資料1-3 文部科学省における研究及び開発に関する評価指針(改定案) はじめに

 科学技術学術は新たな知を生み出し、人類の未来を切り拓(ひら)く源である。我が国は、人類の知的資産たる優れた研究成果を創出し、これを世界に発信することを通じて人類共通の問題の解決に貢献するとともに、国際的な競争環境の中で持続的に発展し、安全・安心で質の高い生活のできる国の実現を目指す必要がある。そのためには、我が国の最も貴重な資源である「頭脳」によって、世界をリードする「科学技術創造立国」を目指して努力していかなければならない。

 文部科学省は、教育の振興や人材の育成とともに、科学技術と学術とを総合的に振興することを任務としている。これらは我が国の未来を担うものであり、その責は重い。特に、科学技術・学術の活動は、次代を担う高度人材の育成と連動して進められる。したがって、我が国の未来の姿について長期的展望を見据え、それに向かう最適な方向を目指して科学技術・学術を効果的に振興していくことが求められる。そこでは、その所掌に係る研究及び開発(以下「研究開発」という。)について、常に厳しく評価が行われる必要がある。その際、研究者の自由な発想と研究意欲を源泉とする学術研究から、特定の政策目的を実現する大規模プロジェクトまで広範にわたる研究開発の特徴を踏まえ、各々の性格、内容、規模等を十分考慮するとともに、そこに参加する若手人材のキャリアパス展開も含め、全体として調和が取れたものとなるよう配慮することが重要である。また、評価結果を積極的に公表し、説明責任を果たしていくことも必要である。

 研究開発の評価については、平成13年11月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(以下「大綱的指針」という。)が内閣総理大臣決定され、各府省が各々評価方法等を定めた具体的な指針を策定し、大綱的指針を踏まえた評価を進めていくこととされた。文部科学省では、これに基づき、評価を行う基本的な考え方をまとめたガイドラインとして平成14年6月に「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針」(以下「文部科学省研究開発評価指針」という。)を策定し、これに沿って評価を行うとともに、平成17年3月の大綱的指針の改定を受け、平成17年9月にその見直しを行い、研究開発評価の取り組みの定着やその改善を進めてきた。その後、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律」(平成20年法律第63号)(以下「研究開発力強化法」という。)の制定等を踏まえた大綱的指針の見直しが平成20年10月に行われたことを受けて平成21年2月に文部科学省研究開発評価指針の改定が行われた。

 今般、平成23年8月に策定された第4期科学技術基本計画において、科学技術イノベーションを促進する観点からPDCAサイクルの実効性を確保するために研究開発評価システムの改善・充実が必要であるとされた趣旨を踏まえ、平成24年12月に大綱的指針が改定された。このたびの文部科学省研究開発評価指針の改定においては、大綱的指針の改定事項に加えて、前回改定後に審議・とりまとめが行われた、「研究開発評価システム改革の方向性(審議のまとめ)」(平成21年8月科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会)、「我が国の研究評価システムの在り方」(平成24年10月日本学術会議研究にかかわる「評価システム」の在り方検討委員会)、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(建議)」(平成25年1月科学技術・学術審議会)、「我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針」(平成25年4月科学技術・学術審議会)等で指摘されている研究開発評価の在り方に係る多くの重要な提言等についても、盛り込むことに努めた。本改定では、特に以下の5点について、昨今の研究開発評価の重要課題として焦点を当てている。

  1. 科学技術イノベーション創出、課題解決のためのシステムの推進
  2. ハイリスク研究、学際・融合領域・領域間連携研究等の推進
  3. 次代を担う若手研究者の育成・支援の推進
  4. 評価の形式化・形骸化、評価負担増大に対する改善
  5. 研究開発プログラム評価

 また、日本語で「評価」として表される内容は、例えば、英語では多くの異なる語で表現されるとおり、多様な概念(巻末(1)、【参考1】参照)を含んでいる。本指針で用いられている用語の概念等については、基本的に巻末にまとめて整理するとともに、指針の記述内容の理解を深める参考となる関連情報の整理にも努めた。

 本指針は、文部科学省の所掌に係る研究開発について評価を遂行する上での基本的な考え方をまとめたガイドラインである。

 文部科学省本省内部部局及び文化庁内部部局(以下「文部科学省内部部局」という。)においては、本指針に基づき、実施要領を策定するなど所要の評価の枠組みを整備し、自らの研究開発に関する評価を行うこととする。また、大学及び大学共同利用機関(以下「大学等」という。)並びに文部科学省所管の研究開発法人等においては、本指針を参考にしつつ、自らがその特性や研究開発の目的・手法・性質等に応じて多様で柔軟な評価システムを構築し、それぞれ適切な方法により進めることが期待される。

 また、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)(以下「政策評価法」という。)、「政策評価に関する基本方針」(平成13年12月28日 閣議決定、平成22525日改定)、「文部科学省政策評価基本計画」(平成25年3月31日 文部科学大臣決定)に基づく評価のうち、研究開発を対象とする政策評価を実施するに当たっては、大綱的指針及び本指針に基づき行うものとする。さらに、研究開発機関等の評価のうち、研究開発法人等については、「独立行政法人通則法」(平成11年法律第103号)に基づく評価、国立大学法人及び大学共同利用機関法人については、その研究活動の特殊性に鑑みて、「国立大学法人法」(平成15年法律第112号)に基づく評価が行われるが、それに当たっては、本指針を参考とすることが期待される。

 本指針は、完璧な評価システムを構築すること自体が目的ではない。研究開発は、未知を知に転換していく高度な専門性に立脚した知的生産活動であり、その見通しや価値の判断は、専門家の洞察に本来的に依存するものであることに留意しなければならない。このため、評価に関して責任を持つ者は、評価は無謬(むびゅう)ではないという謙虚な立場に立ち、その完成度を高める努力を怠ってはならず、実施した評価に対する意見に耳を傾けつつ評価方法等を常に見直していく姿勢を保持することが重要である。文部科学省としても、評価手法の改善についての調査研究を行うとともに、評価の実施状況等をフォローアップし、本指針の見直し等適切な措置を講じていくことが必要である。

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科学技術・学術政策局企画評価課

(科学技術・学術政策局企画評価課)