資料1-2 研究開発計画(案)

資料1-2
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会
(第58回) 平成28年8月24日


研究開発計画(案)
平成○年○月
科学技術・学術審議会
研究計画・評価分科会


目次


第1章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化

>情報科学技術委員会


(脳科学委員会、安全・安心科学技術及び社会連携委員会)


>ナノテクノロジー・材料科学技術委員会


>先端研究基盤部会量子科学技術委員会


第2章 環境・エネルギーに関する課題への対応


>環境エネルギー科学技術委員会


>核融合科学技術委員会


(ナノテクノロジー・材料科学技術委員会、宇宙開発利用部会)


第3章 健康・医療・ライフサイエンスに関する課題への対応


>ライフサイエンス委員会


(脳科学委員会、ナノテクノロジー・材料科学技術委員会)


第4章 安全・安心の確保に関する課題への対応


>防災科学技術委員会


(安全・安心科学技術及び社会連携委員会)


第5章 国家戦略上重要な基幹技術の推進


>航空科学技術委員会


>原子力科学技術委員会


(宇宙開発利用部会)

※>:主な委員会、( )内:関係委員会等

第1章 未来社会を見据えた先端基盤技術の強化

 連携を取った委員会:脳科学委員会、安全・安心科学技術及び社会連携委員会(予定)



1.大目標

 ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。このため、国は、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術及び個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する基盤技術について強化を図る。



1.大目標達成のために必要な中目標

 超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術、すなわちサイバー空間における情報の流通・処理・蓄積に関する技術は、我が国が世界に先駆けて超スマート社会を形成し、ビッグデータ等から付加価値を生み出していく上で不可欠なものである。また、技術の社会実装が円滑に進むよう、産学官が協働して研究開発を進めていく仕組みを構築し、社会実装に向けた開発と基礎研究とが相互に刺激し合いスパイラル的に進めることが重要である。加えて、AI技術やセキュリティ技術の領域などでは、人文社会科学及び自然科学の研究者が積極的に連携・融合した研究開発を行い、技術進展がもたらす社会への影響や人間及び社会の在り方に対する洞察を深めることも重要である。さらに、こうした研究開発プロジェクトを柔軟に運営できる体制の構築も重要である。
これらを踏まえ、超スマート社会への展開を考慮しつつ中長期的視野から、本分野に関する基盤技術の強化を図る。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

     ■アウトプット指標



    ■アウトカム指標


 (2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

  1.未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進

未来社会における新たな価値創出に向けて、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術の研究開発を推進する。

 

 ア.イノベーションの創出に向けたAI/ビッグデータ/IoT/セキュリティ等に関する研究開発
    ビッグデータの解析を通じた新たな価値を創出するために、革新的なAIの基盤技術を開発・活用する。また、ビッグデータの充実のため高度なIoT技術を活用し、あわせてセキュリティの研究開発を行い、堅牢なセキュリティの構築を推進する。



 イ.超スマート社会に対応した次世代基本ソフトウェア基盤技術の研究開発

「超スマート社会」を実現するための各種のサービスの実装に向けて、機能のモジュール化・コンポーネント化と、モジュールを動的に組み上げ新たなサービスを実現する統合化・インテグレーション技術から構成される、基本ソフトウェア技術の研究開発を推進し、超スマート社会を実現するためのソフトウェア基盤技術の研究開発を推進する。

 

  ウ..次世代アーキテクチャハードウエアの研究開発
   さまざまなモノがインターネットにつながるIoT社会を迎えて、ますます重要となる次世代モバイル技術やクラウドデータセンター技術にも展開可能なデバイス技術の持続的発展を図るために、新しい動作原理を含む革新的デバイスの研究開発を推進する。

 

  エ.人間と人間を取り巻く全体の環境・システムとのインタラクションの研究開発
インタラクションは、人間と外部との相互作用を研究する分野であり、さまざまなモノがインターネットにつながるIoT社会や超スマート社会の実現に向け、重要な分野である。テレプレゼンスや人間拡張工学、ノンバーバル対話、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、群衆センシングによる空間環境改善、ソフトマテリアル開発等の研究開発のシーズをさらに発展・高度化させ、革新的なインタラクション研究を集中的に行うことにより次世代の超スマート社会の実現を目指す。



 2.社会システムと高度に連携した情報システム技術の実現

  「世界最高水準のICT利活用社会の実現」を向けて、課題解決のための技術を確立するだけでなく、社会のあるべき姿の実現のために必要な技術の実用化を見据えた研究開発を推進し、社会実装につなげる。



 ア.環境・エネルギー問題に対応した新たな情報科学技術の研究開発
 全世界的な人類共通の課題である「環境・エネルギー問題」への対応のため、再生エネルギーに関する技術革新や省エネルギーがきわめて重要である。社会活動の一層の高効率な状態に最適化していくためには、リアルタイムに実世界の情報を集約・解析し、その最適解を実世界にフィードバックする情報統合基盤技術の研究開発を推進する。



 イ.健康医療問題に対応した新たな情報科学技術の研究開発
 医療・創薬等に資する高度な解析や、病気の早期発見・治療等へつなげるための新たな情報科学技術、また、ゲノム情報等を含む膨大な患者情報と治療記録を集約・解析するための技術、組織を超えて共有化するために秘匿すべき情報を保護する技術の研究開発を推進する。



 ウ.災害等に強い安全安心な社会の実現に向けたIT関連技術の研究開発
 地震・津波等の大規模自然災害に関する防災・減災を巡る様々な問題点に対応するために、ダメージを回避して、システムとして最低限の機能を維持し、自己調整・自己修復等のできるITシステムや、災害時及び災害後の広範囲かつ多岐にわたるリアルタイム情報をデータベース技術を用いて集約整理、統合化し、状況の変化を最適な避難活動・救援活動・防災活動及び被災者の最適行動の判断材料にフィードバックできるようなIT統合システムを構築し、災害等に強い安全安心な社会の実現を目指す。

 

 エ.新たな価値創出のコアとなる強みを有する基盤技術に関する研究開発
 我が国が強みを有する技術を生かしたコンポーネントを各システムの要素に組み込むことで、我が国の優位性を確保し、国内外の経済・社会の多様なニーズに対応する新たな価値を生み出すシステムとすることが可能となる。このように、個別システムにおいて新たな価値創出のコアとなり現実世界で機能する技術の研究開発を推進する。



2.大目標達成のために必要な中目標(ナノテクノロジー・材料科学技術分野)


  ナノテクノロジー・材料科学技術分野は我が国が高い競争力を有する分野であるとともに、広範で多様な研究領域・応用分野を支える基盤であり、その横串的な性格から、異分野融合・技術融合により不連続なイノベーションをもたらす鍵として広範な社会的課題の解決に資すると共に、未来の社会における新たな価値創出のコアとなる基盤技術である。また、革新的な技術の実現や新たな科学の創出に向けては、社会実装に向けた開発と基礎研究が相互に刺激し合いスパイラル的に研究開発を進めることが重要である。
 これらを踏まえ、中長期的視点での基礎的な研究の推進や社会ニーズを踏まえた技術シーズの展開等に取り組むことにより、本分野の強化を図る。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

      ■アウトプット指標


      ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

 1.未来社会における新たな価値創出に向けた研究開発の推進
  我が国の強みであるナノテクノロジー・材料科学技術を活かしながら未来社会を実現していくことが求められている。また、不確実な状況にも対応可能な基盤技術に関する研究開発や複数領域に横断的に活用可能な科学に関する研究開発を行うことも重要である。これらの実現の為に必要となる機能性材料や構造材料等の研究やデータ駆動型の材料設計等の新たな研究手法の開発等を推進する。



ア.機能性材料・構造材料研究
  「Society5.0」(超スマート社会)の実現に向けて鍵となるサイバー空間関連技術やフィジカル空間(現実空間)関連技術を横断的に支える基盤技術である素材・ナノテクノロジーとして、エネルギー、インフラ、健康医療等を支える機能性材料や革新的構造材料の開発を推進し、それらを適用したコンポーネントの高度化を進めることが重要である。
   そこで、個別システムの高度化※(エネルギーバリューチェーンの最適化等)に資する高効率な電力制御につながるパワー半導体技術や工業プロセスの革新に資する反応・合成技術、省エネルギーのための高輝度発光材料、クリーンで経済的なエネルギーシステムの実現に貢献する磁性材料、燃料電池、電力貯蔵用二次電池等の開発や太陽光発電技術の高度化、情報通信技術分野の省エネに繋がる大容量メモリ、ストレージ技術に不可欠なスピントロニクス素子、省エネルギー・低環境負荷の実現のため、輸送機器材料の軽量化・高強度化、自動運転や安全確保のためのセンサデバイス、省資源のための物質分離技術・高性能吸着材や希少元素を抜本的に削減した代替材料の開発、再生医療のための生体接着剤や骨折治癒材料等、幅広い分野に貢献する機能性材料における研究開発を引き続き強化し、その機能のさらなる顕在化を図る。
   また、構造材料については、精緻な特性評価技術や組織解析技術等を活用して材料の劣化機構の解明を進めるとともに、その知見に基づいた材料の高信頼性化を進めるなど、総合的なアプローチを行う。具体的には、エネルギーインフラ材料の耐熱性向上や輸送機器からインフラ構造体まであらゆる分野でのマルチマテリアル化の急速な進展に対応するため、金属と樹脂等の異種材料を構造体化するための高信頼性接合・接着技術等の開発を進める。



イ.新たな研究開発手法の開発
 (1)社会システムを俯瞰した材料開発(仮)
   持続可能な未来社会を実現するためには、既存の研究開発の延長ではなく、「ズームアウト」の視点による社会システム全体を俯瞰した目標設定と、「ズームイン」の視点による要素技術課題へのブレークダウンの双方が必要である。研究開発に当たっては、未来社会のニーズと材料シーズの適切なマッチングを図るため、社会システム全体を俯瞰した技術統合と理論・計測・材料創製を融合した材料研究との協働による研究開発が重要であり、これを踏まえ、太陽光エネルギーから出発するエネルギーフローに関わる一連の材料を一つの研究対象とし、技術シーズの源泉となる基礎基盤研究を強化し、出口課題の実用化に向けた研究開発を推進する。



(2)データ駆動型の材料設計
  新たなデータ駆動型の材料設計技術「マテリアルズ・インフォマティクス」は、物質・材料分野における膨大なデータ群に、最先端のデータ科学・情報科学の手法を組み合わせることにより物質・材料の研究開発を飛躍的に加速させ、材料の開発手法にパラダイムシフトをもたらす可能性を持つ。本研究領域の開拓は、国際的な潮流の観点からも、我が国の物質・材料研究の発展にとって重要であることから、基盤の整備も含め、これを活用した材料開発に積極的に取り組む。
   具体的には、様々な研究を通じて蓄積された膨大・高品質なデータを産学官で共有・利活用を行うためのデータプラットフォームを構築し、最先端のデータ科学、情報科学等の多様な手法やツールを駆使した情報統合型の材料開発システムの整備を行い、物質探索・設計の成功事例の創出等に取り組む。本研究の知的基盤となるデータベースの整備を進め、材料研究のニーズに合った形で提供するためのデータ収集・管理・提供技術の開発を継続的に行い、材料データプラットフォームの効率化も推進する。データプラットフォームの構築にあたっては、様々な研究機関からデータを集めるための制度設計や体制整備等に取り組む。



 (3)材料開発に資するプロセス技術の開発
   材料を開発し、社会実装へと繋げるため、スマート生産システムへの対応や経済合理性等を考慮した製造(プロセス)技術の開発等に注力する。これらの開発を一体で推進することにより、機能発現の本質と製造プロセスに用いられる要素反応・要素過程の理解を同時に進め、その知見に基づき高機能材料を開発する。計算科学・データ科学との融合によるプロセス・インフォマティクスにも取り組む。



 (4)先端材料解析技術
   革新的な機能を持つ材料の開発には、その機能発現メカニズムの根源的かつ効率的な解明が重要であり、最先端の材料計測解析技術を包括的かつ相補的に開発することが求められる。
   そのため、ナノからマクロまでの様々なスケールでの計測技術、実使用環境下(オペランド)での計測技術・解析システムを開発するとともに、計算科学との融合による計測インフォマティクス等に取り組む。また、新規計測手法のシーズとなる独創的な計測解析手法の開拓を推進し、得られたシーズを基盤技術化することで、革新的な計測技術の実現を目指す。



ウ.未来社会創出に向けた挑戦的な研究開発
 (1)ナノ構造の自在制御による新規材料技術の創出(仮)
   物質をナノメートルレンジのサイズ、形状に制御することにより先鋭化された形で現れる機能性や反応性を高度に制御・変調する新しいナノ材料創製技術、「ナノアーキテクトニクス(ナノの建築学)」を確立し、経済・社会的課題の解決や超スマート社会実現の鍵となる、エレクトロニクス、環境・エネルギー技術、バイオ技術等の革新に繋がる新材料、デバイスの創製を行う。具体的には、有機-無機-金属にわたる広範な材料系において、組成、構造、サイズ、形状が精密制御されたナノ物質を高度に配列、集積化、複合化するとともに、それにより設計・構築された人工ナノ材料、ナノシステムにより、斬新な機能の創発を図る。ナノ材料科学者を中心に、物理、化学、生体材料、デバイス、理論計算等、多彩な専門家集団を本領域に結集し、異分野間の連携・融合を通じて、様々な技術分野に新展開をもたらす新規材料技術の創出を行う。

 

(2)新たな技術領域を切り拓く基礎・基盤研究の強化
   研究者の自由な発想による研究を格段に発展させる学術研究から、社会経済や科学技術の発展、国民生活の向上に寄与する研究成果の実用化を見据えた研究までを総合的に支援するとともに、国内外の研究動向を踏まえ、組織や分野の枠を超えた研究体制の下、将来社会に大きな影響をもたらす新技術シーズの創出や将来のプロジェクトの芽を創出するような探索型研究に取り組む。その際、異分野融合を重視しつつ、先導的で挑戦的な課題を積極的に取り上げることで、革新的な技術シーズの創出を促進する。
   具体的には、高度な熱マネジメントで重要となるナノ領域の熱制御技術、材料研究等における計測・診断・イメージングの高度化、有用物質創成等に資するバイオテクノロジー、多様な天然炭素資源を活用する革新的触媒の創製、二次元機能性原子や分子薄膜による部素材・デバイスの創製、物質中の微細な空間空隙構造制御や界面制御技術、分子の自在設計・制御を実現する分子技術、素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成等の基礎研究を中長期視点に立って推進する。
   この他、不確実性への対応も見据え、文理融合や技術融合等の異分野融合による新領域の開拓や、世界最高水準の研究成果の創出に向けた特定領域の先鋭化にも取り組む。

2.広範な社会的課題の解決に資する研究開発の推進
   第5期科学技術基本計画も踏まえ、エネルギーの一層の効率的利用や医療分野への応用、社会インフラの老朽化対策等、近年顕在化している社会的課題への解決の鍵となるナノテクノロジー・材料科学技術分野の研究開発を、実用化も見据えつつ推進する。
  具体的には、第5期科学技術基本計画に掲げられている13の重要政策課題のうち、特にナノテクノロジー・材料分野として大きな貢献が見込まれる以下の課題を中心に、その解決を実現すべく、必要な取組を推進する。また、これまでに解決できていない課題や新たな課題等、応用先の開拓にも取り組む。



ア.エネルギーの安定的な確保とエネルギー利用の効率化
  再生可能エネルギーの活用と、エネルギー貯蔵、輸送システムの革新によるエネルギー利用の効率化は、資源の少ない我が国にとってエネルギー安全保障上重要であるとともに、地球温暖化抑止に向けた低炭素社会の実現と持続可能な社会の構築にも大きく貢献する。そのため、多様なエネルギー利用を実現するための研究開発として、システム化・デバイス化を念頭に、太陽電池や燃料電池、エネルギー変換・貯蔵等のための材料開発を行うものとする。また、最終システムを意識しつつ、エネルギーの高効率変換等に関わる大きなブレークスルーに繋がる次世代の技術シーズを探索する。
  さらに、低環境負荷社会に資する高効率・高性能な輸送機器材料やエネルギーインフラ材料の開発を推進する。



イ.資源の安定的な確保と循環的な利用
  レアアース等の材料の高性能化に必須な希少元素の世界的な需要急増や資源国の輸出管理政策により、深刻な供給不足を経験した我が国では、資源リスクを克服・超越する「元素戦略」が必要不可欠である。特に、ナノレベル(原子・分子レベル)での理論・解析・制御によって元素の秘めた機能を自在に活用することが、新たな高機能材料の創製や希少元素代替・減量の実現、ひいては産業競争力の鍵となる。そこで、希少元素を用いない、全く新しい代替材料の創製等に取り組む。



ウ.効率的・効果的なインフラの長寿命化への対策/国及び国民の安全・安心の確保と豊かで室の高い生活の実現
  国民生活や経済・社会活動を支えている公共インフラはその多くが高度経済成長期に建設されているため、高齢化が進んでおり、重大事故の可能性が上昇するとともに、維持補修に必要な経費も増大していくことが大きな社会的課題となっている。また、我が国は、地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火などの大規模な自然災害により数多くの被害を受けており、このような自然災害に対して、国民の安全・安心を確保してレジリエントな社会を構築することが課題となっている。
  そのため、公共インフラの効率的な維持管理・更新や、国土強靭化に資する社会インフラ材料の高性能化・高信頼性化のための基礎・基盤技術の開発等を推進する。具体的には、維持管理・更新技術として、構造物の劣化・損傷等を正確に判断するためのセンサ・ロボット・非破壊検査技術や計測データを収集・伝送する通信技術等の点検技術、点検結果に基づき補修・更新の必要性を判断する評価技術、構造物に必要な強度や耐熱性を効率的に付与する補修補強技術等の研究開発を進める。また、エネルギーインフラ材料の耐熱性向上や輸送機器からインフラ構造体まであらゆる分野でのマルチマテリアル化の急速な進展への対応として、金属と樹脂等の異種材料を構造体化するための高信頼性接合・接着技術の開発を進める。



エ.ものづくり・コトづくりの競争力向上
  安価な生産コストを武器とした中国等の新興国の追い上げや、インダストリー4.0 等の国家イニシアティブを掲げる欧米諸国における製造業の徹底的なICT化といった世界の動向に対し、我が国の製造業が更なる競争力・収益力の強化や新市場の創出等を実現するためには、これまでの我が国の強みであるフィジカル関連技術のさらなる進化に加え、それらとIoTやビッグデータ、AI等のICTとを融合させることにより、新たなものづくりシステムの開発することが課題である。
  上記の課題解決のため、ナノテクノロジー・材料分野においては、材料データベースの整備、データ解析ツールの開発、物質探索の成功事例の創出に向けた体制を整備する。さらに、理論・実験・解析・シミュレーション・データベースなどを融合して、材料のパフォーマンスを含めて性能予測が可能なマテリアルズインテグレーションとも連携し、国際的な競争の中でいち早く材料から部材までの一貫した開発を行う。



オ.ノテクノロジー・材料分野が貢献できる更なる社会課題とその対応
 (後の議論を踏まえて適宜追加)

第2章 環境・エネルギーに関する課題への対応

 連携を取った委員会:ナノテクノロジー・材料科学技術委員会、防災科学技術委員会、宇宙開発利用部会、海洋開発分科会、安全・安心科学技術及び社会連携委員会(予定)
 

1.大目標


  将来のエネルギー需給構造を見据えた最適なエネルギーミックスに向け、エネルギーの安定的な確保と効率的な利用を図る必要があり、現行技術の高度化と先進技術の導入の推進を図りつつ、革新的技術の創出にも取り組む。(基本計画)
  資源の安定的な確保を図りつつ、ライフサイクルを踏まえ、資源生産性と循環利用率を向上させ最終処分量を抑制した持続的な循環型社会の実現を目指し、バイオマスからの燃料や化学品等の製造・利用技術の研究開発等にも取り組む。(基本計画)


 COP21で策定された「パリ協定」を踏まえ、長期的視野に立って、CO2排出削減のイノベーションを実現するための中長期的なエネルギー・環境分野の研究開発を、産学官の英知を結集して強力に推進し、その成果を世界に展開していく。(エネルギー・環境イノベーション戦略)

 革命的なエネルギー関係技術の開発とそのような技術を社会全体で導入していく。(エネルギー基本計画)
 再生可能エネルギーや省エネルギー等の技術開発・実証を、早い段階から推進するとともに、そうした技術の社会実装を進める。(温対計画)



 1.大目標達成のために必要な中目標


  エネルギーの安定的な確保と効率的な利用、温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するため、目指すべきエネルギーシステム等の社会像に関する検討・議論を見据えつつ、従来の延長線上ではない新発想に基づく低炭素化技術の研究開発を大学等の基礎研究に立脚して推進するとともに、温室効果ガスの抜本的な排出削減の実現に向けた革新的な技術の研究開発を推進する。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

      ■アウトプット指標


      ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

 1.大学等の基礎研究に立脚した新発想に基づく低炭素化技術の研究開発
  我が国の大学や国立研究開発法人における優れた基礎研究の力を活かし、従来の延長線上ではないゲームチェンジングな研究者の発想に基づく低炭素化技術の研究開発を行い、温室効果ガス排出削減のイノベーションを実現する。
  具体的には、ステージゲート評価による課題の選択と集中等を通じ、低炭素社会の実現に貢献する革新的技術シーズに関する研究開発及びそれらを統合した実用化に向けた技術の研究開発を一体的に実施する。さらに、国立研究開発法人理化学研究所や国立研究開発法人物質・材料研究機構における低炭素化技術に係る研究開発を推進する。



 2.温室効果ガスの抜本的な排出削減に向けた明確な課題解決のための研究開発
 温室効果ガスの抜本的な排出削減に向け、明確なターゲットを示し、その解決を図るための革新的な技術の研究開発を推進し、温室効果ガスの大幅な削減に貢献する。
 具体的には、2030年の社会実装を目指して取り組むべきテーマとして、文部科学省と経済産業省の合同検討会を経て設定した次世代蓄電池、ホワイトバイオテクノロジー分野等において、産学官の多様な関係者が参画した共同研究開発を推進する。また、電力損失を大幅に削減できる次世代半導体の実現に向けて、青色LEDの研究開発に代表される窒化ガリウム(GaN)に関する我が国の強みを活かした研究開発等に取り組む。さらに、「エネルギー・環境イノベーション戦略」等を踏まえ、2050年の温室効果ガスの大幅削減というゴールからバックキャストした明確なターゲットを設定し、あらゆる手段を駆使してターゲット達成を目指す複数チームによる研究開発を関係省庁等との連携により実施する。



 2.大目標達成のために必要な中目標

 核融合エネルギーは、燃料資源が地域的に偏在なく豊富であること、発電過程で温室効果ガスを発生しないこと、少量の燃料から大規模な発電が可能であること等の特性を持つ。また、安全性の面でも優れた特性を有することから、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する、将来の基幹的エネルギー源として期待されている。
 大目標の達成に向け、文部科学省は、国際約束に基づくITER(国際熱核融合実験炉)計画・BA(幅広いアプローチ)活動を推進しつつ、これらの進捗状況を踏まえ、トカマク方式を主案とする原型炉開発のための技術基盤構築に向けた戦略的取組を推進する。並行して、トカマク以外の方式(ヘリカル方式、レーザー方式)や、核融合理工学の研究開発を進めることにより、将来に向けた重要な技術である核融合エネルギーの実現に向けた研究開発に取り組む。
 なお、これらの取組を推進するに当たっては、原型炉開発に向けたロードマップを策定し、量子科学技術研究開発機構、核融合科学研究所、大学、産業界等を網羅する全日本の連携体制で臨む。
 また、現行BA活動終了後の日欧協力のあり方について検討を進めているところであり、その結果に応じて、必要があれば、本計画を見直すこととする。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

      ■アウトプット指標


      ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

1.国際約束に基づくITER計画・BA活動の推進
  国際約束に基づき、核融合実験炉の建設・運転を通じて核融合エネルギーの科学的・技術的実現可能性を実証するITER計画を推進する。日欧協力により、ITER計画を補完・支援するとともに原型炉に必要な技術基盤の確立を目指した先進的核融合研究開発である幅広いアプローチ(BA)活動を推進する。なお、現行BA活動後の日欧協力に関しては、国内活動との相補性を考慮し効果的に推進する。



  ア.ITER計画の推進
   ITERの運転開始(ファーストプラズマ)を見据え、国際約束に基づくスケジュールに従って我が国が調達責任を有する機器の製作を進め、超伝導導体、超伝導コイル及び中性粒子入射加熱装置実機試験施設用機器の製作を完了する。また、テストブランケットモジュールについて、ITERにおける試験に向けた設計活動等を実施する。さらに、ITER計画の円滑な推進に貢献するため、ITER建設地(仏国 サン・ポール・レ・デュランス)においてITER国際核融合エネルギー機構(以下「ITER機構」という。)が実施する機器の統合作業(据付・組立・試験・検査)を支援するとともに、ITER機構及び他極との情報交換及び連携を強化する。



  イ.BA活動の推進
   国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業については、予備的な原型炉設計活動と研究開発活動を完了する。国際核融合材料照射施設(IFMIF)に関する工学実証及び工学設計活動(EVEDA)事業については、IFMIF原型加速器の実証試験を完了する。ITERのサテライト・トカマクとしても位置付けられているJT-60SAについては、我が国が調達責任を有する機器の製作や日欧が製作する機器の組立を完了し運転を開始するとともに、ITERの運転と原型炉の開発に向けた研究開発・支援のプラットフォームを構築する。

 

 2.学術研究・基礎研究の総合的推進

   核融合科学及び関連理工学の学術的体系化と発展を図ることを目指し、核融合科学研究所、大学等における先進的な研究を含む幅広い学術研究や基礎研究を総合的に推進する。特に、トカマク方式に対して相補的・代替的な役割を有するヘリカル方式とレーザー方式については、引き続き学術研究に重点をおいて研究を進める。



  ア.LHD(大型ヘリカル装置)計画
   ヘリカル方式の物理及び工学の体系化と環状プラズマの総合的理解に向けて、これまでの軽水素実験による成果を踏まえた重水素実験を開始する。これにより、イオン温度1億2,000万度を達成し、核融合炉に外挿可能な超高性能プラズマを実現する。また、国内外の共同研究により、重水素放電における水素同位体効果等の学術研究を推進する。

 

  イ.レーザー方式
   レーザー方式による核融合については、大阪大学レーザーエネルギー学研究センターを中心として進められている高速点火方式による実験において、核融合点火・燃焼の可能性を見極めるとともに、その研究成果等を踏まえて、今後の研究の展開の方向を定める。

 

  ウ.幅広い学術研究・基礎研究
   核融合に関する学術研究・基礎研究については、1.大型装置では得られないプラズマ領域を実現できる中小規模のプラズマ実験装置を用いた研究、2.大規模シミュレーション技術や情報技術を駆使する理論・シミュレーション研究、3.特徴ある中小規模の工学研究装置を用いた材料・炉工学の研究等、斬新なアイデアに基づく多様な先駆的・萌芽的研究の機会を確保する。



 3.原型炉の設計・研究開発活動の推進

   原型炉建設判断に必要な技術基盤を構築するため、原型炉総合戦略タスクフォースの提示するアクションプランに沿って、ITER計画の着実な推進に基づく経験と実績とともに、IFERC、IFMIF/EVEDA等のBA活動や、トカマク国内重点化装置※でもあるJT-60SAの成果も取り込みつつ、原型炉設計合同特別チームによる全日本体制での原型炉設計活動と研究開発活動を進める。

  ※「今後の核融合研究開発の推進方策について」(平成17年10月26日原子力委員会核融合専門部会)において、核融合エネルギーの早期実現に向けて、国内のトカマク装置を重点化し、トカマク方式の改良を我が国独自に進めるための「トカマク国内重点化装置計画」を進め、JT-60の後継機をトカマク国内重点化装置とすることとされている。



 2.大目標

 地球規模での温室効果ガスの大幅な削減を目指すとともに、我が国のみならず世界における気候変動の影響への適応に貢献する。(基本計画)
 地球温暖化に係る研究については、従前からの取組を踏まえ、気候変動メカニズムの解明や地球温暖化の現状把握と予測及びそのために必要な技術開発の推進、地球温暖化が環境、社会・経済に与える影響の評価、温室効果ガスの削減及び地球温暖化への適応策などの研究を、国際協力を図りつつ、戦略的・集中的に推進する。(温対計画)

  スーパーコンピュータ等を用いたモデル技術やシミュレーション技術の高度化を行い、時間・空間分解能を高めるとともに発生確率を含む気候変動予測情報を創出する。また、気候予測の高解像度化を検討する。(適応計画)
 最新の気候変動予測データや、全球気候モデルのダウンスケーリングを活用することで、洪水や高潮による将来の外力の変化を分析する。(適応計画)
  気候変動適応情報にかかるプラットフォーム等において、ダウンスケーリング等による高解像度のデータなど地域が必要とする様々なデータ・情報にもアクセス可能とするとともに、地方公共団体が活用しやすい形で情報を提供する。また、地方公共団体が影響評価や適応計画の立案を容易化する支援ツールの開発・運用や優良事例の収集・整理・提供を行う。(適応計画)



1.大目標達成のために必要な中目標

 国内外における気候変動対策に活用されるよう、地球観測データやスーパーコンピュータ等を活用し、気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化を進め、より精確な将来予測に基づく温暖化対策目標・アプローチの策定に貢献する。また、より効率的・効果的な気候変動適応策の立案・推進のため、不確実性の低減、高分解能での気候変動予測や気候モデルのダウンスケーリング、気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進する。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

      ■アウトプット指標


      ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組


1.国内外における気候変動対策に活用するための気候変動予測・影響評価技術の開発
   気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等における議論をリードするとともに国内外における気候変動適応・緩和策の立案・推進に貢献するため、全ての気候変動対策の基盤となる気候モデル研究の高度化に必要な研究開発を進める。
   具体的には、地球観測データやスーパーコンピュータ等を活用し、気候変動メカニズムの解明、高分解能での気候変動予測等の技術の研究開発を推進し、気温上昇の不確実性の低減、緩和策立案の科学的根拠となる炭素・窒素循環・気候感度等の不確実性の低減、環境の不可逆変化(ティッピングエレメント)のより確実な解明、我が国周辺における気候変動適応・緩和策の立案・推進に必要となる気候モデルの時空間解像度の向上、極端気象現象に関する高精度な確率的予測や脆弱性・暴露等も考慮した統合的影響評価を可能とする。

 

 2.地球環境情報プラットフォームの構築
   地球観測情報や気候変動予測情報等を用いて気候変動への適応・緩和等の国内外の社会課題に貢献するための社会基盤として、社会課題の解決を図ろうとする企業等の具体のユーザーニーズも踏まえた地球環境情報プラットフォームを構築する。
   具体的には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、防災科学技術研究所(NIED)や、気象庁、国土交通省等の政府が保有する地球観測データ等を集約する。また、多分野・多種類のデータをリアルタイムで統合・解析するための情報基盤を構築するとともに、企業等のユーザーが長期的・安定的に利用できるための運営体制の強化や、ユーザーの拡大のため水課題(ダム管理)等のテーマに関する共通基盤技術(アプリケーション)開発を通じ、社会課題解決への一層の貢献を図る。また、研究利用に加え、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も促進し、我が国の有する地球観測データ等によるイノベーションの創出を図る。

 

 3.地域レベルでの気候変動適応に活用するための気候変動影響評価・適応策評価技術の開発
  「気候変動への適応計画」の策定を踏まえ、今後本格化することが想定される地方公共団体における地域レベルでの気候変動適応策の立案・推進に貢献するため、国における気候変動研究の蓄積を活かし、地域を支える共通基盤的な気候変動影響評価・適応策評価技術を開発する。
   具体的には、気候変動適応策の立案等に必要となる気候モデルのダウンスケーリング、地域レベルでの気候変動影響評価、適応策の評価、影響の可視化等を可能とするアプリケーションを、地球科学、社会科学等の研究者と地方公共団体関係者等の協働により開発し、地方公共団体のニーズがある分野(農業、防災等)における地域の実情に応じた効率的・効果的な適応策の立案・推進に貢献する。



3.大目標


 ICTを最大限に活用し、サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に深化させつつ「Society 5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。(基本計画)


 地球環境の情報をビッグデータとして捉え、気候変動に起因する経済・社会的課題の解決のために地球環境情報プラットフォームを構築する。(基本計画)
 気候リスク情報等は、各主体が適応に取り組む上での基礎となるものであることを踏まえ、多種多様な気候リスク情報等の収集と体系的な整理を行うための気候変動適応情報にかかるプラットフォームについて関係府省庁において検討を行う。その際「科学技術イノベーション総合戦略2015」(平成27年6月19日閣議決定)において経済・社会的課題の解決に向けた重要な取組として位置づけられた地球環境情報プラットフォームの活用も含めて検討する。(適応計画)



1.大目標達成のために必要な中目標


 我が国の政府等が収集した地球観測データ等をビッグデータとして捉え、人工知能も活用しながら各種の大容量データを組み合わせて解析し、環境エネルギーをはじめとする様々な社会・経済的な課題の解決等を図るプラットフォームの構築を図る。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

     ■アウトプット指標


     ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

1.地球環境情報プラットフォームの構築
   地球観測情報や気候変動予測情報等を用いて気候変動への適応・緩和等の国内外の社会課題に貢献するための社会基盤として、社会課題の解決を図ろうとする企業等の具体のユーザーニーズも踏まえた地球環境情報プラットフォームを構築する。
   具体的には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、防災科学技術研究所(NIED)や、気象庁、国土交通省等の政府が保有する地球観測データ等を集約する。また、多分野・多種類のデータをリアルタイムで統合・解析するための情報基盤を構築するとともに、企業等のユーザーが長期的・安定的に利用できるための運営体制の強化や、ユーザーの拡大のため水課題(ダム管理)等のテーマに関する共通基盤技術(アプリケーション)開発を通じ、社会課題解決への一層の貢献を図る。また、研究利用に加え、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も促進し、我が国の有する地球観測データ等によるイノベーションの創出を図る。【再掲】


第3章 健康・医療・ライフサイエンスに関する課題への対応


連携をとった委員会:脳科学委員会、ナノテクノロジー・材料委員会、安全・安心科学技術及び社会連携委員会(予定)



1.大目標


 健康・医療戦略推進本部の下、健康・医療戦略及び医療分野研究開発推進計画に基づき、国立研究開発法人日本医療研究開発機構を中心に、オールジャパンでの医薬品創出・医療機器開発、革新的医療技術創出拠点の整備、再生医療やゲノム医療など世界最先端の医療の実現、がん、認知症、精神疾患、新興・再興感染症や難病の克服に向けた研究開発などを着実に推進する。 また、我が国の医療技術や産業競争力を生かし、例えば、感染症対策などの分野で、諸外国との連携による地球規模の課題への取組や、我が国の優れた力を生かした国際貢献といった主導的取組を進めていく。
 加えて、幅広い研究開発活動や経済・社会活動を安定的かつ効果的に促進するために不可欠なデータベースや生物遺伝資源等の知的基盤について、公的研究機関を実施機関として戦略的・体系的に整備する。



1.大目標達成のために必要な中目標

 「健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)」及び「医療分野研究開発推進計画(平成26年7月22日健康・医療戦略推進本部決定)」等に基づき、健康・医療分野の研究開発の取組を着実に実施する。
 1.医薬品・医療機器開発への取組
 2.臨床研究・治験への取組
 3.世界最先端の医療の実現に向けた取組
 4.疾病領域ごとの取組
 5.その他、バイオリソース等研究開発の環境の整備や国際的視点に基づく取組、研究開発法人等で行うデータベース整備等を含むインハウス研究等の取組
 


(1)中目標達成状況の評価のための指標


       ■アウトプット指標



       ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

「健康・医療戦略」及び「医療分野研究開発推進計画」に基づき、それぞれの項目について研究開発を着実に実施するとともに、社会情勢等を踏まえて、戦略等に記載されていない、老化のメカニズム解明に向けた基礎研究の推進及び研究基盤の構築等の取組についても実施する。



2.大目標達成のために必要な中目標

健康・医療分野に限らない生命科学に関する幅広い研究開発は、ライフサイエンス分野の裾野を広げ、健康・医療分野の研究開発の新たな成果の創出にもつながる重要な取組であることから、大学等において当該分野の研究開発を推進するとともに、国立研究開発法人理化学研究所がこれまで幅広い研究開発の実践を通じて培ってきた研究ポテンシャルを最大限に活用し、その総合力を効果的に発揮して当該分野の研究開発の取組を実施する。


 
(1)中目標達成状況の評価のための指標

     ■アウトプット指標


     ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組


国立研究開発法人理化学研究所の優れた研究開発能力を活用し、植物科学の先導的研究、脳科学に革新をもたらす基盤技術の開発・駆使や神経回路機能解析、胚発生の遺伝子・細胞・組織レベルでの理解、実験と理論・計算による生命現象の予測・制御・再構成、モデリングによる恒常性の根幹をなす機能のネットワーク描出、世界最高水準のバイオリソースの戦略的かつ効率的な整備・提供、構造・合成生物学研究及び機能性ゲノム解析研究の技術基盤の先鋭化等を実施し、生命科学に関する幅広い研究開発により基礎生命科学分野の知見を広げるとともに、ライフサイエンス分野の裾野を拡げ、健康・医療分野の研究開発の新たな成果創出につなげるなど、ライフサイエンス分野のイノベーション創出に貢献する。

 

第4章 安全・安心の確保に関する課題への対応


連携を取った委員会:安全・安心科学技術及び社会連携委員会(予定)



1.大目標

 我が国は、地震・津波、水害・土砂災害、火山噴火などの大規模な自然災害により数多くの被害を受けてきた。南海トラフ地震や首都直下地震などの巨大災害の切迫性が指摘され、一度発生すれば国家存亡の危機を招くおそれもある。また、これまでの災害から得られた教訓を今後の大規模自然災害等への備えに生かすことが強く求められている。
このため、このような自然災害に対して、安全・安心を確保するべく、従来の研究手法に加えIoT、ビッグデータ、AI等の先端科学技術を活かした研究開発を推進し、レジリエントな社会を構築する。




1.大目標達成のために必要な中目標

自然災害を的確に観測・予測することで、人命と財産の被害を最大限予防し、社会の持続的発展を保つため、国土強靱化に向けた調査観測やシミュレーション技術及び災害リスク評価手法の高度化を図る。




(1)中目標達成状況の評価のための指標


     ■アウトプット指標


     ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

1.自然災害の正体を知りこれを予測する技術の研究開発
   大規模な地震や津波、火山噴火等、発生すれば甚大な被害をもたらすリスクの高い災害、及び、地球規模の気候変動に伴い今後激甚化すると予想される風水害、土砂災害、雪氷災害等に対応し、被害の軽減に向けた予測手法の確立や基盤的観測体制の整備に資する研究開発に取り組む。

 

 近年我が国は、2011年の東北地方太平洋沖地震や2016年の熊本地震等、被害規模の大きな地震に見舞われている。また、今後30年程度の内には南海トラフ地震や首都直下型地震など甚大な被害をもたらす地震も想定されており、被害軽減に向けた基盤的観測の重要性が増している。大規模な地震の発生頻度は極めて低いため、過去の地震記録は少なく、現状の観測技術と比較してその精度も低い。地震被害の軽減に向けては、海溝型地震が懸念される海域から陸域までの海陸統合型地震津波観測網の整備と長期に渡るリアルタイム観測体制の確立が重要である。
 同様に、火山噴火についてもその活動頻度は低いものの、発生した場合甚大な被害をもたらすことが予想されており、観測網の整備と長期に渡るリアルタイム観測体制の確立が重要となる。



 極端気象による豪雨豪雪・竜巻・雷などの頻度増大や台風の強大化による被害の増加など、地球規模の気候変動の影響によりこれまでに経験したことの無い風水害・土砂災害・雪氷災害の発生が想定されており、それらの災害に対応するための予測手法の確立や観測基盤の整備が重要である。また、地震・津波・火山噴火・風水害・土砂災害・雪氷災害等が連続して生じる「複合連鎖型災害」についても視野に入れた研究開発も必要である。
リアルタイム観測・継続的観測に関しては、例えば2016年熊本地震の際にも確認されたように、発災時の観測施設の被災や停電・通信網の途絶等により観測不能となることが想定されるため、冗長性を持った観測システムの開発も重要である。
また観測衛星やGNSS観測を利用した新しい知見を得ることは予測手法の確立や観測精度の向上に寄与できるため実利用度の向上を図る必要がある。


2.自然災害に負けない建築物・インフラを構築する技術の研究開発
 近年の自然災害を反映した新たな想定と既存建築物・インフラの老朽化に対応し、発災時の被害を最小限に抑えるとともにその後の回復を迅速に行うため、新しい技術・手法を含む災害に負けない建築物・インフラの構築に資する研究開発に取り組む。




 既存建物や、高度経済成長期に大量に整備され十分に管理・改修されていない老朽化したインフラに対し、想定される震動への耐震性能検査方法や改修工法、安価かつ効果的に補強する普及型耐震工法の確立が重要である。
 想定される大規模地震に対し建物被害による影響を軽減するため、建物の被災状況を即時に推定するための個々の建物性能評価や複数回震動への耐久性評価に資する測定技術を確立することが重要で、広範囲における被災状況を推定するために、IoT技術を利用することが有効である。また、既存建物については現状の居住生活・経済活動を妨げること無く簡便に設置可能な測定技術を確立する必要がある。
 将来発生する大規模地震による災害を数値シミュレーションで再現するため、地震観測結果から得られた地震活動、発震機構、地下構造などの各種データを十分に活用し、また過去の地震に対する発生解析、数値計算技術を用いて大規模地震に関する知見や再現技術を確立することが重要である。
 都市部においては発災における被害が著しく甚大になることが想定されるため、推論手法の発達等を踏まえ、地震、津波、火山、洪水等の理学的なハザード予測から、建物、構造物、プラント等の工学的な被害推定、社会インフラや産業活動の機能的相互関連を踏まえた経済的なリスク評価や復旧過程の予測を包括する、都市における災害過程の高詳細なシミュレーション技術等の開発が重要となる。
 また、人口減少社会における災害に強い都市計画の策定手法に関する研究開発もすすめていく必要がある。



3.不確実かつ多様な災害リスクの評価と、それに対応する技術の研究開発
 自然災害の不確実性と社会の多様性を踏まえたリスクの評価方法を構築しその知見を取り入れた多様な主体(行政間含む)の広域連携型防災対応や行動誘発につながる防災教育・啓発を推進するための手法、これらの効果を測定する手法等の研究開発に取り組む。



 2016年の熊本地震では連続して震度7を記録し、時間差を持って発生する地震への対応の必要性が再認識され、その後も集中豪雨による土砂災害の危険性が懸念されている。甚大な被害が想定されている南海トラフ地震においても、時間差で連動する地震災害、津波災害への対応は必要であり、時間経過を考慮したリスク評価方法の確立とそれらに基づく対策立案が重要となる。またそれらを考慮したハザードマップの作成・見直しも必要である。
 地震の発生確率や火山の噴火予測、局地的大雨の発生予測、台風の進路予測など、不確実性を含む情報の効果的な伝達方法や、これらを用いた自治体等の意思決定手法の確立が重要である。
 我が国の防災における研究対象は従来、経験則を重要視し確率的に低い事象に対して軽視してきた傾向にあり、そのため、低頻度大規模災害などは評価対象として重要視されてこなかった。今後は国内の任意地点において発生しうる全ての災害種の潜在的危険度も考慮し、標準的、概略的評価手法を開発していくことも重要となる。
 災害における経済被害推計について、その数値の推定プロセスについて、データの継続的蓄積も含めた理論的・実証的に体系化していく必要がある。
 我が国では、災害発生の危険性が高い地域に、住居やインフラなどの資産が存在し、その危険性が十分に周知されずに被災する場合も生じている。災害リスクを住民が知ることにより、地域毎で自立・分散・協調し災害に強い社会を実現するための手法の確立が重要となる。
 東日本大震災や熊本地震等の大規模災害時において、市民の防災行動、避難行動に関する情報が必ずしも十分に提供されていなかったことから、市民を対象としたリスクコミュニケーションツールの研究開発を進め、住民等が我が事に結び付けて安全・安心を考えることを可能とする情報提供システムの開発を行うことは極めて重要である。現在様々な主体が所有している各種情報を効率的に活用するためのしくみや技術開発、情報の受け手が内容を容易に理解できる情報発信のあり方等を確立する。
あらゆる国民・企業が備えることを当たり前と感じる防災文化を形成する防災教育研究が重要である。



2.大目標達成のために必要な中目標

 発災後の被害の拡大防止と早期の復旧・復興によって、社会機能を維持しその持続的発展を保つため、「より良い回復」に向けた防災・減災対策の実効性向上、社会実装の加速を図る。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

  ■アウトプット指標


  ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

 1.複合・誘発災害等を考慮した発災後早期のハザード推定及び状況把握・予測技術の研究開発
  発災後早期に、二次災害や複合・誘発災害の発生を予測するとともに、時々刻々と変化する状況を多面的に把握し、被害を最小限に抑え、迅速な復旧に資するため、リモートセンシングデータやIoT等を用いたモニタリング及びデータ同化・予測の手法の確立や高度化に資する研究開発に取り組む。



 地震発生後早期における、人命救助や建物の応急危険度判定の実施にあたっては、余震の規模や発生頻度等を考慮した安全性の評価が重要な要素となってくる。同様に、火山噴火や気象災害においても、事象の推移予測は、その後の避難及び救助活動等の実行のために重要な要素となってくる。確度の高い推移予測をするためにも、発災前からの継続的な観測が必要であり、また状況の変化を迅速に捉えることを可能とするためのリアルタイム観測、冗長性を持った観測システムが重要となる。
 近年はマルチコプターをはじめ、小型のUAVが普及してきており、災害現場の状況が発災後の早い段階で捉えられるようになってきた。また、人工衛星から広範囲に亘り高い精度で状況を把握することが可能になってきている。これらの比較的短時間に広範囲の状況をより多くモニタリングできる技術の開発や推移予測手法の確立・高度化が重要である。



2.災害情報をリアルタイムで推定・予測・収集・共有し、被害最小化や早期復旧につなげる技術の研究開発
 発災時に対応可能な有限のリソースで被害の最小化を図り、早期の復旧を実現するため、リアルタイム被害推定・予測、構造物の即時被害判定、被害状況等の災害情報の共有、対応状況や復旧・復興状況の把握・分析、防災業務手順の標準化・適正化、防災力向上等に資する研究開発に取り組む。



 災害が生じた際にその後の復旧に向けた対応を迅速に行うために、リアルタイム被害推定は有効である。地震災害の被害把握にあたっては、建物に設置したセンサーや監視カメラの映像等からの地震波波形の推定、被害状況の抽出等の技術や、遠隔操作型ロボットによる臨場性の高い災害現場の高精度で可視化する技術等の確立が重要となる。また、各種センサーからのリアルタイム情報を一元的に集約・管理する統合データベースの開発が必要となる。
 発災後の支援対応を適切かつ迅速に行うためには、各種センサーからの情報を含む災害現場からの入力情報をその種類に関わらず、インタラクティブに入力・共有ができ、さらに様々な情報を適切かつ優先順位をつけて提供できることや、出力対象に応じた情報を整理・分析するための情報トリアージ機能の確立、立場や状況に応じた意思決定を支援するためのパーソナルアシスタント機能の確立、必要な情報や利用者の要望等に迅速かつ効率的な対応ができるためのコンシェルジュ機能の確立等が重要となる。



3.発災直後の応急対応から被災者の生活再建支援等を含む復旧・復興対策に必要な研究開発
 発災直後のフェーズはもちろん、さらに数年以上必要とされる復旧・復興のフェーズにおいて生じる膨大な災害対応について、広域応援態勢の確立やトリアージ(対応の優先度の決定)等も含め、業務を支援する技術の構築に資する研究開発に取り組む。

 

 発災後の対応を迅速かつ適切に実施するために、災害種別に応じて、現場対応から意思決定までそれぞれの立場での対応手順を標準化することが重要である。実際の対応においては、危機対応マネジメントとガバナンスも重要であることから、災害種別の対応における時系列行動記録(クロノロジー)の蓄積とその解析が必要である。
 行政を対象とした防災業務支援システムについては、発災直後の緊急対応だけを対象とするのではなく、数年以上必要とされる復旧から復興のフェーズに生じる膨大な災害対応業務に対応し、また、単一の自治体にとどまらず広域な行政区域に対応するような、被災者支援業務に対応できるシステムの開発と実用化を図る必要がある。
 被災者の迅速な生活再建に向け、被害認定の判定の技術向上と効率化を図るとともに、地域全体の復旧・復興のプロセスとあわせて、個々人の自立した再建を促しつつ、復興感(メンタルな部分を含めた復興の程度の測定と評価)を高めて「より良い回復」の実現に資する研究開発を進めていくことが重要である。




第5章 国家戦略上重要な基幹技術の推進

連携を取った委員会:安全・安心科学技術及び社会連携委員会(予定)



1.大目標

 航空・原子力科学技術については、我が国が国際社会において高い評価と尊敬を得ることができ、国民に科学への啓発をもたらす等の更なる大きな価値を生みだす国家戦略上重要な科学技術として位置付けられるため、長期的視野に立って継続して強化していく。
 原子力科学技術については、安全性・核セキュリティ・廃炉技術の高度化等の原子力の利用に資する研究開発を推進する。さらに、将来に向けた重要な技術である革新的技術の確立に向けた研究開発にも取り組む。
 東日本大震災からの復興の障害となっている放射性物質による汚染等への対応が求められている。

1.大目標達成のために必要な中目標

 航空科学技術について、我が国産業の振興、国際競争力強化に資するため、社会からの要請に応える研究開発を行うとともに、次世代を切り開く先進技術の開発を推進する。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

     ■アウトプット指標


     ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

1.社会からの要請に応える研究開発について
 世界市場の伸びを大幅に上回る「超成長産業」を目指し、インテグレーション能力の獲得、国際共同開発における分担率の拡大や、装備品産業の育成を図る必要がある。以下の研究開発に取り組み、現在、民間航空機に求められている、安全性・環境適合性・経済性の面において他国よりも優位な技術を早急に獲得する。



 ア.安全性向上技術の研究開発
 我が国の航空機事故の主要な原因となっている乱気流による事故を防止するとともに我が国にとって急務である装備品産業の育成に貢献するために、装備品メーカ、機体メーカと連携し、航空機前方の晴天乱気流を検知しパイロットに警告する技術と乱気流遭遇時の機体動揺を低減させる技術を組み合わせたウェザー・セーフティ・アビオニクス技術を、飛行実証等を通じ確立する。
 乱気流以外による主な事故要因として挙げられる特殊気象(雪氷・雷・火山灰等の航空機に影響を与える気象)などの外的要因及びヒューマンエラーに対して、それらの影響を予知・検知・防御する技術の研究開発を進め、機体安全性の向上を図る。
さらに、災害時における航空機、無人機、衛星の統合的運用により、安全で効率的な救難航空機統合運用システムの研究開発を進め、より多くの要救助者の救助を可能とする。



 イ.環境適合性・経済性向上技術の研究開発
 エンジンについては、国際競争力強化のため、ファン及び低圧タービンの軽量化、高効率化を進めるとともに、JAXAに実証用エンジンとしてF7エンジンを整備し、国内メーカが次の国際共同開発において設計分担を狙えるレベルまで技術成熟度を高める。さらに次世代エンジンの鍵となるコアエンジン技術としてエンジン低騒音化技術、低排出燃焼器技術、耐熱材料技術等、将来産業界が分担率の拡大を狙える技術について実用性の高い技術に仕上げる。
 機体については、空港周辺地域の騒音低減のボトルネックになっている高揚力装置および降着装置に対する低騒音化技術の研究開発を行い、将来の旅客機開発ならびに装備品開発に適用可能となるように技術成熟度を高める。また、複合材を初めとした各種材料を、それぞれの特性を活かして機体に適用する等、材料開発から機体構造設計までをつなぐ技術の研究開発を行い、機体軽量化を飛躍的に高めることを目指す。



2..次世代を切り開く先進技術の研究開発について
 我が国の航空科学技術を長期に渡り高めていくために、社会に飛躍的な変革をもたらす可能性のある以下の先進技術の研究開発を推進する。



 ア.静粛超音速機統合設計技術の研究開発
  これまでの研究開発で培った国際的優位性を拡大させるために、飛行実証された抵抗低減設計技術や低ソニックブーム設計技術を核として、超音速機の実現成立性を実証することを目指す。このために、想定されるソニックブーム基準と強化された空港騒音基準を満足し、かつ経済性も満たす超音速機実現の鍵となる技術の要素技術研究開発を進めるとともに、個別要素技術を実機システムへ適用して有効性を確認するシステム設計研究を行い、低ソニックブーム/低抵抗/低騒音/軽量化に対する技術目標を同時に満たす機体設計技術を獲得する。これらの技術については飛行実証も視野に入れた技術実証構想を産業界と連携して策定する。あわせて、民間超音速機実現の鍵となる陸地上空超音速飛行に必要なICAO(国際民間航空機関)における国際基準策定に貢献する。



 イ.革新的技術の研究開発
  IATA(国際航空輸送協会)が掲げる「2050年までにCO2排出量半減」という目標を達成するために期待される革新的技術として、ソフトェア、ハードウェア両面からモーター技術、電源技術、ハイブリッド推進技術等の電動航空機技術の研究開発を進める。また、水素等の代替燃料の利用も視野に加えたエミッションフリー航空機技術、滞空型無人機技術等の研究開発を行う。これらの革新的技術の研究開発を行うことにより、将来国際的に優位性を持つキー技術の獲得を目指す。



2.大目標達成のために必要な中目標

   「エネルギー基本計画」において位置づけられているとおり、原子力は重要なベースロード電源であり、資源の乏しい我が国にとって重要なエネルギー源の一つである。また、地球規模の問題解決や放射線利用等による科学技術・学術・産業の発展に寄与するための重要な役割も担っている。さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故をはじめとするあらゆる原子力に関する事故の再発の防止のための努力を続けていく必要がある。
 文部科学省においては、こうしたエネルギー政策や科学技術政策等を踏まえ、エネルギーの安定供給や原子力の安全性向上、先端科学技術の発展等に資する研究開発成果を得ること、及び東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、廃炉や放射性物質による汚染への対策等に必要な研究開発を推進することを中目標として設定する。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

      ■アウトプット指標



      ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

 1.福島第一原子力発電所事故の対処に係る、廃炉等の研究開発
  東京電力福島第一原子力発電所の廃炉等世界的にも前例のない困難な課題が山積しており、これらの解決のための研究開発の重要度は極めて高い。エネルギー基本計画等に示された福島の再生・復興に向けた取組を踏まえ、東京電力福島第一原子力発電所の安全な廃止措置等を推進するため、東京電力、国際廃炉研究開発機構(IRID)、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)とも連携・協力をしつつ、国内外の英知を結集し、安全かつ確実に廃止措置等を実施するための研究開発や人材育成を加速する。また、環境モニタリング・マッピング技術開発や環境動態に係る包括的評価システムの構築及び除染活動支援システムの開発等を進める。



 2.原子力の安全性向上に向けた研究
 東京電力福島第一原子力発電所事故を受け、原子力の利用においては、いかなる事情よりも安全性を最優先する必要があることが再確認された。また、エネルギー基本計画に示されているとおり、原子力利用に当たっては世界最高水準の安全性を不断に追求していく必要がある。そのため、軽水炉等の安全性向上に資する燃材料及び機器、原子力施設のより安全な廃止措置技術の開発に必要な基盤的な研究開発を実施し、関係行政機関、原子力事業者等が行う安全性向上への支援等を実施する。また、原子炉施設の規模に合わせた適切な安全性の確保手段として、軽水炉以外の施設に関する安全対策に関する研究についても重要である。



 3.原子力の基礎基盤研究
 核工学・炉工学・燃料工学など原子力の推進に必要な基礎基盤研究及び幅広い科学技術・学術分野における革新的成果の創出につながる中性子利用研究等の推進は重要である。特に、原子力分野の研究には大規模・特殊な施設の利用が不可欠である。例えば、基礎基盤研究の推進に当たっては、高速中性子による燃料・材料開発が実施できる高速実験炉「常陽」、中性子利用のためのJRR-3、及び中性子照射による治療等に資するKURをはじめとした施設が必須である。研究炉の再稼働や核燃料使用施設等のその他施設を含めた新規性基準への対応や、高経年化対策、また、中長期的に必要な原子力の研究基盤について検討するとともに、研究施設の機能強化が必要である。加えて、エネルギー基本計画を受けて、固有の安全性を有し、水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれる高温ガス炉に係る研究開発を国際協力の下で推進することも重要である。



4.高速炉の研究開発
 エネルギー基本計画において、核燃料サイクルの推進は我が国の基本方針とされており、高速増殖原型炉「もんじゅ」については、もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指すとされている。また、「もんじゅ」の在り方に関する検討会の報告書を踏まえ、原子力規制委員会からの勧告に応えて速やかに具体的な運営主体を示せるよう、課題の解決に向け関係省庁、関係機関と連携しながら対応を進める。高速実験炉「常陽」についても、新規制基準へ対応した上で、研究開発を進められるよう早期の運転再開を目指す。



3.大目標達成のために必要な中目標

 原子力に係る人材の育成・確保、核不拡散・核セキュリティに資する活動、国際協力の推進、電源立地対策としての財政上の措置などを通じ、原子力分野の研究・開発・利用の基盤整備を図る。



(1)中目標達成状況の評価のための指標

      ■アウトプット指標



      ■アウトカム指標



(2)中目標達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組

 1.放射性廃棄物の処理・処分に関する研究開発等
 エネルギー基本計画に示されているとおり、原子力利用に伴い確実に発生する放射性廃棄物について、その対策を確実に進めるための技術が必要である。また、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、我が国の基本方針である核燃料サイクルの推進を支える技術が必要である。このため、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究開発を実施する。また、高レベル放射性廃棄物処分技術等に関する研究開発を実施するほか、原子力施設の廃止措置及び放射性廃棄物の処理・処分を計画的に遂行する技術開発等に取り組む。
 特に、核燃料物質や大量の廃棄物を抱えた高経年化施設の安全の確保のための維持管理には莫大な費用が必要となる。このため、研究開発に伴い発生する廃棄物(RI廃棄物を含む)の処理・処分や計画的な廃止措置は、研究開発に必須の事項であり、そのための長期の取組に係る計画が必要となる。



 2.原子力施設に関する新規制基準への対応等、施設の安全確保対策
 原子力規制委員会の定める新規制基準に対応するために必要な改修・整備等を行う。新規制基準については、原子力機構が持つ高温工学試験研究炉(HTTR)やJRR-3等の試験研究炉、大学が持つ研究用原子炉のみならず、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の研究開発に必要な施設や使用済燃料や廃棄物を安全に貯蔵・管理するために必要な施設など業務の遂行に必要な施設・設備について多岐に亘りその特性に応じた対応を進める必要がある。また、原子力施設の安全を確保するため、高経年化対策等安全確保対策を行う。


科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会
 量子科学技術委員会

量子情報処理・通信(うち量子コンピューティング)
に係る議論(平成28年5月10日、第3回)の骨子案


平成28年6月20日

研究動向


 量子コンピューティングは、量子力学的な効果を用いて超並列・大規模情報処理を行う技術であり、現在の最速スパコンでも例えば数千年を要するなど現実的な時間で解けないような一部の問題を、短時間かつ超低消費電力で計算できるようになると期待されている。(注1)



 1990~2000年代から、量子情報処理を可能とする物理素子、先端レーザーによる量子状態制御といった要素技術や、量子誤り訂正といった理論に進展があり、近年、欧米政府やGoogle社等の世界的企業が中長期的観点からの投資を拡大している。(注2)



 現在のコンピュータが「0」か「1」の二進法を用いて計算を行うのに対し、量子コンピューティングでは「0」と「1」が重ね合わせで存在する状態を情報処理の単位(量子ビット)として計算を行う。このような量子ビットを用いることにより超並列・大規模情報処理が可能となる。



 量子ビットを物理的に実現する素子として、超伝導量子ビット(超伝導材料からなる回路を流れる電流の巨視的量子状態を「0」と「1」の重ね合わせとして利用するもの)、スピン量子ビット(固体中の電子や原子核のスピンと呼ばれる物理量の量子状態を「0」と「1」の重ね合わせとして利用するもの)が、現時点で研究が進んでいる代表例として挙げられる。




(超伝導量子ビット)

 超伝導量子ビットは、我が国研究者が世界に先駆けてデバイスを開発し、1999年に論文発表された。量子ビットは外乱で壊れやすいのが本質であり、当初は、量子ビットの状態を保持し情報処理に利用できる時間(コヒーレンス時間、いわば寿命)が短かったが、日、蘭、仏、米などの研究者がしのぎを削って現象解明に取り組みながら発展し、これまで約10万倍の100μ秒のコヒーレンス時間が実現されている。



  一方、個々の量子ビットの寿命の延伸は有限なため、複数の量子ビットを一まとめに捉えて、個々の量子ビットの誤りを訂正するアルゴリズムを組み込むことで、実効的な1つの論理ビットとして量子状態を長い時間保持することが行われる。十分長い任意の時間、情報処理に利用するには、更に誤りに対する耐性を持たせるようにすることが必要となるが、現在、世界的に、9量子ビットを集積化して、簡単な誤り訂正アルゴリズムを動かすことが実験的に行われている。



 今後は、量子ビットのより大規模な集積化と、誤り訂正を組み込んだ論理ビットを1つでも十分長い任意の時間、保持することが次のマイルストーンとされている。 (なお、現時点で、既存のスパコンを凌駕するような計算には107個以上の論理ビットが必要と想定されており、その実現には数々のマイルストーンの達成が必要と考えられる。)



(スピン量子ビット)

 スピン量子ビットも、我が国研究者が世界に先駆けて1996年にデバイスを開発した。日、蘭、英、米、豪などの研究者がしのぎを削って現象解明に取り組みながら発展し、2012年にはコヒーレンス時間が短い(55n秒)ものの、潜在性の高い材料であるシリコン中に1つの電子スピンで量子ビットが実現された。さらに、我が国研究者が作製した、電子スピンに外乱を与えない同位体組成のシリコン結晶がブレークスルーとなって、1m秒のコヒーレンス時間が2014年に実現されている。

 また、シリコン結晶上に2次元の電子回路を組み合わせることで、演算に参加する電子スピン量子ビットの選択性を確保すること、2つの電子を並べて相互作用を使って簡単な演算を行うことが実験的に行われている。



 今後、シリコン中のスピン量子ビットについては、量子ビットの小規模な集積化方法の解明と、誤り訂正を組み込んだ論理ビットの確立が次のマイルストーンと考えられている。



(各アプローチの概観)


 個々の量子ビットのコヒーレンス時間は、超伝導量子ビットに比し、シリコン中スピン量子ビットの方が長い時間が実現されている。一方、量子ビットの集積化や相互作用の操作では、超伝導量子ビットの方が道筋が見えているとの特徴が挙げられる。何れも極低温で実現されるという特徴があり、組み合わせる古典制御技術の極低温領域での確立も課題として挙げられる。



 スピン量子ビットでは、常温で実現され、量子コヒーレンス時間が比較的長いダイヤモンド中の電子スピン(0.5秒のコヒーレンス時間が報告されている)も、我が国をはじめ世界的に注目されている。2014年には、常温動作のスピン量子ビットとしては世界で初めて誤り訂正が実現された他、理論主導で大規模な量子コンピュータを実現する素子とアーキテクチャ双方の詳細が世界で初めて示されるなど、ダイヤモンド中の電子スピンにおいても我が国研究者による先導的な成果が生まれている。また、新しい材料によるブレークスルーも期待されるが、集積化のみでは課題があるため、小規模な集積素子をつなぎ、分散型の情報処理を目指すという方向も一つの世界的な流れである。



 何れも、量子ビットのコヒーレンス時間の保持・向上を目指した上で、スケーラブルな量子情報処理アーキテクチャに基づく、更なる集積化と、誤り訂正を組み込んだ論理ビットの確立が次のマイルストーンと考えられている。誤り訂正の方式や量子情報処理アーキテクチャについても、現在用いられている方式がベストの解という証明はなく、理論的なアプローチからもブレークスルーがあり得る。このように、実験的なアプローチと理論的なアプローチ、さらにはブレークスルーが相互作用・融合しつつ、更なる発展が遂げられると期待される。



 量子ビットを物理的に実現する他の手法としては、イオントラップ法(電場等でイオンを捕縛し、その原子核のスピンと呼ばれる量子状態を利用するもの)や、トポロジカル量子ビット(未発見・未解明のマヨラナ粒子と呼ばれる素粒子を利用しようとするもの)、光を用いる方法が挙げられる。イオントラップ法では複数のスピンを相互作用させられることが確認されているが集積化に工夫が必要と考えられ、現在は主に海外で集積化が試みられている。トポロジカル量子ビットは、安定な量子ビットが実現できる可能性があると指摘されているが、主に海外で基礎的な探索が行われている。

 (量子アニーリングマシン)

 量子コンピューティングに向けては大きく二つの方向性が模索されている。一つは上述の量子ゲート方式と呼ばれるデジタル型の量子コンピューティングであり、もう一方は量子アニーリングマシンに代表されるアナログ型の量子コンピューティングである。



 組合せ最適化問題が短時間かつ超低消費電力で計算できると想定されている量子アニーリングマシンの例としては、カナダのベンチャー会社であるD-Wave社の世界初の商用機「D-Wave」があり2015年には1000ビットの商用機を発表している。D-Waveには我が国研究者が世界に先駆けて開発した超電導量子ビットの技術が適用されている他、我が国研究者が1998年に理論提案をした量子アニーリングの手法が適用されることで実現したものである。



 一方、組合せ最適化問題に関しては我が国においても、ImPACT「量子人工脳を量子ネットワークでつなぐ高度知識社会基盤の実現」プログラムにおいてコヒーレントイジングマシンと呼ぶ、量子ビットに相当するレーザーパルスを用いる、量子アニーリングとは異なる新たな計算手法が提案・実験されている。本プログラムにおいては2018年度の終了時点で10000ビットの達成を目指しており、今後の展開が注目されている。



日本の強み・課題


 超伝導量子ビット・スピン量子ビットに係る世界初の要素技術や、量子アニーリングの理論提案をはじめとして、量子コンピューティングに係る枢要なアイディア・要素技術が我が国研究者の研究に端を発することは特筆に値する。これは、我が国に物理学や材料科学の強みがある上で、長年にわたる連綿とした基礎研究の取組と人材育成があってこその成果と考えられる。



 超伝導量子ビットやスピン量子ビットの更なる集積化という面では、電子回路設計・レイアウト・プロセス技術といった半導体技術や光技術など、これまで我が国で培われてきたような技術の活用・開発が鍵と考えられ、日本の強みとなる期待や可能性がある。



 要素技術を開発した我が国でなく、欧米で多量子ビット集積化が進んでいることについては、これにはある程度の研究資源が必要であり、欧米の研究者はそれを獲得できているという面がある。また、欧米における更なる集積化に集中したプロジェクト的な研究開発投資や民間企業による研究開発投資の存在も挙げられる。



 研究者数で言えば、超伝導量子ビットを例にとれば、米国では数百人に対し、我が国では数十人といった人材層の厚みの違いがある。欧州はその中間と言える。実験だけでなく、誤り訂正といった理論的なアプローチについても、同様の人材層の厚みの違いがある。ただし、我が国には国際的に活躍する優秀な若手研究者が存在することも事実。



 我が国においては、ある研究の進展により新たな領域で若手研究者が育っても、大学等の研究室を主宰できるポストに全体として流動性がなく、ポストに限りがあることも課題。



推進方策の検討にあたって考慮すべき点

 我が国の限られた資源と欧米の投資規模を考えると、正面突破は難しく、現時点で本命技術を決めて集中投資するのは時期尚早で失敗する確率が高いと考えられる。



 独自の視点やアイディアを生み出すことが非常に重要。欧米とは地理的にも距離があるが、それを逆手にとって勝負すべき。



 世界的に興味深い技術、アイディア、ソフトウェアが出続けており、現在ある点や線を深掘りするより、突出した点と点をつないで新しい領域を拓くような、ハイブリッド的な推進方策が望ましいのではないか。



 その際、世界的な潮流は理解した上で、若手研究者のアイディアを開花させるような、探索的でクリエイティブな研究の新しい芽を育てることが重要。クリエイティブな人材を生み育むための方法でもある。



 2016年度から開始された戦略目標「量子状態の高度制御による新たな物性・情報科学フロンティアの開拓」では、特にさきがけで、探索的でクリエイティブな研究の新しい芽を見出し育てることが期待される。



 量子コンピューティングの実現に向けては数々のマイルストーンが存在するため、国際的にも、基礎研究の成果としてオープンな研究交流がなされることが重要であり、その切磋琢磨の中でブレークスルーが生み出されるのではないか。他の量子情報処理・通信技術と同様に、量子コンピューティングにおいても、一国に閉じた開発が可能であるとは考えられておらず、国際的な協力のもと推進されていることが、欧米における量子コンピューティングの急速な進展の一因であると考えられる。



以上


 注記

(注1)
  デジタル量子コンピュータでは、素因数分解(例えば通信暗号の解読)やビッグデータの超大規模検索など特定のアルゴリズムが超高速に超低消費電力で計算できると想定されている。例えば、キャッシュカード取引・銀行間の秘匿通信やインターネットの電子決済に用いられている現代の暗号通信は、「公開鍵暗号」が基盤となっており、現在のコンピュータ(フォン・ノイマン型)が素因数分解の処理に超天文学的・非現実な時間を要してしまう事実から成立しているが、量子コンピューティングが実現すれば、公開鍵暗号を合理的な時間内に解読することが可能になり、現在の暗号通信インフラの前提が覆る可能性がある。

  また、アナログ量子コンピュータの一つである量子アニーリングマシンでは、組合せ最適化問題が超高速に超低消費電力で計算できると想定されている。膨大な数の選択肢の中から一番良い選択肢を見つけ出す問題であり、例えば、セールスマンが複数の都市を回る際に所要時間が最短になる経路を求める巡回セールスマン問題が代表例である。カーナビのルート検索、複数の飛行機の最適配置・最適経路、大きさの異なる貨物の積載といった、交通・物流の経路や配置の最適化、携帯電話等の無線周波数割当てなどの有限資源の最適分配、集積回路設計や工場の行程設計等のものづくり利用など、様々な現実の経済・社会における課題の最適化を促す可能性がある。



(注2)


 2010年、カナダのベンチャー企業であるD-Wave社が量子アニーリングマシンと呼ばれる世界初の商用機(128ビット)を発表。2015年までに1000ビットの商用機を発表しており、ロッキードマーチン社やGoogle社等が導入している。

 米国では、政府のファンディング機関である国防省傘下のDARPAや情報機関傘下のIARPAが量子コンピューティングに関して大学や企業への研究開発投資を活発に行っている中、2013年にGoogle社がカリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究グループを吸収。2014年にはIBM社が5年間で$3Bの量子コンピューティングを含む研究投資を発表している。

 欧州では、2013年に英国政府が5年間で£270M、2015年にオランダ政府が10年間で€135Mの量子コンピューティングを含む研究イニシャティブを発表。オランダ政府が投資するデルフト工科大学には、Microsoft社やIntel社(10年間で$50Mの支援を2015年に発表)も投資している。また、欧州委員会でも、2018年から「Quantum Flagship」と呼ばれる研究プログラムに€1Bを投じる計画を進行中。



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科学技術・学術政策局 企画評価課

(科学技術・学術政策局 企画評価課)