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研究開発計画

研究開発計画


平成29年2月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会 

目次

研究開発計画の策定に当たって

第1章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化 

1.大目標
  1.大目標達成のために必要な中目標(情報科学技術分野)
  2.大目標達成のために必要な中目標(ナノテクノロジー・材料科学技術分野)
  3.大目標達成のために必要な中目標(量子科学技術分野)
2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策


第2章 環境・エネルギーに関する課題への対応   

1.大目標 [1]
  1.大目標達成のために必要な中目標(環境エネルギー科学技術分野)
  2.大目標達成のために必要な中目標(核融合科学技術分野)
2.大目標 [2]
  1.大目標達成のために必要な中目標(環境エネルギー科学技術分野)
3.大目標 [3]
  1.大目標達成のために必要な中目標(環境エネルギー科学技術分野)
4.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策


第3章 健康・医療・ライフサイエンスに関する課題への対応

1.大目標
  1.大目標達成のために必要な中目標(医薬品・医療機器開発への取組について)
  2.大目標達成のために必要な中目標(臨床研究・治験への取組について)
  3.大目標達成のために必要な中目標(世界最先端の医療の実現に向けた取組について) 
  4.大目標達成のために必要な中目標(疾病領域ごとの取組について)
 5.大目標達成のために必要な中目標(研究開発の環境の整備や国際的視点に基づく取組について)
2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策


第4章 安全・安心の確保に関する課題への対応

1.大目標
  1.大目標達成のために必要な中目標(防災科学技術分野(予測力・予防力の向上))
  2.大目標達成のために必要な中目標(防災科学技術分野(対応力の向上))
2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策


第5章 国家戦略上重要な基幹技術の推進

1.大目標
  1.大目標達成のために必要な中目標(航空科学技術分野)
  2.大目標達成のために必要な中目標(福島第一原子力発電所の廃炉やエネルギー安定供給・原子力の安全性向上・先端科学技術の発展等)
  3.大目標達成のために必要な中目標(原子力分野の研究・開発・利用の基盤整備について)
2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策


第6章 研究計画・評価分科会における研究開発評価の在り方



研究開発計画の策定に当たって

  我が国の科学技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本方針を示す第5期科学技術基本計画(以下「第5期基本計画」という。)が、平成28年1月22日に閣議決定された。
  研究計画・評価分科会では、主に第5期基本計画の第2章及び第3章に関する研究開発課題に対応するため、今後10年程度を見通し、おおむね5年程度を計画の対象期間として、本分科会下の各委員会における議論を中心に、今後実施すべき「重点的に実施すべき研究開発の取組」及び「推進方策」について、委員会の枠を超えて検討し、「研究開発計画」を取りまとめることとした。

  また、文部科学省では、第5期基本計画に掲げられた諸課題に対応するため、文部科学省政策評価基本計画において定められる「文部科学省の使命と政策目標」(以下「政策評価体系」という。)の見直しを行った。見直しに当たっては、(1)第5期基本計画の政策・施策体系、(2)文部科学省における政策評価体系、(3)科学技術・学術審議会等が策定・実施する計画・評価体系を可能な限り整合させることで、効果的なフォローアップの実施が可能となるようにされたところである。このことを踏まえ、本計画は、政策評価の体系に合わせた構成とすることとした。

  なお、第5期基本計画では、政策の4つの柱として、世界に先駆けた「超スマート社会」(Society5.0)の実現を目指した(1)未来の産業創造と社会変革、(2)経済・社会的な課題への対応、(3)基盤的な力の強化、(4)人材、知、資金の好循環システムの構築が示されている。超スマート社会の実現には、人材育成、オープンサイエンス、オープンイノベーション等のこれまで以上の推進が欠かせず、組織やセクター、さらには国境を越えて、人材、知識・技術、資金を循環させ、多様なステークホルダー間で対話と協働により共創していくことが重要である。 
  研究計画・評価分科会では、本研究開発計画の策定に当たって、研究開発に携わるすべての個人・組織は科学技術と社会との関係がこれまで以上に重要性を増していることを踏まえ、研究開発は、社会からの信頼の上に成り立っており、社会との価値観の共創が重要であることを認識しつつ研究開発を推進することに留意することとした。具体的には、(1)社会との関係深化の前提となる研究公正(論文作成の過程のみならず、研究に対する信頼性の醸成の観点から)を確保した上で、(2)当該研究開発がどのような社会変化をもたらすのか、またどのような課題を伴うことがあるのかについて自ら考えるとともに、(3)社会・国民から研究開発や政策立案へのインプットないしフィードバックを活(い)かすための方法論や、人文社会科学の役割・連携の強化、(4)基礎研究の重要性についての認識や、研究開発の将来成果に対する期待や懸念について、適切に社会と共有すること、(5)研究開発に携わるすべての者が、人文社会科学分野との連携などにより、国民と対話・協働するために必要なコミュニケーション能力の向上を図ること、その上で、研究開発と人文社会科学、ステークホルダー等との橋渡し人材※等の育成と活用を行うことなどである。なお、これらの留意点を踏まえ、各計画を策定しているところであるが、経済・社会の状況は日々刻々と変化を続けており、その変化に適宜対応することが必要である。
※ここでは、研究者、国民、メディア、産業界、政策形成者等の多様なステークホルダーを対話・協働を通して結び付けるとともに、人文社会学的視点も踏まえた研究開発の実施や成果普及方策の創出を促す能力のある人材を指す。


  一方、研究開発の評価については、第5期基本計画の策定を受け、国の研究開発評価について基本的な方針を定めた「国の研究評価に関する大綱的指針」が平成28年12月に改定された。本指針では、政策立案者や推進する主体等の行動及びその結果について評価を行う「研究開発プログラムの評価」のさらなる推進等が示された。研究計画・評価分科会における評価は、これまで当分科会所管の個別の研究開発課題の評価にとどめていたが、今後、研究開発計画に掲げた中目標単位で研究開発プログラムとしての評価も実施することとし、新たに第6章として研究計画・評価分科会における評価の在り方を盛り込むこととした。

  本計画は、政策評価とともに、「企画立案(Plan)」「実施(Do)」「評価(Check)」「反映(Action)」を主要な要素とする政策のマネジメントサイクルが効果的に回り、第5期基本計画が掲げる科学技術イノベーション及び社会との関係深化が効果的に進むよう、必要に応じて適宜見直されるべきものである。

第1章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化


1.大目標

 ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。このため、国は、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術及び個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する基盤技術について強化を図る。


1.大目標達成のために必要な中目標(情報科学技術分野)

  我が国が世界に先駆けて超スマート社会を形成し、ビッグデータ等から付加価値を生み出していくために、産学官で協働して基礎研究から社会実装に向けた開発を行うと同時に、技術進展がもたらす社会への影響や人間及び社会の在り方に対する洞察を深めながら、中長期的視野から超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術の強化を図る。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
 ■アウトプット指標
  (1)情報科学技術分野における研究開発の論文数、学会発表数
  (2)情報科学技術分野における研究開発件数、研究成果に基づく特許数 
  (3)情報科学技術分野におけるソフトウェア開発、利用・提供件数

 ■アウトカム指標 
  (1)情報科学技術分野における研究開発の論文引用数
  (2)情報科学技術分野における研究開発成果に基づく特許数のライセンス供与により、事業化に至っている案件数
  (3)各研究機関において実施される研究開発のテーマ数・進捗状況
  (4)社会実装され、社会の基盤構築につながった研究開発のテーマ数
  (5)研究開発が社会実装されたことによる経済的・社会的インパクト
  (6)情報科学技術分野における国際的プレゼンス

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)未来社会における新たな価値の創出と着想の獲得に向けた研究開発の推進
未来社会における新たな価値を創出し、そこから生まれる新たな着想を得るために、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術の研究開発を推進し、他分野との連携を図りながら価値創出と研究開発をスパイラルに発展させる。

ア. イノベーションの創出に向けたAI/ビッグデータ/IoT/セキュリティ等に 関する研究開発

  ビッグデータからの新たな価値を創出するために、ビッグデータ格納、検索、分析技術、並びに、革新的なAIの基盤技術を開発・活用する。また、ビッグデータの充実のため高度なIoT技術を開発・活用し、併せてセキュリティの研究開発を行い、堅牢(けんろう)なセキュリティの構築を推進する。

イ. 超スマート社会に対応した次世代基本ソフトウェア基盤技術の研究開発
  「超スマート社会」を実現するための各種のサービスの実装に向けて、機能のモジュール化・コンポーネント化と、モジュールを動的に組み上げ新たなサービスを実現する統合化技術から構成される、基本ソフトウェア技術の研究開発を推進し、超スマート社会を実現するためのソフトウェア基盤技術の研究開発を推進する。

ウ.  次世代アーキテクチャと革新的なハードウェアの研究開発 
  様々なモノがインターネットにつながるIoT社会を迎えて、ますます重要となる次世代モバイル技術やクラウドデータセンター技術にも展開可能なアーキテクチャ及びデバイス技術の持続的発展を図るために、新しい動作原理を含む革新的アーキテクチャ及びデバイスの研究開発を推進する。また、多様なニーズに応える革新的な計算環境を構築し、その利用を推進することで、我が国の科学技術の発展、産業競争力の強化、安全・安心な社会の構築に貢献する。

エ. 人間と人間、及び人間と人間を含む全体の環境・システムとのインタラクションの研究開発
  インタラクションは、人間と人間、及び人間と環境との相互作用を研究する分野であり、様々なモノがインターネットにつながるIoT社会や超スマート社会の実現に向け、重要な分野である。多岐にわたる人間と人間の相互作用全般を支援する技術を始め、人間と環境の相互作用を支援する技術、ヒューマン・ロボット・インタラクション、ヒューマン・エージェント・インタラクション、個別の人間支援に資するテレプレゼンスや人間拡張工学、ノンバーバル対話、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、群衆センシングによる空間環境改善、ウエアラブル開発等の研究開発のシーズを更に発展・高度化させ、人間中心の革新的なインタラクション研究を集中的に行うことにより次世代の超スマート社会の実現を目指す。

  (2)社会システムと高度に連携したサイバーフィジカル情報システム技術の実現
  「世界最高水準のICT利活用社会の実現」に向けて、課題解決のための技術を確立するだけでなく、社会のあるべき姿の実現のために必要な技術のシーズを見いだすとともにその実用化を見据えた研究開発を推進し、社会実装につなげる。

ア. 環境・エネルギー問題に対応した新たな情報科学技術の研究開発
  全世界的な人類共通の課題である「環境・エネルギー問題」への対応のため、再生エネルギーに関する技術革新や省エネルギーのためのスマート化が極めて重要である。社会活動を一層の高効率な状態にしていくためには、リアルタイムに実世界の情報を集約・解析し、その最適解を実世界にフィードバックするサイバーフィジカル情報統合基盤技術の研究開発を推進する。

イ. 健康医療問題に対応した新たな情報科学技術の研究開発  
  医療・創薬等に資する高度なデータや、病気の予防、早期発見・治療等へつなげるための新たな情報科学技術、また、ゲノム情報等を含む膨大な患者情報と治療記録を集約・統合・解析するための技術、予防医療を支援するための技術、組織を超えて共有化するために秘匿すべき情報を保護する技術の研究開発を推進する。また、健康・医療及びライフサイエンス分野のビッグデータを産学官が利活用するための基盤を構築する。

ウ. 災害等に強い安全・安心な社会の実現に向けたIT関連技術の研究開発
  地震・津波等の大規模自然災害に関する防災・減災を巡る様々な問題点に対応するために、致命的なダメージを回避して、システムとして最低限の機能を維持し、自己調整・自己修復等のできるレジリエントなシステムの実現を目指す。また、災害時及び災害後の広範囲かつ多岐にわたるリアルタイム情報をデータベース技術を用いて集約整理、統合化し、状況の変化を最適な避難活動・救援活動・防災活動及び被災者の最適行動の判断材料にフィードバックできるようなIT統合システムを構築し、災害等に強い安全・安心な社会の実現を目指す。


エ. 新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術に関する研究開発 
  システム化技術を発展させて、我が国が強みを有する技術を活(い)かした新たな価値を生み出すシステムを構築することで、我が国の優位性を確保し、国内外の経済・社会の多様なニーズに対応する新たな価値を生み出すシステムとすることが可能となる。このように、個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する技術の研究開発を推進する。

2.大目標達成のために必要な中目標(ナノテクノロジー・材料科学技術分野)

  ナノテクノロジー・材料科学技術分野は我が国が高い競争力を有する分野であるとともに、広範で多様な研究領域・応用分野を支える基盤であり、その横串的な性格から、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵として広範な社会的課題の解決に資するとともに、未来の社会における新たな価値創出のコアとなる基盤技術である。また、革新的な技術の実現や新たな科学の創出に向けては、社会実装に向けた開発と基礎研究が相互に刺激し合いスパイラル的に研究開発を進めることが重要である。 
  これらを踏まえ、望ましい未来社会の実現に向けた中長期的視点での研究開発の推進や社会ニーズを踏まえた技術シーズの展開、最先端の研究基盤の整備等に取り組むことにより、本分野の強化を図り、革新的な材料を創出する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)ナノテクノロジー・材料分野に関連する事業の活動状況(技術支援件数、参画研究者数、共同研究の取組状況等) 等

  ■アウトカム指標
  (1)ナノテクノロジー・材料分野の発展状況(優れた材料の創出事例 等)

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  第5期科学技術基本計画を踏まえ、本研究開発計画では、未来社会の実現のためにより長期的な視点に立ち、社会の変革等に先見性を持って戦略的に進めていく研究開発と、我が国及び世界が持続的に発展していくために顕在化している様々な課題を解決するための短中期的な研究開発という、2つの時間軸で研究開発の取組を整理することとし、具体的な内容について以下に示す。

  (1)未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進
  我が国が高い国際競争力を有するナノテクノロジー・材料科学技術は広範で多様な研究領域・応用分野を支える基盤であり、その横串的な性格から異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵である。
  このような特徴を踏まえ、ナノテクノロジー・材料科学技術は、第5期科学技術基本計画において、サイバー空間とフィジカル空間(現実社会)が高度に融合した「超スマート社会」の実現のためのコアとなる基盤技術として位置づけられた。そこで、「超スマート社会」を実現するために必要となる機能性材料・構造材料の研究開発やデータ駆動型の材料設計等の新たな研究手法の開発等を推進する。   
  また、ナノテクノロジー・材料分野が「超スマート社会」を超えた全く予想だにしない新しい未来社会をもたらす可能性があることを踏まえ、新たな技術領域・未来社会を切り拓(ひら)く挑戦的な基礎・基盤的な研究開発も進める。

  ア.未来社会としての「超スマート社会」を実現する機能性材料・構造材料研究 
  第5期科学技術基本計画において、「超スマート社会(Society5.0)」を実現するためには、様々な「もの」がネットワークを介してつながり、それらが高度にシステム化されるとともに、複数の異なるシシステムを連携協調させることが必要である。そのために個別のシステムの開発を先行的に進めるとともに、それらの個別のシステムの高度化を通じて連携協調を進めていくことが求められている。このようなシステムの高度化及び超スマート社会の実現には、エネルギー、インフラ、健康医療やライフサイエンス等を支える機能性材料や革新的構造材料の開発を推進し、それらを適用したコンポーネントの高度化によりシステムの差別化を実現するナノテクノロジー・材料科学技術をより一層強力に推進することが必要である。
  そこで、機能性材料においては、個別システムの実現のために必要な機能の高度化やその原理・原則の究明により、機能の飛躍的な向上を目指すとともに、未だ見いだされていない新たな機能の探索・顕在化等の取組を進める。
  また、構造材料については、社会活動の基盤を支える材料として、国及び国民の安全・安心確保のために長期にわたって安定に性能を発揮することが求められている。そこで、精緻な特性評価技術や組織解析技術等を活用して材料の劣化機構の解明を進めるとともに、その知見に基づいた構造材料の高信頼性化・高性能化を進めるなど、総合的なアプローチを行う。  
  これらの取組により個別システムの高度化とともに「超スマート社会」の実現に貢献する。なお、実施に当たっては、後述する「イ.新たな研究開発手法の開発」によって得られた知見を最大限活用しながら取り組む。

  イ. 新たな研究開発手法の開発 
  (1)社会システムを俯瞰(ふかん)した材料開発  
  持続可能な未来社会を実現するためには、既存の研究開発の延長ではなく、「ズームアウト」の視点による社会システム全体を俯瞰(ふかん)した目標設定と、「ズームイン」の視点による要素技術課題へのブレークダウンの双方が必要である。研究開発に当たっては、未来社会のニーズと材料シーズの適切なマッチングを図るため、理論・計測・材料創製を融合した材料研究とライフサイクル設計やデバイスシミュレーション等の活用による社会システム全体を俯瞰(ふかん)する取組との協働により、サイエンスが今後どのようにデバイス化・システム化するかという、階層構造を把握しつつ、社会と材料開発をつなぎながら研究開発を行うことが重要である。このような新しい研究開発スキームの有効性を実証すべく、技術シーズの源泉となる基礎基盤研究を強化し、出口課題の実用化に向けた研究開発を推進する。

  (2)データ駆動型の材料設計手法の開発 
  新たなデータ駆動型の材料設計技術「マテリアルズ・インフォマティクス」は、物質・材料分野における膨大なデータ群に、最先端のデータ科学・情報科学の手法を組み合わせることにより物質・材料の研究開発を飛躍的に加速させ、材料の開発手法にパラダイムシフトをもたらす可能性を持つ。本研究領域の開拓は、国際的な潮流の観点からも、我が国の物質・材料研究の発展にとって重要であることから、様々な研究を通じて蓄積された膨大・高品質なデータを産学官で共有・利活用を行うためのデータプラットフォームを構築し、これを活用した材料開発に積極的に取り組む。 
  データプラットフォームの構築に当たっては、様々な研究機関からデータを集めるための制度設計や体制整備等に取り組む。

  (3)材料開発に資するプロセス技術の開発  
  材料を開発し、社会実装へと繋(つな)げるため、スマート生産システムへの対応や経済合理性等を考慮した製造(プロセス)技術の開発等に注力する。これらの開発を一体で推進することにより、機能発現の本質と製造プロセスに用いられる要素反応・要素過程の理解を同時に進め、その知見に基づき高機能材料を開発する。

  (4)先端材料計測解析技術の開発  
  革新的な機能を持つ材料の開発には、その機能発現メカニズムの根源的かつ効率的な解明が重要であるため、情報科学技術等も活用しつつ、ナノより更に小さな領域から様々なスケールでの計測技術、実使用環境下(オペランド)での計測技術・解析システム等を開発する。

  ウ.新たな技術領域・未来社会を切り拓(ひら)く挑戦的な基礎・基盤研究の強化
  研究者の自由な発想による研究を格段に発展させる学術研究や、将来のプロジェクトの芽を創出するような探索型研究、国内外の研究動向を踏まえ、組織や分野の枠を超えた研究体制の下で将来社会に大きな影響をもたらす新技術シーズの創出を目指す戦略的な基礎研究、さらには社会経済や科学技術の発展、国民生活の向上に寄与する研究成果の実用化を見据えた研究等を進める。また、従来技術の延長では実現し得ないナノ構造の自在制御による新規材料創製技術の開発にも取り組む。
  上記のような取組を通じて、ナノテクノロジー・材料分野の新たな技術領域を切り開くとともに、当該分野の発展によりどのような新しい未来社会が創り出されるかについて検討を進め、必要な措置を講ずる。

  (2)広範な社会的課題の解決に資する研究開発の推進 
  第5期科学技術基本計画も踏まえ、エネルギーの一層の効率的利用や医療分野への応用、社会インフラの老朽化対策等、近年顕在化している社会的課題への解決の鍵となるナノテクノロジー・材料科学技術分野の研究開発を、実用化も見据えつつ推進する。
具体的には、第5期科学技術基本計画に掲げられている13の重要政策課題のうち、特にナノテクノロジー・材料分野として大きな貢献が見込まれる以下の課題を中心に、その解決を実現すべく、必要な取組を推進する。また、これまでに解決できていない課題や新たな課題等、応用先の開拓にも取り組む。

  ア. エネルギーの安定的な確保とエネルギー利用の効率化
  再生可能エネルギーの活用と、エネルギー貯蔵、輸送システムの革新によるエネルギー利用の効率化は、資源の少ない我が国にとってエネルギー安全保障上重要であるとともに、地球温暖化抑止に向けた低炭素社会の実現と持続可能な社会の構築にも大きく貢献する。そのため、多様なエネルギー利用を実現するための研究開発として、システム化・デバイス化を念頭に、太陽電池や燃料電池、エネルギー変換・貯蔵等のための材料開発を行うものとする。また、最終システムを意識しつつ、エネルギーの高効率変換等に関わる大きなブレークスルーに繋(つな)がる次世代の技術シーズを探索する。
  さらに、低環境負荷社会に資する高効率・高性能な輸送機器材料やエネルギーインフラ材料の開発を推進する。

  イ. 資源の安定的な確保と循環的な利用
  レアアース等の材料の高性能化に必須な希少元素の世界的な需要急増や資源国の輸出管理政策により、深刻な供給不足を経験した我が国では、資源リスクを克服・超越する「元素戦略」が必要不可欠である。特に、ナノレベル(原子・分子レベル)での理論・解析・制御によって元素の秘めた機能を自在に活用することが、新たな高機能材料の創製や希少元素代替・減量の実現、ひいては産業競争力の鍵となる。そこで、希少元素を用いない、全く新しい代替材料の創製等に取り組む。

  ウ. 世界最先端の医療技術の実現による健康長寿社会の形成
  我が国は既に世界に先駆けて超高齢社会を迎えているため、我が国の基礎科学研究を展開して医療技術の開発を推進するとともに、社会への展開を通じて医療関連分野における産業競争力の向上を図り、我が国の経済成長に貢献することが期待される。このような期待に応えるべく、生体材料の開発や基盤技術としてのナノテクノロジーの活用を推進し、医療分野の研究開発に貢献する。

  エ. 効率的・効果的なインフラの長寿命化への対策/国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現
  国民生活や経済・社会活動を支えている公共インフラはその多くが高度経済成長期に建設されているため、高齢化が進んでおり、重大事故の可能性が上昇するとともに、維持補修に必要な経費も増大していくことが大きな社会的課題となっている。また、我が国は、地震などの大規模な自然災害に対して、国民の安全・安心を確保してレジリエントな社会を構築することが課題となっている。そのため、公共インフラの効率的な維持管理・更新や、国土強靭(きょうじん)化に資する社会インフラ材料の高性能化・高信頼性化のための基礎・基盤技術の開発等を推進する。

  オ.ものづくりの競争力向上
  安価な生産コストを武器とした中国等の新興国の追い上げや、インダストリー4.0 等の国家イニシアティブを掲げる欧米諸国における製造業の徹底的なICT化といった世界の動向に対し、我が国の製造業が更なる競争力・収益力の強化や新市場の創出等を実現するためには、これまでの我が国の強みであるフィジカル関連技術のさらなる進化に加え、それらとIoTやビッグデータ、AI等のICTとを融合させることにより、新たなものづくりシステムの開発することが課題である。
  上記の課題解決のため、ナノテクノロジー・材料分野においては、前述の材料設計手法を構築するとともに、戦略的イノベーション創造プログラム「革新的構造材料」マテリアルズインテグレーション領域とも連携し、国際的な競争の中でいち早く材料から部材までの一貫した開発を行う。

  カ.更なる社会課題への対応
  前述した課題に加え、今後次々と顕在化してくる新たな社会課題に対して常に注意を払いつつ、速やかに解決することが重要である。これに鑑み、幅広い領域の物質・材料研究を継続的に進めていく。

 
3.大目標達成のために必要な中目標(量子科学技術分野)

  内外の動向や我が国の強みを踏まえつつ、中長期的視野から、21世紀のあらゆる分野の科学技術の進展と我が国の競争力強化の根源となり得る量子科学技術の研究開発及び成果創出を推進する。
  ※量子科学技術分野の「中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」等については、現在、量子科学技術委員会で、これまでの研究動向など現状を分析しつつ、文部科学省としてどのように研究開発を推進していくべきか検討中。このため、量子科学技術分野においては、現在までの検討状況を記載したものであり、平成29年度中に検討結果を踏まえて改定予定。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)論文数
  (2)若手の関連事業参画数
  ■アウトカム指標
  (1)優れた研究成果の創出状況(論文被引用数 等)
  (2)優れた研究成果の創出事例

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  先端研究基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ研究開発を推進する。なお、「議論の骨子案」において、「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」として以下が挙げられている。

(※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。

  (1)量子情報処理・通信
  ア. 量子コンピューティング
  我が国の限られた資源と欧米の投資規模を考えると、正面突破は難しく、現時点で本命技術を決めて集中投資するのは時期尚早で失敗する確率が高いと考えられる。
  独自の視点やアイデアを生み出すことが非常に重要。欧米とは地理的にも距離があるが、それを逆手にとって勝負すべき。
  世界的に興味深い技術、アイデア、ソフトウェアが出続けており、現在ある点や線を深掘りするより、突出した点と点をつないで新しい領域を拓(ひら)くような、ハイブリッド的な推進方策が望ましいのではないか。
  その際、世界的な潮流は理解した上で、若手研究者のアイデアを開花させるような、探索的でクリエイティブな研究の新しい芽を育てることが重要。クリエイティブな人材を生み育むための方法でもある。
  量子コンピューティングの実現に向けては数々のマイルストーンが存在するため、国際的にも、基礎研究の成果としてオープンな研究交流がなされることが重要であり、その切磋琢磨(せっさたくま)の中でブレークスルーが生み出されるのではないか。

  イ. 量子シミュレーション
  既に実験室レベルで実現している大規模な量子多体系の存在を前提に、物性理論研究者や潜在的ユーザーと一緒になって、探求すべき物質等について一定の目標を定め、量子状態の個別観測・制御の高度化といったハードの課題に取り組むとともに、現実の物理系を量子シミュレータに写像する理論や誤差の理論的評価といったソフトの課題に取り組むような、トップダウン的な開発アプローチが必要ではないか。
  層の厚い欧米に対し、我が国は独自性のある研究を進めていくことが非常に重要であり、物性理論の強みを基に、例えば、定常状態の計算より格段に難しい非定常な時間発展(ダイナミクス)のシミュレーションや、ガラス・液体等のソフトマターといった不規則系の物質を対象にしたシミュレーションに挑んでいくことも重要ではないか。
  理論や実験など、各分野のレベルが高度化している中において、分野間の協力や融合努力を積極的に評価する視点や、基礎物理からシステム開発まで見通せる人材を育成する観点が必要ではないか。

  ウ.量子通信・量子暗号
  現在の量子通信・暗号の技術体系に、情報理論や光ネットワーク技術、ワイヤレスネットワーク技術といった異なる分野を融合した技術体系に移行することで普及を促すことが必要。その際、量子暗号と数理暗号といったライバル分野や、周辺分野との連携関係も構築することが、短期的なニーズに応えながら、我が国の強みである理論研究や基礎研究を長期的に継続できる基盤となると考えられる。将来の潜在的ユーザーと対話しながら、段階的に、着実に量子技術を向上させる取組が効果的。
  基礎理論や基礎研究における斬新なアイデアを重視し、それを国内で実証しやすい環境にすることも、想像をはるかに超えた量子科学技術の進化に対応するための取組として必要ではないか。
  研究や実験など、各分野のレベルが高度化している中において、分野間の協力や融合努力を積極的に評価する視点や、基礎物理からシステム開発まで見通せる人材の育成が必要ではないか。

  (2)量子計測・センシング・イメージング
  ア.量子計測・センサ(生物・生命科学系)
  量子計測・センサは、半導体・ナノテク分野で培われた材料作製技術、デバイス開発、光量子物理学、量子ビーム利用など、我が国の強みが多面的に発揮できる上、医療からエネルギー・製造業まで非常に波及効果が広い。突出した点と点をつないで競争力を生み出す組合せがほぼ無限にあって、若手研究者の多様なアイデアを基に、新しい領域を拓(ひら)くような、ハイブリッド型の研究推進による競争力強化が強く望まれる典型である。
  比較的小規模な研究費から立ち上げが可能な点でも、若手研究者が斬新なアイデアを出せる分野であり、若手研究者をどのように幅広く支援、育成し、活躍、独立させるかを考える良い領域である。
  量子計測・センサの開発には、理論、基礎物理、材料、物性、デバイス、計測、分析化学、生命科学など、異なる分野や技術段階の間での連携や流動性が重要で、このような広がりに跨(また)がるような基礎研究や人材育成が重要である。これにより、オープンイノベーションをリードしていく人材の育成が期待される。例えば、異分野の若手研究者同士の協力関係を加速するための中規模の研究費の枠組みや、各々の研究費を合わせて大きな研究開発に展開できるようなフレキシブルな枠組み、異分野の一流のシニア研究者が若手研究者に対して支援・アドバイスを行う体制などの工夫により、一層の分野を超えた連携や流動性が期待できる。
  異なる分野や技術段階の連携によりプロトタイプを示す進め方は、可能性を明確化し異分野融合を促進するためにも有効である。また、国際競争の観点からも、産業界を含む大きな体制での研究開発が必要であり、その中で、人材育成、知的財産確保、標準化も進めることが重要である。これらには、ネットワーク型の研究拠点の形成による推進が適切ではないか。

  イ.量子計測・センサ(物理系) 
  量子計測・センサは、半導体・ナノテク分野で培われた材料作製技術、デバイス開発、光量子物理学、量子ビーム利用など、我が国の強みが多面的に発揮できる上、医療からエネルギー・製造業まで非常に波及効果が広い。突出した点と点をつないで競争力を生み出す組合せがほぼ無限にあって、若手研究者の多様なアイデアを基に新しい領域を拓くような、ハイブリッド型の研究推進による競争力強化が強く望まれる典型。
  比較的小規模な研究費から立ち上げが可能な点でも、若手研究者が斬新なアイデアを出せる分野であり、若手研究者をどのように幅広く支援、育成し、活躍、独立させるかを考える良い領域である。
  量子計測・センサの開発には、理論、基礎物理、材料、物性、デバイス、計測、分析化学、生命科学など、異なる分野や技術段階の間での連携や流動性が重要で、このような広がりに跨がるような基礎研究や人材育成が重要。これにより、オープンイノベーションをリードしていく人材の育成が期待される。例えば、異分野の若手研究者同士の協力関係を加速するための中規模の研究費の枠組みや、各々の研究費を合わせて大きな研究開発に展開できるようなフレキシブルな枠組み、異分野の一流のシニア研究者が若手研究者に対して支援・アドバイスを行う体制などの工夫により、一層の分野を超えた連携や流動性が期待できる。
  異なる分野や技術段階の連携によりプロトタイプを示す進め方は、可能性を明確化し異分野融合を促進するためにも有効。国際競争の観点からも、産業界を含む大きな体制での研究開発が必要であり、その中で、人材育成、知的財産確保、標準化も進めることが重要。これには、ネットワーク型の研究拠点の形成による推進が適切ではないか。なお、出口としてのアプリケーションが明確に決まっている場合には、ノウハウ等の成果情報の取扱いについて留意が必要である。
  光格子時計では、地道で継続的な研究によって、当初想定しなかった応用と、将来の経済・社会にインパクトを及ぼす可能性が見いだされている。今後の量子科学技術の推進に当たっての示唆とするとともに、光格子時計の研究進展や展開の注視及び時宜に応じた推進を図ることが重要と考えられる。

  (3)最先端フォトニクス・レーザー
  (量子科学技術委員会にて今後議論予定)

  (共通的事項)
  欧州では研究者が国境なく往来して共同研究を実施しており、一国当たりの研究者数は限られていても、欧州全体として見ると多くの研究者が存在している。我が国の研究環境を改善することで、欧米との研究協力や共同研究を促進し、相乗的に技術を向上させるような国際的な対応も重要ではないか。また近年、中国やシンガポールといったアジアの研究グループも急速に力を付けてきている。アジアの研究グループとの積極的な研究協力や共同研究を含む研究ネットワークの構築についても考える時期に来ているのではないか。


2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策

(1)人材育成 
  (1)情報科学技術分野
  世界中で高度な人材の獲得競争が激化する中、科学技術イノベーションを支える人材の質の向上と能力発揮が一層重要となっており、計算科学とデータ科学をベースとした工学教育は、情報科学技術分野だけでなく、あらゆる研究分野において研究開発力を高めていく上で重要である。
  情報科学技術分野においては、データ利活用を先導できる高度なデータサイエンティストや、高度なセキュリティ知識と管理能力を持つサイバーセキュリティ人材など、人工知能やビッグデータ等の分野を牽引(けんいん)するハイレベルな人材の育成を積極的に推進する。また、ビッグデータを組み合わせて価値創造につなげられる力を持つ人材育成も非常に重要である。クロスアポイントメントやインターンシップ、出向などの制度の積極的活用を図り、各研究機関の交流を促進するとともに、産学官連携等を通じた研究者の多様なキャリアパスの確保や優秀な若手研究者が能力を発揮できる環境の整備を図る。

  (2)ナノテクノロジー・材料科学技術分野
  激しい国際競争が行われる中、世界に先駆けて革新的な材料開発を行うことが求められており、その担い手となる人材の育成が急務となっている。ナノテクノロジー・材料科学技術が分野横断的であるという特徴を活(い)かし、一つの専門分野で論文を執筆できる能力が十分に備わっていることに加えて、広範な分野の基礎的素養を身に付け、俯瞰(ふかん)的視野を持った上で研究を推進できる人材や社会的価値への展開を戦略的に推進するリーダーを育成することが重要である。
  そこで、クロスアポイントメントや等の制度の活用による研究機関間の交流の促進や、産学官連携等を通じた研究者の多様なキャリアパスの確保、優秀な若手研究者が能力を発揮できる環境の整備を図る。また、国際的な研究者ネットワークへの参画等を促進し、グローバルに活躍するリーダーの育成を目指す。
  さらに、ナノテクノロジー・材料科学技術の多様な研究活動を支える上で、高度な分析、加工等の専門能力を有する技術者が極めて重要な役割を果たしていることを踏まえ、技術者の養成と能力開発等に着実に取り組む。

  (3)量子科学技術分野
  先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
  (※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。


(2)オープンサイエンスの推進 
  (1)情報科学技術分野
  研究者やユーザーが所属する学界や産業界がデータや研究成果を広く共有可能にすることで、研究者の所属機関、専門分野、国境を越えた多様なステークホルダーの新たな協働による知の創出が加速され、新たな価値を生み出していくことが可能となる。したがって、資金配分機関や、大学等の研究機関、研究者等の関係者が連携し、オープンサイエンスの推進体制を確立するとともに、リサーチデータプラットフォームを海外との密な協調とともに構築する。

 (2)ナノテクノロジー・材料科学技術分野
  オープンアクセスと研究データのオープン化を含めたオープンサイエンスの概念は、オープンイノベーションの重要な基盤として世界中で注目されている。このような現状を踏まえ、「(6)ナノテクノロジー・材料科学技術を支える基盤の強化」に掲げるオープン/シェア/クローズド戦略も踏まえつつ、適切な産学官連携・国際連携により新たな価値の創出につなげるデータプラットフォームを構築することにより、オープンサイエンスを推進する。

  (3)量子科学技術分野
  先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
  (※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。


(3)オープンイノベーション(産学連携)の推進
  (1)情報科学技術分野
  大企業やベンチャー企業を巻き込んだエコシステムを構築し、多くの民間企業とともに研究開発を行っていくことが重要である。大企業や中小企業・ベンチャー企業のニーズの把握やオープン・クローズそれぞれの価値とリスクについても検討しながら「協調領域」と「競争領域」を設定し、大学及び公的機関等を中核とした共同の場の形成と活用を推進する。また、民間企業が集中的に資金や人材を投入して研究している研究課題を後追いするのではなく、差別化を図る必要がある。企業と研究機関がより密接に連携してデータの活用の自由度を上げることを目指し、民間企業の研究成果を活用しながら、我が国全体の情報科学技術分野の強化を図る。

  (2)ナノテクノロジー・材料科学技術分野
  企業や大学、公的研究機関等の人材、知、資金が結集する産学官、グローバル拠点の形成や、全国の研究機関のネットワーク化等を通じ、人材育成や分野融合を促進するとともに、我が国全体の材料開発力の強化を図る。具体的には、世界最高水準の研究開発成果を創出し、イノベーションシステムを強力に駆動する役割を果たす国立研究開発法人を中核として、大企業や中小・ベンチャー企業のニーズの把握やオープンとクローズそれぞれの価値とリスクについても検討しながら「協調領域」と「競争領域」を設定し、我が国全体の革新材料開発力強化に向けたオープンプラットフォームの形成とその活用を推進する。また、成果の展開に向けて、共同研究や事業化に向けた取組等、個別の産学連携も推進する。

  (3)量子科学技術分野
  先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
  (※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。


(4)知的財産・標準化戦略 
  (1)情報科学技術分野
  経済的波及効果の大きい社会システムに関連し、かつ国際的な競争が激化している情報科学技術分野は、国際標準化の対応の遅れが競争力低下や市場喪失に直結するため、世界と協調した迅速かつ的確な国際標準化戦略が重要である。必要な技術の確立や実証等を図りつつ、国際標準化に対する取組を推進する。

  (2)ナノテクノロジー・材料科学技術分野
  日本再興戦略等で掲げられている「GDP600兆円経済」の実現には、経済的波及効果の大きい社会システムに関連し、国際的な競争が激化しているナノテクノロジー・材料分野においては、研究の対象材料が有する特徴や関連産業の国内外動向等に応じた適切な知的財産・標準化活動が重要となる。

  (3)量子科学技術分野
  先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
  (※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。


(5)社会との関係深化 
  (1)情報科学技術分野
  情報科学技術の発展に伴い、社会の基本的な規範が変化しつつある。例えば、ICTの発展により、経済の循環サイクルの高速化、「もの」から「情報」への取引の変化、そしてブロックチェーンなどの技術による貨幣以外の新たな価値の創出など、従来の資本主義経済体制に変化が生じている。情報科学技術の利活用は、経済分野だけでなく政治分野においても多大な影響を与えている。政府や報道機関が大きな力を持っていた社会的な情報伝達の分野が、情報ネットワークの発達により多様化して、民主主義の基盤となる社会システムが大きく変わっている。今後は技術の発展の方向性とそれに伴う社会システムの在り方について議論する必要がある。また、教育分野においても更なる情報科学技術の利活用について議論を進めていく。
  さらに、情報科学技術の社会実装に際しては、多様なステークホルダー間の公式又は非公式のコミュニケーションの場を設けつつ、倫理的・法制度的課題について人文社会科学及び自然科学の様々な分野が参画する研究を進めていく必要がある。

  (2)ナノテクノロジー・材料科学技術分野 
  ア.ナノテクノロジーにおける人文社会科学的視点の導入
  ナノテクノロジー・材料科学技術分野は、横断的・複合的な分野であるため、今後の取組について個別具体の進め方を検討する際には、人文社会科学的視点を導入し、社会との直接的接点をより強固にすることが重要である。
  例えば、ナノテクノロジーに関する環境・健康・安全面(EHS:Environment, Health and Safety)の課題や倫理的・法的・社会的問題(ELSI:Ethical, Legal and Social Issues)対策については、研究開発の状況と人文社会科学的視点や産業界の視点も踏まえながら検討を進める。

  イ.情報発信・アウトリーチ
  得られた研究成果を新たな価値創造に結びつけるため、成果の社会における認知度を高め、社会還元に繋げていく。また、産学官連携による研究情報の蓄積・発信体制の強化を図り、我が国における研究情報の好循環と戦略的な社会実装を促す。

  (3)量子科学技術分野
  先端基盤部会量子科学技術委員会「議論の骨子案(※)」を踏まえ実施する。特に、「議論の骨子案」の「推進方策の検討にあたって考慮すべき点」(上記「(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組」に記載)における関連部分について留意する。
  (※)量子科学委員会で報告書が取りまとめられた段階で、報告書の名称に変更。


(6)ナノテクノロジー・材料科学技術を支える基盤の強化・活用(ナノテクノロジー・材料科学技術分野)
  先端計測等のナノテクノロジー・材料科学技術の研究開発に当たって基盤となる技術に関する研究開発を推進するとともに、最先端の計測・加工設備の共用及びデータプラットフォームの戦略的利活用を両者の融合を図りながら推進する。データプラットフォームの構築に当たっては、材料科学のみならず、システム工学や情報科学等の人材とも連携し、様々な研究機関からデータを集めるための制度設計や体制整備等に取り組む。

  ア.最先端の研究施設・設備の整備・共用・活用等 
  我が国の部素材開発の基礎力引上げとイノベーション創出に向けた強固な研究基盤を形成するために、ナノテクノロジーに関する最先端設備の有効活用、今後を見据えた更新・導入、及び相互のネットワーク化を引き続き促進する。運用に当たっては、産業界を含め幅広い利用者のニーズに応じて、共用機関ネットワークの強化等を行う。また、施設共用の視点のみにとどまらず、研究施設及び設備を共用する際の多様な支援形態に対応可能な研究者及び技術者の育成やイノベーション創出に寄与する次世代の若手利用者の育成にも貢献する。これらの共用の活動を通じて、我が国のナノテクノロジー・材料研究の研究開発投資効率と成果最大化に資する。
  この他、大学共同利用機関法人や共同利用・共同研究拠点、Spring-8やスパコン「京」等の大型共用研究施設・設備等、他の共用のフレームワークも一層積極的に活用し、材料分野の研究開発を推進する。

  イ.知的基盤としてのデータプラットフォームの整備・利活用
  科学研究活動の効率化と生産性の向上を目指し、オープン/シェア/クローズド等の戦略の下、適切な産学官連携・国際連携により、新たな価値の創出につなげるデータプラットフォーム拠点を構築する。この際、企業や大学が積極的にデータベースを活用する仕組みの構築やセキュリティの確保に努める。


(7)国内外の研究ネットワーク構築の強化(ナノテクノロジー・材料科学技術分野) 
  公的研究機関の橋渡し機能を強化する仕組みを整備することにより、地方の優秀な研究者との共同研究等を推進し、日本における人的ネットワークを構築する。これにより、例えば地方大学の研究者と企業の出会いの場を積極的に作り出すなど、新たなイノベーションの創出を誘発する環境作りを進める。
  また、世界中から優秀な人材を確保・育成することを通じ、海外研究機関との連携を構築・強化するとともに、その人的・機関的ネットワークを活用することで、更なる人材交流やモノ・資金が集まるような仕組み作りを進める。
  さらに、我が国の優れた研究成果を世界に発信することも視野に入れ、諸外国や地域と連携した国際共同研究等により、我が国の競争力の源泉となり得る科学技術を発展させる。


(8)戦略的研究テーマ等の提案力の向上(ナノテクノロジー・材料科学技術分野) 
  政策立案や戦略策定に向けて、科学技術シーズや技術動向、特許動向、社会的ニーズ、経済社会・国際情勢を分析するとともに、政府全体の政策動向の調査を行い、未開拓の領域や真に求められる研究開発領域の把握に努める。この際、現場の実際の研究活動を通じて得られる内外の研究動向や各種動向調査からの情報も活用する。また、産学官のオープンイノベーションの取組や研究施設・設備の共用、データプラットフォームの整備や、地方・海外とのネットワーク構築等を通じて得られたデータ・知見を集約する。
  これらの取組を通じて得られた知見等を最大限活用し、世界に先駆けた材料開発を推進するための戦略的な研究テーマの設定や研究課題の解決のための提案力を強化することで、我が国全体のナノテクノロジー・材料開発力の向上を図る。


(9)分野融合の推進(ナノテクノロジー・材料科学技術分野)
  幅広い分野の基盤技術となるナノテクノロジー・材料科学技術は、他分野との融合を図ることで新たなブレークスルーをもたらす可能性がある。また、分野融合による新たなイノベーションの創出に当たっては、若手研究者のフレキシブルな発想、能力を十分に活用することが肝要である。これに鑑み、他分野連携が実現しやすくなる環境作りについて検討を進めるとともに、その実現に向けて必要な措置を講じる。


第2章 環境・エネルギーに関する課題への対応

1.大目標 [1]

  将来のエネルギー需給構造を見据えた最適なエネルギーミックスに向け、エネルギーの安定的な確保と効率的な利用を図る必要があり、現行技術の高度化と先進技術の導入の推進を図りつつ、革新的技術の創出にも取り組む。(第5期基本計画)
  資源生産性と循環利用率を向上させ最終処分量を抑制した持続的な循環型社会の実現を目指し、バイオマスからの燃料や化学品等の製造・利用技術の研究開発等にも取り組む。(第5期基本計画)
  COP21で策定された「パリ協定」を踏まえ、長期的視野に立って、CO2排出削減のイノベーションを実現するための中長期的なエネルギー・環境分野の研究開発を、産学官の英知を結集して強力に推進し、その成果を世界に展開していく。(エネルギー・環境イノベーション戦略)
  革命的なエネルギー関係技術の開発とそのような技術を社会全体で導入していく。(エネルギー基本計画)
  再生可能エネルギーや省エネルギー等の技術開発・実証を、早い段階から推進するとともに、そうした技術の社会実装を進める。(地球温暖化対策計画)

1.大目標達成のために必要な中目標(環境エネルギー科学技術分野)

  エネルギーの安定的な確保と効率的な利用、温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するため、目指すべきエネルギーシステム等の社会像に関する検討・議論を見据えつつ、従来の延長線上ではない新発想に基づく低炭素化技術の研究開発を大学等の基礎研究に立脚して推進するとともに、温室効果ガスの抜本的な排出削減の実現に向けた革新的な技術の研究開発を推進する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
■アウトプット指標
  (1)低炭素化技術の研究開発、温室効果ガスの抜本的な排出削減のための明確 な課題解決のための研究開発の達成状況(当初の実施計画以上の実績があったテーマ数、論文数 等)

■アウトカム指標 
  (1)低炭素化技術の研究開発、温室効果ガスの抜本的な排出削減に向けた明確な課題解決のための研究開発による特許出願累積件数
  (2)「低炭素化技術の研究開発、温室効果ガスの抜本的な排出削減に向けた明確な課題解決のための研究開発」から「企業との共同研究、他省事業との連携等の実用化に向けた研究開発」への橋渡しテーマ数
  (3)温室効果ガスの抜本的な削減に向けた研究開発成果の寄与状況(例:太陽電池のコストを考慮した変換効率等)

  ※「パリ協定」で掲げられた世界共通の長期目標である2.0℃/1.5℃の達成に向けては、中長期的な視野をもった研究開発を推進することが重要であることから、5年間の評価指標のほか、以下の中長期的な参考指標を設定。
  (参考指標)地球温暖化対策と経済成長を両立させながら、長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガス削減を目指す(地球温暖化対策計画)

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)大学等の基礎研究に立脚した新発想に基づく低炭素化技術の研究開発 
  我が国の大学や国立研究開発法人における優れた基礎研究の力を活(い)かし、従来の延長線上ではないゲームチェンジングな研究者の発想に基づく低炭素化技術の研究開発を行い、温室効果ガス排出削減のイノベーションを実現する。
  具体的には、ステージゲート評価による課題の選択と集中等を通じ、低炭素社会の実現に貢献する革新的技術シーズに関する研究開発及びそれらを統合した実用化に向けた技術の研究開発を一体的に実施する。さらに、国立研究開発法人理化学研究所や国立研究開発法人物質・材料研究機構等における低炭素化技術に係る研究開発を推進する。

  (2)温室効果ガスの抜本的な排出削減に向けた明確な課題解決のための研究開発 
  温室効果ガスの抜本的な排出削減に向け、明確なターゲットを示し、その解決を図るための革新的な技術の研究開発を推進し、温室効果ガスの大幅な削減に貢献する。
  具体的には、2030年の社会実装を目指して取り組むべきテーマとして、文部科学省と経済産業省の合同検討会を経て設定した次世代蓄電池、ホワイトバイオテクノロジー分野等において、産学官の多様な関係者が参画した共同研究開発を推進する。また、電力損失を大幅に削減できる次世代半導体の実現に向けて、青色LEDの研究開発に代表される窒化ガリウム(GaN)に関する我が国の強みを活(い)かした研究開発等に取り組む。さらに、「エネルギー・環境イノベーション戦略」等を踏まえ、2050年の温室効果ガスの大幅削減というゴールからバックキャストした明確なターゲットを設定し、あらゆる手段を駆使してターゲット達成を目指す複数チームによる研究開発を関係省庁等との連携により実施する。


2.大目標達成のために必要な中目標(核融合科学技術分野)

  核融合エネルギーは、燃料資源が地域的に偏在なく豊富であること、発電過程で温室効果ガスを発生しないこと、少量の燃料から大規模な発電が可能であること等の特性を持つ。また、安全性の面でも優れた特性を有することから、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する、将来の基幹的エネルギー源として期待されている。
  大目標の達成に向け、文部科学省は、国際約束に基づくITER(国際熱核融合実験炉)計画・BA(幅広いアプローチ)活動を推進しつつ、これらの進捗状況を踏まえ、トカマク方式を主案とする原型炉開発のための技術基盤構築に向けた戦略的取組を推進する。並行して、トカマク以外の方式(ヘリカル方式、レーザー方式)や、核融合理工学の研究開発を進めることにより、将来に向けた重要な技術である核融合エネルギーの実現に向けた研究開発に取り組む。
  なお、これらの取組を推進するに当たっては、原型炉開発に向けたロードマップを策定し、量子科学技術研究開発機構、核融合科学研究所、大学、産業界等を網羅する全日本の連携体制で臨む。
  また、現行BA活動終了後の日欧協力の在り方について検討を進めているところであり、その結果に応じて、必要があれば、本計画を見直すこととする。

(1) 中目標達成状況の評価のための指標
  核融合科学技術分野については、核融合エネルギーの実用化という明確な目標があるため、その実現に向けて、本計画実施期間中に達成すべきマイルストーンを指標とした。
■アウトプット指標
  (1)ITERの確実な運転開始に貢献するため、我が国が調達責任を有するITER機器の製作を着実に進める。 
  (2)BA協定に基づくJT-60SAの組立工程を完了し、運転を開始する。 
  (3)LHDにおいて、1億2000万度の高性能プラズマを生成する。
  (4)予備的な原型炉設計活動と研究開発活動を完了する。
  (5)社会との協働・共創により、核融合エネルギー開発の理解と支援を得るべく、アウトリーチ・ヘッドクオーターを設置し、多様な双方向型の交流の実績を積む。

■アウトカム指標
  (1)ITER建設作業の進捗と計画の着実な進展に貢献する。 
  (2)JT-60SAについて、先進プラズマ研究開発のプラットフォームが構築される。
  (3)LHDによる高性能プラズマの実験結果が、環状プラズマの総合的理解を通じて、ITER計画と原型炉設計の進展に貢献する。
  (4)原型炉の工学設計に向けた見通しが得られる。
  (5)社会との連携強化が進み、核融合炉の安全性に関する対話の増進も含め、核融合エネルギー実現に向けた社会の理解と支援の基盤が構築される。

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)国際約束に基づくITER計画・BA活動の推進
  国際約束に基づき、核融合実験炉の建設・運転を通じて核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証するITER計画を推進する。日欧協力により、ITER計画を補完・支援するとともに原型炉に必要な技術基盤の確立を目指した先進的核融合研究開発である幅広いアプローチ(BA)活動を推進する。なお、現行BA活動後の日欧協力に関しては、国内活動との相補性を考慮し効果的に推進する。

  ア. ITER計画の推進
  ITERの運転開始(ファーストプラズマ)を見据え、国際約束に基づくスケジュールに従って我が国が調達責任を有する機器の製作を進め、超伝導導体、超伝導コイル及び中性粒子入射加熱装置実機試験施設用機器の製作を完了する。また、テストブランケットモジュールについて、ITERにおける試験に向けた設計活動等を実施する。さらに、ITER計画の円滑な推進に貢献するため、ITER建設地(仏国 サン・ポール・レ・デュランス)においてITER国際核融合エネルギー機構(以下「ITER機構」という。)が実施する機器の統合作業(据付け・組立て・試験・検査)を支援するとともに、ITER機構及び他極との情報交換及び連携を強化する。

  イ. BA活動の推進
  国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業については、予備的な原型炉設計活動と研究開発活動を完了する。国際核融合材料照射施設(IFMIF)に関する工学実証及び工学設計活動(EVEDA)事業については、IFMIF原型加速器の実証試験を完了する。ITERのサテライト・トカマクとしても位置付けられているJT-60SAについては、我が国が調達責任を有する機器の製作や日欧が製作する機器の組立てを完了し運転を開始することにより、ITERの運転と原型炉の開発に向けた研究開発・支援のプラットフォームを構築する。

  (2)学術研究・基礎研究の総合的推進
  核融合科学及び関連理工学の学術的体系化と発展を図ることを目指し、核融合科学研究所、大学等における先進的な研究を含む幅広い学術研究や基礎研究を総合的に推進する。特に、トカマク方式に対して相補的・代替的な役割を有するヘリカル方式とレーザー方式については、引き続き学術研究に重点をおいて研究を進める。

  ア.LHD(大型ヘリカル装置)計画
ヘリカル方式の物理及び工学の体系化と環状プラズマの総合的理解に向けて、これまでの軽水素実験による成果を踏まえた重水素実験を開始する。これにより、イオン温度1億2,000万度を達成し、核融合炉に外挿可能な超高性能プラズマを実現する。また、国内外の共同研究により、重水素放電における水素同位体効果等の学術研究を推進する。

  イ.レーザー方式
  レーザー方式による核融合については、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターを中心として進められている高速点火方式による実験において、核融合点火・燃焼の可能性を見極めるとともに、その研究成果等を踏まえて、今後の研究の展開の方向を定める。

  ウ.幅広い学術研究・基礎研究
  核融合に関する学術研究・基礎研究については、(1)大型装置では得られないプラズマ領域を実現できる中小規模のプラズマ実験装置を用いた研究、(2)大規模シミュレーション技術や情報技術を駆使する理論・シミュレーション研究、(3)特徴ある中小規模の工学研究装置を用いた材料・炉工学の研究等、斬新なアイデアに基づく多様な先駆的・萌芽(ほうが)的研究を推進するとともに、幅広い学術分野との接点である大学と核融合科学研究所との連携強化を促進し、伝統的な分野間連携にとどまらず、新たな分野間連携や新分野の創成に繋(つな)がる研究の推進を図る。

  (3)原型炉の設計・研究開発活動の推進
  原型炉建設判断に必要な技術基盤を構築するため、原型炉総合戦略タスクフォースの提示するアクションプランに沿って、ITER計画の着実な推進に基づく経験と実績とともに、IFERC、IFMIF/EVEDA等のBA活動や、トカマク国内重点化装置※でもあるJT-60SAを通じた研究開発活動の成果も取り込みつつ、原型炉設計合同特別チームによる全日本体制での原型炉設計活動と研究開発活動を進める。

   ※「今後の核融合研究開発の推進方策について」(平成17年10月26日
原子力委員会核融合専門部会)において、核融合エネルギーの早期実現に向けて、国内のトカマク装置を重点化し、トカマク方式の改良を我が国独自に進めるための「トカマク国内重点化装置計画」を進め、JT-60の後継機をトカマク国内重点化装置とすることとされている。


2.大目標 [2]

  地球規模での温室効果ガスの大幅な削減を目指すとともに、我が国のみならず世界における気候変動の影響への適応に貢献する。(第5期基本計画)
  地球温暖化に係る研究については、従前からの取組を踏まえ、気候変動メカニズムの解明や地球温暖化の現状把握と予測及びそのために必要な技術開発の推進、地球温暖化が環境、社会・経済に与える影響の評価、温室効果ガスの削減及び地球温暖化への適応策などの研究を、国際協力を図りつつ、戦略的・集中的に推進する。(地球温暖化対策計画)
  スーパーコンピュータ等を用いたモデル技術やシミュレーション技術の高度化を行い、時間・空間分解能を高めるとともに発生確率を含む気候変動予測情報を創出する。また、気候予測の高解像度化を検討する。(気候変動の影響への適応計画)
最新の気候変動予測データや、全球気候モデルのダウンスケーリングを活用することで、洪水や高潮による将来の外力の変化を分析する。(気候変動の影響への適応計画)
  気候変動適応情報にかかるプラットフォーム等において、ダウンスケーリング等による高解像度のデータなど地域が必要とする様々なデータ・情報にもアクセス可能とするとともに、地方公共団体が活用しやすい形で情報を提供する。また、地方公共団体が影響評価や適応計画の立案を容易化する支援ツールの開発・運用や優良事例の収集・整理・提供を行う。(気候変動の影響への適応計画)


1.大目標達成のために必要な中目標(環境エネルギー科学技術分野)

  国内外における気候変動対策に活用されるよう、地球観測データやスーパーコンピュータ等を活用し、気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化を進め、より精確な将来予測に基づく温暖化対策目標・アプローチの策定に貢献する。また、より効率的・効果的な気候変動適応策の立案・推進のため、不確実性の低減、高分解能での気候変動予測や気候モデルのダウンスケーリング、気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進する。


(1)中目標達成状況の評価のための指標
■アウトプット指標
  (1)気候変動メカニズムの解明や気候変動予測モデルの高度化、影響評価技術モデル等の開発数、累計論文数 等
  (2)気候変動影響評価・適応策評価技術の研究開発に参画した地方公共団体等の数

■アウトカム指標 
  (1)研究開発成果を活用した国際共同研究の海外連携実績
  (2)気候変動影響評価・適応策評価技術の開発の成果を活用し、気候変動適応に関する計画や対策の立案・検討・実施を開始した地方公共団体等の数

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)国内外における気候変動対策に活用するための気候変動予測・影響評価技術の開発 
  気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等における議論をリードするとともに国内外における気候変動適応・緩和策の立案・推進に貢献するため、全ての気候変動対策の基盤となる気候モデル研究の高度化に必要な研究開発を進める。
  具体的には、地球観測データやスーパーコンピュータ等を活用し、気候変動メカニズムの解明、高分解能での気候変動予測等の技術の研究開発を推進し、気温上昇の不確実性の低減、緩和策立案の科学的根拠となる炭素・窒素循環・気候感度等の不確実性の低減、環境の不可逆変化(ティッピングエレメント)のより確実な解明、我が国周辺における気候変動適応・緩和策の立案・推進に必要となる気候モデルの時空間解像度の向上、極端気象現象に関する高精度な確率的予測や脆弱(ぜいじゃく)性・暴露等も考慮した統合的影響評価を可能とする。

  (2)地域レベルでの気候変動適応に活用するための気候変動影響評価・適応策評価技術の開発 
  「気候変動への適応計画」の策定を踏まえ、今後本格化することが想定される地方公共団体における地域レベルでの気候変動適応策の立案・推進に貢献するため、国における気候変動研究の蓄積を活(い)かし、地域を支える共通基盤的な気候変動影響評価・適応策評価技術を開発する。
  具体的には、気候変動適応策の立案等に必要となる気候モデルのダウンスケーリング、地域レベルでの気候変動影響評価、適応策の評価、影響の可視化等を可能とするアプリケーションを、地球科学、社会科学等の研究者と地方公共団体関係者等の協働により開発し、関係省庁等と連携しつつ、地方公共団体のニーズがある分野(農業、防災等)における地域の実情に応じた効率的・効果的な適応策の立案・推進に貢献する。


3.大目標 [3]

  ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。(第5期基本計画)
  地球環境の情報をビッグデータとして捉え、気候変動に起因する経済・社会的課題の解決のために地球環境情報プラットフォームを構築する。(第5期基本計画)
  気候リスク情報等は、各主体が適応に取り組む上での基礎となるものであることを踏まえ、多種多様な気候リスク情報等の収集と体系的な整理を行うための気候変動適応情報にかかるプラットフォームについて関係府省庁において検討を行う。その際「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)において経済・社会的課題の解決に向けた重要な取組として位置づけられた地球環境情報プラットフォームの活用も含めて検討する。(気候変動の影響への適応計画)


1.大目標達成のために必要な中目標(環境エネルギー科学技術分野)

  我が国の政府等が収集した地球観測データ等をビッグデータとして捉え、人工知能も活用しながら各種の大容量データを組み合わせて解析し、環境エネルギーをはじめとする様々な社会・経済的な課題の解決等を図るプラットフォームの構築を図る。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)データ統合・解析システム(DIAS)に新たに格納された地球環境情報の数(データセット数)

 ■アウトカム指標
  (1)DIASを利用する研究課題数、利用者数、提供ソリューション数(開発されたアプリケーションの数等)。

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)地球環境情報プラットフォームの構築 
  地球観測情報や気候変動予測情報等を用いて気候変動への適応・緩和等の国内外の社会課題に貢献するための社会基盤として、社会課題の解決を図ろうとする企業等の具体のユーザーニーズも踏まえた地球環境情報プラットフォームを構築する。
  具体的には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)や、気象庁、国土交通省等の政府が保有する地球観測データ等を集約する。また、多分野・多種類のデータをリアルタイムで統合・解析するための情報基盤を構築するとともに、企業等のユーザーが長期的・安定的に利用できるための運営体制の強化や、ユーザーの拡大のため水課題(ダム管理)等のテーマに関するアプリケーション開発等を通じ、社会課題解決への一層の貢献を図る。また、研究利用に加え、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も促進し、我が国の有する地球観測データ等によるイノベーションの創出を図る。


4.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策

(1)人材育成
  (1)環境エネルギー科学技術分野
  環境エネルギー分野の科学技術は、学際的な性質を有するとともに、社会との関係性が強く問われる性質を持っている。広い視野を持ちながら、社会との関係、技術の出口を常に意識しながら、従来の延長線上ではないゲームチェンジングな発想に基づく研究開発を遂行することができる人材の育成が重要である。
  また、地球観測データ等のビッグデータの活用に当たっては、活用する分野毎(ごと)の問題意識とデータ活用の技術を併せ持った専門人材が不可欠であるが、現在の我が国ではそのような人材の層が薄いことから、充実を図ることが重要である。

  (2)核融合科学技術分野
  核融合エネルギーの実現は、長期間を要する研究課題であり、長期的な視点で、特に若手研究者の育成・確保に向けた取組を、学校教育における人材確保も視野に入れつつ、幅広い視点から進める必要がある。また、研究を成功させるためには、核融合研究に関する長期的ビジョンが示され、社会とのリスクコミュニケーションの観点を考慮しつつ、社会的な合意を形成する必要がある。 
  このため、大学、核融合科学研究所、量子科学技術研究開発機構(QST)が固有の機能を活(い)かし、主体的な役割に基づいた人材育成・確保のネットワークを形成することが必要である。
  特に、大学共同利用機関である核融合科学研究所においては、大学の人材育成機能の強化に更に貢献することが、QSTにおいては、大学院教育への協力や、連携大学院制度の活用をより一層推進することが望まれる。
  また、核融合に関連する従来からの専門分野に限らず、人文社会系を含めた広い学術分野及び産業界との連携・交流活動を活発に行いながら、分野を越えた人材の流動性を一層高めていく必要がある。
  さらに、国際プロジェクトとして推進されているITER計画やBA活動への参加を人材育成の観点から積極的に活用すべきである。特に若手研究者にとっては、その参加がキャリアパスとして位置づけられることが重要である。
  多様な視点や優れた発想を取り入れるため女性の能力を最大限に発揮できる環境を整備し、その活躍を促進していくことは、核融合研究開発にとっても極めて重要である。そのため、女子中高生等への理解促進活動や、各研究機関での採用に当たってのポジティブアクションの採用等を推進していくべきである。

(2)オープンサイエンスの推進
 (1)環境エネルギー科学技術分野
  地球観測・予測データをはじめとしたデータを戦略的に活用し、科学研究の発展を図ることは重要であり、オープン・アンド・クローズ戦略等に留意しつつ、対応をしていく必要がある。

 (2)核融合科学技術分野
   核融合の研究開発を進めるためには、研究者の所属機関、専門分野、国境を越えた新たな協働により、絶えざるイノベーションを創出していくことが必要である。このため、オープンサイエンスを進めることにより、学界、産業界、市民等あらゆるユーザーに対し、研究成果を広く利用可能とすることが重要である。また、オープンサイエンスが進むことで、核融合の社会に対する研究プロセスの透明化を図ることが重要である。

(3)オープンイノベーション(産学官連携)の推進
 (1)環境エネルギー科学技術分野
  研究開発プログラムの立案・実施に当たっては、その社会実装を担う産業界のニーズを常に把握し、研究開発成果が円滑に実用化されるよう留意するべきである。

 (2)核融合科学技術分野
  産業界が核融合に関してこれまで蓄積してきた機器開発・機器製作を中心とした技術は、今後の核融合研究開発の推進にとって不可欠であり、産業界との連携は極めて重要である。したがって、産業界における技術力の維持等も含め、核融合エネルギーフォーラム等を通じた産業界と国及び実施機関との連携体制の更なる強化が必要である。
  これまで、ITER等の大型核融合実験装置の製作を中心として、産学連携による研究活動が活発に行われ、産業界において様々な産業技術の実用化が図られてきたところであるが、今後とも、それぞれの特長を生かしつつ、一層連携協力を推進すべきである。
  さらには、核融合技術が、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンス、情報・通信、環境分野を始め、多くの産業分野に波及効果をもたらしてきていることを踏まえ、分野や組織を越えた人材交流を進めることなどによって、核融合研究で開発された先端技術の他分野への活用を積極的に進める必要がある。

(4)知的財産・標準化戦略
  (1)環境エネルギー科学技術分野
  オープンイノベーションの推進に当たっては、オープン・アンド・クローズ戦略をはじめとする知的財産戦略や、標準化戦略についても研究開発初期段階から検討する体制を整備するべきである。
また、地球観測データ等のビッグデータの活用に当たっては、データポリシーの整備、知的財産権に関する検討、課金制度の検討、システム間連携を行うための標準化戦略の検討等が不可欠であり、地球環境情報プラットフォームの構築に際して、関係府省とも連携を図りつつ、検討を推進することが必要である。

  (2)核融合科学技術分野
  世界の核融合研究開発は、現在、科学的・技術的実現性を実証する段階であるが、核融合エネルギー技術は、将来実用化されれば、我が国の基幹産業の一つと成り得る。将来の実用化を視野に入れつつ、世界をリードする研究開発の成果を創出していくことが重要である。核融合分野においては、特に核融合装置の機器やコンポーネントの設計・製作に伴う知的財産の蓄積とデファクトスタンダードの確立も含めた標準化を進めていくとともに、その波及効果としてもたらされる他の産業分野での成果についても知的財産としての活用を進めるべきである。また、アジア諸国等との国際協力を積極的に行っていくべきである。

(5)社会との関係深化
  (1)環境エネルギー科学技術分野
  基本計画等にも記載のあるとおり、温室効果ガスの抜本的な排出削減のための革新的な技術の研究開発の成果を社会に円滑に実装していくため、社会科学・人文科学の知見も生かし、環境の持続性に加え、社会の持続性、経済の持続的な発展も一体的に考えた定量的な低炭素技術シナリオ、社会・経済シナリオの研究開発を行い、その成果が社会に広く活用されるよう取り組む必要がある。また、持続可能な開発目標(SDGs)においても、再生可能エネルギーの導入割合の大幅増加やエネルギー効率の改善等に関する目標や気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する目標等が掲げられていることも考慮する必要がある。
  文部科学省においては、以上のような社会のニーズを踏まえたシナリオ戦略のもと、国内の関係機関と連携しつつ、地球環境研究を国際的なステークホルダーと協働して進める「フューチャー・アース」構想の推進を図るとともに、気候変動予測技術や影響評価・適応策評価技術の研究開発に当たり、関係府省、地方公共団体、企業、市民等のマルチなステークホルダーとも研究開発初期段階から協働し、出口戦略としての成果の社会実装が確実に図られるよう取組を進めるべきである。

  (2)核融合科学技術分野
  核融合エネルギーは、核融合炉が実用化された暁には恒久的なエネルギー源として人類に多大な貢献をすると期待されるが、その実現のためには、非常にチャレンジングかつ大規模な技術開発が必要であり、今後も多額の予算と数十年にわたる長期の開発期間を要する研究開発分野である。したがって、将来のエネルギー・環境問題の解決に向け、社会との共創により核融合研究開発の継続的な発展を図るべく、核融合エネルギーの意義や安全性等に対する理解を得ることが重要である。
  そのためにはまず核融合研究者自らが、現在取り組んでいる研究課題の魅力や、今後目指すべき研究の方向性について分かりやすい言葉で説明しつつ、積極的に社会に向けて、核融合研究に関する情報発信に努めることが重要である。
  また、研究施設への見学者の受入れ、大学や初等中等教育機関との連携活動、一般市民を対象とした講演会や対話集会の実施等を通じて、国民の核融合に対する理解促進に資する活動の充実に努めるべきである。
  さらには、将来の核融合エネルギーでは安全性の問題が課題となるため、人文社会系の専門家とも連携協力し、放射線やトリチウムなど核融合が社会に対してどのような課題があり、どのように解決していくのかを示していくことにより、信頼を得るように努めることが重要である。

(6)国際連携
  (1)環境エネルギー科学技術分野
  気候変動問題に国際的に連携して対処していくため、文部科学省の行う気候変動に関する研究開発については、IPCCや国連気候変動枠組条約(UNFCCC)等の国際的な枠組みにおける議論を十分に踏まえるとともに、その成果が広く発信され、2020年に公表予定のWG1のIPCC第6次評価報告書(AR6)等の国際的な気候変動対策に関する議論や我が国政府の取組に反映がなされるよう留意するべきである。
  また、文部科学省の行う地球環境情報プラットフォームの構築に当たっては、地球観測に関する政府間会合(GEO)における取組も踏まえ、我が国の地球観測・予測データがGEOにおける各国の地球観測・予測データを共有する全球地球観測システム(GEOSS)を通じて国際的に有効に活用されるよう留意するべきである。

  (2)核融合科学技術分野
  我が国は、これまでもITER計画やBA活動等の国際協力プロジェクトに積極的に参加するとともに、米国、欧州、中国、韓国等との二国間協力を推進してきたところであり、今後とも、国内研究開発との相補性を考慮した上で国際連携を戦略的に推進し、世界の核融合研究開発の中で主導的な役割を果たすことが重要である。

(7)府省連携(環境エネルギー科学技術分野)
  環境エネルギー分野の研究開発は、内閣府、外務省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省等、関係府省が多く、様々な取組が行われている。政府全体として取組が効率的・効果的に行われるよう、研究開発の推進に当たっては、関係府省間での役割分担や連携を図るための取組を進めることが重要である。

第3章 健康・医療・ライフサイエンスに関する課題への対応


1.大目標

  健康・医療戦略推進本部の下、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画に基づき、国立研究開発法人日本医療研究開発機構を中心に、オールジャパンでの医薬品創出・医療機器開発、革新的医療技術創出拠点の整備、再生医療やゲノム医療など世界最先端の医療の実現、がん、精神・神経疾患、新興・再興感染症や難病の克服に向けた研究開発などを着実に推進する。 また、我が国の医療技術や産業競争力を生かし、例えば、感染症対策などの分野で、諸外国との連携による地球規模の課題への取組や、我が国の優れた力を生かした国際貢献といった主導的取組を進めていく。
  加えて、幅広い研究開発活動や経済・社会活動を安定的かつ効果的に促進するために不可欠なデータベースや生物遺伝資源等の知的基盤について、公的研究機関を実施機関として戦略的・体系的に整備する。


1.大目標達成のために必要な中目標(医薬品・医療機器開発への取組について)

  「健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)」及び「医療分野研究開発推進計画(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)」等に基づき、医薬品・医療機器開発への取組:医薬品創出のための支援基盤の整備等により、革新的医薬品・医療機器開発を推進する。
 
(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)創薬支援の取組における化合物提供件数(累積)
  (2)創薬支援の取組における放射光施設外部利用件数
  (3)革新的医療機器の実用化に資する成果に関する特許出願等の件数(累積)

  ■アウトカム指標
  (1)創薬支援により新たに創薬シーズが見つかった件数
  (2)革新的医療機器の実用化に資する成果の件数(累積)

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、革新的医薬品・医療機器開発に資する研究開発を着実に実施する。


2.大目標達成のために必要な中目標(臨床研究・治験への取組について)

  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、臨床研究・治験への取組:全国に橋渡し研究拠点を整備し、アカデミア等の基礎研究の成果を一貫して実用化に繋(つな)ぐ体制を構築する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)橋渡し研究支援拠点で支援しているシーズ数

  ■アウトカム指標
  (1)橋渡し研究支援拠点の支援により基礎研究の成果が薬事法に基づく医師主導治験の段階に移行した数

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、アカデミア等の基礎研究の成果を一貫して実用化に繋(つな)ぐ体制の構築を着実に実施する。


3.大目標達成のために必要な中目標(世界最先端の医療の実現に向けた取組について)

  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、世界最先端の医療の実現に向けた取組:iPS細胞等を用いた革新的な再生医療・創薬をいち早く実現するための研究開発の推進を図るとともに、ゲノム医療の実現に向けた取組を推進する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトカム指標
  (1)iPS細胞等幹細胞を用いた課題の臨床研究への移行(累積)
  (2)発見された疾患関連遺伝子候補及び薬剤関連遺伝子候補数(累積)

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、iPS細胞等を用いた革新的な再生医療・創薬をいち早く実現するための研究開発、及びゲノム医療の実現に向けた研究開発を着実に実施する。


4.大目標達成のために必要な中目標(疾病領域ごとの取組について)

「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、疾病領域ごとの取組:がん、精神・神経疾患、感染症等の疾患克服に向けた研究開発等を推進する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)精神・神経疾患の克服に向けた知見の蓄積
  (2)精神・神経疾患克服の基盤となる脳機能ネットワーク(神経回路)の解明

  ■アウトカム指標
  (1)次世代がん医療創生研究事業採択課題のうち、新規分子標的薬剤及び新規治療法に資する有望シーズ、早期診断・個別化治療予測バイオマーカー及び新規免疫関連有効分子の数(累積)
  (2)グローバルな病原体・臨床情報の共有体制の確立を基にした、病原体に関する全ゲノムデータベースの構築数

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、がん、精神・神経疾患、感染症等の疾患克服に向けた研究開発を着実に実施する。


5.大目標達成のために必要な中目標(研究開発の環境の整備や国際的視点に基づく取組について)

  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、ライフサイエンス研究基盤の整備、国際共同研究等の取組を推進する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)研究基盤として整備している実験動物・植物等の提供数

  ■アウトカム指標
  (1)提供した実験動物・植物等を用いて発表された論文数

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」等に基づき、ライフサイエンス研究基盤の整備や国際共同研究等の取組を着実に実施するとともに、超少子高齢化社会を迎える我が国の情勢等を踏まえ、予防医療にも貢献する老化のメカニズム解明・制御の基礎研究の推進及び研究基盤の構築等の取組について実施する。


2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策

(1)人材育成
  ライフサイエンス分野の研究開発を発展させる上で必要不可欠な、医療関係データや情報等を効果的に活用できるバイオインフォマティクス人材等の育成を進めるとともに、臨床研究や治験を高い水準で行う臨床研究エキスパート(医師)及びそれをサポートするプロジェクトマネージャー、知的財産専門家、バイオインフォマティシャン、データマネージャー、生物統計家、倫理の専門家、レギュラトリーサイエンスに精通した人材等の専門人材の確保や、教育訓練や講習会、OJT等による人材育成を、橋渡し研究支援拠点等を中心に全国及び地域でのネットワークを構築しながら推進する。

(2)オープンサイエンスの推進
  大学や研究機関等の共用設備を活用しつつ、大学と産業界とが連携しながら研究開発を推進する。また、正確な臨床・健診情報が付加されたゲノム情報、脳イメージング情報、バイオマーカー情報等を、データシェアリングにより利活用し研究を推進する。

(3)オープンイノベーション(産学連携)の推進
 大学等の持つ優れた基礎研究成果を実用化に結び付けるため、有望なシーズの発掘から企業主体での事業化開発や、優れた基礎研究成果や産業界が抱える技術課題の解決に資するテーマを基にした産学共同研究等を推進する。
また、橋渡し研究支援拠点等を中心に、オープンイノベーションの推進のための取組を支援する。

(4)知的財産・標準化戦略
  橋渡し研究支援拠点を中心に、弁理士を含む知的財産専門家を確保すること等により、医療分野に特化した事業化を見据えた特許出願・調査、知的財産管理、知的財産戦略策定等の支援を推進する。

(5)社会との関係深化
  大学・研究機関等における健康・医療・ライフサイエンス分野の研究開発において、研究公正の確保に向けた取組や、研究者とステークホルダーとの対話の促進など国民の適切な理解を深める取組を推進する。また、再生医療等の本分野における倫理的・法的・社会的問題(ELSI: Ethical, Legal and Social Issues)については、研究開発の状況と人文社会科学的視点なども踏まえながら検討を進める。

(6)健康・医療分野に限らない生命科学分野の推進について
  健康・医療分野に限らない幅広い生命科学の研究開発や、情報科学技術分野、ナノテクノロジー・材料科学技術分野などとの融合研究は、ライフサイエンス分野の裾野を広げ、健康・医療分野の研究開発の新たな成果の創出にもつながる重要な取組であることから、大学等における当該分野の基礎研究を含む研究開発を推進するとともに、特定国立研究開発法人理化学研究所等がこれまで幅広い研究開発の実践を通じて培ってきた研究ポテンシャルを最大限に活用し、その総合力を効果的に発揮して当該分野の研究開発を実施する。

第4章 安全・安心の確保に関する課題への対応


1.大目標

  我が国は、地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火などの大規模な自然災害により数多くの被害を受けてきた。南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大災害の切迫性が指摘され、一度発生すれば国家存亡の危機を招くおそれもある。また、これまでの災害から得られた教訓を今後の大規模自然災害等への備えに生かすことが強く求められている。
  このため、このような自然災害に対して、安全・安心を確保するべく、従来の研究手法に加えIoT、ビッグデータ、AI等の先端科学技術を活(い)かした研究開発を推進し、災害に対する予測力・予防力・対応力のバランスがとれたレジリエントな社会を構築する。


1.大目標達成のために必要な中目標(防災科学技術分野(予測力・予防力の向上))

  自然災害を的確に観測・予測することで、人命と財産の被害を最大限予防し、事業継続能力の向上と社会の持続的発展を保つため、国土強靱(きょうじん)化に向けた調査観測やシミュレーション技術及び災害リスク評価手法の高度化を図る。

(1)中目標達成状況の評価のための指標 
  ■アウトプット指標
  (1)基盤的観測体制の整備(稼働率)、火山データの一元化、極端気象災害や複合連鎖型災害の発生過程の解明、データ公開の充実
  (2)普及型耐震工法の確立、IoT等を用いた測定技術の開発、災害に強いまちづくりへの寄与
  (3)防災リテラシー向上のための教育・啓発手法の開発及びそれによる被害軽減効果の定量化の確立
  (4)査読付き論文数、研究成果報道発表数

  ■アウトカム指標
  (1)被害の軽減につながる予測手法の確立
  (2)建築物・インフラの耐災害性の向上
  (3)自然災害の不確実性と社会の多様性を踏まえたリスク評価手法の確立


(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)自然災害の正体を知りこれを予測する技術の研究開発
  大規模な地震や津波、火山噴火等、発生すれば甚大な被害をもたらすリスクの高い災害、及び、地球規模の気候変動に伴い今後激甚化すると予想される風水害、土砂災害、雪氷災害等に対応し、被害の軽減に向けた予測手法の確立や基盤的観測体制の整備に資する研究開発に取り組む。
  近年我が国は、2011年の東北地方太平洋沖地震や2016年の熊本地震等、被害規模の大きな地震に見舞われている。また、今後30年程度の内には南海トラフ地震や首都直下地震など甚大な被害をもたらす地震も想定されており、被害予測・被害軽減に向けた基盤的観測の重要性が増している。大規模な地震の発生頻度は極めて低いため、過去の地震記録は少なく、現状の観測技術と比較してその精度も低い。地震被害の軽減に向けては、海溝型地震が懸念される海域から陸域までの海陸統合型地震津波観測網の整備と長期にわたるリアルタイム観測体制の確立が重要である。
  同様に、火山噴火についてもその活動頻度は低いものの、発生した場合甚大な被害をもたらすことが予想されており、観測網の整備と長期にわたるリアルタイム観測体制の確立が重要となる。
  極端気象による豪雨・豪雪・竜巻・雷などの頻度増大や台風の強大化による被害の増加など、地球規模の気候変動の影響によりこれまでに経験したことのない風水害・土砂災害・雪氷災害の発生が想定されており、それらの災害に対応するための予測手法の確立や観測基盤の整備が重要である。また、地震・津波・火山噴火・風水害・土砂災害・雪氷災害等が連続して生じる「複合連鎖型災害」についても視野に入れた研究開発も必要である。
  リアルタイム観測の継続性に関しては、例えば2016年熊本地震の際にも確認されたように、発災時の観測施設の被災や停電・通信網の途絶等により観測不能となることが想定されるため、冗長性を持った観測システムの開発が重要である。
  また地球観測衛星やGNSS観測を利用した新しい知見を得ることや民間の各種観測網との連携は新たな予測手法の確立や観測精度の向上に寄与できるため、実利用度の向上を図る必要がある。

  (2)自然災害に負けない建築物・インフラを構築する技術の研究開発
  近年の自然災害を反映した巨大地震や連続地震等の新たな想定と既存建築物・インフラの老朽化に対応し、発災時の被害を最小限に抑えるとともにその後の回復を迅速に行うため、高耐震化技術を含む新しい技術・手法を含む災害に負けない建築物・住宅・インフラの構築・維持管理に資する研究開発に取り組む。
  既存建築物や、高度経済成長期に大量に整備され十分に管理・改修されていない老朽化したインフラに対し、想定される震動への耐震性能検査方法や改修工法、安価かつ効果的に補強する普及型耐震工法の確立が重要である。
  想定される大規模地震に対し建物被害による影響を軽減するため、建物の被災状況を即時に推定するための個々の建物性能評価や複数回震動への耐久性評価に資する測定技術を確立することが重要であり、広範囲における被災状況を推定するために、IoT技術を利用することが有効である。また、既存建物については、現状の居住生活・経済活動を妨げることなく簡便に設置可能な測定器を用いた評価技術を確立する必要がある。
  将来発生する大規模地震による災害を数値シミュレーションで予測するため、地震観測結果から得られた地震活動、発震機構、地下構造などの各種データを十分に活用し、過去の地震に対するメカニズム解析や数値計算技術の高度化により大規模地震に関する知見や予測技術を確立することが重要である。
  都市部においては災害発生時の被害が著しく甚大になることが想定されるため、推論手法の発達等を踏まえ、地震、津波、火山、洪水等の理学的なハザード予測から、建物、構造物、プラント等の工学的な被害推定、社会インフラや産業活動の機能的相互関連を踏まえた経済的なリスク評価や復旧過程の予測を包括する、都市における災害過程の高詳細なシミュレーション技術等の開発が重要となる。
  また、人口減少社会における災害に強い都市計画の策定手法に関する研究開発も進めていく必要がある。

  (3)不確実かつ多様な災害リスクの評価と、それに対応する技術の研究開発
  自然災害の不確実性と社会の多様性を踏まえたリスクの評価方法を構築し、その知見を取り入れた多様な主体(行政間含む)の広域連携型防災対応や行動誘発につながる防災リテラシー向上のための教育・啓発手法、これらの効果を測定する手法等の研究開発に取り組む。
  2016年の熊本地震では連続して震度7を記録し、時間差をもって発生する地震への対応の必要性が再認識され、またその後も集中豪雨による土砂災害の危険性が懸念された。甚大な被害が想定されている南海トラフ地震においても、時間差で連動する地震災害、津波災害への対応は必要であり、時間経過を考慮したリスク評価手法の確立とそれらに基づく対策立案が重要であり、またそれらを考慮したハザードマップの作成・見直しも必要である。
  地震の発生確率や火山の噴火予測、局地的大雨の発生予測、台風の進路予測など、不確実性を含む情報の効果的な伝達方法や、これらを用いた自治体等の意思決定手法の確立が重要である。
  従来、我が国の防災における研究対象は経験的な既往災害を重要視し確率的に低い事象を軽視してきた傾向にあり、そのため、低頻度大規模災害などは評価対象として重要視されてこなかった。今後は国内の任意地点において発生しうる全ての災害種の潜在的危険度も考慮し、標準的、概略的評価手法を開発していくことも重要となる。
  災害における経済被害推計については、その数値の推定プロセスについて、データの継続的蓄積を進めつつ理論的・実証的に体系化していく必要がある。また災害対策の実施により得られた被害の軽減効果の定量化を進めることも重要である。
  我が国では、災害発生の危険性が高い地域に住居やインフラなどの資産が存在し、その危険性が十分に周知されずに被災する場合も生じている。災害リスクを住民が知ることにより、地域毎(ごと)で自律・分散・協調し災害に強い社会を実現するための手法の確立につながる研究開発が重要となる。
  東日本大震災や熊本地震等の大規模災害時において、市民の防災行動、避難行動に関する情報が必ずしも十分に提供されていなかったことから、これまでの被災経験や教訓を踏まえ、市民を対象としたリスクコミュニケーションツールの研究開発を進め、住民等が我がことに結び付けて安全・安心を考えることを可能とする情報提供システムの開発を行うことは極めて重要である。現在様々な主体が所有している各種情報を効率的に活用するための仕組みや技術開発、情報の受け手が内容を容易に理解できる情報発信の在り方等を確立する。
  あらゆる国民・企業が防災リテラシーを高め、災害に備えることを当たり前と感じる防災文化を形成する教育・啓発につながる検討も重要である。


2.大目標達成のために必要な中目標(防災科学技術分野(対応力の向上))

  発災後の被害の拡大防止と早期の復旧・復興によって、社会機能を維持しその持続的発展を保つため、「より良い回復」に向けた防災・減災対策の実効性向上や社会実装の加速を図る。

(1)中目標達成状況の評価のための指標 
  ■アウトプット指標
  (1)最新の科学技術(IoT、AI、ロボット等)を用いた冗長性を持つモニタリング及びデータ同化・予測手法の高度化
  (2)リアルタイム被害推定・予測、即時被害判定、被害等の情報共有の実現
  (3)被災者支援業務対応システムの開発と実用化、時系列行動記録の蓄積
  (4)査読付き論文数、研究成果報道発表数

  ■アウトカム指標
  (1)発災後の早期の被害把握
  (2)迅速な早期の復旧
  (3)防災業務手順の標準化・適正化

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)複合・誘発災害等を考慮した発災後早期の被害推定及び状況把握・予測技術の研究開発
  発災後早期に、二次災害や複合・誘発災害の発生を予測するとともに、時々刻々と変化する状況を多面的に把握し、被害を最小限に抑え、迅速な復旧に資するため、リモートセンシングデータやIoT等を用いたモニタリング及びデータ同化・予測の手法の確立や高度化に資する研究開発に取り組む。
  地震発生後早期における、人命救助や建物の応急危険度判定の実施に当たっては、余震の規模や発生頻度等を考慮した安全性の評価が重要な要素となってくる。同様に、津波・火山噴火・風水害・土砂災害・雪氷災害等の災害においても、発災後の事象の推移予測は、その後の避難及び救助活動等の実行のために重要な要素となってくる。確度の高い推移予測をするためにも、発災前からの継続的なモニタリングが必要であり、また機動的に状況の変化を迅速に捉えることを可能とするためのリアルタイム観測、冗長性を持った観測システムが重要となる。
  近年はマルチコプターを始め、小型のUAVが普及してきており、災害現場の状況が発災後の早い段階で捉えられるようになってきた。また、人工衛星から広範囲に亘(わた)り高い精度で状況を把握することが可能になってきている。これらの比較的短時間に広範囲の状況をより多くモニタリングできる技術の開発や推移予測手法の確立・高度化が重要である。

  (2)災害情報をリアルタイムで推定・予測・収集・共有し、被害最小化や早期復旧につなげる技術の研究開発
  発災時に対応可能な有限のリソースで被害の最小化を図り、早期の復旧を実現するため、リアルタイム被害推定・予測、構造物の即時被害判定、被害状況や対応可能なリソース等の情報共有、対応状況や復旧・復興状況の把握・分析、防災業務手順の標準化・適正化、防災力向上等に資する研究開発に取り組む。
  災害が生じた際にその後の復旧に向けた対応を迅速に行うために、リアルタイム被害推定は有効である。地震災害の被害把握に当たっては、IoT技術による建物に設置したセンサや監視カメラの映像等からの地震波形の推定、被害状況の抽出等の技術や、遠隔操作型ロボットや小型のUAVによる臨場性の高い災害現場の高精度可視化技術等の確立が重要となる。また、各種センサからのリアルタイム情報を一元的に集約・管理する統合データベースの開発が必要となる。
  発災後の支援対応を適切かつ迅速に行うためには、各種センサからの情報を含む災害現場からの入力情報をその種類に関わらず、インタラクティブに入力・共有ができ、更に様々な情報を適切かつ優先順位をつけて提供できることや、出力対象に応じた情報を整理・分析するための情報トリアージ機能の確立、立場や状況に応じた意思決定を支援するためのパーソナルアシスタント機能の確立、必要な情報や利用者の要望等に迅速かつ効率的な対応ができるためのコンシェルジュ機能の確立等が重要となる。

  (3)発災直後の応急対応から被災者の生活再建支援等を含む復旧・復興対策に必要な研究開発
  発災直後のフェーズはもちろん、更に数年以上が必要とされる復旧・復興のフェーズにおいて生じる膨大な災害対応について、広域応援態勢の確立やトリアージ(対応の優先度の決定)等も含め、業務を支援する技術の構築に資する研究開発に取り組む。
  発災後の対応を迅速かつ適切に実施するために、災害種別に応じて、現場対応から意思決定までそれぞれの立場での対応手順を標準化することが重要である。実際の対応においては、危機対応マネジメントとガバナンスも重要であることから、災害種別の対応における時系列行動記録(クロノロジー)の蓄積とその解析が必要である。
  行政を対象とした防災業務支援システムについては、発災直後の緊急対応だけを対象とするのではなく、数年以上が必要とされる復旧から復興のフェーズに生じる膨大な災害対応業務に対応し、また、単一の自治体にとどまらず広域な行政区域に対応するような、被災者支援業務に対応できるシステムの開発と実用化を図る必要がある。
  被災者の迅速な生活再建に向け、被害認定の判定の技術向上と効率化を図るとともに、地域全体の復旧・復興のプロセスとあわせて、個々人の自律した再建を促しつつ、復興感(メンタルな部分を含めた復興の程度の測定と評価)を高めて「より良い回復」の実現に資する研究開発を進めていくことが重要である。


2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策

(1)人材育成
  自然災害の観測・予測に当たっては、長期にわたる観測の継続に加えて、観測データを的確に評価できる人材を育成し確保することが不可欠である。また、今後は複合・誘発災害の予測と対策に対応できる人材の確保を始め、特に、従前の観測研究に加え、多くの他分野との連携・融合を図り、観測・予測から防災・減災対策まで見据えた一体的な研究の推進及び広範な知識と高度な技能を有する研究者の育成・確保を目指し、レジリエントな社会構築に結びつけることが重要である。さらに、人材の育成、キャリアパスの確保に当たっては、産学官が協力して取り組む必要がある。

(2)オープンサイエンスの推進
  自然災害科学分野の研究発展や人材育成のためにも、観測データや数値モデル等のオープン化は、より一層積極的に進めていくべきである。そのため、基盤的観測の安定的な継続、情報発信の充実等を図るとともに、各機関の有する観測データや研究成果を一元化し研究コミュニティで共有する仕組みづくりを進める必要がある。

(3)オープンイノベーション(産学連携)の推進
  IoT等の活用など、産学官が密接に連携して研究開発を進める必要のある分野は多岐にわたっている。災害発生時の事業継続能力の向上と産業界等でのプラスの経済的価値への転換を目指して、産学官の人材・情報・技術を糾合した防災科学技術イノベーションの中核拠点(ハブ)を階層的に構築することを進める。
  なお、連携に当たっては、官が整備するデータだけでなく、民間の保有するデータも積極的に活用し、研究段階から社会実装の方法論なども検討しつつ、災害発生時の被害軽減と経済の持続的な発展につながるよう、研究開発を進めていく必要がある。

(4)知的財産・標準化戦略
  研究開発の成果の普及及び利活用を支援し、社会に最大限の価値をもたらすよう、知的財産権の戦略的な取得・管理、研究開発成果の公表、権利化、許諾等に係る知的財産マネジメントを行う必要がある。なお、知的財産について、研究開発に取り組んだ研究者等が正当に評価・奨励される仕組みが整備されることが望ましい。
  また、災害発生時に効果的な情報共有を実現するためには、情報システムの標準化を進め、府省、地方公共団体等の間に存在するギャップを埋める努力が必要である。

(5)社会との関係深化
  社会との関係を深化させるためには、研究者は基礎研究の重要性に留意しつつも社会が求める解決法を研究開発する努力が必要であり、災害対応、リスクコミュニケーションの観点から理学・工学的なハザード研究の進め方を考える姿勢を徹底することが必要である。
  そのためにも、多様な主体と密接に連携し、ワークショップや社会活動等を通じて対話と協働を図り、地域特性・社会のニーズを把握した研究開発を進め、その成果は、多様な地域に適用可能となるよう弾力性を確保しながら、着実に社会実装・社会還元を図っていくべきである。
  また、大規模な災害が発生した場合には、研究者が積極的に現地に赴き、各多様な主体と連携・協働した災害現場での支援を通じて現場のニーズを把握し、その後の研究開発に反映させていくことが重要である。特に、発災直後の被害拡大防止及び復旧・復興の実効性を高めるためには状況把握や情報共有が必要なため、防災科学技術に基づいた情報提供を積極的に行い、フィードバックを受けることが有効である。

(6)国際的な展開
  大規模な自然災害はその発生頻度が非常に低く、災害経験や事例等の研究成果は極めて貴重であることから、災害の実相を探求するために、海外の研究機関・国際機関と連携した共同研究の実施や協定の締結等を積極的に推進し、我が国の国際的な位置づけの向上を図っていくことが望ましい。
  また、海外で大規模な災害が発生した場合には、現地調査や国際共同研究を積極的に実施することが重要である。

第5章 国家戦略上重要な基幹技術の推進


1.大目標

  航空・原子力科学技術については、産業競争力の強化、経済・社会的課題への対応に加えて、我が国の存立基盤を確固たるものとするものであり、更なる大きな価値を生みだす国家戦略上重要な科学技術として位置付けられるため、長期的視野に立って継続して強化していく。
  原子力科学技術については、安全性・核セキュリティ・廃炉技術の高度化等の原子力の利用に資する研究開発を推進する。さらに、将来に向けた重要な技術である革新的技術の確立に向けた研究開発にも取り組む。
  東日本大震災からの復興の障害となっている放射性物質による汚染等への対応が求められている。


1.大目標達成のために必要な中目標(航空科学技術分野)

  航空科学技術について、我が国産業の振興、国際競争力強化に資するため、社会からの要請に応える研究開発、次世代を切り開く先進技術の研究開発及び航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発を推進する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標  
  ■アウトプット指標
  (1)航空科学技術の研究開発の達成状況(JAXAが実施している共同/委託/受託研究数の観点も含む)
  (2)航空科学技術の研究開発課題数(実施計画以上の実績があった研究開発課題数)

  ■アウトカム指標
  (1)航空科学技術の研究開発における連携数(JAXAと企業等との共同/受託研究数)
  (2)航空科学技術の研究開発の成果利用数(JAXA保有の知的財産(特許、技術情報、プログラム/著作権)の供与数)
  (3)航空分野の技術の国内外の標準化、基準の高度化等への貢献

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)社会からの要請に応える研究開発
  世界市場の伸びを大幅に上回る「超成長産業」を目指し、完成機事業の継続・発展、国際共同開発における分担率の拡大や、装備品産業の育成を図る必要がある。以下の研究開発に取り組み、現在、民間航空機に求められている、安全性・環境適合性・経済性において、他国よりも優位な技術を早急に獲得する。

  ア.安全性向上技術の研究開発
  我が国の航空機事故で大きな割合を占める乱気流による事故を防止するとともに、我が国にとって急務である装備品産業の育成に貢献するために、装備品メーカ、機体メーカと連携し、航空機前方の晴天乱気流を検知してパイロットに警告する技術と乱気流遭遇時の機体動揺を低減させる技術を組み合わせたウェザー・セーフティ・アビオニクス技術を、飛行実証等を通じ確立する。
  乱気流以外による主な事故要因として挙げられる特殊気象(雪氷・雷・火山灰等の航空機に影響を与える気象)等の外的要因及びヒューマンエラーに対して、それらの影響を予知・検知・防御する技術の研究開発を進め、安全性の向上を図る。
  さらに、災害時における航空機(無人機を含む)と衛星を統合した安全で効率的な救難航空機統合運用システムや、ヘリコプターの高速化等により、より多くの要救助者の救助を可能とする技術の研究開発を行う。また、無人機の目視外運用技術等、無人機の利用拡大に資する技術の研究開発を行う。

  イ.環境適合性・経済性向上技術の研究開発
  エンジンについては、国際競争力強化のため、ファン及び低圧タービンの軽量化、高効率化を進めるとともに、JAXAに実証用エンジンとしてF7エンジンを整備し、国内メーカが次の国際共同開発においても設計分担を狙えるレベルまで技術成熟度を高める。また、次世代エンジンの鍵となるコアエンジン技術として、低騒音化技術、低排出燃焼器技術、耐熱材料技術等、将来産業界が分担率の拡大を狙える技術について実用性の高い技術開発を行う。
  機体については、空港周辺地域の騒音低減のボトルネックになっている高揚力装置及び降着装置の低騒音化技術の研究開発を行い、将来の旅客機開発並びに装備品開発に適用可能となるように技術成熟度を高める。また、乱流摩擦抵抗低減技術等の機体抵抗低減技術の研究開発を進め、飛行実証等の技術実証を行う。さらに、複合材を初めとした各種材料を、それぞれの特性を活(い)かして機体に適用する等、材料開発から機体構造設計までをつなぐ技術の研究開発を行い、機体重量の飛躍的な軽量化を目指す。
  運航技術については、拡大を続ける航空輸送需要に対応するため、交通量や気象条件に合わせて最適な運航を行うことにより、空港容量の拡大と環境適合性の向上が両立する管制支援技術等の研究開発を行い、高密度運航の実現を目指す。

  (2)次世代を切り開く先進技術の研究開発
  我が国の航空科学技術を長期にわたり高めていくために、社会に飛躍的な変革をもたらす可能性のある以下の先進技術の研究開発を推進する。

  ア.静粛超音速機統合設計技術の研究開発
  これまでの研究開発で培った国際的優位性を拡大させるために、飛行実証された抵抗低減設計技術や低ソニックブーム設計技術を核として、超音速機の実現成立性を実証することを目指す。このために、想定されるソニックブーム基準と強化された空港騒音基準を満足し、かつ経済性にも優れた超音速機実現の鍵となる技術の要素技術研究開発を進めるとともに、個別要素技術を実機システムへ適用して有効性を確認するシステム設計研究を行い、低ソニックブーム/低抵抗/低騒音/軽量化に対する技術目標を同時に満たす機体設計技術を獲得する。これらの技術については飛行実証も視野に入れた技術実証構想を産業界と連携して策定する。あわせて、民間超音速機実現の鍵となる陸地上空の超音速飛行に必要な国際民間航空機関(ICAO)における国際基準策定に貢献する。

  イ.革新的技術の研究開発
  国際航空輸送協会(IATA)が掲げる「2050年までにCO2排出量半減」という目標を達成するために期待される革新的技術として、ソフトウェアとハードウェアの両面から、モーター技術、電源技術、ハイブリッド推進技術等の電動航空機技術の研究開発を進める。また、水素等の代替燃料の利用も視野に加えたエミッションフリー航空機技術、極超音速機技術等の研究開発を行う。これらの革新的技術の研究開発を行うことにより、将来国際的に優位性を持つキー技術の獲得を目指す。

  (3)航空産業の持続的発展につながる基盤技術の研究開発
  我が国の航空産業の持続的な発展に向けて、我が国が得意とする数値流体力学(CFD)等の数値シミュレーション技術を飛躍的に高めるとともに、試験・計測技術、材料等の評価技術等の基盤技術を維持、強化していくことが重要である。
  特に、航空機開発の高速化、効率化、高精度化に貢献する航空機設計技術の確立を目指し、非定常CFD解析技術をベースに空力、構造等の多くの分野を統合した解析技術(例:統合シミュレーション技術)等の開発を行う。


2.大目標達成のために必要な中目標

  (福島第一原子力発電所の廃炉やエネルギーの安定供給・原子力の安全性向上・先端科学技術の発展等)

  「エネルギー基本計画」において位置づけられているとおり、原子力は重要なベースロード電源であり、資源の乏しい我が国にとって重要なエネルギー源の一つである。また、地球規模の問題解決や放射線利用等による科学技術・学術・産業の発展に寄与するための重要な役割も担っている。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故をはじめとするあらゆる原子力に関する事故の再発の防止のための努力を続けていく必要がある。
  文部科学省においては、こうしたエネルギー政策や科学技術政策等を踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、廃炉や放射性物質による汚染への対策等に必要な研究開発を推進すること、及びエネルギーの安定供給や原子力の安全性向上、先端科学技術の発展等に資する研究開発成果を得ることを中目標として設定する。

(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)原子力分野における査読付き論文の公開数
  (2)原子力分野における研究成果報道等発表数

  ■アウトカム指標
  (1)除染や廃炉に必要な研究開発の取組の進捗状況、廃止措置に資する研究の推進に関する取組の進捗状況
  ・特許等知財
  ・除染効果評価システムの自治体等ユーザーへの活用件数
  ・国際共同研究棟等拠点の整備状況

  (2)東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた安全性向上のための研究開発の取組の進捗状況 
  ・関係行政機関、民間を含めた事業者等からの共同・受託研究件数、
及びその成果件数
  ・特許等知財
  ・学会賞等受賞
   

  (3)独創性・革新性の高い科学的意義を有する研究成果の創出状況等
  ・特許等知財
  ・学会賞等受賞
  ・安全基準作成の達成度
  ・試験研究炉の運転再開に向けた取組状況(定性的観点)
  ・必要な研究基盤の検討、整備状況(定性的観点)

  (4)高速炉の研究開発等の進捗状況
  ・国際会議への戦略的関与の件数
  ・特許等知財

  (5)独立行政法人通則法に基づく主務大臣による業務実績の評価結果のうち、標準評価(B評価)以上の評価を受けた項目の割合

  (6)原子力システム研究開発事業や英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業における中間評価及び事後評価での評価のうち、計画通りの成果が挙げられ、又は見込まれるとされたA評価以上の課題の件数割合

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)福島第一原子力発電所事故の対処に係る、廃炉等の研究開発
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉等世界的にも前例のない困難な課題が山積しており、これらの解決のための研究開発の重要度は極めて高い。エネルギー基本計画等に示された福島の再生・復興に向けた取組を踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所の安全な廃止措置等を推進するため、東京電力、国際廃炉研究開発機構(IRID)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)とも連携・協力をしつつ、国内外の英知を結集し、安全かつ確実に廃止措置等を実施するための研究開発や人材育成を加速する。また、環境モニタリング・マッピング技術開発や環境動態に係る包括的評価システムの構築及び除染活動支援システムの開発等を進める。

  (2)原子力の安全性向上に向けた研究
  東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、原子力の利用においては、いかなる事情よりも安全性を最優先する必要があることが再確認された。また、エネルギー基本計画に示されているとおり、原子力利用に当たっては世界最高水準の安全性を不断に追求していく必要がある。そのため、軽水炉等の安全性向上に資する燃材料及び機器、原子力施設のより安全な廃止措置技術の開発に必要な基盤的な研究開発を実施し、関係行政機関、原子力事業者等が行う安全性向上への支援等を実施する。また、原子炉施設の規模に合わせた適切な安全性の確保手段として、軽水炉以外の施設に関する安全対策に関する研究についても重要である。

  (3)原子力の基礎基盤研究
  核工学・炉工学・燃料工学など原子力の推進に必要な基礎基盤研究及び幅広い科学技術・学術分野における革新的成果の創出につながる中性子利用研究等の推進は重要である。特に、原子力分野の研究には大規模・特殊な施設の利用が不可欠である。例えば、基礎基盤研究の推進に当たっては、高速中性子による燃料・材料開発が実施できる高速実験炉「常陽」、中性子利用のためのJRR-3、及び中性子照射による治療等に資するKURをはじめとした施設が必須である。研究炉の再稼働や核燃料使用施設等のその他施設を含めた新規制基準への対応や、高経年化対策に着実に取り組むことが必要である。また、今後必要となる原子力研究基盤として機能を果たす研究施設の具体化が必要である。加えて、エネルギー基本計画を受けて、固有の安全性を有し、水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれる高温ガス炉に係る研究開発を国際協力の下で推進することも重要である。

  (4)高速炉の研究開発
  エネルギー基本計画に基づき、核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に引き続き取り組む。高速増殖原型炉「もんじゅ」については、原子力関係閣僚会議において、原子炉としての運転は再開せず、今後、廃止措置に移行し、併せて今後の高速炉研究開発における新たな役割を担うよう位置付けるとの「『もんじゅ』の取扱いに関する政府方針」が決定されたことから、安全確保を前提に、本方針に基づく作業を進める。高速増殖炉「常陽」については、原子力関係閣僚会議において決定された「高速炉開発の方針」を踏まえ、再稼働に向けた取組を積極的に進める。


3.大目標達成のために必要な中目標(原子力分野の研究・開発・利用の基盤整備について)

  原子力に係る人材の育成・確保、核不拡散・核セキュリティに資する活動、国際協力の推進、電源立地対策としての財政上の措置などを通じ、原子力分野の研究・開発・利用の基盤整備を図る。


(1)中目標達成状況の評価のための指標
  ■アウトプット指標
  (1)原子力分野における査読付き論文の公開数
  (2)原子力分野における研究成果報道等発表数

  ■アウトカム指標 
  (1)放射性廃棄物減容化研究開発等の推進の進捗状況 
  ・高レベル放射性廃液のガラス固化処理本数、プルトニウム溶液の貯蔵量(未処理分)
  ・原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理処分の計画的遂行状況(定性的観点)
  ・高速炉及びADSを用いた核変換技術や地層処分技術等の研究開発成果の創出状況(定性的観点)

  (2)原子力施設に関する新規制基準及び安全確保対策等の取組の進捗状況 
  ・原子力施設に関する新規制基準への対応状況等(定性的観点)
  ・事故・トラブルの件数

  (3)独立行政法人通則法に基づく主務大臣による業務実績の評価結果のうち、標準評価(B評価)以上の評価を受けた項目の割合。

  (4)丁寧な対話活動等を通じた社会の理解度の状況

(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組
  (1)放射性廃棄物の処理・処分に関する研究開発等
  エネルギー基本計画に示されているとおり、原子力利用に伴い確実に発生する放射性廃棄物について、その対策を確実に進めるための技術が必要である。また、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、我が国の基本方針である核燃料サイクルの推進を支える技術が必要である。このため、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究開発を実施する。また、高レベル放射性廃棄物処分技術等に関する研究開発を実施するほか、原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分を計画的に遂行する技術開発等に取り組む。
  特に、核燃料物質や大量の廃棄物を抱えた高経年化施設の安全の確保のための維持管理には莫大(ばくだい)な費用が必要となる。このため、研究開発に伴い発生する廃棄物(RI廃棄物を含む)の処理・処分や計画的な廃止措置は、研究開発に必須の事項であり、そのための長期の取組に係る計画が必要となる。

  (2)原子力施設に関する新規制基準への対応等、施設の安全確保対策
  原子力規制委員会の定める新規制基準に対応するために必要な改修・整備等を行う。新規制基準については、原子力機構が持つ高温工学試験研究炉(HTTR)やJRR-3等の試験研究炉、大学が持つ研究用原子炉のみならず、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の研究開発に必要な施設や使用済燃料や廃棄物を安全に貯蔵・管理するために必要な施設など業務の遂行に必要な施設・設備について多岐に亘(わた)りその特性に応じた対応を進める必要がある。また、原子力施設の安全を確保するため、高経年化対策等安全確保対策を行う。

  (3)核不拡散・核セキュリティに資する技術開発等
  将来の核燃料サイクル施設等における計量管理技術や核拡散抵抗性向上に資する技術開発を実施する。また、核セキュリティ・サミットのコミットメントである国際的な核不拡散・核セキュリティへの貢献の観点から、国際及び国内の動向を踏まえつつ核物質の測定・検知、核鑑識等、核不拡散・核セキュリティ強化に必要な技術開発や核不拡散・核セキュリティ分野の人材育成等を行う。


2.研究開発の企画・推進・評価を行う上で留意すべき推進方策

(1)人材育成
  (1)航空科学技術分野
  第5期科学技術基本計画においても、科学技術を担う人材の育成が謳(うた)われているところであり、航空科学技術を担う人材を育成する必要がある。
  このため、我が国の航空科学技術の研究開発の中核機関であるJAXAと、産業界、大学・学協会が連携し、特に航空分野を目指す学生等に対し、魅力的で実践的な教育機会を提供することが重要である。具体的には、共同研究、公募型研究やクロスアポイントメント、連携大学院制度及び技術研修生制度等のツールを活用し、航空科学技術を担う人材の育成を推進する。

  (2)原子力科学技術分野
  原子力分野における人材の育成・確保は、原子力分野の研究・開発・利用の基盤を支え、原子力施設の安全確保や古い原子力発電所の廃炉等の課題の解決のために重要である。大学や原子力機構が持つ研究用原子炉を用い、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や運転中の発電炉の安全確保を支えるとともに、中性子を用いた科学研究等の原子力に係る研究開発を通じた人材育成に加えて、産学官の関係機関が連携し、人材育成資源を有効に活用することによる効果的・効率的・戦略的な人材育成取組の支援により、原子力人材の育成・確保を行う。

(2)オープンサイエンスの推進
  (1)航空科学技術分野
  航空科学技術分野については、オープン・アンド・クローズド戦略及び知的財産の実施等に留意し、JAXAの研究開発で得られた協調領域における研究/試験データ等について、データベース公開に向けた取組や学協会との連携活動を強化する。

  (2)原子力科学技術分野
  国内外の原子力科学技術に関する学術情報を幅広く収集・整理・提供し、産業界、大学等における研究開発活動を支援できるよう努めることが重要である。この際、発信を行う対象をそれぞれに意識し、公開や説明の仕方に十分な留意が必要である。特に、東京電力福島第一原子力発電所事故に係る研究情報は国内外からの関心も高く、国内外の研究成果、参考文献情報、政府関係機関等が発信するインターネット情報等について、関係機関と連携の上、効率的な収集・発信を行うことや、原子力情報の国際的共有化と海外への成果普及を図る観点から、国内の原子力に関する研究開発成果等の情報を国際機関を含め幅広く国内外に提供することには意義があるため、例えば、原子力機構「福島アーカイブ」の整備・拡充・発信等によって、成果を社会還元させるとともに国内外の原子力に関する研究環境を充実させる。

(3)オープンイノベーション(産学連携)の推進
  (1)航空科学技術分野
  国際競争が激化している航空産業では、産業界、大学、公的研究機関との間の連携が行われているものの、持続的にイノベーションを生み出す環境を形成するため、産学官の人材、知、資金を結集させることは重要である。
  このため、JAXAは、オープンイノベーションに適した知的財産及び人事制度の仕組みを活用することで、イノベーションを誘発する人材の流動化を推進する。特に、航空分野における協調領域に関しては、コンソーシアムの構築等を通じて、産学連携、異分野異業種も含むオープンイノベーションの体制を強化する。また、JAXAが技術的な強みを有する分野については、JAXAが中核となって、国内外の人材・英知を結集し研究活動を実施するなど、社会実装への橋渡しを意識した活動を推進する。

  (2)原子力科学技術分野
  成果を広く国民・社会に還元するとともに、イノベーション創出につなげるため、産学官の連携強化を含む最適な研究開発体制の構築等に戦略的に取り組むことが重要である。例えば原子力機構では、東京電力福島第一原子力発電所事故の対処など国家的・社会的な課題解決のための研究開発において、研究開発の計画段階からニーズを把握し、成果の社会実装までを見通した国際共同研究棟での研究を実施するなど、産学官の効果的な連携とそのための適切な体制を構築する。また、基礎研究分野等においては、創出された優れた研究開発成果・シーズについて、産業界等とも積極的に連携し、その成果・シーズの「橋渡し」を行う。さらに、J-PARCやJRR-3等の研究施設については、産業界や大学等との供用により、新たな先進的研究の萌芽(ほうが)となる幅広い研究分野の研究者間の相互交流を促進する。

(4)知的財産・標準化戦略
  (1)航空科学技術分野 
  経済的波及効果が高い航空産業は、国際競争が激化しており、国際標準化の対応の遅れは国際競争力低下に直結するため、世界と協調し、産業界と連携した迅速かつ的確な国際標準化戦略が重要である。 
  このため、特にアビオニクス関連技術をはじめとする航空装備品の認証については、JAXAは、産業界と連携して関連する技術開発を進め、我が国で最新の国際標準を満たした機能・性能要求から検証までのプロセスが迅速に完了できるよう支援を強化する。また、超音速機技術など国際的な標準が確立していない分野についても、国際標準化に貢献するため、JAXAは、関係機関と連携の上、研究開発の成果をICAO及び国際標準化機構(ISO)等に対して積極的に提案する。
  また、知的財産戦略は、知的財産を活用してイノベーションの創出に一層つなげていくことが重要である。このため、JAXAは、研究開発成果の価値を最大化するため、協調領域/競争領域を踏まえた権利化と秘匿化を適切に使い分けるオープン・アンド・クローズド戦略に留意し、知的財産の取得、管理、活用を推進する。

  (2)原子力科学技術分野
  産業界、大学等と緊密な連携を図る観点から、共同研究等による研究協力を推進し、研究開発成果を創出することが必要である。創出された研究開発成果については、その意義や費用対効果を勘案して、原子力に関する基本技術や産業界等が活用する可能性の高い技術を中心に、例えば、原子力機構が精選して知的財産の権利化や有効活用を進めることが重要であり、また、技術交流会等の場において保有している特許等の知的財産やそれを活用した実用化事例の紹介を積極的に行うなど、連携先の拡充を図る。

(5)社会との関係深化
  (1)航空科学技術分野
  航空科学技術を推進する上では、幅広いステークホルダーとの対話による関係深化は重要である。具体的には、JAXAは、シンポジウム、タウンミーティング、研究開発施設等の一般公開等のイベントを通じて、研究開発成果の発信・普及、対話を推進する。

  (2)原子力科学技術分野
  我が国の原子力利用には、原子力関連施設の立地自治体や住民等関係者を含めた国民の理解と協力を頂くことが必要である。そのため、安全や放射性廃棄物、放射線の人体への影響など国民の関心の高い分野を含めた積極的な情報の公開や対話、学校教育の場などにおける放射線等に関する教育への取組支援及びアウトリーチ活動等の強化による社会からの信頼確保に取り組む。また、研究開発成果の社会還元や、社会とのリスクコミュニケーションの観点を考慮しつつ、丁寧な広聴・広報・対話活動等をフィードバックを受けつつ進め、立地地域からの信頼を得る。

(6)国際連携
  (1)航空科学技術分野
  急速にグローバル化が進む航空産業及び航空科学技術の裾野の広がりを踏まえ、国際的な互恵関係を効果的に構築し研究開発に取り組むことも重要である。JAXAは、アメリカ航空宇宙局(NASA)等の世界の公的航空技術研究開発機関で組織される国際航空研究フォーラム(IFAR)等への主体的な参画とともに、NASA等との研究協力を通して、効率的な国際的互恵関係の構築及び我が国の航空科学技術のプレゼンス向上を図る。

  (2)原子力科学技術分野
  効率的な研究開発の実施、原子力開発に係る我が国の優位性の確保、国際貢献等の観点から、原子力利用先進国やアジア諸国等との間で、二国間協力、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)、国際原子力機関(IAEA)、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)、アジア原子力協力フォーラム(FNCA)等を活用した多国間協力を通じて、目的を明確にした国際共同研究、人材交流、意見交換等を実施する。特に、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた協力、高速炉や高温ガス炉等の次世代原子炉にかかる協力や人材育成活動等を積極的に推進する。

(7)大型試験設備の整備(航空科学技術分野)
  国際競争力を持った航空機開発を行うためには、基礎から技術実証までの一貫した研究開発を実施するために必要な試験設備を整備することが重要である。一方、大型で高性能な試験設備(風洞、実証エンジン試験設備、スーパーコンピュータ等)については、大学や民間企業が独自に整備するにはリスクが高く、我が国の航空科学技術の研究開発の中核機関であるJAXAが整備・維持・運用するとともに、外部にも供用することが効率的である。
  そのため、大型試験設備については、JAXAのみならず産学からの要望を考慮し、戦略的な整備・維持・運用(最先端の試験・計測技術等の獲得、機能向上、老朽化対策等)を行い、最大限の利活用に努める。


第6章 研究計画・評価分科会における研究開発評価の在り方


1.基本的な考え方

1. 研究開発評価の在り方の策定の背景
  第5期基本計画の策定を受けて、実効性のある研究開発プログラム評価のさらなる推進、アイデアの斬新さと経済・社会インパクトを重視した研究開発の促進、研究開発評価に係る負担の軽減の観点から、平成28年12月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(以下「大綱的指針」という。)が改定された。これに伴い、文部科学省では、評価を行う基本的な考え方をまとめたガイドラインである「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(以下「文部科学省研究開発評価指針」という。)について必要な改定を行うこととしている。

2.研究計画・評価分科会における研究開発評価
  本研究開発計画の目標達成及び次の政策・施策に向けた取組等に活(い)かすため、本分科会における研究開発評価については、大綱的指針及び文部科学省研究開発評価指針に基づき、次の評価を実施する。
  (1) 中目標を単位とする研究開発プログラムの評価
  (2) 重点課題※1の評価
  ※1:総額(5年計画であれば5年分の額)が10億円以上を要することが見込まれる新規・拡充課題及び研究計画・評価分科会において評価することが適当と判断された課題

3. 研究開発評価の改善への新しい取組
  (1) 「研究開発プログラム」※2単位での評価
  研究開発計画の評価については、研究開発計画に掲げた中目標を「研究開発プログラム」として、俯瞰(ふかん)的な評価を新たに行うこととする。その際、分科会が所管する内局予算による個別の研究開発課題の評価結果に加え、当該中目標に係る国立研究開発法人の行う研究開発課題の評価結果(国立研究開発法人評価の結果等)や政策評価における事前分析表等を活用し、中目標達成のための研究開発の取組全体を総合的に評価する。
  ※2:「研究開発プログラム」とは、研究開発が関連する政策・施策等の目的
に対し、それを実現するための活動のまとまりとして位置づけられる。
  (2)政策評価との関係
  研究開発計画に掲げた中目標と政策評価における達成目標を可能な限り整合させることで、本分科会における中目標(研究開発プログラム)の達成状況の評価を政策評価に反映するようにする。

2.対象別評価の実施

1. 中目標を単位とする研究開発プログラムの評価
  (1) 評価の目的
  研究開発プログラムの評価は、設定した中目標ごとに評価を実施することにより、実施の当否を判断するとともに、研究開発の質の向上や運営改善、計画の見直し等につなげることを目的とする。
  (2) 評価の時期
  研究開発プログラムの評価は、進捗・達成状況の確認等をするとともに、政策評価への反映や次の施策等に活用するため、課題等の進捗状況や政策評価の時期を考慮して、研究計画・評価分科会で研究開発プログラムごとに定める時期とする。
事前評価は、評価の重複等を避ける観点から、重点課題の事前評価時に、研究開発プログラムとの関係性を明らかにすること等により、その実施を省略することができることとする。また、必要に応じて追跡評価を行う。
  (3) 評価方法等
  評価方法等の詳細は、評価実施年度ごとに研究計画・評価分科会において決定する。

2.重点課題の評価
  (1) 評価の目的
   研究開発課題の評価は、課題の採否を判断するとともに、実施されている研究開発の質の向上や運営改善、計画の見直し等につなげることを目的とする。
  (2) 評価の時期
  重点課題の評価は、当該課題の実施前及び実施後にそれぞれ事前評価及び事後評価を実施する。また、必要に応じて研究計画・評価分科会で定める時期に中間評価及び追跡調査を実施する。
  (3) 評価方法等
  評価方法等の詳細は、評価実施年度ごとに研究計画・評価分科会において決定する。

3.特に留意すべき事項
  研究開発プログラム及び重点課題の目的、規模、段階などに応じ、以下の項目に留意しつつ実効的な評価を行う。

  (1)中目標の達成状況を把握するために設定する指標(目標値)
  中目標の達成状況を把握するため、各中目標達成状況の評価のための指標で設定されたアウトプット指標においては、定量的に判断するために、可能な限り目標値を設定する。ただし、定量的指標は対象の一側面を表しているにすぎないことから、各種の定性的指標等の情報も活用しつつ、総合的に評価を行う。この場合、定性的な評価がより本質的な意味を持つ場合もあるため、設定された目標値そのものが自己目的化され、本来の目指すべき状況とのかい離や望まざる結果を招かないよう、留意することが必要である。また、アウトカム指標についても継続的にモニタリングを行う。その他、指標や目標値は、科学技術の急速な進展や、社会や経済の大きな情勢変化等に応じて、適宜見直されるべきものである。
  (2)挑戦的(チャレンジング)な研究開発の評価
  挑戦的(チャレンジング)な研究開発に関しては、社会情勢の変化や研究開発の進捗状況等に応じ、目標やアプローチの妥当性について検証し、見直しを実施する。また、直接的な研究開発成果における目標の達成度に加え、関連する制度、体制、運営といった研究開発過程(プロセス)が成果の最大化に向けて適切に対応し、組み合わされたたかという視点での評価も必要である。さらに、技術的な限界・ノウハウ・うまくいかなかった要因等の知見、副次的成果や波及効果、研究開発プログラム全体として得られる成果の大きさなども積極的に評価するなど、ハイリスクであることを前提とした評価項目・評価基準を設定する。
  (3)「道筋」の設定
  中目標を達成するために、成果の受け手に対して、何を、いつまでに、どの程度届けるかといった具体的で実現可能な目標(アウトプット目標)と成果の受け手が行う活動及びその効果・効用として現れる価値(アウトカム目標)を、時間軸に沿った「道筋」として示すことにより、誰の責任で、何をどのように実施するのかを明らかにすることが重要である。本研究開発計画では、この「道筋」は、関係者がそれぞれの役割を明らかにした上で内容の妥当性についてコミュニケーションを図った結果や科学の進歩、得られた経験などを踏まえて試行を重ね、段階的に充実、見直しを図っていくこととする。
  (4)イノベーションを生むためのマネジメントに係る評価
  イノベーションを生むためには、研究開発を実施する主体の長のマネジメント力、成果の最大化のための体制作り、有機的な連携や多様な専門知の結集による実用化までを考慮した取組等を適切に評価に反映する。
  特に、研究開発マネジメントの評価では、研究開発を実施する主体の長及びそれをサポートする者について、それぞれの役割と権限が明確にされているか、また、実施主体の長のパフォーマンスについて評価することが重要であり、例えば、成果創出のためにどのようにリーダーシップを発揮しているかといった観点での評価も行う。
  また、組織のミッションや、実施主体の長やその長をサポートする役割の者等が置かれている立場によって、実施主体やその長等の役割、権限、責任が異なり、それに応じて評価項目・評価基準も変わっていくことに留意する。
  さらに、実施主体の長がどのように選定・任命されたか、誰がその任命責任を持っているのかを明確にする等、実施主体の長を任命する側の役割と権限の妥当性についても評価する。




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科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)

-- 登録:平成29年04月 --