平成20年7月
ナノテクノロジーを活用した環境技術の開発に関する検討会
経済発展の代償として人類が背負うことになった地球温暖化等の環境問題は、科学技術が最も優先的に取り組むべき課題である。我が国は、科学技術を駆使して環境問題の解決を図るべく、「環境エネルギー革新計画」を策定するなど取組を進めている。
環境技術にブレークスルーをもたらすのは材料の開発である。新材料の開発は高度なナノテクノロジーによって可能となる。ナノテクノロジー・材料分野において高い研究水準を誇る我が国が、地球環境問題を抜本的に解決して持続可能な社会を構築するために、関係する研究分野の融合を促進し、国際的にも環境技術の研究開発を牽引していかなければならない。
産業界からは、技術的ブレークスルーにつながる基盤技術の水準向上が求められており、新しい概念の創出や新しい材料の創成等、基礎研究に立ち返った研究の推進が期待されている。
環境技術は、様々な要素を含む複合的な領域であるので、環境問題全体を俯瞰する「ズームアウト」した視点と、技術課題にブレークダウンする「ズームイン」の視点が必要である。多様な分野の研究者が、自分の研究がどのように環境問題という出口につながっているのかの位置付けを十分に意識して研究を進める必要がある。
持続可能な社会に向けて、エネルギー利用システムを従来の化石燃料消費型から自然エネルギー利用循環型に転換することが考えられる。具体的には、例えば太陽光発電、二次電池、LED照明のような技術課題がある。
どのような新しい高効率で環境負荷の少ないシステムを社会に提供することができるのか、基盤技術の高度化を図りつつ、システムとしてのイメージを明確にして、大学等研究機関の側から科学技術に基づいた提案をしていくことが求められる。
研究推進の方策として、リーダーシップのある研究リーダーの下に異なる専門分野の優秀な人材を集めた「日本型ドリームチーム」を組織し、課題解決志向で研究を推進することを提言する。
「日本型ドリームチーム」の活動基盤として、共同利用型の研究拠点を整備し、研究活動と人材育成の核となることを目指す。
研究活動の支援のために、複数の研究資金を適切に組み合わせ、立体的・複合的に研究を推進する必要がある。文部科学省は、研究の融合に向けて研究者に適切なインセンティブを与えて環境技術の分野に人材を誘導し、大学等研究機関が環境技術を通じて社会から期待されている役割を果たすことのできる環境を整備していかなければならない。