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第3章 研究開発を推進するに当たっての重要事項

 総合科学技術会議が策定した分野別推進戦略では、既に示した41の重要な研究開発課題、7の戦略重点科学技術に加え、ライフサイエンスの研究成果を国民に円滑に還元していくため、成果を生み出すための制度や体制といった環境整備に関する推進方策もあわせてとりまとめている。分野別推進戦略のうち、文部科学省に関連するものは以下のとおりである。
 ライフサイエンス分野は、科学技術面、経済面、社会面への寄与が大きく、国民の期待や関心の高い分野であることから、研究開発の選択と集中の考え方と環境面の推進方策とを車の両輪として、取り組むことが重要である。
 具体的に示された研究環境の面の推進方策に基づき、文部科学省としても対応することが重要である。

(1)生命プログラム再現への取組み

  • これまで進められてきたゲノムやタンパク質など生命構成体の分析的解析の大きな成果をもとに、今後は生命の統合的全体像の理解を深めることが重要
  • 統合的理解に当たって、生命情報の統合化データベースや生物遺伝資源が大きな支えとなる
  • 理学、医学、工学、薬学、農学等の連携のみならず、これらが統合した学問領域の創成等が有効な方策の1つ
  • 大学等においては、教育研究の拠点や組織を柔軟に整備し、このような連携や新領域の開拓、及び人材育成に注力する必要

(2)臨床研究推進のための体制整備

 研究成果を新しい医薬品・医療機器等の形で国民に還元するため、以下の4つの取組みを進めることが重要

  1. 支援体制等の整備・増強
     基礎研究から治験・臨床研究までを連続的に実施することが可能な体制と、治験・臨床研究で得られた知見等の基礎研究へのフィードバックを可能とする双方向的な研究の普及が必要
     臨床研究は患者への成果還元を目指した研究であるとの認識のもと、基礎研究-非臨床試験-臨床試験を連続的に実施することが可能な体制と、臨床試験・臨床研究で得られた知見等の基礎研究へのフィードバックを可能とする双方向的な研究の普及が必要
  2. 臨床研究者・臨床研究支援人材の確保と育成
     関係者の意識改革を進めるとともに、臨床研究者及び臨床研究支援人材(クリニカル・リサーチ・コーディネータ(治験コーディネータ)、生物統計学者、臨床疫学者、薬剤師、データ管理者等。育成側人材を含む)の人材確保・育成の取組みが急務
  3. 研究推進や承認審査のための環境整備
     臨床研究推進のために、臨床研究における客観性・倫理性を担保し、質の高い試験を行うルールの徹底及び支援体制の充実などの取組みが重要
  4. 国民の参画
     臨床研究成果をより早く国民に還元するため、国民(患者)自身の治験への参画が重要。安全性に関する国民の不安が強く、訴訟などによる企業イメージダウン等を恐れ、開発が進まない状況があるとの指摘。被験者の参加促進のための枠組みの構築、目的・方法・安全性・リスク等の十分な説明などの対応が必要

(3)安全の確保のためのライフサイエンスの推進

  • 重篤な感染症、テロリズム、食品安全問題等、安全・安心を脅かす社会的課題に対し、ライフサイエンスの成果の迅速・的確な提供により、有効な解決に資する
  • 感染症やテロリズムに対しては、研究開発の推進の他、脅威に対処するための高度安全実験(Biosafety Level-4(BSL-4))施設の活用や利用者の技術教育、国内外の人材交流や研究拠点の充実、施設の周辺住民との対話等を含めた国民理解を進めることが重要
  • 食の安全の研究では、基礎科学を基盤に、科学技術の有効性や安全性等を予測・評価する評価科学を推進することが重要

(4)成果に関する国民理解の促進

  • 研究の成果を円滑に実用化する上で、国民の理解を得ることは重要
  • 国民の理解を得るためには、情報開示、科学的根拠の十分な説明などを通じ、国民の中に安全性やリスク・便益両面に対する正しい認識と技術に対する安心感を広げていくことが必要
  • 科学技術に関する適切な情報発信が種々の場所・場面で継続的に行われ、国民の議論が活発化し、国民一人一人が多様な考え・価値観に基づいて判断できる社会を目指すべき
  • ヒトに関するクローン技術や脳神経科学とコンピュータとの融合研究などについての生命倫理上の課題や、遺伝情報等の個人情報の保護など、研究推進に当たっては、常に新たな倫理的・法的・社会的課題に取り組んでいく必要

(5)医療におけるITの活用

  • 正確な臨床情報を電子化し、データベース化することで、ヒューマンエラーを回避し安全を確保するとともに、疾病動向の把握も可能
  • 蓄積される臨床情報データベースは、臨床研究や治験における有用な研究基盤として機能することが期待
  • 医療情報システムの普及や医療機関間の連携に取り組む必要

(6)医理工連携等の促進

  • ライフサイエンス研究の成果の実用化に際して、医工連携の取組みが重要
  • このほか、医農連携や農工連携など、生命科学の中での連携にとどまらず、電子情報、コンピュータ、機械等と融合した領域を創成していくことが重要

(7)生物多様性の保全・確保

  • 研究における遺伝子組換え生物の利用に際して、生物多様性の保全及び持続可能な利用に悪影響を及ぼさないよう十分な配慮する必要
  • 在来固有種との交雑や、外来生物が持ち込む病原菌や寄生虫などが懸念される
  • 我が国に固有な生態系や種類、遺伝系統などに悪影響が及ばないよう対策が必要

(8)バイオ産業等における標準化の推進

  • 経済活動のグローバル化が進展する中、計測技術等の質の確保などの国際標準化の取組みを研究開発と一体的に進めることが必要
  • 等価性、信頼性、同等性が確保されるとともに、研究効率の向上や成果の社会還元の促進、国際競争力の強化や新規産業の創出が期待できる

(9)バイオベンチャーの育成・支援

  • 研究開発力確保にはバイオベンチャーが不可欠な存在であり、我が国においても支援の充実が必要
  • 人材の流動化の促進や、地域におけるクラスター形成活動を一層推進し、ベンチャーの多様なビジネスモデルの展開を促進することが重要

(10)知的財産権の戦略的確保と活用

  • ライフサイエンス分野の産業では、例えば、医薬品は基本特許が原則1つであり、農林水産物は品種登録が1つであるという製品の知的財産上の特徴がある。
  • 早期に特許化・権利化・活用することがそのまま競争力の源泉となることもあり、戦略的な知的財産の権利取得と活用を促進することが重要
  • 基礎・基盤的なライフサイエンス研究によって得られたデータベース等については、成果の知的財産上の特徴を踏まえた上で公開を促進し、国内外におけるデータの利活用を促進することも必要
  • 分析機器開発においては、機器と試薬のセットで特許の取得・活用を図ることが競争力の源泉となることを踏まえ、理学、工学、医学、薬学の専門家のチームによる機器開発や試薬開発の推進が重要
  • 知的財産戦略、技術移転、経営に詳しい人材の養成が必要

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