基に作っていきたいと考えております。
 まず現状認識でございますけれども、1点目にありますように知識集約型への大転換とイノベーションプロセスの変化、パラダイムシフトというものを認識したいと思っています。次に、そのパラダイムシフトでは、従来の政策モデルのままでは変化に対応できないということを書いてあります。次に、次期の基本計画の5年間、2021年からの5年間は、長期的に我が国とって非常に重要ということを書いてあります。次に、我が国といたしましては、やはり社会を変革する先端テクノロジーの源泉、それを生み出す基礎研究というのをしっかりと強化するということと、その成果を基にイノベーションを生み出していく、そしてそれがSociety 5.0のような、人間中心のインクルーシブな社会の実現につながっていくということを書いています。
 続きまして、我が国が抱える様々な課題やSDGsのような課題について、先頭を切って解決して世界に発信していくということを書いております。続きまして、我が国の状況ですが、先進技術の受容性が高いことですとか、安全性とか信頼性の技術、リアルテックと書いてございますが、そういったものに強みがあると。また各国からの信頼もあるということもありますので、Society 5.0というコンセプトをいち早く生み出した国として新たな社会像を具現化していくことが重要であるということを書いております。
 それを受けまして、2つの四角に書いてあるように、知識集約型社会であり、先端テクノロジー、イノベーションプロセス、これが変化していると。その中でやはり不確実性というのが高まっていると認識しておりまして、多様性が重要であるということを認識しております。また、右の四角にありますように、その社会のパラダイムシフトに対応したシステムを、スピード感を持って構築していくということが重要だと考えております。
 これらを踏まえまして、今までのような場当たり的な対策ではなくて、システム全体を見据えた、本当に抜本的な対策を打ち出していきたいということを書いております。基本理念と書いていますのが、システム関連を検討するときの検討の視点でございますが、1点目は、不確実性の中で多様性が大事ということになりますと、価値創造の源泉となります基礎研究力をしっかりと強化していくということが重要と考えています。また、右の四角にありますように、社会のパラダイムシフトに対応するためには、それに対応したイノベーションシステムでないといけないということを軸としたいと思っております。
 まず左側の基礎研究力の軸でございますけれども、目指すべき方向性として5つ挙げさせていただいております。まずは、挑戦ですとか長期的、また分野を超えた融合的、こういった研究がしっかりと奨励されていくことが重要かと考えています。この中では、挑戦が当たり前となる文化とか、それを奨励するファンディングシステム、またアイデア、挑戦を重視する評価システムということが大事かと考えています。また、人文社会と自然科学を融合させていくこともここでは大事であると考えています。
 2点目ですが、若手研究者が自立して、安定したキャリアを持っていくということが大事だと考えています。こちらについては、テニュアポストをしっかりと確保していくことですとか、博士課程学生の支援ということが重要と思っております。また、萌芽的な研究ですとか若手研究者の自立に対する支援を拡大していきたいと思っております。
 3点目ですが、それを支える研究環境を実現していくということで、最先端の研究施設ですとか設備、それと支援体制というのを備えた拠点ですとか、あとは機器を集約・共用するコアファシリティーですとか、研究の自動化のようなスマートラボラトリーの促進をしていくと。また、それを支える技術職員についてしっかりとキャリアパスを考えていくのが重要と考えております。4点目は国際連携・国際頭脳循環、こちらを強化していきます。
 5点目ですが、先ほどの議論にもありましたが、やはり我が国の強みというのをしっかり認識して、それを生かした研究戦略を立てていくと。強みの筆頭といたしましては科学的卓越性、こちらを重視するような基礎研究文化が日本にはあり、ここをしっかりと維持発展させるということ。また、科学と産業で両方に強みを持つような分野をしっかりと戦略的に推進していくようなことも重要かと思っております。また、社会課題の解決ですとか未来社会ビジョン、そちらからバックキャストした研究開発戦略を、日本の持っている技術からフォアキャストしていって、その双方を考慮したところで研究戦略を作っていくということを考えたいと思っています。
 続きまして、右側のイノベーションシステム改革の話ですが、ここは主に新しく、これをやるべきということを列挙しています。1点目は知識集約型の価値創造システムというものを、大学と研究開発法人を中心として作っていく必要があると考えています。こちらは産学連携の強化ですとか大学の経営力の強化、また地域の核となるような大学による地域の活性化などがあるかと思っています。
 2点目といたしましては、デジタル革命による新たな研究開発の推進ということで、AIやデータを駆動した研究、またデータを共有するオープンサイエンスの推進か、研究情報インフラとしてSINETのようなものをしっかり高度化していくということを考えたいと思っています。
 3点目ですが、担い手がインクルーシブであるということは非常に重要だと思っていまして、地方大学、地方自治体等も一緒になってイノベーションを先導していくと。また民間の力ですとか女性の力、シニアの力、こちらをどう活用していくかということを検討したいと思っています。
 4点目といたしましては、イノベーションの担い手のキャリアシステムということで、いかに産学官の間で人材を流動化したり、キャリアを複線化したり、複数の組織に属するようなポートフォリオワーキングのようなたことを、科学技術システムの中でどう考えていくかということを書いてあります。
 最後に、政策のイノベーションで、これは我々政策の担い手が変わっていくということで、企画立案を我々だけでするのではなくて多様な主体と一緒にするとか、民間の研究支援ビジネスが非常に盛んになってきていますので、そういうのもしっかりと活用しながら政策を実施していくようなことを考えたいと思っています。
 最後、右に書いてございますよう、本委員会においてこれらについて御議論いただいて、更に抜本的な施策は何か、具体的に何をすべきか、というところを是非御検討いただきまして、それを取りまとめていきたいというふうに考えております。
 以上でございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。ただいま御説明がありましたとおり、資料3-2については、第9期の議論を踏まえて、事務局において主にシステム改革に関わる部分について論点をまとめていただきました。デジタル革命等に基づく社会のパラダイムシフトや日本の科学技術の置かれた状況に対する危機感など、現状を認識した上で、2つの基本理念と、それに基づく方向性ということが示されております。これは飽くまでも飽くまでも御意見をいただくためのたたき台ということですので、現状認識や今後の議論の方向性等について、御自由に御意見いただきたいと思います。これからしっかり1時間、時間を確保しておりますので、徹底して御議論いただければと思います。1つお願いですが、御発言はなるべく簡潔にお願いしたいと思っておりますので、どうぞ御協力いただきたいと思います。
 整理の基本上、前半20分ぐらいは現状認識についての議論をして、後半40分を掛けて基本理念、今後必要なシステム改革等について御議論いただければと思いますが、流れによってはどんどん御発言いただければと思います。
 どうぞ挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 五神先生、いかがですか。資料提出もしていただいております。

【五神委員】
  今の国際的な動向の説明、倉持さんからの説明及び事務局からのシステム関連の検討論点はそのとおりだと思いますが、第5期科学技術基本計画の中でSociety 5.0というのを入れたことが重要なポイントです。超スマート社会やIoTプラットフォームというような言葉があり、そうしたものを総体としてどう表現するかという中でSociety 5.0というキーワードが出てきました。第5期基本計画策定の時点ではまだはっきりしていなかったのですが、私も議員を務めている、2016年9月から開催されている未来投資会議の中で、i-Constructionやスマート農業といった取り組みが紹介され、いろいろなデータをリアルタイムで使っていくという、いわばデジタルトランスフォーメーションがこれからどんどん広がっていきそうだということを実感しました。産業の形も随分変わる中で、例えば車について、ぴかぴかの格好いいものを作れば売れたという時代から、ウーバーのような形でサービスを提供することが価値の中心になり、後者によって収益を上げるということがトレンドとしては明確です。
 それは世界では実はもう20年ぐらい前から進んでいたわけですが、日本は、高度経済成長を支えた、ものづくりを中心とした労働集約から資本集約に進むという成長モデルが主流でした。しかも日本では間接金融が一般的であるため、企業の方が資金を調達するときは、投資家を説得するのではなくて、銀行の融資担当を説得することが必要です。リーマンショックより10年も前に銀行が破綻して、銀行がより保守的な融資行動を取る中で、この20年間の世界の変化と少し違うことが起こったというギャップをどうするかを考えないといけません。
 もう一つは、そのデジタルトランスフォーメーションは、先進諸国全てが困難だと感じている格差の拡大に対して、むしろそれを縮小するというソリューションにつながり得るということです。その要素がSociety 5.0の議論の中にあったので、2017年のイタリアでのG7で安倍首相がSociety 5.0を紹介したときに、非常に高い共感力をもって受け入れられたのです。その直後に、ドイツの大学の学長さんから、Society 5.0に関して共同の研究会をしたいという通知をいただいたので、Society 5.0はかなりインパクトがあり、先進的であったのだと実感しました。その先進性が、今正に正に追い風となっていて、2018年の米中対立の激化やEU諸国の混乱、イギリスのブレグジットの問題などいろいろなことがある中で、やはり日本に頼りたいということがかなり見えてきています。象徴的なのが去年と今年のダボス会議の雰囲気の違いで、昨年は日本重視という雰囲気はほとんど感じなかったわけですが、今年のダボス会議で安倍首相が発言したDFFT、Data Free Flow with Trustという構想には世界中の方が賛同し、日本への大きな期待を感じました。それをG20の議長国として、WTOの枠組みの中で強化しながら主導したいと安倍首相が言ったということは極めて重要です。
 先ほど新井先生からフランスの話がありましたが、フランスはG7の議長国なので、同じような考えを持って、そちらで先手を打ちたいと思っているはずです。そうした状況も踏まえて、第5期科学技術基本計画で進めてきたものをどういうふうに生かして先手を打てるのかというところを、時間軸を捉えた上で今何をすべきかという観点が必要です。せっかくSociety 5.0というキーワードを入れ込んで、先行した議論があったことの優位性があるのに、第5期のときと同じような時間感覚でやって手後れになってしまってはとても惜しいのです。
 私がなぜそれを思うかというと、先ほど倉持さんに世界の情勢の変化をまとめていただきましたが、恐らく今はもっと先に進んでいるはずです。中国の状況は3か月に一遍ぐらい状況を見ないと変わってしまいます。1月にダボスで会った中国の経済界の大物も、随分随分立ち位置が変わってしまっているといううわさ話も聞こえてきます。そういう変化をきちんと捉えられていないと、議論がずれてしまうのです。
 そういう意味で、ケンブリッジやハーバードの学長と最近立て続けに会っているのですが、彼らの日本に対する期待は質的に変わってきています。つまり、インクルーシブな社会を作るために東洋の知は大事だけれど、その東洋の知をどう活用していくか、自らの強みと組み合わせた上でより高い価値を出そうといったときのパートナーとして、日本に対する期待は、実質的に高まっていると感じているので、それを生かすべきです。
 私が総長を4年務めた経験からすると、この改革は産官学民を全部同時に変える必要があります。パラダイムシフトを起こすためには、みんなで同時に川を渡らなければいけないのですが、その駆動力を見出せるところはどこかといったときに、大学を活用するというのが一番効果的だという結論に達しています。その手法も提出した資料に幾つか書いてあるので、具体的にはそれを見ていただければよいのですが、明確になっています。
 1つ簡潔に言うとすれば、大学というところが知識集約型という新しい社会において価値を生み出すモデルに変わるとすれば、今持っている資源を考えたときに、大学そのものがある種の産業体になるということは必然だと感じています。産業体とはいっても、ESG投資などの文化も普及してきている中で、資本主義自身が公共的なものを支えるという方向にシフトすべきだという大きな力も発生しています。そうした方向性と協調して、むしろ学としての長期的なものや学問の自由を守る仕組みとして産業化していくという方策なのです。そのときに、知識集約型社会において価値を作るものがデータだということが重要で、なぜかというと、大きなデータを扱うスキルや経験を一番持っているのは大学です。インターネットも学問研究から始まっていますので、今でも先進的で、例えばプライバシーを保護するためにどういう先進テクノロジーが必要かという議論の場合でも、大学が重要な知見を持っているわけです。だけれども、インクルーシブな社会というのを日本だけでは実現できません。知識集約型社会を実現するために世界全体の中でどういうものが必要で、そのバリューチェーンがどうなっているかというのを考えたとき、日本には重要なものがかなり欠け始めているのです。
 その例を1つだけ挙げると、半導体の、ロジックデバイスの最終製品が作れない国になったことです。知識集約型社会においてはデータが価値を生みますから、データを取得するセンサやそのデータを処理するデバイスはますます重要になります。それがなければSociety 5.0を実現するハードがそろわないので、国際協調のもとで進めていかなければいけない。外国とどう付き合うかというときに、外交オルタナティブとして大学のアカデミアネットワークが重要な資源になっているということを、ここ2か月ぐらいの間に実感することが度々度々起こっています。そういう視点で大学をどういうふうに使うのかという視点を持ち込みながら、産業界、政治、地方自治体も含め、全員が一緒になって取り組んでいくことが必要です。このときに、インクルーシブですからNo one will be left behindなので、東大だけに集中するという話ではなくて、そこを基点としながらも、日本の津々浦々まで元気を回復していくための仕組みをどうするかが重要です。
 そういう意味で見たときに、大学進学率が、鹿児島が36%で東京が73%という状態がいいわけがありません。知識集約型になるので、やはり高等教育を受ける機会は今以上に均等化しなければいけない。そのために、例えばSINETを活用して遠隔授業などを利用し、初中教育の段階から強化するというのは、手としては打たれていますが、全体のシナリオは描かれていないので、有効に使えるかどうかは分からない。そのシナリオづくりをきちんとした上で、欠けているものはやむを得ないので、そこをどういうふうに戦略的に補うかということに取り組む必要があります。そのためにはG20、G7の議論は極めて重要で、それが今年の前半に来てしまうので、相当スピーディーな議論で頭を整理することが必要だというのが意見です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。今の御発表も踏まえて、御意見ございますか。いかがでしょうか。
 新井先生、御意見ないですか。

【新井委員】
  今回の1枚物のパワーポイント、非常に分かりやすくて、重要な点がたくさんあると思うんですけれども、この中で2点に集約してお話をしたいと思います。
 まず産学連携です。1番の知識集約型価値創造システムの中核としての新たな大学・研究開発法人システムの構築というのは、非常に重要なことだし、やらざるを得ないと、事情もあるということなんですけれども、では具体的にどうするかということなんですが、まず1つ目はリカレント教育の拠点として大学を活用するということがあると思います。つまり、例えばAI人材を年間25万人出すみたいなお話が官邸から出ているわけですが、では本当に新入生50万人のうち半分をAI人材にしますかみたいなことは、なかなか難しかろうみたいなこともあるわけです。
 そういうのはどうしてやっていきますかと考えたときに、今、多分27歳ぐらいから37歳くらいまでの方で、元々は機械工学とか農学部とか、そういうところをお出になっているんだけれども、実際今そういう2次産業等に就いていらっしゃるんだけれども、この2次産業で食べていけると思っていませんと。なのでプラスIoTとかをして5次化したいとかというふうに思っていらっしゃる企業のところから、人を大学がリカレント教育で受け入れるというようなスキームというのを、今、例えば名古屋大学さんなんかと一緒に検討を始めていますし、私学ですけれども東京理科大学なんかは、例えば金融業界の方を受け入れて、Python等を教えて、文系なんだけれどもAI人材にしていくというような試みをされていたりします。もっとほかにもいろいろあると思うんですけれども、でもそういうのがばらばら行われていて、しかも大学の方に実はインセンティブが十分にない、今の状況だと。つまり企業の側がお金を1人当たり幾ら払いますみたいな形になっていて、お金ではなくて、忙しくなるばかりではあまりインセンティブが出ませんみたいなことがありますと、どうしますかということがあります。
 もう一つ、企業側の方にもこれを、いろいろやりたいんだけれどもやれないみたいな話が実はあって、それは中身は何ですかというふうにお尋ねすると、大学の優秀な大学院生に対して自社のデータ、生のビッグデータを見せて、それで一緒に研究開発をしたりとかIoTをやったりしたいというような気持ちはあるんだけれども、留学生の優秀な方の多くが中国等からの留学生だったりもしますと。そうすると生のデータを見せるのにちゅうちょがありますというようなお話も出ています。そのあたりのことをもう少し、マッチングとかをしないといけないなというような感じがあります。これが1個目です。
 2個目、これは五神先生もおっしゃったように、今どきは、大学の知財というのはもう既に、特許が幾つありますかとか著作物が幾つありますかというような物量の話ではなくなっていますと。むしろどういうビジネスモデルですかとか、どういうサービスに持っていきますかというアイデアになっています。ですけれども、日本の大学、特に国立大学の多くが、シーズを若手研究者が考えたとしても、その研究者がそのアイデアを基にして起業して代表取締役になるということを兼業規定でほとんど禁じています。文面上は代取になってもいいように書いてあるんですけど、実際は利益相反委員会で蹴っているので、情報の非常に有名な学部をお持ちの大学でも、情報分野で代表取締役を1人も出していないというような大学というのは幾つもあります。このことというのは、ある意味、スタンフォードとかアメリカの状況に比べると情けないというような気がします。
 例えば、いろいろ御心配はあると思うんですけれども、若手の研究者が、アイデアがあって、それでもって例えば研究的資金も付いて、それで何かやりたいですというような話があったときに、例えばクロスアポイントメントにして、代表取締役を認めて、何年間かさせて、駄目だったら帰ってきなさいというふうに、辞めさせる、大学の職を解くということではなくて、兼業を許すという方向にもう少しシフトしたらどうかなというふうに思います。
 あと特許については、その量、幾つやるというような数量目標を立てると、無駄な特許をたくさん取って、それが死蔵されているということが大変多いし、特許維持費が異常に掛かっているということもあるので、そこのところはもう少し質を見ていくということが重要だろうというふうに思っています。
 では、長くなりますから、今は1回、ここで切ります。

【濵口主査】
  ありがとうございます。五神先生、新井先生、共通しておっしゃっておられることは大学改革が重要であるということと、それから、五神先生の場合は企業体にすべしという方向もお示しになった。お二人とも言っておられることはデジタルが中心に変えていかなければいけない、SINETの問題もありますし、リカレント教育、人材育成をどうしていくかと、こういう問題もありますけれども、企業の方から見ていかがでしょうか。
 どうぞ、十倉先生。

【十倉委員】
  今回から参加させていただきます住友化学の十倉です。どうぞよろしくお願いします。現状認識の議論ということなんですが、五神先生の意見に全く賛同するところです。我々から見ましても、今世界はターニングポイントにあると思います。よく言われることですが、グローバリズムとか自由主義とか、そういうものの光と影がありまして、影の部分が出てきて、格差を非常に生んで、保護主義が台頭してきて、これではいけないと。ただ一方で、そういう反省もあって、地球全体のサステーナビリティーや、ダイバーシティー、インクルージョンといった概念が出てきて、それと軌を一にして、いろいろな技術革新、特にデジタルトランスフォーメーション、それから私はバイオ、ゲノムも入ってくると思うんですが、そういう技術革新があって、そういう科学技術、イノベーションによって地球のサステーナビリティーを中心とした課題を解決していこうと、日本の活路もそこに見出そうと、そういう動きがあると思います。
 こうした中で、皆さんおっしゃっているように、日本の有利な点を申しますと、日本は、いわゆる課題先進国でありますので、必要は発明の母というように、やはりニーズがあるというのは非常に大事なことです。それからもう一つは、今、米中が覇権争いをやっています。データの覇権主義とかデータ資本主義が取り沙汰されていて、データについて、中国のような、ああいう監視社会のようなデータ管理がいいのか、アメリカのGAFAのように私企業が独占するのがいいのか、ヨーロッパのように非常にプロテクティブになるのがいいのか、日本はここでルールメーカーというか、DFFTという話もありましたけれども、主導権を発揮する絶好のポジションにあると思います。
 それからもう一つ、日本の有利な点は、Society 5.0とかSDGsとか、経団連もSociety 5.0 for SDGsと言っていますが、こういう社会価値と経済価値を両立させるという考え方が日本の企業文化にあって、近江商人の三方よしとか、宣伝になりますが住友グループの事業精神も、「住友の事業は一住友のためにあってはならない、広く地域、国家、社会を利するものでなくてはならない」と。もちろん他のグループにもあると思います。ただ、経済的価値の方は、そんなに利益率が日本企業は高くないという課題はありますので、あまり偉そうには言えないのですが。
 では日本はどうしていくべきかというときに、大学というのは非常に大事だと思います。それにもかかわらず、私は、大学生のときは受験勉強から解放されて、遊びまくりました。今思えば本当にもったいないことをしたなと。大学は人文科学、社会科学、自然科学、そういう人たちの知とか情報が正に正に集積しておるところで、自分でどういうキャリアを積みたいとか、どういうことをやりたいという意識が明確にあれば、いろいろなことができたと思うんですね。
 今の私の例のように、日本に欠けているのは、というか日本人に欠けているのは、何がしたい、何をすべきかということを考える力が足りないのではないかと思います。そのためには、あらゆるものから解放されて、自由に物事を考えられる力が必要だと思います。今はやりの言葉で言ったら、リベラルアーツが必要だと思うんです。先ほど、五神先生が言われましたけれども、残念ながら、日本は、ものづくり、資本集約的なところを重視し、そこで活躍できる均質的な人材が非常に重宝された。そこで、企業は一括採用をやって教育し、新入社員は体育系で、チームスピリットがあるといった人材を重視してきたと。

【濵口主査】
  その問題意識の延長で、例えば先ほど新井先生が言っておられたリカレント教育などは、企業側は需要はありますか。どうでしょう。

【十倉委員】
  むしろ、需要が出てくるようにしなければいけないと思っています。企業人も同様に、自分が何をしたいか、研究もミッション型研究と言われていますが、何をしたいのか、そういう自由にものごとが考えられる力を、リカレント教育なども通じて、リテラシーを高めていく必要があると思います。
 少し長くなって申し訳ないのですが、私が一番申し上げたいのは、そういう高等教育につなげる前の段階で、中等教育も非常に大事で、大学に行っていきなりリベラルアーツを学んで自由に考えられるかといったら、そうではないと思うんですね。ここにおられる方々は、皆、我先に手を挙げて、御発言なさる方、できる方ばかりですけれども、多くの日本人にとっては、小学校3年ぐらいまでは手を挙げて、先生、先生と発表していると思いますけど、だんだん手を挙げなくなります。これはやはり均質社会、横並びで、目立つことが嫌だと、そういうものに染まってしまうんですね。中学生になると、手なんか挙げるやつは格好悪いというようなことになってしまって、そういうところから見直しが必要で、初等中等教育の見直しをすることで、大学という場を有効に活用できるようにしていただきたいなと思います。
 最後に、日本の強みは、やはり基礎研究だと思います。これを是非、大学を中心に、頑張っていただきたい。企業はもう基礎研究から応用研究に至るまで全部をやる力はありません。基礎研究のところは、是非、大学でやっていただきたいと思うんです。
ただ、基礎研究を誰が支えるのかというと、国や大学だけが支えるのではなく、企業も含めて社会全体で支えるべきだと思います。これは、経団連の意見というより、私個人の意見ですが、基礎研究が大事だというのは、大隅先生とかノーベル賞をもらわれた方々がおっしゃるのですが、そのときだけの議論になってしまいます。そうではなくて、音楽とか芸術とかは、社会で、みんなで育てようとしている公共財ですが、それと同様に、日本は科学技術立国ですから、やはり基礎研究も、企業も含めて社会全体で育てる。そういう意識が必要だと思います。
 少し長くなって申し訳ありません。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 ではどうぞ、中間の立ち位置。

【菊池委員】
  私が中間点だと思いますので、企業と大学の中を行ったり来たりしている少ない人材だと思いますので、意見を述べさせてください。
 五神先生がおっしゃったように、大学が産業の基というか、そこからいろいろなイノベーションが起こる場所として大学が非常に重要であるということは確かだと考えております。私がアメリカで経験したことは、なぜアメリカがかなり多くのイノベーションを起こすことができるかというと、恐らく大学のシステムの中で、例えばRAとかTA、アシスタントシップがあるんですが、その金額が、日本と比較して圧倒的に大きい。それは何を意味するかというと、一旦大学を出て、企業に出て働いた後、3年たった、5年たった、俺、何か新しいイノベーションを起こしたい、新しいことをやってみたいと。企業の中ではできない、でも企業の中で経験したそれを基に大学に戻ってきても、たとえ結婚していても大学に戻ってくることができる。それは単にアシスタントシップが出るだけではなくて、大学の中に、独身寮ではなくて、家族持ちの人もちゃんと入れるような住居を大学が提供しているという、そこの事実をもう少し見てもいいんじゃないのかなと思っております。
 私は企業の中で、いろいろなイノベーションを起こすための社内ベンチャーとかいろいろやったんですが、全部失敗なんです。それはなぜかというと、あまりにも身分が安定しておりまして、それで全くイノベーションにならない、ベンチャーにならない。やっぱりそこは大学が一番、そういう場を作ることができる。そうなると、私たちは今、何を考えているかというと、もう大学に転籍させようと、企業から。ある程度企業のノウハウを持った人を一旦大学に転籍して、その人たちが大学の中でいろいろな多様性を持って研究をし、新しいベンチャーを起こして、次の時代の技術を作ったら、また新たに私たちがそれを買い取ればいいわけですから、そういうふうな循環があるという思い切った施策をとる必要が日本にはあるんじゃないのかなと思っています。
 そうしますと、大学の中で、たとえ家族を持っていても研究者に戻ることができる仕掛け、もう一度博士課程に入ってもやっていける仕掛けを作っていかないといかんということになってきますと、単なる奨学金だけではなくて、やはり大学の中に、きちんとその人たちが生活していける、そして将来的には老後のことを考えてもあまり心配のない仕組みが国の中にあるということがあれば、どんどん多様的な循環が起こるのではないかなと思っています。だから、そこのところが少し議論に欠けているところかなと、そうしたときに初めて、大学がなぜ産業基盤であるかということが、それを足すといけるのではないかなと、実は五神先生のお話を伺って、考えておりました。

【濵口主査】
  ありがとうございます。とてもいい意見をいただきました。
 五神先生。

【五神委員】
  今の話題に関連して、お配りしたメモの3ページのところに大学の価値付けの転換という項があります。例えば東大は毎年1,500件ぐらいの産学共同研究をしているのですが、その多くの契約金額が100万円以下になっています。それはなぜかというと、例えば企業の中である技術的課題を解決したい、それを何々先生に手伝ってほしいというときに、必要なデータを出すために試薬を買って、装置を買って、実験を手伝う大学院生が何人月必要で、経費を積み上げたら120万円になりましたという契約をしています。しかし、その課題を解決することによって、ビジネスに使うなりして企業が得る価値は、120万円よりずっと高いわけです。つまり知識集約型で経済が動くときの価値付けというものがきちんと、相応の対価にならなければいけないのです。この「相応の対価」の好例が社外取締役の報酬です。東大にも社外取締役を頼まれる先生が結構いるのですが、そういった先生方は月に数時間の業務で年に数百万から千数百万の報酬を受け取っていることがあります。こうした価値付けが会社という社会の中で、株主にも受け入れられて、経営の中で成り立っているというのは、先ほどの共同研究と比べると、不思議に思えるほどのアンバランスさがあると思うわけです。
 どうしてそうなっているのかを考えてみると、知識集約型社会では、例えば車というモノではなくて、ウーバーのような、モノを活用して実現できるサービスの方に価値の主体が移ります。そのときに、サービスの対価についても、契約書がきちんと整備されていれば、契約の目的が満たされないと判断された時点で、契約を解除して対価の返還を受けることも可能になり、企業として株主への説明責任を果たせるようになります。つまり、価値付けをどう見直すかという企業側の文化を変えていただくと同時に、それに耐え得るように大学側も契約書をきちんと書けるような仕組みを作る必要があります。
 例えば東大の場合、私が総長になってすぐに、知財部長として知財分野に精通した弁護士を雇用しました。その結果として、一本一本特性に応じた契約を結べるようになって、だからこそ従来とは価値付けの方法を変えた形の契約も結べるようになり、いままでのコストの積み上げとは違う、組織対組織の連携が動き始めたのです。これはまだ始まったばかりですが、明らかにその需要は高まっているので、菊池先生がおっしゃったような形に向かって動く可能性は大きくあると考えています。ただ、現状の施策はそういうところをプッシュするようなものにはなっていないと思います。

【濵口主査】
  何人か大学の学長、副学長が。では、川端さんから。

【川端委員】
  今そういう話になって、幾つか考えることがあって、この次を考えるSociety 5.0が出たり何かしているんですけれども、では、先ほどCRDSの倉持さんが言われたみたいに、本当にまちは変わったのかという話だと思います、次は。要するに科学技術は本当にまちを変えたのかという、確かに企業はできたかもしれないし、物はできたかもしれないけれども、それが本当にまち自体を変えたのか。例えば、特にAIであるとかIoTとか、去年少しそんな話をした経験もあって、ものづくりで言えば、8割は中小企業が出来上がっていて、そこにIoTのデジタル機械がどれぐらいあるかというと、ほとんどないです。しかも100ボルトのコンセントすらないです。そうすると、サーバーだとかそういうものを置くような場所もないです、油ぎっていてと、そういう世界の中に、今、IoT、AI、いろいろなものが社会を変えるんだというけど、そこに行くためにはもう一声、次元の違う話が必要になっている、そういうふうに思います。
 それからもう一つは、今、五神先生も言われましたが、組織型の産学連携。これは私も経団連の方々といろいろ話して、こういう部門を作ってはきたんですけれども、では中小企業と組織型連携ができるかという話です。彼らに研究開発をやるから2,000万出せと言ったら、確実にもう参加しません。そういう世界は無理なんです、一つ一つの企業がスタンドアローンしている限りにおいては無理。それをやるためには、まち全体が1つのホールディングスのような形で動き始めて、初めてそういうことが成立していく。でも、それをやるのは誰がやるんだというと、基本的に自律的にはほとんど動かないのが現状なのではないかなと。
 そういう中に大学というものが機能を果たすべきものがあるのではないか。ただ、答えがあって言っているわけではなくて、そんな簡単ではなく、間違いなくスマートだ何だといって、お金を使って機械を導入すればまちが変わるかというと、全くまちは変わらないし、そんなものは要らないと言われる。せいぜいスマホがあれば十分ですみたいな、それぐらいしか動いていなくて、という意味では次のリーダーを作らなければならないというような、教育の話も出てくるかもしれないと、そういうふうに思っています。
 という意味で、次のステージでやるべきと私から思っているのは、やはり、例えば産業界で言えば、80%がいる中小企業が一体どうやって変わっていけるのか。先ほどの議論を聞いていても、やはり大手企業と大学との関係の中でこういうものが常に議論されていて、彼らが動くための、その目線での動きというのは、いわば公共自治体がやればいいじゃないかと、こういう話になるかもしれませんが、いやいや、言っては悪いけど、公共自治体も大して動いていないのが今の状況かなと。いやいやとか言いながら、まあまあ、というような話があって、そういう中で我々は一体何がどうできるのか。先端的な技術開発というのも、当然ですけど、それを社会実装するための仕組みというものを、国立大学にしても、各地域にある大学はもっとやり方を考えなければならない。それを国として、全体の施策を打つやり方があるだろうと。
 特に、少し言いますと、先ほど言ったように、では産学連携で100万円下さい、これだって大変なことです、中小企業との間で。どちらかというと、産学連携をやって、研究開発費、コストが幾ら掛かってどうのこうのとやったときに、彼らは多分払えないです、普通に積み上げたら。ということは、どこまで本当か分かりませんが、UCデービスだとかナパバレーとやっているワインに関する話だと、大手からは金を取るけど中小企業からはお金を取らない。取らない代わりに何が起こるかというと、その後、はじけたときに寄附だとか、そういうような循環をする。だからタイムラグがあるお金の循環だとかというのが新しいエコシステム……。

【濵口主査】
  それはカナダのウォータールーなんかも同じパターンでやっていませんでしたか。どんどん大きくなって。

【川端委員】
  ですよね。

【濵口主査】
  そういうモデルがいると思うんですけど、少しいいですか。

【川端委員】
  はい。

【濵口主査】
  越智先生、意見あると思う、そこら辺。

【越智委員】
  広島大学の越智です。先ほど倉持さんから世界の動向を言われた最後に、3つぐらいは考えておかないといけないのではないかというふうに言われました。そこで、科学技術が最終的に人類の幸せにつながるかどうかというような大きな命題が与えられたんですが、広島大学はやはり、平和の大学ということで、軍事と科学、そしてやはりSDGsをどういうふうに整合をとっていくかというのは、いつも議論になっています。
 長期的な展望と短期的な展望の中で話をしないといけないと思うんですが、短期的なことになると、五神先生がおっしゃったように、大学知そのものが産業的価値があるということで、これは変わっていかないといけない。そのために大学改革を積極的に推し進めていかないといけないということで、広島大学もかなり改革を進めているところなんです。ただ、現実的には集中と選択というのが起こっていて、地方大学はものすごく資金が細くなっている、年々徐々に細くなっているというのが事実です。それと人材の流動性ですね。これもほぼ一方通行です。地方から都会の大きな大学に吸い取られていくという形で、日本全体の未来を考えるのであれば、やはり地方にある程度の力を残しておくべきだろうと、私は思っています。そういう意味でも地方大学への支援は要るということになるのではないかというふうに考えています。
 それと、現実的には若手に、イノベーションとか目利きの話があったと思うんですが、その前に種をまいて水をやらないといけないと思うんですね。そのためには、少なくとも100万円程度は、海のものとも山のものとも分からない研究にまずお金を与えるべき、それが最初のスタートだと思うんです。芽が出たところにもっと集中していくというのはいいんですけど、全く分からないところにやはり張っていかないと、目利きの人でも芽が出る前には分からないというようなところがあるのではないかというふうに思います。そのためには、若手の時間をどういうふうに作ってあげるかというような視点というのが要ると思います。例えばサバティカルにしても、割と教授がとっていくんですね。ですから若手の人にサバティカルをとらせるような仕組みを完全に作っていくというようなことが要ると思います。

【濵口主査】
  先生のところはマツダと相当いろいろやっておられますよね。少しお話を。

【越智委員】
  そこの点ですか。もう少し言いたかったんですが。マツダさんともうまくやっており、地方が生き残るということになると、小さな企業との連携もかなりやっているつもりなんですが、一番大きなのはマツダさんでして、広島県と広島大学とマツダで、地方大学・地域産業創生交付金で10億円掛ける5年をいただいています。

【濵口主査】
  その成功の秘密は何なんでしょう。

【越智委員】
  大学の中にマツダさんとの、寄附講座ではないんですけれども、工学関係の共同研究を行う年間1,000万の講座が5つできていまして、スカイアクティブのエンジンなども広島大学の工学部の先生が支援をしてできたというようなことがあって、今考えていて、なかなか現実化しないのですが、マツダの研究所を広島大学の中に作ってほしいというお願いはしております。そういうふうに、常にマツダとの間のコミュニケーションをとっている、工学部の先生がとっているということが一番大きいことではないかと思っています。

【濵口主査】
  ありがとうございます。

【越智委員】
  あまり時間がないので、もうやめます。

【濵口主査】
  言いたいことはたくさんあると思いますけど、済みません、切らせていただきます。
 文書を提出されています郡先生、大学について、もう少し御意見を。

【郡委員】
  ありがとうございます。提出したのではなくて、昨日、突然に、前に書いているものを、今日参考資料として使うからいいかと言われて、悪いとは言えなくて、はいと言いましたけれども、ですから、見ていただいたら分かりますように、つれづれなるままに書いたので、まだ後ろの方は全く書いてませんので。
 これは後でお時間のあるときに目を通して、御批判いただきたいと思いますが、私の言いたいのは、今ずっとお聞きしまして、もう全くそのとおりだなと、大きくうなずきながら倉持さんの話から最後の越智先生の話まで拝聴していました。一番重要なのは、これをやり遂げるのは全て人だと、人をどうやって養成していくか、そして若干お金があればうれしいなと、そういうふうに思っています。人をどうやって養成するかというのは、まず研究者を社会がリスペクトするような世の中にしないといけない。研究者をリスペクトする1つというのは、若い人たちが研究者になりたいなと、親が、研究者になったらどうとか、そういうような環境を作らないといけない。
 先ほど十倉さんでしたか、3年生ぐらいまでは目が生き生きして、疑問点を持っていたと言われましたが、なるほどなと。間違っていなかったら、フランスのフーコーが、小学校の教育で全部自分たちの個性をなくして、そして従属する人間を作って画一化すると、多分言ったと思うんですが、小学校の人たちというものが目が輝いていることを二、三御紹介したいと思うんですけど、今日は多分、発明の日ですよね。それで今週が科学技術週間だと思うんですが、小中学生に対して毎年、標語を募集されています。あの標語を見ると、小学生にしては、本当に自分で書いたのと思うぐらいにすばらしい標語を書いていて、何年か前でしたか、私が一番インパクトがあったのが、はてながびっくりマークに変わる、それが科学と。この子すごいなというふうに思いました。どこの子かなと思ったら、やっぱり愛知県の子でしたけれども、豊田の子でして……。

【菊池委員】
  発明クラブがあります。

【郡委員】
  小学生というのは、本当に目が輝いています。あるいは、もう一つ御紹介させていただきたいんですが、今、名古屋で4年ごとに日本医学会総会をやっています。春休みに、市民、とりわけ子供たち向けに展示をやりました。そうすると、本当に広い会場に、春休みとはいえ多くの子供たちが来て、そしていろんなことをやっているんです。その人たちをそのまま養成する、それは喫緊の課題だという、何度もありましたけれども、今そこですぐに戦力にはなりませんけれども、その小中高校生の人たちに科学のおもしろさ、あるいは科学をやったらどうという親の後押しするようなシステムが要るのではないかと。
 具体的に言いますと、先ほどの医学会総会の展示、あれは時間が来ると、せっかく何億で作ったものを潰してしまうんですけれども……。

【濵口主査】
  先生の文書の中で私、特に目を引いたのは、やはり研究補助員、RAの養成とか、ここら辺のこと。済みません。

【郡委員】
  分かりました。では、そっちの方の話、ありがとうございます。私はそれはあまり言うつもりなかったので、たくさんある。
 とにかく子供たちに施設と、一番重要なのは、語弊があったらお許し……。

【濵口主査】
  ポイントは初等中等教育の……。

【郡委員】
  ではできない。

【濵口主査】
  できないものを大学が提供できるかということですね。

【郡委員】
  そのとおりです。要するに場所は産官がやる、それの人材は私たち、今、大学のミッションが話されていましたけれども、私たちがそれを請け負うということが必要ではないかということをお話ししたいと思います。
 それで、今、補助員に関しましては、これは先ほど諸外国の例が出ましたけれども、中国の勢いの一因としては、補助員さんが研究員の数倍いるというデータが前の研究所から出ていますけれども、そのことというのは意外と重要で、やはり分業すること。企画する、実際にやる、あるいは論文化する、そのようなところをやるには、全ての人が一連のことをやるのではなくて、優秀な補助員を求める。単なる補助するのではなくて、できれば国家資格とまでは言いませんけれども、そういう、この人はレベルが高い補助員だという人を養成していくことが、エキスパートが専念して研究ができるのではないかというふうに思っています。
 これは補助員の件ですが、もう一つだけ、最後、お金の話についてだけ言わせてください。あまりお金の話を言うのは嫌なんですけど、外部資金、とりわけ科研費のことについてお話しさせていただきますが、入り口が非常に厳しい。審査されるときに重厚な書類を書いて、厳密な審査をされるのはいいんですが、どうでしょうか、実際。これは本当に多くの方がおられるので、言葉を選びますが、その費用がどれだけ果実になっているか。とりわけ論文が減っていると言われたときに、どれだけの論文が出ているのか。単純計算でしますと、2,300億円の科研費、それに対する論文数で言うと、1件当たり大体300万円も掛かっていると。掛かるわけないのになと、もちろん種類にもよるでしょうけれども、要するに、お金をもらったら、それをきちんと論文化する、そこのところに審査をシフトするべきではないかと。越智先生か誰かが入り口をもう少し広くして、100万でも与えたらどうか、それに私が付け加えさせてもらうとすれば、途中で取り上げてもいい、あるいは審査を厳密にして、その人たちの施設あるいは個人にはもう永久に駄目よというぐらいの厳しさがなかったら、もらったというふうに思います。とりわけこの2年間ぐらい、若手研究者に頑張れというのでお金を渡すのはいいんですが、実績もないその人たちにそのままあげて、それが数年後にどのような成果が出るかという検証はしっかりやらないと、やはり血税を預かっている私たちとして責任が重いなというふうに思っています。
 最後に、新井先生から言われたリカレントに関して、全く同感でして、これは、私たちは公立大学ですので、自由にいろいろなところを発想できるというふうに思っています。それで、本学のことで恐縮ですが、リカレントの人たち、いわゆる社会人の人たちと18歳の子たちが席を一緒にする、学ぶというのは一見、格好がいいんですが、どれもうまいこといかないと。それで、リカレントの専用の学部、そして大学院、その人たちだけのため、それを企業とタイアップして来春にオープンする予定にしています。
 以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、白石先生、どうですか。

【白石委員】
  3点、まず申し上げます。1つは、これは先ほど既にどなたかが指摘されたことですけれども、確かに日本の今の体力から考えますと、今本当に強いのはどこなのか。それは分野だけではなくて、研究グループのレベルで、やはりアイデンティファイする必要があるのではないか。実際に私、ワシントンのシンクタンクだとか政府関係の人たちと話しますと、彼らは知っているんですよ。例えば、日本はこの分野が強いから、この分野ではコラボレーションしたいとはっきり言うわけで、ほかの国の人たちが知っていることを、例えば我々が知らずに議論するというのは、いかにもまずいなと。そういうことは、やはりある程度、そんなにお金掛かりませんけれども、きちんとお金を付けて、JSTでやっていただくならやっていただければいいと。これが1点です。
 それから2点目は、これは私自身もこの1年ほど、九州の方の大学に行っておりますけれども、私はやはり公立大学というのは、アメリカ風に言うとカレッジであって、教育大学だと思っています、研究大学ではないと。ということは2つの課題がありまして、1つは、そうはいっても優秀な研究者がいるわけです。だけど、その人たちは必ずしも、先ほど話がありました大企業の人たちとお付き合いしているのではなくて、むしろ地方の非常にいいものを持った企業だとか、あるいは農協だとか、あるいは漁協だとか、そういうところと仕事をしていて、100万出せというと、やっぱり逃げちゃう人が結構いる。だけど、ほかの形で、例えば海水の調査をするのに船を出してくれるだとか、実はいろいろな形のコラボレーションというのがあり得るので、そこのところをやはりきちんと整理して、それで地方の大学をサポートするということをしないと、どうしても国のレベルで見ると、大学改革、これは研究大学の国際競争力をどう強化するかという話になって、私なんかが見ると、これは関係ないなと、実は思うところがございます。ですから、そこのところをやはりきちんと考える必要が。

【濵口主査】
  分けていく必要がある。

【白石委員】
  はい。と私は思います。教育大学だけれども、その中で1つ、研究者をどうサポートするか。
 それからもう一つは、これは流動性に関わるんですけれども、そういう私の今勤めております大学でも、やはり研究者になりたいという人がいるわけです。だけど、そういう人が、それでは東京だとか関西とかの研究大学に進学しようと思うと、例えば、最近はそれでも入れるぐらいは入れるようになりましたが、フェローシップがあるかというと、ないと。まして1回、大学を卒業して勤めて、先ほども話がありましたけれども、どこかに行こうというとますますサポートはないと。だけど、ここのところをきちんと考えないと、流動性は上がらないと思うんですね。ですから、それが1つ。
 それからもう一つ、これは私、昔、京大におりましたときに、私の分野は地域研究ですけれども、私と何人かの同僚で始めて、20年掛かってうまくいったと思っていますけれども、我々、普通若い人は、いつも大学院生、特にPh.Dの学生さんが多いんですけど、ポスドクが物すごく大事になってきているんですね。例えば京大の東南アジア研究センターですけれども、20年前だったら、例えばコーネルだとかイエールのPh.Dがポスドクで京都に来たいとは言わなかった。今、来るんですよ、今もう本当にヨーロッパだとかアメリカ、オーストラリアのトップクラスのPh.Dの学生が、ポスドクで3年とか5年とか、来たがっているんです。ですから、私はポスドクというのは狙い目だと昔から思っているんですけれども、そこのところをやはりどうとってくるか。

【濵口主査】
  誘導してくるか。

【白石委員】
  特にこれは国際的な多様性ということを言うときには非常に大事ではないかと思います。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 それでは、菅先生。

【菅委員】
  ありがとうございます。お聞きしていて、少し皆さん勘違いの部分があって、少し是正したいと思うんですけれども、まず大学は、たとえアメリカの大学でも日本の大学でも、会社を作るときに取締役社長になることは許されていません。アメリカの大学だと取締役になることすら許されていないことがほとんどです。そのとおりです。東京大学も取締役社長になることは許していませんけれども、取締役になることは許されています。ですので、そこの認識の違い。
 問題は何かというと、実は発起人になることです。発起人になっても、別に取締役社長になる必要はないですね。大学のルールを読むと、自分の技術で、大学で開発したものを使って起業するのはよろしいと書いています。ところが発起人になろうとすると何が起きるかというと、実はこれは私が経験したことで、五神先生にも申し上げたんですけれども、発起人になろうと思うと利益相反委員会があって、そのときに何を言われるかというと、会社の書類を全部出してください、それから会社の社長からの依頼の手紙を出してくださいと。済みません、会社はまだないんですけど、これから発起するんですけれども、そういうものを必要とすると。そういうところがやはりまだ日本の大学の中で、ベンチャーを作るというところに対する体制づくりが、東大でもこういう形なので、東大がほとんどのひな形を作っているので、そういう状態になっていないというところが第1、大きな問題だと思います。

【五神委員】
  それは直しました。

【新井委員】
  すばらしいです。

【菅委員】
  そこの認識の違いがあると、一番大きな、今、エコ、イノベーションのことを考えると、やはりそこはすごくキーなんですね。
 もう一つは役員報酬ですけど、ベンチャーを作って役員報酬をとったら、恐らくその会社は潰れます。なので、私はゼロです。今、済みません、ペプチドリームはもう完全に退任して、私はペプチドリームに入っていないですけれども、今また別の会社を作っていますが、ゼロです。要は役員報酬なんて上場した後でいいわけで、それまでは全くゼロベースで構わないわけですね。だからそういうところが、やはり日本の大学のエコシステムの中できちんとまだできていないということです。
 それから科研費についても、またこれもなかなか私が経験していて思うことなんですけれども、最近、実は報告書がすごい増えました。AMEDなんて、ものすごいです。もう私は今、この時期、こんなところにいる場合ではないです。実は4つぐらいAMEDの報告書を抱えていまして、その締め切りに追われているんですけれども、報告書、すごい増えました。
 アメリカと何が違うかというと、アメリカの場合は、報告書イコール次の採択につながるんですね。要は次の申請が報告書になっているんです。だからモチベーションがあるんです、報告書を書く。日本の場合は報告書を書いても、それは決して次につながらないので、そこで終わってしまうんですね。なので、今、毎年報告書を書いて、これは一体、次にどうつながるんだというのが常に、恐らく全ての研究者の人が持っている疑問だと思うんです。ここを早く是正すべきところかなと思います。そうすることによって本当の意味での基礎研究もできるし、イノベーションに続けたいというのだったら、また次の研究費につなげていくとかいうふうな形のシステムにしていくのが本来の姿かなというふうに思っています。皆さんのコメントを聞きながら、修正をしたいと思いましたので、ありがとうございます。

【濵口主査】
  ありがとうございます。その報告書の話は、今JSTで正に正に議論しているところで、書かせるだけでは駄目でしょうと、次の資料に使えるように。

【菅委員】
  JSTも増えましたから、報告書。

【濵口主査】
  済みません。

【菅委員】
  AMEDに全部合わせているので。

【濵口主査】
  チェックします。
 では、お願いします。

【畑中委員】
  今までの議論に深く関わるところで、企業の目線から申し上げますと、企業は国境を越えてシーズを探していますので、基礎研究などの事業化の展開に向けた連携においても国内外問わずに推進していくことが、私ども企業だけではなくアカデミアでも重要なことだと思っております。
 10年前ですとライフサイエンスのシーズといったら、ほとんどが海外、中でも米国だったのですが、今は日本からもたくさん出てきています。当社の経験だけを言いますと、半分ぐらいが日本の大学あるいは研究機関から出てきたシーズを共同研究している状況にあります。それも都市部の大学だけではなく地方大学のシーズもたくさん出てきているという実態がなかなか表に出ていないという感じがしていますので、もっとこういう国内のアカデミアが保有する研究のシーズを国内外の企業がアクセスしやすいような形をとっていけば、もっと日本の研究力が世界の課題ソリューションに役立っていくのではないかと思っています。
 また、先ほどどなたかの発言にありましたように、共同で研究施設を利用するオープンサイエンスの仕組みは、企業からもアカデミアからも人材が出ますし、そこで交流が起こるということで、もう一つの問題であります人材の流動化にも大きくつながっていくのではないかと思っています。例えばライフサイエンスの業界ですとクライオ電顕等、非常に高額なものを企業とアカデミアが共同で使うことで、精度を上げながら研究者を育てていくような取組をすれば、もっと人材流動化にも役に立つのではないかなと、企業から見て考えています。

【濵口主査】
  ありがとうございます。倉持さんの報告にもあったんですけど、今、特にライフサイエンスの分野は大型化、高額化している傾向があって、今御指摘のクライオ電顕なんていうのは日本が最先端なはずなのに、一番売れるのが中国の状態というようなことで、オープンサイエンスのプラットフォームを作って、いろいろな方々がそこで使えるような場を、大学中心に作っていく時代になってきているのではないかなと、個人的には感じております。そうしないと日本型の研究展開というのが、律速段階、そこにあると思います。ありがとうございます。
 今日は珍しく女性の発言が少ないので。

【大島委員】
  この委員会は皆さん活発なので、是非発言の機会を与えていただければと思います。3つございます。時間がないので端的に、重ならないところを申し上げたいと思います。
 1点目は、今、今期の科学技術計画がちょうど3年目ということで、まだ中間ではございますけれども、やはり次期に向けて今期の課題と現状を是非まとめていただきたいと思います。例えば若手研究者の自立促進、キャリアパスの安定というのは、今期、今も出ているお話で、例えばJSTでもテニュアトラックの戦略的な形で、プロジェクトでしておりますよね。そこの成果等も出始めているかと思いますので、是非、次につなげることも含めて今期の成果及び課題をまとめていただければと思います。それが次につながるのではないかという、やはり分析をすることによって次につながるかと思いますので、是非よろしくお願いします。
 それに際して、是非省庁をまたがってやっていただければというふうに思います。若手の育成に関しては、文部科学省もそうですけれども、経済産業省もやっておりますので、それぞれの省庁は非常に頑張っているんですけれども、多分境界のところでいろいろな問題が積み残されているのかなという印象を受けておりますので、是非省庁間も含めて取り組んでいただければなというふうに思っております。
 2つ目は、研究のことでいろいろ出てきていて、いわゆる産業界等の話もありましたけれども、是非国際連携を強化するということで、今、日本が、やはり国際共同の論文が減っているというのが実際に統計でも出ていますけれども、これを促進するということは融合領域の強化にもなるんですね。なので、またそれによって新しい分野が創成されますし、若手も入ってこられるということになりますので、そういう国際的な共同研究の促進ということで、多分いろいろ課題があると思うんですね。例えば知財の問題であったりとか、あとデータの取扱い、オープンサイエンス、オープンデータに向けてのインフラを整えることが必要になるかと思いますので、そういうことを整えながら国際的な共同研究を推進できるように、ある意味日本がリードできるような、特に強みを持っている分野がリードできるような、そういう形を是非強化していただきたいということが2点目です。
 3点目は、倉持さんのお話にもありましたけれども、グローバリズムが今揺らいできて、科学技術の基本が問われているということで、やはりトランスサイエンス的な取組というのが非常に重要になっていると思います。これは科学技術だけでは解決できないということで、五神総長もおっしゃっていたようなインクルーシブな社会の実現に関しては、非常に大事だと思っています。
 研究の側面も大事だと思うんですけれども、こういうことを担う人材育成というのも非常に大事だと思っていて、そういう意味で教育というのも、先ほど大学での役割ということで、産業界の結び付けということもあったと思うんですけれども、いわゆるSTEAM教育ですね。Science、テクノロジー、エンジニアリング、アーツ・アンド・マセマティクス教育、こういうものがある意味トランスサイエンス的な取組にもつながると思いますので、まだこれは開発途上ではございますけれども、このような取組も是非含めていただけると人材育成の一環になるのではないかというふうに思っています。
 以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。重要な提案をいただきました。
 それでは、橋本さん。

【橋本委員】
  私は大学発ベンチャーの立場から今日の議論を聞いていて、少し感じたことを申し上げたいと思います。1つは、例えば私どもも元々のシーズ技術が大学発で、それをベースに事業化をしようとしています。そのときに大学とのいろいろな契約というのが必ず出てくるんですね。そこにおいて実は非常に障壁を感じておりまして、多分これは双方がお互いに被害者意識で、とられちゃまずいみたいなところでやっているので、ある意味で非常に厳しい契約交渉みたいなことが出てきております。実際に私も見聞きした例では、大学とベンチャーの契約が調わないために開発が遅れているというようなことも実際に起こっています。
 それで、例えば大手企業と契約をするときの条件とベンチャーとやるときは、やはり違うと思うんですね。先に1,000万払えと言われたら、ベンチャーはとても払えないわけです。だけど、成功したらその分を払ってくださいということであれば、アグリーできるわけです。例えばそういうところがいろいろ、事例ごとのフレキシビリティーというのがやはりまだなかなかなくて、経験値がお互いに少ないこともあって、1つの定型のルールで、これでやってくださいといって契約書が来るというようなことが、実は結構いろいろなところで足を引っ張っているということも経験しております。
 そういうところも、お互いの状況を知るためにも、いろいろな意味でやはり人材の流動性というのが非常に必要で、特に日本の場合、官とはほとんどないので、産官学それぞれのところが、人が行ったり来たりするというフレキシビリティーは、やはり今後は考えていく必要もあるかなというふうに思いました。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 竹山先生。

【竹山委員】
  多分順番に、女性が次々と話をさせていただきます。

【濵口主査】
  あと5分しかない。

【竹山委員】
  そうですか。では1分で。
 文部科学省の他の会議でもほぼ同様な問題点が指摘されています。今回は、問題意識の共有というところかと思います。
 これだけ指摘される課題は文部科学省サイドでも十分理解した上で、少しずつでも対応策は進めていると思います。ただ、日本のスローな動きを思うと効果が出るまでには、10年以上かかる気がしますが、それでは遅いですね。ですので、打った改善策の効果を示してほしいといつも言っているので、次には説明いただけるかと期待しています。
また、次の会議からは、科学技術の戦略で考えなければいけないことにもう少し集約して、効率的なディスカッションが必要かと思います。

【知野委員】
  よろしいでしょうか。

【濵口主査】
  はい、お願いします。

【知野委員】
  ありがとうございます。
 やはり現状認識でSociety 5.0の実現に向けてということが書かれており、確かにそのとおりだとは思いますけれども、一方で専門家と産業界の議論が先に出ているような気がします。一般の人にも理解を得ながら進めていくという視点が、今回の論点ではやや弱いのではないかというふうに思っています。特にこのデータ駆動型社会というのは、やはり普通の人には分かりにくいのではないかと思います。目に見てぱっとわかるわけではないからです。例えば、こういう大型の高性能装置を作って何をいつまでに実現するなどというと、非常に分かりやすいんですが、それが見えない。片やいろいろな若者が最先端のサービスを進めているという現実も見ますと、科学研究の重要さというのが伝えにくくなっているのではないかなと思います。そういうこともあるで、若い高校生やあるいは高校の先生、親の世代など、いろいろなところに向けて重要性をアピールしていくことが必要になるということが1点です。
 それから、先ほど基礎研究というお話がありましたけれども、確かにノーベル賞を日本人がもらったときに基礎研究の重要性がクローズアップされますけれども、この基礎研究の問題というのは科学研究とは直接関係のない人々の心にも説得力があって、いつどんな成果が出るか分からないけれど、こつこつやってきたというお話は非常に心を打つ面があります。ただ、その姿が、やはりこれも見えにくいので、ノーベル賞をとった方だけではなくて、基礎研究の成果がこういうふうに生かされている、それにはこんな長い時間も掛かったという話を伝えていく必要があるのではないかなというふうに思います。
 3点目は、やはり文化、歴史との協働というか、最近どんどん専門化が進み、専門家の方たちの話が非常にピンポイント的、狭い世界の話になっているような現状もあるように思います。やはり幅広に研究の置かれた位置付けとか、そういうものも含めて歴史などを振り返りながら語ることができるような人材というのが非常に重要になっています。そういう意味でも理系、文系の壁を越えた協力みたいなものが必要になると思います。
 以上です。

【濵口主査】
  ありがとうございます。
 済みません、時間切れになってしまいました。角南先生、次、残して。

【角南委員】
  大丈夫です。

【濵口主査】
  次回ということでよろしいでしょうか。
 議論は尽きませんが、とりあえず水入りさせていただきます。
 本日の議論を踏まえて、今後、6月に実は骨子案を取りまとめなければなりませんので、文部科学省には大変負担が掛かると思いますが、よろしくお願いします。8月の中間取りまとめに向けて更に検討を進めていきたいと思っておりますから、6月、7月、8月と大変重要なフェーズに入っていきます。どうぞよろしくお願いします。検討に当たっては、議論を進めるために、事務局の方で個別の議題・論点に応じて各委員の皆様の御意見を伺うということになっていますので、どうぞいろいろ御意見を出していただきたいと思います。
 それでは最後に、事務局より事務連絡をお願いします。

【大洞文部科学戦略官】
  議事録については、後ほど確認の上、公開させていただきたいと思います。また、次回は5月23日13時から、次々回は6月27日14時から開催予定でございますので、御出席をお願いいたします。
 また、具体的な対策を考えなくてはいけないということで、これから具体論にいろいろ入っていきたいと思いますが、皆様で、こういったものが具体的に必要だというようなことがありましたら、どんどん事務局にお寄せいただければ、そちらも反映しながらどんどん資料を作っていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口主査】
  あと到達段階をもう1回、整理する必要がありますね。こういうことはこうできているとかいうのを、少し項目を。

【大洞文部科学戦略官】
  はい。これまでの成果と効果、あと打つべき施策の効果がどれぐらいあるのかというのを考えることは重要だと思っています。

【濵口主査】
  よろしくお願いします。
 今日はどうも長時間ありがとうございました。それでは、総合政策特別委員会をこれで終了させていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)